(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101629
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】安定な医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5513 20060101AFI20220629BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220629BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220629BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/18
A61K9/06
A61K47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069334
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2022506488の分割
【原出願日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020173195
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋子
(72)【発明者】
【氏名】眞崎 賢治
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD49Z
4C076DD50
4C076DD51Z
4C076EE32
4C076FF61
4C076FF63
4C076GG45
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC56
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する安定な医薬組成物、および、上記化合物またはその塩の安定化方法を提供する。
【解決手段】(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有し、pHが6.5以下である医薬組成物。前記化合物またはその塩、および、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を含有する、医薬組成物とすることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有し、pHが6.5以下である医薬組成物。
【請求項2】
pHが、4~6.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩、および、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を含有する、医薬組成物。
【請求項4】
クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を含有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
クエン酸またはその塩を含む、請求項3または4に記載の医薬組成物であって、緩衝剤として、酢酸またはその塩、リンゴ酸またはその塩、アミンまたはその塩あるいはアミノ酸またはその塩のいずれかをさらに含む、医薬組成物。
【請求項6】
アミンが、トロメタモールである、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アミノ酸が、ε-アミノカプロン酸、グリシンまたはL-グルタミンである、請求項3~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
緩衝剤が、クエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩である、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.0001~5%(w/v)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物中の緩衝剤の含有量が、0.001~10%(w/v)である、請求項3~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬組成物中の緩衝剤の含有量が、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.1~20000質量部または0.01~1000質量部である、請求項3~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
眼局所投与に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
眼局所投与が点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与またはテノン嚢下投与である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
点眼剤、眼ゲル剤または注射剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
50℃以下で保存される、請求項1、2および4~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、pHを6.5以下に調整することを特徴とする、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法。
【請求項17】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミンアミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を添加することを特徴とする、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(以下、「AFDX0250」とすることもある)またはその塩(以下、「本発明化合物」とすることもある)を含有する安定な医薬組成物、および、医薬組成物中のAFDX0250またはその塩を安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬の有効成分として有用な化合物を医薬品として開発するためには、医薬品の有効性および安全性は勿論のこと、医薬組成物中での化合物の安定性、医薬組成物としての安定性、防腐効果の担保など、様々な要件を満たすことが求められる。なかでも、医薬組成物中での化合物の安定性を確保することは、医薬の効果を安定的に発揮するために極めて重要である。
医薬の有効成分として有用な化合物は、たとえ、固体状態では安定であっても、水溶液などの医薬組成物の状態では、不安定となり、分解生成物の生成または分解生成物量の増加といった問題を生じる場合がある。例えば、化合物が医薬品添加物等に含まれる水分と反応して分解され、医薬組成物中で化合物が不安定化することがある。また、医薬組成物の安定性には、pH、熱、湿気、光などの種々の物理的因子が影響する場合がある。そのため、医薬組成物は、これら種々の因子に対しても安定であることが重要である。
