(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101574
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】組換えアデノウイルスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/34 20060101AFI20220629BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20220629BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220629BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220629BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220629BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20220629BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220629BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220629BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20220629BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20220629BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C12N15/34 ZNA
C12N15/861 Z
C12N7/01
A61P31/18
A61P35/00
A61P31/06
A61P31/04
A61P31/14
A61P31/20
A61P11/00
A61P1/16
A61P29/00
A61P33/00
A61P33/06
C12N1/15
A61K39/00 Z
A61K39/39
A61K35/761
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057870
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2020119149の分割
【原出願日】2013-11-15
(31)【優先権主張番号】61/727,455
(32)【優先日】2012-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】303036197
【氏名又は名称】ベス イスラエル デアコネス メディカル センター インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】591003183
【氏名又は名称】ワシントン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バロウチ,ダン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バージン,ハーバート
(72)【発明者】
【氏名】アビンク,ピーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、組換えアデノウイルスおよびそのベクターに関する。
【解決手段】本発明のアデノウイルスは、他のアデノウイルスおよびそのベクターに対して、低い血清有病率および高い免疫原性を有する新規なサルアデノウイルスである。本発明はまた、アデノウイルスの作製、およびアデノウイルスベクターを被験体(例えばヒト)に投与することによる疾患の処置のための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~3のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一であるか、または相補的であるヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1~3のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも95%同一であるか、または相補的である、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1~3のいずれか1つの全部または一部に対して、100%同一であるか、または相補的である、請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号4~12のいずれか1つの全部または一部、またはその相補配列を含む、請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号13~18のいずれか1つの全部または一部を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項7】
前記ベクターが、配列番号34~39のいずれか1つを含むsAd4297アデノウイルスベクターである、請求項6に記載の組換えベクター。
【請求項8】
前記ベクターが、配列番号40~45のいずれか1つを含むsAd4310Aアデノウイルスベクターである、請求項6に記載の組換えベクター。
【請求項9】
前記ベクターが、配列番号46~51のいずれか1つを含むsAd4312アデノウイルスベクターである、請求項6に記載の組換えベクター。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルス。
【請求項11】
前記単離されたポリヌクレオチドが、E1領域内またはE1領域の欠失を含み、前記欠失は、前記組換えウイルスを複製欠損ウイルスにする、請求項10に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項12】
前記単離されたポリヌクレオチドが、E3領域内および/もしくはE4領域内またはE3領域および/もしくはE4領域の欠失を含む、請求項11に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項13】
目的の抗原または治療遺伝子産物、またはその断片をコードする異種ヌクレオチド配列をさらに含む、請求項11または12に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項14】
前記抗原遺伝子産物、またはその断片が、細菌、ウイルス、寄生虫、もしくは真菌タンパク質、またはその断片を含む、請求項13に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項15】
前記細菌タンパク質、またはその断片が、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・ミクロティ(Mycobacterium microti)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ菌(Brucella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、または炭疽菌(Bacillus anthracis)に由来する、請求項14に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項16】
前記ウイルスタンパク質、またはその断片が、レトロウイルス科(Retroviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、パピローマウイルス科(Papillomaviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、アストロウイルス科(Astroviridae)、ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、カリシウイルス科(Calciviridae)、およびレオウイルス科(Reoviridae)からなる群から選択されるウイルスファミリーに由来する、請求項14に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項17】
前記ウイルスタンパク質、またはその断片が、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)(HIV)、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus)(HPV)、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus)(Hep A)、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)(HBV)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)(HCV)、大痘瘡(Variola major)、小痘瘡(Variola minor)、サル痘ウイルス(monkeypox virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、ムンプスウイルス(mumps virus)、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus)(VZV)、ポリオウイルス(poliovirus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(HSV)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、ロタウイルス(rotavirus)、インフルエンザ(influenza)、エボラウイルス(Ebola virus)、黄熱ウイルス(yellow fever virus)、またはマールブルグウイルス(Marburg virus)に由来する、請求項16に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項18】
前記ウイルスタンパク質、またはその断片が、HIV Gag、Pol、Env、Nef、Tat、Rev、Vif、Vpr、またはVpuに由来する、請求項17に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項19】
前記寄生虫タンパク質、またはその断片が、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、またはレジオネラ種(Legionella spp.)に由来する、請求項14に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項20】
前記真菌タンパク質、またはその断片が、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、またはリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)に由来する、請求項14に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項21】
疾患を有する被験体を処置する方法であって、請求項10~20のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項22】
前記組換えアデノウイルスが、感染体に対する前記被験体における免疫応答を促進する抗原遺伝子産物、またはその断片を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記感染体が、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記細菌が、結核菌、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・ミクロティ、ライ菌、緑膿菌、ネズミチフス菌、大腸菌、肺炎桿菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、野兎病菌、ブルセラ菌、鼻疽菌、ペスト菌、ジフテリア菌、髄膜炎菌、百日咳菌、破傷風菌、または炭疽菌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスが、レトロウイルス(retrovirus)、フラビウイルス(flavivirus)、アレナウイルス(arenavirus)、ブニヤウイルス(bunyavirus)、フィロウイルス(filovirus)、トガウイルス(togavirus)、ポックスウイルス(poxvirus)、ヘルペスウイルス(herpesvirus)、オルソミクソウイルス(orthomyxovirus)、コロナウイルス(coronavirus)、ラブドウイルス(rhabdovirus)、パラミクソウイルス(paramyxovirus)、ピコルナウイルス(picornavirus)、ヘパドナウイルス(hepadnavirus)、パピローマウイルス(papillomavirus)、パルボウイルス(parvovirus)、アストロウイルス(astrovirus)、ポリオーマウイルス(polyomavirus)、カリシウイルス(calicivirus)、またはレオウイルス(reovirus)である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記レトロウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、A型肝炎ウイルス(Hep A)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、大痘瘡、小痘瘡、サル痘ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、日本脳炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ロタウイルス、インフルエンザ、エボラウイルス、黄熱ウイルス、またはマールブルグウイルスである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記寄生虫が、トキソプラズマ原虫、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、トリパノソーマ種、またはレジオネラ種である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記真菌が、アスペルギルス、ブラストミセス・デルマチチジス、カンジダ、コクシジオイデス・イミチス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラズマ・カプスラーツム変種カプスラーツム、南アメリカ分芽菌、スポロトリックス・シェンキイ、接合菌網種、アブシジア・コリムビフェラ、リゾムコール・プシルス、またはリゾプス・アリズスである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患が、後天性免疫不全症候群(AIDS)、がん、結核、ハンセン病、腸チフス熱、肺炎、髄膜炎、ブドウ球菌性皮膚剥脱症候群(SSSS)、リッター病、野兎病(ウサギ熱)、ブルセラ症、鼻疽、腺ペスト、敗血症性ペスト、肺ペスト、ジフテリア、百日咳、破傷風、炭疽病、肝炎、天然痘、サル痘、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水疱、ポリオ、狂犬病、日本脳炎、疱疹、単核球症、インフルエンザ、エボラウイルス疾患、出血熱、黄熱、マールブルグ病、トキソプラズマ症、マラリア、トリパノソーマ症、レジオネラ症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症(鵞口瘡)、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症、パラコクシジオイデス症、スポロトリクム症、または眼窩洞の接合菌症である、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記被験体が、ヒトである、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記アデノウイルスが、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸腔内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、腟内に、直腸内に、局所的に(topically)、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小疱内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、経口的に、局所的に(topically)、局所的に(locally)、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を浸す直接的な局所潅流、カテーテルにより、洗浄により、経管栄養により、クリームとして、または脂質組成物として投与される、請求項21~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記アデノウイルスが、薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物として投与される、請求項21~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記被験体に、少なくとも1用量の前記医薬組成物を投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記被験体に、前記医薬組成物の少なくとも2用量を投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記医薬組成物が、プライムブーストとして前記被験体に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項10~20のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを生成する方法であって、細胞を適切な培地で培養するステップと;前記細胞に、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは請求項6~9のいずれか一項に記載の組換えベクターを遺伝子導入するステップと;前記細胞内での前記ポリヌクレオチドまたはベクターの複製を可能にするステップと;生成された組換えアデノウイルスを前記培地および/または前記細胞から回収するステップと、を含む、方法。
【請求項38】
前記細胞が、細菌、植物、または哺乳動物細胞である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳動物細胞が、PER.55K細胞またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
連邦政府の資金提供による研究に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)(NIH)によって授与された助成金番号AI078526、AI096040、およびOD011170の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
組換えアデノウイルスベクターは、ワクチンの開発において使用されている。現在まで、約55の異なるアデノウイルス血清型が、同定されている。サブグループCのアデノウイルスが、ワクチン接種および遺伝子治療などの用途において、最も広く研究されている。特に、アデノウイルス血清型2および5(Ad2およびAd5)は、同分野において広く使用されている。重要なことには、Ad5ベクターに基づくワクチンは、種々の動物モデルにおいて強力かつ防御的な免疫応答を誘発することが示されている。さらに、Ad5に基づく組換えベクターを用いたHIVワクチン接種についての大規模臨床試験が進行中である(例えば、国際公開第01/02607号パンフレット;国際公開第02/22080号パンフレット;Shiver et al.,Nature.415:331-335,2002;Letvin et al.,Annu.Rev.Immunol.20:73-99,2002;およびShiver and Emini,annu.Rev.Med.55:355,2004を参照)。
【0003】
しかし、HIVおよび他の病原体に対する、組換えAd5ベクターに基づくワクチンの有用性は、ヒト集団における既存の高い抗-Ad5免疫が原因で制限される場合がある。抗-Ad5免疫の存在は、マウスおよびアカゲザルにおける試験において、Ad5に基づくワクチンの免疫原性の低下と相関している。第1相臨床試験から得られた早期データによると、この問題がヒトにおいても生じうることが示されている。Ad5に特異的な中和抗体(NAb)およびCD8+Tリンパ球の双方が抗-Ad5免疫に寄与するが、Ad5に特異的なNAbは、このプロセスにおいて主要な役割を果たすようにみられている(Sumida et al.,J.Virol.,174:7179-7185,2004)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、同分野においては、低い血清有病率および強力な免疫原性を有する代替性のアデノウイルスベクターについて、まだ満たされていない需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
