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  • 特開-電動車両 図1
  • 特開-電動車両 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101798
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20220630BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20220630BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220630BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20220630BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220630BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K1/00
B60K13/04 A
B62D21/02 Z
H01M2/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216104
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】下永田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】オバホッファ サイモン
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D038BA09
3D038BA16
3D038BB03
3D038BC02
3D038BC08
3D038BC16
3D038BC19
3D203AA09
3D203AA13
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA03
3D203CB19
3D203CB35
3D203CB40
3D203DA11
3D203DB05
3D203DB07
3D235AA06
3D235BB01
3D235BB10
3D235CC12
3D235CC15
3D235DD13
3D235DD37
3D235EE63
3D235FF02
3D235FF32
3D235HH16
5H040AA33
5H040AS07
5H040AY05
5H040CC38
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電動車両の姿勢にかかわらず、バッテリセルからガスが発生した場合の安全性を確保する。
【解決手段】ラダーフレーム2を備えた電動車両1は、車両1を駆動するモータ6及びモータ6の駆動力を車両1の後輪3に伝達するギアボックス7が一体的に構成された駆動ユニット5と、モータ6に電力を供給する複数のバッテリセルからなるバッテリモジュールが収容されたバッテリハウジング12と、バッテリハウジング12の内圧が所定値以上となった場合に、バッテリハウジング12内の気体を外部に放出可能に構成されたベント部13と、を含む。ベント部13は、ラダーフレーム2間であって、かつ、気体を放出する開口が駆動ユニット5と対向するように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラダーフレームを備えた車両を駆動するモータと、前記モータの駆動力を前記車両の後輪に伝達するギアボックスとが一体的に構成された駆動ユニットと、
前記モータに電力を供給する複数のバッテリセルからなるバッテリモジュールが収容されたバッテリハウジングと、
前記バッテリハウジングの内圧が所定値以上となった場合に、前記バッテリハウジング内の気体を外部に放出可能に構成されたベント部と、を含み、
前記ベント部は、前記ラダーフレーム間であって、かつ、前記気体を放出する開口が前記駆動ユニットと対向するように配置されることを特徴とする、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、駆動用のバッテリを搭載した電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、乗用車やトラック等の商用車の分野において、モータを駆動源とする電気自動車やエンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド車といった電動車両の開発が進んでいる(例えば特許文献1参照)。このような電動車両では、駆動用のバッテリとして、例えばリチウムイオン二次電池などの高電圧バッテリが使用される。
【0003】
