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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101704
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】二用量点鼻スプレー
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/08 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
A61M15/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076474
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2021513001の分割
【原出願日】2019-05-08
(31)【優先権主張番号】00575/18
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】18209897.0
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520435108
【氏名又は名称】アクロスイス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス マルタ フレーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゲルゲリ ツァドリ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パスカル ビーンドル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二用量点鼻スプレーを提供する。
【解決手段】本発明は、抗不安または抗痙攣物質を含む水溶液または流体を収容している新規の点鼻スプレーに関し、活性剤の水溶液または液体による、各々同一の決められた体積の2回の噴霧を、本点鼻スプレーにより患者に鼻内投与することができ、本点鼻スプレーは、その空間的な向きに依存せず、かつ、患者のいずれの姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)でも投与を行うことが可能である。本点鼻スプレーは、事前に始動することなくそのまま使用することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗不安または抗痙攣活性剤を含む活性剤の溶液または流体を収容している新規の点鼻スプレーに関し、活性剤の溶液または液体による、各々同一の決められた体積の2回の噴霧を、本点鼻スプレーにより患者の鼻内に投与することができ、本点鼻スプレーは、その空間的な向きに依存せず、患者のいずれの姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)でも用量の投与を行うことが可能であることを特徴とする。本点鼻スプレーは即時使用可能であり、事前に始動することなくそのまま使用することができる。好ましくは、本点鼻スプレーによって、噴霧またはさらに第2の噴霧がなされたかまたは実施されたか否かが、本点鼻スプレーを見ることでわかる。好ましくは、本点鼻スプレーによる噴霧を、患者または第三者が片手で投与することができる。本発明の点鼻スプレーにおける活性剤は、好ましくは、抗不安活性剤、鎮静活性剤、筋肉弛緩活性剤または抗痙攣活性剤であり、好ましくは、ベンゾジアゼピンまたはGABA受容体アゴニスト、例えば、ミダゾラムもしくはその誘導体またはこれらの活性剤の塩(例えば、ミダゾラムHCl)である。本発明による点鼻スプレーを、閉所恐怖症、不安障害、またはパニック発作を有する患者の鎮静、前投薬、または処置に使用してもよく、CNS疾患における痙攣、特に、てんかん発作または他の発作の出現(例えば、熱性痙攣)の処置に使用してもよい。本発明はまた、鼻適用における活性剤の局所的に正確な鼻での堆積を限局化することによる、鼻適用における活性剤の向きに依存しない均一な投与の定性的かつ定量的な検出のための方法、ならびに、患者の鼻粘膜に対する、向きに依存しない局所的に正確な活性剤の流体の投与を達成できることが、記載の検出方法を使用して示されている、点鼻スプレー、好ましくは、二用量点鼻スプレーに関する。本発明はまた、鼻腔内における活性剤の局所的に正確な堆積について患者特異的な検出を特徴付け、これによりその制御を補助する方法も提供する。さらに、本発明に従う活性剤容器を空気を断って気密密閉するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
速効性ベンゾジアゼピンミダゾラム(8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-4H-イミダゾール[1,5-a][1,4]-ベンゾジアゼピン、その塩のすべてを含む)など、治療的に使用できる抗不安、鎮静、筋肉弛緩、または抗痙攣物質は、当業者に公知である。ミダゾラムは、麻酔の準備、鎮静、発作の処置、睡眠導入のための薬物として、さらには鎮静剤または抗不安剤(抗不安薬)としてときに使用されてきた。この薬物には耐性という大きなリスクがあり、好ましくは、短時間のみ処方または投与されるべきである。ミダゾラムは、世界保健機関の必須医薬リストに記載されている。ミダゾラムは、経口、静脈内、筋肉に注射、または鼻もしくは口へのスプレーにより適用することができる。
【0003】
急性脳性発作(てんかん発作)を処置するための、点鼻スプレーによるミダゾラムの投与が公知である。点鼻スプレーの形態のミダゾラムは鎮静のためにも使用され、小規模な介入に先立ち患者を準備するためにも使用される。ミダゾラム点鼻スプレーはまた、長時間に及ぶ画像診断手順(例えば、磁気共鳴断層撮影MRTまたはMRI、陽電子放出断層撮影PET、単一光子放射コンピュータ断層撮影/コンピュータ断層撮影SPECT、部分コンピュータ断層撮影CT、またはこれらの手法の組合せ)の前または最中に、患者を快適にするために時折使用されており、患者に安心を与えてきた[J. Hollenhorst et al.; ”Using intranasal midazolam
spray to prevent claustrophobia induced
by MRI imaging”; Am. J. Roentgenol. 176, 865-868 (2001]。
【0004】
鼻内投与の場合、治療的に活性な薬剤をスプレーによって鼻の奥に噴霧し、こうして鼻粘膜と接触させる。投与量および/または活性剤に応じて、このように投与された薬物は純粋に局所的または全身的に作用し得る。ミダゾラムの場合、全身効果が望ましい。鼻腔は血管が形成された粘膜の薄い壁で裏打ちされているため、薬物は、単一の上皮細胞層を通じて速やかに全身循環に直接入ることができる(肝臓または腸による初回通過代謝を受けることがない)。このように、迅速な(数分以内)薬理学的効果を得ることができる。
【0005】
鼻内適用は、治療効果を達成するためには限られた量の活性剤だけを鼻粘膜上に適用しなければならない、強い(強力な)薬物にとりわけ適している。
【0006】
鼻内投与で起こり得る不都合な点は、鼻粘膜上に噴霧され、その後再吸収される薬物の量における高い変動性である。こうした変動性は、例えば、点鼻スプレーデバイスの正しくないまたは不均一な扱いに起因し得る[H. Kubik and M. T. Vidgren; ”Nasal delivery systems and their
effect on deposition and absorption”; Adv. Drug Deliv. Rev. 29: 157-177 (1998)]。患者の上気道にうっ血がある場合、または噴霧された多量の流体が鼻から口腔に入り、その後患者がそれを飲み込んでしまう場合も、問題が起こり得る。医療の専門家が適用した場合、鼻投与後に摂取される量は、一般に、対応する経口投与後と比較して同等であるかまたは高い[それぞれB. A. Coda, A. C. Rudy, S. M.
Archer, and D. P. Wermeling; ”Pharmacokinetics and bioavailability of single-dose intranasal hydromorphine hydrochloride in healthy volunteers”; Anesth Analg. 97: 117-123 (2003)またはJ. Studd, B. Pornel, I. Marton, J. Bringer, C. Varin, Y. Tsouderos, and C. Christiansen; ”Efficacy and acceptability of intranasal 17 beta-oestradiol for menopausal symptoms: randomised dose-response study”; Aerodiol Study Group. Lancet 353: 1574-1578 (1999)]。何より重要なのは、採血を伴わない非侵襲的な方法であって、相応の再吸収とともに投与された噴霧の局所的に正確な適用を限局化することによって、臨機応変に検出することを可能とする方法である。
【0007】
MRI患者の抗不安前処置のためのミダゾラムの鼻内使用に関して、いくつかの臨床試験が既に公開されている。
【0008】
8人の健康な被験者におけるプロスペクティブな第I相臨床研究において、鼻投与後のミダゾラムの平均生体利用率は76±12%~92±15%の間であることが見出された。1mgのミダゾラムを投与する製剤では、9.4±3.2~11.3±4.4分後に、28.1±9.1~30.1±6.6ng/mlの間の平均C(max)値となった。各々の場合において、初回の血漿試料において既に活性剤の吸収が測定できた[M. Haschke et al.; ”Pharmacokinetics and pharmacodynamics of nasally delivered midazolam”; Br. J. Clin. Pharmacol. 69 (6): 607-616 (2010)]。
【0009】
プロスペクティブな多施設第III相臨床研究[Tschirch F. T. C. et al.; ”Multicenter Trial: Comparison of two different formulations and application systems of low-dose nasal midazolam for routine magnetic resonance imaging
of claustrophobic patients”; JMRI 28: 866-872 (2008)]において、2種類の製剤が試験された。単位投与量群(UDG)の患者は、1%(w/v)ミダゾラムと、浸透促進剤として4%のシクロデキストリン誘導体(例えば CAVASOL(登録商標) W7M Pharma:製造業者:Wacker Chemie AG、Munich)とを含有する活性剤溶液0.1mlを、単回用量点鼻スプレーより一方の鼻孔中へ一回噴霧された。複数回投与量群(MDG)の患者は、0.5%(w/v)ミダゾラムを含有する活性剤溶液0.1mlを、複数回用量点鼻スプレーより各鼻孔中へ一回噴霧された。これは、2回の適用で同じく合計1mgのミダゾラム基剤を適用したことに相当する。両群(4施設、計108名の閉所恐怖症患者)の結果を分析したところ、鼻に適用された低用量ミダゾラムは、閉所恐怖症患者のMRI検査を緩和する、患者に優しい解決策であることが示された。UDG点鼻スプレーは、MDG点鼻スプレーより著しく優れていた。
【0010】
さらなる研究[Tschirch F. T. C. et al.; ”Low-dose intranasal versus oral midazolam for
