(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101732
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】電池モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/20 20210101AFI20220630BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20220630BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220630BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220630BHJP
H01M 50/172 20210101ALI20220630BHJP
【FI】
H01M2/10 M
H01M2/20 A
H01M2/30 D
H01M2/02 K
H01M2/06 K
H01M2/10 Y
H01M2/10 S
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215972
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟史
【テーマコード(参考)】
5H011
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG01
5H011HH02
5H040AA20
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY03
5H040DD03
5H043CA08
5H043CA22
5H043DA06
5H043DA08
5H043FA02
5H043FA22
5H043KA08D
5H043KA09D
(57)【要約】
【課題】直列に接続された複数の電極体を備え、性能および品質の高い電池モジュールを提供する。
【解決手段】ここで開示される電池モジュール100は、正極と負極とを有する複数の電極体20a、20b、20c、20dと、複数の電極体20a、20b、20c、20dを直列に接続する連結端子30a、30b、30cと、複数の電極体20a、20b、20c、20dと連結端子30a、30b、30cとを覆うフィルム外装体10と、を備える。複数の電極体20a、20b、20c、20dはそれぞれ一対の平坦な面を有し、互いの上記平坦な面同士が対向するように重ねられてモジュール化されている。連結端子30a、30b、30cは、上記正極と同種の金属である第1の金属31と、上記負極と同種の金属である第2の金属32と、が接合されたクラッド材で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを有する複数の電極体と、
複数の前記電極体の前記正極と前記負極とを直列に接続する連結端子と、
複数の前記電極体と前記連結端子とを覆うフィルム外装体と、
を備え、
複数の前記電極体はそれぞれ一対の平坦な面を有し、第1の前記電極体と前記連結端子によって連結される第2の前記電極体とは、互いの前記平坦な面同士が対向するように重ねられてモジュール化され、
前記連結端子は、前記正極と同種の金属である第1の金属と、前記負極と同種の金属である第2の金属と、が接合されたクラッド材で構成されている、電池モジュール。
【請求項2】
前記フィルム外装体の内部に、前記電極体がそれぞれ電解液とともに収容され液密に封止された複数の独立した電極体収容空間が区画されている、
請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記クラッド材の前記フィルム外装体と対向する側の面に、シーラントフィルムが一体化されており、
前記シーラントフィルムと前記フィルム外装体とが溶着され、隣り合う前記電極体収容空間の間が仕切られている、
請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記シーラントフィルムは、前記クラッド材の前記第1の金属と前記第2の金属とにそれぞれ設けられ、前記第1の金属と前記第2の金属との境界を避けて配置されている、
請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記第2の金属は、銅または銅合金であり、前記銅または前記銅合金の表面にニッケルメッキ層が設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記フィルム外装体は、深絞りによって前記電極体の外形にならった複数の膨出部が連続的に成形された深絞り成形品である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記フィルム外装体は、ポリオレフィン樹脂層と、ポリエステル樹脂層と、を有する多層構造である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記フィルム外装体は、2つの樹脂層と、前記2つの樹脂層の間に配置された金属層と、を有するラミネートフィルムである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項9】
