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特開2022-101521希少糖を含む組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101521
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】希少糖を含む組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220629BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20220629BHJP
【FI】
A23L27/00 101Z
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210344
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2020215185
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】内海 唯
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】秋光 和也
(72)【発明者】
【氏名】望月 進
(72)【発明者】
【氏名】何森 健
(72)【発明者】
【氏名】吉原 明秀
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD20
4B018MD28
4B018MD61
4B018ME01
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF14
4B047LB03
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF07
4B047LG01
4B047LG16
4B047LG18
4B047LG22
4B047LG70
4B047LP01
4B047LP02
4B047LP20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ズイナ属植物の抽出物の望ましくない味質の少なくとも一部を低減または除去しつつ、希少糖を含む組成物を得る方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、ズイナ属植物の抽出液を用意すること、抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および沈澱物を除去することを含む、方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、
ズイナ属植物の抽出液を用意すること、
前記抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および
前記沈澱物を除去することを含む、方法。
【請求項2】
前記タンパク質系澱下げ剤がゼラチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼラチンの重量平均分子量が1,500~150,000である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質系澱下げ剤中のプロリン比率が、前記タンパク質系澱下げ剤100g当たり0.5~50gである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質系澱下げ剤の添加量が、前記抽出液の総量に対して前記タンパク質系澱下げ剤の固形分換算で1~10重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出液を前記ズイナ属植物の凍結粉砕物を用いて調製することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記凍結粉砕物を30℃~80℃の水で抽出する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出液の抽出時間が1分~24時間である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ズイナ属植物が、Itea chinensis、Itea ilicifolia Oliv.、Itea japonica Oliv.、Itea oldhamii、Itea parviflora、Itea oblonga Hand.-Mazz.、Itea yunnanensis Franch.およびItea virginicaからなる群から選択される1種以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
沈澱物を除去した後の前記抽出液から溶媒を除去することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
多孔質吸着剤による処理をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質吸着剤が、活性炭、ゼオライト、シリカおよび高分子吸着剤からなる群から選択される1種以上の多孔質吸着剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法で得られる、組成物。
【請求項14】
アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖と1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上であり、
プシコースが含まれる場合、プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である、組成物。
【請求項15】
アリトールおよびプシコースを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%である、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
原料となるズイナ属植物の抽出液と比べて総ポリフェノール量が低減され、かつアリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖が実質的に低減していない、ズイナ属植物の抽出組成物。
【請求項18】
原料となるズイナ属植物の抽出液を基準として、前記総ポリフェノール量の低減割合が75%~100%であり、前記希少糖含有量の低減割合が0~40%である、請求項17に記載の抽出組成物。
【請求項19】
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上であり、
プシコースが含まれる場合、プシコースの含有量が前記抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である、請求項17または18に記載の抽出組成物。
【請求項20】
請求項13に記載の組成物、請求項14~16のいずれか一項に記載のズイナ属植物由来の組成物または請求項17~19のいずれか一項に記載の抽出組成物を含む、飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希少糖を含む組成物およびその製造方法に関する。本発明はまた、希少糖を含む抽出組成物に関する。本発明は、具体的には、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法、およびアリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖と1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食品に対して良好な味覚に加え低カロリーが求められるようになってきた。これは肥満や糖尿病などの成人病が問題視されることと関りがある。古来より甘味料の中心として主要な地位を占めてきた砂糖(ショ糖、スクロースとも称する)に対し、その代替品としてこれまで様々な甘味料が開発されており、多くの種類の甘味料が食品に使用できる。
【0003】
そのような砂糖の代替甘味料の一つとして、希少糖がある。希少糖は天然の甘味料であり、低カロリー且つ味質も良好である。さらに様々な生理活性機能が期待されるため、砂糖の代替甘味料として注目されている。一方で、希少糖は自然界における存在量が少ない単糖であるため、希少糖を安定して供給する技術の開発が求められている。
【0004】
そのような中、ズイナ属植物が天然にアリトールやプシコース(アルロースとも称する)などの希少糖を産生することが判明し(非特許文献1および2)、現在ズイナ属植物の利用が注目されている。例えば、特許文献1では、ズイナの植物体の乾燥粉末を製造して、希少糖の生理活性を利用した薬剤あるいは健康食品の素材を提供している。また、特許文献2では、ズイナの植物体自体をせんべいの表面に押し花のようにくっつけたズイナせんべいを健康食品として提供している。
【0005】
また、ワインなどの植物抽出液から所望の成分以外の成分を除去する方法として、非特許文献3や非特許文献4に記載の方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-154463号公報
【特許文献2】特開2017-12131号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】International Journal of Food Properties, 18: 2549-2560, 2015
【非特許文献2】徳田 雅明著、「香川大学発の新機能糖質「希少糖」」、砂糖類・でん粉情報2018.2
【非特許文献3】樋口誠一ら著、「県産食品素材を用いた機能性食品の開発」、埼玉県産業技術総合センター研究報告 第7巻(2009)
【非特許文献4】横塚弘毅著、「タンパク質系澱下げ剤によるワイン清澄化の科学的並びに理論的考察」、J. ASEV Jpn., Vol. 16, No.1 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような状況の下、ズイナ属植物の抽出物の望ましくない味質の少なくとも一部を低減または除去しつつ、希少糖を含む組成物を得る方法の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはズイナ属植物の抽出物にタンパク質系澱下げ剤を添加することで、ズイナ属植物の望ましくない味質の少なくとも一部を低減または除去しつつ、希少糖を含む組成物を得ることに初めて成功した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0010】
したがって、本発明には以下の態様が含まれる。
