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  • 特開-車両の汽水分離装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101797
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】車両の汽水分離装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20220630BHJP
   F02B 29/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F02M35/10 301W
F02B29/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216103
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】吉野 弘記
(57)【要約】
【課題】吸気抵抗を改善した車両の汽水分離装置を提供する。
【解決手段】車両の内燃機関の吸気通路に介装される汽水分離装置1において、吸気通路中に配置されるボックス状の汽水分離部26と、汽水分離部26を吸気通路から遮断するプレート27と、吸気通路を流動する吸気流体の湿度及び水分を検出する水分検出器31と、を備え、プレート27は、水分検出部31からの検出結果に応じ、開閉されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の吸気通路に介装される汽水分離装置において、
前記吸気通路中に配置されるボックス状の汽水分離部と、
前記汽水分離部を前記吸気通路から遮断する遮断部と、
前記吸気通路を流動する吸気流体の湿度及び水分を検出する検出器と、
を備え、
前記遮断部は、前記検出部からの検出結果に応じ、開閉されることを特徴とする車両の汽水分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の汽水分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の内燃機関を備える車両においては、外気を取り入れる必要がある。このとき、外気導入口部の位置などによって、雨水が外気とともに入り込んだり冠水路走行時に水が入り込んだりする可能性がある。そこで、水と気体を分離するため、汽水分離装置が設けられることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-092696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この汽水分離装置において、ボックスを用いた構造が用いられることがある。この場合、取り込まれた気体はボックス内を回流し、水分がボックスに溜まることで分離される。ところで、晴天時や冠水路を走行していない場合などで、水が入り込まないと想定される場合には、このボックスが吸気抵抗となり、エンジン出力の向上や、燃料消費率の向上が図れない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸気抵抗を改善した汽水分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る車両の汽水分離装置は、車両の内燃機関の吸気通路に介装される汽水分離装置において、前記吸気通路中に配置されるボックス状の汽水分離部と、前記汽水分離部を前記吸気通路から遮断する遮断部と、前記吸気通路を流動する吸気流体の湿度及び水分を検出する検出器と、を備え、前記遮断部は、前記検出部からの検出結果に応じ、開閉されることを特徴とする。
【0008】
このように構成された車両の汽水分離装置は、導入される吸気流体に含まれる湿度が少ない場合には、または水分を検知しない場合には、遮断部により、汽水分離部が吸気通路から遮断される。これにより、吸気流体は、汽水分離部を通らずに、吸気通路を流動することになり、汽水分離の行程が省かれるため、吸気抵抗が減少し、エンジンの出力の低下を抑制させることができ、また、燃料消費率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の車両の汽水分離装置を含む車両の吸気通路を模式的に示す概略構成図である。
図2】汽水分離部が遮断されていない場合の汽水分離装置内部における吸気流体の流れを示す側断面図である。
図3】汽水分離部が遮断されている場合の汽水分離装置内部における吸気流体の流れを示す側断面図である。
図4】本実施形態の変形例における車両の汽水分離装置の汽水分離部が遮断されている場合の吸気流体の流れを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明において、上下方向とは、車両の高さ方向(鉛直方向)とする。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の車両の汽水分離装置1(以下、単に汽水分離装置1という)を含む車両の吸気通路10を模式的に示す概略構成図である。車両の吸気通路10は、車両の内燃機関等に外気を吸気流体として導入するためのもので、図1に示すように、吸気の流れに沿って上流側から、第1ダクト(シュノーケル)11、第2ダクト(チューブ)12、汽水分離装置1、第3ダクト13、エアクリーナ2、第4ダクト14から構成される。即ち、汽水分離装置1は、吸気通路10に介装されている。ここで、第1ダクト11、第2ダクト12、第3ダクト13、第4ダクト14は、吸気流体が通過可能となるように、金属や樹脂またはその組み合わせ等により中空状に形成されている。
