(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101758
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/02 20060101AFI20220630BHJP
C07C 69/24 20060101ALI20220630BHJP
C07C 67/29 20060101ALI20220630BHJP
B01J 27/053 20060101ALI20220630BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
C08G65/02
C07C69/24
C07C67/29
B01J27/053 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216023
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】常光 研徳
(72)【発明者】
【氏名】辻村 将
(72)【発明者】
【氏名】新倉 史也
(72)【発明者】
【氏名】木村 純弘
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4J005
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169CB25
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4G169FB57
4G169FC10
4H006AA02
4H006AC48
4H006BA06
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4H006KC14
4H039CA66
4J005AA02
4J005BB01
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】触媒活性の低下を抑制しつつ、得られる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの洗浄力を維持できる範囲でアルコール添加量を増加させることができる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法を提供する。
【解決手段】硫酸カルシウム触媒と2価アルコールの存在下で、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する付加反応工程を有する脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法であって、前記2価アルコールの含有量が前記付加反応工程における系中の物質全量の1.4質量%以上3質量%以下である、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸カルシウム触媒と2価アルコールの存在下で、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する付加反応工程を有する脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法であって、
前記2価アルコールの含有量が前記付加反応工程における系中の物質全量の1.4質量%以上3質量%以下である、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
【請求項2】
前記2価アルコールが、プロピレングリコールまたはジエチレングリコールである、請求項1に記載の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
【請求項3】
前記脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する反応温度が150℃以上170℃以下である、請求項1または2に記載の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドが付加された脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートは、非イオン界面活性剤として広く用いられており、例えば、液体洗浄剤の洗浄成分として多用されている。
この脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法としては、アルコキシル化触媒の存在下で、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超濃縮液体洗剤に適した低温安定性を確保するために、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造時に、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート中に低分子量のポリアルキレングリコール等のアルコールを一定量含むように製造する必要がある。そのため、反応促進剤として用いるアルコールの添加量を増加させる必要がある。しかしながら、アルコールとしてグリセリンを用いると、触媒活性が低下して反応が進行しない。