(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101745
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】放水ノズルのアース用ケーブル及び感電防止放水ノズル
(51)【国際特許分類】
A62C 31/02 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A62C31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215997
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】村田 順一
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳
(72)【発明者】
【氏名】津久井 正光
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189KD00
(57)【要約】
【課題】消防設備や用具、部品の大幅な交換や改修を伴うことなく消火作業者の感電を防ぐことができる放水ノズルのアース用ケーブル及び感電防止放水ノズルを提供する。
【解決手段】後端に消防用ホースが接続される管鎗(11)と、該管鎗の前端に接続された金属製の先端ノズル(12)とを備えた放水ノズルに接続されるアース用ケーブル(20)において、先端ノズルの外周または先端ノズルと管鎗との連結部もしくは管鎗と消防用ホースとの連結部に係合可能な結合手段(22,26)と、この結合手段に一端が接続された導電性線状体(21)と、この導電性線状体の他端に接続された接地手段(23)とを備え、導電性線状体の少なくとも放水ノズル側は絶縁体で被覆されているようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端に消防用ホースが接続されるための管鎗と、該管鎗の前端に接続された金属製の先端ノズルとを備えた放水ノズルに接続されるアース用ケーブルであって、
前記先端ノズル又は前記先端ノズルと前記管鎗との連結部もしくは前記管鎗と前記消防用ホースとの連結部に係合可能な結合手段と、
前記結合手段に一端が接続された導電性線状体と、
前記導電性線状体の他端に接続された接地手段と、
を備え、前記導電性線状体の少なくとも放水ノズル側は絶縁体で被覆されていることを特徴とする放水ノズルのアース用ケーブル。
【請求項2】
前記導電性線状体の中間には、重錘が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放水ノズルのアース用ケーブル。
【請求項3】
前記導電性線状体の少なくとも放水ノズル側と接地側はそれぞれ異なる形態の絶縁体で被覆されており、前記導電性線状体の放水ノズル側を被覆する絶縁体は前記導電性線状体の接地側を被覆する絶縁体よりも曲げ剛性が高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放水ノズルのアース用ケーブル。
【請求項4】
前記結合手段は、前記先端ノズルと前記管鎗との連結部又は前記管鎗と前記消防用ホースとの連結部の間に挟持可能なリング状の導電性フックであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の放水ノズルのアース用ケーブル。
【請求項5】
前記結合手段は、前記先端ノズルの外周もしくは前記先端ノズルの外周に設けられた留め金具又は前記管鎗と前記消防用ホースとの連結部に係合可能なリング状の導電性フックであり、前記導電性フックはリングの一部が開放可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の放水ノズルのアース用ケーブル。
【請求項6】
前記結合手段の近傍に配設され、前記導電性線状体の放水ノズル側が前記管鎗のある方へは振れないように振れを防止する振れ防止手段を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の放水ノズルのアース用ケーブル。
【請求項7】