[1]
アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、
ズイナ属植物の抽出液を用意すること、
前記抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および
前記沈澱物を除去することを含む、方法。
[2]
前記タンパク質系澱下げ剤がゼラチンを含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記ゼラチンの重量平均分子量が1,500~150,000である、[2]に記載の方法。
[4]
前記タンパク質系澱下げ剤中のプロリン比率が、前記タンパク質系澱下げ剤100g当たり0.5~50gである、[2]または[3]に記載の方法。
[5]
前記タンパク質系澱下げ剤の添加量が、前記抽出液の総量に対して前記タンパク質系澱下げ剤の固形分換算で1~10重量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記抽出液を前記ズイナ属植物の凍結粉砕物を用いて調製することをさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
前記凍結粉砕物を30℃~80℃の水で抽出する、[6]に記載の方法。
[8]
前記抽出液の抽出時間が1分~24時間である、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
前記ズイナ属植物が、Itea chinensis、Itea ilicifolia Oliv.、Itea japonica Oliv.、Itea oldhamii、Itea parviflora、Itea oblonga Hand.-Mazz.、Itea yunnanensis Franch.およびItea virginicaからなる群から選択される1種以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
沈澱物を除去した後の前記抽出液から溶媒を除去することをさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[10-1]
多孔質吸着剤による処理をさらに含む、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[10-2]
前記多孔質吸着剤が、活性炭、ゼオライト、シリカおよび高分子吸着剤からなる群から選択される1種以上の多孔質吸着剤である、[10-1]に記載の方法。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の方法で得られる、組成物。
[11-1]
[1]~[10-2]のいずれかに記載の方法で得られる、組成物。
[12]
アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖と1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上であり、
プシコースが含まれる場合、プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である、組成物。
[13]
アリトールおよびプシコースを含む、[12]に記載の組成物。
[14]
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%である、[11]または[12]に記載の組成物。
[14-1]
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%である、[12]または[13]に記載の組成物。
[15]
原料となるズイナ属植物の抽出液と比べて総ポリフェノール量が低減され、かつアリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖が実質的に低減していない、ズイナ属植物の抽出組成物。
[16]
原料となるズイナ属植物の抽出液を基準として、前記総ポリフェノール量の低減割合が75%~100%であり、前記希少糖含有量の低減割合が0~40%である、[15]に記載の抽出組成物。
[17]
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上であり、
プシコースが含まれる場合、プシコースの含有量が前記抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である、[15]または[16]に記載の抽出組成物。[18]
[11]に記載の組成物、[12]~[14]のいずれかに記載のズイナ属植物由来の組成物または[15]~[17」のいずれかに記載の抽出組成物を含む、飲料。
[18-1]
[11-1]に記載の組成物、[12]~[14]のいずれかに記載のズイナ属植物由来の組成物または[15]~[17」のいずれかに記載の抽出組成物を含む、飲料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ズイナ属植物の抽出物の望ましくない味質の少なくとも一部を低減または除去しつつ、希少糖を含む組成物を得る方法が提供される。本発明の好ましい一態様において、ズイナ属植物の抽出物の収斂味および苦味の少なくとも一方が低減または除去された、希少糖を含む組成物を製造することができる。本発明のさらに好ましい一態様において、ズイナ抽出物の収斂味および苦味の少なくとも一方が低減または除去され、かつ、ズイナ抽出物に含まれるアリトールまたはプシコース(アルロースとも称する)の量を実質的に低減することなく、希少糖を含む組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-1】実施例1における、高速液体クロマトグラフィーの分析結果を示す図である。図1Aは例A2およびA3に対する対照サンプルに関する結果であり、図1Bは例A2に関する結果であり、図1Cは例A3に関する結果である。
図1-2】実施例1における、高速液体クロマトグラフィーの分析結果を示す図である。図1Dは例A5およびA6に対する対照サンプルに関する結果であり、図1Eは例A5に関する結果であり、図1Fは例A6に関する結果である。
図2】実施例4における澱下げ剤1による澱下げ結果を示すグラフである。グラフ中のTPは総ポリフェノール量を示す。
図3】実施例4における吸着剤処理結果を示すグラフである。グラフ中のTPは総ポリフェノール量を示す。
図4】実施例4における各吸着剤による4糖の回収率の比較を示すグラフである。ここでの4糖はD-グルコース、D-フルクトース、アリトールおよびD-プシコース(D-アルロース)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0014】
1.希少糖を含む組成物の製造方法
本発明の1つの側面によれば、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、ズイナ属植物の抽出液を用意すること、抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および沈澱物を除去することを含む、方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)が提供される。
【0015】
(希少糖)
希少糖とは、自然界に存在する量が非常に少ない天然の糖であり、約50種類の単糖や糖アルコールが含まれる。本発明の製造方法で得られる組成物には、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖が含まれている。本発明の一態様による製造方法で得られる組成物には、アリトールのみが含まれていてもよく、プシコースのみが含まれていてもよく、あるいはアリトールとプシコースの両方が含まれていてもよい。
【0016】
アリトールとは、希少糖の一種であり、以下の構造を有する糖アルコールである。
【化1】
アリトールは天然にはほとんど存在せず、これまで主にアロースやプシコース等から酵素反応によって製造されてきた。また、ズイナ属植物にアリトールが含まれることが知られている。アリトールは甘味を有することが知られている(非特許文献1)。
【0017】
プシコース(「アルロース」とも称される)とは、上記の希少糖の一種であり、ケトースに属する六炭糖であり、フルクトース(果糖)のC-3位の異性体である。D-プシコースとL-プシコースが存在するが、D-プシコースが好ましい。本明細書において、単に「プシコース」と記載している場合は、「L-プシコース、D-プシコースまたはL-プシコースとD-プシコースの混合物」を意味する。D-プシコースは以下の構造または対応する環状構造を有し、甘味度は砂糖の7割程度である。環状構造には、5員環と6員環のα型とβ型が含まれる。
【化2】
D-プシコースも天然にはほとんど存在しないため現在は主にフルクトースから酵素反応によって得られているが、後述のズイナの葉に数%程度含まれることが知られている(非特許文献2)。
【0018】
(ズイナ属植物)
本発明の製造方法において、ズイナ属植物の抽出液を用意することが含まれる。ズイナ属植物とは、学名Iteaに属する植物であれば特に限定されない。本発明の一態様において、ズイナ属植物は、シマズイナ(Itea chinensis)、支那ズイナ(Itea ilicifolia Oliv.)、ズイナ(Itea japonica Oliv.)、ヒイラギズイナ(Itea oldhamii)、ヒメズイナ(Itea parviflora)、Itea oblonga Hand.-Mazz.、Itea yunnanensis Franch.およびコバノズイナ(Itea virginica)からなる群から選択される1種以上である。本発明の好ましい態様において、ズイナ属の植物はコバノズイナ(Itea virginica)またはズイナ(Itea japonica Oliv.)である。また、ズイナはリョウブとも称される。ズイナは日本国内では主に近畿地方南部、四国および九州の山地に自生し、若葉が食用にもなることからヨメナノキ(嫁菜木)とも称される。ズイナ属植物は自生した天然のものを用いてもよく、種子や苗木を購入して生育させたものを用いてもよい。あるいは、ズイナ属植物は特開2015-97521号公報に記載の方法で製造してもよい。
【0019】
ズイナ属植物の抽出液は、ズイナ属植物の新鮮葉または乾燥葉から水やアルコール、あるいはそれらの混合溶液等の溶媒を用いて行うことができる。好ましい抽出溶媒としては、イオン交換水、純水(例えば、ミリQ水)およびエタノール水溶液などが挙げられる。抽出条件等は、公知の一般的な方法や後述の実施例に記載の方法を参照することができる。
【0020】