正極と負極とを有する複数の電極体を、前記正極と同種の金属である第1の金属と、前記負極と同種の金属である第2の金属と、が接合されたクラッド材で構成された連結端子を用いて直列に接続する接続工程と、
直列に接続された複数の前記電極体と前記連結端子とをフィルム外装体の内部に収容する収容工程と、
複数の前記電極体の平坦な面同士を対向させるように前記連結端子を折り曲げる折曲工程と、
を含む、電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電極体を組み合わせて直列に接続することにより高電圧化された電池モジュールが知られている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1、2が挙げられる。例えば特許文献1には、正極集電部と負極集電部とを有する複数の電極体を備え、第1の電極体の正極集電部と第2の電極体の負極集電部とがそれぞれ外装体から延出され、外装体の外部で直列に連結された電池モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-200884号公報
【特許文献2】特開2016-046113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極体の正極集電部と負極集電部とは、異なる種類の金属で構成されていることがある。一例において、正極集電部はアルミニウム製であり、負極集電部は銅製である。このような場合、異種金属接合により、連結部分の抵抗が高くなる。したがって、性能を向上する観点からは、連結部分の抵抗を低減することが求められる。また、異種金属接合は、腐食(例えば電解腐食)の影響を受けやすい。特許文献1では、連結部分が露出して外気に曝されている。このため、連結部分から腐食が進行して品質の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、直列に接続された複数の電極体を備え、性能および品質の高い電池モジュールおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、正極と負極とを有する複数の電極体と、複数の上記電極体の上記正極と上記負極とを直列に接続する連結端子と、複数の上記電極体と上記連結端子とを覆うフィルム外装体と、を備える電池モジュールが提供される。複数の上記電極体はそれぞれ一対の平坦な面を有し、第1の上記電極体と上記連結端子によって連結される第2の上記電極体とは、互いの上記平坦な面同士が対向するように重ねられてモジュール化されている。上記連結端子は、上記正極と同種の金属である第1の金属と、上記負極と同種の金属である第2の金属と、が接合されたクラッド材で構成されている。
【0007】
クラッド材では、第1の金属と第2の金属とが接合され、原子間結合されている。このようなクラッド材からなる連結端子を用いて複数の電極体を直列に接続することにより、正極集電部と負極集電部とが異種金属からなる場合にも、連結部分の抵抗を抑制できる。これにより、電池モジュールを低抵抗化して、高性能な電池モジュールを提供することができる。また、連結端子をフィルム外装体で覆うことにより、連結端子が外気に曝されることを防止できる。これにより、連結部分が腐食(例えば電解腐食)されにくくなり、高品質な電池モジュールを提供することができる。加えて、複数の電極体を平坦な面同士が対向するように配置することで、モジュールにした際に、拘束しやすくなる効果が得られる。電池モジュールを拘束することにより、電池性能を安定して発揮できる。例えば、充放電時に電極体の極間距離を一定に保つことができ、充放電時の抵抗ムラやサイクル劣化を抑制することができる。
【0008】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記フィルム外装体の内部に、上記電極体がそれぞれ電解液とともに収容され液密に封止された複数の独立した電極体収容空間が区画されている。これにより、電解液の移動を防止でき、優れた電池性能を安定して発揮することができる。したがって、電池モジュールの性能や品質をより高めることができる。また、電池モジュールを効率よく製造でき、生産性を向上することができる。
【0009】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記クラッド材の上記フィルム外装体と対向する側の面に、シーラントフィルムが一体化されており、上記シーラントフィルムと上記フィルム外装体とが溶着され、隣り合う上記電極体収容空間の間が仕切られている。これにより、正極集電部と負極集電部とが異種金属からなる場合にも、電極体収容空間を安定的に封止することができる。
【0010】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記シーラントフィルムは、上記クラッド材の上記第1の金属と上記第2の金属との表面にそれぞれ設けられ、上記第1の金属と上記第2の金属との境界を避けて配置されている。これにより、腐食されやすい第1の金属と第2の金属との境界(界面)が電解液に曝されることを好適に防止できる。したがって、電池モジュールの品質や耐久性をより高めることができる。
