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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010173
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】再開通カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/04 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M25/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182496
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2020511127の分割
【原出願日】2019-03-29
(31)【優先権主張番号】62/650,149
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】長谷 由希子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】兼子 誉生
(72)【発明者】
【氏名】久保 和也
(72)【発明者】
【氏名】小島 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 真依子
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB12
4C267BB52
4C267CC08
4C267EE01
4C267HH08
4C267HH09
(57)【要約】
【課題】偽腔内における固定を可能としたカテーテルを提供する。
【解決手段】
カテーテルは、内側に第1ルーメンを有するシャフトと、シャフトの先端部に配置された径方向に拡縮可能な拡縮部と、拡縮部を拡縮させる作動部とを備える。拡縮部は、シャフトに固定された固定部と、シャフトの外周面をシャフトの長軸方向に摺動可能な摺動部と、固定部と摺動部とを繋ぎ、シャフトの長軸方向に延びる懸架部と、を有する。作動部によって摺動部が固定部の方向に摺動させられた際に、懸架部がシャフトの径方向に拡張する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
内側に第1ルーメンを有するシャフトと、
前記シャフトの先端部に配置された径方向に拡縮可能な拡縮部と、
前記拡縮部を拡縮させる作動部と、を備え、
前記拡縮部は、
前記シャフトに固定された固定部と、
前記シャフトの外周面を前記シャフトの長軸方向に摺動可能な摺動部と、
前記固定部と前記摺動部とを繋ぎ、前記シャフトの長軸方向に延びる懸架部と、を有し、
前記作動部によって前記摺動部が前記固定部の方向に摺動させられた際に、前記懸架部が前記シャフトの径方向に拡張する、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、
前記長軸方向において、先端側に位置する先端部分と、基端側に位置する基端部分と、前記先端部分と前記基端部分の間に位置する中央部分と、から成り、
前記中央部分の剛性と、前記先端部分及び前記基端部分の剛性と、が相対的に異なる、カテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、前記中央部分の厚さと、前記先端部分及び前記基端部分の厚さと、が相対的に異なる、カテーテル。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、前記中央部分と、前記先端部分及び前記基端部分と、の一方に穴が形成されている、カテーテル。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、前記中央部分の幅と、前記先端部分及び前記基端部分の幅と、が相対的に異なる、カテーテル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、
前記長軸方向における前記先端部分と前記基端部分の長さが略同一とされ、
前記長軸方向における前記中央部分の長さが、前記先端部分の長さよりも長い、カテーテル。
【請求項7】
請求項6に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、拡張時において、
前記中央部分と前記先端部分の境界と、前記中央部分と前記基端部分の境界と、のそれぞれが屈曲し、
前記中央部分が、前記長軸方向と略平行に前記シャフトの外周面から離間することによって略台形形状に拡がる、カテーテル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、前記懸架部の横断面形状が、矩形形状を前記シャフトの径方向外側に向かって凸となるように湾曲させた形状である、カテーテル。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記懸架部は、第1懸架部と、第2懸架部と、から成り、
前記第1懸架部と前記第2懸架部は、互いに対向する位置に配置されている、カテーテル。
【請求項10】
請求項9に記載のカテーテルであって、
前記シャフトには、前記第1懸架部と前記第2懸架部が径方向に拡張した状態において、
前記第1懸架部と前記第2懸架部を含む第1の仮想平面に垂直であって、前記固定部と前記摺動部との間に位置する第2の仮想平面と、
前記シャフトの外周面と、が交差する位置に、前記第1ルーメンと外部とを連通する第1開口が形成されている、カテーテル。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記シャフトは、さらに、
前記シャフトの基端部から先端側に向かって、前記第1ルーメンと並んで配置された第2ルーメンであって、前記シャフトの長軸方向における長さが前記第1ルーメンよりも短い第2ルーメンと、
前記第2ルーメンの先端部と外部とを連通する第2開口が形成された端面と、を有している、カテーテル。
【請求項12】
再開通カテーテルシステムであって、
請求項11に記載のカテーテルと、
前記第1ルーメンに挿入され、前記第1ルーメンにおいて生体組織の情報を取得するセンサと、
前記第2ルーメンに挿入され、前記第2開口から外部へ誘導されるとともに生体組織を貫通するガイドワイヤと、
を備える、再開通カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性完全閉塞(CTO:Chronic Total Occlusion)のように、血管内が閉塞物によって閉塞されてしまう場合がある。特許文献1~4には、CTO開通(再疎通)のために、偽腔から真腔へと、ガイドワイヤを再入させる内膜下アプローチについて開示されている。ここで、偽腔とは、ガイドワイヤにより形成された真腔以外の全ての解離腔を指す。また、特許文献1~4には、このような内膜下アプローチに使用可能なカテーテル及びカテーテルアセンブリにおいて、偽腔内でカテーテルを固定するためのバルーンを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5564416号公報
【特許文献2】特許第6030655号公報
【特許文献3】特許第6118335号公報
【特許文献4】特許第6182660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、偽腔は、例えば、内膜組織層と外膜組織層の間のような、血管組織が部分的に剥離して形成された解離腔であることから、真腔と比較して偏平な横断面形状である。一方、バルーンの横断面形状は略円形状である。このため、特許文献1~4に記載の技術では、偽腔内でバルーンを拡張させることによって、偽腔を拡大する虞があるという課題があった。
【0005】
なお、このような課題は、CTOの開通に限らず、偽腔内でカテーテルを固定する場合の全般に共通する。また、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入されるデバイスの全般に共通する。
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、従来とは異なる方法で偽腔内における固定を可能としたカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、カテーテルが提供される。このカテーテルは、内側に第1ルーメンを有するシャフトと、前記シャフトの先端部に配置された径方向に拡縮可能な拡縮部と、前記拡縮部を拡縮させる作動部と、を備え、前記拡縮部は、前記シャフトに固定された固定部と、前記シャフトの外周面を前記シャフトの長軸方向に摺動可能な摺動部と、前記固定部と前記摺動部とを繋ぎ、前記シャフトの長軸方向に延びる懸架部と、を有し、前記作動部によって前記摺動部が前記固定部の方向に摺動させられた際に、前記懸架部が前記シャフトの径方向に拡張する。
【0009】
この構成によれば、作動部によって摺動部が固定部の方向に摺動させられた際に、懸架部がシャフトの径方向に拡張することで、偽腔内においてカテーテルを固定することができる。また、懸架部は、シャフトに固定された固定部と、シャフトの外周面を摺動可能な摺動部と、を繋いでおり、シャフトの長軸方向に延びる形状を有しているため、従来の構成(拡縮可能なチューブ状のバルーン)とは異なる構成である。これらの結果、本構成によれば、従来とは異なる方法で偽腔内における固定を可能としたカテーテルを提供することができる。
【0010】
(2)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、前記長軸方向において、先端側に位置する先端部分と、基端側に位置する基端部分と、前記先端部分と前記基端部分の間に位置する中央部分と、から成り、前記中央部分の剛性と、前記先端部分及び前記基端部分の剛性と、が相対的に異なっていてもよい。
この構成によれば、懸架部は、中央部分の剛性と、中央部分の両端側に位置する先端部分及び基端部分の剛性とが相対的に異なるため、懸架部が生体組織に接触する接触部分の面積を、剛性の相違が無い場合と比較して大きくできる。このため、懸架部の拡張によって偽腔(解離腔)を拡大する虞を低減できると共に、カテーテルが周方向に回転操作された際の、懸架部による生体組織の損傷を抑制できる。また、接触部分の面積が大きくなることに伴い、生体組織壁面との摩擦抵抗を大きくできることから、カテーテルの長手方向への移動操作、及び、周方向への回転操作に対する抵抗力を強くできる。換言すれば、カテーテルの固定力を増加できる。
【0011】
(3)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、前記中央部分の厚さと、前記先端部分及び前記基端部分の厚さと、が相対的に異なっていてもよい。
この構成によれば、懸架部は、中央部分の厚さと、先端部分及び基端部分の厚さと、を相対的に異なる厚さとすることで、双方を異なる剛性とできる。また、厚さ(肉厚)によって剛性の相違を出すことで、周方向への回転操作時に生じるねじりに対する抵抗力を強くできる。
【0012】
(4)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、前記中央部分と、前記先端部分及び前記基端部分と、の一方に穴が形成されていてもよい。
この構成によれば、懸架部は、中央部分と、先端部分及び基端部分と、の一方に穴を形成することで、双方を異なる剛性とできる。また、穴の有無によって剛性の相違を出すことで、周方向への回転操作時に生じるねじりに対する抵抗力を強くできる。
【0013】
(5)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、前記中央部分の幅と、前記先端部分及び前記基端部分の幅と、が相対的に異なっていてもよい。
この構成によれば、懸架部は、中央部分の幅と、先端部分及び基端部分の幅と、を相対的に異なる幅とすることで、双方を異なる剛性とできる。また、幅によって剛性の相違を出すことで、懸架部をレーザー加工が容易な構造とできる。
【0014】
(6)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、前記長軸方向における前記先端部分と前記基端部分の長さが略同一とされ、前記長軸方向における前記中央部分の長さが、前記先端部分の長さよりも長くてもよい。
この構成によれば、懸架部は、長軸方向における先端部分と基端部分の長さが略同一であり、中央部分の長さが先端部分の長さよりも長いため、懸架部が生体組織に接触する接触部分の面積をより大きくすることができ、カテーテルの固定力をより増加できる。この結果、例えば、生体組織の情報を取得するセンサはもとより、生体組織を貫通するための貫通用ガイドワイヤといったバックアップ力を要する医療デバイスがカテーテル内に挿入されて使用された場合であっても、偽腔内においてカテーテルを固定することができ、カテーテルのずれを抑制できる。
【0015】
(7)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、拡張時において、前記中央部分と前記先端部分の境界と、前記中央部分と前記基端部分の境界と、のそれぞれが屈曲し、前記中央部分が、前記長軸方向と略平行に前記シャフトの外周面から離間することによって略台形形状に拡がっていてもよい。
この構成によれば、拡張時における懸架部の形状を、中央部分と先端部分の境界と、中央部分と基端部分の境界と、のそれぞれが屈曲した略台形形状とすることができる。このため、懸架部の拡張によって偽腔を拡大する虞をより一層低減できると共に、懸架部による生体組織の損傷をより一層抑制できる。また、カテーテルの長手方向への移動操作、及び、周方向への回転操作に対する抵抗力をより一層強くでき、カテーテルの固定力をより一層増加できる。
【0016】
(8)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、前記懸架部の横断面形状が、矩形形状を前記シャフトの径方向外側に向かって凸となるように湾曲させた形状であってもよい。
この構成によれば、懸架部の横断面形状は、矩形形状をシャフトの径方向外側に向かって凸となるように湾曲させた形状であるため、カテーテルを周方向に回転操作した際に、凸の先端面が生体組織上を滑るように移動することで引っ掛かりを抑制することができ、懸架部による生体組織の損傷を抑制できる。
【0017】
(9)上記形態のカテーテルにおいて、前記懸架部は、第1懸架部と、第2懸架部と、から成り、前記第1懸架部と前記第2懸架部は、互いに対向する位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、懸架部は、2つの懸架部(第1懸架部、第2懸架部)を備えるため、カテーテルの長手方向への移動操作、及び、周方向への回転操作に対する抵抗力をより一層強くでき、カテーテルの固定力をより一層増加できる。また、第1懸架部と第2懸架部とは、互いに対向する位置に配置され、それぞれがシャフトの径方向に拡張するため、拡張時の懸架部(拡縮部)の形状を、偏平な横断面形状を有する偽腔の形状に適した形状とできる。
【0018】
