(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101717
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】建物解体時の養生システム及び解体すべき建物の解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20220630BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220630BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G21/32 B
E04G5/00 301E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215955
(22)【出願日】2020-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】520512052
【氏名又は名称】株式会社鳶浩工業
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩二
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176DD64
(57)【要約】
【課題】養生ネットの下方へのたわみを防止し、建物解体工事の作業効率を向上させることができる建物解体時の養生システム及び解体すべき建物の解体方法を提供する。
【解決手段】養生システム1は、解体すべき建物10の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材である垂直トラス40及び外周足場22と、解体すべき建物10の水平方向に沿って延びており、垂直トラス40及び外周足場22に支持される水平トラス30と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23aとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、
前記解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、前記垂直支持部材に支持される水平支持部材と、
前記水平支持部材に支持され、前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材と、
を備える建物解体時の養生システム。
【請求項2】
前記水平支持部材は、トラス構造を有する請求項1に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項3】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含む請求項1又は2に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項4】
前記作業用足場は、前記解体すべき建物の少なくとも1つの側面部に沿って設けられた第1の作業用足場と、前記少なくとも1つの側面部に対して異なる方向に延びる前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた第2の作業用足場とを有し、
前記第1の作業用足場と前記第2の作業用足場との間に空間部を有する請求項3に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項5】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延びている柱状部材を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項6】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の高度の変化に対応して、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更することが可能に構成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項7】
解体すべき建物の垂直方向に沿って垂直支持部材を設ける工程と、
前記垂直支持部材を設ける工程の後で、前記解体すべき建物の水平方向に沿って延びており前記垂直支持部材に支持される水平支持部材を設ける工程と、
前記水平支持部材を設ける工程の後で、前記水平支持部材に支持され前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程と、
前記養生部材を設ける工程の後で、前記解体すべき建物を解体する工程と
を有する解体すべき建物の解体方法。
【請求項8】
前記解体すべき建物を解体する工程は、前記解体すべき建物の解体が進捗したことにより前記解体すべき建物の高度が変化した場合に、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程を有する請求項7に記載の解体すべき建物の解体方法。
【請求項9】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延びている柱状部材を含み、
前記解体すべき建物を解体する工程は、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程の後で、前記解体すべき建物の上部のうち前記柱状部材が設けられている位置以外を解体する工程と、次に、前記解体すべき建物の上部のうち前記柱状部材が設けられている位置を解体する工程と、次に、前記柱状部材を下降させる工程とを含む請求項7又は8に記載の解体すべき建物の解体方法。
【請求項10】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含み、
前記作業用足場を設ける工程は、前記解体すべき建物の少なくとも1つの側面部に沿う第1の作業用足場と、前記少なくとも1つの側面部に対して異なる方向に延びる前記解体すべき建物の側面部に沿う第2の作業用足場とを、前記第1の作業用足場と前記第2の作業用足場との間に空間部が存在するように設ける工程を含む請求項7又は8に記載の解体すべき建物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物解体時の養生システム及び解体すべき建物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物解体時に発生する粉塵や建築材料の破片の飛散を防止する目的で、解体すべき建物を覆う養生ネットを張るための建物解体時の養生システムが知られている。特許文献1に記載されている建物解体時の養生システムは、一対の鉄骨柱の間に張られたワイヤーに取り付けられた養生ネットにより解体すべき建物を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す建物解体時の養生システムのように、ワイヤーに取り付けられた養生ネットを用いて解体すべき建物をその上方から覆う場合には、養生ネットの重量によりワイヤーが下方にたわむことで、建物の上方に水平方向に張った養生ネットも下方にたわむ。これにより、解体すべき建物の最上部に対する養生ネットの高さが低くなり、重機の自由な移動を阻害して建物解体工事の作業効率が低下する可能性があるという問題点があった。