ズイナ属植物の抽出液を用意する際、ズイナ属植物の新鮮葉または乾燥葉は、そのまま抽出に用いることができるが、粉砕や凍結粉砕を行ったうえで抽出してもよい。破砕する場合はボールミルなどを用いて破砕してもよい。本発明の好ましい態様において、抽出液を前記ズイナ属植物の凍結粉砕物を用いて調製することがさらに含まれる。ズイナ属植物の凍結粉砕物の調製は種々の公知の方法を用いることができるが、例えば、真空凍結乾燥機(FREEZONE 12Plus、LABCONCO社製)あるいは真空凍結乾燥機(FREEZE DRY SYSTEM/FREEZONE2.5、LABCONCO社製)などの真空凍結乾燥機を用いて真空凍結乾燥させた後に、ミニスピードミル(ラボネクスト株式会社製)などで破砕することで得ることができる。
【0021】
ズイナ属植物の抽出液を用意する際の抽出条件は、抽出液中の固形分量および抽出率を調べながら適宜調整することができる。抽出率は、原料のズイナ葉粉末の重量に対する抽出液中の固形分量の比率(%)である。抽出液中の固形分量はBrix計(例えば、ATAGO製Brix計RX-5000αなど)を用いて抽出液の可用性固形分量(BRIX)を測定することで得ることができる。本発明の一態様において、抽出率は、5~100%、10~90%、15~85%、20~80%、25~75%、30~70%、35~65%または40~60%であってもよい。本発明の一態様において、抽出時間は1分~24時間、5分~18時間、10分~12時間、15分~10時間、20分~8時間、25分~5時間または30分~2時間であってもよい。本発明の一態様において、ズイナ属植物の新鮮葉もしくは乾燥葉またはその凍結粉砕物を10℃~100℃、15℃~95℃、20℃~90℃、25℃~85℃、30℃~80℃、35℃~75℃または40℃~70℃の水で抽出してもよい。
【0022】
抽出は1回だけでなく複数回行ってもよいが、効率の観点から、抽出は1回または2回程度が好ましい。
【0023】
(タンパク質系澱下げ剤)
本発明の製造方法において、抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ることが含まれる。タンパク質系澱下げ剤としては、ズイナ抽出物の望ましくない味質の少なくとも一部を低減または除去することができるものであれば特に限定されず、種々の動物由来のタンパク質系澱下げ剤および植物由来のタンパク質系澱下げ剤を用いることができる。動物由来のタンパク質系澱下げ剤としては、ゼラチン、コラーゲントリペプチド、アイシングラス、卵白、乳タンパク由来の澱下げ剤(カゼイン、ホエイプロテイン、ホエイペプチドなど)などが挙げられるが、ゼラチンまたはコラーゲントリペプチドが好ましい。植物由来のタンパク質系澱下げ剤としては、大豆タンパク由来の澱下げ剤、えんどう豆タンパク由来の澱下げ剤およびジャガイモタンパク由来の澱下げ剤などが挙げられるが、えんどう豆タンパク由来の澱下げ剤が好ましい。
【0024】
本発明の好ましい態様において、タンパク質系澱下げ剤がゼラチンを含む。ゼラチンとは、動物の骨や皮膚および腱等に多く含まれるコラーゲンから得られるタンパク質であり、コラーゲンのらせん構造を加熱などによって解いたものである。ゼラチンの由来は特に限定されないが、豚由来(例えば、豚皮、豚骨)、魚由来(例えば、魚鱗、魚皮)、牛由来(例えば、牛骨、牛皮)などが挙げられ、豚由来、特に豚皮由来のゼラチンが好ましい。また、ゼラチンの製法も特に限定されず、酸処理ゼラチン、化学修飾ゼラチン、両性処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンなどがあってもよい。例えば、豚、魚、牛などからコラーゲンを加熱抽出し、酸又はアルカリで前処理した後、加水分解による可溶化を経て、ゼラチンを製造することができる。
【0025】
本発明の好ましい態様に用いるゼラチンの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、1,000~200,000、1,500~200,000、3,000~200,000、5,000~200,000、8,000~200,000、10,000~200,000、15,000~200,000、20,000~200,000、30,000~200,000、35,000~200,000、40,000~200,000、45,000~200,000、50,000~200,000、1,500~150,000、3,000~150,000、5,000~150,000、8,000~150,000、10,000~150,000、15,000~150,000、20,000~150,000、30,000~150,000、35,000~150,000、40,000~150,000、45,000~150,000、50,000~150,000、1,500~100,000、3,000~100,000、5,000~100,000、8,000~100,000、10,000~100,000、15,000~100,000、20,000~100,000、30,000~100,000、35,000~100,000、40,000~100,000、45,000~100,000、50,000~100,000、1,500~80,000、3,000~80,000、5,000~80,000、8,000~80,000、10,000~80,000、15,000~80,000、20,000~80,000、30,000~80,000、35,000~80,000、40,000~80,000、45,000~80,000または50,000~80,000であってもよく、好ましくは1,500~150,000、より好ましくは20,000~150,000、さらに好ましくは30,000~100,000である。ゼラチンの重量平均分子量が好ましい範囲内であることで、ズイナ抽出液中のポリフェノールを効果的に除去しつつ、アリトールやプシコースなどの希少糖の減少量を抑えることができる。ゼラチンの重量平均分子量は、パギイ法(写真用ゼラチン試験法、第10版(2006年版)の「20-1.分子量分布」および「20-2.平均分子量」に記載の方法)やGPC分析(ゲル浸透クロマトグラフィー分析)で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0026】
本発明の好ましい態様に用いるゼラチンの数平均分子量は特に限定されないが、例えば、1,000~100,000、1,500~100,000、3,000~100,000、5,000~100,000、8,000~100,000、10,000~100,000、15,000~100,000、20,000~100,000、25,000~100,000、1,500~80,000、3,000~80,000、5,000~80,000、8,000~80,000、10,000~80,000、15,000~80,000、20,000~80,000、25,000~80,000、1,500~50,000、3,000~50,000、5,000~50,000、8,000~50,000、10,000~50,000、15,000~50,000、20,000~50,000または25,000~50,000であってもよく、好ましくは1,500~100,000、より好ましくは5,000~80,000、さらに好ましくは8,000~50,000である。ゼラチンの数平均分子量は、パギイ法(写真用ゼラチン試験法、第10版(2006年版)の「20-1.分子量分布」および「20-2.平均分子量」に記載の方法)やGPC分析(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0027】
本発明の好ましい態様に用いるタンパク質系澱下げ剤中のプロリン比率は、特に限定されないが、例えば、タンパク質系澱下げ剤100g当たり、0.1~60g、0.1~50g、0.1~40g、0.1~30g、0.1~20g、0.1~10g、0.1~9.0g、0.1~8.0g、0.1~7.0g、0.1~6.0g、0.1~5.0g、0.1~4.0g、0.1~3.0g、0.1~2.0g、0.1~1.5g、0.5~60g、0.5~50g、0.5~40g、0.5~30g、0.5~20g、0.5~10g、0.5~9.0g、0.5~8.0g、0.5~7.0g、0.5~6.0g、0.5~5.0g、0.5~4.0g、0.5~3.0g、0.5~2.0g、0.5~1.5g、1.0~60g、1.0~50g、1.0~40g、1.0~30g、1.0~20g、1.0~10g、1.0~9.0g、1.0~8.0g、1.0~7.0g、1.0~6.0g、1.0~5.0g、1.0~4.0g、1.0~3.0g、1.0~2.0gまたは1.0~1.5gであってもよく、好ましくはタンパク質系澱下げ剤100g当たり0.5~50g、より好ましくはタンパク質系澱下げ剤100g当たり0.5~10g、さらに好ましくはタンパク質系澱下げ剤100g当たり1.0~5.0gである。従来は比較的プロリン比率の高いタンパク質系澱下げ剤がポリフェノールとの沈澱形成率が高いと考えられていたが、ズイナ抽出物に含まれるポリフェノールの除去にプロリン比率の低いタンパク質系澱下げ剤が効果的に用いることができることは予想外であった。タンパク質系澱下げ剤中のプロリン比率は、タンパク質系澱下げ剤を加水分解した後にアミノ酸自動分析法で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
タンパク質系澱下げ剤には、タンパク質以外の成分が含まれていてもよく、例えば、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)や粉末セルロースなどのろ過助剤や、ベントナイトなどの吸着剤がさらに含まれていてもよい。
【0029】
本発明における、抽出液に対するタンパク質系澱下げ剤の添加量は、澱下げ効率を高める観点から適宜調整することができるが、好ましくは、タンパク質系澱下げ剤の添加量は、抽出液の総量に対して0.1~80重量%、0.5~70重量%、0.8~60重量%、1.0~55重量%、1.5~50重量%、2.0~45重量%、3.0~40重量%、5.0~35重量%または6.0~30重量%であってもよく、好ましくは2.0~45重量%、より好ましくは5.0~35重量%である。ここで、タンパク質系澱下げ剤の添加量が抽出液の総量に対して0.1重量%とは、例えば、100gの抽出液に対して、0.1gのタンパク質系澱下げ剤を添加することを意味する。本発明の他の態様において、タンパク質系澱下げ剤の添加量は抽出液の総量に対して、タンパク質系澱下げ剤の固形分換算で0.1~10重量%、0.1~8.0重量%、0.1~6.0重量%、0.1~5.0重量%、0.1~4.0重量%、0.2~10重量%、0.2~8.0重量%、0.2~6.0重量%、0.2~5.0重量%、0.2~4.0重量%、0.5~10重量%、0.5~8.0重量%、0.5~6.0重量%、0.5~5.0重量%または0.5~4.0重量%であってもよく、好ましくは0.2~6.0重量%、より好ましくは0.2~5.0重量%、さらに好ましくは0.5~5.0重量%である。ここで、タンパク質系澱下げ剤の添加量が、抽出液の総量に対してタンパク質系澱下げ剤の固形分換算で0.1重量%とは、例えば、100gの抽出液に対して、固形分量(Brix)が10%のタンパク質系澱下げ剤を1g添加することを意味する。
