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特開2022-101548ハイブリドソーム、それを含む組成物、それらの製造方法、およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101548
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ハイブリドソーム、それを含む組成物、それらの製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/127 20060101AFI20220629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 33/242 20190101ALI20220629BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20220629BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220629BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20220629BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
A61K9/127
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P31/00
A61K38/02
A61K48/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/00 G
A61K39/00 H
A61K51/12 100
A61K31/713
A61K31/7105
A61K33/26
A61K33/38
A61K33/242
A61K47/69
A61K47/68
A61K47/64
A61K47/61
A61K47/59
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/26
C12N15/88 Z
C12N5/09
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022045805
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2019113819の分割
【原出願日】2015-01-20
(31)【優先権主張番号】61/929,559
(32)【優先日】2014-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516211363
【氏名又は名称】アンヤリウム バイオサイエンシーズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】デ ベーア ジョエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA05
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA60
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC06
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC41
4C076DD49
4C076DD59
4C076EE17
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C076GG41
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA12
4C084AA13
4C084BA44
4C084MA05
4C084MA24
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA25
4C085BA01
4C085BB01
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086HA01
4C086HA11
4C086HA21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生体適合性ハイブリッド担体を製造する方法を提供する。
【解決手段】ハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を製造する方法であって、以下を含む、方法。(a)膜を含む第一の小胞を提供する工程であって、前記小胞はインビトロで生産され、第一の前記小胞は、膜融合性のイオン化可能なカチオン性脂質を含み、第一の前記小胞は生理活性剤をカプセル化している、工程;(b)インビボで生産されて、細胞外環境中に放出される、脂質二重膜を含む自然に分泌される第二の小胞を提供する工程;及び(c)バッファー中で前記第一の小胞を前記第二の小胞と接触させて、それにより前記第一の小胞を前記第二の小胞と統合させて、前記ハイブリドソームを生産する工程であって、前記バッファーのpHが、膜融合性の前記イオン化可能なカチオン性脂質が主に、荷電したカチオン性のフォームである、工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)と少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素を含むハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)。
【請求項2】
前記少なくとも一つのBDMがエキソソーム、エクトソーム、微小胞、およびアポトーシス小体からなる群より選択される、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項3】
前記少なくとも一つのEDEMが、脂質系ナノ粒子(LNP)、リポソーム、ポリマー安定化LNP、セラソーム、スフィンゴソーム、ニオソーム、ポリマーソーム、合成ナノ粒子安定化LNP、コア-シェル型脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子、天然膜由来LNP、迅速に除去される脂質ナノ粒子(reLNP)、および天然膜でコーティングされたLNPからなる群より選択される、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分が、イオン化可能なカチオン性脂質、膜融合性脂質、pH応答性ポリマー、ヘルパー脂質、および膜融合性標的化部分からなる群より選択される、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項5】
前記イオン化可能なカチオン性脂質が、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、ジオクタデシル-ジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチル-塩化アンモニウム(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチル-塩化アンモニウム(DOTMA);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、YSK05、4-(((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)-(メチル)アミノ)メチル)安息香酸(DOBAT)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、3-((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)(メチル)アミノ)プロパン酸(DOPAT)、N-(2-カルボキシプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス-(オレオイルオキシ)-プロパン-1-アミニウム(DOMPAQ)、N-カルボキシメチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOAAQ)、アルニー(Alny)-100、3-(ジメチルアミノ)-プロピル(12Z,15Z)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル]-ヘニコサ-12,15-ジエノエート(DMAP-BLP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、および、イオン化可能なアミノ脂質の誘導体からなる群より選択される、請求項4に記載のハイブリドソーム。
【請求項6】
前記膜融合性脂質が、pH感受性脂質、温度感受性脂質、および円錐形成脂質からなる群より選択される、請求項4に記載のハイブリドソーム。
【請求項7】
前記pH応答性ポリマーが、アルキルアクリル酸のホモポリマー、エチルアクリル酸のコポリマー、アルキルアミンのポリマー、およびメチルビニルエーテルまたはスチレンを有する無水マレイン酸コポリマーのアルキルアルコール誘導体からなる群より選択される、請求項4に記載のハイブリドソーム。
【請求項8】
前記pH応答性ポリマーが、直鎖ポリマー、非直鎖ポリマー、分岐ポリマー、ブラシ型ポリマー、スターポリマー、デンドリマーポリマー、架橋ポリマー、半架橋ポリマー、グラフトポリマー、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載のハイブリドソーム。
【請求項9】
前記ヘルパー脂質が、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ならびに、ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン、ジパルミトイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホ-エタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)、ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルセリン、カルジオリピン、およびアニオン性修飾基で修飾された中性脂質からなる群より選択される、請求項4に記載のハイブリドソーム。
【請求項10】
前記少なくとも一つのEDEMが、抗体またはその断片、抗体様分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、オリゴヌクレオチド、糖、ポリサッカライド、およびビタミンからなる群より選択される一又は複数の標的化部分を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項11】
前記標的化部分が標的細胞の細胞表面上の部分に結合する、請求項10に記載のハイブリドソーム。
【請求項12】
前記標的化部分がCD38またはヘパラン硫酸プロテオグリカンに結合する、請求項11に記載のハイブリドソーム。
【請求項13】
前記標的化部分が細胞内器官標的に結合する、請求項10に記載のハイブリドソーム。
【請求項14】
前記標的化部分が核移行配列含有ペプチドまたはリソソーム向性オクタデシルローダミンBからなる群より選択される、請求項13に記載のハイブリドソーム。
【請求項15】
前記少なくとも一つのEDEMがその表面上に一又は複数の細胞透過性ペプチドを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項16】
前記一又は複数の細胞透過性ペプチドがpH応答性である、請求項15に記載のハイブリドソーム。
【請求項17】
前記一又は複数の細胞透過性ペプチドが、TAT、REV、クロタミン、およびメリチンからなる群より選択されるタンパク質に由来する、請求項15に記載のハイブリドソーム。
【請求項18】
前記少なくとも一つのEDEMがその表面にアンカーされる一又は複数の融合ペプチドを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項19】
前記融合ペプチドが可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(SNAREタンパク質)およびその合成模倣物から選択される、請求項18に記載のハイブリドソーム。
【請求項20】
前記少なくとも一つのEDEMが一又は複数のPEG修飾脂質を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項21】
前記PEG修飾脂質が標的化部分を結合するための官能基部分を含み、前記官能基部分がマレイミド基、アミン基、ビニルスルホン基、ピリジルジスルフィド基、カルボン酸基、アジド基、またはNHSエステル基である、請求項20に記載のハイブリドソーム。
【請求項22】
前記少なくとも一つのEDEMがその脂質二重膜中に安定化部分を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項23】
前記安定化部分が、PEG修飾脂質、デンドリマー、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリカルボキシレート、ポリサッカライド、およびヒドロキシエチルデンプンからなる群より選択される、請求項22に記載のハイブリドソーム。
【請求項24】
前記一又は複数のPEG修飾脂質が、PEG-リン脂質、PEG-修飾ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEG-修飾セラミド、PEG-修飾ジアルキルアミン、PEG-修飾ジアシルグリセロール、ポリエチレングリコールジパルミトイルグリセロール(PEG-DPG)、PEG-修飾ジアルキルグリセロール(メトキシポリエチレングリコール)-ジミリストイルグリセロール(PEG-s-DMG)、aPEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DOMG)、およびN-アセチルガラクトサミン-((R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバメート))(GalNAc-PEG-DSG)からなる群より選択される、請求項20に記載のハイブリドソーム。
【請求項25】
前記少なくとも一つのEDEMが、前記ハイブリドソームにカプセル化された内容物のエンドソームまたはリソソーム放出を促進するのに適するイオン化可能な親水性頭部基を有する脂質を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項26】
前記少なくとも一つのEDEMが、少なくとも一つの抗原をコードする少なくとも一つの修飾核酸分子および/またはmRNAを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項27】
前記少なくとも一つのEDEMが一又は複数のアジュバントを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項28】
前記少なくとも一つのEDEMが一又は複数の治療薬および一又は複数のアジュバントを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項29】
前記少なくとも一つのEDEMがウイルス由来のペプチド、断片、または領域に由来する少なくとも一つの外因性疾患関連抗原を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項30】
前記少なくとも一つのBDMが、がん等の病気または疾患に罹患する被験者に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項31】
前記病気または疾患ががんである、請求項30に記載のハイブリドソーム。
【請求項32】
前記少なくとも一つのBDMがB細胞またはグリオブラストーマ細胞に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項33】
前記少なくとも一つのBDMが、がんまたは前がん患者の腫瘍細胞に由来するか、あるいは、腫瘍またはがん細胞株に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項34】
前記少なくとも一つのBDMが病原体に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項35】
前記病原体が細菌病原体、アメーバ病原体、寄生虫病原体、または真菌病原体である、請求項34に記載のハイブリドソーム。
【請求項36】
前記少なくとも一つのBDMが抗原提示細胞、リンパ球、または白血球からなる群より選択される細胞に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項37】
前記少なくとも一つのBDMが病原体感染細胞に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項38】
前記少なくとも一つのBDMが変異タンパク質またはミスフォールドタンパク質を発現する変異細胞に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項39】
前記少なくとも一つのBDMが細菌または寄生虫の外膜の破壊または小疱形成によって得られるプロテオリポソーム性小胞である、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項40】
前記少なくとも一つのBDMがマントル細胞リンパ腫細胞に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項41】
前記少なくとも一つのBDMが血小板、好中球、または活性化多形核好中球に由来する、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項42】
治療薬または診断薬を含まない、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項43】
一又は複数の治療薬を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項44】
一又は複数の診断薬を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項45】
腫瘍関連抗原、病原体関連抗原、または変性疾患関連抗原から選択される一又は複数の疾患関連抗原を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項46】
一又は複数の抗炎症剤を含む一又は複数の前記BDMを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項47】
前記BDMが、血小板および好中球の群より選択される細胞に由来する、請求項46に記載のハイブリドソーム。
【請求項48】
一又は複数の免疫抑制剤を含む一又は複数の前記BDMを含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項49】
前記BDMが多形核好中球に由来する、請求項48に記載のハイブリドソーム。
【請求項50】
標的細胞へのさらにハイブリドソームの標的化/トランスフェクションを容易にする機能的ポリペプチドを生産するのに適する一又は複数の生理活性剤を含む、請求項1に記載のハイブリドソーム。
【請求項51】
前記治療薬、診断薬、疾患関連抗原、および生理活性剤が、前記ハイブリドソームに埋め込み、カプセル化、または繋ぎ止められている、請求項43~50のいずれか一項に記載のハイブリドソーム。
【請求項52】
前記治療薬が薬物または医薬的に許容可能なその塩もしくは誘導体である、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項53】
前記治療薬が、化学療法薬、麻酔薬、β-アドレナリンブロッカー、抗高血圧剤、抗うつ剤、抗けいれん剤、抗吐剤、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、抗マラリア剤、抗増殖剤、抗血管新生剤、創傷修復剤、組織修復剤、温熱治療薬、免疫抑制剤、サイトカイン、細胞傷害性薬物、核溶解化合物、放射性同位元素、受容体、プロドラッグ活性化酵素、抗悪性腫瘍剤、抗感染剤、局所麻酔薬、抗アレルギー剤、抗貧血剤、血管新生阻害剤、β-アドレナリンブロッカー、カルシウムチャネル拮抗剤、抗高血圧剤、抗うつ剤、抗けいれん薬、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、駆虫薬、抗寄生虫剤、コルチコステロイド、ホルモン、ホルモン拮抗薬、免疫調整剤、神経伝達物質拮抗薬、抗糖尿病剤、抗てんかん薬、止血薬、抗高張剤、抗緑内障薬、免疫調整サイトカイン、鎮静剤、ケモカイン、ビタミン、毒素、催眠剤、植物に由来する薬剤、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項54】
前記治療薬が、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、およびRNA転写阻害剤からなる群より選択される、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項55】
前記治療薬が、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、エチレンイミン、アルカンスルホン酸塩、テトラジン、白金化合物、ピリミジン類似体、プリン類似体、代謝拮抗剤、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、ビンカアルカロイド、およびトポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、アルキル化剤(例、シクロホスファミド);アルキルスルホン酸塩;アジリジン;エチレンイミンとメチルメラミン;代謝拮抗剤;ピリミジン類似体;アドレナリン拮抗剤;葉酸補充剤;レチノイン酸;および医薬的に許容可能なその塩、酸、または誘導体からなる群より選択されるがん化学療法薬である、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項56】
前記治療薬が、抗エストロゲン剤および抗アンドロゲン剤ならびに医薬的に許容可能なその塩、酸、または誘導体からなる群より選択される抗ホルモン剤である、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項57】
前記治療薬が、リンホカイン、モノカイン、ポリペプチドホルモン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、肝細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子-αおよび-β、ミューラー管阻害物質、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経増殖因子、NGF-β、血小板増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、TGF-α、TGF-β、インスリン様成長因子-IおよびII、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子、インターフェロン(例、インターフェロン-α、βおよびγ)、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、顆粒球-CSF(GCSF)、インターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子、TNF-α、TNF-β、LIF、およびキットリガンド(KL)からなる群より選択されるサイトカインである、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項58】
前記治療薬が、抗体ベースの治療薬である、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項59】
前記抗体ベースの治療薬が、ハーセプチン(Herceptin)、アービタックス(Erbitux)、アバスチン(Avastin)、リツキサン(Rituxan)、シムレクト(Simulect)、エンブレル(Enbrel)、アダリムマブ(Adalimumab)、およびレミケード(Remicade)からなる群より選択される、請求項58に記載のハイブリドソーム。
【請求項60】
前記治療薬が、金、銀、酸化鉄、量子ドット、およびカーボンナノチューブからなる群より選択されるナノ粒子である、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項61】
前記治療薬が、オリゴヌクレオチド、核酸、修飾核酸、タンパク質-核酸、負帯電基を有するタンパク質およびペプチド、負帯電基を有する植物アルカロイドおよび類似体、ならびにアニオン性基で修飾される薬物からなる群より選択されるアニオン性治療薬である、請求項43に記載のハイブリドソーム。
【請求項62】
前記核酸が、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、スモールまたはショートヘアピンRNA(shRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)RNA(crRNA)、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンス核酸、およびリボザイムからなる群より選択される、請求項61に記載のハイブリドソーム。
【請求項63】
前記治療薬および/または診断薬が、ペプチド、タンパク質、核酸(siRNA、mRNA、およびDNAを含む)、炭水化物、および小分子からなる群より選択される、請求項43または44に記載のハイブリドソーム。
【請求項64】
前記治療薬および/または診断薬が、治療用核酸および診断用無機ナノ粒子の合剤である、請求項63に記載のハイブリドソーム。
【請求項65】
前記核酸がプラスミドである、請求項64に記載のハイブリドソーム。
【請求項66】
前記無機ナノ粒子が金ナノ粒子である、請求項64に記載のハイブリドソーム。
【請求項67】
前記診断薬が、哺乳類またはヒト等の動物の身体の標的部位に関する撮像情報を提供する物質である、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項68】
前記診断薬が、ガンマ放射、放射能、光信号、蛍光シグナル、エコー源性シグナル、磁気シグナル、および断層画像シグナルからなる群より選択される検出可能なシグナルを発する、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項69】
前記診断薬が、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、光学イメージング、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射型断層撮影法(PET)、X線イメージング、およびγ線イメージングからなる群より選択される手法を介して検出可能である、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項70】
前記診断薬が、225Ac、72As、211At、11B、128Ba、212Bi、75Br、77Br、14C、109Cd、62Cu、64Cu、67Cu、18F、67Ga、68Ga、H、123I、125I、130I、131I、111In、177Lu、13N、15O、32P、33P、212Pb、103Pd、186Re、188Re、47Sc、153Sm、89Sr、99mTc、88Y、および90Yからなる群より選択される一又は複数の放射性核種を含む放射性同位元素である、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項71】
前記診断薬が、小分子、無機化合物、ナノ粒子、酵素、酵素基質、蛍光物質、発光物質、生体発光物質、および化学発光物質からなる群より選択される、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項72】
前記診断薬が、オクタデシルローダミンB、7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル、4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジンと誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-(3-[ビニルスルホニル]フェニル)ナフタルイミド-3,6-ジスルホン酸ジリチウム塩、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、BODIPY、ブリリアントイエロー、クマリンと誘導体、シアニン染料、シアノシン、4’,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ブロモピロガロールレッド、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアネートフェニル)-4-メチルクマリン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、4,4’-ジイソチオシアネートジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4,4’-ジイソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、塩化ダンシル、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC)、エオシンと誘導体、エリスロシンと誘導体、エチジウム、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、X-ローダミン-5-(および6)-イソチオシアネート(QFITCまたはXRITC)、フルオレスカミン、n,n-ジエチルエタンアミンを有するテン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-,水酸化物,不活性塩化合物(1:1)(IR144)、5-クロロ-2-[2-[3-[(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾール-イリデン)エチリデン]-2-(ジフェニルアミノ)-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-3-エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩(IR140)、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4-メチルウンベリフェロン、o-クレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラローザニリン、フェノールレッド、B-フィコエリトリン、o-フタルジアルデヒド、ピレン、ピレンブチレート、スクシンイミジル1-ピレン、ブチレート量子ドット、リアクティブ・レッド4(Cibacron(商標)ブリリアントレッド3B-A)、ローダミンと誘導体、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンB塩化スルホニル、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミン・イソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、ロゾール酸、テルビウムキレート誘導体、シアニン-3(Cy3)、シアニン-5(Cy5)、シアニン-5.5(Cy5.5)、シアニン-7(Cy7)、IRD700、IRD800、Alexa647、La Jolta Blue、フタロシアニン、およびナフタロシアニンからなる群より選択される光学的に検出可能な標識を含む、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項73】
