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特開2022-101735石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法
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  • 特開-石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法 図1
  • 特開-石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101735
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/26 20060101AFI20220630BHJP
   C03C 1/02 20060101ALI20220630BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B03C1/26
C03C1/02
B03C1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215977
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】桑田 博
(72)【発明者】
【氏名】香月 博士
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB02
4G062CC02
4G062DA08
4G062MM02
4G062NN40
(57)【要約】
【課題】石英ガラス原料粉に混入した鉄系異物等磁性体粉を除去する、石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法を提供する。
【解決手段】石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を、磁石部によって吸着、除去する石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置1において、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去する前記磁石部Mが、磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石2と、前記棒状永久磁石2の表面を覆う、動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料からなる熱収縮チューブ3と、前記熱収縮チューブで覆われた複数本の棒状永久磁石が、所定の間隔おいて平行に保持される保持部材4、5と、を備え、前記棒状永久磁石の間を石英ガラス原料粉が通過することにより、前記磁石部が石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去することを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を、磁石部によって吸着、除去する石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置において、
石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去する前記磁石部が、
磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石と、
前記棒状永久磁石の表面を覆う、動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料からなる熱収縮チューブと、
前記熱収縮チューブで覆われた複数本の棒状永久磁石が、所定の間隔おいて平行に保持される保持部材と、
を備え、
前記棒状永久磁石の間を石英ガラス原料粉が通過することにより、前記磁石部が石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去することを備えることを特徴とする石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置。
【請求項2】
前記熱収縮チューブの樹脂材料が、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、もしくはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のいずれかからなり、
前記樹脂材料の厚さが300μm以上600μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置。
【請求項3】
前記石英ガラス原料粉の平均粒子径が50μm以上300μm以下であり、前記複数本の棒状永久磁石の所定間隔が6mm以上7mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法であって、
少なくとも内表面が非金属製の容器内に石英ガラス原料粉を収容した後、
前記石英ガラス原料粉を、前記容器から前記磁石部に落下させ、前記磁石部が石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着することにより、磁性体粉を除去し、
前記磁性体粉が除去された、前記磁石部から落下する石英ガラス原料粉を、少なくとも内表面が非金属製の容器に収納することを特徴とする磁性体粉除去方法。
【請求項5】