また、アルコールの添加量が多いと、得られた脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを洗浄剤として用いた際に、その洗浄剤の洗浄力が低下する傾向がある。そのため、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造において、触媒活性の低下を抑制しつつも、得られる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの洗浄力を維持できる範囲でアルコール添加量を増加させる必要があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、触媒活性の低下を抑制しつつ、得られる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの洗浄力を維持できる範囲でアルコール添加量を増加させることができる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]硫酸カルシウム触媒と2価アルコールの存在下で、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する付加反応工程を有する脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法であって、
前記2価アルコールの含有量が前記付加反応工程における系中の物質全量の1.4質量%以上3質量%以下である、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
[2]前記2価アルコールが、プロピレングリコールまたはジエチレングリコールである、[1]に記載の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
[3]前記脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する反応温度が150℃以上170℃以下である、[1]または[2]に記載の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、触媒活性の低下を抑制しつつ、得られる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの洗浄力を維持できる範囲でアルコール添加量を増加させることができる脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法]
以下、本発明の一実施形態に係る脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法について説明する。
本実施形態の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法は、硫酸カルシウム触媒と2価アルコールの存在下で、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する付加反応工程を有する。また、本実施形態の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法は、前記付加反応工程で得られた粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートと、水と、凝集剤とを混合して、凝集物を生成させる凝集工程と、前記脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートと前記凝集物とを分離し、前記凝集物を除去する分離工程と、を有していてもよい。
【0009】
<付加反応工程>
付加反応工程では、硫酸カルシウム触媒と2価アルコールの存在下で、下記一般式(I)で表される脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加して、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを含む粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを得る。
【0010】
「硫酸カルシウム触媒」
本実施形態における硫酸カルシウム触媒は、脂肪酸アルキルエステルのアルコキシル化反応に用いられる触媒である。硫酸カルシウム触媒としては、例えば、(A)成分:カルボン酸のカルシウム塩およびカルシウム酸化物から選ばれる少なくとも1種と(B)成分:硫酸を、(C)成分:イソプロピルアルコール中で混合して得られたものが用いられる。
【0011】
本実施形態における硫酸カルシウム触媒としては、例えば、硫酸カルシウム0.5水和物およびIII型の硫酸カルシウム無水和物から選ばれる少なくとも1種を含む硫酸カルシウム粒子からなるものが挙げられる。
【0012】
本実施形態における硫酸カルシウム触媒は、平均粒径が1μm以上160μmであることが好ましく、100μm以上150μm以下であることがより好ましい。硫酸カルシウム触媒の平均粒径が上記下限値未満では、ろ過速度が低下し、製造性を確保できない。硫酸カルシウム触媒の平均粒径が上記上限値を超えると、EO(エチレンオキシド)付加反応活性が劣化する。
【0013】
本実施形態における硫酸カルシウム触媒は、全体に占める粒径30μm以上300μm以下の成分の割合が70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましい。
