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特開2022-101807スリップメタン処理装置及び舶用推進プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101807
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】スリップメタン処理装置及び舶用推進プラント
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/32 20060101AFI20220630BHJP
   B63J 3/02 20060101ALI20220630BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B63H21/32 Z
B63J3/02 D
B63B25/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216114
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍太
(72)【発明者】
【氏名】森 匡史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CO換算の温室効果ガス排出量を削減可能なスリップメタン処理装置を提供する。
【解決手段】燃焼器8と、舶用ガスエンジン100から排出されたスリップメタンを含む排ガスを燃焼器に供給するための排ガス供給ライン4と、排ガス供給ラインにおける舶用ガスエンジンと燃焼器との間に位置するガス‐ガスヒータ12と、排ガスエコノマイザ22と、燃焼器から排出された排ガスを排ガスエコノマイザに供給するための排ガス排出ライン10と、を備え、ガス‐ガスヒータは、排ガス排出ラインにおける燃焼器と排ガスエコノマイザとの間に位置し、排ガス供給ラインを流れるスリップメタンを含む排ガスと排ガス排出ラインを流れる排ガスとの熱交換により排ガス供給ラインを流れるスリップメタンを含む排ガスを加熱するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器と、
舶用ガスエンジンから排出されたスリップメタンを含む排ガスを前記燃焼器に供給するための排ガス供給ラインと、
前記排ガス供給ラインにおける前記舶用ガスエンジンと前記燃焼器との間に位置するガス‐ガスヒータと、
排ガスエコノマイザと、
前記燃焼器から排出された前記排ガスを前記排ガスエコノマイザに供給するための排ガス排出ラインと、
を備え、
前記ガス‐ガスヒータは、前記排ガス排出ラインにおける前記燃焼器と前記排ガスエコノマイザとの間に位置し、前記排ガス供給ラインを流れる前記スリップメタンを含む前記排ガスと前記排ガス排出ラインを流れる前記排ガスとの熱交換により前記排ガス供給ラインを流れる前記スリップメタンを含む前記排ガスを加熱するように構成された、スリップメタン処理装置。
【請求項2】
前記燃焼器に加熱用燃料を供給するための燃料ラインと、
前記燃料ラインに設けられた燃料調整弁と、
前記燃料調整弁を制御することにより前記燃焼器の燃焼温度を制御するように構成された燃焼器温度制御装置と、
前記燃焼器の燃焼温度を計測する温度センサと、
を備え、
前記燃焼器温度制御装置は、前記温度センサの出力に基づいて、前記燃焼器の燃焼温度を設定温度に近づけるように前記燃料調整弁を制御するように構成された、請求項1に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項3】
前記設定温度は、537℃以上である、請求項2に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項4】
前記設定温度は、1000℃以下である、請求項3に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項5】
前記排ガス排出ラインにおける前記燃焼器と前記ガス‐ガスヒータとの間の位置において前記排ガス排出ラインから分岐し、前記排ガス排出ラインにおける前記ガス‐ガスヒータと前記排ガスエコノマイザとの間の位置において前記排ガス排出ラインに合流するバイパスラインを更に備える、請求項1に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項6】
前記バイパスラインに設けられたバイパス弁と、
前記排ガスエコノマイザで回収するエネルギーの需要に関する需要情報に基づいて、前記バイパス弁を制御するように構成されたバイパス弁制御装置と、
を更に備える、請求項5に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項7】