後端に消防用ホースが接続され作業者が把持するための管鎗と、該管鎗の前端に接続された先端ノズルとを備え、前記管鎗の外周面が絶縁性の膜で被覆されており、請求項1~6のいずれかに記載のアース用ケーブルが前記先端ノズルに接続されていることを特徴とする感電防止放水ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用ホースの端部に接続し使用される放水ノズルのアース用ケーブルおよび感電防止対策をした放水ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソーラーパネル(太陽電池モジュール)を用いた太陽光発電システムの普及が進み、一般住宅や産業用分野、公共施設分野等においても導入が進んでいる。この太陽光発電システムは、ソーラーパネルにより光エネルギーを電気エネルギーに変換しているため、光エネルギーが供給されている状況では外部から発電を遮断できない。そのため、太陽光発電施設又は太陽光発電システムを備えた建物で火災が発生した際に、一般に水を使った消火活動が行われることになるが、このとき、放水ノズルから噴出される棒状放水を伝わって消火活動者(消防隊員、建物使用者(施設管理人や保安員等))が感電する可能性が指摘されている(非特許文献1)。
【0003】
そこで、太陽光発電施設や太陽光発電システムを備えた建造物等で火災が発生した場合には、感電防止のため、棒状放水専用のスムースノズルの代わりに、噴霧放水を行える噴霧ノズルを使用して消火活動を行うことが推奨されている。しかし、噴霧放水では棒状放水に比べて消火効率が悪いため、消火完了までに要する時間が長くなるという課題がある。また、ソーラーパネルの表面を不燃性の遮光シートで覆って遮光し、ソーラーパネルの出力電圧を低下させてから消火活動を開始するという対策案や、ソーラーパネル等を物理的に破壊してから消火活動を開始する対策案が考えられている。
【0004】
しかし、上記対策では、ソーラーパネルの被覆作業や破壊作業中に作業者が感電するリスクがあるとともに、上記作業が完了する前に火災が進行してしまうという課題がある。また、後者の対策の場合、消火後に、破壊したソーラーパネルの再設置や設備の修理に多大なコストが発生するという課題もある。
そこで、先端部に放水ノズルが接続される消防用ホースの全長に亘ってアース線を第1接地手段として配設するとともに、消防用ホースの他端が接続される消火栓等の水源に接地線や接地棒からなる第2接地手段を設けて、放水ノズルから消防用ホースを経由して地中へ電流を流すアース経路を構築することで消防士の感電を防止するようにした消防設備に関する発明が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第16回消防防災研究講演会資料(平成25年2月)「太陽光発電システムを設置した住宅の火災と消防活動の問題点」消防研究センター
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている発明においては、既存の消防用ホースを全長に亘ってアース線を配設した消防用ホースと交換する必要があるとともに、水源側にも地中へのアース経路を形成する接地手段を設ける必要があるため、実現のためのコスト的なハードルが高いという課題がある。また、水源から火元までの距離が長いと複数のホースを接続することになるが、その際、途中にアース線のないホースが混在すると効果が得られないため、ホースの管理や運用が煩雑になるとともに、急を要する火災現場ではアース線のないホースを接続してしまうミスが発生し、それにより消防士の感電のリスクが高くなるという課題がある。
【0008】
さらに、接続するホースの長さや本数が多くなると、アース線の抵抗値が高くなるため、消防士が感電する危険性が高まる。また、消火活動の際に消防士が把持する管鎗とホースとの接続部には金属部(受け金具)があり、特許文献1に記載されている発明ではその最大外径部に絶縁被覆層を形成することが記載されているが、部分的であるため感電のおそれが残るという課題もある。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、消防設備や用具の大幅な交換や改修を伴うことなく消火作業者の感電を防ぐことができる放水ノズルのアース用ケーブル及び感電防止ノズルを提供することにある。