粒度分布が上記範囲内であると、良好なろ過性を得られやすい。
【0014】
硫酸カルシウム触媒の平均粒径および粒度分布の測定は、例えば、以下のように行う。粒度分布測定装置として、BECKMAN COULTER社製の「LS 13 320」を用い、レーザ散乱法により触媒の粒度分布を測定する。また、得られた全粒子の粒度分布に対する体積加重での算術平均値を、触媒の平均粒径とする。測定条件を、例えば、下記の通りとする。
モジュール:トルネードドライパウダーモジュール
光源:単色レーザダイオード
波長:750nm
光強度:5mW
サンプル相対濃度:6%
平均粒径の算出方法:全粒子に対する体積加重での算術平均
【0015】
本実施形態における硫酸カルシウム触媒は、目開き1000μmの篩にかけた場合、全体に占める1000μm残分の割合が5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましい。1000μm残分の割合が上記上限値を超えると、比表面積低下によりEO付加反応活性が劣化し、かつEO付加反応において触媒を使用する際に配管の詰まり等の原因となり製造性が低下する。
【0016】
1000μm残分の割合の測定は、例えば、以下のように行う。所定重量の触媒を目開き1000μmの篩にかけ、全体に占める1000μm以上の残分の割合x質量%を測定する。
【0017】
本実施形態における硫酸カルシウム触媒は、BET比表面積が40m2/g以上150m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上150m2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が上記範囲内であると、EO付加反応活性が良好である。
【0018】
硫酸カルシウム触媒のBET比表面積の測定は、例えば、以下のように行う。BET比表面積の測定装置として、多点法のBET比表面積測定装置であるマイクロトラック・ベル株式会社製の「BELSORP-maxIIBELCAT」を用いる。BET比表面積測定装置の2つの同容量のサンプル管の一方に各例の触媒約0.1gを秤量して充填し、他方をブランクとする。その後、サンプル管内を液体窒素で冷却して触媒に窒素を吸着させ、ブランクとの差からBET比表面積を算出する。測定条件を、例えば、下記の通りとする。
前処理:80℃、120分
測定モード:高精度(AFSM)
吸着温度:77K
測定部デバイス:デュワー瓶
吸着質名称:窒素
【0019】
「硫酸カルシウム触媒の製造方法」
本実施形態における硫酸カルシウム触媒の製造方法は、(A)成分:カルボン酸のカルシウム塩およびカルシウム酸化物から選ばれる少なくとも1種と(B)成分:硫酸とを、(C)成分:イソプロピルアルコール中で混合して(A)成分と(B)成分との反応物を生じさせる反応工程と、反応物を(C)成分と分離する分離工程と、分離工程で分離した反応物を(C)成分により洗浄する洗浄工程と、洗浄工程で得られた洗浄ケークを乾燥する乾燥工程と、を備える。
【0020】
<反応工程>
反応工程では、(C)成分中に(A)成分を分散させて、(A)成分の分散液とし、その分散液に(B)成分を滴下し、(C)成分中で(A)成分と(B)成分を混合して、(A)成分と(B)成分との反応物である硫酸カルシウムを生成する。
【0021】
(C)成分中で(A)成分と(B)成分を混合するには、例えば、攪拌翼等を備えた攪拌機を用いて、分散液を攪拌する。
【0022】
(C)成分中に分散させる(A)成分の量、言い換えれば、(A)成分に対する(C)成分の比((C)成分/(A)成分)は2.5以上4.5以下(質量比)であり、3.0以上4.0以下であることが好ましい。(C)成分/(A)成分が上記下限値未満では、(A)成分と(C)成分との反応に伴い、分散液が増粘するため、硫酸カルシウムの生成が進み難くなる。(C)成分/(A)成分が上記上限値を超えると、分散液が希薄となり、(A)成分と(C)成分との反応性が低下する。
【0023】
上記分散液に滴下する(B)成分の量、すなわち、(A)成分に対する(B)成分の比((B)成分/(A)成分)は0.85以上0.99以下(モル比)であり、0.90以上0.96以下であることが好ましい。(B)成分/(A)成分が上記下限値未満では、生成する硫酸カルシウムの粒径が小さくなり、ろ過性が低下する。(B)成分/(A)成分が上記上限値を超えると、硫酸カルシウム触媒を、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法に適用した場合に、EO付加反応活性が発現しない。
【0024】
反応工程における温度は、35℃以上55℃以下であることが好ましい。
反応工程における反応時間は、特に限定されない。本実施形態では、上記分散液に(B)成分を滴下するために要する時間を反応時間とする。
【0025】
硫酸カルシウムの生成反応終了後、硫酸カルシウムを含む分散液を熟成する熟成工程を有することが好ましい。熟成工程では、分散液を35℃以上55℃以下で、5時間以上20時間以下攪拌する。この熟成工程により、スラリーを得る。
ここでいう熟成とは、反応工程において添加した(A)成分と(B)成分を完全に反応させることである。
【0026】