【0030】
本発明において、抽出液に対してタンパク質系澱下げ剤を添加して撹拌する際の温度は特に限定されないが、例えば、1℃~40℃、2℃~40℃、4℃~40℃、5℃~40℃、8℃~40℃、10℃~40℃、15℃~40℃、1℃~35℃、2℃~35℃、4℃~35℃、5℃~35℃、8℃~35℃、10℃~35℃、15℃~35℃、1℃~30℃、2℃~30℃、4℃~30℃、5℃~30℃、8℃~30℃、10℃~30℃、15℃~30℃、1℃~25℃、2℃~25℃、4℃~25℃、5℃~25℃、8℃~25℃、10℃~25℃、15℃~25℃、1℃~20℃、2℃~20℃、4℃~20℃、5℃~20℃、8℃~20℃、10℃~20℃または15℃~20℃であってもよい。
【0031】
本発明において、抽出液に対してタンパク質系澱下げ剤を添加して撹拌する際の時間は特に限定されないが、例えば、0.5~30時間、0.5~25時間、0.5~20時間、0.5~15時間、0.5~10時間、0.5~5時間、1~30時間、1~25時間、1~20時間、1~15時間、1~10時間、1~5時間、2~25時間、2~20時間、2~15時間、2~10時間または2~5時間であってもよい。
【0032】
(沈澱物の除去)
本発明の製造方法において、沈澱物を除去することが含まれる。沈澱物の除去には、種々の公知の固液分離処理を用いることができる。そのような固液分離処理としては、固体と液体が十分に分離されれば特に限定されないが、例えば、遠心分離器やフィルタープレスを用いた処理や、フィルターやメッシュを用いた重力ろ過が挙げられる。固液分離処理は、複数の手段を用いてもよい。
【0033】
(多孔質吸着剤による処理)
本発明の好ましい態様による製造方法は、多孔質吸着剤による処理をさらに含む。多孔質吸着剤による処理を含むことで、さらにポリフェノールの除去率を向上させることができる。本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔質吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカおよび高分子吸着剤からなる群から選択される1種以上の多孔質吸着剤を用いることができる。本発明の一態様において、多孔質吸着剤は活性炭または高分子吸着剤である。活性炭としては、おが屑活性炭または木粉活性炭、ヤシ殻活性炭、石炭ピッチ活性炭もしくは石油ピッチ活性炭または樹脂系の活性炭などを用いることができる。活性炭は、原料(木粉や樹脂など)を薬品賦活または水蒸気賦活に供して得たものを用いることができる。高分子吸着剤としては、ポリビニルピロリドン系合成吸着剤や、スチレン-ジビニルベンゼン系合成吸着剤やメタクリル酸エステル系合成吸着剤等を用いることができる。
【0034】
本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔性吸着剤は、好ましくは疎水性の多孔性吸着剤である。
本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔性吸着剤は、平均細孔直径が0.5~10nm、1~8nm、1.5~7nmであってもよく、好ましくは2~6nmである。平均細孔直径は例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔性吸着剤は、最頻細孔径(DFT-Mode径)が0.2~2nm、0.3~1.8nm、0.4~1.6nmであってもよく、好ましくは0.6~1.4nmである。最頻細孔径(DFT-Mode径)は例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔性吸着剤は、比表面積が500~3,000m/g、800~2,000m/gであってもよく、好ましくは900~1,900m/gである。比表面積はBET多点法によって測定したものである。比表面積は例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔性吸着剤は、全細孔容積が0.2~3cc/g、0.3~2.5cc/g、または0.4~2.3cc/gであってもよく、好ましくは0.5~2cc/gである。全細孔容積は例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の好ましい態様による製造方法に用いる多孔性吸着剤は、上記の疎水性、平均細孔直径、最頻細孔径、比表面積および全細孔容積のいずれの特性および数値の組み合わせを有するものであってもよい。
このような多孔性吸着剤の例としては、木粉活性炭(日本エンバイロケミカルズ株式会社製のFP6)、ヤシ殻活性炭(日本エンバイロケミカルズ株式会社製のFP3およびFP9ならびにクラレケミカル株式会社製のGLC、GWおよびGWH)ならびに合成吸着剤(三菱ケミカル株式会社製のSP850)などが挙げられる。
【0035】
多孔質吸着剤の添加量としては特に限定されないが、例えば、澱下げ処理済みの抽出液に対して1~20重量%、5~15重量%または7~13重量%の量で添加してもよい。澱下げ処理済みの抽出液に対して多孔質吸着剤を添加して撹拌する際の時間は特に限定されないが、例えば、0.5~30時間、0.5~25時間、0.5~20時間、0.5~15時間、0.5~10時間、0.5~5時間、1~30時間、1~25時間、1~20時間、1~15時間、1~10時間、1~5時間、2~25時間、2~20時間、2~15時間、2~10時間または2~5時間であってもよい。多孔質吸着剤は、処理後にろ過などの公知の方法で除去することができる。
【0036】
(その他の任意の工程)
その他の任意の工程として、ろ過などのさらなる精製工程を含んでいてもよい。
【0037】
あるいは、本発明の製造方法は、その他の任意の工程として、沈澱物を除去した後の抽出液から溶媒を除去することをさらに含んでいてもよい。溶媒の除去は種々の公知の方法で行うことができ、例えば、加熱、減圧、凍結乾燥法などによって溶媒を除去することができる。本発明の製造方法で得られた組成物から溶媒を除去することで、固形または粉末状の甘味料組成物として、後述の飲料に広く用いることができる。
【0038】
2.本発明の製造方法で得られる組成物
本発明の1つの側面によれば、本発明の製造方法で得られる組成物が提供される。本発明の製造方法で得られる組成物は、ズイナ属植物の抽出物の望ましくない味質の少なくとも一部を低減または除去しつつ、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖が含まれているため、そのまま飲料に添加することができる。あるいは、本発明の一態様による製造方法で得られた組成物は、溶媒が除去されているため、固形または粉末状の甘味料組成物として、テーブルシュガーのように飲料に添加することもできる。
【0039】
本発明の一側面の組成物において、「希少糖」、「ズイナ属植物」および「タンパク質系澱下げ剤」は、上記「1.希少糖を含む組成物の製造方法」の項目で述べた定義と同様である。
【0040】
3.ズイナ属植物由来の組成物
本発明の1つの側面によれば、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖と1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上であり、
プシコースが含まれる場合、プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である、組成物(以下、「本発明のズイナ属植物由来の組成物」ともいう)が提供される。
【0041】
本発明の一態様によるズイナ属植物由来の組成物は、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を多く含み、かつ、総ポリフェノール量が少ないため、ズイナ属植物の抽出物由来の収斂味および苦味の少なくとも一方が低減または除去されており、後述の種々の飲料へ好適に使用することができる。本発明の他の一態様によるズイナ属植物由来の組成物は、アリトールおよびプシコースを含む。
【0042】
本発明の一態様によるズイナ属植物由来の組成物に含まれるアリトールの量は、組成物の固形分量に対して20~80重量%であり、好ましくは、20~70重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、25~80重量%、25~70重量%、25~60重量%、25~50重量%、25~40重量%、30~80重量%、30~70重量%、30~60重量%、30~50重量%、30~40重量%、35~80重量%、35~70重量%、35~60重量%、35~50重量%、35~40重量%、40~80重量%、40~70重量%、40~60重量%、40~50重量%、45~80重量%、45~70重量%、45~60重量%、45~50重量%、50~80重量%、50~70重量%、50~60重量%、55~80重量%、55~70重量%または55~60重量%であってもよい。組成物の固形分量は、組成物が液体組成物である場合は、Brix計(例えば、ATAGO製Brix計RX-5000αなど)を用いて求めることができ、HPLC等で測定したアリトールの量を用いて、組成物の固形分量に対するアリトールの量を算出することができる。
【0043】
本発明の一態様によるズイナ属植物由来の組成物に含まれるプシコースの量は、組成物の固形分量に対して10~60重量%であり、好ましくは、10~50重量%、10~40重量%、10~30重量%、10~20重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、15~30重量%、15~20重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、20~30重量%、25~60重量%、25~50重量%、25~40重量%、25~30重量%、30~60重量%、30~50重量%、30~40重量%、35~60重量%、35~50重量%、40~60重量%または40~50重量%であってもよい。組成物の固形分量は、組成物が液体組成物である場合は、Brix計(例えば、ATAGO製Brix計RX-5000αなど)を用いて求めることができ、HPLC等で測定したプシコースの量を用いて、組成物の固形分量に対するプシコースの量を算出することができる。
【0044】