【0005】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、養生ネットの下方へのたわみを防止し、建物解体工事の作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生システムは、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、垂直支持部材に支持される水平支持部材と、水平支持部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材とを備える。
【0007】
また、水平支持部材は、トラス構造を有してもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含んでもよい。
また、作業用足場は、解体すべき建物の少なくとも1つの側面部に沿って設けられた第1の作業用足場と、少なくとも1つの側面部に対して異なる方向に延びる解体すべき建物の側面部に沿って設けられた第2の作業用足場とを有し、第1の作業用足場と第2の作業用足場との間に空間部を有してもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延びている柱状部材を含んでもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の高度の変化に対応して、水平支持部材の垂直方向位置を変更することが可能に構成されていてもよい。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る解体すべき建物の解体方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って垂直支持部材を設ける工程と、垂直支持部材を設ける工程の後で、解体すべき建物の水平方向に沿って延びており垂直支持部材に支持される水平支持部材を設ける工程と、水平支持部材を設ける工程の後で、水平支持部材に支持され解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程と、養生部材を設ける工程の後で、解体すべき建物を解体する工程とを有する。
【0009】
また、解体すべき建物を解体する工程は、前記解体すべき建物の解体が進捗したことにより前記解体すべき建物の高度が変化した場合に、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程を有してもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延びている柱状部材を含み、解体すべき建物を解体する工程は、水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程の後で、解体すべき建物の上部のうち柱状部材が設けられている位置以外を解体する工程と、次に、解体すべき建物の上部のうち柱状部材が設けられている位置を解体する工程と、次に、柱状部材を下降させる工程とを含んでもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含み、作業用足場を設ける工程は、解体すべき建物の少なくとも1つの側面部に沿う第1の作業用足場と、少なくとも1つの側面部に対して異なる方向に延びる解体すべき建物の側面部に沿う第2の作業用足場とを、第1の作業用足場と第2の作業用足場との間に空間部が存在するように設ける工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る建物解体時の養生システム及び解体すべき建物の解体方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、垂直支持部材に支持される水平支持部材とを設け、水平支持部材に養生部材が支持されるため、養生部材の下方へのたわみを防止し、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る建物解体時の養生システムの正面概略図である。
【
図2】
図1に示す建物解体時の養生システムの平面図である。
【
図3】
図1に示す建物解体時の養生システムの上部の正面断面図である。
【
図4】
図2に示す建物解体時の養生システムの一部分を示す斜視図である。
【
図5】
図3に示す外周足場を上方から見た斜視図である。
【
図6】
図5に示す外周足場を下方から見た斜視図である。
【
図7】
図3に示す垂直トラスの上部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第1の状態を示す正面断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第2の状態を示す正面断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第3の状態を示す正面断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第4の状態を示す正面断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第5の状態を示す側面断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第6の状態を示す正面断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第7の状態を示す正面断面図である。
【
図15】本発明の実施の形態2に係る養生システムの平面図である。
【
図17】
