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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101747
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】フィルタープレスのケーキ洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B01D25/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216000
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅義
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116CC02
4D116CC07
4D116CC22
4D116CC27
4D116CC44
4D116CC46
4D116FF13B
4D116KK05
4D116QC04A
4D116QC25A
4D116QC25D
4D116QC29D
4D116SS01
4D116SS04
(57)【要約】
【課題】ろ過室のケーキが洗浄に適した状態であることを検知したタイミングで洗浄を開始することで洗浄時間を短縮できるフィルタープレスのケーキ洗浄方法を提供する。
【解決手段】
ろ過室に原液を圧入し、ダイアフラムで圧搾した後、洗浄液を供給してろ過室内のケーキ洗浄を行うフィルタープレスのケーキ洗浄方法において、一次圧搾工程時に原液供給路内の圧力を計測し、計測した圧力が上昇を開始した後、所定期間に亘って継続的に変化しない場合、一次圧搾工程を終了して正洗浄工程を開始することで、短時間でケーキを洗浄することが可能となるため、洗浄液使用量を減らすことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過室(28)に原液を圧入し、ダイアフラム(27)で圧搾した後、洗浄液を供給してろ過室(28)内のケーキ洗浄を行うフィルタープレスのケーキ洗浄方法において、
一次圧搾工程(S3)時に原液供給路内の圧力を計測し、
計測した圧力が上昇を開始した後、所定期間に亘って継続的に変化しない場合、一次圧搾工程(S3)を終了して正洗浄工程(S5)を開始する
ことを特徴とするフィルタープレスのケーキ洗浄方法。
【請求項2】
ろ過室(28)に原液を圧入し、ダイアフラム(27)で圧搾した後、洗浄液を供給してろ過室(28)内のケーキ洗浄を行うフィルタープレスのケーキ洗浄方法において、
一次圧搾工程(S3)時に原液供給路内の圧力を計測し、
計測した圧力が継続的に上昇した後、事前に設定した所定値まで低下した場合、一次圧搾工程(S3)を終了して正洗浄工程(S5)を開始する
ことを特徴とするフィルタープレスのケーキ洗浄方法。
【請求項3】
前記一次圧搾工程(S3)終了時に原液供給路内に残った原液を除去する管内洗浄工程(S4)を実施した後、正洗浄工程(S5)を開始する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルタープレスのケーキ洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレスのケーキ洗浄に関し、特に、ろ過室のケーキが洗浄に適した状態であることを検知したタイミングで洗浄を開始することによって短時間で効率よくケーキを洗浄できるフィルタープレスのケーキ洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学プラント等で用いられるフィルタープレスのろ過室で形成されたケーキには溶解性化合物等の不純物が含まれており、これらを取り除くためにろ過室内に洗浄液を供給してケーキを洗浄していた。ケーキの洗浄方法には、洗浄液を原液供給口より供給し、ケーキの中心から表面に向かって通水させる正洗浄と、洗浄液を一方のろ液排出口より供給し、ケーキの厚み方向に通水させ、他方のろ液排出口より排出させる逆洗浄がある。