本明細書における総ポリフェノールには、ズイナ属植物に由来する様々なポリフェノールが含まれる。ポリフェノールは芳香環に結合した二つ以上の水酸基(フェノール性水酸基)を有する化合物の総称であり、一般的に苦味や渋味等の味質や色に影響をもたらすものが多い。したがって、味質の観点からはポリフェノール含有量が少ない方が好ましい。一般的なポリフェノールとしては、例えば、アントシアニン、イソフラボン、カテキン、タンニン、プロアントシアニン、ルチン、クロロゲン酸等が挙げられる。ズイナ属植物の抽出液に含まれるポリフェノールの種類は不明であるが、公知の方法、例えばフォーリン-チオカルト法(Folin Ciocalteu法)やフォーリン-デニス法(Folin Denis法)を用いて、含まれるポリフェノールの種類にかかわらず、その総量(すなわち総ポリフェノール量)を測定することができる。例えば、本発明のズイナ属植物由来の組成物に含まれる総ポリフェノール量は、緑茶と紅茶の総ポリフェノールを定量する方法として ISO(国際標準化機構)に採用されているフォーリン-チオカルト(フェノール)試薬を用いた方法(ISO 14502-1:2005)に準拠し、没食子酸を検量線用の標準物質として分析することができる。
【0045】
本発明の一態様におけるズイナ属植物由来の組成物に含まれる総ポリフェノール量としては、組成物の固形分量に対して、0.1~25重量%である。好ましくは、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、0.1~9重量%、0.1~8重量%、0.1~7重量%、0.1~6重量%、0.1~5重量%、0.5~25重量%、0.5~20重量%、0.5~15重量%、0.5~10重量%、0.5~9重量%、0.5~8重量%、0.5~7重量%、0.5~6重量%、0.5~5重量%、1~25重量%、1~20重量%、1~15重量%、1~10重量%、1~9重量%、1~8重量%、1~7重量%、1~6重量%、1~5重量%、2~25重量%、2~20重量%、2~15重量%、2~10重量%、2~9重量%、2~8重量%、2~7重量%、2~6重量%、2~5重量%、3~25重量%、3~20重量%、3~35重量%、3~30重量%、3~9重量%、3~8重量%、3~7重量%、3~6重量%、3~5重量%、4~25重量%、4~20重量%、4~15重量%、4~10重量%、4~9重量%、4~8重量%、4~7重量%または4~6重量%であってもよい。組成物の固形分量は、組成物が液体組成物である場合は、Brix計(例えば、ATAGO製Brix計RX-5000αなど)を用いて求めることができ、フォーリンチオカルト等で測定した総ポリフェノールの量を用いて、組成物の固形分量に対する総ポリフェノールの量を算出することができる。
【0046】
本発明の一態様におけるズイナ属植物由来の組成物に含まれるアリトールの含有量が組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上である。好ましくは、3.0倍以上、4.0倍以上、5.0倍以上、6.0倍以上、7.0倍以上、8.0倍以上、9.0倍以上、10倍以上、例えば、3.0~20倍、4.0~20倍、5.0~20倍、6.0~20倍、7.0~20倍、8.0~20倍、9.0~20倍、10~20倍、3.0~15倍、4.0~15倍、5.0~15倍、6.0~15倍、7.0~15倍、8.0~15倍、9.0~15倍または10~15倍であってもよい。
【0047】
本発明の一態様におけるズイナ属植物由来の組成物に含まれるプシコースの含有量が組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である。好ましくは、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、3.5倍以上、4.0倍以上、4.5倍以上、5.0倍以上、5.5倍以上、6.0倍以上、6.5倍以上、7.0倍以上、例えば、1.3~15倍、1.5~15倍、2.0~15倍、3.0~15倍、4.0~15倍、5.0~15倍、6.0~15倍、7.0~15倍、2.0~10倍、3.0~10倍、4.0~10倍、5.0~10倍、6.0~10倍または7.0~10倍であってもよい。
【0048】
本発明の一態様におけるズイナ属植物由来の組成物は、さらに、ズイナ植物由来のグルコースまたはフルクトースを含んでいてもよい。本発明の好ましい態様において、ズイナ属植物由来の組成物に含まれるグルコースの量は、組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で0.4~2.5倍、0.5~2.0倍または0.7~1.8倍であってもよい。本発明の好ましい態様において、ズイナ属植物由来の組成物に含まれるフルクトースの量は、組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で0.1~1.0倍、0.2~0.9倍または0.3~0.7倍であってもよい。
【0049】
本発明の一態様におけるズイナ属植物由来の組成物は、例えば本発明の製造方法によって製造することができる。
【0050】
本発明の一側面のズイナ属植物由来の組成物において、「希少糖」、「ズイナ属植物」および「タンパク質系澱下げ剤」は、上記「1.希少糖を含む組成物の製造方法」の項目で述べた定義と同様である。
【0051】
4.ズイナ属植物の抽出組成物
本発明の1つの側面によれば、原料となるズイナ属植物の抽出液と比べて総ポリフェノール量が低減され、かつアリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖が実質的に低減していない、ズイナ属植物の抽出組成物(以下、「本発明の抽出組成物」ともいう)が提供される。本明細書において、抽出組成物は、液体状、半固体状または固体状であってもよい。
【0052】
ここで、「原料となるズイナ属植物の抽出液と比べて総ポリフェノール量が低減され」とは、ズイナ属植物の抽出液を原料として本発明の抽出組成物を調製する際に、当該抽出液と比べて本発明の抽出組成物が含有する総ポリフェノール量が少ないことを意味する。本明細書において「原料となるズイナ属植物の抽出液と比べて総ポリフェノール量が低減され」たといえるためには、上記項目「1.希少糖を含む組成物の製造方法」に述べるような人為的な操作を伴う必要がある。
【0053】
本発明の一態様において、原料の抽出液と比べて本発明の抽出組成物中の総ポリフェノール量が低減しており、原料となるズイナ属植物の抽出液を基準として、総ポリフェノール量の低減割合は、60%~100%、65%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、60%~95%、65%~95%、70%~95%、75%~95%、80%~95%、85%~95%または90%~95%であってもよい。総ポリフェノール量は、緑茶と紅茶の総ポリフェノールを定量する方法として ISO(国際標準化機構)に採用されているフォーリン-チオカルト(フェノール)試薬を用いた方法(ISO 14502-1:2005)に準拠し、没食子酸を検量線用の標準物質として分析することができる。したがって、原料の抽出液の総ポリフェノール量(ppm)と、低減後の抽出組成物の総ポリフェノール量(ppm)を対比することで、総ポリフェノール量の低減後の残存率を得ることができる。
【0054】
原料となる抽出液からポリフェノールを除去する方法の詳細は、「1.希少糖を含む組成物の製造方法」に記載のとおりである。当該方法により得られる本発明の抽出組成物は、総ポリフェノール量が低減されているにも関わらず、原料となる抽出液と比べてアリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖の量が実質的に低減していないことを特徴とする。このため、本発明の抽出組成物は、アリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖の含有量が、原料となる抽出液と実質的に同等であり、これらの希少糖の効率的な利用に寄与することができる。
【0055】
本発明の一態様において、原料となる抽出液における含量を基準として対比した場合、本発明の抽出組成物のアリトールおよびプシコースから選択される少なくとも1種の希少糖含有量の低減割合が、0~40%、0~35%、0~30%、0~25%、0~20%、0~15%、0~10%、0~9.0%、0~8.0%、0~7.0%、0~6.0%、1.0~40%、1.0~35%、1.0~30%、1.0~25%、1.0~20%、1.0~15%、1.0~10%、1.0~9.0%、1.0~8.0%、1.0~7.0%、1.0~6.0%、5.0~40%、5.0~35%、5.0~30%、5.0~25%、5.0~20%、5.0~15%、5.0~10%、5.0~9.0%、5.0~8.0%、5.0~7.0%または5.0~6.0%であってもよい。
【0056】
本発明の一態様における抽出組成物に含まれるアリトールの含有量が抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上である。好ましくは、3.0倍以上、4.0倍以上、5.0倍以上、6.0倍以上、7.0倍以上、8.0倍以上、9.0倍以上、10倍以上、例えば、3.0~20倍、4.0~20倍、5.0~20倍、6.0~20倍、7.0~20倍、8.0~20倍、9.0~20倍、10~20倍、3.0~15倍、4.0~15倍、5.0~15倍、6.0~15倍、7.0~15倍、8.0~15倍、9.0~15倍または10~15倍であってもよい。
【0057】
本発明の一態様における抽出組成物に含まれるプシコースの含有量が抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上である。好ましくは、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、3.5倍以上、4.0倍以上、4.5倍以上、5.0倍以上、5.5倍以上、6.0倍以上、6.5倍以上、7.0倍以上、例えば、1.3~15倍、1.5~15倍、2.0~15倍、3.0~15倍、4.0~15倍、5.0~15倍、6.0~15倍、7.0~15倍、2.0~10倍、3.0~10倍、4.0~10倍、5.0~10倍、6.0~10倍または7.0~10倍であってもよい。
【0058】
本発明の一態様における抽出組成物は、さらに、ズイナ植物由来のグルコースまたはフルクトースを含んでいてもよい。本発明の好ましい態様において、抽出組成物に含まれるグルコースの量は、抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で0.4~2.5倍、0.5~2.0倍または0.7~1.8倍であってもよい。本発明の好ましい態様において、抽出組成物に含まれるフルクトースの量は、抽出組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で0.1~1.0倍、0.2~0.9倍または0.3~0.7倍であってもよい。
【0059】
本発明の一態様におけるズイナ属植物の抽出組成物は、溶媒として水やアルコール、あるいはそれらの混合溶液等の溶媒を含んでいてもよい。好ましくは、溶媒として、水および/またはエタノールを含む。