前記バイパス弁制御装置は、前記需要情報が示す前記需要が大きくなるにつれて、前記バイパス弁の開度を大きくするように構成された、請求項6に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項8】
前記排ガスエコノマイザで生成された蒸気により駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに連結された発電機と、
を更に備え、
前記需要情報は、前記舶用ガスエンジンが搭載された船舶の船内電力需要を示しており、
前記バイパス弁制御装置は、前記需要情報が示す前記船内電力需要が大きくなるにつれて、前記バイパス弁の開度を大きくするように構成された、請求項7に記載のスリップメタン処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のスリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスラインと、
を備える舶用推進プラント。
【請求項10】
請求項2乃至4の何れか1項に記載のスリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスラインと、
を備え、
前記Nリッチガスラインからの前記Nリッチガスが、前記燃料ラインからの前記加熱用燃料よりも優先的に前記燃焼器に供給される、舶用推進プラント。
【請求項11】
請求項2乃至4の何れか1項に記載のスリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスラインと、
前記Nリッチガスラインに設けられたNリッチガス弁と、
を備え、
前記燃焼器温度制御装置は、前記Nリッチガス弁が開いた状態において、前記燃焼器の燃焼温度を前記設定温度に近づけるように前記燃料調整弁を制御するように構成された、舶用推進プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スリップメタン処理装置及び舶用推進プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)を燃料とする舶用ガスエンジンでは、メタンガスの一部が未燃状態で系外に排出されてしまう。このようにガスエンジンから未燃状態で排出されるメタンは、スリップメタン(slipped methane)と称されている。メタンの温暖化係数は二酸化炭素と比較して非常に高いため、舶用ガスエンジンを含むプラント内でスリップメタンを処理することが求められている。
【0003】
特許文献1には、発電用のガスエンジンから排出されたスリップメタンを燃焼器で燃焼処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-360559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、スリップメタンの燃焼のために燃焼器へ投入する加熱用燃料の燃料投入量が増大すると、CO換算の温室効果ガス排出量を削減する効果が限定的となる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示は、舶用ガスエンジンにおけるCO換算の温室効果ガス排出量を削減可能なスリップメタン処理装置及びこれを備える舶用推進プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るスリップメタン処理装置は、
燃焼器と、
舶用ガスエンジンから排出されたスリップメタンを含む排ガスを前記燃焼器に供給するための排ガス供給ラインと、
前記排ガス供給ラインにおける前記舶用ガスエンジンと前記燃焼器との間に位置するガス‐ガスヒータと、
排ガスエコノマイザと、
前記燃焼器から排出された排ガスを前記排ガスエコノマイザに供給するための排ガス排出ラインと、
を備え、
前記ガス‐ガスヒータは、前記排ガス排出ラインにおける前記燃焼器と前記排ガスエコノマイザとの間に位置し、前記排ガス供給ラインを流れる前記スリップメタンを含む前記排ガスと前記排ガス排出ラインを流れる前記排ガスとの熱交換により前記排ガス供給ラインを流れる前記スリップメタンを含む前記排ガスを加熱するように構成される。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る舶用推進プラントは、
上記スリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスラインと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、舶用ガスエンジンにおけるCO換算の温室効果ガス排出量を削減可能なスリップメタン処理装置及びこれを備える舶用推進プラントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るスリップメタン処理装置2(2A)の概略構成を示す図である。
