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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101772
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】即席加工食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/20 20160101AFI20220630BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20220630BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216052
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一
(72)【発明者】
【氏名】荻原 宏幸
【テーマコード(参考)】
4B023
4B041
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC09
4B023LE30
4B023LK01
4B023LK08
4B023LP20
4B023LQ01
4B023LQ02
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH00
4B041LH02
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK02
4B041LP01
4B041LP07
4B041LP12
4B041LP21
(57)【要約】
【課題】湯戻しにより所定の形状に復元し、湯戻し後には形状を維持できるとともに良好な食感が得られ、しかも低糖質の即席加工食品、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る即席加工食品は、2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤と、少なくとも一部が澱粉である食品多糖類とを含有する嵩密度が0.2~0.7g/cm3の成形体であって、前記ゲル化剤の含有量は1~40質量%であり、前記成形体に対して0.1~1質量%の2価金属を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤と、少なくとも一部が澱粉である食品多糖類とを含有する嵩密度が0.2~0.7g/cm3の成形体であって、
前記ゲル化剤の含有量は1~40質量%であり、
前記成形体に対して0.1~1質量%の2価金属を含有することを特徴とする即席加工食品。
【請求項2】
前記食品多糖類は難消化性澱粉を含有し、前記難消化性澱粉の含有量は前記成形体の40質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の即席加工食品。
【請求項3】
前記食品多糖類は穀粉を含有し、前記穀粉の含有量は前記成形体の60質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の即席加工食品。
【請求項4】
前記食品多糖類はハイドロコロイドを含有し、前記ハイドロコロイドの含有量は前記成形体の30質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の即席加工食品。
【請求項5】
請求項1記載の即席加工食品の製造方法であって、
少なくとも一部が澱粉である60~99質量部の食品多糖類と、1~40質量部の2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤とを混合して100質量部の成形原料を調製する工程、
得られた成形原料を、水の存在下、40~140℃で加熱加圧し、混錬、減圧吐出して、嵩密度が0.2~0.7g/cm3の成形体を得る工程、
2価金属の含有量が0.1~1質量%となるように前記成形体に2価金属塩を添加して、2価金属イオンと前記ゲル化剤とを反応させる工程、および
前記成形体を乾燥させる工程
を備える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席加工食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡単に喫食できる即席食品に対する需要が高まりつつある。また、澱粉を多く含む白米は、高カロリー・糖質過多であるとして、ダイエットや健康志向の観点から摂取を抑える人々も増加している。即席で喫食可能な米加工品としては、例えば、α化米、膨化米(パフ米)、油調米等が知られている。
【0003】
α化米は、熱湯で復元する乾燥米飯として広く親しまれている。α化米のカロリー、糖質等の栄養成分は、うるち米と同程度である。膨化米は、注湯後に経時的にふやけやすいため、炊飯米に比べて食感が劣る。なお、膨化米の栄養成分は、α化米と同程度である。油調米は、うるち米等の米原料を油で揚げることで復元性を付与したものであるため、カロリー、糖質はうるち米より高い。