本発明の他の目的は、消火作業の際に消火作業者の活動を妨げることのない放水ノズルのアース用ケーブル及び感電防止ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、
後端に消防用ホースが接続されるための管鎗と、該管鎗の前端に接続された金属製の先端ノズルとを備えた放水ノズルに接続されるアース用ケーブルにおいて、
前記先端ノズル又は前記先端ノズルと前記管鎗との連結部もしくは前記管鎗と前記消防用ホースとの連結部に係合可能な結合手段と、
前記結合手段に一端が接続された導電性線状体と、
前記導電性線状体の他端に接続された接地手段と、
を備え、前記導電性線状体の少なくとも放水ノズル側は絶縁体で被覆されているようにしたものである。
【0011】
上記構成によれば、放水ノズルの金属製の先端ノズルにアース用ケーブルが接続されるため、消火対象の建物や設備に設けられているソーラーパネルから棒状放水を伝わって先端ノズルへ電流が流れたとしてもアース用ケーブルを介して地中へ電流を逃がすことができ、消火作業者が消火活動中に感電するのを防ぐことができる。
また、導電性線状体(芯線)のノズル接続側端部と反対側の端部(下端)に接地手段が接続されているため、消火活動中に放水ノズルを動かしても導電性線状体の下端が地面から離れることがなく、確実に感電を防止することができる。さらに、導電性線状体の少なくとも放水ノズル側は絶縁体で被覆されているため、消火作業者の体が活動中にアース用ケーブルの放水ノズル側に触れたとしてもアース用ケーブルに被覆された絶縁体により感電を回避することができる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記導電性線状体の中間には、重錘が接続されるように構成する。
かかる構成によれば、消火活動中にアース用ケーブルが弛むのを防止することができ、それによって、消火作業者の体がアース用ケーブルに触れにくくすることができるので、消火作業者の感電を回避することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記導電性線状体の少なくとも放水ノズル側と接地側はそれぞれ異なる形態の絶縁体で被覆されており、前記導電性線状体の放水ノズル側を被覆する絶縁体は前記導電性線状体の接地側を被覆する絶縁体よりも曲げ剛性が高くなるように構成する。
上記構成によれば、アース用ケーブルの放水ノズル側が変形して一部が消火作業者に接触する事態が発生するのを抑制することができ、それよって消火作業者が感電するのを回避することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記結合手段は、前記先端ノズルと前記管鎗との連結部又は前記管鎗と前記消防用ホースとの連結部の間に挟持可能なリング状の導電性フックであるようにする。
あるいは、前記結合手段は、前記先端ノズルの外周もしくは前記先端ノズルの外周に設けられた留め金具又は前記管鎗と前記消防用ホースとの連結部に係合可能なリング状の導電性フックであり、前記導電性フックはリングの一部が開放可能に構成しても良い。
【0015】
さらに、望ましくは、前記結合手段の近傍に配設され、前記導電性線状体の放水ノズル側が前記管鎗のある方へは振れないように振れを防止する振れ防止手段を備えるように構成する。
かかる構成によれば、振れ防止手段を備えるため、アース用ケーブルが振れてアース用ケーブルの一部が消火作業者に接触する事態が発生するのを防止することができ、それよって消火作業者が感電するのを回避することができる。
【0016】
本出願の他の発明に係る感電防止放水ノズルは、後端に消防用ホースが接続され作業者が把持するための管鎗と、該管鎗の前端に接続された金属製の先端ノズルとを備えたものにおいて、前述したような構成を有するアース用ケーブルが金属製の先端ノズルに接続されるようにしたものである。