図2】他の実施形態に係るスリップメタン処理装置2(2B)の概略構成を示す図である。
図3】上記スリップメタン処理装置2を備える舶用推進プラント50の概略構成を示す図である。
図4図3に示したN2リッチガスライン62からスリップメタン処理装置2(2A又は2B)の燃焼器8にN2リッチガスを導入するための構成を示す概略図である。
図5】排熱回収装置14の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るスリップメタン処理装置2(2A)の概略構成を示す図である。スリップメタン処理装置2は、不図示の船舶に搭載されており、舶用ガスエンジン100から未燃状態で排出されたメタンガス(以下、舶用ガスエンジン100から未燃状態で排出されたメタンガスを「スリップメタン」という。)を含む排ガスを燃焼処理するように構成されている。舶用ガスエンジン100は、例えばメタンガスを含む燃料ガス(例えば天然ガス等)を主燃料とする低圧予混合方式のディーゼルエンジン(主機エンジン)であり、船舶の推進力を得るためのプロペラ102に連結されている。以下、舶用ガスエンジン100を単にガスエンジン100という。
【0013】
図1に示すように、スリップメタン処理装置2は、排ガス供給ライン4、燃料ライン6、燃焼器8、排ガス排出ライン10、ガス‐ガスヒータ12、排熱回収装置14、燃料調整弁16、温度センサ18及び燃焼器温度制御装置20を備える。
【0014】
排ガス供給ライン4は、ガスエンジン100と燃焼器8とを接続しており、ガスエンジン100から排出されたスリップメタンを含む排ガスを燃焼器8に供給するように構成されている。
【0015】
燃料ライン6は、不図示の燃料源と燃焼器8とを接続しており、燃焼器8に加熱用燃料を供給するように構成されている。加熱用燃料は、例えば舶用ガスエンジン100に供給される燃料ガスと同じ燃料(例えば天然ガス等)であってもよい。燃料ライン6には、燃料ライン6から燃焼器8に供給する加熱用燃料の流量を調整可能な燃料調整弁16が設けられている。
【0016】
燃焼器8は、燃料ライン6から供給された加熱用燃料と排ガス供給ライン4から供給されたスリップメタンとを燃焼させて燃焼ガスを生成するように構成されている。燃焼器8の燃焼温度(燃焼器8で生成される燃焼ガスの温度)は、排ガス供給ライン4から供給されたスリップメタンが燃焼器8及び排ガス排出ライン10を含む系内で滞留する滞留時間を考慮して上記系内で自己燃焼するような温度に設定される。また、燃焼器8の燃焼温度及び燃焼器8のサイズは、好ましくは、スリップメタンを処理すべき所定の負荷におけるガスエンジン100の排ガスの流量時に燃焼器8によってスリップメタンを完全焼却できるような燃焼温度及びサイズであってもよい。
【0017】
図示する構成では、燃焼器8の燃焼温度(図示する例では燃焼器8の出口温度)を計測する温度センサ18が排ガス排出ライン10における燃焼器8と排熱回収装置14の排ガスエコノマイザ22との間の位置に設けられている。温度センサ18は、排ガス排出ライン10の排ガスの温度を計測することにより、燃焼器8の燃焼温度を計測する。燃焼器温度制御装置20は、温度センサ18の出力に基づいて、燃焼器8の燃焼温度をスリップメタンが燃焼器8の内部で自己燃焼するような設定温度(目標温度)に近づけるように燃料調整弁16の開度を制御する。燃焼器温度制御装置20は、燃焼器8の設定温度と温度センサ18で計測される燃焼温度との偏差を小さくするように燃料調整弁16の開度を制御する。なお、この設定温度は、メタンの発火点である537℃以上に設定されることが好ましい。この設定温度は、メタンの自己燃焼を促進しつつ燃焼器8の耐熱性に起因する高コスト化を抑制する観点から、例えば537℃以上1000℃以下であってもよく、排ガス排出ライン10の大型化を抑制しつつ耐熱性に起因する高コスト化を抑制する観点から、650℃以上850℃以下(例えば800℃程度)であってもよい。燃焼器8の設定温度は、人が手動で設定してもよいし、燃焼器温度制御装置20が自動で設定してもよい。燃焼器温度制御装置20は、燃焼器8の燃焼温度について、上記偏差に基づいて例えばP制御又はPI制御等を行ってもよい。
【0018】
燃焼器温度制御装置20は、電気回路から構成されてもよいし、コンピュータから構成されてもよい。燃焼器温度制御装置20は、コンピュータから構成される場合、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとを備え、プロセッサが、記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、その機能を実現する。
【0019】