【0011】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記第2の金属は、銅または銅合金であり、上記銅または上記銅合金の表面にニッケルメッキ層が設けられている。これにより、銅の溶出を抑えことができる。また、シーラントフィルムとの接合性が高まって、クラッド材からシーラントフィルムが剥離しにくくなる。したがって、電極体収容空間の封止性を高めることができる。
【0012】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記フィルム外装体は、深絞りによって上記電極体の外形にならった複数の膨出部が連続的に成形された深絞り成形品である。これにより、電池モジュールを効率よく製造でき、生産性を向上することができる。
【0013】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記フィルム外装体は、ポリオレフィン樹脂層と、ポリエステル樹脂層と、を有する多層構造である。これにより、電極体収容空間の封止性や耐久性を高めることができる。
【0014】
ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、上記フィルム外装体は、2つの樹脂層と、上記2つの樹脂層の間に配置された金属層と、を有するラミネートフィルムである。これにより、電極体収容空間の封止性や耐久性を高めることができる。
【0015】
また、本発明により、正極と負極とを有する複数の電極体を、上記正極と同種の金属である第1の金属と、上記負極と同種の金属である第2の金属と、が接合されたクラッド材で構成された連結端子を用いて直列に接続する接続工程と、直列に接続された複数の上記電極体と上記連結端子とをフィルム外装体の内部に収容する収容工程と、複数の上記電極体の平坦な面同士を対向させるように上記連結端子を折り曲げる折曲工程と、を含む、電池モジュールの製造方法が提供される。
【0016】
複数の電極体を、フィルム外装体に収容する前にクラッド材を用いて予め直列に接続することで、低抵抗な電池モジュールを効率よく製造することができる。これにより、生産性を向上すると共に、低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る電池モジュールを模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(例えば、電池モジュールの一般的な構成や構築プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0019】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0020】
<電池モジュール100>
図1は、電池モジュール100を模式的に示す縦断面図である。電池モジュール100は、フィルム外装体10と、電極体群40と、正極外部端子62と、負極外部端子64と、を備えている。電極体群40は、複数の(第1~第4の)電極体20a、20b、20c、20dと、複数の(第1~第3の)連結端子30a、30b、30cと、電解液(図示せず)と、を備えている。電池モジュール100は、ここではリチウムイオン二次電池である。フィルム外装体10および電極体群40は、ここではさらに筐体としてのモジュールケース60に収容されている。電池モジュール100は、モジュールケース60の外側から電極体群40を拘束する拘束部材をさらに備えていてもよい。
【0021】
なお、以下の説明において、図面中の符号X、Y、Zは、電極体20a、20b、20c、20dの短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、厚み方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電極体20a、20b、20c、20dの配置形態を何ら限定するものではない。
【0022】
フィルム外装体10は、電極体群40、すなわち、電極体20a、20b、20c、20dと、連結端子30a、30b、30cと、電解液と、を収容する容器である。フィルム外装体10は、ここでは長辺方向Yに延びて電極体群40の全体を覆う1枚の袋状のフィルムである。フィルム外装体10は、ここでは深絞りによって電極体20a、20b、20c、20dの外形にならった複数の膨出部が連続的に成形された深絞り成形品である。フィルム外装体10の内部は、シール部50で仕切られている。フィルム外装体10の内部には、シール部50で仕切られた複数の独立した電極体収容空間が区画されている。ここでは4つの電極体収容空間が区画されている。4つの電極体収容空間には、電極体20a、20b、20c、20dが、それぞれ電解液とともに液密に封止されている。
【0023】
