(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101801
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】バッテリパックの制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220630BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220630BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220630BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20220630BHJP
B60L 58/22 20190101ALN20220630BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
H02J7/00 B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
B60L50/60
B60L58/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216107
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】ラウト ディーパック
(72)【発明者】
【氏名】グプタ カーティケヤ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA04
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB13
5G503CC02
5G503DA08
5G503FA06
5G503GA01
5G503GB06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF27
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125BC01
5H125BC28
5H125CD04
5H125EE23
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】アクティブSOCバランシング制御を実施した場合であってもバッテリの劣化を防ぐ。
【解決手段】外部装置へ電力供給可能な複数のバッテリパック1A~1Cの制御システムであって、バッテリパック1A~1C間に電圧差が生じた場合に高電圧側バッテリパック1の電力を一時的に受電し、所定の電流値で低電圧側バッテリパック1に給電可能に構成されたインダクタ5A~5Cと、インダクタ5A~5Cからの給電電流値を制御可能なスイッチング素子7A~7Cと、電圧差が第一所定値以上である場合にコンタクタ6A~6Cを閉接し、かつ、スイッチング素子7A~7Cにおけるデューティサイクルを制御することで給電電流値を制御し、電圧差が第二所定値未満となるまでバランシング制御を行う制御部10と、外気温度を取得する外気温取得部11と、を含む。制御部10は、外気温が低いほど、デューティサイクルを低くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続された複数のバッテリパック間の電圧差を小さくするバランシング制御を行うバッテリパックの制御システムであって、
前記複数のバッテリパックを接続する並列回路と接続され、前記複数のバッテリパックの電力を外部装置に供給する電力供給回路と、
前記複数のバッテリパックにそれぞれ設けられ、各々の前記バッテリパックのバッテリ要素と前記電力供給回路とを電気的に断接するコンタクタと、
前記電圧差が生じた場合、高電圧側の前記バッテリパックの電力を一時的に受電し、所定の電流値で低電圧側の前記バッテリパックに給電可能に構成されたインダクタと、
前記インダクタから前記低電圧側のバッテリパックに給電する際の前記電流値を制御可能に構成されたスイッチング素子と、
前記複数のバッテリパックの各電圧値を取得する電圧値取得部と、
前記電圧値取得部により取得された電圧値情報に基づき、前記電圧差が第一所定値以上である場合に、前記コンタクタを閉接し、かつ、前記スイッチング素子におけるデューティサイクルを制御することで前記電流値を制御し、前記電圧差が第二所定値未満となるまで前記高電圧側のバッテリパックから前記低電圧側のバッテリパックへ電力を供給する前記バランシング制御を行う制御部と、
外気温度を取得する外気温取得部と、を含み、
