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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101785
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】回転研磨具
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/02 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B24B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216079
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】391059702
【氏名又は名称】ケヰテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸嗣
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA04
3C158AA06
3C158AA16
3C158AB09
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】 研磨作業を効率よく行うことのできる操作性に優れた横型回転研磨具の提供。
【解決手段】 被研磨面に駆動用モータ3の重さが直接掛からない横型回転研磨具10において、本体側部に把持部の形状が球状である球状サブグリップ5が取り付けられている横型回転研磨具。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨面に駆動用モータの重さが直接掛からない横型回転研磨具において、本体側部に把持部の形状が球状である球状サブグリップが取付けられていることを特徴とする横型回転研磨具。
【請求項2】
前記球状サブグリップの中心軸線を含む平面での全体断面形状は、取付け端部の周縁が隆起したオメガ形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の横型回転研磨具。
【請求項3】
前記球状サブグリップの取付け端面に設置されたボルトが前記本体の側部に設置されたネジ穴にねじ込まれ、球状サブグリップが取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の横型回転研磨具。
【請求項4】
前記ネジ穴が少なくとも二箇所に設置され、前記球状サブグリップの取付け位置が調整可能であることを特徴とする請求項3に記載の横型回転研磨具。
【請求項5】
回転軸として延長シャフトを取付けたことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の横型回転研磨具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転研磨具に関し、特に研磨作業を効率よく行うことができる操作性に優れた回転研磨具に関する。
【背景技術】
【0002】
回転研磨具による研磨は、繊維材やスポンジからなるバフなどの研磨部材が取り付けられた研磨盤を駆動用モータにより回転させ、研磨部材の表面を被研磨面に押し当てることで行われる。そして、回転研磨具は研磨盤と本体ボディに収納される駆動用モータの位置関係によって、縦型と横型に分類され、縦型は駆動用モータが研磨盤の回転軸のほぼ軸上に搭載され、駆動用モータの重さが被研磨面に直接掛かるものである。横型は駆動用モータの向きが横になって搭載されており、研磨盤の回転軸と駆動用モータの出力軸とはベベルギアなどを用いて直交方向に連結され、モータの重さが塗膜面には直接掛からない構造となっている。
【0003】
縦型回転研磨具20を図8に示す。縦型回転研磨具20の本体1には駆動用モータ3が収納され、回転盤7の回転軸6は駆動用モータの出力軸と直接連結している。回転盤7にはバフなどの研磨部材8が取り付けられて、研磨盤となっている。そして、本体1の後方部にはメイングリップ2が取付けられ、本体1の左側部には棒状サブグリップ15が取付けられている。この回転研磨具20による研磨作業は、右手でメイングリップ2を左手で棒状サブグリップ15を把持して、駆動用モータ3により回転盤7を回転させながら、研磨部材8の表面を被研磨面に押し付けて研磨を行うが、駆動用モータ3の重さは回転軸6を経由して回転盤7の中心部に掛かり、研磨部材8を被研磨面に押し付け研磨作用を補助する役割を担う。