フィルム外装体10は、絶縁性と使用する電解液に対する耐性とを有する。フィルム外装体10は、ここでは、少なくとも内側の面(すなわち、電極体20a、20b、20c、20dおよび連結端子30a、30b、30cと対向する側の面)が、熱溶着を可能にする樹脂層で構成されている。フィルム外装体10は、1層の樹脂層からなる単層構造であってもよいし、2層以上の樹脂層を有する多層構造であってもよい。樹脂層は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されている。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)や、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸ポリエステル等の酸変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。フィルム外装体10は、複数の樹脂層が積層されてなる多層構造であることが好ましい。また、複数の樹脂層の間には、対向する2つの樹脂層を相互に接着するための接着層を備えていてもよい。積層フィルムは、ポリオレフィン樹脂層(例えばPP層)と、ポリエステル樹脂層(例えばPET層)と、を有することが好ましい。
【0024】
積層フィルムは、2つの樹脂層と、2つの樹脂層の間に配置された金属層と、を有するラミネートフィルムであってもよい。ラミネートフィルムは、例えば従来公知のラミネート型電池に用いられるようなフィルムと同様でよく、特に限定されない。ラミネートフィルムは、例えば、内側から、第1の樹脂層と、金属層と、第2の樹脂層と、をこの順に含んで構成されていてもよい。第1の樹脂層は、熱溶着を可能にするための層(シーラント層)である。第1の樹脂層は、例えば、上記したような熱可塑性樹脂で構成されている。第1の樹脂層は、PP層であることが好ましい。金属層は、気密性を高めるための層である。金属層は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料で構成されている。金属層は、アルミニウム層であることが好ましい。第2の樹脂層は、耐久性および耐衝撃性を高めるための層(保護層)である。第2の樹脂層は、表層(ラミネートフィルムの最外層)を構成していてもよい。第2の樹脂層は、例えば、上記したような熱可塑性樹脂で構成されている。第2の樹脂層は、PET層であることが好ましい。樹脂層と金属層との間には、2つの層を相互に接着するための接着層を備えていてもよい。また、第2の樹脂層の上には、さらに他の層を備えていてもよい。
【0025】
電極体20a、20b、20c、20dは、独立した4つの電極体収容空間に、電解液とともにそれぞれ収容されている。電極体20a、20b、20c、20dは、連結端子30a、30b、30cを介して直列に接続されている。電極体の数は、典型的には偶数個である。電極体の数は、ここでは4個である。ただし、電極体は2個以上(複数)であればよく、特に限定されない。
図1に示すように、電極体20a、20b、20c、20dは、それぞれ断面が方形状(典型的には矩形状)である。電極体20a、20b、20c、20dは、それぞれ一対の平坦な面(幅広面)を有している。電極体20a、20b、20c、20dは、互いの平坦な面同士が対向するように、厚み方向Zに沿って配置され、モジュール化されている。
図1では、電極体20b、20dは、電極体20a、20cに対して上下を逆転させた状態で配置されている。電極体20a、20b、20c、20dは、厚み方向Zに略平行に並んでいる。電極体20a、20b、20c、20dは、拘束部材により、厚み方向Zから拘束圧を印加されていることが好ましい。
【0026】
電極体20a、20b、20c、20dの構成は従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。なお、以下では電極体20aを例として詳しく説明するが、電極体20b、20c、20dについても同様の構成とすることができる。電極体20aは、シート状の正極(正極シート)およびシート状の負極(負極シート)を備えている。正極シートおよび負極シートは、ここではそれぞれ複数枚である。電極体20aは、例えば、方形状(典型的には矩形状)の正極シートと、方形状(典型的には矩形状)の負極シートとが、厚み方向Zに絶縁された状態で積層されてなる積層電極体である。ただし、電極体20aは、例えば、帯状の正極シートと帯状の負極シートとが絶縁された状態で積層され、長手方向に捲回されてなる捲回電極体であってもよい。
【0027】
正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体の上に固着され、正極活物質を含む正極活物質層(図示せず)と、を有する。正極活物質は、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物である。正極集電体は、導電性金属で構成されている。正極集電体は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。正極集電体は、アルミニウムを主体(典型的には最も質量の多い成分、好ましくは50質量%以上を占める成分。以下同じ。)として構成されていてもよい。正極集電体は、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。正極集電体は、長辺方向Yの一方の端部に、正極活物質層が形成されていない部分(正極集電体露出部)を有する。