【0060】
本発明の一態様におけるズイナ属植物の抽出組成物は、そのままであるいは溶媒を除去した後に、後述の種々の飲料に添加することができる。
【0061】
本発明の一態様におけるズイナ属植物の抽出組成物は、例えば本発明の製造方法によって製造することができる。
【0062】
本発明の一側面の抽出液において、「希少糖」、「ズイナ属植物」および「タンパク質系澱下げ剤」は、上記「1.希少糖を含む組成物の製造方法」の項目で述べた定義と同様である。
【0063】
5.本発明の組成物を含む飲料
本発明の1つの側面によれば、本発明の製造方法で得られる組成物もしくは本発明のズイナ属植物由来の組成物(以下、合わせて「本発明の組成物」ともいう)または本発明の抽出組成物を含む飲料が提供される。本明細書において、「飲料」は半固体および液体、ならびにそれらの混合物であって、経口摂食可能なものの総称である。
【0064】
飲料は、アルコール飲料またはノンアルコール飲料のいずれであってもよい。ノンアルコール飲料として、例えば、ノンアルコールビール、麦芽飲料、乳酸菌飲料、ココア、スポーツドリンク、栄養ドリンク、茶系飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料、フレーバーウォーターおよびゼリー状飲料等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0065】
本発明の組成物を含む飲料は、D-プシコースを飲料の総重量に対して、0.1~10重量%、0.5~9.5重量%、0.5~9.0重量%、0.5~8.5重量%、0.5~8.0重量%、0.5~7.5重量%、0.5~6.0重量%、0.5~5.5重量%、0.5~5.0重量%、0.5~4.5重量%、0.5~4.0重量%、0.5~3.5重量%、0.5~3.0重量%、0.5~2.5重量%、0.5~2.0重量%、0.5~1.5重量%、0.5~1.0重量%、1.0~9.0重量%、1.0~8.5重量%、1.0~8.0重量%、1.0~7.5重量%、1.0~6.0重量%、1.0~5.5重量%、1.0~5.0重量%、1.0~4.5重量%、1.0~4.0重量%、1.0~3.5重量%、1.0~3.0重量%、1.0~2.5重量%、1.0~2.0重量%、1.0~1.5重量%、1.5~9.0重量%、1.5~8.5重量%、1.5~8.0重量%、1.5~7.5重量%、1.5~6.0重量%、1.5~5.5重量%、1.5~5.0重量%、1.5~4.5重量%、1.5~4.0重量%、1.5~3.5重量%、1.5~3.0重量%、1.5~2.5重量%、1.5~2.0重量%、2.0~9.0重量%、2.0~8.5重量%、2.0~8.0重量%、2.0~7.5重量%、2.0~6.0重量%、2.0~5.5重量%、2.0~5.0重量%、2.0~4.5重量%、2.0~4.0重量%、2.0~3.5重量%、2.0~3.0重量%または2.0~2.5重量%含んでいてもよい。
【0066】
本発明の組成物を含む飲料は、アリトールを飲料の総重量に対して、0.1~10重量%、0.5~9.5重量%、0.5~9.0重量%、0.5~8.5重量%、0.5~8.0重量%、0.5~7.5重量%、0.5~6.0重量%、0.5~5.5重量%、0.5~5.0重量%、0.5~4.5重量%、0.5~4.0重量%、0.5~3.5重量%、0.5~3.0重量%、0.5~2.5重量%、0.5~2.0重量%、0.5~1.5重量%、0.5~1.0重量%、1.0~9.0重量%、1.0~8.5重量%、1.0~8.0重量%、1.0~7.5重量%、1.0~6.0重量%、1.0~5.5重量%、1.0~5.0重量%、1.0~4.5重量%、1.0~4.0重量%、1.0~3.5重量%、1.0~3.0重量%、1.0~2.5重量%、1.0~2.0重量%、1.0~1.5重量%、1.5~9.0重量%、1.5~8.5重量%、1.5~8.0重量%、1.5~7.5重量%、1.5~6.0重量%、1.5~5.5重量%、1.5~5.0重量%、1.5~4.5重量%、1.5~4.0重量%、1.5~3.5重量%、1.5~3.0重量%、1.5~2.5重量%、1.5~2.0重量%、2.0~9.0重量%、2.0~8.5重量%、2.0~8.0重量%、2.0~7.5重量%、2.0~6.0重量%、2.0~5.5重量%、2.0~5.0重量%、2.0~4.5重量%、2.0~4.0重量%、2.0~3.5重量%、2.0~3.0重量%または2.0~2.5重量%含んでいてもよい。
【0067】
本発明の一側面の飲料において、「希少糖」、「ズイナ属植物」および「タンパク質系澱下げ剤」は、上記「1.希少糖を含む組成物の製造方法」の項目で述べた定義と同様である。
【0068】
本発明の例示的な態様
以下に本発明の例示的な態様を示すが、本発明は下記の態様に制限されるものではない。
本発明の一態様において、
アリトールおよびD-プシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、
ズイナ属植物の抽出液を用意すること、
前記抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および
前記沈澱物を除去することを含む方法が提供される。
【0069】
本発明の一態様において、
アリトールおよびD-プシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、
ズイナ属植物の抽出液を用意すること、
前記抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および
前記沈澱物を除去することを含み、
前記タンパク質系澱下げ剤がゼラチンを含み、
前記ズイナ属植物がItea chinensis、Itea ilicifolia Oliv.、Itea japonica Oliv.、Itea oldhamii、Itea parviflora、Itea oblonga Hand.-Mazz.、Itea yunnanensis Franch.およびItea virginicaからなる群から選択される1種以上であり、好ましくは、Itea japonica Oliv.、Itea oblonga Hand.-Mazz.、Itea yunnanensis Franch.およびItea virginicaからなる群から選択される1種以上である方法が提供される。
【0070】
本発明の一態様において、
アリトールおよびD-プシコースから選択される少なくとも1種の希少糖を含む組成物の製造方法であって、
ズイナ属植物の抽出液を用意すること、
前記抽出液にタンパク質系澱下げ剤を添加して沈澱物を得ること、および
前記沈澱物を除去することを含み、
前記タンパク質系澱下げ剤がゼラチンを含み、
前記前記ゼラチンの重量平均分子量が1,500~150,000、8,000~100,000、20,000~80,000または35,000~80,000であり、
前記タンパク質系澱下げ剤の添加量が、前記抽出液の総量に対して前記タンパク質系澱下げ剤の固形分換算で1~10重量%、0.2~8.0重量%、0.2~6.0重量%または0.2~5.0重量%である方法が提供される。
【0071】
本発明の一態様において、
アリトールおよびD-プシコースから選択される少なくとも1種の希少糖と1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上、3.0~20倍、5.0~20倍または6.0~15倍、であり、
D-プシコースが含まれる場合、D-プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上、1.3~15倍、2.0~10倍または4.0~10倍である、組成物が提供される。
【0072】
本発明の一態様において、
アリトールおよびD-プシコースから選択される少なくとも1種の希少糖と1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールが含まれる場合、アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上、3.0~20倍、5.0~20倍または6.0~15倍、であり、
D-プシコースが含まれる場合、D-プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上、1.3~15倍、2.0~10倍または4.0~10倍であり、
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、1~9重量%または2~8重量%である組成物が提供される。
【0073】
本発明の一態様において、
アリトールと1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上、3.0~20倍、5.0~20倍または6.0~15倍、であり、
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、1~9重量%または2~8重量%である組成物が提供される。
【0074】
本発明の一態様において、
D-プシコースと1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
D-プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上、1.3~15倍、2.0~10倍または4.0~10倍であり、
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、1~9重量%または2~8重量%である組成物が提供される。
【0075】
本発明の一態様において、
アリトールおよびD-プシコースと1種以上のポリフェノールを含むズイナ属植物由来の組成物であって、
アリトールの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で2.0倍以上、3.0~20倍、5.0~20倍または6.0~15倍、であり、
D-プシコースの含有量が前記組成物中の総ポリフェノール量に対して重量比で1.3倍以上、1.3~15倍、2.0~10倍または4.0~10倍であり、
総ポリフェノールの量が、前記組成物の固形分量に対して0.1~25重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、1~9重量%または2~8重量%である組成物が提供される。
【0076】
本明細書において、「少なくとも」との文言は、特定の項目の数が、挙げられた数以上であってよいことを意味する。また、本願内において、「約」との文言は、主体が「約」に続く数値の±25%、±10%、±5%、±3%、±2%または±1%の範囲に存在することを意味する。例えば「約10」は、7.5~12.5の範囲を意味する。