前記診断薬が、半導体ナノ結晶、量子ドット、イオパミドール、イオメプロール、イオヘキソール、イオペントール、およびメトリザミドから選択される造影剤である、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項74】
前記診断薬が、金、銀、および鉄のナノ粒子から選択される金属ナノ粒子である、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項75】
前記ナノ粒子が約2nm~約100nmの直径を有する、請求項74に記載のハイブリドソーム。
【請求項76】
前記ナノ粒子が、チオ基、オキソ基、アミノ基、またはホスホ基からなる群より選択される少なくとも一つの表面修飾を有する、請求項74に記載のハイブリドソーム。
【請求項77】
前記金属ナノ粒子の形状が、球体、ロッド、プリズム、ディスク、キューブ、コア-シェル構造、ケージ、フレーム、またはその混合形態の少なくとも一つを含む、請求項74に記載のハイブリドソーム。
【請求項78】
前記診断薬が、常磁性剤および超常磁性剤から選択される磁気共鳴(MR)イメージング剤である、請求項44に記載のハイブリドソーム。
【請求項79】
前記常磁性剤が、ガドペンテト酸、ガドリニウム、ガドテリドール、およびガドキセト酸からなる群より選択される、請求項78に記載のハイブリドソーム。
【請求項80】
前記超常磁性剤が、超常磁性酸化鉄およびフェリステンからなる群より選択される、請求項78に記載のハイブリドソーム。
【請求項81】
前記疾患関連抗原が、胎盤型アルカリホスファターゼ、p53、p63、p73、mdm-2、プロカテプシン-D、B23、C23、PLAP、CA125、MUC-1、cerB/HER2、NY-ESO-1.SCP1、SSX-1、SSX-2、SSX-4、HSP27、HSP60、HSP90、GRP78、TAG72、HoxA7、HoxB7、EpCAM、ras、メソテリン、サバイビン、EGFK、MUC-1、およびc-mycからなる群より選択されるがん細胞抗原である、請求項45に記載のハイブリドソーム。
【請求項82】
前記疾患関連抗原が、腫瘍関連抗原であるチロシン-タンパク質キナーゼ膜貫通受容体ROR1である、請求項45に記載のハイブリドソーム。
【請求項83】
請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームおよび少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体、アジュバント、または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項84】
症状または疾患を治療、監視、予防、ステージ決定、および/または診断するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項85】
前記症状または疾患が、白血病、リンパ腫、皮膚がん、メラノーマ、基底細胞がん、扁平上皮がん、頭部および首の上皮細胞がん、肺がん、扁平上皮がん又は類表皮がん、小細胞がん、腺がん、大細胞がん、乳がん、胃腸管がん、甲状腺の悪性腫瘍、骨と軟部組織の肉腫、卵巣がん、卵管がん、子宮がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、膀胱がん、腎細胞がん、膵臓がん、および肝細胞がんからなる群より選択される、請求項84に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項86】
前記症状または疾患が神経変性と関連する、請求項84に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項87】
神経変性に関連する前記症状または疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、ダウン症、びまん性レビー小体病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群より選択される、請求項86に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項88】
前記症状または疾患が炎症と関連する、請求項84に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項89】
炎症に関連する前記症状または疾患が、アルツハイマー病、糖尿病、ホルモン失調、自己免疫疾患、関節リウマチ、乾癬、変形性関節症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化、冠状動脈疾患、血管炎、慢性炎症性状態、肥満、潰瘍、マルジョラン潰瘍、呼吸器炎症、包皮炎症、ウイルスが原因の炎症、住血吸虫症、骨盤の炎症性疾患、卵巣上皮炎症、バレット異形成、ピロリ菌(H.pylori)胃炎、慢性膵炎、中国肝吸虫の寄生、慢性胆嚢炎、および炎症性腸疾患、ならびに前立腺がん、大腸がん、乳がん、胃がん等の胃腸管がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、上咽頭がん、食道がん、胆管がん、胆嚢がんと肛門性器がん、外皮がん、皮膚がん、気道がん、気管支がん、中皮腫、泌尿生殖路がん、包茎、陰茎がん、膀胱がん、生殖器系がん、および卵巣がんから選択される炎症関連がんからなる群より選択される、請求項88に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項90】
前記症状または疾患がウイルスまたは細菌感染である、請求項84に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項91】
一又は複数の疾患関連抗原に対する免疫応答を誘起するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項92】
被験者の標的細胞または組織に治療薬を送達するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項93】
被験者中に、治療薬、診断薬、疾患関連抗原および/または生理活性剤を投与するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項94】
前記ハイブリドソームが、非経口、動脈内、静脈内、腹腔内、皮下、筋中、局所、経口、肺、鼻腔内、舌下、直腸、または膣に投与される、請求項93に記載の使用のためのハイブリドソーム。
【請求項95】
幹細胞、初代細胞、懸濁細胞、および免疫細胞からなる群より選択されるインビボおよびインビトロでトランスフェクションが難しい細胞型へ活性剤を送達するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項96】
細胞内で標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項97】
被験者における一又は複数のポリペプチドの過剰発現を特徴とする病気または疾患を治療するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項98】
遺伝子治療に使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項99】
標的細胞に少なくとも二つの物質を共に送達するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項100】
抗原提示BDMおよびアジュバント含有EDEMを含む免疫原性ワクチンの製造に使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項101】
一又は複数の疾患関連抗原を送達することによって免疫応答を誘起するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項102】
免疫応答を抑制するのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項103】
細胞上の免疫刺激性抗原の量を減らすのに使用するための、請求項102に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項104】
前記免疫刺激性抗原がCD40、CD80、CD83、CD86、CCR7、HLA-DP、HLA-DQ、およびHLA-DRからなる群より選択される、請求項103に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項105】
炎症を減らすのに使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項106】
被験者中の炎症性サイトカインの量を減らすのに使用するための、請求項105に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項107】
前記炎症性サイトカインが腫瘍壊死因子-α、トランスフォーミング増殖因子β1、インターロイキン-8、インターロイキン-10、およびインターロイキン-12p70からなる群より選択される、請求項106に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項108】
ワクチンとして使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項109】
被験者中の治療薬および/または診断薬の循環時間を増加させるための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項110】
細網内皮系(RES)取り込みを弱めるための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項111】
治療薬および/または診断薬の早期放出を予防するための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項112】
被験者の身体に導入される場合、免疫系応答を減らすための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項113】
血管系の生物学的バリアーを通過するトランスサイトーシスを増加させるための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項114】
疾患部位での治療薬および/または診断薬の蓄積を増加させるための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項115】
標的細胞のエンドソームへの内在化を増加させるための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項116】
活性剤の治療投与量を減らすための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項117】
活性剤の投与と関連する毒性副作用を減少または予防するための担体として使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項118】
細胞または組織への生理活性剤のインビトロ送達に使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項119】
疾患または症状に罹患する組織および細胞の検出、あるいは、進行または治療後の再発の検出に使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項120】
疾患または症状の診断に使用するための、請求項1~82のいずれか一項に記載のハイブリドソームまたはそのハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項121】
少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)と少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素を含むハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を製造する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも一つの膜融合性部分を有する少なくとも一つのEDEMまたはそのEDEMを含む組成物を提供する工程;
(b)少なくとも一つのBDMまたはそのBDMを含む組成物を提供する工程;
(c)前記少なくとも一つのEDEMを前記少なくとも一つのBDMと、7.4より低いpHおよび0℃~60℃の間の温度で接触させて、それにより前記少なくとも一つのEDEMを前記少なくとも一つのBDMと統合させて、前記ハイブリドソームを生産する工程;ならびに、任意に
(d)非融合EDEMおよび/またはBDMから前記ハイブリドソームを精製する工程を含む、方法。
【請求項122】
工程(c)が機械的手段で混合することによって向上し、および、前記BDMと前記EDEMとの統合が流体動力学の制御を介して促進される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
工程(c)がpH4~6の酸性バッファー中で実施される、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
工程(c)が約37℃の反応温度で実施される、請求項121に記載の方法。
【請求項125】
工程(c)が、5分、15分、30分、1時間、2時間、5時間、10時間、および24時間から選択される期間に渡り実施される、請求項121に記載の方法。
【請求項126】
工程(c)において、前記EDEMがカチオン性総表面電荷の増加を呈する、請求項121~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
工程(d)が、密度勾配を通す遠心分離、免疫アフィニティークロマトグラフィー、ろ過、相分離、析出、または吸収によって実施される、請求項121に記載の方法。
【請求項128】
前記少なくとも一つのBDMがエキソソーム、エクトソーム、微小胞、およびアポトーシス小体からなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項129】
前記少なくとも一つのEDEMが、脂質系ナノ粒子(LNP)、リポソーム、ポリマー安定化LNP、セラソーム、スフィンゴソーム、ニオソーム、ポリマーソーム、合成ナノ粒子安定化LNP、コア-シェル型脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子、天然膜由来LNP、迅速に除去される脂質ナノ粒子(reLNP)、および天然膜でコーティングされたLNPからなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項130】
前記少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分が、イオン化可能なカチオン性脂質、膜融合性脂質、pH応答性ポリマー、ヘルパー脂質、および膜融合性標的化部分からなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項131】
前記イオン化可能なカチオン性脂質が、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、ジオクタデシル-ジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチル-塩化アンモニウム(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチル-塩化アンモニウム(DOTMA);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、YSK05、4-(((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)-(メチル)アミノ)メチル)安息香酸(DOBAT)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、3-((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)(メチル)アミノ)プロパン酸(DOPAT)、N-(2-カルボキシプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス-(オレオイルオキシ)-プロパン-1-アミニウム(DOMPAQ)、N-カルボキシメチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOAAQ)、アルニー(Alny)-100、3-(ジメチルアミノ)-プロピル(12Z,15Z)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル]-ヘニコサ-12,15-ジエノエート(DMAP-BLP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、および、イオン化可能なアミノ脂質の誘導体からなる群より選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記膜融合性脂質が、pH感受性脂質、温度感受性脂質、および円錐形成脂質からなる群より選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
前記pH応答性ポリマーが、アルキルアクリル酸のホモポリマー、エチルアクリル酸のコポリマー、アルキルアミンのポリマー、およびメチルビニルエーテルまたはスチレンを有する無水マレイン酸コポリマーのアルキルアルコール誘導体からなる群より選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
前記pH応答性ポリマーが、直鎖ポリマー、非直鎖ポリマー、分岐ポリマー、ブラシ型ポリマー、スターポリマー、デンドリマーポリマー、架橋ポリマー、半架橋ポリマー、グラフトポリマー、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項135】
前記ヘルパー脂質が、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ならびに、ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン、ジパルミトイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホ-エタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)、ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルセリン、カルジオリピン、およびアニオン性修飾基で修飾された中性脂質からなる群より選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項136】
前記少なくとも一つのEDEMが、抗体またはその断片、抗体様分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、オリゴヌクレオチド、糖、ポリサッカライド、およびビタミンからなる群より選択される一又は複数の標的化部分を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項137】
前記標的化部分が標的となる細胞の表面上の部分に結合する、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記標的化部分がCD38またはヘパラン硫酸プロテオグリカンに結合する、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記標的化部分が細胞内器官標的に結合する、請求項136に記載の方法。
【請求項140】
前記標的化部分が核移行配列含有ペプチドおよびリソソーム向性オクタデシルローダミンBからなる群より選択される、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記少なくとも一つのEDEMがその表面上に一又は複数の細胞透過性ペプチドを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項142】
前記細胞透過性ペプチドがpH応答性である、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記細胞透過性ペプチドが、TAT、REV、クロタミン、およびメリチンからなる群より選択されるタンパク質に由来する、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
前記少なくとも一つのEDEMがその表面にアンカーされる一又は複数の融合ペプチドを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項145】
前記融合ペプチドが可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(SNAREタンパク質)およびその合成模倣物から選択される、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記少なくとも一つのEDEMがPEG修飾脂質を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項147】
前記PEG修飾脂質が標的化部分を結合するための官能基部分を含み、前記官能基部分がマレイミド基、アミン基、ビニルスルホン基、ピリジルジスルフィド基、カルボン酸基、アジド基、またはNHSエステル基である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記少なくとも一つのEDEMがその脂質二重膜中に安定化部分を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項149】
前記安定化部分が、PEG修飾脂質、デンドリマー、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリカルボキシレート、ポリサッカライド、およびヒドロキシエチルデンプンからなる群より選択される、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
少なくとも一つの前記PEG修飾脂質が、PEG-リン脂質、PEG-修飾ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEG-修飾セラミド、PEG-修飾ジアルキルアミン、PEG-修飾ジアシルグリセロール、ポリエチレングリコールジパルミトイルグリセロール(PEG-DPG)、PEG-修飾ジアルキルグリセロール(メトキシポリエチレングリコール)-ジミリストイルグリセロール(PEG-s-DMG)、aPEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DOMG)、およびN-アセチルガラクトサミン-((R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバメート))(GalNAc-PEG-DSG)からなる群より選択される、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記少なくとも一つのEDEMが、前記担体にカプセル化された内容物のエンドソームまたはリソソーム放出を促進するためのイオン化可能な親水性頭部基を有する脂質を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項152】
前記少なくとも一つのEDEMが、少なくとも一つの抗原をコードする少なくとも一つの修飾核酸分子および/またはmRNAを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項153】
前記少なくとも一つのEDEMが少なくとも一つのアジュバントを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項154】
前記少なくとも一つのEDEMが少なくとも一つの治療薬と少なくとも一つのアジュバントを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項155】
前記少なくとも一つのEDEMがウイルス由来のペプチド、断片、または領域をコードする少なくとも一つの外因性疾患関連抗原を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項156】
前記少なくとも一つのBDMが、がん等の病気または疾患に罹患する被験者に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項157】
前記病気または疾患ががんである、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記少なくとも一つのBDMがB細胞またはグリオブラストーマ細胞に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項159】
前記少なくとも一つのBDMが、がんまたは前がん患者の腫瘍細胞に由来するか、あるいは、腫瘍またはがん細胞株に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項160】
前記少なくとも一つのBDMが病原体に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項161】
前記病原体が細菌病原体、アメーバ病原体、寄生虫病原体、または真菌病原体である、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記少なくとも一つのBDMが抗原提示細胞、リンパ球、または白血球からなる群より選択される細胞に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項163】
前記少なくとも一つのBDMが病原体感染細胞に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項164】
前記少なくとも一つのBDMが変異タンパク質またはミスフォールドタンパク質を発現する変異細胞に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項165】
前記少なくとも一つのBDMが細菌または寄生虫の外膜の破壊または小疱形成によって得られるプロテオリポソーム性小胞である、請求項121に記載の方法。
【請求項166】
前記少なくとも一つのBDMがマントル細胞リンパ腫に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項167】
前記少なくとも一つのBDMが血小板、好中球、または活性化多形核好中球に由来する、請求項121に記載の方法。
【請求項168】
前記少なくとも一つのEDEMが治療薬または診断薬を全く含まない、請求項121に記載の方法。
【請求項169】
前記少なくとも一つのEDEMが一又は複数の治療薬を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項170】
前記少なくとも一つのEDEMが一又は複数の診断薬を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項171】
前記少なくとも一つのBDMが、腫瘍関連抗原、病原体関連抗原、または変性疾患関連抗原から選択される一又は複数の疾患関連抗原を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項172】
前記少なくとも一つのBDMが一又は複数の抗炎症剤を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項173】
前記少なくとも一つのBDMが、血小板および好中球の群より選択される細胞に由来する、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
前記少なくとも一つのBDMが一又は複数の免疫抑制剤を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項175】
前記少なくとも一つのBDMが多形核好中球に由来する、請求項174に記載の方法。
【請求項176】
前記少なくとも一つのEDEMが、標的細胞へのさらにハイブリドソームの標的化/トランスフェクションを容易にする機能的ポリペプチドを生産するのに適する一又は複数の生理活性剤を含む、請求項121に記載の方法。
【請求項177】
前記治療薬、診断薬、疾患関連抗原、および生理活性剤が、前記EDEMまたは前記BDMに埋め込み、カプセル化、または繋ぎ止められている、請求項169~176のいずれか一項に記載の方法。
【請求項178】