【0028】
負極は、例えば、負極集電体と、負極集電体の上に固着され、負極活物質を含む負極活物質層(図示せず)と、を有する。負極活物質は、例えば、黒鉛等の炭素材料である。負極集電体は、典型的には正極集電体とは異なる導電性金属で構成されている。負極集電体は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。負極集電体は、銅を主体として構成されていてもよい。負極集電体は、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。負極集電体は、長辺方向Yの一方の端部に、負極活物質層が形成されていない部分(負極集電体露出部)を有する。
【0029】
電極体20a、20b、20c、20dは、それぞれ、正極集電部22と、負極集電部24と、を有している。正極集電部22は、複数枚の正極シートの正極集電体露出部が長辺方向Yの一方の端部に積層されて構成されている。電極体20aの正極集電部22には、正極外部端子62の一方側(第1の金属31の側)の端部が接続されている。電極体20b、20c、20dの正極集電部22には、連結端子30a、30b、30cの一方側(第1の金属31の側)の端部が接続されている。負極集電部24は、複数枚の負極シートの負極集電体露出部が長辺方向Yの他方の端部に積層されて構成されている。ここでは、長辺方向Yにおいて、負極集電部24が正極集電部22の反対側に配置されている。電極体20a、20b、20cの負極集電部24には、連結端子30a、30b、30cの他方側(第2の金属32の側)の端部が接続されている。電極体20dの負極集電部24には、負極外部端子64の他方側(第2の金属32の側)の端部が接続されている。
【0030】
電解液は、独立した4つの電極体収容空間に、電極体20a、20b、20c、20dとともにそれぞれ収容されている。電解液は、従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、カーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体20a、20b、20c、20dと一体化されていてもよい。
【0031】
連結端子30a、30b、30cは、電極体20a、20b、20c、20dを電気的に接続する導電部材である。具体的には、電極体20a、20b、20c、20dの正極集電部22と負極集電部24とを直列に接続する部材である。連結端子30a、30b、30cは、正極集電部22および負極集電部24に接合(例えば溶接接合)されている。連結端子の数は、例えば電極体の個数に基づいて決定することができる。連結端子の数は、典型的には(電極体の数-1)個であり、ここでは3個である。
図1に示すように、連結端子30a、30b、30cは、電極体20a、20b、20c、20dの平坦な面同士が対向するように折り曲げられている。連結端子30a、30b、30cは、断面視においてコの字状である。ただし、連結端子30a、30b、30cの断面形状は、例えばV字状やU字状等であってもよい。
【0032】
連結端子30a、30b、30cは、導電性金属で構成されている。なお、以下では連結端子30aを例として詳しく説明するが、連結端子30b、30cについても同様の構成とすることができる。連結端子30aは、板状である。連結端子30aは、折り曲げ可能な可撓性を有する。連結端子30aの板厚は、典型的にはモジュールケース60の板厚よりも薄い。連結端子30aの板厚は、正極集電体および/または負極集電体としての金属箔よりも厚くてもよい。連結端子30aは、第1の金属31と、第1の金属とは種類が異なる第2の金属32と、が接合されたクラッド材で構成されている。
【0033】
第1の金属31の側の端部は、正極集電部22に接合されている。第2の金属32の側の端部は、負極集電部24に接合されている。第1の金属31は、正極集電体と同種の金属である。第1の金属31は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金であってもよい。第2の金属32は、負極集電体と同種の金属である。第2の金属32は、例えば、銅または銅合金であってもよい。また、銅または銅合金の上には、ニッケル等の金属が被覆されたメッキ層(例えばニッケルメッキ層)が形成されていることが好ましい。
【0034】
連結端子30a、30b、30cのフィルム外装体10と対向する側の面には、シーラントフィルム51、52が一体化されている。これにより、連結端子30a、30b、30cとしてクラッド材を用いる場合にも、シール部50を形成する際の加工不良が生じにくくなる。シーラントフィルム51、52は、正極集電部22がフィルム外装体10と直接接触しないように連結端子30a、30b、30cを覆っている。シーラントフィルム51、52は、典型的には連結端子30a、30b、30cに溶着されている。ただし、シーラントフィルム51、52は、接着剤等を用いて貼り付けられていてもよい。シーラントフィルム51、52は、対向するフィルム外装体10と接合(例えば溶着)されている。これにより、長辺方向Yの両端部にシール部50が形成されている。
