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特開2022-101513改良した特性を有するシリコンカーバイドMOSFETトランジスタ装置及び対応する製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101513
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】改良した特性を有するシリコンカーバイドMOSFETトランジスタ装置及び対応する製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220629BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220629BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220629BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 652M
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207993
(22)【出願日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】102020000032441
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】パトリク フィオレンツァ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリヅィオ ロッカフォルテ
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド ザネッティ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジウセッペ サッジーオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】MOSFETのJFET領域の中央部分においてゲート誘電体領域の電界の増加を抑制するシリコンカーバイドMOSFET装置及びその製造プロセスを提供する。
【解決手段】MOSFET装置が、第1導電型を有しておりシリコンカーバイドからなる機能層24、各々が誘電体領域31と電極領域32とを有しており、機能層の上部表面24a上に形成されているゲート構成体30、表面分離領域29によって互いに分離されて機能層内に形成されており第2導電型を有している本体ウエル26、夫々のゲート構成体の横方向及び部分的に下側に該本体ウエル内に形成されており第1導電型を有しているソース領域27を有している。修正したドーピング領域40が、夫々のゲート構成体の下側、特に対応する誘電体領域の下側で該表面分離領域内でその中央に配置されており、且つ、機能層のドーパント濃度と比較して修正されたドーパント濃度を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOSFETトランジスタ装置において、
第1導電型を有しているシリコンカーバイドからなる機能層(24)、
前記機能層(24)の上部表面(24a)上に形成されており各々が誘電体領域(31)と電極領域(32)とを有しているゲート構成体(30)、
第2導電型を有しており、前記機能層(24)内に形成されており、前記機能層(24)の表面分離領域(29)によって互いに分離されている本体ウエル(26)、
前記第1導電型を有しており、前記本体ウエル(26)内で夫々のゲート構成体(30)の横方向及び部分的に下側に形成されているソース領域(27)、
を有しており、更に、
夫々のゲート構成体(30)の下側で前記機能層(24)の表面分離領域(29)内に配置されている修正したドーピング領域(40)を有しており、前記修正したドーピング領域(40)が該機能層(24)のドーパント濃度と比較して修正されたドーパント濃度を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記修正したドーピング領域(40)が夫々のゲート構成体(30)の誘電体領域(31)の下側で表面分離領域(29)に関して中央に配置されている請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記修正したドーピング領域(40)が夫々の表面分離領域(29)の幅全体にわたり横断方向に延在しており、本体ウエル(26)で終端している請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