前記治療薬が薬物または医薬的に許容可能なその塩もしくは誘導体である、請求項169に記載の方法。
【請求項179】
前記治療薬が、化学療法薬、麻酔薬、β-アドレナリンブロッカー、抗高血圧剤、抗うつ剤、抗けいれん剤、抗吐剤、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、抗マラリア剤、抗増殖剤、抗血管新生剤、創傷修復剤、組織修復剤、温熱治療薬、免疫抑制剤、サイトカイン、細胞傷害性薬物、核溶解化合物、放射性同位元素、受容体、プロドラッグ活性化酵素、抗悪性腫瘍剤、抗感染剤、局所麻酔薬、抗アレルギー剤、抗貧血剤、血管新生阻害剤、β-アドレナリンブロッカー、カルシウムチャネル拮抗剤、抗高血圧剤、抗うつ剤、抗けいれん薬、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、駆虫薬、抗寄生虫剤、コルチコステロイド、ホルモン、ホルモン拮抗薬、免疫調整剤、神経伝達物質拮抗薬、抗糖尿病剤、抗てんかん薬、止血薬、抗高張剤、抗緑内障薬、免疫調整サイトカイン、鎮静剤、ケモカイン、ビタミン、毒素、催眠剤、植物に由来する薬剤、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項169に記載の方法。
【請求項180】
前記治療薬が、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、およびRNA転写阻害剤からなる群より選択される、請求項169に記載の方法。
【請求項181】
前記治療薬が、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、エチレンイミン、アルカンスルホン酸塩、テトラジン、白金化合物、ピリミジン類似体、プリン類似体、代謝拮抗剤、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、ビンカアルカロイド、およびトポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、アルキル化剤(例、シクロホスファミド);アルキルスルホン酸塩;アジリジン;エチレンイミンとメチルメラミン;代謝拮抗剤;ピリミジン類似体;アドレナリン拮抗剤;葉酸補充剤;レチノイン酸;および医薬的に許容可能なその塩、酸、または誘導体からなる群より選択されるがん化学療法薬である、請求項169に記載の方法。
【請求項182】
前記治療薬が、抗エストロゲン剤および抗アンドロゲン剤ならびに医薬的に許容可能なその塩、酸、または誘導体からなる群より選択される抗ホルモン剤である、請求項169に記載の方法。
【請求項183】
前記治療薬が、リンホカイン、モノカイン、ポリペプチドホルモン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、肝細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子-αおよび-β、ミューラー管阻害物質、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経増殖因子、NGF-β、血小板増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、TGF-α、TGF-β、インスリン様成長因子-IおよびII、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子、インターフェロン(例、インターフェロン-α、βおよびγ)、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、顆粒球-CSF(GCSF)、インターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子、TNF-α、TNF-β、LIF、およびキットリガンド(KL)からなる群より選択されるサイトカインである、請求項169に記載の方法。
【請求項184】
前記治療薬が、抗体ベースの治療薬である、請求項169に記載の方法。
【請求項185】
前記抗体ベースの治療薬が、ハーセプチン(Herceptin)、アービタックス(Erbitux)、アバスチン(Avastin)、リツキサン(Rituxan)、シムレクト(Simulect)、エンブレル(Enbrel)、アダリムマブ(Adalimumab)、およびレミケード(Remicade)からなる群より選択される、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
前記治療薬が、金、銀、酸化鉄、量子ドット、およびカーボンナノチューブからなる群より選択されるナノ粒子である、請求項169に記載の方法。
【請求項187】
前記治療薬が、オリゴヌクレオチド、核酸、修飾核酸、タンパク質-核酸、負帯電基を有するタンパク質およびペプチド、負帯電基を有する植物アルカロイドおよび類似体、ならびにアニオン性基で修飾される薬物からなる群より選択されるアニオン性治療薬である、請求項169に記載の方法。
【請求項188】
前記核酸が、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、スモールまたはショートヘアピンRNA(shRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)RNA(crRNA)、トランス活性化CRISPRRNA(tracrRNA)、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンス核酸、およびリボザイムからなる群より選択される、請求項187に記載の方法。
【請求項189】
前記治療薬および/または診断薬が、ペプチド、タンパク質、核酸、ポリマー、炭水化物、および小分子からなる群より選択される、請求項169または170に記載の方法。
【請求項190】
前記治療薬および/または診断薬が、治療用核酸および診断用無機ナノ粒子の合剤である、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
前記核酸がプラスミドである、請求項190に記載の方法。
【請求項192】
前記無機ナノ粒子が金ナノ粒子である、請求項190に記載の方法。
【請求項193】
前記診断薬が、哺乳類またはヒト等の動物の身体の標的部位に関する撮像情報を提供する物質である、請求項170に記載の方法。
【請求項194】
前記診断薬が、ガンマ放射、放射能、光信号、蛍光シグナル、エコー源性シグナル、磁気シグナル、および断層画像シグナルからなる群より選択される検出可能なシグナルを発する、請求項170に記載の方法。
【請求項195】
前記診断薬が、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、光学イメージング、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射型断層撮影法(PET)、X線イメージング、およびγ線イメージングからなる群より選択される手法を介して検出可能である、請求項170に記載の方法。
【請求項196】
前記診断薬が、225Ac、72As、211At、11B、128Ba、212Bi、75Br、77Br、14C、109Cd、62Cu、64Cu、67Cu、18F、67Ga、68Ga、H、123I、125I、130I、131I、111In、177Lu、13N、15O、32P、33P、212Pb、103Pd、186Re、188Re、47Sc、153Sm、89Sr、99mTc、88Y、および90Yからなる群より選択される一又は複数の放射性核種を含む放射性同位元素である、請求項170に記載の方法。
【請求項197】
前記診断薬が、小分子、無機化合物、ナノ粒子、酵素、酵素基質、蛍光物質、発光物質、生体発光物質、および化学発光物質からなる群より選択される、請求項170に記載の方法。
【請求項198】
前記診断薬が、オクタデシルローダミンB、7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル、4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジンと誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-(3-[ビニルスルホニル]フェニル)ナフタルイミド-3,6-ジスルホン酸ジリチウム塩、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、BODIPY、ブリリアントイエロー、クマリンと誘導体、シアニン染料、シアノシン、4’,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ブロモピロガロールレッド、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアネートフェニル)-4-メチルクマリン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、4,4’-ジイソチオシアネートジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4,4’-ジイソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、塩化ダンシル、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC)、エオシンと誘導体、エリスロシンと誘導体、エチジウム、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、X-ローダミン-5-(および6)-イソチオシアネート(QFITCまたはXRITC)、フルオレスカミン、n,n-ジエチルエタンアミンを有するテン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-,水酸化物,不活性塩化合物(1:1)(IR144)、5-クロロ-2-[2-[3-[(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾール-イリデン)エチリデン]-2-(ジフェニルアミノ)-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-3-エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩(IR140)、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4-メチルウンベリフェロン、o-クレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラローザニリン、フェノールレッド、B-フィコエリトリン、0-フタルジアルデヒド、ピレン、ピレンブチレート、スクシンイミジル1-ピレン、ブチレート量子ドット、リアクティブ・レッド4(Cibacron(商標)ブリリアントレッド3B-A)、ローダミンと誘導体、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンB塩化スルホニル、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミン・イソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、ロゾール酸、テルビウムキレート誘導体、シアニン-3(Cy3)、シアニン-5(Cy5)、シアニン-5.5(Cy5.5)、シアニン-7(Cy7)、IRD700、IRD800、Alexa647、La Jolta Blue、フタロシアニン、およびナフタロシアニンからなる群より選択される光学的に検出可能な標識を含む、請求項170に記載の方法。
【請求項199】
前記診断薬が、半導体ナノ結晶、量子ドット、イオパミドール、イオメプロール、イオヘキソール、イオペントール、およびメトリザミドから選択される造影剤である、請求項170に記載の方法。
【請求項200】
前記診断薬が、金、銀、および鉄のナノ粒子から選択される金属ナノ粒子である、請求項170に記載の方法。
【請求項201】
前記ナノ粒子が約2nm~約100nmの直径を有する、請求項200に記載の方法。
【請求項202】
前記ナノ粒子が、チオ基、オキソ基、アミノ基、またはホスホ基からなる群より選択される少なくとも一つの表面修飾を有する、請求項200に記載の方法。
【請求項203】
前記金属ナノ粒子の形状が、球体、ロッド、プリズム、ディスク、キューブ、コア-シェル構造、ケージ、フレーム、またはその混合形態の少なくとも一つを含む、請求項200に記載の方法。
【請求項204】
前記診断薬が、常磁性剤および超常磁性剤から選択される磁気共鳴(MR)イメージング剤である、請求項170に記載の方法。
【請求項205】
前記常磁性剤が、ガドペンテト酸、ガドリニウム、ガドテリドール、およびガドキセト酸からなる群より選択される、請求項204に記載の方法。
【請求項206】
前記超常磁性剤が、超常磁性酸化鉄およびフェリステンからなる群より選択される、請求項204に記載の方法。
【請求項207】
前記疾患関連抗原が、胎盤型アルカリホスファターゼ、p53、p63、p73、mdm-2、プロカテプシン-D、B23、C23、PLAP、CA125、MUC-1、cerB/HER2、NY-ESO-1.SCP1、SSX-1、SSX-2、SSX-4、HSP27、HSP60、HSP90、GRP78、TAG72、HoxA7、HoxB7、EpCAM、ras、メソテリン、サバイビン、EGFK、MUC-1、およびc-mycからなる群より選択されるがん細胞抗原である、請求項171に記載の方法。
【請求項208】
前記疾患関連抗原が、腫瘍関連抗原であるチロシン-タンパク質キナーゼ膜貫通受容体ROR1である、請求項171に記載の方法。
【請求項209】
一又は複数の生理活性剤を白血球中へ送達する方法であって、前記方法は、前記一又は複数の生理活性剤含有ハイブリドソームを含む組成物を前記白血球を含む組成物と接触させる工程を含み、前記ハイブリドソームが、少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つのEDEMと少なくとも一つの白血球由来BDMとの融合の結果生じる、方法。
【請求項210】
一又は複数の生理活性剤をグリア細胞中へ送達する方法であって、前記方法は、前記一又は複数の生理活性剤含有ハイブリドソームを含む組成物を、前記グリア細胞を含む組成物と接触させる工程を含み、前記ハイブリドソームが、少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つのEDEMと少なくとも一つのグリア細胞由来BDMとの融合の結果生じる、方法。
【請求項211】
一又は複数の生理活性剤をエクスビボ増殖中の細胞内へ送達する方法であって、前記方法は、前記一又は複数の生理活性剤含有ハイブリドソームを含む組成物を、前記細胞を含む組成物と接触させる工程を含み、前記ハイブリドソームが、少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つのEDEMと少なくとも一つの前記細胞由来BDMとの融合の結果生じる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療、予防、イメージング、および診断応用例用の医薬生体適合性担体および活性剤標的化送達の分野に関する。より具体的には、本発明は、自然に分泌される生体適合性送達モジュール(BDM)と加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)の統合を制御することにより生じる生体適合性ハイブリッド担体に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の薬物療法のアプローチは、新規治療用分子の開発と共に治療スケジュールの組合せの進歩に主として基づいている。しかしながら、これらのアプローチの臨床効力は、その物理化学、薬物動態、および交差反応の特性(目的作用部位での濃度が限定されること及び生体分布が全身的に広がることから意図せずに生じるもの)により本質的に制限される。
【0003】
この難題に取り組む中で、ナノテクノロジーが自由に使えるようになり始めたので、健康でない器官、組織、および/または細胞に薬物分子を送達することが容易になってきている。最先端ナノテクノロジーから生じた薬物送達基盤は、合成脂質ベースの担体システム中に活性のある治療分子を封入することに関心を集中している。カプセル化は薬物をインビボ(in vivo)環境から隔離することを容易にし、それにより、薬物の理想的でない特性(限定的な溶解性、血清中の安定性、血液循環中での半減期、および生体内分布を含むもの)を克服する。
【0004】
毒性のない構成要素で構成され且つ標的細胞によって特異的に内部に取り込まれる理想的な合成ナノ担体は、現在まで分かっていない。従って、これらのシステムは、ナノテクノロジーが提供可能な潜在能力を十分には利用していない。自然界において分子が如何に送り届けられるかについて洞察することにより、効率的かつ生体適合性の薬物送達ビヒクルの設計図を提供可能である。
【0005】
細胞は、可溶性因子の分泌を介するか、または、直接的相互作用により情報を交換することが知られている。最近の研究が到達した結論は、細胞はまた、膜に由来する小胞であって、近隣および遠位の細胞の両方に影響を与えるものを放出することである(非特許文献1)。これらの細胞外小胞は、ほとんどの細胞によって分泌され、そして、ほとんどの生体体液の生理学的構成要素である(非特許文献2)。細胞外小胞には、サブタイプであるアポトーシス小体、微小胞、およびエキソソームがある(非特許文献3)。
【0006】
如何に細胞外小胞が細胞間コミュニケーションの媒介体として働くことができるかについての研究は未だ初期段階にあるが、「ドナー」細胞から「レシピエント」細胞へ生物活性のある積み荷を運搬する遺伝的役割を探求することは最適な薬物送達の複雑さに価値ある洞察を与えることに寄与している。様々な研究は、細胞外小胞が治療用担体として機能し得るいくつかの条件を同定してきた。これらの担体が、それらを合成薬物担体よりも医薬的に優れたものにする互いに異なる性質を有することの証拠が強まっている。この優位性に関して特に重要なのは、多くの膜タンパク質と互いに異なる脂質が統合して細胞外小胞の表面組成物となることである。
【0007】
効率的な薬物送達システムのために自然界の担体を活用または模倣するのを妨げるいくつかの障害が存在する。最も顕著なのは、細胞外小胞をメッセージ便から薬物担体へと変身させることには、「ドナー」細胞にとっては外来である治療用または診断用分子を導入することが必要である。現在までに提案された各加工方法論には、「ドナー」細胞に生物工学的手順(つまり、遺伝的改変、ウイルストランスフェクション、毒性のあるカチオン性リポフェクション等)を使用すること、および、単離小胞に適用される激しい又はダメージを与える操作メカニズム(つまり、エレクトロポレーション、連結化学等)を使用することが含まれる。これらの方法は、最終的には、安全性とスケーラビリティの懸念が起こり、そして臨床応用を妨げる。まだ取り組む必要のある他の重要な問題には、担体の構造的一体性の制御、活性のある積み荷の効率的カプセル化、および、追加的標的部分の取り込みが含まれる。
【0008】
理想的には、そのままの細胞外小胞膜が活用される場合には、多数の生物活性のある膜構成要素が合成ナノ担体に取り込まれることに必要な複雑な生物模倣型機能付与アプローチを回避する場合もある。一方、バイオテクノロジー的手順のひどい結果を克服するために、細胞外小胞にとっては外来である治療剤要素および標的化要素を導入する方法は、好ましくは、細胞の操作と独立であることが期待される。これらの根拠に基づいて、現代のナノ粒子の薬物送達システムにおいて採用されるナノテクノロジー的方法で生物工学技術を置き換えることが有益である可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Marcus&Leonard,2013
【非特許文献2】Vlassov,Magdaleno,Setterquist,&Conrad,2012
【非特許文献3】EL Andaloussi,Mager,Breakefield,&Wood,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した短所を鑑みて、本発明の一つの目的は、エクスビボ(ex vivo)で作製した合成ナノ担体とインビボ(in vivo)で発生する細胞外小胞の利点を相乗しながら、先行技術の担体が有する欠点のない、詳細に定義された特性を有する新規医薬担体を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、前記新規医薬担体を含む医薬組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、疾患または症状の治療、監視、予防、ステージ決定および/または診断のための、前記新規医薬担体に基づく使用および方法、またはそれを含む医薬品を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、刺激応答性モジュールに関する制御を可能とするやり方で、前記新規医薬担体を製造する方法を提供する。
【0014】
本発明のさらなる目的は、一又は複数の生理活性剤を、細胞、より好ましくは、白血球、グリア細胞、および幹細胞から選択される細胞へと送達する方法を提供する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、刺激応答性モジュールに関わる制御可能なやり方で、上記医薬担体を製造するための方法を提供する。
【0016】
本発明のさらなる目的と利点は、本記載が進むにつれ明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)と少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素を含むハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を提供する。
【0018】
本発明は、さらに、上記で定義したハイブリドソームと少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体、アジュバント、または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明は、さらにまた、少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)と少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素を含むハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を製造する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも一つの膜融合性部分を有する少なくとも一つのEDEMまたはそのEDEMを含む組成物を提供する工程;
(b)少なくとも一つのBDMまたはそのBDMを含む組成物を提供する工程;
(c)前記少なくとも一つのEDEMを前記少なくとも一つのBDMと、7.4より低いpHおよび0℃~60℃の間の温度で接触させて、それにより前記少なくとも一つのEDEMを前記少なくとも一つのBDMと統合させて、前記ハイブリドソームを生産する工程;ならびに、任意に、
(d)非融合EDEMおよび/またはBDMから前記ハイブリドソームを精製する工程を含む、方法を提供する。
【0020】
本発明は、さらにまた、一又は複数の生理活性剤を白血球中に送達する方法であって、前記方法は、前記一又は複数の生理活性剤含有ハイブリドソームを含む組成物を前記白血球を含む組成物と接触させる工程を含み、前記ハイブリドソームが、少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つのEDEMと少なくとも一つの白血球由来BDMとの融合の結果生じる、方法を提供する。
【0021】
本発明は、さらにまた、一又は複数の生理活性剤をグリア細胞中に送達する方法であって、前記方法は、前記一又は複数の生理活性剤含有ハイブリドソームを含む組成物を前記グリア細胞を含む組成物と接触させる工程を含み、前記ハイブリドソームが、少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つのEDEMと少なくとも一つのグリア細胞由来BDMとの融合の結果生じる、方法を提供する。
【0022】
本発明は、さらにまた、一又は複数の生理活性剤を、エクスビボ(ex vivo)増殖中のグリア細胞中に送達する方法であって、前記方法は、前記一又は複数の生理活性剤含有ハイブリドソームを含む組成物を前記細胞を含む組成物と接触させる工程を含み、前記ハイブリドソームが、少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つのEDEMと少なくとも一つの前記細胞由来BDMとの融合の結果生じる、方法を提供する。
【0023】
本発明の上記および他の特徴と利点は、添付した以下の図面を参照して、次の例を介してより容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、Au-iLNP、Auストック、およびiLNPのUV-可視光吸収スペクトルを示すグラフである。
図2図2は、Au-iLNPの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である(スケールバー:100nm)。
図3図3は、GBM-exo(エキソソーム)および空iLNPの直径のヒストグラムである(ナノ粒子トラッキング解析(NTA)により得られたもの)。
図4図4は、GBM-exoとiLNPを、非イオン化条件(pH7.4)下または融合バッファー(pH.5.5)中で混合した後の平均粒子サイズ(動的光散乱法(DLS)を介して得られたもの)を示すグラフである。
図5図5は、バッファーpH条件を変化させた場合の、GBM-exoとiLNPのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図6図6は、GBM-exoと(含量として0、30、40、または50%DLinDMAを含む)iLNPのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図7図7は、GBM-exoと(イオン化可能な脂質DODAPまたはDLinDMAを含む)iLNPのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図8図8は、GBM-exoと(PEG-脂質含量を変えて含む)iLNPのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図9図9は、互いに異なる温度での、GBM-exoとiLNPのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図10図10は、pH5.5でのGBM-exoとiLNPの混合物の蛍光相互相関分光法(FCCS)を介して得られたグラフである。
図11図11は、pH5.5でのGBM-exoとiLNPの混合物の平均粒子直径の時間依存的変化(動的光散乱法(DLS)によりモニターされるもの)を示すグラフである。
図12図12は、pH5.5でのMCL-exoとiLNPの混合物の平均粒子直径および多分散指数の時間依存的変化(動的光散乱法(DLS)によりモニターされるもの)を示すグラフである。
図13図13は、pH5.5で混合の3、5、7、9、および18分後のiLNPとエキソソームの混合物の粒子分布を示す5つのヒストグラムを表示する。
図14図14は、iLNP、エキソソーム、およびハイブリドソームのNTAサイズ分布を重ね合わせて示すグラフである。
図15図15は、iLNP、エキソソームと非融合iLNP、またはハイブリドソーム中の対等な量のpDNAをトランスフェクション後72時間でのGFP発現細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフである。時間は、トランスフェクション時間を示す。
図16図16は、pDNA-iLNPのショ糖勾配の各密度画分中の(ナノ粒子の存在の指標となる)DLSによる1秒当たりの平均光子数を示すグラフである。
図17図17は、粒子密度に応じてプールしたものを用いてトランスフェクション後72時間でのGFP発現細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示すグラフである。
図18図18は、同量の精製ハイブリドソームをトランスフェクション後72時間でのGFP発現細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示すグラフである。時間は、トランスフェクション時間を示す。
図19図19は、精製IgGハイブリドソームをIgG二次抗体と共に24時間インキュベーション後のフローサイトメトリーの結果(コントロール:淡灰色、IgG二次抗体:灰色)を示すグラフである。
図20図20は、エキソソームとオリゴヌクレオチド含有iLNPとのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図21図21は、エキソソームと固形ナノ粒子をカプセル化したiLNPまたはオリゴヌクレオチド/ナノ粒子を共にカプセル化したiLNPとのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図22図22は、エキソソームとタンパク質をカプセル化したiLNPとのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図23図23は、エキソソームと表面修飾iLNPとのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図24図24は、MCL-エキソソーム単独、あるいは、微少流体の高速混合または押出成形により製造されるiLNPと混ぜたもののピレン融合アッセイの結果を示すグラフである。
図25図25は、標識化PMN-MVと融合バッファー中またはpH7.4での空iLNPおよび様々な種の積み荷をカプセル化したiLNPとのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図26図26は、融合バッファーまたはpH7.0のバッファー中での空iLNPと標識化PLT-MVとのR18融合アッセイの結果を示すグラフである。