3つの新規なサルアデノウイルス(sAds)、sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312の全ゲノムが同定され、またそれらの全ゲノムは決定されている。これらのアデノウイルスは、意外にも、低い血清有病率および強力な免疫原性の双方を示し、これは、これらのウイルスが、新規なワクチンベクター候補として有用でありうることを示唆している。第1の態様では、本発明は、配列番号1~3のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、またはその相補体を含む単離されたポリヌクレオチドを特徴とする。配列番号1、2、および3は、野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312の各々の完全長ゲノム配列である。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチド分子(例えば、配列番号1~3)の少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、または35000またはそれを超える隣接または非隣接ヌクレオチドを含んでもよい。
【0006】
一部の実施形態では、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4~12のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、またはその相補体を含む。配列番号4~12は、野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のファイバー1、ファイバー2、およびヘキソンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を特徴とする。したがって、一部の実施形態では、ファイバー1タンパク質の全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4、5、および6に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー1タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。一部の実施形態では、ファイバー2タンパク質の全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号7、8、および9に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー2タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。一部の実施形態では、ヘキソンタンパク質の全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10、11、および12に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のヘキソンタンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。一部の実施形態では、同ヌクレオチド配列は、1つ以上のヘキソンタンパク質超可変領域(HVRs)(例えば、sAd4287ヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt489)、HVR2(nt520~nt537)、HVR3(nt592~nt618)、HVR4(nt706~nt744)、HVR5(nt763~786)、HVR6(nt856~nt874)、および/またはHVR7(nt1201~nt1296)(配列番号10);sAd4310Aヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt477)、HVR2(nt505~nt516)、HVR3(nt571~nt591)、HVR4(nt679~nt690)、HVR5(nt709~735)、HVR6(nt805~nt816)、および/またはHVR7(nt1144~nt1236)(配列番号11);あるいはsAd4312ヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt474)、HVR2(nt505~nt522)、HVR3(nt577~nt597)、HVR4(nt685~nt726)、HVR5(nt748~777)、HVR6(nt847~nt864)、および/またはHVR7(nt1192~nt1284)(配列番号12))の全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。
【0007】
一部の実施形態では、本発明の1つ以上のヘキソンタンパク質超可変領域(HVRs)をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、別のウイルスのそれ(例えば、sAd4287ヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt489)、HVR2(nt520~nt537)、HVR3(nt592~nt618)、HVR4(nt706~nt744)、HVR5(nt763~786)、HVR6(nt856~nt874)、および/またはHVR7(nt1201~nt1296)(配列番号10);sAd4310Aヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt477)、HVR2(nt505~nt516)、HVR3(nt571~nt591)、HVR4(nt679~nt690)、HVR5(nt709~735)、HVR6(nt805~nt816)、および/またはHVR7(nt1144~nt1236)(配列番号11);あるいはsAd4312ヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt474)、HVR2(nt505~nt522)、HVR3(nt577~nt597)、HVR4(nt685~nt726)、HVR5(nt748~777)、HVR6(nt847~nt864)、および/またはHVR7(nt1192~nt1284)(配列番号12))と置換されており、それらは1つ以上の他のウイルス、例えば、アデノウイルス、例えば、Ad5の場合より低い血清有病率を有するアデノウイルス、例えばサブグループB(Ad11、Ad34、Ad35、およびAd50)およびサブグループD(Ad15、Ad24、Ad26、Ad48、およびAd49)のアデノウイルス、ならびにサルアデノウイルス(例えば、AdC68としても知られるPan9))の対応するHVR配列と置換される。他の実施形態では、同ヌクレオチド配列は、sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312の上記ヘキソンHVRのうちの1つ以上の全部または一部の置換を有するAd5、Ad11、Ad15、Ad24、Ad26、Ad34、Ad48、Ad49、Ad50、またはPan9/AdC68のアデノウイルスベクター骨格を含む。
【0008】
一部の実施形態では、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号13~18のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、またはその相補体を含む。配列番号13~18は、野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のファイバー1およびファイバー2タンパク質のノブドメインをコードするヌクレオチド配列を特徴とする。一部の実施形態では、ファイバー1のノブドメインの全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号13、14、および15の各々に対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー1タンパク質のノブドメインをコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。一部の実施形態では、ファイバー2のノブドメインの全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号16、17、および18の各々に対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー2タンパク質のノブドメインをコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。一部の実施形態では、本発明のファイバータンパク質(例えば、ファイバー1またはファイバー2タンパク質)のノブドメインをコードする1つ以上のヌクレオチド配列(配列番号13~18)は、別のウイルスのそれと置換されていてもよい。
【0009】
第2の態様では、本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクターであって、配列番号34~51のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む、組換えベクターを特徴とする。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号34~39のいずれか1つの全部または一部を含むsAd4297アデノウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号40~45のいずれか1つの全部または一部を含むsAd4310Aアデノウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号46~51のいずれか1つの全部または一部を含むsAd4312アデノウイルスベクターである。他の実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスの作製のため、配列番号34~51によって示されるベクターの2つ以上(例えば、2つ、3つ、または4つ)を用いて、プラスミド系を樹立してもよい。
【0010】
本発明の第1または第2の態様の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドおよび/または組換えベクターを使用して、組換えアデノウイルスが作製され、ここでアデノウイルスの全部または一部は、配列番号1~3のいずれか1つに由来する。一部の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1領域(例えば、sAd4287(配列番号1)のnt474~nt3085;sAd4310A(配列番号2)のnt474~nt3088;およびsAd4312(配列番号3)のnt487~nt3100)内または同領域の欠失を含む単離されたポリヌクレオチドを含む。この欠失を含む組換えアデノウイルスベクターは、複製欠損になる。一部の実施形態では、複製欠損ウイルスはまた、E3領域(例えば、sAd4287(配列番号1)のnt25973~nt28596;sAd4310A(配列番号2)のnt25915~nt28496;およびsAd4312(配列番号3)のnt25947~nt28561)内または同領域の欠失、および/またはE4領域(例えば、sAd4287(配列番号1)のnt31852~nt34752;sAd4310A(配列番号2)のnt31750~nt34048;およびsAd4312(配列番号3)のnt31818~nt34116)内または同領域の欠失を含んでもよい。他の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1、E3、および/またはE4領域の1つ以上を含み、複製可能である。
【0011】
好ましい実施形態によると、組換えアデノウイルスは、目的の抗原または治療遺伝子産物、またはその断片をコードする異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、抗原遺伝子産物、またはその断片は、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌タンパク質、あるいはその断片を含む。
【0012】
細菌タンパク質、またはその断片は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・ミクロティ(Mycobacterium microti)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ菌(Brucella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、または炭疽菌(Bacillus anthracis)から得てもよい。マイコバクテリウム(Mycobacterium)株に由来する好ましい遺伝子産物またはその断片の例として、10.4、85A、85B、85C、CFP-10、Rv3871、およびESAT-6遺伝子産物またはその断片が挙げられる。
【0013】
ウイルスタンパク質、またはその断片は、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)(HIV;例えば、1型および2型)、およびヒトTリンパ球向性ウイルス(human T-lymphotropic virus)I型およびII型(各々、HTLV-1およびHTLV-2)を含む、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリー;C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)(HCV)、黄熱ウイルス(yellow fever virus)を含む、フラビウイルス科(Flaviviridae)ファミリー(例えば、フラビウイルス(Flavivirus)、ペスチウイルス(Pestivirus)、およびヘパシウイルス(Hepacivirus)属のメンバー);ダニ媒介性ウイルス(tick-borne viruses)、例えば、ガジェッツガリーウイルス(Gadgets Gully virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、キャサヌール森林病ウイルス(Kyasanur Forest disease virus)、ランガットウイルス(Langat virus)、オムスク出血熱ウイルス(Omsk hemorrhagic fever virus)、ポワッサンウイルス(Powassan virus)、ロイヤルファームウイルス(Royal Farm virus)、カルシーウイルス(Karshi virus)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(tick-borne encephalitis virus)、ニュードルフウイルス(Neudoerfl virus)、ソフジンウイルス(Sofjin virus)、跳躍病ウイルス(Louping ill virus)およびネギシウイルス(Negishi virus);海鳥ダニ媒介ウイルス(seabird tick-borne viruses)、例えば、ミーバンウイルス(Meaban virus)、サウマレズリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、およびチュレニーウイルス(Tyuleniy virus);蚊媒介性ウイルス(mosquito-borne viruses)、例えばアロアウイルス(Aroa virus)、デングウイルス(dengue virus)、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus)、カシパコアウイルス(Cacipacore virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、マレー渓谷脳炎ウイルス(Murray Valley encephalitis virus)、セントルイス脳炎ウイルス(St.Louis encephalitis virus)、ウスツウイルス(Usutu virus)、西ナイルウイルス(West Nile virus)、ヤオンデウイルス(Yaounde virus)、ココベラウイルス(Kokobera virus)、バガザウイルス(Bagaza virus)、イルヘウスウイルス(Ilheus virus)、イスラエルトルコ脳膜脳脊髄炎ウイルス(Israel turkey meningoencephalo-myelitis virus)、タヤウイルス(Ntaya virus)、テンブスウイルス(Tembusu virus)、ジカウイルス(Zika virus)、バンジウイルス(Banzi virus)、ボウボウィウイルス(Bouboui virus)、エッジヒルウイルス(Edge Hill virus)、ジュグラウイルス(Jugra virus)、サボヤウイルス(Saboya virus)、セピクウイルス(Sepik virus)、ウガンダSウイルス(Uganda S virus)、ウェッセルスブロンウイルス(Wesselsbron virus)、黄熱ウイルス(yellow fever virus);ならびに、既知の媒介節足動物を伴わないウイルス、例えばエンテベコウモリウイルス(Entebbe bat virus)、ヨコセウイルス(Yokose virus)、アポイウイルス(Apoi virus)、カウボーンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、ジュティアパウイルス(Jutiapa virus)、モドックウイルス(Modoc virus)、サルヴィエヤウイルス(Sal Vieja virus)、サンペーリタウイルス(San Perlita virus)、ブカラサコウモリウイルス(Bukalasa bat virus)、カレー島ウイルス(Carey Island virus)、ダカールコウモリウイルス(Dakar bat virus)、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス(Montana myotis leukoencephalitis virus)、プノンペンコウモリウイルス(Phnom Penh bat virus)、リオブラボーウイルス(Rio Bravo virus)、タマナコウモリウイルス(Tamana bat virus)、および細胞融合媒介ウイルス(Cell fusing agent virus);イッピーウイルス(Ippy virus)、ラッサウイルス(Lassa virus)(例えば、ヨシア(Josiah)、LP、またはGA391株)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(lymphocytic choriomeningitis virus)(LCMV)、モバラウイルス(Mobala virus)、モペイアウイルス(Mopeia virus)、アマパリウイルス(Amapari virus)、フレクサルウイルス(Flexal virus)、グアナリトウイルス(Guanarito virus)、フニンウイルス(Junin virus)、ラティーノウイルス(Latino virus)、マチュポウイルス(Machupo virus)、オリベロスウイルス(Oliveros virus)、パラナウイルス(Parana virus)、ピチンデウイルス(Pichinde virus)、ピリタルウイルス(Pirital virus)、サビアウイルス(Sabia virus)、タカリベウイルス(Tacaribe virus)、タミアニウイルス(Tamiami virus)、ホワイトウォーターアロヨウイルス(Whitewater Arroyo virus)、チャパレウイルス(Chapare virus)、およびルジョウイルス(Lujo virus)を含む、アレナウイルス科(Arenaviridae)ファミリー;ハンタンウイルス(Hantaan virus)、シンノンブレウイルス(Sin Nombre virus)、ジュグベウイルス(Dugbe virus)、ブニヤムウェラウイルス(Bunyamwera virus)、リフトバレー熱ウイルス(Rift Valley fever virus)、ラクロスウイルス(La Crosse virus)、プンタトロウイルス(Punta Toro virus)(PTV)、カリフォルニア脳炎ウイルス(California encephalitis virus)、およびクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)ウイルス(Crimean-Congo hemorrhagic fever(CCHF) virus)を含む、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)ファミリー(例えば、ハンタウイルス(Hantavirus)、ナイロウイルス(Nairovirus)、オルソブニヤウイルス(Orthobunyavirus)、およびフレボウイルス(Phlebovirus)属のメンバー);エボラウイルス(Ebola virus)(例えば、ザイール(Zaire)、スーダン(Sudan)、アイボリーコースト(Ivory Coast)、レストン(Reston)、およびウガンダ(Uganda)株)およびマールブルグウイルス(Marburg virus)(例えば、アンゴラ(Angola)、Ci67、ムソケ(Musoke)、ポップ(Popp)、ラヴン(Ravn)およびビクトリア湖(Lake