(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101703
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】プーリング及び分割アプローチを適用することによって生物の集団内の突然変異体をスクリーニングする方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/01 20060101AFI20220629BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220629BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALN20220629BHJP
C12Q 1/6895 20180101ALN20220629BHJP
【FI】
C12N15/01 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/6895 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076471
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2018569004の分割
【原出願日】2017-06-23
(31)【優先権主張番号】PA201670485
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.Nonidet
(71)【出願人】
【識別番号】506306547
【氏名又は名称】カールスバーグ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】トニ ヴェント
(72)【発明者】
【氏名】オーレ オルセン
(72)【発明者】
【氏名】セーレン クヌードセン
(72)【発明者】
【氏名】ハンネ セシリエ トムセン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ストリエベック
(72)【発明者】
【氏名】ビルギッテ スカッドハウ
(72)【発明者】
【氏名】マグナス ウォルファルト ラスムーセン
(72)【発明者】
【氏名】マッシミリアーノ カルチョーフィ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA17
4B063QQ02
4B063QQ05
4B063QQ07
4B063QQ09
4B063QQ12
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】1つ以上の対象のヌクレオチド(NOI)中に、特定の、所定の突然変異を有する生物の調製、選択及び/または繁殖を拡大して取り組むことを実際に可能にする、高度に加速された方法及びプロセスを提供する。
【解決手段】本発明は、1つ以上のNOI中に所定の突然変異を有する生物を同定するための方法を提供する。所定の突然変異は、任意の望ましい突然変異であり得る。これにより、本発明は、特定の突然変異を有する生物の同定を可能にする非GM法を提供する。これは、PCR技術、特にデジタルPCRの発明的利用のために可能になる。したがって、本発明は、突然変異生物の巨大な収集物の解析を可能にする論理的で独創的なシステムと組み合わせてスクリーニングするための突然変異DNAコンテキストに対処する新規なアプローチを開示する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の対象のヌクレオチド(NOI)中に、特定の、所定の突然変異(複数可)を有する生物の調製、選択及び/または繁殖を拡大して取り組むことを実際に可能にする、高度に加速された方法及びプロセスを提供する。本発明の方法は、例えば、1つ以上のNOI(複数可)中に、特定の、所定の突然変異(複数可)を有する植物の調製のテンポ及び能力を向上させるために有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝的に改変された(GM)生物(GMO)を生成するための遺伝的方法は広く利用可能である。しかしながら、多くの目的、特に食品飲料産業では、GMOの使用はしばしば望ましくない。これにより、オオムギなどの穀物を含む作物の伝統的な育種のための改善された、より正確な方法を提供し、単に新製品の開発及び製造における適用のためのより良い、特注の原材料を得るための永続的な必要性が残っている。微生物及び動物を含む他の生物に関しても、同様の欠点が存在する。残念なことに、ゲノムの所定のヌクレオチドにおける突然変異の発見に対処するための伝統的な育種アプローチの方法は厄介にも欠如したままであり、これにより、原料開発の進展が制限される。
【0003】
例えば、CRISPR-Cas9手法(Jiangら、2016)によって、ゲノムの編集及び生物のゲノム中の標的部位での二本鎖DNA切断の導入を可能にする方法が利用可能である。CRISPR-Cas9手法に関連する、2つの異なる重大な問題が残っている。
-第1に、CRISPR-Cas9技術はGMベースとみなされ得ることである。これにより、ゲノムの標的部位における二本鎖DNA切断の導入を含む、ゲノム編集について新しい遺伝的ツールを規制することを当局がどのように規制しようとしているかについて、基本的な立法情報が欠落している。
-第2に、CRISPR-Cas9技術を用いたオフターゲット切断に関係する主要な複雑性があることである。
【0004】
自然界における生殖系列突然変異、例えば、生物における表現型の結果につながるものは、遺伝的形質の変化の主な原因と、分子レベルでの有利な効果または破壊的効果による進化的変化の最終的な原因の両方を表す。突然変異は、
-複製エラーと;
-間違って修復されたか修復されていないDNA損傷と;
-化学物質、紫外線、電離放射線などの外因性要因によって引き起こされるDNA損傷と;
-内因性要因、例えば、反応性酸素種、アルデヒド、または有糸分裂エラーと;
-DNA修復またはゲノム編集に関与する酵素と;
-DNA断片を挿入するウイルス及び内因性レトロトランスポゾンと、を含む多くの要因に応答して生じる。
【0005】
加えて、突然変異誘発物質への曝露は、多数の体細胞遺伝子突然変異を誘発する可能性があり、その大部分は顕著な選択的利点がないが、一部は主要な細胞機能を変化させる可能性があるというのが現在の理解である。さらに、いくつかのゲノム関連特性は、非変異的な、例えば、細胞の微小環境における後成的な変化及び変更である可能性が高い。
【0006】
従来の作物の育種には、ランダム突然変異誘発に続いて所望の形質をスクリーニングすることが含まれていた。残念なことに、所定の遺伝子変化、すなわち、例えば、GMベースの方法を採用していない穀物などの突然変異誘発された生物の遺伝子または調節要素における特定のヌクレオチド置換を同定するための効率的なスクリーニング法が欠如している。実際、GM植物は、形質開発そのものに対する直接的なアプローチやより広範な科学コミュニティによる採用に関して、10年より長い長期にわたる競争上の優位性を経験してきた。しかしながら、上記のように、GMベースの方法はあまり好ましくない可能性がある。
【0007】
最近開発されたゲノム配列決定技術の結果は、形質の遺伝的構造(及び突然変異誘発の応答に対応する変化)の理解に革命をもたらした。例えば、大型ハイスループットgDNA配列決定の取り組みに支えられた全ゲノム配列決定や新規なコンピューター解析法は、いくつかの基本的な生物学的疑問に答えること、及び、例えば、単子葉穀物のオオムギを使用して突然変異体の特徴付けを高速化するために役立つことが大きく期待されている。
【0008】
真核生物では、いくつかの突然変異プロセスがゲノム分布にかなりの変動を示すようである(Pleasanceら、2010;Schuster-Bochler及びLehner、2012)。点突然変異の数は、ゲノムに沿って変化し、典型的には、低い遺伝子発現レベル、抑制されたクロマチン及び遅い複製時間の配列領域においてより高い。この変異のいくつかは、ミスマッチ修復機序の閉鎖クロマチン領域への減少された接近によって駆動され得る。
【0009】
上記で提供された背景情報を考慮すると、穀物研究の分野の当業者であれば、解析的な進歩は、具体的には、深い分子生物学に基づく理解と新しい特性を持つ植物の産業応用との間の研究開発段階における、新しいフロンティアの閾値に関するオオムギ及び穀物の研究を行ったことを知るであろう。そうは言ったものの、突然変異体同定のためのゲノム配列決定技術の進歩にもかかわらず、そのような方法は依然として時間がかかり、論理的に困難であり、特定の所定の突然変異の同定にはほとんど役に立たない。
【0010】
所定の突然変異を有する植物の同定に関してだけでなく、改善を利用するために、2つの追加の特性が注目されている。
-穀物における生殖系列の範囲と体細胞突然変異率の限界決定。
-現在のアプローチは、状況に依存しないgDNA配列解析に基づくgDNA断片への突然変異体発見の絞り込みに焦点を当てている[例えば、5,000~10,000の突然変異体、及び突然変異体と野生型由来のgDNA断片との融点差でスクリーニングすることに限定されているTilling方法論(Botticellaら、2011)]。
今まで、非GM法を用いて所定の複雑な突然変異を見出すことは非現実的であると考えられていた。また、このラインに沿って、対象の特定のヌクレオチド置換を強固に同定するためにどの試料サイズで作業すべきかについてのヒントはなかった。これは、今、本刊行物で提供される指針に従うことによって可能になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jiang,F.et al.(2016).Structues of a CRISPR-Cas9 R-loop complex primed for DNA 5 cleavage.Science 351:867-871.
【非特許文献2】Pleasance,et al.(2010).A comprehensive catalogue of somatic mutations from a human cancer genome.Nature 463:191-196.
【非特許文献3】Schuster-Bochler,B.and Lehner,B.(2012).Chromatin organization is a major influence on regional mutation rates in human cancer cells.Nature 488:504-507.
【非特許文献4】Botticella,E.,Sestili,F.,Hernandez-Lopez,A.,Phillips,A.,& Lafiandra,D.(2011).High resolution melting analysis for the detection of EMS induced mutations in wheat Sbella genes.BMC Plant Biology 11:156.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、1つ以上の標的配列(複数可)中の対象のヌクレオチドに所定の突然変異(複数可)を有する、個々の、伝統的に開発された生物を見出す方法を開示する。該突然変異は、特異的で有用な形質を付与する遺伝子における突然変異であり得る。
【0013】
特に、突然変異構造に関する驚くべき新規の洞察に基づいて、本発明は顕著であるが比較的単純で新しいゲノムワイドな、突然変異発見における適用のための方法を提供する。本発明は、1つ以上のNOI(複数可)中に所定の突然変異を有する生物を同定するための方法を提供する。所定の突然変異は、任意の望ましい突然変異であり得る。これにより、本発明は、特定の突然変異を有する生物の同定を可能にする非GM法を提供する。これは、PCR技術、特にデジタルPCRの発明的利用のために可能になる。したがって、本発明は、突然変異生物の巨大な収集物の解析を可能にする論理的で独創的なシステムと組み合わせてスクリーニングするための突然変異DNAコンテキストに対処する新規なアプローチを開示する。
【0014】
新規の時間短縮及び処理最小化アクションも稀な突然変異、例えば、オオムギのものを含む上記の穀物核の閉鎖クロマチン領域に局在すると予想されるものを見出すという困難な課題に到達するために、開示される。完全なゲノム配列へのアクセスは、本方法のためのプライマー及び/またはプローブの設計のために利用され得る。これにより、完全なオオムギゲノム配列(Ensembl Plantsのオオムギゲノムアセンブリ、バージョン082214v1)は、特定の遺伝子のためのプライマー及びプローブの設計に利用することができ、所定の突然変異を有する植物を発見する速度を高めるのに非常に適している。
【0015】
一実施形態では、本発明は、伝統的または従来の育種の方法により、例えば、遺伝子におけるヌクレオチド置換をもたらす突然変異または穀物形質に関連する遺伝子である所定の突然変異を検索するための方法を提供する。開示された方法を用いて、内因性突然変異誘発及び誘導突然変異誘発に関係する、根底にある分子機構を解明することを助ける方法が提示される。
【0016】
本発明は、添付の特許請求の範囲において定義される。
【0017】
本発明は、標的配列のNOI(複数可)中に1つ以上の所定の突然変異(複数可)を保有する定義済みの種の生物を同定する方法を提供し、該方法は、
a)複数の遺伝子型を表す、該種、またはその生殖部分の生物のプールを提供する工程と;
b)該プールを生物の1つ以上のサブプールまたはその生殖部分に分割する工程と;
c)該サブプール内の各遺伝子型の生物の繁殖の可能性を維持しながら、サブプール内の
各遺伝子型からのgDNAをそれぞれ含むgDNA試料を調製する工程と;
d)それぞれが1つのサブプールからのgDNA試料を含む複数のPCR増幅を実施し、これにより標的配列を増幅させる工程であって、各PCR増幅が、それぞれ該gDNA試料の一部、標的配列に隣接するプライマーの1つのセット、及びPCR試薬を含む複数の区画化されたPCR増幅を含む、工程と;
e)対象のNOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む1つ以上の標的配列を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより該突然変異を含むサブプール(複数可)を同定する工程と;
f)該同定されたサブプールの生物、またはその生殖部分を、二次サブプールに分割する工程と;
g)該二次サブプール内の各遺伝子型の生物の繁殖の可能性を維持しながら、それぞれが二次サブプール内の各遺伝子型からのgDNAを含むgDNA試料を調製する工程と;
h)それぞれが1つの二次サブプールからのgDNA試料、標的配列に隣接するプライマーの1つのセット、及びPCR試薬を含む、複数のPCR増幅を実施し、これにより標的配列を増幅する工程と;
i)NOI(複数可)中に所定の突然変異(複数可)を含む標的配列を含むPCR増幅産物を検出し、これにより該突然変異を含む工程h)下で二次サブプールを同定する工程と;
j)該突然変異(複数可)を保有する該二次サブプール内の生物、またはその生殖部分(複数可)を同定する工程と、を含む。
【0018】
本発明はまた、本発明の方法によって同定された生物を提供する。例えば、本発明は、グルタミンシンターゼをコードするHvGS1-3遺伝子に突然変異を有するオオムギ植物を提供し、該変異遺伝子は、低減された活性を有する変異HvGS1-3タンパク質をコードする。
【0019】
本発明は、逐次的な方法で、穀物突然変異体穀粒の収集物における特定の所定のヌクレオチド突然変異の同定を可能にする5つのワークストリーム(WS)で本明細書にさらに図示される。WS1の詳細は、伝統的に誘発された穀物植物の収集を確立するための手順を開示し;WS2の詳細は、複雑な穀物試料の構成方法を詳述し;WS3は、突然変異体を含む穀物試料を同定する方法を強調し;WS4関連の解析は、個々の変異した穀物を見つける方法を説明しており;WS5は、2つの異なるデジタルPCR器具をどのように組み合わせて使用すれば、穀粒に由来する非常に多数のgDNA試料のスクリーニングが容易になるかに焦点を当てている。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
標的配列において、対象のヌクレオチド(複数可)[NOI(複数可)]中に1つ以上の所定の突然変異(複数可)を保有している定義済みの種の生物の同定方法であって、
a)複数の遺伝子型を表す、前記種の生物、またはその生殖部分のプールを提供する工程と、
b)前記プールを、生物、またはその生殖部分の1つ以上のサブプールに分割する工程と、
c)前記サブプール内の各遺伝子型の生物の繁殖のための潜在能力を維持しながら、サブプール内の各遺伝子型から、それぞれゲノムDNA(gDNA)を含む、gDNA試料を調製する工程と、
d)それぞれが1つのサブプールからの前記gDNA試料を含む、複数のPCR増幅を実施し、これにより前記標的配列(複数可)を増幅させる工程であって、各PCR増幅が、それぞれが前記gDNA試料の一部、各セットが標的配列に隣接するプライマーの1つ以上のセット(複数可)及びPCR試薬を含む複数の区画化PCR増幅を含む、前記工程と、
e)前記NOI(複数可)において前記突然変異(複数可)を含む1つ以上の標的配列(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより、前記突然変異(複数可)を含むサブプール(複数可)を同定する工程と、
f)前記同定したサブプールの前記生物、またはその生殖部分を、二次サブプールに分割する工程と、
g)二次サブプール内の各遺伝子型の生物の繁殖のための潜在能力を維持しながら、それぞれが前記二次サブプール内の各遺伝子型からのgDNAを含むgDNA試料を調製する工程と、
h)それぞれが1つの二次サブプールからの前記gDNA試料、各セットが標的配列に隣接するプライマーの1つ以上のセット(複数可)及びPCR試薬を含む複数のPCR増幅を実施し、これにより前記標的配列(複数可)を増幅する工程と、
i)前記NOI(複数可)において前記所定の突然変異(複数可)を含む1つ以上の標的配列(複数可)を含むPCR増幅産物を検出し、これにより前記突然変異(複数可)を含む工程i)下にある二次サブプールを同定する工程と、
j)前記突然変異(複数可)を保有している前記二次サブプール内の生物またはその生殖部分を同定する工程と、を含む、前記方法。
(項目2)
工程d)の前記PCR増幅(複数可)が、以下の:
-前記gDNA試料、各セットが標的配列に隣接するプライマーの1つ以上のセット(複数可)及びPCR試薬を含む1つ以上のPCR増幅を準備する工程と、
-前記PCR増幅(複数可)を複数の空間的に分離された区画に区分化する工程と、
-PCR増幅(複数可)を実施する工程と、
-PCR増幅産物を検出する工程と、を含む方法によって実施される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記空間的に分離された区画が、水-油エマルジョン液滴などの液滴である、項目2に記載の方法。
(項目4)
各液滴が、0.1~10nLの範囲の平均容積を有する、項目3に記載の方法。
(項目5)
各PCRが、1000~100,000個の範囲の空間的に分離された区画に区画化される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記PCR試薬が、1つ以上の突然変異検出プローブを含み、各突然変異検出プローブ(複数可)が、検出可能な手段に任意に連結したオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドが、前記NOIの所定の突然変異を含む標的配列に同一であるか、または相補的である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記PCR試薬が、1つ以上の参照検出プローブ(複数可)を含み、各参照検出プローブ(複数可)が、検出可能な手段に任意に連結したオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドが、参照NOIを含む標的配列に同一であるか、または相補的である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記突然変異体検出プローブ(複数可)が、フルオロフォア及びクエンチャーに連結されており、前記参照検出プローブが、異なるフルオロフォア及びクエンチャーに連結されている、項目5及び6のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記PCR試薬が、前記参照検出プローブ(複数可)を超えて、少なくとも2倍過剰の前記突然変異体検出プローブ(複数可)を含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記生物のプールが、前記種の前記生物、またはその生殖部分を、ランダム突然変異誘発にかけることによって調製される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記生物プールが、異なる遺伝子型を有する、少なくとも10,000、好ましくは少なくとも100,000、さらにより好ましくは少なくとも500,000の生物、またはその生殖部分を含む、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記方法が、前記プール内の生物、またはその生殖部分の複製の工程を含み、前記生殖の工程が、前記生物をサブプールに分割する工程b)と同時に、またはそれに続いて実施されてもよい、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記種が、植物であり、前記方法の工程a)及びb)が、
-植物の複数の種子を提供する工程と、
-前記種子をランダム突然変異誘発にかけて、これにより、M0世代の種子を得る工程と、
-前記M0世代の種子を成熟植物に生育させて、前記成熟植物から種子を得る工程であって、前記種子がM1世代の種子である、前記工程と、
-任意に、先の工程をX回繰り返し、M(1+X)世代の種子を含む植物を得る工程と、-前記成熟植物からM1世代またはM(1+X)のいずれかの種子を得て、これにより種子のプールを得る工程と、
-様々な工程の前記プールをサブプールに分割する工程であって、所与の成熟植物からの全ての種子が、同じサブプール中に配置される、前記工程と、を含む、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
少なくとも100,000個の、例えば少なくとも500,000個の種子が提供される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記種が、単細胞生物であり、前記方法の工程a)及びb)が、
-複数の単細胞生物を提供する工程と、
-前記生物をランダム突然変異誘発にかける工程と、
-前記突然変異誘発された生物をサブプールに分割する工程と、
-各サブプールを複製の工程にかける工程と、を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
1つ以上のサブプール(複数可)が、それぞれが少なくとも10個、好ましくは少なくとも90個の二次サブプールに分けられた状態で、前記突然変異を含む、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記種が、単細胞種であり、工程f)が、以下の:
-1つまたはいくつかのNOI(複数可)において前記突然変異(複数可)を含むサブプールを提供する工程と、
-前記サブプールの前記生物の一部または全てをクローン方式で複製して、クローン培養を得る工程と、
-複数の前記クローン培養からの生物の分画を組み合わせて、二次サブプールを得る工程と、を含む、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
各二次サブプールが、10~100個のクローン培養の範囲の分画を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記種が、植物であり、工程f)及びg)が、以下の:
-植物の複数の種子を含むサブプールを提供する工程であって、前記サブプールが、前記NOI(複数可)の1つまたはいくつかの突然変異(複数可)を含む、前記工程と、
-前記サブプールの前記種子を、それぞれが1~100個の範囲の種子を含む二次サブプールに分割する工程と、
-植物に生育するのに十分に完全な状態で前記種子を保つ方法で、前記二次サブプールの各種子から試料を得て、各二次サブプールの全ての種子からの全ての試料を組み合わせる工程と、
-gDNA試料を前記組み合わせた試料から調製する工程と、を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記試料が、前記種子に穴をあけて、その後得られた細粉を収集することによって得られる、項目19に記載の方法。
(項目21)
工程h)の前記PCR増幅(複数可)が、複数の区画化PCR増幅を含む、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
工程h)の前記PCR増幅(複数可)が、項目2~5のいずれか一項に定義されたものである、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記種が、単細胞種であり、前記生物を同定する工程j)が、
-前記NOIにおいて前記突然変異を含む二次サブプールを提供する工程と、
-前記サブプールの前記生物の一部または全てを、クローン方式で複製する工程と、
-どのクローン(複数可)が前記NOIにおいて前記突然変異を含む生物を含むかを決定する工程と、を含む、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記種が植物であり、前記生物を同定する工程j)が、
-前記NOIにおいて前記突然変異を含む、生物、またはその生殖部分を含む二次サブプールを提供する工程と、
-前記二次サブプール内の全ての種子を栽培して発芽を可能にし、任意に各種子から植物を発育させる工程と、
-各発芽した種子から試料を得る工程と、
-前記試料を、前記NOIにおける前記突然変異の存在について試験し、これにより、前記NOIにおいて前記突然変異を保有する植物を同定する工程と、
-任意に前記植物を成熟まで生育させる工程と、を含む、項目1~14及び19~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記方法が、前記NOI(複数可)において1つ以上の突然変異(複数可)を含むスーパープールを同定する工程をさらに含み、前記スーパープールが、サブプールの一群である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記方法が、工程c)の後に実施される以下の:
-各サブプールからの各gDNA試料の分画を得る工程と、
-複数の分画をスーパープール中に組み合わせて、これにより、複数のサブプールからのgDNA試料を含むgDNAスーパープールを得る工程であって、各サブプールからのgDNAが、1つのスーパープール中にのみ存在する、前記工程と、
-それぞれがgDNA試料のスーパープールを含む複数のPCR増幅を実施して、これにより前記標的配列(複数可)を増幅する工程であって、各PCR増幅が、それぞれが前記gDNA試料の一部、各セットが標的配列に隣接するプライマーの1つ以上のセット(複数可)及びPCR試薬を含む複数の区画化PCR増幅を含む、前記工程と、
-前記NOI(複数可)における前記突然変異(複数可)を含む1つ以上の標的配列(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより、前記突然変異を含むスーパープール(複数可)を同定する工程と、をさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記方法が、前記区画化PCRを実施する前に実施される前記gDNAスーパープールの富化の工程をさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記富化の工程が、gDNAスーパープールでPCR増幅を実施することを含み、各PCR増幅が、前記標的配列に隣接するプライマーのセット、ブロッキングプローブ及びPCR試薬を含み、前記ブロッキングプローブが、前記参照NOIを含む前記標的配列の増幅を阻害するように設計されている、項目27に記載の方法。
(項目29)
PCR増幅を実施する工程d)が、前記突然変異(複数可)のうちの1つを含むサブプール(複数可)からのgDNAの試料でのみ実施される、項目25~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
5~100個の範囲のスーパープールが調製される、項目25~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
gDNA試料のスーパープールを含む前記PCR増幅(複数可)が、以下の:
-前記gDNA試料、各セットが標的配列に隣接するプライマー(複数可)の1つ以上のセット(複数可)及びPCR試薬を含むPCR増幅を準備する工程と、
-前記PCR増幅(複数可)を複数の空間的に分離された区画に区分化する工程であって、各区画が、0.1~10pLの範囲の平均容積を有する、前記工程と、
-PCR増幅を実施する工程と、
-PCR増幅産物を検出する工程と、を含む方法によって実施される、項目26~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
各PCRが、空間的に分離された区画などの少なくとも1,000,000個の区画に区画化される、項目25~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記空間的に分離された区画が、水-油エマルジョン液滴などの液滴である、項目31~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記種が、単細胞生物、例えば酵母である、項目1~12、15~18、21~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記種が、植物、例えば顕花植物である、項目1~14、14、17~20、及び23~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記種が、穀物、例えばオオムギである、項目1~12、16、19~22、及び24~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記突然変異が、単一ヌクレオチドの置換である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記方法が、2つ以上の所定の突然変異の同定する方法である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記PCR試薬が、各所定の突然変異に特異的な、1つの突然変異体検出プローブを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記方法が、標的配列における1つの所定の突然変異を同定する方法であり、前記方法が、前記標的配列に隣接するプライマーの1つのセットのみを使用する、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記PCR試薬が、1つのみの突然変異検出プローブを含む、項目40に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本出願の全体的な実験概念の例を図示する。
【
図1B】本出願の全体的な実験概念の例を図示する。
【
図1C】本出願の全体的な実験概念の例を図示する。
【
図1D】本出願の全体的な実験概念の例を図示する。
【
図2A】
図2は、植物種オオムギを例として使用して、本出願の全体的な実験概念の例を図示する。Aは、変異されたオオムギ穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS1)の繁殖に関し;Bは、変異された穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS2)の整列したライブラリーを作製する態様を示し;Cは、穀粒分画が個々の対象の穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS3)を含有するかどうかを決定する方法に関する要約を提供し;Dは、特定の突然変異を有する穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS4)をどのようにして穀粒混合物を有する試料において同定するかに焦点を当てており;Eは、組み合わされたgDNA(本発明の詳細な説明において説明されるWS5)の試料における変異したDNAの検出に関与するワークフローの図示を提供する。
【
図2B】
図2は、植物種オオムギを例として使用して、本出願の全体的な実験概念の例を図示する。Aは、変異されたオオムギ穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS1)の繁殖に関し;Bは、変異された穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS2)の整列したライブラリーを作製する態様を示し;Cは、穀粒分画が個々の対象の穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS3)を含有するかどうかを決定する方法に関する要約を提供し;Dは、特定の突然変異を有する穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS4)をどのようにして穀粒混合物を有する試料において同定するかに焦点を当てており;Eは、組み合わされたgDNA(本発明の詳細な説明において説明されるWS5)の試料における変異したDNAの検出に関与するワークフローの図示を提供する。
【
図2C】