洗浄工程において、正洗浄のみ行う場合や逆洗浄のみ行う場合があるが、正洗浄及び逆洗浄を実施する場合は、圧入、正洗浄、一次圧搾、逆洗浄、二次圧搾の順で行うことが一般的であり、正洗浄は、一次圧搾の前に実施している。
【0003】
特許文献1には、圧搾膜を普通濾板側へ膨張させる加圧(圧搾)工程を正洗浄の前に実施するフィルタープレスが開示されている。
【0004】
特許文献2には、原液供給管の途中に設けた圧力ゲージによって検出された圧力が所定脱水状況に低下した時点で圧搾を終了する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3447767号公報
【特許文献2】特公昭58-036608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、正洗浄は圧入後に行っていたが、圧入後のケーキ中には流動性を有した原液状物が残っており、多くの母液が含まれているため、正洗浄によって母液を洗浄液と置換するには大量の洗浄液が必要であった。
洗浄液の使用量を減らすために、正洗浄を行う前に圧搾を行ってケーキ中の母液量を事前に減らしておくのが望ましいが、圧搾による圧力を受けて固化したケーキに洗浄液を供給することは難しかった。特に、洗浄液をケーキの中心から表面に向かって通過させるためにケーキの中心に洗浄水を供給するのが難しく、直接、ケーキの表面に漏れてしまうという課題を有していた。
また、ケーキが固化する手前まで圧搾を継続し、ケーキの中心を洗浄液が通過可能な柔らかい状態を残したうえで、正洗浄へ切り替える手段もなかった。
【0007】
特許文献1には、加圧(圧搾)工程後に正洗浄を実施しているが、加圧(圧搾)から正洗浄への切り替えに関する記載はなく、正洗浄への切り替えのタイミングが記されていない。
【0008】
特許文献2には、圧力ゲージで検出された加圧ろ過部分の圧力が所定の脱水の状況まで下がったのを検出した時点を圧搾終了点としているが、圧搾終了点を検出した時点でケーキは塑性限界を超えているため、圧搾終了後に正洗浄を実施しても洗浄液を固化したケーキ内に供給することが難しかった。
【0009】
本発明は、圧搾から正洗浄への切り替えを適切なタイミングで行うものであり、圧搾時における原液供給路内の圧力でろ過室のケーキの状態を判断し、圧搾を終了して正洗浄へ切り替えるフィルタープレスのケーキ洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ろ過室に原液を圧入し、ダイアフラムで圧搾した後、洗浄液を供給してろ過室内のケーキ洗浄を行うフィルタープレスのケーキ洗浄方法において、一次圧搾工程(S3)時に原液供給路内の圧力を計測し、計測した圧力が上昇を開始した後、所定期間に亘って継続的に変化しない場合、または、計測した圧力が継続的に上昇した後、事前に設定した所定値まで低下した場合に一次圧搾工程(S3)を終了して正洗浄工程(S5)を開始することで、洗浄液をろ過室内の洗浄に適した状態のケーキに供給できるため、短時間で効率よく洗浄を行うことが可能となり、洗浄液の使用水量を減らすことができる。
【0011】
前記一次圧搾工程(S3)終了時に原液供給路内に残った原液を除去する管内洗浄工程(S4)を実施した後、正洗浄工程(S5)を開始することで原液供給路に洗浄液を供給できるため、洗浄液を原液供給路からろ過室まで素早く供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフィルタープレスのケーキ洗浄方法は、洗浄液を供給するのに必要な最小限の流動性を中心部に残した状態のケーキに洗浄液を供給することで、洗浄液がケーキの中心から表面に向かって短時間で通過できるため、ケーキの洗浄時間が短縮すると共に、洗浄に必要な洗浄液の使用量を減らすことができる。洗浄液の使用量が減ることで洗浄液供給ポンプの稼働時間を短縮することも可能となるため、電気代等のコスト削減にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る、フィルタープレスの概略構成図である。
