(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101792
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】熱回収システム、熱回収方法及び燃焼制御装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20220630BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20220630BHJP
F22B 3/04 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F23G5/50 N ZAB
F23L7/00 Z
F22B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216096
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】角吉 弘憲
(72)【発明者】
【氏名】飯野 浩成
【テーマコード(参考)】
3K023
3K062
【Fターム(参考)】
3K023JA01
3K023JB01
3K023JD01
3K062AA01
3K062AB01
3K062AC01
3K062CA01
3K062DA01
3K062DA22
3K062DB08
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で高温腐食を抑制し、熱回収効率を向上させた熱回収システムを提供すること。
【解決手段】熱回収システムは、燃焼室と、前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、を備え、前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の乖離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、
前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、
を備え、
前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、
前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の乖離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する、熱回収システム。
【請求項2】
前記燃焼室は、前記燃焼ガスの温度を測定する温度計をさらに有し、
前記燃焼制御装置は、前記温度に基づいて前記乖離圧を算出する、請求項1に記載の熱回収システム。
【請求項3】
前記燃焼室に酸素ガス又は不活性ガスを供給するガス供給装置をさらに有し、
前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記ガス供給装置を制御する、請求項1又は2に記載の熱回収システム。
【請求項4】
前記燃焼室への空気供給量を調整する風量調整装置をさらに有し、
前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記風量調整装置を制御する、請求項1又は2に記載の熱回収システム。
【請求項5】
前記熱交換器は、真空式又は無圧式の温水ヒータである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項6】
前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスが供給される冷却室をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項7】
前記燃焼室に一次燃焼ガスを供給する焼却炉をさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項8】
前記酸素濃度計は、レーザー式酸素濃度計である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項9】
燃焼室で発生した燃焼ガスの酸素濃度を測定し、
前記燃焼室に連結された熱交換器の接触部の乖離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、前記酸素濃度を制御し、
前記酸素濃度が制御された前記燃焼ガスを前記熱交換器に供給することを含む、熱回収方法。
【請求項10】
さらに、前記燃焼ガスの温度を測定することを含み、
前記乖離圧を、前記前記温度に基づいて算出する、請求項9に記載の熱回収方法。
【請求項11】
前記熱交換器として、真空式又は無圧式の温水ヒータを用いる、請求項9又は10に記載の熱回収方法。
【請求項12】
さらに、前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスを冷却室に供給することを含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【請求項13】
さらに、焼却炉で発生した一次燃焼ガスを前記燃焼室に供給することを含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【請求項14】
前記酸素濃度は、レーザー式酸素濃度計で測定される、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【請求項15】