前記制御部は、前記外気温取得部により取得された外気温が低いほど、前記デューティサイクルを低くする
ことを特徴とするバッテリパックの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、互いに並列接続された複数のバッテリパックの制御システムに関し、特に電動車両に搭載されるバッテリパックに好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、プラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)といった電動車両には、充放電可能な複数のバッテリセル(以下単に「バッテリ」ともいう)を備えたバッテリパックが搭載される。電動車両には、航続距離を延長することが望まれ、このためには電気容量が大容量となるバッテリパックを搭載する必要があるが、バッテリセル自体のエネルギ密度を高めることは難しい。そこで、複数個のバッテリパックを並列接続して車両に搭載することで、車載のバッテリパックの総容量を増やす方法がある。
【0003】
このようなバッテリパックシステムにおいては、並列接続されたバッテリパック間の電圧差が所定値以上であるときにコンタクタ(電磁接触器)を閉接すると、高電圧側のバッテリパック、すなわち、バッテリの充電容量を示す残容量(State of Charge、以下「SOC」ともいう)の高いバッテリパックから、低電圧側のバッテリパックに大電流(突入電流)が流入してしまう。このため、安全性の観点から、バッテリパック間の電圧差が所定値内となるまでは、各バッテリパックの電極に接続されるコンタクタ(電磁接触器)を閉接することができない。
【0004】
このような課題に対し、放電用抵抗を用いて高電圧側のバッテリパックを放電し、バッテリパック間の電圧差をバランシングして所定値内とする制御(いわゆるパッシブSOCバランシング制御)が知られている(例えば特許文献1参照)。この制御を実施することにより、電圧差が所定値内となるため、コンタクタを閉接した場合に大電流が発生することが抑制される。
【0005】
ところで、車載バッテリパックに好適に採用されるリチウムイオンバッテリ等の二次電池(バッテリセル)は、自然放電することが知られている。また、バッテリパックごとに経年的な劣化度合いの差も生じることから、自然放電の度合いもバッテリパック間で異なる。このため、車両始動時において、バッテリパック間の電圧差が所定値以上である状況が多々発生する虞がある。このような状況で、特許文献1に記載されたパッシブSOCバランシング制御を実施すると、電動車両としてのエネルギ効率を著しく悪化させる要因となる。
【0006】
また、パッシブSOCバランシング制御を採用した場合、このSOCバランシング制御の自由度が低下する結果、ユーザの利便性が悪化する虞がある。具体的には、SOCバランシング制御が完全に完了してすべてのコンタクタを閉接した場合にのみ車両の始動を許可する制御ポリシーを採用した場合、SOCバランシング制御が完了するまで車両を始動することができず、ユーザの利便性が著しく悪化する。一方で、高電圧側のバッテリパックを強制放電している間であっても、車両の始動を許可する制御ポリシーを採用した場合には、始動後の所定時間は低電圧側のバッテリパックの電力のみで車両を駆動する必要が生じる。このため、この場合にはドライバビリティが悪化する他、バッテリパック間の電圧差を所定値内とするための時間(制御実施時間)が更に延長する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、SOCバランシング制御としては、パッシブSOCバランシング制御のほかに、インダクタを用いたアクティブSOCバランシング制御が知られている。アクティブSOCバランシング制御によれば、パッシブSOCバランシング制御において放電していた(捨てていた)電力を低電圧側のバッテリパックに移すことができるため、バッテリパックの実効的な容量を高められる。
【0009】
しかしながら、リチウムイオンバッテリ等の二次電池は、低温環境下において内部抵抗が増加し、充放電特性が悪化することが知られている。このような状況でアクティブSOCバランシング制御を実施した場合、バッテリの劣化を招く虞がある。