図2】同じく、原液圧入時のろ過室の概略縦断面図である。
図3】同じく、一対のろ板及びダイアフラムろ板で形成されるろ過室から見たろ板(a)、ダイアフラムろ板(b)の正面図である。
図4】同じく、正洗浄時のろ過室の概略縦断面図(a)及び逆洗浄時のろ過室の概略縦断面図(b)である。
図5】同じく、運転工程を示すフローチャート図である。
図6】同じく、原液圧入から三次圧搾までのろ過室を模式的に示した縦断側面図である。
図7】同じく、原液圧入から二次圧搾までの原液供給路内の圧力変化を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係るフィルタープレスの概略構成図である。
本発明に係るフィルタープレス1は、前後のフレーム2,3間に橋架した一対のガイドレール4に多数のろ板5とダイアフラムろ板6を交互に支架している。
リアフレーム3に配設した締付シリンダー8がムーバブルヘッド9に連結してあり、締付シリンダー8を駆動して並列したろ板5とダイアフラムろ板6を開閉させる。
【0015】
締付シリンダー8で並列する多数のろ板5及びダイアフラムろ板6をフロントフレーム2側に移動させて閉板することでフィルタープレス1の上方に上部連通路7が形成される。
原液供給管10より供給される原液は、フロントフレーム2側に設けた上部供給孔11aを介して上部連通路7内に圧入され、洗浄液供給管19より供給される洗浄液は、リアフレーム3側に設けた上部供給孔11bより供給される。
【0016】
上部連通路7と連通している原液供給管10には圧力計12を設置しており、原液供給路(上部連通路7及び原液供給管10)内の圧力を計測している。圧力計12で計測した値を継続的にモニターすることで原液供給路内の圧力の変化を把握できる。
なお、本実施形態では、ろ板5及びダイアフラムろ板6の上方に設けられた上部連通路7より原液を供給する構成とし、奇数番目のろ板をろ板5、偶数番目のろ板をダイアフラムろ板6とし、これらを交互に配設する構成としたが、原液の供給位置やろ板の配置等に関して、このような形態に限定しない。圧力計12の設置位置については原液供給路内の圧力を計測できればこれに限定せず、上部連通路7に設ける構成としてもよい。
【0017】
図2は、原液圧入時のろ過室の概略縦断面図である。
凹面状のろ過床25を有するろ板5と膨張可能なダイアフラム27を張設したダイアフラムろ板6の間に一対のろ布23が張設されており、ろ布23間にはろ過室28を形成している。ろ過室28の上方には上部連通路7が貫通しており、フロントフレーム2に設けた上部供給孔11aより供給された原液が上部連通路7を通ってろ過室28内に供給される。原液はろ過室28内に供給された後、ろ布23で固液分離されてろ液を排出する。
【0018】
ろ板5の下部には通水孔29aを設けており、ろ布23で固液分離されたろ液が通水孔29aより排出される。同様に、ダイアフラムろ板6の下部にも通水孔29bを設けており、通水孔29bよりろ液が排出される。
【0019】
図3は、一対のろ板及びダイアフラムろ板で形成されるろ過室から見たろ板(a)、ダイアフラムろ板(b)の正面図である。
図3(a)に示すように、ろ板5は中央に凹面状のろ過床25を形成しており、ろ過床25にはろ布23が張設されている。ろ過床25の下部には、ろ液と洗浄液が通水可能な通水孔29aを開口し、通水孔29aは、ろ板5の一方側面(図3(a)右)に設けた下部連通路30aに連通させてある。ろ板5の他方側面(図3(a)左)には下部連通路30bが設けられている。
【0020】
図3(b)に示すように、ダイアフラムろ板6は、ろ板5のろ過床25にダイアフラム27を張設したもので、ダイアフラム27内に圧搾水を供給することで膨張してろ過室28内のケーキが圧搾される。ダイアフラムろ板6はダイアフラム27の上からろ布23を張設してある。
ダイアフラムろ板6のろ過床25下部には、通水孔29bを開口し、通水孔29bはダイアフラムろ板6の一方側面(図3(b)右)に設けた下部連通路30bに連通させる。ダイアフラムろ板6の他方側面(図3(b)左)には下部連通路30aが設けられている。
【0021】