routine body MRI of claustrophobic patients”; Eur. Radiol. 17: 1403-1410 (2007)]では、慣用的なMRI検査に先立つ閉所恐怖症患者の処置において、低用量の鼻内投与されたミダゾラム(1~2mg)の有効性が、経口投与されたミダゾラム(7.5mg)と比較された。この研究では(1箇所の検査施設)、72名の患者を無作為に2つの同じ大きさの群に割り当てた。試験群TG1の患者は、MRI検査の15分前に、7.5mgのミダゾラムを経口摂取した。試験群TG2の患者は、一噴霧当たり0.5mgのミダゾラムを含有する点鼻スプレーから2回、必要に応じて後で1~2回多く(合計で1.0~2.0mgのミダゾラム基剤)噴霧を受けた。97%のケースにおいて、MRI検査を首尾良く行うことができ、関連する副作用もなかった。TG1群と比較して、TG2群の患者ではMRI画像化品質が有意に高かった(p<0.001)。低用量の鼻内ミダゾラムは、広範囲に及ぶ身体MRI検査における閉所恐怖症患者の不安を回避する、効果的で患者に優しい解決策であるという結論であった。この点で、鼻投与されたミダゾラムの抗不安効果は、経口投与された形態より著しく優れていた。
【0011】
これらの「低用量ミダゾラム」を使用した最初の研究に基づき、ミダゾラム点鼻スプレーは、診療において、長時間に及ぶ画像診断手順(例えば、MRIスキャン)のために患者を準備する際に頻繁に使用されてきた。これまで、このようなミダゾラム点鼻スプレーは、多くの場合、製造許可を有する病院薬局または公的薬局において少数製造されてきた。しかし、単純なデカンテーションでは、鼻適用のために濃度および用量を最適に調整することはできない。溶液の調製の難しさは、とりわけ、pHが変化するごとに溶解度が変動するという活性剤のpH依存的複雑さにある。このようにして製造された活性剤の溶液は、酸性の範囲内のみにおいて安定であり(3.8またはそれ未満のpHを下回り、活性剤の含有量に依存する)、より高いpH値では活性剤が沈殿してしまう。よって、実際は、理想的なpHを希塩酸で滴定し安定させなければならない。ベンゾジアゼピン環の最適な安定性およびその溶解度は、このようにして達成することができる。加えて、溶液は、鼻粘膜上での局所耐性が最適であるように、生理的条件に等張化されているべきである。こうしたミダゾラム点鼻スプレーは必ずしもクリーンルームで製造されなければならないとは限らないため、製造および/または貯蔵の間に微生物が混入する危険性がある。微生物の繁殖は、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤(通常、0.01%w/v)および/または必要に応じてEDTA(通常、0.1%w/v)を添加することにより防止することができる。しかし、点鼻スプレーにおいて保存剤を溶液に添加することは、鼻粘膜の刺激を引き起こすことが多い。多くの場合、このような刺激を患者は不快と感じ、したがって、診断手順の最中に所望される患者の鎮静に負の影響を与える可能性がある。
【0012】
最新式の即時用点鼻スプレー調製物のさらなる不都合な点は、投与される活性剤の量に違いをもたらし得る、特定のバッチ間の変動性である。これは、例えば、伝統的な点鼻スプレーデバイスにおいて、スプレーヘッドの正しくない操作(横に押す)または噴霧チューブの不十分な充填による、噴霧デバイスの変動によって引き起こされる可能性がある。したがって、最新式の点鼻スプレーでは、多くの場合、活性剤が患者の鼻の中に実際にどれだけ噴霧されるかを制御および確認することは困難である。噴霧デバイスを適正に機能させるために、噴霧チューブが安全に溶液中に埋没して空気を吸い込まないように、多くの場合、患者は起立または上体を起こして座らなければならない。準備段階、すなわち、患者がMRI台に横になる直前では、上体を起こした姿勢をとることは容易になし得る。しかし、患者が検査台に横になって患者の検査のために台を画像化デバイスに一度挿入してしまうと、上体を起こした姿勢での投与は事実上不可能である。画像化処理中に横になっている患者が不穏になった場合、最新式の点鼻スプレーでは、追加用量の鎮静剤の投与が深刻に妨げられる可能性があり、あるいは検査を中止しなければならない状況に陥る可能性がある。横になっている最中に2度再噴霧を行うことは、スプレーヘッドがこれ以上充填されないため、事実上不可能である。再投与された用量が少なすぎるか、または適用できないと、患者は不穏なままとなる。逆に、用量が多すぎると、検査手順中に患者はもはやスタッフの指示に十分に反応することができなくなる可能性がある。検査手順中に患者が可能な限りじっと横になっていなければならず、操作スタッフの指示(例えば、息を吐くことと息を吸うこと)にのみ反応すべきであるのは明白である。鎮静が不十分であれば、画像化処理の出力品質は、検査手順のやり直しを必要とする程に悪くなり得る。画像化デバイスおよび検査手順は非常に高額であり、対応する機器はうまく活用される必要がある点を考慮すると、このような画像化検査手順のやり直しまたは遅延は不要に高いコストの原因となり、医療システムの資源が限定されている点から回避されなければならない。不十分な画像化の結果または測定の繰返しに起因する患者のストレス因子の増加も、過小評価されるべきではない。何より、臨床研究が示すのは、とりわけこうした検査の状況で不穏になった問題のある患者において、低用量ミダゾラムの投与により画像化の質が著しく改善される可能性があり、したがって、より良好な画像品質のおかげで、不安緩解と共により良好な診断が促進されることになる点である。
【0013】
一般に患者は、そもそも入院した時点で、または後にMRI検査室に入ったときに、その患者があの「チューブ」または窮屈な検査場所を恐れていることを報告するものである(閉所恐怖症)。多くの場合、患者はまた、長い管状形態のマグネットとそれに閉じ込められることが大いにつらいと告白する。このことは、患者が検査の実施を拒絶することにさえつながり得る。さらに、コイルおよび検査に必要なさらなるデバイス類(例えば、ヘルメット、ヘッドセット、呼吸ベルト、枕、ベルト、ECG電極、キャップ、体位ベルト)が相応の窮屈さをもたらし、患者にとってのさらなる問題を引き起こす。個々の患者は、じっとしていることが本質的によりつらく、これは部分的に疾患に依存しているか(例えば、パーキンソン病、認知症、または他のCNS疾患に起因する)、または患者にとって独特であり多くの場合完全に新しい、差し迫ったストレス状況の結果である。また、多くの患者はMRIスキャン中に極度に高いノイズに曝されることに不平を漏らし、ノイズ保護用ヘッドホンが提供されるか、またはヘッドホンからの音楽によって気持ちを落ち着かせる気晴らしが試みられることが多いにもかかわらず、不平を漏らす。これらの要因のすべてが、検査の質に負の影響を与えかねないある種の不穏状態につながる。
【0014】
患者がパニック発作を起こしやすいか否か、そして医学的理由により検査に問題がある(例えば、呼吸抑制、アレルギー、もしくは重症筋無力症に起因して、または患者が定期的に強いCNS作用性薬物を摂取しているため)か否かを明らかにした後、担当の臨床医は、患者に点鼻スプレーの使用を推奨し、これが提供される。同意後、患者は検査手順についての最終的な情報を受け取る。最新式の点鼻スプレーでは、検査台に座った姿勢で投与しなければならない。一般に、点鼻スプレーは、最初に1、2回空気中に噴霧することによってよく充填させて、噴霧チューブをしっかりと充填する。その後、鼻腔中へと、右側および左側にそれぞれ1噴霧ずつを投与する。多くの場合、患者に予告された短時間の刺激がこれによって生じる。これに対し患者は各々異なった反応を示し、ときに、はっきりと効果が感じられると前向きに反応することさえある。鼻適用後約1~2分もすると、患者はもはやMRI検査を拒絶しなくなり、検査手順の準備を受けることに容易に同意する。この最初の段階でさらなる噴霧が必要となるのは非常にまれである。患者は最終的な検査の姿勢に対してもはや準備ができている。コイルなどのさらなる様々なデバイス類も、もはや容易に設置することができる。その後、センタリングのために位置合わせレーザーを使用することによる困難を伴うことなく、患者をMRIマグネットへと移すことができる。罹患している患者では、多くの場合、前投薬なくしてこれは可能ではない。もう1つの大きな利点は「低い鎮静」効果であり、したがって、睡眠導入薬を使用していても患者の関心を強く惹く点である。使用する用量がとても小さいため、患者は困難を伴うことなく担当の技師の指示に非常によく従うことができる(意識下の鎮静)。これによって意思疎通が容易になるだけでなく、検査手順も加速される。検査中に眠ってしまう患者は(これ自体、例えば、物質ミダゾラムの高い静脈内用量を使用している場合によくある)、もはや指示に従うことはできず、「呼吸によって」検査を損なってしまう、すなわち、息を堪えることができず、自発的な呼吸により、劣った、または診断に使用することさえできない画像品質がもたらされる。呼吸ベルトを使用することにより自発的な呼吸を減らすことができるが、これは患者にとって不快な測定時間の延長につながり、コスト上の理由からこれも避けなければならない。
【0015】
検査中、患者が不安および/または不穏状態をもう1度示した場合、点鼻スプレーでさらに噴霧を投与することができる、すなわち、活性剤を再投与することができる。しかし、患者の臥位に起因して、これにはむしろ限界がある。患者もまた検査姿勢から動かなければならないためである。しかも、患者の姿勢を維持するために、臥位で噴霧を施そうと試みなければならない。最新式の点鼻スプレーは充填度が低いため、これが妨げられる。患者が検査中にヘッドコイルを身に付けている場合、点鼻スプレーを正しい位置に向けるには鼻周囲の空間が狭すぎるため、最新式の点鼻スプレーを使用することは事実上不可能である。加えて、患者に対して制御不能のさらなる負担を強いることなく噴霧デバイスの充填を確実に行うことができない。
【0016】
画像取得の完了後、検査台上で横たわる患者は、MRマグネットから引き出される。患者は上体を起こし、着替えることができる。予防措置の手法として、多くの施設では、点鼻スプレーの使用後に患者が自分で乗り物を運転することを許可しない。もっともなことだが、こうした予防措置の必要性に関するデータはほとんどない。ミダゾラムの分解中に部分的に活性のある代謝産物が生成するため、乗り物の運転または機械の操作前、少なくとも4時間の安静を維持すべきである。この状況において、一部の患者が著しく強い反応を示すこと、活性剤の代謝がより遅いこと、または効果を増強する薬を同時に摂取していることを考慮する必要がある。
【0017】
複数回使用点鼻スプレーを使用するとき、一部の患者には、患者間で疾患が伝染するというリスクが存在する。多数の患者がこのような画像診断検査を受ける大型の検査施設では、衛生面で特別な注意が払われなければならない。複数回使用点鼻スプレーを使用するとき、スプレーヘッドが数名の患者の上皮と接触する可能性があり、同じヘッドを後続の患者に使用すると、微生物の伝染が生じる。健康な個体の正常な細菌叢中には、とりわけ、Haemophilus influenzae、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureusが見出される。これらの微生物は必ずしも感染症につながるとは限らないものの、実質的に微生物負荷を増加させる可能性があり、特に免疫が抑制された患者にとっては問題となり得る[Ylikoski J. et al.,
”Bacterial flora in the nasopharynx and
nasal cavity of young healthy men”, ORL
Journal Otorhinolaryngol Relat Spec., 1989; 51 (1): 50-55]。新しい患者ごとにスプレーヘッドを交換する必要がある。しかし、これには相応にスタッフを訓練しなければならず、衛生規定に準拠するために各交換を記録および確認しなければならないため、非常に面倒である。スプレーヘッドの交換には、誤って多すぎるまたは少なすぎる用量の活性剤を適用してしまわないために、ポンプおよびその機能を再調整することも必要である。
【0018】