制御プログラムを格納する記憶部と、前記制御プログラムを実行するプロセッサとを含む燃焼制御装置であって、
前記制御プログラムは、
燃焼室の内部の温度を取得し、
前記温度を用いて熱交換器の接触部の乖離圧を算出し、
前記燃焼室の内部の酸素濃度を取得し、
前記酸素濃度を用いて前記燃焼室で発生した燃焼ガスの酸素分圧を算出し、
前記酸素分圧と前記乖離圧との差圧が所定値以下であるか否か判定し、
前記差圧が前記所定値以下ではないとき、前記燃焼室の内部における前記酸素濃度を制御することを前記プロセッサに実行させる、燃焼制御装置。
【請求項16】
前記制御プログラムは、さらに、
前記差圧が前記所定値以下ではないとき、前記酸素分圧が前記乖離圧よりも高いか否かを判定し、
前記酸素分圧が前記乖離圧よりも高いとき、前記燃焼室の内部の前記酸素濃度を下げ、前記酸素分圧が前記乖離圧よりも低いとき、前記燃焼室の内部の前記酸素濃度を上げる処理を前記プロセッサに実行させる、請求項15に記載の燃焼制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、熱回収システム、熱回収方法及び燃焼制御装置に関する。特に、燃焼室の酸素濃度を制御する機能を有する燃焼制御装置、及び当該燃焼制御装置を備えた熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理するごみ焼却施設において、焼却処理で発生する熱を回収して再利用する熱回収システムが知られている。このような熱回収システムでは、収集された都市ごみ等を焼却炉で燃焼させた後、発生した燃焼ガスの熱を例えば空気予熱器等の熱交換器により回収する。空気予熱器等により回収された熱は、例えば、再び焼却炉に戻され、燃焼用空気の昇温等に利用される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱回収システムでは、焼却炉で発生した排ガスをさらに再燃焼室(二次燃焼室)で完全燃焼させることにより、ダイオキシン等の有害物質の発生を抑制する。このとき、再燃焼室では850℃以上(好ましくは900℃以上)の温度で2秒間以上排ガスを滞留させることが法令で求められている。そのため、再燃焼室から排出される燃焼ガスの温度も900℃以上の高温となる。
【0005】
ここで、900℃以上の高温ガスを熱交換器に直接供給すると、熱交換器を構成する金属部材(特に、高温ガスに直接的に接触する部分)が高温腐食によって劣化するという問題がある。高温腐食とは、液体の水が関与しない腐食であり、高温環境下で発生する腐食をいう。そのため、従来の熱回収システムでは、再燃焼室で発生した高温ガスの温度を高温腐食が生じない程度の温度まで下げる必要があった。また、ダイオキシンの再合成は約400℃以上で起こることが知られている。したがって、ダイオキシンの再合成を抑制することも考慮して、再燃焼室から排出された燃焼ガスは、350℃程度まで冷却された後、熱交換器へと供給されていた。
【0006】
以上のように、従来の熱回収システムでは、350℃程度まで減温された燃焼ガスから熱回収を行う必要があった、そのため、熱回収効率を確保するために、一般的には熱交換器として蒸気ボイラが用いられていた。しかしながら、蒸気ボイラは、容器が高圧となることから有資格者(ボイラ技士)によって取り扱う必要があり、メンテナンス及び設備維持のコストの増加を招く要因となっていた。
【0007】
本発明の課題の一つは、簡易な構造で高温腐食を抑制し、熱回収効率を向上させた熱回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における熱回収システムは、燃焼室と、前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、を備え、前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の乖離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する。
【0009】
前記熱回収システムにおいて、前記燃焼室は、前記燃焼ガスの温度を測定する温度計をさらに有してもよい。この場合、前記制御装置は、前記温度に基づいて前記乖離圧を算出してもよい。
【0010】
前記熱回収システムは、前記燃焼室に酸素ガス又は不活性ガスを供給するガス供給装置をさらに有していてもよい。この場合、前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記ガス供給装置を制御してもよい。
【0011】
前記熱回収システムは、前記燃焼室への空気供給量を調整する風量調整装置をさらに有していてもよい。この場合、前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記風量調整装置を制御してもよい。
【0012】
前記熱回収システムにおいて、前記熱交換器は、真空式又は無圧式の温水ヒータであってもよい。
【0013】
前記熱回収システムは、前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスが供給される冷却室をさらに備えてもよい。
【0014】
前記熱回収システムは、前記燃焼室に一次燃焼ガスを供給する焼却炉をさらに備えてもよい。
【0015】