該修正したドーピング領域(40)が前記第1導電型を有しており、その正味のドーパント濃度が該機能層(24)のドーパント濃度と比較して減少されており、機能層(24)のドーパント濃度の5%乃至50%の間である請求項1乃至3の内のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記修正したドーピング領域(40)が該上部表面(24a)に対して横断方向で垂直方向(z)において該本体ウエル(26)の厚さよりも一層小さい厚さを有しており、該本体ウエル(26)の厚さの10%乃至50%の間である請求項4記載の装置。
【請求項6】
該修正したドーピング領域(40)が夫々の上部層(40a)と該上部層(40a)の下側の夫々の底部層(40b)とからなる積層体によって構成されており、該底部層(40b)が該機能層(24)よりも一層高いドーパント濃度を有しており且つ該上部層(40a)が該底部層(40b)に関して一層低いドーパント濃度を有している請求項1乃至3の内のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
該底部層(40b)のドーパント濃度が機能層(24)のドーパント濃度の1.5乃至50倍の間であり、且つ該上部層(40a)のドーパント濃度が該底部層(40b)のドーパント濃度の0.1乃至0.5倍の間である請求項6記載の装置。
【請求項8】
機能層(24)の上部表面(24a)に関しての底部層(40b)の深さレベル(Db)は本体ウエル(26)の夫々の深さレベル(D)の0.5乃至1.2倍の間であり、且つ上部層(40a)の厚さ(Ta)は底部層(40b)の夫々の厚さ(Tb)の0.1乃至0.5倍の間である請求項6又は7記載の装置。
【請求項9】
上部層(40a)の幅(Wa)及び底部層(40b)の夫々の幅(Wb)は互いに独立しており、表面分離領域(29)の夫々の幅(W)より小さいか又は等しい請求項6乃至8の内のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記表面分離領域(29)が前記MOSFETトランジスタ装置(20)のJFET領域である請求項1乃至9の内のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
MOSFETトランジスタ装置(20)を製造する方法において、
第1導電型を有しておりシリコンカーバイドからなる機能層(24)を形成し、
各々が誘電体領域(31)と電極領域(32)とを有しているゲート構成体(30)を前記機能層(24)の上部表面(24a)上に形成し、
前記機能層(24)の表面分離領域(29)によって互いに分離されており第2導電型を有している本体ウエル(26)を前記機能層(24)内に形成し、
夫々のゲート構成体(30)の横方向及び部分的に下側に前記第1導電型を有するソース領域(27)を前記本体ウエル(26)内に形成する、
ことを包含しており、更に、
夫々のゲート構成体(30)の下側で前記機能層(24)の表面分離領域(29)内に配置させて修正したドーピング領域(40)を形成する、ことを包含しており、前記修正したドーピング領域(40)は該機能層(24)のドーピング濃度と比較して修正したドーピング濃度を有していることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記修正したドーピング領域(40)を形成することが、該機能層(31)の第1導電型のドーピングの部分的な不活性化又は向上化を目的として該表面分離領域(29)内に局所化した注入を実施することを包含している請求項11記載の方法。
【請求項13】
局所化した注入を実施することが、該表面分離領域(29)内に第2導電型の原子で注入することを包含しており、前記注入がカウンタードーピングを提供し、従って該機能層(24)のドーピングの部分的不活性化を与え、従って減少した正味のドーピング濃度を有する修正したドーピング領域(40)の形成となる請求項12記載の方法。
【請求項14】
局所化した注入を実施することが、該表面分離領域(29)におけるシリコン原子の注入を実施することを包含しており、それが該表面分離領域(29)におけるドーピングに損傷を与え、従って不活性化させ、従って減少した正味のドーピング濃度を有する修正したドーピング領域(40)の形成となる請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記機能層(24)を形成することが、前記機能層(24)に対する所望のドーピング濃度と前記第1導電型とを有する第1エピタキシャル層(24’)を基板(22)上に形成することを包含しており、及び前記修正したドーピング領域(40)を形成することが、前記修正したドーパント濃度を有している第2エピタキシャル層(24”)を該第1エピタキシャル層(24’)上に形成することを包含している請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記本体ウエル(26)を形成すること及び前記ソース領域(27)を形成することが、前記機