急性不安障害またはパニック障害を可能な限り速やかに克服しなければならないあらゆる場合において、さらなる重要な適用の可能性が存在する。活性剤の生体利用率が迅速である鼻適用のこの大きな利点を、急性不安障害またはパニック障害を処置するための最適な方法に使用することができる。噴霧により良好な不安緩解および迷走神経の減弱が達成され、これにより、行われ得るあらゆる介入にとって好ましい条件が得られる。噴霧は、上記のMRIの例だけでなく、歯科における介入、低侵襲外科手術、あるいはあらゆる種類の侵襲的な介入においても使用されており、成功している。麻酔の準備またはさらなる麻酔手順の開始にも、噴霧は前投薬として適する。同様に、所謂「攻撃的な」治療手順(介入)、不穏状態、および不安において、さらには、一部は攻撃的、不穏な、または見当識を失った患者である、アプローチが難しい患者において、首尾良く使用することも、本発明の一部である。
【0019】
緊急状況での薬物の確実で安全な投与だけでなく、空間的に制限のある状況での薬物の適切な投与もまた、多くの場合、大きな難題である。
【0020】
このように緊急用薬の確実かつ迅速な適用が必要な状況は、とりわけ、基本的な抗痙攣薬でも十分に安定化できず、痙攣の場合に抗不安または抗痙攣物質(ミダゾラムなど)で迅速かつ効果的に処置しなければならない、てんかん性または痙縮性の患者において存在する。発作またはてんかん性のひきつけもしくは発作は、日々の生活においていつでもまったく予測不能に起こり得る。多くの場合、患者は好ましくない姿勢で横になるか、または薬を迅速に投与しようと接触することが困難である(状況または姿勢によっては、患者の動きが適用を妨げる)。患者自身またはその親族は、どうすれば最善に可能な限り速やかに薬を投与できるかと、困難な状況に直面することが多い。また、痙縮またはそれに伴う食いしばり発作によって患者は硬直し、このため、緊急用薬のアプローチ、または特に、その経口適用は不可能である。窒息または自傷する危険を避けるため、多くの場合、患者を防御的な姿勢へと動かさなければならない。上体を起こした姿勢をとることは事実上不可能であり側臥姿勢をとることが優先される。緊急処置における貴重な時間が、姿勢をとり直すことによって失われる可能性がある。したがって、姿勢に依存しないデバイスが活性剤の溶液を投与するために必要であり、実施において実際上非常に重要である。
【0021】
むしろ外的な要因によって投与に負の影響がある他の臨床的状況は、放射線断層撮影検査(MRI、CT、SPECT、またはPET)または術前介入(歯への介入、低侵襲介入など)であり、消化管内視鏡検査も同様である。準備段階、すなわち、患者が検査台に横になる直前では、上体を起こした姿勢をとることは容易になし得る。しかし、一度患者が検査台に上がってしまうと、上体を起こした姿勢での投与は事実上不可能である。
【0022】
最新式の複数回用量スプレーは、投与前に最初に装填しなければならない。このため、上体を起こした姿勢で投与を安全かつ首尾良く行うことができるように、テスト目的で少なくとも2回の噴霧を誘発する(例えば、空気中に噴霧)。さらに、従来の複数回用量スプレーを使用して上体を起こしていない姿勢で噴霧を繰り返し誘発することは、可能ではない。毎回、すなわち、上体を起こしていない姿勢での各噴霧後に、再度吸上げを行わなければならない。よって、従来の複数回用量スプレーによる鼻への緊急処置は、非常に限定された程度で可能であるにすぎない。さらに、空気の吸引によって等しくない体積を適用することになる可能性があり、これは望ましくない。
【0023】
このように、上述の状況で薬物を投与する際に内在および外在する障害は、罹患している患者、患者の親族、および介入する看護スタッフにとって大きな困難をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】M.Haschkeら、Br.J.Clin.Pharmacol.(2010)69(6):607~616
【非特許文献2】Tschirch F.T.C.ら、JMRI(2008)28:866~872
【非特許文献3】Tschirch F.T.C.ら、Eur.Radiol.(2007)17:1403~1410
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は上述の最新式の技術を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、決められた量の抗不安、鎮静、筋弛緩、または抗痙攣活性剤(ベンゾジアゼピンまたは誘導体/GABA受容体アゴニスト、例えば、ミダゾラムもしくはその誘導体またはその塩を鼻内投与することができ、患者のあらゆる姿勢(例えば、患者の直立位、座位、臥位、または他の任意の姿勢もしくは中間の姿勢)において、点鼻スプレーの空間的な向きにかかわらず、均一な投与が可能となる、点鼻スプレーデバイスを提供することである。本点鼻スプレーはまた、等しい(同一の)体積の活性剤の溶液または流体による第2の噴霧を投与することを可能にするはずである。すなわち、第1の噴霧の体積と第2の噴霧の体積とは概ね等しく、したがって、そこに溶解している活性剤の量も同様である。このように、検査デバイス内で患者が十分にじっと横になれていないことが判明したら、活性剤の用量が等しいさらなる噴霧を患者に投与することができる。
【0026】
この問題の解決策は、抗不安、鎮静、筋弛緩、または抗痙攣活性剤を含む水溶液または流体を収容する点鼻スプレーであって、各々が活性剤の水溶液または流体による、等しい決められた体積を有する2回の噴霧またはスプレー吹付(spray puff)を患者に施すことができる、点鼻スプレーを提供することである。本点鼻スプレーは、その空間的な向きにかかわらず、患者のいずれの姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)でも均一な投与を行うことを容易にする。本点鼻スプレーは、好ましくは、事前に始動することなくそのまま使用することができる。
【0027】
よって本発明は、抗不安、鎮静、筋弛緩、または抗痙攣活性剤を含む水溶液または流体を収容する点鼻スプレーであって、
a)各々同一の決められた体積の活性剤の水溶液または液体を有する2回の噴霧または2回のスプレー吹付を、点鼻スプレーにより患者に鼻内投与することができ、
b)点鼻スプレーの空間的な向きに依存せず、かつ、患者のいずれの姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)でも用量の等しい投与を可能にすることを特徴とする、
点鼻スプレーに関する。
【0028】
本発明の状況では、噴霧という用語は、吹付(puff)という用語またはスプレー吹付(ドイツ語:Spruehstoss)という用語と、適宜に相互に置きかえることができる。ただしこれは、複合語との関連、例えば、「点鼻スプレー」における場合に使用されるスプレーという用語とは関係がない。なぜなら、このときスプレーはデバイスを指しており、行為を指しているのではないからである。
【0029】
一実施形態では、二用量点鼻スプレーは以下の4つの構成要素からなる:
a)スプレーデバイスを含む、アクチュエータと称される駆動要素であって、スプリング、中空針、および噴霧デバイスを含む、駆動要素;
b)バイアルホルダー;
c)活性剤容器(例えば、ガラス、金属、または固体プラスチックでできたバイアル);
d)堅固に密閉するプラグ、好ましくは、医薬用に認可されたゴムまたは類似の材料でできたプラグ。
【0030】
好ましくは、駆動要素は、スプリングと注入針とを含む。
【0031】
好ましい実施形態では、活性剤容器は、抗不安、鎮静、筋弛緩、または抗痙縮的に作用する治療薬を収容する。
【0032】
さらなる実施形態では、噴霧の誘発は、駆動要素への圧力による、プラグに対する活性剤容器の直接的な変位による空気圧に依存せず、本点鼻スプレーにより、好ましくは、始動することなくそのまま噴霧を投与することができる。好ましくは、本発明の点鼻スプレーデバイスから、点鼻スプレーが未使用か否か、または1回の噴霧もしくはさらに2回の噴霧がなされたか否かを判別することができる。
【0033】
本発明の二用量点鼻スプレーを使用することで、患者自身または第三者が片手で噴霧を投与することができる。
【0034】
本発明の点鼻スプレーにおける治療的物質は、好ましくは、ベンゾジアゼピンまたはGABA受容体アゴニスト、例えば、ミダゾラムまたはこれらの活性剤の塩である。
【0035】
このように、二用量点鼻スプレーは、閉所恐怖症、パニック発作、もしくは不安障害を有する患者の鎮静、前投薬、処置、またはCNS疾患における痙攣、特に、てんかん発作または他の発作の出現(例えば、熱性痙攣)の処置に、特に適している。
【0036】
二用量点鼻スプレーを使用することで、活性剤を患者に鼻内投与することができ、このとき活性剤は考えられ得る任意の形態で鼻粘膜中に注入されるか、または鼻粘膜上に投与され、その場所で再吸収される。投与は可能な限り均一であるはずで、患者のいずれの姿勢(例えば、立位、座位、または臥位(仰臥位、腹臥位、または側臥位))でも行うことができる。この状況において、点鼻スプレーの空間中の向きは限定されず、これは以下の構造的要素によって可能となる:
a)指圧により、活性剤容器(ガラスバイアル)がプラグに対して直接変位すること;
b)ずれ運動に対する、空間的な向きに依存しない正確な制御およびブロック;
c)減圧下で充填された活性剤を収容する活性剤容器に対する、プラグによる気密シール;
d)スプリングおよび中空針(上昇管)からなる駆動要素(アクチュエータとも呼ばれる)により、圧力下で活性剤流体を押し上げ、噴霧デバイスでアクチュエータの末端から活性剤流体を噴霧の形態で分配すること。
【0037】
本発明との関連において、気密シールとは、一方では活性剤溶液を気密密閉することを意味し、また、活性剤容器の中に可能な限り少ない残留空気が残されるか、または残留空気がまったく残されないことを意味する。よって、活性剤容器は脱気されているか、または空気がない。
【0038】
充填された活性剤容器(図4を参照されたい)の気密シールおよび上述の4つすべての構成要素による構成(a:駆動要素;b:バイアルホルダー;c:活性剤容器およびプラグ)により、本発明の点鼻スプレーは充填済みシリンジのように振る舞うことが可能となる。本発明の点鼻スプレーを使用することで、すべての空間的な向きに活性剤の1回用量を各々投与することができるようになる。ブロック系は図2に図示する通りであり、バイアルホルダーと作動部であるアクチュエータとによって画定され、活性剤容器の駆動要素に対する変位を制御することができ、このため、中空針を通じて正確な体積の活性剤流体を分配することができる。
【0039】
以下で、本発明による二用量点鼻スプレーの好ましい実施形態を説明する。始めの理解として図を参照するが、いかなる形であれ、本発明がこれらの図に描写された点鼻スプレーデバイスに限定されると解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明による二用量点鼻スプレーの構成およびその主要な構成要素の概略図を示し、Aはアクチュエータとも称される駆動要素、Bはバイアルホルダー、Cは活性剤容器(例えば、ガラスバイアル)、Dはゴムプラグである。右側は、好ましい点鼻スプレーデバイスの4つの構成要素による構成の概略図で、(E)はアクチュエータの内蔵あり、(F)はアクチュエータなしの場合を示す。
【0041】
図2図2は、二用量点鼻スプレーのブロック機構の概略図を示す。BPはブロック点を示し、これらの点の各々において、噴霧デバイスは第1の噴霧時(BP1)または第2の噴霧時(BP2)にそれぞれブロックされる。図2Aは、開始時の位置(BP1およびBP2が最も下の位置)における二用量点鼻スプレーを示す。図2Bで、アクチュエータが底からの第1の機械的な圧力によってどのように圧縮されるかがわかる。中空針がプラグを穿孔し、ガラスバイアルがゴムプラグ側に変位することで、流体がアクチュエータの中空針を通じて押し出され、第1の噴霧が誘発される。これにより、バイアルホルダーが第1の位置に変位し、ここでアクチュエータとバイアルホルダーの間にある第1の噴霧に対するブロック機構が、BP1にある小型のアンカーに固定される。このように、単回のスプレー吹付で2用量を送達することはできない。図2Cにおいて、図2Bと同じ機構がその後下からの圧力を受けている。残りの体積が噴霧されるが、ここではプラグが完全にガラスバイアルの底にあり、このとき、バイアルホルダーが最も高い位置にあるという違いがある。これにより、二重投与量の噴霧を確実にし得、しかもさらなる噴霧はできない。さらに、適用後は戻り圧力がなく、下部が完全に最上部に変位しているので、使用者は点鼻スプレーがもう空であることに気付く。
【0042】