前記石英ガラス原料粉の平均粒子径が50μm以上300μm以下であり、前記複数本の棒状永久磁石の所定間隔が6mm以上7mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の磁性体粉除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、石英ガラス、例えば、光学分野や半導体分野で使用される石英ガラス製品の製造に使われる石英ガラス原料(珪石、珪砂)粉には、長さ(径)30μmから500μm程度の異物が混入しており、それらは主に鉄系異物であることが知られている。
この鉄系異物が石英ガラス製品中の黒点の発生原因の一つと考えられ、この鉄系異物を除くために、従来から浮遊選鉱、磁力選鉱、酸処理などの純化処理が行われている。
【0002】
例えば、特許文献1では、珪石又は珪砂の粉砕物を磁力選鉱し、次いで塩酸処理し、浮遊選鉱した後、フッ酸処理を施し得られた粒子を仮焼し、さらに磁力選鉱する、珪石又は珪砂の粉砕物の純化処理が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-153542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、鉄系異物を除くために石英ガラス原料粉に対して、浮遊選鉱、磁力選鉱、酸処理、熱処理あるいはこれら処理を組み合わせた、純化処理が行われている。
しかしながら、前記浮遊選鉱工程、磁力選鉱工程、酸処理工程、熱処理工程等の純化処理の工程間を、石英ガラス原料粉が搬送される際、SUS製の配管あるいはSUS製の容器が用いられる。
そのため、石英ガラス原料粉の最終原料粉中に、SUS製の配管あるいはSUS製の容器から鉄系異物等の磁性体粉が混入することがあり、特に、長さ(径)30μmから500μmの比較的大きな鉄系異物等の磁性体粉が混入する虞があった。
【0005】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、石英ガラス原料粉に混入した鉄系異物等磁性体粉を除去する、石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかる石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置は、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を、磁石部によって吸着、除去する石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置において、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去する前記磁石部が、磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石と、前記棒状永久磁石の表面を覆う、動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料からなる熱収縮チューブと、前記熱収縮チューブで覆われた複数本の棒状永久磁石が、所定の間隔おいて平行に保持される保持部材と、を備え、前記棒状永久磁石の間を石英ガラス原料粉が通過することにより、前記磁石部が石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去することを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置にあっては、このように構成されているため、熱収縮チューブで覆われた複数本の棒状永久磁石の間を、石英ガラス原料粉が通過(落下)することにより、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉が、棒状永久磁石(磁石部)に吸着され、磁性体粉が除去される。
しかも、磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石が用いられるため、表面を樹脂製熱収縮チューブで被覆した状態においても、長さ(径)30μmから500μmの鉄分等磁性体粉を確実に補足・除去することができる。
【0008】
更に、前記棒状永久磁石は、樹脂材料からなる熱収縮チューブにより被覆されているため、石英ガラス原料粉が永久磁石と接触することによる、永久磁石からの異物混入および純度汚染を防止することができる。
加えて、熱収縮チューブとして、動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料が用いられるため、落下する石英ガラス原材粉との接触に起因する樹脂材料からの異物混入を防止できる。
尚、この熱収縮チューブの樹脂材料からの異物は、石英ガラス原材粉を溶融し石英ガラスとした際の気泡含有の要因となるため、前記異物の混入は好ましくない。
【0009】
ここで、前記熱収縮チューブの樹脂材料が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、もしくはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のいずれかからなり、前記樹脂材料の厚さが300μm以上600μm以下である、ことが望ましい。
【0010】
上記熱収縮チューブの樹脂材料は、石英ガラス原材粉の落下に対する耐摩耗性を有すると共に、100℃前後の耐熱性を有する。これにより、棒状永久磁石からの異物混入を回避することができる。また、石英ガラス原材粉が前工程において、100℃前後の温度を有していても、引き続いて、この磁性体粉除去装置を使用でき、作業効率上、好ましい。
加えて、前記樹脂材料の厚さが300μm以上600μm以下であるため、棒状永久磁石による磁性体粉のより確実の補足と、棒状永久磁石からの異物混入を回避することができる。