Victoria)株)を含む、フィロウイルス科(Filoviridae)ファミリー;ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)(WEE)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)、バーマフォレストウイルス(Barmah Forest virus)、オニョンニョンウイルス(O’nyong’nyong virus)、およびチクングニアウイルス(chikungunya virus)を含む、トガウイルス科(Togaviridae)ファミリー(例えば、アルファウイルス(Alphavirus)属のメンバー);天然痘ウイルス(smallpox virus)、サル痘ウイルス(monkeypox virus)、および種痘ウイルス(vaccinia virus)を含む、ポックスウイルス科(Poxviridae)ファミリー(例えば、オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属のメンバー);単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(HSV;1型、2型、および6型)、ヒトヘルペスウイルス(human herpes virus)(例えば、7型および8型)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster virus)、およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi’s sarcoma associated-herpesvirus)(KSHV)を含む、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)ファミリー;インフルエンザウイルス(influenza virus)(A、B、およびC)、例えばH5N1トリインフルエンザウイルス(H5N1 avian influenza virus)またはH1N1ブタインフルエンザ(H1N1 swine flu)を含む、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)ファミリー;重症急性呼吸器症候群ウイルス(severe acute respiratory syndrome(SARS) virus)を含む、コロナウイルス科(Coronaviridae)ファミリー;狂犬病ウイルス(rabies virus)および水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)(VSV)を含む、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)ファミリー;ヒト呼吸器多核体ウイルス(human respiratory syncytial virus)(RSV)、ニューキャッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)、ヘンドラウイルス(hendravirus)、ニパーウイルス(nipahvirus)、麻疹ウイルス(measles virus)、牛疫ウイルス(rinderpest virus)、イヌジステンパーウイルス(canine distemper virus)、センダイウイルス(Sendai virus)、ヒトパラインフルエンザウイルス(human parainfluenza virus)(例えば、1型、2型、3型、および4型)、ライノウイルス(rhinovirus)、およびムンプスウイルス(mumps virus)を含む、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)ファミリー;
ポリオウイルス(poliovirus)、ヒトエンテロウイルス(human enterovirus)(A、B、C、およびD)、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus)、およびコクサッキーウイルス(coxsackievirus)を含む、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ファミリー;B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)を含む、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)ファミリー;ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus)を含む、パピローマウイルス科(Papillomaviridae)ファミリー;アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)を含む、パルボウイルス科(Parvoviridae)ファミリー;アストロウイルス(astrovirus)を含む、アストロウイルス科(Astroviridae)ファミリー;JCウイルス(JC virus)、BKウイルス(BK virus)、およびSV40ウイルス(SV40 virus)を含む、ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)ファミリー;ノーウォークウイルス(Norwalk virus)を含む、カリシウイルス科(Calciviridae)ファミリー;またはロタウイルス(rotavirus)を含む、レオウイルス科(Reoviridae)ファミリー、のウイルスに由来してもよい。好ましい実施形態では、ウイルスタンパク質、またはその断片は、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)(HIV)、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus)(HPV)、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus)(Hep A)、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)(HBV)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)(HCV)、大痘瘡(Variola major)、小痘瘡(Variola minor)、サル痘ウイルス(monkeypox virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、ムンプスウイルス(mumps virus)、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus)(VZV)、ポリオウイルス(poliovirus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(HSV)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、ロタウイルス(rotavirus)、インフルエンザ(influenza)、エボラウイルス(Ebola virus)、黄熱ウイルス(yellow fever virus)、またはマールブルグウイルス(Marburg virus)に由来する。最も好ましい実施形態では、ウイルスタンパク質、またはその断片は、HIV Gag、Pol、Env、Nef、Tat、Rev、Vif、Vpr、またはVpuに由来する。
【0014】
寄生虫タンパク質、またはその断片は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、またはレジオネラ種(Legionella spp.)に由来してもよい。本発明のベクターにクローン化可能な特定の好ましい寄生虫タンパク質の例として、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に由来するもの、例えばスポロゾイト周囲(CS)タンパク質および肝特異抗原1または3(Liver Specific Antigens 1 or 3)(LSA-1またはLSA-3)が挙げられる。
【0015】
真菌タンパク質、またはその断片は、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、またはリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)に由来してもよい。真菌遺伝子産物、またはその断片の例として、任意の細胞壁マンノプロテイン(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)のAfmp1)または表面発現性の糖タンパク質(suface-expressed glycoprotein)(例えば、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)のSOWgp)が挙げられる。
【0016】
治療遺伝子産物、またはその断片は、インターフェロン(IFN)タンパク質、第VIII因子、第IX因子、エリスロポエチン、α-1抗トリプシン、カルシトニン、グルコセレブロシダーゼ、成長ホルモン、低密度リポタンパク質(LDL)、受容体IL-2受容体およびそのアンタゴニスト、インスリン、グロビン、免疫グロブリン、触媒抗体、インターロイキン、インスリン様成長因子、スーパーオキシドジスムターゼ、免疫レスポンダーモディファイヤー(immune responder modifiers)、副甲状腺ホルモンおよびインターフェロン、神経成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、および/またはコロニー刺激因子、またはその断片に由来してもよい。
【0017】
本発明の第3の態様は、疾患(例えば、HIVまたはがん)を有する被験体(例えば、ヒト)を、本発明の第2の態様の組換えsAdアデノウイルスベクターを被験体に投与することによって処置する方法を特徴とする。好ましい実施形態では、本発明の組換えsAdアデノウイルスは、感染体への暴露のリスクがある、または感染体に暴露された被験体において、感染体に対する免疫応答を促進する、抗原遺伝子産物、またはその断片を含む。一部の実施形態では、感染体は、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌、例えば上記のものである。1つの非限定例では、HIV陽性の被験体または後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する被験体に、HIV Gagタンパク質またはその断片を発現する本発明のsAdアデノウイルスを投与することにより、被験体においてHIVに対する免疫応答が刺激され、それにより被験体を処置することが可能である。別の実施形態では、本発明の組換えsAdアデノウイルスは、非感染体(non-infective agent)によって誘発される疾患、例えばがんを有する被験体に対して、被験体における腫瘍に対する好ましい免疫応答を刺激し、かつ/または遺伝子治療を提供し、それにより被験体を処置することにより、治療を提供する、治療遺伝子産物またはその断片、例えばインターフェロン(IFN)タンパク質、またはその断片を含む。処置可能な疾患の他の非限定例として、任意のヒト健康疾患(human health disease)、例えば結核、ハンセン病、腸チフス熱、肺炎、髄膜炎、ブドウ球菌性皮膚剥脱症候群(SSSS)、リッター病、野兎病(ウサギ熱)、ブルセラ症、鼻疽、腺ペスト、敗血症性ペスト、肺ペスト、ジフテリア、百日咳、破傷風、炭疽病、肝炎、天然痘、サル痘、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水疱、ポリオ、狂犬病、日本脳炎、疱疹、単核球症、インフルエンザ、エボラウイルス疾患、出血熱、黄熱、マールブルグ病、トキソプラズマ症、マラリア、トリパノソーマ症、レジオネラ症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症(鵞口瘡)、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症、パラコクシジオイデス症、スポロトリクム症、または眼窩洞の接合菌症(sinus-orbital zygomycosis)が挙げられる。これらの疾患の処置は、選択された感染体由来の免疫応答を刺激する抗原をコードするかまたは表面に発現する本発明の組換えsAdベクターの投与によるものであってもよい。
【0018】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスまたはアデノウイルスベクターは、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸腔内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、腟内に、直腸内に、局所的に(topically)、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小疱内に(intravesicularlly)、粘膜に、心膜内に、臍帯内に(intraumbilically)、眼内に(intraocularly)、経口的に、局所的に(topically)、局所的に(locally)、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を浸す直接的な局所潅流により、カテーテルにより、洗浄により、経管栄養により、クリームとして、または脂質組成物として投与される。1つの好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスまたはアデノウイルスベクターは、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物として投与され、かつ任意選択的にアジュバントを含んでもよい。一部の実施形態では、被験体には、少なくとも1用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い用量)の組成物が投与される。他の実施形態では、被験体に、少なくとも2用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い用量)の組成物が投与される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、プライムブーストとしてまたはプライムブーストレジメンで、被験体に投与される。被験体には、少なくとも約1×103個のウイルス粒子(vp)/用量または1×101~1×1014個のvp/用量、好ましくは1×103~1×1012個のvp/用量、より好ましくは1×105~1×1011個のvp/用量で、投与してもよい。医薬組成物は、感染体に対して、暴露または診断の、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、35、40、45、50、55、もしくは60分前、2、4、6、10、15、もしくは24時間前、2、3、5、もしくは7日前、2、4、6もしくは8週前、またはさらに3、4、もしくは6か月前に、投与してもよく、あるいは、診断または暴露の、15~30分後または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、20、24、48、もしくは72時間後、2、3、5、もしくは7日後、2、4、6もしくは8週後、3、4、6、もしくは9か月後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20年後もしくはそれより長期間経過後に、被験体に投与してもよい。疾患(例えば、エイズまたはがん)を処置する場合、本発明の医薬組成物は、症状の発症もしくは確定診断の前かまたは診断もしくは症状が明らかになってから、被験体に投与してもよい。医薬組成物は、例えば、症状の診断または臨床的認識の直後、あるいは症状の診断または検出の、2、4、6、10、15、もしくは24時間後、2、3、5、もしくは7日後、2、4、6もしくは8週後、またはさらに3、4、もしくは6か月後に、投与してもよい。
【0019】
第4の態様では、本発明は、本発明の組換えアデノウイルスを生成する方法であって、細胞を適切な培地で培養するステップと;細胞に、本発明の第1の態様の単離されたポリヌクレオチドまたは本発明の第2の態様の組換えベクターを遺伝子導入するステップと;ポリヌクレオチドまたはベクターを細胞内で複製させるステップと;生成された組換えアデノウイルスを培地および/または細胞から回収するステップと、を含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、細胞は、細菌、植物、または哺乳動物細胞である。好ましい実施形態では、哺乳動物細胞は、PER.55K細胞またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0020】
定義
「アデノウイルス」は、カプシドおよび二本鎖直鎖状DNAゲノムを含む、中規模(90~100nm)の無エンベロープ正二十面体ウイルスを意味する。アデノウイルスは、天然であっても単離されたアデノウイルス(例えば、sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312)または組換えアデノウイルス(例えば、複製欠損または複製可能sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312、またはそのキメラ変異体)であってもよい。
【0021】
本明細書で使用される「投与する」は、1用量の医薬組成物(例えば、本発明の組換えアデノウイルス)を被験体に投与する方法を意味する。本明細書に記載の方法において利用される組成物は、例えば、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸腔内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、腟内に、直腸内に、局所的に(topically)、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小疱内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内体腔に、眼球内に、経口的に、局所的に(topically)、局所的に(locally)、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を浸す直接的な局所潅流により、カテーテルにより、洗浄により、経管栄養により、クリームとして、または脂質組成物として投与してもよい。好ましい投与方法は、様々な要素(例えば、投与されている組成物の成分および処置されている状態の重症度)に応じて、変更してもよい。
【0022】
本特許明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形は、記述される整数または整数のグループを含むことを意味するが、任意の他の整数または整数のグループを排除することを意味しないことが理解されるだろう。
【0023】
アデノウイルスゲノム領域の「欠失」は、特定ゲノム領域(例えば、E1、E2、E3、および/またはE4領域)、または特定領域内の任意の特定のオープンリーディングフレームの、部分的または完全な除去、破壊(例えば、挿入変異による)、または機能的不活化(例えば、ミスセンス変異)を意味する。
【0024】
「遺伝子産物」は、遺伝子から転写されたmRNAまたは他の核酸(例えば、microRNA)ならびに同mRNAから翻訳されたポリペプチドを含むことを意味する。一部の実施形態では、遺伝子産物は、ウイルス(例えば、HIV)に由来してもよく、多くは、例えば、係属中の米国特許出願公開第2012/0076812号明細書中に記載の、例えば、任意の1種以上のウイルスタンパク質、またはその断片を含む。一部の実施形態では、遺伝子産物は、限定はされないが、インターフェロンタンパク質、第VIII因子、第IX因子、エリスロポエチン、α-1抗トリプシン、カルシトニン、グルコセレブロシダーゼ、成長ホルモン、低密度リポタンパク質(LDL)、受容体IL-2受容体およびそのアンタゴニスト、インスリン、グロビン、免疫グロブリン、触媒抗体、インターロイキン、インスリン様成長因子、スーパーオキシドジスムターゼ、免疫レスポンダーモディファイヤー、副甲状腺ホルモンおよびインターフェロン、神経成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、およびコロニー刺激因子を含む治療遺伝子産物である。
【0025】
「異種核酸分子」は、異種核酸分子によりコードされた、目的の遺伝子産物またはその断片のその後の発現を意図して、例えば、本発明のアデノウイルス、またはそのポリヌクレオチドまたはベクターに組み込み可能な任意の外因性核酸分子を意味する。好ましい実施形態では、異種核酸分子は、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌タンパク質、またはその断片である、抗原または治療遺伝子産物、またはその断片、をコードする(例えば、1つ以上のHIVまたはSIV Gag、Pol、Env、Nef、Tat、Rev、Vif、Vpr、またはVpu遺伝子産物、またはその断片をコードする核酸分子)。異種核酸分子は、野生型アデノウイルス中に認められる他の核酸分子に通常は関連することのないものである。
【0026】
「単離される」は、天然環境の成分から分離される、回収される、または精製されることを意味する。
【0027】