図3図3は、空間中の点鼻スプレーの向きに依存した、本発明の点鼻スプレーの適用後における活性剤の溶液の局所的に正確な堆積を示したものである。上段左の画像は、適用前のCT画像を示す。続く画像は適用後のCT画像を示し、画像の各々は空間中の点鼻スプレーの向きを、投与が行われた姿勢を示す点鼻スプレーの概略図によって描写したものである(上段右画像-真上;中段右画像-水平;下段右画像-真下)。残りの画像は中間の姿勢での投与を表す。点鼻スプレーと鼻の間の適用角度は、これらの場合では一定である。高コントラストの活性剤溶液は明るく見え、明瞭に可視化されている。
【0043】
図4図4は、図4aにおいて、活性剤容器を気密的に密閉するための好ましい方法の概略図を示す。大気圧下で、活性剤溶液を活性剤容器中に充填する。好ましくは、充填を行うのは、図4中に示される密閉手順の直前である。図4aのAの下段部分は活性剤容器を示し、活性剤溶液(灰色)が充填された状態で頂部において開放されており、上部では、密閉チャンバーが上方に位置しており、シリンダおよびプラグが上端に挿入されている。このステップは系全体が大気圧下で行われる。矢印型の灰色の三角形は密閉チャンバーに接した密閉ガスケットを描写しており、プラグにある灰色の矩形は、プラグの縁によって気密閉鎖が可能となる領域を示す。
【0044】
図4aのBは、密閉チャンバーに対して押された活性剤容器を示す。このように、気密部が形成される。側方出口を通じて閉鎖系内の空気が吸い出される(矢印を参照されたい)。これは、制御された吸引力の下、時間制御方式で行われる。閉鎖系内で陰圧になっている領域を網掛けで表示してある。明るい灰色の領域は、密閉点を示す。活性剤容器の下の太い矢印は、活性剤容器がシールに対して押されている方向を指している。
【0045】
図4aのCでは、系全体(活性剤容器および密閉チャンバー)が上方へ押されることで、活性剤容器中のシリンダがその規定の位置(第1の大きな矢印)に置かれる。その直後、ピストンがプラグを活性剤溶液の表面まで下げ、ゴムプラグの縁の膨張によってプラグがガラスバイアルの近くに固定される(第2の大きな矢印を参照されたい)。このステップは陰圧で行われる(絶えず空気が吸い出される)。網掛けの領域は陰圧の領域を示す。このステップにより、プラグは活性剤溶液の表面近くに固定される。
【0046】
図4aのDは、どのように閉鎖された活性剤容器および密閉チャンバーが下方に押され(大きな黒色矢印)、これによりシリンダ(プラグなし)を活性剤容器から再び引き出すかを示す。プラグの上方の領域は、今度は再び大気圧下にある(空気の吸出しは止まっている)。プラグは、今度は活性剤容器中の活性剤溶液の真上に固定される(プラグの側部にある縦方向の灰色の縞で示す)。プラグと活性剤溶液の間に空隙が形成される場合、この場所では陰圧となる。
【0047】
図4aのEは、どのように密閉された活性剤容器が元の位置まで下がり、密閉チャンバーから分離されたかを示す。閉鎖された活性剤容器を、今度は本発明の点鼻スプレーへと組み立てることができる。密閉チャンバーを再利用して、新しい活性剤容器をプラグで気密密閉することができる。図4に記載の方法をどのように自動化するかは、当業者に公知である。
【0048】
図4bは、充填済みの気密密閉された活性剤容器を示す。画像は、ゴムプラグが活性剤溶液を気密密閉し、最小限の残留空気のみがプラグと活性剤溶液の間に残されていることを示す。
【0049】
図5図5は、点鼻スプレーの向きに応じた、2回の噴霧における質量の均一性(鼻粘膜に適用された活性物質のmg)を示す。図5aは第1の噴霧に対する一連の測定を示し、図5bは第2の噴霧に対する一連の測定を示す。点鼻スプレーの1方向につき各々10の測定点(1回の測定につき各々1個の点鼻スプレー)を示す。破線は、標的値(1噴霧につき100μl)を示し、実線は、医薬品製造の法令遵守に関して最も厳しい米国薬局方に従って要求される、15%(85mg~115mg)の許容基準を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図2による二用量点鼻スプレーにおいて、アクチュエータの下端に対するバイアルホルダーの変位に注目されたい。これは、操作者が下から二用量点鼻スプレーを見たときに視認できる。これにより、この点鼻スプレーによってあと2回、1回、または完全に0回のいずれの用量の投与ができるかを、患者、看護スタッフ、または医師が決定できる。このように、以前の使用、すなわち、噴霧デバイスが開いていることがはっきりと視認できる。好ましくは、本発明の点鼻スプレーの噴霧デバイスは第2の用量の後でブロックされ、したがって、さらなる用量を投与することができない。これにより、複数回用量スプレーと比較して安全性が高まり、不適切な使用が避けられる。
【0051】
好ましくは、本発明の点鼻スプレーは、200~230μl、215±15μl、230±10μl、225±10μl、または225±5μlの活性剤の溶液、流体、または粉末を収容する。本発明による二用量点鼻スプレーの各々の噴霧により、75、80、90、100、110、120、125、130、140、または150μlの体積(各々、±25%の体積範囲を有する)の活性剤を含む水溶液または活性剤を含む流体を適用することができ、特に好ましい実施形態では、各々の噴霧により、100±15μl、100±10μl、好ましくは100±5μlの体積の活性剤を含む流体を鼻粘膜上に噴霧することができる。この目的に向けて、点鼻スプレーに200~300μlの活性剤の水溶液または流体を充填し、特に好ましい実施形態では、点鼻スプレーに230±10μlの活性剤を含有する流体(有利には、溶液)を充填する。
【0052】
意図する適用に応じて、0.25mg~5mgまたは1.0mg~10mgの治療的用量の活性剤(例えば、ミダゾラム、その誘導体、またはこれらの活性剤の塩)が各々の噴霧によって投与され得るように、活性剤を含む等張性の水性流体を投薬する。治療的活性剤を含む活性剤流体(好ましくは水性流体)は、0.01%w/vの濃度の塩化ベンザルコニウムなどの保存剤および0.1%(w/v)の濃度のEDTAをさらに含有していてもよい。本発明の点鼻スプレーにおいて使用することができる、流体医薬製剤用のさらなる認可済みの保存剤または添加剤は、当業者に周知であり、関連する教科書に記載されている。活性剤ミダゾラムを含む水性流体は、濃度に応じて、調整され正確に規定されたpH値、好ましくは、2.8~3.8の間のpH値(好ましくは、3.0~3.5の間のpH値)を有する。これらの限界値は、仕様に応じて、当業者によってより狭い許容範囲で選択されることも、必要に応じて調整されることもある。可能なさらなる添加剤は、質量オスモル濃度の調整を助ける添加剤(例えば、塩、グルコース)、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)、浸透促進剤(鼻粘膜を越えた活性剤の取込みを改善させる、例えば、デキストリン、シクロデキストリン、キトサン、またはこれらの誘導体)、湿潤剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール)、またはEDTAもしくはDTPAなどのキレート化剤である。無水噴霧の場合、ミダゾラムを可溶化剤によって溶解するか、または懸濁しなければならない。このとき、上述のpH値および等張性を維持することができない可能性がある。シクロデキストリンなどの様々な担体物質と混合することができる、微細化したミダゾラムを主体とする活性剤の混合物の形態の、粉末状点鼻スプレーを使用してもよい。
【0053】
好ましい実施形態では、二用量点鼻スプレーは保存剤を収容していない、すなわち、点鼻スプレー内の流体製剤は、等張性のNaCl水溶液中のミダゾラムHClのみを含有する。好ましくは、このような製剤は、対応する二用量点鼻スプレーを質の損失を伴うことなく長期(好ましくは10ヶ月超、より好ましくは12ヶ月、さらに好ましくは18ヶ月、または最も好ましくは24~36ヶ月)にわたって保存することができるように、無菌で調製される。保存剤を含まないこの点鼻スプレー製剤の利点は、アレルギー感作(allergisation)、刺激、および鼻粘膜上の繊毛の運動との相互作用がより低いことである。
【0054】
図4aに概略的に示されるように、活性剤容器は、好ましくは、活性剤溶液で充填され密閉される。まず、頂部が開いた活性剤容器内を所望の量の活性剤で充填する。次いで、活性剤容器を、プランジャ様デバイスを収容する密閉チャンバー中へと導入する。プランジャ様デバイスの下端において、活性剤容器を気密密閉することになるプラグを固定する。この時点で、密閉チャンバーと活性剤容器とが閉鎖系を形成する。密閉チャンバーの側部にある開口部を通じて空気を閉鎖系中に吸い込み、これにより、容器内の活性剤が不変のままとなる。検証実験により、プラグを活性剤溶液の表面に可能な限り近づけるためには、約600~900mbarの陰圧を使用しなければならないことが判明している。実験により、この系において望ましい陰圧を達成するためには、好ましい吸引時間は0.5~1.5秒であると判明している。プランジャ様デバイスにより、充填されている活性剤の表面とプラグの間に可能な限り空隙が形成されないように、ゴムプラグを活性剤容器中へと、活性剤の上端の高さまで下げる。このように、密閉され充填された活性剤容器は充填されたシリンジのように振る舞い、こうして本発明の点鼻スプレーの活性剤流体を、あらゆる空間的な向きに適用することができる。2回の等しい噴霧の適用が向きに依存しないことは、いくつかの試料を用いて当業者が試験しており、これらの適合性は、一般的な医薬品の要件(FDA、PHEUR)に従って文書化されている(各々の体積が100μl±15%である、2回の均一な噴霧、図5を参照されたい)。
【0055】
系内の陰圧を作り出す、印加される真空を(図4Bを参照されたい)、好ましくは、常時モニタリングし、記録することができる。閉鎖系内の所望の陰圧を、好ましくは、吸引時間によって制御する。検証実験により、可能な限り、プラグと活性剤流体の表面の間にまったく残留空気が残らないか、または最小限の量の残留空気のみが残るように活性剤容器中にプラグを入れるためには、一般に約1秒の吸引時間で十分であることがわかっている(図4bを比較されたい)。
【0056】
図5からわかるように、活性剤容器を気密的に密閉するための上述した方法により、活性剤容器を本発明による点鼻スプレー中に組み込むことができる。これにより、等しい決められた量の活性剤または同一の体積の活性剤溶液による2回の噴霧を投与するための点鼻スプレーであって、点鼻スプレーの空間的な向きにかかわらず、患者のいずれの姿勢(直立位、臥位、またはあらゆる中間の姿勢)でも均一に活性剤を投与することが可能な点鼻スプレーの製造が容易になる。得られた点鼻スプレーは、規制機関(例えば、米国の)の薬局方の要件を満たす。
【0057】
活性剤容器を気密的に密閉するための上述した方法は、特に、陰圧を作り出さなければならない空間が非常に小さく、吸引時間がたったの約1秒であることから、工業規模での使用に適する。
【0058】
好ましくは、密閉され充填された各活性剤容器で目視検査を行う。カメラ(必要に応じてコンピュータ制御された)によって目視管理を行うことができる。プラグと活性剤流体の表面の間の距離を制御する。当業者は、検証実験によって最大の許容可能な距離について許容基準を定めることができる。これにより、不適切に密閉されたかつ/または正しく充填されていない活性剤容器に対する自動化された選別が可能となる。
【0059】
本発明の点鼻スプレーは、以下で説明するように動作する。駆動要素(アクチュエータ)に対する指圧によってプラグが活性剤容器中へずれ、これによって圧力が発生し、この圧力が、駆動要素中に内蔵された中空針を通じて、活性剤流体をアクチュエータの上部螺旋部中へと押し上げて、活性剤流体が噴霧として分配される(図2を参照されたい)。バイアルホルダーとアクチュエータの間のブロック機構(図2の符号を比較されたい)により、各々が等しい体積を有する2回の制御された噴霧の送達が可能となる。
【0060】