ろ板5及びダイアフラムろ板6を閉板させた際に、ろ板5に設けられた下部連通路30aがダイアフラムろ板6に設けられた下部連通路30aと連通する。同様に、ろ板5に設けられた下部連通路30bがダイアフラムろ板6に設けられた下部連通路30bと連通する。ろ過室28内より排出されるろ液は、ろ板5の通水孔29aを通過した後、下部連通路30aを通って排出されるとともに、ダイアフラムろ板6の通水孔29bを通過した後、下部連通路30bを通って排出される。
【0022】
図4(a)は、正洗浄時のろ過室の概略縦断面図である。
ろ板5及びダイアフラムろ板6の上部には、ろ過室28内に洗浄液を供給するための上部連通路7を形成している。上部連通路7より供給された洗浄液は、ろ過室28内に形成されたケーキの中心から表面に向かって通過したあと、ろ布23を透過してケーキ洗浄ろ液として、ろ板5の下部に設けた通水孔29aとダイアフラムろ板6の下方に設けた通水孔29bを通って下部連通路30a、30bより排出される。
【0023】
図4(b)は、逆洗浄時のろ過室の概略縦断面図である。
ダイアフラムろ板6の下部に形成された通水孔29bより供給された洗浄液は、ろ過室28内に形成されたケーキ内を、ダイアフラムろ板6側からろ板5側に向かって貫通するように通過する。ケーキ内を貫通した洗浄液は、ケーキ洗浄ろ液としてろ板5の下部に形成された通水孔29aを介して下部連通路30aより排出される。
なお、本実施例では、ダイアフラムろ板6に設けた通水孔29bから洗浄液を供給し、ろ板5に設けた通水孔29aより排出する構成としたが、通水孔29aから洗浄液を供給して通水孔29bより排出する構成としてもよい。通水孔の位置や数についても設計条件に応じて適宜変更可能とする。
【0024】
図5は、運転工程を示すフローチャート図である。
本発明では、閉板(S1)、原液圧入(S2)、一次圧搾(S3)、管内洗浄(S4)、正洗浄(S5)、二次圧搾(S6)、逆洗浄(S7)、三次圧搾(S8)、開板(S9)、ケーキ排出(S10)の順に運転を実施する。
圧入直後のケーキは中心に流動性を有した原液状物が残っている状態であり、大量の母液を含んでいる。ろ過室28への原液の圧入により、ろ過が進むと、ろ布23に接している部分からケーキ化が進み、流動性がなくなってくるが、中心部はまだ流動性が残っている状態となっている。この流動性が残っている部分を原液状物と定義する。
原液圧入後に正洗浄を実施すると、ケーキ内に含まれる大量の母液を洗浄液と置換しなければならないため、洗浄液の使用水量が増加する。
そこで、本発明では正洗浄前に一次圧搾を実施し、事前にケーキ中の母液量を減らしたうえで洗浄液を供給することによって短時間でケーキ洗浄を行うことが可能となるため、洗浄液の使用量を削減できる。
【0025】
図6は、原液圧入から三次圧搾までのろ過室を模式的に示した縦断側面図である。
図7は、原液圧入から二次圧搾までの原液供給路内の圧力変化を概略的に示すグラフである。横軸は時間、縦軸は原液供給管内の圧力を示している。
以下、本発明の実施例を図6図7に基づいて説明する。
【実施例0026】
閉板工程(S1)
多数のろ板5及びダイアフラムろ板6を締付シリンダー8で閉板し、両ろ板間にろ過室28を形成する。ろ板5とダイアフラムろ板6の間には一対のろ布23が張設されており、対向するろ過床25に張設されたろ布23でろ過室28を覆う。このとき、閉板したろ板5及びダイアフラムろ板6の上部に上部連通路7が形成されるとともに、各ろ板5及びダイアフラムろ板6の下部に下部連通路30(30a、30b)がそれぞれ形成される。
【0027】
原液圧入工程(S2)
原液供給ポンプ14を起動して原液貯留槽13内の原液を原液供給管10から上部供給孔11aに0.3~0.5MPaの圧力で供給する。上部供給孔11aより圧入された原液は、上部連通路7を通過した後、ろ過室28内に張設された一対のろ布23間に供給される。ろ布23間に供給された原液は、圧入圧力によるろ過の進行に伴ってろ液を排出する。
【0028】