図1に示すように、排ガス排出ライン10は、燃焼器8と排熱回収装置14の排ガスエコノマイザ22とを接続しており、燃焼器8で加熱されて燃焼器8から排出された排ガス(燃焼排ガス)を排ガスエコノマイザ22に供給するように構成されている。
【0020】
ガス‐ガスヒータ12は、排ガス供給ライン4におけるガスエンジン100と燃焼器8との間に位置し、排ガス排出ライン10における燃焼器8と排熱回収装置14の排ガスエコノマイザ22との間に位置する。ガス‐ガスヒータ12は、排ガス供給ライン4を流れるスリップメタンを含む排ガスと排ガス排出ライン10を流れる排ガスとの熱交換により排ガス供給ライン4を流れるスリップメタンを含む排ガスを加熱する熱交換器として構成されている。なお、燃焼器8及びガス‐ガスヒータ12の各々は、共通の1つのダクトバーナの一部分として構成されてもよい。
【0021】
排熱回収装置14は、排ガスエコノマイザ22、蒸気タービン24、発電機26、復水器28、蒸気ライン30及び復水ライン32を含む。
【0022】
排ガスエコノマイザ22は、復水ライン32から供給された水(復水)を排ガス排出ライン10から供給された排ガスにより加熱して蒸発させ、蒸気を生成するように構成されている。排ガスエコノマイザ22で生成された蒸気は、排ガスエコノマイザ22と蒸気タービン24とを接続する蒸気ライン30を通って蒸気タービン24に供給されて、蒸気タービン24を駆動する。蒸気タービン24には発電機26が連結されており、排ガスエコノマイザ22から蒸気ライン30を通って供給された蒸気によって蒸気タービン24が駆動されることにより、発電機26から電力が得られる。発電機26から得た電力は、ガスエンジン100が搭載された船舶の電力需要(以下、「船内電力需要」という。)の少なくとも一部を賄うように当該船舶で消費される。排ガス排出ライン10から排ガスエコノマイザ22へ供給された排ガスは、排ガスエコノマイザ22で復水ライン32から供給された水との熱交換を行った後に、大気に放出される。
【0023】
蒸気タービン24を通過した蒸気は、復水器28で凝縮されて復水となり、復水器28と排ガスエコノマイザ22とを接続する復水ライン32を介して排ガスエコノマイザ22に再び供給される。
【0024】
上記スリップメタン処理装置2のガス‐ガスヒータ12は、排ガス供給ライン4を流れるスリップメタンを含む排ガスと排ガス排出ライン10を流れる排ガスとの熱交換により排ガス供給ライン4を流れるスリップメタンを含む排ガスを加熱するように構成されている。このため、排ガス供給ライン4から燃焼器8に供給される排ガスの温度を、燃焼器8に供給される前に上昇させることができる。したがって、燃焼器8の燃焼温度をスリップメタンが燃焼器8の内部で自己燃焼するような温度にするために必要な燃料投入量(燃料ライン6から燃焼器8への燃料投入量)を削減することができ、CO換算の温室効果ガス排出量を削減することができる。
【0025】
図2は、他の実施形態に係るスリップメタン処理装置2(2B)の概略構成を示す図である。
図2に示すスリップメタン処理装置2(2B)は、バイパスライン34、バイパス弁36及びバイパス弁制御装置38を備えている点が上記スリップメタン処理装置2(2A)とは異なっており、他の構成は上記スリップメタン処理装置2(2A)と同様である。図2に示すスリップメタン処理装置2(2B)において、図1に示したスリップメタン処理装置2(2A)の各構成と共通の符号は、特記しない限り図1に示したスリップメタン処理装置2(2A)の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0026】
図2に示すように、バイパスライン34は、排ガス排出ライン10における燃焼器8とガス‐ガスヒータ12との間の位置において排ガス排出ライン10から分岐し、排ガス排出ライン10におけるガス‐ガスヒータ12と排ガスエコノマイザ22との間の位置において排ガス排出ライン10に合流するように構成されている。すなわち、バイパスライン34は、燃焼器8から排出される排ガスを、ガス‐ガスヒータ12を迂回して(ガス‐ガスヒータ12に供給せずに)排ガスエコノマイザ22に直接供給するように構成されている。バイパスライン34には、バイパスライン34を流れる排ガスの流量を調節可能なバイパス弁36が設けられている。
【0027】
バイパス弁制御装置38は、排ガスエコノマイザ22で回収するエネルギーの需要(需要量)に関する需要情報に基づいて、バイパス弁36を制御するように構成されている。バイパス弁制御装置38は、上記需要情報が示すエネルギーの需要が大きくなるにつれて、バイパス弁36の開度を大きくするように構成される。
【0028】
例えば、上記需要情報は、ガスエンジン100が搭載された船舶の船内電力需要(船内で使用される電力の需要量)を示していてもよく、この場合、バイパス弁制御装置38は、上記需要情報が示す船内電力需要が大きくなるにつれて、バイパス弁36の開度を大きくするように構成される。