図2は、植物種オオムギを例として使用して、本出願の全体的な実験概念の例を図示する。Aは、変異されたオオムギ穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS1)の繁殖に関し;Bは、変異された穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS2)の整列したライブラリーを作製する態様を示し;Cは、穀粒分画が個々の対象の穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS3)を含有するかどうかを決定する方法に関する要約を提供し;Dは、特定の突然変異を有する穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS4)をどのようにして穀粒混合物を有する試料において同定するかに焦点を当てており;Eは、組み合わされたgDNA(本発明の詳細な説明において説明されるWS5)の試料における変異したDNAの検出に関与するワークフローの図示を提供する。
【
図2D】
図2は、植物種オオムギを例として使用して、本出願の全体的な実験概念の例を図示する。Aは、変異されたオオムギ穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS1)の繁殖に関し;Bは、変異された穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS2)の整列したライブラリーを作製する態様を示し;Cは、穀粒分画が個々の対象の穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS3)を含有するかどうかを決定する方法に関する要約を提供し;Dは、特定の突然変異を有する穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS4)をどのようにして穀粒混合物を有する試料において同定するかに焦点を当てており;Eは、組み合わされたgDNA(本発明の詳細な説明において説明されるWS5)の試料における変異したDNAの検出に関与するワークフローの図示を提供する。
【
図2E】
図2は、植物種オオムギを例として使用して、本出願の全体的な実験概念の例を図示する。Aは、変異されたオオムギ穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS1)の繁殖に関し;Bは、変異された穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS2)の整列したライブラリーを作製する態様を示し;Cは、穀粒分画が個々の対象の穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS3)を含有するかどうかを決定する方法に関する要約を提供し;Dは、特定の突然変異を有する穀粒(本発明の詳細な説明において説明されるようなWS4)をどのようにして穀粒混合物を有する試料において同定するかに焦点を当てており;Eは、組み合わされたgDNA(本発明の詳細な説明において説明されるWS5)の試料における変異したDNAの検出に関与するワークフローの図示を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
「対立遺伝子」という用語は、遺伝子の特定のバージョンまたは状態を指す。本明細書で使用される場合、「変異対立遺伝子」は、NOI(複数可)中に1つ以上の所定の突然変異(複数可)を有する遺伝子を指す。突然変異が遺伝子全体の欠失であるとき、変異対立遺伝子は該遺伝子を欠く対立遺伝子であり得る。
【0022】
数値に関連して本明細書で使用される場合、「およそ」という用語は、±10%、好ましくは±5%、例えば±1%を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ブロッキングプローブ」という用語は、DNAポリメラーゼによって3’末端を伸長させることができないオリゴヌクレオチドを指す。ブロッキングプローブは、一般に、ブロッキング剤に結合された参照NOIを含む、標的配列と同一または相補的なオリゴヌクレオチドであり、DNAポリメラーゼによるブロッキングプローブの伸長を阻害する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「遺伝子型」という用語は、遺伝子の特定の1つのセットを含む生物を指す。これにより、同一のゲノムを含む2つの生物は同じ遺伝子型のものである。特定の遺伝子に関係する生物の遺伝子型は、該生物によって保有される対立遺伝子によって決定される。二倍体生物において、所与の遺伝子の遺伝子型は、AA(ホモ接合型、優性型)またはAa(ヘテロ型)あるいはaa(ホモ接合性、劣性型)であり得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「突然変異体検出プローブ」という用語は、検出可能な手段に任意に結合されたオリゴヌクレオチドを指し、ここで、オリゴヌクレオチドは、NOIの所定の突然変異を含み、標的配列と同一であるか、または相補的である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「PCR」という用語は、ポリメラーゼ連鎖反応を指す。PCRは、核酸の増幅のための反応である。本方法は、熱サイクルに依存し、該DNAの逐次的な融解及び酵素的な複製を得るための反応の加熱及び冷却を繰り返すサイクルからなる。第1の工程では、DNA二重螺旋を形成する2本鎖は、DNA融解としても知られるプロセスで、高温で物理的に分離される。第2の工程では、温度を下げてDNAの酵素的複製を可能にする。PCRはまた、プライマーのアニーリングを増強するため及び/または複製のための温度(複数可)を最適化するために、追加の温度でのインキュベーションを伴い得る。PCRにおいて、温度は、概して、様々な温度の間で、多数のサイクルにわたって循環する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「PCR試薬」という用語は、試料及びプライマーの1つのセットに加えてPCRに添加される試薬を指す。PCR試薬は、少なくともヌクレオチド及び核酸ポリメラーゼを含む。加えて、PCR試薬は、塩(複数可)及び緩衝液(複数可)などの他の化合物を含み得る。
【0028】
「ddPCR」という用語は、液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応を指す。ddPCRでは、1回以上のPCR増幅が行われ、ここでは、標的配列のPCR増幅が各個々の液滴で起こり得るように、各反応は複数の水-油エマルジョン液滴に分離される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「生殖」という用語は、有性生殖及び無性生殖の両方を指す。これにより、生殖は、クローン様式(「無性生殖」としても知られる)で生物を繁殖させることができる。生殖はまた、生物の子孫を生成することができ、ここでは、子孫は親生物からの対立遺伝子(複数可)を含む。これにより、変異対立遺伝子を含む生物の生殖は、該生物の子孫を生成することを指すことができ、ここで、子孫は変異対立遺伝子を含む。好ましくは、変異対立遺伝子はNOI(複数可)中の1つ以上の突然変異(複数可)を有する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「生物の生殖部分」という用語は、適切な条件下で生物全体に成長し得る生物の任意の部分を指す。例として、種が植物である本発明の実施形態では、該生物の生殖部分は、例えば、該植物の種子、穀粒または胚子であり得る。種が単細胞生物である本発明の実施形態では、生殖部分は生物全体、すなわち、1つの細胞である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「標的配列に隣接するプライマーのセット」という用語は、1つのプライマーが標的配列の5’末端と同一の配列(「フォワードプライマー」とも称される)を含み、1つのプライマーが標的配列の3’末端に相補的な配列(「リバースプライマー」としても称される)を含むように、標的配列に隣接する2つのプライマーの1つのセットを指す。「プライマーのセット」は、該標的配列の増幅を可能にする条件下で、標的配列及びPCR試薬を含む核酸と共にPCRに添加されたとき、標的配列を増幅することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「標的配列」という用語は、突然変異を生成または同定することが望ましい任意の核酸配列を指す。さらに、標的配列は、好ましくは、標的配列に隣接するプライマーを用いてPCR技術によって増幅することができる核酸配列である。加えて、標的配列は、概して、1つ以上のNOI(複数可)を含む。本発明は、該NOIに突然変異を保有する生物(複数可)を産生及び/または同定するための方法を提供する。標的配列は、例えば、特定の形質に関連する核酸配列であってもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「参照検出プローブ」という用語は、検出可能な手段に任意に結合されたオリゴヌクレオチドを指し、ここで、オリゴヌクレオチドは、参照NOIを含む標的配列と同一または相補的である。一般に、参照NOIを含む標的配列は、突然変異誘発の前の標的配列に対応する。「参照検出プローブ」はまた、「野生型プローブ」とも称されてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ワークストリーム」(WS)という用語は、方法の1つ以上の一連の工程に関する。
【0035】
生物の同定方法
本発明は、定義済みの種の生物、例えば、標的配列中のNOI中に突然変異[例えば、以下の「対象のヌクレオチド(複数可)」のセクションに記載されている突然変異のいずれか]を保有する、「種」のセクションで以下に記載される種のいずれかを同定するための方法に関し、該方法は、
a.複数の遺伝子型を表す、特定の定義済みの種の生物、またはその生殖部分のプール、例えば、以下の「生物のプール」のセクションで本明細書に記載されるプールのうちのいずれかを提供する工程と;
b.該プールを、生物またはその生殖部分の1つ以上のサブプール、例えば、以下の「プールのサブプールへの分割」セクションにおいて本明細書に記載されるサブプールに分割する工程と;
c.該サブプール内の各遺伝子型の生物の繁殖の可能性を維持しながら、それぞれがサブプール内の各遺伝子型からのgDNAを含む、gDNA試料を調製する工程であって、これが、例えば、以下の「DNA試料の調製」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施されてもよい、工程と;
d.それぞれが1つのサブプールからのgDNA試料を含む複数のPCR増幅を実施し、これにより標的配列を増幅させる工程であって、各PCR増幅が、それぞれ該gDNA試料の一部、標的配列に隣接するプライマーの1つのセット、及びPCR試薬を含む複数の区画化されたPCR増幅を含み、これが、例えば、以下の「複数の区画化されたPCR増幅を含むPCR増幅」のセクションにおいて本明細書に記載されるように行われてもよい、工程と;
e.NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより該突然変異を含むサブプール(複数可)を同定する工程であって、これが、例えば、以下の「PCR増幅産物(複数可)の検出」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実行されてもよい、工程と;
f.該同定されたサブプールの生物、またはその生殖部分を、二次サブプールに分割する工程であって、「サブプールの二次サブプールへの分割」のセクションにおいて記載される、工程と;
g.該二次サブプール内の各遺伝子型の生物の繁殖の可能性を維持しながら、それぞれが二次サブプール内の各遺伝子型からのゲノムDNAを含むgDNA試料を調製する工程であって、これが、例えば、「DNA試料の調製」セクションにおいて記載されるように実施されてもよい、工程と;
h.それぞれが1つの二次サブプールからのgDNA試料、標的配列に隣接するプライマーの1つのセット、及びPCR試薬を含む、複数のPCR増幅を実施し、これにより標的配列を増幅する工程であって、これが、例えば、「二次サブプールの同定」のセクションにおいて記載されるように実施されてもよい、工程と;
i.NOI(複数可)中に所定の突然変異(複数可)を含む標的配列を含むPCR増幅(複数可)を検出し、これにより該突然変異を含む二次サブプールを同定する工程であって、これが、例えば、「二次サブプールの同定」のセクションにおいて記載されるように実施されてもよい、工程と;
j.該突然変異を保有する該二次サブプール内の生物を同定する工程であって、これが、例えば、「生物の同定」のセクションに記載されるように実施されてもよい、工程と、を含む。
【0036】
工程a.は、例えば、本明細書中のWS1に記載されるように調製された生物のプールを提供することを含んでもよい。
工程b.は、例えば、本明細書のWS2に記載されるように実施されてもよい。
工程c.、d.、及びe.は、例えば、本明細書のWS3に記載されるように実施されてもよい。
工程f.、g.、h.、i.及びj.は、例えば、本明細書のWS4に記載されるように実施されてもよい。
【0037】
PCR試薬は、一般的には、少なくともヌクレオチド及び核酸ポリメラーゼを含む。加えて、PCR試薬は、好ましくは、1つ以上の検出プローブ、例えば、「PCR産物(複数可)の検出」のセクションで上述したように突然変異検出プローブ及び/または参照検出プローブもまた含み得る。
【0038】
上記に概説した工程に加えて、本発明の方法は、1つ以上の追加の工程を含み得る。本方法は、例えば、生物の該プールを、例えば、突然変異誘発によって調製する工程を含み得る。生物のプールを調製するための方法は、以下の「生物のプール」のセクションに記載される。
【0039】
本方法はまた、該生物、またはその生殖部分の1つ以上を、プール内または生物のサブプール、もしくはその生殖部分(複数可)内で生殖する工程を含み得る。該生殖工程は、単純な生物、例えば、無性的に生殖する単細胞生物の場合では、1つ以上の細胞分裂(複数可)を含み得る。より複雑な生物、例えば、有性的に生殖する生物の場合、この工程は、該生物、またはその生殖部分を、1つ以上のサイクルを通して培養することを含んでもよい。
【0040】
以下では、「生物」についてのみ言及する。しかしながら、生物の生殖部分を使用する方法にも同じ考慮が適用される。生物の培養の各段階は、元の生物と同一ではない子孫をもたらし得る。例えば、多倍数体生物のランダム突然変異誘発の後、大部分の生物は1つの対立遺伝子にのみランダム突然変異を保有し、これによりその突然変異に関して遺伝的にヘテロ接合性である。概して、子孫生物は、突然変異のない生物、突然変異のために遺伝的にヘテロ接合性の子孫生物、及び突然変異のために遺伝的にホモ接合性の子孫生物を含む。これにより、元のプールまたは生物の子孫のプール、またはその生殖部分は、元のプールと同一ではないが、一般に、元のプールに存在するNOI(複数可)中に、ヘテロ接合体及び/またはホモ接合体のいずれかで存在する任意の突然変異を少なくとも表すであろう。これにより、該子孫の少なくともいくつかは変異対立遺伝子を含むであろう。同様に、サブプール、スーパープールまたは二次サブプールの子孫は、元のサブプール、スーパープールまたは二次サブプールと同一でなくてもよいが、一般的に、少なくとも元のサブプール、スーパープールまたは二次サブプールに存在するNOI(複数可)中に任意の突然変異をヘテロ接合性またはホモ接合性の形態のいずれかで表すであろう。
【0041】
プールを1つ以上のサブプールに分割する工程b)は、生物またはその生殖部分を生殖する工程を含み得る。これは、例えば、プールをサブプールに分割することと同時に実行され得る。あるいは、これは、プールをサブプールに分割した後に実行してもよい。これにより、本発明の方法は、工程b)に続いて、該サブプール内で生物またはその生殖部分を生殖する工程を含み得る。
【0042】
同様に、本発明の方法は、工程f)に続いて、該二次サブプール内で生物またはその生殖部分を生殖する工程を含み得る。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態、特に、種が穀物などの植物である本発明の実施形態では、方法は、工程f)とg)との間の二次サブプールの生物またはその生殖部分の生殖工程を含まないことが好ましい場合がある。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、NOI中に突然変異を含む二次サブプールに含有される、生物またはその生殖部分の生殖工程を含む。該工程は、任意の有用な時間、例えば、上記に概説したような工程i)とj)との間で実施されてもよい。
【0044】
本方法はまた、NOI中に突然変異を含むサブプールの群を同定する工程を含み得る。該工程は、任意の有用な時間に実行することができるが、上記の方法の工程c)の後に頻繁に実行され、例えば、以下の本明細書の「スーパープール」のセクションに記載されるように実施されてもよい。
【0045】
一実施形態では、本発明の方法は、以下に記載されるように、それぞれがいくつかの個別の「工程」に分割された4~5個の個々のワークストリーム、例えば、WS1~WS5に要約することができる。WS1~WS5を含む、またはさらにはWS1~WS5からなる方法は本発明の好ましい実施形態を表すが、本発明はこれらのWSを含む方法に限定されない。例えば、本発明の方法は、WS2~WS5のみを含み、WS1を欠いてもよい。そのような方法は、例えば、
図1に図示されている。WS1~WS5を含む方法の一例が
図2にさらに図示されており、5つの部分に分割される。
-
図2Aは、種がオオムギである、本発明の実施形態におけるWS1の特定の例に関する。本図は、本明細書でWS1に詳述されるように、変異オオムギ穀粒の繁殖を図示している。
-
図2Bは、本明細書でWS2に詳述されるように、変異穀粒の整列されたライブラリーを作製する態様の例を示す(実施例1及び実施例2を参照されたい)。
-
図2Cは、本明細書でWS3に詳述されているように、「穀粒総」分画にNOI中に突然変異に特徴づけられる穀粒(複数可)が含まれているかどうかを決定する方法の要約の例を提供する。(実施例3~実施例7を参照されたい)
-
図2Dは、WS4の例、すなわち、本明細書で工程4に詳述されるように、
図2Cを参照されたいが、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含有する穀粒を含有することが以前に示された該分画を有する「穀物総」分画中のどの穀粒(複数可)がNOI(複数可)中に突然変異を有するかを決定する手順を強調する(実施例8~実施例15を参照されたい)。
-
図2Eは、区画化PCR技術(例えば、ddPCR)をNOI中にそれに対応する突然変異を含む、gDNAのそれらの「スーパープール」、すなわち、gDNA試料の組み合わせアリコート(実施例17)を決定するために利用する、WS5における手順の概要の例を表す。
【0046】
対象のヌクレオチド(NOI)
本発明は、対象の1つ以上のヌクレオチドにおいて突然変異(複数可)を保有する1つ以上の生物(複数可)を同定するための方法に関する。特に、本方法は、NOI(複数可)中に1つ以上の所定の突然変異(複数可)を保有する生物(複数可)の同定を可能にする。したがって、本方法は、非GM法になお依拠しながら、特定の突然変異を有する生物の同定を可能にする。
【0047】
突然変異は、任意の突然変異であってもよく、ここで、該1つ以上の対象のNOI(複数可)は、参照配列中の対応するNOI(複数可)とは異なる。しばしば、参照配列は野生型配列である。しかしながら、参照配列は任意の他の配列であってもよい。
【0048】
突然変異は、任意の種類の突然変異、例えば、欠失、挿入、置換または上記の混合であり得る。
【0049】
NOI(複数可)は、単一のヌクレオチドであってもいくつかのヌクレオチドであってもよく、これによりNOI(複数可)は少なくとも1個、1個などの、例えば2個、3個などの、例えば4個、5個などの、例えば6個、例えば7個、例えば8個、9個などの、例えば10個、10~20個などの、例えば20~50個、50個超などのヌクレオチドからなっていてもよい。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、NOIは単一ヌクレオチドからなり、この場合、突然変異は、例えば、単一のヌクレオチドの置換であり得る。そのような突然変異は点突然変異としても知られている。
【0051】
本発明の他の態様では、突然変異は該NOIの欠失であり得る。他の実施形態では、突然変異は、対象の2つのヌクレオチド間の1つ以上のヌクレオチドの挿入であり得る。
【0052】
一実施形態では、参照配列は野生型配列、すなわち、最も頻繁な自然発生の配列であり、これにより、突然変異は該野生型配列と比較した突然変異である。
【0053】
一実施形態では、突然変異は、該種内の望ましい形質と関連し得る。種の種類に依存して、望ましい特性は多数の異なる形質から選択することができる。種が栽培植物である本発明の実施形態では、該形質は、例えば、生存率の向上、様々な環境因子に対する耐性の向上、生育の向上またはより高い収量であり得る。種が食品、飼料または飲料の製造のために使用される植物である本発明の実施形態では、形質は、栄養価の向上、風味特性の向上、貯蔵特性の向上、または該食品、飼料または飲料の製造のための有用性の向上にも関係し得る。
【0054】
NOIは、任意の核酸中の任意の標的配列に位置し得る。しばしば、標的配列はgDNA配列の一部である。より好ましくは、標的配列はgDNA配列の一部である。これにより、突然変異は該生物のgDNAの突然変異であり得る。NOIは、コード領域及び非コード領域の両方において、gDNAの任意の部分に位置し得る。しばしば、NOIは、遺伝子の任意の部分、例えば、コード領域(例えば、エキソン内)、イントロンまたは遺伝子の調節領域、例えば、プロモーター、ターミネーター及び/またはイントロンに位置し得る。
【0055】
種
本発明の方法は、所定の種の生物の同定を含む。種は、多細胞生物及び単細胞生物の両方を含む、任意の種であり得る。例えば、種は、Open Tree of Lifeに含有される種、例えば、2015年10月12日に製造されたThe Open Tree of Life参照分類バージョン2.9ドラフト12であってもよい。
【0056】
種は、細菌などの原核生物であり得る。細菌の例としては、食物の生産に使用されるもの、例えば、Acetobacter、Arthrobacter、Alactobacillus、Bacillus、Bifidobacterium、Brachybacterium、Brevibacterium、Carnobacterium、Corynebacterium;enterococcus,Gluconacetobacter、Hafnia、Halomonas、Kocuria、Lactobacillus、Lactococcus、Leuconostoc、Macrococcus、Microbacterium、Micrococcus、Pediococcus、Propionibacterium、Proteus、Pseudimonas、Psychrobacter、Staphylococcus、Streptomyces、Tetragenococcus、Weissella及びZymomonasからなる群から選択される属の細菌が挙げられる。
【0057】
種は、例えば、真菌、藻類、植物及び動物からなる群から選択される真核生物であり得る。
【0058】
一実施形態では、種は真菌からなる群から選択される。したがって、種は、単細胞生物または多細胞生物であり得る。例えば、種は、Aspergillus、Candida、Cystofilobasidium、Cyberlindnera、Debaryomyces、Fusarium、Geotrichum、Issatchenkia、Kazachstania、Kloeckera、Klyveromyces、Mucor、Neurospora、Penicillium、Pichia、Rhiozopus、Rhodosporidium、Rhodotorula、Saccharomyces、Torulaspora、Torulopsis、Thrichosporon、Verticillium、Yarrowia及びZygotorulasporaからなる群から選択される属の真菌であり得る。
【0059】
特に、種は、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces pastorianus、Saccharomyces bayanus及びSaccharomyces uvarumからなる群から選択される酵母などの酵母であり得る。対象の他の酵母には、Brettanomyces種などが挙げられる。
【0060】
本発明の1つの好ましい実施形態では、種は植物である。該植物は、緑色植物、例えば、顕花植物、針葉樹、裸子植物、シダ、クラブモス、ホーンワート、苔類、コケ及び緑藻からなる群から選択される植物であり得る。植物は、例えば、単子葉植物または双子葉植物であり得る。
【0061】
特に、植物は栽培植物であり得る。該栽培植物は、ヒトによって栽培された任意の植物、例えば、食品、飼料の供給源として、または産物の生産のための、または審美的目的のための原材料としてのものであり得る。
【0062】
本発明の1つの好ましい実施形態では、種は穀物である。本明細書で定義される場合、「穀物」は、主としてそのデンプン含有種子または穀粒のために栽培されたイネ科(Graminae)植物ファミリーのメンバーである。穀物には、限定されないが、オオムギ(Hordeum属)、コムギ(Triticum属)、コメ(Oryza属)、トウモロコシ(Zea属)、ライムギ(Secale属)、エンバク(Avena属)、モロコシ(Sorghum)及びコムギ-ライの雑種のトリティカーレが挙げられる。
【0063】
植物は、トマトを含む他の栽培植物であり得る。
【0064】
上述のように、種は、動物、例えば、ウシ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウマ、シチメンチョウ、アヒル及びウサギからなる群から選択される動物などの家畜であり得る。
【0065】
生物のプール
本発明の方法は、複数の遺伝子型を表す所与の種の生物のプールを提供することを含む。該種は、例えば、「種」のセクションで上記に記載された種のいずれかであり得る。
【0066】
これにより、生物のプールは、全てが同じ種に属するが、該種の異なる遺伝子型を表す複数の生物を含む。プールは、各遺伝子型の2つ以上の生物を含み得る。しかしながら、プールは、異なる遺伝子型の複数の生物を含まなければならない。好ましくは、プールは、異なる遺伝子型を有する、少なくとも100個、より好ましくは少なくとも1000個、さらにより好ましくは少なくとも5000個、さらにより好ましくは少なくとも10,000個、さらにより好ましくは少なくとも50,000個、さらにより好ましくは少なくとも100,000個、例えば、少なくとも1,000,000個などの少なくとも500,000個の生物、またはそれらの生殖部分を含む。
【0067】
生物のプールは、プールが理論的には、該生物の全ての遺伝子の全ての可能な突然変異を含み得るように、異なる遺伝子型を有する十分な数の生物、またはその生殖部分を含むことが好ましい。例えば、種がオオムギである本発明の実施形態では、約500,000個のランダムに突然変異誘発されたオオムギ穀粒を含むプールは理論的には(1mMのNaN3で突然変異誘発された1つの穀粒中の約10,000個の単一塩基突然変異の仮定に基づく)該オオムギの全ての遺伝子における可能な全ての突然変異を含むと考えられる。本発明の方法の効率を向上させるために、プールは、考えられる全ての突然変異を含むと理論的に予想されるよりも、異なる遺伝子型を有する、少なくとも3×などの、少なくとも2×多くの生物、またはその生殖部分を含み得る。これにより、生物のプールは、異なる遺伝子型を有する、少なくとも1,000,000個、例えば少なくとも1,500,000個などの少なくとも500,000個の生物またはその生殖部分を含み得る。これは、例えば、問題の種がオオムギである実施形態の場合であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、プールは、30,000~500,000個の範囲などの異なる遺伝子型を有する、少なくとも30,000個の生物、またはその生殖部分を含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、生物のプールは、異なる遺伝子型を有する、例えば1,000,000~100,000,000個などの、少なくとも5,000,000個の生物またはその生殖部分を含み得る。これは、例えば、生物が小さな生物、例えば、単細胞生物である、本発明の実施形態の場合であり得る。
【0070】
他の実施形態では、プールは、異なる遺伝子型を有する、100,000~500,000個の生物またはその生殖部分を含み得る。これは、例えば、生物が単細胞生物である、本発明の実施形態の場合であり得る。
【0071】
本発明の方法の1つの利点は、該方法が異なる遺伝子型の多数の生物のスクリーニングを可能にするということである。これにより、生物のプールは、異なる遺伝子型の非常に多数の生物を含み得る。さらに、本発明の方法は、任意のNOI中に所定の突然変異を有する生物を同定することを可能にし得る。任意のNOI中に突然変異を有する生物を同定することが可能であるためには、これは生物のプールが前述の多数の異なる遺伝子型などの多数の異なる遺伝子型を含むことを必要となる可能性がある。
【0072】
生物のプールは、任意の有用な方法で得ることができる。
【0073】
一実施形態では、生物のプールは、個々の生物を収集することによって得られる。これは、例えば、種子バンク(種が植物である場合)、細胞収集物(種が単細胞生物である場合)、または他の生物収集物から行うことができる。それは、任意の他の方法で、個々の生物、または該生物の試料を収集することによってもまた達成され得る。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、生物のプールは、突然変異誘発、特にランダム突然変異誘発によって調製される。これにより、生物のプールを得るために、複数の生物を突然変異誘発にかけることができる。該突然変異誘発は、特に、例えば、以下に記載されるように実施することができるランダム突然変異誘発であってもよい。
【0075】
生物が単細胞生物である本発明の実施形態では、典型的には複数の無傷の生物がランダム突然変異誘発を受ける。
【0076】
種が多細胞生物である本発明の実施形態では、該多細胞生物の生殖部分を該ランダム突然変異誘発にかけることで十分である可能性がある。そのような実施形態では、複数の生物、または生物の複数の生殖部分、もしくはそれらの混合物のいずれかを、ランダム突然変異誘発にかける。
【0077】
種が植物である本発明の実施形態では、該プールは、複数の遺伝子型を表す複数の種子を含み得る。これにより、プールは、突然変異誘発にかけられた複数の種子を含み得る。しかしながら、プールは、突然変異誘発にかけられた種子の子孫も含み得る。
【0078】
本明細書では、突然変異誘発にかけられた種子(例えば、穀粒)は、世代M0として称され得る。該種子、例えば、穀粒を播種し、成熟植物に発育させることができ、その種子(例えば、穀粒)は世代M1とみなされる。世代M1の種子を播種し、種子が世代M2などとみなされる成熟植物に成長させることができる。この原理を
図2Aに図示する。
【0079】
生物のプールは、種子、例えば、前述の世代のいずれかの穀粒を含み得る。これにより、プールは、必ずしも予め直接的に突然変異誘発にかけられた種子を必ずしも含有するわけではない。生物のプールはまた、世代M1、M2またはM3の種子、例えば、穀粒を含み得る。
【0080】
該ランダム突然変異誘発は、任意の有用な様式で、例えば、照射または化学的処理によって実施されてもよい。照射は、UV照射、X線照射または放射性照射であり得る。化学的突然変異誘発は、任意の突然変異誘発性化学物質、例えば、アジ化ナトリウム(NaN3)、N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)、メチルニトロソグアニジン(MNNG)及びエチルメタンスルホネート(EMS)などのアルキル化剤、または下記のアルキル化剤からなる群から選択される化学物質による処理であり得る。NaN3、ENU及びEMSは、ランダムに突然変異体を生成するためにしばしば使用される。MNNG及びEMSは、突然変異誘発酵母培養物をランダムに調製するために頻繁に使用される。
【0081】
植物のgDNAにランダム突然変異を誘発させるために、穀粒または再生可能な栄養植物組織は、突然変異原、または突然変異原の混合物で処理することができ、限定されないが、エチルメタンスルホネート(EMS)、ジエチルスルホネート(DES)などのスルホン酸塩;硫黄マスタード、例えば、エチル-2-クロロエチルスルフィド;窒素マスタード、例えば、2-クロロエチル-ジメチルアミン、及び;エポキシド、例えば、エチレンオキシドなどのアルキル化剤を含む。他は、エチレンイミン、ヒドロキシルアミン(NH2OH)、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、NaN3及びジアゾメタンである。次いで、処理された組織または穀粒を繁殖させて子孫生物を生成させることができる。そのようなランダム突然変異誘発は、穀物、限定されないが、コムギ、トウモロコシ、米、モロコシ及びキビを含む作物植物、ならびに限定されないが、菜種、綿、大豆及び甜菜を含む双子葉作物植物などの植物を用いて使用され得る。
【0082】
本発明の方法は、任意の特定のタイプの突然変異誘発に限定されない。これにより、任意の形態のランダム突突然変異誘発などの、任意の突然変異誘発型を用いることができる。
【0083】
本発明の一実施形態では、生物のプールは、以下の実施例の「WS1」のセクションに記載されるように調製され得る。種がオオムギである本発明の実施形態では、生物のプールは、以下のオオムギに関して実施例の「WS1」のセクションに本明細書で記載されるように調製され得る。当業者であれば、他の穀物植物を含む、他の顕花植物と共に使用するためにWS1に記載される方法を適合させることができるであろう。種が酵母である本発明の実施形態では、生物のプールは、酵母に関して実施例の「WS1」のセクションに記載されるように調製され得る。当業者であれば、他の単細胞生物と共に使用するための、WS1に記載される方法を適合させることができるであろう。