このとき、ろ過室28内は図6のS2に示すように、ケーキK1で構成されている。ケーキK1は、中心に流動性を有した原液状物が大量に残った状態であるため、流動性が高くなっている。原液はろ過室28の上部中央より連続的に供給されるため、ろ過室28のろ布23表面から先にケーキが形成され始める。
【0029】
原液圧入開始後の原液供給管10内の圧力は図7に示すように、圧入開始点Aより急激に増加している。これは圧入開始に伴い、原液供給管10及び原液供給管10に連通している上部連通路7内に原液が圧入され始めることで原液による圧入圧力を受けた原液供給路(原液供給管10及び上部連通路7)内の圧力が増加するためである。
原液供給管10の圧力は上昇した後、ほとんど変化しない。これはろ過室28内に原液が充填された後も一定圧で供給され続ける原液の圧入圧力を示している。
【0030】
原液を所定時間t1圧入した後、原液圧入ポンプ14を停止して一次圧搾へ切り替える。このとき、原液圧入ポンプ14を停止することで原液供給管10内に原液が供給されなくなるが脱水は進むため、圧力は一時的に原液圧入終了点Bまで低下する。
【0031】
原液圧入時にろ過室28内から排出されるろ液は、ろ板5の下方に設けた通水孔29a及びダイアフラムろ板6の下方に設けた通水孔29bより排出されたあと、各通水孔に対応する下部連通路30a、下部連通路30bを介してろ液排出管24を通ってろ液槽26に排出される。
なお、原液の圧入は予め設定した所定時間行う。
【0032】
一次圧搾工程(S3)
原液圧入後に原液供給ポンプ14を停止し、その後、圧搾水供給ポンプ17を起動して圧搾水貯留槽18内に貯留している圧搾水を0.5~0.7MPaの圧力で圧搾水供給管16より下部供給孔15に供給する。下部供給孔15より圧入された圧搾水は、ろ板5及びダイアフラムろ板6の下部に形成された圧搾水路31を通ってダイアフラム27内に供給される。ダイアフラム27内に圧搾水が供給されることでダイアフラム27が膨張してろ過室28内のケーキに圧搾圧力が加わり、ケーキ中より水分が排出される。
【0033】
このとき、ろ過室28内のケーキは図6のS3に示すようにダイアフラム27による圧搾を受けて水分が排出されるため、原液圧入後の図6のS2に示すケーキよりも流動性が低くなっていく。具体的には、ケーキK1の中心に図6のS2時よりも少量の流動性を有した原液状物が残っている状態である。ケーキK1中心の原液状物はまだ流動性がある状態である。
【0034】
原液供給管10内の圧力は図7に示すように一次圧搾開始点Bから上昇する。これは、原液圧入工程(S2)終了後の流動性が高い原液状物を有した状態のケーキが圧搾圧力を受けて水分を排出する際に上部連通路7がろ過室28内から逆流してくる原液状物による圧力を受け、上部連通路7を経由して原液供給管10内の圧力が上昇するためである。
【0035】
一次圧搾開始点Bから上昇を開始した圧力はピークを検知した後、ケーキ中心部の原液状物の流動性が減少することで低下し始める。
本発明では、一次圧搾工程(S3)時に計測した圧力が上昇を開始した後、所定期間に亘って継続的に変化しない場合(ピークを検知した場合)に一次圧搾を終了して正洗浄を開始する。
所定期間とは、少なくとも2連続で圧力が継続的に変化しない期間である。
また、計測した圧力の上昇率や下降率が微小な場合も圧力が変化していないとみなすことができる。
【0036】
図7には、一次圧搾から正洗浄への切り替え点である一次圧搾終了点C(正洗浄開始点C)を示している。一次圧搾終了点C(正洗浄開始点C)は、上昇を開始した圧力の計測値が少なくとも2連続で継続的に変化しないことを検知した点である。
少なくとも2連続で継続的に変化しないことを検知した点は、計測された圧力が2連続以上で変化しないことを検知した点であり、検知された変化しない2連続以上の圧力のうち、2点目以降に検知される点である。
【0037】
一次圧搾工程(S3)終了時にはろ過室28がダイアフラムろ板6に張設したダイアフラム内が圧搾流体によって膨張している状態であり、ダイアフラム27を膨張させた状態のまま正洗浄へ移行している。
なお、正洗浄に移行した時点でバルブを操作してダイアフラム圧力を低下させてもよい。
【0038】