高電圧バッテリは、外部から入力される荷重(例えば車両衝突時の荷重)やバッテリの誤制御などに起因して、バッテリセルが異常発熱し、有毒ガス(可燃性ガスや一酸化炭素等)を発生させる虞がある。このような状況を想定し、高電圧バッテリのハウジング(バッテリハウジング)には、バッテリセルから発生した有毒ガスを外部に放出させるためのベント機構を設ける必要がある。ベント機構としては、例えば、ガスを車両後方に放出させるものや、車両下方の地面に向けて放出させるものが知られている(特許文献2参照)。また、ベント機構にパイプを連結し、ガスを地面側に向けて放出する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-113063号公報
【特許文献2】特開2011-108653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリセルから発生したガスを地面に向けて放出させる構成の場合、車両が通常の姿勢(走行可能な向き)であれば、放出されたガスが直接的に人に向かうことがない。しかし、衝突事故や風などの影響で車両が異常な姿勢(反転や横転した状態)になった場合、車両後方や車両下方に向けてガスを放出させる構成では、救援作業を行う人に向かってガスが放出される可能性があり、救援作業を阻害する虞がある。
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、電動車両の姿勢にかかわらず、バッテリセルからガスが発生した場合の安全性を確保することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係る電動車両は、ラダーフレームを備えた車両を駆動するモータと、前記モータの駆動力を前記車両の後輪に伝達するギアボックスとが一体的に構成された駆動ユニットと、前記モータに電力を供給する複数のバッテリセルからなるバッテリモジュールが収容されたバッテリハウジングと、前記バッテリハウジングの内圧が所定値以上となった場合に、前記バッテリハウジング内の気体を外部に放出可能に構成されたベント部と、を含み、前記ベント部は、前記ラダーフレーム間であって、かつ、前記気体を放出する開口が前記駆動ユニットと対向するように配置されることを特徴としている。
【0007】
これにより、バッテリセルからガスが発生した場合には、バッテリハウジングの内圧が上昇し、内圧が所定値以上となるとベント部の開口を通じてハウジング内の気体(ガス)が外部に放出される。ベント部はラダーフレーム間に配置されているため、衝突事故や横転等があってもラダーフレームによってベント部が守られる。さらに、ベント部の開口は駆動ユニットと対向配置されていることから、開口から放出されるガスは駆動ユニットにぶつかって拡散し、周囲の空気と混ざり合って希釈される。よって、バッテリセルから発生したガスが直接的に人に向かうことがない。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、車両の姿勢にかかわらず、バッテリセルからガスが発生した場合の安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電動車両の後方下部を示す模式図である。
図2図1のA-A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
[1.電動車両]
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電動車両1(以下「車両1」という)は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバー2Aと、これらを繋ぐ複数のクロスメンバー2Bとからなるラダーフレーム2を備える。車両1は、車両1を駆動する走行用モータ6(以下「モータ6」という)と、モータ6に電力を供給する駆動用のバッテリ10とを備えた電気自動車又はハイブリッド自動車である。
【0012】
本実施形態の車両1は、モータ6のみを駆動源とした電気自動車である。ここでは、図示しない荷台及びキャブを備えたトラック(電気トラック)を例示する。図1は、キャブよりも後方かつ荷台を除いた部分(車両後方かつ下部)を上方から視た模式図である。車両1は、モータ6と、後車軸4を介してモータ6の駆動力を後輪3(駆動輪)に伝達するギアボックス7とが一体的に構成された駆動ユニット5を備える。
【0013】
ギアボックス7は、モータ6の駆動力を減速するギア列や歯車機構などを内蔵しており、モータ6と一体的に設けられる。駆動ユニット5は、いわゆるリアアクスルであり、例えばブラケットやフランジといった連結部材8によりラダーフレーム2に取り付けられる。本実施形態の駆動ユニット5は、車両1の後車軸4の周辺及び前方に配置される。なお、駆動ユニット5(モータ6及びギアボックス7)の構成や駆動輪3の個数については、図示したものに限定されない。また、図示したラダーフレーム2の形状も一例である。
【0014】