(A)成分であるカルボン酸のカルシウム塩としては、例えば、酢酸カルシウム一水和物、ギ酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等が挙げられる。これらのなかでも、生成する硫酸カルシウム触媒のEO付加反応活性の観点から、酢酸カルシウム一水和物が好ましい。
(A)成分であるカルシウム酸化物としては、酸化カルシウムが挙げられる。
【0027】
(A)成分の平均粒径が30μm以上200μm以下であることが好ましく、120μm以上200μm以下であることがより好ましく、140μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。(A)成分の平均粒径が上記下限値未満では、ろ過速度が低下し、製造性を確保できない。(A)成分の平均粒径が上記上限値を超えると、生成する硫酸カルシウム触媒の粒径が増大することにより、EO付加反応活性が低下する。
【0028】
(A)成分の平均粒径は、レーザ散乱法により測定した全粒子の粒度分布に対する体積加重での算術平均である。
【0029】
(B)成分としては、硫酸が用いられる。硫酸の濃度は、特に限定されないが、例えば、90質量%以上98質量%以下であることが好ましい。
【0030】
(C)成分としては、炭素数1~6のアルコールが挙げられる。炭素数1~6のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール等が挙げられる。これらのなかでも、生成する硫酸カルシウム触媒のEO付加反応活性の観点から、2-プロパノールが好ましい。これらのアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0031】
<分離工程>
分離工程では、硫酸カルシウムを含むスラリー(固液混合物)から、反応工程で得られた反応物を分離する。言い換えれば、反応物を(C)成分と分離する。
分離方法としては、例えば、ろ過、遠心分離等が挙げられる。
分離工程において、例えば、ろ過によりスラリーから(C)成分を除去して、ろ過ケークを得る。
分離工程において、1分以上ろ液の流出がなくなった時点をろ過終点とする。
【0032】
<洗浄工程>
洗浄工程では、分離工程で得られたろ過ケークを、反応工程で用いたものとは別の(C)成分(分散媒)により洗浄し、洗浄ケークを得る。
1回の洗浄に要する(C)成分の量は、特に限定されないが、例えば、ろ過したスラリー100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
洗浄回数は、特に限定されない。
洗浄工程において、1分以上ろ液の流出がなくなった時点をろ過終点とする。
【0033】
<乾燥工程>
乾燥工程では、洗浄工程で得られた洗浄ケークを乾燥し、硫酸カルシウム粒子からなる、本実施形態における硫酸カルシウム触媒を得る。得られた硫酸カルシウム粒子は、硫酸カルシウム0.5水和物およびIII型の硫酸カルシウム無水和物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0034】
乾燥工程における乾燥温度は、50℃以上400℃未満であることが好ましく、50℃以上350℃以下であることがより好ましい。乾燥温度が上記下限値未満であると、乾燥速度が低く、製造性が悪化する。乾燥温度が上記上限値以下であると、硫酸カルシウムが触媒活性を有しないII型無水物の形態になることを抑制できる。
【0035】
乾燥工程における乾燥時間は、10時間以下であることが好ましい。
なお、乾燥の終了は、所定量の触媒粉体を140℃で20分間加熱し、加熱前後での質量減少分が、加熱前の質量に対し10質量%以下であることによって判断する。
【0036】
「2価アルコール((D)成分)」
2価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。低温安定性の改善効果の観点から、プロピレングリコールまたはジエチレングリコールが好ましい。
【0037】
「脂肪酸アルキルエステル」
本実施形態では、下記一般式(I)で表される脂肪酸アルキルエステル(以下「(α)成分」ということがある)が用いられる。
【0038】
R1COOR2 ・・・(I)
[式(I)中、R1は、炭素数9~19のアルキルまたはアルケニル基であり、R2は、炭素数1~3の直鎖アルキル基である。]
【0039】
式(I)中、R1の炭素数は、9~19のアルキルまたはアルケニル基であり、15~17のアルキルまたはアルケニル基であることがより好ましい。
R1は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。
【0040】
式(I)中、R2は、炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、炭素数1のメチル基がより好ましい。
【0041】
(α)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(α)成分としては、デカン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル等の脂肪酸メチルエステルまたはこれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
「アルキレンオキシド」
