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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010163
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】熱湿交換デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20220106BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
A61M16/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182161
(22)【出願日】2021-11-08
(62)【分割の表示】P 2018566223の分割
【原出願日】2017-05-15
(31)【優先権主張番号】1610715.3
(32)【優先日】2016-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】509342843
【氏名又は名称】スミスズ メディカル インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】マーティン チャンドラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】入口、出口、及びこれらの間に横方向拡大領域を設けてHME素子を配置したHMEデバイスを提供する。
【解決手段】HMEは、拡大した中枢領域13及び両側に互いに対向する端壁24及び25を形成するよう、厚さがあり断熱性発泡プラスチック製の2つの部分26及び27として成形したハウジング10を有する。別個の患者側端部接続部11及び装置側端部接続部12を端壁における開口37及び47に結合する。2つのハウジング部分26及び27は、処理済み段ボール紙のストリップを支持スリーブ50の周りに巻き付けて形成したHME素子14の周囲で端部を突き合わせて結合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口接続部(11)、出口接続部(12)、及び前記入口接続部と前記出口接続部との間における横方向拡大領域(13)を設けたハウジング(10,110)を有し、前記拡大領域に保持された外面と、前記入口及び出口接続部(11及び12)のそれぞれに面する反対側の端面(15,16,115,116)を有するHME素子(14,114)を備え、ガスが前記入口及び出口接続部(11及び12)を通って流れ、前記ハウジング(10,110)を通って流れ、前記HME素子(14,114)を通ってそれぞれの反対側の端面(15,16,115,116)を流れるHMEデバイス(1,101)であって、少なくとも前記拡大領域における前記ハウジングの壁は、発泡プラスチック材料の厚さの大部分を含み、前記HME素子(14,114)周りに前記ハウジング(10,110)の断熱性を付与する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のHMEデバイスにおいて、前記発泡プラスチック材料は、ほぼ0.03W/(m・K)又はそれより低い熱伝導率を有する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2記載のHMEデバイスにおいて、前記拡大領域(13)の壁厚対外径の比はほぼ1:8である、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記入口(11)及び前記出口(12)は互いに軸線方向に整列する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記拡大領域(13)は、円形断面の円筒形部分(23)と、前記入口(11)及び前記出口(12)それぞれに対して側方に延在する両側に互いに対向する2つの端壁部分(24及び25、124及び125)とを有する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項6】
請求項5記載のHMEデバイスにおいて、前記円筒形部分(23)並びに端壁部分(24及び25、124及び125)の双方は、それらの厚さの大部分にわたり発泡プラスチック材料である、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項7】
請求項5又は6記載のHMEデバイスにおいて、前記両側の互いに対向する端壁部分(24及び25、124及び125)の少なくとも内面は、HMEデバイスの軸線に対する垂線に対して角度をなして延在する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記入口(11)及び前記出口(12)は、前記拡大領域(13)とは別個に形成したコンポーネントであって、前記拡大領域に取り付けたコンポーネントである、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記HME素子は、段ボール紙のとぐろ巻き(14,114)である、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項10】