能層の表面部分において夫々の注入を実施し、該第2エピタキシャル層(24”)内に既に存在するドーピングを考慮に入れるために注入領域の表面ドーピングの濃度を調節すること包含している請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記修正したドーピング領域(40)が夫々のゲート構成体(30)の誘電体領域(31)の下側で該表面分離領域(29)に関して中央に配置される請求項11乃至16の内のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記修正したドーピング領域(40)が夫々の表面分離領域(29)の幅全体にわたって横断方向に延在しており、該本体ウエル(26)で終端している請求項11乃至16の内のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良した特性を有するシリコンカーバイドMOSFETトランジスタ装置及び対応する製造プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子半導体装置は既知であり、特に、シリコンカーバイド基板から開始して製造される例えば電子的パワー適用例のためのMOSFETトランジスタ(金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ)がある。
【0003】
上記装置は、シリコンカーバイドの好適な化学的物理的特性のおかげで有益的なものであることを示している。例えば、シリコンカーバイドは、通常、一般的に電子装置において使用されているシリコンよりも一層幅の広いバンドギャップを有している。その結果、例え比較的小さな厚さであっても、シリコンカーバイドはシリコンよりも一層高いブレークダウン電圧を有しており、従って高電圧、高パワー、及び高温適用例において効果的に使用することが可能である。
【0004】
特に、その結晶品質のため及びその大規模入手可能性のために、六方晶ポリタイプ(4H-SiC)を有するシリコンカーバイドは電子的パワー適用例に対して使用することが可能である。
【0005】
しかしながら、シリコンカーバイド半導体装置の製造は幾つかの問題によって影響を受けている。例えば、シリコンカーバイドの結晶品質の問題は、高い製造歩留まりを得るための障害となる場合があり、シリコンカーバイドの場合の歩留まりはシリコンから開始して製造される同様の装置の歩留まりよりも一般的に一層低いものである場合があり、そのことは結果的に製造コストを増加させる原因となる。
【0006】
特に、信頼性問題が、シリコン酸化物(SiO)とシリコンカーバイド(4H-SiC)との間の界面において発生する高い電界にリンクしていることが分かっている。
【0007】
図1は、参照番号1で示したパワー適用例用の特にNチャンネルVDMOS(縦型二重拡散金属酸化物半導体)である縦型のMOSFET装置の基本的又は基礎的な構造(所謂セル)の一部を示しており、それは、ここでは図示していないが(例えば1018原子数/cmよりも一層高い高ドーピング濃度の、例えば、N型ドーピングで)高度にドープされている半導体物質(特に、シリコンカーバイド4H-SiC)からなる基板と、一層低いドーパント濃度(N)で該基板と同じ導電型を有しており且つ該基板の上側にあるこれもシリコンカーバイドからなるエピタキシャル層(ドリフト層と呼称する)2と、を有している。該基板はMOSFET装置1に対するドレインとして動作し、且つ該エピタキシャル層2はその表面延長部を構成しており上部表面2aを画定している。
【0008】
MOSFET装置1の各セルは、エピタキシャル層2の導電型と反対の導電型を有している本体セル4(図示例では、P型)と、基板2と同じ導電型及び高ドーパント濃度(N)を有しており上部表面2aにおいて本体ウエル4内に配置されているソース領域5とを有している。上部表面2aに配置されており且つ隣接する本体ウエル4間に介在されているエピタキシャル層2の表面部分は、通常、JFET領域と呼称される。
【0009】
装置1は、更に、ゲート構成体6を有しており、それは、該JFET領域上に形成されており且つ本体ウエル4とソース領域5とに部分的に重畳している例えばシリコン酸化物からなるゲート誘電体領域7と、ゲート誘電体領域7上に設けられているゲート電極8と、によって構成されている。
【0010】
例えばフィールド酸化物からなる誘電体物質領域9がゲート電極8上に存在しており、電気的コンタクト領域11がこの誘電体物質領域9を介して画定されており、ソース領域5の表面部分とコンタクトする構成とされている。
【0011】
ソースメタリゼーション12が前記電気的コンタクト領域11とコンタクトして配置されており、更に、図示していないが、ドレインメタリゼーションが裏側から該基板とコンタクトしており、誘電体物質領域9を介して設けられているコンタクト開口内に設けられているゲートメタリゼーションがゲート電極8にコンタクトしている。