図15に示す養生システムを使用した建物の解体作業例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、本発明の建物解体時の養生システム及び建物の解体方法の実施の形態1について添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る養生システムの正面概略図である。養生システム1は、解体すべき建物10の解体工事において発生する粉塵の飛散、建物の構成部材の破片及び廃棄物等の飛散や落下を防止するために設けられている。養生システム1は、建物10の側面部に沿って外周部に構築された防音パネル21と、防音パネル21の外周部に構築された作業用足場である外周足場22と、建物10の上方に構築された梁状部材である水平トラス30と、柱状部材である垂直トラス40と、水平トラス30に支持されている水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bとを有している。水平トラス30及び垂直トラス40とは、一般にボックストラスと呼ばれる、全体として直方体状のトラス構造部材である。水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bは、建物10の上方から建物10の外周部を覆っている。なお、防音パネル21、外周足場22、垂直養生ネット23bについては、説明の便宜のために詳細な形状の記載を省略している。また、外周足場22は作業用足場及び垂直支持部材を構成しており、水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bは養生部材を構成しており、水平トラス30は水平支持部材を構成しており、垂直トラス40は柱状部材及び垂直支持部材を構成している。
【0013】
図2は、
図1に示す養生システム1の平面図である。なお、本実施の形態1では、
図2における図面の横方向を矢印X方向とし、
図2における図面の縦方向を矢印Y方向とする。矢印X方向は建物10の横方向に対応し、矢印Y方向は建物10の縦方向に対応する。外周足場22は、建物10の矢印X方向に延びる側面部に沿って設けられた外周足場22と、建物10の矢印Y方向に延びる側面部に沿って設けられた外周足場22とを含んでいる。建物10の上方には、外周足場22に近接し矢印Y方向に沿って延びている2本の水平トラス30と、外周足場22に近接し矢印X方向に沿って延びている2本の水平トラス30が設けられている。また、この矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30の間に、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30が2本設けられ、この矢印X方向に沿って延びる水平トラス30の間に、矢印X方向に沿って延びる水平トラス30が2本設けられている。すなわち、建物10の上方には矢印Y方向に沿って計4本の水平トラス30が設けられ、矢印X方向に沿って計4本の水平トラス30が設けられている。また、垂直トラス40は、計4本設けられている。建物10の中央部においては、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30及び矢印X方向に沿って延びる水平トラス30同士が直交する計4個の直交部32が形成されている。直交部32において、各垂直トラス40が水平トラス30に直交している。また、建物10の外周側の部分においては、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30及び矢印X方向に沿って延びる水平トラス30同士が直交する直交部32aが形成されている。
【0014】
水平トラス30及び垂直トラス40は、一定の長さを有する任意の数の、トラス構造を有する長手形状のトラス部材を長手方向に延びるように結合して形成されている。また、水平トラス30及び垂直トラス40は、アルミニウム合金により形成されているが、強度及び重量が適切であれば例えば鋼鉄等の他の種類の金属材料や例えば木材等の金属以外の材料を用いて形成してもよい。
【0015】
図3は、
図2に示す養生システム1をA-A’線で切断し、建物10の上部を拡大して示す正面断面図である。なお、本実施の形態1では
図3における図面の縦方向を矢印Z方向とする。また、説明の便宜のため、
図3及び
図8~
図14において垂直養生ネット23bについては具体的な形状の記載を省略しており、さらに建物10の縦方向すなわち矢印Y方向(
図2参照)の奥側の外周足場22の記載を省略している。また、矢印Z方向は、建物10が建てられている地盤13(
図1参照)に対する垂直方向に対応する。水平養生ネット23aは、水平トラス30から上方に突出している垂直トラス40に干渉しないように、垂直トラス40を避けながら設けられている。建物10の屋上部の床部、すなわち第1階床部12aの上部には、例えば図示しないエレベータの機械室等に用いられる塔屋11が建てられている。建物10の第1階床部12aの下側には、屋上部のすぐ下の階の床部である第2階床部12bが存在している。また、建物10の第2階床部12bの下側には、さらに図示しない第3階床部、第4階床部……が順次各階に存在する。さらに、建物10は、各階に建物10の側面部を構成する外壁部12cを有している。
【0016】
防音パネル21は、建物10の外壁部12cの外側に構築された既知の防音パネルである。防音パネル21の外側に構築された外周足場22は、建物10の解体作業に用いられる作業用足場である。また、外周足場22は、複数段の足場が矢印Z方向に沿って積層されて構成されており、その高さが建物10の第1階床部12aの高さよりも高くなるように組み立てられている。外周足場22の、最上段及び第2段目には、建物10の方向に突出するブラケット24が設けられている。最上段の外周足場22に設けられたブラケット24には、足場ホイスト26が設けられている。
【0017】
建物10の第1階床部12aには、垂直トラス40が立てられている。垂直トラス40は矢印Z方向に沿って延びるように立てられている。また垂直トラス40の高さは、塔屋11の高さよりも高くなるように構成されている。垂直トラス40の下部は、アンカー45により第1階床部12aに固定されている。垂直トラス上端部41には、水平トラス吊下げホイスト43が設けられている。垂直トラス40に対して直交する方向、すなわち水平方向に延びる水平トラス30は、水平トラス吊下げホイスト43により垂直トラス上端部41から吊下げることができ、また足場ホイスト26により外周足場22から吊下げることができる。水平トラス30には、垂直トラス40と直交する箇所の付近に垂直トラス降ろしホイスト44が設けられている。垂直トラス降ろしホイスト44は、後に詳しく説明するように、建物10の解体作業において垂直トラス40を下方に降ろすときに用いられる。なお、足場ホイスト26、水平トラス吊下げホイスト43及び垂直トラス降ろしホイスト44には、例えば既知のチェーンブロック等の任意のホイストを用いることができる。
【0018】
図4は
図2に示す養生システム1の、塔屋11の周辺の一部分を示す斜視図である。なお、