(10)上記形態のカテーテルにおいて、前記シャフトには、前記第1懸架部と前記第2懸架部が径方向に拡張した状態において、前記第1懸架部と前記第2懸架部を含む第1の仮想平面に垂直であって、前記固定部と前記摺動部との間に位置する第2の仮想平面と、前記シャフトの外周面と、が交差する位置に、前記第1ルーメンと外部とを連通する第1開口が形成されていてもよい。
この構成によれば、シャフトには、第1の仮想平面に垂直かつ固定部と摺動部との間に位置する第2の仮想平面と、シャフトの外周面とが交差する位置に第1ルーメンと外部とを連通する第1開口が形成されている。この第1開口からデリバリーガイドワイヤの基端側を突出させることによって、カテーテルを、ラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルとして使用することも可能であるため、手技の幅を拡げ、使い勝手を向上できる。
【0019】
(11)上記形態のカテーテルにおいて、前記シャフトは、さらに、前記シャフトの基端部から先端側に向かって、前記第1ルーメンと並んで配置された第2ルーメンであって、前記シャフトの長軸方向における長さが前記第1ルーメンよりも短い第2ルーメンと、前記第2ルーメンの先端部と外部とを連通する第2開口が形成された端面と、を有していてもよい。
この構成によれば、シャフトは、さらに、第1ルーメンと並んで配置された第2ルーメンを有しているため、例えば、第1ルーメンに生体組織の情報を取得するセンサとしてIVUSを挿入し、第2ルーメンに生体組織を貫通するための貫通用ガイドワイヤを挿入する、といったように、複数の医療デバイスを一つのカテーテル内で同時に保持することができる。また、シャフトの基端部から先端側に延びる第1ルーメン及び第2ルーメンのうち、第2ルーメンは第1ルーメンよりも短い。このため、長い方の第1ルーメンにIVUSを挿入し、第1ルーメンの先端部にIVUSのトランスデューサ(生体組織へ超音波を発信及び受信する部位)を配置することによって、短い方の第2ルーメンに挿通された医療デバイス(例えば、デリバリーガイドワイヤや、貫通用ガイドワイヤ等)の先端部をIVUSで観察することができる。これにより、術者は、IVUSによる2次元画像のみで生体管腔内(例えばCTO)の状態と、医療デバイス(例えば、デリバリーガイドワイヤや、貫通用ガイドワイヤ等)の先端部の位置とをリアルタイムで認識することができる。すなわち、本構成のカテーテルによれば、センサのガイド下(例えばIVUS Guide)での手技において従来必要とされていた、血管内にて複数のデバイスを別々に操作するスキルや、センサ画像とX線画像の3次元的再構築のスキルを必要とすることなく、センサのガイド下における手技を実現できる。さらに、本構成のカテーテルによれば、センサの画像を参照するのみで手技が実現可能なため、X線画像の取得頻度を少なくすることもでき、X線撮影に伴う術者及び患者の被爆量の低減や、X線撮影のための造影剤の使用量の低減を期待できる。
また、本構成によれば、シャフトは、第2ルーメンの先端部と外部とを連通する第2開口が形成された端面を有している。このため、例えば、デリバリーガイドワイヤの基端部を第1開口から外部へと出し、その後、デリバリーガイドワイヤの基端部を第2開口から第2ルーメン内へと挿通することによって、シャフトの先端部においてデリバリーガイドワイヤを固定することができる。デリバリーガイドワイヤの固定により、センサの画像上では、デリバリーガイドワイヤを常に一定の方向に存在させることができるため、術者は、センサの画像を参照しつつ、デリバリーガイドワイヤを基準として、カテーテルを前後方向へ移動させたり、回転させたりすることによって、貫通用ガイドワイヤで生体組織を貫通しようとする標的部位のカテーテルに対する位置が最適となるよう(至適角度)にコントロールできる。また、本構成のカテーテルでは、デリバリーガイドワイヤの固定のために、センサ用の第1ルーメンの先端部を用いている。換言すれば、第1ルーメンは、デリバリーガイドワイヤとセンサとで共用されている。このため、デリバリーガイドワイヤ固定のための別途のルーメンを設ける場合と比較して、カテーテルを細径化することができ、生体管腔内(例えば冠動脈内、CTO内部等)への挿入を容易にできる。さらに、貫通用ガイドワイヤで生体組織を貫通する際には、貫通用ガイドワイヤを第2ルーメンに挿通させた状態で、貫通用ガイドワイヤの先端部を第2開口から外部へと突出させることで、バックアップ力を得つつ、貫通用ガイドワイヤの先端部を標的部位に相対峙させることができる。
【0020】
(12)本発明の一形態によれば、再開通カテーテルシステムが提供される。この再開通カテーテルシステムは、上記形態のカテーテルと、前記第1ルーメンに挿入され、前記第1ルーメンにおいて生体組織の情報を取得するセンサと、前記第2ルーメンに挿入され、前記第2開口から外部へ誘導されるとともに生体組織を貫通するガイドワイヤと、を備える。
【0021】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、カテーテルの製造または使用方法、カテーテルとセンサ、デリバリーガイドワイヤ、貫通用ガイドワイヤ等の他のデバイスとを含むカテーテルシステム、カテーテルシステムの製造または使用方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】再開通カテーテルシステムの全体構成の概略図である。
図2A】カテーテルの先端部の概略側面図である。
図2B】カテーテルの先端部の概略下面図である。
図2C】カテーテルの先端部の概略下面図である。
図2D】拡縮部を一体的に形成する方法を説明する図である。
図2E】拡縮部と作動部の一部を一体的に形成する方法を説明する図である。
図2F】拡縮部と作動部の一部を一体的に形成する他の方法を説明する図である。
図3図1のA-A線におけるカテーテルの断面の概略図である。
図4】イメージングセンサの概略図である。
図5A】冠動脈内にデリバリーガイドワイヤを挿入した様子を示す図である。
図5B】カテーテルをデリバリーガイドワイヤに沿って冠動脈内に挿入した様子を示す図である。
図5C】拡縮部の懸架部を拡張させた様子を示す図である。
図5D】貫通用ガイドワイヤで生体組織を貫通する様子を示す図である。
図6】第2実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図7】第2実施形態の拡縮部が拡張する様子を例示した説明図である。
図8】偽腔内での拡縮部の様子を例示した説明図である。
図9】第3実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図10】第4実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図11】第4実施形態の拡縮部の他の構成を例示した説明図である。
図12】第5実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図13】第5実施形態の拡縮部の他の構成を例示した説明図である。
図14】第6実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図15】第7実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図16】第8実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図17】第9実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図18】第10実施形態の拡縮部の構成を例示した説明図である。
図19】第11実施形態の再開通カテーテルシステムの全体構成の概略図である。
図20図19のC-C線におけるカテーテルの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.第1実施形態:
図1は、再開通カテーテルシステム1の全体構成の概略図である。図2は、カテーテル100の先端部の概略図である。図3は、図1のA-A線におけるカテーテル100の断面の概略図である。再開通カテーテルシステム1は、例えばCTO(慢性完全閉塞、CTO:Chronic Total Occlusion)を順行性アプローチで治療する場合に用いられる。再開通カテーテルシステム1は、カテーテル100と、イメージングセンサ200と、イメージングコンソール300と、貫通用ガイドワイヤ400と、を備えている、図1では、カテーテル100の概略側面図を表す。
【0024】
図1では、説明の便宜上、各構成部材の大きさの相対比を実際とは異なるように記載している部分を含んでいる。また、各構成部材の一部を誇張して記載している部分を含んでいる。また、図1では、左側を各構成部材の「先端側」と呼び、右側を各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、基端側に位置する端部を「基端」と呼ぶ。また、先端及び先端近傍に位置する部分を「先端部」、基端及び基端近傍に位置する部分を「基端部」と呼ぶ。これらの点は、図2以降の図においても同様である。
【0025】
カテーテル100は、中空のアウターシャフト101、中空の第1インナーシャフト102、中空の第2インナーシャフト103、及び第1インナーシャフト102に連続する中空の先端チップ104を有する。アウターシャフト101、第1インナーシャフト102、及び第2インナーシャフト103は長尺であり、その横断面は略円形状である。先端チップ104は、先端に向かうに連れて、その外径が次第に細くなるテーパー形状を有しており、その横断面は略円形状である。
【0026】
アウターシャフト101の外周面の内部には、素線を編組して形成した補強部材であるブレード108(図3参照)が埋設されている。ブレード108を構成する素線は、金属材料で形成され、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、X線不透過材料である金、白金、タングステンを含む合金等で形成され得る。ブレード108を構成する素線は、これら以外の公知の金属材料で形成されてもよい。なお、アウターシャフト101の外周面の内部にはブレード108に替えて、素線を巻回して形成した中空コイル体(図示せず)を埋設することもできる。中空コイル体を構成する素線は、ブレード108と同様に金属材料で形成され、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、X線不透過材料である金、白金、タングステンを含む合金等で形成され得る。また、これら以外の公知の金属材料で形成されてもよい。
【0027】
図3に示すように、アウターシャフト101のアウタールーメン113内には、第1インナーシャフト102、及び第2インナーシャフト103が挿入されている。また、アウタールーメン113内には、中空の第1ワイヤシャフト117a、及び中空の第2ワイヤシャフト117bが挿入されている。第1インナーシャフト102、第2インナーシャフト103、第1ワイヤシャフト117a、及び第2ワイヤシャフト117bは、アウターシャフト101の長軸方向に沿って、互いに略平行となるように延びている。また、アウターシャフト101のアウタールーメン113内は封止部材114によって封止されている。封止部材114は、第1インナーシャフト102の外周面、第2インナーシャフト103の外周面、第1ワイヤシャフト117aの外周面、及び第2ワイヤシャフト117bの外周面と、アウターシャフト101の内周面との間に配置されている。
【0028】
第1インナーシャフト102の第1インナールーメン115内には、イメージングセンサ200が挿入される(図3には図示せず)。以降、第1インナールーメン115を、単に「第1ルーメン115」とも呼ぶ。第2インナーシャフト103の第2インナールーメン116には、貫通用ガイドワイヤ400及びデリバリー用の通常のガイドワイヤ(後述するデリバリーガイドワイヤ70)が挿入される(図3には図示せず)。以降、第2インナールーメン116を、単に「第2ルーメン116」とも呼ぶ。上述の通り、第1ルーメン115を形成する第1インナーシャフト102と、第2ルーメン116を形成する第2インナーシャフト103とは互いに略平行となるように延びているため、第1ルーメン115と第2ルーメン116とは、並んで配置されている(図3参照)。
【0029】
図3に示すように、第1ワイヤシャフト117aの第1ワイヤルーメン118a内、及び第2ワイヤシャフト117bの第2ワイヤルーメン118b内のそれぞれには、後述する第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bが挿入されている。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、それぞれ後述する第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dに接合された状態で、第1ワイヤルーメン118a内及び第2ワイヤルーメン118b内に挿入されている。これらの第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dと、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bとは、拡縮部12としての懸架部111を拡縮させる「作動部13」として機能する。
【0030】
図1に示すように、アウターシャフト101の基端には、後述する懸架部111の開閉、及びイメージングセンサ200の第1ルーメン115内での前進後退を行うための調節器105が取り付けられている。調節器105は、それぞれ個別に操作可能な第1ダイヤル105aと、第2ダイヤル105bとを備えている。第1ダイヤル105aは、懸架部111の開閉のために使用され、第2ダイヤル105bは、イメージングセンサ200の前進後退のために使用される。詳細は後述する。
【0031】
第1インナーシャフト102及び第2インナーシャフト103は、アウターシャフト101の先端から突出している。第2インナーシャフト103のアウターシャフト101の先端から突出している部分は、第1インナーシャフト102のアウターシャフト101の先端から突出している部分よりも短くなるように構成されている。すなわち、第2インナーシャフト103内の第2ルーメン116の長軸方向における長さは、第1インナーシャフト102内の第1ルーメン115の長軸方向における長さよりも短い。また、第2インナーシャフト103の先端は、第1インナーシャフト102に向かって傾斜している。
【0032】
第2インナーシャフト103の先端には、第2インナーシャフト103の第2ルーメン116(図3参照)と連通する開口103aが設けられている。開口103aは、第2ルーメン116の先端部と外部とを連通する「第2開口」に相当する。第1インナーシャフト102の外周面には、アウターシャフト101の先端と第1インナーシャフト102の先端との間に、第1インナーシャフト102の第1ルーメン115(図3参照)と連通する開口102aが設けられている。開口102aは、第1ルーメン115の先端部と外部とを連通する「第1開口」に相当する。
【0033】