【0029】
バイパス弁制御装置38は、電気回路から構成されてもよいし、コンピュータから構成されてもよい。燃焼器温度制御装置20は、コンピュータから構成される場合、RAM、ROM等の記憶装置と、CPU、GPU等のプロセッサとを備え、プロセッサが、記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、その機能を実現する。
【0030】
図2に示す構成においても、燃焼器8の燃焼温度は、排ガス供給ライン4から供給されたスリップメタンが燃焼器8の内部で自己燃焼するような温度に設定される。また、燃焼器8の燃焼温度(図示する構成では燃焼器8の出口温度)を計測する温度センサ18が排ガス排出ライン10に設けられており、燃焼器温度制御装置20は、温度センサ18の出力に基づいて、燃焼器8の燃焼温度をスリップメタンが燃焼器8の内部で自己燃焼するような上述の設定温度に近づけるように燃料調整弁16の開度を制御する。燃焼器温度制御装置20は、燃焼器8の設定温度と温度センサ18で計測される燃焼温度との偏差を小さくするように燃料調整弁16の開度を制御する。
【0031】
さらに、図2に示す構成では、バイパス弁36の開度を大きくするほど、燃焼器8から排出された排ガスの流量のうちガス‐ガスヒータ12を迂回してバイパスライン34を流れる排ガスの流量の割合を増大させることができる。すなわち、バイパス弁36の開度を大きくするほど、ガス‐ガスヒータ12での熱交換量(排ガス供給ライン4を流れる排ガスと排ガス排出ライン10を流れる排ガスとの熱交換量)を減少させつつ、排ガスエコノマイザ22での熱交換量(復水ライン32を流れる水と排ガス排出ライン10を流れる排ガスとの熱交換量)を増大させることができる。これにより、排ガスエコノマイザ22での熱回収量を増大させて、蒸気タービン24に連結された発電機26の発電量を増大させることができる。なお、バイパス弁36の開度を大きくするほど、ガス‐ガスヒータ12での熱交換量が減少して排ガス供給ライン4から燃焼器8に入る排ガスの温度は低下するため、燃料調整弁16の開度を増大させて燃料ライン6から燃焼器8へ投入する投入燃料量を増加させることとなる。
【0032】
このように、バイパス弁36の開度を大きくするほど、燃焼器8から排出された排ガスの熱エネルギーの多くを排ガスエコノマイザ22で回収することができ、蒸気タービン24に連結された発電機26の発電量を増大させることができる。
【0033】
よって、上記のように需要情報が示す船内電力需要が大きくなるにつれてバイパス弁36の開度を大きくすることにより、船内電力需要が大きくなるにつれて蒸気タービン24に連結された発電機26の発電量を増大させることができる。換言すれば、需要情報が示す船内電力需要が小さくなるにつれてバイパス弁36の開度を小さくすることにより、船内電力需要が小さくなるにつれて蒸気タービン24に連結された発電機26の発電量を減少させることができる。このように、スリップメタンを燃焼処理した排熱を利用して船内電力需要の増減に対応することができるため、船内電力の全てを発電用のディーゼルエンジン等によって賄う場合と比較して、発電用ディーゼルエンジンを運転せずに済み(もしくは運転頻度が減り)、これにより燃料消費量の削減およびCO換算の温室効果ガス排出量の削減を実現することができる。
【0034】
図3は、上記スリップメタン処理装置2を備える舶用推進プラント50の概略構成を示す図である。舶用推進プラント50が備えるスリップメタン処理装置2は、図1に示したスリップメタン処理装置2(2A)又は図2に示したスリップメタン処理装置2(2B)の何れであってもよい。
【0035】
図3に示すように、舶用推進プラント50は、上記スリップメタン処理装置2、上記ガスエンジン100、上記プロペラ102、発電用のガスエンジン110、LNGタンク52、ガス圧縮機54、再液化装置56、熱交換器58、燃料ガスライン60、Nリッチガスライン62及びリターンライン64を備える。ガスエンジン110は、例えばメタンガスを含む燃料ガス(例えば天然ガス等)を燃料とするディーゼルエンジン(補機エンジン)であり、船内電力需要の少なくとも一部を賄う電力を生成する発電機112に連結されている。
【0036】
LNGタンク52には、LNG(液化天然ガス)が貯蔵されている。燃料ガスライン60は、一端側でLNGタンク52に接続しており、他端側で分岐してガスエンジン100,110及びスリップメタン処理装置2の燃焼器8にそれぞれ接続している。燃料ガスライン60のうち分岐位置P1と燃焼器8とを接続する部分は、上記燃料ライン6に相当する。ガス圧縮機54及び熱交換器58は燃料ガスライン60に設けられており、ガス圧縮機54は、燃料ガスライン60においてLNGタンク52と熱交換器58との間に位置する。燃料ガスライン60は、ガス圧縮機54と熱交換器58との間で分岐して、再液化装置56に接続している。