好ましいのは、各々が0.2~5mg、特に好ましくは0.278~5.56mgのミダゾラムHClによる2回の制御された噴霧を等張性水溶液として患者に連続して投与することができ、これにより、点鼻スプレーが直立、水平、もしくは逆さま、または任意の中間の姿勢のいずれで保持されているかが問題とならない、二用量点鼻スプレーである。2回の噴霧を迅速に連続して行っても適時に行ってもよく、これにより、第2の噴霧が他方の鼻孔中になされることが好ましい。二用量点鼻スプレーにより、鼻粘膜の表面上の広い領域にわたって活性剤を分配することが可能となり、このことは迅速な再吸収および生体利用率の点で有利であることがわかる。
【0061】
特に好ましい実施形態では、活性剤の投与のためにさらなる準備または始動を行わず、点鼻スプレーをそのまま使用することができる。すなわち、この点鼻スプレーはすぐに使える(「即時使用可能な」)二用量点鼻スプレーである。
【0062】
上述のように、二用量点鼻スプレーは、4つの作製済みの主要構成要素からなる。これら4つの主要構成要素は滅菌(蒸気、酸化エチレン、および/またはガンマ線滅菌)されていてもよい。その後、本発明による所望の二用量点鼻スプレーを得るために、これらの4つの主要構成要素から二用量点鼻スプレーを組み立て、また、活性剤容器も活性剤流体で充填する。
【0063】
活性剤容器、好ましくはガラスバイアルの充填は、閉鎖環境中において、針と、所望の体積の活性剤溶液(例えば、200~300μl)を正確な用量で活性剤容器中へと充填することができる、高精度計量ポンプとによって行う。各活性剤容器の充填度を制御し、写真によって文書に残す。この目的のために、プラグの上下のガラス境界部において回折光線の光強度を測定し、比較する。したがって、これにより、活性剤容器中の充填度が正確に制御される。
【0064】
図2による二用量点鼻スプレーによって、2回のみの連続する噴霧を投与することができる。初めて押したときに、上部のゴムシールが貫通され、特別な位置へと上に変位する(BP1/BP2、および内部シャフト)。活性剤流体の分配量(噴霧体積)を、側部のアンカー(図2によるBP1およびBP2を参照されたい)を介して制御する。スプリングのおかげでスプレーが「再起動」し、その後2回目の始動をすることができる(図2、下部中央の画像)。現状で分配できる最大体積は残りの体積によって決まり、これは上部のより細い鼻シリンダ(図2、下部右側の画像)における最も高い停止位置によって規定される。横方向のシャフトは点BP1およびBP2と共にさらに位置を制御し、したがって、2段階の正確な適用を制御する。側部のアンカーにより、結果として2段階の適用がもたらされる。二用量点鼻スプレーは、噴霧機構がブロックされ、第2の噴霧の送達後に枯渇するように設計されている。したがって、二用量点鼻スプレーはもはや使用することができない。実際では、規制要件に従って安全に処分されることになる。
【0065】
本発明による二用量点鼻スプレーは、製造後、好ましくは厚紙またはプラスチックでできた箱の中に包装されるが、この場合、1個の箱に1個または数個の定量スプレーを収容してもよく、各々が本発明の点鼻スプレーの使用法を説明した添付文書を収容する。貯蔵および流通のために、複数の箱をさらなる箱(大型の箱)に包装することができる。これにより、緊急の場合に遅滞なく両方の鼻孔から緊急用医薬を並行して適用することができるようになる。
【0066】
本発明による二用量点鼻スプレーを最終的な顧客に送達する前に、HPLCにより品質管理を行って、製剤および活性剤の密度、pH、質量オスモル濃度を確認する(欧州薬局方に類似した、検証された手順)。さらに、各バッチについて微生物分析を行う。上述のように、活性剤容器中の充填量を充填過程中に制御する。各製造バッチにおいて、二用量点鼻スプレーにおける投与量の均一性を、薬局方に従って検証可能な形で制御しなければならない。
【0067】
本発明による二用量点鼻スプレーでは、噴出された流体が一般的に使用される点鼻スプレーの場合のように空気と置き換わることはなく、その代わりに、噴霧機構が始動したときに貫通される、可動プランジャを使用する。この系により、点鼻スプレーの空間的な向きにかかわらず、患者のいずれの姿勢(すなわち、患者の直立位、座位、臥位、または他のあらゆる姿勢)でも噴霧の鼻内投与が可能となる。このことは、本発明による二用量点鼻スプレーを、慣用の複数回用量点鼻スプレーなどの最新式の点鼻スプレーと著しく区別する点である。
【0068】
閉鎖系により、点鼻スプレーの無菌製造時から使用時まで、主要な医薬容器としての微生物学上の保全性を促進する。本発明による二用量点鼻スプレーの無菌充填により、医薬物質の製剤化において、刺激性である可能性のある保存剤の使用を回避することができる。本発明による二用量点鼻スプレーは、貯蔵時に安定である。
【0069】
本発明による二用量点鼻スプレーは、必要であれば、患者自身により片手で操作することができる、迅速に即時使用可能なデバイスである。本発明による二用量点鼻スプレーは、MRIスキャンなどの画像診断手順に適していてかつ適用可能であり、診断デバイスに影響を与えず、その機能または保全性が診断デバイス(例えば、デバイスの磁気放射またはその磁気力)によって影響を受けることはない。また、磁気の干渉または画像化手順中における他のアーチファクトを引き起こさない。
【0070】
本発明による二用量点鼻スプレーは、必要に応じて、経口適用することもできる。これは、鼻が遮断されている場合(例えば、局所的な病理学的変化によって)、または鼻経路と関連する、風邪もしくは一般的な感染症の場合に局所適用が制限される場合に行うことができる。可能性のある禁忌は、例えば、直近の鼻形成術、ポリープ、または鼻腔中における他の急性炎症である。
【0071】
本発明による二用量点鼻スプレーは、例えば、MRIまたは類似の機械(PET、SPECT、放射線療法の装置、またはCTも)に入るかまたはそのために位置決めする前に、様々な適応症、閉所恐怖症または不穏状態を伴うもしくは伴わない類似の不安障害に特に適する。閉所恐怖症患者は、二用量点鼻スプレーから1回または2回の噴霧を鼻内投与してから約1~2分後にはもう鎮静するため、MRI検査を何の問題もなく成功させることができる。
【0072】
さらに、本発明による二用量点鼻スプレーを使用することで、低侵襲介入、歯科的介入、小児科的介入、様々な診断手順、消化器検査に先立つ対症療法的ステップなどの様々な類似の恐怖を、克服または減少させることができる。さらなる使用としては、麻酔手順に先立つ前投薬、外科的介入、または類似の手順が挙げられる。即時使用可能なデバイスであることから、二用量点鼻スプレーを、点鼻スプレーの空間的な向きに依存せず、患者のあらゆる姿勢に即座に使用することができる。よって、二用量点鼻スプレーを、緊急時、特に上述の介入においても非常に効果的に使用することができる。さらなる適用は、老年医学における使用、かえって苦痛である治療的介入における使用、不安または不穏状態がある場合における使用、および気難しくほとんどアプローチができない、不穏な患者における使用に関する。
【0073】
不安障害に一般的に使用される低用量ミダゾラム(好ましくは、0.25~5.0mg)では、患者に目立った鎮静が生じない(「意識下の鎮静」)。したがって、患者は検査を行う担当の技術者または医療補助者の指示に従うことができる。
【0074】
医師もしくは医療補助者、または必要に応じて検査もしくは介入に関わる看護師もしくは技師もが、患者に対して二用量点鼻スプレーにより噴霧を投与することができる。これには、気難しい患者の場合でも、またはコンプライアンスに欠陥がある場合であっても、患者の姿勢に依存せずに迅速な介入ができるという利点がある。二用量点鼻スプレーを使用することで、患者は必要に応じて自らに鼻内噴霧を投与することもできる。
【0075】
本発明のさらなる実施形態では、必要であれば、MRIもしくは類似の(放射線)検査または上述の介入の間に、検査または介入の間に患者の姿勢が変化しないように、本発明による二用量点鼻スプレーによる追加の噴霧を患者に投与することも、上述のように患者自身が施すこともできる。これは、コントラストが変化し、患者が動いてはいけないという要求があるMRI検査(T1、T2、拡散、ADC、ダイナミック、ネイティブ、およびガドリニウムを造影剤として使用したもの)の最中で極めて重要である。これにより再投与が著しく簡便になり、誤適用が回避される。
【0076】
したがって、本発明はまた、MRIまたは類似の(放射線)検査の状況で患者を処置するための方法であって、MRI検査の直前に本発明による二用量点鼻スプレーによる噴霧を患者に投与するか、または患者がMRIデバイス中で本発明による二用量点鼻スプレーによる噴霧を再投与する(例えば、検査中に再発する不安または不穏状態)ことを特徴とする、方法にも関する。
【0077】
高投与量の抗痙攣薬は、患者における発作の処置にも適する。このような発作(例えば、ミオクローヌス発作)は、てんかん性障害もしくは他の神経性疾患などの様々なひきつけによって、またはCNSクリーゼおよび熱性痙攣で引き起こされる可能性がある。
【0078】
したがって、本発明の二用量点鼻スプレーはまた、高用量の活性剤の溶液または流体を収容することもできる。このような高用量点鼻スプレーから利益を受ける患者の集団は、典型的には、強直間代性てんかん様の痙縮または発作および熱性発作に至る痙攣を有する、小児、青年、若年成人、または他の患者である。発作的なてんかん発作または類似のCNS発作は突然発症し、多くの場合、明確な徴候はなく、ときにごく短い時間しか持続しないことがある、ある一定の意識レベルの低下を伴う。罹患者は周囲に対してごく限定的な形でしか反応せず、口または頭の動きによって反応し、突然叫び、それから先を覚えていることができず、転倒または身悶えをし、頭と首を過剰に伸ばし、引きつり、不随意的に舌または頬を噛み、多くの場合、泡状の唾液が口から外に出てくる。低度の低酸素症の結果、患者の皮膚はわずかに青くなる。罹患した筋肉の筋緊張が突然緩むことがあり、これによって罹患者が転倒するかまたは罹患者の脚が崩れる。発作は時折非常に長く続き、危険である。さらに、このような発作で中枢神経系(CNS)の領域が破壊されることがある。脳の罹患した領域によって、症状は非常に異なる。このような発作を既に経験している罹患者において、不快感、易刺激性、頭痛、ある種の感覚障害、雑音、幻覚、またはある種の前兆などの、早期の徴候が一部検出可能である場合がある。これにより、発作を抑制するためのミダゾラム点鼻スプレーの早期使用が可能となる。このように、痙縮性の強直間代性発作も、最善で、低減および/または短縮することができる。ミダゾラムは経口(錠剤)または直腸内投与することもできるが、これらの剤形は、活性剤が即座に作用することができないという明確な欠点がある。
【0079】
近年導入された経口投与ミダゾラム溶液は、活性剤が遅れて再吸収される(30~60分、胃および/または十二指腸の充填度による)という欠点を有する。再吸収後、門脈を経由して初回肝通過が起こり、この初回通過効果によって有効性が減少することになる。鼻投与によって初回通過効果を回避することができるため、点鼻スプレーを使用することで、一層さらに迅速に、一層高い生体利用率(約80%)で血液中に活性剤を送ることができる。
【0080】
本発明による二用量点鼻スプレーを使用することで、とりわけ、痙縮性の噛みつき発作のあるてんかん患者がいる親族または第三者が、抗痙攣物質を迅速、安全、かつ容易に、事前に始動することなくそのまま投与することができる。既に述べたように、初回通過効果のない迅速な生体利用率、迅速な作用、および簡便な適用に起因して、本発明による点鼻スプレーを使用した鼻適用は、経口または直腸内投与より著しく優れる。このことは、患者の世話をしたり緊急時には患者の処置さえする親族または他の介護者にとって、大きな利点となる。複数回用量点鼻スプレーを使用しているとき、患者の頭部は起き上がった姿勢でなければならない。これを達成するために、鼻投与が可能となるように、親族は何とかして患者を座位または上体を起こした姿勢に保持することを余儀なくされる。このことは、本発明による二用量点鼻スプレーでは必要ではない。なぜなら、点鼻スプレーの空間的な向きにかかわらず、患者のあらゆる姿勢で投与することが臨機応変に可能であるからである。このように、本発明による二用量点鼻スプレーは、これにより発作の急速な悪化を早期に止めることができるため、緊急時にとりわけ適する。
【0081】