【0084】
生物プールのサブプールへの分割
本発明の方法は、生物のプールを1つ以上のサブプールに分割する工程を含み、ここで、各サブプールは、複数の生物、またはその生殖部分を含む。好ましくは、各サブプールは、複数の遺伝子型を表す複数の生物、またはその生殖部分を含む。
【0085】
通常、プールは複数のサブプールに分割され、好ましくは少なくとも5個のサブプールに、より好ましくは少なくとも10個のサブプールに、さらにより好ましくは少なくとも30個のサブプールに、さらにより好ましくは少なくとも50個のサブプールに、さらにより好ましくは少なくとも70個のサブプールに、さらにより好ましくは少なくとも90個のサブプールに分割される。
【0086】
いくつかの実施形態では、プールは、少なくとも1000個などの、少なくとも500個、例えば、少なくとも1500個のサブプールに分割される。これは、特に、プールが異なる遺伝子型の多数の生物を含む本発明の実施形態の場合であり得る。
【0087】
原則として、サブプールの数の上限はない。しかしながら、典型的には、プールは、最大50,000個、例えば、最大25,000個、例えば、最大10,000個のサブプールに分割される。
【0088】
いくつかの実施形態では、プールは90~500個のサブプールの範囲に分割される。
【0089】
各サブプールは、好ましくは、複数の遺伝子型を表す複数の生物またはその生殖部分を含む。好ましくは、各サブプールは、異なる遺伝子型を有する、少なくとも10個、より好ましくは少なくとも100個、さらにより好ましくは少なくとも500個、さらにより好ましくは少なくとも1000個、さらにより好ましくは少なくとも5000個、さらにより好ましくは少なくとも10,000個、例えば、少なくとも50,000個、例えば、少なくとも100,000個の生物、またはそれらの生殖部分を含む。いくつかの実施形態では、各サブプールは、異なる遺伝子型を有する、3000~5000個の範囲などの2000~10,000個の範囲の生物、またはその生殖部分を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、各サブプールは、異なる遺伝子型を表す、1000~2000個の生物、またはその生殖部分を含む。
【0091】
サブプールは、任意の望ましい方法で順序付けされ得る。プールが同じ遺伝子型の複数の生物を含む場合、大部分の生物、または同一の遺伝子型の全ての生物さえも同じサブプール内に含まれることが好ましい。これは、例えば、以下に記載されるように、種に応じて多数の方法で保証され得る。生物のプールまたはその生殖部分がランダム突然変異誘発によって調製される本発明の実施形態では、該プールは、該プールまたはその生殖部分からの1つの生物の全ての子孫が1つのサブプール内に含まれるように分割されることが好ましい場合がある。
【0092】
例えば、プールはサブプールに分割することができ、該サブプールは生殖工程を施してもよい。生殖工程は、単一の生物の子孫、またはその生殖部分が同じサブプールに最後には行き着くように、プールをサブプールに分割する工程と同時に実行することもまた可能である。
【0093】
各サブプールが、各遺伝子型の2つ以上の生物、またはその生殖部分を含むこともまた好ましい。これは異なる方法で保証され得る。例えば、サブプールに、サブプールの各生物、またはその生殖部分の子孫の形成を可能にする生殖工程を施してもよい。特に、理論的には、各部分がサブプールの各遺伝子型を表す生物(またはその生殖部分)を含むように、サブプールを2、3、または4個の部分にランダムに分割するために、各サブプールが各遺伝子型の十分な生物を含むことが好ましい。これにより、各サブプールは、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも15個の各遺伝子型を表す生物を含むことが好ましい。これは、特に、種が植物、例えば、穀物である本発明の実施形態の場合であり得る。種が単細胞生物である本発明の実施形態では、各サブプールは、例えば、少なくとも100個、少なくとも1000個など、例えば、少なくとも10,000個の各遺伝子型のより多くの生物を含むことが好ましい場合がある。
【0094】
プールをサブプールに分割する方法の一例を、
図1Aに提供する。
【0095】
種が単細胞生物であり、プールが複数の単細胞生物を突然変異誘発することによって調製される本発明の実施形態では、サブプールは、例えば、以下のように作製され得る。
-突然変異誘発後、各単細胞生物は、単細胞生物がクローン培養に発育するように、別々の方法で繁殖させることができる。これは、固体培地上の各クローンのコロニーを培養することによって、または液体培地を用いて別々の空間、例えば、チューブまたはウェル中で各クローンを培養することによって行うことができる。サブプールは、複数のクローンからの単細胞生物を組み合わせることによって形成することができる。
-単細胞生物は突然変異誘発の直後にサブプールに分割されて得、各サブプールは生殖が可能にされ得る。
【0096】
これにより、本方法は、
-複数の単細胞生物(例えば、酵母)を提供する工程と;
-前記生物をランダム突然変異誘発にかける工程と;
-突然変異誘発された生物をサブプールに分割する工程と;
-各サブプールを生殖工程にかける工程と、を含み得る。
【0097】
該生殖工程は、該生物の繁殖を可能にする条件下で培養培地中の各サブプールをインキュベートすることを含み得る。例えば、工程は、該生物の繁殖を可能にする温度で、1~5日間の範囲で、培養培地中でサブプールをインキュベートすることを含み得る。
【0098】
種が植物である本発明の実施形態では、1つの特定の植物の全ての種子が1つのサブプール内に含有されるように、サブプールを調製することができる。これにより、本発明の一実施形態では、本方法は、
-植物の複数の種子、例えば、穀類を提供する工程と;
-該種子を突然変異誘発させ、これによりM0世代の種子を得る工程と;
-M0世代の該種子を成熟植物に成長させて、該成熟植物から種子を得る工程であって、該種子がM1世代の種子である、工程と;
-任意に先の工程をX回繰り返して、M(1+X世代)の種子を含む植物を得る工程と;-該成熟植物からM1またはM(1+X)世代のいずれかの種子を取得し、これにより種子のプール(例えば、穀粒のプール)を得る工程と;
-該プールをサブプールに分割する工程であって、所与の成熟植物からの全ての種子(例えば、穀粒)が、同じサブプールに配置される、工程と、を含む。
【0099】
これらの工程は、例としてオオムギを用いた
図2A及び2Bに図示されている。本方法は、
図2A及び
図2Bに図示される工程を含み得る。
図2A及び2Bに図示される工程は、任意の顕花植物を使用して実施することができ、これにより、オオムギに限定されない。また、
図2A及び2Bに図示される工程は、任意の数の変異植物を用いて行うことができる(図に提供される数字は単なる一例に過ぎない)。
【0100】
したがって、本方法は、
-複数の植物種子(例えば、穀物粒)を提供する工程と;
-該種子を突然変異誘発させ、これによりM0世代の種子を得る工程と;
-任意に、M0世代の種子を成熟した植物に栽培し、該成熟植物から種子を得る工程であって、該種子が、M1世代の種子である、工程と;
-任意に、先の工程をX回繰り返して、M(1+X)世代の種子を含む植物を得る工程と;
-M0、M1またはM(1+X)世代の種子を別個の畑区画において、成熟植物まで栽培する工程であって、該成熟植物の種子が、種子のプールを構成する、工程と;
-該領域を畑サブ区画に分割する工程と;
-1つの畑サブ区画内の全ての植物の全ての種子を収穫し、これにより、「穀粒の合計」と称されてもよい(
図2Bを参照)、種子のサブプール(例えば、穀物粒のサブプール)を得る工程と、を含むことができる。
【0101】
畑区画で種子を栽培する代わりに、これらは、植物をサブグループに分けてサブプールを得ることができるような任意の有用な方法で栽培されてもよい。例えば、種子は、それぞれが1つ以上の植物を含む別々の容器で栽培することができる。種子は温室内で栽培されてもよい。
【0102】
プールをサブプールに分割する方法の一例は、以下のWS2において本明細書で記載される。
【0103】
サブプールの同定
本発明の方法は、生物、またはその生殖部分のプールをサブプールに分割する工程を含む。これは、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む、生物、またはその生殖部分を含むサブプールを同定する工程を伴う。
【0104】
該サブプールの同定は、
a)それぞれが1つのサブプール内の各遺伝子型からのgDNAを含むgDNA試料を調製する工程であって、これが、例えば、以下の「DNA試料の調製」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施されてもよい、工程と;
b)それぞれが複数の区画化されたPCR増幅を含む、複数のPCR増幅を実施する工程であって、例えば、以下の「複数の区画化されたPCR増幅を含むPCR増幅」のセクションにおいて本明細書で記載されるように行われる、工程と;
c)対象のNOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより、該サブプール(複数可)を同定する工程であって、例えば、以下の「PCR増幅産物(複数可)の検出」のセクションにおいて本明細書で記載されるように行われる、工程と、を含むことができる
【0105】
サブプールは、例えば、PCR増幅の後またはPCR増幅中に直接検出され得るNOI(複数可)の突然変異(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)である限り、直接的に同定され得る。これは、例えば、PCR増幅産物(複数可)がNOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列(複数可)を含む限り、PCR増幅産物(複数可)が1つ以上の検出可能なシグナル(複数可)を生じる検出手段を含む場合に行われ得る。そのような検出手段は、以下の「PCR増幅産物の検出」のセクションにおいて本明細書でより詳細に記載されており、例えば、突然変異検出プローブであり得る。
【0106】
1つ以上の特定の突然変異(複数可)を含むサブプールを同定するための方法の一例を
図1Bに図示しており、これは、以下の
-サブプールを提供する工程と;
-該サブプールの一部から試料を調製する工程と;
-該試料からgDNA試料を調製する工程と;
-例えば、プレート、例えばマイクロタイタープレートの個々のウェル中のサブプールの全てからの個々のgDNA試料の全てを含むPCR増幅を準備する工程と;
-NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含むこれら試料を選択する工程と、を強調している。
【0107】
サブプールを同定する方法のより具体的な例を
図2Cに示す。この例では、種は穀物植物の群に属する。
図2Cに提供された特定の数字は単なる例であり、当業者であれば、別の量の穀粒を用いてこの方法を実施できることを理解するであろう。例えば、NOI中に突然変異を含むサブプールの同定は、以下の本明細書中のWS3に概説されるように実施されてもよい。
【0108】
DNA試料の調製
本発明の方法は、DNA試料、特にgDNA試料を調製する1つ以上の工程を含む。特に、本方法は、サブプールからgDNA試料を調製する1つの工程と、二次サブプールからgDNA試料を調製する1つの工程とを含み得る。本方法はまた、スーパープールからgDNA試料を調製する工程を含み得る。
【0109】
一般に、gDNA試料は、理論上gDNA試料がサブプール、二次サブプールまたはスーパープール内の各遺伝子型からのgDNAを含むように、該サブプール、二次サブプールまたはスーパープール内の各遺伝子型の生物の生殖の可能性を維持しながら調製される。
【0110】
これは異なる方法で確実にされ得る。例えば、各サブプール及びスーパープールが、各遺伝子型の2個以上の個々の生物、またはその生殖部分を含むことが好ましい場合がある。特に、理論上の各部分は、サブプールまたはスーパープールの各遺伝子型を表す生物またはその生殖部分を含むように、各サブプールまたはスーパープールが、サブプールまたはスーパープールを2、3または4個の部分にランダムに分割できるようにするために、各遺伝子型の十分な生物を含むことが好ましい場合がある。
【0111】
このようにして、サブプールまたはスーパープールからの生物の一部またはその生殖部分、例えば、10~90%の範囲、好ましくは、例えば、各サブプールまたは各スーパープールの生物、またはその生殖部分の25~50%の範囲などの、10~50%の範囲がgDNA試料を調製するために使用され得る。該生物の一部、またはその生殖部分は、本明細書では「生物の試料」とも称される。サブプールの生物の残余は、該生物またはその生殖部分の生殖能を維持する条件下で保存することができる。生物が植物である実施形態では、該植物の種子を保存することで十分であり得る。種子、例えば、穀粒は、任意の乾燥した、暗い場所に頻繁に貯蔵され得る。生物が単細胞生物である本発明の実施形態では、例えば、グリセロールなどの凍結保護物質の存在下で、該生物を凍結することが好ましい場合がある。
【0112】
同様に、各該二次サブプールは、各遺伝子型の2つ以上の個々の生物またはその生殖部分を含み得る。これにより、例えば、10~90%の範囲の二次サブプールからの生物の一部またはその生殖部分、好ましくは40~60%の範囲、25~50%の範囲などの各二次サブプールの生物またはその生殖部分をgDNA試料の調製に用いることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、特に種がより大きな生物であるとき、二次サブプールのgDNA試料は、以下に記載されるように、各生物の一部、またはその生殖部分の一部の試料から調製されることが好ましい場合がある。
【0113】
gDNA試料が、サブプールの、二次サブプールの、またはス―パープールの各生物、またはその生殖部分から得られた試料から調製され得ることも本発明の範囲内に含まれる。例えば、各サブプール、スーパープール及び二次サブプールが、各遺伝子型の1つまたは少数の生物、またはその生殖部分のみを含むことも本発明の範囲内に含まれる。このような実施形態では、gDNA試料は、各生物またはその生殖部分から得られる試料から調製することができる。一般に、本発明の実施形態では、各生物から試料を得ることのみが可能であり、この中で、種はこのような試料を得るために十分な大きさである。これは、特に、種が動物または顕花植物などの植物である本発明の実施形態に関連し得る。
【0114】
サブプール及びスーパープールは、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されているような各遺伝子型のいくつかの個々の生物またはその生殖部分を含むが、このときは、二次サブプールは、頻繁に、各遺伝子型のほんの少数の、時には1つだけの、個々の生物、またはその生殖部分を含んでもよい。これにより、種が植物(例えば、穀物)である本発明の実施形態では、二次サブプールからのgDNA試料は、それぞれ個々の生物の試料を得て、該試料からgDNA試料を調製することによって調製することが好ましい。
【0115】
試料が各生物、またはその生殖部分から得られるとき、生殖の可能性に関して、該生物、またはその生殖部分を著しく損なわない方法で試料を得ることが好ましい。これにより、好ましくは、試料は、生殖に必須ではない生物の一部、またはその生殖部分を含むか、またはそれらからなる。試料は、種に応じて、例えば、生検、切断、穿孔、格子、断裂を使用することによって、または針を備えた注射器を適用することによって、任意の有用な様式で得ることができる。
【0116】
一例として、種が穀物であり、サブプール、スーパープールまたは二次サブプールが穀粒を含む実施形態では、該試料は、生殖に必須ではない穀粒の一部を含むことが好ましい。試料は、例えば、ナイフ、メス、はさみなどの任意の鋭利な器具を使用して穀粒の部分(複数可)を切り取ること、穀粒の一部をグレーティングで切り取ることによってなどの、異なる方法で得ることができ、または穀粒に穴を開けることによって得ることができる。後者の場合、試料は穿孔後に得られる細粉であり得る。
【0117】
一旦、生物の試料、または生物もしくはその一部から得られる試料のいずれかが利用可能になると(本明細書では集合的に「試料」とも称される)、gDNA試料は任意の有用な方法で該試料から調製することができる。該試料が大きな構造、例えば、種子全体を含有する場合、gDNA試料を調製するための第1の工程は、典型的には、例えば、粉砕または製粉などの物理的手段によって、該試料の該内容物をより小さな部分に分割することを含む。典型的には、gDNA試料を調製する方法は、細胞及び/または組織を、例えば、界面活性剤によって、酵素(例えば、リチカーゼ)によって、超音波またはそれらの組み合わせによって破壊し、それによって粗溶解物を生成する工程を含む。該溶解物は、任意の有用な手段によって、残っている破片から分離され得る。粗溶解物は、gDNA試料を構成し得る。あるいは、gDNAはさらに、例えば、選択的マトリックスへの結合、遠心分離、勾配遠心分離及び/または沈殿(例えば、塩、アルコールまたは磁気ビーズなどの沈殿剤を使用すること)によって、該gDNAを溶解物の残りから分離することによって精製され得る。そのような分離の前に、例えば、酵素及び/または変性剤の使用によって、タンパク質及び/または核タンパク質を含む溶解物の他の成分は変性または破壊され得る。他のRNA含有分子は、例えば、酵素の補助を用いて除去され得る。gDNA試料を調製するための有用な方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning-Laboratory Manual,ISBN 978-1-936113-42-2に記載される。
【0118】
複数の区画化されたPCR増幅を含むPCR増幅
本発明の方法は、それぞれが1つのサブプールからのgDNA試料を含む複数のPCR増幅を実施し、(例えば、上記のセクションに記載されるように調製される)これにより標的配列を増幅する工程を含む。各PCR増幅は、該gDNA試料の一部、標的配列に隣接する1つ以上のプライマーセット(複数可)、及びPCR試薬をそれぞれ含む複数の区画化されたPCR増幅を含み得る。
【0119】
複数の区画化されたPCR増幅を含む全PCR反応は、多くの異なる方法で調製されてもよい。一実施形態では、複数の区画化されたPCR増幅を含むPCR増幅を、デジタルPCR(dPCR)増幅として行うことができる。当業者に周知の任意のdPCR増幅は本発明で使用され得る。一般に、複数の区画化されたPCR増幅を含む少なくとも1つのdPCR増幅は、調製された各gDNA試料について調製される。これにより、複数の区画化されたdPCR増幅を含む少なくとも1つのdPCR増幅は、サブプールごとに調製される。
【0120】
一般に、区画化されたdPCR増幅は、
-gDNA試料、標的配列に隣接するプライマーのセット及びPCR試薬を含むdPCR増幅を準備する工程と;
-試料中の核酸分子が局在化され、複数の空間的に分離された区画内に濃縮されるように、該dPCR増幅を分配する工程と;
-dPCR増幅を実施する工程と;
-dPCRに基づく増幅産物を検出する工程と、含む方法で調製される。
【0121】
該分離された区画は、PCR増幅を実施することができる任意の別個の区画であり得る。例えば、それはプレートのウェル、例えば、マイクロウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルであってもよく、それは微小流体チャンバであってもよく、それは毛細管であってよく、エマルジョンの分散相であってよく、またはそれは液滴もしくは小型化チャンバのアレイの小型化チャンバであってもよい。分離された区画はまた、固体支持体上の別個のスポット、例えば、別個の表面を結合する核酸であってもよい。
【0122】
gDNA試料が、区画化されたdPCR増幅のために試料中にランダムに分布されることが一般的には好ましい。各区画化されたdPCR増幅は、標的配列を含む少数の核酸のみを含むことも好ましい。ランダム分布の性質により、各区画化されたdPCR増幅に含まれる核酸分子の数にいくらかの変化があり得る。一実施形態では、各区画化されたdPCR増幅は、平均して、標的配列を含む最大で5個などの、最大で10個の核酸分子を含む。
【0123】
本発明の1つの好ましい実施形態では、複数の区画化されたPCR増幅を含むdPCR増幅は、液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)である。ddPCRは、水-油エマルジョン液滴技術に基づくdPCRを実施する方法である。PCR増幅は複数の微小液滴に分画され、標的配列のPCR増幅が個々の液滴で生じる。一般に、ddPCR技術は、従来のPCRを実施するために使用されるものと同様のPCR試薬及びワークフローを使用する。これにより、PCR増幅の分配は、ddPCR技術の重要な態様である。
【0124】
したがって、区画化されたddPCR増幅は、例えば、エマルジョン組成物、または2つ以上の非混和性流体の混合物(例えば、米国特許第7,622,280号に記載されているか、または以下に本明細書で実施例に記載されるようなもの)を含み得る液滴に含有され得る。液滴は、国際公開第2010/036352号に記載されるデバイスによって生成することができる。特に、液滴は、液滴発生器、例えば、Bio-Rad Laboratories、USA(以下、Bio-Radと略記する)から入手可能なQX200 Droplet Generatorを用いて調製することができる。本明細書で使用される場合、エマルジョンという用語は、不混和性液体(油と水など)の混合物を指すことができる。エマルジョンは、例えば、油液滴における水、例えば、[Hindson,BJ et al.(2011).High-throughput droplet digital PCR system for absolute quantitation of DNA copy number.Anal Chem 83:8604-8610]に記載されるようなものであってもよい。これにより、エマルジョンは、連続油相内に水性液滴を含むことができる。エマルジョンは、水中油エマルジョンであってもよく、ここで、液滴は連続水性相中の油滴である。本明細書で使用される液滴は、通常、区画間の混合を防止するように設計され、個々の区画の内容物が蒸発することを保護するだけではなく、他の区画の内容物と混合することから保護される。したがって、各液滴は、空間的に分離された区画とみなすことができる。
【0125】
ddPCRの各液滴は、任意の有用な体積を有し得る。しかしながら、好ましくは、液滴は、nL範囲の体積を有する。したがって、液滴体積は平均して0.1~10nLの範囲内であることが好ましい。
【0126】
マイクロチャネルクロスフロー集束または物理的攪拌を使用してエマルジョン液滴を生成するマイクロ流体法は、単分散または多分散エマルションのいずれかを生成することが知られている。液滴は単分散液滴とすることができる。また、液滴は、それらのサイズが液滴の平均サイズの±5%を超えて変化しないように生成することができる。場合によっては、液滴は、液滴のサイズが液滴の平均サイズの±2%だけ変化するように生成される。
【0127】
より高い機械的安定性は、マイクロ流体操作及び高剪断流体処理(例えば、マイクロ流体毛細管中または流体経路の弁などの90°回転を通して)において有用であり得る。熱処理前後の液滴またはカプセルは、標準的なピペット操作及び遠心分離に対して機械的に安定であることができる。
【0128】
液滴は、油相を、水性試料を通して流すことによって形成することができる。水相は、PCR増幅、例えば、gDNA試料、標的配列に隣接するプライマーのセット及び以下の本明細書で「PCR試薬」のセクションに記載される任意のPCR試薬などのPCR試薬を含むPCR増幅における成分を含むか、またはそれからなることができる。
【0129】
油相は、過フッ素化ポリエーテルなどのフッ素化界面活性剤と組み合わせることによって追加的に安定化され得るフッ素化基油を含むことができる。場合によっては、基油は、HFE 7500、FC-40、FC-43、FC-70、または他の一般的なフッ素化油の1つ以上とすることができる。場合によっては、陰イオン性界面活性剤は、Ammonium Krytox(Krytox-AM)、Krytox FSHのアンモニウム塩、またはKrytox-FSHのモルホリノ誘導体である。
【0130】
油相は、蒸気圧、粘度または表面張力などの油特性を調整するための添加剤をさらに含むことができる。非限定的な例には、ペルフルオロオクタノール及び1H、1H、2H、2H-ペルフルオロデカノールが挙げられる。油相は、液滴生成油、例えば、Bio-Radから入手可能なDroplet Generation Oilであり得る。
【0131】
エマルジョンは、加熱することにより固体様の界面フィルムを有するマイクロカプセルに変換することができる液体様の界面フィルムを有する高度に単分散の液滴を生成するように配合することができ、そのようなマイクロカプセルは、PCR増幅のような反応プロセスを通してその内容物を保持するバイオリアクターとして挙動することができる。マイクロカプセル形態への変換は、加熱の際に起こすことができる。例えば、そのような変換は、50、60、70、80、90、または95℃を超える温度で起こすことができる。場合によっては、この加熱はサーモサイクラーを用いて生じる。加熱プロセスの間に、蒸発を防ぐために流体または鉱物油オーバーレイを使用することができる。
【0132】
場合によっては、Bio-Rad QX100(商標)Droplet GeneratorまたはBio-Rad QX200(商標)Droplet Generatorなどの、市販の液滴発生器を使用して液滴は生成される。ddPCR及びその後の検出は、Bio-Rad QX100またはQX200(商標)Droplet Readerなどの、市販の液滴リーダーを用いて実行され得る。
【0133】
各PCR増幅は、任意の適切な数の区画に区画化することができる。しかしながら、好ましい一実施形態では、各PCR増幅は、1000~100,000個の区画(例えば、液滴)の範囲に区画化される。例えば、各PCR増幅は、10,000~50,000個の区画(例えば、液滴)の範囲に区画化され得る。例えば、各PCR増幅は、15,000~25,000個の区画(例えば、液滴)の範囲に区画化され得る。さらに、各PCR増幅は、約20,000個の区画(例えば、液滴)に区画化され得る。
【0134】
PCR試薬
本方法は、いくつかのPCR増幅を実施することを包含し、ここで、これらのPCRの少なくともいくつかは、複数の区画化されたPCR増幅を含み得る。
【0135】
該PCRが区画化されたPCR増幅を含むか否かにかかわらず、PCR増幅は一般に、gDNA試料、標的配列に隣接するプライマーのセット及びPCR試薬を含むであろう。該PCR試薬は、本明細書中に記載されるPCR試薬のいずれかであり得る。
【0136】
PCR試薬は、一般に、少なくともヌクレオチド及び核酸ポリメラーゼを含む。ヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド三リン酸分子であってもよく、好ましくは、PCR試薬は少なくともdATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含む。場合によっては、PCR試薬はまたdUTPも含む。
【0137】
核酸ポリメラーゼは、ヌクレオチドの鋳型依存性重合、すなわち、複製を触媒することができる任意の酵素であり得る。核酸ポリメラーゼはPCR増幅に使用される温度に耐えるべきであり、伸長温度で触媒活性を有するべきである。いくつかの熱安定性核酸ポリメラーゼは当業者に既知である。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは5’-3’ヌクレアーゼ活性を有し、これによりTaqMan(登録商標)プローブによる増幅反応に使用することができる。
【0139】
核酸ポリメラーゼは、Escherichia coliのDNAポリメラーゼIであり得る。核酸ポリメラーゼはまた、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性に代わるDNA合成依存性鎖を有するTaq DNAポリメラーゼであり得る。5’-3’ヌクレアーゼ活性を有する他のポリメラーゼには、限定されないが、rTth DNAポリメラーゼが挙げられる。例えば、New England Biolabsから入手したTaq DNAポリメラーゼには、Crimon LongAmp(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ、Crimson Taq DNAポリメラーゼ、Hemo KlenTaq(商標)、またはLongAmp(登録商標)Taqを挙げることができる。
【0140】
場合によっては、核酸ポリメラーゼは、例えば、E.coli DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼIのクレノーフラグメント、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ29、REDTaq(商標)、ゲノムDNAポリメラーゼ、またはシーケナーゼとすることができる。DNAポリメラーゼは、例えば、米国特許出願公開第20120258501号に記載されている。
【0141】
加えて、PCR試薬は、塩、緩衝液及び検出手段を含み得る。緩衝液は、任意の有用な緩衝液、例えば、TRISであってもよい。塩は、任意の有用な塩、例えば、塩化カリウム、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウムもしくは硫酸マグネシウムであってもよい。
【0142】
PCR試薬は、BSA、ウシの皮膚からのゼラチン、β-ラクトグロブリン、カゼイン、ドライミルク、サケ精子DNAまたは他の一般的なブロッキング剤などの、非特異的ブロッキング剤を含み得る。
【0143】
PCR試薬はまた、生体防腐剤(例えば、NaN3)、PCRエンハンサー(例えば、ベタイン、トレハロースなど)及び阻害剤(例えば、RNase阻害剤)も含み得る。他の添加剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ベタイン(モノ)-水和物、トレハロース、7-デアザ-2’-デオキシグアノシン三リン酸(7-デアザ-2’-dGTP)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ホルムアミド(メタンアミド)、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、他のテトラアルキルアンモニウム誘導体[例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEA-Cl)];テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPrA-Cl)または非イオン性界面活性剤、例えば、Triton X-100、Tween 20、Nonidet P-40(NP-40)もしくはPREXCEL-Qを挙げることができる。
【0144】
さらに、PCR試薬はまた、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)の検出のための1つ以上の手段も含み得る。該手段は任意の検出可能な手段であってもよく、それらは個々の化合物として添加されてもよく、またはプライマーの1つに会合されていてもよく、または共有結合でさえもされてもよい。検出可能な手段には、限定されないが、染料、放射性化合物、生物発光化合物及び蛍光化合物が挙げられる。好ましい実施形態では、検出手段は、1つ以上のプローブである。これにより、PCR試薬は、1つ以上の検出プローブ、例えば、以下の本明細書で「PCR増幅産物(複数可)の検出」のセクションに記載されるプローブのいずれかを含むことが好ましい。
【0145】
標的配列に隣接するプライマー
本発明の方法は、標的配列に隣接する1つ以上のプライマーセット(複数可)の使用を含む。標的配列に隣接する別個の「プライマーのセット」は、標的配列の5’末端と同一の配列を含む1つのプライマー(「フォワードプライマー」とも称される)、及び標的配列の3’末端に相補的な配列を含む1つのプライマー(「リバースプライマー」とも称される)を含む。プライマーセットは、該標的配列の増幅を可能にする条件下で、標的配列及びPCR試薬を含む核酸と共にPCRに添加されたときに標的配列を増幅することができる。本発明の異なる工程のPCR増幅のために異なるプライマーのセットが使用されることもまた可能であるが、同じプライマーセットを本発明による方法の全てのPCR増幅に使用され得る。
【0146】
フォワードプライマーは、標的配列の5’末端と同一の配列に加えて、追加の配列を含み得る。同様に、標的配列の3’末端に相補的な配列に加えて、リバースプライマーは追加の配列を含み得る。例えば、プライマーは、5’末端に、標的核酸とハイブリダイズしないがプライマーまたはPCR増幅産物の取り扱い、例えば、該産物の検出を容易にする、追加の核酸配列を含有することができる。
【0147】
フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さは、標的配列の配列に応じることができる。例えば、プライマーの長さは、プライマーの望ましい融解温度Tmを達成するように調節することができる。これにより、フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さは、個々に、10~100個のヌクレオチドの範囲、例えば10~50個のヌクレオチドの範囲、15~20個のヌクレオチドの範囲など、15~25個のヌクレオチドの範囲など、15~30個のヌクレオチドの範囲など、15~40個のヌクレオチドの範囲など、15~45個のヌクレオチドの範囲など、15~50個のヌクレオチドの範囲の長さにすることができる。フォワードプライマー及びリバースプライマーのTmは、典型的には40~70℃の範囲に調整される。