【0004】
また、回転研磨具の研磨対象となる被研磨面は、単純な平面だけではなく、車体の塗装面などのように三次元曲面で構成されている場合も多く、さらに、被研磨面は水平面だけでなく、斜面や垂直面の場合もある。このような被研磨面に対応し、研磨部材8の表面を被研磨面に押し当てて研磨を行うには、図8に示すように縦型回転研磨具20におけるメイングリップ2の中心軸(X軸)周りの回転(ロール)、棒状サブグリップ15の中心軸(Y軸)周りの回転(ピッチ)、回転軸6の中心軸(Z軸)周りの回転(ヨー)の各回転の方向に力を加えて、研磨部材8の表面を被研磨面に押しつける必要がある。
【0005】
縦型回転研磨具20では、前記したように駆動用モータ3の重さが被研磨面に掛かるため、ロール方向への力は棒状サブグリップ15にて、ピッチ方向への力はメイングリップ2にて、ヨー方向への力はメイングリップ2と棒状サブグリップ15にて、それぞれの方向への力を加えることが容易にできる。そして、特許文献1に提案されているように、サブグリップの中心軸線が、回転軸と直交する面に対し回転軸の後方側に特定の角度(5°~40°)に傾斜することで、研磨作業において、作業性を改善しようとする提案もあるがその効果は、縦型回転研磨具に対するものである。
【0006】
一方、横型回転研磨具では、駆動用モータの向きが横になって搭載されており、研磨盤の回転軸と駆動用モータの出力軸とは直交方向に連結され、モータの重さは被研磨面には直接掛からない構造となっている。そのため、図1に示す横型回転研磨具10では、本体1の内部には駆動用モータは収納されておらず、回転軸6を経由して回転盤7の中心部に駆動用モータの重さに相当する力が加わらない。そのため、図9に示すようにサブグリップを棒状サブグリップ15とした場合では、回転盤7の中心部に相当するa点において棒状サブグリップ15にて加える力には、駆動用モータの重さに相当する力を足して加える必要がある。この場合、a点において力を加えるためには、把持部におけるo点を中心とした矢印で示す偶力によることになり、a点で力Faを得るためには、把持部の端部であるb点における力Fbを、o点とa点の間の長さと、o点とb点の間の長さに反比例する大きな力である力Fbの偶力を加える必要がある。例えば、駆動用モータの重さも加味して、力Faとして50N、ao間長さが11cm、bo間長さが4cmであれば、力Fbは137.5Nの力が必要となり、手首を捻る操作でこのような力を加える操作は容易ではない。このように、棒状サブグリップ15を取付けた横型回転研磨具10では、前記したロール方向での力の制御操作は効率が悪く、また、ピッチ、ヨーの各方向へ力を加える際も、駆動用モータの重さの力の補助がなく、より大きな力を加える必要があり、同様に操作は容易ではない。
【0007】
一方、図10に示すように横型回転研磨具10では、研磨具の本体前端部に舌状サブグリップ25や本体の上部に弓状サブグリップ35を設置して、これらのサブグリップを把握して研磨作業を行うことも行われている。しかし、車体の塗装面の研磨では、ドアミラーなどの外装部品の周辺の作業などでは、これらのサブグリップが邪魔になり、必ずしも研磨操作が容易となるものではなかった。そのため、車体の塗装面のような被研磨面であっても、研磨部材の表面を押し付ける研磨操作を小さな力で簡単に行ことができ、効率よく作業ができる回転研磨具が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-294416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、研磨作業を効率よく行うことのできる操作性に優れた横型回転研磨具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の横型回転研磨具は、被研磨面に駆動用モータの重さが直接掛からない横型回転研磨具であって、本体側部に把持部の形状が球状である球状サブグリップが取付けられていることを特徴とする。尚、本発明における球状とは、その表面形状が、球体、楕円体及び卵形の表面形状、又はそれらの一部分から構成されている形状を意味する。
【0011】