前記熱回収システムにおいて、前記酸素濃度計は、レーザー式酸素濃度計であってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態における熱回収方法は、燃焼室で発生した燃焼ガスの酸素濃度を測定し、前記燃焼室に連結された熱交換器の接触部の乖離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、前記酸素濃度を制御し、前記酸素濃度が制御された前記燃焼ガスを前記熱交換器に供給することを含む。
【0017】
前記熱回収方法は、さらに、前記燃焼ガスの温度を測定することを含んでもよい。この場合、前記乖離圧を、前記温度に基づいて算出してもよい。
【0018】
前記熱回収方法は、前記熱交換器として、真空式又は無圧式の温水ヒータを用いてもよい。
【0019】
前記熱回収方法は、さらに、前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスを冷却室に供給することを含んでもよい。
【0020】
前記熱回収方法は、さらに、焼却炉で発生した一次燃焼ガスを前記燃焼室に供給することを含んでもよい。
【0021】
前記熱回収方法において、前記酸素濃度は、レーザー式酸素濃度計で測定されてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態における燃焼制御装置は、制御プログラムを格納する記憶部と、前記制御プログラムを実行するプロセッサとを含む。前記制御プログラムは、燃焼室の内部の温度を取得し、前記温度を用いて熱交換器の接触部の乖離圧を算出し、前記燃焼室の内部の酸素濃度を取得し、前記酸素濃度を用いて前記燃焼室で発生した燃焼ガスの酸素分圧を算出し、前記酸素分圧と前記乖離圧との差圧が所定値以下であるか否か判定し、前記差圧が前記所定値以下ではないとき、前記燃焼室の内部における前記酸素濃度を制御することを前記プロセッサに実行させる。
【0023】
前記燃焼制御装置において、前記制御プログラムは、さらに、前記差圧が前記所定値を超えていたとき、前記酸素分圧が前記乖離圧よりも高いか否かを判定し、前記酸素分圧が前記乖離圧よりも高いとき、前記燃焼室の内部の前記酸素濃度を下げ、前記酸素分圧が前記乖離圧よりも低いとき、前記燃焼室の内部の前記酸素濃度を上げる処理を前記プロセッサに実行させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態の熱回収システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態の熱回収システムにおける熱交換器の構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態の熱回収システムにおける燃焼制御装置の制御の一例を示すフローチャート図である。
【
図4】本発明の一実施形態の熱回収システムにおける熱交換器の構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の熱回収システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0026】
(第1実施形態)
[熱回収システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態における熱回収システム100の一例を示す図である。本実施形態の熱回収システム100は、焼却炉110、燃焼室120、熱交換器130、冷却室140、及び燃焼制御装置150を含む。ただし、
図1に示すシステム構成は、熱回収システム100の一例に過ぎない。図示は省略するが、収集したごみ等を蓄積するごみピット、焼却炉で生成された灰を蓄積する灰ピット、燃焼ガスに含まれる微小な灰を収集するろ過式集じん器など、他の設備を備えていてもよい。
【0027】
焼却炉110は、搬入された都市ごみ等の廃棄物202を焼却する設備である。焼却炉110は、廃棄物202を焼却処理により灰化して無害化する。本実施形態では、焼却炉110として、ストーカ式焼却炉を用いるが、これに限られるものではない。焼却炉110で廃棄物202を焼却する際、一次燃焼ガス204が発生する。焼却炉110で発生した一次燃焼ガス204は、燃焼室120に供給される。
【0028】
燃焼室120は、焼却炉110で発生した一次燃焼ガス204を再燃焼させる設備である。本実施形態では、焼却炉110から供給された一次燃焼ガス204は、燃焼室120に950℃の温度で2秒間滞留する。燃焼室120では、一次燃焼ガス204に含まれる未燃ガスが燃焼することにより、燃焼ガスの完全燃焼が行われる。燃焼室120で完全燃焼して生成された二次燃焼ガス206は、図示しない煙道を経由して熱交換器130へ供給される。
図1では、図示を省略するが、燃焼室120には、空気を送る送風装置と当該送風装置から供給される空気の供給量を調整するダンパが設けられていてもよい。
【0029】
本実施形態では、燃焼室120の内部に酸素濃度計122が配置されている。具体的には、酸素濃度計122は、燃焼室120の内部における排気口近傍に配置されている。ただし、酸素濃度計122は、排気口近傍に限らず、酸素濃度の測定に適した位置であれば任意の位置に配置することができる。例えば、酸素濃度計122は、燃焼室120と熱交換器130とを連結する煙道に配置されてもよい。
【0030】
酸素濃度計122は、二次燃焼ガス206に含まれる酸素濃度を測定する。本実施形態では、酸素濃度計122としてレーザー式酸素濃度計を用いるため、リアルタイムに二次燃焼ガス206の酸素濃度を測定することが可能である。さらに、燃焼室120は、内部に温度計124が配置されている。本実施形態では、燃焼室120の室内温度(すなわち、二次燃焼ガス206のガス温度)をリアルタイムに測定する構成となっている。燃焼室120は、上述のように燃焼ガスが少なくとも2秒間滞留するため、精度よく酸素濃度及び室内温度を測定するのに好適である。酸素濃度計122及び温度計124の役割については後述する。