【0012】
第1ダクト11は、外気導入口部を有するいわゆるシュノーケルと呼ばれるタイプのものである。第1ダクト11の外気導入口部は、未舗装等の悪路も走行するトラックやバスでは、一般的な乗用車と比較して、地面から十分に高い位置に配置されている。これにより、走行時に跳ね上げられるダスト、雨水及び積雪等、そして、冠水路走行時に水を外気とともに取込んでしまうことを防止している。また、第1ダクト11は、車両の上方からキャブ下方に向かって上下方向に延在する。
【0013】
第2ダクト12は蛇腹形状により伸縮可能な蛇腹部を有し、第1ダクト11の下流側とキャブ下方に配置される汽水分離装置1とを連結する。また、第2ダクト12は、車両の走行時に発生するキャビンの動き量、また、上下振動により第1ダクト11、第2ダクト12、及び汽水分離装置1の接続部に発生する応力を蛇腹部において吸収抑制する機能を有する。第2ダクト12には、内側に湿度及び水分検出器31が設けられている。なお、湿度及び水分検出器31の設けられる位置はこれに限られず、流入する吸気流体の湿度及び水分を検出できる位置及び態様で設けられていればよく、例えば、湿度及び水分検出器31は第1ダクト等に設けられてもよい。
【0014】
汽水分離装置1は、上下方向に傾斜を有する上壁部21、複数の側面からなる水平閉断面多角形状の筒型をなす側壁部22、及び下壁部23から構成される中空のボックス形状で、樹脂や金属等で形成される。汽水分離装置1は、上壁部21の下端側と側壁部22との境界部分にて斜め上方に向かって延びる管状の入口部24を有する。また、汽水分離装置1は、側壁部22において入口部24と逆側において、上壁部21の上端側と側壁部22との境界部分に、斜め上方に向かって延びる管状の出口部25を有する。そして、入口部24の先端は、第2ダクト12と連結し、出口部25の先端は第3ダクト13と連結している。
【0015】
このような形状の汽水分離装置1は、主に側壁部22及び下壁部23により形成された汽水分離部26を有している。詳しくは、汽水分離部26は、入口部24の下端と出口部25の下端を含む仮想面を境界とした場合に、その境界の下側部分に相当し、図2の一点鎖線で示す領域に該当する。言い換えれば、吸気通路10全体から見た場合に、汽水分離装置1は、入口部24と出口部25を有する上部と、上部から突出したボックス状の汽水分離部26とから形成されている。そして、入口部24から汽水分離装置1に流入した吸気流体は、汽水分離部26を通って出口部25から排出される。なお、図示しないが下壁部23には分離した水を排出可能なドレンが設けられている。
【0016】
汽水分離装置1は、導入された吸気流体から水分を除去する機能を有する。具体的には、導入された吸気流体は、汽水分離部26の側壁部22に当たることにより汽水分離される。
また、冠水路走行時に水が浸入してしまった際も汽水分離装置に水を留め、エアクリーナエレメントが濡れてしまうことを防止する。
【0017】
汽水分離装置1は、出口部25の下側付近の側面に回動支点Pが固定されて、垂直方向と水平方向との間において回動するプレート(遮断部)27を備える。なお、以下の説明において、プレート27が略水平な状態に回動されることを「プレート27を閉とする」、プレート27が略水平な状態に維持されていることを「プレート27が閉じている(閉状態である)」、プレート27が略垂直な状態に回動されることを「プレート27を開とする」、及びプレート27が略垂直な状態に維持されていることを「プレート27が開いている(開状態である)」と表現する。プレート27は、プレート27を閉じたときに汽水分離部26の上部開口の大部分を塞ぐことができ、かつ、プレート27が開状態のときにプレート27が略垂直になることのできる形状で、金属又は樹脂の板状部材を加工して形成されたものである。また、汽水分離装置1は、汽水分離部26の外側に取り付けられ、プレート27を回動させるアクチュエータ32を備える。これにより、プレート27は、閉状態の場合に、汽水分離部26を吸気通路10から遮断することができる。
【0018】
第3ダクト13は、汽水分離装置1の出口部25と、エアクリーナ2の上流側と、を連結する。また、第4ダクト14はエアクリーナ2の下流側と、エンジンやターボチャージャーの入力側と、を連結する。
【0019】
エアクリーナ2は、内部にエアクリーナエレメントを備え、吸気流体をエアクリーナエレメントで濾過することで、吸気流体に含まれるダストを除去し清浄にする機能を有する。第3ダクト13からエアクリーナ2に流入した吸気流体は、清浄されて、第4ダクト14へ排出される。
【0020】
湿度及び水分検出器31は、吸気流体の水分量を検出し、水分量に応じた水分量情報を生成する機能を有する。また、湿度及び水分検出器31は、アクチュエータ32と、通信可能に接続されている。
【0021】