請求項9記載のHMEデバイスにおいて、前記段ボール紙のとぐろ巻き(14,114)は、中空の管状スリーブ(50)の周りに巻き付けている、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項11】
請求項1~10のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記ハウジング(10,110)は、前記拡大領域(13)における整合端面(28及び29)で互いに接合した2つの部分(26及び27)により形成する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項12】
請求項11記載のHMEデバイスにおいて、前記整合端面(28及び29)は、前記デバイスの軸線に対する垂線に対して逆向きの角度をなして傾斜する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記HME素子(114)の両側の端面(115及び116)各々は、浅く窪んだ円錐状形状を形成する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口、出口、及び入口と出口との間における横方向拡大領域を設けたハウジングを有し、拡大領域に配置されるHME素子を備える種類のHMEデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
患者が気管内に挿入されるチューブ、例えば、気管切開チューブ又は気管内チューブ経由で呼吸する場合、気管支へのガスフローは鼻通路によって暖められること、また湿らされることがない。ガスが何らかの方法で暖められ、また湿らされない限り、患者の咽喉に対してダメージ及び不快感を与えるおそれがある。ガスは換気回路における加湿器によって調整することができるが、最も都合よくは熱湿交換デバイス(HME)を使用することである。HMEsは、吸湿性物質によって処理したペーパー又は発泡体のような1つ又はそれ以上の交換素子を備える小型軽量デバイスである。患者が呼息するとき、ガスは交換素子経由で通過し、また熱及び湿気の大部分を交換素子に与える。患者が吸息するとき、ガスは交換素子経由で反対方向に通過し、また交換素子における熱及び湿気の大部分を取り込み、したがって、患者によって吸息されたガスは暖められ、また湿気を帯びる。これらHMEsは低コストであり、また一回使用後に廃棄することができる。これらHMEsは、呼吸回路に接続する、又は患者が自発呼吸している場合、単に気管チューブの装置側端部に接続し、かつ大気に開放したままにすることができる。HMEsは、フェイスマスクのような他の呼吸デバイスとともに使用することができる。
【0003】
HMEsは、Thermovent(Thermoventはスミスズ・メディカル・インターナショナル社の登録商標)の商品名の下で英国ケント州アシュフォードのスミスズ・メディカル・インターナショナル社によって、Trach Vent(Trach VentはハドソンRCI AB社の登録商標)の商品名の下でハドソンRCI AB社によって、DAR社、メディサイズ(Medisize)社、インターサージカル(Intersurgical)社及び他の製造業者によって販売されている。HMEsの例は、特許文献1~23(英国特許第2391816号、国際公開第01/72365号、米国特許第5505768号、スウェーデン国特許第516666号、米国特許第3881482号、独国特許第20302580号、独国実用新案第20114355号、国際公開第97/01366号、米国特許出願公開第2002/0157667号、米国特許第6422235号、欧州特許第1208866号、米国特許第4971054号、欧州特許第1699515号、米国特許第5035236号、欧州特許第535016号、米国特許第5647344号、英国特許第2267840号明細書、欧州特許第856327号、欧州特許第1699515号、米国特許第7363925号、国際公開第15/107320号、米国特許出願公開第2008/0099013号及び英国特許第1511401.0号)に記載されている。スミスズ・メディカル社によって販売されている「Thermovent T」は、デバイスを気管切開チューブ等に装着する接続ポートから横方向に延在する直線的管状ハウジングの両側端部に備え付けられた2つのHME素子を有するT字状形態をとっている。HME素子の管状ハウジングは、特許文献24(欧州特許第1888157号)に記載のように、首の身体構造上の輪郭に追従して湾曲する場合があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許第2391816号明細書