「医薬組成物」は、被験体への投与に適しており、かつ疾患(例えば、がんまたはエイズ)を処置するかまたは疾患の1つ以上の症状を低下もしくは回復させる、好ましくは、目的の抗原または治療遺伝子産物、またはその断片をコードする異種ヌクレオチド配列を含む、治療または生物活性剤、例えば本発明の組換えアデノウイルスベクターを含有する任意の組成物を意味する。本発明の目的のため、医薬組成物は、ワクチンを含み、かつ治療または生物活性剤の送達に適した医薬組成物は、例えば、錠剤、ゲルキャップ、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒状物(granulates)、懸濁剤、乳剤、溶液、ゲル剤、ハイドロゲル、経口ゲル剤、ペースト剤、点眼剤、軟膏剤、クリーム、硬膏剤、水薬、送達装置、坐剤、浣腸、注射剤、植込錠、噴霧剤、またはエアロゾルを含んでもよい。これらの調合物のいずれかは、当該技術分野の周知で認められた方法により調製してもよい。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(21st ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2005、およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,ed.J.Swarbrick,Informa Healthcare,2006を参照のこと(これらの各々は、参照により本明細書で援用される)。
【0028】
「薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバント」は、共に投与される医薬組成物の治療特性を保持しながら、被験体にとって生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを意味する。1つの典型的な薬学的に許容できる担体は、生理食塩水である。他の生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントおよびそれらの調合物は、当業者に既知である(例えば、米国特許出願公開第2012/0076812号明細書を参照)。
【0029】
「部分」または「断片」は、全体の一部を意味する。一部分は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列領域の全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%を含んでもよい。例えば、ポリヌクレオチドにおいては、一部分は、参照ポリヌクレオチド分子の少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000またはそれを超える隣接ヌクレオチドを含んでもよい。例えば、ポリペプチドにおいては、一部分は、参照ポリペプチド分子の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、75、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、もしくは350またはそれを超える隣接アミノ酸を含んでもよい。
【0030】
「免疫応答を促進する」は、医薬組成物(例えば、ワクチン)が投与されている被験体における、例えば1つ以上の感染体(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、またはそれらの組み合わせ)またはタンパク質標的に特異的な液性応答(例えば、抗体の産生)または細胞性応答(例えば、T細胞、マクロファージ、好中球、およびナチュラルキラー細胞の活性化)を誘発することを意味する。
【0031】
ベクターまたはウイルスに関連する「組換え」は、インビトロで操作されているベクターまたはウイルス、例えば、異種ヌクレオチド配列(例えば、抗原または治療遺伝子産物をコードする配列)を含むベクターまたはウイルス、あるいは野生型ウイルスE1、E3、および/またはE4領域に対してウイルスE1、E3、および/またはE4領域内に、変化、破壊、または欠失を有するベクターまたはウイルスを意味する。
【0032】
「配列同一性」または「配列類似性」は、2つ以上のアミノ酸配列、または2つ以上のヌクレオチド配列の間での同一性または類似性が、配列間での同一性または類似性の観点で表現されることを意味する。配列同一性は、「百分率(%)同一性」の観点から測定してもよく、百分率が高まるにつれて、配列間で共有される同一性が高まる。配列類似性は、(保存的アミノ酸置換を考慮する)百分率類似性の観点から測定してもよく、百分率が高まるにつれて、配列間で共有される類似性(similarilty)が高まる。核酸またはアミノ酸配列の相同体またはオルソログは、標準的な方法を用いて整列される場合、比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。配列同一性は、配列分析ソフトウェアをデフォルト設定で用いて測定してもよい(例えば、Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI53705のSequence Analysis Software Package)。かかるソフトウェアにより、様々な置換、欠失、および他の修飾に対して相同性の程度を割り当てることにより、類似配列が一致しうる。
【0033】
「被験体」は、脊椎動物、例えば哺乳動物(例えば、霊長類およびヒト)である。哺乳類はまた、限定はされないが、家畜(雌ウシなど)、スポーツ用動物(sport animal)(例えばウマ)、ペット(ネコおよびイヌなど)、マウス、およびラットを含む。本明細書に記載の方法に従って処置されるべき被験体(例えば、がんなどの疾患および/または感染体、例えば、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫によって引き起こされる疾患を有する被験体)は、医師により、かかる状態を有するものと診断されている者であってもよい。診断は、任意の適切な手段により実施してもよい。感染の発症が阻止されている被験体は、かかる診断を受けていてもよく、または受けていなくてもよい。当業者は、本発明に従って処置されるべき被験体が、標準的検査を受けていてもよい、または検査なしに、1つ以上のリスク因子(例えば、生物由来物質、例えばウイルスへの暴露)の存在によって、高リスクのあるものと同定されていてもよいことを理解するであろう。
【0034】
本明細書で使用されるように、また当該技術分野で十分に理解されているように、「処置」は、有利であるかまたは所望される結果、例えば臨床結果を得るためのアプローチである。有利であるかまたは所望される結果は、限定はされないが、1つ以上の症状または状態の軽減または回復;疾患、障害、または状態の程度の縮小;疾患、障害、または状態の状況の安定化(すなわち、悪化しないこと);疾患、障害、または状態の拡散の予防;疾患、障害、または状態の進行の遅延または緩徐化;疾患、障害、または状態の回復または緩和;および寛解(部分または完全のいずれか)、検出可能または検出不能のいずれか、を含んでもよい。疾患、障害、または状態を「緩和すること」は、処置の非存在下での程度または時間変化と比較して、疾患、障害、または状態の程度および/または望ましくない臨床症状が緩和化され、かつ/または、進行の時間変化が緩徐化または延長化されることを意味する。
【0035】
用語「ワクチン」は、本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発するために使用される材料として定義され、ワクチンの被験体への投与後に免疫を与えうる。
【0036】
「ベクター」は、ウイルス種、例えばアデノウイルス種(例えば、sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312)に由来する、1つ以上の遺伝子(非構造または構造)、またはその断片を含む組成物を意味し、それを使用して、1つ以上の異種遺伝子をウイルスまたは非ウイルス源から宿主または被験体へ伝えることができる。ウイルスベクターの核酸材料は、例えば脂質膜内にまたは構造タンパク質(例えば、カプシドタンパク質)により被包してもよく、それは1つ以上のウイルスポリペプチド(例えば、糖タンパク質)を含んでもよい。ウイルスベクターを使用し、被験体の細胞を感染させ、次いで、ウイルスベクターの異種遺伝子のタンパク質産物への翻訳を促進してもよい。
【0037】
用語「ウイルス」は、本明細書で使用される場合、宿主細胞外部で成長または再生できず、かつ哺乳類(例えば、ヒト)またはトリに感染する感染体として定義される。
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】sAd4287のゲノム構築の概略マップである。
【
図2】プラスミドsAdApt4287.Emptyの概略マップである。
【
図3】プラスミドpBr/sAd4287.pIX-pVの概略マップである。
【
図4】プラスミドpBr/sAd4287.PsiI-rITRの概略マップである。
【
図5】プラスミドpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3を得るのに使用されるクローニング方法およびpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3の、その親プラスミドpBr/sAd4287.PsiI-rITRの場合に対する概略マップを図示する。
【
図6】プラスミドpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3.dE4の、その親プラスミドpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3の場合に対する概略マップを示す。
【
図7】プラスミドsAdApt4287.E1btg.Emptyを得るのに使用されるクローニング方法およびsAdApt4287.E1btg.Emptyの、その親プラスミドsAdApt4287.Emptyの場合に対する概略マップを図示する。
【
図8】sAd4310#13-1(sAd4310A)のゲノム構築の概略マップである。
【
図9】プラスミドsAdApt4310A.Emptyの概略マップである。
【
図10】プラスミドpBr/sAd4310A.pIX-pVの概略マップである。
【
図11】プラスミドpBr/sAd4310A.RsrII-rITRの概略マップである。
【
図12】pBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3の、その親プラスミドpBr/sAd4310A.RsrII-rITRの場合に対する概略マップを示す。
【
図13】プラスミドpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3.dE4の、その親プラスミドpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3の場合に対する概略マップを示す。
【
図14】プラスミドsAdApt4310A.E1btg.Emptyを得るのに使用されるクローニング方法およびsAdApt4310A.E1btg.Emptyの、その親プラスミドsAdApt4310A.Emptyの場合に対する概略マップを図示する。
【
図15】sAd4312のゲノム構築の概略マップである。
【
図16】プラスミドsAdApt4312.Emptyの概略マップである。
【
図17】プラスミドpBr/sAd4312.pIX-pVの概略マップである。
【
図18】プラスミドpBr/sAd4312.pV-rITRの概略マップである。
【
図19】プラスミドpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3を得るのに使用されるクローニング方法およびpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3の、その親プラスミドpBr/sAd4312.pV-rITRの場合に対する概略マップを図示する。
【
図20】プラスミドpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3.dE4の、その親プラスミドpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3の場合に対する概略マップを示す。
【
図21】プラスミドsAdApt4312.E1btg.Emptyの概略マップである。
【
図22A】サブサハラヒト(n=144;上)およびアカゲザル(n=108;下)における相対的なsAd4287に特異的な中和抗体(NAb)応答を示す円グラフである。ルシフェラーゼに基づくウイルス中和アッセイによって評価される、4つのNAb力価カテゴリー(<18=陰性、18~200=低い、201~1000=高い、および>1000=高い)の各々に該当する個体の相対数が示される。
【
図22B】サブサハラヒト(n=144;上)およびアカゲザル(n=108;下)における相対的なsAd4310Aに特異的な中和抗体(NAb)応答を示す円グラフである。ルシフェラーゼに基づくウイルス中和アッセイによって評価される、4つのNAb力価カテゴリー(<18=陰性、18~200=低い、201~1000=高い、および>1000=高い)の各々に該当する個体の相対数が示される。
【
図22C】サブサハラヒト(n=144;上)およびアカゲザル(n=108;下)における相対的なsAd4312に特異的な中和抗体(NAb)応答を示す円グラフである。ルシフェラーゼに基づくウイルス中和アッセイによって評価される、4つのNAb力価カテゴリー(<18=陰性、18~200=低い、201~1000=高い、および>1000=高い)の各々に該当する個体の相対数が示される。
【
図23A】免疫後の0、7、14、21、および28日目にD
b/AL11四量体結合アッセイを通じてCD8
+T細胞性応答を測定することによって評価された、ベクターの10
7、10
8、および10
9個のウイルス粒子(vp)で免疫したC57BL/6マウスにおけるSIVmac239 Gagを有するsAd4287ベクターにより誘発される細胞性応答を示すグラフである。
【
図23B】免疫後の0、7、14、21、および28日目にD
b/AL11四量体結合アッセイを通じてCD8
+T細胞性応答を測定することによって評価された、ベクターの10
7、10
8、および10
9個のウイルス粒子(vp)で免疫したC57BL/6マウスにおけるSIVmac239 Gagを有するsAd4310Aベクターにより誘発される細胞性応答を示すグラフである。
【
図24A】免疫後28日目にC57BL/6マウス由来の脾細胞を使用するIFN-γ ELISPOTアッセイによって測定された、10
9個のvpでのsAd4287、sAd4310A、および複製可能sAd4287(rcsAd4287)によって誘発される細胞性応答を示すグラフである。IFN-γ ELISPOT応答は、オーバーラップしているGagペプチド(Gag)、優性CD8
+T細胞エピトープAL11、準優性CD8
+TエピトープKV9、およびCD4
+T細胞エピトープDD13に対して測定された。
【
図24B】免疫後28日目にC57BL/6マウス由来の脾細胞を使用するIFN-γ ELISPOTアッセイによって測定された、10
8個のvpでのsAd4287、sAd4310A、およびrcsAd4287によって誘発される細胞性応答を示すグラフである。IFN-γ ELISPOT応答は、Gag、優性CD8
+T細胞エピトープAL11、準優性CD8
+TエピトープKV9、およびCD4
+T細胞エピトープDD13に対して測定された。
【
図24C】免疫後28日目にC57BL/6マウス由来の脾細胞を使用するIFN-γ ELISPOTアッセイによって測定された、10
7個のvpでのsAd4287、sAd4310A、およびrcsAd4287によって誘発される細胞性応答を示すグラフである。IFN-γ ELISPOT応答は、Gag、優性CD8
+T細胞エピトープAL11、準優性CD8
+TエピトープKV9、およびCD4
+T細胞エピトープDD13に対して測定された。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
発明者は、メタゲノミクス研究の一部として、アカゲザル由来の、数種の新規なアデノウイルスを含む、種々の新規なウイルスを予め同定している(Handley et al.Cell.151(2):253-266,2012)。本発明では、発明者は、3つの新規なサルアデノウイルス(sAds)、sAd4287、sAd4310#13-1(sAd4310A)、およびsAd4312を単離し、増幅し、かつ精製した。3つのsAdは、上記のアカゲザルのメタゲノミクス研究から得られた。これらのウイルスは、全体的に新規であり、それらの全配列については、先行的に全く報告がなされていない。これらのウイルスはまだ公式に「命名」されていないことから、それらはまだ公式のアデノウイルス番号を有していない。したがって、全体を通じて使用される命名は、内部の研究室が指定したものを表す。
【0041】
新規なsAdの完全ゲノム配列および発明者がウイルスの各々に対して作製したベクター系が、以下に詳述される。発明者は、ルシフェラーゼおよびSIV Gagを含む種々の導入遺伝子を発現する組換えsAd4287、sAd4310A、およびsAd4312ベクターを作製した。さらに、発明者は、これらのベクターが、(i)ヒト集団内で意外にも極端に低い血清有病率を有し、かつ(ii)マウスにおいて強力な免疫原性を示すことを実証した。低いベースラインの抗-ベクター免疫と強力な免疫原性のこの組み合わせは、これらの新規なアデノウイルスベクターが、疾患、例えばがんや感染体によって誘発されるものに対するワクチンの作製において有用でありうることを示唆している。
【0042】
本発明のポリヌクレオチド
第1の態様として、本発明は、3つの新規なsAds(sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312)に関するポリヌクレオチド配列を提供する。単離されたポリヌクレオチドは、野生型sAd4287(配列番号1)、sAd4310A(配列番号2)、またはsAd4312(配列番号3)の完全長ゲノム配列のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、またはその相補体を含んでもよい。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1~3の少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000またはそれを超える隣接または非隣接ヌクレオチドを含んでもよい。
【0043】
一部の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、10~100ヌクレオチド長、より詳細には10~30ヌクレオチド長(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長)であるプライマーとして使用してもよく、かつ、配列番号52~123のいずれか1つに対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。
【0044】
一部の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、野生型sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312のファイバー1、ファイバー2、および/またはヘキソンタンパク質をコードするヌクレオチド配列の全部または一部を含む。一部の実施形態では、ファイバー1タンパク質の全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4、5、および6に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー1タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のファイバー1タンパク質のポリペプチド配列は、配列番号19、20、および21に各々対応する。一部の実施形態では、ファイバー2タンパク質の全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号7、8、および9に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー2タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のファイバー2タンパク質のポリペプチド配列は、配列番号22、23、および24に各々対応する。一部の実施形態では、ヘキソンタンパク質の全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10、11、および12に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のヘキソンタンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のヘキソンタンパク質のポリペプチド配列は、配列番号25、26、および27に各々対応する。
【0045】