【0031】
本実施形態の燃焼室120には、ガス供給装置126も連結されている。ガス供給装置126は、燃焼制御装置150に接続されており、燃焼制御装置150の制御に応じて酸素ガス又は不活性ガス(例えば窒素ガス)を燃焼室120に供給する。後述するように、燃焼制御装置150は、燃焼室120の内部の酸素濃度を測定し、所定の条件を満たした場合に酸素濃度を調整するように構成されている。その際、ガス供給装置126は、燃焼室120への酸素ガス、又は、不活性ガスの供給源として機能する。
【0032】
熱交換器130は、燃焼室120から供給された二次燃焼ガス206の熱を回収する設備である。具体的には、本実施形態では、熱交換器130として、真空式温水ヒータを用いる。真空式温水ヒータは、容器内を大気圧より低圧な状態にして熱媒水(熱媒体として利用する水)を減圧沸騰させ、その蒸気の熱を利用して温水を取り出す構造となっている。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態の熱回収システム100における熱交換器130の構成を示す図である。上述のとおり、熱交換器130は、真空式温水ヒータである。熱交換器130は、筐体131の内部が加熱室132及び熱交換室133に区切られている。加熱室132には、燃焼室120から送られた二次燃焼ガス206が供給される。加熱室132に供給された二次燃焼ガス206は、熱交換室133に満たされた熱媒水134の加熱に利用された後、燃焼ガス208として排出される。
【0034】
加熱室132の内壁を構成する金属部材は、高温の二次燃焼ガス206に曝されつつ、二次燃焼ガス206の熱を熱交換室133に伝える役割を有する。本実施形態では、熱交換器130(ここでは、真空式温水ヒータ)のうち、二次燃焼ガス206が直接的に接触する部分を「接触部」と呼ぶ。接触部は、耐熱性及び伝熱性に優れた鉄を含む合金材料で構成することが好ましい。例えば、接触部を構成する金属材料として、硫酸及び塩酸に対して高い耐食性を有するS-TEN鋼(登録商標)を用いてもよい。
【0035】
熱交換室133は、大気圧よりも減圧されている。そのため、熱媒水134は、80℃前後で減圧沸騰して蒸気を発生する。熱媒水134の上方には、熱交換部135が配置されており、発生した蒸気の熱を利用して熱交換が行われる。熱交換部135は、給水管136を有し、流入口136aから水が供給されるとともに、流出口136bから温水が得られるようになっている。熱交換によって減温された蒸気は、筐体131の上部に設けられた排気口131aから排気される。
【0036】
本実施形態では、燃焼室120から排出された高温(例えば、950℃)の二次燃焼ガス206を直接的に熱交換器130に供給することができる。つまり、従来技術のように、燃焼室120から排出された二次燃焼ガス206を350℃程度まで冷却した後に熱交換器130へ供給する必要がない。そのため、従来技術のように蒸気ボイラを用いる必要がなく、温水ヒータ等の熱交換器を用いても高い効率で熱を回収することができる。
【0037】
また、真空式温水ヒータは、筐体131の内部が減圧状態となるため、ボイラの法規制を受けない。そのため、蒸気ボイラを利用する従来技術とは異なり、熱交換器130を管理するためにボイラ技士を選任する必要がない。このように、本実施形態の熱回収システム100は、熱交換器130として、ボイラの法規制を受けない温水ヒータを利用することができるため、メンテナンス及び設備維持に要するコストを低減することができる。
【0038】
図1に説明を戻すと、冷却室140には、熱交換器130を経由した燃焼ガス208が供給される。冷却室140は、燃焼ガス208の温度を350℃程度まで下げるための設備である。冷却室140には、図示しない水噴射装置が設けられ、容器内に水を噴射することにより燃焼ガス208の温度を低減する。冷却室140で減温された燃焼ガス210は、図示しない煙道を経由して下流側の他の設備(例えば、ろ過式集じん器等)へ送られる。
【0039】
以上説明した流れによって廃棄物202の焼却処理により発生した燃焼ガス(具体的には、二次燃焼ガス206)から熱を回収することができる。このとき、本実施形態では、燃焼制御装置150によって燃焼室120の内部における二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御する。具体的には、燃焼制御装置150は、燃焼室120に配置された酸素濃度計122及び温度計124から取得した測定値を用いて燃焼室120の内部の酸素濃度を調整する。この酸素濃度の調整により、燃焼室120の内部における二次燃焼ガス206の酸素分圧が制御される。この点について、以下に詳細に説明する。
【0040】
[燃焼制御装置の動作]
本実施形態の熱回収システム100において、燃焼制御装置150は、少なくともプロセッサ及び記憶部を備え、記憶部に格納された制御プログラムをプロセッサが実行することにより、燃焼室120の燃焼制御を実行する。ただし、燃焼制御装置150は、燃焼室120の燃焼制御に加えて、熱回収システム100を構成する他の構成要素の制御を実行してもよい。
【0041】