【0004】
特許文献1には、澱粉と澱粉の重量に対して、0~20倍のデキストリン、0.003~7倍のゲル化剤、および0.03~20倍の白濁剤とを含有する乾燥粒状物である低カロリー食品素材が記載されている。しかしながら、この食品素材は通常の米とまぜて炊飯するものであり、湯戻しして喫食する即席食品ではない。また、米粉などの穀粉が含まれていない。
【0005】
特許文献2、3には、澱粉、トレハロース、2価の金属イオンによりゲル化または加熱によりゲル化するゲル化剤、白濁剤を含有し、ゲル化した粒状物である低カロリー食品素材が記載されている。これらに記載されているのは、通常の米と混ぜて炊飯するものであり、湯戻しして喫食する即席食品ではない。米粉などの穀粉は、これらの低カロリー食品素材には含まれていない。
【0006】
特許文献4には、耐性澱粉を含む成形食品の製造方法が記載されているが、これは通常の米と混ぜて炊飯するものであり、湯戻しして喫食する即席食品ではない。また、米粉などの穀粉は、含まれていない。
【0007】
また、低カロリーの粒状食品素材として、大塚マンナンヒカリが知られている(特許文献5参照)。これは、水を加えて加熱する炊飯により喫食が可能となるものであり、即席で喫食可能なものではない。
【0008】
従来の疑似米は、通常の米に混ぜて炊飯するものがほとんどであった。これらの疑似米は、澱粉に蒟蒻マンナンなどの多糖類を加えて成形したもので低カロリー化が主たる目的であった。このため、味や食感については十分に満足するものがなかった。簡便性のための即席タイプの疑似米は、戻しした際に澱粉が溶け出して粥状になるなど通常の米飯とは程遠いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-225719号公報
【特許文献2】特開2003-310187号公報
【特許文献3】特開2009-195178号公報
【特許文献4】特開2011-182664号公報
【特許文献5】特開2009-195178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、湯戻しにより所定の形状に復元し、湯戻し後には形状を維持できるとともに良好な食感が得られ、しかも低糖質の即席加工食品、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも一部が澱粉からなる食品多糖類に、2価金属イオンでゲル化するゲル化剤を所定量加えて成形された嵩密度が0.2~0.7g/cm3の成形体に対し、2価金属塩を所定量加えることで、湯戻しにより所定の形状に復元し、湯戻し後には形状を維持して良好な食感が得られ、しかも糖質の低減された即席加工食品が得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る即席加工食品は、2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤と、少なくとも一部が澱粉である食品多糖類とを含有する嵩密度が0.2~0.7g/cm3の成形体であって、前記ゲル化剤の含有量は1~40質量%であり、前記成形体に対して0.1~1質量%の2価金属を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る即席加工食品の製造方法は、少なくとも一部が澱粉である60~99質量部の食品多糖類と、1~40質量部の2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤とを混合して100質量部の成形原料を調製する工程、得られた成形原料を、水の存在下、40~140℃で加熱加圧し、混錬、減圧吐出して、嵩密度が0.2~0.7g/cm3の成形体を得る工程、2価金属の含有量が0.1~1質量%となるように前記成形体に2価金属塩を添加して、2価金属イオンと前記ゲル化剤とを反応させる工程、および前記成形体を乾燥させる工程を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、湯戻しにより所定の形状に復元し、湯戻し後には形状を維持できるとともに良好な食感が得られ、しかも低糖質の即席加工食品、およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の即席加工食品は、2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤と食品多糖類とを含有する成形体である。食品多糖類の少なくとも一部は澱粉であり、ゲル化剤の含有量は1~40質量%に規定される。さらに、成形体に対して0.1~1質量%の2価金属を含有している。
【0016】