【0011】
また、前記石英ガラス原料粉の平均粒子径が50μm以上300μm以下であり、前記複数本の棒状永久磁石の所定間隔が6mm以上7mm以下であることが望ましい。
このように、前記平均粒子径で、かつ、前記棒状永久磁石の配置間隔とすることにより、前記石英ガラス原料粉が適度な落下流動性を保持しつつ、より確実に磁性体粉を補足することができる。
【0012】
本発明は上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法は、上記石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法であって、少なくとも内表面が非金属製の容器内に石英ガラス原料粉を収容した後、前記石英ガラス原料粉を、前記容器から前記磁石部に落下させ、前記磁石部が石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着することにより、磁性体粉を除去し、前記磁性体粉が除去された、前記磁石部から落下する石英ガラス原料粉を、少なくとも内表面が非金属製の容器に収納することを特徴とする。
【0013】
このように、少なくとも内表面が非金属製の容器から、石英ガラス原料粉を磁石部に落下させ、更に、少なくとも内表面が非金属製の容器に石英ガラス原料粉を収容するため、鉄系異物等磁性体粉の異物混入を限りなく少なくできる。
尚、少なくとも内表面が非金属製の容器としては、例えば、内表面がテフロンコートSUS製容器(テフロンは登録商標)、あるいは石英ガラス製容器等を用いることができる。
【0014】
ここで、前記石英ガラス原料粉の平均粒子径が50μm以上300μm以下であり、前記複数本の棒状永久磁石の所定間隔が6mm以上7mm以下であることが望ましい。
このように、前記平均粒子径で、かつ、前記棒状永久磁石の配置間隔とすることにより、前記石英ガラス原料粉が適度な落下流動性を保持しつつ、より確実に磁性体粉を補足することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、石英ガラス原料粉に混入した鉄系異物等磁性体粉を除去する、石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明にかかる石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置の一実施形態を示す平面図である。
図2図2は、本発明にかかる磁性体粉除去方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置、及びこの磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法の一実施形態を、図1図2に基づいて説明する。
図1に示すように、石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置1は、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去する磁性体粉除去装置であって、磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石2と、前記棒状永久磁石2の表面を覆う、動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料からなる熱収縮チューブ3とを備えている。
尚、石英ガラス原料粉の平均粒子径は50μm以上300μm以下が好ましい。即ち、石英ガラス原料粉の平均粒子径が50μm未満の場合、石英ガラス原料粉と熱収縮チューブ3の連続的接触により静電気が生じ、微細な石英ガラス原料粉が、棒状永久磁石による磁性体粉の補足を阻害する虞があり、好ましくない。
【0018】
また、前記熱収縮チューブ3で覆われた棒状永久磁石2は、所定の間隔tおいて平行に配置され、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着、除去する磁石部Mが構成されている。尚、棒状永久磁石2の長さ方向両端は、絶縁性の保持部材4、5に固定される。
即ち、この磁性体粉除去装置1は、前記熱収縮チューブ3で覆われた複数本の棒状永久磁石2の間を、石英ガラス原料粉が通過(落下)することにより、石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を、棒状永久磁石2が吸着し、磁性体粉を除去するように構成されている。
【0019】
前記棒状永久磁石2は、磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石であり、この棒状永久磁石磁束密度の測定は、JIS-C2501:2019に基づいて測定される磁束密度である。
ここで、磁束密度が8000ガウス未満では、表面を樹脂製熱収縮チューブで被覆した状態で、長さ(径)30μmから500μmの鉄分等磁性体粉を確実に補足・除去することが困難なため、磁束密度が少なくとも8000ガウスの棒状永久磁石であることが好ましい。特に、10000ガウス以上の棒状永久磁石であることがより好ましい。
【0020】
この棒状永久磁石2は、長さ方向に垂直の断面が円形、矩形いずれでも良いが、石英ガラス原料粉の落下流動性を確保しつつ、磁性体粉の確実な補足を行うためには、円形が好ましく、その直径20mm~35mm、長さ80mm~200mmが好ましい。
また、前記複数本の棒状永久磁石2の間隔tは6mm以上7mm以下とすることが好ましい。上記平均粒子径で、かつ、前記棒状永久磁石の間隔tとすることにより、石英ガラス原料粉の適度な落下流動性を保持しつつ、より確実な磁性体粉の補足を実現できる。