【0037】
LNGタンク52内で気化した天然ガス(以下、「ボイルオフガス」という。)は、ガス圧縮機54で加圧され、熱交換器58によって昇温してからガスエンジン100,110に燃料ガスとして供給される。LNGタンク52で気化したボイルオフガスのうちガスエンジン100,110の何れにも供給されない余剰分の天然ガスは、再液化装置56で再液化されてLNGとなり、リターンライン64を介してLNGタンク52に戻される。なお、図3に示す例示的形態では、LNGタンク52の内圧が過度に大きくなる場合のような危急時にタンク内圧を規定値内に抑えるために、ボイルオフガスをガス圧縮機54や再液化装置56に供給せずにNリッチガスライン62を経由し燃焼器8に直接供給可能に構成された放出ライン72が設けられている。
【0038】
再液化装置56によってボイルオフガスを再液化する際に凝縮せずに残ったガスは、Nガスを多く含んでおり、Nリッチガスと称される。このNリッチガス中のNの濃度は、ボイルオフガス中のNの濃度より高くなっている。Nリッチガスは、再液化装置56とスリップメタン処理装置2の燃焼器8とを接続するNリッチガスライン62を介して、スリップメタン処理装置2の燃焼器8に供給される。
【0039】
図4は、図3に示したNリッチガスライン62からスリップメタン処理装置2(2A又は2B)の燃焼器8にNリッチガスを導入するための構成を示す概略図である。
図4に示すように、燃焼器8には、燃料ライン6(燃料ガスライン60)から加熱用燃料(主燃料)を供給可能となっており、Nリッチガスライン62からNリッチガスを供給可能となっている。図4に例示する形態では、Nリッチガスライン62は燃焼器8の外側で燃料ライン6と合流しているが、Nリッチガスライン62と燃料ライン6とは、燃焼器8の外側で合流せずに、それぞれ独立して燃焼器8に接続していてもよい。
【0040】
リッチガスライン62には、Nリッチガスの流量を調節可能なNリッチガス弁66が設けられており、ガスエンジン100の運転中か停止中かを問わず、Nリッチガス弁66は開いた状態(例えば全開の状態)となっている。このため、再液化装置56によってボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスの全量が、Nリッチガスライン62を介して燃焼器8に投入される。また、燃焼器温度制御装置20は、Nリッチガス弁66が開いた状態において、燃焼器8の燃焼温度が上述の設定温度に近づくように燃料調整弁16を制御するように構成される。このため、Nリッチガスライン62からのNリッチガスが、燃料ライン6からの加熱用燃料よりも優先的に燃焼器8に供給される。なお、燃焼器8のバーナーは、ガスエンジン100の設計点における排ガスに含まれるスリップメタンを燃焼処理するのに必要な最大投入燃料量と、Nリッチガスの最大処理量とのうち何れか大きい量を考慮した構成であってもよい。
【0041】
従来、ボイルオフガスが再液化装置で再液化される過程で発生するNリッチガスは、主機や補機のガスエンジンの燃料としては使用できないため、ガス焼却装置(Gas Combustion Unit:GCU)又はDFボイラ(Dual Fuel Boiler)による焼却処理を行っていた。GCUを用いる場合は、GCUでの燃焼で得たエネルギーを有効活用できず、また、船上の限られたスペースをGCUの設置スペースが占めてしまうこととなる。また、DFボイラを用いる場合は、事前にボイラの暖缶を完了させておく必要があり、暖缶の為に余分な燃料を消費する懸念がある。また、暖缶を保持しない場合は、処理対象のガスが発生した際に即応することができず、Nリッチガスの燃焼処理やLNGタンク52の内圧を適正範囲内に抑えることが困難になる恐れがある。
【0042】
これに対し、上記舶用推進プラント50によれば、再液化装置56によってボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを燃焼器8に供給するためのNリッチガスライン62が設けられているため、スリップメタンを燃焼処理するための燃焼器8を用いてNリッチガスの焼却処理を行うことができる。このため、GCUやDFボイラのようにNリッチガスの焼却のための専用の装置を設ける必要がなく、省スペース化及び設備費の削減を実現することができる。
【0043】
また、DFボイラとは異なり、スリップメタン処理装置2は主機としてのガスエンジン100の稼働時に常に動作しているため、暖缶のような準備/待機操作は不要となる。また、スリップメタン処理のために燃料ライン6から燃焼器8に投入される燃料をNリッチガスで部分的に補うことで、舶用推進プラント50全体での燃料消費量を抑えることができる。
【0044】