2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤(以下、単にゲル化剤とも称する)は、食品多糖類としての澱粉のα化による湯戻し時の溶け出しを防止する。ゲル化剤は、ペクチン、アルギン酸塩、カラギナン、ジェランガム、およびこんにゃく粉(グルコマンナン)から選択される。これらは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。所定量のゲル化剤が含有されることによって、食品のカロリーや糖質を低減することが可能となった。
【0017】
ゲル化剤の含有量は、成形体の1~40質量%である。ゲル化剤が少なすぎる場合には、湯戻し時の溶け出し防止の効果を得ることができない。一方、ゲル化剤が多すぎる場合には、湯戻し後の食品の食感が損なわれる。ゲル化剤の含有量は、成形体の1~20質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明の即席加工食品における食品多糖類の少なくとも一部は、澱粉である。澱粉は、天然澱粉および加工澱粉のいずれであってもよく、食用として利用されている各種澱粉を用いることができる。天然澱粉は特に限定されないが、例えば、タピオカ澱粉、米澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、大麦澱粉、ワキシーコーンスターチ、甘薯澱粉、および馬鈴薯澱粉等が挙げられる。
【0019】
加工澱粉は特に限定されないが、例えば、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、およびデンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられる。
【0020】
上述したような澱粉とともに、難消化性澱粉、穀粉、ハイドロコロイドから選択される少なくとも一種を用いて食品多糖類を構成してもよい。
【0021】
難消化性澱粉が含有された場合には、食品のカロリーや糖質をよりいっそう低減することができる。難消化性澱粉の含有量は、成形体の40質量%以下であることが好ましい。例えば難消化性澱粉が含有された米状加工品は、通常の米飯に比べてカロリーが低いことから、糖尿病予備軍の人にも有効となる。
【0022】
穀粉は、米様の食感、味を食品に付与することができる。穀粉の含有量は、成形体の60質量%以下であることが好ましい。穀粉は、食品への使用が可能なものであれば特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、米粉、小麦粉、大麦粉、くず粉、大豆粉、緑豆粉、そば粉、ひえ粉などが挙げられる。
【0023】
ハイドロコロイドが含有されることによって、任意の形状の食品の成形がより容易となる。さらに、湯戻り性、食味もより優れたものとなる。成形体の30質量%以下であることが好ましい。ハイドロコロイドは、食品への使用が可能であれば特に限定されず、任意のものを用いることができる。
【0024】
ハイドロコロイドとしては、例えばグアガム、タラガム、低メトキシル化ペクチン(LMペクチン)、高メトキシル化ペクチン(HMペクチン)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イオタカラギナン、ラムダカラギナン、ゼラチン、アラビアガム、プルラン、キサンタンガム、サクシノグルカン、寒天、カッパカラギナン、こんにゃく粉(グルコマンナン)、ローカストビーンガム、カシアガム、フェヌグリークガム、タマリンドガム、脱アシル型ジェランガム、ネーティブ型ジェランガム、サイリューム、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(CMC-Na)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびメチルセルロース(MC)等から選択することができる。これらハイドロコロイドは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上述したようなゲル化剤および食品多糖類に加えて、本発明の即席加工食品には、食味、外観、成形性に悪影響を与えない範囲で添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば着色料、香料、調味料、油脂、タンパク、ビタミン類、およびミネラル類等が挙げられる。添加剤の含有量は、例えば10質量%以下程度である。
【0026】
本発明の即席加工食品は、ゲル化剤および食品多糖類を含有する所定形状の成形体を作製し、次いで、2価金属塩を加えて2価金属イオンを作用させることにより製造することができる。成形体は、嵩密度が0.2~0.7g/cm3の範囲内である。嵩密度を0.2~0.7g/cm3とすることにより、湯戻りが早く即席性が高いものとなる。嵩密度が0.2g/cm3未満の米状加工品は、米に比べて柔らかい食感である。一方、嵩密度が0.7g/cm3を超えると米に比べて硬い食感の米状加工品となる。製造中に所定の条件で発泡処理を施すことによって、嵩密度が0.2~0.7g/cm3の範囲内の成形体が得られる。