第1インナーシャフト102の先端には、先端チップ104が接合されている。先端チップ104の先端には開口104aが設けられており、開口104aは、先端チップ104の内側のルーメン(図示せず)及び第1インナーシャフト102の第1ルーメン115と連通している。先端チップ104の内側のルーメン、第1インナーシャフト102の第1ルーメン115、及び第2インナーシャフト103の第2ルーメン116には、デリバリーガイドワイヤ70(図5A参照)が挿通される。即ち、デリバリーガイドワイヤ70の基端が、開口104aからカテーテル100の内部(先端チップ104の内側のルーメン及び第1ルーメン115)へ入り、開口102aから一旦カテーテル100の外部へ出て、再び開口103aから第2インナーシャフト103の第2ルーメン116内に入り、第2ルーメン116内を通って、第2インナーシャフト103の基端からカテーテル100の外部へ出ていく。
【0034】
尚、開口103aの基端側において、アウターシャフト101の外周面に、第2インナーシャフト103を貫通し、第2ルーメン116に連通する第3の開口(図示せず)を設けることもできる。この場合、デリバリーガイドワイヤ70の基端が、第3の開口からカテーテル100の外部へ出ていくようにすることが出来る。また、第1インナーシャフト102の外周面に、開口102aに替えて他の開口(図示せず)を設けてもよい。具体的には、第1インナーシャフト102の径方向において、開口102aと対向する位置、即ち、第2インナーシャフト103の反対側に、他の開口を設けてもよい。この場合、デリバリーガイドワイヤ70の基端が、開口104aから入り、先端チップ104の内側のルーメン及び第1インナーシャフト102の第1ルーメン115を通って、他の開口から出ていくこととしてもよい。
【0035】
アウターシャフト101、第1ワイヤシャフト117a(図3参照)、第2ワイヤシャフト117b(図3参照)、封止部材114(図3参照)、第1インナーシャフト102、第2インナーシャフト103、及び先端チップ104は、絶縁性を有する樹脂で形成され、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレンー酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等により形成され得る。アウターシャフト101、第1ワイヤシャフト117a、第2ワイヤシャフト117b、封止部材114、第1インナーシャフト102、第2インナーシャフト103、及び先端チップ104は、これら以外の公知の材料によって形成されてもよい。
【0036】
第1インナーシャフト102のうち、アウターシャフト101の先端から突出した部分、即ち、第1インナーシャフト102の先端からアウターシャフト101の先端までに位置する部分の第1ルーメン115内には、後述のイメージングセンサ200のトランスデューサ201およびドライビングケーブル202が配置される。トランスデューサ201は、第1インナーシャフト102を介して生体組織に超音波を発信するとともにその反射音を受信する。イメージングコンソール300は、トランスデューサ201による発信音と受信音との差に基づいて生体組織の画像を取得する。従って、第1インナーシャフト102の先端からアウターシャフト101の先端までに位置する部分は、第1インナーシャフト102のうちのアウターシャフト101の内部に位置する部分と比べて、生体組織との音響インピーダンスの差が小さい樹脂、例えば、ポリエチレンで形成されることが好ましい。第1インナーシャフト102の先端からアウターシャフト101の先端までに位置する部分を、その外周壁の厚さが、第1インナーシャフト102のうちのアウターシャフト101の内部に位置する部分の外周壁の厚さよりも薄くなるように形成してもよい。
【0037】
先端チップ104は、カテーテル100の先端に配置されており、体腔内で生体組織を傷つけないように、アウターシャフト101、第1インナーシャフト102及び第2インナーシャフト103よりも柔軟性のある樹脂、例えば、ポリウレタンエラストマーで形成されることが好ましい。先端チップ104と第1インナーシャフト102の接合は任意の方法で実現でき、例えば、エポキシ系接着剤などの絶縁性の接着剤による接合を採用できる。
【0038】
図2Aはカテーテル100の先端部の概略側面図、図2B及び図2Cはカテーテル100の先端部の概略下面図である。図2Aに示すように、カテーテル100の先端部において、アウターシャフト101から露出した第1インナーシャフト102の外周面には、固定部109と、摺動部110と、懸架部111とからなる「拡縮部12」が取り付けられている。図2Bは懸架部111が閉じた状態(拡縮部12の収縮状態)、図2Cは懸架部111が開いた状態(拡縮部12の拡張状態)をそれぞれ示している。
【0039】
固定部109は、リング状であり、第1インナーシャフト102の先端に接合されることにより、第1インナーシャフト102に固定されている。なお、固定部109は、先端チップ104の基端に接合されていてもよく、又は第1インナーシャフト102の先端及び先端チップ104の基端の両方に接合されていてもよい。固定部109と第1インナーシャフト102の先端との接合、固定部109と先端チップ104の基端との接合、又は固定部109と第1インナーシャフト102の先端及び先端チップ104の基端との接合は任意の方法で実現でき、例えば、エポキシ系接着剤などの絶縁性の接着剤による接合を採用できる。なお、固定部109は、第1インナーシャフト102の先端よりも基端側に配置されてもよい。摺動部110は、リング状であり、固定部109の基端側において、固定部109から離間して配置され、第1インナーシャフト102の外周面上を第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って摺動可能に取り付けられている。
【0040】
固定部109と摺動部110の間には、懸架部111が設けられている。本実施形態の懸架部111は、第1懸架部111aと、第2懸架部111bとを備えている(図1には、第2懸架部111bは図示していない)。第1懸架部111aの先端及び後端は、それぞれ固定部109及び摺動部110に接合されている。同様に、第2懸架部111bの先端及び後端も、それぞれ固定部109及び摺動部110に接合されている。第1懸架部111a及び第2懸架部111bは、それぞれ、固定部109と摺動部110とを繋ぎ、第1インナーシャフト102の長軸方向に延びている。
【0041】
第1懸架部111a及び第2懸架部111bは、第1インナーシャフト102の径方向において、互いに対向する位置に配置されている。第1懸架部111a及び第2懸架部111bは、図2B及び図2Cに示すように仮想平面α上に存在するように配置されている。図2Aに示すように、第1インナーシャフト102及び第2インナーシャフト103は、第1インナーシャフト102の長軸及び第2インナーシャフト103の長軸が仮想平面β上に存在するように配置されている。第1懸架部111a及び第2懸架部111bは、仮想平面αと仮想平面βとが略垂直となるように配置されることが好ましい。なお、第1懸架部111aと第2懸架部111bとを含む仮想平面αを、「第1の仮想平面」とも呼ぶ。
【0042】
また、第1懸架部111a及び第2懸架部111bが拡張した状態(図2C)において、第1開口としての開口102aは、第1懸架部111aと第2懸架部111bとを含む仮想平面αに垂直であって、固定部109と摺動部110との間に位置する仮想平面Xと、第1インナーシャフト102の外周面とが交差する位置に形成されている。このようにすれば、カテーテル100をデリバリーガイドワイヤ70に沿って押し進めて標的部位に対する位置決めを行う際に、イメージングセンサ200により取得したデリバリーガイドワイヤ70の画像をランドマークとして機能させることができる。また、開口102aは、第1インナーシャフト102の外周面において、第2インナーシャフト103および開口103aと同じ側であって、それらの延伸線上に設けられている。このようにすれば、開口102aから突出したデリバリーガイドワイヤ70の基端を、開口103aから第2ルーメン116に容易に挿入できる。なお、仮想平面αに垂直であって、固定部109と摺動部110との間に位置する仮想平面Xを「第2の仮想平面」とも呼ぶ。
【0043】
図2Bに示すように、第1懸架部111a及び第2懸架部111bは、閉じた状態では、固定部109と摺動部110の間を第1インナーシャフト102の長軸方向に、第1インナーシャフト102に略平行に延びている。摺動部110は、第1懸架部111a及び第2懸架部111bが閉じた状態において、可能な限り基端側すなわち開口103aに近い位置に設置される。摺動部110の基端が、開口103aの先端位置に位置するように設置されてもよい。このようにすることで、第1懸架部111a及び第2懸架部111bをより長くすることができるため、例えば、偽腔内におけるカテーテル100のずれをより軽減することができる。また、図2Cに示すように、第1懸架部111a及び第2懸架部111bは、摺動部110が第1インナーシャフト102の先端に向かって移動することにより、第1インナーシャフト102の径方向外側に拡張し、開いた状態となる。摺動部110は、懸架部111が開いた状態及び閉じた状態のいずれの状態においても、開口102aよりも基端側に位置するように配置される。
【0044】
第1懸架部111a及び第2懸架部111bの横断面形状を長方形形状とすることができる。このようにすることで、例えば、横断面形状が正方形形状や円形状の場合と比較して、径方向外側への拡張が容易となる。
【0045】
懸架部111、固定部109、及び摺動部110は、金属材料又は樹脂材料で形成される。金属材料で形成される場合、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、X線不透過材料である金、白金、タングステンを含む合金等で形成され得る。樹脂材料で形成される場合、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレンー酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等により形成され得る。懸架部111、固定部109、及び摺動部110は、これら以外の公知の金属材料又は樹脂材料で形成されてもよい。懸架部111を、形状記憶性を有するニッケルチタン合金で形成する場合、ニッケルチタン合金に、予め懸架部111が閉じた状態を記憶させておくことが好ましい。このようにすることで、懸架部111を、開いた状態から閉じた状態へ比較的容易に移行させることができる。
【0046】
懸架部111と固定部109及び摺動部110との接合は任意の方法で実現できる。懸架部111と固定部109及び摺動部110を樹脂で形成する場合、懸架部111を金属材料で形成し固定部109及び摺動部110を樹脂材料で形成する場合、又は懸架部111を樹脂材料で形成し固定部109及び摺動部110を金属材料で形成する場合には、例えば、エポキシ系接着剤などの接着剤による接合を採用できる。懸架部111と固定部109及び摺動部110を金属材料で形成する場合にはレーザー溶接や銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだを用いたロウ付けによる接合を採用できる。
【0047】
図2A図2Cに示すように、摺動部110には、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bが接合されている(図2Aには、第1ワイヤ112aのみ記載)。具体的には、摺動部110の基端には後述する第1ワイヤ片111cが設けられている(図2E参照)。第1ワイヤ112aは、第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って、この第1ワイヤ片111c(図2E及び図3参照)に重なるように配置されて接合されている。同様に、摺動部110の基端には後述する第2ワイヤ片111dが設けられている(図2E参照)。第2ワイヤ112bは、第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って、この第2ワイヤ片111d(図2E及び図3参照)に重なるように配置されて接合されている。第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dそれぞれは、後述する第1ワイヤルーメン118a及び第2ワイヤルーメン1118b内を通って、アウターシャフト101の途中まで延びている。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、第1インナーシャフト102の中間部分の外周面に沿って、摺動部110の基端から第1インナーシャフト102の長軸方向に、それの基端に向って延びている。
【0048】
第1ワイヤ112aは第1ワイヤ片111cよりも長くなるように構成されているが、両者は同じ長さであってもよい。同様に、第2ワイヤ112bは第2ワイヤ片111dよりも長くなるように構成されているが両者は同じ長さであってもよい。図3に示すように、第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dは、横断面が略長方形形状又は円弧状の薄板部材で形成されている。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、横断面が略円形状の丸素線で形成されている。第1ワイヤ112aは、第1ワイヤ片111cと重なっている部分の外径が、第1ワイヤ片111cと重なっていない部分の外径よりも小さくなるように形成されている。同様に、第2ワイヤ112bは、第2ワイヤ片111dと重なっている部分の外径が、第2ワイヤ片111dと重なっていない部分の外径よりも小さくなるように形成されている。
【0049】
図2Aに示すように、第1ワイヤ112a及び第1ワイヤ片111cは、閉じた状態にある第1懸架部111aと略平行となるように配置される。また、第1ワイヤ112a及び第1ワイヤ片111cは、摺動部110の周方向において(換言すると、第1インナーシャフト102の周方向において)、第1懸架部111aに対して第2インナーシャフト103側にずらして配置される。同様に、第2ワイヤ112b及び第2ワイヤ片111dは、閉じた状態にある第2懸架部111bと略平行となるように配置される(図2Aには図示せず)。また、第2ワイヤ112b及び第2ワイヤ片111dは、摺動部110の周方向において(換言すると、第1インナーシャフト102の周方向において)、第2懸架部111bに対して第2インナーシャフト103側に配置される(図2Aには図示せず)。
【0050】
図3に示すように、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、それぞれ、アウターシャフト101の第1ワイヤルーメン118a及び第2ワイヤルーメン118bを通って、調節器105の第1ダイヤル105a(図1参照)に接続されている。第1ダイヤル105aの操作により、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bを介して摺動部110を、第1インナーシャフト102の外周面上を第1インナーシャフト102の先端方向に移動させ、これによって懸架部111を拡張させることができる。同時に、後述するイメージングセンサ200からの超音波信号に基づく生体組織の画像を後述のイメージングコンソール300で観察しながら、懸架部111を至適サイズで拡張させるため、懸架部111の拡張の程度を調節することができ、血管損傷を最小限にすることが可能である。また、懸架部111が拡張した状態で、第1ダイヤル105aの他の操作により、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bを介して摺動部110を、第1インナーシャフト102の外周面上を第1インナーシャフト102の基端に向かって移動させ、これによって懸架部111を閉じた状態に戻すことができる。