【0012】
MOSFET装置1の各セルのチャンネルは、ゲート電極8直下に設定され対応する本体ウエル4の部分内に形成され、且つ、片側において、ソース領域5と本体ウエル4との間の接合と、反対側において、同じ本体ウエル4と該JFET領域との間の接合とによって範囲が確定される。
【0013】
ゲート電極8は該チャンネルと容量的に結合されてその導電型を調節し、特に、ゲート電極8への適宜の電圧の印加がチャンネル反転を起こすことを可能とし、従って、ソース領域5(該装置の第1電流導通領域)と該基板(該装置の第2電流導通領域)との間に該チャンネル及び該ドリフト層を介しての電子に対する導電経路を形成する。
【0014】
シリコンカーバイドMOSFET装置を悩ます一つの問題は、結晶欠陥に起因するものと思われる電界における増加にリンクしており、該絶縁物質中で電界が増加する傾向となることであって、特に逆バイアス形態で、該JFET領域の中央部分においてゲート誘電体領域7において特に発生する問題である。
【0015】
図2は上に定義した領域における該誘電体物質内の電界Eの傾向を示している。該JFET領域の中央区域における電界の増加が明らかであり、そこで示されているものは誘電体ブレークダウンを発生させ、従ってMOSFET装置の信頼性を危険にさらすようなレベルを取る場合もあり得る。
【0016】
前述した問題を解消する既知の解決方法は、以下のアプローチ、即ちエピタキシャル層(ドリフト層)の厚さを増加させること、エピタキシャル層のドーピングを減少させること、及び隣接する本体ウエル間の距離従ってJFET領域の幅を減少させること、の内のの一つ又はそれ以上によってシリコンカーバイドとゲート誘電体領域との間の界面における電界を減少しようとするものである。しかしながら、この様な解決方法は全く満足のいくものではないことが明らかとなった。何故ならば、それらは一般的にMOSFETのオン抵抗を不所望に増加させるものであり、更に製造プロセスのコスト及び効率に無視することができない影響を与えるものであるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的とするところは上述した問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、特許請求の範囲に記載されるように、シリコンカーバイドMOSFET装置及び対応する製造プロセスが提供される。
【0019】
本発明をより良く理解するために、その好適実施例について純粋に非制限的な例として添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】既知のタイプのMOSFET装置の一部の断面図。
図2図1のMOSFET装置のJFET領域における電界の傾向を示したグラフ図。
図3】本発明の1実施例に基づくMOSFET装置の断面図。
図4】既知のタイプのMOSFET装置における電界の傾向と比較して図3のMOSFET装置のJFET領域における電界の傾向を示したグラフ図。
図5】(A)及び(B)は第1実施例に基づく製造プロセスの相次ぐステップにおけるMOSFET装置の夫々の断面図。
図6】(A)乃至(C)は異な実施例に基づく製造プロセスの相次ぐステップにおけるMOSFET装置の夫々の断面図。
図7】(A)は本発明の更なる実施例に基づくMOSFET装置の断面図及び(B)は(A)のMOSFET装置の一部の簡略化した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に詳細に説明するように、本発明の一つの側面は、MOSFET装置(特に、4H―SiCポリタイプシリコンカーバイドパワーMOSFETトランジスタ)のJFET領域に修正したドーピング領域を導入することによってゲート誘電体領域における、特に逆バイアス条件における、電界を減少させることを目論むものである。該修正したドーピング領域とは、該JFET領域が設けられているエピタキシャル層の濃度と比較して減少させた正味のドーパント濃度を有する領域のことである。
【0022】
図3は、MOSFET装置20、特に高パワー適用例用のNチャンネル縦型トランジスタ、を示している。
【0023】
MOSFET装置20は、半導体物質、特にシリコンカーバイド(特に4H-SiCポリタイプ)、からなるダイ内に設けられており、高度にドープされている(N型のドーピングで)基板(又は構造層)22と、基板22上に配置されており基板22と同一の導電型及び一層低い濃度(例えば、N型のドーピングで)を有している機能層24と、を有している。上部表面24aを有している機能層24は、例えば、基板22上にエピタキシャル技術を使用して成長され且つ、基板22と共に、MOSFET装置20のドレインを提供し(即ち、同じ装置の第1電流導通領域)、特に、この機能層24はMOSFET装置20の所謂ドリフト層を画定する。適宜の導電性物質からなるドレインコンタクト(ここでは不図示)が基板22の下側に結合されている(即ち、垂直方向zに沿って機能層24とは反対側)。