アルキレンオキシドは、目的とする製造物に応じて決定され、例えば、炭素数2~3のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド)であり、エチレンオキシドが好ましい。また、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、7以上25以下であることが好ましく、9以上20以下であることがより好ましい。
アルキレンオキシドは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
以下、付加反応工程の一例について説明する。
付加反応工程は、上述の硫酸カルシウム触媒と(D)成分の存在下で、(α)成分にアルキレンオキシドを付加して、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを含む粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを得る工程である。付加反応工程は、触媒分散操作と、付加反応操作と、熟成操作と、を有する。
【0044】
本実施形態の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法では、上記(D)成分の含有量が付加反応工程における系中の物質全量の1.4質量%以上3質量%以下であり、1.4質量%以上2.6質量%以下であること好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値未満では、低温安定性が確保できない。(D)成分の含有量が上記上限値を超えると、洗浄力を維持できない。
【0045】
<触媒分散操作>
触媒分散操作は、出発原料である(α)成分に硫酸カルシウム触媒を分散する操作である。本操作は、例えば、ジャケットを備えた混合槽と、混合槽内に設けられたパドル攪拌翼とを備えた反応器を用い、混合槽で(α)成分と硫酸カルシウム触媒とを攪拌する操作が挙げられる。
硫酸カルシウム触媒に対する(α)成分の質量比(以下、「原料/触媒比」ということがある。)は、例えば、20以上1000以下であることが好ましく、30以上200以下であることがより好ましい。原料/触媒比は、目的とする反応時間に応じて任意に設定できるが、原料/触媒比が小さいと、反応後に触媒を分離するのが煩雑になる。
【0046】
触媒分散操作における温度条件は、特に限定されないが、例えば、常温(5℃~35℃)とされる。混合槽内の温度調整は、例えば、ジャケット内に任意の温度の熱媒体(例えば、水)を通流させて行われる。
触媒分散操作における攪拌時間は、特に限定されず、(α)成分と硫酸カルシウム触媒とが略均一になる時間とされる。
【0047】
<付加反応操作>
付加反応操作は、(α)成分にアルキレンオキシドを付加させて、粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを得る操作である。
付加反応操作で得られる粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートには、粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの総量(100質量%)に対して、好ましくは72質量%以上の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートが含まれる。
粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートには、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート以外に、硫酸カルシウム触媒、高分子ポリエチレングリコール(高分子PEG)、未反応分の(α)成分またはアルキレンオキシド等の不純物が含まれる。
【0048】
付加反応操作は、反応槽内で、任意の温度条件下、(α)成分と硫酸カルシウム触媒との混合物にアルキレンオキシドを接触させて行われる。
付加反応操作において、(α)成分に対するアルキレンオキシドの導入量は、目的物におけるアルキレンオキシドの付加モル数を勘案して適宜決定され、例えば、1倍モル以上100倍モル以下であることが好ましく、5倍モル以上80倍モル以下であることがより好ましく、5倍モル以上50倍モル以下であることがさらに好ましい。付加モル数が多いほど、すなわち、アルキレンオキシドの導入量を多くするほど、高分子PEGの生成量が多くなる。このため、本実施形態は、付加モル数が多い脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを製造する際に、顕著な効果を発揮する。
【0049】
付加反応操作の温度条件(付加反応温度)、すなわち、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキシドを付加する反応温度は、150℃以上170℃以下であることが好ましい。二酸化炭素排出量を低下する観点からは、付加反応温度は低温であることが好ましいが、温度が低過ぎると反応時間が長くなり製造効率が低下する。付加反応温度が上記範囲内であると、二酸化炭素排出量を抑制しつつ、製造効率を向上することができる。
【0050】
付加反応操作の圧力条件は、付加反応温度を勘案して適宜決定され、例えば、0.1MPa以上1MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上0.6MPa以下であることがより好ましい。