【実施例0077】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0078】
[実施例1]種々の澱下げ剤の効果の比較
種々の澱下げ剤を用いた場合の効果を比較するために、澱下げ剤として次のものを使用して比較を行った(動物由来のゼラチン:株式会社ニッピ製のAP-100(以下、「澱下げ剤1」とも称する)および有限会社マザーバインズ社製のGEOCOLL(登録商標) SUPRA(以下、「澱下げ剤2」とも称する))、植物性タンパク質:有限会社マザーバインズ社製のVEGECOL(ジャガイモ由来)(以下、「澱下げ剤3」とも称する)および有限会社マザーバインズ社製のPOLYMUST V(えんどう豆由来)(以下、「澱下げ剤4」とも称する)、ならびにゼライス株式会社製のコラーゲン・トリペプチド(豚由来のトリペプチド)(以下、「澱下げ剤5」とも称する))。それぞれの特性を表1にまとめる。
【表1】
【0079】
上記の澱下げ剤のうち、澱下げ剤2、3および5はそのまま所定の添加量を使用した。澱下げ剤1に関しては、あらかじめBrixが11~12%になるようにイオン交換水で液体化させたものを使用した。澱下げ剤1は予備試験において、粉末状で使用するよりもこのように液体化させた方が効果が良好であったため、本実施例では液体化したものを使用した。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定した。澱下げ剤4は5倍重量のイオン交換水に混合し、1時間静置したものを用いた。澱下げ剤1と5の重量平均分子量と数平均分子量はパギイ法(写真用ゼラチン試験法、第10版(2006年版)の「20-1.分子量分布」および「20-2.平均分子量」に記載の方法)にしたがって測定した。澱下げ剤2、3および4の重量平均分子量は、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)に代表されるたんぱく質の分子量分布を測定する方法により確認した。
【0080】
各澱下げ剤のプロリン比率はアミノ酸自動分析法によって分析した。まずサンプルに0. 04%の2-メルカプトエタノール含有20%塩酸を添加して脱気および封管をした後に110℃で24時間加水分解した。次いで、定容したものを分取し、3mol/l水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを2.2に調整し、次いでクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)を添加して定容して、試験溶液を調製した。試験溶液を、JLC-500/V2形高速アミノ分析計(日本電子株式会社製)を用いて測定した。測定条件は下記の通りである。
カラム:LCR-6、Φ4mm×120mm(日本電子株式会社製)
移動相:クエン酸ナトリウム緩衝液(H-01~H-04)(日本電子株式会社製)
反応液:日本電子用ニンヒドリン発色溶液キット-II(富士フイルム和光純薬株式会社製)
流量:移動相0.42ml/min、反応液0.22ml/min
測定波長:570nm
【0081】
(1)ズイナ葉のサンプリングおよびズイナ葉粉末の調製
香川大学にて圃場栽培したズイナ属植物(2~3年目のコバノズイナ(Itea virginica))からズイナ葉を採取し、その葉を液体窒素で凍結後、-80℃で保存した。保存したズイナ葉は真空凍結乾燥機(FREEZONE 12Plus、LABCONCO社製)、あるいは、真空凍結乾燥機(FREEZE DRY SYSTEM/FREEZONE2.5、LABCONCO社製)に入れ、適宜撹拌しつつ一週間程度凍結乾燥した。これらの凍結乾燥機は処理するサンプルのスケールに応じて適宜使い分けた。凍結乾燥したズイナ葉を、ミニスピードミル(ラボネクスト株式会社製)で10~20秒の破砕と冷却を繰り返し、50μm~数mmの幅があるが概ね1mm以下の粉末状になるまでこの操作を行った。粉末状にしたズイナ葉粉末はすべてのサンプルを均一になるように混合し、容器に分注した後、デシケーター内で室温暗所下にて保存した。
【0082】
(2)ズイナ葉粉末の抽出
上記の手順で調製したズイナ葉粉末の重量の15倍量のイオン交換水を容器に入れて60℃±5℃に加熱し、加熱したイオン交換水にズイナ葉粉末を投入し、マグネティックスターラーを用いて100rpmで撹拌しながら30分間抽出を行った。このようにして得られた抽出液を冷水にて冷却後、遠心分離機(株式会社コクサン製、H-9R、回転速度:6,000rpm、時間:5分間)で固液分離し、500メッシュのメッシュを通して濾過し、抽出液を得た。
【0083】
抽出に用いた原料および得られた抽出液の物性は表2に記載のとおりである。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定し、固形分量はBrixの値から算出した。抽出率は抽出原料のズイナ葉粉末の重量と得られた抽出液中の固形分量から算出した。
【表2】
【0084】
(3)澱下げ剤の添加混合
抽出液に対し、表3に記載の条件で澱下げ剤を添加した。澱下げ剤1は、2gの澱下げ剤を20gのイオン交換水に加え、50℃で撹拌溶解したものを2g添加した。澱下げ剤4は5倍重量のイオン交換水に混合し、1時間静置(計24g調製)したものから6g添加した。澱下げ剤2、3および5はそのまま表3に記載の量を添加した。
【表3】
【0085】
抽出液に上記表の条件に従って澱下げ剤を添加した後、撹拌機(タイテック株式会社製、ローテーター、RT-50、回転速度:120rpm)にて5℃で15時間撹拌することにより、抽出液と澱下げ剤を十分に混合させた。
【0086】
澱下げ剤との混合による処理が終わった抽出液は、遠心分離機(久保田商事株式会社製、KUBOTA8420、回転速度:3300rpm、時間:10分間)で固液分離し、上澄み液を採取し、処理済抽出液を得た。得られた結果を表4に示す。固形分残差は遠心分離によって除去された固形分の重量であり、精密天秤によって測定した。沈澱除去率は澱下げ剤の固形分換算値と固形分残差の値から算出した。沈澱除去率は固形分残差量と添加した澱下げ剤の固形分換算量から算出したものであり、澱下げ剤1g当たりどれだけの量の固形分が分離できたかを示す。
【表4】
【0087】
(4)官能評価
10mlのイオン交換水に対し、1mlの上澄み液を添加したものを、官能サンプルとして作成し、飲用評価を実施した。
官能評価は訓練された専門パネラー(2名)が実施した。「定性的官能評価」として収斂味・苦味・甘味の3軸の評価基準にてブラインドで行った。
【0088】
官能試験の結果を表5に示す。
【表5】
【0089】
それぞれの澱下げ剤を用いた場合の効果を比較すると、澱下げ剤1(AP-100)を用いた場合の味質が最も良く、澱下げ剤2(GEOCOLL(登録商標) SUPRA)を用いた場合も同等程度の良好な味質が得られた。これに対して、他の3種類の澱下げ剤は澱下げ剤1および2(すなわち、ゼラチン系の澱下げ剤)に対して味質改善効果が小さいものの、収斂味は除去できていた。ゼラチン系の澱下げ剤以外の澱下げ剤を用いた効果は、効果の良好な順番で並べると、澱下げ剤4(POLYMUST V(PVPP+植物性タンパク質(えんどう豆由来))、澱下げ剤3(VEGECOL(植物性タンパク質、(ジャガイモ由来))および澱下げ剤5(コラーゲン・トリペプチド(トリペプチド(豚由来))の順であった。
【0090】
(5)総ポリフェノール量の測定
官能試験の結果が良かったゼラチン系の澱下げ剤を用いたサンプルと対照サンプル(他のサンプルと同様に抽出液を調製し、澱下げ剤を加えなかったもの)について、サンプル中に含まれる総ポリフェノール量を、緑茶と紅茶の総ポリフェノールを定量する方法として ISO(国際標準化機構)に採用されているフォーリン-チオカルト(フェノール)試薬を用いた方法(ISO 14502-1:2005)に準拠し、没食子酸を検量線用の標準物質として分析を実施した。結果を表6に示す。
【表6】
【0091】
以上の結果から、ゼラチン系の澱下げ剤を用いることで、対照サンプルに対して、総ポリフェノールの量を大きく低減することができることが分かった。
【0092】
(6)アリトールおよびD-プシコースが含まれていることの確認
対照および例A2、A3、A5およびA6について、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Hitachi Gelpack GL-C611充填カラム、温度:60℃、溶離液:0.1 mM NaOH 水溶液、流速:1.0ml/分、検出器:RID-20A(株式会社島津製作所製))を用いて、アリトールおよびD-プシコースが含まれていることを確認した。例A2およびA3に対する対照サンプルでは、リテンションタイムが約19.8分の位置にアリトールに対応するピークが観測され、約31.0分の位置にD-アルロース(D-プシコース)のピークが確認された(図1A)。同様の条件で、例A2およびA3について測定したところ、いずれも約19.8分と約31.0分の位置にピークが観測されたため(図1BおよびC)、例A2およびA3においてもアリトールとD-プシコースが含まれていることが分かる。また、例A5およびA6に対する対照サンプルでも、同様にリテンションタイムが約19.8分の位置にアリトールに対応するピークが観測され、約31.0分の位置にD-アルロース(D-プシコース)のピークが確認された(図1D)。同様の条件で、例A5およびA6について測定したところ、いずれも約19.8分と約31.0分の位置にピークが観測されたため(図1EおよびF)、例A5およびA6においてもアリトールとD-プシコースが含まれていることが分かる。
【0093】
[実施例2]ゼラチンの効果
実施例1の工程(1)および(2)と同様の方法で、ズイナ葉粉末から得られた抽出液を得た。抽出時間は30分であり、抽出温度は60℃±5℃であった。抽出に用いた原料および得られた抽出液の物性は表7に記載のとおりである。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定し、固形分量はBrixの値から算出した。抽出率は抽出原料のズイナ葉粉末の重量と得られた抽出液中の固形分量から算出した。
【表7】
【0094】
実施例1と同様に、抽出液に対し、表8に記載の量の澱下げ剤を添加した。なお、澱下げ剤1(AP-100)は、2gの澱下げ剤を20gのイオン交換水に加え、50℃で撹拌溶解したものを使用した。澱下げ剤2(GEOCOLL(登録商標) SUPRA)はそのまま使用した。澱下げ剤の添加後、撹拌機(タイテック株式会社製、ローテーター、RT-50、回転速度:120rpm)にて5℃の冷蔵庫中で15時間撹拌することにより、抽出液と澱下げ剤を十分に混合させた。添加率は抽出液の量と添加量から算出し、添加量の固形分換算値はBrixの値から算出した。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定した。
【表8】
【0095】