一方で、化合物の安定性は、医薬組成物を実際に製造して初めて問題が判明することも少なくない。そのため、化合物の安定化には一般的な方法は確立されておらず、その化合物に適した安定化方法を見出すことが通常である。
【0003】
特許文献1には、11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(以下、「AFDX0116」とすることもある)が緑内障および/または高眼圧症の治療に有用であることが開示され、前房内注射により眼内圧を低下させることが示されている。また、眼内圧を低下させる化合物の一つとして、AFDX0116の右旋性(+)エナンチオマーであるAFDX0250が開示されている。
【0004】
しかしながら、医薬組成物中でのAFDX0250またはその塩の安定性については、これまで報告がない。そのため、AFDX0250またはその塩を医薬組成物として調製した場合にその化合物が不安定になること、そして、その化合物を安定化する方法については一切報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第93/18772号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、AFDX0250またはその塩を含有する医薬組成物の開発段階で、本発明化合物を溶解して水性組成物を調製した際に本発明化合物が加水分解を受けやすく、AFDX0250の加水分解体である5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンが析出しやすいことを見出した。さらに、光の照射に対して本発明化合物が分解しやすいことを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、本発明化合物を含有する医薬組成物であって、本発明化合物の加水分解を抑制し、加水分解体の生成を抑制する医薬組成物を提供すること、また光に対して安定な医薬組成物を提供すること、さらに、本発明化合物の安定化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明化合物を含有する医薬組成物において、そのpHを6.5以下に調整することによって、本発明化合物の加水分解が抑制され、加水分解体の生成を抑制できること、さらに、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を添加することによって、本発明化合物の光に対する安定性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
具体的に、本発明は以下を提供する。
(1) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有し、pHが6.5以下である医薬組成物。
(2) pHが、4~6.5である、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩、および、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を含有する、医薬組成物。
(4) クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を含有する、上記(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(5) クエン酸またはその塩を含む、上記(3)または(4)に記載の医薬組成物であって、緩衝剤として、酢酸またはその塩、リンゴ酸またはその塩、アミンまたはその塩あるいはアミノ酸またはその塩のいずれかをさらに含む、医薬組成物。
(6) アミンが、トロメタモールである、上記(3)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7) アミノ酸が、ε-アミノカプロン酸、グリシンまたはL-グルタミンである、上記(3)~(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8) 緩衝剤が、クエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩である、上記(3)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9) 医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.0001~5%(w/v)である、上記(1)~(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10) 医薬組成物中の緩衝剤の含有量が、0.001~10%(w/v)である、上記(3)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11) 医薬組成物中の緩衝剤の含有量が、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.1~20000質量部または0.01~1000質量部である、上記(3)~(10)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12) 眼局所投与に用いられる、上記(1)~(11)のいずれかに記載の医薬組成物。
(13) 眼局所投与が点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与またはテノン嚢下投与である、上記(12)に記載の医薬組成物。
(14) 点眼剤、眼ゲル剤または注射剤である、上記(1)~(13)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15) 50℃以下で保存される、上記(1)、(2)および(4)~(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
(16) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、pHを6.5以下に調整することを特徴とする、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法。
(17) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を添加することを特徴とする、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法。
(18) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、pHを6.5以下に調整することを特徴とする、5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの生成を抑制する方法。
(19) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を添加することを特徴とする、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の光分解を抑制する方法。
(20) さらに該医薬組成物を50℃以下で保存することを特徴とする、上記(16)または(18)に記載の方法。
(21) 緩衝剤が、クエン酸またはその塩およびトロメタモールまたはその塩である、上記(17)または(19)に記載の方法。