図4においては説明の便宜のため、防音パネル21、外周足場22、水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの記載を省略している。建物10の第1階床部12aに対して矢印Z方向に、塔屋11よりも高い位置に水平トラス30が配置されている。
【0019】
図5は、
図3に示す外周足場22を上方から見た斜視図である。外周足場22には所定の間隔で支柱25が設けられている。支柱25には、外周足場22の段の高さ毎に水平方向に延びる踏板支持部28が設けられている。踏板支持部28には、外周足場22の各段の踏板22aが支持されている。外周足場22のブラケット24には、足場ホイストフック26aを有する足場ホイスト26が吊下げられている。足場ホイスト26は、足場ホイストフック26aを水平トラス30に接続して、水平トラス30を吊下げるために設けられている。また、ブラケット24の上側には、水平トラス30が設けられている。さらに、ブラケット24は支柱25に沿って上下に移動させ、また支柱25から取り外すことが可能に構成されている。支柱25には、支柱25に水平トラス30の主材を緊結するための足場緊結クランプ29が設けられている。
【0020】
図6は、
図5に示す外周足場22を下から見た斜視図である。水平トラス30には、水平トラス30に直交する向きであり且つ水平方向に延びる棒状のトラス固定材27が設けられている。このトラス固定材27は水平トラス30と図示しない対向する側の水平トラス30の固定補助のために設けられているものであり、必ずしも設けられていなくともよい。
【0021】
図7は、
図3に示す垂直トラス40の上部を示す斜視図である。水平トラス30と垂直トラス40との直交部32には、接手部材33が設けられている。接手部材33は、立方体の各辺部分に棒状部材を設けることにより形成された、水平トラス30及び垂直トラス40を接続するための立方体状の枠状の部材である。接手部材33は例えばアルミニウム合金又は鋼鉄等の他の種類の金属材料あるいは木材等の、水平トラス30及び垂直トラス40と同じ材料で形成されている。また、接手部材33には水平方向から水平トラス30の先端部が接続されている。さらに、接手部材33には下側から上側に垂直トラス40が貫通している。垂直トラス40は接手部材33に対して移動可能に接続されている。すなわち、垂直トラス40は水平トラス30に対して矢印Z方向に移動可能に接続されている。これにより、接手部材33により水平トラス30と垂直トラス40とが直交して接続される。なお、
図7では接手部材33により水平トラス30と垂直トラス40とが接続されていたが、
図2に示すように垂直トラス40が無く、複数の水平トラス30同士が直交する直交部32aにおいても、接手部材33により複数の水平トラス30が接続されている。
【0022】
垂直トラス上端部41の上部には、例えばステンレス等の金属材料で形成された吊下げ部材42が設けられている。吊下げ部材42は、2枚の金属板を直交するように形成したものであり、各金属板の先端には水平トラス吊下げホイスト43を吊下げるための吊下げ穴42aが形成されている。水平トラス吊下げホイスト43は、水平トラス吊下げフック43aを有している。水平トラス吊下げフック43aが水平トラス30に取り付けられることにより、水平トラス吊下げホイスト43は水平トラス30を吊下げている。また、水平トラス30には、垂直トラス降ろしホイスト44が吊下げられている。垂直トラス降ろしホイスト44には、垂直トラス降ろしフック44aが設けられている。垂直トラス降ろしホイスト44は、垂直トラス降ろしフック44aを垂直トラス40に接続し、垂直トラス40を吊下げるために設けられている。
【0023】
次に、本実施の形態1の養生システムを用いた解体すべき建物の解体方法を説明する。
最初に、
図3に示すように作業者が解体すべき建物10の外周部に防音パネル21を構築し、さらに防音パネル21の外側に外周足場22を構築する。このとき外周足場22は、その最上段の位置が建物10の塔屋11よりも高い位置となるように構築される。次に、作業者は最上段の外周足場22と、上から第2段目の外周足場22とにブラケット24を設置する。次に、作業者は最上段の外周足場22のブラケット24に足場ホイスト26を吊下げる。
【0024】
次に、作業者は第1階床部12a上でトラス部材を組み合わせ、垂直トラス40を組み立てる。次に、作業者は垂直トラス40の垂直トラス上端部41の吊下げ部材42に、水平トラス吊下げホイスト43を取り付ける。次に、作業者は垂直トラス40の下端部をアンカー45により第1階床部12aに固定する。次に、作業者は高所作業車等を用いて、上から第2段目の外周足場22のブラケット24の上部でトラス部材を組み合わせ、上から第2段目の外周足場22のブラケット24に水平トラス30が支持されるように水平トラス30を組み立てる。このとき
図7に示すように、水平トラス30と垂直トラス40との直交部32では、接手部材33により水平トラス30と垂直トラス40とが接続される。またこのとき、
図2に示すように水平トラス30同士が直交する直交部32aでも、接手部材33により水平トラス30同士が接続される。これにより、
図3に示すように上から第2段目の外周足場22のブラケット24に水平トラス30が支持される。なお、
図6に示すように外周足場22にトラス固定材27が設けられてもよい。次に、再び
図3を参照して説明すると、作業者は水平トラス30と垂直トラス40との直交部32付近の、水平トラス30に垂直トラス降ろしホイスト44を吊下げる。次に、作業者は水平トラス30の上部に水平養生ネット23aを展張する。また、作業者は建物10の外周側の水平トラス30に垂直養生ネット23bを展張する。
【0025】
これにより、
図3に示すように水平トラス30に展張された水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bにより建物10の上部が覆われる。なお、このときの垂直養生ネット23bの矢印Z方向の長さは、例えば水平トラス30から防音パネル21の最上部までの長さ等により、適当に調整される。これにより、以降の建物10の解体作業において、建物10の粉塵や建築材料の破片の飛散及び落下や、解体作業に用いられる工具等の飛散及び落下を防止することができる。
【0026】
図8は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第1の状態を示す正面断面図である。なお、
図8以下の図においては説明の便宜のため、図における右側の垂直トラス40を第1垂直トラス40aと呼び、図における左側の垂直トラス40を第2垂直トラス40bと呼ぶ。作業者は、建物10の第1階床部12aに図示しないクレーン等を用いて、例えば油圧ショベル等の重機60を配置する。次に、重機60が塔屋11を解体する。