また、一次圧搾工程を終了して正洗浄へ切り替えるタイミングは、検知された圧力が継続的に上昇した後、事前に設定した所定値まで低下した場合であってもよい。継続的に上昇する圧力はピーク値を示した後、低下し始める。圧力が低下を開始した後、事前に設定した所定値である一次圧搾終了点C(正洗浄開始点C)が示す圧力まで低下した場合に正洗浄に切り替える。
所定値は、計測した圧力が継続的に上昇した後、低下した場合であればよいため、一次圧搾から正洗浄への切り替え点である圧力低下開始点から圧力が最も低下する最下点の間に計測される値としている。
【0039】
汚泥供給路の圧力が上昇した後、低下し始め、所定の圧力まで低下するのは、一次圧搾の進行に伴ってろ過室28内のケーキ中心に残っていた流動性の高い原液状物が固形化し始めることに伴い、上部連通路7に向かって逆流する原液状物量が少なくなり、上部連通路7に連通している原液供給管10内の圧力が下降するためである。
【0040】
このとき、ろ過室28内のケーキは、図6のS3に示すように、流動性を有した原液状物の固形化が進むことで中心に少量の原液状物が残った状態となる。ケーキ中心に少量の原液状物が残っているため、正洗浄時にろ過室28の上部中央から供給される洗浄液をケーキ中心部に入れることができる。一次圧搾によりケーキ中の母液量を削減したうえで、洗浄液を効率よくケーキの中心に向かって通過させることが可能となるため、洗浄液使用量の削減が可能となる。
なお、原液供給管内の圧力は圧力計によって継続的に計測しており、本実施形態では、圧力計のモニターを原液圧入から一次圧搾への切り替えのタイミングで行っているが、モニター開始のタイミングについては特に限定しない。
【0041】
管内洗浄工程(S4)
一次圧搾工程(S3)から正洗浄工程(S5)に移る前に管内洗浄工程(S4)を実施する。管内洗浄は、原液圧入後に原液供給管10、上部供給孔11a、上部連通路7等の原液供給路内に残っている原液を洗浄液と置換する操作であり、原液が残った管内を洗浄液に置換する作業のことである。洗浄液をリアフレーム3側より供給し、上部供給孔11bを介して上部連通路7を通過させた後、原液供給管10を通過させることで、内部に残っている原液を原液供給管10より排出させることができる。正洗浄に移る前にこの操作を行うことで正洗浄開始時より洗浄液をろ過室28内に供給可能となる。
なお、本実施例では洗浄液を供給しているが、洗浄液の代わりにエアを供給して原液等の残液を排出するようにしてもよい。
【0042】
正洗浄工程(S5)
ろ過室28内のケーキを洗浄するために洗浄液供給ポンプ20を起動して、洗浄液貯留槽21内の洗浄液を0.5~0.7MPaの圧力で上部供給孔11bへ供給する。上部供給孔11bに圧入された洗浄液は、ろ板5及びダイアフラムろ板6の上部に形成された上部連通路7を通過して両ろ板間に張設されたろ布23内に圧入される。
上部連通路7より圧入された洗浄液は、ろ過室28内に形成されたケーキの中心からろ布23面に向かって通過したあと、ケーキ洗浄ろ液として通水孔29a、通水孔29bより排出される。排出されたケーキ洗浄ろ液は、通水孔29aに連通する下部連通路30a、通水孔29bに連通する下部連通路30bを通って外部に排出される。
【0043】
図6のS5に示すように、正洗浄工程(S5)時のろ過室28内はケーキK1の中心に残った少量の流動性を有した原液状物中の母液が洗浄液に置換された状態になっている。正洗浄開始後、時間の経過に伴い、原液状物が洗浄液に置換される。
正洗浄時にケーキ内を通過する洗浄液はケーキの中心から表面に向かって通過するため、比較的、低圧力で洗浄液を通過させることができる。そのため、洗浄時間の短縮を図ることができる。洗浄によって溶解性化合物等の不純物を取り除いた後、ケーキK2を生成する。
後段で実施する二次圧搾工程時のケーキは固化した状態であり、洗浄を行うには洗浄時の通水抵抗が大きくなるため、洗浄液の通過には時間を要する。また、短時間で通過させるためには洗浄液を高圧力で供給する必要がある。
正洗浄開始時(一次圧搾終了時)に洗浄液を中心に流動性を有した原液状物を有するケーキ内に供給することで、洗浄液を短時間で通過させることが可能となり、洗浄時間を短縮することができる。