【0010】
上記(1)から(21)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、医薬組成物中において本発明化合物の加水分解体の生成を抑制することができ、長期間にわたり安定化された医薬組成物を提供することができる。また、本発明によれば、医薬組成物中において本発明化合物を長期間にわたり安定化する方法を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明の医薬組成物および安定化方法では、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定に含む製剤を提供することができるため、当該製剤は保存安定性および安全性に優れ、長期間にわたる使用および保存を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(以下、「AFDX0250」とすることもある)またはその塩を含有する安定な医薬組成物を提供するものである。
【0015】
本発明において、「(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン」または「AFDX0250」は、下式:
【化1】
で表される化合物である(CAS登録番号:121029-35-4)。また、本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、(R)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンを意味し、下式:
【化2】
でも表される。
【0016】
本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、塩形態であってもよく、医薬として許容される塩であれば特に制限されない。その塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、アラニン、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、没食子酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ラウリル硫酸、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属との塩:アンモニアなどの無機化合物との塩;およびトリエチルアミン、グアニジンなどの有機アミンとの塩が挙げられる。
【0017】
本発明の医薬組成物において、含有される(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩は、水和物または溶媒和物の形態をとってもよい。
【0018】
本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩は、有機化学の分野における公知の方法にしたがって製造してもよく、また、市販品として入手してもよい。例えば、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、J. Med. Chem., 32(8), 1718-24, 1989に記載の工程により得ることができる。
【0019】
本発明において、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は、特に制限されない。含有量の下限は、0.0001%(w/v)が好ましく、0.0003%(w/v)がより好ましく、0.0005%(w/v)がさらに好ましく、0.001%(w/v)がさらにより好ましく、0.0013%(w/v)が特に好ましく、0.0015%(w/v)が特により好ましく、0.0017%(w/v)が特にさらに好ましく、0.002%(w/v)が最も好ましい。含有量の上限は、5%(w/v)が好ましく、3%(w/v)がより好ましく、2%(w/v)がさらに好ましく、1%(w/v)がよりさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましく、0.2%(w/v)が特により好ましく、0.1%(w/v)が最も好ましい。(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の分解物が析出することを防ぐ観点から、含有量の上限は、0.5%(w/v)が好ましく、0.2%(w/v)がより好ましく、0.1%(w/v)が最も好ましい。(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は、0.0001~5%(w/v)が好ましく、0.0003~3%(w/v)がより好ましく、0.0005~2%(w/v)がさらに好ましく、0.001~1%(w/v)がさらにより好ましく、0.0013~0.5%(w/v)が特に好ましく、0.0015~0.2%(w/v)が特により好ましく、0.0017~0.1%(w/v)が特にさらに好ましく、0.002~0.1%(w/v)が最も好ましい。
なお、本発明において、「%(w/v)」は、本発明の医薬組成物100mL中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する。本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの塩が含有される場合、その値は(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの塩の含有量であっても、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの含有量であってもよい。また、本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩が、水和物または溶媒和物の形態をとって配合される場合、その値は(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の水和物または溶媒和物の含有量であっても、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量であってもよい。以下、特に断りがない限り同様とする。
【0020】
本発明の医薬組成物の一態様において、そのpHは、6.5以下であり、4~6.5が好ましく、5~6.3がより好ましく、5.3~6.2がさらに好ましく、5.5~6が最も好ましい。本発明の医薬組成物では、そのpHがこれらの範囲内にある限り、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの加水分解が抑制され、その加水分解体である5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの生成を抑制することができる。
【0021】
本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、緩衝剤を含む。本発明において、含有される緩衝剤は、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤である。これらの緩衝剤を含有することにより、本発明の医薬組成物は光に対して安定となる。本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の光に対する安定性をより向上させる観点から、緩衝剤は、クエン酸またはその塩を含み、さらに、酢酸またはその塩、リンゴ酸またはその塩、アミンまたはその塩あるいはアミノ酸またはその塩のいずれかを組み合わせることが好ましい。