【0051】
第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、金属材料又は樹脂材料で形成される。金属材料で形成される場合、例えば、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金等で形成され得る。樹脂材料で形成する場合、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン等のスーパーエンジニアリングプラスチックにより形成され得る。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、これら以外の公知の金属材料又は樹脂材料で形成されてもよい。
【0052】
図2Dは、拡縮部12を一体的に形成する方法を説明する図である。拡縮部12としての懸架部111、固定部109、及び摺動部110は別体として形成してもよいが、一体的に形成することができる。一体的に形成する場合は、図2Dに示すように、樹脂材料又は金属材料で形成した円筒状の中空パイプ60の側壁をくり抜くことにより、固定部109、摺動部110、第1懸架部111a、及び第2懸架部111bを形成する。図2Dの場合、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは直接摺動部110に接合される。
【0053】
この場合、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bと摺動部110との接合は任意の方法で実現できる。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bと摺動部110を樹脂で形成する場合、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bを金属材料で形成し摺動部110を樹脂材料で形成する場合、又は第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bを樹脂材料で形成し摺動部110を金属材料で形成する場合には、例えば、エポキシ系接着剤などの接着剤による接合を採用できる。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bと摺動部110を金属材料で形成する場合にはレーザー溶接や銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだを用いたロウ付けによる接合を採用できる。
【0054】
図2Eは、拡縮部12と、作動部13の一部を一体的に形成する方法を説明する図である。図2Eに示すように、樹脂材料又は金属材料で形成した円筒状の中空パイプ60の側壁をくり抜き、拡縮部12としての固定部109、摺動部110、第1懸架部111a、及び第2懸架部111bに加えて、作動部13としての第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dを形成する。第1ワイヤ片111cは、閉じた状態の第1懸架部111aと略平行であって、かつ、摺動部110の周方向において、第1懸架部111aから第2インナーシャフト103側(図2A参照)にずれた位置に形成される。同様に、第2ワイヤ片111dは、閉じた状態の第2懸架部111bと略平行であって、かつ、摺動部110の周方向において、第2懸架部111bから第2インナーシャフト103側にずれた位置に形成される。
【0055】
この場合、上述のように第1ワイヤ112aと第1ワイヤ片111cとを、第1インナーシャフト102の長軸方向において重なるように配置した状態で両者を接合することができる。同様に、第2ワイヤ112bと第2ワイヤ片111dとを、第1インナーシャフト102の長軸方向において重なるように配置した状態で両者を接合することができる(図3参照)。尚、図1図2C図3、及び図5A図5Dにおけるカテーテル100には、図2Eに示す構成が記載されている。
【0056】
図2Fは、拡縮部12と、作動部13の一部を一体的に形成する他の方法を説明する図である。図2Fに示すように、樹脂材料又は金属材料で形成した円筒状の中空パイプ60の側壁をくり抜き、拡縮部12としての固定部109、摺動部110、第1懸架部111a、及び第2懸架部111bに加えて、作動部13としての第1ワイヤ片120及び第2ワイヤ片121を形成する。第1ワイヤ片120は、第1湾曲部120a及び第1湾曲部120aに連続する第1直線部120bから構成される。第1湾曲部120aは第2インナーシャフト103(図2A参照)に向かって湾曲し、第1直線部120bは閉じた状態の第1懸架部111aに略平行に延びる。第2ワイヤ片121は、第2湾曲部121a及び第2湾曲部121aに連続する第2直線部121bから構成される。第2湾曲部121aは第2インナーシャフト103(図2A参照)に向かって湾曲し、第2直線部121bは閉じた状態の第2懸架部111bに略平行に延びる。尚、第1湾曲部120a及び第2湾曲部121aは、直線形状に形成されてもよい。
【0057】
この場合、第1ワイヤ112aと第1ワイヤ片120の第1直線部120bとを、第1インナーシャフト102の長軸方向において重なるように配置した状態で両者を接合する。同様に、第2ワイヤ112bと第2ワイヤ片121の第2直線部121bとを、第1インナーシャフト102の長軸方向において重なるように配置した状態で両者を接合する。第1ワイヤ112aと第1ワイヤ片111c又は第1ワイヤ片120の第1直線部120bとの接合は任意の方法で実現できる。第1ワイヤ112a、第1ワイヤ片111c、及び第1ワイヤ片120を樹脂で形成する場合、第1ワイヤ112aを金属材料で形成し、第1ワイヤ片111c及び第1ワイヤ片120を樹脂材料で形成する場合、又は第1ワイヤ112aを樹脂材料で形成し第1ワイヤ片111c及び第1ワイヤ片120を金属材料で形成する場合には、例えば、エポキシ系接着剤などの接着剤による接合を採用できる。第1ワイヤ112a、第1ワイヤ片111c、及び第1ワイヤ片120を金属材料で形成する場合にはレーザー溶接や銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだを用いたロウ付けによる接合を採用できる。第2ワイヤ112bと第2ワイヤ片111d又は第2ワイヤ片121の第2直線部121bとの接合についても同様である。
【0058】
図3に示すように、第1ワイヤルーメン118aには、中空パイプ60の側壁をくり抜いて形成された第1ワイヤ片111c(図2E参照)に接合された第1ワイヤ112aが挿入されている。第2ワイヤルーメン118bには、中空パイプ60の側壁をくり抜いて形成された第2ワイヤ片111d(図2E参照)に接合された第2ワイヤ112bが挿入されている。図2Fに示す方法で拡縮部12と作動部13の一部を形成する場合は、図3の断面では、第1ワイヤ片111cに替えて第1ワイヤ片120の第1直線部120bが配置され、第2ワイヤ片111dに替えて第2ワイヤ片121の第2直線部121bが配置される。図1図2A図2B、及び図2Cでは、懸架部111の先端を固定しておき、懸架部111の基端を先端方向に押すことにより懸架部111を拡張させる構成を示しているが、懸架部111の基端を固定しておき、懸架部111の先端を基端方向に引っ張ることにより懸架部111を拡張させる構成としてもよい。
【0059】
図4は、イメージングセンサ200の概略図である。イメージングセンサ200は、長尺な医療デバイスであり、超音波を発信及び受信するトランスデューサ201、中空ドライビングケーブル202、コネクタ203から構成される。トランスデューサ201には電線(図示せず)が接続され、この電線は中空ドライビングケーブル202の内側のルーメン及びコネクタ203の内側のルーメンを通ってケーブル50に接続されている(図1参照)ケーブル50はイメージングコンソール300に接続されている。
【0060】
イメージングコンソール300の操作により、先端に配置されたトランスデューサ201は、体腔内において、その長軸を中心に回転しながら、径方向に超音波を発信するとともに生体組織から反射された超音波を受信する。受信した超音波を上述の電線及びケーブル50を介してイメージングコンソール300へ送信する。再開通カテーテルシステム1では、イメージングセンサ200は第1インナーシャフト102の第1ルーメン115に挿入されて使用される。イメージングセンサ200は、その先端と基端の間で調節器105の第2ダイヤル105bに接続されている。第2ダイヤル105bの操作によりイメージングセンサ200の先端に配置されたトランスデューサ201を、第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って、前後に移動させることができる。図1に示すイメージングコンソール300は、トランスデューサ201の回転、及びトランスデューサ201による超音波の発信及び受信をコントロールする。また、トランスデューサ201から受信した超音波信号を画像信号に変換してディスプレイ302に表示する。
【0061】
貫通用ガイドワイヤ400(図1及び図2A図2C参照)は、先端に尖状部を備える長尺な医療デバイスである。尖状部は、基端側から先端側に向かって、やじり形状或いは楔形状とされた部分である。貫通用ガイドワイヤ400では、先端に設けられた尖状部によって、生体組織を貫通することができる。
【0062】
図5は、再開通カテーテルシステム1の一使用例を示す図である。図5Aは、冠動脈80内にデリバリーガイドワイヤ70を挿入した様子を示す。図5Bは、デリバリーガイドワイヤ70をカテーテル100に挿通し、カテーテル100をデリバリーガイドワイヤ70に沿って冠動脈80内に挿入した様子を示す。図5Cは、拡縮部12の懸架部111を拡張させた様子を示す。図5Dは、貫通用ガイドワイヤ400で生体組織を貫通する様子を示す。図5A~Dでは、生体管腔の一例としての冠動脈80と、冠動脈80に発生したCTO81と、冠動脈80の内膜または内膜下に形成された偽腔82(デリバリーガイドワイヤ70により形成された真腔以外の全ての解離腔)と、真腔84と、偽腔82と真腔84との間に存在する線維性皮膜またはプラーク83(以下、単に線維性皮膜83と記載する)と、をそれぞれ示す。なお、線維性皮膜83は、CTO病変の表面に繊維状に形成されることがある。
【0063】
図5Aには、術者が操作するデリバリーガイドワイヤ70が、冠動脈80の内膜に迷入し、あるいは内膜下で偽腔82を形成した状態を示す。
【0064】
図5Bに示すように、術者は、デリバリーガイドワイヤ70の基端を、カテーテル100の先端チップ104の開口104aから、先端チップ104の内側のルーメン及び第1インナーシャフト102の第1ルーメン115(図3参照)を通って第1インナーシャフト102の開口102aを経て、第2インナーシャフト103の第2ルーメン116内に挿通する。そして、デリバリーガイドワイヤ70に沿って、カテーテル100を偽腔82まで運びCTO病変内および偽腔82内をイメージングセンサ200で観察する。このとき、術者は、イメージングセンサ200のトランスデューサ201が、第1インナーシャフト102の第1ルーメン115内で開口102aの基端側直近に配置された状態で、カテーテル100を運ぶ。これは、カテーテル100の移動によりイメージングセンサ200での観察部位を移動させるためである。術者は、カテーテル100を運びながら、ディスプレイ302でトランスデューサ201からの冠動脈80の画像を確認し、カテーテル100を貫通用ガイドワイヤ400による真腔への穿通のために最適な位置に配置する。
【0065】
術者は、カテーテル100を最適な位置に配置した後、イメージングセンサ200によって取得された画像上のデリバリーガイドワイヤ70の位置を参照し、標的となる真腔がカテーテル100を中心に相対峙し、貫通用ガイドワイヤ400の出口である開口103aが、真腔側に存在し、かつ真腔に相対峙するようにカテーテル100を回転する。即ち、デリバリーガイドワイヤ70は、貫通用ガイドワイヤ400の出口のランドマークとして機能する。
【0066】
術者は、調節器105の第1ダイヤル105aを操作して、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bを介して摺動部110を先端方向に移動させ、懸架部111を拡張させる(図5Bには、懸架部111の拡張状態を図示せず)。懸架部111は、拡張することにより偽腔82内の生体組織を押し、これによりカテーテル100が固定される。術者は、イメージングセンサ200にて懸架部111の拡張位置や程度を確認しながら懸架部111を拡張し、偽腔が過度に拡大されない程度でカテーテル100が固定される至適位置でカテーテル100を固定する。
【0067】
図5Cに示すように、カテーテル100が固定できたことをイメージングセンサ200で確認し、デリバリーガイドワイヤ70を抜去する。デリバリーガイドワイヤ70を抜去した後、調節器105の第2ダイヤル105bを操作して、イメージングセンサ200を、第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って前後させて真腔への穿通に至適な部位を観察し決定する。
【0068】
図5Dに示すように、懸架部111を拡張させてカテーテル100を固定した後、術者は、ディスプレイ302でトランスデューサ201からの冠動脈80の画像を確認しながら、貫通用ガイドワイヤ400を第2インナーシャフト103の第2ルーメン116に挿入し、先端の開口103aから突出させる。次に、ディスプレイ302でトランスデューサ201からの貫通用ガイドワイヤ400の画像を確認しながら、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部を前述の穿通の至適部位に誘導する。その後、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部を用いて生体組織を貫通し、貫通用ガイドワイヤ400の先端を真腔84に到達させる。
【0069】
図5A図5Dで示した方法により、再開通カテーテルシステム1によるCTO81の開通が可能となる。なお、図5で説明した方法のうち、例えば、イメージングセンサ200で生体管腔内やガイドワイヤ70及び400を観察する工程や、カテーテル100を回転させる工程は、省略してもよい。また、再開通カテーテルシステム1は、図5で説明した偽腔82から真腔84へのアプローチに限らず、近位側の真腔84から遠位側の真腔84へのCTOを貫通するアプローチを行う際に使用されてもよい。
【0070】
なお、上記第1実施形態において、アウターシャフト101と、第1インナーシャフト102と、第2インナーシャフト103と、第1及び第2ワイヤシャフト117a,bと、封止部材114とは、「シャフト」に相当する。アウターシャフト101の先端から露出した第2インナーシャフト103の先端面(図2B参照)は、第2開口(開口103a)が形成された「端面」に相当する。イメージングセンサ200は、生体組織の情報を取得する「センサ」に相当し、貫通用ガイドワイヤ400は、「生体組織を貫通するガイドワイヤ」に相当する。
【0071】
<効果例>