【0024】
MOSFET装置20の複数個の機能ユニット又はセルが機能層24の活性区域内に形成されており、これらのセルは、例えば、長手軸方向y(図3の断面の横断方向xに対して及びMOSFET装置20の厚さに対応する前述した垂直方向zに対して直交する方向)において大略ストライプ状の延長部を有している。
【0025】
各機能ユニットは、機能層24の導電型と反対の導電型(図示例においては、P型)を有している本体ウエル26と、上部表面24aにおいて本体ウエル26内に配置されており基板22と同じ導電型(及び、図示例においては、N型のドーピングでの高濃度)を有しており且つ同じ装置の第2電流導通領域を画定しているソース領域27と、を有している。各本体ウエル26及びソース領域27は、図示例においては、MOSFET装置20の2個の連続する機能ユニットによって共有されている。
【0026】
更に、本体ウエル26と同じ導電型で且つ高いドーピング(図示例においては、P型)を有しているドレイン領域28が、機能層24の上部表面24aにおいて同一の本体ウエル26の内の一つ又はそれ以上の中に配置されている。
【0027】
セル間即ちJFET領域29は、2個の隣接する本体ウエル26(水平方向において、即ち図示例においては横断方向xに沿って)の間で且つ機能層24の上部表面24aと本体ウエル26の深さ(垂直方向zにおいて)との間に配置されている機能層24の部分に対応している。
【0028】
各機能ユニットは、更に、ゲート構成体30を有しており、それは、上部表面24a上に配置されており且つJFET領域29と重畳し及び部分的に本体ウエル26及びソース領域27と重畳しており、特に、本体ウエル26のチャンネル領域の上に配置されている(このチャンネル領域は、片側においては、ソース領域27と本体ウエル26との間の接合によって、そして、反対側においては、本体ウエル26とJFET領域29との間の接合によって範囲が確定されている)。本例においては、ゲート構成体30はMOSFET装置20の2個の隣接するセルによって共用されている。
【0029】
より詳細に説明すると、例えば長手軸方向yに沿ってストライプ状の形状を有するゲート構成体30は、例えばシリコン酸化物(SiO)を有しており且つ機能層24の正面表面24a上に配置されているゲート誘電体領域31と、ゲート誘電体領域31と重畳しており且つ同じゲート誘電体領域31と実質的に同一の横断方向寸法を有しているゲート電極領域32と、を有している。
【0030】
誘電体物質からなるパッシベーション層35がゲート構成体30上に配置されており、且つ下側のソース領域27におけるソースコンタクト開口36及び下側のドレイン領域28における本体コンタクト開口37が同じパッシベーション層35を介して画定されている。電気的コンタクト領域38が前述したソースコンタクト開口36及び本体コンタクト37内に配置されており、下側のソース領域27及びドレイン領域28の夫々に対するオーミック型の電気的コンタクトを提供している。
【0031】
MOSFET装置20は、更に、例えばアルミニウムを含むコンフォーマブル即ち適合性のあるタイプのソース・メタリゼーション層39を有しており、それは、全活性区域におけるパッシベーション層35上に配置されており、特に、夫々の電気的コンタクト領域38、従って、ソース領域27及びドレイン領域28とコンタクトするようにソースコンタクト開口36及び本体コンタクト開口37内に設けられている。
【0032】
図示していない態様で、パッシベーション層35を介しても延在しているゲート電極32への電気的接続のために正面において、且つ該ドレインコンタクトに対する電気的接続のために裏側において、更なる電気的コンタクト領域が設けられている。
【0033】
本発明の特定の側面によれば、MOSFET装置20は、更に、修正したドーピング領域20を有しており、該領域は、隣接する本体ウエル26を分離する機能層24の表面部分内、即ち上部表面24aにおいて、夫々のゲート構成体30の下側、特に対応するゲート誘電体領域31の下側においてJFET領域29内に設けられている。
【0034】
前述した修正したドーピング領域40は、図示した実施例においては、夫々のJFET領域29に関して中央に配置されているが、代替的に、後に説明し且つ図示する如く、同じ修正したドーピング領域40は夫々のJFET領域40の幅全体にわたって横断方向に延在し且つ夫々の隣接するセルの本体ウエル26で終端することが可能である。
【0035】
更に、前述した修正したドーピング領域40は、垂直方向zにおいて、本体ウエル26の厚さに関して(即ち、同じ本体ウエル26と機能層24との間の本体接合の垂直方向zに沿っての位置に関して)一層小さい厚さを有しており、修正したドーピング領域40の前述した厚さは本体ウエル26の厚さの10%乃至50%の間とすることが可能である。