【0022】
クエン酸の塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
酢酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。
【0024】
リンゴ酸は、ラセミ体でも、エナンチオマー(L体またはD体)でもよい。リンゴ酸の塩としては、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0025】
アミンとしては、例えば、トロメタモール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン等が挙げられる。アミンの塩としては、例えば、それらの塩酸塩、酢酸塩等が挙げられる。本発明において、アミンは、トロメタモールが好ましく、その塩としては、例えば、トロメタモール塩酸塩等が挙げられる。
【0026】
アミノ酸としては、例えば、ε-アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、スレオニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、リシン、ヒスチジン等が挙げられ、これらに光学異性体が存在する場合は、ラセミ体でもエナンチオマー(L体やD体)でもよい。アミノ酸の塩としては、例えば、それらの塩酸塩、酢酸塩等が挙げられる。本発明において、アミノ酸は、ε-アミノカプロン酸、グリシン、L-グルタミンが好ましく、その塩としては、グリシン塩酸塩、L-グルタミン塩酸塩等が挙げられる。
【0027】
本発明において、緩衝剤は、水和物または溶媒和物の形態をとってもよく、その例としては、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物等が挙げられる。
【0028】
本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量の下限は、0.001%(w/v)が好ましく、0.005%(w/v)がより好ましく、0.01%(w/v)がさらに好ましく、0.05%(w/v)がさらにより好ましく、0.1%(w/v)が特に好ましく、0.2%(w/v)が最も好ましい。本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量の上限は、例えば20%(w/v)であり、10%(w/v)が好ましく、5%(w/v)がより好ましく、4%(w/v)がさらに好ましく、3%(w/v)がよりさらに好ましく、2%(w/v)が特に好ましく、1.5%(w/v)が最も好ましい。本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量は、例えば0.001~20%(w/v)であり、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.005~5%(w/v)がより好ましく、0.01~4%(w/v)がさらに好ましく、0.05~3%(w/v)がさらにより好ましく、0.1~2%(w/v)が特に好ましく、0.2~1.5%(w/v)が最も好ましい。例えば、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量は、0.001%(w/v)、0.002%(w/v)、0.005%(w/v)、0.01%(w/v)、0.02%(w/v)、0.05%(w/v)、0.1%(w/v)0.2%(w/v)、1.5%(w/v)、2%(w/v)、3%(w/v)、4%(w/v)、5%(w/v)、6%(w/v)、8%(w/v)、10%(w/v)または20%(w/v)であってもよい。
また、本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量の下限は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、50質量部がさらにより好ましく、100質量部が特に好ましく、500質量部が最も好ましい。本発明の医薬組成物の別の一態様において、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量の下限は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.01質量部が好ましく、0.03質量部がより好ましく、0.05質量部がさらに好ましく、0.1質量部がさらにより好ましく、0.3質量部が特に好ましく、0.5質量部が最も好ましい。また、本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量の上限は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、20000質量部が好ましく、10000質量部がより好ましく、5000質量部がさらに好ましく、3000質量部がさらにより好ましく、2000質量部が特に好ましく、1000質量部が最も好ましい。本発明の医薬組成物の別の一態様において、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量の上限は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、1000質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましく、10質量部がさらにより好ましく、6質量部が特に好ましく、3質量部が最も好ましい。また、本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.1~20000質量部が好ましく、1~10000質量部がより好ましく、10~5000質量部がさらに好ましく、50~3000質量部がさらにより好ましく、100~2000質量部が特に好ましく、500~1000質量部が最も好ましい。本発明の医薬組成物の別の一態様において、本発明の医薬組成物中の緩衝剤の含有量は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.01~1000質量部が好ましく、0.03~100質量部がより好ましく、0.05~50質量部がさらに好ましく、0.1~10質量部がさらにより好ましく、0.3~6質量部が特に好ましく、0.5~3質量部が最も好ましい。
【0029】