以上のように、第1実施形態の再開通カテーテルシステム1によれば、カテーテル100では、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112b(作動部13)によって、摺動部110が固定部109の方向に摺動させられた際に、懸架部111が第1インナーシャフト102(シャフト)の径方向に拡張することで、偽腔82内(内膜下)においてカテーテル100を固定することができる(図5C参照)。また、懸架部111は、第1インナーシャフト102に固定された固定部109と、第1インナーシャフト102の外周面を摺動可能な摺動部110と、を繋いでおり、第1インナーシャフト102の長軸方向に延びる形状を有しているため、従来の構成(拡縮可能なチューブ状のバルーン)とは異なる構成である。これらの結果、第1実施形態の再開通カテーテルシステム1によれば、従来とは異なる方法で偽腔内における固定を可能としたカテーテル100を提供することができる。
【0072】
さらに、懸架部111は、2つの懸架部111(第1懸架部111a、第2懸架部111b)を備えるため、カテーテル100の長手方向への移動操作、及び、周方向への回転操作に対する抵抗力をより一層強くでき、偽腔内におけるカテーテル100の固定力をより一層増加できる。また、図2Bに示すように、第1懸架部111aと第2懸架部111bとは、互いに対向する位置に配置され、図2Cに示すように、それぞれがシャフトの径方向に拡張する。このため、拡張時の懸架部111(拡縮部12)の形状を、偏平な横断面形状を有する偽腔82の形状に適した形状とできる。この結果、拡縮部12の拡張時は、従来の拡縮可能なチューブ状のバルーンの拡張時と比較して、偽腔82が無用に拡大してしまうことを低減することができる。
【0073】
また、第1実施形態のカテーテル100では、シャフトとしての第2インナーシャフト103は、さらに、第1ルーメン115と並んで配置された第2ルーメン116を有している(図3参照)。このため、図5で説明したように、第1ルーメン115に生体組織の情報を取得するイメージングセンサ200を挿入し、第2ルーメン116に生体組織を貫通するための貫通用ガイドワイヤ400を挿入する、といったように、複数の医療デバイスを一つのカテーテル100内で同時に保持することができる。
【0074】
さらに、シャフトとしての第1インナーシャフト102及び第2インナーシャフト103の、基端部から先端側に延びる第1ルーメン115及び第2ルーメン116のうち、第2ルーメン116は第1ルーメン115よりも短い(図1参照)。このため、長い方の第1ルーメン115にイメージングセンサ200を挿入し、第1ルーメン115の先端部にイメージングセンサ200のトランスデューサ201(生体組織へ超音波を発信及び受信する部位)を配置することによって、短い方の第2ルーメン116に挿通された医療デバイス(例えば、デリバリーガイドワイヤ70や、貫通用ガイドワイヤ400等)の先端部を、イメージングセンサ200で観察することができる。これにより、術者は、イメージングセンサ200による2次元画像のみで生体管腔内(例えばCTO81)の状態と、医療デバイス(例えば、デリバリーガイドワイヤ70や、貫通用ガイドワイヤ400等)の先端部の位置とをリアルタイムで認識することができる。すなわち、第1実施形態のカテーテル100によれば、イメージングセンサ200のガイド下(例えばIVUS Guide)での手技において従来必要とされていた、血管内にて複数のデバイスを別々に操作するスキルや、イメージングセンサ200画像とX線画像の3次元的再構築のスキルを必要とすることなく、イメージングセンサ200のガイド下における手技を実現できる。さらに、第1実施形態のカテーテル100によれば、イメージングセンサ200の画像を参照するのみで手技が実現可能なため、X線画像の取得頻度を少なくすることもでき、X線撮影に伴う術者及び患者の被爆量の低減や、X線撮影のための造影剤の使用量の低減を期待できる。
【0075】
また、第1実施形態のカテーテル100では、シャフトとしての第2インナーシャフト103は、第2ルーメン116の先端部と外部とを連通する開口103a(第2開口)が形成された端面を有している(図2B参照)。このため、図5Bに示すように、デリバリーガイドワイヤ70の基端部を開口102a(第1開口)から外部へと出し、その後、デリバリーガイドワイヤ70の基端部を開口103aから第2ルーメン116内へと挿通することによって、シャフトとしての第1インナーシャフト102の先端部において、デリバリーガイドワイヤ70を固定することができる。従って、デリバリーガイドワイヤ70の固定により、イメージングセンサ200により取得された画像上では、デリバリーガイドワイヤ70をカテーテル100に対して常に一定の方向に存在させることができる。この結果、術者は、イメージングセンサ200による画像を参照しつつ、デリバリーガイドワイヤ70を基準として、カテーテル100を前後方向へ移動させたり、回転させたりすることによって、貫通用ガイドワイヤ400で生体組織を貫通しようとする標的部位のカテーテル100に対する位置が最適となるよう(至適角度)にカテーテル100をコントロールできる。
【0076】
さらに、デリバリーガイドワイヤ70の固定のために、イメージングセンサ200用の第1ルーメン115の先端部を用いている。換言すれば、第1ルーメン115は、デリバリーガイドワイヤ70とイメージングセンサ200とで共用されている。このため、デリバリーガイドワイヤ70固定のための別途のルーメンを設ける場合と比較して、カテーテル100を細径化することができ、生体管腔内(例えば冠動脈80内、CTO81内部等)への挿入を容易にできる。さらに、図5Dに示すように、貫通用ガイドワイヤ400で生体組織を貫通する際には、貫通用ガイドワイヤ400を第2ルーメン116に挿通させた状態で、貫通用ガイドワイヤ400の先端部を開口103a(第2開口)から外部へと突出させることで、第1インナーシャフト102によるバックアップ力を得つつ、貫通用ガイドワイヤ400の先端部を標的部位に相対峙させることができる。
【0077】
また、第1実施形態のカテーテル100では、拡縮部12(固定部109、摺動部110、懸架部111)は、第1ルーメン115を形成する第1インナーシャフト102に配置されている。このため、拡縮部12の懸架部111を、生体組織との音響インピーダンスの差がある材料により形成した場合は、第1ルーメン115内に挿通されたイメージングセンサ200によって、懸架部111を拡張する様子を観察することができるため、懸架部111の過拡張に伴う生体管腔内の損傷を抑制しつつ、懸架部111を安全に拡張できる。また、拡縮部12は放射線不透過材料により形成されているため、X線撮影により得られるX線画像上に拡縮部12を造影することで、拡縮部12を、カテーテル100の姿勢や向きをX線透視上で確認するためのオリエンテーションマーカーとして機能させることができる。
【0078】
さらに、カテーテル100の固定後においても、第1ルーメン115内においてイメージングセンサ200を移動させ、画像取得部位を移動させることができる。このため、画像取得部位を貫通用ガイドワイヤ400の先端部に合わせることで、貫通用ガイドワイヤ400の先端部と貫通の標的部位との位置関係を観察することができる。この結果、標的部位を穿通する際に、X線画像の取得頻度をできるだけ少なくすることが可能となる。
【0079】
一般に、第1ルーメン115に挿通されるイメージングセンサ200の方が、第2ルーメン116に挿通される医療デバイス(例えば、デリバリーガイドワイヤ70や、貫通用ガイドワイヤ400等)よりも太径である。第1実施形態のカテーテル100では、第1ルーメン115の径は、第2ルーメンの径116よりも大きい(図3参照)。このため、第1,2ルーメンの各径を、各ルーメンに挿通されるデバイスの太さに合わせることができると共に、第1,2ルーメンの径を同一とする場合と比較して、デバイス挿入時における誤りを抑制すると共に、カテーテル100の細径化を図ることができる。また、アウターシャフト101の内側(シャフトの肉厚部内)に配置されたブレード108を備えるため、カテーテル100のトルク伝達性能を向上できる。また、ブレード108は放射線不透過材料により形成されているため、X線撮影により得られるX線画像上に補強部材を造影できる。
【0080】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態の拡縮部12A,Bの構成を例示した説明図である。図6Aは拡縮部12Aの構成の一例を、図6Bは拡縮部12Bの構成の一例をそれぞれ示す。各図の左側には、仮想平面αにおける収縮状態(拡張していない状態)の拡縮部12A,Bを示し、右側には、第1懸架部111aA,Bの拡大図を示す。図6Aに示す第2実施形態のカテーテル100Aは、第1実施形態とは異なる構成の拡縮部12Aを備えている。拡縮部12Aは、第1懸架部111aA及び第2懸架部111bAからなる懸架部111Aを備えている。図6Bに示す第2実施形態のカテーテル100Bは、第1実施形態とは異なる構成の拡縮部12Bを備えている。拡縮部12Bは、第1懸架部111aB及び第2懸架部111bBからなる懸架部111Bを備えている。ここで、第1懸架部111aA,Bと、第2懸架部111bA,Bとは、カテーテル100Aの軸線(中心)に対して対称な構成である。このため、以降は、右側に拡大表示した第1懸架部111aA,Bの図を参照しつつ、懸架部111A,Bの構成について説明する。
【0081】
図6A,Bに示すように、懸架部111A及び懸架部111Bは、それぞれ、カテーテル100A,Bの長軸方向において、先端側に位置する先端部分DPと、中央部分CPと、基端側に位置する基端部分PPと、を含んでいる。中央部分CPは、先端部分DPと基端部分PPとの間に位置している。本実施形態の懸架部111A,Bは、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、が相対的に異なっている。具体的には、図6Aの例では、懸架部111Aは、懸架部111Aが拡張する方向(図6A左側の白抜き矢印、以降「拡張方向D1」とも呼ぶ)における中央部分CPの厚さT2が、先端部分DP及び基端部分PPの厚さT1よりも厚い。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも高くすることができる。また、図6Bの例では、懸架部111Bは、拡張方向D1における中央部分CPの厚さT2が、先端部分DP及び基端部分PPの厚さT1よりも薄い。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも低くすることができる。なお、厚さT1及びT2は、相違する限りにおいて任意に決定できる。
【0082】
また、図6A,Bに示すように、懸架部111A,Bは、カテーテル100A,Bの長軸方向において、先端部分DPの長さL1と基端部分PPの長さL1とが略同一であり、かつ、中央部分CPの長さL2が、先端部分DPの長さL1よりも長い。なお、長さL1及びL2は、任意に決定できる。
【0083】
図7は、第2実施形態の拡縮部12Aが拡張する様子を例示した説明図である。図6Aで説明した第2実施形態の懸架部111Aは、上述の通り、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、が相対的に異なる。このため、懸架部111Aが拡張方向D1に拡張した際の形状(下面視開形状)を、中央部分CPと先端部分DPとの境界と、中央部分CPと基端部分PPとの境界とのそれぞれが屈曲して、中央部分CPが長軸方向と略平行に第1インナーシャフト102の外周面から離間することによって略台形形状に拡がった形状とできる(図7右側、一点鎖線円)。なお、図6Bで説明した第2実施形態の懸架部111Bについても同様に、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性とが相対的に異なるため、略台形形状に拡がった形状とできる。
【0084】
図8は、偽腔82内での拡縮部12Aの様子を例示した説明図である。図8Aには、図6Aで説明した第2実施形態の拡縮部12Aの拡張時の様子を、図8Bには、比較例の拡縮部12Xの拡張時の様子を、それぞれ示す。図8は、図5で説明した冠動脈80の横断面を示しているため、図8の冠動脈80の中心Oが延在する方向は、カテーテル100Aの長軸方向と一致する。比較例のカテーテル100Xは、固定部109、摺動部110、及び懸架部111Aに代えて、拡縮部12Xとして拡縮可能なチューブ状のバルーン111Xを備えている。
【0085】
図8Aに示すように、偽腔82は、例えば、冠動脈80の内膜組織層と外膜組織層の間のような、血管組織が部分的に剥離して形成された解離腔であることから、真腔84と比較して偏平な横断面形状である。この点、第2実施形態のカテーテル100Aによれば、長軸方向に延びる板状部材で形成された懸架部111A(第1懸架部111aA、第2懸架部111bA)が、拡張方向D1に拡張することで偽腔82の壁面(生体組織)を押し、これによりカテーテル100Aが固定される。このため、図8Aのように、横断面において偏平な偽腔82の長手方向と、懸架部111Aの拡張方向D1とを一致させることによって、偽腔82を拡張させることなく、偽腔82内においてカテーテル100Aを固定できる。
【0086】
また、第2実施形態の懸架部111Aは、中央部分CPの剛性と、中央部分CPの両端側に位置する先端部分DP及び基端部分PPの剛性とが相対的に異なるため、懸架部111Aが拡張方向D1に拡張した際の形状を略台形形状とできる(図7右側、一点鎖線円)。このため、懸架部111Aが偽腔82の壁面(生体組織)に接触する接触部分の面積を、剛性の相違が無い場合と比較して大きくできる。このため、懸架部111Aの拡張によって偽腔82を拡大する虞を低減できると共に、カテーテル100Aが周方向に回転操作された際の、懸架部111Aによる生体組織の損傷を抑制できる。また、接触部分の面積が大きくなることに伴い、生体組織壁面との摩擦抵抗を大きくできることから、カテーテル100Aの長手方向への移動操作、及び、周方向への回転操作に対する抵抗力を強くできる。換言すれば、カテーテル100Aの固定力を増加できる。
【0087】
さらに、第2実施形態の懸架部111Aは、中央部分CPの厚さT2と、先端部分DP及び基端部分PPの厚さT1と、を相対的に異なる厚さとすることで、双方を異なる剛性とできる(図6参照)。このようにして、厚さ(肉厚)によって剛性の相違を出すことで、懸架部111Aの周方向への回転操作に対する抵抗力を強くすることができる。
【0088】
さらに、第2実施形態の懸架部111Aは、長軸方向における先端部分DPと基端部分PPの長さL1が略同一であり、中央部分CPの長さL2が先端部分DPの長さL1よりも長い(図6参照)。このため、懸架部111Aが生体組織に接触する接触部分の面積をより大きくすることができ、カテーテル100Aの固定力をより増加できる。この結果、例えば、生体組織の情報を取得するイメージングセンサ200はもとより、生体組織を貫通するための貫通用ガイドワイヤ400といったバックアップ力を要する医療デバイスがカテーテル100A内に挿入されて使用された場合であっても、偽腔82内(内膜下)においてカテーテル100Aを固定することができ、カテーテル100Aのずれを抑制できる。なお、図6Bで説明した第2実施形態の懸架部111Bについても、上述した各効果と同様の効果を奏することができる。