本実施形態において、燃焼制御装置150は、燃焼室120で発生する二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御することにより、二次燃焼ガス206の酸素分圧を調整する。具体的には、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部の乖離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、上述の酸素分圧を調整するように構成されている。なお、「差圧」は、乖離圧と酸素分圧との差分であり、正の値で表されるものとする。例えば、酸素分圧から乖離圧を減算した値の絶対値を差圧として用いることができる。
【0042】
本実施形態の場合、二次燃焼ガス206は800℃以上の高温であるため、二次燃焼ガス206と接触した金属材料は、高温腐食により劣化する。ここで、金属元素Mが酸化物MαOβになる高温腐食の反応式は、式(1)で表される。
【0043】
【0044】
このとき、式(1)の自由エネルギー(ΔG)は、式(2)で表される。
【0045】
【0046】
ここで、ΔG0は標準生成自由エネルギー(標準生成ギブズエネルギーともいう)、Rは気体定数、Tは絶対温度、αxはxの活量、PO2は酸素分圧である。
【0047】
高温腐食の酸化還元反応は、式(2)におけるΔGの値によって決まる。すなわち、ΔGが負であれば、式(1)の反応は進行し、金属元素Mは酸化する。逆に、ΔGが正であれば、式(1)の逆反応が進行し、酸化物MαOβは還元される。つまり、ΔG=0のとき、金属元素Mの酸化還元反応は、平衡状態となる。
【0048】
上述のΔG=0のときの酸素分圧(PO2)は、金属元素Mと酸化物MαOβとが平衡になる酸素分圧であり、乖離圧と呼ばれる。乖離圧(PO2)は、式(3)で表される。
【0049】
【0050】
つまり、金属元素Mが酸素を含むガス中に存在するとき、ガスの酸素分圧が乖離圧を上回ると、金属元素Mは、酸化されて酸化物MαOβになる。逆に、ガスの酸素分圧が乖離圧を下回ると、酸化物MαOβは、還元されて金属元素Mになる。このことは、ガスの酸素分圧が乖離圧と一致しているとき、金属元素Mは、酸化されず、高温腐食が起こらないことを意味する。
【0051】
式(3)において、標準生成自由エネルギー(ΔG0)は、物質に固有の値である。したがって、乖離圧も物質に固有の値である。ただし、式(3)から明らかなように、乖離圧は、温度によって変化する。つまり、金属部材の標準生成自由エネルギーと温度とが分かれば、当該金属部材の乖離圧が算出できる。したがって、算出した金属部材の乖離圧と当該金属部材に接触するガスの酸素分圧とを一致させれば、金属部材の高温腐食を抑制できることが分かる。
【0052】
そこで、本実施形態では、二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御して熱交換器130の接触部の乖離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧とを一致又は略一致させることにより、熱交換器130の接触部の酸化還元反応を平衡状態とする。つまり、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部の乖離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧を所定値以下とすることにより、熱交換器130の高温腐食による劣化を抑制することができる。
【0053】
熱交換器130の接触部における乖離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧をどの程度の範囲内に収めるかについては、熱交換器130の劣化をどの程度抑えるかによって適宜選択すればよい。例えば、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部における乖離圧の10%(好ましくは5%、さらに好ましくは3%)をしきい値(所定値)として設定し、前述の差圧がしきい値以下である場合に、熱交換器130の接触部の酸化還元反応は平衡状態にあると判定してもよい。また、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部の乖離圧を基準として±10%(好ましくは5%、さらに好ましくは3%)の範囲内に、二次燃焼ガス206の酸素分圧が収まるように酸素濃度を制御してもよい。
【0054】
熱交換器130の接触部の材料はあらかじめ分かっているため、温度が特定できれば、接触部の乖離圧を求めることができる。また、二次燃焼ガス206の酸素濃度(すなわち、燃焼室120の内部における酸素濃度)とガス流量が分かれば、二次燃焼ガス206の酸素分圧を求めることができる。そのため、本実施形態では、燃焼室120の排気口近傍に酸素濃度計122を配置し、二次燃焼ガス206の酸素濃度を測定する構成となっている。ガス流量の測定には、温度計124で測定した温度や圧力計(図示せず)で測定した燃焼室120内の圧力を用いることができる。
【0055】
また、本実施形態では、燃焼室120の内部に温度計124を配置し、燃焼室120の室内温度を測定する構成となっている。そのため、燃焼制御装置150は、温度計124から取得した温度に基づいて、熱交換器130の接触部の乖離圧を温度変化に対応して求めることが可能である。例えば、熱回収システム100を連続運転ではなく、間欠運転する場合、燃焼室120の昇温時及び降温時は、二次燃焼ガス206の温度が変化する。この場合においても、燃焼室120の温度をリアルタイムに測定することにより、熱交換器130の接触部における乖離圧の変化を燃焼室120の室内温度の変化に追随して求めることが可能である。したがって、仮に、熱回収システム100を間欠運転させた場合、燃焼室120が昇温中又は降温中であっても、乖離圧の変化に応じて酸素分圧を変化させることにより接触部の高温腐食を抑制することができる。