【0044】
二次圧搾工程(S6)
正洗浄を所定時間実施した後、洗浄液供給ポンプ20を停止し、二次圧搾工程(S6)に移行する。再び、圧搾水供給ポンプ17を起動して0.5~0.7MPaの圧力で圧搾水をダイアフラム27内に供給する。供給された圧搾水によりダイアフラム27が膨張することで、ろ過室28内のケーキに圧搾圧力が加わり、ケーキ中よりろ液が分離される。
二次圧搾は事前に設定された所定時間t4実施した後、終了する。
この時、ろ過室28内は図6のS6に示すように、脱水の進行に伴ってケーキK3が生成される。ケーキK3は流動性がなくなっている。
【0045】
逆洗浄工程(S7)
二次圧搾工程(S6)終了後、圧搾水供給ポンプ17を停止し、逆洗浄工程に移る。再び、洗浄液供給ポンプ20を起動して正洗浄時の圧搾圧力と同等以上の0.5~0.7MPaの圧力で洗浄液を下部供給孔22へ供給する。
このとき、閉板されたダイアフラムろ板6の下部側面に設けられた下部連通路30bより供給された洗浄液が通水孔29bを介してろ過室28内に供給される。
【0046】
ろ過室28内に供給された洗浄液は、ろ過室28内に形成されたケーキ内をダイアフラムろ板6側からろ板5側に向かって貫通するように通過する。
その後、ケーキ洗浄ろ液としてろ板5下部の通水孔29aを介して下部連通路30aを通って排出される。逆洗浄では、洗浄液をケーキ厚みが均一となっているところを通水させるため、通水抵抗が均一であり、ムラなくケーキ全体を洗浄できる。
逆洗浄では、図6のS7に示すように二次圧搾終了後のケーキK3の厚み方向に洗浄液を通過させており、ケーキ中に含まれる溶解性化合物等の不純物を洗浄液と置換している。
【0047】
三次圧搾工程(S8)
逆洗浄を所定時間実施した後、洗浄液供給ポンプ20を停止し、三次圧搾工程に移行する。再び、圧搾水供給ポンプ17を起動して0.7~3.0MPaの圧力で圧搾水をダイアフラム27内に供給する。二次圧搾時より強い圧搾圧力がろ過室28内のケーキに加わり、ケーキ中よりろ液が分離される。
三次圧搾も圧入、二次圧搾と同様に事前に定めた時間実施した後、終了する。
三次圧搾では、一次圧搾、二次圧搾よりも高圧搾を加えることで、図6のS8に示すようにケーキK4が生成される。ケーキK4は流動性がなくなっており、限界状態まで水分が減少している。
【0048】
圧入、二次圧搾、三次圧搾の終了の指標に関して、本実施例では事前に設定した所定時間行っているが、流量計を用いてリアルタイムでろ液量を計測し、単位時間当たりのろ液量が所定値以下になった時点で終了してもよい。必要に応じて三次圧搾終了後にエアブローを実施してもよい。また、圧搾時にダイアフラムを膨張させるために圧搾水を使用しているが、圧搾流体としてエアを用いてもよい。
なお、各工程で設定する圧力の設定値は設計条件に応じて定めるものとし、記載した設定値に限定しない。
【0049】
開板工程(S9)
締め付けシリンダー8を駆動してムーバブルヘッド9の締付を解除し、並列する多数のろ板5及びダイアフラムろ板6をリアフレーム3側へ移動させて開板する。
【0050】
ケーキ排出工程(S10)
ろ板5及びダイアフラろ板6を開板することにより、ケーキは自重、ろ布23の振動あるいはろ布23の走行により機外へ落下する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るフィルタープレスのケーキ洗浄方法は、ろ過室内に生成されたケーキが洗浄に適したタイミングで洗浄を開始するため、ケーキを短時間で効率よく洗浄することが可能となり、洗浄液使用水量を減らすことができる。これに伴って洗浄液供給源の稼働時間の短縮も可能となるため、ランニングコストの削減も可能となる。
したがって、上水・工水スラッジ、化学工業等の生産プロセス、各種産業排水の処理において、ケーキ洗浄を実施するフィルタープレスに有効となる。
【符号の説明】
【0052】
27 ダイアフラム
28 ろ過室
S3 一次圧搾工程
S4 管内洗浄工程
S5 正洗浄工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7