【0027】
図9は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第2の状態を示す正面断面図である。次に、重機60が建物10の外側の第1階床部12a及びこの外側の第1階床部12aに接続している外壁部12cを解体する。
【0028】
図10は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第3の状態を示す正面断面図である。次に、作業者が足場ホイスト26の足場ホイストフック26a及び水平トラス吊下げホイスト43の水平トラス吊下げフック43aを水平トラス30に接続し、足場ホイスト26及び水平トラス吊下げホイスト43により水平トラス30を吊下げる。次に、作業者は上から第2段目の外周足場22のブラケット24を取り外し、上から第3段目の外周足場22に取り付ける。
【0029】
図11は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第4の状態を示す正面断面図である。次に、足場ホイスト26及び水平トラス吊下げホイスト43が、水平トラス30を下降させ、上から第3段目の外周足場22のブラケット24に載せる。これにより、上から第3段目の外周足場22のブラケット24に水平トラス30が支持される。
【0030】
図12は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第5の状態を示す正面断面図である。次に、作業者は足場ホイスト26及び水平トラス吊下げホイスト43と水平トラス30との接続を解除する。次に、作業者は最上段の外周足場22のブラケット24を取り外し、上から第2段目の外周足場22にブラケット24を取り付け、足場ホイスト26を上から第2段目の外周足場22に取り付けられたブラケット24に吊下げる。
【0031】
図13は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第6の状態を示す正面断面図である。次に、作業者は左側の第2垂直トラス40bのアンカー45を外す。次に、垂直トラス降ろしフック44aが第2垂直トラス40bに接続され、垂直トラス降ろしホイスト44が、第2垂直トラス40bを吊上げて第1階床部12aから浮かせる。次に作業者は、解体された建物10の建築材料等を用いた図示しないスロープ(ガラスロープ)等の手段により、重機60を第1階床部12aから第2階床部12bに降下させる。
【0032】
図14は、本発明の実施の形態1に係る建物の解体方法を用いて建物を解体するときの第7の状態を示す正面断面図である。重機60は、吊上げた第2垂直トラス40bの下方の第1階床部12aを解体する。次に、垂直トラス降ろしホイスト44は、吊上げていた第2垂直トラス40bを第2階床部12bに降下させる。その後、作業者は垂直トラス降ろしフック44aと第2垂直トラス40bの接続を解除する。次に作業者は、第2垂直トラス40bの下端を、アンカー45により第2階床部12bに接続し、垂直トラス40を第2階床部12bに固定する。
【0033】
図14において右側の第1垂直トラス40aについても、第2垂直トラス40bと同じ手順により第2階床部12bに降下させる。また、
図14において図示されていない、建物10の縦方向側、すなわち矢印Y方向側に設けられている他の垂直トラス40(
図2参照)についても、第2垂直トラス40bと同じ手順により第2階床部12bに降下させる。このようにして、水平トラス30及び垂直トラス40を降下させることで、建物10の解体工事の進捗状態に応じて水平トラス30に展張された水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを降下させることができる。
【0034】
第2階床部12b以下の階についても、上記に述べた方法により建物10の各階の解体と水平トラス30及び垂直トラスの40の降下を繰り返すことで、水平トラス30に展張された水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを階毎に順次降下させることができる。
【0035】
本実施の形態1では水平養生ネット23aを高い剛性を有する水平トラス30に展張するため、水平養生ネット23aのたわみが生じず、建物10の最上部から水平養生ネット23aの高さを一定の高さに保つことができる。そのため、重機60の自由な移動を阻害することがなく、解体工事の作業効率が向上する。また、水平トラス30はワイヤーロープと比較して高い剛性を有するため、従来技術を用いたワイヤーロープで水平養生ネット及び垂直養生ネットを支持する方法に対して、風圧を水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bが受けた場合により高い風圧に耐えることが可能であり、養生システム1の倒壊の可能性が低減される。
【0036】
また、本実施の形態1では外周足場22及び垂直トラス40により水平トラス30を支持するため、従来技術を用いたワイヤーロープで水平養生ネット及び垂直養生ネット23bを支持する構成で用いていた、ワイヤーロープを支持するためのH鋼を垂直に立てる必要がない。
【0037】
このように、本実施の形態1の建物解体時の養生システム1は、解体すべき建物10の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材である垂直トラス40及び外周足場22と、解体すべき建物10の水平方向に沿って延びており、垂直トラス40及び外周足場22に支持される水平トラス30と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23aとを備えるため、水平養生ネット23aの下方へのたわみを防止し、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【0038】
また、水平トラス30はトラス構造を有するため、簡単且つ安価な構成で、軽量且つ高い強度を持たせることができ、養生システム1全体の重量が低減される。
【0039】
また、垂直支持部材は建物10の側面部に沿って設けられた外周足場22を含むため、対向する外周足場22同士が水平トラス30によって繋ぎ止められる。これにより、水平トラス30が外周足場22にかかる負荷の一部を分担することができ、外周足場22の強度が向上する。また、建物10の構造本体に変更を加えることなく、仮設工事により養生システム1を構成することができる。
【0040】
また、垂直支持部材は、解体すべき建物10の上部から垂直方向に沿って延びている垂直トラス40を含むため、水平トラス30の長さが長大である場合にも、確実に水平トラス30を支持することができる。