かかる構成の放水ノズルによれば、金属製の先端ノズルにアース用ケーブルが接続されるため、消火対象の設備や建物に設けられているソーラーパネルから棒状放水を伝わって先端ノズルへ電流が流れたとしてもアース用ケーブルを介して地中へ電流を逃がすことができ、消火作業者が消火活動中に感電するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るアース用ケーブル及び放水ノズルによれば、消防設備や用具の大幅な交換や改修を伴うことなく、消火作業の際に消火作業者の感電を防ぐことができる。また、消火作業者の活動を妨げることがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】感電防止対策をした本発明に係る放水ノズル及びアース用ケーブルの概要を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る放水ノズルおよびその先端のノズルの第1実施形態を示す拡大図である。
【
図3】本発明に係る放水ノズルに使用されるアース用ケーブルの全体およびケーブル先端のフックの詳細を示す拡大図である。
【
図4】本発明に係る放水ノズルの第2実施形態を示す説明図である。
【
図5】本発明に係る放水ノズルの第3実施形態を示す説明図である。
【
図6】第1~第3実施形態における先端ノズルとアース用ケーブルの結合手段の変形例を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態の放水ノズルの第1の変形例を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態の放水ノズルの第2の変形例を示す説明図である。
【
図9】第3実施形態の放水ノズルの第1の変形例を示す説明図である。
【
図10】第3実施形態の放水ノズルの第2の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
図1には、ソーラーパネル(太陽電池モジュール)を用いた太陽光発電設備又は太陽光発電システムを備えた建物等で火災が発生した際に適用して好適な感電防止対策をした放水ノズル及びアース用ケーブルの概要が示されている。
【0020】
本発明の放水用アースは、既存の放水ノズルが一般に金属製であることに着目して、
図1に示すように、消防用ホースHの端部に接続されている放水ノズル10にアース用の導電性ケーブル20の一端を電気的に接続する。そして、放水ノズル10より垂下された状態のケーブル20の他端を地面に接触させることで、棒状放水Wを伝わって放水ノズル10まで流れてきた電流を地中へ逃がすアース用通電経路P1を形成して、放水ノズル10を把持し操作する消防士等の消火作業者が感電するのを防止するというものである。
【0021】
ここで、消火作業者は、一般に、放水ノズル10の管鎗部分を手で掴んで脇の下から腰の間に抱えるようにして放水を実施する。従って、アース用ケーブル20の長さは、少なくとも地面から脇の下の高さまでの距離と同等の長さ以上になるように設定される。なお、図示しないが、
図1の消防用ホースHの他端は消火栓等の水源に接続される。
【0022】
図2には、本発明に係る放水ノズル10の一実施形態が示されている。
図2(A)に示すように、放水ノズル10は、消防用ホースの端部に接続される先端側が細いテーパーパイプ状に形成された金属製の管鎗11と、この管鎗11の前端に連結された金属製の先端ノズル12と、管鎗11の基端部に水密状態で嵌合固定された金属製の円筒状の連結金具13により構成されている。連結金具13の外周面にも、滑り止め機能を有するゴム等の電気絶縁材料からなる被覆層が形成されている。
【0023】
先端ノズル12には様々なタイプのものがあり、
図2(A)には、このうち最も一般的な棒状放水を放出可能なスムースノズルと呼ばれるものが示されている。管鎗11と先端ノズル12とは、管鎗11の端部に形成された雄ネジと先端ノズル12の端部に形成された雌ネジとの螺合によって、着脱可能に連結されている。
管鎗11と先端ノズル12は金属製(例えばアルミ合金製又は銅合金製等)であり、管鎗11の外周はゴムなどの絶縁材料で形成された滑り止め機能を有する円筒状の保護膜11aで被覆されている。そして、管鎗11の基端部に連結金具13によって消防用ホースが連結される。
【0024】
本実施形態の放水ノズル10においては、
図2(B)に示すように、先端ノズル12の外周に、U字状の留め金具12aが溶接等によって固着されており、この留め金具12aにアース用ケーブル20の端部が結合手段によって着脱可能に、かつ確実な電気的接続を確保するように係止されるように構成されている。結合手段の一例としては、例えば