【0036】
詳細には、修正したドーピング領域40は機能層24と同一の導電型を有しており且つ同じ機能層24の濃度と比較して減少されている正味のドーパント濃度を有している。特に、修正したドーピング領域40のドーピング濃度は5%乃至50%の間であり、例えば、それは、機能層24のドーピング濃度の20%に等しい。
【0037】
以下に説明するように、前述した修正したドーピング領域40は、特に局所化した注入を介して、機能層24のN型ドーピングの局所化させ且つ部分的な不活性化によって得ることが可能である。この局所化した注入は、機能層24に対して局所化したカウンタードーピングを与える例えばアルミニウム原子又は何らかのその他の適宜の物質で、反対の導電型(P型)を有することが可能であり、又は機能層24に対して局所化した損傷を発生させることが可能である。
【0038】
代替的に、修正したドーピング領域40は、機能層24の上部表面24aにおいての適宜の且つ特定のドーピングでのエピタキシャル層の特化した成長によって得ることが可能である。
【0039】
いずれの場合においても、ゲート構成体30の下側で且つJFET領域29内に配置された前述した修正したドーピング領域40の存在は、特にMOSFET装置20の逆バイアス条件において、対応するゲート誘電体領域31内の電界を減少させることを可能とする。
【0040】
この点に関して、図4は、修正したドーピング領域40が存在する状態でのゲート誘電体領域31内の横断方向に沿っての電界の傾向を連続線で示しており、一方、例として与えられる比較のために点線で示しているものは、修正したドーピング領域40が存在しない従来の解決法における同じゲート誘電体領域31における電界の傾向である。これらの2つの傾向を吟味すると、JFET領域29における電界の減少(円形ボックスでハイライトしてある)が明らかであり、有益的なことであるが、この減少は誘電体ブレークダウンを阻止するのに十分なものであり、従ってMOSFET装置20の信頼性を保全する。
【0041】
電界の減少の有益的な効果はMOSFET装置20のブレークダウン特性の何らかの実質的な修正が何ら関与するものではなく、ブレークダウン電圧及びスレッシュホールド電圧の値は実際には実質的に変更されるものではないことを本発明者等が示したことに注意すべきである。即ち、電界の減少は、MOSFET装置20のブレークダウン電圧及びスレッシュホールド電圧は不変のまま得ることが可能である。
【0042】
更に、MOSFET装置20の信頼性における顕著な増加を保証するためには該電界を少量(例えば、10%以下)だけ減少させることでも十分であるということを指摘すべきである。このことが特に重要であるということは、電界における過剰な減少はMOSFET装置20のオン状態抵抗(RON)の不所望な増加を招来する場合があるからである。従って、いずれにおいても、電界の減少の有益的な効果とオン状態抵抗の不所望な増加との間の良好な妥協を達成することが可能である。
【0043】
特に前述した修正したドーピング領域40の形成に関して、MOSFET装置20を製造する可能なプロセスについて以下に説明する。
【0044】
第1実施例において、同じMOSFET装置20の機能層24のN型ドーピングの部分的な不活性化を目的としてMOSFET装置20のJFET領域29において実施される適宜の局所化した注入によって修正したドーピング領域40が得られる。
【0045】
図5(A)に示されるように、製造プロセスは、最初に、それ自身既知の態様で、P型のドーパント原子(例えば、アルミニウム原子)の注入によって機能層24内に本体ウエル26を、N型のドーパント原子(例えば、リン原子)の夫々の注入によって同じ本体ウエル26内にソース領域27を、及び高いドーピングドーズでのP型のドーパント原子の夫々の注入によって機能層24の上部表面24aにおける本体ウエル26の一つ又はそれ以上内のドレイン領域28を、形成することを目論む。
【0046】
次いで、図5(B)において、本発明の一つの側面に基づいて、隣接する本体ウエル26間のJFET領域29におけるP型の注入(例えば、アルミニウム又はボロン原子で)によって修正したドーピング領域40を設け、この注入は、機能層24の導電型とは反対の導電型(この場合には、N型のもの)を有するドーパント原子で行うものであるから、カウンタードーピング、従って機能層24のドーピングの部分的な不活性化、を行い、従って減少した正味のドーピング濃度を有する修正したドーピング領域40を形成することとなる。
【0047】
該ドーパントの熱的活性化の後に、本プロセスはそれ自身既知の態様で進行し、機能層24上にゲート構成体30を形成する(ゲート誘電体領域31及びゲート電極32の形成のための誘電体層及び金属層の付着とその後の画定により、次いでパッシベーション層35の付着により)。更に、ソース、ゲート、及びドレインコンタクトを与えるために電気的コンタクト領域38を形成し(正面側及び裏側に)、次いでソース・メタリゼーション層39を形成する(従って、図3を参照して前述した構成体を画定する)。