他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、野生型sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312のファイバー1のノブドメインをコードするヌクレオチド配列の全部または一部を含む。一部の実施形態では、ファイバー1のノブドメインの全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号13、14、または15に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー1タンパク質のノブドメインをコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のファイバー1タンパク質のノブドメインのポリペプチド配列は、配列番号28、29、および30に各々対応する。一部の実施形態では、ファイバー2のノブドメインの全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号16、17、および18に各々対応する、野生型sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312のファイバー2タンパク質のノブドメインをコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい。野生型sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312のファイバー2タンパク質のノブドメインのポリペプチド配列は、配列番号31、32、および33に各々対応する。
【0046】
他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312のファイバー1、ファイバー2、ヘキソン、ファイバー1ノブ、および/またはファイバー2ノブタンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列の全部または一部、ならびに、下で考察のように、キメラアデノウイルスベクターの作製において指定される、Ad11、Ad15、Ad24、Ad26、Ad34、Ad35、Ad48、Ad49、Ad50、および/またはPan9(AdC68としても知られる)を含む、1つ以上のアデノウイルスベクター由来のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312のファイバー1、ファイバー2、ヘキソン、ファイバー1ノブ、および/またはファイバー2ノブタンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列の全部または一部、ならびに、Ad11、Ad15、Ad24、Ad26、Ad34、Ad35、Ad48、Ad49、Ad50、および/またはPan9(AdC68としても知られる)を含む1つ以上のアデノウイルスベクター由来のヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよいヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、Ad5、Ad11、Ad15、Ad24、Ad26、Ad34、Ad35、Ad48、Ad49、Ad50、および/またはPan9(AdC68としても知られる)を含む1つ以上のアデノウイルスベクター由来のヌクレオチド配列、ならびに、sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312のファイバー1、ファイバー2、ヘキソン、ファイバー1ノブ、および/またはファイバー2ノブタンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列の全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であってもよい1つ以上のヌクレオチド配列の全部または一部を含む。
【0047】
本発明のベクター
本発明はまた、上記のポリヌクレオチドの任意の1つ以上を含む組換えベクターを特徴とする。一部の実施形態では、本発明の1つのベクターは、ベクター系として、本発明の1つ以上の他のベクター(例えば、1、2、3、またはそれより多いベクター)と併用してもよく、それを使用して、本発明の組換え複製欠損sAds(rdsAds)または複製可能sAds(rcsAds)を作製してもよい。したがって、本発明は、本明細書に記載の3つの新規なsAds(sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312)の各々に対する新規なアデノウイルスベクター系を特徴とする。複製欠損アデノウイルスを作製するためのかかるベクター系は、当該技術分野で既知であり、例えば、Ad5、Ad11、Ad35およびAd49に基づく(based of)、複製可能アデノウイルスを含まないバッチを作製するのに適用されている(例えば、国際公開第97/00326号パンフレット、国際公開第00/70071号パンフレット;国際公開第02/40665号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0232900号明細書を参照(すべては参照により本明細書中に援用される))。しかし、sAdのsAd4287、sAd4310A、およびsAd4312に対して適用される本発明のベクターおよびベクター系は、新規性がある。
【0048】
一部の実施形態では、本発明のベクターは、複製可能sAd(rcsAd)を生成するという目的で、特定のsAd(例えば、sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312)のE1領域(例えば、sAd4287(配列番号1)のnt474~nt3085;sAd4310A(配列番号2)のnt474~nt3088;およびsAd4312(配列番号3)のnt487~nt3100)を含んでもよい。かかるベクターは、例えば、本発明の.E1btg.Emptyベクターにおいて例示される(3つの新規なアデノウイルスの各々について、本発明の.E1btg.Emptyベクターを示す、例えば、
図7、14、および21を参照)。
【0049】
一部の実施形態では、本発明のベクターは、左端sAd配列および発現/導入遺伝子カセットを含んでもよい(例えば、大体pIXからpVにかけてのsAd4287ゲノムの左側部分を含むpBr/sAd4287.pIX-pVベクターを示す
図3を参照)。一部の実施形態では、ベクターの発現カセットでは、特定のアデノウイルスのE1領域が置き換わるかまたは破壊される。好ましい実施態様では、発現カセットは、導入遺伝子、および任意選択的にはポリアデニル化シグナル(例えば、目的の抗原遺伝子産物、例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、または治療タンパク質、またはその断片をコードする異種ヌクレオチド配列)の発現を刺激するプロモーター(例えば、CMVプロモーター、例えば、CMVlongプロモーター)を含む(3つの新規なアデノウイルスの各々における本発明の.Emptyベクターを示す、例えば、
図2、9、および16を参照)。E1領域は、(部分的または完全に)欠失されるか、破壊されるか、または1つ以上の突然変異により不活化されてもよい。
【0050】
一部の実施形態では、本発明のベクターは、sAd配列の左側部分を含んでもよく(例えば、大体pIXからpVにかけてのsAd4287ゲノムの左側部分を含むpBr/sAd4287.pIX-pVベクターを示す
図3を参照)、それはsAdのペントン塩基および52Kコード領域を含む(3つの新規なアデノウイルスの各々における本発明の.pIX-pVベクターを示す、例えば、
図3、10、および17を参照)。
【0051】
他の実施形態では、本発明のベクターは、sAd配列の右側部分を含んでもよい(大体pVIIから右側ITR(rITR)にかけてのsAd4287ゲノムの右側部分を含むpBr/sAd4287.PsiI.rITRベクターを示す、例えば、
図4を参照)(3つの新規なアデノウイルスの各々について本発明の.pV-rITRベクターを示す、例えば、
図4、11、および18を参照)。一部の実施形態では、これらのベクターは、さらに、欠失、破壊、または突然変異された、アデノウイルス粒子の複製およびパッケージングにおいて必要とされない、E3(例えば、sAd4287(配列番号1)のnt25973~nt28596;sAd4310A(配列番号2)のnt25915~nt28496;およびsAd4312(配列番号3)のnt25947~nt28561;3つの新規なアデノウイルスの各々における本発明の.dE3ベクターを示す、
図5、12、および19を参照)および/またはE4領域(例えば、sAd4287(配列番号1)のnt31852~nt34752;sAd4310A(配列番号2)のnt31750~nt34048;およびsAd4312(配列番号3)のnt31818~nt34116;3つの新規なアデノウイルスの各々について本発明の.dE3.dE4ベクターを示す、
図6、13、および20を参照)を有する。E3領域の欠失は、大規模な導入遺伝子配列がベクターに取り込まれる場合、機能性粒子にパッケージング可能なゲノムサイズが野生型サイズの約105%に限定されることから、一般に好ましい。本明細書に適用されないが、他の修飾、例えば、E2A領域、または全E4領域の全部とはいえないにしても大部分の欠失をアデノウイルスゲノムに導入してもよいことは理解されるべきである。一部の実施形態では、本発明のベクターが遺伝子導入された細胞は、欠損した領域に機能性をもたらすことにより、これらの欠損を補うことができる。E2A領域は、例えば温度感受性のあるE2A突然変異体により、またはE4機能をもたらすことにより、提供してもよい。本発明のベクターのアデノウイルス遺伝子の欠損(例えば、E1、E3、および/またはE4の欠失)を補うのに使用可能な細胞として、例えば、PER.55K、PER.C6(登録商標)、および293細胞が挙げられる。すべてのかかる系は、当該技術分野で既知であり、アデノウイルスゲノムのかかる修飾は、本発明の範囲内に含まれ、それは原則的に(in principal)、3つの新規なsAd4287、sAd4310A、およびsAd4312ゲノム配列、およびそれらの使用に関する。上述のように、本発明のいずれか1つのベクターは、本発明の1つ以上の他のベクターと併用してもよい。一部の実施形態では、本発明の所与のsAdを作製するため、sAdゲノムの左側および右側の双方をコードするベクターが、使用される。
【0052】
本発明はまた、sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312ゲノムの一部分、ならびに1種以上の他のウイルスのゲノムの一部分を含む、キメラアデノウイルスの作製のためのベクターを特徴とする。一部の実施形態では、本発明のキメラアデノウイルスベクターは、ヘキソンおよび/またはファイバータンパク質の全部または一部の置換を含んでもよい。一部の実施形態では、別のウイルスの一部で置換されたヘキソンタンパク質の一部は、ヘキソンタンパク質超可変領域(HVRs)、例えば、sAd4287ヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt489)、HVR2(nt520~nt537)、HVR3(nt592~nt618)、HVR4(nt706~nt744)、HVR5(nt763~786)、HVR6(nt856~nt874)、および/またはHVR7(nt1201~nt1296)(配列番号10);sAd4310Aヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt477)、HVR2(nt505~nt516)、HVR3(nt571~nt591)、HVR4(nt679~nt690)、HVR5(nt709~735)、HVR6(nt805~nt816)、および/またはHVR7(nt1144~nt1236)(配列番号11);あるいはsAd4312ヘキソンタンパク質のHVR1(nt403~nt474)、HVR2(nt505~nt522)、HVR3(nt577~nt597)、HVR4(nt685~nt726)、HVR5(nt748~777)、HVR6(nt847~nt864)、および/またはHVR7(nt1192~nt1284)(配列番号12)のうちの1つ以上である。一部の実施形態では、別のウイルスの一部で置換されたファイバータンパク質の一部は、ファイバーノブドメインである。一部の実施形態では、置換された領域は、Ad5の場合と比べて低い血清有病率を有するアデノウイルス、例えばサブグループB(Ad11、Ad34、Ad35、およびAd50)およびサブグループD(Ad15、Ad24、Ad26、Ad48、およびAd49)アデノウイルスならびにサルアデノウイルス(例えば、AdC68としても知られるPan9)に由来する領域と置換される。一部の実施形態では、Ad5、Ad11、Ad15、Ad24、Ad26、Ad34、Ad48、Ad49、Ad50、またはPan9/AdC68のアデノウイルスベクター骨格は、sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312の上記のヘキソンHVRのうちの1つ以上の全部または一部の置換を含む。
【0053】
本発明のアデノウイルス
上で考察したように、少なくとも一部は、sAd4287、sAd4310A、および/またはsAd4312に由来する本発明の組換えアデノウイルスは、本発明の上記のベクターを用いて作製してもよい。これらのアデノウイルスは、rcsAdsまたはrdsAdsであってもよい。rdsAdsは、E1領域の欠失、破壊、または突然変異による不活化を含むことになり、またさらにE2、E3、および/またはE4領域の欠失、破壊、または突然変異による不活化を含んでもよい。一部の実施形態では、本発明のアデノウイルスは、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌タンパク質、またはその断片を含む、抗原または治療遺伝子産物、またはその断片を含んでもよい。好ましい実施形態では、抗原遺伝子産物、またはその断片は、宿主または宿主細胞において発現される場合、強力な免疫応答を誘発する能力がある。一部の実施形態では、細菌タンパク質、またはその断片は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・ミクロティ(Mycobacterium microti)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ菌(Brucella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、または炭疽菌(Bacillus anthracis)に由来してもよい。一部の実施形態では、ウイルスタンパク質、またはその断片は、レトロウイルス科(Retroviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、パピローマウイルス科(Papillomaviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、アストロウイルス科(Astroviridae)、ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、カリシウイルス科(Calciviridae)、およびレオウイルス科(Reoviridae)からなる群から選択されるウイルスファミリーのウイルスに由来してもよい。一部の実施形態では、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)(HIV)、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus)(HPV)、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus)(Hep A)、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)(HBV)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)(HCV)、大痘瘡(Variola major)、小痘瘡(Variola minor)、サル痘ウイルス(monkeypox virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、ムンプスウイルス(mumps virus)、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus)(VZV)、ポリオウイルス(poliovirus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(HSV)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、ロタウイルス(rotavirus)、インフルエンザ(influenza)、エボラウイルス(Ebola virus)、黄熱ウイルス(yellow fever virus)、またはマールブルグウイルス(Marburg virus)である。一部の実施形態では、寄生虫タンパク質、またはその断片は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、またはレジオネラ種(Legionella spp.)に由来する。一部の実施形態では、真菌タンパク質、またはその断片は、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、またはリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)に由来する。一部の実施形態では、治療遺伝子産物は、インターフェロン(IFN)タンパク質、第VIII因子、第IX因子、エリスロポエチン、α-1抗トリプシン、カルシトニン、グルコセレブロシダーゼ、成長ホルモン、低密度リポタンパク質(LDL)、受容体IL-2受容体およびそのアンタゴニスト、インスリン、グロビン、免疫グロブリン、触媒抗体、インターロイキン、インスリン様成長因子、スーパーオキシドジスムターゼ、免疫レスポンダーモディファイヤー、副甲状腺ホルモンおよびインターフェロン、神経成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、および/またはコロニー刺激因子であってもよい(例えば、米国特許第6,054,288号明細書を参照、参照により本明細書中に援用される)。一部の実施形態では、IFNタンパク質は、ヒトIFN-α(例えば、IFN-α-1a、IFN-α-1b、IFN-α-2a、IFN-α-2b、およびコンセンサスIFN-α(conIFN-α);
図1)、ヒトIFN-β(例えば、IFN-β-1aおよびIFN-β-1b)、ヒトIFN-γ)、またはIFN-τ、あるいはインターフェロンに対して同一もしくは類似の生物学的活性(例えば、ヒトIFN-α、ヒトIFN-β、ヒトIFN-γ、IFN-τ、またはconIFN-αの活性の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)を示すポリペプチドの配列に対して、実質的に同一(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらに100%同一)のアミノ酸配列を有する(例えば、特定のIFN配列に関しては、例えば、米国特許第4,695,623号明細書および米国特許出願公開第2011/0000480号明細書を参照、参照により本明細書中に援用される)。
【0054】
細菌遺伝子産物、またはその断片の非限定例として、マイコバクテリウム(Mycobacterium)の10.4、85A、85B、86C、CFP-10、Rv3871、およびESAT-6遺伝子産物、またはその断片;大腸菌(E.Coli)のO、H、およびK抗原、またはその断片;ならびに炭疽菌(Bacillus anthracis)の防御抗原(PA)、またはその断片、が挙げられる。ウイルス遺伝子産物、またはその断片の非限定例として、HIVおよび他のレトロウイルス(retroviruses)の、Gag、Pol、Nef、Tat、Rev、Vif、Vpr、またはVpu、またはその断片(例えば、米国特許出願公開第2012/0076812号明細書を参照、参照により本明細書中に援用される);HSVの、9D抗原、またはその断片;すべてのエンベロープタンパク質を含有するウイルスの、Env、またはその断片、が挙げられる。寄生虫遺伝子産物、またはその断片の非限定例として、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の、スポロゾイト周囲の(CS)タンパク質、生殖体の表面タンパク質Pfs230およびPfs48/45、および肝特異抗原1または3(LSA-1またはLSA-3)、またはその断片、が挙げられる。真菌遺伝子産物、またはその断片の非限定例として、任意の細胞壁マンノプロテイン(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)のAfmp1)または表面発現性の糖タンパク質(例えば、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)のSOWgp)、が挙げられる。
【0055】
本発明の組成物を使用する予防または処置の方法