また、上記球状サブグリップの中心軸線を含む平面での全体断面形状は、取付け端部の周縁が隆起したオメガ(Ω)形状となっていることが好ましく、把持部は掌中に収めて操作することから、最大径を35~60mm程度とすることが好ましい。
【0012】
さらに、前記球状サブグリップの取付け端面に設置されたボルトが前記本体の側部に設置されたネジ穴にねじ込まれて、球状サブグリップが取付けられていることが好ましく、ネジ穴を少なくとも二箇所に設置することにより、球状サブグリップの取付け位置を調整することができる。例えば本体の左右の両側部にネジ穴を設けることにより作業者の利き腕によって、取付け位置を左右変更することができ、さらには被研磨面の形状に応じて、本体側部の前寄りとしたり後寄りとしたりして、操作し易い位置に調整することも可能となる。また、回転軸として延長シャフトが取り付けられていることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本体側部に取付けられる球状サブグリップの把持部の形状が球状であるために、操作時に把持し易い上に、球状サブグリップと把持した掌がボールジョイントにおけるボールとソケットの組み合わせと同様な球面接触をすることになり、掌の中で球状サブグリップを任意の方向に向ける操作が容易となり、被研磨面の形状や状況に応じて、研磨盤の向きを調整して、無理なく押し付けることができ、効率の良い研磨作業が実現できるものである。
【0014】
さらに、把持部が球状であるために、多様な握り方ができ、長時間の使用時には握り替えることができるため、疲れにくい作業ができ、握り方によっては腕の力を利用できるため力を加え易くなる。さらに、掌と指の腹のほぼ全域で、それぞれの面に対して直交方向に力を受けるため、被研磨面からの反作用力がどの瞬間、どの位置からどの方向に向けて、どんな大きさで加わっているかをリアルタイムで感じ取ることができ、被研磨面に対してどちらの方向にどの程度力を加えたらよいかを瞬時に判断しリアルタイムで、研磨具をコントロールできる。
【0015】
また、球状サブグリップの取付け端部を隆起させ、断面形状をオメガ形状とすることにより、球状サブグリップを掌中に安定して把持し易く、研磨具の操作がより容易となる。そして、取付け用ネジ穴を複数設置することにより、作業者が操作し易い位置に取付けることができる。
【0016】
そして、回転軸として延長シャフトを取付けることにより、ドアミラーと車体表面の間や、ナンバープレートの取付け部、バンパーの上部、ドアノブ周りなどの窪んだ塗装表面など、いわゆる細部の研磨作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の横型回転研磨具の斜視外観図。
図2】把握部の形状が球状である球状サブグリップの斜視外観図。
図3】掌と指の腹で受ける被研磨面からの反作用力の説明図。
図4】延長シャフトを取付けた横型回転研磨具の説明図。
図5】球状サブグリップにより力を加える説明図。
図6】球状サブグリップの上下方向の取付け位置の説明図。
図7】球状サブグリップの前後方向の取付け位置の説明図。
図8】縦型回転研磨具の斜視外観図であり、研磨操作時に加える力の方向の説明図。
図9】横型回転研磨具に取付けた棒状サブグリップにより力を加える説明図。
図10】横型回転研磨具に取付けられるその他の形状のサブグリップの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明を行う。
【0019】
図1は本発明の横型回転研磨具10の斜視外観図であり、本体1の後方に設置されているメイングリップ2に駆動用モータ3が横向きになって収納されており、研磨部材8が取付けられた回転盤7の回転軸6は駆動用モータ3の出力軸とは、本体1の内部にてベベルギアなどにより直交方向に連結され、モータの重さは被研磨面には直接掛からない構造となっている。そして、横型回転研磨具10では、本体1の左側部に把持部の形状が球状である球状サブグリップ5が取付けられている。そして、図2に示すように、球状サブグリップ5の把持部51の形状は球状となっており、さらに、取付け端部52の周縁は隆起しており、サブグリップ5の中心軸線を含む平面での全体断面形状は、オメガ形状となっている。
【0020】