【0048】
前述した製造プロセスの1変形例は、修正したドーピング領域40の形成を興味の或る領域におけるドーピングを損傷させ、従って不活性化させることによって行い、最終的な結果として同じ修正したドーピング領域40に対する減少した正味のドーピング濃度を得ることを目論むものである。
【0049】
異なる実施例では、その代わりに、所望のドーピング濃度(機能層24に対して意図されている濃度よりも一層低い)を有する表面層のエピタキシャル成長によって前述した修正したドーピング領域40を形成することを目論むものである。
【0050】
上記製造プロセスは、図6(A)に示すように、MOSFET装置20のドリフト層に対して所望の導電型及び所望のドーピング濃度(本例では、N型のもの)を有する第1エピタキシャル層24’の基板22上での成長を目論むものであり、この第1エピタキシャル層24’はMOSFET装置20の機能層24に対して全体として所望されるものよりも僅かに一層小さい厚さを有していることに注意すべきである。
【0051】
次いで、図6(A)に示されているように、本発明の一つの側面によれば、第2の薄いエピタキシャル層24”を第1エピタキシャル層24’上に成長させる(その場合の厚さは、第1エピタキシャル層24’の厚さに加算された場合に、機能層24の所望の厚さが得られるようなものである)。特に、連続的な態様で成長され且つ機能層24の正面表面24aを画定するこの第2エピタキシャル層24”は、修正したドーピング領域40に対して所望される正味のドーピング濃度に対応する第1エピタキシャル層24’と比較して減少されている所望のドーピング濃度を有するN型(機能層24と同様)の導電型を有しており、即ち、以後例示するように、修正したドーピング領域40自身が、この場合には、前述した第2エピタキシャル層24”の部分によって画定される。
【0052】
次いで、図6(B)に示したように、本体ウエル26、ソース領域27、及びドレイン領域28をイオン注入によって形成する。特に、正面表面24aにおいては前述した第2エピタキシャル層24”が存在しているので、その注入領域の表面ドーピングの密度は同じ第2エピタキシャル層24”内に既に存在しているドーピングを考慮に入れて適宜調節されて所望のドーパント濃度が得られる(該表面ドーピングの密度のこの調節は図6(B)に模式的に示してある)。
【0053】
注意すべきことであるが、前述したイオン注入の終わりにおいて、修正したドーピング領域40は本体ウエル26の間に留まり、同じ本体ウエル26間に残存する第2エピタキシャル層24”の部分によって構成されている(この場合には、これらの修正したドーピング領域40は、横断方向xにおいてJFET領域29の全幅を介して、本体ウエル26と接触するまで横断方向に延在している)。
【0054】
又、この場合には、本プロセスはそれ自身既知の態様で進行し、機能層24の上にゲート構成体30を形成し、ソースコンタクトとゲートコンタクトと(ここでは図示していない態様で)ドレインコンタクトとを形成するために電気的コンタクト領域38を形成し、及びソース・メタリゼーション層39を形成し、従って図6(C)に示したMOSFET装置20を画定する。
【0055】
次に、本発明の更なる実施例について図7(A)及び(B)を参照して説明する。
【0056】
この更なる実施例においては、MOSFET装置20のJFET領域29内に配置される修正したドーピング領域40は、夫々の上部層40aと該上部層40a下側の夫々の底部層40bとからなる積層体によって構成されている。
【0057】
修正したドーピング領域40の底部層40bは、一層高いドーピングレベル即ちドーパント濃度と機能層24と同じ導電型(本例においてはN型)とを有している。特に、底部層40bのドーパント濃度は機能層24のドーパント濃度の1.5乃至50倍の間である。
【0058】
更に、垂直方向zに沿っての機能層24の上部表面24aに関する底部層40bの深さレベルは、図7(B)(尚、簡単化のために、MOSFET装置20のソース及びドレイン領域27,28は示していない)においてDbとして示してあり且つ同じく図7(B)においてDで示してある本体ウエル26の夫々の深さレベルの0.5乃至1.2倍の間である。
【0059】
修正したドーピング領域40の上部層40aは底部層40bと比較して一層低いドーパント濃度を有しており、例えば同じ底部層40bのドーパント濃度の0.1乃至0.5倍の間である。上部層40aの導電型は機能層24のものと同じか又は反対のものとすることが可能である。垂直方向zに沿っての上部層40aの厚さはTaとして示してあり且つ底部層40bの夫々の厚さTbの0.1乃至0.5倍の間である。
【0060】