本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、緩衝剤として、クエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩を含む。この場合、本発明の医薬組成物中のクエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩の含有量の下限は、それぞれ、0.0005%(w/v)が好ましく、0.001%(w/v)がより好ましく、0.005%(w/v)がさらに好ましく、0.01%(w/v)がさらにより好ましく、0.05%(w/v)が特に好ましく、0.1%(w/v)が最も好ましい。含有量の上限は、それぞれ、10%(w/v)が好ましく、5%(w/v)がより好ましく、4%(w/v)がさらに好ましく、3%(w/v)がよりさらに好ましく、2%(w/v)が特に好ましく、1.5%(w/v)が最も好ましい。本発明の医薬組成物中のクエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩の含有量は、それぞれ、0.0005~10%(w/v)が好ましく、0.001~5%(w/v)がより好ましく、0.005~4%(w/v)がさらに好ましく、0.01~3%(w/v)がさらにより好ましく、0.05~2%(w/v)が特に好ましく、0.1~1.5%(w/v)が最も好ましい。また、本発明の医薬組成物中のクエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩の含有量の下限は、それぞれ、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.005質量部が好ましく、0.01質量部がより好ましく、0.03質量部がさらに好ましく、0.05質量部がさらにより好ましく、0.1質量部が特に好ましく、0.3質量部が最も好ましい。本発明の医薬組成物中のクエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩の含有量の上限は、それぞれ、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、100質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、6質量部がさらにより好ましく、3質量部が特に好ましく、2質量部が最も好ましい。本発明の医薬組成物中のクエン酸またはその塩、および、トロメタモールまたはその塩の含有量は、それぞれ、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.005~100質量部が好ましく、0.01~50質量部がより好ましく、0.03~10質量部がさらに好ましく、0.05~6質量部がさらにより好ましく、0.1~3質量部が特に好ましく、0.3~2質量部が最も好ましい。
【0030】
本発明の医薬組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩以外の医薬的に許容される活性成分、例えば近視などの眼疾患に対して治療効果を示す活性成分を含んでいてもよい。また、本発明の医薬組成物は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩以外の医薬的に許容される活性成分を含まなくてもよい。
【0031】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて添加剤を用いることができ、添加剤としては、界面活性剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、pH調整剤、基剤等を加えることができる。
【0032】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な界面活性剤、例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を適宜配合することができる。
【0033】
アニオン性界面活性剤の例としては、リン脂質等が挙げられる。リン脂質としては、例えば、レシチン等が挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、アルキルアミンポリオキシエチレン付加物、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、脂肪酸ポリアミン縮合物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アシルアミノアルキル型アンモニウム塩、アシルアミノアルキルピリジニウム塩、ジアシロキシエチルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリン、1-アシルアミノエチル-2-アルキルイミダゾリン、1-ヒドロキシルエチル‐2-アルキルイミダゾリン等が挙げられる。アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、セタルコニウム塩化物等が挙げられる。
【0035】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS等が挙げられる。
【0036】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
【0037】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート65、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。
【0038】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は10~100が好ましく、20~80がより好ましく、40~70が特に好ましく、60が最も好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は5~100が好ましく、20~50がより好ましく、30~40が特に好ましく、35が最も好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられる。
【0040】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール等が挙げられる。
【0041】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0042】
ビタミンE TPGSは、トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルともいう。
【0043】
本発明の医薬組成物に界面活性剤を配合する場合の界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.05~3%(w/v)がさらに好ましく、0.1~2%(w/v)が最も好ましい。
【0044】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合し、浸透圧を調整することができる。本発明の医薬組成物の浸透圧比は、例えば1であり、医薬品として許容される範囲であれば特に制限されない。等張化剤の例としては、イオン性等張化剤、非イオン性等張化剤等が挙げられる。
【0045】
イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0046】
本発明の医薬組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.01~10%(w/v)が好ましく、0.02~7%(w/v)がより好ましく、0.1~5%(w/v)がさらに好ましく、0.3~4%(w/v)が特に好ましく、0.5~3%(w/v)が最も好ましい。