図6(A)に示すように、アース用ケーブル20の先端に復帰バネ30aを有するワニ口クリップ30を設け、U字状の留め金具12aを挟む形態が考えられる。なお、電気的接続を確保できる機能を持ったフックとしてもよい。
そのため、太陽光発電設備や太陽光発電システムを備えた建物等で火災が発生した場合に、先端ノズル12の留め金具12aにアース用ケーブル20の一端を係止して他端を地面に接地させることによって、
図1に示すように、アース用通電経路P1を形成し電流が管鎗11に流れないようにして、管鎗11を掴んで放水ノズル10を操作する消防士等の消火作業者が感電するのを防止することができる。
【0025】
また、特許文献1に記載されている発明のように、消防用ホースにアース用通電経路を形成するものでないため、既存設備の改造や交換が不要であり、大幅なコストアップを回避できるとともに、アース用通電経路の抵抗値がホースの長さにかかわらず一定であるため、感電リスクが変化することがない。さらに、アースが行われていることを目視で容易に確認することができる。
また、アース用ケーブル20の端部を先端ノズル12の留め金具12aに接続する構成であるため、極めて簡単にアース用ケーブル20を取り付けて感電対策を行うことができる。しかも、管鎗11ではなく先端ノズル12にアース用ケーブル20の端部を接続するため、アース用ケーブル20と消火作業者との距離を離すことができ、アース用ケーブル20が消火作業者の作業に支障を来たすのを回避することができる。
【0026】
図3には、アース用ケーブル20の具体例が示されている。
アース用ケーブル20は、
図3(A)に示すように、導電性を有する金属製の芯線21と、この芯線21の放水ノズル10側端部に設けられた金属製のフック22と、芯線21の接地側端部に設けられた接地手段としての第1の重錘23と、芯線21の表面を覆う絶縁材からなる被覆チューブ24とを主要構成として備えている。芯線21は、一般的な撚線でも良いが、チェーン(鎖)であっても良い。また、接地手段としての第1の重錘23は消火作業の際にアース用ケーブル20が引っ張られても、錘の作用で常にアース用ケーブルの接地側端部は地面に接するよう作用する。よって、消火位置を変えるような場合でもアース用ケーブルの接地を意識せず消火位置の移動が可能となる。
【0027】
被覆チューブ24は、特に限定されるものでないが、芯線21の放水ノズル10側の表面を覆う上部チューブ24Aと芯線21の接地側の表面を覆う下部チューブ24Bとに分割されており、素材もしくは厚みを変えることで、上部チューブ24Aは下部チューブ24Bよりも固めすなわち曲げ剛性が高くなるように形成されている。さらに、上部チューブ24Aと下部チューブ24Bは離間され、その離間部に第2の重錘25が設けられている。なお、上部チューブ24Aと下部チューブ24Bは連続していても良い。
【0028】
上記のように芯線21が絶縁性の被覆チューブ24で被覆されていることにより、消火作業者の体がアース用ケーブル20に接触したとしても感電するのを防止することができる。また、アース用ケーブル20の接地側の端に重錘23が設けられていることにより、アース用ケーブル20の下端部を確実に地面に接触させ、作業中に地面から離れるのを防止することができる。さらに、アース用ケーブル20の中間で、消火作業者が放水ノズル10を構えた時の地面から脇の下の高さまでの平均的な距離と同等か、もしくは少し短い距離の位置に重錘25が設けられていることにより、常に放水ノズル側のアース用ケーブルが地面方向に重錘25の重さで引っ張られることとなり、アース用ケーブル20の放水ノズル10側が弛んで消火作業者の体に接触し易くなるのを回避することができる。
また、アース用ケーブル20の中間で、重錘25により常に放水ノズル側のアース用ケーブルが地面方向に引っ張られ、L字状となるため、ノズルの放水方向を急に変えた場合に、アース用ケーブル20が引っ張られたとしても、地面に固定されているアース接地端に作用する外力を軽減し離れにくくすることができる。なお、被覆チューブ24の表面には撥水性の塗料を塗布して、表面に水が付着しにくくして被覆チューブ24の表面を電流が流れるのを防止するようにしても良い。
【0029】
フック22は、一部が開放可能なリング状をなし、先端ノズル12の留め金具12aに連結したり外したりすることができるように構成されている。
具体的には、