【0027】
発泡処理は、加圧加熱機であるエクストルーダーを用いることにより実現できる。成形体は、成形原料をエクストルーダー内に収容し、水の存在下で加熱加圧、混錬し、減圧吐出することにより製造することができる。エクストルーダー内には、成形原料と水とを一般的な手法で予め混合した成形原料混合物を収容してもよい。成形原料は、上述したゲル化剤、食品多糖類、および必要に応じて添加剤を配合して調製することができる。水の配合量は、成形原料混合物(成形原料+水)全体の5~90質量%程度が好ましく、10~70質量%がより好ましい。
【0028】
エクストルーダーは、スクリューとシリンダにより圧縮・せん断・混合・混錬などの動作を行うことができ、成形、組織化、溶融、殺菌などの処理のために食品の製造に利用されている。本発明においては、成形原料を加水しながら加圧加熱して膨化させることにより、嵩密度が0.2~0.7g/cm3の範囲内の成形体を得ることができる。
【0029】
エクストルーダーとしては、単軸型のもの、二軸に代表される多軸型のものが知られているが、二軸エクストルーダーを用いるのが好ましい。スクリューの基本的な構成は、原料供給口からダイスに向かってピッチが狭くなるストレート形である。膨化を強化するために、ニーディングスクリュー、リバーススクリューおよびパイナップルエレメントを組み込んでもよい。
【0030】
加熱温度は、40~140℃の範囲に規定され、50~100℃が好ましい。温度が高いほど、得られる成形体の嵩密度は低くなる。また、エクストルーダーの加圧条件としては、20~120kg/cm2程度が好ましい。エクストルーダー内において加熱加圧された成形原料混合物は、ダイスより押し出され、大気中で減圧されて膨化する。同時に、成形原料混合物中の水分が蒸発することにより気泡が内包される。このようにして、嵩密度が0.2~0.7g/cm3の範囲内で所定の形状の成形体が得られる。
【0031】
所定形状の成形体に対して、2価金属塩の水溶液を噴霧や浸漬などにより接触させる。2価金属塩としては、食品としての使用が可能であり、かつゲル化剤との併用でゲルを形成するものであれば特に限定されない。例としては、カルシウム、マグネシウムなどの2価の金属を含む塩が挙げられる。具体的には、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、焼成貝カルシウム、および卵殻カルシウムなどのカルシウム塩、塩化マグネシウム、および乳酸マグネシウムなどの水溶性マグネシウム塩などが挙げられる。
【0032】
2価金属塩は、即席加工食品中における2価金属の含有量が0.1~1質量%となる量で添加される。2価金属塩中の2価金属の含有量は、金属塩の種類、解離度、結晶水などにより異なるため、即席加工食品中の含有量が0.1~1質量%となるように、2価金属塩の量を適宜調整する。
【0033】
所定形状の成形体に、2価金属塩の水溶液を噴霧や浸漬などの方法で接触させることで、2価金属イオンによりゲル化するゲル化剤と金属イオンを反応させることができる。使用した2価金属塩における2価金属は、必ずしも全てが最終の即席加工食品中に含有されるわけではない。最終の即席加工食品中の2価金属量を調べて、0.1~1質量%となるように2価金属塩量を決定する。2価金属塩が全て使用された場合は、2価金属塩量から2価金属量が求められる。
【0034】
2価金属は、成形体に対して0.1~1質量%の量で含有される。所定量の2価金属が含有されることにより成形体に十分な保形性が付与されるので、湯戻しした際に形状を維持することができ、しかも所望の食味が得られる。
【0035】
ゲル化剤を2価金属イオンと反応させた後、減圧乾燥または熱乾燥などにより成形体を乾燥することで、本発明の即席加工食品が得られる。乾燥後の成形体における水分量は、1~30質量%程度であることが好ましい。
本発明の即席加工食品が米状加工品の場合、発泡状態では膨化米と同様の見た目を有している。この米状加工品は、通常米に混ぜて炊飯して喫食するのではなく、湯戻しにより米状等の形状に復元させ喫食する即席食品である。湯戻し後には、うるち米に近い良好な食感が得られる。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。食品多糖類、ゲル化剤、および2価金属塩を種々の組成で組み合わせて米状加工品を製造し、得られた米状加工品を湯戻しして評価した。
【0037】
まず、食品多糖類として種々の澱粉とゲル化剤としてのアルギン酸Naとを組み合わせて、成形原料として用いた。澱粉とアルギン酸Naとを下記配合比で配合し、エクストルーダー(株式会社日本製鋼所製)を用いて水とともにシリンダ内に供給して、加熱加圧処理した。水の配合量は、成形原料混合物(成形原料+水)全体の25質量%程度とした。スクリューの構成は、ストレート形を基本とし、先端付近にニーディングスクリューを組んだ。
【0038】