【0047】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。安定化剤の例としては、エデト酸、エデト酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の医薬組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤の含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.05~3%(w/v)がさらに好ましく、0.1~2%(w/v)が最も好ましい。
【0048】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。
本発明の医薬組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤の含有量は、防腐剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)がより好ましく、0.001~0.05%(w/v)がさらに好ましく、0.002~0.01%(w/v)が最も好ましい。
【0049】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。抗酸化剤の例としては、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の医薬組成物に抗酸化剤を配合する場合の抗酸化剤の含有量は、抗酸化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)がより好ましく、0.001~0.02%(w/v)がさらに好ましく、0.005~0.010%(w/v)が最も好ましい。
【0050】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な高分子量重合体を適宜配合することができる。高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。本発明において、高分子量重合体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)が好ましい。
本発明の医薬組成物に高分子量重合体を配合する場合の高分子量重合体の含有量は、高分子量重合体の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.1~0.5%(w/v)がさらに好ましい。
【0051】
本発明の医薬組成物には、pHが6.5以下である限り、医薬品の添加物として使用可能なpH調整剤を適宜配合することができる。pH調整剤の例としては、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
本発明の医薬組成物にpH調整剤を配合する場合のpH調整剤の含有量は、pH調整剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.1~0.5%(w/v)がさらに好ましい。
【0052】
本発明の医薬組成物には、医薬品の添加物として使用可能な基剤を適宜配合することができる。基剤の例としては、水、精製水、生理食塩水等が挙げられる。
【0053】
本発明の医薬組成物は、水性の医薬組成物であることが望ましいが、非水性の医薬組成物であってもよい。
【0054】
本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、界面活性剤を含まない。本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、等張化剤を含まない。本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、安定化剤を含まない。本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、防腐剤を含まない。本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、抗酸化剤を含まない。本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、高分子量重合体を含まない。本発明の医薬組成物の一態様において、本発明の医薬組成物は、pH調整剤を含まない。
【0055】
本発明の医薬組成物は、50℃以下で保存した場合、本発明化合物の加水分解体の生成を抑制することができるため、温度が50℃以下であれば優れた安定性を示す。また、本発明の医薬組成物は、より低い温度、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、さらに好ましくは10℃以下、さらにより好ましくは5℃以下、殊更好ましくは0℃以下、特に好ましくは-10℃以下、最も好ましくは-20℃以下で保存することによってより安定に保たれる。本発明の医薬組成物を保存する最低温度は、-80℃が好ましく、-60℃がより好ましく、-50℃がさらに好ましく、-40℃が特に好ましく、-30℃が最も好ましい。本発明の医薬組成物を保存する温度は、例えば-80℃~50℃であり、-80℃~30℃が好ましく、-60℃~25℃がより好ましく、-50℃~10℃がさらに好ましく、-40℃~5℃がさらにより好ましく、-30℃~0℃が殊更好ましく、-30℃~-10℃が特に好ましく、-30℃~-20℃が最も好ましい。
【0056】
本発明の医薬組成物は、経口または非経口投与することができる。投与経路としては、経口投与、静脈内投与、経皮投与、眼局所投与(例えば、点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与)などが挙げられる。
【0057】
本発明の医薬組成物の剤形は、医薬品として使用可能なものであれば特に制限されるものではなく、例えば点眼剤、眼ゲル剤、注射剤等が挙げられる。本発明の医薬組成物は、特に点眼剤が好ましい。また、本発明の医薬組成物を非水性の医薬組成物として使用する場合、非水性の製剤として処方してもよい。
これらは当該技術分野における通常の方法に従って製造することができる。
【0058】
本発明の医薬組成物は、種々の素材で製造された容器に入れて保存することができる。
【0059】
また、本発明は、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法を提供するものである。上記の本発明の医薬組成物の詳細な説明は、本発明の医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法にも適用される。
【0060】
本発明において、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、pHを6.5以下に調整することを特徴とする、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法を含む。かかる方法では、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの加水分解が抑制され、その加水分解体である5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの生成を抑制することができる。
【0061】