【特許文献2】国際公開第01/72365号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5505768号明細書
【特許文献4】スウェーデン国特許第516666号明細書
【特許文献5】米国特許第3881482号明細書
【特許文献6】独国特許第20302580号明細書
【特許文献7】独国実用新案第20114355号明細書
【特許文献8】国際公開第97/01366号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0157667号明細書
【特許文献10】米国特許第6422235号明細書
【特許文献11】欧州特許第1208866号明細書
【特許文献12】米国特許第4971054号明細書
【特許文献13】欧州特許第1699515号明細書
【特許文献14】米国特許第5035236号明細書
【特許文献15】欧州特許第535016号明細書
【特許文献16】米国特許第5647344号明細書
【特許文献17】英国特許第2267840号明細書
【特許文献18】欧州特許第856327号明細書
【特許文献19】欧州特許第1699515号明細書
【特許文献20】米国特許第7363925号明細書
【特許文献21】国際公開第15/107320号パンフレット
【特許文献22】米国特許出願公開第2008/0099013号明細書
【特許文献23】英国特許第1511401.0号明細書
【特許文献24】欧州特許第1888157号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HMEsは極めて効率的であり得るが、ヒータ及び給水源を含む能動的加湿器として加湿する上では未だ有効ではなく、またこのことが理由で、深刻な呼吸障害を患っている患者に対してHMEsを使用しない臨床医がいる。したがって、HMEsがより広く使用されるようHMEsの効率を向上させる必要性が依然としてある。
【0006】
本発明の目的は従来に代わるHMEデバイスを得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、先に特定した種類のHMEデバイスを提供し、このHMEデバイスは、少なくとも前記拡大領域における前記ハウジングの壁は、発泡プラスチック材料の厚さの大部分を含み、前記HME素子周りに前記ハウジングの断熱性を付与する、ことを特徴とする。
【0008】
前記発泡プラスチック材料は、好適には、ほぼ0.03W/(m・K)又はそれより低い熱伝導率を有し、前記拡大領域の壁厚対外径の比はほぼ1:8である。前記入口及び前記出口は、好適には、互いに軸線方向に整列する。前記拡大領域は、好適には、円形断面の円筒形部分と、前記入口及び前記出口それぞれに対して側方に延在する両側で互いに対向する2つの端壁部分とを有する。前記円筒形部分並びに端壁部分の双方は、それらの厚の大部分にわたり発泡プラスチック材料とすることができる。前記両側の互いに対向す
る端壁部分の少なくとも内面は、好適には、HMEデバイスの軸線に対する垂線に対して角度をなして延在する。前記入口及び前記出口は、前記拡大領域とは別個に形成したコンポーネントであって、前記拡大領域に取り付けたコンポーネントであり得る。前記HME素子は、好適には、段ボール紙のとぐろ巻きである。前記段ボール紙のとぐろ巻きは、中空の管状スリーブの周りに巻き付けることができる。前記ハウジングは、前記拡大領域における整合端面で互いに接合した2つの部分により形成することができる。前記整合端面は、前記デバイスの軸線に対する垂線に対して逆向きの角度をなして傾斜することができる。前記HME素子の両側の端面各々は、浅く窪んだ円錐状形状を形成することができる。
【0009】
本発明によるHMEの2つの実施形態を以下に例として添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のHMEデバイスの縦断面図である。
図2図1のHMEを一部切除した断面斜視図である。
図3】第2つの実施形態のHMEデバイスの縦断面図である。
図4図3のHMEを一部切除した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず図1及び2につき説明すると、これは、気管内チューブ又は気管切開チューブのような呼吸デバイス(図示せず)の部分における整合雄形コネクタに嵌合しうるルアー式テーパ付き内面11′がある患者側端部接続部又は入口11を設けた円形断面の外側ハウジング10を有するHMEデバイス1を示す。デバイス1の反対側端部における装置側端部接続部又は出口12は患者側端部接続部11に軸線方向に整列する。患者側端部接続部11と装置側端部接続部12との間において、ハウジング10は、横方向又は半径方向に拡大した中枢領域13を有する。ハウジング10の中枢領域13は、水分吸収を促進する吸湿性塩で処理した段ボール紙のストリップであって、このストリップを円形とぐろ巻きに巻き付けている形式のHME素子14を収納する。段ボール紙ストリップの波形はデバイスの軸線に整列し、したがって、空気は波形に沿って流動することができる。素子14の患者側端面15及び装置側端面16は中枢領域13内でハウジング10から僅かに離間しており、これにより空気は双方の端面における全面にわたり素子を流動することができる。HME素子14は、圧縮可能プラスチック材料の2つの環状リング17及び18によりハウジング10内で両側サイドで支持する。