図3(B)に示すように、フック22は、C字状のリング22aの端部に円弧状の抜止め片22bがピン22cにより回動可能に結合され、抜止め片22bは図示しないトーションバネにてリングを閉じる方向に付勢されており、C字状のリング部22aと円弧状の抜止め片22bとよってO字状をなすリングが構成されている。
そして、抜止め片22bをトーションバネに抗して回動させると、リングの一部が開いて先端ノズル12の留め金具12aに、連結したり外したりすることができるようになっている。また、リング部22aの下端部には、芯線21の端部が電気的に結合される係止部22dが設けられている。
【0030】
ここで、アース用ケーブル20の芯線21の太さの算定の仕方に関して説明しておく。
本発明者は、平成26年3月に消防庁消防研究センターが発行した資料「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」に記載されている情報をもとにして、定格電圧DC600Vのソーラーパネルに対して、平屋の屋根の高さに相当する3mの距離から放水したときに、棒状放水を伝わって消防士に流れる電流をDC2A以下に抑えるための条件を検討した。なお、消防士の抵抗値として1MΩ、放水1m当たりの抵抗を49kΩ/m、アース用ケーブルを通した通電経路の抵抗Rを接地抵抗込みで200Ωと仮定した。
【0031】
その結果、通電経路の抵抗Rに流れる電流はおよそ4mA程度になることが分かった。ここで、一般的なアルミ撚線の定格電流はmA単位ではなくA単位であるので、4mA程度の電流オーダーであれば、アース用ケーブル20の芯線21の太さはあえて指定する必要がない。従って、芯線21の太さは、消火活動時に流れる電流の値よりも、アース用ケーブル20の重量(重錘を含む)等から必要とされる引張り強度を考慮して決定すればよい。
【0032】
〔第2実施形態〕
図4には、本発明に係る放水ノズル10の第2の実施形態が示されている。
図4(A)に示すように、第2の実施形態の放水ノズル10は、アース用ケーブル20の放水ノズル10側端部に、先端ノズル12の外周に係合される接続金具26を設けて、アース用ケーブル20を接続金具26によって直接先端ノズル12に接続するようにしたものである。
【0033】
接続金具26は、
図3(B)に示すフック22と類似の構造を有しており、
図4(B)に示すように、半円状の本体部26aの端部に半円状の抜止め片26bがピン26cにより回動可能に結合され、半円状の本体部26aと抜止め片26bとよってO字状をなすリングが形成されるように構成されている(ただし、接続金具26のリングの径は、
図3(B)に示すフック22のリング径よりも大きい)。また、本体部26aの下端部には、アース用ケーブル20の端部のフック22が係合される係合穴を有する係止部26dが設けられている。
【0034】
ここで、フック22と接続金具26の係止部26dの連結は、確実な電気的接続を確保するため、
図6(B)に示すように、アース用ケーブル20の端部に設けた雄ネジ31と接続金具26に設けた雌ネジ32の螺合による結合としてもよい。雄ネジ31と雌ネジ32の配置は逆でも良い。あるいは、フック22の軸の太さに合った穴が接続金具26に係止部26dとして形成されており、フック22を係止部26dの穴に挿入することでアース用ケーブル20と接続金具26との電気的接続を確保してもよい。
また、接続金具26と先端ノズル12の接続は、ノズル12側にリング状の溝を設け、この溝に接続金具26を嵌め込むとともに、先端ノズル12と接続金具26の間に導電性ゴムなどの導電性素材を配するなどして、確実な電気的接続を確保できるようにすると良い。
【0035】
また、ピン26cと反対側の接合部には、本体部26aの端部と抜止め片26bの端部を結合し拘束する掛け金式の結合リング26eが設けられている。なお、接続金具26は先端ノズル12の先端側の外周とほぼ同径を有するように接続金具26を形成して、装着した接続金具26が先端ノズル12の外周で軸方向へ移動しないように構成しても良い。
【0036】
上記のように、第2の実施形態の放水ノズル10は、アース用ケーブル20の放水ノズル10側端部の接続金具26を先端ノズル12に接続する構成であるため、極めて簡単にアース用ケーブル20を取り付けて感電対策を行うことができる。また、先端ノズル12を大きな改造をすることなく、先端ノズル12にアース用ケーブル20を接続することができる。さらに、管鎗11ではなく先端ノズル12にアース用ケーブル20の端部を接続するため、アース用ケーブル20と消火作業者との距離を離すことができるため、アース用ケーブル20が消火作業者の作業に支障を来たすのを回避することができる。