【0148】
PCR増幅の水相中のプライマー濃度は、例えば、0.05~2.0pMの範囲、0.1~1.0pMの範囲など、0.2~1.0pMの範囲など、0.3~1.0pMの範囲など、0.4~1.0pMの範囲など、または0.5~1.0pMの範囲にすることができる。
【0149】
フォワードプライマー及びリバースプライマーは、一般に、オリゴヌクレオチドを含むか、またはオリゴヌクレオチドからなることさえある。しかしながら、場合によっては、プライマーはヌクレオチド類似体を含み得る。多数のヌクレオチド類似体は当業者に既知であり、誘導体を含み、ここで、2’-O-メチル、2’-デオキシ-2’-フルオロ及び2’,3’-ジデオキシヌクレオシド誘導体、スレオース、ロックト核酸(LNA)、LNA誘導体、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ビシクロ糖、またはヘキソース、グリセロール及びグリコール糖、非イオン主鎖に基づく核酸類似体、もしくはデンドリマー、くし型構造、及びナノ構造などの非線形トポロジーにおける核酸及びその類似体などの他の糖主鎖に基づく核酸類似体におけるように、糖は修飾される。
【0150】
プライマーはまた、任意にそれらの末端、糖、または核酸塩基に結合することができる様々なタグ(例えば、蛍光タグ、官能化タグまたは結合タグ)に連結され得る。
【0151】
プライマーは、限定されないが、適切な配列のクローニング及び当該分野で周知の方法[Narang et al.,Methods Enzymol.68:90(1979);Brown et al.,Methods Enzymol.68:109(1979)]を用いた直接化学合成を含む様々な方法によって調製することができる。プライマーはまた、商業的供給源から入手することもできる。
【0152】
フォワードプライマー及びリバースプライマーは、同一の融解温度または同様の融解温度、例えば、±5℃の融解温度を有することができる。プライマーの長さは、所望の融解温度を有するプライマーセットを作製するために、5’及び/または3’末端(複数可)で延伸または短縮されることができる。したがって、プライマー対のプライマーの一方は、他方のプライマーよりも長くすることができる。
【0153】
プライマーは、融解温度に基づいて設計され得る。25bpより小さいプライマーの融解温度を決定する式は、Wallace則[Td=2x(A+T)+4x(G+C)]として知られている。ここで、Tdは、50%のオリゴヌクレオチド及びその完全なフィルター結合補体が二本鎖構造である特定の塩濃度での温度である。典型的には、Tdは0.9MのNaCl中で決定される。しかしながら、プライマー、例えば、その予測される二次構造を設計するとき、他の考慮すべきこともまた関連する。プライマーの設計には、いくつかのコンピュータプログラム及びオンラインサービスが利用可能である。
【0154】
一実施形態では、プライマーのセットは、プライマーがNOI中に突然変異を含む標的配列を特異的に増幅することができるが、参照NOIを含む標的配列を増幅することができないように設計することができる。これは、例えば、突然変異(複数可)を含むNOI(複数可)と同一の配列を含むようにフォワードプライマーを設計することによって達成することができ、及び/または突然変異(複数可)を含むNOIに相補的な1つ以上の配列を含むようにリバースプライマーを設計することによって行うことができる。
【0155】
他の実施形態では、プライマーのセットは、プライマーが参照NOIを含む標的配列を特異的に増幅することができるが、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列を増幅することができないように設計することができる。これは、例えば、参照NOIと同一の配列を含むようにフォワードプライマーを設計すること、及び/または参照NOIに相補的な配列を含むリバースプライマーを設計することによって達成することができる。
【0156】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、プライマーのセットは、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列及び参照NOIを含む標的配列の両方を増幅することができる。
【0157】
本発明の方法は、2つ以上のプライマーのセット、例えば、2つのプライマーのセット、3つのプライマーのセットなど、例えば、2~10個のプライマーのセットを有するPCR増幅を含むことは注目に値する。これにより、各PCR増幅は、異なる標的配列に隣接するいくつかのプライマーセットを含み得る。これは、1回のPCR増幅の間に2つ以上の異なる突然変異の検出を可能にする。
【0158】
PCR産物(複数可)の検出
本発明の方法は、対象のNOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出する少なくとも2つの工程を含む。PCR増幅産物(複数可)は、任意の有用な手段によって検出され得る。
【0159】
上記のように、該突然変異(複数可)は、1つまたは少数のヌクレオチド(複数可)から多数のヌクレオチド(複数可)までに関与する、置換(複数可)、欠失(複数可)及び/または挿入(複数可)であり得る。これにより、検出は、NOIによって特定される特定の突然変異に適合させ得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、プライマーのセットは、プライマーが、NOI(複数可)中の突然変異(複数可)を含む標的配列を特異的に増幅することができるが、参照NOIを含む標的配列を増幅することはできないように設計される。他の実施形態では、プライマーのセットは、これらが特異的に参照NOIを含む標的配列を増幅することができるが、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列を増幅することができないように設計することができる。そのような実施形態では、検出は、単にPCR増幅産物の存在または不在の検出に基づくことができる。これは、特に、突然変異がより多数のNOIの突然変異である、本発明の実施形態の場合であり得る。
【0161】
好ましい実施形態では、PCR増幅産物は、検出プローブ(複数可)の助けを借りて検出される。これは、特に、突然変異(複数可)が、より少数のNOI(複数可)の突然変異、例えば、1つ以上の点突然変異である場合であってもよい。
【0162】
検出プローブは、突然変異を含むNOIと同一の配列を含むオリゴヌクレオチドであり得る。加えて、該プローブは、通常、NOIに隣接する標的配列の領域と同一の配列もまた含む。同様に、検出プローブは、突然変異を含むNOIに相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであってもよく、加えて、該プローブは、NOIに隣接する標的配列の領域に相補的な配列もまた含んでもよい。NOIに隣接する該領域は、それぞれ、NOI(複数可)の即時に5’及び/または3’の配列(複数可)であってもよい。そのようなプローブは、好ましくは、NOI中に突然変異を含むPCR増幅産物にアニールするが、参照NOIを含むPCR増幅産物にはアニールしない。そのような検出プローブは、本明細書で「突然変異体検出プローブ」としても称される。突然変異体検出プローブは、典型的には10~30個の範囲のヌクレオチドを含む。特に、突然変異体検出プローブは、NOI中に突然変異を含む標的配列と同一または相補的な、10~30個のヌクレオチドの範囲の連続した配列を含み得る。
【0163】
検出プローブはまた、参照NOIと同一の配列を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。加えて、該プローブはまた、通常、NOIに隣接する標的配列の領域と同一の配列も含む。同様に、検出プローブは、参照NOIに相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであってもよく、加えて、該プローブはまた、NOIに隣接する標的配列の領域に相補的な配列も含んでもよい。そのようなプローブは、好ましくは、参照NOIを含むPCR増幅産物にアニールするが、NOI中に突然変異を含むこれらの増幅産物にはアニールしない。そのような検出プローブは、本明細書で「参照検出プローブ」としてもまた呼称される。参照検出プローブは、典型的には、10~30個の範囲のヌクレオチドを含む。特に、参照検出プローブは、参照NOIを含む標的配列と同一であるかまたは相補的である10~30個のヌクレオチドの範囲の連続した配列を含み得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、PCR試薬は、突然変異体検出プローブ及び参照検出プローブからなるプローブのセットを含む。「プローブのセット」は、好ましくは、標的配列、PCR試薬及びプライマーのセットを含む核酸とともにPCR増幅に添加されたとき、該標的配列の増幅を可能にする条件下で、NOI(複数可)における結合部位(複数可)を競合することができる。上記のように、検出プローブは典型的にはオリゴヌクレオチドである。特に、それらは、一本鎖DNAの短いヌクレオチドストレッチであり得る。検出プローブは、限定されないが、レポーター、色素、放射性化合物、生物発光化合物、蛍光化合物及びフルオロフォア/クエンチャー対を含む、検出可能な手段に関連していてもよく、または共有結合でさえしていてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、検出プローブの最も5’側のヌクレオチドはGではない。これにより、突然変異検出プローブはオリゴヌクレオチドを含んでもよく、ここで、最も5’側のヌクレオチドはGではない。同様に、参照検出プローブはオリゴヌクレオチドを含んでもよく、ここで、最も5’側のヌクレオチドはGではない。
【0166】
本発明の方法は、突然変異体検出プローブ及び参照検出プローブの両方の使用を含み得る。このような場合、好ましくは、例えば、プローブのうちの1つが検出可能な手段に会合しているか、または共有結合しており、一方、他方のプローブが会合または共有結合しないように、プローブは差次的に標識されている。両方のプローブが検出可能な手段と会合しているか、または共有結合していてもよく、該検出可能な手段は異なる。
【0167】
一実施形態では、参照検出プローブは、5’末端で、フルオロフォアで標識され、3’末端にクエンチャーで標識される。該フルオロフォア及びクエンチャーは、例えば、それぞれHEX及びBlack-Hole Quencherであり得る。一実施形態では、突然変異体検出プローブは、5’末端で、フルオロフォアで標識され、3’末端で、クエンチャーで標識される。該フルオロフォア及びクエンチャーは、例えば、それぞれFAM及びBlack-Hole Quencherであり得る。
【0168】
PCR反応は、同様の量の突然変異体検出プローブ及び野生型検出プローブを含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、過剰の突然変異体検出プローブを用いることが好ましい場合がある。これは、特に、スーパープールでのPCR増幅後のPCR産物(複数可)を検出する場合であり得る。そのような場合、PCRは、参照検出プローブと比較して少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも4倍過剰の突然変異体検出プローブを含み得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、検出プローブは、核酸ポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性を利用するTaqMan(登録商標)プローブ(Heidら、1996)である。これが、PCR試薬が好ましくは5’エキソヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)を含む理由である。典型的には、TaqMan(登録商標)プローブは、上記のような突然変異体検出プローブ、または、上記のような、フルオロフォア/クエンチャー対に共有結合した参照検出プローブのいずれかであり得る。これにより、プローブは、通常、5’塩基またはその近くにフルオロフォアを含有し得る。加えて、TaqMan(登録商標)プローブは、3’塩基またはその近くにあり得、該フルオロフォアの蛍光を消光することができるクエンチャーを含み得る[Tyagi et al.,Nature Biotechnology 16:49-53(1998)を参照されたい]。照射されたとき、励起されたフルオロフォアは、蛍光[フォルスターまたは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)]ではなく、近くのクエンチャーにエネルギーを伝達する。これにより、フルオロフォア及びクエンチャーのすぐ近くは、プローブが無傷である間に任意の蛍光の放出を防ぐことができる。しかしながら、TaqMan(登録商標)プローブが標的配列の内部領域にアニールし、ポリメラーゼがTaqMan(登録商標)プローブが結合した鋳型を複製するとき、その5’エキソヌクレアーゼ活性はプローブを切断することができる。この一連の事象は、消光(すなわち、FRET無し)の機能性を廃止し、フルオロフォアは、任意の有用な手段によって測定することができる蛍光を放出し始める。
【0170】
注目すべきことに、上記で強調したように、本発明には、2つ以上の異なる突然変異を同定するために本方法が使用され得ることもまた含まれる。これは、上記のようなプライマーの複数のセットを使用することによって達成され得る。しかしながら、これは、いくつかの異なる検出プローブを使用することによっても達成され得る。これにより、一実施形態では、本方法は、標的配列中のNOI内の2つ以上の異なる突然変異を同定するために使用され得る。そのような実施形態では、PCR試薬は、参照検出プローブ及びいくつかの突然変異検出プローブを含むことができ、ここで、各突然変異検出プローブは、突然変異の1つと同一または相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、参照検出プローブ及び突然変異検出プローブは、異なる検出手段に結合される。全ての突然変異検出プローブは、同じ検出手段、または同様の検出手段または異なる検出手段に結合されてもよい。
【0171】
場合によっては、検出プローブは分子ビーコン(MB)、すなわち、自己ハイブリッド形成法が可能な相補配列(「ステム」としても称される)を含むプローブであり、「ヘアピンループ」構造をもたらす。MBのループは、突然変異体または参照NOI(複数可)のいずれかであるNOI(複数可)に相補的な配列、または同一である配列を含有することができる。さらに、MBは、典型的には、プローブがそれ自身にハイブリダイズしたとき、それらが互いに近位になるように、MBのいずれかの末端に位置するフルオロフォア及びクエンチャーを含む。MBは、上記のような突然変異体検出プローブであっても、またはフルオロフォア/クエンチャー対及びMBの相補領域を提供するステム配列(複数可)に共有結合した上記の参照検出プローブであってもよい。MBを作成し使用する標準的な方法に関するさらなる詳細は、文献中に十分に確立されており、MBは、多数の市販試薬源から入手可能である。
【0172】
場合によっては、プライマー/プローブが使用され、場合によっては、プライマー/プローブはScorpions(商標)プローブであり、これは、プローブがフォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかとして機能する結合したセグメントを有することを除いて、MBに類似のFRETベースのステムループ検出機構を提供することができる(Whitcombe et al.Nature Biotechnol.1999,August 17(8):804-7;米国特許第6,326,145号を参照されたい)。Scorpions(商標)プローブは、フルオロフォアが消光している非ハイブリダイズ状態のステムループ構成を維持することができる。Scorpions(商標)プローブは、長い多成分構造、例えば、5’フルオロフォア、次いで、標的特異的ステムループ部分、次いで、クエンチャー、次いで、ブロッカー[例えば、ヘキセレングリコール(HEG)]、及び最後に3’プライマー配列を有することができる。ブロッカーは、プローブ上への産物の逆方向伸長を防ぐことができる。
【0173】
場合によっては、プライマー/プローブは、増幅中に伸長されるヘアピンプローブに取り付けられたプライマーを含むSunrise(商標)プローブである。この配置は、内部クエンチャーを5’末端フルオロフォアから分離することができる(Nazarenko et al.,Nucl.Acids Res.1997,25:2516-2521)。
【0174】
検出プローブは、任意の有用な長さ、例えば、長さが10~60個のヌクレオチドの範囲とすることができる。オリゴヌクレオチドプローブはまた、10~30個ヌクレオチド長の範囲とすることができる。オリゴヌクレオチドプローブの正確な配列及び長さは、それが結合する標的ポリヌクレオチドの性質に部分的に依存することができる。結合位置及び長さは、特定の状況に対して適切なアニーリング及び溶融特性を達成するように変更することができる。例えば、検出プローブは、フォワードプライマー及び/またはリバースプライマーと同じ範囲、例えば、±5℃以内などの±10℃以内の融解温度を有するように設計されてもよい。
【0175】
検出プローブ(複数可)の3’末端ヌクレオチドは、核酸ポリメラーゼによってブロックされるか、または伸長不能にされることができる。そのようなブロッキングは、フルオロフォアまたはクエンチャーのいずれかを通してオリゴヌクレオチドプローブの末端3’塩基に結合部分によって検出可能な手段を取り付けることによって都合よく実行することができる。
【0176】
以下に例示されるように、フルオロフォア-クエンチャー対を選択するための方法を含む、有用なフルオロフォア-クエンチャー対を記載している文献には、実用的なガイダンスが多数存在する。
-Clegg,Meth.Enzymol.,211:353-388(1992);Wo et al.,Anal.Biochem.,218:1-13(1994);Pesce et al.,editors,Fluorescence Spectroscopy(Marcel Dekker,New York,1971);White et al.,Fluorescence Analysis:A Practical Approach(Marcel Dekker,New York,1970);など;
-文献には、レポーター-クエンチャー対を選択するための、蛍光分子及び発色分子の網羅的なリスト及びそれらに関連する光学的特性を提供する参考文献、例えば、Berlman,Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules,2nd Edition(Academic Press,New York,1971);Griffiths,Colour and Constitution of Organic Molecules(Academic Press,New York,1976);Bishop,editor,Indicators(Pergamon Press,Oxford,1972);Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (Molecular Probes,Eugene,1992)Pringsheim,Fluorescence and Phosphorescence(Interscience Publishers,New York,1949);などが挙げられる。
-さらに、以下の参考文献に例示されるように、オリゴヌクレオチドに添加することができる共通の反応基を介した共有結合のためのレポーター分子及びクエンチャー分子を誘導体化するための文献には広範な指針がある。Haugland(上記引用);Ullmanら、米国特許第3,996,345号;Khannaら、米国特許第4,351,760号;などである。
【0177】
フルオロフォア及びクエンチャーは、例えば、フルオレセイン及びローダミン染料から選択することができる。これらの染料は、オリゴヌクレオチドへの結合のための適切な結合方法と組み合わせて、多くの参考文献、例えば、Khannaら(上記引用);Marshall,Histochemical J.,7:299-303(1975);Menchenら、米国特許第5,188,934号;Menchenら、欧州特許出願第87310256.0号;及びBergotら、国際出願PCT/US90/05565に記載されている。後者の4つの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
フルオロフォア/クエンチャー対は、例えば、5’末端にEDANSまたはフルオレセインなどのフルオロフォアを、例えば、3’末端にDabcylなどのクエンチャーを使用することができる。
【0179】
PCR増幅産物(複数可)の検出は、所与のgDNA試料を含むPCR増幅で得られたシグナルを、対照PCR増幅で得られたシグナルと比較する工程を含み得る。本シグナルは、典型的には、突然変異体検出プローブ及び/または野生型検出プローブに関連する検出可能な手段に関連し得る。これにより、該プローブがフルオロフォアと会合している場合、シグナルは蛍光であり得る。対照PCR増幅は、同じ条件下で実施されるが、gDNA試料を欠くPCR増幅であってもよく、すなわち、該対照PCR増幅はgDNA鋳型を欠いてもよく、参照標的配列、例えば、野生型gDNAのみを含む対照DNAのみを含有してもよい。いくつかの実施形態では、対照PCR増幅からのシグナルよりも強い任意のシグナルは、陽性シグナル、すなわち、NOI中に1つ以上の突然変異を含む標的配列の存在を示すシグナルと考えられ得る。
【0180】
一実施形態では、所定の閾値を上回る任意のシグナルは、陽性シグナルとみなされ得る。閾値は、任意の有用な方法、典型的には適切なソフトウェア、例えば、Bioradから入手可能なQX200(商標)Droplet Reader及びQuantasoft(商標)ソフトウェアを使用することによって決定することができる。
【0181】
突然変異検出参照プローブを使用する本発明の実施形態では、突然変異検出プローブから得られたシグナルと参照検出プローブのシグナルとの間の分画存在量を決定し、PCR産物の存在を評価するために使用することができる。分画存在量は、[(「突然変異体検出プローブ」)のシグナル]を[(「参照検出プローブ」+「突然変異体検出プローブ」)のシグナル]で除算したものとして決定することができる。
【0182】
試料は、例えば、対照PCR増幅との比較において、
1)分画存在量の増加、及び/または;
2)突然変異体液滴の濃度の増加、及び/または;
3)平均よりも50%以上のスケールで突然変異体イベントの数の増加
によって特徴付けられるならば、NOI中に突然変異を含む標的DNAを含有すると仮定され得る。
【0183】
突然変異体液滴は、突然変異体検出プローブから陽性シグナルを与える液滴であり得る。本明細書では、「突然変異事象」は突然変異体液滴の数に等しい。
【0184】
サブプールの二次サブプールへの分割
NOI中に突然変異を保有する生物、またはその生殖部分を含むサブプールが一旦同定されると、次いで、本発明の方法は、該サブプールを複数の二次サブプールに分割するステップを含む。
【0185】
上記のように、サブプールの一部は、gDNA試料を調製するために使用されている可能性がある。これにより、サブプールの残余部分のみが二次サブプールに分割するために利用可能である。サブプールがいくつかの分画に分割され、二次サブプールを調製するために1つの部分のみが使用されることもまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0186】
各二次サブプールは、ただ1つの生物またはその生殖部分(複数可)を含み得る。あるいは、各二次サブプールは、複数の生物またはその生殖部分を含み得る。例えば、各二次サブプールは、複数の遺伝子型を表す複数の生物またはその生殖部分を含み得る。
【0187】
通常、サブプール、またはその分画は、複数の二次サブプール、好ましくは少なくとも5個の二次サブプールに、より好ましくは少なくとも10個の二次サブプールに、さらにより好ましくは少なくとも30個の二次サブプールに、さらにより好ましくは少なくとも50個の二次サブプールに、さらにより好ましくは少なくとも70個の二次サブプールに、さらにより好ましくは少なくとも90個の二次サブプールに分割される。原則として、二次サブプールの数に上限はない。
【0188】
しかしながら、プールは、典型的には最大50,000個、最大25,000個など、例えば、最大10,000個の二次サブプールに分割される。
【0189】
各二次サブプールは、複数の遺伝子型を表す1つ以上の生物、またはその生殖部分を含み得る。好ましくは、各二次サブプールは、1~100個の範囲、好ましくは1~50個の範囲、さらにより好ましくは1~20個の範囲で、異なる遺伝子型を有する生物、またはその生殖部分を含む。
【0190】
二次サブプールは、任意の望ましい方法で順序付けされてもよい。いくつかの実施形態では、二次サブプールは、限られた数の生物またはその生殖部分のみを含む。
【0191】
他の実施形態では、二次サブプールは、同じ遺伝子型の複数の生物を含む。これは、二次サブプールを生殖工程にかけることによって確実にすることができる。また、生殖工程は、単一の生物の子孫、またはその生殖部分が同じ二次サブプールに最後に行き着くことを可能にする方法で、サブプールを二次サブプールに分割する工程と同時に実施されることも可能である。
【0192】
本発明の方法は、二次サブプールからの1つ以上のgDNA試料(複数可)の調製を含む。二次サブプールが各遺伝子型の1つまたは少数の生物、またはその生殖部分のみを含む本発明の実施形態では、gDNA試料は、典型的には、例えば、上記の「DNA試料の調製」のセクションに記載されるように、各生物の、またはその生殖部分の試料から調製される。
【0193】
二次サブプールが、複数の各遺伝子型の個々の遺伝子型の生物、またはその生殖部分を含む実施形態において、gDNA試料は、二次サブプールの一部分から調製され得る。
【0194】
サブプールを二次サブプールに分割する方法の一例は
図1Cに示され、ここで、該図の第1の工程は、サブプールを分割すること、及びgDNA試料を得ることを示している。
【0195】
種が単細胞生物である本発明の実施形態では、二次サブプールは、例えば以下のようにして調製されてもよい。
-NOI中に突然変異を含むサブプールの同定後、該サブプールの各単細胞生物は、単細胞生物のそれぞれがクローン性培養物を生じるように、別々の方法で繁殖させることができる。これは、固体培地上の各クローンのコロニーを培養することによって、または液体培地、例えば、マイクロチューブまたはマイクロタイタープレートのウェル中の別個の空間で各クローンを培養することによって行うことができる。二次サブプールは、複数のクローンからの単細胞生物を組み合わせることによって形成され得る。
-単細胞生物は、対象のサブプールの同定直後に二次サブプールに分割さてもよく、各二次サブプールは生殖が可能であってもよい。
【0196】
一実施形態では、二次サブプールは、以下の
i)NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含むサブプールを提供する工程と;
ii)クローン様式で該サブプールのいくつか、または全ての生物を繁殖させて、クローン性培養物を得る工程と;
iii)複数の該クローン性培養物からの生物の分画を組み合わせて、二次サブプールを得る工程と、によって調製される。
【0197】
上記のように、gDNA試料は、サブプールの生物の一部から調製され得るが、サブプールの残りの生物は保存され得る。生物が単細胞であるとき、該生物は保存のために凍結され得る。そのような実施形態では、上記の工程i)は、該生物の育成に適した温度での培地中でのインキュベーションによって生物を蘇生させる工程を含み得る。好ましくは、該蘇生工程は最小限の生殖のみを含む。
【0198】
上述の工程ii)は、例えば、生物を固体培地上に、該培地上で互いに生物から空間的に分離するために十分低い力価でプレーティングすることによって実施されてもよい。
【0199】
上述の工程iii)は、10~1000個の範囲、好ましくは10~500個の範囲、より好ましくは10~100個の範囲、例えば、30~70個の、個々のクローン性培養物の分画を組み合わせることを含み得る。各二次サブプールの2つのコピーを得ることが好ましい場合がある。これは、上記のように該分画を組み合わせ、次いで、各二次サブプールを少なくとも2つの部分に分割することによって行うことができる。あるいは、各二次サブプールの2つのコピーは、最初から、2つの異なる容器内の同じクローン性培養物の分画を組み合わせることによって調製することができる。典型的には、サブプールの一方の部分は、gDNA試料を調製するために使用され、他方は保存される(例えば、凍結保護剤の存在下で凍結される)。gDNA試料の調製前及び/または保存前に、二次サブプールに生殖工程、例えば、生物の育成に有用な温度での培養培地中でのインキュベーションにかけてもよい。
【0200】
種が植物である本発明の実施形態では、二次サブプールは、サブプール内の各種子の試料を得て、所定数の種子からの試料を組み合わせることによって調製され得る。そのような実施形態では、1つの二次サブプールの種子と該二次サブプールの試料を識別できるように、二次サブプールを順序付けることが重要である。これにより、本発明の一実施形態では、本方法は、下記の工程を含む:
-植物の複数の種子、例えば、穀粒を含むサブプールを提供する工程であって、該サブプールがNOI中に突然変異を含む、工程。
-該サブプールの種子を、それぞれが少なくとも1つの種子、例えば、1~100個の種子を含む二次サブプールに分割する工程。
-二次サブプールの各種子から試料を、これらを植物に成長させるために十分に無傷なままにする様式で取得し、各二次サブプールの全ての種子からの全ての試料を組み合わせる工程。
-該組み合わされた試料からgDNA試料を調製する工程。
【0201】
上記で概説した工程は、
図2Dの上部に、穀粒を例として使用して図示されている。これにより、本方法は、
図2Dに示す工程を含み得る。また、
図2Dに図示する工程は、任意の顕花植物を使用して行うことができ、したがって、穀物に限定されない。さらに、
図2Dに図示する工程は、任意の数の変異植物を使用して実施することができる(
図2Dに提供された数字は、単に1つの例を表す)。
【0202】
サブプールを二次サブプールに分割する方法の一例は、本明細書で以下のWS4で記載される。
【0203】
二次サブプールの同定
発明の方法は、NOI(複数可)中に1つ以上の突然変異(複数可)を含む、生物のサブプールまたはその生殖部分を二次サブプールに分割し、続いて、NOI(複数可)によって特定される突然変異(複数可)を含む生物、またはその生殖部分を含む二次サブプールを同定する工程を含む。
【0204】
該二次サブプールの同定は、
a)それぞれが1つの二次サブプール内の各遺伝子型からのgDNAを含む、gDNA試料を調製する工程であって、これは、例えば、上記「DNA試料の調製」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施されてもよい、工程と;
b)標的配列を増幅するために複数のPCR増幅を実施する工程と;
c)NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより、該二次サブプール(複数可)を同定する工程であって、これは、例えば、以下の「PCR増幅産物(複数可)の検出」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施されてもよい、工程と、を含むことができる。
【0205】
上記のPCR増幅は、標的配列の任意のPCR増幅であり得る。これにより、該PCR増幅は、従来のPCR増幅であってもよく、または、本明細書で上記に記載されるような複数の区画化されたPCR増幅を含むPCR増幅であってもよい。
【0206】
該PCR増幅のそれぞれは、一般に、1つの二次サブプールのgDNA試料、標的配列に隣接するプライマーのセット、及びPCR試薬を含む。プライマーは、上記の「標的配列に隣接するプライマー」のセクションにおいて本明細書に記載されるプライマーのいずれかであってもよい。PCR試薬は、上記の「PCR試薬」のセクションにおいて本明細書に記載されるPCR試薬のいずれかであってもよい。特に、PCR試薬は、ヌクレオチド及び核酸ポリメラーゼを含む。好ましくは、PCR試薬はまた、上記の「PCR産物(複数可)の検出」のセクションにおいて本明細書に記載されるように、1つ以上の検出プローブ、例えば、突然変異検出プローブ及び/または参照検出プローブも含む。
【0207】
二次サブプールは、例えば、NOI(複数可)中に突然変異を含むPCR増幅産物(複数可)がPCR増幅のプロセスの後またはプロセス間に直接検出することができるならば、直接的に同定され得る。これは、例えば、PCR増幅産物(複数可)がNOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む標的配列を含むならば、PCR増幅が検出可能なシグナルを生じる検出手段を含む場合に行われ得る。そのような検出手段は、本明細書で以上の「PCR増幅産物(複数可)の検出」のセクションでより詳細に記載されており、例えば、突然変異検出のためのプローブを含み得る。
【0208】
該突然変異(複数可)を含む二次サブプールを同定する方法の一例が
図1Cの下部に図示されており、以下の工程:
-二次サブプールを提供する工程と;
-該二次サブプールの一部から試料を調製する工程と;
-該試料からgDNA試料を調製する工程と;
-全ての二次サブプール、例えば、プレート、例えばマイクロタイタープレートにおける個々のウェル中からの全ての個々のgDNA試料でPCR増幅を準備する工程と;
-NOI(複数可)中に突然変異を含む標的配列の存在を検出する工程と、を示している。
【0209】
二次サブプールの同定のための方法のより具体的な例を
図2Dに示す。この例では、対象の種は穀物植物である。