この状況において、用量応答は患者の体重に依存するため、単回用量の投与では不十分であることが度々ある点に留意しなければならない(発作の場合の活性剤の十分な用量は、体重1kgあたり約0.02~0.05mgである)。ときに、第2の用量の投与が必要になることもある。本発明による二用量点鼻スプレーを使用することで、第2の用量の活性剤を含む第2の噴霧を、即座にまたは時間をずらした形で投与することができる。これは、Nazolam(登録商標)(MEDIR B.V.、Doorn、Netherlands)などの他の市販品と比較して有利な点である。
【0082】
典型的には、患者がいずれかの種類のCNSクリーゼ、発作(例えば、熱性発作)、てんかん性障害、および/またはこれらと関連する発作を被っているとき、高用量の活性剤ミダゾラム(1~10mg)を鼻内に適用する。高用量による処置は、発作の早期または類似のCNS障害の症状に適応となり得る。本発明による点鼻スプレーを、患者自身があらゆる姿勢で(即時使用可能)投与することも、緊急処置に関わる第三者が投与することもできる。鼻内の取込みは速く、落ち着かせる効果は非常に迅速に発生する。
【0083】
本発明による二用量点鼻スプレーを使用してミダゾラムを投与した後の活性剤の生体利用率の測定により、高い生体利用率(>83%)が達成されることが示される。鼻毛細血管経由では再吸収による初回通過効果がないため、投与から2分後には顕著な血漿濃度が達成される。血漿濃度のピークレベルが投与の5~10分後に測定された(しかし、高い標準偏差が明らかとなった)。このことは、活性剤の局所的な取込みが非常に迅速であることを証明している。排出の半減期(t1/2β)は1.5~3.5時間に相当する。
【0084】
点鼻スプレーによってミダゾラムを投与することで、鼻粘膜に局所的な刺激が生じる可能性がある。しかし、これは通常の場合、投与から10~20秒後には消失する。この可逆的な刺激の理由は、点鼻スプレー中の流体のpHが低いことである可能性が高い(好ましくはpH3.0~3.5)。恐らく、鼻粘膜の刺激はまた、存在するかもしれない保存剤によって引き起こされるか、または部分的に引き起こされる可能性がある。これは、湿潤剤(プロピレングリコール、グリセロール)またはさらにキレート化剤(EDTA、DTPA)と共に、添加剤として浸透促進剤(デキストリンおよび誘導体、キトサンおよび誘導体)を使用することで減らすことができる。
【0085】
本発明に従う二用量点鼻スプレーを使用してミダゾラムを投与する際、望ましくない副作用を回避するために、公知の通常の予防措置がとられなくてはならない。例えば、より高い投与量は呼吸困難または呼吸不全を引き起こす可能性がある。しかし、報告された症例は極めてまれである(ここ12年で1症例が報告されている)。重症筋無力症もミダゾラムの投与によって増す可能性がある。小児における矛盾したまたは逆説的な効果についての報告もある。一般に、同様の望ましくない有害事象がとりわけ高齢の患者に起こり得る。
【0086】
当業者は、駆動要素をどのようにして上述したように製造または準備するかを知っている。さらなる構成要素を購入することができる。当業者は、各構成要素を容易に組み立てて完成した点鼻スプレーとすることができる。通常、バイアルホルダーは合成材料またはプラスチックからなる。これは、活性剤を有する(大抵は事前に充填されている)容器を引き上げる働きをする。プラグは、駆動要素と活性剤容器の間の気密接続を促進する働きをする。ゴムプラグは、好ましくは薬務に適したゴムからなるが、当業者に公知の対応する他のプラスチック材料からなっていてもよい。
【0087】
点鼻スプレーの構築設計を図1および図2に描写する。図1による点鼻スプレーを、指で押すことにより活性剤容器(好ましくはガラスバイアル)がゴムプラグに対して直接的にずれ、これにより気圧に依存しない噴霧の誘発が可能となるように組み上げる。図1による点鼻スプレーデバイスにより、向きに依存しない正確な制御と変位運動のブロックとが可能となり(図2)、これによりアクチュエータの機能性を制御する積算した体積を決定する(図2)。
【0088】
好ましくは、本発明による点鼻スプレーは、まだ未使用であるか否かが判別可能であることを特徴とする。
【0089】
本発明による点鼻スプレーは、底側からのアクチュエータ下端に対するバイアルホルダーの変位を視認することができ、よって、点鼻スプレーが既に使用された否かか、または1回もしくは既に2回の噴霧が誘発されているかを視認することができることを特徴とする。好ましくは、本発明による点鼻スプレーは、組み立てられたときに、第1の噴霧が、第2の噴霧も同時に誘発することなく制御された形で送達されることを確実にする、ブロック機構を収容している(図2を比較されたい)ことを特徴とする。
【0090】
好ましくは、本発明による点鼻スプレーにより、点鼻スプレーを事前に始動する必要なく、1回または2回の噴霧を投与することができる。
【0091】
このようにして患者にまたは患者によって、片手で、準備動作を行わずにそのまま噴霧を投与することができる。この場合、各噴霧の体積は、水性流体が鼻粘膜上に注入または噴霧され、そこから再吸収され得るように選択される。
【0092】
本発明による点鼻スプレーを使用することで、0.25mg~5mgの用量の抗不安、鎮静、筋弛緩、または抗痙攣活性剤を投与して、意識下の鎮静を達成することができる。
【0093】
本発明による点鼻スプレーを使用することで、1~10mgの用量の抗不安、鎮静、筋弛緩、または抗痙攣活性剤を投与して、鎮痙効果を達成することができる。
【0094】
本発明による点鼻スプレー中における、本明細書で好ましい活性剤溶液は、保存剤、例えば、0.01%w/vの濃度の塩化ベンザルコニウムおよび0.1%(w/v)の濃度のEDTAを、さらに含有することができる。しかし、特にアレルギーを患う人に、または既知の過敏症がある場合に、保存剤不含の点鼻スプレーを使用することもできる。
【0095】
本発明による点鼻スプレーにおける好ましい活性剤溶液は、2.8~3.8の間のpH値、好ましくは、3.0~3.5の間のpH値を有する。無水流体または粉末も、測定可能なpHを有さない。
【0096】
本発明による点鼻スプレーにおける好ましい活性剤溶液は、等張性である。
【0097】
本発明による点鼻スプレーは、好ましくは、無菌的に調製される。
【0098】
本発明による点鼻スプレーは、好ましくは、磁気干渉を引き起こさない。
【0099】
本発明による点鼻スプレーは、閉所恐怖症または不安障害を有する患者の処置に適しており、本発明による点鼻スプレーにより、1噴霧当たり0.56mgのミダゾラムHCl(0.50mgのミダゾラム基剤に相当)で各噴霧が投与される。
【0100】
本発明による点鼻スプレーは、鎮静または前投薬に適しており、本発明による点鼻スプレーにより、例えば、1噴霧当たり0.278~5.56mgのミダゾラムHCl(0.25mg~5mgのミダゾラム基剤に相当)で各噴霧が投与される。
【0101】
本発明による点鼻スプレーは、閉所恐怖症もしくは不安障害を有する患者の処置、またはてんかん発作もしくは他の発作を有する患者の処置に適しており、このような処置では、本発明による点鼻スプレーにより、上述のように、高用量の活性剤、例えば、1噴霧につき1~10mgのミダゾラムまたは1噴霧につき患者の体重1kg当たり0.02mg~0.05mgのミダゾラムが必要である。
【0102】
本発明による点鼻スプレーは、一方ではMRIまたは類似の(放射線学的、放射線療法)検査(またはチューブもしくは類似の形態のさらなる画像化装置)の状況における患者の処置に使用され、これにより、MRI検査の直前に本発明による点鼻スプレーによる噴霧が患者に投与される。必要であれば、検査の前または最中に、本発明による点鼻スプレーからのさらなる噴霧を患者に投与することができる。
【0103】
本発明による点鼻スプレーは、他方では神経学的に引き起こされた発作を有する患者の処置のために使用され、これにより、本発明による点鼻スプレーによる噴霧が患者に投与され、これにより、必要であれば、本発明による点鼻スプレーからのもう1回の噴霧を患者に投与することができる。
【0104】
よって、本発明による二用量点鼻スプレーの利点は以下の通りである。
【0105】
・MRI台上および類似の診断検査(PET、SPECT、CT)、またはあらゆる種類の低侵襲介入(歯科的、外科的、麻酔導入)における準備段階中の迅速で特異的な抗不安効果が、作業の流れを加速し、患者における予定された介入を容易にする。
【0106】
・低用量ミダゾラムの投与により、MRI検査(意識下の鎮静)または様々な低侵襲介入の間、技術スタッフとの協力が改善する。
【0107】
・動きによるアーチファクトがより少なくなることによる画像化品質の向上(MRI)、および上述の介入におけるより良い遵守。
【0108】
・活性剤ミダゾラムのピーク濃度がより低いことに起因した、CNSまたは全身毒性の低下。
【0109】
・一時的な鎮静。
【0110】
・活性剤の投与が十分に制御可能であり、2つの鼻孔から行うことができる。
【0111】
・臥位、座位、上体を起こした姿勢、または他のいかなる姿勢の患者にも、例えば、側臥位においても、二用量点鼻スプレーを均一な効率で使用することができる。この場合、点鼻スプレーの空間的な向きは限定されない。
【0112】
・二用量点鼻スプレーは即時使用可能に供給され、即座に使用することができる。
【0113】
・二用量点鼻スプレーが1人の患者のみに使用され、したがって、高い衛生基準を満たす。
【0114】
・二用量点鼻スプレー中の製剤を、閉鎖系中に無菌で充填することができるので、保存剤を使用する必要がない。
【0115】
・鼻の閉塞または局所的な制限を伴う緊急時に、点鼻スプレーを、いかなる準備もせずに速やかに効率的に直接口中へと噴霧することができる。
【0116】
・二用量点鼻スプレーは、例えば、Swissmedic、EMA、および/またはFDAにおける登録のための規制要件を満たす。
【0117】
・点鼻スプレーにより、無水溶液、懸濁物、またはさらには粉末などの様々なミダゾラム製剤を、鼻に、緊急時には頬側にも、いずれによっても投与することができる。
【0118】
以下で、本発明の二用量点鼻スプレーの好ましい実施形態を説明する。この二用量点鼻スプレーを使用することで、活性剤溶液(好ましくはミダゾラム溶液だが、流体または粉末の混合物でもよい)を、非常に短い時間内に、安全で、局所的に正確で、迅速に作用する方式で、患者の姿勢(例えば、上体を起こして、仰向けになって、または側臥位で)に依存することなく、均一な形で、点鼻スプレーの空間的な向きに依存することなく、噴霧デバイスを始動するための事前の準備動作を必要とすることなく(即時使用可能な点鼻スプレーデバイス)投与することができる。これは、医療の専門家および親族にとって最も有益であり、現在まで得られていない。このような、向きに依存せず、姿勢に依存せず、安全でかつ均一に医薬を適用することの利点は、発作を有する患者の緊急処置と、MRIなどの診断検査に先立つ患者への前投薬の両方において、重要な役割を果たす。
【0119】
本発明の点鼻スプレーデバイスを使用した活性剤溶液の局所的に正確な標的化された投与は、以下の実験的試験およびそれにより得られたデータにより、文書化および検証される。この検証は、画像化検査デバイスである高分解能CTと組み合わせた新規の測定手順を使用してなされたものであるが、適当な空間分解能または画像化品質を有する他の(断層撮影の)画像化手法が可能である。新規の実験手順により、活性剤の局所的に正確な投与(液滴の分布)という観点による点鼻スプレーの特徴付けが可能となり、そして、初めてのことであるが、適用系の有効性を臨機応変に評価する、すなわち、鼻投与された活性剤の局所的に正確な投与の限局化を分析することが可能となる。点鼻スプレーおよび鼻適用はそれぞれ局所的でかつ全身的に使用されるので、活性剤の分布、その表面分布、および粘膜表面上でのその物理的な濡れは、系の有効性に大きな影響を与える。絶対的基準として、大抵の場合、核医学法(シンチグラフィ、SPECT、PET、恐らく、MRまたはCTと組み合わせて融合画像としている)が、様々なアプリケータで鼻投与された薬物の鼻での堆積を評価するために使用される。しかし、これらのX線による方法は、実際の使用可能性という点で重要な欠点を有する。
【0120】
・多くの場合、空間分解能(例えば、3~5mm、5~10mm、または6~12mm)が限定される。
【0121】