【0056】
なお、熱回収システム100を連続運転する場合、又は、燃焼室120の昇温時又は降温時を考慮しなくて済む場合は、燃焼室120の室内温度が一定であるとして熱交換器130の接触部の乖離圧を求めてもよい。この場合、燃焼室120の室内温度を把握する必要はなく、温度計124は省略することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態の熱回収システム100における燃焼制御装置150は、燃焼室120で発生する二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御することにより、熱交換器130の接触部の乖離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧が所定値以下となるように二次燃焼ガス206の酸素濃度(燃焼室120内の酸素濃度)を調整する。これにより、二次燃焼ガス206による熱交換器130の接触部(熱交換器130のうち二次燃焼ガス206に接触する部分)の高温腐食による劣化を抑制することができる。
【0058】
[燃焼制御装置の制御フロー]
図3は、本発明の一実施形態の熱回収システム100における燃焼制御装置150の制御の一例を示すフローチャート図である。
図3に示す制御は、燃焼制御装置150に含まれるプロセッサが、記憶部に格納された制御プログラムを実行することにより実行される。なお、
図3では、所定間隔で定期的に制御プログラムが実行される例を示すが、ループ処理により連続的に制御プログラムが実行されるようにしてもよい。
【0059】
図3において、制御プログラムが実行されると、燃焼制御装置150は、温度計124から燃焼室120の室内の温度を取得する(ステップS301)。本実施形態では、燃焼室120の室内の温度を950℃に設定している。すなわち、燃焼室120で発生した二次燃焼ガス206の温度は、950℃であるとみなすことができる。
【0060】
次に、燃焼制御装置150は、取得した温度に基づいて熱交換器130における接触部の乖離圧を算出する(ステップS302)。本実施形態では、接触部の構成材料としてS-TEN鋼などの鋼材を用いるため、標準生成自由エネルギーは既知である。そのため、温度が取得できれば、上述の式(3)により接触部の乖離圧を算出することができる。なお、ここでは乖離圧を算出する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、あらかじめ温度と乖離圧とを対応づけた参照テーブルを準備しておき、取得した温度に基づいて参照テーブルから乖離圧を取得してもよい。
【0061】
乖離圧を算出したら、燃焼制御装置150は、酸素濃度計122から燃焼室120の室内の酸素濃度を取得する(ステップS303)。本実施形態では、酸素濃度計122としてレーザー式酸素濃度計を用いるため、リアルタイムに燃焼室120の内部の酸素濃度を測定することができる。酸素濃度計122は、燃焼室120の排気口近傍の酸素濃度を測定するように配置されている。したがって、酸素濃度計122で測定された酸素濃度は、燃焼室120で発生した二次燃焼ガス206の酸素濃度とみなすことができる。
【0062】
次に、燃焼制御装置150は、取得した酸素濃度に基づいて二次燃焼ガス206の酸素分圧を算出する(ステップS304)。燃焼室120の形状等は既知であり、燃焼室120の室内の温度はすでに取得してあるため、酸素濃度計122を配置した領域における二次燃焼ガス206のガス流量も算出することができる。したがって、酸素濃度が取得できれば、演算により、二次燃焼ガス206の酸素分圧を求めることができる。ただし、この例に限らず、ガス流量が既知であれば、あらかじめ酸素濃度と酸素分圧とを対応づけた参照テーブルを準備しておき、取得した酸素濃度に基づいて参照テーブルから酸素分圧を取得してもよい。
【0063】
上述の過程を経て、二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の乖離圧とを求めたら、燃焼制御装置150は、酸素分圧と乖離圧との差圧を算出し、算出した差圧が所定値以下であるか否か(すなわち、酸素分圧が乖離圧を基準として所定範囲内に収まるか否か)を判定する(ステップS305)。本実施形態では、燃焼制御装置150は、酸素分圧と乖離圧との差圧が所定値(例えば乖離圧の10%の値)以下であるか否かを判定する。この判定処理により、燃焼制御装置150は、二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の乖離圧とが平衡状態にあるか否かを把握することができる。
【0064】
ステップS305の判定がYESの場合、二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の乖離圧とが平衡状態にあるため、燃焼制御装置150は、制御処理を終了する。ステップS305がNOの場合、燃焼制御装置150は、酸素分圧が乖離圧よりも高いか否かを判定する(ステップS306)。
【0065】