また、通常、船舶の停止時には、主機としてのガスエンジン100が運転を停止しているが、このような場合であっても、NリッチガスをNリッチガスライン62から燃焼器8に投入して燃焼処理することができ、燃焼器8から排出された排ガスのエネルギーを排熱回収装置14の発電機26で電力として回収することができる。なお、排熱回収装置14による排熱回収のみでは船内電力需要を賄えない場合には、発電用のガスエンジン110を起動すること等によって船内電力需要の不足分を補うことが可能である。
【0045】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0046】
例えば、上述のスリップメタン処理装置2(2A又は2B)の排熱回収装置14は、図5に示すダンプライン68を備えていてもよい。ダンプライン68は、蒸気ライン30における排ガスエコノマイザ22と蒸気タービン24との間の位置において蒸気ライン30から分岐して、蒸気ライン30における蒸気タービン24と復水器との間の位置において蒸気ライン30に合流する。ダンプライン68は、排ガスエコノマイザ22で発生した蒸気を、蒸気タービン24を迂回して(蒸気タービン24に供給せずに)復水器28に導くように構成される。ダンプライン68にはダンプ弁70が設けられている。ダンプ弁70は、通常時は閉じられているが、負荷の急変時に開いて蒸気をダンプさせる(蒸気タービン24を迂回して復水器28に導く)ことができる。
【0047】
また、上述した幾つかの実施形態では、燃焼器温度制御装置20とバイパス弁制御装置38とを便宜的に分けて説明したが、燃焼器温度制御装置20とバイパス弁制御装置38とは共通のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0048】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0049】
(1)本開示の一実施形態に係るスリップメタン処理装置(例えば上述のスリップメタン処理装置2(2A,2B)は、
燃焼器(例えば上述の燃焼器8)と、
舶用ガスエンジン(例えば上述の舶用ガスエンジン100)から排出されたスリップメタンを含む排ガスを前記燃焼器に供給するための排ガス供給ライン(例えば上述の排ガス供給ライン4)と、
前記排ガス供給ラインにおける前記舶用ガスエンジンと前記燃焼器との間に位置するガス‐ガスヒータ(例えば上述のガス‐ガスヒータ12)と、
排ガスエコノマイザ(例えば上述の排ガスエコノマイザ22)と、
前記燃焼器から排出された排ガスを前記排ガスエコノマイザに供給するための排ガス排出ライン(例えば上述の排ガス排出ライン10)と、
を備え、
前記ガス‐ガスヒータは、前記排ガス排出ラインにおける前記燃焼器と前記排ガスエコノマイザとの間に位置し、前記排ガス供給ラインを流れる前記スリップメタンを含む前記排ガスと前記排ガス排出ラインを流れる前記排ガスとの熱交換により前記排ガス供給ラインを流れる前記スリップメタンを含む前記排ガスを加熱するように構成される。
【0050】
上記(1)に記載のスリップメタン処理装置によれば、上記スリップメタン処理装置によれば、ガス‐ガスヒータを備えており、ガス‐ガスヒータは、排ガス供給ラインを流れるスリップメタンを含む排ガスと排ガス排出ラインを流れる排ガスとの熱交換により排ガス供給ラインを流れるスリップメタンを含む排ガスを加熱するように構成されている。
【0051】
このため、排ガス供給ラインから燃焼器に供給される排ガスの温度を、燃焼器に供給される前に上昇させることができる。したがって、燃焼器の燃焼温度をスリップメタンを燃焼処理するための適切な温度にするために必要な燃料投入量(燃料ラインから燃焼器への燃料投入量)を削減することができ、舶用ガスエンジンにおけるCO換算の温室効果ガス排出量を削減することができる。
【0052】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のスリップメタン処理装置において、
前記燃焼器に加熱用燃料を供給するための燃料ライン(例えば上述の燃料ライン6)と、
前記燃料ラインに設けられた燃料調整弁(例えば上述の燃料調整弁16)と、
前記燃料調整弁を制御することにより前記燃焼器の燃焼温度を制御するように構成された燃焼器温度制御装置(例えば上述の燃焼器温度制御装置20)と、
前記排ガスの温度を計測する温度センサ(例えば上述の温度センサ18)と、
を備え、
前記燃焼器温度制御装置は、前記温度センサの出力に基づいて、前記燃焼器の燃焼温度を設定温度に近づけるように前記燃料調整弁を制御するように構成される。
【0053】
上記(2)に記載のスリップメタン処理装置によれば、燃焼器温度制御装置は、温度センサの出力に基づいて、燃焼器の燃焼温度をスリップメタンが燃焼器の内部で自己燃焼するような設定温度に近づけるように燃料調整弁を制御することができる。これにより、舶用ガスエンジンから排出されたスリップメタンを燃焼処理するための加熱用燃料について、燃焼器への供給過剰及び供給不足を抑制することができる。