・時間的な観点からは、多くの場合、約20~30分の時間にわたって測定を行わなければならず、したがって、短い時間枠を表示することができない。よって、画像はより長い時間枠の重ね合わせを示し、約30分間に及ぶ粘膜表面上でのマーカーの集積(confluence)(重力)を伴う。このように、鼻での堆積の評価には不備ができてしまう。長い測定時間に起因して、動的画像は不可能である。よって、鼻分布の時間経過、そしてとりわけ初期分布を表示することができない。
【0122】
・画像解析が相対的に高い放射線曝露を伴う。
【0123】
今日では、CTなどの放射線断層撮影検査に基づいて、患者特異的な詳細な鼻腔レプリカを調製することが可能である[Warnken Z. N. et al.; ”Personalized Medicine in Nasal Delivery: The Use of Patient-Specific Administration Parameters To Improve Nasal Drug Targeting Using 3D-Printed Nasal Replica Casts”; Mol. Pharmaceutics, 15, 1392-1402 (2018)]。特に、高分解能の患者特異的な検出は、鼻適用においては、活性剤が鼻腔内の所望の場所に到達するか否かは不明なままである。この度本発明は、鼻適用における活性剤の局所的に正確な堆積を患者特異的に検出することを可能にする方法を提供する。特に、本明細書に開示される方法により、どのような鼻洞および主鼻腔(main cavity)に対しても、鼻適用によって活性剤がそこに到達するか否か、そしてどんな量で到達するかを調べることが可能となる。
【0124】
CTと略記されるコンピュータ断層撮影は、層状の画像化(3D取得)において高い空間および時間分解能を有する、放射線学の画像化手順である。物体のX線吸収プロファイルに基づいて、個々の層にまたがる解剖学的構造をCT画像として表示することができる。身体を通過するX線シグナルの吸収値から、計算された薄片画像を生成する。空間分解能が技術的に改善されれば、画像品質を上げることができ、それにより解剖学的な構造をより詳細に表示できる。一方で、新規の技法により、低放射線検査が日々の臨床利用において活用されている。様々な鼻腔にわたって鼻粘膜上での鼻での堆積をより良好に特徴付けおよび限局化を行うために、造影剤(例えば、ヨウ素含有溶液、ガドリニウム含有造影剤、または他のポジもしくはネガとして作用する造影剤)を鼻適用系に充填する。鼻用アプリケータによる鼻(患者、被験者、レプリカ)への適用の後、CT画像を取得する。鼻腔全体にわたる吸収プロファイルにより、高コントラストの液滴を鼻粘膜の表面上に描写し、周囲の組織から線引きすることができる。X線を吸収する度合いがより低いバックグラウンドに対し、液滴は顕著なコントラストで現れる。よって、表面の加湿も高コントラストの流体の分布も明瞭に描写することができる。このように、適用後に比較的速やかに、内部に噴霧された流体の限局化および定量を行うことができる(X線吸収)。時間経過(動力学)を表示することができる。使用したヨウ素化造影剤は、濃度、粘度、または質量オスモル濃度の異なる、認可済みのヨウ素含有溶液、懸濁物、または粉末である。当業者は適用に適した造影剤を適当な濃度で選択して、可視化が望まれる場合に、ミダゾラムまたは他の活性剤に恐らくはこれを添加することができる。今回の場合、92mg/mlのヨウ素濃度を有するヨウ素化造影剤(例えば、Iopamiro(登録商標))の希釈溶液を使用した。原則として、あらゆる可能な高コントラスト物質(流体、固体、気体状)を、様々な濃度または投与量で使用することができる。点鼻噴霧デバイスの基本特性を適した形で特徴付けることが可能となるように、使用する薬学的活性剤溶液と類似した物質の混合物を使用するのが有利である。ヨウ素化造影剤の溶液を使用することで、水溶液およびその分布が最適な形で可視化される。さらに、点鼻スプレーの鼻での堆積を表示および特徴付けするために、粉末状混合物を使用してもよい。既に述べたように、本発明の点鼻噴霧デバイスにより、点鼻スプレーデバイスのいずれの向き(空間的な向き)においても、局所的に正確かつ体積上正確な投与が可能となる。これを以下で説明する実験によって検証し、画像を記録した(CT画像化手順)。
【0125】
点鼻噴霧デバイスの特徴付けを、コンピュータ断層撮影鼻堆積技術によって行う。このために、ヨウ素または他の造影剤の水溶液を充填した点鼻噴霧デバイスを、鼻モデル(以降、鼻レプリカとも呼ぶ)の様々な方向から使用しなければならない。
【0126】
鼻レプリカは、様々な手法で調製することができる。以下で説明する実験で使用した鼻モデルは、ヒトCT画像に基づいて設計し、鋳造技術または3D印刷法のいずれかによって製造した(なお、様々な患者から、様々な形状の鼻腔をこのようにモデリングした)。鼻モデルは、好ましくは、CT画像化においていかなるアーチファクトももたらさず、適用したヨウ素溶液、流体、または粉末とモデルの解剖学的構造の間に適当なコントラストを可能にする(レプリカの表面と造影剤の間でX線密度が異なる)ように選択された、合成樹脂またはプラスチックからなる。表面堆積の表示に有利なことは、周囲組織のない微細に構築された表面テクスチャからなるレプリカ、可能性としては、親水性コーティングを有するモデルまたは空気吸収に曝されたモデルを使用することである。
【0127】
点鼻噴霧デバイスの特徴付けのため、鼻レプリカを所望の姿勢にして(傾ける)、次いで安定させる。適用角度が一定であるため、投与中の点鼻噴霧デバイスの空間的位置が規定される。続いて、検査される点鼻噴霧デバイスによって、造影剤を含む活性剤の溶液、流体、または粉末を確実に投与する。投与の直後、コンピュータ断層撮影または別の画像化技術によって局所的に正確な投与が限局化され、これにより、特徴付けおよび検証がなされる。添加された造影剤により、鼻レプリカの鼻腔内の内表面上における活性剤の溶液もしくは流体の液滴または粉末状粒子の分布が、CT画像または類似のデバイス上ではっきりと視認できる。今回の場合、造影剤が鼻腔前側の中上部に広がったことを、高分解能のCT画像によって示すことができた。このような測定は、不明瞭なENT条件を有する個別の患者において、または適用の安全性を高めるためにも行うことができる。
【0128】
本発明の点鼻スプレーによる向きに依存しない均一で適時の(即時使用可能な鼻アプリケータ)鼻での堆積を表示および限局化を行うために、以下の前提条件が重要である:鼻アプリケータまたは点鼻スプレー中に充填することができる、造影剤含有物質(溶液、混合物、粉末、気体、エマルション等であって、多くの場合、ヨウ素含有造影剤、ガドリニウム含有造影剤、または他の高コントラスト物質を含む)の使用。
【0129】
活性剤を伴うまたは伴わない造影剤の適用は鼻分布を理想的にシミュレートまたは検出する、すなわち、使用する可能性がある活性剤の薬学的溶液、流体、または粉末状混合物を適用した場合と類似の特性(流動、霧化、または表面電荷)を有するはずである。
【0130】
さらに、鼻レプリカは、CT測定または類似の検査手順に適するはずである。特に、レプリカは、ピクセルレベル、すなわち、格子点(ボクセルレベル)についての定量をも可能にするものでなければならない。このために、高分解能画像をスキャンまたは表示する可能性があるCTスキャナまたは類似の方法の使用を、確実にしなければならない。
【0131】
本実験で使用した鼻モデルは、CT画像化または可能な代替の方法においてアーチファクトをもたらさないように選択された、合成樹脂および/またはプラスチックからなる。
【0132】
点鼻スプレーにヨウ素造影剤含有溶液、流体、または粉末混合物を充填し、規定の適用角度(基準:鼻梁(nose bridge))で鼻モデルの鼻孔中へとスプレーを噴霧する。個々の測定点を繰り返し測定し検証できるように、点鼻スプレーと鼻モデルの間の角度を一定(好ましくは、生理学的導入角度)に保たなければならない。測定を再現性のある形で行うことができるように、点鼻スプレー用の固定ホルダを使用することによって、適用を標準化する。スプレーによる溶液、流体、または粉末状混合物の適用直後、画像キャプチャを開始する。画像キャプチャは、堆積した液滴、懸濁物、または粉末の集積(重力によって生じる)が続いて起こる前に、数秒以内で完了する。使用したCTデバイスの高い時間分解能のおかげで、鼻適用の姿勢非依存性を実証することができた(図3に示す画像を比較されたい)。これらの実験で使用されるCTスキャナは、好ましくは、高い分解能を有する(例えば、0.04mm~1mm)。この分解能では、鼻の解剖学的な構造も鼻モデルの内部プラスチック表面上に堆積した液滴も良好な質で表示することができる。
【0133】
測定したCT記録は、X線密度の低い鼻粘膜上の造影剤をより良好に表示するために、後処理方法(後処理技術)を使用して処理されなければならない。完全な体積を表示する様々な3D技術も、減算技術も可能である。特に、バックグラウンドおよび解剖学的構造を除いて、適用した造影剤のみを表示することができるように、コントラスト画像から未適用画像(native image)を減算することができる。これにより、造影剤画像から分離された、または造影剤画像と重ね合わせられた解剖学的構造を表示することが可能となる。図3に示す画像では、様々な適用姿勢(身体の起立、臥位、など)におけるCT記録が、対応する適用角度と共に示されている。最初は、造影剤を適用する前に、鼻レプリカまたはモデルの未適用画像を撮影した(上段左)。この鼻モデルはCTアーチファクトを示さず、解剖学的な微細構造が良好に視認できる。他の5枚の画像はそれぞれ、様々な角度から点鼻スプレーを適用した後のCT画像キャプチャを示す。鼻腔内におけるヨウ素含有液滴の堆積が明るい点として示され、このように限局化が行われる。定性的な観点からは、どの適用方向においても、点鼻スプレーを使用して投与された溶液、流体、または粉末は類似した分布となる。
【0134】
堆積した造影剤(ここではヨウ素含有造影剤溶液)のピクセル(ボクセル)非依存的な定量を、当業者に公知の様々な方法で行う(例えば、領域成長法、ハンスフィールドユニット閾値、ヨウ素マッピング、例えば、Binh DB, Nakajima T, Otake H et al. Iodine concentration calculated by dual-energy computed tomography
(DECT) as a functional parameter to evaluate thyroid metabolism in patients with hyperthyroidism in BMC Medical Imaging
2017; 17: 43を参照)。
【0135】
したがって、本発明は、鼻適用における活性剤の局所的で正確な、好ましくは均一な投与についての、定性的および/または定量的な検出(限局化)のための方法であって、活性剤が鼻モデルまたは患者の生体内に噴霧され、活性剤の流体または粉末の局所的に正確な堆積について、画像化法を使用して、例えば、造影剤、蛍光マーカー、色素、または他の可視化可能な物質を添加することにより、測定、限局化、および可視化を行うことを特徴とする、方法にも関する。好ましくは、画像化法は高分解能(<4mm)低放射線高速画像化法である。
【0136】
一実施形態では、定性的および/または定量的検出法では、活性の放射線吸収性剤の鼻分布およびその除去の時間経過(動力学)を、リアルタイムで示し定量することを特徴とする。
【0137】
一実施形態では、定性的および/または定量的検出法は、鼻粘膜および鼻腔の表面構造を、2D/3Dにおいて高分解能で立体的に再構築(「ボリュームレンダリング」)し示すことができることを特徴とする。
【0138】
一実施形態では、定性的および/または定量的検出法により、活性剤の患者一人一人の鼻での堆積について、定量的かつ定性的に、局所的に正確に限局化および特徴付けを行うことができることを特徴とする。
【0139】
したがって、一実施形態では、本発明に従う点鼻スプレーについて、患者の鼻粘膜に対する活性剤の液体の標的化された局所的に正確な投与を、患者の姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)にかかわらずに達成されることが、上述の定性的および/または定量的検出法によって示されていることを特徴とする。
【0140】