バッテリ10は、充放電可能な高電圧の二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。図2に示すように、バッテリ10は、モータ6に電力を供給する複数のバッテリセル11からなるバッテリモジュールがバッテリハウジング12(以下「ハウジング12」という)に収容されて構成される。なお、ハウジング12の内部には、バッテリセル11の他、図示しない制御回路や配線等が配置される。
【0015】
バッテリ10は、駆動ユニット5の前方に間隔をあけて配置され、図示しないブラケット等によりラダーフレーム2に取り付けられる。本実施形態のハウジング12は、左右のサイドメンバー2Aの間隔よりも大きな横幅を有する直方体状のケースに、これよりも小さな略直方体状のケースを上方に重ね合わせたような二段形状に形成されている。なお、ハウジング12の形状はこれに限られず、シンプルな直方体形状であってもよいし、複数の直方体を組み合わせたような形状や曲面部分が存在していてもよい。
【0016】
バッテリ10は、外部から入力される荷重(例えば車両衝突時の荷重)やバッテリ10の誤制御などに起因して、バッテリセル11が異常発熱し、有毒ガス(可燃性ガスや一酸化炭素等)を発生させる可能性がある。このため、車両1には、ハウジング12の内圧が所定値以上となった場合に、ハウジング12内の気体(ガス)を外部に放出可能に構成されたベント部13が設けられる。ベント部13は、ラダーフレーム2の間であって、かつ、ハウジング12内のガスを放出するガス放出口(開口)が駆動ユニット5と対向するように配置される。ベント部13は、ハウジング12内のガスの放出経路としての機能を持つ。
【0017】
本実施形態のベント部13は、内圧が所定値未満ではガス放出口を閉塞しており、バッテリセル11から発生したガスによってハウジング12の内圧が上昇して所定値に達したタイミングでガス放出口を開放する内圧開放弁である。本実施形態のガス放出口(ベント部13)は、ハウジング12の車両後方を向く面(後面)に設けられ、駆動ユニット5の車両前方を向く面(前面)と対向する。なお、図2に示す例では、ガス放出口が、ハウジング12の一部をなす小さな略直方体状のケースの後面に設けられているが、ガス放出口の位置はこれに限られず、ハウジング12の形状,駆動ユニット5の形状,ハウジング12及び駆動ユニット5の配置関係等に応じて設定すればよい。
【0018】
[2.作用及び効果]
ハウジング12の内圧が所定値以上になってガス放出口が開放されると、図2中に二点鎖線及びドット模様で示すように、ハウジング12内のガスが外部へ放出される。このとき、放出されるガスの領域Gは、車両1の後方に向かい、駆動ユニット5にぶつかる。つまり、車両1が通常の姿勢(走行可能な向き)の場合に、ガスが車両1の外側に指向性を持たず、直接的に人に向かうことがない。さらに、放出されたガスが駆動ユニット5にぶつかることで拡散し、周囲の空気と混ざり合って希釈されるため、ガス濃度が下がる。
【0019】
また、衝突事故や風などの影響で車両1が異常な姿勢(反転や横転した状態)になった場合にも、放出されたガスは駆動ユニット5にぶつかって拡散するため、救援作業を行う作業者に向かって放出されることがない。つまり、車両の姿勢にかかわらず、バッテリセル11からガスが発生した場合に、そのガスが直接的に人に向かって放出されることがない。このため、安全性を確保でき、例えば救援作業を行っている人の作業を阻害することがない。さらに、放出されたガスの濃度が下がることから、この点からも作業者の安全性を確保できる。
【0020】
また、ベント部13は、ラダーフレーム2の間に配置されているため、車両1が異常な姿勢になった場合にもベント部13をラダーフレーム2によって保護できる。これにより、ハウジング12内のガスの放出経路が消失する事態を防止でき、バッテリ10の内圧の過剰な上昇を防止できる。
さらに、上述した車両1であれば、バッテリハウジングから放出されたガスを導くパイプや、ガスを希釈するためのバッテリカバーといった従来構成の部品が不要であるため、コストを低減できる。
【0021】
[3.変形例]
上述した車両1は電気自動車(トラック)であるが、車両1が、モータ6と図示しないエンジン(内燃機関)とを駆動源としたハイブリッド車であってもよいし、トラック以外の車両(例えばラダーフレームを備えたSUV)でもよい。
上述した車両1には、一つのハウジング12が搭載されているが、ハウジング12の個数が複数であってもよい。この場合であっても、上記のベント部13と同様の機能を持ったベント部を、ラダーフレーム2間に配置し、ハウジングからガスを放出する開口を駆動ユニット5と対向配置すればよい。
【符号の説明】
【0022】
1 車両(電動車両)
2 ラダーフレーム
2A サイドメンバー
2B クロスメンバー
3 後輪(駆動輪)
4 後車軸
5 駆動ユニット
6 モータ
7 ギアボックス
8 連結部材
10 バッテリ(高電圧バッテリ)
11 バッテリセル
12 ハウジング(バッテリハウジング)
13 ベント部
G 放出されるガスの領域
図1
図2