図2Dに提供された特定の数字は単なる例であり、当業者であれば、本方法が別の数の穀粒を使用して実施できることを理解するであろう。
【0210】
NOI特異性突然変異(複数可)を含む二次サブプールの同定は、本明細書で以下のWS4に概説されるように行うことができることは注目に値する。
【0211】
生物の同定
一旦生物、またはその生殖部分を含む二次サブプールが同定されると、本方法は、NOI(複数可)の突然変異(複数可)を含む生物の同定を含む。
【0212】
これは、種及び二次サブプールに依存して、多くの方法で行うことができる。
【0213】
二次サブプールが1つの生物、またはその生殖部分のみを含む本発明の実施形態では、関連する二次サブプールが同定されるとすぐに、生物、またはその生殖部分(複数可)が同定される。
【0214】
二次サブプールが2つ以上の生物、またはその生殖部分(複数可)を含む本発明の実施形態では、本方法は、典型的には、生物(複数可)を同定する工程を含む。それに先立って、生物またはその生殖部位の同定と同時に、あるいはそれに続いて、NOI(複数可)の突然変異(複数可)を含む二次サブプールを生殖工程にかけてもよい。
【0215】
種が単細胞生物である本発明の実施形態では、該生殖工程は、生物のクローン展開、例えば、二次サブプールの生物のそれぞれを空間的に分離する様式でクローニングすることによるものであり得る。これにより、本方法は、
i)NOI中に突然変異を含む二次サブプールを提供する工程と;
ii)該サブプールの生物の一部または全てをクローン様式で生殖する工程と;
iii)NOI中に突然変異を含む生物を含むクローンを決定する工程と、含むことができる。
【0216】
上述の工程ii)は、例えば、固体培地上に生物を、該固体培地上の各生物を空間的に分離するために十分低い力価でプレーティングすることによって実施されてもよい。
【0217】
上記の工程iii)は、各クローンの分画からgDNA試料を調製し、PCR増幅、例えば、本質的に上記「二次サブプールの同定」のセクションにおいて本明細書に記載されるPCR増幅を行うことを含む。
【0218】
種が植物であり、二次サブプールが該植物の種子を含む本発明の実施形態では、本方法は、
A.NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む、生物、またはその生殖部位を含む二次サブプールを同定する工程と;
B.該二次サブプール内の全ての種子を栽培して発芽させ、任意に各種子から植物を発育させる工程と;
C.各発芽した種子から試料を得る工程と;
D.NOI(複数可)中の該突然変異(複数可)の存在について該試料を試験し、これによって、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を保有する1つの植物を同定する工程であって、該試験が、任意の方法、例えば、該試料からgDNA試料を調製し、本明細書で上記に記載されるようにPCR増幅を実施することによって実施されてもよい、工程と、を含むことができる。
【0219】
上記の工程B.では、該種子は、例えば、発芽され、根、茎及び葉を含む小植物に発達させることが可能であり得る。そのような実施形態では、工程C.で得られた試料は、例えば、該小植物の葉、根または第1の葉の部分などのその部分であり得る。試料が得られた後、発芽した種子または小植物は成熟するまで発育させることができる。植物が成熟するまで発育させることも本発明の範囲内に含まれるが、この場合、例えば、工程C.で得られた試料は、葉、花、根、種子、茎またはそれらの一部であってもよい。
【0220】
NOI(複数可)中に1つ以上の突然変異を含む、単一の生物、またはその生殖部位の同定に続いて、該生物、またはその生殖部分を、一般的には、突然変異を含む複数の生物を得るために、1つ以上の生殖工程にかける。
【0221】
同定された生物が問題の突然変異に関してヘテロ接合性である本発明の実施形態では、本方法は、次いで、該生物を該突然変異に関してホモ接合性に育種する工程を含み得る。
【0222】
NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含む生物の同定後、本発明の方法は、NOI(複数可)中の突然変異(複数可)を保存する様式で該生物をさらに育種する工程を含み得る。そのような育種は、NOI(複数可)中の突然変異(複数可)によって付与された形質を同一種の他の生物の形質と組み合わせる目的で実施することができる。
【0223】
本方法はまた、NOI(複数可)中の突然変異(複数可)の存在を確認する追加の工程も含んでもよい。例えば、標的配列、または標的配列を含む遺伝子は、その全体が配列決定され得る。
【0224】
スーパープール
本発明の一実施形態では、本方法は、NOI(複数可)において突然変異(複数可)を含む、本明細書でスーパープールとも称されるサブプールの群を同定する工程を含む。この方法において、非常に多数の可能性のある生物、またはその生殖部分を、NOI(複数可)における突然変異(複数可)の存在についてスクリーニングすることができる。該工程は、好ましくは、プールをサブプールに分割し、gDNA試料をサブプールから調製した後に、例えば、本発明の方法の工程c)の後に実施される。
【0225】
したがって、本方法は、工程c)の後に実施される以下の工程を含む:
-各サブプールからの各gDNA試料の分画を得る工程と、
-複数のサブプール分画をスーパープール中に組み合わせて、これにより、複数のサブプールのgDNAを含むスーパープールのgDNA試料を得る工程と、
-それぞれがスーパープールのgDNA試料を含む複数のPCR増幅を実施して、これにより標的配列を増幅する工程であって、各PCR増幅が、それぞれが該gDNA試料の一部、標的配列に隣接するプライマーのセット及びPCR試薬を含む複数の区画化PCR増幅を含み、該PCRが、例えば、以下の「スーパープールでのPCR増幅」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施することができる、工程と、
-NOI(複数可)における突然変異(複数可)を含む標的配列(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより、該突然変異(複数可)を含むスーパープール(複数可)を同定する工程であって、該検出の工程が、例えば、上記の「PCR産物の検出」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施することができる、工程と、を含むことができる。
【0226】
いくつかの実施形態では、スーパープールのgDNA試料を富化することが好ましい場合がある。これは、NOI(複数可)において突然変異(複数可)を含む標的配列(複数可)の特異的検出の助けとなることができる。富化の工程は、
-上記記載のように、複数のサブプールのgDNAを含むスーパープールのgDNA試料を提供する工程と、
-それぞれがスーパープールのgDNA試料を含むPCR増幅を実施する工程であって、各PCR増幅が、標的配列に隣接するプライマーのセット、ブロッキングプローブ及びPCR試薬を含む、工程と、を含むことができる。
【0227】
富化の工程中に実施されるPCR増幅は、典型的には、従来のPCR増幅であり、例えば、以下の「PCR」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施することができる。しばしば、このPCRは、比較的少数のサイクル、例えば、10~30の範囲の、例えば、15~25のPCRサイクルの範囲を含む。
【0228】
ブロッキングプローブは、典型的には、参照NOIを含む標的配列の増幅を阻害するように設計されたプローブである。したがって、ブロッキングプローブは、例えば、
・DNAポリメラーゼによって3’末端で伸長され得ない;
・NOIの所定の突然変異を含む標的配列よりも参照NOIを含む標的配列またはその相補的配列に優先的に結合する、オリゴヌクレオチドであり得る。
【0229】
ブロッキングプローブは、典型的には、10~30の範囲のヌクレオチドを含む。特に、ブロッキングプローブは、参照NOIを含む標的配列に同一であるか、または相補的な10~30の範囲のヌクレオチドの連続した配列を含むことができる。さらに、ブロッキングプローブは、典型的には、DNAポリメラーゼによるプローブの伸長を阻害するブロッキング剤に連結している。
【0230】
該ブロッキング剤は、例えば、ブロッキングプローブの大部分の3’ヌクレオチドに共有結合する部分であってもよい。実際には、大部分の3’修飾は、伸長を遮断するであろう。例えば、該ブロッキング剤は、2’、3’-ジデオキシCスペーサ、3’ddC及び3’逆向きdTからなる群から選択することができる。ブロッキング剤はまた、末端3’ヒドロキシル基の、例えばアミノ基(例えば、3’アミノ)またはアルキル、例えば3’C3スペーサによる修飾であってもよい。ブロッキング剤はまた、3’ヌクレオチドのリン酸化であってもよい。
【0231】
一旦、スーパープールが、NOI(複数可)中に1つ以上の突然変異を含むことを同定したら、工程d)及び相続の工程を実施することができる。しかしながら、工程d)は、スーパープール内に含まれるサブプールのgDNA試料を用いてPCR増幅を準備するように制限され得る。
【0232】
スーパープールの同定はまた、工程b)のサブプールの準備の直後に実施されてもよい。この場合、本方法は、工程b)の後に、以下の:
-サブプールが、各遺伝子型のわずか数種の、例えば1種の生物のみ、またはその生殖部分を含むならば、このときは、該サブプールが、複製の工程を受けてもよい工程と、
-サブプール内の各遺伝子型を代表する、各サブプールの分画を調製する工程であって、サブプールの残りの部分もまた、サブプール内の各遺伝子型を代表する、工程と、
-複数の分画をスーパープールに組み合わせて、これにより、複数のサブプールからの生物、またはその生殖部分を含むスーパープールを得る工程であって、生物、またはその生殖部分が、1つのスーパープール内にのみ存在する、工程と、
-それぞれがスーパープール内の各遺伝子型からのgDNAを含むgDNA試料を調製する工程であって、これが、例えば、上記「DNA試料の調製」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施されてもよい、工程と;
-それぞれがスーパープールのgDNA試料を含む複数のPCR増幅を実施して、これにより標的配列を増幅する工程であって、各PCR増幅が、それぞれが該gDNA試料の一部、標的配列に隣接するプライマーのセット及びPCR試薬を含む複数の区画化PCR増幅を含み、該PCRが、例えば、以下の「スーパープールでのPCR増幅」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施されてもよい、工程と;
-NOI(複数可)において突然変異(複数可)を含む標的配列(複数可)を含むPCR増幅産物(複数可)を検出し、これにより、該突然変異(複数可)を含むスーパープール(複数可)を同定する工程と、を含むことができる。
【0233】
このような実施形態では、スーパープールのgDNA試料が、該スーパープール内の各遺伝子型の生物の複製のための潜在能力を維持する方法で調製されることは重要ではない。これが実現されるのは、典型的には、各スーパープールが多数のサブプールからのDNAを含有し、各サブプールが、サブプール内の各遺伝子型を代表する生物(またはその生殖部分)を含むためである。
【0234】
一旦、スーパープールが、NOI(複数可)中に突然変異(複数可)を含むことを同定したら、次いで工程c)及び後続の工程を実施することができる。しかしながら、工程c)は、スーパープール内に含まれるサブプールのgDNA試料を調製するように制限され得る。
【0235】
任意の所望の数のスーパープール、例えば、5~100の範囲、例えば5~50の範囲、例えば5~20の範囲のスーパープールが調製されてもよい。
【0236】
スーパープールを同定するための方法の一例を
図1Dに示す。種が穀物である別の例を
図2Eに示す。
図2Eに提供した数は例示にすぎないこと、及び本方法が別の数の穀粒などで実施されてもよいことなどが理解される。
【0237】
スーパープールを調製しかつ同定する非限定的な例もまた、以下のWS5で本明細書に記載されている。
【0238】
スーパープールでのPCR増幅
本発明の方法は、それぞれが、例えば上記セクションにおいて記載されるように調製された1つのスーパープールからのgDNA試料を含む、複数のPCR増幅を実施し、これにより、標的配列を増幅する工程を含み、各PCR増幅は、それぞれが該gDNA試料の一部、標的配列に隣接するプライマーのセット及びPCR試薬を含む、複数の区画化PCR増幅を含む。
【0239】
一般的に、該PCRは、上記「複数の区画化PCR増幅を含むPCR増幅」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施することができるが、好ましくは、以下に記載される例外を伴う。
-区画化PCR増幅は、上記記載のように、液滴中に含まれ得る。スーパープールでのPCR増幅については、高感度が重要であるが、一方サブプールでのPCR増幅はより低い感度を必要とする。大量の試薬が、通常、高感度を用いるPCR増幅には必要とされるのに対して、低感度を用いるPCR増幅は、より少量の試薬を必要とする。これにより、スーパープールでのPCR増幅が、少なくとも200,000個内の、より好ましくは少なくとも250,000個の参照NOI内の1つまたは数個の突然変異体NOI(複数可)を検出するための感度を有することが好ましい。
-スーパープールでのPCR増幅については、各液滴が、非常に小さい容積、例えば、pLサイズの容積を有することが好ましい場合がある。したがって、液滴が、平均で0.1~10pLの範囲の容積を有することが好ましい。
-各PCR増幅は、任意の好適な数の区画に区画化することができる。しかしながら、1つの好ましい実施形態では、各PCR増幅は、200,000~100,000,000個の範囲の区画(例えば、液滴)に区画化される。例えば、各PCR増幅は、500,000~50,000,000個の範囲の区画(例えば、液滴)に区画化されてもよく、例えば、各PCR増幅は、1,000,000~10,000,000個の範囲の区画(例えば、液滴)に区画化されてもよい。各PCR増幅が、少なくとも1,000,000個、好ましくは、少なくとも3,000,000個、さらにより好ましくは、少なくとも5,000,000個、例えば少なくとも7,000,000個の区画(例えば、液滴)に区画化されることが好ましい場合がある。
-場合によっては、液滴は、PCR増幅産物(複数可)を検出するために使用することもできるシステムである、Raindance TechnologiesからのRainDrop Digital PCRシステムなどの市販の液滴発生器を用いて生成される。
【0240】
一旦区画化PCR反応を準備したら、増幅を、以下の「PCR」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施することができる。突然変異体NOI(複数可)を含む標的配列の存在の検出は、上記「PCR産物(複数可)の検出」のセクションにおいて本明細書に記載されるように実施することができる。
【0241】
一実施形態では、「PCR産物(複数可)の検出」のセクションにおいて本質的に記載される参照検出プローブ及び突然変異体検出プローブを用いて、検出が実施されることが好ましい場合があり、ここでは、過剰の突然変異体検出プローブが使用される。好ましくは、PCR反応は、参照検出プローブと比べて、少なくとも2倍、より好ましくは、少なくとも4倍過剰の突然変異体検出プローブを含む。参照検出プローブが使用されず、突然変異体検出プローブのみが使用されることも可能である。
【0242】
PCR
本明細書に記載の方法は、区画化PCR増幅を含むPCR増幅、例えば、「複数の区画化PCR増幅を含むPCR増幅」のセクションにおいて、または「スーパープールでのPCR増幅」のセクションにおいて記載されるPCR増幅を実施する多段階の工程を含む。
【0243】
一般的には、本明細書において、PCR増幅は、
1)gDNA試料、標的配列に隣接するプライマーのセット、及びPCR試薬を含むPCR増幅を準備する工程と;
2)PCR増幅を実施する工程であって、通常、
-PCR増幅を変性温度で、例えば85~100℃の範囲で、例えば、90~98℃の範囲で、二本鎖DNAを変性させるのに十分な時間、例えば、15~30分の範囲にわたって、例えば、30秒~5分の範囲でインキュベートする、工程;
-複数のサイクル、例えば、10~60サイクルの範囲、例えば20~40サイクルの範囲を実施する工程であって、下記の工程:
-プライマーと標的DNAとの間のアニーリングを可能にするための、例えば15秒~2分の範囲の、例えば30秒~1分の範囲のアニーリング温度でのインキュベーション(通常、アニ―リング温度は、プライマーの融解温度と同様であるか、またはこれよりも低く、例えば、45~75℃の範囲の温度であろう。アニーリング温度でのインキュベーションは、プライマーの伸長を可能にする)と;
-任意に、核酸ポリメラーゼが活性を有する伸長温度で、例えば、55~75℃の範囲の温度で、15秒~2分の範囲、例えば30秒~1分の範囲でのインキュベーションと;
-変性温度での、例えば85~100℃の範囲の、または90~98℃の範囲の温度での、15秒~2分の範囲の、例えば30秒~1分の範囲でのインキュベーションと;
-DNAポリメラーゼの伸長温度、例えば、55~98℃の範囲での、例えば15秒~20分の範囲の、例えば1~15分の範囲でのインキュベーションと、を含む、工程、を含む、工程と、を含む。
【0244】
増幅の工程の前に、例えば、先のリストの工程2)の前に、区画化PCR増幅を得るために、PCRは、複数の空間的に分離された区画に区分化されてもよい。これは、例えば、液滴を生成することによって、例えば、液滴生成油を添加して、液滴発生器で液滴を調製することによって達成することができる。
【0245】
GS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物
一実施形態では、本発明は、グルタミンシンセターゼ1をコードする遺伝子、特にアイソフォーム3(GS1-3)中に突然変異を保有するオオムギ植物に関する。該遺伝子はまた、HvGS1-3遺伝子と称されてもよく、そのタンパク質コード配列は、本明細書では配列番号1として提供されており、一方コードされたHvGS1-3酵素のアミノ酸配列は、配列番号2として提供されている。
【0246】
好ましくは、該突然変異は、該遺伝子中に、減少した活性を有する突然変異HvGS1-3酵素をコードする配列を付与する突然変異である。HvGS1-3の活性は、下記のうちの1つ以上である:
i アンモニウムの縮合を触媒することと;
ii アンモニア及びグルタミン酸のグルタミンへの縮合を触媒することと;
iii グルタミン酸、ヒドロキシルアミン、及びATPからのグルタミルヒドロキサメートの合成を触媒すること。
【0247】
特に、HvGS1-3の活性は、iiiにおいて記載されるようなものである。ここでは、この活性は、例えば、以下の「組換えHvGS1-3のインビトロ活性アッセイ」のセクションにおいて実施例19に記載されるように決定することができる。
【0248】
突然変異HvGS1-3タンパク質が、野生型タンパク質の活性よりも低い活性を有することが好ましい。しかしながら、この酵素は、好ましくは少なくともいくつかの活性を保持せねばならない。特に、該突然変異HvGS1-3タンパク質は、実施例19の凡例で記載されるように決定されるとき、野生型HvGS1-3タンパク質のkcat(分-1)の1~20%の範囲、例えば2~10%の範囲のkcat(分-1)を有し得る。
【0249】
野生型HvGS1-3酵素は、5つのサブユニットから構成される2つの環からなる十量体であると考えられている。一実施形態では、突然変異HvGS1-3タンパク質は、2つの環の間の中間相に沿って並ぶアミノ酸残基中に突然変異を含有する。特に、この突然変異は、配列番号2のアミノ酸残基141、235、285、287及び290からなる群から選択されるアミノ酸残基中の突然変異であり得る。
【0250】
このように、オオムギ植物は、HvGS1-3をコードする遺伝子中に突然変異を含むことができ、該遺伝子は、前述のアミノ酸残基のうちの1つの突然変異を保有する突然変異HvGS1-3タンパク質をコードする。
【0251】
特に、突然変異HvGS1-3タンパク質は、配列番号2の287番のアミノ酸残基中に突然変異、例えば、Glyから任意の他の天然に存在するアミノ酸残基などの任意の他のアミノ酸残基への突然変異を有するタンパク質であり得る。この突然変異はまた、配列番号2のアミノ酸残基287の突然変異、すなわち、Glyから極性または荷電アミノ酸残基への、例えば、Arg、Lys、Asp、Glu、Gln、Asn、His、Ser、Thr、Tyr、Cys、Met及びTrpからなる群から選択されるアミノ酸残基への突然変異、または、例えば、Arg、Lys、Asp、Glu、Tyr、Phe、Met及びTrpからなる群から選択されるアミノ酸残基への突然変異であってもよい。この突然変異はまた、Glyから荷電残基への、例えば、Arg、Lys、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸残基への、配列番号2のアミノ酸残基287の突然変異であってもよい。特に、この突然変異はまた、GlyからAspへの、配列番号2のアミノ酸残基287の突然変異であってもよい。
【0252】
したがって、HvGS1-3遺伝子中の突然変異は、前述の突然変異のうちの1つ以上をコードするHvGS1-3遺伝子をもたらす任意の突然変異であってもよい。一実施形態では、遺伝子突然変異は、前述のアミノ酸残基のうちの1つをコードするコドンを得るために、ヌクレオチド859、860及び861のうちの1つ以上の突然変異であってもよい。一例では、この突然変異は、GからAへのヌクレオチド860の遺伝子突然変異である。
【0253】
一実施形態では、突然変異HvGS1-3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸残基235番中に突然変異、例えば、Aspから任意の他のアミノ酸残基への突然変異を保有するタンパク質であってもよい。この突然変異はまた、Aspから正荷電残基への、例えば、Arg及びLysからなる群から選択されるアミノ酸残基への、配列番号2のアミノ酸残基235の突然変異であってもよい。したがって、HvGS1-3遺伝子における突然変異は、前述の突然変異HvGS1-3タンパク質のいずれかをコードするHvGS1-3遺伝子をもたらす任意の突然変異であってもよい。
【0254】
一実施形態では、突然変異HvGS1-3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸残基285中に突然変異、例えば、Glyから任意の他の天然に存在するアミノ酸などの任意の他のアミノ酸への突然変異を保有するタンパク質であってもよい。この突然変異はまた、Glyから極性または荷電アミノ酸、例えば、Arg、Lys、Asp、Glu、Gln、Asn、His、Ser、Thr、Tyr、Cys、Met及びTrpからなる群から選択されるアミノ酸残基への、配列番号2のアミノ酸285の突然変異であってもよい。したがって、HvGS1-3遺伝子における突然変異は、前述の突然変異HvGS1-3タンパク質をコードするHvGS1-3遺伝子をもたらす任意の突然変異であってもよい。
【0255】
一実施形態では、突然変異HvGS1-3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸残基290中に突然変異、例えば、Argから任意の他のアミノ酸残基への突然変異を保有するタンパク質であってもよい。この突然変異はまた、Argから負荷電アミノ酸残基への、例えば、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸への、配列番号2のアミノ酸残基290の突然変異であってもよい。したがって、HvGS1-3遺伝子における突然変異は、前述の突然変異HvGS1-3タンパク質をコードするHvGS1-3遺伝子をもたらす任意の突然変異であってもよい。
【0256】
一実施形態では、突然変異HvGS1-3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸残基141中に突然変異、例えば、Trpから任意の他のアミノ酸残基への突然変異を保有するタンパク質であってもよい。この突然変異はまた、TrpからTyrまたはTrp以外の任意の他の天然に存在するアミノ酸への、配列番号2のアミノ酸残基141の突然変異であってもよい。したがって、HvGS1-3遺伝子における突然変異は、前述の突然変異HvGS1-3タンパク質のいずれかをコードするHvGS1-3遺伝子をもたらす任意の突然変異であってもよい。
【0257】
本出願はまた、以下の実施形態に関する。
【0258】
1.HvGS1-3をコードする遺伝子中に突然変異を有するオオムギ植物であって、前記突然変異遺伝子が、低減した酵素活性を有する突然変異HvGS1-3タンパク質をコードする、前記オオムギ植物。
【0259】
2.前記突然変異HvGS1-3タンパク質が、野生型HvGS1-3のkcatの1~20%の範囲の、グルタミン酸、ヒドロキシルアミン及びATPからのグルタミルヒドロキサメートの合成に関するkcat値を有する、実施形態1に記載のオオムギ植物。
【0260】
3.HvGS1-3型が、配列番号2のアミノ酸残基287における突然変異を保有する、実施形態1~2のいずれか1つに記載のオオムギ植物。
【0261】
4.実施形態1~3のいずれか1つに記載のオオムギ植物から調製される、麦芽。
【0262】
5.実施形態1~3のいずれか1つに記載のオオムギ植物から調製される、飲料。
【0263】
6.飲料の製造方法であって、前記方法が、
i.実施形態1~3のいずれか1つに記載のオオムギ植物の穀粒を提供する工程と、
ii.任意に、前記穀粒の少なくとも一部を麦芽製造し、これにより麦芽を得る工程と、iii.前記オオムギ及び/または前記オオムギ麦芽の抽出物を調製する工程と、
iv.前記抽出物を飲料に加工する工程と、を含む、前記方法。
【0264】
7.前記飲料がビールである、実施形態6に記載の方法。
【0265】
GASR7遺伝子中に突然変異を保有するコムギ植物
一実施形態では、本発明は、Aゲノム上のGASR7をコードする遺伝子中に突然変異を保有するコムギ植物に関する。該遺伝子はまたTaGASR7-A1とも称され、この配列は、番号NCBI:KJ000052でGenBankにおいて入手可能であり、コード配列は、本明細書で配列番号25として提供されている。GASR7のアミノ酸配列は、配列番号8として提供されている。
【0266】
好ましくは、該突然変異は、該遺伝子中に、低減した活性を有する突然変異GASR7酵素をコードする配列を付与する突然変異である。より好ましくは、この突然変異は、GASR7機能の全損失に至る突然変異である。GASR7機能の全損失は、例えば、GASR7ポリペプチドの不在であり得る。GASR7機能の損失はまた、増加した穀粒長さにつながり得る。
【0267】
特に、この突然変異が、GASR7の短縮型をコードするGASR7遺伝子につながる突然変異であることが好ましく、GASR7の該短縮型は、最大で91個のアミノ酸、例えば、配列番号8の最大91個の連続アミノ酸を含む。例えば、コムギ植物は、未成熟終止コドンに至るGASR7遺伝子中の突然変異、例えば、Trpをコードするコドンにおける終止コドンの形成をもたらす突然変異を含んでもよい。一実施形態では、コムギ植物は、配列番号25のコドン91(ヌクレオチド271~273)における、またはより5’に位置付けられた任意のコドンにおける未成熟終止コドンにつながるGASR7遺伝子中の突然変異を含んでもよい。
【0268】
一実施形態では、コムギ植物は、配列番号8のアミノ酸残基91番をコードする位置での未成熟終止コドンにつながるGASR7遺伝子中の突然変異を含んでもよい。
【0269】
本出願はまた、以下の実施形態に関する。
【0270】
8.GASR7をコードする遺伝子中に突然変異を保有する、コムギ植物。
【0271】
9.前記コムギ植物が、未成熟終止コドンにつながるGASR7をコードする遺伝子中に突然変異を保有する、実施形態8に記載のコムギ植物。
【0272】
植物性産物及びその産生方法
一実施形態では、本発明は、HvGS1-遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物、例えば、上記「GS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物」のセクションにおいて本明細書に記載のオオムギ植物のいずれかの植物性産物に関する。植物性産物は、植物それ自体またはその一部であってもよい。例えば、植物性産物は、オオムギ穀粒であってもよい。
【0273】
一実施形態では、植物性産物は、麦芽組成物である。麦芽組成物は、麦芽化オオムギ植物またはその一部を含むか、またはそれらからなることができ、例えば、麦芽化オオムギ穀粒、すなわち、HvGS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物、例えば、上記「GS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物」のセクションにおいて本
明細書に記載のオオムギ植物のいずれかからのオオムギ穀粒からなることができる。
【0274】
麦芽化オオムギ穀粒は、発芽の工程にかけられ、続いて乾燥の工程にかけられたオオムギ穀粒である。麦芽組成物は、加工麦芽を含むか、またはこれからなることができ、例えば、これは、「粉砕麦芽」または「細粉」であってもよい。したがって、該麦芽組成物は、
-穀物粒、例えば、オオムギ穀粒を浸漬する工程と、
-穀物粒を発芽させる工程と、
-該発芽させた穀物粒を、例えば、高温でキルン乾燥することによって、乾燥させる工程と、を含む方法によって調製することができる。
【0275】
本発明はまた、HvGS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物、例えば、上記「GS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物」のセクションにおいて本明細書に記載のオオムギ植物のいずれか1つから調製される麦汁に関する。麦汁は、例えば、麦芽、麦芽化していないオオムギ穀粒及び/または副原料をマッシュすることによって調製され得る水性オオムギ抽出物である。「副原料」は、例えば、穀物(例えば、オオムギ、小麦、トウモロコシ、またはコメ)が挙げられるが、これらに限定されない麦芽以外の任意の炭水化物源(全粒、またはひき割り、シロップまたはデンプンのような加工製品のいずれかとして)を含むと理解される。前述の副原料の全ては、主として、抽出物の追加の供給源として使用されてもよい(シロップは、通常、マッシング後に投入される)。マッシングの前に、麦芽は、通常、粉砕される。大きな断片、例えば全粒である副原料もまた、通常、粉砕される。
【0276】
麦芽化されていないオオムギ穀粒は、麦汁産生に有益な酵素、例えば細胞壁分解するか、またはデンプンを糖に脱重合することができる酵素を欠如するか、またはほんの限られた量のみのその酵素を含有する。したがって、麦芽化されていないオオムギがマッシングに使用される本発明の実施形態では、1つ以上の好適な、外部醸造酵素がマッシュに添加されることが好ましい。さらに、穀物麦芽が麦汁産生に使用される本発明の実施形態では、外部酵素が、マッシング中に添加されてもよい。好適な酵素は、リパーゼ、デンプン分解酵素(例えば、アミラーゼ)、グルカナーゼ[好ましくは、(1-4)-及び/または(1-3,1-4)-β-グルカナーゼ]、及び/またはキシラナーゼ(アラビノキシラナーゼなど)、及び/またはプロテアーゼ、または前述の酵素のうちの1つ以上を含む酵素混合物、例えば、Cereflo、UltrafloまたはOndea Pro(Novozymes)であってもよい。
【0277】
マッシングは、通常、該粉砕麦芽及び/またはオオムギ穀粒、及び任意に副原料を、水と共に、所定の高温でインキュベートすることによって実施される。通常、マッシングは、40~80℃の範囲の温度で実施される。インキュベーション温度は、一般には、一定に保たれる(等温マッシング)か、または徐々に上昇されるかのいずれかである。これは、例えば、逐次的方法で実行されてもよい。糊化温度が、通常の麦芽の糖化で通常観察されるよりも高い場合には、このときは、デンプンは、マッシュへの添加前に、糊化かつ液化され得る。いずれの場合にも、麦芽/オオムギ/副原料中の可溶性物質は、該液体分画中に遊離する。その後の濾過は、麦汁と残留固形物粒子との分離を付与し、後者はまた「ビール粕」と表示される。このようにして得られた麦汁はまた、「第一麦汁」と表示することができる。水などの追加の液体が、「スパージングと示される」プロセス中にビール粕に添加されてもよい。スパージング及び濾過の後に、「第二麦汁」が得られてもよい。さらなる麦汁が、この手順を繰り返すことによって調製されてもよい。麦汁の調製のために好適な手順の非限定的な例は、Briggsら(上記)及びHoughら(上記)によって記載されている。
【0278】
マッシング及び/またはスパージング後に、麦汁は、煮沸の工程(任意に追加の成分、例えば、ホップの存在下で)にかけられ、煮沸麦汁を得ることができる。
【0279】
本発明による麦汁は、第一麦汁、第二麦汁、さらなる麦汁または前述の組み合わせ、ならびに前述のいずれかの煮沸変形型であり得る。
【0280】
本発明の1つの好ましい実施形態では、植物性産物は、HvGS1-3をコードする遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物から調製される飲料、例えば、アルコール性オオムギ系飲料及び非アルコール性オオムギ系飲料などのオオムギ系飲料である。アルコール性穀物系飲料は、例えば、ビールまたは蒸留アルコールであってもよい。
【0281】