【0037】
〔第3実施形態〕
図5には、本発明に係る放水ノズル10の第3の実施形態が示されている。
図5に示すように、第3の実施形態の放水ノズル10は、アース用ケーブル20の端部に、管鎗11と先端ノズル12との間に挟持されるプレート状の接続金具26’を設けて、この接続金具26’によってアース用ケーブル20を放水ノズル10に接続するようにしたものである。管鎗11と先端ノズル12とは雄ネジと雌ネジによって連結されるように構成されており、雄ネジと雌ネジを螺合させる際に接続金具26’を介挿させることによって、接続金具26’を管鎗11と先端ノズル12との間に挟持させることができる。
【0038】
また、接続金具26’には、アース用ケーブル20の端部のフック22が係合される係合穴を有する係止部 26d’が設けられている。アース用ケーブル20のノズル側端部と接続金具26’の係止部26d’の連結は、フック22の代わりに、
図6(B)に示すように、確実な電気的接続を確保するため、雄ネジ31と雌ネジ32の螺合による結合としても良い。アース用ケーブル20は、
図3に示されているものと同じであるので、説明を省略する。
【0039】
上記のように、第3の実施形態の放水ノズル10は、管鎗11と先端ノズル12との間に接続金具26’を接続する構成であるため、先端ノズル12に対してアース用ケーブル20を確実に電気的に接続して感電対策を行うことができる。また、管鎗11や先端ノズル12を何ら改造することなく、アース用ケーブル20を接続することができる。
さらに、重錘23については、錘を複数個とすることでアース用ケーブル20が引っ張られて下端が跳ね上がったとしても何れかの錘は必ず接地状態が維持できるように構成するのと良い。
【0040】
〔変形例〕
次に、上記第1~第3実施形態の変形例を、
図7~
図10を用いて説明する。
図7は、第2実施形態(
図4)において、先端ノズル12の外周に係合される接続金具26の代わりに、先端ノズル12の外周の長さよりも長い導電性を有する帯状の装着用バンド27と、該バンド27に挿通された導電性のリング状の留め金具28とを使用するようにしたものである。
装着用バンド27の両端には、例えば面ファスナーのA面とB面のような結合手段27a,27bが設けられており、この装着用バンド27にリング状の留め金具28を挿通させた状態で先端ノズル12の外周に装着させることができるように構成されている。
【0041】
この変形例においては、アース用ケーブル20の端部のフック22は留め金具28に係合され、留め金具28又は留め金具28及び導電性を有する装着用バンド27が先端ノズル12に接触することによってアース用ケーブル20の端部のフック22は留め金具28にしっかりと結合され、先端ノズル12とアース用ケーブル20との電気的な導通が図られ、アース用通電経路が形成される。
このような構成によれば、アース用ケーブルの端部を放水ノズルに着脱することが容易に行えるので、既存の放水ノズルや消防設備を改造したり用具、部品を交換したりすることなく、消火作業者の感電を防止することができる。
【0042】
図8は、第2実施形態(
図4)において、接続金具26によって先端ノズル12に接続され垂下されているアース用ケーブル20が消火作業者に近づかないように、振止めプレート29を設けたものである。なお、接続金具26とアース用ケーブル20の連結は、
図6(B)に示すように、雄ネジ31と雌ネジ32の螺合による結合としても良い。
振止めプレート29は、側面視で「へ」の字状ないしは逆L字状をなしており、短い方の片が先端ノズル12の外周に接触し、長い方の片が先端ノズル12の外周からほぼ直角に垂下する姿勢で先端ノズル12に取り付けられ、垂下する片にアース用ケーブル20の上端部がバンド27によって締結されるように構成されている。なお、振止めプレート29の短片と長片とは0~90度の角度範囲でのみ回動可能な蝶番によって連結し、アース用ケーブル20が前方へは振れるものの消火作業者に近づく方向へは振れないように構成しても良い。
【0043】