【0010】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、アクティブSOCバランシング制御を実施した場合であってもバッテリの劣化を防ぐことができるバッテリパックの制御システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係るバッテリパックの制御システムは、互いに並列に接続された複数のバッテリパック間の電圧差を小さくするバランシング制御を行うバッテリパックの制御システムであって、前記複数のバッテリパックを接続する並列回路と接続され、前記複数のバッテリパックの電力を外部装置に供給する電力供給回路と、前記複数のバッテリパックにそれぞれ設けられ、各々の前記バッテリパックのバッテリ要素と前記電力供給回路とを電気的に断接するコンタクタと、前記電圧差が生じた場合、高電圧側の前記バッテリパックの電力を一時的に受電し、所定の電流値で低電圧側の前記バッテリパックに給電可能に構成されたインダクタと、前記インダクタから前記低電圧側のバッテリパックに給電する際の前記電流値を制御可能に構成されたスイッチング素子と、前記複数のバッテリパックの各電圧値を取得する電圧値取得部と、前記電圧値取得部により取得された電圧値情報に基づき、前記電圧差が第一所定値以上である場合に、前記コンタクタを閉接し、かつ、前記スイッチング素子におけるデューティサイクルを制御することで前記電流値を制御し、前記電圧差が第二所定値未満となるまで前記高電圧側のバッテリパックから前記低電圧側のバッテリパックへ電力を供給する前記バランシング制御を行う制御部と、外気温度を取得する外気温取得部と、を含み、前記制御部は、前記外気温取得部により取得された外気温が低いほど、前記デューティサイクルを低くすることを特徴としている。
【0012】
これにより、インダクタを用いてアクティブSOCバランシング制御を実施するシステムにおいて、外気温が低いほどデューティサイクル(デューティ比率)が低くされることから、給電の際にインダクタに流れる電流値(給電電流値)がゆっくりと上昇し、バッテリの劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本件によれば、アクティブSOCバランシング制御を実施した場合であっても、バッテリの劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係るバッテリパックの制御システムを示す図である。
【
図2】
図1の制御システムに含まれる電力供給回路の一例である。
【
図3】(a)及び(b)はスイッチング素子の動作を説明する図である。
【
図4】外気温に対するデューティサイクルを説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0016】
[1.構成]
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る制御システムは、互いに並列に接続された複数のバッテリパック1間の電圧差を小さくするバランシング制御(アクティブSOCバランシング制御)を行うものである。制御システムは、複数のバッテリパック1と、電気回路20,40と、制御部10と、外温度センサ11(外気温取得部)と、電圧センサ3(電圧値取得部)とを備える。バッテリパック1の個数は特に限定されないが、本実施形態では、三つのバッテリパック1A,1B,1Cが並列回路20により互いに接続された構成を例示する。以下、各バッテリパック1A,1B,1Cに含まれる要素を特に区別する場合には、
図1に示すように、各符号の末尾にアルファベット(A,B,C)を付す。
【0017】
複数のバッテリパック1及び制御システムは、例えば、電動のモータ30(外部装置,
図2参照)を駆動源とした電動車両(電気自動車,ハイブリッド車両)に搭載される。モータ30及びモータ30の回転速度等を制御するインバータ31(外部装置)は、プラス端子21P及びマイナス端子21Nを介して並列回路20と接続された電力供給回路40に設けられる。電力供給回路40は、複数のバッテリパック1の電力を外部装置(ここではモータ30及びインバータ31)に供給する回路である。なお、外部装置としてのモータ30及びインバータ31は一例であり、以下の説明では単に「外部装置」という。
【0018】
複数のバッテリパック1はいずれも同様に構成されている。各バッテリパック1は、バッテリ要素2と、電圧センサ3と、インダクタ回路4に設けられたインダクタ5と、コンタクタ6と、スイッチング素子7と、低電圧(例えば24V)のバッテリ8(以下「LVバッテリ8」という)と、スイッチ9とを含む。以下、各要素について説明する。
【0019】