【0035】
シーラントフィルム51は、クラッド材の第1の金属31の表面に設けられている。シーラントフィルム52は、第2の金属32の表面に設けられている。シーラントフィルム51は、第1の金属31とフィルム外装体10との間に介在している。シーラントフィルム52は、第2の金属32とフィルム外装体10との間に介在している。シーラントフィルム51、52は、ここでは第1の金属31と第2の金属32と境界33(
図2参照)の周縁に設けられている。言い換えれば、第1の金属31と第2の金属32との境界33を避けて形成されている。ただし、他の実施形態において、第1の金属31と第2の金属32との境界33を覆うように設けられていてもよい。
【0036】
シーラントフィルム51、52は、1層の樹脂層からなる単層構造であってもよいし、2層以上の樹脂層を有する多層構造であってもよい。樹脂層は、使用する電解液に対する耐性を有し、かつ、フィルム外装体10の樹脂層と同程度の温度で溶融する樹脂材料からなるとよい。また、フィルム外装体10の樹脂層および連結端子30aに対して好適な接着性を発揮するものあるとよい。シーラントフィルム51、52を構成する樹脂材料としては、例えば、フィルム外装体10の樹脂層を構成し得るものとして例示した熱可塑性樹脂が挙げられる。シーラントフィルム51、52は、ポリオレフィンシートであってもよい。
【0037】
シール部50は、平面視において連結端子30a、30b、30cと重なる位置に設けられている。シール部50は、フィルム外装体10の内部を仕切り、複数の独立した電極体収容空間を区画している。シール部50は、電極体収容空間の長辺方向Yの両端部を封止している。シール部50は、電極体収容空間を液密に封止している。シール部50は、連結端子30a、30b、30cに設けられたシーラントフィルム51、52が、それぞれフィルム外装体10と接合されることにより構成されている。ここでは、第1の金属31がシーラントフィルム51を介してフィルム外装体10と接合され、かつ、第2の金属32が、シーラントフィルム52を介してフィルム外装体10と接合されることにより構成されている。シール部50は、例えば、シーラントフィルム51、52とフィルム外装体10とが溶着(例えば熱溶着)された溶着部である。境界33(
図2参照)では、フィルム外装体10が直接対向している。シール部50は、境界33が外気や電解液と接触することを防止している。
【0038】
正極外部端子62は、フィルム外装体10の内部で、電極体群40の一方の端部(詳しくは、電極体20aの正極集電部22)に接続されている。負極外部端子64は、フィルム外装体10の内部で、電極体群40の他方の端部(詳しくは、電極体20dの負極集電部24)に接続されている。正極外部端子62および負極外部端子64は、それぞれフィルム外装体10の内部から外部へと延びている。正極外部端子62および負極外部端子64の一端部は、モジュールケース60の外部に延出されている。
【0039】
正極外部端子62および負極外部端子64は、従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。正極外部端子62および/または負極外部端子64は、1種類の金属で構成されていてもよいし、例えば上記したようなクラッド材で構成されていてもよい。正極外部端子62および/または負極外部端子64がクラッド材で構成されている場合、境界33は、いずれもフィルム外装体10に覆われ、外気や電解液には曝されていないことが好ましい。正極外部端子62および/または負極外部端子64は、連結端子30a、30b、30cと同じ部材であってもよい。正極外部端子62は、例えば、正極集電部22に接続される側がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、外部へと延出される側が異種の金属(例えば、銅または銅合金)からなることが好ましい。負極外部端子64は、例えば、負極集電部24に接続される側が銅または銅合金からなり、外部へと延出される側が異種の金属(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金)からなることが好ましい。
【0040】
<電池モジュール100の製造方法>
電池モジュール100は、隣り合う電極体20a、20b、20c、20d同士が、連結端子30a、30b、30cで直列に接続されていることによって特徴付けられる。その他の構成は従来の電池と同様であってよい。このような電池モジュール100は、例えば、接続工程と、収容工程と、折曲工程と、を含む製造方法によって製造することができる。ただし、任意の段階で他の工程を含んでもよい。
【0041】
接続工程では、まず、上記したような電極体20a、20b、20c、20dと、連結端子30a、30b、30cと、正極外部端子62と、負極外部端子64と、を用意する。正極外部端子62と、負極外部端子64は、ここでは連結端子30a、30b、30cと同様に、第1の金属31と第2の金属32とが接合されたクラッド材から構成されている。