この検出法を使用することで、患者の鼻粘膜上に活性剤の流体または粉末を局所的に正確に投与するという要件を点鼻スプレーが満たすか否かを検証することができる。好ましくは、点鼻スプレーは、噴霧手順中の点鼻スプレーの向き(例えば、真上(straight up)、水平、または真下(straight down)、および任意の中間の姿勢)にかかわらず、局所的に正確な、標的化された均一な投与に従う。
【0141】
この検出法によって、噴霧手順後の活性剤の溶液、流体、または粉末の鼻での堆積を、再現可能な形で定性的および/または定量的に表示することが可能となる。
【0142】
二次分布、繊毛を介して起こり得る除去、および動力学に影響を与える質量オスモル濃度または他の要因もモニタリングできるように、レプリカ中における動的な記録を数分または任意の時間にわたって行うことができる。
【0143】
上述の検出法は人工的な鼻モデルを使用して説明しているが、この検出法は患者の生体内で直接行うこともできる。
【0144】
ヒト(生体内、患者または被験者)における検出法では、CT法である場合に限れば、好ましくは低放射線量を使用する。
【0145】
好ましくは、ヒトにおける動的な記録(生体内、患者または被験者)は、短時間、例えば、数分のタイムスパンにわたる。
【0146】
上述の検出法を使用して、空間再構築技術(3D)により、界面の表面構造をより良好な形で再構築し表示することもできる。好ましくは二用量点鼻スプレーデバイスである点鼻スプレーを介して、界面をヨウ素または他のコントラスト物質で非常に薄くコーティングすることにより、界面を3Dまたは投影法において高解像度で表示することができる。これにより、粘膜の具体的な表示および等高線マッピング(contour mapping)が可能となる。
【0147】
鼻適用後に活性剤が鼻腔内の所望の場所に到達することを証明する目的で、上述の検出法を個別化された高分解能検出に使用することもできる。鼻および鼻腔の患者特異的な多様な解剖学的構造に応じて、鼻適用時における活性剤単独、または粉末状混合物、溶液、もしくは流体の活性剤の鼻での堆積について、局所的に正確な形で定性的かつ定量的に限局化および決定を行うことが適切である。この場合、本明細書で開示された特徴を有する詳細な鼻レプリカを、鼻腔の患者特異的な放射線断層撮影検査(MRI/CT、SPECT、またはPET)から調製する。例示的な実施形態では、このように鼻レプリカをヒトのCT記録に基づいて設計し、鋳造技術または3D印刷法のいずれかによって製造することができる。鼻モデルは、好ましくは、CT画像化においてアーチファクトをもたらさず、適用されたヨウ素溶液、流体、または粉末とモデルの解剖学的構造の間に適当なコントラストを可能にする(レプリカと造影剤の間でX線密度が異なる)ように選択された、合成樹脂またはプラスチックからなる。表面堆積の表示に有利なことは、周囲組織のない微細に構築された表面テクスチャからなるレプリカを使用することである。続いて、活性剤の鼻での堆積について、上記方法で分析および特徴付けを行う。さらに、所望の時間内で活性剤の動的な分布について特徴付けを行ってもよい。この方法により、患者特異的なレプリカにおける、活性剤の鼻での堆積に対する高分解能で局所的に正確な限局化および特徴付けに基づき、薬物、処置、または点鼻噴霧デバイスの適合性について、患者特異的に検証することが可能となる。
【0148】
本発明はまた、上述の特徴を有する点鼻スプレー、好ましくは二用量点鼻スプレーであって、点鼻スプレーによって、患者の鼻粘膜上への活性剤流体または活性剤粉末の局所的に正確で均一な、おそらく標的化された投与を達成できることが、上述の方法により実証されることを特徴とする、点鼻スプレーにも関する。
【0149】
このように試験された点鼻スプレーにより、好ましくは医療上の緊急時および空間的な制約によって投与が制限される場合に、患者に活性剤の溶液、流体、または粉末を向きに依存することなく鼻投与することが可能となる。
【0150】
本発明の点鼻スプレーで使用するための活性剤容器を、空気を断って充填し気密密閉するための上述の方法を、他の形態の活性剤容器にも適用することができる。よって、本発明はまた、空気を断って容器を気密密閉するための方法にも関する。この方法では、プラグを容器中に挿入することによる容器の密閉が閉鎖系内で起こる。好ましい容器は、充填容積が最大で2mlのガラスまたはプラスチックアンプルであることを特徴とする。
【0151】
好ましくは、容器の密閉は、容器中の溶液とプラグの間に、空気がまったく残らないか、または可能な限り少ない空気が残るようになされる。
【0152】
よって、本発明はまた、点鼻スプレーに使用するための活性剤容器を空気を断って気密密閉するための方法であって、プラグを活性剤容器中に挿入することが、活性剤の溶液を有する活性剤容器が挿入されている閉鎖系内で行われ、活性剤の溶液とプラグの間に空気がまったく残留しないか、または可能な限り少ない空気が残留することを特徴とする、方法にも関する。
【0153】
好ましくは、この方法は、密閉チャンバー、可動プランジャ、および閉鎖系内の空気を吸い出す出口からなる閉鎖系中で行われる。対応する系および対応する手順を、図4aに概略的に示す。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
抗不安活性剤、鎮静活性剤、筋肉弛緩活性剤または抗痙攣活性剤を含む水溶液または液体を収容している点鼻スプレーであって、
a)前記点鼻スプレーにより、各々同一の決められた体積を有する前記活性剤の前記水溶液または前記液体の2回のスプレー吹付を患者に鼻内投与することができ、
b)前記点鼻スプレーにより、前記点鼻スプレーの空間的な向きに依存せず、患者のいずれの姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)でも用量の等しい投与を可能にすることを特徴とする、
点鼻スプレー。
(項目2)
a)スプレーデバイスを含む、アクチュエータと称される駆動要素;
b)バイアルホルダー;
c)活性剤容器;および
d)プラグ
の4つの構成要素からなる、項目1に記載の点鼻スプレー。
(項目3)
前記活性剤容器が、抗不安効果、鎮静効果、筋肉弛緩効果または抗痙攣効果を有する治療薬を収容していることを特徴とする、項目2に記載の点鼻スプレー。
(項目4)
噴霧の誘発が、前記駆動要素への圧力による、前記プラグに対する前記活性剤容器の直接的な変位による空気圧に依存しないことを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目5)
前記点鼻スプレーを事前に始動する必要なく、前記点鼻スプレーによってスプレー吹付を投与することができることを特徴とする、項目1から4のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目6)
前記点鼻スプレーによって噴霧が既になされているか否かを前記点鼻スプレーから判別することができることを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目7)
前記点鼻スプレーによって第2の噴霧が既になされているか否かを前記点鼻スプレーから判別することができることを特徴とする、項目1から6のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目8)
前記抗不安活性剤、前記鎮静活性剤、前記筋肉弛緩活性剤および/または前記抗痙攣活性剤が、ベンゾジアゼピンもしくはGABA受容体アゴニスト、または前記活性剤の塩であることを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目9)
前記抗不安活性剤、前記鎮静活性剤、前記筋肉弛緩活性剤および/または前記抗痙攣活性剤が、ミダゾラムまたはその塩であることを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目10)
200~230μl、215±15μl、230±10μl、225±10μl、225±5μl、または230μlの前記活性剤の前記溶液または前記液体を収容していることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目11)
各々のスプレー吹付によって、75ml、80ml、90ml、100ml、110ml、120ml、125ml、130ml、140mlまたは150mlの体積(各々、±25%の体積範囲を有する)の前記活性剤の前記水溶液または前記液体を投与することができることを特徴とする、項目1から10のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目12)
各々のスプレー吹付によって、100±15μl、100±10μl、もしくは100±5μl、または100mlの体積の前記活性剤の前記水溶液または前記液体を投与することができることを特徴とする、項目1から11のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目13)
各々のスプレー吹付によって、
a)0.25mg~5mgの抗不安活性剤もしくは抗痙攣活性剤を投与することができるか、または
b)1.0mg~10mgの抗不安活性剤もしくは抗痙攣活性剤を投与することができることを特徴とする、
項目1から12のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目14)
各々のスプレー吹付によって、
a)0.278mg~5.56mgのミダゾラムHCl(0.25mg~5mgのミダゾラム基剤に相当)を投与することができるか、または
b)1.11mg~11.12mgのミダゾラムHCl(1mg~10mgのミダゾラム基剤に相当)を投与することができるか、または
c)前記患者の体重1kg当たり0.02mg~0.05mgのミダゾラムを投与することができることを特徴とする、
項目1から8のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目15)
鼻適用による活性の放射線吸収性剤、例えば、ヨウ素の局所的に正確な投与、限局化、および定量についての、定性的および/または定量的な検出のための方法であって、活性剤が鼻モデル中または患者の生体内に噴霧され、前記活性剤の溶液、液体、または粉末の局所的に正確な堆積について、高分解能(<4mm)の低放射線高速画像化法を使用し、必要に応じて、造影剤、蛍光マーカー、色素、または他の可視化可能な物質と組み合わせることにより、測定および限局化を行うことを特徴とする、方法。
(項目16)
前記活性の放射線吸収性剤の鼻分布および除去の時間経過(動力学)を、リアルタイムで示し定量することができることを特徴とする、項目15に記載の方法。
(項目17)
鼻粘膜および鼻腔の表面構造を、2D/3Dにおいて高分解能で立体的に再構築(「ボリュームレンダリング」)し示すことができることを特徴とする、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
前記方法を使用して、活性剤の患者一人一人の鼻での堆積について、定量的かつ定性的に、局所的に正確に限局化および特徴付けを行うことができることを特徴とする、項目15、16または17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
患者の鼻粘膜に対する前記活性剤の前記液体の標的化された局所的に正確な投与を、前記患者の姿勢(直立位、座位、臥位、または任意の中間の姿勢)にかかわらずに達成することができることが、項目15から18のいずれか一項に記載の方法により示されることを特徴とする、項目1から14のいずれか一項に記載の点鼻スプレー。
(項目20)
項目1から14および19のいずれか一項に記載の点鼻スプレーに使用するための活性剤容器を、空気を断って気密密閉するための方法であって、プラグを前記活性剤容器中に挿入することが、前記活性剤の溶液を有する前記活性剤容器が挿入される閉鎖系中で行われ、前記活性剤の前記溶液と前記プラグの間に空気がまったく残留しないか、または可能な限り少ない空気が残留することを特徴とする、方法。
(項目21)
前記閉鎖系が、密閉チャンバー、ピストンを有する可動シリンダ、および前記閉鎖系内の空気を吸い出す出口からなることを特徴とする、項目20に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】