バッテリ要素2は、充放電可能な高電圧(例えば330V)の二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)であり、複数のバッテリセル積層体からなるバッテリモジュールがハウジングに収容されて構成される。電圧センサ3は、バッテリ要素2の電圧Vをバッテリパック1の電圧値として取得するセンサであり、取得した電圧値情報を制御部10に送信する。なお、
図1に示す電圧センサ3の検出位置は一例であり、図示した位置に限られない。
【0020】
コンタクタ6は、バッテリ要素2と電力供給回路40とを電気的に断接する電磁接触器である。コンタクタ6が開放された状態では、バッテリ要素2の電力は電力供給回路40上の外部装置に供給されない。反対に、コンタクタ6が閉接された状態では、バッテリ要素2の電力は並列回路20を通じて電力供給回路40上の外部装置に供給される。また、複数のバッテリパック1間に電圧差ΔVが生じた状態でコンタクタ6が閉接されると、高電圧側のバッテリパック1に含まれるバッテリ要素2の電力の一部が、低電圧側のバッテリパック1に含まれるインダクタ回路4に供給される。これにより、高電圧側のバッテリパック1の電力の一部が、低電圧側のバッテリパック1のインダクタ5に一時的に蓄えられる。
【0021】
すなわち、インダクタ5は、複数のバッテリパック1間に電圧差ΔVが生じた場合に、高電圧側のバッテリパック1の電力を一時的に受電する。さらに、インダクタ5は、一時的に受電した電力を、所定の電流値(以下「給電電流値」という)で低電圧側のバッテリパック1に給電可能に構成されている。本実施形態のインダクタ5は、電圧差ΔVが第一所定値V1以上であるときに実施されるアクティブSOCバランシング制御において用いられる。なお、アクティブSOCバランシング制御中、コンタクタ6は閉接された状態が維持される。
【0022】
スイッチング素子7は、インダクタ5に一時的に蓄えられた電力を低電圧側のバッテリパック1に給電する際の給電電流値を制御可能に構成されている。本実施形態のスイッチング素子7は、LVバッテリ8を電力源としたトランジスタ(例えば、Nチャネル型のMOSFET)であり、スイッチング素子7とLVバッテリ8との間のスイッチ9の開閉に従ってオンオフ(オン状態とオフ状態)が切り替えられる。
【0023】
具体的には、
図3(a)に示すように、スイッチ9が閉接された状態ではスイッチング素子7のゲート(G)に電圧が加わってオンとなる。このとき、コンタクタ6が閉接状態であるため、ゲート(G)-ソース(S)間に加わる電圧によって、図中白抜き矢印で示すように、ドレイン(D)からソース(S)へ電流が流れ、インダクタ5に一時的に蓄えられた電力がバッテリ素子2へ給電される。また、
図3(b)に示すように、スイッチ9が開放された状態ではゲート(G)に電圧が加わらずオフとなるため、スイッチング素子7には電流は流れない。
【0024】
スイッチング素子7は、制御部10によって実施されるPWM制御により所定のデューティサイクル(デューティ比)でスイッチングされ、これにより、バッテリ素子2へ流れる電流(低電圧側のバッテリパック1への給電電流値)を制御する。デューティサイクルが小さいほど(デューティ比が低いほど)給電電流値は小さくなり、デューティサイクルが大きいほど(デューティ比が高いほど)給電電流値は大きくなる。
【0025】
制御部10は、アクティブSOCバランシング制御を実施する電子制御装置であり、例えばマイクロプロセッサやROM、RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、制御部10が、バッテリパック1に関する他の制御や推定処理(例えば、充放電に関する制御,充電状態や劣化状態の推定等)を行う機能を有していてもよい。
【0026】
アクティブSOCバランシング制御とは、複数のバッテリパック1間の電圧差ΔVが第一所定値V1以上である場合に、複数のバッテリパック1のうち電圧の高いバッテリパック1から電圧の低いバッテリパック1へ電力を移すことで、バッテリパック1の実効的な容量を高める制御である。アクティブSOCバランシング制御は、電圧差ΔVが第二所定値V2未満となるまで継続される。第二所定値V2は、0以上かつ第一所定値V1以下の値(0≦V2≦V1)である。本実施形態の制御部10は、このアクティブSOCバランシング制御の実施に際し、外気温度を取得する外気温センサ11の情報を用いることで、低温環境下でのバッテリの劣化抑制を図る。
【0027】
制御部10は、電圧センサ3により取得された電圧値情報に基づき、複数のバッテリパック1間の電圧差ΔVが第一所定値V1以上である場合に、コンタクタ6を閉接し、かつ、スイッチング素子7におけるデューティサイクルを制御することで給電電流値を制御する。そして、電圧差ΔVが第二所定値V2未満となるまで高電圧側のバッテリパック1から低電圧側のバッテリパック1へ電力を供給するアクティブSOCバランシング制御を行う。このとき、制御部10は、