【0089】
一方、図8Bに示すように、比較例として示す従来のカテーテル100Xでは、バルーン111Xの拡張方向は、中心から放射状に広がる方向DXである(図8B、黒矢印)。このため、バルーン111Xの拡張によって、偏平な偽腔82の壁面(生体組織)が押圧されることにより、偽腔82が拡張してしまう虞がある。また、バルーン111Xは、偽腔82内において、周方向に容易に回転してしまうため、カテーテル100Xの長手方向への移動操作、及び、周方向への回転操作に対する抵抗力が十分得られない。
【0090】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態の拡縮部12C,Dの構成を例示した説明図である。図9Aは拡縮部12Cの構成の一例を、図9Bは拡縮部12Dの構成の一例をそれぞれ示す。第3実施形態の拡縮部12C,Dでは、第2実施形態とは異なる方法によって、懸架部111C,Dの中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、を相違させている。
【0091】
具体的には、図9Aの例では、懸架部111Cは、先端部分DP及び基端部分PPにおいては、外側面(外周面)の略中央部分にそれぞれ1か所の切欠き111nが形成されている。一方、中央部分CPにおいては、内側面(内周面)の両端部分に2か所の切欠き111nが形成されている。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と相違させることができる。また、図9Bの例では、懸架部111Dは、先端部分DP及び基端部分PPにおいては、内側面の略中央部分にそれぞれ1か所の切欠き111nが形成され、中央部分CPにおいては、外側面の両端部分に2か所の切欠き111nが形成されている。このようにしても、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と相違させることができる。
【0092】
第3実施形態のように、懸架部111C,Dに設ける切欠き111nの個数や場所といった、厚さ以外の方法によって、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性とを相違させてもよい。このようにしても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態の懸架部111C,Dでは、他の部分と比較して脆弱に形成された切欠き111nの箇所において、懸架部111C,Dを屈曲させることができるため、切欠き111nを設ける位置によって拡張時の懸架部111C,Dの形状を制御しやすい。
【0093】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態の拡縮部12E,Fの構成を例示した説明図である。図10Aは拡縮部12Eの構成の一例を、図10Bは拡縮部12Fの構成の一例をそれぞれ示す。各図の左側には、図6に示した仮想平面αに略垂直な仮想平面βにおける収縮状態の拡張部12E,Fを示し、右側には、第1懸架部111aE,Fの拡大図を示す。第4実施形態の拡縮部12E,Fでは、第2実施形態とは異なる方法によって、懸架部111E,Fの中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、を相違させている。
【0094】
具体的には、図10Aの例では、懸架部111Eは、懸架部111Eの拡張方向D1(図6)に直交する方向(図10A左側の斜線ハッチングを付した矢印、以降「直交方向D2」とも呼ぶ)における中央部分CPの幅W2が、先端部分DP及び基端部分PPの幅W1よりも広い。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも高くすることができる。また、図10Bの例では、懸架部111Fは、直交方向D2における中央部分CPの幅W2が、先端部分DP及び基端部分PPの幅W1よりも狭い。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも低くすることができる。なお、幅W1及びW2は、相違する限りにおいて任意に決定できる。
【0095】
図11は、第4実施形態の拡縮部12G,Hの構成を例示した説明図である。図11Aは拡縮部12Gの構成の一例を、図11Bは拡縮部12Hの構成の一例をそれぞれ示す。図11Aの例では、懸架部111Gには、図10で説明した幅W1及びW2の相違に加えてさらに、各部分の境界に、幅が緩やかに変化するテーパー部分tpが設けられている。具体的には、テーパー部分tpは、固定部109に接合されている先端部分DPの先端部と、先端部分DPと中央部分CPとの境界部と、中央部分CPと基端部分PPとの境界部と、摺動部110に接合されている基端部分PPの基端部と、にそれぞれ形成されている。このようにすれば、各部分の境界の角部をなくすことができるため、拡張状態の懸架部111Gによって偽腔82の壁面(生体組織)を損傷することを抑制できる。
【0096】
図11Bの例では、懸架部111Hには、図10で説明した幅W1及びW2の相違に加えてさらに、中央部分CPが、先端部分DP及び基端部分PPから中央に掛けて徐々に幅W2が広がった略楕円形状とされている。なお、先端部分DP及び基端部分PPは、図10と同様の板状としているが、先端部分DP及び基端部分PPの形状も、任意に変更できる。このようにすれば、拡張状態の懸架部111Hにおいて、偽腔82の壁面(生体組織)への中央部分CPの接触面積をより一層大きくできるため、カテーテルの固定力をより一層増加できる。
【0097】
第4実施形態のように、懸架部111E,F,G,Hの直交方向D2における幅W1,W2といった、厚さ以外の方法によって、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性とを相違させてもよい。このようにしても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態の懸架部111E,F,G,Hでは、直交方向D2における幅W1,W2によって剛性の相違を出すことで、懸架部111E,F,G,Hをレーザー加工が容易な構造とできる。
【0098】
E.第5実施形態:
図12は、第5実施形態の拡縮部12I,Jの構成を例示した説明図である。図12Aは拡縮部12Iの構成の一例を、図12Bは拡縮部12Jの構成の一例をそれぞれ示す。第5実施形態の拡縮部12I,Jでは、第2実施形態とは異なる方法によって、懸架部111I,Jの中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、を相違させている。
【0099】
具体的には、図12Aの例では、懸架部111Iは、先端部分DP及び基端部分PPに円形状の複数の穴111hが形成されている一方、中央部分CPには穴が形成されていない。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも高くすることができる。また、図12Bの例では、懸架部111Jは、中央部分CPに円形状の複数の穴111hが形成されている一方、先端部分DP及び基端部分PPには穴が形成されていない。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも低くすることができる。なお、穴111hは、懸架部111I,Jを貫通する貫通孔であってもよく、貫通しない止まり穴であってもよく、上部と下部とで穴の径が相違するテーパー穴であってもよい。また、図12の例では、懸架部111I,Jには、懸架部111I,Jの短手方向に並んだ3つの穴111hが複数列設けられている。しかし、懸架部111I,Jに形成される穴111hは1つであってもよく、複数であってもよい。複数の場合、各穴111hの並び方については任意に変更してよい。
【0100】
図13は、第5実施形態の拡縮部12K,Lの他の構成を例示した説明図である。図13Aは拡縮部12Kの構成の一例を、図13Bは拡縮部12Lの構成の一例をそれぞれ示す。図13Aの例では、略楕円形状の穴111hKが、懸架部111Kの長手方向に複数個、並んで配置されている。図13Bの例では、長軸方向に延びる直線状の穴111hL(スリット111hL)が、懸架部111Lの短手方向に複数本、並んで配置されている。なお、図12Bの例と同様に、懸架部111Kの中央部分CPに穴111hKが形成される一方、先端部分DP及び基端部分PPには穴が形成されていなくてもよい。同様に、懸架部111Lの中央部分CPに穴111hLが形成される一方、先端部分DP及び基端部分PPには穴が形成されていなくてもよい。また、各穴111hKや、各穴111hLの並び方については任意に変更してよい。
【0101】
第5実施形態のように、懸架部111I,J,K,Lの中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPと、の一方に形成された穴111h,hK,hLといった、厚さ以外の方法によって、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性とを相違させてもよい。このようにしても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態の懸架部111I,J,K,Lでは、穴111h,hK,hLの有無によって剛性の相違を出すことで、懸架部111I,J,K,Lの周方向への回転操作に対する抵抗力を強くすることができる。
【0102】
F.第6実施形態:
図14は、第6実施形態の拡縮部12M,Nの構成を例示した説明図である。図14Aは拡縮部12Mの構成の一例を、図14Bは拡縮部12Nの構成の一例をそれぞれ示す。第6実施形態の拡縮部12M,Nでは、第2実施形態とは異なる方法によって、懸架部111M,Nの中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、を相違させている。
【0103】
具体的には、図14Aの例では、懸架部111Mは、中央部分CPのうち拡張方向D1の側面にめっき層501が形成されている一方、先端部分DP及び基端部分PPにはめっき層が形成されていない。めっき層501は、例えば金や白金等の金属材料により形成された薄膜である。このようにすれば、めっき層501が形成されている分だけ、中央部分CPの厚さT2を、先端部分DP及び基端部分PPの厚さT1よりも厚くできるため、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも高くすることができる。また、図14Bの例では、懸架部111Nは、先端部分DP及び基端部分PPのうち拡張方向D1の側面にめっき層501が形成されている一方、中央部分CPにはめっき層が形成されていない。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも低くすることができる。なお、めっき層501は、拡張方向D1の側面に形成されていれば足りる。このため、図示のように、拡張方向D1の外側にめっき層501が形成されていてもよく、拡張方向D1の内側(図14とは逆方向)にめっき層501が形成されていてもよい。
【0104】
第6実施形態のように、懸架部111M,Nの中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPと、の一方に形成されためっき層501といった、層構成を採用することによって、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性とを相違させてもよい。このようにしても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態の懸架部111M,Nでは、めっき層501の材料を変更することによって、懸架部111M,Nの表面に抗菌、制菌作用を付与したり、懸架部111M,Nの表面に撥水性を付与したりすることが可能となる。
【0105】
G.第7実施形態:
図15は、第7実施形態の拡縮部12O,Pの構成を例示した説明図である。図15Aは拡縮部12Oの構成の一例を、図15Bは拡縮部12Pの構成の一例をそれぞれ示す。第7実施形態の拡縮部12O,Pでは、第2実施形態とは異なる方法によって、懸架部111O,Pの中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、を相違させている。
【0106】
具体的には、図15Aの例では、懸架部111Oは、先端部分DP及び基端部分PPは、長軸方向に直線状に延びるストレート形状を有している一方、中央部分CPは、直交方向D2に幅広に広がった湾曲形状を有している。直交方向D2において、中央部分CPの上端から下端までの幅W2は、先端部分DP及び基端部分PPの幅W1よりも広い。このようにすれば、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも高くすることができる。また、図15Bの例では、懸架部111Pは、先端部分DP及び基端部分PPは、長軸方向に直線状に延びるストレート形状を有している一方、中央部分CPは、直交方向D2に幅広に広がった中空楕円形状を有している。直交方向D2において、中央部分CPの上端から下端までの幅W2は、先端部分DP及び基端部分PPの幅W1よりも広い。このようにしても、中央部分CPの剛性を、先端部分DP及び基端部分PPの剛性よりも高くすることができる。なお、中央部分CPの形状は、湾曲形状や、中空楕円形状に限らず、円弧形状、円形状、矩形形状、台形形状、その他多角形形状等、任意に変更できる。
【0107】
第7実施形態のように、懸架部111O,Pの中央部分CPの形状、及び又は、先端部分DP及び基端部分PPの形状を変更することで、中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性とを相違させてもよい。このようにしても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態の懸架部111O,Pでは、直交方向D2における幅W1,W2によって剛性の相違を出すことで、懸架部111O,Pをレーザー加工が容易な構造とできる。
【0108】
H.第8実施形態:
図16は、第8実施形態の拡縮部12Qの構成を例示した説明図である。図16の左側には、仮想平面αにおける収縮状態(拡張していない状態)の拡縮部12Qを示し、右側には、左図のB-B線における懸架部111Qの断面を示す。第8実施形態の拡縮部12Qは、第1実施形態とは異なる構成の拡縮部12Qを備えている。右図に示すように、拡縮部12Qの懸架部111Qは、横断面形状が、矩形形状を第1インナーシャフト102の径方向外側の拡張方向D1に向かって凸となるように湾曲させた形状を有する第1懸架部111aQ及び第2懸架部111bQからなる。換言すれば、懸架部111Qの第1懸架部111aQ及び第2懸架部111bQは、それぞれ、周方向に沿った2つの辺SO及びSIのうち、第1インナーシャフト102から近い側の辺SIの長さが、第1インナーシャフト102から遠い側の辺SOの長さよりも長く形成されている。
【0109】
第8実施形態の拡縮部12Qは、図2D~Fで説明した円筒状の中空パイプ60(破線)を、次の仮想平面Zでくり抜くことにより形成される。まず、図示の横断面において、中空パイプの中心Oに対してθ1°をなして交わる2つの仮想平面を仮想平面Y(一点鎖線)とする。次に、中空パイプ60の肉厚部に対して、2つの仮想平面Yとθ2°をなして交わる4つの仮想平面を仮想平面Z(二点鎖線)とする。ここで、θ1°とθ2°とは任意に決定してよい。