図27図27は、NBD標識化iLNPを用いて作製したハイブリドソームまたはNBD標識化iLNP単独のもので1時間トランスフェクションしたJeko1細胞の平均蛍光強度(n=160個の細胞、エラーバーは標準誤差を示す)を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第一の観点において、本発明は、少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)と少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素を含むハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を提供する。
【0026】
本明細書中で使用される用語「ハイブリッド生体適合性担体」または「ハイブリドソーム」は、少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)(例、エキソソーム、微小胞、アポトーシス小体)と調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素(例、脂質、炭水化物、脂肪酸、ポリヌクレオチド、またはポリペプチド)を含むハイブリッド生体適合性担体を指す。特定の実施形態では、ハイブリドソームの内部体積の中に含まれるのは、インビボで分泌されるBDM由来の少なくとも一つの生理活性剤(例、内因性ポリヌクレオチド、酵素、またはポリペプチド)とインビトロ(in vitro)で製造されるEDEM中にカプセル化される少なくとも一つの生理活性剤である。別の実施形態では、ハイブリドソームの内部体積は、BDM由来の自然な構成要素のみを含み、そして、さらに処理される場合がある。本発明のハイブリドソームは、一つのBDMと一つのEDEM、いくつかのBDMと一つのEDEM、いくつかのEDEMと一つのBDM、又は、いくつかのBDMといくつかのEDEMを統合した結果生じる。統合事象は、BDMとEDEMのサイズ、それらの各電荷、および統合反応中に適用される条件(例、BDM/EDEM比、pH、温度、反応時間)を介して制御可能である。別々のユニットから新規組成物を組立てるそのような組立てユニット法は、新しいレベルの加工柔軟性を提供することができる。送達体要素と治療剤要素のこの統合は、さもなければ個々のシステムにより達成不能である得られるハイブリッド担体へユニークな性質を付与可能である。
【0027】
本明細書中で使用される「生体適合性送達モジュール(BDM)」は、脂質二重膜を含む自然に分泌される小胞(インビボで生産されて、細胞外環境中に放出されるもの)を指す。BDMは、各種細胞(限定はされないが、上皮細胞、腫瘍細胞、および他の免疫細胞(例、肥満細胞、TおよびBリンパ球、樹状細胞)を含むもの)により分泌される。本発明で使用されるBDMは、被験者、好ましくはヒト被験者から採取される生理液もしくは組織サンプルから単離されるか、または、培養培地から単離される。一つの特異的実施形態において、本発明で使用されるBDMは、細胞が自然なものか、あるいは、不死化および/または改変されたもののいずれかである細胞培養物に由来する。細胞培養物は均質(一つの型の細胞)または異種(いくつかの型の細胞)のものである場合があり、単離細胞および/または組織から構成されている場合もある。BDMは、生物(原核生物、真核生物、細菌、真菌、酵母、無脊椎動物、脊椎動物、爬虫類、魚類、昆虫、植物、および動物を含むもの)から単離可能であるか、または、その生物に由来してもよい。培養細胞から回収された培地(「条件培地」、細胞培地、または細胞培養培地)は、生体液である場合もある。
【0028】
BDMは当業者に知られる方法を使用して回収および単離可能である。例えば、限定はされないが、差動超遠心分離法、密度勾配超遠心分離法、ろ過、接線流ろ過(TFF)、流路をエッチング形成した膜の低圧ろ過、およびその組み合わせから選択される一又は複数の手法により、細胞培養物または組織上清からBDMを回収することができる。一つの実施形態では、本発明で使用されるBDMは、培養上清を遠心分離して、不要な細胞片をペレット化し、その後、超遠心分離してエキソソームをペレット化するか、密度勾配超遠心分離(例えば、ショ糖勾配)するか、またはそれら方法の組合せによって調製する。
【0029】
本発明に有用なBDMのサイズの範囲は、約30nm~約2000nmであり、BDMは生物学的に活性のある分子(例、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)を含む場合がある。BDMの例には、限定はされないが、「エキソソーム」(直径が約30nm~約200nm)、「微小胞」(直径が約100nm~約2000nm)、および「アポトーシス小体」(直径が約300nm~約2000nm)が含まれる。用語BDMは、「エキソソーム」、「微小胞」、「アポトーシス小体」、「膜粒子」、「膜小胞」、「エキソソーム様小胞」、「エクトソーム様小胞」、「エクトソーム」、または「エキソベシクル(exovesicles)」と互換的に使用される。BDM脂質二重膜は、ドナー細胞の膜に由来する。様々な細胞型に由来するBDMは、形質膜と比較すると、脂質組成に違いを示す。エキソソーム生成の間に、膜貫通タンパク質と表在性膜タンパク質は小胞膜中に埋め込み可能であり、そして、同時に、細胞質構成要素もまた、小胞中に取り込み可能である。
【0030】
本明細書中で使用される用語「内因性」は、細胞により自然に生産されて、その細胞由来の化合物を指す。例えば、BDMは、内因性ポリペプチドがBDMが由来する細胞中で生産された場合のそのポリペプチドを含む。
【0031】
担体、粒子、小胞、または分子に適用され、本明細書中で使用される用語「自然に分泌される」は、自然に見いだされるプロセスによって細胞、生物、または組織から環境へと放出される担体、粒子、小胞、または分子を指して言う。例えば、供給源から単離可能で、研究室において、ヒトによりその供給源の境界内から物理的に移されていないエキソソームは、自然に分泌されている。自然界において粒子を分泌するプロセスのさらなる非限定例は、細胞内器官の細胞膜との融合または細胞膜の小胞形成である。
【0032】
本明細書中で使用される「加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)」は、インビトロで生産された一又は複数の膜を含む小胞を指す。本発明で有用なEDEMは、限定はされないが、脂質系ナノ粒子(LNP)、リポソーム、ポリマー安定化LNP、セラソーム、スフィンゴソーム、ニオソーム、ポリマーソーム、合成ナノ粒子安定化LNP、コア-シェル型脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子、天然膜由来LNP、迅速に除去される脂質ナノ粒子(reLNP)、および天然膜でコーティングされたLNPから選択される。本発明で使用されるEDEMは、BDMとの統合の制御を可能にする少なくとも一つの構造特性を有する。一つの実施形態では、前記構造特性を、EDEMの一又は複数の構成要素である脂質二重膜(複数可)により提供する。一つの特定の実施形態では、本発明に使用されるEDEMは、イオン化可能なLNP(iLNP)である。
【0033】
本発明で使用させるEDEMは、各種形態を有する場合がある。EDEMは、一つの脂質二重膜、狭い水性区画で区分される一連の同中心二重膜(多層状小胞もしくはMLV)、または膜形成ポリマーのいずれかを含んでもよい。さらにまた、BDMと違って、EDEMはサイズと密度分布が実質的に均一である。本明細書中で使用されるEDEMの直径(平均粒径)は、約15~約500nmである。いくつかの実施形態では、EDEMの直径は、約300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、または50nm以下である。一つの特定の実施形態では、本発明で使用されるEDEMの直径は、約15~約150nmである。
【0034】
本発明で有用なEDEMは、特定の物理化学的性質を示すように製造される。各特定のEDEMの物理化学的性質は、そこに封入される活性剤(複数可)の性状と濃度、ポリマー膜または脂質二重膜(複数可)の膜組成、EDEMが分散された媒体の性状、EDEMのサイズおよび多分散指数に従って、変化する場合がある。本発明の一つの特定の実施形態では、EDEMは、イオン化可能なカチオン性脂質およびヘルパー脂質を含む脂質二重膜を含む。いくつかの実施形態では、本発明のハイブリドソームを生成するのに使用されるEDEMを、DlinDMA:Chol:DSPC:PEG-Cerのモル比(モル比40:40:17.5:2.5)に基づいて製造する。
【0035】
EDEMの製造は、例えば、以下の参考文献に開示される当該技術分野で既知の各種方法を介して実施可能である。それら方法には、例えば、超音波処理、押出成形、高圧/均質化、微少流体化、界面活性剤の透析、小型リポソームのカルシウム誘導性融合、および脂質膜水和法が含まれる。例えば、LNPは、過去に記載されたプレフォームド小胞(preformed vesicle)法を使用して作製可能である(Maurerら、2001年)。典型的には、その方法は、ポリカーボネート細孔膜を通してLNPを押出成形して、LNPサイズを詳細に規定されたサイズ分布に縮小する工程からなり、そして、後段階では、もし必要ならば、治療薬をプレフォームド小胞中に充填する。代替的には、EDEMは、微少流体システム中で、自発的自己集合化を介して調製可能である。そのような製造手法を用いて、詳細に規定されたサイズ分布を生み出す方法は、当該技術分野で既知である(Belliveauら、2012年)。好ましくは、本発明で使用されるEDEMは、BDMの亜集団とハイブリドソームとの分離を容易にするためにサイズと密度分布が実質的に均一である。その分離は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーおよび密度勾配遠心分離等の当該技術分野で周知の手法を使用して達成される。一つの特定の実施形態では、EDEMの密度はハイブリドソームのものより低く、それによって、ショ糖密度勾配遠心分離を介してEDEMからハイブリッド小胞の分離を容易にする。
【0036】
本明細書中で使用される「膜融合性部分」は、膜融合性脂質またはEDEMもしくはハイブリドソームの任意の他の膜融合性構成要素を指す。そのような膜融合性部分は、膜の分裂または膜と脂質二重膜との間の脂質混合を向上または可能にする。例えば、第一膜がEDEM由来である場合がある一方で、第二膜はBDMを含む。代替的には、第一膜がハイブリドソームの一つである場合がある一方で、第二膜は細胞外表面膜、エンドソーム膜、リソソーム膜、または核膜である。膜融合性部分は、EDEMまたは前記膜融合性部分を含むハイブリドソームと第二膜との相互作用を増加させ、それによって、膜脂質の混合および内部容積とカプセル化内容物との混合を促進する。代替的には、膜融合性部分は、細胞区画への侵入または細胞区画からの脱出を増加させる場合がある。そのような区画は、例えば、エンドソームまたは核であってもよい。ある実施形態では、膜融合性部分は、例えば、標的化因子(例、膜破壊性合成ポリマー)、または、例えば、pH応答型膜透過性ポリペプチド(例、メリチン)である場合がある。いくつかの実施形態では、膜融合性部分は、膜融合性セグメント(例、脂質の頭部基、脂質の尾部基、ポリマーのブロックまたは領域、ペプチドのセグメント)を含む場合がある。
【0037】
本明細書中で使用される用語「調整可能」が意味するのは、本発明の方法の反応条件(例、pH、温度、塩)を変えることによって、および/または、EDEMの膜融合性構成要素(例、イオン化可能な脂質、膜融合性脂質、pH応答性ポリマー、ヘルパー脂質、膜融合性標的化部分)の量を変えることによって、統合の前後に比較的に低い膜融合性を維持しながら、統合反応中に高い膜融合性特質をEDEMおよび/またはBDMに選択に付与することが可能となる。好ましくは、各ケースにおいて、膜融合性部分は、その所望の量(例、濃度)で調整可能な膜融合性を有することができる。膜融合性部分の膜融合性の特徴は、当該技術分野で既知の適するアッセイによって決定可能である。例えば、ポリマーの膜融合性は、インビトロ細胞アッセイ(例、赤血球溶血アッセイ)において決定可能である。エンドソーム分解ポリマー活性は、インビトロ細胞アッセイにおいて決定可能である。
【0038】
用語「膜融合性脂質」を使用して、高pH(つまり、約7.4のpH)での電荷または構造と比較して、脂質がより膜融合性になる結果を生じる低pH(つまり、約5.5のpH)で構造および/または電荷が変化する脂質を指す場合がある。これらの膜融合性脂質は、アニオン性脂質、中性脂質、またはpH応答性脂質であって、pHが約pH7から約pH4へと変化する場合に、脂質がより膜融合性となるように電荷または構造の変化が起こることを特徴とするものである場合がある。電荷または構造の変化は、その逆にpHが約4から約6になる場合にも起こる場合がある。他の実施形態では、温度が相転移温度(例、20℃)を超えて上昇する場合、膜融合性脂質は六角構造または円錐を形成するような構造をとるように構造が変化する。このタイプの別の膜融合性脂質が当該技術分野で知られていて、本明細書中で記載される製剤、複合体、および方法において使用可能である。これらの「膜融合性」脂質のいくつかの例は構造を変化させて六角構造を採る一方で、これらの脂質の他の例では電荷が変化する。これらの膜融合性脂質は、当該技術分野で「円錐形成」脂質と呼ばれるものを含む。また、用語「膜融合性脂質」を使用して、脂質のフレームワークが小型の断面の頭部基と大型のアシル鎖の断面の領域を含むように円錐形成する分子形状特性を示す脂質を指す場合もある。任意の特定の理論に拘束されることを望んではいないが、特定の温度(例、20℃)より高い場合、これらの脂質は非二重膜性六角HII相転移を誘導すると考えられている。
【0039】
本明細書中で使用される用語「脂質」および「リポイド」は、親油性尾部基にリンカー部を介して結合する極性頭部基を含む有機化合物群を指す。脂質の一般的特徴は、水には不溶であるが、多くの有機溶媒には可溶であることである。脂質は、通常、少なくとも3つのクラスに分けられる:脂肪と油を含む「単純脂質」;リン脂質と糖脂質を含む「複合脂質」;およびステロイド等の「誘導脂質」。用語「脂質」および「リポイド」は、互換的に使用可能である。
【0040】
本明細書中で使用される「ヘルパー脂質」は、中性脂質およびアニオン性脂質を含む安定化脂質を指す。本発明で使用されるいくつかのEDEMは、一又は複数のヘルパー脂質(例、コレステロールおよび1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC))を含むか、またはそれが濃縮している。中性脂質は、非荷電型であるか、または、生理学的pHで中性的両性イオン型のいずれかで存在するいくつかの脂質種を指す。代表的脂質には、限定はされないが、ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ならびに、ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン、ジパルミトイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホ-エタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)が含まれる。アニオン性脂質は、生理学的pHで負に荷電する脂質である。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルセリン、カルジオリピン、およびアニオン性修飾基で修飾された中性脂質が含まれる。
【0041】
本明細書中で使用される「イオン化可能なカチオン性脂質」は、選択されたpH(例、生理学的pHより低いもの)で正の総電荷を保持する脂質を指す。そのような脂質には、限定はされないが、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、ジオクタデシル-ジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチル-塩化アンモニウム(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチル-塩化アンモニウム(DOTMA);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、YSK05、4-(((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)-(メチル)アミノ)メチル)安息香酸(DOBAT)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、3-((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)(メチル)アミノ)プロパン酸(DOPAT)、N-(2-カルボキシプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス-(オレオイルオキシ)-プロパン-1-アミニウム(DOMPAQ)、N-カルボキシメチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOAAQ)、アルニー(Alny)-100、3-(ジメチルアミノ)-プロピル(12Z,15Z)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル]-ヘニコサ-12,15-ジエノエート(DMAP-BLP)、および、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)が含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、イオン化可能なカチオン性脂質はアミノ脂質である場合がある。本明細書中で使用される用語「アミノ脂質」は、一若しくは二の脂肪酸または脂肪アルキル鎖とアミノ頭部基(アルキルアミノまたはジアルキルアミド基を含むもの)を有する脂質であって、プロトン化されてカチオン性脂質を形成するものを含むように意味する。ある実施形態では、本発明のアミノ脂質またはカチオン性脂質は、生理学的pH(例、pH7.4)以下のpHで正に荷電し、そして、第二pHで、好ましくは生理学的pH以上で中性であるように、その脂質が少なくとも一つのプロトン化可能または脱プロトン化可能な基を有する。もちろん理解されるのは、pHの作用としてのプロトンの付加または除去が平衡化プロセスであり、荷電または中性脂質に言及することは主要な種の性状についての言及であることであり、それは、全脂質が荷電または中性型で存在することを必要としない。一より多いプロトン化可能または脱プロトン化可能な基を有する脂質あるいは双性イオン性の脂質は、本発明の使用から除外されない。
【0043】
一つの実施形態では、カチオン性脂質は、当該技術分野で既知の方法により合成可能であり、および/または国際公報番号WO2012040184、WO2011153120、WO2011149733、WO2011090965、WO2011043913、WO2011022460、WO2012061259、WO2012054365、WO2012044638、WO2010080724、WO201021865、およびWO2014089239;ならびに米国出願公開番号US20140309277(各々は本明細書中に参照によって完全に取り込まれる)に記載されている。
【0044】
留意すべきは、用語「イオン化可能」が、その分子構造中に少なくとも一つのイオン化可能部位を有する化合物を指して言い、必ずしも「イオン化された」を意味しないこと、つまり、イオン化可能カチオン性脂質はイオン化型、または、非イオン化型のいずれかである場合があることである。いくつかの特定の実施形態では、本発明で使用されるEDEMは、生理学的pHでハイブリドソームのカチオン性総表面電荷を正確に適合させるために上記イオン化可能なカチオン性脂質の組合せ物(例、DLinDMA、DLin-KC2-DMA、および/またはDLin-MC3-DMA)を含む。
【0045】
用語「pH応答性ポリマー」は、生理学的pH(つまり、約7.4のpH)での電荷または構造と比較して、ポリマーがより膜融合性になる結果を生じる低pHで構造および/または電荷が変化するポリマーを指す。本発明のいくつかの非限定実施形態では、ポリマーをアルキルアクリル酸(例、ブチルアクリル酸(BAA)またはプロピルアクリル酸(PAA))のホモポリマーで作製してもよいし、または、エチルアクリル酸(EAA)のコポリマーであってもよい。アルキルアミンのポリマーまたはメチルビニルエーテルもしくはスチレンとの無水マレイン酸コポリマーのアルキルアルコール誘導体もまた、使用する場合がある。いくつかの実施形態では、ポリマーは他のモノマーとのコポリマーとして作製可能である。他のモノマーを付加することは、ポリマーの能力を向上または有用な機能性を有する化学基を付加して、他の分子実体(標的化部分および/または他の補助材料(例、ポリ(エチレングリコール))を含むもの)との結合を容易にすることができる。これらのコポリマーには、限定はされないが、標的化部分に架橋可能な基を含むモノマーとのコポリマーが含まれる場合がある。
【0046】
一般的に、pH応答性ポリマーは、特定の特質を有する単量体残基から構成される。アニオン性単量体残基は、アニオンに荷電した又は荷電可能な種(プロトン化可能なアニオン性種を含む)を含む。アニオン性単量体残基は、ほぼ中性pHである7.2~7.4でアニオン性である場合がある。カチオン性単量体残基は、カチオンに荷電した又は荷電可能な種(脱プロトン化可能なカチオン性種を含む)を含む。カチオン性単量体残基は、ほぼ中性pHである7.2~7.4でカチオン性である場合がある。疎水性単量体残基は、疎水性種を含む。親水性単量体残基は、親水性種を含む。
【0047】
一般的に、各ポリマーは、ホモポリマー((基本的に同一の化学組成を有する)一つの単一型モノマーを重合して得られたもの)またはコポリマー((互いに異なる化学組成を有する)二以上の異なるモノマーを重合して得られたもの)である場合がある。コポリマーであるポリマーには、ランダム共重合体鎖またはブロック共重合体鎖(例、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、高次ブロック共重合体等)が含まれる。任意の所定のブロック共重合体鎖は、当該技術分野で既知の方法に従って、従来的に構成および実効化可能である。一般的に、各ポリマーは、直鎖ポリマーまたは非直鎖ポリマーである場合がある。非直鎖ポリマーは、各種構成(例、分岐ポリマー、ブラシポリマー、スターポリマー、デンドリマーポリマーを含むもの)を有する場合があり、そして、架橋ポリマー、半架橋ポリマー、グラフトポリマー、およびその組み合わせであってもよい。
【0048】
本明細書中で使用される用語「統合する」、「統合すること」、「統合」、または「融合」は、一又は複数のEDEMとBDMの膜および/または膜構成要素間の直接的相互作用を指す。用語「直接的相互作用」は、単純凝集、脂質交換、構造破壊、半融合、および融合を指す場合がある。用語「半融合」および「融合」は、BDMとEDEMの膜成分の部分的または完全な混合、および、融合粒子を形成する各BDM/EDEMに元々含まれる物質(例、活性剤、内因性タンパク質、または核酸)を含む共通内部空間の形成を指す。用語「融合効率」は、融合対象であるEDEMとBDMから生成されるハイブリドソームの相対量を指す。
【0049】
本明細書中で使用される用語「膜」は、脂肪族分子(例、脂肪酸、脂質分子、またはポリマー)を含む「シェル」のことを指し、内部区画を包み込む。そのように、この用語を用いて、脂質ナノ分子膜、ポリソーム膜、自然な分泌粒子膜、または任意の型の細胞(例、細菌、真菌、植物細胞、動物細胞、またはヒト細胞(例、上皮細胞))の膜を定義することができる。用語「膜」はまた、細胞内脂質二重膜(例、エンドソーム膜またはリソソーム膜および核膜)を含む。
【0050】
本発明者が驚くべきことに見出したのは、本発明のハイブリドソームが当該技術分野で既知の他の医薬担体に比べていくつかの利点(EDEMとBDMを物理的に統合して、各モジュールが呈する利点を相乗して得られる利点)を示すことである。一方、EDEMは、詳細に規定された物理化学的特質、調整可能な膜融合性、広い範囲の活性剤のカプセル化の高効率を有し、結合化学に必要な過酷な環境に耐え、そして、臨床用の製造要件を満たすように設計可能である。他方、BDMは、安全な毒性と免疫原性プロフィールを有し、標的(例、細胞、組織、または器官)に対する固有の特異性を示し、そして、生体内循環性に関して最適化される。従って、本発明のハイブリドソームは、治療法、イメージング、および診断応用に関して特に興味深い。幅広い種の活性剤は、インビトロでEDEM内に容易にカプセル化可能である。そして、前記EDEMを被験者由来の特異的BDMと統合することにより、個人別の活性剤含有生体適合性ハイブリドソームを作製する。本発明のハイブリドソームはまた、一又は複数の以下の利点も提示する:(a)細網内皮系(RES)のマクロファージから隔離されることの減少;(b)免疫系応答の減少;(c)循環での半減期の増加;(d)特異的に標的化され且つ標的化が向上した送達;ならびに治療効果および/または監視効果の増加。
【0051】
有利なことには、本発明のハイブリドソームの大きさは、非常に特異的且つ標的化される応用例に適合するように合わされる場合がある。従って、本発明のいくつかの実施形態では、ハイブリドソームを製造するのに使用されるEDEMとBDMの特異的構造的特徴は、ハイブリドソームを標的組織中へと分布させることを容易にするために選択可能である。例えば、固形がん組織を標的とするために、一又は複数の基本モジュール(EDEMまたはBDM)を選択して、得られるハイブリドソームの大きさが、固形がんの「漏れのある」脈管構造に見られる有窓間隙よりも小さくなる場合がある。そのようなやり方では、このように適合されたハイブリドソームは、脈管構造の開窓を通して血管外に容易に遊出することができ、そして、間質腔から腫瘍細胞を直接標的とすることができる。同様に、肝細胞を標的とするためには、一又は複数の基本モジュールを選択/設計して、得られるハイブリドソームが肝臓の肝シヌソイドを裏打ちする内皮細胞の開窓よりも小さくなる場合がある。そのようなやり方では、ハイブリドソームは、内皮細胞の開窓を容易に通過して、標的肝細胞に到達することができる。逆に、本発明のハイブリドソームは、その大きさのために、ある種の細胞または組織に分布するのを制限または回避するようなやり方で設計される場合もある。いくつかの特定の実施形態では、ハイブリドソームのサイズに含まれるのは、20~800nm、好ましくは50~400nm、より好ましくは100~200nmである。
【0052】
いくつかの特定の実施形態では、ハイブリドソームを作製するのに使用されるBDMおよび/またはEDEMは、受容体媒介エンドサイトーシス、クラスリン媒介およびカベオリン媒介エンドサイトーシス、貪食作用およびマクロピノサイトーシス、膜融合性、エンドソームまたはリソソーム分布、ならびに/あるいは、そのようなハイブリドソームに他の同様に分類される送達システムよりも利点を付与する放出可能な特性の中から、一又は複数のものに関与する。
【0053】
本発明に使用されるEDEMの細胞毒性および/または生体適合性は、脂質二重膜(複数可)中に含まれる脂質を具体的に選択することによって減り、従って、得られるハイブリドソームの生体適合性をさらに強化する。従って、本発明に使用されるEDEMは、毒性のあるトランスフェクション脂質(リポフェクタミンおよびHiPerFect)を欠き、そのような脂質は、一又は複数のイオン化可能なカチオン性脂質(例、DLinDMA、DLin-KC2-DMA、および/またはDlin-MC3-DMA)で有利に置換される。イオン化可能なカチオン性脂質を、EDEMの単独のイオン化可能な脂質(例、iLNP)として使用する場合があるか、あるいは、ヘルパー脂質および/またはPEG修飾脂質と組み合わせる場合もある。
【0054】
上述したように、EDEMを本発明のハイブリドソームの一つの構成要素として使用することは以下の実質的利点を提供する:(1)EDEMはラージスケールの方法によって生産可能であり、そして、大量のカプセル化活性剤(複数可)を生産可能である;(2)活性化剤のカプセル化効率が高い;(3)製造されたEDEMのサイズを制御して、得られるハイブリドソームが治療的に最適なサイズで生産可能となる場合がある;(4)EDEMがインビトロで生産されるという事実に起因して、非統合亜集団の分離を容易にするために、何らかの特異的構造特徴が維持可能である;(5)EDEMは結合化学に必要な過酷な環境に耐えることができる;および、(6)本発明で使用されるEDEMは、調整可能な膜融合性を有している。いくつかのEDEMを一又は複数のBDMと統合することができるので、互いに異なる活性剤(いくつかの理由(例、溶媒中の溶解度が異なる等)で一緒にカプセル化ができないと考えられるもの)をカプセル化するEDEMを別々に作製し、その後、前記互いに異なるEDEMを一又は複数のBDMと統合して、それにより全ての所望の活性剤を含むハイブリドソームを作製することを可能とする場合がある。
【0055】
いくつかの特定の実施形態では、本発明に使用されるEDEMを、標的化部分および/または安定化部分で修飾する。
【0056】
本発明で使用されるEDEMは、BDMサブユニットと比較して物理化学的安定性が向上する。従って、BDMが生理学的環境において良好な安定性を示す一方で、EDEMは結合化学と挿入後とに要求される多様な環境に耐えることができる。例えば、EDEMは、還元剤(例、ジチオトレイトール(DTT))と接触する際に、安定性を保持可能である。この安定性の向上と共に、本発明では、追加的賦形剤を使用することによって、EDEM表面を修飾することを考えている。一つの実施形態では、用語「修飾される」は、修飾済みEDEMが調製される元の製造済みEDEMと比べてその修飾済みEDEMの特徴を指して使用される場合がある。従って、「修飾される」は、EDEM製剤中の変化を指す場合もある。というのは、本発明のEDEM組成物は、膜融合性部分または追加的カチオン性、非カチオン性およびPEG修飾脂質に富んでいて、組織または細胞をさらに標的とすることができるからである。
【0057】
本発明で使用されるEDEMは、ハイブリドソームを特異的組織、細胞、または器官(例、心臓、肺、腎臓、および/または脳)に優先的に標的化するために調製可能である。例えば、EDEM(例、iLNP)は、標的細胞および組織への運搬の向上を実現するために調製可能である。
【0058】
本明細書中で使用される「標的化部分」は、インビトロでEDEMに(共有または非共有)結合されてハイブリドソームと標的細胞または標的組織との相互作用を促進することができる添加物である。本開示に使用される「結合」または「抱合」とは、二つの実体(ここでは、標的化部分と担体小胞)が、その二つの実体間の会合の治療/診断上の利益が実現されるに十分な親和力で会合することを意味する。例えば、標的化は、標的細胞または組織への送達を促進するためにハイブリドソーム中または上の一又は複数の標的化リガンド(例、モノクローナル抗体)を含ませることによって媒介される場合がある。標的組織による標的化リガンドの認識は、標的細胞および組織によるハイブリドソーム内容物の細胞内取り込みと組織分布を積極的に容易にする。適するリガンドを、その物理的、化学的、または生物学的特質(例、選択的親和力および/または標的細胞の細胞表面マーカーもしくは特徴の認識)に基づいて選択する。