【0041】
また、垂直トラス40及び外周足場22は、解体すべき建物10の高度の変化に対応して、水平トラス30の垂直方向位置を変更することが可能に構成されているため、建物10の解体の進行状況に対応して水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを適切な高さに展張することができる。
【0042】
また、本実施の形態の建物の解体方法は、解体すべき建物10の垂直方向に沿って垂直支持部材である垂直トラス40及び外周足場22を設ける工程と、垂直トラス40及び外周足場22を設ける工程の後で、解体すべき建物10の水平方向に沿って延びており、垂直トラス40及び外周足場22に支持される水平トラス30を設ける工程と、水平トラス30を設ける工程の後で、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23aを設ける工程と、水平養生ネット23aを設ける工程の後で、解体すべき建物10を解体する工程とを有するため、水平養生ネット23aの下方へのたわみを防止し、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、解体すべき建物10を解体する工程は、解体すべき建物10の解体が進捗したことにより解体すべき建物10の高度が変化した場合に、水平トラス30の垂直方向位置を変更する工程を有するため、建物10の解体の進行状況に対応して水平養生ネット23aを及び垂直養生ネット23bを適切な高さに展張することができる。
【0044】
また、垂直支持部材は、解体すべき建物10の上部から垂直方向に沿って延びている垂直トラス40を含み、解体すべき建物10を解体する工程は、水平トラス30の垂直方向位置を変更する工程の後で、解体すべき建物10の上部のうち垂直トラス40が設けられている位置以外を解体する工程と、次に、解体すべき建物10の上部のうち垂直トラス40が設けられている位置を解体する工程と、次に、垂直トラス40を下降させる工程とを含むため、解体すべき建物10の上部を垂直トラス40の支持部として用いることができ、建物10の構造本体に変更を加えることなく、仮設工事により簡単かつ安価に建物を解体することができる。
【0045】
なお、本実施の形態1では、垂直トラス40を設けていたが、建物10が狭小である等の理由により必要な水平トラス30の全長が短く重量が小さい場合には、垂直トラス40を設けず、外周足場22のみによって水平トラス30を支持してもよい。例えば、水平トラス30がアルミニウム合金により形成されている場合には、水平トラス30の全長が約20m以下であれば、垂直トラス40を設けなくとも水平トラス30を支持することができる。なお、水平トラスを設けなくとも外周足場22によって支持することができる水平トラス30の長さは、水平トラスの材質等によって決まる。
【0046】
また、本実施の形態1では、
図2に示すように矢印X方向に沿って計4本の水平トラス30が設けられ、矢印Y方向に沿って計4本の水平トラス30が設けられていたが、水平トラス30及び垂直トラス40の本数及び長さは解体すべき建物10の大きさや構造、水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの重量及び建物10の周辺の立地状況によって適切な数に変更してもよい。
【0047】
また、本実施の形態1では、高所作業車等を用いて、上から第2段目の外周足場22の位置でトラス部材を組み合わせ、上から第2段目の外周足場22のブラケット24に水平トラス30が支持されるように水平トラス30を構成していたが、あらかじめ建物10の第1階床部12aでトラス部材を組み合わせて水平トラス30を組み立てておき、ホイスト等の揚重装置により水平トラス30を持ち上げ、上から第2段目の外周足場22にブラケット24を取り付け、水平トラス30をこのブラケット24に支持されるように設置してもよい。
【0048】
実施の形態2.
次に、本発明の建物解体時の養生システム及び建物の解体方法の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の
図1~
図14の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。本実施の形態2に係る養生システム及び建物の解体方法は、重機を建物の上部に配置することなく建物を解体可能な養生システム及び建物の解体方法である。
図15は、本発明の実施の形態2に係る養生システム1aの平面図である。建物10の縦方向、(矢印Y方向)の手前側且つ、横方向(矢印X方向)の中央部に外周足場22bが設けられている。建物10の上方には、矢印X方向に沿って計3本の水平トラス30が設けられ、矢印Y方向に沿って計5本の水平トラス30が設けられている。
【0049】
図16は、
図15に示す養生システム1aの正面図である。なお、
図16においては、建物10の縦方向すなわち矢印Y方向(
図15参照)の奥側の外周足場22の記載を省略している。建物10の縦方向、(矢印Y方向)の手前側且つ、横方向(矢印X方向)の中央部には、防音パネル21と外周足場22bとが設けられている。外周足場22bの最上段には1個のブラケット24が設けられており、このブラケット24には足場ホイスト26が吊下げられている。また、外周足場22bの上から第2段目には、矢印X方向の一端及び他端にブラケット24が各1個設けられており、水平トラス30を支持している。建物10の縦方向手前側の外周足場22bと、建物10の左右方向側の外周足場22との間には、外周足場が設けられていない空間部22cが存在している。また、実施の形態1とは異なり垂直トラス40は設けられていない。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0050】
次に、本発明の実施の形態2の養生システムを用いた解体すべき建物の解体方法を説明する。
図15に示すように、作業者は、建物10の縦方向(矢印Y方向)手前側の、横方向(矢印X方向)の中央部に外周足場22bを設ける。また、建物10の縦方向奥側に建物10の横方向の外壁部に沿って外周足場を設け、建物10の横方向の左右側に、建物10の縦方向の外壁部12cに沿って外周足場22を設ける。次に、作業者は最上段の外周足場22,22bと、上から第2段目の外周足場22,22bとにブラケット24を設置する。次に、作業者は最上段の外周足場22,22bのブラケット24に足場ホイスト26を吊下げる。次に、作業者は上から第2段目の外周足場22,22bのブラケット24に水平トラス30が支持されるように水平トラス30を組み立てる。次に、作業者は水平トラス30に実施の形態1と同じように水平養生ネット23aを展張する。次に、作業者は建物10の縦方向手前側以外の三方向に垂直養生ネット23bを展張する。これにより、建物10の上部が水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bにより覆われる。