本発明の医薬組成物は、疾患(例えば、がんまたは感染体によって誘発される疾患、例えばエイズ)を有する被験体(例えば、ヒト)を処置するためのワクチンとして使用してもよい。特に、本発明の組成物を使用して、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・ミクロティ(Mycobacterium microti)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ菌(Brucella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、または炭疽菌(Bacillus anthracis)を含む細菌;レトロウイルス科(Retroviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、パピローマウイルス科(Papillomaviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、アストロウイルス科(Astroviridae)、ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、カリシウイルス科(Calciviridae)、およびレオウイルス科(Reoviridae)からなる群から選択されるウイルスファミリーのウイルス;トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、またはレジオネラ種(Legionella spp.)を含む寄生虫;ならびに、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、またはリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)を含む真菌、による(暴露前または暴露後)感染を処置してもよい。
【0056】
したがって、他の非限定的な実施形態では、本発明の医薬組成物を使用して、後天性免疫不全症候群(AIDS)、がん、結核、ハンセン病、腸チフス熱、肺炎、髄膜炎、ブドウ球菌性皮膚剥脱症候群(SSSS)、リッター病、野兎病(ウサギ熱)、ブルセラ症、鼻疽、腺ペスト、敗血症性ペスト、肺ペスト、ジフテリア、百日咳、破傷風、炭疽病、肝炎、天然痘、サル痘、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水疱、ポリオ、狂犬病、日本脳炎、疱疹、単核球症、インフルエンザ、エボラウイルス疾患、出血熱、黄熱、マールブルグ病、トキソプラズマ症、マラリア、トリパノソーマ症、レジオネラ症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症(鵞口瘡)、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症、パラコクシジオイデス症、スポロトリクム症、または眼窩洞の接合菌症を有する被験体(例えば、ヒト)を処置してもよい。
【0057】
本発明の組成物の医薬調合物および投与
投与
本発明の医薬組成物は、被験体(例えば、ヒト)に、感染体(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌)への暴露前または暴露後に、あるいは、疾患を、感染体への追跡可能な病因を有しない疾患(例えば、がん)と診断する前または後に、投与して、被験体における疾患の1つ以上の症状の進行を処置し、予防し、回復させ、阻害するか、またはそれらの重症度を低下させてもよい。例えば、本発明の組成物は、AIDSを有する処置すべき被験体に投与してもよい。本発明の組成物を使用して処置可能な、ウイルス感染によって誘発される疾患、例えばエイズの症状の例として、例えば、発熱、筋痛、咳嗽、くしゃみ、鼻汁、咽頭炎、頭痛、悪寒、下痢、嘔吐、発疹、脱力、目まい、皮下出血、内臓出血、または口、眼、もしくは耳のような身体開口部からの出血、ショック、神経系の機能不全、せん妄、発作、腎不全、人格変化、頚部硬直、脱水、発作、嗜眠、四肢の麻痺(paralysis of the limbs)、錯乱、背痛、感覚消失、膀胱および腸機能の障害、および昏睡または死亡に進行しうる眠気、が挙げられる。これらの症状、および処置期間中でのそれらの消散は、身体検査の間に例えば医師により、または当該技術分野で既知の他の検査および方法により、判定してもよい。
【0058】
本明細書に記載の方法において利用される組成物は、例えば、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸腔内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、腟内に、直腸内に、局所的に(topically)、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小疱内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内体腔に、眼球内に、経口的に、局所的に(topically)、局所的に(locally)、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を浸す直接的な局所潅流により、カテーテルにより、洗浄により、経管栄養により、クリームとして、または脂質組成物として投与することを目的に、調合してもよい。
【0059】
好ましい投与方法は、様々な要素(例えば、投与されている組成物の成分および処置されている状態の重症度)に応じて変更してもよい。経口または経鼻投与に適した調合物は、液体溶液、例えば希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはPEG-400)に溶解された有効量の組成物、カプセル剤、サシェ、錠剤、またはゲル剤からなってもよく、各々は、所定量の本発明のキメラAd5ベクター組成物を含有する。医薬組成物はまた、例えば気管支通路への吸入用のエアロゾル調合物であってもよい。エアロゾル調合物は、圧縮された薬学的に許容できる噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、または窒素)と混合されていてもよい。特に、吸入による投与は、例えば、ソルビタントリオレエートまたはオレイン酸を、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、または任意の他の生物学的に適合したプロペラントガス(propellant gas)と共に含有するエアロゾルを使用することにより、行ってもよい。
【0060】
本発明の組成物の免疫原性は、免疫刺激剤またはアジュバントと同時投与される場合、大幅に改善されうる。当業者に周知の適切なアジュバントとして、例えば、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、QS21、Quil A(ならびにその誘導体および成分)、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、糖脂質類似体、アミノ酸のオクトデシルエステル(octodecyl ester)、ムラミルジペプチド、ポリホスファゼン、リポタンパク質、ISCOMマトリックス、DC-Chol、DDA、サイトカイン、および他のアジュバントおよびその誘導体が挙げられる。
【0061】
本明細書に記載された本発明に記載の医薬組成物は、組成物を、投与直後(例えば標的化送達)、あるいは制御または持続放出調合物を用いて投与後から任意の所定の時間経過後、放出するように調合してもよい。制御または持続放出調合物中での医薬組成物の投与は、組成物が、単独または併用のいずれかで、(i)狭い治療指数を(例えば、有害な副作用または有毒な反応をもたらす血漿濃度と治療効果をもたらす血漿濃度との間の差が小さい;一般に、治療指数TIは、半有効量(ED50)に対する半致死量(LD50)の比で定義される);(ii)放出の部位(例えば、胃腸管)での狭い吸収窓;または(iii)短い生物学的半減期、を有することから、治療レベルを維持するため、1日の間での頻回投与が必要とされる場合、有用である。
【0062】
多くの方法を追及することで、医薬組成物の放出の速度が代謝の速度を上回るような制御または持続放出を得ることができる。例えば、制御放出は、例えば、適切な制御放出組成物およびコーティングを含む、調合パラメーター(formulation parameters)および成分の適切な選択により得ることができる。適切な調合物は、当業者に既知である。例として、一単位または複数単位の錠剤またはカプセル組成物、油剤、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子、貼付剤、およびリポソームが挙げられる。
【0063】
本発明の組成物は、暴露前の発症予防を提供するため、あるいは、被験体が疾患を感染体への追跡可能な病因を有しない疾患(例えば、がん)を有すると診断されているかまたは被験体が感染体、例えば細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌に暴露された後、投与してもよい。本組成物は、暴露または診断の、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、35、40、45、50、55、もしくは60分前、2、4、6、10、15、もしくは24時間前、2、3、5、もしくは7日前、2、4、6もしくは8週前、またはさらに3、4、もしくは6か月前に、投与してもよく、あるいは、診断または感染体への暴露の、15~30分後または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、20、24、48、もしくは72時間後、2、3、5、もしくは7日後、2、4、6もしくは8週後、3、4、6、もしくは9か月後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20年後もしくはそれより長期間経過後に、被験体に投与してもよい。
【0064】
疾患(例えば、エイズまたはがん)を処置する場合、本発明の組成物は、症状の発症もしくは確定診断の前かまたは診断もしくは症状が明らかになってから、被験体に投与してもよい。例えば、本組成物は、例えば、症状の診断または臨床的認識の直後、あるいは症状の診断または検出の、2、4、6、10、15、もしくは24時間後、2、3、5、もしくは7日後、2、4、6もしくは8週後、またはさらに3、4、もしくは6か月後に、投与してもよい。
【0065】
組成物は、従来の滅菌技術により滅菌してもよく、またはろ過滅菌してもよい。得られた水溶液は、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥してもよく、凍結乾燥調製物は、粉末形態で投与するか、または投与前に無菌水性担体と結合させてもよい。調合物のpHは、典型的には、3~11の間、より好ましくは5~9の間または6~8の間、および最も好ましくは7~8の間、例えば7~7.5となる。得られた固形形態の組成物は、複数の単一用量単位で包装してもよく、各々は、抗原遺伝子産物、またはその断片をコードする異種核酸を含む、一定量の組換え複製欠損sAdベクター(例えば、sAd4287、sAd4310A、またはsAd4312 HIV Gag送達ベクター)と、必要に応じて、例えば密封包装された錠剤またはカプセル剤、または1回以上の用量を投与可能な適切なドライパウダー吸入器(DPI)での1つ以上の免疫調節剤とを含有する。
【0066】
用量
本発明の組成物の用量(例えば、抗原遺伝子産物をコードする組換えsAdベクターの数)または本発明の組成物を使用する処置の数は、被験体における疾患の重症度、発生頻度、または進行度に基づいて(例えば、ウイルス感染またはがんの1つ以上の症状の重症度に基づいて)増加または低減してもよい。
【0067】
本発明の医薬組成物は、感染体または非感染体によって引き起こされる疾患における標的タンパク質に対する免疫原性および/または保護効果をもたらす治療有効量で投与してもよい。例えば、被験体には、少なくとも約1×103個のウイルス粒子(vp)/用量または1×101~1×1014個のvp/用量、好ましくは1×103~1×1012個のvp/用量、またより好ましくは1×105~1×1011個のvp/用量で、投与してもよい。
【0068】
ウイルス粒子は、抗原遺伝子産物またはその断片(例えば、ウイルス構造および非構造タンパク質)をコードする核酸分子を含み、かつ保護コート(protective coat)(本発明の単一のsAdまたはそのキメラ変異体に由来しうる、ヘキソンおよびファイバータンパク質を有するタンパク質に基づくカプシド)に覆われている。ウイルス粒子数は、例えば、ベクター粒子の溶解、それに続く260nmでの吸光度の測定に基づいて測定してもよい(例えば、Steel,Curr.Opin.Biotech.,1999を参照)。
【0069】
投与される用量は、処置されるべき被験体(例えば、処置されている被験体の年齢、体重、免疫系の能力、および一般健康)、投与形態(例えば、固体または液体として)、投与様式(例えば、注射、吸入、乾燥粉末噴霧剤による)、および標的化される細胞(例えば、上皮細胞、例えば血管上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞、または肺上皮細胞)に左右される。本組成物は、好ましくは、抗原または治療遺伝子産物、またはその断片の十分なレベル(例えば、宿主において過度の有害な生理学的効果が抗原遺伝子産物によって引き起こされることなく免疫応答を誘発する、抗原遺伝子産物のレベル)をもたらす量で投与される。
【0070】
さらに、本発明の組成物の単回または複数回投与は、被験体に対して(暴露前もしくは暴露後および/または診断前もしくは診断後に)行ってもよい(例えば、1回投与または2回以上の投与)。例えば、例えば、ウイルス感染に特に罹りやすい被験体は、ウイルスに対する防御を確立および/または維持するため、複数回の処置を必要としうる。本明細書に記載の医薬組成物によってもたらされる誘導免疫のレベルは、例えば、分泌および血清抗体を中和する量を測定することにより、監視してもよい。次いで、必要に応じて用量を調節するかまたは反復投与することで、所望されるレベルの免疫応答を誘発してもよい。例えば、本発明の組成物の単回投与により誘発される免疫応答(予備刺激)は、有効な防御をもたらす程に十分に強力かつ/または持続性でなくてもよい。したがって、一部の実施形態では、プライムブーストレジメンが確立される程度の反復投与(追加免疫)は、組成物の抗原に対する液性および細胞性応答を著しく高めうる。
【0071】
あるいは、処置の有効性は、本発明の組成物の投与後、被験体(例えば、ヒト)において発現される、抗原または治療遺伝子産物、またはその断片のレベルを監視することにより、決定してもよい。例えば、被験体の血液またはリンパ液における、抗原または治療遺伝子産物、またはその断片については、例えば、当該技術分野で既知の標準的なアッセイ(例えば、Pestka Biomedical Laboratories(PBL)、Piscataway,New Jerseyから入手される、Human Interferon-Alpha Multi-Species ELISAキット(製品番号41105)およびHuman Interferon-Alpha Serum Sampleキット(製品番号41110)を参照)を用いて試験してもよい。
【0072】
本発明の組成物の単一用量は、暴露前または診断前に、防御を実現しうる。さらに、暴露後または診断後に投与される単一用量は、本発明に記載の処置として機能しうる。
【0073】
本発明の組成物の単一用量はまた、使用により、疾患への処置がなされている被験体において治療が実現可能である。複数用量(例えば、2、3、4、5、またはそれより多い用量)もまた、これらの被験体に、必要に応じて投与してもよい。
【0074】
担体、賦形剤、希釈剤
本発明の組成物は、抗原または治療遺伝子産物、またはその断片をコードする異種核酸分子を有するsAd5ベクターを含む。本発明の組成物の治療調合物は、当該技術分野で既知の標準的な方法を用いて、所望される純度を有する活性成分と任意選択的な生理学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤とを混合することにより調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences(20th edition)、ed.A.Gennaro,2000,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)。許容できる担体は、生理食塩水、またはリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/または、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはPEGなどの非イオン性界面活性剤、を含む。
【0075】
任意選択的にではあるが、好ましくは、調合物は、薬学的に許容できる塩、好ましくは塩化ナトリウムを、好ましくはほぼ生理的濃度で含有する。任意選択的に、本発明の調合物は、薬学的に許容できる防腐剤を含有してもよい。一部の実施形態では、防腐剤の濃度は、0.1~2.0%(典型的にはv/v)の範囲内である。適切な防腐剤は、製薬技術において既知のものを含む。ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、およびプロピルパラベンは、好ましい防腐剤である。任意選択的に、本発明の調合物は、薬学的に許容できる界面活性剤を0.005~0.02%の濃度で含んでもよい。
【0076】
以下の実施例は、本発明を例示することを目的とする。それらは、本発明を限定することを全く意図しない。
【実施例0077】
本発明の実施においては、別段の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である、分子生物学、細胞生物学、および組換えDNAの従来技術を利用してもよい(例えば、Green and Sambrook.Molecular Cloning:A Laboratory Manuel,4th edition,2012;Ausubel,et al.Current Protocols in Molecular Biology,1987;Methods in Enzymology.Academic Press,Inc.;およびMacPherson et al.PCR2:A Practical Approach,1995を参照)。
【0078】
[実施例1.サルアデノウイルスsAd4287の配列]
サルアデノウイルスsAd4287の全ゲノム配列を、Handleyらのアカゲザルメタゲノミクス研究(Cell.151(2):253-266,2012)から得られた新規なウイルスの単離、増幅、および精製の後、決定した。sAd4287ゲノムの得られた配列(35079ヌクレオチド(nt))を、配列番号1で示す。sAd4287の模式的なゲノム構造を
図1に示す。NCBIウェブに基づくBLAST検索における全ゲノム配列を用いて、sAd4287と最も近い関係のあるウイルスを、サルアデノウイルス1(sAd1)ATCC VR-195と同定した(クエリー範囲(query coverage):93%;最大同一性:98%)。NCBIウェブに基づくBLAST検索をさらに実施し、sAd4287の3つの主要なカプシドタンパク質(ファイバー1、ファイバー2、およびヘキソンタンパク質)の相同性を評価した。sAd4287ファイバー1と最も近い関係のあるタンパク質を、sAd1ファイバー1と同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:74%)。sAd4287ファイバー2と最も近い関係のあるタンパク質を、sAd7ロングファイバーと同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:97%)。sAd4287ヘキソンと最も近い関係のあるタンパク質を、sAd1ヘキソンと同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:93%)。
【0079】
[実施例2.組換えsAd4287ウイルスの作製]
ここで、組換えsAd4287ベクターを安全かつ効率的な方法で作製するための、sAd4287のプラスミドに基づく系の構成について述べる。プラスミド系は、左側逆方向末端反復配列(left inverted terminal repeat)(lITR)およびパッケージングシグナルを含むsAd4287ヌクレオチド1~460、発現カセットおよびヌクレオチド2966~5466に対応するsAd4287断片を含む、アダプタープラスミドと称される第1のプラスミドからなる。発現カセットは、先に示されたように、ヒトCMVプロモーター、複数のクローニングサイト(MCS)、およびSV40ポリアデニル化シグナル(ポリA)を含む(例えば、国際公開第00/70071号パンフレットを参照)。アダプタープラスミドは、ここではAd26由来の配列ではなくsAd4287由来の配列を含むように作製されるにもかかわらず、pAdApt26.Empty(Abbink,et al.,J.Virol.81(9):4654-4663,2007)に基づく。さらに、同系は、ヌクレオチド2966~35079間のsAd4287配列を共に構成する他のプラスミドからなり、E1領域(配列番号1のnt474~nt3085)、E3領域(配列番号1のnt25973~nt28596)、および/またはE4領域(配列番号1のnt31852~nt34752)配列は欠失されてもよい。
【0080】
アダプタープラスミドsAdApt4287.Emptyの作製