該ビールは、任意の種類のビール、例えばラガーまたはエールであってもよい。したがって、ビールは、例えば、アルトビール、アンバー・エール、バーレーワイン、ベルリーナー・ヴァイセ、ビエール・ド・ギャルド、ビター、ブロンド・エール、ボック、ブラウン・エール、カルフォルニア・コモン、クリーム・エール、ドルトムンダー・エキスポート、ドッペルボック、デュンケル、デュンケルヴァイツェン、アイスボック、フルーツランビック、ゴールデン・エール、ゴーゼ、グーズ、ヘーフェヴァイツェン、ヘレス、インディア・ペールエール、ケルシュ、ランビック、ライト・エール、マイボック、モルト・リカー、マイルド、メルツェンビア、オールド・エール、オード・ブライン、ペール・エール、ピルスナー、ポーター、レッド・エール、ロッゲンビアー、セゾン、スコッチ・エール、スチームビール、スタウト、シュヴァルツビール、ラガー、ヴィットビール、ヴァイスビア、及びヴァイツェンボックからなる群から選択されてもよい。
【0282】
該蒸留アルコールは、任意の種類の蒸留アルコールであってもよい。特に、蒸留アルコールは、HvGS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物、例えばオオムギ麦芽などの麦芽化穀物に基づくことができる。このような蒸留アルコールの非限定的な例としては、ウィスキー及びウォッカが挙げられる。
【0283】
飲料は、非アルコール性オオムギ系飲料などの非アルコール性飲料、例えば、ノンアルコールビールまたは非アルコール性麦芽飲料、例えばマルチナであってもよい。
【0284】
これらの飲料は、例えば、以下で本明細書に記載される方法のいずれかによって調製されてもよい。
【0285】
飲料の製造方法
一実施形態では、本発明は、飲料の製造方法に関する。このような方法は、
-HvGS1-3遺伝子中に突然変異、例えば、上記「GS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物」のセクションにおいて本明細書で記載された突然変異のいずれかを保有するオオムギ植物を提供する工程と;
-該植物またはその部分の水性抽出物を調製する工程と;
-任意に、該水性抽出物を飲料にさらに加工する工程と、を含むことができる。
【0286】
したがって、本発明は、一実施形態において、飲料を製造するための方法を提供し、該方法は、
a)HvGS1-3をコードする遺伝子中に突然変異、例えば、上記「GS1-3遺伝子中に突然変異を保有するオオムギ植物」のセクションにおいて本明細書で記載された突然変異のいずれかを保有するオオムギ植物の穀粒を提供する工程と、
b)任意に、該穀粒の少なくとも一部の麦芽組成物を調製して、これにより麦芽組成物を得る工程と;
c)該オオムギ及び/または麦芽組成物の水性抽出物を調製する工程と;
d)該抽出物を飲料に加工する工程と、を含む。
【0287】
工程b)は、上記「植物性産物及びその製造方法」のセクションにおいて本明細書で記載されるように実施することができる。そして工程c)は、例えば、麦汁を調製する工程であってもよく、すなわち、水性抽出物は麦汁であってもよい。該麦汁は、上記「植物性産物及びその製造方法」のセクションにおいて本明細書で記載された麦汁のいずれかであってもよく、これはまた、そのセクションで記載されたように調製され得る。
【0288】
工程d)は、該水性抽出物を発酵させる工程、例えば、該麦汁を酵母で発酵させる工程を含んでもよい。工程d)は、
d-i)抽出物を加熱する(例えば、追加の成分(複数可)、例えばホップの存在下で)工程と;
d-ii)加熱した抽出物、または加熱した麦汁を、酵母の存在下で発酵させる工程と;d-iii)任意に、1つ以上の追加の成分(複数可)を添加し、これによりビールを製造する工程と、を含むことができる。
【0289】
該追加の成分は、例えば、CO2または芳香化合物であってもよい。
【0290】
ビールを製造するための方法は、当該技術分野において周知であり、したがって、飲料を製造するための方法は、本発明のオオムギ植物を出発物質として使用することを伴うビールを製造するための任意の従来の方法であり得る。例えば、麦芽製造及び醸造に好適な方法の例の詳細な説明は、例えば、Briggsら(1981)及びHoughら(1982)による刊行物で見出すことができる。オオムギ、麦芽及びビール製品の解析のための多数の随時更新される方法は、例えば、限定されないが、American Association of Cereal Chemists(1995)、American Society of Brewing Chemists(1992)、European Brewery Convention(1998)、及びInstitute of Brewing(1997)で利用可能である。多くの特定の手順は、地元の消費者の好みに関連する最も重要な変更を伴って、所定の醸造所のために使用されることが理解される。いかなるこのようなビール製造方法も本発明で使用してもよい。
【0291】
本出願はまた、以下の実施形態に関する。
【0292】
10.fdc1活性の機能の全損をもたらす、FDC1遺伝子中に突然変異を保有する酵母であって、前記突然変異が、Trpをコードするコドンにおける終止コドンの形成をもたらす、前記酵母。
【0293】
11.前記酵母が、S.cerevisiaeであり、前記S.cerevisiaeが、S.cerevisiae ScfDC1のTrp 159をコードするコドンにおける終止コドンの形成をもたらす突然変異を保有する、実施形態10に記載の酵母。
【0294】
12.飲料の製造方法であって、前記方法が、
i.麦汁を提供する工程と、
ii.前記麦汁を、実施形態10~11のいずれか1つに記載の酵母によって発酵させる工程と、
iii.任意に、前記発酵させた麦汁を飲料に加工する工程と、を含む、前記方法。
【0295】
配列表
【表3-1】
【表3-2】
特に明記しない限り、全てのGenBank登録番号は、GenBankデータベースの2016年7月1現在のバージョンに関して与えられるものである。
【0296】
実施例
本発明は、WSの説明及び実施例によって例示され、これらは本発明を限定するものとして考えられるべきではない。別途指示がない限り、基本的な生化学的手法及び分子生物学的手法を、核酸、タンパク質(酵素を含む)、及び生物の取り扱いで利用した。
【0297】
以下に記載される全てのワークストリームは、例えば、使用される特定の数の穀粒、特定の濃度、及びPCRについての特定の条件などを含む。当業者であれば、異なる数の穀粒、異なる濃度、異なるPCR条件などの使用に提供される特定の実施例を適応させることができるであろう。
【0298】
WS1.1:ランダムに突然変異誘発させた穀粒の調製
工程1.1:突然変異誘発の手順
突然変異を誘発させるために、オオムギ植物から収集した穀粒を、Kleinhofら(1978)及びK.Breddamらへの米国特許第7,838,053号によるもの療法で提供される詳細に従って、NaN3突然変異原の溶液中でインキュベートした。この手順は、典型的には、タンパク質をコードするDNAのアミノ酸置換または翻訳停止についてのランダムに分布されたコドンを付与する、すなわち、突然変異誘発されたDNAによってコードされるタンパク質におけるタンパク質変化及び短縮につながる、オオムギ穀粒のgDNA中に点突然変異を誘発させる。しかしながら、本発明の方法は、非タンパク質コード領域、例えば、プロモーター、ターミネーター及びイントロンのgDNAにおける点突然変異を有する穀物植物の産生にも有用である。
【0299】
合計で500gの突然変異誘発させた穀粒、M0世代の全てを、畑の7.5m
2の区画に播種した。一部の例では、M1世代の穀粒を、畑の区画内で繁殖させて、最終的にM2またはM3世代の突然変異体植物を収穫した(
図2Aを参照)。M3世代の穀粒における突然変異は、10,000個の穀粒当たり0.9~2.3個に相当する頻度で発生すると予想した(Kleinhofsら(上記)を参照のこと)。
【0300】
WS2:突然変異穀物植物に由来する穀粒の順序付きライブラリーの作製
工程2.1:穀物植物の収穫、穂の脱穀
畑の各7.5m
2の「畑区画」(FP#01、FP#02など、
図2Bを参照)を、各々が0.45m2の大きさで、約300個の個々の植物を含有する、多数の「畑サブ区画」(FSP#01、FSP#02など、
図2Bの1で表示された動作)に分割した。1つのサブ区画中の全ての穂を、鎌を用いて手作業で収穫し、その後、単一の袋に収集した。個々の袋の内容物を、別々に脱穀して、それぞれが、約6000個の穀粒を含む「穀粒の合計」と表示した袋を得た(GT#01、GT#02など、
図2Bの2で表示された動作)。
【0301】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程2に関連するテーマを、下記の実施例に詳説する。
-実施例1:「畑区画」におけるオオムギ植物の生育;
-実施例2:個々の「畑区画」における穀粒の収穫。
【0302】
WS3:ライブラリー試料が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定
工程3.1:個々の「穀粒の合計」穀粒プールの2つの分画への分割
個々の「穀粒の合計」の袋における脱穀した穀粒を、それぞれ、約1500個の穀粒からなる「サブ穀粒の合計」の2つの分画に分割し(SGT#01、SGT#02など、
図2Cの動作1を参照)、この処理を、以下の工程3.2~工程3.4に詳説する。「サブ穀粒の合計」分画における穀粒の処理は、広い意味では、該穀粒分画(複数可)のうちのどれが、対象の突然変異(複数可)を含有するかを決定しようとするものである。明確にするためではあるが、工程3に関する動作には無関係に、約4500個の穀粒からなる「穀粒の合計」分画の残りを、工程4に関する説明で詳説されるように処理した。
【0303】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程3.1に関連するテーマを、下記の実施例で詳説する:
-実施例3:「サブ穀粒の合計」における穀粒の説明。
【0304】
工程3.2:「サブ穀粒の合計」の穀粒からの細粉試料の調製
1500個の穀粒を含有する各サブ穀粒の合計試料-すなわち、SGT#01、SGT#02などと表示された試料-を、標準的な実験室ミルを用いて、適用間の徹底的なクリーニングを行って粉砕し(
図2B、動作2を参照)、対応する細粉試料を得た-SFT#01、SFT#02など(
図2Cを参照)。
【0305】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程3.2に関連するテーマを、下記の実施例で詳説する:
-実施例4:「サブ細粉の合計」の試料に由来する穀粒の細粉の作製。
【0306】
工程3.3:細粉のアリコートからのgDNAの調製
それぞれが25gであり、「サブ細粉試料のアリコート」(ASFT#01、ASFT#02など)と表示される個々の「サブ細粉の合計」試料のアリコートを、別々の容器に分配した(
図2Cの動作3を参照)。
【0307】
次いで、gDNAを各細粉のアリコートから抽出し(
図2C、動作4を参照)、各抽出したgDNAを、試料が、試料の特定の「穀粒の合計」起源を意味する、gDNA(GT#01)、gDNA(GT#02)などと表示された状態で、マイクロタイタープレートの1つのウェル内に置いた。あるいは、抽出がマイクロプレートのウェル内で実施されてもよい。
【0308】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程3.3に関連するテーマを、下記の実施例で詳説する:
-実施例5:25gの細粉のアリコート(ASFT)の調製;
-実施例6:ASFTのgDNAの調製
【0309】
次に、「穀粒の合計」の個々の試料に由来するgDNAのアリコートを、場合によっては、2つの陰性対照試料を含む、新しい96ウェルマイクロタイタープレートに移した(
図2Cの動作5を参照)。その後の、例えば実施例7で詳説されるようなddPCR解析は、突然変異体植物のgDNAを含有する試料の同定の助けとなり得る。
【0310】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程3.4に関連するテーマを、下記の実施例セクションで詳説する:
-実施例7:ASFTに由来するgDNAによるddPCRベースの実験。
【0311】
WS4:対象の突然変異によって特徴付けられる個々の穀粒(複数可)の発見
工程4.1:「穀粒ライブラリープール」(GLP)の特定
例えば上記工程3.4において詳説した解析が、解析された96個の試料-すなわち、
図2CでgDNA(GT#01)、gDNA(GT#02)などで表示されたもの-のうちの1つ以上において突然変異gDNAの存在を示すシグナルを生成したと仮定すると、「穀粒ライブラリープール」(GLP#01、GLP#02など、
図2D、動作2)と表示された、「穀粒の合計」分画の4500個の穀粒が、対象の同一の突然変異を有する1つ以上の穀粒を含む可能性が高いと考えられた。本出願では、該GLPの処理は、「穀粒の合計」の試料に由来する処理されたアリコートにおいて検出された鋳型分子のものと同じ突然変異を保有し(
図2B、2C、及び2D)、かつ対応するddPCR解析において突然変異体シグナルをさらに発生する(
図2C、動作5に示すような)、特異的突然変異穀粒の発見の最終的な取り組みに関連するであろう。
【0312】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.1に関連するテーマを、下記の本公開の実施例セクションで詳説する:
-実施例8:「穀粒ライブラリープール」用の穀粒の収集。
【0313】
工程4.2:「穀粒ライブライープール」の「穀粒ライブラリープールの分画」への縮小
1つの特定のGTに由来する約4500個の穀粒を含有する完全GLP試料によって(そして、
図2C、動作5で示されたようなgDNAのddPCRベースの解析が、該DNAがgDNA中に突然変異を含有することを示すと仮定すると)、工程3.4の解析によって明らかにされたものと同一の特異的遺伝子突然変異をスクリーニングするのに、通常、12個未満の穀粒で十分であった。そうした理由から、対象のGLPの約1200個の穀粒の試料を調製して(
図2D、動作2)、FGLPと略される「穀粒ライブラリープールの分画」を得た。最終的に、各試料が、特定のFGLPからの12個の穀粒からなる(それぞれが二次サブプールを構成する)合計で96個の試料を単離した。
【0314】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.2に関連するテーマを、下記の本公開の実施例で詳説する:
-実施例9:「穀粒ライブラリープールの分画」の「穀粒ライブラリープール」からの取得。
【0315】
工程4.3:穀粒及び対応する細粉試料の分離
上記工程4.2に記載の調製した試料中の12個の穀粒のそれぞれを、胚乳中への細い穴を穿孔することによって損傷させた。損傷されたが生存能力のある穀粒を深型ウェルのマイクロタイタープレートの1つのウェルに移し(
図2D、動作3)、同じ穀粒を穿孔することによって遊離した細粉をプールし、第2のマイクロタイタープレートに移した(
図2D、動作4)。この手順を、残りの95個の試料について実行し(2つのプレートの同一の番号付けシステムを保持しながら)、穀粒試料を含む1つのマイクロタイタープレート(「ライブラリープールの分画からの穿孔した穀粒のプール」と表示、PDGLPと略される、
図2Dを参照)、及び胚乳細粉試料を含む1つのマイクロタイタープレート(「穿孔穀粒からの細粉のプール」と表示、PFGLPと略される、
図2D)を得た。
【0316】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の本工程4.3に関連するテーマを、下記の実施例で詳説する:
-実施例10:オオムギ穀粒の穿孔;
-実施例11:「穿孔穀粒からの細粉のプール」の作製。
【0317】
工程4.4:突然変異体植物の胚乳細粉に由来するgDNAの調製
上記工程4.3に記載のように調製されたマイクロタイタープレートの各ウェル中の細粉を、別個に、gDNAの抽出にかけた(
図2D、動作5)。該抽出は、NucleoSpin 96 Plant IIキット(Machery-Nagel)によって提供された推奨に基づいて、半自動化の手順を使用して、マイクロタイタープレートの個々のウェルが、12個のオオムギ穀粒の細粉に由来するgDNAを含有する、「gDNAのプール」を得た。
【0318】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.4に関連するテーマを、下記の本公開の実施例で詳説する:
-実施例12:穿孔穀粒からの細粉に由来するgDNAの精製(「gDNAのプール」)。
【0319】
工程4.5:突然変異体胚乳からのgDNAの解析
標準ddPCR解析を、対象の特異的突然変異を試験するためにプライマーセットを用いて、QX200液滴リーダー及び液滴発生器の利用のためにBio-Radによって提供された推奨に従って、上記工程4.4で記載したように調製されたgDNAの試料で実施した。個々のウェルに由来するgDNAの解析が、その試料中の突然変異DNAの存在を示すシグナルを生成したとしたならば(
図2D、動作6を参照)、gDNAが起源を有する穀粒のうちの1つまたは数個が対称の突然変異を含有することになる高い可能性がある。
【0320】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.5に関連するテーマを、下記の本公開の実施例で詳説する:
-実施例13:穿孔穀粒からの細粉のddPCRベースのgDNA解析。
【0321】
工程4.6:対象の突然変異体穀粒の同定
PFGLPと表示されたマイクロタイタープレートの試料は、細粉を含有したが(工程4.3を参照)、PDGLPと表示されたプレートの整合するウェルは、12個の対応の生きている穀粒を含有した。したがって、次の工程は、対象の12個の穀粒からなる試料を単離し(
図2D、動作7)、続いてこれらを発芽させることであった(
図2D、動作8)。
【0322】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.6のテーマを、下記の本公開の実施例で詳説する:
-実施例14:可能性のある突然変異体植物の発芽。
【0323】
工程4.7:形質の検証
可能性のある突然変異体が予想した特徴、すなわち、対象の形質を有するかどうかを決定するために、多くの方法が熟練した研究者に利用可能である。本発明の場合には、gDNAを発芽した苗から抽出し、上記工程4.6に記載のように同定かつ繁殖させて、ddPCR及びDNA配列決定を利用する複合解析によって、12個の可能性のある突然変異体のうちのどれが実際に対象の突然変異を保有するかを確認する(
図2D、動作9を参照)。
【0324】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.7に関連するテーマを、下記の本公開の実施例のセクションで詳説する:
-実施例15:ddPCR及びDNA配列決定を含む解析の詳細。
【0325】
WS5:gDNAの「スーパープール」の生成及び使用
工程5.1:突然変異オオムギ穀粒の超高スループット同定
本発明はまた、低保有率の突然変異の同定法を向上させる、2つの異なるデジタルPCR解析プラットフォームの組み合わせ使用も開示する。本明細書では、RainDance Technologiesにより市販されるRainDropプラットフォームを、突然変異植物に由来するgDNAの複合試料においてDNA突然変異を見出すために利用し、一方個々のオオムギ突然変異体に由来するこれらの穀粒抽出物を同定するために、Bio-Radが提供する方法を利用した。
【0326】
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下の工程4.7に関連するテーマを、下記の本公開の実施例のセクションで詳説する:
-実施例16:gDNAの「スーパープール」の作製;
-実施例17:「スーパープール」に由来するgDNAによるddPCR。
【0327】
単に簡単な概要を提供するためにまとめると、WS及び対応する実施例は、いかのようにアレンジされる:
WS2:
-実施例1:「畑区画」におけるオオムギ植物の生育;
-実施例2:個々の「畑区画」における穀粒の収穫。
WS3:
-実施例3:「サブ穀粒の合計」における穀粒の説明;
-実施例4:「サブ細粉の合計」の試料に由来する穀粒の細粉の作製;
-実施例5:25gの細粉のアリコート(ASFT)の調製;
-実施例6:ASFTのgDNAの調製;
-実施例7:ASFTに由来するgDNAによるddPCRベースの実験。
WS4:
-実施例8:「穀粒ライブラリープール」用の穀粒の収集;
-実施例9:「穀粒ライブラリープールの分画」の「穀粒ライブラリープール」からの取得;
-実施例10:オオムギ穀粒の穿孔;
-実施例11:「穿孔穀粒からの細粉のプール」の作製;
-実施例12:穿孔穀粒からの細粉に由来するgDNAの精製(「gDNAのプール」);
-実施例13:穿孔穀粒からの細粉のddPCRベースのgDNA解析;
-実施例14:可能性のある突然変異体植物の発芽;
-実施例15:ddPCRベースのスクリーニングを通して同定された突然変異体植物の詳細。
WS5:
-実施例16:gDNAの「スーパープール」の作製;
-実施例17:「スーパープール」に由来するgDNAによるddPCR。
【実施例0328】
実施例1:「畑区画」におけるオオムギ植物の生育
オオムギ穀粒を、本明細書で上記WS1において記載されたように、NaN3で突然変異誘発させた。突然変異誘発させたオオムギ穀粒を7.5m2の畑区画において繁殖させた。各区画において、250gの穀粒を播種し、成熟まで生育させた。
【0329】
実施例2:個々の「畑区画」における穀粒の収穫
収穫時に、畑区画を、それぞれがおよそ300個の植物を含む15~17のサブ区画に分割した。植物は鎌で収穫し、脱穀して、袋詰めした(各サブ区画を個別に)。したがって、1つの「穀粒の合計」袋中の穀粒は、300個の植物に由来した。
【0330】
実施例3:「サブ穀粒の合計」における穀粒の説明
1つの「穀粒の合計」試料の全ての穀粒を、穀粒試料分取器を用いて、等しいサイズの4つのランダム化分画に分割した。各分画は、1つの「穀粒の合計」試料の全穀粒量の25%を表す。これらの分画のうちの1つは、1つの「サブ穀粒の合計」を構成する。
【0331】
実施例4:「サブ細粉の合計」の試料に由来する穀粒の細粉の作製
1つの「サブ穀粒の合計」試料の全ての穀粒を、穀類製粉機(Retch,GrindoMix GM200)中に置いた。穀粒を、10,000RPMで30秒間粉砕した。得られた細粉(「サブ細粉の合計」;約75g)を紙袋にいれ、23℃で保管した。
【0332】
実施例5:25gの細粉のアリコート(ASFT)の調製
1つの「サブ細粉の合計」試料から、25gの細粉のアリコートを秤量した。25gの細粉のアリコート(ASFT)を、紙袋に移し、23℃で保管した。
【0333】
実施例6:ASFTの精製gDNAの調製
1つの25g細粉のアリコート(ASTF)を、250mLのガラス瓶に移し、30mLのH2O中に再懸濁させて、続いて、1MのNaOHでpH8.0に調整した、1.4MのNaCl、20mMのNa2EDTA、100mMのTris-HClを含有する、65℃に加熱した2%臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)緩衝液70mLを添加した。溶液をオートクレーブにかけた後に、続いて250μlの10mg/mlのRNase A及び250μlのプロテイナーゼKを補充し、これを規則的に混合してインキュベートし、RNA及びタンパク質を分解させた。50mLのアリコートを、50mLのファルコンチューブに移し、続いて、4000rpmで10分間の遠心分離によって、不溶性沈殿物を除去し、その後、24mLの得られた上清を新しい50mLチューブに移した。
【0334】
クロロホルムによる2回の連続する抽出(1回目は15mL、2回目は12.5mLで)の後に、gDNAを含む核酸を含有する15mLの水相を、0.04MのNaCl、50mMのTris-HClで調製され、1MのNaOHでpH8.0に調整した、0.5%のCTAB緩衝液30mLを含有する50mLのチューブに移した。このチューブを6~8回反転させて、室温で1時間インキュベートし、その後4000rpmで10分間遠心分離した。水相を廃棄するが、gDNAを含有する沈殿物を、1.2MのNaClの10mL中で、8℃で一晩かけてゆっくりと溶解させた。次に、10mLのクロロホルムを用いて抽出を行い、その後4000rpmで15分間遠心分離した。水相の9.5mLを5.5mLのイソプロパノールと合わせて、得られた試料を穏やかに6~8回反転させて、次いで室温で20分間インキュベートし、続いて4000rpmで10分間の遠心分離によって、gDNAを沈殿させた。
【0335】
gDNA含有沈殿物を、4000rpmで10分間の遠心分離に先立って、5mLの70%エタノールで洗浄し、得られた上清を廃棄し、その一方で沈殿したgDNAを、室温で約40分間乾燥させた。5mLのH2Oを添加後、65℃で30分間インキュベートしてgDNAを再懸濁させて、「サブ細粉の合計」に由来するgDNAの500μlを、対応するマイクロタイタープレートの特定の2mLの深型ウェルに移した。「個々のSFTのアリコート」に由来する異なるgDNA試料を含む該プレートを「精製gDNA」と表示し、長期貯蔵または実験解析のいずれかに利用した。
【0336】
実施例7:ASFTに由来するgDNAによるddPCRベースの実験
ddPCRを、液滴デジタルPCR QX200システム(Bio-Rad)を用いて、製造業者によって提供された使用説明書に従って実施した。野生型及び変異対立遺伝子に対する配列特異的プライマー及びプローブを、Bio-Radから購入した。
【0337】
解析の目的のために、別個のASFTの精製gDNA(
図2C参照)5μL、または酵母からのgDNA(酵母WS3に記載するように調製)の5μLを、11μLのプローブ用の2×ddPCR Supermix(No.dUTP;Bio-Rad)、900nMの標的特異的PCRプライマー、250nMの、それぞれ6-カルボキシ-フルオレセイン-FAM及びヘキサクロロフルオレセイン-HEXプローブで標識された突然変異体検出プローブ及び参照プローブを含有する17μLのPCR混合物に添加した。突然変異体検出プローブは、突然変異を含む標的配列に特異的に結合するが、一方参照検出プローブは、野生型配列に特異的に結合する。反応混合物をAutoDG液滴発生器(Bio-Rad)に充填し、製造業者のマニュアルに従って、液滴を発生させた。液滴エマルジョンを、標準PCR条件:95℃で10分間の変性、94℃で30秒間及び55℃で1分間の40サイクルのPCR、ならびに98℃で10分間の最終的伸長を用いて熱サイクルさせて、その後、マイクロタイタープレートを8℃で保存した。液滴中のPCR増幅を、QX200液滴リーダー(Bio-Rad)を用いて確認した。解析閾値を、野生型及び鋳型なしのddPCRの結果を比較することによって決定した。全てのデータを、上記閾値で評価した。
【0338】
データを、QuantaSoft、バージョンV1.7ソフトウェア(Bio-Rad)を用いて解析した。
【0339】
実施例8:「穀粒ライブラリープール」用の穀粒の収集
1つの「穀粒の合計」試料の全ての穀粒を、穀粒試料分取器を用いて、等しいサイズの4つのランダム化分画に分割した。各分画は、1つの「穀粒の合計」試料の全穀粒量の25%を表す。1つの「穀粒ライブラリープール」は、分画のうちの3つのプールされた穀粒を含有した。
【0340】
実施例9:「穀粒ライブラリープールの分画」の「穀粒ライブラリープール」からの取得
それぞれが1つの「穀粒ライブラリープール」からの12個の穀粒の96個の試料を順次取り出すことによって、「穀粒ライブラリープールの分画」を確立し、12この穀粒の各試料は、二次サブプールを構成する。
【0341】
実施例10:オオムギ穀粒の穿孔
「穀粒ライブラリープール」からの穀粒を、それぞれが12個の穀粒からなる、96個のアリコートに分離した。各12個の穀粒アリコートを1枚の秤量紙上に置き、次いで1対の鉗子で連続的に固定し、それと同時に、1.6mmのドリルを装備した彫刻盤(Marathon-3、Saeyang Microtech)を用いて、胚乳への2~3mmの深さの小さな孔を穿孔した。回転運動によって、胚乳からの細粉を穀粒の頂部及び周囲の秤量紙に移動させた。12個の穿孔された穀粒試料を、別の2mLのウェルのマイクロタイタープレート中に置き、「ライブラリープールの分画からの穿孔オオムギ穀粒のプール」とも表示される穿孔オオムギ穀粒の二次サブプールを得た(
図2D、動作3)。穿孔穀粒を、さらなる解析まで20℃で保管した。
【0342】
実施例11:「穿孔穀粒からの細粉のプール」の作製
それぞれが12個の穿孔オオムギ穀粒に由来する(実施例10で詳説)細粉を含む96個の細粉試料を、穿孔穀粒のものと一致する試料番号付けシステムを維持しながら、1.5mLのマイクロタイタープレートの別々のウェルに移した(「穿孔穀粒からの細粉のプール」、
図2D、動作4を参照)。
【0343】
実施例12:穿孔穀粒からの細粉に由来するgDNAの精製(「gDNAのプール」)
実施例11で詳説したように作製された、穿孔オオムギ穀粒の細粉プールを、NucleoSpin 96 Plant IIキット(Macherey-Nagel)の使用説明書に詳説された半自動化DNA抽出手順を用いてgDNAの抽出にかけた。したがって、マイクロタイタープレートの各ウェルは、12個の穀粒の細粉からのgDNAを含有した(
図2D、動作5)。
【0344】
実施例13:穿孔穀粒からの細粉のddPCRベースのgDNA解析
WS3の形質(
図2C及び実施例3~7を参照)を、合計で約6000個の突然変異穀粒のgDNAを代表する96個のgDNAアリコートの個々の試料(複数可)のうちのどれが、対象のヌクレオチド突然変異を含有するかを同定するように設計されたが、その次のWS4に特異的な取り組み(
図2D参照)は、特異的突然変異体穀粒を正確に示すように設計された。
【0345】
図2Dの動作6に示すように、主な取り組みは、12個の別個の穀粒からのgDNAの試料のどれが、ddPCR解析における肯定的な試験結果をもたらすかを決定することであった。したがって、実施例7で提供されたものと同一の反応条件及び解析パラメータを利用して、マイクロタイタープレート中のどのウェルが対象のgDNAを含有するかを識別することが可能であった。1つのヘテロ接合体突然変異穀粒を含む試料を、5%(±2.5%)の分画存在量を有すると定義し、その10%(±2.5%)がホモ接合の突然変異体穀粒を含む。
【0346】
上記の解析の取り組みに基づいて、可能性のある細粉プール、したがって対象のヌクレオチド突然変異を有する対応する穀粒プールを同定かつ選択することが可能であった。ホモ接合突然変異体及びヘテロ接合突然変異体を、大型植木鉢の土壌に移し、これを繁殖用に温室に移した。全ての陰性の苗を廃棄した。
【0347】
実施例14:可能性のある突然変異体植物の発芽
12個のオオムギ穀粒の細粉からのgDNAの解析が、突然変異体シグナルを生成したならば(
図2D、動作6を参照)、「ライブラリープールの分画からの穿孔穀粒のプール」の対応する穀粒を発芽させた(
図2D、動作7及び8)。
【0348】
実施例15:ddPCRベースのスクリーニングを通して同定された突然変異体植物の詳細
12個の穿孔穀粒からなる、1つの「ライブラリープールの分画からの穿孔穀粒のプール」の内容物を、9mmのペトリ皿(2mLのH2Oを添加した濾紙2枚(8.5mm、Whatman)を備えるように準備)に置いた。16℃で暗所において96時間の発芽期の後に、穀粒を土壌に載置させて、制御された条件下でさらに7日間発育させた。次いで、2×5mmの組織片を第一葉から取り出し、0.2mLのチューブに置いた。50μLの抽出溶液(Sigma)を、各葉に分注して、95℃で10分間インキュベートした。試料を室温まで冷却し、50μLの希釈溶液(Sigma)と混合した。gDNA試料を、10μLの抽出-希釈-混合物と30μLのH2Oを合わせることによって完成させた。
【0349】
解析の目的で、5μLの精製gDNAを、11μLのプローブ用の2×ddPCR Supermix(No.dUTP、Bio-Rad)、900nMの標的特異的PCRプライマー、250nMの突然変異体特異的(6-カルボキシ-フルオレセイン-FAM)プローブ及び野生型特異的(ヘキサクロロフルオレセイン-HEX)プローブを含有する17μLのPCR混合物に添加した。反応混合物を、AutoDG液滴発生器(Bio-Rad)に充填し、液滴発生を、製造業者のマニュアルに従って行った。液滴エマルジョンを、標準PCR条件:95℃で10分間の変性、94℃で30秒間及び55℃で1分間の40サイクルのPCR、ならびに98℃で10分間の最終的伸長を用いて熱サイクルさせて、その後、マイクロタイタープレートを8℃で保存した。液滴中のPCR増幅を、QX200液滴リーダー(Bio-Rad)を用いて確認した。試験閾値を、野生型及び鋳型なしのddPCRの結果を比較することによって決定した。得られたデータの全てを、上記閾値で評価した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。肯定的なddPCR事象の総数の50%が、突然変異体プローブ(FAM)に由来するならば、1つの個々の苗はヘテロ接合突然変異体とみなされた。肯定的なddPCR事象の総数の100%が、突然変異体プローブ(FAM)に由来するならば、1つの個々の苗はホモ接合突然変異体とみなされた。個々の突然変異体植物を、成熟まで生育させた(
図1D、動作9を参照)。
【0350】
実施例16:gDNAの「スーパープール」の作製
簡単に言うと、1つのライブラリープレートの全ての94個の「サブプール」の各gDNA抽出物アリコート(例えば、50μL)を、1つの「スーパープール」中にプールした。
【0351】
いくつかの実施形態では、gDNAのスーパープールを、ddPCR解析を実施する前に、さらに富化させる。
【0352】
したがって、例えば、スーパープールからのgDNAの2μLを、例えば、10μlの5×Q5反応緩衝液(New England Biolabs)、200μMのdNTP、0.02U/μlのQ5高性能DNAポリメラーゼ、100nMの標的特異的フォワードPCRプライマー、100nMの標的特異的リバースPCRプライマー、100nMのブロッキングプローブ及び水を含む標準PCR反応において増幅させてもよい。次いで、PCR混合物を、およそ20サイクルのPCRについての標準PCR条件を用いて熱サイクルすることができる。これは、gDNAの富化スーパープールの生成につながる。
【0353】
実施例17:「スーパープール」に由来するgDNAによるddPCR解析。