【0051】
建物10の縦方向手前側の水平トラス30の中央部は、外周足場22bに設けられたブラケット24によって支持される。また、水平トラス30を下降させるときには、建物10の縦方向手前側の水平トラス30の中央部が、外周足場22bのブラケット24に吊下げられた足場ホイスト26によって支持される。そのため、実施の形態1のように垂直トラス40(
図3参照)を設けなくとも、水平トラス30を支持することができる。
【0052】
図17は、
図15に示す養生システム1aを使用した建物10の解体作業例である。建物10の縦方向手前側の外周足場22bと、建物10の左右方向側の外周足場22との間には、外周足場が設けられていない空間部22cが存在している。そのため、建物10が建てられている地盤13に長尺のアーム及びブームを含む作業装置61を有する重機60aを配置し、空間部22cに作業装置61を通して建物10を解体することができる。そのため、建物10が狭小であり重機60aを建物10の第1階床部12aに配置することができない場合であっても、地盤13に配置した重機60aにより建物10を解体することができる。
【0053】
このように、本実施の形態2に係る建物解体時の養生システム1aは、外周足場22,22bが、解体すべき建物10の少なくとも1つの外壁部12cに沿って設けられた外周足場22bと、少なくとも1つの外壁部12cに対して異なる方向に延びる解体すべき建物10の外壁部12cに沿って設けられた外周足場22とを有し、外周足場22bと外周足場22との間に空間部22cを有するため、建物10の第1階床部12aに重機60aを配置しなくとも、地盤13に配置した重機60aにより建物10を解体することができる。
【0054】
また、本実施の形態2に係る解体すべき建物10の解体方法は、垂直支持部材が、解体すべき建物10の外壁部12cに沿って設けられた外周足場22,22bを含み、外周足場22,22bを設ける工程は、解体すべき建物10の少なくとも1つの外壁部12cに沿う外周足場22bと、少なくとも1つの外壁部12cに対して異なる方向に延びる解体すべき建物10の外壁部12cに沿う外周足場22とを、外周足場22cと外周足場22との間に空間部22cが存在するように設ける工程を含むため、建物10の第1階床部12aに重機60aを配置しなくとも、地盤13に配置した重機60aにより建物10を解体することができる。
【0055】
なお、本実施の形態2では、外周足場22bは建物10の縦方向手前側にのみ設けられていたが、建物10の縦方向奥側の外周足場22に代えてさらに外周足場22bを設けてもよいし、建物10の横方向のいずれか一方又は両方の外周足場22に代えて外周足場22bを設けてもよい。
【0056】
また、実施の形態1及び2では、水平トラス30を吊下げる装置として足場ホイスト26、水平トラス吊下げホイスト43を設け、垂直トラス40を吊下げる装置として垂直トラス降ろしホイスト44を設けていたが、水平トラス30及び垂直トラス40を吊下げる装置はこれらに限定されるものではなく、これらに替えて例えばクレーン等の任意の吊下げ装置を用いてもよい。
【0057】
また、実施の形態1及び2では、水平トラス30及び垂直トラス40は複数のトラス部材を組み合わせて構成されていたが、それぞれ単一のトラス部材から構成されていてもよい。また、水平トラス30に替えてトラス構造を有さない水平支持部材を用いてもよいし、垂直トラス40に替えてトラス構造を有さない柱状部材を用いてもよい。
【0058】
また、実施の形態1及び2では、養生部材として水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを用いていたが、これ以外の適当な養生部材を用いてもよい。例えば、養生部材として既知の養生シートを用いてもよい。また、本実施の形態では水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bは別体のネットとして形成されていたが、水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bが一体に形成されたネットであってもよい。
【0059】
また、実施の形態1及び2の建物の解体方法の具体的な手順は、建物の解体に支障を生じなければ適宜手順を変更し、入れ替えてもよいし、不要な手順を省略してもよい。また、必要な手順を追加してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 建物、22,22b 外周足場(垂直支持部材、作業用足場)、22c 空間部、23a 水平養生ネット(養生部材)、23b 垂直養生ネット(養生部材)、30 水平トラス(水平支持部材)、40 垂直トラス(垂直支持部材、柱状部材)。
【手続補正書】
【提出日】2021-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生システムは、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、トラス構造を有する複数の水平トラス部材から構成され、垂直支持部材に支持される水平支持部材と、水平支持部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材とを備え、垂直支持部材は、解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含み、各水平トラス部材は、独立して垂直方向位置を変更することが可能である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
また、作業用足場は、解体すべき建物の一対の対向する側面部に沿って設けられた第1の作業用足場を有し、対向する各第1の作業用足場は、水平支持部材により繋止されていてもよい。
また、作業用足場は、解体すべき建物の一対の対向する側面部に対して異なる方向に延びる解体すべき建物の側面部に沿って設けられた第2の作業用足場を有し、第1の作業用足場と第2の作業用足場との間に空間部を有してもよい。
また、水平トラス部材の垂直方向位置を変更するためのホイストをさらに備えてもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延び、トラス構造を有する柱状部材を含んでもよい。