sAd4287配列を有するように使用されるプラスミドを調製した。プライマー(sAd4287.1A.fwdおよびsAd4287.1A.rev、各々、配列番号52および53)を設計し、PCRによりsAd4287の最初の460ヌクレオチドを得るとともに、得られたPCR産物の5’および3’末端の各々にPacIおよびSalIを設けた。第2のプライマーセット(sAd4287.1B.fwdおよびsAd4287.1B.rev、各々、配列番号54および55)を設計し、pIX(nt2966)から2.5kb上流(nt5466)にかけて得るとともに、5’および3’末端の各々にAflIIおよびPacIを設計した。第3のPCRプライマーセット(sAd4287.TGC.fwdおよびsAd4287.TGC.rev、各々、配列番号56および57)を設計し、CMVの開始端からポリAの末端にかけて、アダプター(AdApter)プラスミドpAdApt26.Empty(Abbink,et al.,J.Virol.81(9):4654-4663,2007)から導入遺伝子カセットを得るとともに、5’および3’末端の各々にSalIおよびAflII部位を設計した。これら3つのPCR断片を共に、4ポイントライゲーションにおいて、pAdApt26からPacI消化により得られたpAdApt細菌骨格(bacterial backbone)にライゲートし、sAdApt4287.Empty(配列番号34)が得られた。sAdApt4287.Emptyの概略マップを
図2に示す。このアダプタープラスミドは、CMVプロモーターを含む発現/導入遺伝子カセットによって置換されるE1領域とともに、左端sAd4287配列(1~460および2966~5466)を有する。
【0081】
pBr/sAd4287.pIX-pVの作製
sAd4287の52Kタンパク質を含む、sAd4287 HpaI-HindIII制限断片のクローニングを可能にするため、新規なプラスミドを、2つのPCR断片をpBr骨格に挿入することにより作製した。このため、プライマー(配列番号58および59)を設計し、野生型sAd4287においてpIXの開始点からHpaI部位を越えてPCR断片を得るとともに(nt2966~nt8311)、5’および3’末端の各々にPacIおよびSbfIを設計した。第2のPCR断片を、HindIII(nt12761)からpVの末端(nt16679)にかけて作製するとともに、5’および3’末端の各々にSbfIおよびPacI部位を設計した。第2のPCR断片は、第2のプライマーセット(配列番号60および61)を用いて作製した。これらのPCR断片を、PacI消化によりpBr/Ad26.SfiI(例えば、国際公開第2007/104792号パンフレットを参照)から得られたpBr骨格にライゲートし(PacI-SbfI-PacI)、pBr/sAd4287.pIX-pVシャトルベクターが得られた。最後に、sAd4287野生型ゲノムから得られたsAd4287 HpaI-HindIII制限断片を、HpaI-HindIIIで消化したpBr/sAd4287.pIX-pVシャトルベクターにライゲートし、完全pBr/sAd4287.pIX-pVプラスミド(配列番号35)が得られた。pBr/sAd4287.pIX-pVの概略マップを
図3に示す。
【0082】
pBr/sAd4287.PsiI-rITRの作製
pBr/sAd4287.PsiI-rITRは、ヌクレオチド14053のPsiI部位から右側逆方向末端反復配列(right inverted terminal repeat)(rITR)の末端にかけて、sAd4287配列を含む。この配列のクローニングを可能にするため、まず新規なプラスミドを、2つのPCR断片をpBr骨格に挿入することにより作製した。2つのPCR断片を、それらがPacI制限部位を用いてpBrに基づく骨格に共にライゲートされ、クローン化されうるように作製した。プライマーを設計し、nt14053でのPsiI部位の前からNdeI部位(nt18186)を越えてnt18234での約4kb上流までPCR断片を得るとともに、5’および3’末端の各々にPacIおよびSbfI部位を設計した。第2のプライマーセットを設計し、nt30022でのPmeI部位の前からnt35079でのrITRの末端までPCR断片を得るとともに、5’および3’末端の各々にSbfIおよびPacI部位を設計した。これらの2つのPCR断片を作製するのに使用したプライマーの配列を、配列番号62~65で示す。これらのPCR断片を、PacI-SbfI消化によりpBr/Ad26.SfiIから得られたpBr骨格にライゲートし、pBr/sAd4287.PsiI-rITRシャトルベクターが得られた。最後に、NotI-AsiSI断片(nt16639~nt34032)を、野生型sAd4287ゲノムから得て、pBr/sAd4287.PsiI.rITRシャトルベクターにライゲートし、完全pBr/sAd4287.PsiI-rITRプラスミド(配列番号36)が得られた。pBr/sAd4287.PsiI-rITRの概略マップを
図4に示す。
【0083】
pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3の作製
pBr/sAd4287.PsiI-rITRを、修飾し、sAd4287のおよそnt25973~nt28596に及びかつアデノウイルス粒子の複製およびパッケージングにとって必要とされない、E3領域の一部分を欠失させた。pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3を作製するため、2つのPCR断片を作製した。第1のPCR断片は、AscIからpVIIIのポリAの140bp後にかけて、pVIIIを有した(nt8291~11192)。フォワードプライマー(配列番号66)は、100K内のApaLIに指定し、リバースプライマー(配列番号67)は、その中に設計されたSpeI部位を有する。第2のPCRは、E3領域のポリAの100bp前から始まり、ファイバー2領域内の固有のXbaI制限部位まで続くファイバー領域を有する(nt13177~14824)。フォワードプライマーは、E3のポリAの100bp前に指定すると、その中に設計されたSpeI部位を有することになる(配列番号68)。リバースプライマーは、XbaI部位に指定した(配列番号69)。これらの2つのPCR断片を、AscI-SpeI-XbaIでの3ポイントライゲーションにおいて、pBr/sAd4287.PsiI-rITRにライゲートし、pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3(配列番号37)を作製した。
図5は、pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3の概略マップ、ならびにE3欠失プラスミドを作製するための上記のクローニング方法の概要を示す。
【0084】
pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3.dE4の作製
pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3を、修飾し、sAd4287のおよそnt31852~nt34752、また詳細にはE4orf1~E4orf4に及ぶ、E4領域の一部分を欠失させた。修飾されたプラスミドpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3.dE4(配列番号38)により、1409bpの空間の増大を伴う拡張されたクローニング能が得られた。pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3.dE4を作製するため、2つのPCR産物を作製した。第1のPCR断片は、XbaI部位で始まり、E4orf6の開始点まで続く。この第1のPCR断片を作製するために使用されるフォワードおよびリバースプライマーの配列は各々、配列番号72および73で示す。第2のPCR断片は、E4orf1の直前で始まり、NotI部位まで続く。この第2のPCR断片を作製するために使用されるフォワードおよびリバースプライマーの配列は各々、配列番号74および75で示す。これらのPCR断片は、XbaIおよびNotI部位に、隣接領域との30bpの重複部分、ならびに相互に15bpの重複部分(全部で30bp)を有する。PCR断片は、Gibson Assembly(New England BioLabs)により、XbaIおよびNotIで消化したpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3にアセンブルし、pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3.dE4が得られた。
図6は、pBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3に対するpBr/sAd4287.PsiI-rITR.dE3.dE4の概略マップを示す。
【0085】
sAdApt4287.E1btg.Emptyの作製
複製可能sAd4287(rcsAd4287)を生成することを意図して、sAd4287のE1領域(配列番号1のおよそnt474~nt3085)をsAdApt4287.Emptyにクローン化するため、PCR断片を、野生型sAd4287から、lITR領域内のNgoMIV部位の約30bp前で始まり、E1領域のポリAの約10bp後まで続くフォワードプライマー(配列番号70)を用いて作製した(nt218~nt3137)。リバースプライマー(配列番号71)は、sAdApt4287.Empty内のCMVプロモーターの開始点との約30bpの重複部分を有し、SalI制限部位を含む。このPCR断片を、Gibson Assembly(New England BioLabs)を用いて、NgoMIVおよびSalIで消化したsAdApt4287.Emptyにクローン化し、sAdApt4287.E1btg.Empty(配列番号39)が得られた。sAdApt4287.E1btg.Emptyの概略マップおよび上記のクローニング方法を、
図7に示す。
【0086】
[実施例3.サルアデノウイルスsAd4310#13-1(sAd4310A)の配列]
サルアデノウイルスsAd4310#13-1(sAd4310A)の全ゲノム配列を、sAd4287について上述したように決定した。sAd4310Aゲノムの得られた配列(34391ヌクレオチド)を、配列番号2で示す。sAd4310Aのゲノム構造の概略マップを、
図8に示す。NCBIウェブに基づくBLAST検索における全ゲノム配列を用いて、sAd4310Aと最も近い関係のあるウイルスを、サルアデノウイルス1(sAd1)ATCC VR-195と同定した(クエリー範囲:97%;最大同一性:98%)。NCBIウェブに基づくBLAST検索をさらに実施し、sAd4310Aの3つの主要なカプシドタンパク質(ファイバー1、ファイバー2、およびヘキソンタンパク質)の相同性を評価した。sAd4310Aファイバー1と最も近い関係のあるタンパク質を、sAd1ファイバー1と同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:99%)。sAd4310Aファイバー2と最も近い関係のあるタンパク質を、sAd1ファイバー2と同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:99%)。sAd4310Aヘキソンと最も近い関係のあるタンパク質を、ヒトAd31ヘキソンと同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:87%)。
【0087】
[実施例4.組換えsAd4310Aウイルスの作製]
ここで、組換えsAd4310Aベクターを安全かつ効率的な方法で作製するための、sAd4310Aのプラスミドに基づく系の構成について述べる。プラスミド系は、左側逆方向末端反復配列(lITR)およびパッケージングシグナルを含むsAd4310Aヌクレオチド1~461、発現カセットおよびヌクレオチド2903~5410に対応するsAd4310A断片を含む、アダプタープラスミドと称される第1のプラスミドからなる。発現カセットは、先に示されたように、ヒトCMVプロモーター、複数のクローニングサイト(MCS)、およびSV40ポリアデニル化シグナル(ポリA)を含む(例えば、国際公開第00/70071号パンフレットを参照)。アダプタープラスミドは、ここではAd26由来の配列ではなくsAd4310A由来の配列を含むように作製されるにもかかわらず、pAdApt26.Empty(Abbink,et al.,J.Virol.81(9):4654-4663,2007)に基づく。さらに、同系は、ヌクレオチド2903~34391間のsAd4310A配列を共に構成する他のプラスミドからなり、E1領域(配列番号2のnt474~nt3088)、E3領域(配列番号2のnt25915~nt28496)、および/またはE4領域(配列番号2のnt31750~nt34048)配列は欠失されてもよい。
【0088】
アダプタープラスミドsAdApt4310A.Emptyの作製
sAd4310A配列を有するように使用されるプラスミドを調製した。プライマー(sAd4310A.1A.fwdおよびsAd4310A.1A.rev、各々、配列番号76および77)を設計し、PCRによりsAd4310Aの最初の461ヌクレオチドを得るとともに、得られたPCR産物の5’および3’末端の各々にPacIおよびSalIを設けた。第2のプライマーセット(sAd4310A.1B.fwdおよびsAd4310A.1B.rev、各々、配列番号78および79)を設計し、pIX(nt2903)から2.5kb上流にかけて(nt5410)得るとともに、5’および3’末端の各々にAflIIおよびPacIを設計した。第3のPCRプライマーセット(sAd4310A.TGC.fwdおよびsAd4310A.TGC.rev、各々、配列番号80および81)を設計し、CMVの開始端からポリAの末端にかけて、アダプター(AdApter)プラスミドpAdApt26.Emptyから導入遺伝子カセットを得るとともに(Abbink,et al.,J.Virol.81(9):4654-4663,2007)、5’および3’末端の各々にSalIおよびAflII部位を設計した。これら3つのPCR断片を共に、4ポイントライゲーションにおいて、pAdApt26からPacI消化により得られたpAdApt細菌骨格にライゲートし、sAdApt4310A.Empty(配列番号40)が得られた。sAdApt4310A.Emptyの概略マップを
図9に示す。このアダプタープラスミドは、CMVプロモーターを含む発現/導入遺伝子カセットによって置換されるE1領域とともに、左端sAd4310A配列(1~461および2903~5410)を有する。
【0089】
pBr/sAd4310A.pIX-pVの作製
sAd4310Aの52Kタンパク質を含む、sAd4310A SrfI-SnaBI制限断片のクローニングを可能にするため、新規なプラスミドを、2つのPCR断片をpBr骨格に挿入することにより作製した。このため、プライマー(配列番号82および83)を設計し、野生型sAd4310AにおいてpIXの開始点からSrfI部位を越えてPCR断片を得るとともに(nt2903~nt7224)、5’および3’末端の各々にPacIおよびSbfIを設計した。第2のPCR断片を、pIIIa内のSnaBI(nt12098)からpVI(nt17365)にかけて作製するとともに、5’および3’末端の各々にSbfIおよびPacI部位を設計した。第2のPCR断片は、第2のプライマーセット(配列番号84および85)を用いて作製した。これらのPCR断片を、PacI消化によりpBr/Ad26.SfiI(例えば、国際公開第2007/104792号パンフレットを参照)から得られたpBr骨格にライゲートし(PacI-SbfI-PacI)、pBr/sAd4310A.pIX-pVシャトルベクターが得られた。最後に、sAd4310A野生型ゲノムから得られたsAd4310A SrfI-SnaBI制限断片を、SrfI-SnaBIで消化したpBr/sAd4310A.pIX-pVシャトルベクターにライゲートし、完全pBr/sAd4310A.pIX-pVプラスミド(配列番号41)が得られた。pBr/sAd4310A.pIX-pVの概略マップを
図10に示す。
【0090】
pBr/sAd4310A.RsrII-rITRの作製
pBr/sAd4310A.RsrII-rITRは、ヌクレオチド14882のRsrII部位からヌクレオチド34391の右側逆方向末端反復配列(rITR)の末端にかけて、sAd4310A配列を含む。この配列のクローニングを可能にするため、まず新規なプラスミドを、2つのPCR断片をpBr骨格に挿入することにより作製した。2つのPCR断片を、それらがPacI制限部位を用いてpBrに基づく骨格に共にライゲートされ、クローン化されうるように作製した。プライマー(sAd4310A.3A.fwdおよびsAd4310A.3A.rev、各々、配列番号86および87)を設計し、nt14882でのRsrII部位からSalI部位(nt19189)を越えて約4.5kb上流のnt19224まで、PCR断片を得るとともに、5’および3’末端の各々にPacIおよびSbfI部位を設計した。第2のプライマーセット(sAd4310A.3B.fwdおよびsAd4310A.3B.rev、各々、配列番号88および89)を設計し、nt29829でのPmeI部位の前からnt34391でのrITRの末端までPCR断片を得るとともに、5’および3’末端の各々にSbfIおよびPacI部位を設計した。これらのPCR断片を、市販のZero Blunt(登録商標)TOPO(登録商標)PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用して、TOPOベクターにライゲートした。2つのPCR断片を、PacIおよびSbfIを用いて、PCR断片としてまたはTOPO(登録商標)クローンから消化し、その後、PacIで消化したpBr/Ad26.SfiIから得られたpBr骨格にライゲートした。最後に、SalI-XbaI断片(nt19190~nt30014)を、野生型sAd4310Aゲノムから得て、pBr/sAd4310A.RsrII.rITRシャトルベクターにライゲートし、完全pBr/sAd4310A.RsrII-rITRプラスミド(配列番号42)が得られた。pBr/sAd4310A.RsrII-rITRの概略マップを
図11に示す。
【0091】
pBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3の作製
pBr/sAd4310A.RsrII-rITRを、修飾し、sAd4310Aのおよそnt25915~nt28496に及びかつアデノウイルス粒子の複製およびパッケージングにとって必要とされない、E3領域の一部分を欠失させた。Gibson Assemblyを用いてpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3を作製するため、2つのPCR断片を作製した。第1のPCR断片(dE3AG)は、nt7644でのSfiI部位の約50bp前からpVIIIのポリAの140bp後にかけて有した。フォワードプライマーおよびリバースプライマーは各々、配列番号90および91で示される配列を有し、ここでリバースプライマーは、第2のPCR断片との約25bpの重複部分を有するように設計した。第2のPCR断片(dE3BG)は、nt14641(E3領域のポリAの約100bp前)から始まり、nt16252でのXbaI部位の約50bp後まで続く。第2のPCRに対するフォワードプライマーおよびリバースプライマーは各々、配列番号92および93で示される配列を有し、ここでフォワードプライマーは、第1のPCR断片との約25bpの重複部分を有するように設計した。2つのPCR断片は、Gibson Assemblyを用いて、SfiIおよびXbaIで消化したpBr/sAd4310A.RsrII.rITRにアセンブルした。得られたプラスミドpBr/sAd4310A.RsrII.rITR.dE3(配列番号43)を、親プラスミドpBr/sAd4310A.RsrII.rITRとともに
図12に示す。
【0092】
pBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3.dE4の作製
pBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3を、修飾し、sAd4310Aのおよそnt31750~nt34048、また詳細にはE4orf1~E4orf4に及ぶ、E4領域の一部分を欠失させた。修飾されたプラスミドpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3.dE4(配列番号44)により、1394bpの空間の増大を伴う拡張されたクローニング能が得られた。pBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3.dE4プラスミドを作製するため、2つのPCR産物を作製した。第1のPCR断片は、XbaI部位で始まり、E4orf6の開始点まで続く。この第1のPCR断片を作製するために使用されるフォワードおよびリバースプライマーの配列は各々、配列番号96および97で示す。第2のPCR断片は、E4orf1の直前で始まり、NotI部位まで続く。この第2のPCR断片を作製するために使用されるフォワードおよびリバースプライマーの配列は各々、配列番号98および99で示す。これらのPCR断片は、XbaIおよびNotI部位に、隣接領域との30bpの重複部分、ならびに相互に15bpの重複部分(全部で30bp)を有する。PCR断片は、Gibson Assembly(New England BioLabs)により、XbaIおよびNotIで消化したpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3にアセンブルし、pBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3.dE4(配列番号44)が得られた。
図13は、親プラスミドpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3に対するpBr/sAd4310A.RsrII-rITR.dE3.dE4の概略マップを示す。
【0093】
sAdApt4310A.E1btg.Emptyの作製