【0051】
<熟成操作>
熟成操作は、付加反応操作の後、反応槽内を任意の温度で攪拌する工程である。熟成操作を設けることで、未反応の(α)成分の量を低減できる。
熟成操作の温度条件は、例えば、前記の付加反応温度と同様である。
【0052】
<凝集工程>
上記付加反応工程後の反応液(粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート)は白濁している。
凝集工程では、該反応液に水と凝集剤とを加え、粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートと、水と、凝集剤とを混合して、凝集物を生成させる。
【0053】
「凝集剤」
凝集工程で用いられる凝集剤は、前記反応液中に分散している不純物の粒子を凝集させるために用いられる。
凝集剤は、粉末をそのまま用いてもよいし、水溶液として用いてもよい。
【0054】
凝集剤としては、例えば、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属塩化物等が挙げられる。
金属硫酸塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム等が挙げられる。これらのなかでも、不純物の低減効果が特に優れることから、硫酸アルミニウムが好ましい。
金属硝酸塩としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム等が挙げられる。これらのなかでも、不純物の低減効果が特に優れることから、硝酸アルミニウムが好ましい。
金属塩化物としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらのなかでも、不純物の低減効果が特に優れることから、塩化カリウムが好ましい。
凝集剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
凝集剤としては、凝集効果が高いことから、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウムおよび塩化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらのなかでも、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムがより好ましい。
【0055】
以下、凝集工程の一例について説明する。
凝集工程は、反応液(粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート)に、水と、凝集剤とを加えて混合し、凝集物を生成する。混合操作は、上記付加反応工程における反応後の反応槽内で行ってもよいし、反応液を抜き出して別の攪拌槽で行ってもよい。
【0056】
凝集剤の添加量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。凝集剤の添加量が上記範囲内であれば、凝集剤による充分な凝集効果が得られる。上記上限値を超えると、白濁が強まり、高分子PEG等を充分に除去できないことがある。
【0057】
水の添加量は、粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。水の添加量が上記範囲内であれば、凝集剤による充分な凝集効果が得られる。上記上限値を超えると、高分子PEG等を充分に除去できないことがある。
【0058】
凝集工程の温度条件は、例えば、液温を30℃以上80℃以下とすることが好ましく、50℃以上80℃以下とすることがより好ましい。
粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートと水と凝集剤とを混合する時間は、10分間程度から1時間程度の範囲とすることが好ましい。
【0059】
粗脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートに水と凝集剤とを添加して攪拌すると、凝集物が生じてくることが目視で確認できる。該凝集物は、攪拌を停止すると沈降する。
【0060】
<分離工程>
分離工程では、前記凝集工程で生成した凝集物と脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートとを分離し、凝集物を除去する。
前記凝集物は、公知の簡易な固液分離方法で除去可能である。凝集物を除去する方法としては、例えば、濾過または遠心分離等が挙げられる。
分離工程の温度条件は、例えば、液温を30℃以上80℃以下とすることが好ましく、40℃以上80℃以下とすることがより好ましい。
凝集物が除去された後の濾液または残液には、目的物の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート、水が含まれる。
【0061】
本実施形態の脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造方法によれば、上記付加反応工程を有し、上記(D)成分の含有量が上記付加反応工程における系中の物質全量の1.4質量%以上3質量%以下であるため、硫酸カルシウム触媒の触媒活性の低下を抑制しつつ、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの洗浄力を維持できる範囲でアルコール添加量を増加させて、目的とする脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを得ることができる。