また、水平トラス部材は、アルミニウム合金により形成されていてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る解体すべき建物の解体方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って、解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含む垂直支持部材を設ける工程と、垂直支持部材を設ける工程の後で、垂直支持部材に支持され、解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、トラス構造を有する複数の水平トラス部材から構成され、各水平トラス部材は独立して垂直方向位置を変更することが可能である、水平支持部材を設ける工程と、水平支持部材を設ける工程の後で、水平支持部材に支持され解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程と、養生部材を設ける工程の後で、解体すべき建物を解体する工程とを有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、解体すべき建物を解体する工程は、前記解体すべき建物の解体が進捗したことにより前記解体すべき建物の高度が変化した場合に、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程を有してもよい。
また、垂直支持部材は、解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延び、トラス構造を有する柱状部材を含み、解体すべき建物を解体する工程は、水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程の後で、解体すべき建物の上部のうち柱状部材が設けられている位置以外を解体する工程と、次に、解体すべき建物の上部のうち柱状部材が設けられている位置を解体する工程と、次に、柱状部材を下降させる工程とを含んでもよい。
また、作業用足場を設ける工程は、解体すべき建物の少なくとも1つの側面部に沿う第1の作業用足場と、少なくとも1つの側面部に対して異なる方向に延びる解体すべき建物の側面部に沿う第2の作業用足場とを、第1の作業用足場と第2の作業用足場との間に空間部が存在するように設ける工程を含んでもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、
前記解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、トラス構造を有する複数の水平トラス部材から構成され、前記垂直支持部材に支持される水平支持部材と、
前記水平支持部材に支持され、前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材と、
を備え、
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含み、
前記各水平トラス部材は、独立して垂直方向位置を変更することが可能である建物解体時の養生システム。
【請求項2】
前記作業用足場は、前記解体すべき建物の一対の対向する側面部に沿って設けられた第1の作業用足場を有し、対向する前記各第1の作業用足場は、前記水平支持部材により繋止されている請求項1に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項3】
前記作業用足場は、前記解体すべき建物の一対の対向する側面部に対して異なる方向に延びる前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた第2の作業用足場を有し、
前記第1の作業用足場と前記第2の作業用足場との間に空間部を有する請求項2に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項4】
前記水平トラス部材の垂直方向位置を変更するためのホイストをさらに備える請求項1~3のいずれか一項に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項5】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延び、トラス構造を有する柱状部材を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項6】
前記水平トラス部材は、アルミニウム合金により形成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項7】
解体すべき建物の垂直方向に沿って、前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含む垂直支持部材を設ける工程と、
前記垂直支持部材を設ける工程の後で、前記垂直支持部材に支持され、前記解体すべき建物の水平方向に沿って延びており、トラス構造を有する複数の水平トラス部材から構成され、前記各水平トラス部材は独立して垂直方向位置を変更することが可能である、水平支持部材を設ける工程と、
前記水平支持部材を設ける工程の後で、前記水平支持部材に支持され前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程と、
前記養生部材を設ける工程の後で、前記解体すべき建物を解体する工程と
を有する解体すべき建物の解体方法。
【請求項8】
前記解体すべき建物を解体する工程は、前記解体すべき建物の解体が進捗したことにより前記解体すべき建物の高度が変化した場合に、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程を有する請求項7に記載の解体すべき建物の解体方法。
【請求項9】
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の上部から垂直方向に沿って延び、トラス構造を有する柱状部材を含み、
前記解体すべき建物を解体する工程は、前記水平支持部材の垂直方向位置を変更する工程の後で、前記解体すべき建物の上部のうち前記柱状部材が設けられている位置以外を解体する工程と、次に、前記解体すべき建物の上部のうち前記柱状部材が設けられている位置を解体する工程と、次に、前記柱状部材を下降させる工程とを含む請求項7又は8に記載の解体すべき建物の解体方法。
【請求項10】
前記作業用足場を設ける工程は、前記解体すべき建物の少なくとも1つの側面部に沿う第1の作業用足場と、前記少なくとも1つの側面部に対して異なる方向に延びる前記解体すべき建物の側面部に沿う第2の作業用足場とを、前記第1の作業用足場と前記第2の作業用足場との間に空間部が存在するように設ける工程を含む請求項7~9のいずれか一項に記載の解体すべき建物の解体方法。