複製可能sAd4310A(rcsAd4310A)を生成することを意図して、sAd4310AのE1領域(配列番号2のnt474~nt3088)をsAdApt4310A.Emptyにクローン化するため、PCR断片を、野生型sAd4310Aから、lITR領域内のBstZ17I部位の約40bp前で始まり、E1領域のポリAの約10bp後まで続くフォワードプライマー(配列番号94)を用いて作製した(nt150~nt3131)。リバースプライマー(配列番号95)は、sAdApt4310A.Empty内のCMVプロモーターの開始点との約30bpの重複部分を有し、SalI制限部位を含む。このPCR断片を、Gibson Assembly(New England BioLabs)を用いて、BstZ17IおよびSalIで消化したsAdApt4310A.Emptyにクローン化し、sAdApt4310A.E1btg.Empty(配列番号45)が得られた。sAdApt4310A.E1btg.Emptyの概略マップおよび上記のクローニング方法を、
図14に示す。
【0094】
[実施例5.サルアデノウイルスsAd4312の配列]
サルアデノウイルスsAd4312の全ゲノム配列を、sAd4287およびsAd4310Aについて上述したように決定した。sAd4312ゲノムの得られた配列(34475ヌクレオチド)を、配列番号3で示す。sAd4312のゲノム構造の概略マップを、
図15に示す。NCBIウェブに基づくBLAST検索における全ゲノム配列を用いて、sAd4312と最も近い関係のあるウイルスを、サルアデノウイルス1(sAd1)ATCC VR-195と同定した(クエリー範囲:90%;最大同一性:98%)。NCBIウェブに基づくBLAST検索をさらに実施し、sAd4312の3つの主要なカプシドタンパク質(ファイバー1、ファイバー2、およびヘキソンタンパク質)の相同性を評価した。sAd4312ファイバー1と最も近い関係のあるタンパク質を、ヒトAd52ファイバー1と同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:99%)。sAd4312ファイバー2と最も近い関係のあるタンパク質を、sAd7ロングファイバーと同定した(クエリー範囲:99%;最大同一性:73%)。sAd4312ヘキソンと最も近い関係のあるタンパク質を、ヒトAd40ヘキソンと同定した(クエリー範囲:100%;最大同一性:89%)。
【0095】
[実施例6.組換えsAd4312ウイルスの作製]
ここで、組換えsAd4312ベクターを安全かつ効率的な方法で作製するための、sAd4312のプラスミドに基づく系の構成について述べる。プラスミド系は、左側逆方向末端反復配列(lITR)およびパッケージングシグナルを含むsAd4312ヌクレオチド1~472、発現カセットおよびヌクレオチド2939~5510に対応するsAd4312断片を含む、アダプタープラスミドと称される第1のプラスミドからなる。発現カセットは、先に示されたように、ヒトCMVプロモーター、複数のクローニングサイト(MCS)、およびSV40ポリアデニル化シグナル(ポリA)を含む(例えば、国際公開第00/70071号パンフレットを参照)。アダプタープラスミドは、ここではAd26由来の配列ではなくsAd4312由来の配列を含むように作製されるにもかかわらず、pAdApt26.Empty(Abbink,et al.,J.Virol.81(9):4654-4663,2007)に基づく。さらに、同系は、ヌクレオチド2939~344475間のsAd4312配列を共に構成する他のプラスミドからなり、E1領域(配列番号3のnt487~nt3100)、E3領域(配列番号3のnt25947~nt28561)、および/またはE4領域(配列番号3のnt31818~nt34116)配列は欠失されてもよい。
【0096】
アダプタープラスミドsAdApt4312.Emptyの作製
sAd4312配列を有するように使用されるプラスミドを調製した。プライマー(sAd4312.1A.fwdおよびsAd4312.1A.rev、各々、配列番号100および101)を設計し、PCRによりsAd4312の最初の472ヌクレオチドを得るとともに、得られたPCR産物の5’および3’末端の各々にPacIおよびSalIを設けた。第2のプライマーセット(sAd4312.1B.fwdおよびsAd4312.1B.rev、各々、配列番号102および103)を設計し、pIX(nt2939)から約2.5kb上流にかけて(nt5510)得るとともに、5’および3’末端の各々にAflIIおよびPacIを設計した。第3のPCRプライマーセット(sAd4312.TGC.fwdおよびsAd4312.TGC.rev、各々、配列番号104および105)を設計し、CMVの開始端からポリAの末端にかけて、アダプター(AdApter)プラスミドpAdApt26.Empty(Abbink,et al.,J.Virol.81(9):4654-4663,2007)から導入遺伝子カセットを得るとともに、5’および3’末端の各々にSalIおよびAflII部位を設計した。これら3つのPCR断片を共に、4ポイントライゲーションにおいて、pAdApt26からPacI消化により得られたpAdApt細菌骨格にライゲートし、sAdApt4312.Empty(配列番号46)が得られた。sAdApt4312.Emptyの概略マップを
図16に示す。このアダプタープラスミドは、CMVプロモーターを含む発現/導入遺伝子カセットによって置換されるE1領域とともに、左端sAd4312配列(1~472および2939~5510)を有する。
【0097】
pBr/sAd4312.pIX-pVの作製
sAd4312 BsiWI-BsiWI制限断片のクローニングを可能にするため、新規なプラスミドを、2つのPCR断片をpBr骨格に挿入することにより作製した。このため、プライマー(配列番号106および107)を設計し、野生型sAd4312においてpIXの開始点からBsiWI部位を越えてPCR断片を得るとともに(nt2939~nt6791)、5’および3’末端の各々にPacIおよびNdeIを設計した。第2のPCR断片を、pV(nt15564)からpVIの末端でのRsrII部位(nt17698)にかけて作製するとともに、5’および3’末端の各々にNdeIおよびPacI部位を設計した。第2のPCR断片は、第2のプライマーセット(配列番号108および109)を用いて作製した。これらのPCR断片を、市販のZero Blunt(登録商標)TOPO(登録商標)PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用して、TOPOベクターにクローン化し、pBr/sAd4312.pIX-pVシャトルベクターが得られた。最後に、sAd4312野生型ゲノムから得られたsAd4312 BsiWI-BsiWI制限断片を、BsiWIで消化したpBr/sAd4312.pIX-pVシャトルベクターにライゲートし、配向性についてスクリーニングし、完全pBr/sAd4312.pIX-pVプラスミド(配列番号47)が得られた。pBr/sAd4312.pIX-pVの概略マップを
図17に示す。
【0098】
pBr/sAd4312.pV-rITRの作製
pBr/sAd4312.pV-rITRは、ヌクレオチド15215でのpVの開始点からヌクレオチド34475の右側逆方向末端反復配列(rITR)の末端にかけて、sAd4312配列を含む。この配列のクローニングを可能にするため、まず新規なプラスミドを、2つのPCR断片をpBr骨格に挿入することにより作製した。2つのPCR断片を、それらがPacI制限部位を用いてpBrに基づく骨格に共にライゲートされ、クローン化されうるように作製した。プライマー(sAd4312.3A.fwdおよびsAd4312.3A.rev、各々、配列番号110および111)を設計し、nt15215でのpVの開始点からRsrII部位を越えて約2.5kb上流のnt17698まで、PCR断片を得るとともに、5’および3’末端の各々にPacIおよびSbfI部位を設計した。第2のプライマーセット(sAd4312.3B.fwdおよびsAd4312.3B.rev、各々、配列番号112および113)を設計し、nt31015でのXbaI部位の前からnt34475でのrITRの末端までPCR断片を得るとともに、5’および3’末端の各々にSbfIおよびPacI部位を設計した。これらのPCR断片を、市販のZero Blunt(登録商標)TOPO(登録商標)PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用して、TOPOベクターにライゲートした。2つのPCR断片を、SbfIおよびPacIを用いてTOPO(登録商標)クローンから消化し、その後、PacIで消化したpBr/Ad26.SfiIから得られたpBr骨格にライゲートし、pBr/sAd4312.pV-rITRシャトルベクターが得られた。最後に、NotI-XbaI断片(nt16412~nt31083)を、野生型sAd4312ゲノムから得て、pBr/sAd4312.pV-rITRシャトルベクターにライゲートし、完全pBr/sAd4312.pV-rITRプラスミド(配列番号48)が得られた。pBr/sAd4312.pV-rITRの概略マップを
図18に示す。
【0099】
pBr/sAd4312.pV-rITR.dE3の作製
pBr/sAd4312.pV-rITRを、修飾し、sAd4312のおよそnt487~nt3100に及びかつアデノウイルス粒子の複製およびパッケージングにとって必要とされない、E3領域の一部分を欠失させた。pBr/sAd4312.pV-rITR.dE3を作製するため、2つのPCR断片を作製した。第1のPCR断片は、AscIからpVIIIのポリAの140bp後にかけて、pVIIIを有する(nt9859~nt12302)。フォワードプライマー(sAd4312.dE3A.fwd、配列番号114)は、100K内のAscIに指定し、リバースプライマー(sAd4312.dE3A.rev、配列番号115)は、その中に設計されたSpeI部位を有する。第2のPCRは、E3領域のポリAの100bp前から始まり、ファイバー2領域内の固有の制限部位XbaIまで続くファイバー領域を有する(nt14378~nt17020)。E3のポリAの100bp前に指定したフォワードプライマー(sAd4312.dE3B.fwd、配列番号116)は、その中に設計されたSpeI部位を有する。リバースプライマー(sAd4312.dE3B.fwd、配列番号117)は、XbaI部位に指定する。これらの2つのPCR断片を、AscI-SpeI-XbaIでの3ポイントライゲーションにおいて、pBr/sAd4312.pV-rITRにライゲートした。得られたプラスミドpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3(配列番号49)を、親プラスミド、pBr/sAd4312.pV-rITRとともに
図19に示す。
【0100】
pBr/sAd4312.pV-rITR.dE3.dE4の作製
pBr/sAd4312.pV-rITR.dE3を、修飾し、sAd4312のおよそnt25947~nt28561、また詳細にはE4orf1~E4orf4に及ぶ、E4領域の一部分を欠失させた。修飾されたプラスミドpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3.dE4(配列番号50)により、1393bpの空間の増大を伴う拡張されたクローニング能が得られた。pBr/sAd4312.pV-rITR.dE3.dE4プラスミドを作製するため、2つのPCR産物を作製した。第1のPCR断片は、NdeI部位で始まり、E4orf6の開始点まで続く。この第1のPCR断片を作製するために使用されるフォワードおよびリバースプライマーの配列は各々、配列番号120および121で示す。第2のPCR断片は、E4orf1の直前で始まり、NotI部位まで続く。この第2のPCR断片を作製するために使用されるフォワードおよびリバースプライマーの配列は各々、配列番号122および123で示す。これらのPCR断片は、NdeIおよびNotI部位に、隣接領域との30bpの重複部分、ならびに相互に15bpの重複部分(全部で30bp)を有する。PCR断片は、XbaIおよびNotIで消化したpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3にアセンブルし、pBr/sAd4312.pV-rITR.dE3.dE4(配列番号50)が得られた。
図20は、親プラスミドpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3に対するpBr/sAd4312.pV-rITR.dE3.dE4の概略マップを示す。
【0101】
sAdApt4312.E1btg.Emptyの作製
複製可能sAd4312(rcsAd4312)を生成することを意図して、sAd4312のE1領域(配列番号3のnt487~3100)をsAdApt4312.Emptyにクローン化するため、PCR断片を、sAd4312の完全E1領域を含む野生型sAd4312から作製した。フォワードプライマー(配列番号118)は、lITR領域内の最初のBstZ17I部位の約40bp前に指定する。リバースプライマー(配列番号119)は、sAdApt4312.Empty内のCMVプロモーターの開始点との約30bpの重複部分を有する。作製したPCR断片を、Gibson Assembly(New England BioLabs)を用いて、BstZ17IおよびSalIで消化したsAdApt4312.Emptyにクローン化し、sAdApt4312.E1btg.Empty(配列番号51)が得られた。このクローニングステップにおいては、制限酵素によって、AdAptプラスミドのみが消化される一方、PCR産物は消化されなかった。sAdApt4312.E1btg.Emptyの概略マップおよび上記のクローニング方法を、
図21に示す。
【0102】
[実施例7. サブサハラヒトおよびアカゲザルにおけるsAd4287、sAd4310A、およびsAd4312の血清有病率]
発明者は、次に、144名のサブサハラヒトおよび108匹のアカゲザルにおけるsAd4287、sAd4310A、およびsAd4312の力価を評価した(
図22A~22C)。アデノウイルスに特異的な中和抗体(NAb)の力価を、先に示されたように、ルシフェラーゼに基づくウイルス中和アッセイにより測定した(Sprangers et al.J.Clin.Microbiol.41:5046-5052,2003;Barouch et al.Vaccine.29:5203-5209,2011)。このアッセイによると、<18の力価は、陰性と見なされ、18~200は低い、201~1000は高い、また>1000は非常に高いと考えられる。当該技術分野で既知のデータによると、力価>200は、抑制性である可能性が高くなることが疑われる。4つの力価の各カテゴリーに含まれる個体(ヒトまたはサル)の相対数をまとめた代表的な円グラフを、試験された3つのアデノウイルスの各々に対して示す(
図22A~22Cを参照)。
【0103】
血清有病率試験の結果によると、試験されたサブサハラヒトおよびアカゲザルの大半が、試験された3つのアデノウイルス(sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312)の各々に対して、陰性(<18)かまたは低い(18~200)NAb力価を示すことが明示される。これらの血清有病率試験によると、sAd4287、sAd4310A、およびsAd4312ベクターが、ヒト集団(例えば、サブサハラヒト集団)およびサル集団(例えば、アカゲザル集団)において、意外にも極端に低い血清有病率を有することが示される。本発明のsAdベクターの極端に低い血清有病率は、ヒト集団におけるAd5の比較的高い血清有病率と大いに異なっている。したがって、これらの試験によると、組換えsAd4287、sAd4310A、およびsAd4312の全部または一部を含むワクチンの使用には、ヒトもサルも同様、その大半における中和活性がワクチンの有効性を妨げる可能性が低いことから、明白な利点があることが示される。
【0104】
[実施例8. マウスにおける本発明の組換えアデノウイルスに対する細胞性応答の測定]
次に、発明者は、本発明のサルアデノウイルス(例えば、sAd4287またはsAd4310A)に基づく組換え複製欠損アデノウイルスが、インビボで有意な免疫応答を誘発できるか否かを試験した。このため、ベクターを、すべてがサル免疫不全ウイルス(SIV)由来のSIVmac239 Gagインサートを含むように作製した。組換えDNA、例えば必要とされるアダプタープラスミド、および組換えウイルスを、一般に示されるように作製した(Lemckert et al.J.Virol.79:9694-9701,2005)。
【0105】
C57BL/6マウスに、様々な量のウイルスベクター:10
7、10
8、および10
9個のウイルス粒子(vp)を筋肉内注射した。先に示されたように、すべてのワクチン接種手順および細胞免疫応答を、D
b/AL11四量体結合アッセイを通じてCD8
+T細胞性応答を評価することにより、実施し、測定した(Barouch et al.J.Immunol.172:6290-6297,2004)。免疫優勢SIV Gag AL11エピトープ(AAVKNWMTQTL)(Liu et al.,J.Virol.80:11991-11997,2006)の周りで折り畳まれた四量体H-2D
b複合体を調製し、SIV Gagに特異的なCD8
+Tリンパ球応答を、免疫後、0、7、14、21、および28日目に測定した。sAd4287およびsAd4310Aを用いた免疫原性実験について、結果を
図23Aおよび23Bに示す。これらの結果から、本発明のアデノウイルスベクターが、マウスにおいて、特に10
8または10
9個のvp用量の場合、強力な免疫原性を示すと結論づけることができる。
【0106】
機能的応答を評価するため、28日目に得た脾細胞をIFN-γ ELISPOTアッセイにおいて利用した。ウイルスベクターの10
7、10
8、および10
9個のvp(sAd4287、sAd4310A、およびrcsAd4287)での、オーバーラップしているGagペプチド(Gag)、優性CD8
+T細胞エピトープAL11(AAVKNWMTQTL)、準優性CD8
+TエピトープKV9(KSLYNTVCV)、およびCD4
+T細胞エピトープDD13(DRFYKSLRAEQTD)(Liu et al.,J.Virol.80:11991-11997,2006)に対して、IFN-γ ELISPOT応答を測定した。
図24A~24Cに示すように、IFN-γ ELISPOT応答は、vpの量の増加とともに増大し、かつGagおよびAL11応答の双方が、KV9またはDD13エピトープに対する応答よりも増大した。さらに、これらの機能的応答は、本発明の複製欠損アデノウイルスを使用する場合に限って誘発され(例えば、sAd4287およびsAd4310A)、本発明の複製可能アデノウイルスを使用する場合には誘発されなかった(例えば、rcsAd4287)。まとめると、本発明の組換えアデノウイルスベクターに対する細胞性応答に関する試験では、マウスにおいて強力な免疫原性を示すことは明らかである。
【0107】
低いベースライン抗-ベクター免疫(低い血清有病率)、強力な免疫原性、および新しい生物学を組み合わせると、本発明の新規なアデノウイルスベクターが、遺伝子治療および/または診断における有用性に加え、限定はされないが、HIV、SIV、がん、マラリア、および結核を含むヒトまたは動物の病原体に対する新規なワクチン候補として有用でありうることが示唆される。
【0108】
他の実施形態
本発明は、その特定の実施形態と関連させて説明されている一方、さらなる変更が可能であり、かつ本願が、一般に本発明の原則に従うとともに、本発明が関係する当該技術分野の範囲内での既知または通例の実施の範囲内に収まるような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適応を網羅するように意図され、また上記の本質的な特徴に適用可能であることは理解されるであろう。
【0109】
本願中で述べられるあらゆる出版物および特許出願は、独立した出版物または特許出願の各々が、あたかもその全体が参照により援用されているかの如く詳細かつ個別に示されたのと同じ範囲まで、参照により本明細書に援用される。
第2の態様では、本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクターであって、配列番号34~51のいずれか1つの全部または一部に対して、少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%同一)、少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む、組換えベクターを特徴とする。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号34~39のいずれか1つの全部または一部を含むsAd4287アデノウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号40~45のいずれか1つの全部または一部を含むsAd4310Aアデノウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号46~51のいずれか1つの全部または一部を含むsAd4312アデノウイルスベクターである。他の実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスの作製のため、配列番号34~51によって示されるベクターの2つ以上(例えば、2つ、3つ、または4つ)を用いて、プラスミド系を樹立してもよい。