【0059】
標的細胞のユニークな性質が活用され、従って、ハイブリドソームが標的細胞を非標的細胞から識別することを可能とするように、標的化リガンドを選択する。そのような標的化部分には、限定はされないが、任意のメンバーの特異的結合ペア、つまり、抗体、モノクローナル抗体およびその誘導体または類似体(可変領域(Fv)断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、F(ab’)断片、単一ドメイン抗体;抗体断片、ヒト化抗体、抗体断片;前記のものの多価バージョンのものを含むもの)が含まれる場合がある。
【0060】
考慮されるのは、一若しくは複数の標的細胞または組織への組成物の親和力を高めることができる一又は複数のリガンド(例、ペプチド、アプタマー、オリゴヌクレオチド、ビタミン、または他の分子)を含むハイブリドソームである。いくつかの実施形態では、標的化リガンド(例、グリコサミノグリカン)は、ハイブリドソーム内に埋め込まれるか又はカプセル化される脂質ナノ粒子の表面に広がっている場合がある。一つの実施形態では、ハイブリドソームは、多価結合試薬(限定はされないが、単一特異性抗体または二特異性抗体(例、ジスルフィド安定化Fv断片)、scFvタンデム((scFv)断片)、二重特異性抗体、三重特異性抗体、あるいは四重特異性抗体(典型的には、共有結合的に連結されるか、または他のやり方で安定化(つまり、ロイシンジッパーもしくは螺旋により安定化)されるscFv断片);および他の帰巣性を有する部分(例、アプタマー、受容体、および融合タンパク質が含まれるもの))を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、ハイブリドソームは、多重特異的親和力を用いる治療計画のために利用可能である。そこでは、ハイブリドソームは、少なくとも二つの異なる標的化部分であって、ハイブリドソーム表面に共有結合的に連結されるものを含む。第一標的化部分は細胞表面上の抗原または分子(すなわち、細胞表面抗原)に特異的に結合し、そして、第二標的化部分は細胞内標的に結合する。いくつかの実施形態では、第一標的化部分と第二標的化部分を、単一ポリペプチド鎖の中に含める。ある実施形態では、標的化部分のいくつか又は全ては、アミノ酸(天然、非天然、および改変アミノ酸を含む)、核酸、およびアプタマーまたは糖類から構成されている。ある実施形態では、標的化部分は小分子である。いくつかの実施形態では、細胞内標的化部分は、外因性であり、EDEMと結合される一方で、細胞外標的化部分はBDM上に存在して、インビボで生産される。別の実施形態では、インビボで生成される細胞内標的化部分はBDM上に存在する一方で、細胞外標的化部分はEDEMに結合される。
【0062】
二特異的な実施形態での「第一標的化部分」は、抗体、抗体様分子、ペプチド、または小分子(例、ビタミン類(例、葉酸))、糖類(例、ラクトースおよびガラクトース)、あるいは他の小分子であってもよい。細胞表面抗原は、内在化する任意の細胞表面分子(例、タンパク質、糖、脂質頭部基、または細胞表面上の他の抗原)であってもよい。本発明の文脈で有用な細胞表面抗原の例には、限定はされないが、テトラスパニン、EGF受容体、HER2/Neu、VEGF受容体、インテグリン、CD38、CD33、CD19、CD20、CD22、およびアシアロ糖タンパク質受容体が含まれる。
【0063】
二特異的な実施形態での「第二標的化部分」は、細胞内標的を認識する。この標的化部分は、特異的に、細胞内の膜表面または抗原(例、タンパク質)に結合する。ある実施形態では、細胞内標的化部分は、物質が所望の細胞内部位に局在するのを向上することができる。いくつかの実施形態では、第二標的化部分は、タンパク質性であり、ある実施形態では、抗体または抗体様分子である。他の第二標的化部分には、ペプチド(例、合成メリチンペプチド類似体)および有機高分子であって、そのサイズ(分子量が>500g)、電荷、または他の物理化学的特性のために、独立に細胞内に侵入することができないか、または、侵入しにくいものが含まれる。いくつかの実施形態では、第二標的化部分は核酸アプタマーである。第二標的化部分は、細胞質のタンパク質;形質膜の内側面、核膜、ミトコンドリア膜、または細胞内の他の膜に結合するタンパク質;あるいは核タンパク質または他の細胞内区画中のタンパク質に結合する場合がある。当業者に明白なのは、細胞内情報伝達の重要な機能を阻害する標的化部分が第二標的化部分として使用するのに良好な候補となることである。第二標的化部分は、タンパク質の活性を直接阻害するか、または、タンパク質の基質と相互作用するのを阻害する場合がある。さもなくば、第二標的化部分はタンパク質間の相互作用を阻害してもよい。
【0064】
さらなる実施形態には、ハイブリドソームの細胞内能動輸送を向上するための相補的で機能的な標的化部分を取り込んだものも含まれる。細胞内輸送が向上した例は、複数の自然な能動的細胞輸送システムを「ハイジャック」、「結合」、または「連動」させることができる標的化部分を採用することによって実現される。例えば、微小管モーター複合体のタンパク質の一つをモータータンパク質結合ペプチドと結合させることで、微小管輸送ネットワークに沿う能動輸送を可能とする。例示的なモータータンパク質には、限定はされないが、ダイニンおよびキネシンが含まれる。
【0065】
ある実施形態では、第二標的化部分は、二重の役割(すなわち、膜透過能および細胞内標的化機能)を所持している。例えば、ペプチドであるメリチンまたはその類似体は、低pHで膜相互作用能と細胞質中で核帰巣性機能を所持している。この二重の役割は、第二標的化部分のセグメントに帰属する可能性がある。例えば、核標的化機能は、同一の第二標的化部分内に含まれる核局在化配列(例、ペプチド配列「KRKR」)および両親媒性αへリックスセグメントを介して媒介される。従って、ある実施形態では、第二標的化部分の二重の役割は、ハイブリドソームに対して二つの相補的な機能を取り次ぐことができる。二重の目的の第二標的化部分で修飾された例示的ハイブリドソーム組成物を、以下の実施例中に記載する。
【0066】
さらにまた、本発明のEDEMを改変して、両親媒性の特質を有する分子(例、細胞透過ペプチド)を表面に提示するようにしてもよい。これらのペプチドは、きず、分裂を作り出すことによるか、または、細孔形成を通して二重膜の一体性を壊し、EDEMとBDMの相互作用を導く能力を特徴とする。そのようなペプチドの例は、TatおよびRev等のタンパク質から派生可能であると共にクロタミンまたはメリチン等の毒素に由来するペプチドである。本発明内で使用されるのに適する好ましいクラスの細胞透過ペプチドは、生理学的pHでは「不活性」であるが、低pH環境中では活性がある疎水性ドメインを含む。pHにより誘導されて構造が開き、疎水性ドメインが露出すると、その部分は脂質二重膜に結合し、EDEMとBDMとの間またはハイブリドソームとエンドソーム区画との間の相互作用を実効化する。膜融合性ペプチドの結合の代表的なものを、以下の実施例中に記載する。
【0067】
本発明で考慮されるのはまた、化学選択的で且つ生物学的に関係のない相補的な機能性分子をEDEM上または内に取り込んでBDMとの部位特異的統合を強化することである。例えば、EDEM脂質二重膜中に融合ペプチド(例、SNAREタンパク質(可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体)またはその合成模倣物)を取り込むことによって、EDEMとBDMとの間の受容体特異的相互作用を可能にする。
【0068】
一つの実施形態では、標的化部分のEDEMへの結合を容易にするため、PEG修飾脂質のモル比の一部分は、PEG修飾脂質をそのPEGの遠位端で機能的実体(例、マレイミド(例、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000])またはアミン基(例、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000])で置換する。代表的な結合方法を、以下の実施例中に記載する。
【0069】
本明細書中に記載されるEDEMは、脂質二重膜にアンカーされた遮蔽部分をさらに含む場合がある。本明細書中で使用される用語「安定化部分」は、ハイブリドソームに含まれるEDEM構成要素を通してハイブリドソームの表面特性を改変することができる分子を指す。安定化部分は、ハイブリドソームが互いにくっついたり、あるいは、血液細胞または血管壁(wails)に付着するのを阻害する場合がある。ある実施形態では、安定化部分を有するハイブリドソームは、被験者に投与される場合、免疫原性が減少する。一つの実施形態では、安定化部分はまた、被験者内で、ハイブリドソームの血液循環時間を増加させることができる。本発明で使用するための安定化部分には、当該技術分野で一般的に周知のものが含まれる。
【0070】
安定化部分の例には、限定はされないが、ポリエチレングリコール含有化合物、および、インビボまたはインビトロに存在する種への複合体の相互作用または結合を減少させる他の化合物(例、限定はされないが、デンドリマー、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリカルボキシレート、ポリサッカライド、および/またはヒドロキシアルキル(hydroxvalkyl)デンプン)(例、血清中の補体タンパク質、補因子、ホルモン類、またはビタミン類)が挙げられる。用語「PEG修飾脂質」は、限定はされないが、長さが20kDaまでのポリエチレングリコール鎖であって、炭素数6~20の長さのアルキル鎖(複数可)に共有結合されたものを指す。ある実施形態では、適するポリエチレングリコール-脂質には、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEG修飾セラミド類(例、PEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン類、PEG修飾ジアシルグリセロール類、およびPEG修飾ジアルキルグリセロール類が含まれる。一つの実施形態では、ポリエチレングリコール-脂質は、(メトキシポリエチレングリコール)2000-ジミリストイルグリセロール(dimyristolglycerol)(PEG-s-DMG)である。さらに、PEG修飾脂質の非限定例には、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DOMG)、およびN-アセチルガラクトサミン-((R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバメート))(GalNAc-PEG-DSG)が含まれる。
【0071】
本発明が考慮するのは、PEGがEDEM、BDM、および/またはハイブリドソームの表面上に提示される場合、脂質以外の化合物(例、ペプチド、疎水性アンカー若しくはポリマー、炭水化物、金属、または他のイオン)がPEGとの結合に使用されて、これらの化合物を脂質二重膜中へアンカーすることが可能となることである。
【0072】
BDMに話を向けると、本発明が考慮するのは、細胞質および形質膜中の生理活性分子はBDMの生成中に取り込まれて、結果として、BDMを活性剤の効率的ナノ粒子担体として利用可能にするユニークな機能特性を有するBDMを生じることである。この点、BDMは内因性の積み荷および活性剤の生物学的活性を保持しながら、BDMは活性剤を送達して、細胞および組織を標的とすることができる。特に、BDMは、進化的に最適化された血清中半減期ならびに標的組織および/または細胞との相互作用を示す。一又は複数のBDMが有する有利な送達能が、BDMを一又は複数のEDEMと統合後に、本発明のハイブリドソームに移される。さらにまた、BDMは内因性の生理活性成分をハイブリドソームに移送することができる。一つの特定の実施形態では、一又は複数のBDMを回収および使用して、ドナー細胞によってインビボで生産された内因性miRNA、ポリヌクレオチド、およびポリペプチドを本発明のハイブリドソームによって封入された空間内へ放出することを促進する。別の実施形態では、一又は複数のBDMを回収および使用して、ハイブリドソーム膜の構成要素としてのBDM膜中に埋め込まれた生理活性分子および/またはポリペプチドの移送を促進する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明に使用されるBDMは、病気または疾患(例、がん)に罹患するドナー被験者に由来する。任意の特定の理論に拘束されるわけではないが、期待されることは、被験者から回収されるBDMの少なくともいくつかが前記病気または疾患と関連する細胞を特異的に標的とする能力を有し、従って、その病気を監視または治療するために有利に使用可能であることである。さらにまた、本発明に使用されるBDMの構成要素は、特定細胞と相互作用してエンドサイトーシスを促進することができ、それによって特定細胞、細胞型、または組織へのカプセル化物質の標的送達を可能とする。任意の特定の理論に拘束されるわけではないが、本発明で使用されるBDMの標的細胞特異性は、BDMが由来する細胞型に依存する。例えば、B細胞またはグリオブラストーマ細胞由来のBDMを使用して、本発明のハイブリドソームを製造する場合がある。そのようなBDMは、内因性B細胞またはグリオブラストーマのインビボで生産される一又は複数の標的化部分をハイブリドソームに移して、それによって、そのハイブリドソームをB細胞またはグリオブラストーマに特異的なものとすることができる。また、ハイブリドソームを製造するのに使用されたBDMが由来する被験者中に再導入されるハイブリドソームは、そのハイブリドソームに移行されるBDM構成要素がそのハイブリドソームを前記被験者の免疫系と適合するものとすることが期待される。
【0074】
いくつかの実施形態では、BDMが由来する細胞は腫瘍細胞である。腫瘍細胞は、原発腫瘍細胞である場合があるか、または、例えば、継代、培養、増殖、不死化等によって腫瘍細胞から生み出される場合もある。従って、腫瘍細胞は、がん患者または前がん患者中の腫瘍由来であってもよいし、あるいは、腫瘍またはがん細胞株由来であってもよい。腫瘍細胞は、良性腫瘍または悪性腫瘍由来である場合もある。
【0075】
他の実施形態では、BDMが由来する細胞は感染細胞(すなわち、病原体を含む細胞)である。
【0076】
他の実施形態では、BDMが由来する細胞は変異細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、変異細胞は変異タンパク質またはミスフォールドしたタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、変異細胞は一又は複数のタンパク質を過剰発現する。いくつかの実施形態では、変異細胞は変性疾患(例、タンパク質病理の疾患)に関与する。いくつかの実施形態では、細胞は中枢神経系の細胞である。
【0077】
一つの実施形態では、本発明の医薬組成物は、内部区画にいかなる治療薬および/または診断薬をも含まないハイブリドソームを含む。そのようなハイブリドソームは、例えば、「空」のEDEMをBDMと統合することによって製造可能である。いくつかの特定の実施形態では、「空」のEDEMは、その膜中の何らかの構造要素であって、当該技術分野で既知の手法(例、エレクトロポレーション)を介して活性剤のさらなる積み込みを容易にするであろうものを含む。
【0078】
本明細書中で使用される「活性剤」または「生理活性剤」は、生きている生物(例、哺乳類(例、ヒト))と接触すると、生理学的結果(例、有益または有用な結果)を生み出す任意の化合物または化合物の混合物を指す。活性剤は、送達組成物の他の構成要素(例、担体、希釈剤、結合剤、着色剤等)から区別可能である。活性剤は、生きている被験者内の生物学的プロセスを調節することができる任意の分子およびその結合部分または断片である場合がある。ある実施形態では、活性剤は、病気の診断、治療、または予防に、医薬品の成分として使用される物質である場合がある。いくつかの実施形態では、活性剤は、生きている生物(例、哺乳類)の身体又はヒト中の標的部位に関する診断情報を得ることを容易にする化合物を指す。例えば、イメージング剤は、本発明においては活性剤として分類可能である。というのは、イメージング剤は診断に必要な撮像情報を提供する物質であるからである。
【0079】
いくつかの他の実施形態では、組成物のハイブリドソームは、一若しくは複数の治療薬および/または診断薬を含む。上記したように、これらの治療薬および/または診断薬を、まず、EDEM内にカプセル化し、その後、前記EDEMをBDMと統合することによって、ハイブリドソームの内部区画に移す。
【0080】
本明細書中で使用される「治療薬」は、生理学的または薬学的に活性のある物質であって、動物(例、哺乳類)中またはヒト中の標的部位において所望の生物学的効果を生み出すことができるものである。治療薬は、任意の無機または有機化合物である場合がある。治療薬は、動物(例、哺乳類またはヒト)中の病気、疾患、細胞増殖の発生または進行を減少、抑制、減弱、縮小、停止、または安定化可能である。例には、限定はされないが、ペプチド、タンパク質、核酸(siRNA、miRNA、およびDNAを含む)、ポリマー、および小分子が挙げられる。各種実施形態では、治療薬は、既に特徴が分かっているか、または、未だ特徴が分かっていない場合がある。
【0081】
一つの実施形態では、治療薬は、EDEMとBDMを統合する前に、EDEMまたはBDMの中に存在する場合がある。例えば、BDMは、そのBDMが由来する細胞に内在する一又は複数の治療薬(例、miRNA)を含む場合がある。そして、EDEMは、BDMとの統合前に一又は複数の治療薬(例、抗悪性腫瘍薬)を含む場合がある。活性剤をEDEM中にカプセル化する方法は当該技術分野で知られている(Bao,Mitragotri,&Tong,2013年)。代替的に、EDEMとBDMを統合後に、共有的または非共有的に細胞表面に結合すること、ハイブリドソーム膜への挿入を後で行うこと、または、ハイブリドソーム膜の中へと開いた細孔を介すること(エレクトロポレーション)によって、ハイブリドソームに治療薬を積み込んで、活性剤がカプセル化され容積内に侵入することを可能とする場合もある。
【0082】
本発明の治療薬はまた、各種形態で存在してもよい。そのような形態には、限定はされないが、非荷電分子、分子複合体、および薬学的に許容される塩(例、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、およびサリチル酸塩等)が含まれる。いくつかの実施形態では、治療薬は、金属、アミン、または有機カチオン(例、四級アンモニウム)の塩で修飾可能である。薬物誘導体(例、塩基、エステル、アミド)はまた、治療薬として使用可能である。水に不溶な治療薬は、その水溶性誘導体(例、塩基性誘導体)である形態で使用可能である。そのような例では、治療薬誘導体は、標的部位に送達する際に元の治療薬形態に変換される場合がある。そのような変換は、(酵素的切断、体内pHによる加水分解、または、その他の同様なプロセスを含む)各種代謝プロセスにより生じる場合がある。
【0083】
本発明で考慮される適切な治療薬には、限定はされないが、化学療法薬(つまり、抗悪性腫瘍薬)、麻酔薬、β-アドレナリンブロッカー、抗高血圧剤、抗うつ剤、抗けいれん剤、抗吐剤、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、抗マラリア剤、抗増殖剤、抗血管新生剤、創傷修復剤、組織修復剤、温熱治療剤、およびその組み合わせが含まれる。
【0084】
いくつかの実施形態では、適する治療薬はまた、限定はされないが、免疫抑制剤、サイトカイン、細胞傷害性薬物、核溶解化合物、放射性同位元素、受容体、およびプロドラッグ活性化酵素である。本発明の治療薬は、自然に分泌される場合もあるし、あるいは、合成方法もしくは組換え方法、またはその任意の組合せにより製造される場合もある。
【0085】
広い範囲の治療薬を、本明細書中に記載されるEDEMと合わせて使用してもよい。そのような治療薬の非限定例には、抗悪性腫瘍薬、抗感染剤、局所麻酔薬、抗アレルギー剤、抗貧血剤、血管新生阻害剤、β-アドレナリンブロッカー、カルシウムチャネル拮抗剤、抗高血圧剤、抗うつ剤、抗痙攣薬、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、駆虫薬、抗寄生虫剤、コルチコステロイド、ホルモン、ホルモン拮抗薬、免疫調整剤、神経伝達物質拮抗薬、抗糖尿病剤、抗てんかん薬、抗出血剤(anti-hemmorhagics)、抗高張剤、抗緑内障剤、免疫調整サイトカイン、鎮静剤、ケモカイン、ビタミン、毒素、催眠剤、植物由来薬剤(例、葉、根、花、種、幹、または枝の抽出物由来のもの)、およびその組み合わせが含まれる。
【0086】
各種実施形態では、古典的多剤耐性に影響される薬物は、本発明中の治療薬として特に実用性がある場合がある。そのような薬物には、限定はされないが、ビンカアルカロイド(例、ビンブラスチン)、アントラサイクリン(例、ドキソルビシン)、およびRNA転写阻害剤が含まれる。
【0087】
別の実施形態では、治療薬はがん化学療法薬である場合がある。適するがん化学療法薬には、限定はされないが、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア(nitrosorueas)、エチレンイミン、アルカンスルホン酸塩、テトラジン、白金化合物、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗代謝物質剤、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、ビンカアルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、およびホルモン剤が含まれる。
【0088】
本発明中で治療薬として使用される場合がある別のがん化学療法薬には、限定はされないが、アルキル化剤(例、シクロホスファミド);アルキルスルホン酸塩;アジリジン;エチレンイミンとメチルメラミン(methylamelamines);代謝拮抗剤;ピリミジン類似体;アドレナリン拮抗剤;葉酸補充剤;レチノイン酸;および上記の任意のものの医薬的に許容可能な塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0089】
本発明中での使用に適する別の治療薬には、限定はされないが、腫瘍でのホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤が含まれる。そのような抗ホルモン剤の非限定例には、抗エストロゲン剤(例、タモキシフェンおよびトレミフェンを含む);抗アンドロゲン剤(例、リュープロリド);および上記の任意のものの医薬的に許容可能な塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0090】
本発明の別の実施形態では、サイトカインを治療薬として使用する場合もある。そのようなサイトカインの非限定例は、リンホカイン、モノカイン、および典型的なポリペプチドホルモンである。さらなる例には、成長ホルモン(例、ヒト成長ホルモン、N-メチオニル ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン);副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン(例、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH));肝細胞増殖因子;繊維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-αおよび-β;ミューラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経増殖因子(例、NGF-β);血小板増殖因子;トランスフォーミング増殖因子(TGF)(例、TGF-αおよびTGF-β);インスリン様成長因子-IおよびII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロン(例、インターフェロン-α、βおよびγ);コロニー刺激因子(CSF)(例、マクロファージCSF(M-CSF)、顆粒球-マクロファージCSF(GM-CSF)、および顆粒球CSF(GCSF));インターロイキン(IL);腫瘍壊死因子(例、TNF-αまたはTNF-β);ならびに他のポリペプチド因子(LIFおよびKitリガンド(KL)を含むもの)が含まれる。本明細書中で使用される用語サイトカインは、天然供給源または組換え供給源由来のタンパク質(例、T細胞培養物由来のもの及び自然な配列のサイトカインの生理活性がある等価物)を含む。
【0091】
別の実施形態では、治療薬はまた、抗体ベースの治療薬である場合があり、その非限定例には、ハーセプチン(Herceptin)、アービタックス(Erbitux)、アバスチン(Avastin)、リツキサン(Rituxan)、シムレクト(Simulect)、エンブレル(Enbrel)、アダリムマブ(Adalimumab)、およびレミケード(Remicade)が含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態では、治療薬はナノ粒子である場合がある。そのようなナノ粒子の非限定例には、任意の金属および半導体系ナノ粒子が含まれ、それには、限定はされないが、金、銀、酸化鉄、量子ドット、または炭素カーボンナノチューブが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、熱アブレーションまたは温熱療法用に使用可能なナノ粒子であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、EDEMにアニオン性治療薬を積み込む。アニオン性治療薬には、負の総電荷を有するか、または、本ハイブリドソームのイオン化可能な脂質と相互作用することができる負帯電基を有する任意の治療薬が含まれる。そのような治療薬には、任意の既知または潜在的治療薬が含まれ、それには、限定はされないが、オリゴヌクレオチド、核酸、修飾核酸(例、タンパク質-核酸等)、負帯電基を有するタンパク質およびペプチド、および従来の薬物(例、負帯電基を有する植物アルカロイドおよび類似体)等の薬物および化合物が含まれる。元々アニオン性でない治療薬は、アニオン性基を用いて誘導体化して本発明で使用するのを容易にする場合がある。例えば、パクリタクセルはポリグルタミン酸基で誘導体化してもよい。
【0094】
一つの実施形態では、ハイブリドソームは、細胞中へ導入される負に帯電した核酸を含む。本発明中で使用する意図がある核酸の非限定例は、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、スモールまたはショートヘアピンRNA(shRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)RNA(crRNA)、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンス核酸、およびリボザイムである。本発明が考慮するのは、ハイブリドソーム中に含まれる核酸は、BDMが由来する細胞に対して内因性であるか、および/または、EDEMによってカプセル化される外因性核酸である場合があることである。
【0095】
いくつかの実施形態では、ハイブリドソームによってカプセル化されるポリヌクレオチドは、内因性核酸または遺伝子の発現を調節あるいはさもなくば減少または除去する目的の低分子干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスRNAをコードする。ある実施形態では、そのようなカプセル化ポリヌクレオチドは、性状が天然または組換えのものである場合があり、そして、センスまたはアンチセンス作用機序を使用して(例、標的遺伝子または核酸の発現を調節することにより)治療活性を発揮することができる。本明細書中で使用される用語「調節」は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を変えることを指す。調節は、増加または増強させることを意味してもよいし、あるいは、減少または減らすことを意味してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明のハイブリドソームは、目的ポリペプチドまたはタンパク質(例、ホルモン、酵素、受容体、または調節ペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ハイブリドソームは、さらにトランスフェクションに対して、さらにハイブリドソームを標的細胞へと標的化/トランスフェクションするのを容易にする場合がある機能的ポリペプチドを生産することができる生理活性剤を含む。ある実施形態では、本明細書中に記載されるハイブリドソームは、カプセル化物質(例、一又は複数のポリヌクレオチド)の送達と、標的細胞と相互作用した際にその後の放出を容易にする多重機能性戦略を採用する。
【0097】
典型的には、特定のがんの型に対するワクチンとして使用するための医薬組成物は、その特定のがんの型の腫瘍/がん細胞に由来するBDMを含むことになる。例えば、グリオブラストーマのがんワクチン中で使用するための医薬組成物は、グリオブラストーマの腫瘍/がん細胞から精製したBDMを標準的に含む。このように、BDMは、治療/保護される腫瘍/がん細胞上に提示される抗原に対する後天免疫を刺激する腫瘍関連抗原を含む。同じ起源/目的合致にすることが他の疾患にも適用される。
【0098】
一つの実施形態では、本発明で有用なBDMは、外膜由来の抗原を保持する小胞を形成する細菌外膜または寄生虫を破壊するかまたはそこから小疱形成することによって得られる任意のプロテオリポソーム性小胞である場合がある(国際公開WO2014122232およびWO201108027を参照されたい。各々は参照により完全に本明細書中に取り込まれる)。細菌および寄生虫由来のBDMは、BDMを免疫療法送達基盤のための魅力的な候補とする多くの特性:(i)強力な免疫原性、(ii)自己免疫賦活作用、(iii)哺乳類細胞と相互作用して、そして、膜融合または接着受容体を介する細胞接着を通して取り込まれる能力、および、(iv)組換え工学によって異種抗原の発現を組み入れる可能性、を有する。
【0099】
本発明のハイブリドソームと少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤を含む医薬組成物は、従って、各種病気および疾患の治療または予防に使用可能である。