図9は、第3実施形態(
図5)において、接続金具26’によって先端ノズル12に接続され垂下されているアース用ケーブル20が消火作業者に近づかないように工夫したものである。
具体的には、管鎗11と先端ノズル12との間に挟持される接続金具26’の下端の係止部26d’を下方へ延長させ、例えば筒状に変形させることによって曲げ剛性の高い剛性部26fを形成してこの剛性部26fにアース用ケーブル20の芯線21を挿入して溶接等によって接続するように構成されている。なお、剛性部26fの外表面は絶縁性の塗料を塗布しておくようにするか、被覆チューブ24の放水ノズル側を延長して剛性部26fの表面を覆うように構成すると良い。
【0044】
図10は、第3実施形態(
図5)において、管鎗11と先端ノズル12との間に挟持されている接続金具26’を、管鎗11の後端の連結金具13と消防用ホースHの端部の連結金具14との間に挟持して装着するように構成したものである。これにより、棒状放水-先端ノズル12-管鎗11-アース用ケーブル20のアース用通電経路P2が形成され、棒状放水を介して電流が流れる際は、人体よりも電気抵抗が低いアース用通電経路P2を流れることとなるため、消火活動中に、ソーラーパネル等からの電流が消火作業者に流れて感電するのを防止することができる。フック22と接続金具26’の係止部26d’の連結は、確実な電気的接続を確保するため、
図6(B)に示すように、雄ネジ31と雌ネジ32の螺合による結合とすると良い。
【0045】
なお、
図10には示されていないが、連結金具13,14および接続金具26’の表面は、シート状の絶縁カバーを巻き付けて覆うように構成するのが望ましい。これにより、管鎗11と消防用ホースHの端部の連結金具13、14や接続金具26’に作業者の体の一部が直接接触することによる感電を防止することができる。
また、連結金具13,14がネジ式でなく差込み式等で、接続金具26’を連結金具13,14で挟持できない構造である場合にも、連結金具13と14との境界外周に溝が生じるので、その溝に接続金具26’を係合させて取り付けるように構成しても良い。第3実施形態(
図5)において、管鎗11と先端ノズル12との間に装着する接続金具26’についても同様である。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、アース用ケーブル20の接地側端に重錘23を付けているが、重錘23の代わりに、地中に突き刺すことが可能な鋭利な先端を有する接地棒のようなもの、又はワニ口クリップでアースに使える金属への接続であっても良い。また、上記実施形態においては、アース用ケーブル20の放水ノズル10側と接地側にそれぞれ絶縁性の被覆チューブ24a,24bを設けているが、放水ノズル 10側の被覆チューブ24aのみを設けるようにしても良いし、被覆チューブ24aと24bが連続するように形成しても良い。
【0047】
さらに、アース用ケーブル20は、地面から放水ノズル10を構えた時の脇の下の高さまでの距離と同等の長さの位置に設けた重錘25を省略した構成も可能である。
この場合、アース用ケーブル20は、被覆チューブ24aとアース用ケーブル20の自重で地面方向に引っ張られることとなり、アース用ケーブル20は中間位置の重錘25の自重による地面方向への引っ張る力が無くなるが、被覆チューブ24aとアース用ケーブル20の自重が十分重ければ、重錘25を設けた場合と同様の作用、効果が得られる。
【0048】
また、上記実施形態においては、本発明を太陽光発電システムでの火災対策に適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、太陽光発電システム以外の電気設備や電気自動車、燃料電池自動車等の活線部を備えた施設での消火活動において使用する放水ノズルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 放水ノズル
11 管鎗
12 先端ノズル
12a 留め金具
13 連結金具
20 アース用ケーブル
21 芯線(導電性線状体)
22 フック(結合手段)
23 重錘(接地手段)
24 被覆チューブ
25 重錘
26 接続金具(結合手段)
27 装着用バンド
28 留め金具
29 振止めプレート
H 消防用ホース
P1,P2 アース用通電経路