【0012】
ハウジング10の中枢領域13は、患者側端部接続部11及び装置側端部接続部12とは別個に形成する。中枢領域13の長さの大部分は、その長さに沿って円形断面かつ一定直径の円筒形部分23によって設けられる。両側対向端部において、中枢領域13はそれぞれに対応する端壁24及び25を有し、これら端壁は、HMEの軸線に対する垂線に対して浅い角度で横方向内方に延在し、これにより端壁の少なくとも内面は垂線に対して浅い角度で傾斜する。中枢領域13は、後にHME素子14の周りに互いに結合する2つの部分26及び27として成形する。これら2つの部分26及び27は、それぞれHMEの軸線に対する垂線に対して逆向きに約45゜の角度で傾斜する整合端面28及び29で互いに結合する。2つの部分26及び27は、拡張したポリウレタン発泡体のような同一断熱剛性発泡プラスチック材料から成形する。この材料は0.03W/(m・K)の熱伝導率を有する。好適には、任意な代替的断熱材料は、同様の又はより低い熱伝導率を有するものとすべきである。2つの部分26及び27の壁は、約102mmの外径を有するHMEに対して従来のHMEsと比べて比較的厚さがあり約12mmの厚さであり、したがって壁厚対直径の比は約1:8である。2つの部分の壁は厚さ全体にわたり発泡材料製とするのが好適であるが、内面、外面又はその双方に非発泡材による層又はスキンを設けることができる。
【0013】
患者側端部接続部11は、ナイロンのような剛性(非発泡の)プラスチック材料からほぼ円筒形形状かつ円形断面のワンピースの一体成形体である。接続部11の患者側端部31には内転スリーブ32を形成し、その内面11′はテーパを付け、呼吸チューブ等に取り付ける普通の15mm雄形接続部(図示せず)の外側面に嵌合するための雌形接続部を生ずるようにする。接続部11に沿う中間あたりで浅いフランジ34が半径方向外方に突出し、中枢領域13の患者側端壁24の外面に衝合する。フランジ34の装置側における接続部11の一部は、僅かに拡大した円筒形区域35及びテーパ付きノーズ区域36に分割される。円筒形区域35は、患者側端壁24における中心開口37内に緊密嵌合し、例えば、接着剤又は溶剤によって所定位置に結合される。ノーズ区域36は、内側及び外側で装置側端部における減少直径までテーパを付ける。
【0014】
装置側端部接続部12は、やはり雄形テーパ付き接続部をなす形状にしたワンピースの一体成形体であり、またこのことに関して一定内径を持つ円形断面の円筒形スピゴット42であって、スピゴットの長さに沿い接続部の装置側遊端43に向かって直径が減少するテーパ付き外径を持つ、該スピゴット42を有する。スピゴット42はスピゴットの反対側の患者側端部で支持され、この患者側端部ではハウジング10から内方に突出するテーパ付きノーズ部分44と接合する。装置側端部接続部12は、スピゴットの長さの約1/2に沿ってスピゴット42の周りでノーズ部分44から軸線方向外方突出する一体型円筒形外側スリーブ45によって完結する。外側スリーブ45は、浅く外方に突出するフランジ46で終端し、また装置側端壁25における中心開口47内に緊密嵌合して装置側端壁25に結合され、フランジが開口周りの壁外面に衝合する状態となる。外側スリーブ45の内面及びスリーブから延びているスピゴット42の外面は互いに離間して環状窪み48を形成し、この環状窪み48内に整合雌形接続部(図示せず)の前方部分を収容することができる。
【0015】
HME素子14は、中空の管状スリーブ50の周りに環状形態となるよう巻き付けた処理済み段ボール紙のとぐろ巻きであり、管状スリーブ50は、HME素子の両側端部間においてHME素子内で軸線方向に貫通する。スリーブ50は両側の端部51及び52で外方フレア付きとし、スリーブ内への拡大するテーパ付き開口を形成する。スリーブ50は、スリーブに沿う中間部分でダックビル弁のようなバルブ53によって塞ぎ、このバルブ53は、吸引カテーテルをスリーブに沿って貫通させることによって開放することができる。
【0016】
患者側端部接続部11のノーズ36及び装置側端部接続部12のノーズ44は、それぞれに対応するスリーブ50のフレア付き端部51及び52内に短い距離だけ突入するが、各ノーズの外側面とフレア付き端部の内側面との間には空間が残り、ノーズの外側面周りにそれぞれに対応する環状ガスフロー通路54及び55を生ずる。これら通路54及び55は、接続部11及び12のノーズ36及び44の外表面と、HME素子14のそれぞれに対応する端面15及び16と、並びに中枢領域13の傾斜端壁24及び25における内表面とによって画定されるそれぞれに対応する環状キャビティ56及び57に開口する。
【0017】