【0100】
本明細書中で使用される「診断薬」は、被験者中で検出可能な構成要素または試験サンプルであり、そして、本明細書中でさらに説明される。いくつかの実施形態では、本発明の診断薬は、動物(例、哺乳類)の身体又はヒト中の標的部位に関する画像情報を提供する物質であってもよい。本発明で使用するための診断薬には、当該技術分野で既知の任意の診断薬が含まれる場合がある。
【0101】
診断薬は、各種やり方、つまり、検出可能なシグナル(限定はされないが、γ線放出シグナル、放射性シグナル、光学シグナル、蛍光吸収性シグナル、エコー生成シグナル、磁性シグナル、または断層撮影シグナルを含むもの)を提供および/または増強する薬剤として含ませることによって検出可能である。診断薬をイメージングする技術には、限定はされないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、光学イメージング、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射型断層撮影法(PET)、X線イメージング、およびγ線イメージング等が含まれる。
【0102】
一つの実施形態では、放射性同位元素は診断薬として働き、そして本明細書中で記載されるハイブリドソームへと取り込まれる。放射性同位元素には、γ線、陽電子、β粒子とα粒子、およびX線を放出する放射性核種が含まれる。適する放射性核種には、限定はされないが、225Ac、72As、211At、11B、128Ba、212Bi、75Br、77Br、14C、109Cd、62Cu、64Cu、67Cu、18F、67Ga、68Ga、H、123I、125I、130I、131I、111In、177Lu、13N、15O、32P、33P、212Pb、103Pd、186Re、188Re、47Sc、153Sm、89Sr、99mTc、88Y、および90Yが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、ペイロードは検出可能な薬剤(例、限定はされないが、各種有機小分子、無機化合物、ナノ粒子、酵素または酵素基質、蛍光物質、発光物質(例、ルミノール)、生体発光物質(例、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン)、化学発光物質)である場合がある。そのような光学的に検出可能な標識には、例えば、限定はされないが、オクタデシルローダミンB、7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル、4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジンと誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-(3-[ビニルスルホニル]フェニル)ナフタルイミド-3,6-ジスルホン酸ジリチウム塩、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、BODIPY、ブリリアントイエロー、クマリンと誘導体、シアニン染料、シアノシン、4’,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ブロモピロガロールレッド、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアネートフェニル)-4-メチルクマリン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、4,4’-ジイソチオシアネートジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4,4’-ジイソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、塩化ダンシル、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC)、エオシンと誘導体、エリスロシンと誘導体、エチジウム、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、X-ローダミン-5-(および6)-イソチオシアネート(QFITCまたはXRITC)、フルオレスカミン、n,n-ジエチルエタンアミンを有するテン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-,水酸化物,不活性塩化合物(1:1)(IR144)、5-クロロ-2-[2-[3-[(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾール-イリデン)エチリデン]-2-(ジフェニルアミノ)-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-3-エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩(IR140)、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4-メチルウンベリフェロン、o-クレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラローザニリン、フェノールレッド、B-フィコエリトリン、o-フタルジアルデヒド、ピレン、ピレンブチレート、スクシンイミジル1-ピレン、ブチレート量子ドット、リアクティブ・レッド4(Cibacron(商標)ブリリアントレッド3B-A)、ローダミンと誘導体、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンB塩化スルホニル、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミン・イソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、ロゾール酸、テルビウムキレート誘導体、シアニン-3(Cy3)、シアニン-5(Cy5)、シアニン-5.5(Cy5.5)、シアニン-7(Cy7)、IRD700、IRD800、Alexa647、La Jolta Blue、フタロシアニン、およびナフタロシアニンが含まれる。
【0104】
光学イメージングに関わる実施形態に関しては、診断薬は造影剤、例えば、半導体ナノ結晶または量子ドットである場合がある。光干渉断層撮影イメージングのための診断薬は金属(例、金または銀ナノケージ粒子)である場合がある。いくつかの実施形態では、診断薬は金属ナノ粒子(例、金または銀ナノ粒子)であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、診断薬には磁気共鳴(MR)のイメージング剤が含まれる場合がある。例示的な磁気共鳴剤には、限定はされないが、常磁性剤および超常磁性剤が含まれる。例示的な常磁性剤は、限定はされないが、ガドペンテト酸、ガドリニウム、ガドテリドール、またはガドキセト酸を含んでもよい。超常磁性剤は、限定はされないが、超常磁性酸化鉄およびフェリステンを含んでもよい。ある実施形態では、診断薬は、X線造影剤が含む場合がある。X線造影剤の例には、限定はされないが、イオパミドール、イオメプロール、イオヘキソール、イオペントール、またはメトリザミドが含まれる。
【0106】
上記治療薬と同様に、診断薬は各種やり方(例えば、ハイブリドソーム中に埋め込まれ、カプセル化され、または繋ぎ止められることを含むもの)でハイブリドソームと会合可能である。いくつかの実施形態では、診断薬は、粒子表面に共有的または非共有的に結合可能な金属イオン錯体/結合体であってもよい。いくつかの実施形態では、診断薬は、ハイブリドソームの表面に共有的または非共有的に結合可能な放射性ヌクレオチドであってもよい。同様に、診断薬の積み込みは当該技術分野で既知の各種方法を通して実施可能である。診断薬のEDEMへの積み込みの一つの例が実施例の章に見いだされる。
【0107】
従って、本発明の一つの実施形態は、活性剤(低、診断薬および/または治療薬)を含む場合がある少なくとも一つのEDEMを含むハイブリドソームに関する。ハイブリドソームは、病気または症状(がん等の病気を含むもの)を治療し、監視し、予防し、ステージ決定し、および/または診断するための組成物の一部として使用可能である。このことは、例えば、ハイブリドソーム中で治療薬と診断薬を組み合わせることによって実現される場合がある。このことを、また、治療薬を積み込んだ第一亜集団と診断薬を積み込んだ第二亜集団を含むハイブリドソームを投与することにより実現してもよい。別の実施形態では、本発明は、診断薬を投与することにより診断可能な病気または症状の診断方法であって、本発明のハイブリドソームを診断を必要とする被験者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0108】
本発明のハイブリドソームと少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤を含む医薬組成物は、従って、診断応用例に使用可能である。
【0109】
さらなる観点では、本発明は、BDM中に取り込まれた活性剤が一又は複数の疾患関連抗原(例、腫瘍抗原)に対して免疫を誘導するハイブリドソームを含む医薬組成物を提供する。考慮されるのは、免疫応答を誘導可能なハイブリドソームを含む医薬組成物が、例えば、がん又は感染に対する免疫療法の面で有用である場合があるということである。
【0110】
いくつかの実施形態では、BDMはインビボで生成される疾患関連抗原(例、一又は複数の腫瘍関連抗原、一又は複数の病原体関連抗原、あるいは一又は複数の変性疾患関連抗原)を含む。用語「疾患関連抗原」は、非疾患関連細胞と比べて異常な構造および/または異常な発現パターンを有数る疾患関連細胞中で生産されるタンパク質に関わる場合がある。異常タンパク質はまた、がんウイルス(例、EBVおよびHPV)に感染した細胞によっても生産される。例えば、いくつかの実施形態では、BDMは被験者中で望ましい免疫応答を刺激することができる抗原を提示することに非常に適している。この利点が生じる場合があるのは、BDMが人工的に合成されるというよりはむしろ、細胞により生産され、従って、「自然」な抗原を提供するからである。つまり、細胞により生産され且つBDM中に見いだされる抗原は、被験者中で免疫細胞によって経験される抗原と同様な程度で、細胞によってプロセス(例、糖鎖付加等)され及び折りたたまれる全長ペプチドである場合がある。タンパク質に加えて、細胞表面の糖脂質および糖タンパク質のような他の物質も、疾患関連細胞において異常な構造を有し、従って、免疫系の標的となる可能性がある。そのように、BDMの抗原は、例えば、がんに対するワクチンまたは治療において活用される場合がある。いくつかの実施形態では、従って、一又は複数の抗原は、それぞれ、がん細胞抗原を含んでもよい。非限定例として、がん細胞抗原は、胎盤型アルカリホスファターゼ、p53、p63、p73、mdm-2、プロカテプシン-D、B23、C23、PLAP、CA125、MUC-1、cerB/HER2、NY-ESO-1.SCP1、SSX-1、SSX-2、SSX-4、HSP27、HSP60、HSP90、GRP78、TAG72、HoxA7、HoxB7、EpCAM、ras、メソテリン、サバイビン、EGFK、MUC-1、およびc-mycであってもよい。
【0111】
別の実施形態では、BDMは抗原提示細胞由来である。本発明で特に考慮するのは、BDMが疾患にかかった抗原提示細胞由来であることである。特定の実施形態では、BDMは慢性リンパ性白血病(CLL)およびマントル細胞リンパ腫由来の腫瘍関連抗原を含む。非限定例では、BDMは、チロシン-タンパク質キナーゼ膜貫通受容体ROR1を有するマントル細胞リンパ腫に由来する。
【0112】
さらなる観点では、本発明は、被験者の免疫系の有害な活性化および/または過剰反応を回避するために、BDM中に取り込まれた活性剤が、例えば、自己免疫疾患、感染、アレルギー、およぶ移植の面で望ましい免疫抑制能を組成物に発揮させるハイブリドソームを含む医薬組成物を提供する。この観点は、一又は複数の免疫抑制剤を提示するBDMを単離することによって実現可能である。一つの実施形態では、前記BDMは、同種/異種間の細胞移植または遺伝子療法の結果発生する免疫反応を阻害する。実施例の章に示すように、一つの実施形態は、血小板および活性化多形核好中球から単離される免疫抑制性BDMを含む。
【0113】
さらなる観点では、本発明は治療薬の送達用のハイブリドソームを含む医薬組成物を提供する。
【0114】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、単回または複数回の投薬で投与される物理的に互いに異なるユニットであって、各ユニットが所定量の少なくとも一つの医薬活性成分と医薬的に許容可能な賦形剤から選択される少なくとも一つも他の成分とを含むものを含む組成物を指す。例えば、本発明は、生きている生物の組織または細胞への一又は複数の活性剤の標的送達のためのハイブリドソームを含む医薬組成物を提供する。さらなる例では、本発明は、インビトロでの組織または細胞への一又は複数の活性剤の送達のためのハイブリドソームを含む医薬組成物を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明のハイブリドソームは、動物(例、哺乳類)またはヒトの標的細胞または組織への活性剤(例、治療薬および/または診断薬)の送達システムとして使用可能である。ある実施形態では、本発明は標的細胞または組織中に活性剤を導入する方法を提供する。本発明の粒子には、幅広い種の治療薬および/または診断薬が含まれる。別の観点では、本発明は被験者に治療薬および/または診断薬を投与する方法を提供する。本方法中では、治療薬および/または診断薬を含む本発明のハイブリドソームをその必要のある患者へ投与する。ある実施形態では、活性剤(例、治療薬および/または診断薬)の送達は、治療手段を構成する場合がある。
【0116】
用語「療法」または「治療」は、哺乳類のような個人(例、しばしば患者と称されるヒトまたは動物)の症状の有益な変化を生み出すことが意図されるプロセスを指す。有益な変化には、例えば機能回復、症候の緩和、病気、疾患、または症状の進行の制限または遅延、あるいは、患者の症状、病気、または疾患の悪化の予防、制限、または遅延の内の一又は複数のものが含まれる。そのような療法には、通常、ハイブリドソームによって活性剤を投与すること等が含まれる。
【0117】
用語「治療すること」は、当該技術分野で認識されるもので、そして、病気、疾患、および/または症状に罹り易いが、まだそれを有するとは診断されていないヒトまたは生きている生物(例、哺乳類)中で、その病気、疾患、または症状が起こるのを予防すること;その病気、疾患、または症状を阻害すること(例、その進行を妨げること);およびその病気、疾患、または症状を緩和すること(例、その病気、疾患、または症状の退縮を引き起こすこと)を含む。病気または症状を治療することには、その基礎となっている病態生理が影響を受けなくても、特定の病気または症状の少なくとも一つの徴候を改善すること、例えば、鎮痛剤が痛みの原因を治療しなくても鎮痛剤を投与することによって、被験者の痛みを治療することが含まれる。
【0118】
上記したように、本発明のハイブリドソームは、治療されるのが望ましい疾患のタイプに依存して選択可能な治療薬を含む場合がある。例えば、ある種のタイプのがん又は腫瘍(例、白血病、リンパ腫、骨髄腫、癌腫、および肉腫と共に固形腫瘍および混合腫瘍)は、同じまたは、もしかすると、互いに異なる治療薬の投与が関与する場合がある。
【0119】
当業者はまた、本発明のハイブリドソームは各種目的に使用可能であることを認識する。本発明の方法は先行技術の方法よりも多数の利点を有する。活性剤を使用して患者を治療する方法は長年用いられてきた。しかしながら、先行技術の方法のほとんどでは、疾患に罹患している特定の部位に標的化されることなく、ヒトまたは動物の身体全体に、活性剤を通常送達していた。従って、先行技術の方法では、活性剤は生物全体に均一に分配される。先行技術の一つの欠点は、ヒトまたは動物の身体の罹患していない領域もまた、活性剤に影響を受ける場合があることである。さらにまた、活性剤のほんの少しの部分しか疾患部位で作用しない可能性がある。
【0120】
本発明で考慮されるのは、ハイブリドソームは、適量のカプセル化物質(例、治療薬および/または診断薬)が標的細胞または組織に送達される確率を改善し、その後、統合されていなかったモジュールまたはそのカプセル化内容物と関連する潜在的全身性副作用または毒性を最小化する。例えば、EDEM(例、iLNP)が一又は複数のイオン化可能な脂質を含むか、さもなくばそれが豊富にある場合、一又は複数の標的細胞の脂質二重膜での相転移によって、標的細胞中へのカプセル化物質(例、脂質ナノ粒子にカプセル化される一又は複数の活性剤)の送達を容易にすることができる。同様に、ある実施形態では、本明細書中に開示される化合物を使用して、インビボでの毒性が減少することを特徴とするハイブリドソームを調製可能である。ある実施形態では、より少量の本明細書中に開示される組成物を被験者に投与して所望の治療応答や結果を達成するように、毒性の減少はその組成物に伴う高いトランスフェクション効率の関数となる。
【0121】
本発明のハイブリドソームは、カプセル化して、一又は複数の標的細胞および/または組織へとカプセル化物質(例、一又は複数の活性剤)の放出することを容易にするように設計可能である。例えば、ハイブリドソームが一又は複数の膜融合性脂質を含むか、または、さもなくば、それが豊富にある場合、一又は複数の標的細胞の脂質二重膜中での相転移および脂質二重膜の破壊が起こる可能性が高いので、カプセル化物質(例、ハイブリドソーム中にカプセル化される一又は複数の活性剤)の送達を容易にすることができる。
【0122】
同様に、ある実施形態では、イオン化可能な親水性頭部基を有する脂質のEDEM中への取り込みは、ハイブリドソームにカプセル化された内容物のエンドソームまたはリソソーム放出を助長する役割がある場合がある。そのような放出の増強は、プロトン-スポンジによって媒介される破壊機構(EDEMの内の化合物の能力で、エンドソームの酸性化を緩衝することができて、次に、浸透圧による膨張とエンドソームまたはリソソームの脂質膜の破壊とを助長して、そして、標的細胞中へ、EDEM内にカプセル化された積み荷の細胞内放出を容易にするもの)によって実現される。
【0123】
別の実施形態では、本発明のハイブリドソームはまた、治療に関して少なくとも一つの以下の追加的利点を提供することができる。(1)送達システムの循環時間の増加;(2)患者由来のBDMを使用し、任意に、安定化部分を追加することによるハイブリドソームのRES取り込みの減少;(3)安定してカプセル化できることに起因する、ハイブリドソーム内からの積み荷の早期放出の防止;(4)内因性BDM構成要素の存在による、被験者の身体に導入される際の免疫系応答の減少;(5)BDM上の内因性標的化部分またはEDEMに繋ぎ止められた外因性標的化部分に起因する、脈管構造内の生体バリアーを通過するハイブリドソームのトランスサイトーシスの増加;(6)疾患部位(例、腫瘍部位)でのハイブリドソームの蓄積の増加;(7)BDMを起源とする内因性標的化部分による標的細胞のエンドソーム内への内在化の増加と、EDEMによって供給される膜融合特性に起因する、それに引き続くエンドソーム放出、がある。
【0124】
上で議論したように、ある実施形態では、本発明のハイブリドソームは、活性剤を優先的に疾患部位に送達することを可能とする。そのような標的送達はまた、高用量の活性剤を回避することも可能とする。そのような標的送達は、活性剤の効能を増強する場合がある。このことは、従って、各種活性剤の高用量投与と関連する毒性のある副作用、または、担体それ自身(例、脂質、外因性標的化部分)と関連する作用を阻害するのに役立つ。ある実施形態では、身体の関係ない領域に影響を与えることなく、標的化様式で低容量の活性剤で病気を治療または検出することをも可能とする場合がある。
【0125】
本発明がまた考慮するのは、インビボおよびインビトロでトランスフェクションが困難であることが当該技術分野で知られている細胞型(例、幹細胞および免疫細胞)に活性剤をうまく送達することを容易にすることができる内因的に利用可能な標的化部分を有するBDMを含むハイブリドソームである。例えば、EDEM単独では細胞内取り込みが低い一方で、白血球由来BDMを含むハイブリドソームの細胞内取り込みが向上する場合がある。
【0126】
本発明のハイブリドソームは、多くの疾患および症状(例、炎症(例、がん関連炎症))を治療、監視、予防、および/または診断するために使用可能である。ある実施形態は、同一または、もしかしたら、互いに異なる治療薬の疾患または症状の罹患部位への送達に関与する場合がある。いくつかの実施形態では、本発明の送達システムは、がんに関する応用例(例、がん性症状(例、悪性腫瘍細胞)の治療、監視、予防、および/または診断用のもの)に特に有用である場合がある。そのような実施形態では、本発明のハイブリドソームは、がん(例、腫瘍)に罹患する部位へ、活性剤(例、治療薬および/または診断薬)を送達するために使用可能である。治療、監視、予防、および/または診断可能ながん性症状の非限定例には、限定はされないが、白血病、リンパ腫、皮膚がん(メラノーマ、基底細胞がん、および扁平上皮がんを含むもの)、頭部および首の上皮がん、肺がん(扁平がんまたは類表皮がん、小細胞がん、腺がん、および大細胞がんを含むもの)、乳がん、胃腸管がん、甲状腺の悪性腫瘍、骨と軟部組織の肉腫、卵巣がん、卵管がん、子宮がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、膀胱がん、腎細胞がん、膵臓がん、ならびに肝細胞がんが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明は固形腫瘍を特徴とするがんを有する被験者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患は、がん及びパーキンソン病からなる群より選択される。
【0127】
別の実施形態では、本発明のハイブリドソームを使用して活性剤をウイルス感染細胞へと送達するのに使用してもよい。そのような実施形態では、本発明のハイブリドソームは、ウイルス感染を治療、監視、予防、および/または診断するために使用可能である。
【0128】
いくつかの形態では、本発明のハイブリドソームは、被験者の炎症部位を標的とするために使用可能である。従って、そのような実施形態では、本発明のハイブリドソームは、炎症に伴う症状または疾患を治療、予防、監視、および/または診断するために使用可能である。代表的症状には、限定はされないが、アレルギー;喘息;アルツハイマー病;糖尿病;ホルモン失調;自己免疫疾患(例、関節リウマチと乾癬);変形性関節症;骨粗鬆症;アテローム性動脈硬化症(冠状動脈疾患を含むもの);血管炎;慢性炎症性症状(例、肥満)潰瘍(例、マルジョラン潰瘍);アスベストまたはタバコ喫煙が原因の呼吸器炎症;包皮炎症;ウイルス(例、ヒトパピローマウイルス、BまたはC型肝炎ウイルス、あるいはエプスタイン・バーウイルス)が原因の炎症;住血吸虫症;骨盤の炎症性疾患;卵巣上皮炎症;バレット異形成;ピロリ菌(H.pylori)胃炎;慢性膵炎;中国肝吸虫の寄生;慢性胆嚢炎と炎症性腸疾患;炎症関連がん(例、前立腺がん、大腸がん、乳がん);胃腸管がん(例、胃がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、上咽頭がん、食道がん、胆管がん、胆嚢がん、および肛門性器がん);外被がん(例、皮膚がん);気道がん(例、気管支がん及び中皮腫);泌尿生殖路がん(例、包茎、陰茎がん、および膀胱がん);ならびに生殖器系がん(卵巣がん)が含まれる。本発明のハイブリドソームは、限定はされないが、化学療法および放射線療法を含む他の既知の疾患治療方法と組み合わせるか、または、同時に使用することができる。
【0129】
一つの実施形態では、本発明は標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現調節方法を提供する。これらの方法は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節することができる核酸と結合する本発明のハイブリドソームと細胞を接触させる工程を含むのが一般的である。
【0130】
関連する実施形態では、本発明は、被験者中でポリペプチドの過剰発現を特徴とする病気または疾患の治療方法であって、前記被験者に本発明のハイブリドソームを提供する工程を含み、治療薬が、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNA、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現可能なプラスミドから選択され、ならびに、前記siRNA、マイクロRNA、又はアンチセンスRNAが、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖に特異的に結合するポリヌクレオチドを含む、方法を提供する。
【0131】
これらの方法は、細胞内(例、核内)送達が起こるのに十分な時間、本発明のハイブリドソームを細胞と接触させることによって実施可能である。典型的な応用例は、周知の手順を使用してsiRNAの細胞内送達を行い、特異的細胞性標的をノックダウンまたはサイレンシングする工程を含む。代替的には、応用例は、治療的に有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列を送達する工程を含む。このように、遺伝子産物を欠失するか、または、存在しないようにして遺伝子疾患用の治療を提供する。
【0132】
また、本発明で考慮されるのは、本明細書中に記載されるハイブリドソームによって、標的細胞へ一又は複数のユニークなカプセル化物質を同時送達することである。従って、特定の実施形態を使用し、ユニークな活性剤を有する二つのユニークなEDEMを一つのハイブリドソームに併合することにより、単一の疾患または欠乏症を治療してもよく、そこでは各活性剤が違った作用機序で機能する。例えば、本発明のハイブリドソームは、カプセル化ポリヌクレオチド(機能不全の内因性ポリヌクレオチドおよびそのタンパク質または酵素産物を不活性化または「ノックダウン」することを意図するもの)を含むEDEMとカプセル化酵素(代わりの酵素を提供することを意図するもの)を含む第二EDEMの両者を併合する場合もある。ある実施形態では、診断薬(例、金ナノ粒子)を含むEDEMは、ハイブリドソームにおいてBDMと融合されて疾患を治療し、および診断的可視化技術を通して罹患細胞または器官を位置決めすることができる。代替的には、本発明の特定の実施形態は、二つのユニークなBDMを同一のEDEMと併合することにより、例えば、二つのユニークな内因性に生産されるポリヌクレオチド(例、miRNA)を共に送達するのを容易にする場合がある。
【0133】
本発明の一実施形態は、標的細胞内またはそれから分泌されるタンパク質および/または酵素の欠損に関係する病気または疾患の治療に適している。例えば、疾患(例、嚢胞性繊維症)の症状は、本発明の組成物を提供することにより改善可能である。本発明が有用な疾患には、限定はされないが、複数の疾患(例、ポンペ病、ゴーシェ病、βサラセミア、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋ジストロフィー(例、デュシェンヌ型およびベッカー型)、血友病、SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ガラクトース血症、嚢胞性繊維症(CF)、ガラクトセレブロシダーゼ欠乏症、フリードライヒ運動失調症、ペリツェウス・メルツバッヘル病、およびニーマン・ピック病)が含まれる。
【0134】
さらに、本発明は、抗原を提示できるBDMとEDEM含有アジュバントの共送達に基づく高度に免疫原性のワクチンの開発用の新規基盤を提供する。抗原提示BDMとアジュバントの併合送達は、治療的ワクチンが、以下の二つの要素の主要な特性を活用することによって自然免疫応答を誘起するための有望な方法を代表する:(1)EDEMにより提供される強力な免疫賦活作用;および(2)BDMにより提示され且つ標的疾患と関連する抗原(複数可)に対する特定の後天免疫応答。例えば、BDMが提示することがあるのは、任意の疾患関連抗原(例、がん治療用の一又は複数の腫瘍関連抗原、感染治療用の一又は複数の病原性抗原、あるいは特に免疫不全症状用および/または強い免疫増強が必要とされる場合(例、老人における)の任意の他の抗原または他の疾患関連抗原の組合せ)である。また、本発明は、ワクチン(例、がん、肝炎、インフルエンザ、マラリア、およびHIVに対するワクチン)に重要な強い免疫応答を誘導するハイブリドソーム組成物を提供する。本発明はまた、患者の免疫系に対して抗原の組合せを提示することが有益である可能性のある任意の療法にも有用である。
【0135】
さらなる実施形態では、免疫応答は疾患関連抗原を含む場合があるハイブリドソームを送達することにより誘起可能である(米国出願公開第20120189700号;参照により完全に本明細書中に組み込まれるもの)。一つの実施形態では、EDEMはワクチン(例、限定はされないが、病原体またはがんに対するもの)に使用するために製剤化可能である。
【0136】
一つの実施形態では、EDEMはワクチンとして使用するために製剤化される。一つの実施形態では、EDEMは少なくとも一つの改変核酸分子および/またはmRNA(少なくとも一つの抗原をコードするもの)をカプセル化する場合がある。非限定例として、EDEMは、ワクチンの投与形態として、少なくとも一つの外来抗原と賦形剤を含む場合がある(国際公開WO2011150264および米国出願公開第US20110293723号を参照されたい。各々は参照により完全に本明細書中に組み込まれる)。ワクチンの投与形態は、本明細書中に記載の方法、当該技術分野で既知の方法、および/または国際公開WO2011150258と米国出願公開第US20120027806号(各々は参照により完全に本明細書中に組み込まれる)に記載の方法によって選択可能である。
【0137】
一つの実施形態では、EDEMは少なくとも一つのアジュバントを含んでもよい。別の実施形態では、EDEMは少なくとも一つの治療薬および少なくとも一つのアジュバントを含んでもよい。非限定例として、アジュバント含有EDEMは、国際公開WO2011150240および米国出願公開第US20110293700号(各々は参照により完全に本明細書中に組み込まれる)中に記載される方法により製剤化可能である。
【0138】