本発明において、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法はまた、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する医薬組成物において、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、アミン、アミノ酸およびそれらの塩からなる群より選択される1以上の緩衝剤を添加することを特徴とする、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を安定化する方法を含む。かかる方法では、光照射に対する(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の分解が抑制され、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩は、光に対して安定となる。
【実施例0062】
以下に製剤例及び試験結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
製剤例
以下に本発明の医薬組成物を用いた代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例における各成分の配合量(%(w/v))は組成物100mL中の含量(g)である。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
[製剤例51]
点眼剤(100mL中)
AFDX0250 0.1g
クエン酸ナトリウム水和物 0.5g
トロメタモール 0.5g
グリセリン 2.0g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0070】
[製剤例52]
点眼剤(100mL中)
AFDX0250 0.3g
クエン酸ナトリウム水和物 0.25g
クエン酸水和物 0.02g
ε-アミノカプロン酸 0.5g
塩化ナトリウム 0.5g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0071】
[製剤例53]
点眼剤(100mL中)
AFDX0250 0.5g
クエン酸ナトリウム水和物 0.25g
クエン酸水和物 0.02g
L-リンゴ酸 0.5g
塩化ナトリウム 0.5g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0072】
なお、前記製剤例1~53におけるAFDX0250、緩衝剤、添加剤の種類や配合量を適宜調整し所望の組成物を得ることができる。
【0073】
1.安定性評価試験(1)
本発明化合物を含む医薬組成物の安定性に対するpHの影響を検討した。
【0074】
1-1.被験製剤の調製
クエン酸ナトリウム水和物5gを精製水に溶解し、正確に200mLとすることで2.5%クエン酸ナトリウム水和物溶液を調製した。(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(AFDX0250)0.075gを精製水に溶解し、正確に150mLとすることで0.05%AFDX0250溶液を調製した。
2.5%クエン酸ナトリウム水和物溶液各10mL、0.05%AFDX0250溶液各10mLおよび精製水各20mLをそれぞれ混和し、水酸化ナトリウムまたは希塩酸にてpH5、5.5、6.5および7にそれぞれ調整後、精製水にて正確に各50mLとすることで実施例1、実施例2、実施例4および比較例1を調製した。
2.5%クエン酸ナトリウム水和物溶液20mL、0.05%AFDX0250溶液20mLおよび精製水40mLを混和し、水酸化ナトリウムまたは希塩酸にてpH6に調整後、精製水にて正確に100mLとすることで実施例3を調製した。
【0075】
1-2.試験方法
上記1-1で調製した各被験製剤を、容器に3mL充填し、25℃/40%RHで、3ヵ月保存した。3ヵ月保存後の被験製剤中のAFDX0250の加水分解により生じる5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(以下、「加水分解体」とする)の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その生成率(%)を算出した。なお、生成率(%)は、被験製剤中に含まれるAFDX0250の質量を100%とした場合の割合(%)である。
【0076】
1-3.試験結果及び考察
試験結果を表6に示す。
【表6】
【0077】
表6から明らかなように、実施例1~4の製剤は、比較例1の製剤に比べ、加水分解体の生成率が低く抑えられた。この結果、pHが6.5以下である本発明の医薬組成物では、AFDX0250は医薬組成物中で優れた安定性を有することが確認された。
【0078】
2.安定性評価試験(2)
本発明化合物を含む医薬組成物の光照射に対する安定性を検討した。
【0079】
2-1.被験製剤の調製
クエン酸ナトリウム水和物4gを精製水に溶解し、正確に200mLとすることで2%クエン酸ナトリウム水和物溶液を調製した。AFDX0250 0.02gを精製水に溶解し、正確に200mLとすることで0.01%AFDX0250溶液を調製した。トロメタモール10gを精製水に溶解し、正確に100mLとすることで10%トロメタモール溶液を調製した。ホウ酸10gを精製水に溶解し、正確に200mLとすることで5%ホウ酸溶液を調製した。ヒプロメロース5gを精製水に溶解し、正確に100mLとすることで5%ヒプロメロース溶液を調製した。
2%クエン酸ナトリウム水和物溶液10mL、0.01%AFDX0250溶液10mLおよび精製水50mLを混和し、水酸化ナトリウムまたは希塩酸にてpH6に調整後、精製水にて正確に100mLとすることで実施例5を調製した。
実施例5の組成に、酢酸ナトリウム水和物1g、10%トロメタモール溶液10mL、ε-アミノカプロン酸1g、グリシン1g、L-グルタミン1g、DL-リンゴ酸1g、5%ヒプロメロース溶液20mLをそれぞれ配合すること以外は、実施例5の調製方法と同様の方法で実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10、実施例11および実施例12を調製した。なお、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。
実施例7の組成に、塩化ナトリウム0.75g、グリセリン2g、マンニトール4g、プロピレングリコール2g、5%ヒプロメロース20mLをそれぞれ配合すること以外は、実施例7の調製方法と同様の方法で実施例13、実施例14、実施例15、実施例16および実施例17を調製した。なお、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。
実施例5の組成に、リン酸二水素ナトリウム水和物3g、5%ホウ酸溶液20mL、L-アスコルビン酸1g、ピルビン酸エチル1gをそれぞれ配合すること以外は、実施例5の調製方法と同様の方法で比較例2、比較例3、比較例4および比較例5を調製した。なお、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。
【0080】
2-2.試験方法
上記2-1で調製した各被験製剤を、容器に3mL充填し、1000lux/hrで120万lux・hrで曝光またはアルミホイルで遮光した。曝光または遮光したときの、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(AFDX0250)の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。なお、残存率(%)は、被験製剤中に含まれるAFDX0250の質量を100%とした場合の割合(%)である。