【0110】
第8実施形態のように、懸架部111Qの構成は種々の変更が可能であり、中央部分CP、先端部分DP、基端部分PPの剛性を相違させる以外の変形も可能である。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第8実施形態の懸架部111Qの横断面形状は、矩形形状を第1インナーシャフト102(シャフト)の径方向外側に向かって凸となるように湾曲させた形状であるため、カテーテルを周方向に回転操作した際に、凸の先端面が生体組織上を滑るように移動することで引っ掛かりを抑制することができ、懸架部111Qによる生体組織の損傷を抑制できる。
【0111】
I.第9実施形態:
図17は、第9実施形態の拡縮部12R,Sの構成を例示した説明図である。図17Aは、拡縮部12Rの一例を、図17Bは拡縮部12Sの一例を示す。拡縮部12R,Sは、第1実施形態で説明した懸架部111に代えて、懸架部111R,Sを備えている。
【0112】
図17Aに示す懸架部111Rは、第1実施形態で説明した第1及び第2懸架部111a,bに加えてさらに、第3懸架部111eを備えている。破線で示す懸架部111Rの横断面Aにおいて、第1及び第2懸架部111a,bは、対向して配置されている。ここで、横断面A上において、第1及び第2懸架部111a,bの各中心を結ぶ仮想線L(一点鎖線)を定義する。このとき、第3懸架部111eは、仮想線Lを境界とする2つの領域(便宜的に「上側領域」、「下側領域」と呼ぶ)のうちの、一方の領域に配置されている。具体的には、図示の例では、第3懸架部111eは、上側領域、かつ、横断面A上において、第1及び第2懸架部111a,bからの長さが略同一となる位置に配置されている。このようにすれば、懸架部111Rを、イメージングセンサ200の画像上においてカテーテル100Rの姿勢や向きを確認するための、より高精度のオリエンテーションマーカーとして機能させることができる。
【0113】
図17Bに示す懸架部111Sは、上述の第3懸架部111eに加えてさらに、第4懸架部111fを備えている。第4懸架部111fは、仮想線Lを境界とする2つの領域の、他の領域に配置されている。具体的には、図示の例では、第4懸架部111fは、下側領域、かつ、横断面A上において、第1及び第2懸架部111a,bからの長さが略同一となる位置に配置されている。このように、懸架部111Sに配置される懸架部の数は任意に定めることが可能であり、1枚でもよく、3枚以上であってもよい。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0114】
J.第10実施形態:
図18は、第10実施形態の拡縮部12T,Uの構成を例示した説明図である。図18Aは、拡縮部12Tの一例を、図17Bは拡縮部12Uの一例を示す。拡縮部12T,Uは、第1実施形態で説明した懸架部111に代えて、懸架部111T,Uを備えている。
【0115】
図18Aに示す懸架部111Tは、第1実施形態で説明した固定部109に代えて、固定部109Tを備えている。固定部109Tには、カテーテル100Tの長軸方向に設けられた2か所の分離部109sが形成されている。図5で説明した手技の最中において、CTO81の石灰化組織や、血管内に留置されたステント等に懸架部111Tが引っ掛かってしまうことにより、冠動脈80内でカテーテル100Tを動かせなくなる可能性がある。分離部109sは、このような場合に、図18Aの右側に示すように懸架部111Tを分離させることで、カテーテル100Tの脱出を可能とするための構成である。分離部109sは、固定部109Tの肉厚部に設けられた切れ込み(スリット)として構成できる。また、分離部109sは、固定部109Tの一部分を薄肉化したり、貫通孔を設けたり、材料を変更したりすることで、脆弱化して構成してもよい。
【0116】
懸架部111Tに引っ掛かりを生じた場合、術者は、カテーテル100Tの調節器105の第1ダイヤル105a(図1)を操作することで、第1及び第2ワイヤ112a,bを基端側へと引っ張る。これにより、図18Aの右側に示すように、分離部109sにおいて断裂を生じさせることができ、固定部109Tを分離できる。この結果、術者は、カテーテル100Tを容易に脱出させることができる。また、図示のように各分離部109sを配置することで、断裂した各固定部109Tを第1及び第2懸架部111a,bにそれぞれ付随させることができるため、体内に断裂した固定部109Tが残存することを抑制できる。
【0117】
図18Bに示す懸架部111Uでは、固定部109Uと、第1及び第2懸架部111a,bと、の境界に2か所の分離部111sが形成されている。また、固定部109Uは、圧着や接着剤等により、第1インナーシャフト102の表面に接合されている。分離部111sは、分離部109sと同様に、切れ込みや、脆弱化により形成できる。懸架部111Uに引っ掛かりを生じた場合、術者は、図18Aと同様に、第1及び第2ワイヤ112a,bを基端側へと引っ張る。これにより、図18Bの右側に示すように、分離部111sにおいて断裂を生じさせることができ、固定部109Uを分離できる。また、固定部109Uは第1インナーシャフト102の表面に接合されているため、体内に断裂した固定部109Uが残存することを抑制できる。
【0118】
このように、拡縮部12T,Uの構成は種々の変更が可能であり、第1実施形態で説明しない他の構成を備えていてもよい。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第10実施形態の拡縮部12T,Uによれば、冠動脈80内でカテーテル100T,Uを動かせなくなった場合であっても、カテーテル100T,Uを容易に脱出させることができる。
【0119】
K.第11実施形態:
図19は、第11実施形態の再開通カテーテルシステム1Vの全体構成の概略図である。図20は、図19のC-C線におけるカテーテル100Vの断面の概略図である。第11実施形態の再開通カテーテルシステム1Vは、第1実施形態で説明したカテーテル100に代えて、カテーテル100Vを備えている。なお、図19では、図示の便宜上、貫通用ガイドワイヤ400の図示を省略している。図20に示すように、カテーテル100Vは、第1実施形態で説明した第2インナーシャフト103を備えておらず、第1インナーシャフト102が挿入されたアウターシャフト101Vを備えている。このため、カテーテル100Vは、第2インナーシャフト103によって形成される第2ルーメン116及び開口103aを有しておらず、医療デバイス挿通のために使用されるのは、第1ルーメン115のみの構成である。
【0120】
第11実施形態の再開通カテーテルシステム1Vでは、次のようにしてCTOの開通が可能である。まず、冠動脈80内に予めデリバリーガイドワイヤ70が挿入された状態(図5A参照)において、デリバリーガイドワイヤ70の基端を、開口104aから挿入し、先端チップ104の内側のルーメン及び第1インナーシャフト102の第1ルーメン115(図20参照)を通して、第1インナーシャフト102の開口102aから外部へ突出させる。そして、デリバリーガイドワイヤ70に沿って、カテーテル100Vを偽腔82まで運ぶ。このとき、カテーテル100Vは、第1ルーメン115にイメージングセンサ200が挿通された状態で運ばれる。術者は、第1ルーメン115に挿通されたイメージングセンサ200による、冠動脈80の画像を確認しつつ、カテーテル100Vを貫通用ガイドワイヤ400による真腔への穿通のために最適な位置に配置する。カテーテル100Vを最適な位置に配置した後、術者は、イメージングセンサ200による画像上のデリバリーガイドワイヤ70の位置を指標として、カテーテル100Vを回転させる。
【0121】
その後、術者は、第1ダイヤル105aを操作して、拡縮部12の懸架部111を拡張させる。懸架部111の拡張により、偽腔82内においてカテーテル100Vが固定される。その後、術者は、デリバリーガイドワイヤ70と、イメージングセンサ200とを抜去して、第1ルーメン115に、新たに貫通用ガイドワイヤ400を挿入する。術者は、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部をカテーテル100Vの先端部まで運び、開口102a又は開口104aから、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部を外部へ突出させる。ここで、穿通の至適部位が、カテーテル100Vの先端部近傍にある場合は、貫通用ガイドワイヤ400を開口104aから突出させることが好ましい。一方、穿通の至適部位が、カテーテル100Vの側面近傍にある場合は、貫通用ガイドワイヤ400を開口102aから突出させることが好ましい。その後、術者は、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部を用いて生体組織を貫通し、貫通用ガイドワイヤ400の先端を真腔84に到達させる。
【0122】
このように、カテーテル100Vの構成は種々の変更が可能であり、例えば、医療デバイス挿通のためのルーメンを、1つまたは3つ以上としてもよい。第11実施形態の再開通カテーテルシステム1Vによれば、カテーテル100Vは、医療デバイス挿通のための1つの第1ルーメン115(ルーメン、図20)を備えるため、カテーテル100Vを細径化できる。また、シャフトの先端部には、先端部がアウターシャフト101Vの先端部よりも先端側に延びた第1インナーシャフト102を備えるため、第1ルーメン115にイメージングセンサ200(センサ)を挿通し、第1インナーシャフト102内の第1ルーメン115にイメージングセンサ200のトランスデューサ201を配置することによって、偽腔82内をより高精度に観察することができる。さらに、径方向に拡縮可能な拡縮部12を備えるため、カテーテル100Vを前後方向へ移動させたり回転させたりして位置決めした後、懸架部111を拡張させることによって、当該位置でカテーテル100Vを固定できる。
【0123】
また、第11実施形態のカテーテル100Vは、アウターシャフト101Vの先端部よりも先端側に延びた第1インナーシャフト102の先端部において第1ルーメン115(ルーメン)に連通する開口104aと、開口104aよりも基端側の側面において第1ルーメン115に連通する開口102a(第1開口)とを備える。このため、デリバリーガイドワイヤ70の基端側を開口104aから第1ルーメン115に挿入し、第1ルーメン115内を通して、さらにデリバリーガイドワイヤ70の基端側を開口102a(第1開口)から外部へと突出させることが可能となる。これにより、カテーテル100Vを、ラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルとして使用することも可能であるため、手技の幅を拡げ、使い勝手を向上できる。また、第1ルーメン115に貫通用ガイドワイヤ400を挿入して使用する場合は、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部を開口104aから外部に突出させることによって、カテーテル100Vの先端部近傍に位置する生体組織の貫通を容易にできる。さらに、貫通用ガイドワイヤ400の尖状部を開口102aから外部に突出させることによって、カテーテル100Vの側面近傍に位置する生体組織の貫通を容易にできる。
【0124】
L.本実施形態の変形例
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0125】
[変形例1]
上記第1~第11実施形態では、再開通カテーテルシステム1,1Vの構成の一例を示した。しかし、再開通カテーテルシステム1,1Vの構成は種々の変更が可能である。例えば、イメージングセンサ200として、超音波の発進及び受信以外の他の手段で生体組織の画像を取得するセンサを利用してもよい。また、イメージングセンサ200に替えてOCT(Optical Coherence Tomography)やカメラを挿入して血管内の生体組織の画像を取得することもできる。OCTやカメラを採用する場合には、第1ルーメン115内に生理食塩水等を注入する必要がある。
【0126】
例えば、貫通用ガイドワイヤ400を使用せずに、プラズマを利用した生体組織のアブレーションを行うプラズマガイドワイヤを用いてCTOの開通を図るシステムとして構成されてもよい。この場合、カテーテル100,100A,100B,100R,100T,100Vおいて、ブレード108を導電性の金属材料で構成した上で、アウターシャフト101の先端側に、ブレード108に電気的に接続された電極を設けることが好ましい。そうすれば、アウターシャフト101の先端側に設けられた電極と、ブレード108の基端側とをRFジェネレータに接続することで、プラズマガイドワイヤを利用できる。
【0127】
[変形例2]
上記第1~第11実施形態では、再開通カテーテルシステム1,1Vの使用方法の一例を示した。しかし、再開通カテーテルシステム1,1Vは上述しない他の方法で使用されてもよい。例えば、再開通カテーテルシステムは、冠動脈以外の血管(例えば脳血管等)に使用されてもよく、血管以外の生体管腔内において使用されてもよい。例えば、再開通カテーテルシステムは、CTOの開通以外の他の治療や、検査のために使用されてもよい。
【0128】
[変形例3]
上記第1~第11実施形態では、カテーテル100,100A,100B,100R,100T,100Vの構成の一例を示した。しかし、カテーテル100,100A,100B,100R,100T,100Vの構成は種々の変更が可能である。例えば、カテーテルが有する第1ルーメン115と、第2ルーメン116とは、略同一の径とされてもよく、第1ルーメンの方が第2ルーメンよりも細径に構成されてもよい。例えば、カテーテルは、第1ルーメンや第2ルーメンのほかに、貫通用ガイドワイヤ等の医療デバイスのための更なるルーメンを備えていてもよい。
【0129】
例えば、第1ルーメン115に連通する開口104aは、先端チップ104の先端面以外の位置(例えば先端チップ104の側面等)に設けられていてもよい。同様に、第1ルーメン115に連通する開口102aは、第1インナーシャフト102のうち、第2ルーメン116に対向する側の側面以外の位置に設けられていてもよい。同様に、第2ルーメン116に連通する開口103aは、第1インナーシャフト102の先端面以外の位置(例えば第2インナーシャフト103の側面等)に設けられていてもよい。例えば、開口104aと、開口102aと、開口103aとのうちの少なくとも一方一部は省略されてもよい。く、例示しない他の開口が形成されてもよい。他の開口としては、例えば、アウターシャフト101の側面において、第2ルーメン116に連通する開口が例示できる。
【0130】
例えば、第1インナーシャフト102のうち、第2ルーメン116の先端部よりも先端側に延びた部分は、イメージングセンサ200の超音波透過性と肉厚確保との両立の観点から、ポリアミドで形成されることが好ましい、一方、第1インナーシャフト102のうち、第2ルーメン116の先端部よりも基端側に延びた部分、及び、アウターシャフト101、第2インナーシャフト103、封止部材114等は、剛性確保の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)等により形成されることが好ましい。また、先端チップ104は、柔軟性確保の観点から、ポリウレタンにより形成されることが好ましい。