【実施例0062】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、エトキシル化反応の出発原料、エトキシル化反応における反応促進剤としては、下記のようなものを用いた。
【0064】
「(A)成分」
酢酸カルシウム一水和物:カルフレッシュ(商品名)、大東化学株式会社製、平均粒径161μm、分子量176.18g/mol
【0065】
「(B)成分」
硫酸:特級試薬、関東化学株式会社製、濃度95質量%、分子量98.08g/mol
【0066】
「(C)成分」
イソプロピルアルコール:特級試薬、関東化学株式会社製
【0067】
「エトキシル化反応の出発原料」
C18脂肪酸メチルエステル(質量比 ステアリン酸メチル:オレイン酸メチル:リノール酸メチル:パルミチン酸メチルおよびその他の微量成分=10:70:18:2の混合物):パステルM182(商品名)、ライオンケミカル株式会社製
EO(エチレンオキシド):エア・ウォーター東日本株式会社製
【0068】
「エトキシル化反応における反応促進剤((D)成分)」
プロピレングリコール:特級試薬、関東化学株式会社製
ジエチレングリコール:特級試薬、関東化学株式会社製
【0069】
[触媒の製造]
耐酸性の容器に酢酸カルシウム一水和物((A)成分)150gとイソプロピルアルコール((C)成分)450gとを入れ、攪拌機により45℃で20分間混合して、イソプロピルアルコール中に、酢酸カルシウム一水和物を分散させて分散液を調製した。
【0070】
<反応工程>
分散液を攪拌しながら、ポンプによって、硫酸((B)成分)81.6gを約80分間かけて滴下し、酢酸カルシウム一水和物と硫酸とを反応させて、これらの反応物を生成した。
反応工程では、硫酸の滴下に伴い発熱するので、容器を、水浴を用いて冷却し、反応温度を45±5℃に制御した。なお、耐酸性の容器としては、例えば、1Lのセパラブルフラスコが用いられる。攪拌機としては、例えば、3枚後退翼を装着したモーター駆動の攪拌機が用いられる。ポンプとしては、例えば、EYELA社製セラミックポンプVSP-1050が用いられる。
【0071】
<熟成工程>
分散液に対する硫酸の滴下が終了した後、分散液を45℃に保ちながら、さらに、攪拌機で12時間攪拌し、各例(実施例1~実施例8、比較例1~比較例3)のスラリーを得た。
【0072】
<分離工程>
得られたスラリーを、ろ過器とろ布を用いて0.1MPaで加圧ろ過し、スラリーから硫酸を除去して、ろ過ケークを得た。
分離工程において、例えば、ろ過面積0.0013m2のステンレス製ろ過器と通気度2.9/m2/m3の綾織ろ布を用い、0.1MPaで加圧ろ過した。
【0073】
<洗浄工程>
その後、ろ過ケーク100質量部に対し20質量部のイソプロピルアルコールをろ過器上部より注ぎ、再度、ろ過ケークのろ過を行い、洗浄ケークを得た。
ここで、洗浄に用いたイソプロピルアルコールは、触媒組成中の(C)成分量には含まれない。なお、分離工程および洗浄工程において、1分以上ろ液の流出がなくなった時点をろ過終点とし、ろ過時間を計測した。
洗浄工程において、例えば、ろ過面積0.0013m2のステンレス製ろ過器と通気度2.9/m2/m3の綾織ろ布を用い、0.1MPaで加圧ろ過した。
【0074】
<乾燥工程>
イソプロピルアルコールと分離した洗浄ケークを減圧加熱乾燥し、触媒を得た。乾燥工程において、例えば、ロータリーエバポレーターを用い、70℃で0.005MPaに減圧し、回転させながら加熱乾燥した。
【0075】
[EO付加反応活性の評価]
表1および表2の反応物量に従い、マックスブレンド翼を備えた4Lオートクレーブに、C18脂肪酸メチルエステル(質量比 ステアリン酸メチル:オレイン酸メチル:リノール酸メチル:パルミチン酸メチルおよびその他の微量成分=10:70:18:2の混合物)と、触媒と、反応促進剤として2価アルコール((D)成分)とを加えた。
これらをマックスブレンド翼により回転数420rpmで攪拌し、窒素置換を行った後、160℃まで昇温した。系内圧力が0.5MPa以下になるように制御しながら、オートクレーブ内にエチレンオキシド(対脂肪酸メチルエステル18.5モル相当)を導入し、160℃にて付加反応させることにより、反応粗製物を約2500g得た。このとき、初期は一定の供給速度(2g/min)でエチレンオキシドを導入した。付加反応が開始し系内圧力の低下が観察された後は、一定の加速度でEOフィード速度を加算しながら供給を行い、9g/minをEO供給の最大速度とした。
【0076】
[脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート粗製物の凝集分離工程]