使用にあたり、患者側端部接続部11は、気管チューブ又はフェイスマスクのような装置側端部における接続部上に対して嵌合する。患者が呼息する(息を吐く)とき、暖かく湿った空気が接続部11から前方に流動し、またノーズ部分36の端部から流出し、スリーブ50の患者側端部内に流入する。それ以上の前方流動はバルブ53によって阻止され、したがって、その代わりに環状の通路54経由でキャビティ56内へと後方に流動し、ここで空気はHME素子14の後方端面15全体にわたり均一に分散される。この均一分散は、キャビティ56の幅及び端壁24の傾斜によって支援される。空気は、さらに、波形周りの空間及びとぐろ巻きの隣接巻回相互間における空間に沿ってHME素子14内を流動する。このことが行われるとき、空気はその熱及び湿気の大部分をHME素子14に放出する。この後、空気は素子14の前方端面16から装置側端部のキャビティ57に抜け出て、このキャビティ57から方向転換して環状の通路55から後方に流動してスリーブ50の装置側端部内に流入する。これと同一方向への更なるフローはバルブ53によってブロックされ、したがって、空気は方向を逆転して装置側端部接続部12のボアに沿って前方に流動する。
【0018】
患者が吸息する(息を吸う)とき、又は空気が換気装置等によって逆方向に供給されるとき、空気はデバイス1における同一経路であるが、逆方向に流動する。吸息された空気は呼息された空気よりも冷たくかつ乾燥しているため、HME素子14を通過するとき、先の呼息フェーズ中にHME素子内に吸収された暖かさ及び湿気の大部分を取り込み、これにより患者に向かって流動する空気を暖め、また湿らせる。
【0019】
ハウジング10の中枢領域13の壁を形成する発泡材料の厚さ及び断熱性は、HME1の内部を呼息及び吸息双方の呼吸中に従来型のHMEsよりも一層体温に近い安定した温度に維持するのを補助する。このことは、従来型のHMEsと比較してHMEの効率を向上させることが分かった。この効率向上は、このHMEの性能を能動的加湿器の性能により近づけ、またひいてはこのHMEsを、高いレベルの暖気及び加湿が要求されるより実現可能な代替物にする。低コスト、使用容易性、及び電源又は給水源に対するいかなる必要性もないことは、相当な利点である。HMEデバイスは一回使用後に廃棄することができ、したがって、能動的加湿器におけるような感染リスク及びクリーニングの必要性を回避することができる。
【0020】
本発明の範囲内で図1及び2につき説明したHMEに対する種々の変更が可能である。HME素子14は、平坦端面15及び16を有するものとして説明したが、図3及び4に示す実施例のように素子は代案的形態を有することができる。図3及び4に示すHME101は、同一ハウジング101を有する点で図1及び2に示すHMEと類似するが、HME素子114は、両側の端面115及び116が浅く窪んだ円錐状形状であり、約160゜の傾斜角度をなしている点で異なる。図1及び2の実施形態でハウジング内にHME素子を支持するのに使用される簡単な環状リングは、この第2実施形態ではホイール状支持体117及び118に置き換わっている。支持体117及び118は、それぞれに対応する端面115及び116の外端縁と、隣接の端壁124及び125との間に配置される円形の外側リム120をそれぞれ有する。各支持体117及び118は、さらに、それぞれに対応する接続部のノーズ部分の外側面周りに延在し、かつ8個の半径方向延在ベーン122によってそれぞれに対応のリムに取り付けられた中心ハブ121を有する。これらベーン122は、各支持ホイール117及び118の周りに均等に離間し、またハブ121からの高さにつれてその長さに沿ってテーパを付け、外側リム120までの相対高さにつれて相対的に小さくする。ベーン122の形状は、HME素子114の端面115及び116と、ハウジング110の対面する傾斜端壁124及び125との間におけるキャビティ156及び157の形状に合致するものとする。ベーン122の端縁は、HME素子114の端面115及び116、並びに対面する傾斜端壁124及び125の内側面に接触する。この形態によれば、キャビティ156及び157に増加した容積を付与し、またこのことは、ベーン122のチャネリング効果と相まって、HME素子114の端面115及び116にわたるガスのより均一な分散をもたらし、このことは、HMEの効率をより長い期間にわたり維持するのに役立つ。
【0021】
このHME素子は処理済み段ボール紙のとぐろ巻きで形成する必要はなく、従来型HME素子で使用される他の材料、例えば、発泡体又は中空ファイバとすることができる。HMEデバイス及びHME素子は断面が円形であることは必須でなく、これはすなわち楕円形又は矩形のような他の形状とすることができるからであるものの、円形形状が最も高い効率を与えることが分かっている。上述のHMEsは両側の端部で空気フローの経路を折り返ししたが、HME素子をハウジングの幅全体にわたり延在させ、入口及び出口をHME素子の端面の中心に開口させることができる。