【0131】
第1インナーシャフト102のうち、第2ルーメン116の先端部よりも基端側に延びた部分の肉厚は、導電性を有するブレード108との絶縁のために、20ミクロン以上とされることが好ましい。第2インナーシャフト103の先端は、第1インナーシャフト102に向かって傾斜しておらず、平坦な先端面を有していてもよい。例えば、カテーテルは、ブレード108に代えて、導電性を有する金属材料で形成されたコイル体を、補強部材として備えていてもよい。また、ブレード108と、コイル体との両方を備えていてもよい。例えば、懸架部111は、絶縁性を有する樹脂によりコーティングされていてもよく、表面に薬剤が塗布されていてもよい。
【0132】
[変形例4]
上記第1~第11実施形態では、拡縮部12,12A~12U、及び、作動部13の構成の一例を示した。しかし、拡縮部12,12A~12U、及び、作動部13の構成は種々の変更が可能である。例えば、拡縮部12の懸架部111を、板状部材に替えて、金属材料又は樹脂材料から成るメッシュ部材で形成してもよい。例えば、拡縮部12の懸架部111を被覆するバルーンをさらに備えていてもよい。この場合、アウターシャフト101内には、バルーンに接続されてバルーンに作動流体を送出するための中空のインフレーションシャフトをさらに備えていてもよい。バルーンを備える構成とすれば、インフレーションシャフトを介してX線不透過性の材料を含む作動流体を注入することにより、X線画像下で、懸架部111の開閉を確認することができる。
【0133】
例えば、拡縮部12の懸架部111を、生体組織との音響インピーダンスの差が大きい部材で形成してもよい。さらに、懸架部111の表面に凹凸を設けて、イメージングセンサ200のトランスデューサ201からの超音波を反射しやすくしてもよい。そうすれば、懸架部111を、イメージングセンサ200によって取得された画像上で、カテーテル100の姿勢や向きを確認するためのオリエンテーションマーカーとして機能させることができる。なお、この際、懸架部111は開いた状態でもよく、閉じた状態でもよい。
【0134】
例えば、拡縮部12の懸架部111について、中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPとの剛性は、同じ剛性であってもよい。また、中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPの剛性を相対的に異なる剛性とする場合であっても、第2~第10実施形態で説明した方法以外の方法を用いて剛性を相違させてもよい。例えば、中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPとに異なる材料を用いることで、剛性を相違させてもよい。例えば、拡縮部12において、固定部109は摺動部110よりも先端側に配置されているとした。しかし、固定部109は摺動部110よりも基端側に配置されていてもよい。例えば、拡縮部12の懸架部111について、中央部分CPと、先端部分DPと、基端部分PPとの長軸方向における長さは、同一であってもよく、それぞれ相違していてもよい。また、中央部分CPの長軸方向における長さは、先端部分DP及び基端部分PPの長軸方向における長さよりも短くてもよい。
【0135】
例えば、拡張状態の懸架部111の形状(下面視開形状)は、略台形形状でなくてもよい。具体的には、例えば、拡張状態の懸架部111の形状は、先端及び基端から中央に向かうにつれ、第1及び第2懸架部111a,bが徐々に第1インナーシャフト102の外周面から離間する距離が長くなる円弧形状であってもよい。また、第1インナーシャフト102から離間した距離が最も長い点が、先端側や、基端側の一方に偏った、歪みのある円弧形状であってもよい。例えば、拡張状態の懸架部111の形状は、矩形形状や、多角形形状であってもよい。
【0136】
例えば、作動部13を、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bを用いずに、流体による押圧力を利用する構成にしてもよい。この場合、第1インナーシャフト102にバルーンを取り付けるとともに、摺動部110の基端をバルーンの先端に取り付ける。バルーン内に作動流体を供給することにより、バルーンを拡張させる。拡張したバルーンの押圧力によって、摺動部110を先端側に移動させて、懸架部111を拡張状態とすることができる。また、バルーン内の作動流体を排出することにより、バルーンを収縮させ、摺動部110を基端側に移動させて、懸架部111を収縮状態とすることができる。
【0137】
例えば、拡縮部12の懸架部111を、拡張状態で形状記憶させた懸架部(以下「懸架部111M」と呼ぶ)としてもよい。この場合、作動部13としては、第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dと、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bとに代えて、中空円筒状のアウターシースを備える構成とする。アウターシースは、第1インナーシャフト102の外周と、懸架部111Mと、摺動部110とを被覆して配置されており、懸架部111Mを覆うことによって、懸架部111Mを強制的に閉じた状態に維持する。アウターシースは、アウターシャフト101内において、第1及び第2ワイヤシャフト117a,bに代えて配置された中空のアウターシースシャフト内に配置されている。アウターシースは、第1インナーシャフト102の外周面と、アウターシースシャフトの内周面との間を、カテーテル100の長軸方向に移動可能である。アウターシースを懸架部111Mよりも基端側に移動させることにより、懸架部111Mを拡張状態とできる。
【0138】
例えば、拡縮部12の懸架部111のインピーダンスを検出する構成を備えてもよい。懸架部111のインピーダンスは、懸架部111と生体組織との接触度合により変化する。従って、検出した懸架部111のインピーダンスから懸架部111と生体組織との接触度合を導出することができる。導出した接触度合に応じて、懸架部111の拡張度合を調整することにより、確実にカテーテル100を固定でき、カテーテル100のずれを一層抑制することができる(換言すると、確実にカテーテル100のバックアップ力を得ることができる)。また、懸架部111のインピーダンスのデータを蓄積することにより、懸架部111が接触した組織の構造や状態についても把握することが可能となり、手技の成功率向上に資することができる。
【0139】
[変形例5]
第1~11実施形態のカテーテル100,100A,100B,100R,100T,100Vの構成、及び上記変形例1~4のカテーテル100,100A,100B,100R,100T,100Vの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第11実施形態の第2ルーメン116を有さないカテーテルに対して、第2実施形態~第10実施形態で説明した拡縮部12A~12Uを採用してもよい。例えば、第2実施形態~第10実施形態で説明した拡縮部12A~12Uについても、組み合わせ可能である。例えば、懸架部111の中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPとにおいて、厚さと、幅と、穴の有無と、の2つ以上を変化させることで剛性を変化させてもよい。例えば、懸架部111の中央部分CPと、先端部分DP及び基端部分PPとにおいて、厚さと、幅と、穴の有無と、の2つ以上を変化させた上で、横断面形状を凸状に湾曲さてもよい。
【0140】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0141】
1,1V…再開通カテーテルシステム
12,12A~12U,12X…拡縮部
13…作動部
60…中空パイプ
70…デリバリーガイドワイヤ
100,100A,100B,100R,100T,100V,100X…カテーテル
101,101V…アウターシャフト
102…第2インナーシャフト
103…第2インナーシャフト
104…先端チップ
105…調節器
105a…第1ダイヤル
105b…第2ダイヤル
108…ブレード
109,109J…固定部
109s…分離部
110…摺動部
111,111A~111U…懸架部
111a,111aA~111aQ…第1懸架部
111b,111bA~111bQ…第2懸架部
111c…第1ワイヤ片
111d…第2ワイヤ片
111e…第3懸架部
111f…第4懸架部
112a…第1ワイヤ
112b…第2ワイヤ
114…封止部材
115…第1ルーメン
116…第2ルーメン
117a…第1ワイヤシャフト
117b…第2ワイヤシャフト
120…第1ワイヤ片
120a…第1湾曲部
120b…第1直線部
121…第2ワイヤ片
121a…第2湾曲部
121b…第2直線部
200…イメージングセンサ
201…トランスデューサ
202…ドライビングケーブル
203…コネクタ
300…イメージングコンソール
302…ディスプレイ
400…貫通用ガイドワイヤ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再開通カテーテルシステムであって、
カテーテルと、
生体組織の情報を取得するセンサと、を有し、
前記カテーテルは、
内側に第1ルーメンを有するシャフトと、
前記シャフトの基端部から先端側に向かって、前記第1ルーメンと並んで配置された第2ルーメンであって、前記シャフトの長軸方向における長さが前記第1ルーメンよりも短い第2ルーメンと、
前記第2ルーメンの先端部と外部とを連通する第2開口と、
前記シャフトの先端部の外周面に配置された懸架部と、を備え、
前記懸架部は、前記センサにより観察することができる材料により形成され、
前記センサは、前記第1ルーメンに挿入される、再開通カテーテルシステム
【請求項2】
請求項1に記載の再開通カテーテルシステムであって、
前記第2ルーメンに挿入され、前記第2開口から外部へ誘導されるとともに生体組織を貫通するガイドワイヤを有し
前記懸架部は、生体組織との音響インピーダンスの差がある材料により形成される、再開通カテーテルシステム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、従来とは異なる方法で偽腔内における固定を可能としたカテーテルを提供すること、及び、ルーメン内に挿通されたイメージングセンサによる観察を可能とすることを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
図2A図2Cに示すように、摺動部110には、第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bが接合されている(図2Aには、第1ワイヤ112aのみ記載)。具体的には、摺動部110の基端には後述する第1ワイヤ片111cが設けられている(図2E参照)。第1ワイヤ112aは、第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って、この第1ワイヤ片111c(図2E及び図3参照)に重なるように配置されて接合されている。同様に、摺動部110の基端には後述する第2ワイヤ片111dが設けられている(図2E参照)。第2ワイヤ112bは、第1インナーシャフト102の長軸方向に沿って、この第2ワイヤ片111d(図2E及び図3参照)に重なるように配置されて接合されている。第1ワイヤ片111c及び第2ワイヤ片111dそれぞれは、後述する第1ワイヤルーメン118a及び第2ワイヤルーメン118b内を通って、アウターシャフト101の途中まで延びている。第1ワイヤ112a及び第2ワイヤ112bは、第1インナーシャフト102の中間部分の外周面に沿って、摺動部110の基端から第1インナーシャフト102の長軸方向に、それの基端に向って延びている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
一般に、第1ルーメン115に挿通されるイメージングセンサ200の方が、第2ルーメン116に挿通される医療デバイス(例えば、デリバリーガイドワイヤ70や、貫通用ガイドワイヤ400等)よりも太径である。第1実施形態のカテーテル100では、第1ルーメン115の径は、第2ルーメン116の径よりも大きい(図3参照)。このため、第1,2ルーメンの各径を、各ルーメンに挿通されるデバイスの太さに合わせることができると共に、第1,2ルーメンの径を同一とする場合と比較して、デバイス挿入時における誤りを抑制すると共に、カテーテル100の細径化を図ることができる。また、アウターシャフト101の内側(シャフトの肉厚部内)に配置されたブレード108を備えるため、カテーテル100のトルク伝達性能を向上できる。また、ブレード108は放射線不透過材料により形成されているため、X線撮影により得られるX線画像上に補強部材を造影できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態の拡縮部12E,Fの構成を例示した説明図である。図10Aは拡縮部12Eの構成の一例を、図10Bは拡縮部12Fの構成の一例をそれぞれ示す。各図の左側には、図6に示した仮想平面αに略垂直な仮想平面βにおける収縮状態の拡部12E,Fを示し、右側には、第1懸架部111aE,Fの拡大図を示す。第4実施形態の拡縮部12E,Fでは、第2実施形態とは異なる方法によって、懸架部111E,Fの中央部分CPの剛性と、先端部分DP及び基端部分PPの剛性と、を相違させている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
J.第10実施形態:
図18は、第10実施形態の拡縮部12T,Uの構成を例示した説明図である。図18Aは、拡縮部12Tの一例を、図1Bは拡縮部12Uの一例を示す。拡縮部12T,Uは、第1実施形態で説明した懸架部111に代えて、懸架部111T,Uを備えている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
1,1V…再開通カテーテルシステム
12,12A~12U,12X…拡縮部
13…作動部
60…中空パイプ
70…デリバリーガイドワイヤ
100,100A,100B,100R,100T,100V,100X…カテーテル
101,101V…アウターシャフト
102…第インナーシャフト
103…第2インナーシャフト
104…先端チップ
105…調節器
105a…第1ダイヤル
105b…第2ダイヤル
108…ブレード
109,109J…固定部
109s…分離部
110…摺動部
111,111A~111U…懸架部
111a,111aA~111aQ…第1懸架部
111b,111bA~111bQ…第2懸架部
111c…第1ワイヤ片
111d…第2ワイヤ片
111e…第3懸架部
111f…第4懸架部
112a…第1ワイヤ
112b…第2ワイヤ
114…封止部材
115…第1ルーメン
116…第2ルーメン
117a…第1ワイヤシャフト
117b…第2ワイヤシャフト
120…第1ワイヤ片
120a…第1湾曲部
120b…第1直線部
121…第2ワイヤ片
121a…第2湾曲部
121b…第2直線部
200…イメージングセンサ
201…トランスデューサ
202…ドライビングケーブル
203…コネクタ
300…イメージングコンソール
302…ディスプレイ
400…貫通用ガイドワイヤ