1Lのセパラブルフラスコに反応粗製物550gを入れ、ここに水9質量%(対反応粗製物100質量%)を添加し、70℃で30分、パドル攪拌翼を用いて470rpmで混合した。その後、硫酸アルミニウム14~18水和物0.1質量%(対反応粗製物100質量%)を添加し、70℃で45分混合することにより凝集物を生成させ、混合液を得た。次いで、得られた混合物を50℃に冷却し、30%水酸化ナトリウム溶液0.07質量%(対反応粗製物100質量%)を添加して、混合物を中和した。この後、遠心分離機(AS ONE社製 AS185)を用いて脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートと凝集物とを分離し、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの精製品を得た。
【0077】
[低分子PAGの測定]
脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート反応粗製物中の低分子PAG濃度は、液体クロマトグラフィー(LC法)を用いて求めることが可能である。ここで、低分子PAGとは、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートの製造により得られる副生成物のことであり、分子量1000以下のポリアルキレンレングリコール、およびモノまたはジメトキシポリアルキレングリコールのことである。例えば、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートをLC法により測定し、低分子PAGに相当するピークと、別に測定するポリエチレングリコール標準品(日本乳化剤製 15モル相当)とのピーク強度比より算出する。LC法での測定法を以下に示す。
【0078】
「低分子PAGの測定条件」
カラム:ODS ガードカラム+Shodex Asahipak GF-510HQ (7.5mm×300mm)
カラム温度:30℃
検出器:示差屈折率検出器(RI)
移動相:蒸留水、0.6mL/min
試料注入量:200μL
測定機器(LC):株式会社島津製作所製 LC-20AD
【0079】
[モデル液体洗浄剤の調製]
上述の方法で得られた脂肪酸アルキルエステルアルコキシレートを用いて、モデル液体洗浄剤を純分換算で下記の濃度になるように調製した。
脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート:20質量%
アルコールエトキシレート(炭素数12および14の天然アルコール(第1級アルコール)に15モル相当のエチレンオキシドを付加したもの):16質量%
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(炭素数10~14):8質量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(炭素数12および14の天然アルコール(第1級アルコール)に1モル相当のエチレンオキシドを付加したものを硫酸化したもの):7質量%
エタノール:2質量%
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール:5質量%
pH調整剤:NaOH(pHを7とした)
プロテアーゼ:0.5質量%
アミラーゼ:0.1質量%
残分:水
【0080】
[低温安定性の評価]
上述の方法で得られたモデル液体洗浄剤を、-5℃の恒温室にて1ヶ月間静置した。保存前後に外観を比較し、外観に変化のないものを「○」、濁りがでたものを「△」、固化・析出の見られたものを「×」と評価した。
【0081】
[洗浄力の評価]
油化協布(未汚れ布)に人工汚垢を含侵させて作成した人工汚垢布(洗濯科学協会製)を、5cm×5cmに裁断したものを汚染布とした。洗浄試験機として、Terg-O-tometer(UNITED STATES TESTING社製)を用いた。洗濯液として、水(15℃)900mLに対して、上述の方法で得られたモデル液体洗浄剤を333ppmになるように加え、30秒間攪拌して調整したものを用いた。
洗濯試験機に、洗濯液と、上記の人工汚垢布10枚を投入し、浴比20倍に合わせて120rpm、15℃で10分間洗浄した。その後、水30L中で3分間濯ぎ、二層式洗濯機(三菱電機社製:製品名CW-C30A1-H1)に移し1分間脱水し、風乾した。
洗浄前後の人工汚垢布について、それぞれ反射率を色差計(日本電色社製:製品名SE2000型)で測定し、下記式により洗浄率(%)を求めた。ただし、K/Sは、(1-R/100)2/(2R/100)であり、Rは未汚れ布、及び洗浄前後の反射率(%)を示す。
洗浄率(%)=(洗浄前の人工汚垢布のK/S-洗浄後の人工汚垢布のK/S)/(洗浄前の人工汚垢布のK/S―未汚れ布のK/S)×100
人工汚垢布10枚についてそれぞれ洗浄率を求め、その平均値を算出し、モデル液体洗浄剤の洗浄率とした。そして下記基準に基づいて、洗浄力を評価した。洗浄率が50%以上を「○」、洗浄率が50%未満を「×」と評価した。
【0082】
【0083】
【0084】
表1の結果から、実施例1~実施例8では、(D)成分の含有量が付加反応工程における系中の物質全量の1.4質量%以上3質量%以下とすることで、モデル液体洗浄剤の低温保存安定性が向上し、洗浄力が向上することが分かった。
表2の結果から、比較例1では、付加反応工程において(D)成分を用いなかったため、反応が進行しなかった。比較例2では、(D)成分の含有量が付加反応工程における系中の物質全量の1.0質量%であるため、低温保存安定性が低いことが分かった。比較例3では、(D)成分の含有量が付加反応工程における系中の物質全量の4.0質量%であるため、洗浄力が低いことが分かった。