上述したHMEsは入口及び出口が軸線方向に整列するアキシャル形態をとるが、本発明の断熱ハウジングは、デバイスを気管切開チューブ等に装着する接続ポートから横方向に延在する直線的管状ハウジングの両側の端部に備え付けた2つのHME素子を備えるT字状形態のような他の従来型代替形態のHMEsにも恩恵を与えることができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口接続部(11)、出口接続部(12)、及び前記入口接続部と前記出口接続部との間における横方向拡大領域(13)を設けたハウジング(10,110)を有し、前記拡大領域に保持された外面と、前記拡大領域内で前記ハウジング(10,110)から僅かに離間した反対側の端面(15,16,115,116)を有するHME素子(14,114)を備え、これにより空気は双方の端面(15,16,115,116)の表面全体にわたって前記素子を流動することができるHMEデバイス(1,101)であって、前記HME素子(14,114)は、中空の管状スリーブ(50)の周りに環状形態となるよう巻き付けられ、前記入口接続部(11)のノーズ(36)及び前記出口接続部(12)のノーズ(44)は、それぞれに対応する前記スリーブ(50)のフレア付き端部51及び52内に突入して、前記ノーズ(36,44)の外側面周りにそれぞれに対応する環状の通路(54,55)が設けられ、前記環状の通路(54,55)は、前記ハウジング(10,110)と前記双方の端面(15,16,115,116)の間に画定されるそれぞれに対応する環状キャビティ(56,57)に開口していて、少なくとも前記拡大領域における前記ハウジングの壁は、発泡プラスチック材料の厚さの大部分を含み、前記HME素子(14,114)周りに前記ハウジング(10,110)の断熱性を付与する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のHMEデバイスにおいて、前記発泡プラスチック材料は、ほぼ0.03W/(m・K)又はそれより低い熱伝導率を有する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2記載のHMEデバイスにおいて、前記拡大領域(13)の壁厚対外径の比はほぼ1:8である、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記入口(11)及び前記出口(12)は互いに軸線方向に整列する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記拡大領域(13)は、円形断面の円筒形部分(23)と、前記入口(11)及び前記出口(12)それぞれに対して側方に延在する両側に互いに対向する2つの端壁部分(24及び25、124及び125)とを有する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項6】
請求項5記載のHMEデバイスにおいて、前記円筒形部分(23)並びに端壁部分(24及び25、124及び125)の双方は、それらの厚さの大部分にわたり発泡プラスチック材料である、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項7】
請求項5又は6記載のHMEデバイスにおいて、前記両側の互いに対向する端壁部分(24及び25、124及び125)の少なくとも内面は、HMEデバイスの軸線に対する垂線に対して角度をなして延在する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記入口(11)及び前記出口(12)は、前記拡大領域(13)とは別個に形成したコンポーネントであって、前記拡大領域に取り付けたコンポーネントである、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記HME素子は、段ボール紙のとぐろ巻き(14,114)である、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項10】
請求項9記載のHMEデバイスにおいて、前記段ボール紙のとぐろ巻き(14,114)は、中空の管状スリーブ(50)の周りに巻き付けている、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項11】
請求項1~10のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記ハウジング(10,110)は、前記拡大領域(13)における整合端面(28及び29)で互いに接合した2つの部分(26及び27)により形成する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項12】
請求項11記載のHMEデバイスにおいて、前記整合端面(28及び29)は、前記デバイスの軸線に対する垂線に対して逆向きの角度をなして傾斜する、ことを特徴とするHMEデバイス。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか一項記載のHMEデバイスにおいて、前記HME素子(114)の両側の端面(115及び116)各々は、浅く窪んだ円錐状形状を形成する、ことを特徴とするHMEデバイス。