【0021】
前記棒状永久磁石2は、樹脂材料からなる熱収縮チューブ3により被覆されている。
このように、棒状永久磁石2は熱収縮チューブ3により被覆されているため、石英ガラス原料粉が棒状永久磁石2自体に直接接触することによる、棒状永久磁石2からの異物混入および純度汚染を防止することができる。
【0022】
前記熱収縮チュー3ブは、樹脂組成物をチューブ状に押出成形したもので、且つ加熱により所定径に収縮できるチューブ状成形品である。
前記熱収縮チューブ3は、上記樹脂の軟化点以上の温度に加熱した状態で、チューブ内に圧縮空気を導入する等の方法により、所定の外径に膨張した後、冷却して形状に固定する。そして、棒状永久磁石2を熱収縮チューブ内に配置し、80℃迄加熱し密着させ、冷却する。これにより、棒状永久磁石2と熱収縮チューブ3を密着させることができる。その後、熱収縮チューブ3を被覆させた棒状永久磁石2を前記絶縁性の保持部材4、5に固定させる。
このように、棒状永久磁石2と熱収縮チューブ3が密着し、両者の間に空隙(隙間)が形成され難いため、棒状永久磁石2による磁性体粉の補足能力が劣る領域(空隙が形成された領域)が生じ難く、より確実な補足を実現できる。
【0023】
ここで、樹脂材料の動摩擦係数とは、JIS-K6935-2:1999「プラスチック-ふっ素ポリマーのディスパージョン,成形用及び押出用材料-第2部:試験片の作り方及び諸特性の求め方」に基づいて測定された機械的特性である。
【0024】
この動摩擦係数が小さい程、落下する石英ガラス原料粉との接触による樹脂材料からの異物混入を防止できるため、動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料を用いることが好ましい。
なお、前記樹脂材料としては、動摩擦係数を0.1以下とし、かつショア硬さ(JIS-K7215:1986)をD50以上とすることがより好ましい。これにより、石英ガラス原料粉中への異物混入をより確実に防止できるとともに、より高い耐久性により前記樹脂材料の交換頻度は低減できる。
樹脂材料(熱収縮チューブ3)からの異物は、石英ガラス原料粉を溶融し、石英ガラスとした際の気泡含有の要因となるため、前記異物の混入は好ましくない。
【0025】
前記熱収縮チューブ3の樹脂材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、もしくはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のいずれかとするのが好ましい。
これにより、石英ガラス原料粉の落下に対する、より高い耐摩耗性を付与することができる。
【0026】
また、当該磁性体粉除去の前工程において、高温の熱処理を行った場合に、石英ガラス原料粉を常温まで冷却することなく、100℃前後の所定の温度にて当該磁性体粉除去を行うことができる。
また、石英ガラス原料粉を常温まで冷却しないことによって、石英ガラス原料粉が大気常温下の水分で凝集し、磁性体粉除去の精度が低下することを回避でき、また、冷却時間が省略されることで製造工程のリードタイムの短縮を図ることができる。
【0027】
前記熱収縮チューブ3の樹脂材料の厚さが300μm以上600μm以下とすることが好ましい。これにより、棒状永久磁石2による磁性体粉のより確実の補足と、棒状永久磁石2からの異物混入を回避することができる。
また、熱収縮チューブ3の樹脂材料の厚さが300μm以上600μm以下とすることにより、この樹脂材料(熱収縮チューブ3)が経時劣化等した場合に、容易に樹脂材料を切断・剥離し、交換することができる。
【0028】
次に、本発明に係る磁性体粉除去方法の一実施形態を説明する。
図2に示すように、この磁性体粉除去方法は、前記した石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置を用いた磁性体粉除去方法であって、少なくとも内表面が非金属製の容器内6に石英ガラス原料粉を収容した後、前記石英ガラス原料粉を、前記容器6から前記磁石部Mに落下させ、前記磁石部Mが石英ガラス原料粉に混入する磁性体粉を吸着することにより、磁性体粉を除去し、前記磁性体粉が除去された、前記磁石部Mから落下する石英ガラス原料粉を、少なくとも内表面が非金属製の容器7に収納することを特徴としている。
【0029】
本発明係る磁性体粉除去方法は、浮遊選鉱、磁力選鉱、酸処理、熱処理の任意の組合せからなる精製工程を、SUS等の配管、容器での搬送手段を用いて行った後の石英ガラス原料粉の最終処理として行われる。そして、この磁性体粉除去方法を実施することにより、前記配管あるいは容器から混入する鉄系異物等磁性体粉を限りなく少なくするものである。
また、新しい石英ガラス原料粉を装置に投入する際は、それ以前に棒状永久磁石に付着した磁性体粉が混入する虞があるため、吸引力を向上させるために先端を狭めたノズルを装着させた吸引機にて除去する。
尚、本発明係る磁性体粉除去方法は、前記したような精製工程の後の最終処理として行うのみならず、精製工程中において実施しても構わない。
【0030】
ここで、前記石英ガラス原料粉の平均粒子径は、50μm以上300μm以下であり、前記複数本の棒状永久磁石2の間隔tは、6mm以上7mm以下である。
この平均粒子径の測定は、JIS Z 8819-2: 2001に基づくレーザ回折/散乱法による測定装置(装置名:CILAS 1064L)にて行ったものである。
尚、石英ガラス原料粉の平均粒子径が50μm未満では、石英ガラス原料粉と前記熱収縮チューブ3の連続的接触により静電気が生じ、微細な石英ガラス原料粉が棒状永久磁石2による磁性体粉の補足を阻害する虞がある。