処理条件は、加熱温度70℃、加圧圧力80kg/cm3、スクリュー回転数400rpmとした。米形状のダイスにより、米状の成形体を得た。成形体の嵩密度は、0.5g/cm3であった。嵩密度は、100mLのステンレス製円筒型容器を用いて求めた。容器内に成形体を充填して成形体の質量を測定し、成形体の質量を100で除して嵩密度を算出した。同様の測定を3回繰り返し、測定値の平均値を嵩密度とした。
【0039】
得られた成形体に対して3質量%の塩化カルシウムを噴霧により加えて、カルシウムイオンとアルギン酸Naとを反応させ、米状加工物を得た。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。金属イオンの含有量は、ICP(ICPE-9000島津製作所社製)を使用して測定した。
【0040】
米状加工物を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、目視により保形性を確認し、戻り倍率および食感を評価した。それぞれの評価基準は、以下のとおりである。
<保形性>
×:保形性なし
△:わずかに形状の崩れがある
○:十分な保形性がある
保形性は、“○”であることが好ましいが、“△”も許容される。
<戻り倍率>
米状加工品を熱湯にて湯戻しし、5分後の湯を切って質量を測定した。米状加工品1gあたりの戻り倍率を算出した。戻り倍率は、3倍以上であれば合格である。
<食感>
×:悪い
△:普通
○:好ましい
◎:より好ましい
食感は、普通以上の評価であれば合格である。
【0041】
さらに、戻り後100g当たりのエネルギー(kcal)および糖質(g)を求めた。得られた結果を、配合比とともに下記表1にまとめる。なお、表中の「%」は、「質量%」を表し、以降の表においても同様である。
【0042】
【表1】
【0043】
上記表1に示されるように、食品多糖類として澱粉を用いる場合には、60~90質量%の澱粉と、40~10質量%のゲル化剤とにより成形体を構成することによって、保形性、戻り倍率、および食感の優れた米状加工品が得ることができる。
なお、本発明の米状加工品は、40~10質量%のゲル化剤を含有しているので、うるち米、α化米、および油調米より低エネルギー、低糖質である。
【0044】
タピオカ澱粉と各種のゲル化剤と組み合わせて、成形原料として用いた。タピオカ澱粉とゲル化剤とを下記配合比で配合し、上述と同様のエクストルーダーを用い、同様の条件で処理して、米状の成形体(嵩密度:0.5g/cm3)を得た。得られた成形体に対して3質量%の塩化カルシウムを加えて反応させることで、米状加工物を得た。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。
【0045】
米状加工物を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、目視により保形性を確認し、戻り倍率および食感を上述と同様に評価した。得られた結果を、配合比、エネルギーおよび糖質とともに、下記表2にまとめる。
【0046】
【表2】
【0047】
上記表2に示されるように、食品多糖類としてタピオカ澱粉を用いる場合には、成形体の1~30質量%のゲル化剤が含有されていれば、保形性、戻り倍率、および食感の優れた米状加工品を得ることができる。
【0048】
90質量%の澱粉(馬鈴薯澱粉)と、10質量%のゲル化剤(脱アシルジェランガム)とを成形原料として用いた。上述と同様のエクストルーダーを用い、同様の条件で処理して、米状の成形体(嵩密度:0.5g/cm3)を得た。得られた成形体に各種の2価金属塩を含む液体に10分間浸漬して反応させ、乾燥させることで米状加工物を得た。
【0049】
米状加工物を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、目視により保形性を確認し、戻り倍率および食感を上述と同様に評価した。得られた結果を、配合比、エネルギーおよび糖質とともに、下記表3にまとめる。
【0050】
【表3】
【0051】
0.1~1質量%の2価金属が含有されるように2価金属塩の添加量を調整することにより、米状加工品が得られる。成形体に対して0.1~1質量%の2価金属が含有された米状加工品は、保形性、戻り倍率、および食感の優れることが、上記表3に示されている。
【0052】
70質量%の澱粉(タピオカ澱粉)と、20質量%の難消化性澱粉と、10質量%のゲル化剤(アルギン酸Na)とを成形原料として用いた。上述と同様のエクストルーダーを用い、温度を20~160℃の範囲内で変更した以外は同様の条件で処理して、種々の嵩密度の米状の成形体を得た。得られた成形体に対して3質量%の塩化カルシウムを加えて反応させ、米状加工物を得た。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。
【0053】
米状加工物を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、目視により保形性を確認し、戻り倍率、食感および嵩密度を上述と同様に評価した。得られた結果を、加熱温度、嵩密度、エネルギーおよび糖質とともに、下記表4にまとめる。