突然変異オオムギ穀粒によるスクリーニングの取り組みにおける改善されたスループットレートを得ることと並行して化学物質使用量を低減させるために、一方がRainDance手法(液滴作製でより優れたもの)及び他方がBio-Radによるもの(同時に処理される試料の数で際立っているもの)の2つの手法の併用を開発した。大まかに言えば、RainDance手法は、多数の突然変異体穀粒からdDNA鋳型を含有する特定のさらに複雑な試料を同定するために利用し(本明細書では、以下の「手順A」のセクションで詳説される)、一方後続のBio-Radベースの解析は、対象の突然変異によって特徴付けられる単一の穀粒を同定するために役立った(本明細書では、以下の「手順B」で記載される)。
【0354】
手順A:gDNAの16個の「スーパープール」を用いたRainDanceベースのddPCR
最初に、個々の「スーパープール」(例えば、4~8個のスーパープール)について、RainDropソース機器を用いて、液滴を生成した。RainDanceベースのddPCRに使用されるgDNAは、組み合わされたgDNA抽出物であってもよく、または、これは、実施例16で記載されるように作製されたgDNAの富化スーパープールであってもよい。例えば、1つの「スーパープール」からのgDNAの20μLのアリコートまたはgDNAの富化スーパープールの10μlのアリコートを、25μLのプローブ用Supermix(Bio-Rad)、液滴安定剤(RainDance)、900nMの標的特異的フォワードプライマー、900nMの標的特異的リバースプライマー、120~250nMの野生型検出プローブ(VIC)、250~440nMの突然変異体検出プローブ(FAM)、及びH2Oと組み合わせて、総反応物容量を50μLに調整した。4~8個の個々のgDNAの「スーパープール」を代表する、合計で4~8個の個々の反応混合物を、8チャネルのソースチップ(RainDance)に添加し、ソース機器(RainDance)で処理した。本明細書で上記に記載した手順の全体を、追加の「スーパープール」に対して繰り返すことができ、8~16個の試料の総数を後続の解析用にもたらす。
【0355】
本明細書で上記に記載した反応混合物から発生した液滴を含有する2つの8ウェルのストリップを密封し、内容物を、本明細書の実施例9に詳説したように増幅させた。その後、増幅混合物を検出機器(RainDance)に移し、RainDrop Analystデータ解析ソフトウェアを用いて解析した。
【0356】
16個の「スーパープール」の全体にわたって、突然変異事象の平均シグナルと比べて、対象の突然変異に関するより高いシグナルを明らかに示したこれらの「スーパープール」を、可能性のある突然変異体由来gDNAを含有するものとして定義した。
【0357】
手順B:「スーパープール」のBio-RadベースのddPCR解析
ddPCR解析を、本明細書の上記手順Aに詳説された、対象の「スーパープール」を構成する96個のgDNA試料のそれぞれのアリコートで実施し、突然変異体鋳型の存在を示した。解析を、WS3及びWS4について本明細書で上記に記載されたように行った。
【0358】
特に、データ解析は、所定の対象の突然変異を含む穀粒プールを選択することを目的とした。閾値のデータベースを、フルプレートについての全てのデータ点のプロットに対して個々に定義した。限定されるものではないが、標的濃度のプロット、分画存在量、及び同定された突然変異事象が挙げられる解析カテゴリを、候補選択に対して個々に評価した。
【0359】
分画存在量は、[(「参照検出プローブ」+「突然変異体検出プローブ」)のシグナル]で除算した[(「突然変異体検出プローブ」)のシグナル]として決定することができる。
【0360】
以下の特性が観察されるならば、試料は、突然変異体DNAを含有すると仮定された。-分画存在量の増加、
-突然変異体液滴のレベルの増加、または
-平均よりも50%以上高いスケールでの突然変異事象の数の増加。
【0361】
実施例18:グルタミンシンセターゼGS1-3に対する遺伝子中に特異的突然変異を有するオオムギ突然変異体についてのddPCRベースのスクリーニング
特異的突然変異を保有するオオムギ植物を、本明細書の上記ワークストリーム及び実施例で記載された方法を用いて同定した。記載されたように、これらの方法は、いかなる突然変異体の同定にも使用され得る。特異的突然変異、G→Aの同定は、オオムギグルタミンシンセターゼ1アイソフォーム3(HvGS1-3)の配列の287位におけるGlyのAsp酸残基への置換につながる。
【0362】
グルタミンシンセターゼ
グルタミンシンセターゼ1(GS1)は、アンモニウムまたはアンモニア及びグルタミン酸のグルタミンへの縮合を触媒することによる、高等植物における窒素同化に関与する重要な酵素である。窒素を豊富に含む土壌では、窒素の過剰利用可能性が、オオムギにおける登熟中の窒素蓄積の増加につながり得るので、麦芽の品質に悪影響を及ぼす。GS1中のノックアウト突然変異は、深刻な発育不全をもたらす可能性があり、植物全体の適応度に対するこの酵素の重要性を強調している(Tomoyuki Yamada及びMiyako Kusano、2014)。GS1の3つのアイソフォームがオオムギでは既知である(HvGS1-1、HvGS1-2、HvGS1-3)。3つのオオムギアイソフォームのうちで、HvGS1-3が、穀粒発育において主に活性であり、高アンモニウム条件下でアップレギュレートされる。突然変異戦略を、穀粒の窒素蓄積能力をさらに低下させて、最適な植物発育を維持することを目的として設計した。この突然変異戦略は、GS1-3の酵素活性を低下させるアミノ酸置換に焦点を合わせた。好適なアミノ酸置換を、タンパク質配列中の287位に同定した(タンパク質配列番号NCBI:AFX60877.1-本明細書では配列番号2として提供)。コドンGGC(ヌクレオチド859、860、861;GenBank番号NCBI:JX878491.1のCDS-本明細書では配列番号1として提供)をGACに変化させることは、タンパク質配列(タンパク質配列番号、NCBI:AFX60877.1)の287位においてグリシンからアスパラギン酸へのアミノ酸交換をもたらす。このアミノ酸変化は、負に荷電したアミノ酸をタンパク質配列に導入するであろう。GS1-3は、5つのサブユニットから構成される
2つの環からなる十量体であり、アミノ酸残基287が、2つの環の間の中間相に、かつ活性部位から離れて位置する状態である。したがって、負に荷電したアミノ酸の導入が、その反応を触媒する全体的な能力に影響を及ぼさないが、その代わりに十量体の組み立てにおける構造的変化を通して酵素活性を低下させ得ることを提唱する。
【0363】
ddPCRアッセイ
独特なddPCRアッセイを、具体的には、野生型コード配列(GenBank番号NCBI:JX878491.1)におけるヌクレオチド860位でのHvGS1-3の変異対立遺伝子と野生型対立遺伝子を識別するように設計した。突然変異体検出プローブは、ヌクレオチド860位でA塩基を含有するコード配列に相補的であった。参照検出プローブは、ヌクレオチド860位にG塩基を含有するコード配列に相補的であった。2つの隣接するプライマーを、コード配列中のヌクレオチド860を包囲するゲノム配列を増幅させるように設計した。
以下のプライマー及びプローブを、HvGS1-3遺伝子座に対して特異的に設計した:-標的特異的フォワードプライマー(配列番号3):
5’-GTGATCAAGAGGGCGATCAA-3’;
-標的特異的リバースプライマー(配列番号4):
5’-CAAGTCTCAACTCGCCGTAT-3’;
-突然変異体特異的検出プローブ(配列番号5):
5’-AAGACAACGAGCGC-3’-6-カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識付け;
-参照特異的検出プローブ(配列番号6):
5’-AAGGCAACGAGCGC-3’-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)で標識付け。
【0364】
ランダムに突然変異誘発させたオオムギ穀粒のプールを、本明細書の上記のWS1で記載されるように作製し、続いて、順序付きライブラリーを作製した。
【0365】
ライブラリー試料が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定(WS3)
一般的に、次の工程は、ライブラリーが突然変異穀粒を含有するかどうかを決定する、特に、下記の詳細で、本明細書の上記WS3及び実施例7で記載されたように決定するためのものであった。
-およそ120,000個の突然変異オオムギ植物を代表する、合計で376個のGLP(すなわち、376個のサブプール)を用いて、スクリーニングを実施した。ddPCRを、本質的に実施例7に記載されるように実施した;
-1つの5μLの、gDNAに由来するgDNA試料(GT#377~GT#470)を、17μlのPCR反応混合物を含有する各ウェルに添加し、上下にピペッティングすることによって、完全に混合した。
【0366】
PCR用のマイクロタイタープレートを、液滴解析用のQX200液滴リーダー(Bio-Rad)に装填した。得られたデータを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、それぞれチャネル1及びチャネル2の振幅についての増幅用に2700及び1500に設定した、2-Dプロットを用いて決定した。分画存在量についての個々の値の比較は、gDNA(GT#380)が、突然変異体の検出に関して、任意の他の試料よりも高いシグナルを提供することを示した。gDNA(GT#380)の分画存在量は、0.0077%と比べて0.089%であって、後者は、94個の試験したgDNA試料の全ての平均分画存在量を表している。
【0367】
対象の突然変異によって特徴付けられる個々の穀粒(複数可)の発見(WS4)
遺伝子突然変異を保有する個々のオオムギ穀粒を、下記の連続番号が付けられた詳細を含む、本質的に上記WS4においてに本明細書に記載されたように同定した。
1.HvGS1-3特異的ddPCRアッセイによるGT#377~GT#470に由来するgDNAの解析に基づいて、GLP#380の4500個の穀粒[陽性試料gDNA(GT#380)に一致する]が、対象の遺伝子突然変異を有する1つ以上の穀粒を含む可能性が高いと考えられた。
2.FGLP#380を、GLP#380から96×12個の穀粒試料を順次取り出すことによって確立した。各12個の穀粒のアリコートを、1枚の秤量紙の上に置き、次いで1対の鉗子で連続的に固定し、それと同時に1.6mmのドリルを装備した彫刻盤(Marathon-3、Saeyang Microtech)を用いて、胚乳への2~3mmの深さの小さな孔を穿孔した。回転運動によって、胚乳からの細粉を穀粒の頂部及び周囲の秤量紙に移動させた。12個の穿孔された穀粒試料を、別の2mLのウェルのマイクロタイタープレート中に置き、穿孔オオムギ穀粒の二次サブプールPDGLP#380を得た。それぞれが12個の穿孔オオムギ穀粒に由来する細粉を有する、96個の細粉試料を、穿孔穀粒のものと一致する試料番号付けシステムを維持しながら、1.5mLのマイクロタイタープレートの別々のウェルに移した(PFGLP#380)。
3.次に、PFGLP#380を、NucleoSpin 96 Plant IIキット(Machery-Nagel)の使用説明書に詳説されるような半自動化DNA抽出手順を用いて、gDNAの抽出にかけた。したがって、マイクロタイタープレートの各ウェルは、12個の穀粒の細粉からのgDNAを含有した。
4.PFGLP#380に由来するgDNAを、上記記載のように解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、2D-プロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2700、チャンネル2の振幅について1500に設定して決定した。分画存在量についての個々の値の比較は、PFGLP#380の試料のいずれも突然変異体穀粒を含有しないことを示した。GLP#380が突然変異体穀粒を含有する可能性が高いと考えられたため、第2のFGLP(FGLP#380-2)を確立することによって、追加の試料を調製し解析することを決定した。これは、PDGLP#380-2及びPFGLP#380-2の作製をもたらした。PFGLP#380-2からのgDNAを、上記記載のように解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、2D-プロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2700、チャンネル2の振幅について1500に設定して決定した。全てがPDGLP#380-2の3つの独立したウェルで3つの個々のヘテロ接合突然変異体の存在を示唆する、4.02%、4.11%及び5.55%の分画存在量を示したマイクロタイタープレートの3つの個々のウェル(C02、F04、F05)を同定した。
5.PDGLP#380-2のウェルC02及びF04からの全ての12個の穀粒を発芽させた。全ての24個の苗からの葉材料を採取し、REDExtract(Sigma Aldrich)を用いるDNA抽出にかけた。葉試料に由来するgDNAを、上記記載のように解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、2D-プロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2700、チャンネル2の振幅について1500に設定して決定した。PDGLP#380-2のウェルC02に由来する1つの苗は、41%の分画存在量を示し、ヘテロ接合突然変異体の存在を確認した。PDGLP#380-2のウェルF04に由来する1つの苗は、39.6%の分画存在量を示し、ヘテロ接合突然変異体の存在を確認した。
6.追加の形質の検証を、同定した突然変異体及び参照試料の両方での直接配列決定法を用いて実施した。REDExtract DNA抽出手順(Sigma Aldrich)を用いて、葉材料からDNAを抽出した。配列決定解析については、1μlの精製gDNA、20μlのREDExtract(Sigma Aldrich)、500nMの標的特異的フォワードプライマー、500nMの標的特異的リバースプライマー及び水を含有する50μlのPCR反応を準備した。試料を、次のPCR条件:94℃で2分間の変性、94℃で45秒間、58℃で45秒間、及び75℃で45秒間の38サイクルのPCR、ならびに72℃で5分間の最終的伸長を用いて熱サイクルさせて、その後、PCRプレートを8℃で保存した。個々のPCR産物を、NucleoSpin Gel及びPCRクリーンアップキットを用いて精製した。全ての試料を、標的特異的フォワードプライマー及び標的特異的リバースプライマーを用いて配列決定した。
7.ddPCR解析において突然変異に対して陽性であると同定された両方の苗は、所定のゲノム位置における遺伝子型に関してヘテロ接合であった。参照試料は、同じ位置においてホモ接合野生型遺伝子型を示した。
【0368】
実施例19:オオムギグルタミンシンターゼの組換え型の解析
3つの組換えHvGS1-3変異体の合成は、E.coli宿主細胞を利用し、続いて、親和性精製によって、この酵素を高純度に富化した。次の変異体をE.coli中で発現させた。
-Q:野生型参照-配列番号1;
-3864:アミノ酸交換G287Dを有する配列番号1、すなわち、突然変異体オオムギ植物(実施例18で記載されたように同定)によって発現される突然変異体タンパク質に一致する。
-LR:アミノ酸交換D300Nを有する配列番号1、すなわち、変化が酵素活性に及ぼす影響をほとんど有さないと予想される酵素変異体。
【0369】
酵素の存在下でのグルタミン酸、ヒドロキシルアミン及びATPからのグルタミルヒドロキサメートの合成に従って、3つのHvGS1-3変異体の活性を決定した。酵素反応速度を、グルタミン酸及びヒドロキシルアミンの異なる濃度で、全ての3つのHvGS1-3変異体について決定し、その結果を、それぞれ表1及び表2に示す。
【0370】
HvGS1-3及びLRについてのkcat及びkcat/KMは同様であったが、HvGS1-3 3864は、他の2つの変異体と比べて1桁分または2桁分低い値を一貫して明示した。反応速度データは、HvGS1-3 3864で同定された突然変異、Gly287からAspが、この変異体のいずれかの基質の結合及び利用に深刻な影響を及ぼすことを示した。ATP結合及び利用に関する反応速度値は、ヌクレオチドの高基質濃度における吸光度の変動の度合いが高いために、決定することができなかった。
【0371】
【表1】
【表2】
GS1-3複合体のオリゴマー化が、Qと比べて2つの変異体のいずれかに影響を与えたかどうかを決定するために、精製HvGS1-3のアリコートを、最初にサイズ排除カラム上を移動させた。全ての3つの変異体は、同じ溶出容量で主ピークを有した。
【0372】
この実施例で記載された結果を得るために利用された実験を説明する詳細な6工程を以下に記載する。
【0373】
工程1:異種遺伝子発現のためのHvGS1-3遺伝子配列の設計
登録番号JX878491.1でGenBankに寄託された、オオムギグルタミンシンセターゼアイソフォームGS1-3(HvGS1-3)のコード配列を、野生型HvGS1-3(Q)及び突然変異を含有する2つの型(3864またはLR)のいずれかを表す、3つの対応する遺伝子配列(GenScript,China)の合成のための基礎として用いた。野生型GS1-3遺伝子及びタンパク質配列を、本明細書では、それぞれ配列番号1及び配列番号2として提供する。全ての3つの変異体のタンパク質をコードするDNA配列を、MerckMillipore(ドイツ)から購入したE.coli発現プラスミドpET-28a(+)中に挿入し、続いて、標準的方法を用いて、BL21(DE3)菌株のE.coliの細胞の形質転換を行った。
【0374】
工程2:HvGS1-3の異種発現
HvGS1-3 Qで形質転換されたE.coli BL21(DE3)細胞またはpET-28a(+)中のその変異体を用いた。細菌を、30μg/mLのカナマイシンを含有するLB培地中で、標準的条件下で培養した。250μMのイソプロピルβ-D-1チオガラクトピラノシド(IPTG、Sigma-Aldrich)を添加して、遺伝子発現を誘導させた。発現は、120rpmで37℃にて4時間行った。8℃において4,000×gで15分間の遠心分離によって、細胞を採取した。上清を廃棄しながら、細胞ペレットを、10mLの緩衝液A(20mMのTris-HCl、pH8.0、500mMのNaCl、1mMのMgCl2)中に再懸濁させた。再懸濁した細胞を、さらに使用するまで-20℃に凍結させた。
【0375】
工程3:組換え遺伝子発現後のE.coli BL21(DE3)細胞の細胞溶解
形質転換し、凍結させたE.coli BL21(DE3)細胞を、先ず解凍し、次いでVibra細胞超音波処理装置(Sonics & Materials Inc.,USA)を用いて、氷上で30%の振幅で90秒間、5秒間のパルス及び5秒間の中断で破壊させた。超音波処理後、5μg/mLのDNasel(Sigma-Aldrich)を用いて、DNAを10分間分解させた。4℃で13,000×gにて10分間の遠心分離によって、溶解細胞を除去した。上清を0.45μmのフィルターを通過させて、新しいチューブにシリンジで注入した。
【0376】
工程4:固定化金属親和性クロマトグラフィーによるHvGS1-3の富化
ニッケル溶液で荷電した1mLの固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMC)を、5カラム容量の再蒸留水で洗浄し、同一容量の緩衝液A(この組成は上記に詳説)で平衡化させた。濾過した可溶性分画を、シリンジを用いて平衡化カラムに手動で注入し、未結合物質を収集し、4℃に維持した。緩く結合したカラム物質を、50mMのイミダゾールを含有する緩衝液A(Sigma-Aldrich)を用いて、10カラム容量(CV)にわたって洗い流した。HvGS1-3を、400mMのイミダゾールを含有する緩衝液Aを用いて、10CVにわたって同様な条件下で溶出させて、収集した。溶出タンパク質溶液を、10,000の公称分画分子量を有する再生セルロースから作製された遠心濾過機ユニット(Millipore,Ireland)上で、緩衝液Aに対して透析濾過を4回行った[過剰のイミダゾールを除去するために、8℃で3,000×g(SL-16R)にて20分間の遠心分離により]。
【0377】
工程5:組換えHvGS1-3インビトロ活性アッセイ
Wellner及びMeister(1966)によって記載された活性アッセイの改作を用いて、2つのHvGS1-3変異体の活性における変化を(HvGS1-3 Qのものと比べて)決定した。50μLの反応物は、100mMのTris-Hcl、pH8.0、50mMのMgCl2、20mMのATP、異なる濃度のγ-グルタミン酸ヒドロキシルアミン(L-グルタミン酸を変化させた場合、そうでなければ50mM)、異なる濃度のL-グルタミン酸(グルタミン酸ヒドロキシルアミンを変化させた場合、そうでなければ50mM)を含有した。反応を、37℃で平衡化させた平底の96ウェルマイクロプレート(Corning,USA)の半分の領域で調整した。精製HvGS1-3を1または5μg/mLの最終濃度で添加することによって、反応を開始させた。30分後、370mMのFe(III)Cl3、200mMのTCA、670mMのHClを50μL添加することによって、反応を停止させた。次いで、容量の微量な差を考慮に入れるために経路補正を用いて、SpectraMax 340PC384マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)で、A540nmを底部から測定した。GraphPad Prism(バージョン4、GraphPad Software,USA)を用いて、データをプロットした。
【0378】
工程6:サイズ排除クロマトグラフィー
3つのHvGS1-3変異体の等量を、Superdex 200(GE Life Sciences,USA)を含む10/300サイズ排除カラム上に個々に充填し、AKTA FPLC(GE LifeSciences)上の緩衝液A中で平衡化させた。結合タンパク質の溶出を、0.5mL/分で行い、タンパク質溶出の後にA280を測定した。
【0379】
実施例20:突然変異誘発させた酵母細胞に由来するgDNAを用いたddPCR解析
説明を明確にするために、かつ限定するものではないことを示すために、以下のテーマを本実施例で詳説する。
-パート1:ランダムに突然変異誘発させた酵母培養物の調製
-パート2:順序付きライブラリーの作製
-パート3:所定の突然変異を有するgDNAを含有するウェルの同定
-パート4:所定の突然変異によって特徴付けられた酵母細胞の富化
【0380】
WS1:ランダムに突然変異誘発させた酵母培養物の調製
工程1.1:突然変異誘発の手順
突然変異を誘発させるために、酵母菌株を、Methods in Molecular Biology,Yeast Protocols,V.313,2006)に記載されるプロトコールに従って、MNNG(メチルニトロニトロソグアニジン)による処理にかける。
【0381】
MNNGは、gDNAのグアニジンまたはチミンをアルキル化し、その後gDNAの複製時に、そのG・C対がA・Tへ移行することが知られている突然変異原である。このセクションで記載される方法は、定義されたアミノ酸コドンを未成熟終止コドンに変更する対象の遺伝子における点突然変異を同定することを目的とする。当業者であれば、他の種類の突然変異の同定に本方法を適応させることができるであろう。したがって、点突然変異は、短縮され、それに応じて非機能または欠陥タンパク質につながる。終止コドンを作成するための望ましい点突然変異は、標的化遺伝子/タンパク質の配列に基づいて定義される。対象の遺伝子の調節領域に影響を与える他の点突然変異も同様に、この方法によって同定可能である。
【0382】
突然変異誘発は、例えば、総細胞数2×107を有する酵母培養物で実施する。突然変異誘発のための酵母細胞のミューテーター状態を決定し、所望の突然変異率を確実にするように調整する。突然変異誘発条件は、通常、60~70%の生存率を供与するように調整される。突然変異原の濃度及び暴露時間は、酵母菌株によって変化する。
【0383】
WS2:順序付きライブラリーの作製
工程2.1.細胞生存性
生存細胞力価を決定し、全ての突然変異誘発させた酵母細胞を、Biomek FXpロボットを用いて、YPDを含む96ウェルプレート中にアリコートで接種する。3000~5000個の生存単細胞をウェル当たりに接種する。
【0384】
WS3:所定の突然変異を有するgDNAを含有するウェルの同定
工程3.1:突然変異誘発させた酵母細胞のライブラリーの作製
工程1.1からの96ウェルプレート中に接種した突然変異誘発させた酵母細胞は、標的化突然変異酵母を含有する総ライブラリーとみなされる。酵母細胞を3日間インキュベートして、成長飽和状態にさせる。増殖から3日後に、gDNA単離に使用するために、Biomek FXpロボットを用いて、最小成長培地中に再接種することによって、ライブラリーを増幅させる(コピー工程)。96ウェルプレート内の酵母細胞懸濁液の残りを、所望の突然変異体酵母を単離するための後工程用途のために、グリセロール(15%の最終濃度)と共に-80℃で保存する。
【0385】
工程3.2:酵母からのgDNAの単離
gDNAを調製するために、酵母細胞をDNA単離用の96ウェルプレートに移し、ロボットを用いるDNA単離の手順にかける(Biomek FXp、Agencount DNAdvanceキット及びBeckman Coulterからのプロトコール)。手順は、酵母細胞壁を分解しかつ細胞を破壊するためにリチカーゼ酵素を用いる追加の工程を伴う、製造業者の使用説明書に従う。プロトコールは、磁気ビーズによるgDNAの沈殿を使用する。96ウェルプレート中のgDNAを、所定の突然変異についての陽性プールを同定するために後工程用途に使用する。DNA濃度を、96ウェルプレートリーダーを用いて測定し、これと共にDNAの濃度を25ng/5μLに調整し、これをddPCRに直接使用する。96ウェルプレート中の元々の濃縮したDNAを後の使用のために保存する。
【0386】
工程3.3:ddPCRによる試料の解析
工程2.2にて96ウェルプレート様式で調製されたgDNAを定量し、濃度を25ng/5μLに調整する。陽性及び陰性対照DNA試料が含まれる。その後ddPCR解析を、各gDNA試料で、本質的に実施例7に記載されたように実施する。この段階で、遺伝子配列中のいくつかの、または全ての可能な位置における異なる点突然変異を認識し、未成熟終止コドンを作成するプローブのアレイを適用し、突然変異体同定の機会を向上させることができる。本方法は、所望の突然変異に対して陽性のウェル、すなわち、所望の突然変異を保有する酵母を含むウェルの同定を可能にする。
【0387】
WS4:所定の突然変異によって特徴付けられた酵母細胞の富化
工程4.1:プールされた酵母ライブラリーの作製
突然変異に対して陽性のウェルを含む96ウェルプレートを解凍し、陽性ウェルの内容物を新鮮なYPDブロスに接種(1:10)し、室温で回転させながら4~6時間インキュベートさせることによって酵母細胞を蘇生させる。酵母細胞のさらなる増殖がないことを確実にするために、蘇生させた酵母培養物を、後工程のプレーティングまで冷蔵庫に保存し、純粋な突然変異体培養物の単離を成功裏に完了する。プレーティング前に、生存酵母細胞を計数し、1mMのEDTAを含有するPBSで希釈し、その後、YPD寒天を含むQpix角型皿上でプレーティングし、プレート当たり2000~3000個のコロニーを得る。この方法を準備するためのプレートの数は、凍結ストックから蘇生させた後の生存酵母細胞の力価及び突然変異体同定の進捗に依存する。例えば、10~12個のQpixプレートは、個々のコロニーを生じる最大50,000個の単一細胞で接種することができる。最大1:5000の野生型:突然変異体の比を有する、パート3に記載された陽性プールの同定は、50,000個の単一細胞の中で、少なくとも10個の細胞が標的化突然変異体であることを示唆している。コロニーの成長を監視して、Qpixロボットで個々のコロニーを拾い上げることができるのに適切なサイズ及びコロニー間の距離を確実にする。一旦コロニーを拾い上げる準備ができたら、YPD成長させた酵母細胞を有する96ウェルプレートのライブラリーを、以下の方法で作成する:全てのQpixプレートからのコロニーをランダムに10個の96ウェルプレート内に収集し、これにより、各ウェルが、1:50に等しい野生型:突然変異体の最小可能性比で50個のコロニーのプールを含有することになる。これらのプレートをさらに処理して、gDNAを単離し、また凍結ストックを作製して、工程3.1(WS3)に記載されたようにさらなる後工程の用途のために-80℃で保存する。
【0388】
工程4.2:プールされたライブラリーからの酵母gDNAの単離
gDNAを50個の単離されたコロニーのプールから調製するために、工程3.1で得られた96ウェルプレート中の酵母培養物を、新鮮な最小成長培地中に再接種する。一旦成長が十分になったら、酵母培養物を、工程3.2(WS3)に記載されたようなロボットを用いるDNA単離の手順にかける。DNA濃度を、96ウェルプレートリーダーを用いて測定し、そしてDNAの濃度を25ng/5μLに調整し、アリコートをddPCRに直接使用する。96ウェルプレート様式中の元々の濃縮したgDNAを保存する。96ウェルプレート中のgDNAを、所定の突然変異を有する陽性プール/ウェルを同定するために、後工程用途に使用する。合計で10個の、gDNAを含む96ウェルプレートを調製する。
【0389】
工程4.3:ddPCRによる試料の解析
96ウェルプレート様式で工程3.2において調製されたgDNAを定量し、濃度を25ng/5μLに調整する。陽性及び陰性対照DNA試料が含まれる。その後ddPCR解析を、各gDNA試料で、本質的に実施例7に記載されたように実施する。複数のプローブが工程3.3で使用されるならば、このときは、この段階で、工程3.3において陽性プールの肯定的な同定を供与したプローブ(複数可)のみを適用する。本方法は、所定の突然変異を有する陽性のサブプール(複数可)の同定を可能にする。
【0390】
工程4.4:単一コロニー酵母ライブラリーの作製
工程4.3で同定した、陽性ウェル(複数可)を有する凍結した96ウェルプレートを用いて、単一コロニーの成長のためにプレーティングする。陽性ウェルからの酵母培養物を、新鮮なYPDブロス中に接種し、一晩培養する。1000個の細胞をYPD寒天(Qpix角型皿様式)上にプレーティングし、単一コロニーを得る。成長させたコロニーをQpixロボットで、YPDブロスを成長培地として含む10個の96ウェルプレート中に拾い上げる。これらのプレートをさらに処理して、gDNAを単離し、また工程3.1(WS3)に記載されたように、さらなる後工程の用途のために凍結ストックを作製する。
【0391】
工程4.5:単一コロニーのライブラリーからのgDNAの単離
gDNAを、工程4.2に記載されたように調製する。
【0392】
工程4.6:ddPCRによる試料の解析
工程4.5で調製されたgDNA、すなわち、96ウェルプレート様式におけるものを定量し、濃度を25ng/5μLに調整する。陽性及び陰性の対照DNA試料が含まれる。その後ddPCR解析を、実施例7に記載されたように実施する。この段階で、工程3.1において肯定的な同定を供与したプローブ(複数可)のみを適用する。本方法は、所定の突然変異を有する純粋な酵母培養物の同定を可能にする。本方法は、分離菌株のホモ接合またはヘテロ接合状態を決定することを可能にする。
【0393】
工程4.7:突然変異体酵母の純粋な培養物の単離
突然変異体酵母のストックを作製するために、陽性ウェル(複数可)からの酵母懸濁液を、YPD寒天上に広げ、単離されたコロニーの成長を開始させる。3つのコロニーを手動で拾い上げ、生物学的複製品としてさらに処理する。
【0394】
工程4.8:標的遺伝子または対象のgDNAストレッチの配列決定
工程4.7(WS4)からの同定された突然変異を有する酵母突然変異体分離菌株をgDNAの単離、続いて特異的PCR、得られたDNA断片のクローニング及びDNA配列決定の実施のために用いて、突然変異の同一性を確認する。
【0395】
工程4.9:突然変異の機能性
対象のホモ接合突然変異を有する酵母突然変異体を用いて、突然変異が予想した効果を有することを直接確認する。ヘテロ接合状態が決定され、かつ予想される効果を提供するために不十分と判明するならば、このときは、突然変異誘発が繰り返されるか、あるいは酵母分離菌株が胞子形成、続いて突然変異の分離を受けて、ホモ接合状態及び突然変異体表現型を確認するかのいずれかが行われる。対象の突然変異を有する酵母分離菌株を適用された目的に直接使用されるか、またはこれは、所望の表現型を制御するために酵母育種に使用される。
【0396】
実施例21
Saccharomyces cerevisiaeにおいては、フェルラ酸デカルボキシラーゼFdc1は、ケイ皮酸またはクマル酸を含む芳香族カルボン酸の脱炭酸に必須である。脱炭酸反応は、基質をそれらの対応するビニル誘導体に変換し、それらのいくつかは風味活性化合物として既知である。例えば、ビール発酵中に、Fdc1は、麦汁からのフェルラ酸を4-ビニルグアイアコールに変換し、4-ビニルグアイアコールは、最終ビールにおいてチョウジノキに似た香調として顕著になる。これらの香調は、特定のビール、特にドイツの小麦ビールに典型的であるが、ラガービールを含む他のものではフェノール系オフフレーバー(POF)とみなされる。ここでは、遺伝子ScFDC1中にナンセンス突然変異を保有するS.cerevisiaeの同定は、非GMO法により、それが記載される。同定した酵母はPOF陰性酵母菌株であると予想される。
【0397】
食品産業においては、選択された生物を改変するための分子遺伝学的手法の使用は望ましくなく、人々は古典的なランダム突然変異誘発手法及び対象の菌株を同定するための多大な時間を要するスクリーニングの使用に頼っている。以下に記載される方法は、ランダムに突然変異誘発させた生物の集団内で選択された対象の突然変異を保有する菌株を同定するためにそれほど時間を要さない手法を描いている。より具体的には、この実施例では、S.cerevisiae変種diastaticus菌株FS0105におけるScFDC1遺伝子の+476位におけるGからAへの移行をもたらす特異的ナンセンス突然変異(W159*)を保有する酵母菌株を記載する。ScFDC1遺伝子の配列は、番号NCBI:NM_001180847でGenBankにおいて入手可能であり、cDNA配列は、本明細書では配列番号26として提供され、fdc1のアミノ酸配列は、配列番号7として提供されている。