【0031】
そして、上記平均粒子径で、かつ、棒状永久磁石2を前記間隔tとすることにより、石英ガラス原料粉が適度な落下流動性を保持しつつ、より確実に磁性体粉を補足することができる。
【実施例0032】
(実施例1)
次の各工程により、石英ガラス原料粉の製造を行った。まず、珪石を水洗し、粉砕および分級した。分級した粉砕粉を湿式にて1000~1500ガウスで磁力選鉱を行った。その後、以下の浮遊選鉱(1)、(2)、(3)により精鉱を行った。
(1)長石類の除去を目的に、磁選後の粉砕粉を弗化水素酸(4~5%)とアミン混液(アセタン、ケロシンおよびパイン油からなる混合液)とのpH2.0~3.5の溶液に浸漬し、水洗した。
(2)長石類を除去後、濃度10%前後の硫酸とアミン混液とからなるpH2.0~3.5の溶液に浸漬し、水洗することで酸化鉄および酸化チタン類を除去した。
(3)酸化鉄および酸化チタン類を除去後、最後に雲母類を除去するために、濃度10%前後の硫酸とアミン混液とからなるpH2.0~3.5の溶液に浸漬し、水洗した。
次いで、磁力選鉱および浮遊選鉱を経て精鉱された原料粉を600~1200℃で熱処理した後、弗化水素酸に浸漬し、水洗および熱処理による乾燥を行うことで石英ガラス原料粉を製造した。
得られた石英ガラス原料粉の平均粒子径は150μmであった。なお、各工程間はSUS製配管及び容器を用いて移送、貯留を行った。
【0033】
続いて、磁束密度が8500ガウスで、直径25mm、長さ100mmの永久磁石の表面に、加熱、冷却後、動摩擦係数が0.3、ショア硬さがD51、厚さが500μmとなるテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる熱収縮チューブを配置し、80℃迄加熱し密着させ、冷却した。
これを三本用意し、6mm間隔で平行配列させ、これらの長さ方向両端をポリプロピレン製角柱治具に固定することで、磁性体粉除去装置を作成した。
そして、内表面がテフロンコートされたSUS製容器の開口部の上方に、磁性体粉除去装置を配置し、この磁性体粉除去装置の上方から、前記製造方法で精製・製造され前記石英ガラス製容器(全てが石英ガラスからなる容器)に貯蔵された石英ガラス原料粉20kgを落下させた。そして、内表面がテフロンコートされたSUS製容器に落下、収容した石英ガラス原料粉の不純物を測定した。
測定は、内表面がテフロンコートされたSUS製容器に収納された石英ガラス原料粉からランダムにn=10のサンプリングを行い、サンプルを弗化水素酸と硫酸からなる酸性溶液で溶解し、ICP発光分析装置にて純度分析を行った。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
磁束密度が8500ガウスで、直径25mm、長さ100mmの永久磁石を三本用意し、6mm間隔で平行配列させ、これらの長さ方向両端をポリプロピレン製角柱治具に固定することで、磁性体粉除去装置を作成した。
内表面がテフロンコートSUS製容器の開口部の上方に磁性体粉除去装置を配置し、その上方から、石英ガラス製容器(全てが石英ガラスからなる容器)に貯蔵された、実施例1で精製・製造された石英ガラス原料20kgを落下させた。
そして、実施例1と同様に、内表面がテフロンコートされたSUS製容器に収納された石英ガラス原料粉からランダムにn=10のサンプリングを行い、純度分析を行った。結果を表1に示す。
尚、表1中、Aveは平均値、σは標準偏差、Maxは最大値を意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1の場合には、永久磁石からのFe、Cu、Cr及びNiの磁性異物の混入が避けられることが確認された。
【0037】
(比較例2)
磁束密度が7500ガウスで、直径25mm、長さ100mmの永久磁石の表面に動摩擦係数が0.47の市販のポリスチレン(PS)からなるチューブで覆った。
これを三本用意し、6mm間隔で平行配列させ、これらの長さ方向両端をポリプロピレン製角柱治具に固定することで、磁性体粉除去装置を作成した。
内表面がテフロンコートSUS製容器の開口部の上方に磁性体粉除去装置を配置し、その上方から、実施例1精製・製造された、前記石英ガラス製容器(全てが石英ガラスからなる容器)に貯蔵された石英ガラス原料20kgを落下させた。
【0038】
上記実施例1及び比較例2による磁性体粉除去を行った後の、3本の永久磁石に付着した30μm径を超える黒色異物の数を計測した。また、磁性体分除去後の石英ガラス原料粉をランダムにサンプリングして、樹脂材料からの異物混入がないか確認を行った。
実施例1の方法で10回行ったところ、各回、30~50個(30μm~500μm径)の黒色異物が確認された。これに対し、比較例2の方法では、各回10~20個(50μm~350μm径)の黒色異物が確認された。また、比較例2の方法のみ磁性体粉除去後の石英ガラス原料に樹脂材料からの異物混入が確認された。
【0039】
実施例1と比較例2を比較すると、棒状永久磁石とチューブの間に空隙が形成され難い熱収縮チューブの方が、より確実に磁性体粉の補足を実現できる。また、この動摩擦係数が0.3以下の樹脂材料を用いることにより、落下する石英ガラス原料粉との接触による樹脂材料からの異物混入を抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0040】
1 石英ガラス原料粉の磁性体粉除去装置
2 棒状永久磁石
3 熱収縮チューブ
4 保持部材
5 保持部材
6 内表面がテフロンコートSUS製容器(少なくとも内表面が非金属製の容器)
7 石英ガラス製容器(少なくとも内表面が非金属製の容器)
M 磁石部
t 棒状磁石の間隔
図1
図2