図2は、接続工程を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図2に示す電極体20a、20b、20c、20dは、平面視において矩形状である。
【0042】
次に、
図2、
図3に示すように、電極体20a、20b、20c、20dを、一直線上に並べて配置する。電極体20a、20b、20c、20dは、ここでは長辺方向Y(直列方向)に沿って一列に並べられている。このとき、電極体20b、20c、20dの正極集電部22を、電極体20a、20b、20cの負極集電部24に対向させる。次に、対向する正極集電部22と負極集電部24との間を掛け渡すように、連結端子30a、30b、30cを配置する。このとき、連結端子30a、30b、30cの第1の金属31の側の端部を正極集電部22の上に載せ、第2の金属32の側の端部を負極集電部24の上に載せる。また、電極体20aの正極集電部22には正極外部端子62を配置し、電極体20dの負極集電部24には負極外部端子64を配置する。そして、正極集電部22を連結端子30a、30b、30cおよび正極外部端子62と接合する。また、負極集電部24と連結端子30a、30b、30cおよび負極外部端子64とを接合する。なお、これらの接合方法は特に限定されず、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接接合によって行うことができる。
【0043】
なお、連結端子30a、30b、30cの表面には、それぞれシーラントフィルム51、52が一体化されている。シーラントフィルム51、52は、例えば、樹脂製のフィルムを連結端子30a、30b、30cの表面に溶着(例えば熱溶着)することによって設けられている。
図2に示すシーラントフィルム51、52は、平面視において矩形状である。短辺方向Xにおいて、シーラントフィルム51の長さは正極集電部22よりも長く、シーラントフィルム51の長さは負極集電部24よりも長い。
図3に示すように、シーラントフィルム51、52は、厚み方向Zの全域にわたって正極集電部22および負極集電部24を覆っている。
以上のようにして、電極体20a、20b、20c、20dが、連結端子30a、30b、30cを介して直列に接続された第1合体物を作製することができる。
【0044】
収容工程では、まず、上記したようなフィルム外装体10と、電解液と、を用意する。
図4は、収容工程を模式的に示す
図3対応図である。
図4に示すフィルム外装体10は、長辺方向Yに長い矩形状の2枚の樹脂フィルム(シート)11、12で構成されている。樹脂フィルム11、12は、それぞれ、電極体20a、20b、20c、20dの外形にならった形状を有し連続的に成形された複数の膨出部を有する。このような形状の樹脂フィルム11、12は、例えば樹脂製のフィルムを深絞り成形することによって作製することができる。
【0045】
次に、
図4に示すように、接続工程で作製した第1合体物を、2枚の樹脂フィルム11、12で厚み方向Zに挟み込む。そして、シーラントフィルム51、52と樹脂フィルム11、12とを溶着して、シール部50を形成する。シール部50は、例えば、シーラントフィルム51、52およびフィルム外装体10を溶着装置(例えばヒートシーラー)で挟み込んで加熱する熱溶着によって形成することができる。これにより、電極体20a、20b、20c、20dの長辺方向Yの両端部が封止され、電極体収容空間が区画される。
【0046】
収容工程ではまた、電極体20a、20b、20c、20dにそれぞれ電解液を含浸させたのち、短辺方向Xの両端部の縁に沿って、対向する樹脂フィルム11、12を溶着する。これにより、電極体収容空間に、電極体20a、20b、20c、20dが、それぞれ電解液とともに液密に封止される。
以上のようにして、電極体20a、20b、20c、20dと連結端子30a、30b、30cとがフィルム外装体10に収容された第2合体物を作製することができる。
【0047】
折曲工程では、連結端子30a、30b、30cの第1の金属31の部分と第2の金属32の部分とをそれぞれ折り曲げ、電極体20a、20b、20c、20dの平坦な面同士を対向させる。連結端子30a、30b、30cの折り曲げは、境界33を避けて行うとよい。すなわち、シーラントフィルム51、52の設けられた部分と境界33との間を折り曲げるとよい。これにより、電極体20a、20b、20c、20dが厚み方向Zに略平行に並べられる。
以上のようにして、電池モジュール100を製造することができる。
【0048】
電池モジュール100は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモータ用の高出力動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 フィルム外装体
20a、20b、20c、20d 電極体
22 正極集電部
24 負極集電部
30a、30b、30c 連結端子(クラッド材)
31 第1の金属
32 第2の金属
33 境界
50 シール部
51、52 シーラントフィルム
62 正極外部端子
64 負極外部端子
100 電池モジュール