修正したドーピング領域40の底部層40bの幅(水平方向においての、図示例においては、横断方向xに沿って)は、図7(B)においてWbで示してあり、且つJFET領域29の幅Wよりも小さいか又は等しいものとすることが可能であり(2番目の場合においては、底部層40bはJFET領域29の全体にわたって水平方向に延在している)、同様に、同じ修正したドーピング領域40の上部層40aの幅Wa(水平方向においての)も、底部層40bとは独立的で且つ非相関した態様で、JFET領域29の幅Wよりも小さいか又は等しいものとすることが可能である(即ち、上部及び底部層40a、40bの幅Wa,Wbは異なるものとすることが可能であり且つ各々はJFET領域29の幅と等しいか又はより小さいものとすることが可能である)。
【0061】
この実施例においても、修正したドーピング領域40は夫々のJFET領域29に関して中央に配置させることが可能である(即ち、その中心において同じJFET領域29を横断する垂直面に関して対称的)。
【0062】
修正したドーピング領域40のこの実施例において、底部層40bの存在は導電型特性を改善し且つMOSFET装置20のオン状態抵抗を減少させることを可能とし、一方、上部層40aは、上述したように、同じMOSFET装置20のゲート誘電体領域内の電界を減少させることを可能とする。一般的に、前述したような同様の考慮事項が修正したドーピング領域40のこの実施例の製造に対しても適用される。
【0063】
底部層40bは、機能層24に関して単一のステップ又は相次ぐステップにおけるエピタキシャル成長によって得ることが可能であり、それは同じ機能層24と同じ型のドーピング種を注入することによって得ることが可能であり、そのドーピングを強化させる。底部層40bは上述した深さに形成され且つ機能層24の上部表面24aに到達するか又はその中に埋設させることが可能である。
【0064】
上部層40aは、機能層24及び底部層40bに関して単一のステップ又は相次ぐステップにおけるエピタキシャル成長によって得ることが可能であり、それは、同じ機能層24と同一の型又は異なる型のドーピング種を注入することによって得ることが可能である。上部層40aのドーピングは、カウンタードーピング効果に起因して異なる種を注入することによって調節することが可能である。
【0065】
上部層40aは、上述したように、機能層24の上部表面24aに関して所望の深さで形成される。同じ上部層40aは連続的なものとするか、又は、例えば、本体ウエル26及び/又は底部層40bを形成する前又は後のフォトマスク処理とその後の注入ステップとによって、JFET領域29において水平方向に区分されたものとすることが可能である。上部層40aの幅Waが本体ウエル26間の距離よりも一層大きい場合には、同じ本体ウエル26のドーピングは、重畳する領域において同じ上部層40とのドーピング干渉を考量に入れねばならない。
【0066】
本発明の利点は前述した説明から明らかである。いずれにおいても、再度強調されるべきことは、本発明は、シリコンカーバイド基板(特に、4H-SiCポリタイプのもの)から開始して構築されたMOSFETトランジスタ装置の性能及び信頼性の改善を可能とするということである。特に、本発明は、シリコン酸化物(SiO)とシリコンカーバイド(4H-SiC)との間の界面、特にMOSFETトランジスタ装置のJFET領域の中央、において発生する高い電界にリンクされている信頼性の問題を解決することを可能としている。有益的なことであるが、前述した電界の減少は、MOSFETトランジスタ装置のブレークダウン特性を不変に維持したまま得られる。
【0067】
更に、上部及び底部層40a、40bの積層体によって形成される修正したドーピング領域40を有する実施例は、MOSFET装置20のオン抵抗及び導電型特性を改善する利点を提供すると共に、ゲート誘電体領域に対する電界に関する保護をも提供する。
【0068】
従って、本発明に基づいて得られるMOSFETトランジスタ装置は、例えば、電源、力率補正(PFC)を有する無停電電源装置(UPS)、光起電力システム、エネルギ分布システム、産業用モーター、及び電気自動車等の種々の適用分野において有益的に使用することが可能である。
【0069】
最後に、上述し且つ例示したことに対して特許請求の範囲に定義される如き本発明の範囲を逸脱すること無しに、修正例及び変形例を構成することが可能であることは明らかである。特に、一般的にNチャンネル及びPチャンネルMOSFETトランジスタの両方において、例えば自動車適用例のための例えば信号又はパワーVDMOS装置、IGBT(MOSFETトランジスタを含む)IP(インテリジェントパワー)MOSFETにおける異なるシリコンカーバイドMOSFETトランジスタ装置において有益的に適用することが可能であることが強調される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7