一つの実施形態では、EDEMは、ウイルス由来のペプチド、断片、または領域をコードする少なくとも一つの外因性疾患関連抗原をカプセル化する場合がある。非限定例として、EDEMは、限定はされないが、国際公開WO2012024621、WO201202629、WO2012024632ならびに米国出願公開第US20120064110号、US20120058153号、およびUS20120058154号(各々は参照により完全に本明細書中に組み込まれる)中に記載される抗原を含む場合がある。
【0139】
本発明のハイブリドソームを使用して、インビトロまたはインビボで、治療薬を細胞または組織へ送達してもよい。その方法と製剤は、そのような治療に許容可能な任意の病気または疾患の治療のための任意の適する治療薬の送達に容易に適合可能である。本発明の方法は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施可能である。例えば、本発明のハイブリドソームはまた、当業者に既知の方法を使用して、核酸を細胞にインビボで送達するために使用することができる。さらなる観点では、本発明は、本発明のハイブリドソームと医薬的に許容可能な希釈剤を含む医薬組成物を提供する。医薬的に許容可能な希釈剤の例には、静脈注射用溶液(例、生理食塩水またはデキストロース)が含まれる。組成物はまた、クリーム、軟膏、ゲル、懸濁物、またはエマルジョンの形態を採ることもできる。
【0140】
インビボ投与に関しては、本発明のハイブリドソームを含む医薬組成物は、好ましくは、非経口的(例、動脈内、静脈内、腹腔内、皮下、または筋中)に投与される。特定の実施形態では、医薬組成物を、ボーラス注射で静脈内または腹腔内に投与する。他の投与経路には、局所(皮膚、眼、粘膜)、経口、肺、鼻腔内、舌下、直腸、および膣が挙げられる。さらにまた、医薬組成物は、眼への投与に適するように調製可能である。そのような製剤は、例えば、点眼形態(例えば、水性または油性液体賦形剤中の活性成分が0.1/1.0%(w/w)である溶液および/または懸濁液を含むもの)である場合がある。そのような液滴はさらに、緩衝剤、塩、および/または一若しくは複数の他の任意の追加的成分(本明細書中に記載されるもの)を含む。
【0141】
さらなる観点では、本発明は診断薬の送達用の上記医薬組成物を提供する。
【0142】
治療用活性剤の送達の他に、本発明のハイブリドソームは疾患または症状に罹患する組織および細胞の検出と共に進行または治療後の再発を検出する手段を提供可能である。現状の非侵襲型イメージングは、腫瘍内の代謝産物とアミノ酸代謝の増加を利用する造影剤の使用に依存しているが、これらはバックグラウンドノイズと非特異的取り込みにより制限を受ける。従って、本発明は、診断剤を直接標的部位(例、腫瘍部位および/または炎症部位)に送達するための上記医薬組成物を提供して、診断的イメージングとその正確な位置決めを可能とする。
【0143】
さらなる観点では、本発明は、少なくとも一つの生体適合性送達モジュール(BDM)と少なくとも一つの調整可能な膜融合性部分を含む少なくとも一つの加工薬物カプセル化モジュール(EDEM)とを起源とする構造要素および生理活性要素を含むハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を製造する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも一つの膜融合性部分を有する少なくとも一つのEDEMまたはそのEDEMを含む組成物を提供する工程;
(b)少なくとも一つのBDMまたはそのBDMを含む組成物を提供する工程;
(c)前記少なくとも一つのEDEMを前記少なくとも一つのBDMと、7.4より低いpHおよび0℃~60℃の間の温度で接触させて、それにより前記少なくとも一つのEDEMを前記少なくとも一つのBDMと統合させて、前記ハイブリドソームを生産する工程;ならびに、任意に、
(d)非融合EDEMおよび/またはBDMから前記ハイブリドソームを精製する工程を含む、方法を提供する。
【0144】
本発明の方法は、その方法を当該技術分野で実質的に有用なものとするいくつかの重要な特徴を有する。本発明は、一又は複数のEDEMと一又は複数のBDMを統合することによってハイブリドソームを生成して、元のEDEMとBDM構成要素の性質を提示するハイブリッド構成要素を作製する方法を提供する。EDEMをBDMと統合することは、その膜融合性が反応環境を変化させることによって調整可能な二つの構成要素のいずれかに存在する少なくとも一つの膜融合性種と関係する。ある実施形態では、EDEM(例、iLNP)はBDMと統合する能力(例、静電相互作用)が選択的に向上している。ある実施形態では、BDM(例、エキソソーム)はBDMと統合する能力(例、より高い膜流動性)が選択的に向上している。従って、本明細書中に提供されるのは、反応環境を規定することによってハイブリドソームを生成する方法である、そのような方法は、一般的に、脂質混合を用いて、半融合および/または融合を介して、接触が単純凝集および/または膜破壊を引き起こして、結果としてEDEMとBDM集団のある部分がハイブリドソームの亜集団へと併合されるように、本明細書中で使用されるEDEM(例、iLNP)とBDMを接触させる工程を含む。これにより、考慮される方法は、各統合機構を誘導、制御、制限、および/または終了する手段に起因する実質的利点を有する。さらにまた、本発明の方法は、モジュール実体を置換または再配置して治療的に妥当な構成を作製することを可能とする。
【0145】
一つの実施形態では、規定の形態と物理学的性質を有する(一又は複数の脂質が膜融合特性を有するか、または呈する)プレフォームド小胞を含む水性EDEM混合物を一つの投入口から単一のチャンバーに加え、そして、回収したBDMの水性混合物を第二投入口へ加える。構成要素を、その後、共通するチャンバー中で接触させる。一つの実施形態では、複数の元の構成要素を拡散により混合することによって、前記接触を増強する。好ましい実施形態では、混合は機械的手段(例、振とう)によって起こる。代替的には、BDMとEDEMの統合は、流体動力学の制御を介して(例、ミクロ流体混合装置中で)促進可能である。そのような実施形態では、EDEMとBDMとをミクロ流体チャンバーの別々の投入口へと注入し、そして、制御された混合がチャンバーの幾何学的配置および流動プロフィールを介して起こる。
【0146】
本発明は、ハイブリドソーム製造方法であって、前記方法がEDEMとBDMの膜融合性特性を支配する制御を提供するものに関する。本発明のハイブリドソームの製造のために、構成要素のEDEMおよび/またはBDMが膜融合属性の増加を呈する反応環境を含めることが好ましい実施形態である。一つの実施形態では、酸性反応環境が、EDEMのカチオン性総表面電荷を増加させ、そして、同時に、BDMがアニオン性総表面電荷の増加を呈させるようする場合がある。好ましい実施形態では、統合はpHが約4~約6の酸性バッファー中で起こる。任意の理論に拘束されるわけではないが、別の実施形態では、反応温度を調節して、二重膜から6角形の相へとEDEMの脂質が相転位を生じる一方で、同時にBDMの膜剛性を減少させる場合がある。BDM構成単位(例、タンパク質)が分解する可能性があるので、反応温度を約60℃に制限する。好ましい実施形態では、反応温度を37℃に設定する。一つの実施形態では、反応環境は生理学的イオン強度を呈する。本発明は、限定はされないが、NaClまたはKClの混合物を使用することを考慮する。さらなる実施形態では、反応溶液には、カルシウムイオンを存在させてもよい。
【0147】
本発明は、従って、ハイブリドソームの製造方法であって、EDEMとBDMの統合が、限定はされないが、5分、15分、30分、1時間、2時間、5時間以上の期間に渡り反応環境中で共にインキュベーションすることによって促進される方法を提供する。一つの好ましい実施形態では、共にインキュベーションするのは約1時間である。
【0148】
この方法の特定のバリエーションでは、混合環境を変更して複数のモジュールの統合を制限する。一般的には、EDEMとBDMの統合は、多数のパラメータ(粒子濃度、総表面電荷、電荷密度、pH、イオン強度、添加濃度、および温度を含む場合があるもの)によって制御される。混合環境変更方法は当該技術分野で周知である。例えば、限定はされないが、より高い緩衝能を有する溶液を加えること、または、モジュール混合物を透析することを利用して、反応溶液特性を変更する場合がある。一つの好ましい実施形態では、脱塩カラムを使用して、溶質の特性を変化させることができる。
【0149】
本発明はさらに、ハイブリドソームの製造方法であって、前記方法が、任意に、過剰な個々のモジュールからこれらのハイブリドソームを精製する工程を含む場合がある方法に関する。本発明のハイブリドソームの製造のために、精製工程を含めることが好ましい実施形態である。ハイブリドソームの精製が望ましい場合、精製は、ショ糖密度勾配または密度勾配を形成するのに適する他の媒体を通して遠心分離することによって達成可能である。しかしながら、理解されるのは、他の精製方法(例、クロマトグラフィー、ろ過、相分離、析出、または吸収)も利用可能であることである。精製方法には、例えば、ショ糖密度勾配を通して遠心分離することを介するか、または、サイズ排除カラムを通して精製することが含まれる。ショ糖勾配の範囲は、約0%ショ糖~約60%ショ糖、好ましくは、やく5%ショ糖~約30%ショ糖であってもよい。ショ糖勾配が作られるバッファーは、複合体含有画分の保存に適する任意の水性バッファー、好ましくは、細胞と組織へのハイブリドソームの投与に適するバッファーであってもよい。交互に分離する技術には、限定はされないが、等電点電気泳動および/または免疫アフィニティークロマトグラフィーが含まれる場合がある。例えば、イオン化可能な脂質を含むEDEMは、カチオン性総表面電荷を呈し、そして、電気泳動によって分離可能である。本発明の一実施形態では、ハイブリドソームの精製は経時的精製手法によって実現可能である。例えば、BDMの表面分子に対する親和力に関する第一免疫アフィニティークロマトグラフィーに続いてPEG分子の親和力に関する第二免疫アフィニティークロマトグラフィーを実行することで、過剰なBDMとEDEMからハイブリドソームを順次分離することができる。さらなる分離手法には、多重角度光散乱を連動させて反応物と生成物の小胞を分画する非対称流場流動分画法を含む場合がある。
【0150】
本発明の方法中で使用されるEDEMは、一又は複数の標的BDMへのカプセル化とカプセル化物質(例、活性剤)の放出を(例えば、BDMの脂質膜を透過させるか、または、それと融合させることによって)促進または向上させる。ある実施形態では、本明細書中に記載されるEDEMとBDMの構造特性は高い融合効率を示す。用語「融合効率」は、融合対象であるEDEMとBDMから生成されるハイブリドソームの相対量を指す。ある実施形態では、本明細書中に記載されるEDEMとBDMの構造特性は高い融合効率を示し、それによって、適量のカプセル化物質(例、活性剤)と内因性生体物質がハイブリドソームの中で組み合わされる確率を改善し、そして、次に、化合物またはカプセル化内容物と関連する潜在的全身性副作用または毒性を最小化する。
【0151】
ある実施形態では、EDEM製剤は、そのようなモジュールが構成要素であるハイブリドソームの製造を可能にする調整可能な属性(例、膜適合性)を有する。例えば、イオン化可能な脂質、ヘルパー脂質、PEG修飾脂質、pH応答性ポリマー、および/またはpH活性化型細胞透過性ペプチドを本明細書中に記載のEDEM中に取り込むことによって、そのようなモジュール(またはそのようなモジュールが構成要素であるハイブリドソーム)の一又は複数の標的BDMの脂質膜との膜融合性を制御可能であり、それによって、例えば、EDEM-BDM統合の制御を向上する場合がある。特定の理論によって拘束されるわけではないが、複数のiLNP脂質のそれぞれに対する相対的モル比は、選択される脂質の性質、標的BDMの性状、カプセル化物質の性質、および目的送達標的(例、細胞、組織、または器官)の性質に基づいている。他の考慮事項には、例えば、毒性、サイズ、電荷、pKa、膜融合性、および選択される脂質のアルキル鎖の飽和度が含まれる。
【0152】
ある実施形態では、本明細書中で使用されるEDEM組成物のイオン化可能な脂質内容物の特徴は、他の分類のサブユニットに比べて、そのようなモジュールに利点を与える一又は複数の特性を有することである。例えば、ある実施形態では、本明細書中に使用されるEDEMは統合特性(例、表面電荷)の制御と適合化を可能とする。特に、本明細書中に開示される化合物の特徴は、規定且つ調整可能なカチオン性状と共に潜在的には逆に帯電しているBDMと統合すする能力である場合がある。そのような能力には、例えば、イオン対形成制御、膜融合性能、および/または生成組成物中へのカプセル化物質(例、活性剤)の放出の促進が含まれる。
【0153】
ある実施形態では、EDEM製剤はEDEMとBDMとの間の膜適合性を付与する調整可能な属性を有する。例えば、本明細書中に開示されるEDEM中へのヘルパー脂質の取り込みの適合化は、そのようなモジュールに適合する膜の剛性を実現して、一又は複数の標的BDMの脂質膜との統合を容易にする場合がある。具体的には、脂質とステロール(例、コレステロール)の相対的モル比は、標的BDMの性質と類似するように釣り合わされる。他の考慮事項には、例えば、そのようなモジュールが構成要素のハイブリドソームの得られる剛性(標的細胞または組織との相互作用を確保するためのもの)が含まれる。
【0154】
本発明の一つの実施形態では、BDMはEDEMとBDMとの間の膜適合性を付与する調整可能な属性を有する。BDM膜構成要素(例、限定はされないが、スフィンゴミエリン、リン脂質に取り込まれる飽和脂肪酸、およびコレステロール)の含有量が高いことは、それが由来するドナー細胞よりも剛性が高いことを説明できる。同時に、BDM膜構成要素がBDMが由来する細胞の形質膜と異なり、より高い剛性を導く場合があるので、BDMは製造過程中の安定性が向上する場合がある。しかしながら、酸性pH環境(例、約pH5)中では、本発明のBDM膜は、より低い剛性(およびより高い膜融合性)を示すことが考えられ、そして、EDEMの膜との統合を可能にする場合がある。
【0155】
ある実施形態では、使用するEDEM中への、例えば、一又は複数のアルキルアミノ基または部分(例、頭部基としてのもの)を有するイオン化可能な脂質の取り込みは、その膜融合性を活用することによってBDM膜の破壊をさらに促進する場合がある。このことは、最適化pKaおよびそれによる脂質のpH依存的でカチオン性の性状に基づく場合があるだけでなく、最適化相転移温度にも基づいていて、二重膜相から高度に膜融合性の逆6角形HII相への転移を促進することになる(Sempleら、2010年)。この結果は、カチオン性状態のイオン化可能な脂質とアニオン性脂質との間のイオン対形成を促進して、これにより、BDM膜構造を破壊し、そして内容物をハイブリドソームの中に移すと考えられている。
【0156】
本明細書中に使用されるEDEMは、カプセル化と一又は複数の標的BDMへのカプセル化物質(例、活性剤)の放出を(例えば、BDMの脂質膜を透過させるか、または、それと融合させることによって)促進または向上させる医薬組成物を製造するのに使用可能である。例えば、脂質ベースの組成物(例、iLNP)が一又は複数のイオン化可能な脂質を含むか、さもなくばそれが豊富にある場合、一又は複数のBDMの脂質二重膜での相転移によって、一又は複数のハイブリドソームへのカプセル化物質(例、脂質ナノ粒子にカプセル化される活性剤)の送達を容易にすることができる。
【0157】
本発明のある実施形態では、EDEM内のイオン化可能な脂質の総量の制御は、本明細書中に開示されるハイブリドソームの構造特性を制御するために役立つ場合がある。従って、本発明のある実施形態では、EDEMの物性は、イオン化可能な脂質の含量に比例する。例えば、直径の小さいEDEMは、直径のより大きいEDEMと比較すると、イオン化可能な脂質の総含量が低い可能性がある。結果として、本明細書中に開示される一又は複数のEDEMは、中性の総表面電荷とそれによるサイズの限定が達成されるまで、同一のBDMと統合する場合がある。
【0158】
本発明の一つの実施形態では、EDEMは、ハイブリドソーム中への統合の際にBDMを起源とする一又は複数の化合物と相互作用することができる酵素化合物および生理活性触媒化合物をカプセル化するために製造可能である。例えば、EDEMは、リボヌクレアーゼ(BDMによってハイブリドソームに移行された任意の内因性ポリヌクレオチドを分解することができるもの)を含むように製造可能である。
【0159】
以下の実施例は、さらに本発明を説明するが、説明のために提供され、そして、如何なる様式であっても本発明を限定する意図はない。
【実施例0160】
実施例1
加工および薬物カプセル化モジュールとしてのiLNPの製造
実施例1~4のための材料と方法
A)化学物質
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレン-グリコール)-2000](アミン-PEG-DSPE)、[1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)](NBD-PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](mal-PEG-DSPE)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-サクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)2000](PEG-Cer)、およびコレステロールは、Avanti Polar Lipids(Alabaster、AL)から購入した。1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)とPEG-脂質の合成は過去に記載されている(Heyes、Palmer、Bremner&MacLachlan、2005年)。
【0161】
B)押出成形に基づくiLNP製剤化
プレフォームド小胞の調製:小胞の望ましい特性に依存して、イオン化可能なカチオン性脂質(DLinDMAまたはDODAP)、DSPC、コレステロール、およびPEG-脂質(PEG-s-DMGまたはPEG-Cer)を、エタノール中に適切なモル比(例、40:17.5:40:2.5)で可溶化した。小胞を形成させるために、終濃度が約10mMおよびエタノール対水の比が3:7に到達するまで、ボルテックス下で低pHの水性バッファー(50mMアセテート、pH4)中に、脂質製剤を混合した。生成された多層小胞を、その後、室温でMini-Extruder(ミニ押出機)(Avanti製)を使用して、二つの積層した80nmまたは100nm孔サイズNuclepore(商標)ポリカーボネートフィルターを通して押出成形した。
【0162】
プレフォームド小胞のオリゴヌクレオチドカプセル化:過去に記載されたプレフォームド小胞法を使用して、オリゴヌクレオチドカプセル化を達成した(Maurerら、2001年)。一般的に、押出成形された小胞の水性溶液に合わせたもの(50mMアセテート、pH4、30%エタノール)の中に、オリゴヌクレオチドを可溶化し、次にボルテックス混合下で単層の小胞へ滴下した。プラスミド、siRNA、およびshRNAのカプセル化を、それぞれ1:30のプラスミド対脂質(wt/wt)比および1:16のRNA対脂質(wt/wt)比で実施した。混合物を、次に、37℃で30分間インキュベーションし、その後、残存エタノールを除去し、4℃でPBS(pH7.4)に対して徹底的に透析することによりバッファー交換した。カプセル化されなかったshRNAとプラスミドを、PBS(pH7.4)に平衡化した陰イオン交換スピンカラム(Pierce-Thermo Fisher Scientific社)を通して除去した。オリゴヌクレオチドのカプセル化効率は、積み荷を有する小胞を酸性イソプロパノール(10%HCl)と1:5の体積比で可溶化後に、260nmの吸光度測定(Spectramax M5e、Molecular Devices)によって決定した。
【0163】
タンパク質をカプセル化するiLNP:上記方法と比較する場合、ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma Aldrich社)およびヒトヘモグロビン(Sigma Aldrich社)をカプセル化するiLNPは、そのタンパク質をそれぞれ終濃度が1.5mg/mlおよび1mg/mlとなるように前もって水性バッファー(50mM酢酸ナトリウム、pH5.5)に溶解し、その後、脂質混合物(DlinDMA:DSPC:Chol:PEG-Cerのモル比が40:17.5:40:2.5のもの)のエタノール溶液(EtOHの最終的含量は20%)をボルテックス混合下で滴下して作製する。この溶液を37℃で1時間インキュベーションした。BSAカプセル化脂質小胞を、上記したように押出成形した。遊離タンパク質、残存エタノールの除去とバッファーの交換を、PBS(pH7.4、4℃)に対して徹底的に透析(300kDA MWCO、Spectrumlabs社)して達成した。タンパク質カプセル化効率を、iLNPを10%TritonX-100(Sigma Aldrich社)に可溶化後、BCA(商標)タンパク質アッセイキット(Pierce-Thermo Fisher Scientific社)により決定した。遊離タンパク質の徹底的除去を、タンパク質定量中に界面活性剤を差し引いてモニターした。
【0164】
小分子をカプセル化するiLNP:上記方法と同様に、カルボキシフルオレセインをカプセル化するiLNPは、その小分子をそれぞれ終濃度が1mMとなるように水性バッファー(25mM酢酸ナトリウム、pH5.5)に前もって溶解し、その後、脂質混合物(DODAP:DSPC:Chol:PEG-Cerのモル比が40:17.5:40:2.5のもの)のエタノール溶液(EtOHの最終的含量は20%)をボルテックス混合下で滴下して作製する。この溶液を37℃で1時間インキュベーションして、その後、上記したように押出成形した。小分子、残存エタノールの除去とバッファーの交換を、PBS(pH7.4、4℃)に対して徹底的に透析(300kDA MWCO、Spectrumlabs社)して達成した。
【0165】
Auナノ粒子をカプセル化するiLNP:イオン性バッファー中でAuナノ粒子は不安定なので、20nmのAuナノ粒子(Nanocs社)のカプセル化を、金対脂質の重量比が1:20で脱イオン水溶液中にAuナノ粒子を維持することによって達成した。上記したように、エタノール性脂質混合物を加え、その溶液を押出成形し、そして、透析によりPBSへとバッファー交換した。PBS中では、遊離Auナノ粒子は凝集沈殿する。カプセル化金ナノ粒子の存在を、プラズモン共鳴波長525nm付近でのAu-iLNPのUV-可視光吸光度と共に透過型電子顕微鏡(TEM)でモニターした。空の小胞に比較する場合の450nmでの UV-可視光吸光度の増加を利用して、以前記載されたように金濃度を決定した(Haiss、Thanh、Aveyard&Fernig、2007年)。図1に示すように、ストック金ナノ粒子とAu-iLNPの両方のUV-可視光吸収スペクトルは、約550nmでの特徴的表面プラズモン共鳴ピークを示す。詳細には、空のiLNPとDNA-iLNPに比べる450nmでの吸光度測定値の相対的増加から、Au-iLNPのカプセル化効率が30%で、Au-DNA iLNPのカプセル化効率が26%であることを決定した。図2に示される電子顕微鏡写真は、カプセル化された金ナノ粒子の存在を支持した。
【0166】
C)ミクロ流体法に基づくiLNP製剤化
高速混合ミクロ流体システムを採用することによるsiRNA充填脂質ナノ粒子の調製:製造事業者の取扱説明書に従って、Nanoassemblr(商標)ミクロ流体システム(Precision NanoSystems社)で、脂質ナノ粒子を調製した。所望の製剤に依存して、プレフォームド小胞法のエタノール溶液に類似する溶液(DLinDMA、コレステロール、DSPC、およびPEG-脂質が適切なモル比(例、40:40:18:2)からなるもの)を、総脂質が10mMの濃度で調製した。さらにまた、siRNA対脂質の比(wt/wt)が1:16である水性siRNA溶液を、25mMアセテートバッファー(pH4.0)中に調製した。総製造量に依存するが、1および3mlシリンジを用いて、総流速が12ml/分の投入口流を作り出した。各製剤に関して、水性siRNA溶液を、室温で流速比が3:1(Aq:Et)となるようにエタノール-脂質溶液と混ぜた。生成物を、その後、PBSに対して透析して、残存エタノールを除去すると共にpHを7.4へと上昇させた。そして、上記プレフォームド小胞法を用いて説明したように遊離siRNAを除去した。
【0167】
実施例2
生体適合性送達モジュールとしての細胞外小胞(EV)の単離
エキソソーム:エキソソームを、分画遠心法(Theryら(Thery、Amigorena、Raposo&Clayton、2006年)により過去に記載されるもの)によって、マントル細胞リンパ腫細胞株(MCL-exo)とグリオブラストーマ細胞株(GBM-exo)の上清から単離した。エキソソームは、その後、BCA(商標)タンパク質アッセイキット(Pierce-Thermo Fisher Scientific社)を使用してタンパク質含量の測定を行った。そして、エキソソームのアリコートを-80℃で保存した。さらに精製するために、エキソソームのペレットを、PBS中に溶解し、標準的手順を使用して、ショ糖クッションの上に層とした。
【0168】
微小胞:ヒト血小板および活性化型多核好中球に由来する微小胞(PLT-MVおよびPMN-MV)のサンプルを、ヒト試料から単離した。手短に言うと、前に記載(Sadallah、Eken、Martin&Schifferli、2011年)されたように、健常ドナーの輸血液由来の血小板濃縮物を分画遠心することによって、PLT-MVを単離した。最近刊行物に発刊されたように(Eken、Sadallah、Martin、Treves&Schifferli、2013年)、PMN-MVを精製した。PMNを、健常血液ドナーの新鮮なバフィーコートから単離した。PMNを、ホルミルメチオニルロイシルフェニルアラニンで活性化した。そして、出てきた微小胞を、分画遠心分離法によって単離した。
【0169】
実施例3
PEG化脂質をFab’断片、抗体断片、ペプチド、およびグリコサミノグリカンと連結することによるiLNPの表面修飾
還元型抗体、Fab’断片、融合ペプチド、およびグリコサミノグリカンを、iLNP膜中にアンカーされているPEG化脂質へと結合することによって、iLNPの加工適合性を実証した。実施例1の製剤と比較すると、0.5モル%のPEG化脂質を、PEGの遠位端にマレイミド基またはアミン基を有するPEG修飾脂質で代替した。(1)遠位PEG末端のマレイミド基と還元型抗体、Fab’断片、または末端にチオール基を有するペプチドのフリーなチオール基との間、(2)遠位PEG末端のアミン基とグリコサミノグリカン(GAG)のグリコサミノグリカン鎖上の活性化カルボキシル基との間の反応に基づく標準的手順に従って、結合を実施した。
【0170】
方法
Fab’断片:第一に、供給元の説明書に記述されている終濃度の1/5を使用して、2-メルカプトエタノール(MEA)(Pierce-Thermo Fisher Scientific社)を用いて、抗CD38 F(ab)断片を還元した。60μgのF(ab)を、37℃で90分間、反応液(1mMのEDTA、PBS)中、10mMのMEAとインキュベーションした。Zeba(商標)スピン脱塩カラム(Pierce-Thermo Fisher Scientific社)を使って、反応バッファーへバッファー交換して、MEAを除去した。siRNAを充填したiLNPを(mal:Fab’の比が2:1で)すぐに加えて、そして、一晩4℃でプレートを振とうしてインキュベーションした。非結合抗体/断片を、PBS(pH7.4)で平衡化したSepharose CL-4Bカラム上で分離した。Fab’断片を含む画分を、280nmでの吸光度測定値から決定し、一緒にプールして、そして、10kDa遠心分離フィルター(Amicon(登録商標)ウルトラ-0.5、Merck Millipore社)中で濃縮した。非還元条件下で、ゲル電気泳動(SDS-PAGE)(10%アクリルアミドを使用するもの)を実施して、F(ab)からFab’へと還元する過程の後のFab’断片の完全性を確認した。
【0171】
IgG抗体:IgG抗体を、ジチオトレイトール(DTT)(Sigma社)で還元した。カップリング反応の前に、PBS中、4℃で1時間、25mMのDTTを用いて、抗体を還元した。PBS(pH7.4)で平衡化した40kDa Zeba(商標)スピン脱塩カラム(Pierce-Thermo Fisher Scientific社)を使用して、還元型Abを過剰なDTTから分離した。結合(mal:抗体の比が1:4)を、4℃で一晩、PBS(pH7.4)中で実行した。非結合抗体を、Sepharose CL-2カラム上で除去した。抗体結合を、Fab’断片に関して記載したように、280nmでの吸光度測定値から決定した。
【0172】
ペプチド:N末端にシステインを有する26アミノ酸メリチン類似ペプチドを、チオール化ペプチドとペプチド対マレイミドのモル比が1:1で混合することによってpDNA-iLNPに結合させた。そして、室温で一晩、インキュベーションした。
【0173】
グリコサミノグリカン:従来のEDC-スルホNHSカップリング反応を介して、グリコサミノグリカン(MWが5k)を、遠位PEG末端のアミン基に結合させた。第一に、グリコサミノグリカンを、1時間DIW中でEDC/NHS(EDC:COOHの比が1:1、EDC/NHSの比が1:1)により活性化し、その後、PBS(pH8.2)中のiLNPを(グリコサミノグリカン:アミンの比が5:1で)加えた。反応を2時間、継続した後、10kDaのカットオフ値で、室温でPBS(pH7.4)に対して透析し、非結合グリコサミノグリカンを除去した。
【0174】
結合が成功したことを、流体力学的径のDLS測定によってさらに決定した。DLSによる流体力学的径(Dh)の比較である表1に見られるように、iLNPの平均直径は、IgG、融合ペプチド、Fab’断片、およびグリコサミノグリカンのカップリング後に増加した。
【0175】
実施例4
iLNPとインビボで分泌されるEVの特徴解析
実施例1、2、および3で記載したようにiLNPの製造とEVの単離の後、標準的手順を使用し、DLS(Zetasizer NS、Malvern)およびNTA(LM20、Nanosight)を使用してiLNPとEVのサイズ分布を記録した。表1に示すように、平均サイズは、積み荷のカプセル化またはiLNPの表面修飾に伴って増加した。合成条件の制御に起因して、iLNPは多分散指数(PDI)が低く(それは鋭く単一の最頻値を有するNTAサイズ分布にも反映されている)作製可能である。分泌小胞としてのエキソソームは固有の多分散度を有する。図3に示すように、NTA解析の単粒子法は、空のiLNPに関しては単一の最頻値を有するサイズ分布を示し、そして、GBM-exoは互いに異なるサイズの亜集団があるのを明らかにする。