球状サブグリップ5の把持部51の形状が球状であるために、研磨操作時に球状サブクリップ5を把持し易い上に、図3に示すように、掌と指の腹のほぼ全域で、それぞれの面に対して直交方向に力を受ける。そのため、前記したように、球状サブグリップ5と把持した掌がボールジョイントにおけるボールとソケットの組み合わせと同様な球面接触をすることになり、被研磨面からの反作用力をリアルタイムで感じ取ることができ、掌の中で球状サブグリップ5を任意の方向に向ける操作が容易となり、被研磨面の形状や状況に応じて、研磨盤の向きを調整して、無理なく押し付けることができ、効率の良い研磨作業が実現できる。さらに、取付け端部52の周縁が隆起し、球状サブグリップ5の全体断面形状をオメガ形状とすることにより、グリップエンドとしての機能が得られ、球状サブグリップ5を掌の中で安定して把持できるため、研磨操作が安定する。
【0021】
図4はドアミラーと車体表面の間や、ナンバープレートなどの外装部品の周辺部を研磨するために、回転軸6を延長シャフト16とした例を示した。このように回転軸として延長シャフト16を取付け、回転軸を7cm~40cmに延長することにより、研磨作業の障害となる外装部品を避けながら車体の表面塗装の研磨を行うことができる。回転軸として延長シャフト16を用いる場合でも、球状サブグリップ5を使用することで、これらの狭い場所においても被研磨面に与える力をコントロールすることができ、研磨作業を効率よく行うことができる。
【0022】
図5は、横型回転研磨具10に取付けた球状サブグリップ5により、力を加える説明図である。横型回転研磨具10に棒状サブクリップ15を取付けた場合における力の加え方の問題点については、図9に基づいて前記したように、ロール方向での力において、より大きな力を要し、操作は容易ではなく、ピッチ、ヨーの各方向へ力を加える際も、駆動用モータの重さの力の補助がなく、操作は容易ではない。これに対して、球状サブグリップ5を取付けた場合には図5に示すように、本体1の上面を親指で抑えて力を加えることでa点にて回転軸6に加える力はo点を中心とした矢印方向に偶力とすることができ、さらにはテコの作用を利用することができる。そのため、図9に示す棒状サブグリップ15の場合のように大きな力を必要せずに、回転軸6を介して被研磨面に力を加えることができる。
【0023】
球状サブグリップ5の本体1への取付けは、図2に示す取付け端部52に設置されたボルト53を、本体1の側部に設置されたネジ穴にねじ込むことで行われる。ネジ穴を複数設置し、被研磨面の形状や状況により、取付け位置を調整する。図6は本体1における球状サブグリップ5の上下方向の取付け範囲を示し、上限位置に取付けられた球状サブグリップ5aはその上端が本体1の上面部からLの距離に位置するように、下限位置に取付けられた球状サブグリップ5bはその下端が研磨部材8の研磨面からLの距離に位置するように取付けられる。Lは30mm、Lは10mmの距離であり、それぞれ図5に示すように、Lは球状サブグリップと被研磨面の間に指を入れられる距離であり、またLは親指で本体1の上面部を押さえることのできる距離である。図7は本体1における球状サブグリップ5の前後方向の取付け範囲を示し、前方の限界に取付けられる球状サブグリップ5cは、その前端が本体の前端1aと一致する位置に取付けられ、後方の限界に取付けられる球状サブグリップ5dは回転軸6の中心線6aと一致する位置に取付けられる。図7では回転研磨具の左側部に球状サブグリップを設けた例を示したが、右側部に取付けてもよい。
【0024】
また、球状サブグリップ5は、メイングリップ2の中心軸線及び回転軸6の中心線6aを含む平面に対して、球状サブクリップ5の中心軸線が45°~90°の角度で取付けられることが好ましい。そして、球状サブグリップ5の本体1への取付けは、上記の本体1に範囲にネジ穴を設けて行うが、この範囲にネジ穴を少なくとも二箇所に設置して、作業者の利き腕や被研磨面に応じて、球状サブグリップ5の取付け位置を調整することができることが好ましい。
【0025】
以上のように、本発明の球状サブグリップを取付けた横型回転研磨具は、研磨作業を効率よく行うことのできる操作性に優れた回転研磨具である。
【符号の説明】
【0026】
10 横型回転研磨具 20 縦型回転研磨具
1 本体 2 メイングリップ
3 駆動用モータ 5 球状サブグリップ
51 把握部 52 取付け端部
53 ボルト 6 回転軸
7 回転盤 8 研磨部材
9 電源コード
15 棒状サブグリップ 16 延長シャフト
25 舌状サブグリップ 35弓状サブグリップ
Fa、Fb 力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10