実施例1と同様に、澱下げ剤との混合による処理が終わった抽出液は、遠心分離機(久保田商事株式会社製、KUBOTA8420、回転速度:3300rpm、時間:10分間)で固液分離し、上澄み液を採取し、処理済抽出液を得た。得られた結果を表9に示す。固形分残差は遠心分離によって除去された固形分の重量であり、精密天秤によって測定した。沈澱効率は、固形分残差と投入固形分の値から算出した。pHは株式会社堀場製作所製の卓上pHメーターF-74を用いて測定した。
【表9】
【0096】
次いで、得られた処理済み抽出液の外観を比較評価した。対照サンプルは茶褐色をしていたが、例B1のサンプルは透明度が高く、色は茶色であった。固形分の除去量が多く、結果回収できた液量が例B2と比較して1割ほど少なかった。例B2のサンプルは、透明度が高く、色は黄色であった。
【0097】
[官能試験]
実施例1と同様に、官能評価を行った。10mlのイオン交換水に対し、1mlの上澄み液を添加したものを、官能サンプルとして作成し、飲用評価を実施した。官能評価は訓練された専門パネラー(2名)が実施した。「定性的官能評価」として収斂味・苦味・甘味の3軸の評価基準にてブラインドで行った。
【0098】
官能試験の結果を表10に示す。
【表10】
【0099】
[総ポリフェノール量の測定]
実施例1と同様に、ゼラチン系の澱下げ剤を用いたサンプルと対照サンプル(他のサンプルと同様に抽出液を調製し、澱下げ剤を加えなかったもの)について、サンプル中に含まれる総ポリフェノール量を、緑茶と紅茶の総ポリフェノールを定量する方法として ISO(国際標準化機構)に採用されているフォーリン-チオカルト(フェノール)試薬を用いた方法(ISO 14502-1:2005)に準拠し、没食子酸を検量線用の標準物質として分析を実施した。結果を表11に示す。
【表11】
【0100】
[単糖量の測定]
抽出液(希少糖含有液、サンプル)を90℃で10分間熱処理することによって含有タンパク質等を変性させた後に、室温まで冷却してからイオン交換樹脂(200CT及びIRA67の混合樹脂(いずれもオルガノ株式会社社製))で脱塩し、さらにフィルター処理して分析サンプルとした。分析は高速液体クロマトグラフィー(カラム:CARBOSep COREGEL-87C 7.8 x 300 mmカラム(東京化成工業株式会社製)、温度:85℃、溶離液:超純水、流速:0.6ml/分、検出器:RID-10A(株式会社島津製作所製))を用いて各糖のピーク面積を測定することにより行った。それぞれの糖のピーク面積を、既知濃度の各糖サンプル溶液を標準品として分析した際の面積値と比較することにより、各糖の濃度を算出した。結果を表12および13に示す。
【表12】
【表13】
【0101】
[実施例3]澱下げ条件の検討
実施例1の工程(1)および(2)と同様の方法で、ズイナ葉粉末から得られた抽出液を得た。抽出時間は30分であり、抽出温度は60℃±5℃であった。抽出に用いた原料および得られた抽出液の物性は表14に記載のとおりである。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定し、固形分量はBrixの値から算出した。抽出率は抽出原料のズイナ葉粉末の重量と得られた抽出液中の固形分量から算出した。
【表14】
【0102】
澱下げ剤でズイナ抽出液を処理する際に、温度、時間または澱下げ剤の添加率を下表の水準で変更したサンプル(例C1~C18)を用意し、評価を行った。例C1~C18には、澱下げ剤として澱下げ剤2(GEOCOLL(登録商標) SUPRA)(ゼラチン系澱下げ剤、Brix:11.88)を用いた。
【表15】
【0103】
例C1~C18の実施条件を表16にまとめる。
【表16】
【0104】
実験結果を表17にまとめる。沈澱除去率は固形分残差量と添加した澱下げ剤の固形分換算量から算出したものであり、澱下げ剤1g当たりどれだけの量の固形分が分離できたかを示す。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定した。
【表17】
【0105】
[総ポリフェノール量および単糖量の測定]
実施例2と同様の方法で、各サンプル中に含まれる総ポリフェノール量と単糖量を測定した。結果を表18および19に示す。
【表18】
【表19】
【0106】
[官能試験]
10mlのイオン交換水に対し、1mlの上澄み液を添加したものを、官能サンプルとして作成し、飲用評価を実施した。官能評価は訓練された専門パネラー(3名)が実施した。評価はブラインドで行った。「定量的官能評価」として口の中で感じる香味を以下の点数で表現した。
収斂味:コントロールを5として、0.5刻みで数値化した。何も感じない(消えた)場合は、0点とした。
苦味:コントロールを5として、0.5刻みで数値化した。何も感じない(消えた)場合は、0点とした。
甘味:コントロールを1として、0.5刻みで数値化した。何も感じない(消えた)場合は、0点とした。
【0107】
官能試験の結果を表20に示す。
【表20】
【0108】
澱下げ剤の添加量は20%(固形分換算で2.38%)を超えると、収斂味・苦味の除去に大きな差は知覚できなかったため、味質の観点からは澱下げ剤の添加量は20%(固形分換算で2.38%)で十分であった。苦味の低減は処理時間が長ければより好ましいわけではなかった。試験したサンプルの中で、低温・短時間の処理のものにおいて収斂味・苦渋味が特に低減していた。
【0109】
[実施例4]多孔質吸着剤による処理の評価
(1)澱下げ剤処理済み抽出液の調製
実施例1と同様の条件で調製したズイナ葉粉末の重量の15倍量のイオン交換水を容器に入れて60℃±5℃に加熱し、加熱したイオン交換水にズイナ葉粉末を投入し、マグネティックスターラーを用いて100rpmで撹拌しながら30分間抽出を行った。このようにして得られた抽出液を冷水にて冷却後、遠心分離機(株式会社コクサン製、H-9R、回転速度:6,000rpm、時間:5分間)で固液分離し、500メッシュのメッシュを通して濾過し、抽出液を得た。
【0110】
抽出に用いた原料および得られた抽出液の物性は表21に記載のとおりである。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定し、固形分量はBrixの値から算出した。抽出率は抽出原料のズイナ葉粉末の重量と得られた抽出液中の固形分量から算出した。
【表21】
【0111】
得られた1Lの抽出液に対して澱下げ剤1を添加した。澱下げ剤1は、20gの澱下げ剤を200gのイオン交換水に加え、50℃で撹拌溶解したものを204g添加した。澱下げ剤を添加した後、撹拌機(タイテック株式会社製、ローテーター、RT-50、回転速度:120rpm)にて5℃で15時間撹拌することにより、抽出液と澱下げ剤を十分に混合させた。
【0112】
澱下げ剤との混合による処理が終わった抽出液は、遠心分離機(久保田商事株式会社製、KUBOTA8420、回転速度:6000rpm、時間:5分間)で固液分離し、上澄み液を採取し、処理済抽出液を得た。得られた結果を表22に示す。固形分残差は遠心分離によって除去された固形分の重量であり、精密天秤によって測定した。沈澱効率は、固形分残差と投入固形分の値から算出した。pHは株式会社堀場製作所製の卓上pHメーターF-74を用いて測定した。
【表22】
【0113】
(2)多孔質吸着剤による処理
上記(1)で得られた澱下げ剤処理済み抽出液に対して、種々の多孔質吸着剤を用いた効果を比較するために、多孔質吸着剤として次のものを使用して比較を行った(木粉活性炭(日本エンバイロケミカルズ株式会社製のFP6)、ヤシ殻活性炭(クラレケミカル株式会社製のGLCおよびGWH)ならびに合成吸着剤(三菱ケミカル株式会社製のSP850、細孔径:45Å、細孔容積:1.1ml/g))。いずれの活性炭も水蒸気賦活によって得たものである。それぞれの特性を表23にまとめる。吸着剤4としてSP850を用いた。
【表23】
【0114】
各活性炭の比表面積、全細孔容積、平均細孔直径および最頻細孔径はそれぞれ以下の方法で測定した。
測定装置:全自動ガス吸着量測定装置AS-iQ (Anton Paar製)
試料前処理:試料を測定セルに入れ150℃(真空下)で12時間脱気した。
測定原理:定容法
吸着ガス:アルゴンガス
吸着温度:87.4K(液化アルゴン下)
セルサイズ:ペレットセル(小)1.5cm3 (ステム外径6mmΦ)
測定項目:任意測定点の吸着/脱着等温線
解析項目:
BET多点法による比表面積、全細孔容積、平均細孔直径
BJH法による細孔径分布(メソポア領域)
DFT法による細孔径分布(ミクロポア~メソポア領域)
測定回数:1回測定
【0115】
上記(1)で得られた澱下げ剤処理済み抽出液50gに対して、吸着剤1~4をそれぞれ5gずつ添加し、120rpmで一晩撹拌した。その後、ポアサイズが5μmのろ紙でろ過し、吸着剤を除去した。吸着条件および得られた結果を以下に示す。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定した。
【表24】
【0116】
[総ポリフェノール量および単糖量の測定]
実施例2と同様の方法で、各サンプル中に含まれる総ポリフェノール量と単糖量を測定した。結果を表25および26ならびに図2~4に示す。
【表25】
【表26】
【0117】
表25から分かるように、いずれの吸着剤を用いた場合も抽出液に含まれているポリフェノールが98%以上除去されていることがわかる。本実施例で使用した吸着剤のうち、吸着剤1がアリトールとD-プシコースを多く残しており、これらの糖を選択的に維持しているといえる。また、吸着剤4はグルコースおよびフルクトースを含めた4種の糖をバランスよく残していた。
【0118】
(3)種々の多孔質吸着剤による処理
上記(1)と同様の方法で得られた澱下げ剤処理済み抽出液に対して、(2)と同様の条件でさらに複数の多孔質吸着剤を用いて吸着効果を評価した。多孔質材料として、ヤシ殻活性炭(日本エンバイロケミカルズ株式会社製のFP3およびFP9ならびにクラレケミカル株式会社製のGW)を使用した。いずれの活性炭も水蒸気賦活によって得たものである。それぞれの特性を表27にまとめる。各活性炭の物性は上記(2)と同じ条件で測定した。
【表27】
【0119】
上記(1)と同様の方法で得られた澱下げ剤処理済み抽出液50gに対して、吸着剤1~7をそれぞれ5gずつ添加し、120rpmで一晩撹拌した。その後、ポアサイズが5μmのろ紙でろ過し、吸着剤を除去した。吸着条件および得られた結果を以下に示す。BrixはBrix計(ATAGO製Brix計RX-5000α)によって測定した。
【表28】
【0120】
[総ポリフェノール量および単糖量の測定]
実施例2と同様の方法で、各サンプル中に含まれる総ポリフェノール量と単糖量を測定した。結果を表29および30に示す。
【表29】
【表30】
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4