【0176】
【表1-1】
【0177】
【表1-2】
【0178】
実施例5
BDMとEDEMの相互作用の開始の制御
iLNPとエキソソームとの間の相互作用がpH環境の変化によって誘導可能であるかどうかを検証した。図4に示すように、iLNP/エキソソーム溶液の平均直径は、融合バッファー(10mMのMES(pH5.5)、145mMのNaCl、5mMのKCl)中で増加するが、pH7.4では有意な変化は明確でない。DLS測定は全体的効果の性状なので、二つのサブユニット間の相互作用の存在を明確に推定することは難しい。従って、次に焦点を、エキソソームとiLNPの両者の脂質膜間の相互作用に向けた。
【0179】
サイズ変化はさておき、二つの膜間の脂質混合は融合事象を測定するさらなる方法を提供する。融合過程の間、二つの膜由来の脂質は、新しく形成された膜内で分散する。脂質混合は、親油性自己消光ローダミン色素(R18)の希釈の結果生じる蛍光の増加によりモニターされる。エキソソーム(20μgのタンパク質)を、MESバッファー(10mMのMES(pH5.5)、145mMのNaCl、5mMのKCl)中、1μlの塩化オクタデシルローダミンB(R18)(Biotium)(1mM)のエタノール性溶液で標識した。この溶液を、室温で30分間インキュベーションした。取り込まれなかったR18を、MES融合バッファー(10mMのMES(pH5.5)、145mMのNaCl、5mMのKCl)で平衡化したZebaspin脱塩カラム(40kDaのカットオフ値)を使用して除去した。R18標識エキソソーム(5μgの総タンパク質)を、石英キュベット中で撹拌しながら適切なバッファー中に懸濁した。そして、サンプルの蛍光を、560nmの励起波長および590nmの発光波長でLS55分光光度計(Perkin Elmer)によって測定した。3分間の平衡化時間に続いて、非標識iLNP(30μgの総脂質)をエキソソームに加え、そして、蛍光をさらに30分間モニターした。最大のR18希釈が膜を破壊するTritonX-100を加えることで得られた。脂質混合の程度を、エキソソーム単独のものからの平衡化蛍光の差として測定し、界面活性剤で破壊した後の最大蛍光発光(de-quenching)の%として表現した。エキソソームの類似体である微小胞のサンプル(0.25μgのPLT-MVおよび1.2μgのPMN-MV総タンパク質)をR18のエタノール性溶液で標識し、その後、遊離色素を除去し、そして、上述したように蛍光の増加をモニターした。
【0180】
非標識iLNPとR18標識エキソソームとの間で融合が起こると、エキソソーム膜中に取り込まれていたローダミンが非標識リポソーム膜部分中に拡散し、その結果、接近して起こっていた自己消光が減少し、その後、膜融合の程度に比例して蛍光の増加が起こる。図5に示すように、蛍光の急激な増加がpH5.5で起こり、pH6.6では蛍光のゆっくりとした連続的な増加が起こる一方で、pH7.6では脂質混合が妨げられた。pHの変化ではなくiLNPのカチオン性が脂質混合の背後にある駆動力であったことを確認するために、図6は、DLinDMAが0%のリポソーム(DSPC/Chol/PEG)を加えても発光が起こらなかったことを示す。脂質混合の背後にある駆動力となる可能性のあるイオン化可能な脂質DLinDMAに特異的な膜融合特性を排除するために、DLinDMAをイオン化可能な脂質DODAPで置換したiLNPを製造した。これらのDODAP-iLNPをR18標識エキソソームに加えた際に、脂質混合が観察された(図7)。さらに、iLNPのPEG-脂質含量を2.5モル%から10モル%へ増加させた場合(図8)と温度を変えた場合(図9)にも、同様な実験を実施した。
【0181】
実施例6
単粒子上で精査されるBMDとEDEMの相互作用
検証の次の焦点は、単粒子レベルでのエキソソームとiLNPとの間の相互作用である。エキソソームタンパク質とリポソーム膜との混合物を含む粒子の時間的出現を、蛍光相互相関分光法(FCCS)装置中で定量した。FCCS測定の準備のため、iLNP膜を親油性Bodipy(商標)(630/650)で標識する一方、エキソソーム表面タンパク質をBodipy(商標)NHSエステル(493/502)と結合することによって標識した。エキソソームとiLNPの両者を、その後、相当な粒子数で融合バッファー中で混合した。そして、両方のチャネルでの相関する強度変動の出現を記録した。両方の検出器上の同調シグナルは、凝集または融合エキソソームとiLNPを示す一方、個々の粒子は時間的に独立したシグナルを生成する。図10では、エキソソーム-Bodipy(493)とiLNP-Bodipy(630)を混ぜた際の相互相関度(θ)の増加を経時的に示す。緑と赤のチャネル間の相関は、二種類の粒子を混合直後には観察されなかった。8分間の時間推移に渡って、個々の粒子の相互相関度は、0%から約70%へと増加した。これは、調査した粒子の総蛍光バーストの70%近くがエキソソーム表面タンパク質およびリポソーム膜を示すことを意味する。
【0182】
相互相関度の検出最小値を、二種類の親油性色素(488および633)のコントロール混合物を使用して決定した。ポジティブコントロールとして二重標識相補DNA鎖(488/633)IBA標準(IBA GmbH)を使用して、相互相関度の達成可能最大値を得た。
【0183】
実施例7
膜融合性EDEMとBDMが融合してハイブリドソームを形成する
単純凝集、構造破壊、または脂質交換に起因する偽陽性融合アッセイである可能性を排除するために、pH5.5での積み荷の無いiLNP/エキソソーム混合物の平均サイズおよびサイズ分布を、DLSとNTAを介して複数の異なる時点で記録した。同一の実験条件を使用して、z-平均の平均サイズを10時間モニターした。図11に示すように、混合の最初の1時間内では、平均粒子サイズが急激に増加し、次の9時間に渡ってはほとんど変化しないままであった。凝集の場合、互いに逆に帯電した小胞は静電的な構造物へと連続的に凝集する能力を有するが、この場合はそれには当たらない。凝集でないことをさらに示すことは、直径増加の程度である。二つの融合球体の体積は半径に伴ってある割合で増加し、その様式は、85nmと130nmの球体の融合により141nmの粒子が生じ得るということである。他方、凝集では、凝集物に連結する球体がさらにあるごとに直線的に半径が増加する。このことは、サブユニットの直径の倍数の範囲での大きな直径増加としてはっきり表れるであろう。このことはさらに図12で示されるように支持される。融合バッファー(室温で保存されたもの)中のsiRNA-iLNPとMCL-exosとの混合物は、9日間に渡って平均直径の有意な増加を示さなかった。
【0184】
DLSによって明らかにされた平均サイズの変化または正規サイズ分布が亜集団を平均することによるアーチファクトでないことを確認するために、エキソソーム、iLNP、および融合産物のサイズ分布を個々の粒子のNTA測定に基づいて評価した。解析前に、iLNPとエキソソームを融合バッファー中に(iLNPに関しては20,000倍、および、1ml当たり0.01mgのエキソソームタンパク質に)希釈した。融合反応のために、エキソソームとiLNPを1:1の比率でインキュベーションし、そして、反応混合物から取り出したサンプルを2分ごとに記録した。測定当たり、1800フレームの動画を記録した。NTA解析ソフトウエアスイートバージョン3.0を使用し、不鮮明さ、トラック長最小値、および予想粒子サイズ最小値を自動設定して、データを解析した。
【0185】
融合反応におけるサイズ分布を経時的にモニターすると(図13)、混合3分後に、50~90nmのiLNP集団がほとんど無くなり、90~125nmの亜集団が増加することが分かった。18分の時間推移上、サイズ分布は144.2nmの粒子のピークを示し、そして、BMDの存在下でEDEMの膜融合性を増加させることによって、異なるサイズ分布を呈する粒子が生じると推定可能である。エキソソーム、iLNP、および新規形成粒子のこれらユニークなサイズプロフィールを図14に図示する。新規形成小胞集団を「ハイブリドソーム」と呼ぶ。
【0186】
図14の詳細に規定されたサイズ分布または図11および図12に見られる生成小胞の直径の安定性が持続することは、融合後に総表面電荷が弱まったことの印である。結果として、連続的融合が阻害され、そして、系は自発的フィードバックループを呈する。
【0187】
実施例8
ハイブリドソーム媒介遺伝子導入はGFP発現を導く
遺伝子の積み荷をハイブリドソームを介して送達することの機能性を実証するために、GBM細胞株エキソソームとGFPプラスミドをカプセル化したiLNPとからハイブリドソームを製造した。試験製剤をトランスフェクトしたGBM細胞中でのレポーターGFPの発現を、フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡解析によって解析した。細胞(前日に50,000細胞を播種したもの)に、iLNP(ウエル当たり500ngのGFP-pDNA)と積み荷を有するハイブリドソーム(ウエル当たり5μgの総タンパク質/500ngのGFP-pDNA)をトランスフェクトした。ハイブリドソームは、トランスフェクション前にエキソソームをpDNA-iLNPと融合バッファー中で30分間混合して製造した。トランスフェクションがエキソソーム誘導性エンドサイトーシスのために偶然にiLNPの内在化が起こった結果であることを排除するために、細胞に、また、非融合iLNP(ウエル当たり500ngのGFP-pDNA)とエキソソーム(ウエル当たり5μgのタンパク質)とをコトランスフェクトした。0.5、1、2、または24時間のトランスフェクション時間後、細胞をPBSで二回洗浄し、新鮮な培地を加え、そして、細胞を72時間培養した。GFP発現細胞の量をフローサイトメトリーで解析した(図15参照)。ハイブリドソームは、pDNA-iLNPまたはエキソソームとコトランスフェクトした非融合型pDNA-iLNPと比較すると、より高いトランスフェクション率を示す。
【0188】
実施例9
ハイブリドソームの精製
トランスフェクション実験において非融合iLNPの干渉を除外するために、連続性ショ糖密度勾配遠心分離によって、非融合iLNPをハイブリドソームから分離した。pDNA-iLNPの密度を測定するために、pDNA-iLNPを0~55%ショ糖(重量/体積)連続性勾配上で遠心分離し(190,000g、14時間)、そして、カラム分画を行った。ショ糖画分の密度を、屈折率測定器で測定し、そして、粒子の存在をDLSでの光子数により解析した。データは、pDNA-iLNPの最大密度が1.05g/mlであることを示す(図16参照)。
【0189】
pDNA-iLNP/エキソソーム融合混合物(タンパク質対プラスミド比が1:0.1(wt/wt)のもの)を対応するショ糖勾配上に遠心分離することによって、勾配の一番上に非融合iLNPを含有するはっきりと乳白光を発するバンドが生じた。密度が1.06~1.08、1.09~1.18、および1.19~1.25g/mlの粒子に対応するショ糖画分をプールして、そして、PBSに対して透析することによってショ糖を除去した。
【0190】
これらの画分がGFPをトランスフェクトする能力を、細胞とインキュベーション(72時間、50,000細胞/ウエル)して、そして、フローサイトメトリーでGFP発現細胞数を解析することによってモニターした。図16図17に示すように、全ての画分は、結果的にGFP発現を引き起こした。
【0191】
pDNA-ハイブリドソーム(1.05g/mlより下に位置する粒子)をプールし、透析によってショ糖を除去し、そして、pDNA-ハイブリドソームを独立したトランスフェクション試験において再度テストした。細胞(50,000個の細胞)に、pDNA-ハイブリドソーム(プールした画分のBCAアッセイに基づいて、ウエル当たり2.5μgタンパク質のもの)を、0.5、1、2、または24時間トランスフェクトした。指定したトランスフェクション時間の後、細胞をPBSで二回洗浄し、そして、新鮮な培養培地を加えた。72時間培養後のGFP発現細胞の量をフローサイトメトリーで解析した(図18参照)。
【0192】
実施例10
ハイブリドソーム上の外因性標的化部分
IgGで表面を修飾した上記iLNPを使用して、表面にIgG断片を有するハイブリドソームを調製した。実施例9におけるプラスミドを充填したハイブリドソームの濃縮と同様に、IgGが繋がれているiLNPをGBM由来エキソソームと融合バッファー中で30分間(脂質対エキソソームタンパク質の重量比が6:1で)混合し、そして、非融合iLNPをショ糖勾配にて分離した。粒子層は、密度が1.12~1.14g/mlの所に視認された(プラスミドを搭載したハイブリドソームがR=0.36だったのに対して、R=0.62であった)。1.08g/mlより下にある画分をプールし、そして、PBSに対して透析することによって残存ショ糖を除去した。10%アクリルアミドを使用するゲル電気泳動(SDS-PAGE)を非還元条件下で実行してIgGとエキソソームタンパク質の両者の存在を確認した。
【0193】
GBM細胞株(ウエル当たり50,000個の細胞を前日に播種したもの)に、ショ糖勾配で精製したIgGハイブリドソーム(BCAアッセイで測定した、ウエル当たり1.4μgのタンパク質含量のもの)をトランスフェクトした。24時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、そして、図19に示すように、およそ80%の細胞が抗IgG標識二次抗体に対して陽性であることをフローサイトメトリーで確認した。
【0194】
実施例11
汎用性ハイブリドソーム用の多様なEDEM
EDEMの積み荷または表面修飾を変えることによって異なるハイブリドソームを製造する能力を、2つのタイプの融合アッセイによって決定した。
【0195】
実施例5に概説されるように、R18アッセイを実施した。手短には、実施例1に示される様々なiLNP種をGBM細胞株由来のR18標識エキソソームと融合バッファー中で混合することによって、融合を測定した。オリゴヌクレオチド、タンパク質、および金ナノ粒子(金ナノ粒子単独またはpDNAを共にカプセル化したもの)をカプセル化したiLNPとの融合を図20図22に示す。エキソソームと、ペプチドを有し且つIgGで表面修飾したiLNPとの間の融合を図23に示す。
【0196】
ピレンアッセイを使用して、MCL-エキソソームのsiRNA搭載iLNPとの融合を測定した。これらのsiRNA-iLNPを、押出成形または高速混合ミクロ流体チップ(実施例1に概説される)によって製造した。
【0197】
このアッセイの原理は、非標識膜と標識膜の融合の際に、ピレンエキサイマが希釈されることに起因して、モノマー蛍光(約400nm)が増加することである。100μl中のエキソソーム(35μgの総タンパク質)を、37℃で30分間、1μlの2.5mM 1-ピレンドデカン酸(Life Technologies社)エタノール性溶液で標識した。過剰な1-ピレンドデカン酸を、60分間100,000gで超遠心分離してペレット化、そして、MESバッファー(0.2MのMES、150mMのNaCl、pH5.5)で洗浄することを二度行って除去した。遊離ピレンの除去後、標識エキソソーム(ウエル当たり10μgの総タンパク質)を、96穴プレート中のMESバッファー(0.2MのMES、150mMのNaCl、pH5.5)に懸濁した。非標識iLNP(5μgの総タンパク質)の添加の際のモノマー蛍光の増加を、Synergy HTマイクロプレートリーダー(Biotek社)を用いて37℃で記録した。図24に示すように、モノマーシグナルの上昇が、押出成形(ext)およびミクロ流体チップ(mf)により製造されたiLNPとエキソソームを混ぜる際に起こる。
【0198】
実施例12
汎用性ハイブリドソーム用の生体適合性送達モジュールとしての細胞外小胞
各種型の細胞により分泌される微小胞と様々なiLNPとの間の融合をR18融合アッセイによって測定した。
【0199】
実施例2に示されるように、ヒト微小胞を血小板(PLT-MV)および多形核好中球(PMN-MV)から単離した。
【0200】
実施例5と同様に、微小胞のサンプル(0.25μgのPLT-MVおよび1.2μgのPMN-MV総タンパク質)をR18のエタノール性溶液で標識し、その後、遊離色素を除去した。蛍光の増加を、様々なiLNP種を添加した際にモニターした。
【0201】
図25に示すように、融合バッファー中でiLNPを PMN-MVと混合すると、R18の発光を生じた。pH依存性のiLNP-PMN-MV相互作用を測定したが、pH7.4でiLNPを加えても発光を生じなかった。pDNA-iLNPおよびBSA-iLNPとの混合により、R18の発光を生じた。
【0202】
図26に示すように、PLT-MVと空のiLNPとの混合はpH依存性であり、および、空のiLNPとエキソソームとの混合と類似している。PMN-MVとPLT-MVは、抗炎症性および免疫抑制特性があるので、BDMとして特に興味深いものである。PMN-MVがサイトカイン(腫瘍壊死因子-α、トランスフォーミング増殖因子β1、インターロイキン-8、インターロイキン-10、およびインターロイキン-12p70)の放出を阻害すること、そして、ヒト単球由来樹状細胞中で、免疫活性化受容体(CD40、CD80、CD83、CD86、CCR7、HLA-DP、HA-DQ、およびHA-DR)を減らすことが示されている(Sadallah、Eken&Schifferli、2011年)。
【0203】
実施例13
トランスフェクトするのが難しい細胞におけるハイブリドソームの細胞取り込み
蛍光顕微鏡観察を行って、トランスフェクトするのが難しいリンパ球細胞株(Jeko1)によるハイブリドソームの細胞取り込みを測定した。ハイブリドソームをMCL-exoとNBD標識iLNP(iLNP製剤はDlinDMA:Chol:DSPC:PEG-S-DMG:NBD-PCが40:40:17.5:2:0.5で製剤化したもの)から調製した。MCL-Exo(ウエル当たり2μgの総タンパク質)をNBD標識iLNP(ウエル当たり1μgの総タンパク質)と反応バッファー(10mMのMES(pH6.0)、145mMのNaCl、5mMのKCl)中で混合し、そして、37℃で30分間、振とう機上でインキュベーションした。
【0204】
ハイブリドソームとiLNPを標的細胞に1時間トランスフェクトし、その後、PBSで二回洗浄して、表面に付着しているが内部に取り込まれなかった小胞を除去した。細胞を、その後、PBS中に再懸濁し、そして、蛍光画像を同じ機器設定下で作成した。細胞当たりのiLNP膜色素の平均蛍光強度を、オープンソースソフトウエアImageJで画像解析することによって決定した。図27に示すように、Jeko1細胞(n=160)は、ハイブリドソームの1時間のトランスフェクション後のiLNP膜色素の平均強度が、iLNP単独のものよりも7倍近く高かった。
【0205】
参考文献:
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド生体適合性担体(ハイブリドソーム)を製造する方法であって、以下を含む、方法。
(a)膜を含む第一の小胞を提供する工程であって、前記小胞はインビトロで生産され、第一の前記小胞は、膜融合性のイオン化可能なカチオン性脂質を含み、第一の前記小胞は生理活性剤をカプセル化している、工程;
(b)インビボで生産されて、細胞外環境中に放出される、脂質二重膜を含む自然に分泌される第二の小胞を提供する工程;及び
(c)バッファー中で前記第一の小胞を前記第二の小胞と接触させて、それにより前記第一の小胞を前記第二の小胞と統合させて、前記ハイブリドソームを生産する工程であって、
前記バッファーのpHが、膜融合性の前記イオン化可能なカチオン性脂質が主に、荷電したカチオン性のフォームである、工程。
【請求項2】
前記接触工程が、
(a)pH4~6のバッファー中で、および/または
(b)約37℃の反応温度で
実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
膜融合性の前記イオン化可能なカチオン性脂質が前記第一の小胞の脂質合計に対し少なくとも30%のモル濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生理活性剤が治療薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生理活性剤が下記(a)~(c)のいずれかである、請求項1に記載の方法。
(a)薬物または医薬的に許容可能なその塩もしくは誘導体、
(b)抗体に基づいた治療薬、
(c)ペプチド、タンパク質、又は核酸
【請求項6】
前記第一の小胞が、脂質系ナノ粒子(LNP)、リポソーム、ニオソーム、ポリマー安定化LNP、セラソーム、スフィンゴソーム、ポリマーソーム、合成ナノ粒子安定化LNP、天然膜由来LNP、コア-シェル型脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子、および天然膜でコーティングされたLNPからなる群より選択され、
前記第二の小胞がエキソソーム、エクトソーム、微小胞、およびアポトーシス小体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン化可能なカチオン性脂質が、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、YSK05、4-(((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)-(メチル)アミノ)メチル)安息香酸(DOBAT)、3-((2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)(メチル)アミノ)プロパン酸(DOPAT)、N-(2-カルボキシプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス-(オレオイルオキシ)-プロパン-1-アミニウム(DOMPAQ)、N-カルボキシメチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOAAQ)、アルニー(Alny)-100、3-(ジメチルアミノ)-プロピル(12Z,15Z)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル]-ヘニコサ-12,15-ジエノエート(DMAP-BLP)、および、イオン化可能なアミノ脂質化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記接触工程におけるpHを上昇させることにより前記統合工程を終了させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の小胞が、標的化部分を含み、前記標的化部分が、抗体またはその断片、抗体様分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、オリゴヌクレオチド、およびポリサッカライドからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の小胞が、PEG-リン脂質、PEG-修飾ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEG-修飾セラミド、PEG-修飾ジアルキルアミン、PEG-修飾ジアシルグリセロール、ポリエチレングリコールジパルミトイルグリセロール(PEG-DPG)、PEG-修飾ジアルキルグリセロール(メトキシポリエチレングリコール)-ジミリストイルグリセロール(PEG-s-DMG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DOMG)、およびN-アセチルガラクトサミン-((R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバメート))(GalNAc-PEG-DSG)からなる群より選択される、PEG修飾脂質を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の小胞が、
(a)がんもしくは前がん患者の腫瘍細胞に由来するか、または、腫瘍もしくはがん細胞株に由来するか、
(b)グリオブラストーマ細胞またはマントル細胞リンパ腫細胞に由来するか、
(c)B細胞、抗原提示細胞、リンパ球、血小板、好中球、活性化多形核好中球および白血球からなる群から選択される細胞に由来するか、
(d)細菌病原体、アメーバ病原体、寄生虫病原体または真菌病原体に由来するか、あるいは
(e)病原体感染細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の小胞が、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、スモールまたはショートヘアピンRNA(shRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)RNA(crRNA)、トランス活性化CRISPRRNA(tracrRNA)、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンス核酸、およびリボザイムからなる群より選択される核酸を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(a)前記第一の小胞が、少なくとも一つの抗原をコードする修飾核酸分子および/もしくはmRNAを含み、ならびに/または
(b)前記第二の小胞が、腫瘍関連抗原および病原体関連抗原から選択される疾患関連抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の小胞が、
(a)225Ac、72As、211At、11B、128Ba、212Bi、75Br、77Br、14C、109Cd、62Cu、64Cu、67Cu、18F、67Ga、68Ga、H、123I、125I、130I、131I、111In、177Lu、13N、15O、32P、33P、212Pb、103Pd、186Re、188Re、47Sc、153Sm、89Sr、99mTc、88Y、および90Yからなる群より選択される放射性同位元素、
(b)量子ドット、ならびに金、銀、鉄および酸化鉄ナノ粒子から選択される金属ナノ粒子
から選択される剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記接触工程におけるpHを上昇させることにより前記統合工程を終了させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって製造されたハイブリドソーム。
【請求項17】
ハイブリドソームの膜によりカプセル化された治療薬を含むハイブリドソームであって、前記ハイブリドソームの前記膜が下記(a)及び(b)を含むハイブリドソーム。
(a)第一の小胞の膜の要素であって、第一の小胞の前記膜は、膜融合性のイオン化可能なカチオン性脂質を含み、膜融合性の前記イオン化可能なカチオン性脂質は少なくとも1つのプロトン化可能又は脱プロトン化可能な基を有し、それにより、前記脂質が生理学的pHより低いpHで正に荷電し、かつ生理学的pHを超えると中性であり、
第一の前記小胞はインビトロで生産され、それにより、第一の前記小胞は、膜融合性のイオン化可能なカチオン性脂質を含膜融合性の前記イオン化可能なカチオン性脂質が前記第一の小胞の脂質合計に対し少なくとも30%のモル濃度で存在する、要素、及び
(b)第二の小胞の脂質二重膜の要素であって、第二の前記小胞が、インビボで生産されて、細胞外環境中に放出された自然に分泌された小胞である、要素
【請求項18】
(a)第一の前記小胞が、エキソソーム、エクトソーム、微小胞、又はアポトーシス小体であり、
(b)第ニの前記小胞が、脂質系ナノ粒子(LNP)、リポソーム、ニオソーム、ポリマー安定化LNP、セラソーム、スフィンゴソーム、ポリマーソーム、合成ナノ粒子安定化LNP、天然膜由来LNP、コア-シェル型脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子、又は天然膜でコーティングされたLNPである、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項19】
(a)第一の前記小胞が、エキソソームであり、又は
(b)第ニの前記小胞が、LNPである、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項20】
(a)第一の前記小胞が、エキソソームであり、かつ
(b)第ニの前記小胞が、LNPである、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項21】
前記ハイブリドソームが、エキソソーム、エクトソーム、微小胞、又はアポトーシス小体の脂質を含む、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項22】
前記の、エキソソーム、エクトソーム、微小胞、又はアポトーシス小体が、自然に分泌された、エキソソーム、エクトソーム、微小胞、又はアポトーシス小体である、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項23】
前記ハイブリドソームが、抗体またはその断片、抗体様分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、オリゴヌクレオチド、糖、ポリサッカライド、及びビタミンからなる群より選択される標的化部分を更に含む、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項24】
前記標的化部分が標的となる細胞の表面上の部分に結合する、請求項23に記載のハイブリドソーム。
【請求項25】
前記ハイブリドソームがその表面にアンカーされる融合ペプチドを更に含み、前記融合ペプチドが可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(SNAREタンパク質)およびその合成模倣物から選択される、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項26】
前記ハイブリドソームがPEG修飾脂質を更に含む、請求項17に記載のハイブリドソーム。
【請求項27】
前記治療薬が下記(a)~(c)のいずれかである、請求項17に記載のハイブリドソーム。
(a)薬物または医薬的に許容可能なその塩もしくは誘導体、
(b)抗体に基づいた治療薬、
(c)ペプチド、タンパク質、および核酸
【請求項28】
請求項16~27のいずれか1項に記載のハイブリドソームを含む医薬組成物。
【請求項29】
生理活性剤を細胞内に送達する方法であって、請求項16~27のいずれか1項に記載のハイブリドソームを含む組成物と、前記細胞を含む組成物とを接触させることを含み、前記第二の小胞が前記細胞に由来する、方法。
【請求項30】
前記細胞が、白血球、グリア細胞、又はエクスビボ(ex vivo)増殖中の細胞である、請求項29に記載の方法。
【外国語明細書】