図4に示すように、外気温センサ11により取得された外気温Tが低いほど、デューティサイクルを低くする。
【0028】
例えば、制御部10は、三つの電圧センサ3A~3Cで取得された三つのバッテリパック1の電圧値情報に基づき、三つのバッテリパック1A~1Cの各電圧差(1Aと1Bとの差、1Aと1Cとの差、1Bと1Cとの差)を算出し、最も大きさ電圧差ΔVを持つ二つのバッテリパック1を特定する。例えば、バッテリパック1Aの電圧が最も高く、バッテリパック1Cの電圧が最も低く、これらの電圧差ΔVが第一所定値V1を超えている場合、制御部10は、高電圧側のバッテリパック1Aから低電圧側のバッテリパック1Cへ電力を移すためにアクティブSOCバランシング制御を実施する。このとき、制御部10は、外気温センサ11で取得される外気温Tが低いほど、スイッチング素子7Cにおけるデューティサイクルを低くすることで、バッテリパック1Cのバッテリ要素2Cに流れる電流(給電電流値)を緩やかに上昇させ、過充電を防止することでバッテリ要素2Cの劣化を防ぐ。
【0029】
制御部10は、外気温Tとデューティサイクルとの関係を予め規定したマップや数式等を記憶していてもよい。例えば、外気温Tが低いほどデューティサイクルが0に近づき、外気温Tが高くなるにつれてデューティサイクルが1に近づくようなマップ(正の相関を持つマップ)や、外気温Tが常温未満では正の相関を持ち、常温以上では一定のデューティサイクルに設定されたマップを制御部10が予め有しておけば、取得された外気温Tをマップに適用するだけで容易にデューティサイクルを求めることができる。
【0030】
なお、制御部10は、アクティブSOCバランシング制御の実施中、常に電圧センサ3で取得された電圧値情報を参照して、最も大きな電圧差ΔVを持つ二つのバッテリパック1を特定し、この電圧差ΔVが第二所定値V2を下回ったらアクティブSOCバランシング制御を終了する。これにより、アクティブSOCバランシング制御の実施により、三つのバッテリパック1A~1Cのうち、電圧差ΔVが最も大きくなる二つのバッテリパック1の組み合わせが変わったとしても、ΔV<V2となるまでバランシング制御を継続可能である。
【0031】
[2.作用及び効果]
複数のバッテリパック1間の電圧差ΔVが所定値Vd以上である場合は、アクティブSOCバランシング制御が実施されるため、バランシング制御を実施しない場合又はパッシブSOCバランシング制御を実施する場合と比較して、バッテリパック1の実効的な容量を高めることができる。さらに、このアクティブSOCバランシング制御の実施に際し、外気温Tが低いほど、スイッチング素子7におけるデューティサイクルが低くされるため、低電圧側のバッテリパック1に流れる給電電流値を緩やかにすることができる。このため、低温環境下においてバッテリパック1の内部抵抗が増加し、充放電特性が悪化した状態であっても、バッテリパック1の過充電を防止でき、劣化を抑制することができる。
【0032】
アクティブSOCバランシング制御を実施するか否かの開始閾値である第一所定値V1と、この制御をいつまで継続するか否かの終了閾値である第二所定値V2を適切に設定することにより、制御ハンチングを回避しつつ、バッテリパック1の実効的な容量を高めることができる。
【0033】
[3.その他]
スイッチング素子7はN型MOSFETに限られず、インダクタ6から低電圧側のバッテリパック1に給電する際の給電電流値を制御可能に構成されたもの(他のトランジスタ等)であってもよい。回路構成も一例であり、図示した構成に限られない。
上述した制御システムは、複数のバッテリパックの電力を用いる対象(例えば、電気製品や工場,オフィス等)にも適用可能であり、電動車両に限られない。
【符号の説明】
【0034】
1,1A,1B,1C バッテリパック
2,2A,2B,2C バッテリ要素
3,3A,3B,3C 電圧センサ(電圧値取得部)
4,4A,4B,4C インダクタ回路
5,5A,5B,5C インダクタ
6,6A,6B,6C コンタクタ
7,7A,7B,7C スイッチング素子
8,8A,8B,8C LVバッテリ(低電圧バッテリ)
9,9A,9B,9C スイッチ
10 制御部
11 外温度センサ(外気温取得部)
20 並列回路
21N マイナス端子
21P プラス端子
30 モータ(外部装置)
31 インバータ(外部装置)
40 電力供給回路
T 外気温
V1 第一所定値
V2 第二所定値
ΔV 電圧差