ステップS306の判定がYESの場合、燃焼制御装置150は、燃焼室120の内部の酸素濃度を下げる(ステップS307)。具体的には、燃焼制御装置150は、ガス供給装置126を制御して燃焼室120の内部に所定量の不活性ガスを供給する。不活性ガスの供給により、燃焼室120の内部における酸素濃度を相対的に下げることができる。ステップS306の判定がNOの場合、燃焼制御装置150は、燃焼室120の内部の酸素濃度を上げる(ステップS308)。具体的には、燃焼制御装置150は、ガス供給装置126を制御して燃焼室120の内部に所定量の酸素ガスを供給する。酸素ガスの供給により、燃焼室120の内部における酸素濃度を相対的に上げることができる。このように、燃焼制御装置150は、燃焼室120の酸素濃度をリアルタイムに監視すると共に、燃焼室120の内部の酸素濃度(すなわち、二次燃焼ガス206の酸素分圧)を制御することができる。
【0066】
ステップS307又はステップS308の制御処理によるガスの供給が終了したら、燃焼制御装置150は、制御処理をステップS301に戻す。その後、燃焼制御装置150は、再びステップS301以降の制御処理を行い、酸素分圧と乖離圧との差圧が所定値以下になるまで制御プログラムの実行を継続する。最終的に、燃焼制御装置150は、酸素分圧と乖離圧との差圧が所定値以下になってステップS305の判定がYESになると、制御プログラムの実行を終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態の熱回収システム100は、燃焼制御装置150を備えることにより、燃焼室120の内部の酸素濃度(すなわち、二次燃焼ガス206の酸素分圧)を監視することができる。また、熱回収システム100は、燃焼制御装置150が算出した二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の乖離圧とを比較した結果に応じて、燃焼室120の内部の酸素濃度を制御し、酸素分圧と乖離圧とを同一又は略同一の範囲内に収めることができる。これにより、熱回収システム100は、950℃程度の高温の二次燃焼ガス206が熱交換器130の接触部と接触しても、両者の間で平衡状態を維持することができる。このように、高温の二次燃焼ガス206を利用して熱交換ができるため、温水ヒータ等の法規制を受けない熱交換器を用いても、高い効率で熱を回収することができる。つまり、本実施形態によれば、簡易な構造で高温腐食を抑制し、熱回収効率を向上させた熱回収システム100を提供することができる。
【0068】
なお、
図3において、ステップS301からステップS304までの制御フローの順番は、この例に限られるものではない。例えば、
図3の制御フローは、酸素濃度を取得した後に、温度を取得してもよい。また、
図3の制御フローは、酸素濃度及び温度を取得した後に、乖離圧及び酸素分圧を算出してもよい。
【0069】
(変形例1)
本実施形態では、燃焼制御装置150の制御により、熱交換器130の接触部の乖離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧を所定値以下とすることを説明したが、熱交換器130の接触部の劣化を抑えるという観点によれば、この例に限られるものではない。例えば、二次燃焼ガス206の酸素分圧が熱交換器130の接触部の乖離圧を上回る場合には、上述の所定値以下に差圧を収め、酸素分圧が乖離圧を下回る場合には、特に制限を設けなくてもよい。換言すれば、燃焼制御装置150は、二次燃焼ガス206の酸素分圧が、熱交換器130の接触部の乖離圧を下回るように二次燃焼ガス206の酸素濃度を調整してもよい。
【0070】
この場合、熱交換器130の接触部は、常に還元雰囲気に置かれることになるため、接触部の高温腐食による劣化を抑えることができる。
【0071】
(変形例2)
本実施形態では、熱交換器130として、真空式温水ヒータを用いる例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、熱交換器130として、大気圧式温水ヒータを用いることも可能である。大気圧式温水ヒータは、容器内を大気開放した状態で熱媒水を沸騰させ、その蒸気の熱を利用して温水を取り出す構造となっている。大気圧式温水ヒータは、容器内に圧力がかからないため、無圧式温水ヒータとも呼ばれる。
【0072】
図4は、本発明の一実施形態の熱回収システム100に用いる熱交換器130の構成を示す図である。具体的には、
図4は、熱交換器130として用いる大気圧式温水ヒータ230の構成を示している。大気圧式温水ヒータ230は、筐体231の内部が加熱室232及び媒体室233に区切られている。加熱室232には、燃焼室120から送られた二次燃焼ガス206が供給される。加熱室232に供給された二次燃焼ガス206は、媒体室233に充填された熱媒水234の加熱に利用された後、燃焼ガス208として排出される。
【0073】
媒体室233で加熱された熱媒水234は、熱交換部235に供給され、加熱された熱媒水234の熱を利用して熱交換が行われる。熱交換部235は、給水管236を有し、流入口236aから水が供給されるとともに、流出口236bから温水が得られるようになっている。媒体室233と熱交換部235との間には、ポンプ237が設けられている。ポンプ237は、媒体室233と熱交換部235との間で熱媒水234を循環させる役割を有する。
【0074】
本実施形態では、燃焼室120から排出された高温(例えば、950℃)の二次燃焼ガス206を直接的に熱交換器130に供給することができる。つまり、従来技術のように、燃焼室120から排出された二次燃焼ガス206を350℃程度まで冷却した後に熱交換器130へ供給する必要がない。そのため、従来技術のように蒸気ボイラを用いる必要がなく、温水ヒータ等の熱交換器を用いても高い熱回収効率を確保することができる。