【0398】
WS1:FS0105酵母細胞のランダムに突然変異誘発させた集団の作製
工程1.1:菌株FS0105でのEMS突然変異誘発
突然変異を誘発させるために、酵母菌株FS0105を、「Methods in Yeast Genetics」(CSHL Press,2000)に記載されるプロトコールに従って、エチルメタンスルホネート(EMS)による処理にかけた。簡単に言うと、菌株FS0105をYPD培地中で一晩、定常期まで増殖させた。細胞を遠心分離によって採取し、滅菌蒸留水で1回、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)で1回洗浄した。細胞を、最終的に、0.1Mのリン酸緩衝液中に、約2×108細胞/mlに再懸濁させた。30μlのEMSを、2mlのセーフロック反応チューブ中の1mlの細胞に添加し、細胞をEppendorf Thermomixer comfort(1.5ml)上で、30℃及び1000rpmでおよそ75分間インキュベートし、通常、菌株FS0105に対して約60~80%の死滅率をもたらした。突然変異誘発を停止させるために、細胞を短時間の遠心分離によってペレット状にして、新しく調製した滅菌5%チオ硫酸ナトリウム溶液で3回、滅菌蒸留水で1回洗浄した。細胞を、最終的に、1mlのYPD中に再懸濁させて、Eppendorf Thermomixer comfort(1.5ml)上で30℃及び1000rpmで1時間インキュベートした。この段階で、細胞を4℃で保存することができるか、または後処理プロセス、例えば、複合培地にプレーティングすることによって死滅率を決定するために直ちに使用した。
【0399】
文献は、突然変異誘発直後に突然変異誘発させた酵母細胞を選択的圧力下に配置することが、細胞当たりの突然変異の数の大幅な増加をもたらすことを示唆しており(Ladaら、2013;Den Abtら2016)、このことは、対象の突然変異を同定するために、スクリーニングされる酵母細胞の数を大幅に低減することができる。したがって、プレート当たりおよそ2×107個の、生きているが突然変異誘発させた細胞を、2μg/mlの除草剤メトスルフロンメチルを含有するSD培地プレートにプレーし、除草剤耐性コロニーが選択的プレート上に現れるようになるまで、プレートを30℃で数日間インキュベートした。本発明者らは、全体でおよそ50,000個の除草剤耐性コロニーを目指した。細胞当たりの突然変異の数をさらに増加させるために、本発明者らは、除草剤耐性細胞を滅菌0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)でプレートから洗い流し、それらをおよそ2×108細胞/mlまで希釈し、上記記載の様にEMS突然変異誘発を繰り返した。この突然変異誘発及び選択のサイクルを合計で4回繰り返した。
【0400】
WS2:ランダムに突然変異誘発させたFS0105酵母細胞のランダムライブラリーの作製
工程2.1:突然変異誘発させたFS0105酵母細胞の総ランダムライブラリーの作成
EMS突然変異誘発の第4及び最終のラウンド(工程1.1を参照)の後に、それぞれの希釈物を複合培地プレートにプレーティングすることによって、生存細胞力価を決定した。その後、およそ1,200~1,500の生細胞/プレートを、YPDプレート上に
広げ、ペトリ皿を30℃で3日間インキュベートした。96個の別個のプレートから、3mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液で細胞を洗い流し、96個の「ライブラリープール」を形成した。これらのライブラリープールからのおよそ5×107個の細胞を、その後、DNA単離に使用し(以下を参照)、一方残りの細胞を遠心沈殿し、40%のグリセロール/10%のYP中に再懸濁させて、-80℃で冷凍し、全体でおよそ120,000~150,000個のEMS突然変異誘発させたFS0105クローンを含有する96個のライブラリープールの「総ランダムライブラリー」を確立した。
【0401】
WS3:FS0105総ランダムライブラリー中に選択されたscfdc1ナンセンス突然変異を有するクローンを含有するライブラリープールの同定
工程3.1:FS0105総ランダムライブラリーからの酵母ゲノムDNA単離
総ランダムライブラリーの各プールからのゲノムDNAを、PureLink(登録商標)Pro96ゲノムDNAキット(invitrogen)及びEveryPrep(商標)Ubiversal Vacuum Manifold(invitrogen)を用いて、製造業者の使用説明書に従って単離した。各試料のDNA濃度を、NanoDrop 10003.8.1を用いて決定し、DNA溶液を、滅菌DNAseフリー水で、5ngのDNA/μlの最終濃度に調整した。DNA試料を、さらに使用するまで、96ウェルPCRプレート中で-20℃にて保存した。
【0402】
工程3.2:ddPCRによるライブラリープールgDNA試料の解析
独特のddPCRアッセイを、具体的には、菌株FS0105の野生型コード配列中のヌクレオチド+476位におけるScFDC1の変異対立遺伝子と野生型対立遺伝子を識別するために設計した。対応するTGGコドンは、一般的な実験室参照菌株S288CのScFDC1配列とこの位置で同一である(GenBank番号NCBI:NM_001180847)。突然変異体検出プローブは、ヌクレオチド+476位でA塩基を含有するコード配列に相補的であった。参照検出プローブは、ヌクレオチド+476位でG塩基を含有するコード配列に相補的であった。2つの隣接するプライマーを、コード配列中のヌクレオチド+476を包囲するゲノム配列を増幅するように設計した。アッセイを、突然変異検出用のBioRads液滴デジタルPCRアッセイ設計ツールを用いて設計した。以下のプライマー及びプローブを、特異的ScFDC1遺伝子座のために開発した。
標的特異的フォワードプライマー((5’-CATGTTTCAGACGGTGG-3’)(配列番号13)
標的特異的リバースプライマー(5’-CATACCTCTAGCAATTGACC-3’)(配列番号14)
突然変異体検出プローブ(5’-ACGTACGGAATGTAGATTCT-3’)(配列番号15)-6-カルボキシフルオレセイン-FAMで標識付け
参照検出プローブ(5’-ACGTACGGAATGTGGATT-3’)(配列番号16)-ヘキサクロロフルオレセイン-HEXで標識付け。
【0403】
次の工程は、一般的に、ライブラリーが突然変異酵母菌株を含むかどうかを決定するためのものである。スクリーニングを、それぞれが1200~1500個の突然変異誘発させた酵母コロニーを含み、合計でおよそ120,000~150,000個の突然変異酵母菌株を代表する合計で96個の酵母ライブラリープールで実施した。ddPCRを、本質的に実施例7に記載されるように実施した。突然変異誘発させた酵母菌株の96個のプールのgDNAの5μLのgDNA試料を、17μlのPCR反応混合物を含有するマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、上下にピペット操作することによって十分に混合した。
【0404】
PCR用のマイクロタイタープレートを、液滴解析のためにQX200液滴リーダー(Bio-Rad)上に装填した。得られたデータを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、チャネル1及びチャンネル2の振幅について増幅をそれぞれ2700及び1500にそれぞれ設定した、2-Dプロットを用いて決定した。分画存在量についての個々の値の比較は、プレート座標G01を有するgDNAが、突然変異体検出に関してあらゆる他の試料よりも高いシグナルを提供することを示した。gDNAプールG01の分画存在量は、0.190%であって(0.030%と比べて)、後者は96個の試験したgDNA試料の全ての平均分画存在量を表している。
【0405】
WS4:後続のサブプールを作成することによる選択されたScfdc1突然変異を保有する個々の酵母クローンの同定
工程4.1:FS0105総ランダムライブラリーからの100erサブプールの作成
ScFDC1特異的ddPCRアッセイを用いて解析された96個のgDNAライブラリープール試料の解析に基づくと、プールG01中の1,200~15,00個の酵母菌株が、対象の遺伝子突然変異を保有する1つ以上の個々のクローンを含有することになる可能性が高いと考えられた。
【0406】
工程3.2で同定された陽性ライブラリープールG01の細胞力価を、それぞれの希釈物をYPD寒天プレート上にプレーティングすることによって決定した。その後、3mlの液体YPD培地を含有する15ml培養チューブ48個に、それぞれがライブラリープールG01からのおよそ100個の細胞で接種した。培養チューブをロータリーインキュベータ上で30℃にて3日間インキュベートし、ライブラリープールG01からのおよそ4800個の個々のクローンを代表する、ライブラリーG01からの100erサブプール48個を得た。
【0407】
工程4.2:FS0105の100erサブプールからの酵母ゲノムDNAの単離
ゲノムDNAを、工程3.1に従って、48個の100erサブプール(前の工程を参照)のそれぞれから単離し、最終濃度を、約5ngのgDNA/μlに再度調整した。
【0408】
工程4.3:ddPCRによる100erサブプールgDNA試料の解析
それぞれがプールG01からのおよそ100個のコロニーを含有する、48個の100erサブプールに由来するgDNAを、上記記載のように解析した(工程3.2を参照)。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2000を及びチャンネル2の振幅について2500を設定して決定した。100個のコロニーの特定のプール中の少なくとも1つの突然変異コロニーの存在を示す、1%を超える分画存在量を示す、マイクロタイタープレート中の4つの個々のウェル(G07、C08、C09、G10)を同定した。
【0409】
工程4.4:FS0105総ランダムライブラリーからの10erサブプールの作成
100erサブプールC09は、ddPCR解析において最も高い分画存在量(2.99%)を示し、さらなる解析のために選択した。
【0410】
工程4.1と同様に、工程3.2で同定された陽性の100erサブプールC09の細胞力価を、それぞれの希釈物をYPD寒天プレート上にプレーティングすることによって決定した。その後、3mlの液体YPD培地を含有する15mlの培養チューブ24個に、それぞれが100erサブプールC09に由来する、およそ10個の細胞を接種した。培養チューブを、ロータリーインキュベータ上で30℃にて3日間インキュベートし、100erサブプールG01からのおよそ240個の個々のクローンを代表する、ライブラリーC09からの100erサブプール24個をもたらした。
【0411】
工程4.5:FS0105の100erサブプールからの酵母ゲノムDNAの単離
ゲノムDNAを、工程3.1に従って、24個の100erサブプール(工程4.4を参照)のそれぞれから単離し、最終濃度を、約5ngのgDNA/μlに再度調整した。
【0412】
工程4.6:ddPCRによる10erサブプールgDNA試料の解析
24個の10erサブプールに由来するgDNAを、上記記載のように解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて上記記載のように解析した(工程3.2参照)。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1の振幅について1500を、及びチャンネル2の振幅について2000を設定して決定した。3つの個々のプール(A02、C03、及びD03)は、10%を超える分画存在量を示し、10個のコロニーの3つのプールのそれぞれにおける少なくとも1つの突然変異コロニーの存在を確認した。
【0413】
工程4.7:導入された対象の突然変異を保有するFS0105の10erサブプールからの個々のクローンの同定
ddPCR解析において最も高い分画存在量を示す10erサブプールD03(工程4.6)を、さらなる解析のために選択した。gDNAを、10erサブプールD03に由来する16個の個々の酵母コロニーから単離し、上記記載のものと同じ解析にかけた(工程4.3及び4.6を参照)。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad)を用いて解析した。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2000を、及びチャンネル2の振幅について2500を設定して決定した。2つの個々のプール(C02及びD02)は、99.9%を超える分画存在量を示し、16個の試験した個々のコロニーうち、2つの突然変異酵母コロニーの存在を確認した。
【0414】
工程4.8:突然変異体酵母純粋培養の単離
菌株FS0105は、より大きな細胞凝集体を形成する傾向性を示す。対象の突然変異体酵母の将来のストックが、単一の細胞に由来し、細胞集塊に由来しないことを保証するために、本発明者らはSinger MSM 400解剖顕微鏡を用いて、2つの個々のプールC02及びD02から単一細胞を単離した。そのために、個々のプールからの細胞懸濁液を、ある特定の細胞集塊の放出を支援するTE緩衝液中で1000倍希釈し、10μlの希釈物を複合培地寒天プレート上にスポットした。次いで、単一細胞を製造業者の推奨/マニュアルに従って単離した。
【0415】
工程4.9:DNA配列解析による選択された対象の突然変異の確認
工程4.8からの単一細胞分離株に由来するゲノムDNAを、標準酵母ゲノムDNAS調製プロトコールを用いて単離し、標的遺伝子ScFDC1を網羅する領域を、ScFDC1特異的オリゴヌクレオチドを用いる標準PCR手法によって増幅させた。得られたDNA断片を、Wizard(登録商標)SV Gel及びPCR Clean-upシステム(Promega)を用いて浄化し、対照のヌクレオチド(ScFDC1の+476)の周りの領域について配列決定した(LGC Genomics)。回収したDNA配列の解析は、個々のプールC02及びD03(4.7及び4.8を参照)に由来する単一細胞のクローンの両方共に、ScFDC1遺伝子のヌクレオチド+476におけるGからAへの移行によって生じた、所望のナンセンス突然変異W159*を含有することを示した。
【0416】
実施例22
特異的突然変異を保有するコムギ植物を、本明細書の上記ワークストリーム及び実施例に記載される方法を用いて同定した。様々なプールなどの命名を、
図2に示した命名を用いて行った。オオムギは自家受粉の、14個の染色体を有する二倍体であるのに対し、コムギでは多倍数性が一般的である。本実施例は、本発明の方法が、コムギなどの多倍数体の生物でも使用することができることを実証している。記載されるように、本方法は、任意の突然変異体の同定に使用することができる。本実施例は、91位でのA-ゲノム(TaGASR7-A1)上のコムギ遺伝子GASR7のコドン領域中のアミノ酸トリプトファンの翻訳終止への交換につながる、特異的突然変異(グアニンからアデニンへ)の同定を記載する。GASR7-A1遺伝子の配列は、番号NCBI:KJ000052でGenBankにおいて入手可能であり、cDNA配列は、本明細書では配列番号25として提供され、GASR7のアミノ酸配列は、配列番号8として提供される。
【0417】
ddPCRアッセイ
具体的には、野生型コード配列(GenBank番号NCBI:KJ000052)中のヌクレオチド273位におけるTaGASR7-A1の変異対立遺伝子と野生型対立遺伝子を識別する、特異的ddPCRアッセイを設計した。突然変異体検出プローブは、ヌクレオチド273位にアデニンを含有するコード配列に相補的であった。参照検出プローブは、ヌクレオチド273位にグアニンを含有するコード配列に相補的であった。2つの隣接するプライマーを、コード配列中のヌクレオチド273を包囲するゲノム配列を増幅させるように設計した。以下のプライマー及びプローブを、特異的TaGASR7-A1遺伝子座のために開発した。
標的特異的フォワードプライマー(5’-CGCCTGCCCCTGCTA-3’)(配列番号9)
標的特異的リバースプライマー(5’-AGAAGAAGAAGAAGAAGAAGAAAACCAAGAA-3’)(配列番号10)
突然変異体検出プローブ(5’-CAACAACTGAAAGACCA-3’)(配列番号11)-6-カルボキシフルオレセイン-FAMで標識付け
参照検出プローブ(5’-CAACAACTGGAAGACCA-3’)(配列番号12)-フルオロフォアVICで標識付け。
【0418】
ランダムに突然変異誘発させたコムギ穀粒のプールを、穀粒を0.6%のEMS中に17時間浸漬することによって作製した。その後、穀粒を水で濯ぎ、濾紙の上で45分間乾燥させた。突然変異誘発させた穀粒を、乾燥後すぐに植え付けた。
【0419】
WS3:ライブラリー試料が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定
次いで、ライブラリーが突然変異穀粒を含有するかどうかを、本明細書で上記WS3及び実施例7に本質的に記載されるように、下記の詳細を伴って決定した。
スクリーニングを、およそ30,000個の突然変異コムギ植物を代表する、合計94個のGLP(94個のサブプール)で実施した。ddPCRを、本質的に実施例7に記載されるように実施した。
gDNA(GT#10001~GT#10094)に由来する1つの5μlのgDNA試料を、17μlのPCR反応混合物を含有する各ウェルに添加し、上下にピペット操作することによって十分に混合した。
PCRプレートを、液滴解析のためにQX200液滴リーダー(Bio-Rad Laboratories)上に装填した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を用いて解析した。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1振幅に3000を、及びチャンネル2の振幅について2000設定して決定した。分画存在量についての個々の値の比較は、gDNA(GT#10072)が、あらゆる他の試料よりも突然変異体検出に由来する多くのシグナルを含有することを示した。gDNA(GT#10072)の分画存在量は、全ての94個の試験したgDNA試料の平均分画存在量を表す0.024%と比べて0.130%であった。
【0420】
WS4:対象の突然変異によって特徴付けられる個々の穀粒(複数可)の発見
突然変異を保有する個々のコムギ穀粒を、本質的に上記WS4で本明細書に記載されたように、下記の詳細を伴って同定した。
TaGASR7-A1特異的ddPCRアッセイによるサブプールのgDNA(GT#10001~GT#10094)の解析に基づくと、GLP#10072の4500個の穀粒(陽性試料gDNA(GT#10072)に一致する)が、対象の同一の突然変異を有する1つ以上の穀粒を含む可能性が高いと考えられた。
それぞれGLP#10072からの10個の穀粒の96個の試料を順次取り出すことによって、FGLP#10072を確立した。各10個の穀粒アリコートを1枚の秤量紙上に置き、次いで1対の鉗子で連続的に固定し、それと同時に、1.6mmのドリルを装備した彫刻盤(Marathon-3、Saeyang Microtech)を用いて、胚乳への2~3mmの深さの小さな孔を穿孔した。回転運動によって、胚乳からの細粉を穀粒の頂部及び周囲の秤量紙に移動させた。10個の穀粒の穿孔された試料を、別の2mLのウェルのマイクロタイタープレート中に置き、穿孔された穀粒PDGLP#10072の二次サブプールを得た。それぞれが、10個の穿孔されたコムギ穀粒に由来する細粉を含む96個の細粉試料を、穿孔された穀粒のものと一致する試料番号付けシステムを維持しながら、1.5mlのマイクロタイタープレートの別個のウェルに移した(PFGLP#10072)。
PFGLP#10072を、NucleoSpin 96 Plant IIキット(Macherey-Nagel)の使用説明書に詳説された半自動化DNA抽出手順を用いて、gDNAの抽出にかけた。したがって、マイクロタイタープレートの各ウェルは、10個の穀粒の細粉からのgDNAを含有した。
PFGLP#10072に由来するgDNAを、上記記載のように解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を用いて解析した。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2500を及びチャンネル2の振幅について1700を設定して決定した。マイクロタイタープレートにおける2つの個々のウェル(B10及びG05)が、7.6%及び5.2%の分画存在量を示すことを同定し、全てが、PDGLP#10072の2つの独立したウェル中の2つの個々の突然変異体の存在を示した。
PDGLP#10072のウェルB10からの全ての10個の穀粒を発芽させた。全ての10個の苗からの葉材料を採取し、REDExtract(Sigma Aldrich)を用いるDNA抽出にかけた。葉試料に由来するgDNAを、上記記載のように解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を用いて解析した。閾値を、2D-プロットを用いて、かつチャネル1の振幅について2000を、チャンネル2の振幅について1600に設定して決定した。PDGLP#10072のウェルC03に由来する1つの苗は、99%の分画存在量を示し、ヘテロ接合突然変異体の存在を確認した。
追加の形質の検証を、同定した突然変異体及び参照試料の両方での直接配列決定法を用いて実施した。REDExtract DNA抽出手順(Sigma Aldrich)を用いて、葉材料からDNAを抽出した。配列決定解析については、1μlの精製gDNA、20μlのREDExtract(Sigma Aldrich)、500nMの標的特異的フォワードプライマー、500nMの標的特異的リバースプライマー及び水を含有する50μlのPCR反応を準備した。試料を、次のPCR条件:94℃で2分間の変性、94℃で45秒間、58℃で45秒間、及び75℃で45秒間の38サイクルのPCR、ならびに72℃で5分間の最終的伸長を用いて熱サイクルさせて、その後、PCRプレートを8℃で保存した。個々のPCR産物を、NucleoSpin Gel及びPCRクリーンアップキットを用いて精製した。全ての試料を、標的特異的フォワードプライマー及び標的特異的リバースプライマーを用いて配列決定した。
ddPCR解析において突然変異に対して陽性である苗はまた、所定のゲノム位置におけるヘテロ接合突然変異体遺伝子型を示した。参照試料は、同じ位置においてホモ接合野生型遺伝子型を示した。
【0421】
実施例23
特異的突然変異を保有するオオムギ植物を、2つの手法(その1つがRainDance Technologiesにより提供され、他方がBio-Rad Laboratoriesにより提供される)の併用によって同定された。大まかに言えば、RainDance手法は、多数の突然変異体穀粒からdDNA鋳型を含有する特定のさらに複雑な試料を同定するために利用し、一方後続のBio-Radベースの解析は、対象の突然変異によって特徴付けられる単一の穀粒を同定するために役立った。様々なプールなどの命名は、
図2に示した命名を用いて行った。
記載するように、本方法は、任意の突然変異体の同定に使用することができる。本実施例は、31位での推定BAHDアシルトランスフェラーゼ(HvBADH1)をコードするオオムギ遺伝子のコドン領域中のアミノ酸トリプトファンの翻訳終止への交換につながる、特異的突然変異(グアニンからアデニンへ)の同定を記載する。
【0422】
ddPCRアッセイ
具体的には、ヌクレオチド93位におけるHvBADH1の変異対立遺伝子伝子と野生型対立遺伝子を識別する、特異的ddPCRアッセイを設計した。野生型コード配列(cDNA配列)は、本明細書では配列番号17として提供され、突然変異体コード配列は、本明細書では配列番号18として提供されている。HvBADH1のアミノ酸配列は、配列番号19として提供されている。突然変異体検出プローブは、配列番号17のヌクレオチド93位にアデニンを含有するコード配列の一部に相補的であった。参照検出プローブは、ヌクレオチド93位にグアニンを含有するコード配列の一部に相補的であった。2つの隣接するプライマーを、コード配列中のヌクレオチド93を包囲するゲノム配列を増幅させるように設計した。さらに、PCR中にDNAポリメラーゼによって参照配列決定の伸長を防止するブロッキングプローブを、3’スペーサで補充された参照検出プローブのヌクレオチド配列を用いて開発した。以下のプライマー及びプローブを、特異的HvBADH1遺伝子座のために開発した。
標的特異的フォワードプライマー(5’-CCCGACCACACGC-3’)(配列番号20)
標的特異的リバースプライマー(5’-ACTCCACCAGGCCG-3’)(配列番号21)
突然変異体検出プローブ(5’-CTGGCGTGAGTGGAC-3’)(配列番号22)-6-カルボキシフルオレセイン-FAMで標識付け
参照検出プローブ(5’-CTGGCGTGGGTGGA-3’)(配列番号23)-テトラクロロフルオレセイン-TETで標識付け
ブロッキングプローブ(5’-CTGGCGTGGGTGGA-3’)(配列番号24)-2’3’-ジデオキシCスペーサで標識付け。
【0423】
gDNAの「スーパープール」の作製
簡単に言うと、1つの96ウェルプレートで表された、全ての94個の「個々のサブ細粉合計のアリコート(ASFT)」の各gDNA抽出物50μLを、1つの「スーパープール」中にプールした。
【0424】
「スーパープール」が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定
次いで、94個のASFTからのDNAを含む「スーパープール」が、突然変異穀粒を含有するかどうかを、本質的に上記実施例17で記載されたように、下記の詳細を伴って決定した。
最初に、スーパープールからのgDNAの2μlを、10μlの5×Q5反応緩衝液(New England Biolabs)、200μMのdNTP、0.02U/μlのQ5高性能DNAポリメラーゼ、100nMの標的特異的フォワードPCRプライマー、100nMの標的特異的リバースPCRプライマー、100nMのブロッキングプローブ(2’,3’-ジデオキシCスペーサ)及び水を含有する50μlの富化及びブロッキングPCRに添加した。PCR混合物を、標準PCR条件:98℃で2分間の変性、98℃で10秒間、57℃で20秒間及び72℃で10秒間のPCRの20サイクル、ならびに72℃の5分間の最終伸長を用いて熱サイクルし、その後8℃で保存した。
【0425】
第2番目に、4個の個々に富化されブロックされた「スーパープール」についての液滴を、RainDropソース機器を用いて生成した。各「スーパープール」から富化されブロックされたPCR産物の10μlのアリコートを、25μLのプローブ用Supermix(Bio-Rad)、1×液滴安定剤(RainDance)、900nMの標的特異的フォワードプライマー、900nMの標的特異的リバースプライマー、120nMの参照検出プローブ(TET)、440nMの突然変異体検出プローブ(FAM)、及びH2Oと個々に組み合わせて、総反応物容量を50μLに調整した。4個の個々のgDNAの「スーパープール」を代表する、合計で4個の個々の反応混合物を、ソースチップ(RainDance)に添加し、ソース機器(RainDance)で処理した。
【0426】
本明細書で上記に記載した、ソース機器(RainDance)によって反応混合物から発生した液滴を含有する2つの8ウェルのPCRストリップを密封し、標準PCR条件:95℃で10分間の変性、95℃で15秒間、55℃で1分間のPCRの40サイクル、及び98℃の10分間の最終伸長を用いて熱サイクルし、その後8℃で保存した。その後、増幅した混合物を、検出機器(RainDance)に移し、RainDrop Analystデータ解析ソフトウェアを用いて解析した。
【0427】
4個のスーパープールの平均分画存在量は、0.0115%であった。スーパープールSP-gDNA#5は、0.0228%の分画存在量を有し、このスーパープールが突然変異体穀粒からのDNAを含有する高い確率を示した。
【0428】
ライブラリー試料が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定
次いで、SP-gDNA#05に一致する94個のASFTのプレートが突然変異穀粒を含有するかどうかを、本明細書で上記実施例7に本質的に記載されるように、下記の詳細を伴って決定した。
スクリーニングを、およそ30,000個の突然変異オオムギ植物を代表する、合計94個のSGT(サブ穀粒の合計)で実施した。スクリーニングのこの部分に使用されたgDNAは、ASFTから精製されたgDNA-すなわち、富化されていないDNAであった。解析の目的のために、gDNA(GT#377~GT#470)に由来する5μlの精製gDNAを、11μLの2×プローブ用ddPCR Supermix(No.dUTP、Bio-Rad Laboratories)、900nMの標的特異的PCRプライマーのプライマー、250nMの突然変異体検出プローブ(6-カルボキシフルオレセイン-FAM)及び野生型検出プローブ(テトラクロロフルオレセイン-TET)プローブを含有する17μlのPCR混合物に添加した。反応混合物を、AutoDG液滴発生器(Bio-Rad)上に装填し、製造業者のマニュアルに従って、液滴発生を行った。液滴エマルジョンを、標準PCR条件:95℃で10分間の変性、94℃で30秒間及び55℃で1分間の40サイクルのPCR、ならびに98℃で10分間の最終的伸長を用いて熱サイクルさせて、その後、マイクロタイタープレートを8℃で保存した。液滴中のPCR増幅を、QX200液滴リーダー(Bio-Rad Laboratories)を用いて確認した。
【0429】
PCRプレートを、液滴解析のために、QX200液滴リーダー(Bio-Rad Laboratories)上に装填した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を用いて解析した。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1の振幅に2200を、及びチャンネル2の振幅について2700設定して決定した。分画存在量についての個々の値の比較は、gDNA(GT#416)が、あらゆる他の試料よりも突然変異体検出に由来する多くのシグナルを含有することを示した。gDNA(GT#416)の分画存在量は、全ての94個の試験したgDNA試料の平均分画存在量を表す0.073%と比べて0.4%であった。
【0430】
対象の突然変異によって特徴付けられる個々の穀粒(複数可)の発見
突然変異を保有する個々のオオムギ穀粒を、本質的に上記実施例9~15で本明細書に記載されたように、下記の詳細を伴って同定した。
HvBADH1特異的ddPCRアッセイによるgDNA(GT#416)の解析に基づくと、GLP#416の4500個の穀粒(陽性試料gDNA(GT#416)に一致する)が、対象の同一の突然変異を有する1つ以上の穀粒を含む可能性が高いと考えられた。
それぞれGLP#416からの12個の穀粒の96個の試料を順次取り出すことによって、FGLP#416を確立した。各12個の穀粒アリコートを1枚の秤量紙上に置き、次いで1対の鉗子で連続的に固定し、それと同時に、1.6mmのドリルを装備した彫刻盤(Marathon-3、Saeyang Microtech)を用いて、胚乳への2~3mmの深さの小さな孔を穿孔した。回転運動によって、胚乳からの細粉を穀粒の頂部及び周囲の秤量紙に移動させた。10個の穀粒の穿孔された試料を、別の2mLのウェルのマイクロタイタープレート中に置き、穿孔されたオオムギ穀粒PDGLP#416の二次サブプールを得た。それぞれが、12個の穿孔されたオオムギ穀粒に由来する細粉を含む96個の細粉試料を、穿孔された穀粒のものと一致する試料番号付けシステムを維持しながら、1.5mlのマイクロタイタープレートの別個のウェルに移した(PFGLP#416)。
PFGLP#416を、NucleoSpin 96 Plant IIキット(Macherey-Nagel)の使用説明書に詳説された半自動化DNA抽出手順を用いて、gDNAの抽出にかけた。したがって、マイクロタイタープレートの各ウェルは、12個の穀粒の細粉からのgDNAを含有した。
PFGLP#416に由来するDNAを、上記記載(ライブラリー試料が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定)と同じPCR混合物及びPCR反応条件を用いて解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を用いて解析した。閾値を、2-Dプロットを用いて、かつチャネル1の振幅について3000を及びチャンネル2の振幅について2500を設定して決定した。マイクロタイタープレートにおける2つの個々のウェル(D10及びF02)が、3.4%及び13.7%の分画存在量を示すことを同定し、PDGLP#416の2つの独立したウェル中の2つの個々の突然変異体の存在を示した。
PDGLP#416のウェルF02からの全ての12個の穀粒を発芽させた。全ての12個の苗からの葉材料を採取し、REDExtract(Sigma Aldrich)を用いるDNA抽出にかけた。葉試料に由来するgDNAを、上記記載(ライブラリー試料が突然変異穀粒を含有するかどうかの決定)と同じPCR混合物及びPCR反応条件を用いて解析した。データを、QuantaSoftソフトウェア(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を用いて解析した。閾値を、2D-プロットを用いて、かつチャネル1の振幅について5000を、チャンネル2の振幅について3200に設定して決定した。PDGLP#416のウェルF02に由来する1つの苗は、39%の分画存在量を示し、ヘテロ接合突然変異体の存在を確認した。
【0431】
参考文献
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