【0054】
【表4】
【0055】
上記表4に示されるように、成形体の嵩密度が0.2~0.7g/cm3であれば、保形性、戻り倍率、および食感の優れた米状加工品を得ることができる。
【0056】
10質量%のゲル化剤(アルギン酸Na)を用い、澱粉(タピオカ澱粉)の一部を難消化性澱粉に変更して成形原料を調製した。タピオカ澱粉と難消化性澱粉とを下記配合比でし、ゲル化剤を加えて成形原料とした。上述と同様のエクストルーダーを用い、上述と同様の条件で成形原料を処理して、米状の成形体(嵩密度:0.5g/cm3)を得た。得られた成形体に対して、3質量%の塩化カルシウムを加えて反応させることで米状加工物を得た。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。
【0057】
米状加工物を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、上述と同様に食感を評価した。得られた結果を、配合比、エネルギーおよび糖質とともに、下記表5にまとめる。
【0058】
【表5】
【0059】
上記表5に示されるように、食品多糖類の一部として難消化性澱粉が用いられる場合、難消化性澱粉の含有量が成形体の40質量%以下であれば、保形性、戻り倍率、および食感の優れた米状加工品を得ることができる。
【0060】
10質量%のゲル化剤(脱アシルジェランガム)、10質量%の難消化性澱粉(パインスターチRT)を用い、澱粉(タピオカヒドロキシプロピル澱粉)の一部を各種穀粉に変更して成形原料を調製した。澱粉と穀紛とを下記配合比で配合し、ゲル化剤および難消化性澱粉を加えて成形原料とした。上述と同様のエクストルーダーを用い、上述と同様の条件で成形原料を処理して、米状の成形体(嵩密度:0.5g/cm3)を得た。得られた成形体に対して、3質量%の塩化カルシウムを加えて反応させることで米状加工物を得た。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。
【0061】
米状加工物を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、上述と同様に食感を評価した。得られた結果を、配合比とともに、下記表6にまとめる。
【0062】
【表6】
【0063】
上記表6に示されるように、食品多糖類の一部に穀粉が用いられる場合、その含有量が成形体の60質量%以下であれば、食感の優れた米状加工品を得ることができる。
【0064】
10質量%のゲル化剤(LMペクチン)を用い、澱粉(馬鈴薯ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉)の一部を各種ハイドロコロイドに変更して成形原料を調製した。澱粉とハイドロコロイドとを下記配合比で配合し、ゲル化剤を加えて成形原料とした。上述と同様のエクストルーダーを用い、上述と同様の条件で成形原料を処理して、米状の成形体(嵩密度:0.5g/cm3)を得た。得られた成形体に対して、3質量%の塩化カルシウムを加えて反応させることで米状加工物を得た。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。
【0065】
米状加工物を85℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、目視により保形性を確認し、戻り倍率および食感を上述と同様に評価した。得られた結果を、配合比とともに下記表7にまとめる。
【0066】
【表7】
【0067】
上記表7に示されるように、食品多糖類の一部にハイドロコロイドが用いられる場合、その含有量が成形体の30質量%以下であれば、保形性、戻り倍率、および食感の優れた米状加工品を得ることができる。
【0068】
10質量%のゲル化剤(κカラギナン)と90質量%の澱粉(甘藷澱粉)とを用いて成形原料を調製した。ダイス形状を変更した以外は上述と同様のエクストルーダーを用い、上述と同様の条件で成形原料を処理して、種々の形状の成形体を作製した。得られた成形体に、上述と同様に2価金属塩としての塩化カルシウムを加えて即席加工食品を製造した。2価金属塩の添加量は、いずれも成形体に対して3質量%とした。成形体における2価金属(Ca)の含有量は、0.6質量%である。
【0069】
即席加工食品を90℃熱湯で5分間戻して、評価用サンプルとした。評価用サンプルについて、目視により保形性を確認し、戻り倍率および食感を上述と同様に評価した。得られた結果を、即席加工食品の形状とともに下記表8にまとめる。
【0070】
【表8】
【0071】
上記表8に示されるように、少なくとも一部が澱粉からなる食品多糖類に、2価金属イオンでゲル化するゲル化剤を所定量加えて成形し、2価金属塩を加えることで保形性、戻り倍率、および食感の優れた任意の形状の即席加工食品を得ることができる。