【0075】
また、大気圧式温水ヒータ230は、筐体231の上部に開口部231aが設けられており、筐体231の内部が大気圧に維持される。そのため、大気圧式温水ヒータ230は、筐体231の内部圧力が高圧になることがなく、ボイラの法規制を受けない。したがって、熱交換器130として大気圧式温水ヒータ230を用いた場合、ボイラ技士を管理者として配置するする必要がない。すなわち、熱交換器130として法規制を受けない温水ヒータを利用することができるため、メンテナンス及び設備維持に要するコストを低減することができる。
【0076】
(変形例3)
本実施形態の熱回収システム100において、熱交換器130としては、上述した真空式温水ヒータ及び大気圧式温水ヒータ以外のあらゆる熱交換器を用いることができる。本実施形態では、燃焼室120から排出された高温の二次燃焼ガス206を直接的に熱交換器130に供給することができるため、どのような熱交換器を用いても高い熱回収効率を実現することができる。
【0077】
(変形例4)
図3に示した制御フローでは、ステップS305において酸素分圧と乖離圧との差圧を算出し、算出した差圧が所定値以下であるか否か(すなわち、酸素分圧が乖離圧を基準として所定範囲内に収まるか否か)を判定する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、
図3において、ステップS305を省略してもよい。
【0078】
この場合、燃焼制御装置150は、ステップS302で熱交換器130の接触部の乖離圧を算出し、ステップS304で二次燃焼ガス206の酸素分圧を算出した後、ステップS306で酸素分圧は乖離圧よりも高いか否かを判定する。その後、この判定結果に応じて燃焼制御装置150は、ステップS307又はステップS308の制御処理を実行し、燃焼室120の酸素濃度を増加又は減少させる。このようにして、酸素濃度を制御したら、燃焼制御装置150は、再びステップS301から制御処理を繰り返し実行する。
【0079】
本変形例の燃焼制御装置150は、上述したループ処理を常時実行することにより、酸素分圧と乖離圧との比較結果をフィードバックして、酸素分圧と乖離圧とを同一又は略同一の範囲内に収める。これにより、熱交換器130の接触部と燃焼室120で発生した二次燃焼ガス206との間で平衡状態を維持することができる。
【0080】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ガス供給装置126を用いて燃焼室120の内部における酸素濃度を調整する例について説明したが、この例に限られるものではない。例えば、燃焼室120の内部における酸素濃度は、燃焼室120への空気供給量をダンパ又はバルブ等の風量調整装置を用いて調整することも可能である。
【0081】
図5は、本発明の一実施形態の熱回収システム100aの構成を示すブロック図である。
図5において、第1実施形態で説明した熱回収システム100と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
図5に示すように、本実施形態の熱回収システム100aは、送風装置127及びダンパ128を備える。送風装置127は、空気を燃焼室に供給する。ダンパ128は、送風装置127と燃焼室120との間に設けられ、燃焼室120への空気の供給量を調整する。すなわち、ダンパ128は、燃焼室120へ供給される空気の流量を調整する風量調整装置として機能する。
【0083】
本実施形態では、燃焼制御装置150aがダンパ128を制御する。具体的には、燃焼制御装置150aは、ダンパ128を制御することにより、燃焼室120へ供給される空気の量を調整することができる。つまり、燃焼制御装置150aは、燃焼室120への空気供給量を調整することにより、燃焼室120の内部における酸素濃度を調整することができる。例えば、第1実施形態において
図3に示した制御フローを参照すると、ステップS306の判定に応じて、燃焼制御装置150aは、ダンパ128を制御することにより、燃焼室120の内部の酸素濃度を下げたり(ステップS307)、上げたり(ステップS308)することができる。このように、燃焼制御装置150aは、燃焼室120の酸素濃度をリアルタイムに監視すると共に、燃焼室120の内部の酸素濃度(すなわち、二次燃焼ガス206の酸素分圧)を制御することができる。
【0084】
本発明の実施形態及びその変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。上述した実施形態の熱回収システムを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0085】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0086】
100、100a…熱回収システム、110…焼却炉、120…燃焼室、122…酸素濃度計、124…温度計、126…ガス供給装置、127…送風装置、128…ダンパ、130…熱交換器、131…筐体、131a…排気口、132…加熱室、133…熱交換室、134…熱媒水、135…熱交換部、136…給水管、136a…流入口、136b…流出口、140…冷却室、150、150a…燃焼制御装置、202…廃棄物、204…一次燃焼ガス、206…二次燃焼ガス、208…燃焼ガス、210…燃焼ガス、230…大気圧式温水ヒータ、231…筐体、231a…開口部、232…加熱室、233…媒体室、234…熱媒水、235…熱交換部、236…給水管、236a…流入口、236b…流出口、237…ポンプ