アクチュエータ32は、湿度及び水分検出器31の検出結果に応じて、プレート27を回動させて開閉する機能を有する。具体的には、アクチュエータ32は、図示しない制御部を備え、制御部において湿度及び水分検出器31から受信した湿度情報や水分量情報が所定の閾値未満と判断された場合に、プレート27を閉とする。一方、アクチュエータ32は、制御部において、湿度及び水分検出器31から受信した湿度情報や水分量情報が所定の閾値以上と判断された場合は、プレート27を開とする。なお、所定の閾値は、例えば晴天時走行中の吸気水分量(又は、水分率、湿度でもよい)に相当する値に設定される。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態の汽水分離部26が遮断されていない場合の汽水分離装置1内部における吸気流体の流れを示す側断面図である。図3は、本発明の一実施形態の汽水分離部26が遮断された場合の汽水分離装置1内部における吸気流体の流れを示す側断面図である。これらの図を用いて、汽水分離部26の遮断の有無による吸気流体の流れを説明する。
【0023】
まず、汽水分離部26が吸気通路10から遮断されていない場合、すなわち、プレート27が開いている場合、プレート27が入口部24に対向する汽水分離部26の第1側壁221に沿って略垂直に存在するため、吸気流体は、図2に点線矢印で示す経路に沿って移動する。具体的には、吸気流体は、入口部24の傾きに沿って斜め上側から斜め下方に傾きを持って導入され、入口部24に対向する第1側壁221の方向に進む。そして、吸気流体は、プレート27及び第1側壁221に沿って下降し、下壁部23に沿って、出口部25と対向する第2側壁222に向かって進む。さらに、吸気流体は、第2側壁222に沿って上昇して、出口部25から排出される。このように、吸気流体が汽水分離部26を通過して排出されると、吸気流体が汽水分離部23の壁に当たることで水分が分離されていく一方、吸気流体が移動する経路が長くなるとともに摩擦や乱流の発生により吸気抵抗が増加する。
【0024】
次に、汽水分離部26が吸気通路10から遮断されている場合、すなわち、プレート27が閉じている場合、プレート27が汽水分離部26の上部開口部を塞ぐように水平に存在するため、吸気流体は、図3に点線矢印で示す経路に沿って移動する。具体的には、吸気流体は、入口部24の傾きに沿って斜め上方から斜め下方に傾きを持って導入されるが、汽水分離部26の上部開口において水平方向に存在するプレート27に遮られて、その大部分が汽水分離部26に流入することなくプレート27の上面に沿って移動し、そのまま出口部25から排出される。
【0025】
以上のように構成された車両の汽水分離装置1は、導入される外気に含まれる水分量が少ない場合には、プレート27が閉とされることで、汽水分離部26が吸気通路10から遮断される。これにより、入口部24から流入した吸気流体は、汽水分離部26を通らずに、直接出口部25から排出されることになり、汽水分離の行程が省かれるため、吸気抵抗が減少し、燃料消費率を向上することができる。
【0026】
以上で本発明に係る車両の汽水分離装置1の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
上記実施形態においては、汽水分離装置1の水平断面形状は多角形としていたが、円形としてもよい。これにより、汽水分離装置1の製造が容易になる。
【0028】
また上記実施形態では、第1ダクト11から第4ダクト14及びエアクリーナ2を備えた吸気通路10に汽水分離装置1を適用しているが、吸気通路の構成はこれに限られるものではなく、シュノーケル(第1ダクト)等の有しない吸気通路の構成であってもよい。
【0029】
さらに、上記実施形態では、プレート27を閉じることで、汽水分離装置1の下部に形成された汽水分離部26を、入口部24及び出口部25を含む上部の吸気通路から遮断しているが、汽水分離部を吸気通路から遮断する構成はこれに限られるものではない。例えば図4は本実施形態の変形例における車両の汽水分離装置の汽水分離部が遮断されている場合の吸気流体の流れを示す側断面図である。
【0030】
同図に示すように変形例の汽水分離装置1’は上記実施形態と同様に上壁部21、側壁部22、及び下壁部23から構成されるボックス形状の汽水分離部26を有しているのに加えて、汽水分離部26を迂回して入口部24と出口部25とを連通するバイパス管28を有している。そして、図示しないアクチュエータにより回動するプレート27’が、バイパス管28の入口部分に設けられている。プレート27’は、湿度及び水分検出器31により検出する水分量が所定の閾値以上である場合はバイパス管28の入口を塞ぎ、水分量が所定の閾値未満である場合は入口部24の汽水分離部26への導入口を塞ぐよう回動する。
【0031】
プレート27’が入口部24の汽水分離部26への導入口を塞ぐと汽水分離部26は吸気通路から遮断され、吸気流体は図4の点線矢印で示すように入口部24からバイパス管28内を通って出口部25に流動することとなり、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0032】
上記実施形態及び変形例ではプレート27、27’により汽水分離部26を吸気通路から遮断しているが、遮断する構造はプレートによるものに限られず、例えばバタフライバルブ等の他の弁構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1、1’:汽水分離装置
2 :エアクリーナ
10 :吸気通路
11 :第1ダクト
12 :第2ダクト
13 :第3ダクト
14 :第4ダクト
21 :上壁部
22 :側壁部
221 :第1側壁
222 :第2側壁
23 :下壁部
24 :入口部
25 :出口部
26 :汽水分離部
27、27’:プレート
28 :バイパス管
31 :湿度及び水分検出器
32 :アクチュエータ
P :回動支点
図1
図2
図3
図4