【0081】
2-3.試験結果及び考察
試験結果を表7~10に示す。
【表7】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
表7~10から明らかなように、実施例5~17の製剤は、比較例2~5の製剤に比べ、光の照射下でもAFDX0250の高い残存率を示した。特に、クエン酸ナトリウム水和物と、トロメタモール、ε-アミノカプロン酸、L-グルタミンまたはDL-リンゴ酸を含む実施例7、8、10、11および13~17では、残存率が高かった。一方、クエン酸ナトリウム水和物とL-アスコルビン酸を含む比較例4では、遮光下ですら残存率は低かった。この結果、本発明の医薬組成物は、光に対して優れた安定性を有することが確認された。
【0086】
3.安定性評価試験(3)
本発明化合物を含む医薬組成物の光照射に対する安定性を検討した。
【0087】
3-1.被験製剤の調製
クエン酸ナトリウム水和物2.5g、クエン酸水和物0.2g、塩化ナトリウム7.8gを精製水に溶解し、正確に100mLとすることで2.5%クエン酸ナトリウム水和物/0.2%クエン酸水和物/7.8%塩化ナトリウム溶液を調製した。AFDX0250 0.01gを精製水に溶解し、正確に100mLとすることで0.01%AFDX0250溶液を調製した。トロメタモール5gを精製水に溶解し、正確に100mLとすることで5%トロメタモール溶液を調製した。この5%トロメタモール溶液を希釈し、0.5%、0.05%トロメタモール溶液を調製した。
2.5%クエン酸ナトリウム水和物/0.2%クエン酸水和物/7.8%塩化ナトリウム溶液10mL、0.01%AFDX0250溶液10mLおよび精製水を混和し、水酸化ナトリウムまたは希塩酸にてpH6に調整後、精製水にて正確に100mLとすることで実施例18を調製した。
実施例18の組成に、0.05%、0.5%、5%トロメタモール溶液10mLもしくは20mLを配合すること以外は、実施例18の調製方法と同様の方法で実施例19~23を調製した。なお、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。
【0088】
3-2.試験方法
上記3-1で調製した各被験製剤を、容器に充填し、1000lux/hrで120万lux・hr曝光またはアルミホイルで遮光した。曝光または遮光したときの、AFDX0250の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。なお、残存率(%)は、被験製剤中に含まれるAFDX0250の質量を100%とした場合の割合(%)である。
【0089】
3-3.試験結果及び考察
試験結果を表11に示す。
【表11】
【0090】
表11から明らかなように、実施例18~23の製剤は、光の照射下でもAFDX0250の高い残存率を示した。この結果、本発明の医薬組成物は、光に対して優れた安定性を有することが確認された。
【0091】
4.安定性評価試験(4)
本発明化合物を含む医薬組成物の安定性に対する温度の影響を検討した。
【0092】
4-1.被験製剤の調製
実施例18の調製方法と同様の方法で実施例24~27を調製した。なお、AFDX0250および各添加物の配合量は、表12に示すとおりであり、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。
【0093】
4-2.試験方法
上記4-1で調製した各被験製剤を、-20℃および5℃の各温度で、3ヵ月保存した。各温度の3ヵ月保存後の被験製剤中のAFDX0250の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。なお、残存率(%)は、保存前の被験製剤中に含まれるAFDX0250の含有量を100%とした場合の割合(%)である。
【0094】
4-3.試験結果及び考察
試験結果を表12に示す。
【表12】
【0095】
表12から明らかなように、実施例24~27の製剤は、-20℃および5℃の低温においてAFDX0250の高い残存率を示した。この結果、本発明の医薬組成物を低温で保存した場合に、AFDX0250は医薬組成物中で優れた安定性を有することが確認された。
【0096】
5.安定性評価試験(5)
本発明化合物を含む医薬組成物の安定性に対する温度の影響を検討した。
【0097】
5-1.被験製剤の調製
実施例5の調製方法と同様の方法で実施例28~31を調製した。なお、AFDX0250および各添加物の配合量は、表13に示すとおりであり、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。また、実施例28、実施例29および実施例31はそれぞれ、pHを5、5.5および6.5に調整した。
【0098】
5-2.試験方法
上記5-1で調製した各被験製剤を、5℃および25℃/40%RHの各条件で、6ヵ月保存した。6ヵ月保存後の被験製剤中のAFDX0250の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。なお、残存率(%)は、保存前の被験製剤中に含まれるAFDX0250の含有量を100%とした場合の割合(%)である。
【0099】
5-3.試験結果及び考察
試験結果を表13に示す。
【表13】
【0100】
表13から明らかなように、実施例28~31の製剤は、5℃および25℃において、AFDX0250の残存率が高かった。この結果、pHが6.5以下である本発明の医薬組成物を室温付近で保存した場合に、AFDX0250は医薬組成物中で優れた安定性を有することが確認された。
【0101】
6.安定性評価試験(6)
本発明化合物を含む医薬組成物の高温保存下における安定性を検討した。
【0102】
6-1.被験製剤の調製
実施例5の調製方法と同様の方法で実施例32~35および比較例6を調製した。なお、AFDX0250および各添加物の配合量は、表14に示すとおりであり、精製水の添加量は、添加物の配合量に応じて適宜変更した。また、実施例32、実施例33、実施例35および比較例6はそれぞれ、pHを5、5.5、6.5および7に調整した。
【0103】
6-2.試験方法
上記6-1で調製した各被験製剤を、50℃で保存し、1、2および4週間後にサンプリングした。各時点の被験製剤中のAFDX0250の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量し、その残存率(%)を算出した。なお、残存率(%)は、保存前の被験製剤中に含まれるAFDX0250の含有量を100%とした場合の割合(%)である。
【0104】
6-3.試験結果及び考察
試験結果を表14に示す。
【表14】
【0105】
表14から明らかなように、実施例32~35の製剤は、比較例6の製剤に比べ、50℃の高温においてAFDX0250の高い残存率を示した。この結果、pHが6.5以下である本発明の医薬組成物を高温で保存した場合に、AFDX0250は医薬組成物中で優れた安定性を有することが確認された。
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含有する本発明の医薬組成物は安定であるため、長期間にわたり医薬として安定的に使用することができる。