【0054】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載のスリップメタン処理装置において、
前記設定温度は、537℃以上である。
【0055】
上記(3)に記載のスリップメタン処理装置によれば、燃焼器の燃焼温度をメタンの発火点である537℃以上とすることができ、燃焼器でスリップメタンを自己燃焼させることができる。
【0056】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の何れかに記載のスリップメタン処理装置において、
前記設定温度は、1000℃以下である。
【0057】
燃焼器の燃焼温度が高すぎると、燃焼器を構成する材料に高い耐熱性が要求され、燃焼器の高コスト化を招いてしまう。このため、上記(4)に記載のように、燃焼器の燃焼温度を1000℃以下としてもよい。
【0058】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のスリップメタン処理装置において、
前記排ガス排出ラインにおける前記燃焼器と前記ガス‐ガスヒータとの間の位置において前記排ガス排出ラインから分岐し、前記排ガス排出ラインにおける前記ガス‐ガスヒータと前記排ガスエコノマイザとの間の位置において前記排ガス排出ラインに合流するバイパスライン(例えば上述のバイパスライン34)を更に備える。
【0059】
上記(5)に記載のスリップメタン処理装置によれば、バイパスラインに排ガスを流すことにより、ガス‐ガスヒータでの熱交換量(排ガス供給ラインを流れる排ガスと排ガス排出ラインを流れる排ガスとの熱交換量)を減少させつつ、排ガスエコノマイザでの熱交換量(排ガスエコノマイザに供給される水と排ガス排出ラインを流れる排ガスとの熱交換量)を増大させて、排ガスエコノマイザでの熱回収量を増大させることができる。このため、排ガスエコノマイザで回収するエネルギーの需要に応じて排ガスエコノマイザでの熱回収量を変化させることができる。
【0060】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載のスリップメタン処理装置において、
前記バイパスラインに設けられたバイパス弁(例えば上述のバイパス弁36)と、
前記排ガスエコノマイザで回収を要求されるエネルギーの需要に関する需要情報に基づいて、前記バイパス弁を制御するように構成されたバイパス弁制御装置(例えば上述のバイパス弁制御装置38)と、
を更に備える。
【0061】
上記(6)に記載のスリップメタン処理装置によれば、バイパス弁の開度を大きくするほど、燃焼器から排出された排ガスの流量のうちガス‐ガスヒータを迂回してバイパスラインを流れる排ガスの流量の割合を増大させることができる。すなわち、バイパス弁の開度を大きくするほど、ガス‐ガスヒータでの熱交換量(排ガス供給ラインを流れる排ガスと排ガス排出ラインを流れる排ガスとの熱交換量)を減少させつつ、排ガスエコノマイザでの熱交換量(排ガスエコノマイザに供給される水と排ガス排出ラインを流れる排ガスとの熱交換量)を増大させて、排ガスエコノマイザでの熱回収量を増大させることができる。このため、排ガスエコノマイザで回収するエネルギーの需要に応じて排ガスエコノマイザでの熱回収量を変化させることができる。
【0062】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のスリップメタン処理装置において、
前記バイパス弁制御装置は、前記需要情報が示す前記需要が大きくなるにつれて、前記バイパス弁の開度を大きくするように構成される。
【0063】
上記(7)に記載のスリップメタン処理装置によれば、排ガスエコノマイザで回収するエネルギーの需要が大きくなるにつれて排ガスエコノマイザでの熱回収量を増大させて該需要に対応することができる。
【0064】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のスリップメタン処理装置において、
前記排ガスエコノマイザで生成された蒸気により駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに連結された発電機と、
を更に備え、
前記需要情報は、前記舶用ガスエンジンが搭載された船舶の船内電力需要を示しており、
前記バイパス弁制御装置は、前記需要情報が示す前記船内電力需要が大きくなるにつれて、前記バイパス弁の開度を大きくするように構成される。
【0065】
上記(8)に記載のスリップメタン処理装置によれば、船内電力需要が大きくなるにつれて排ガスエコノマイザでの熱回収量を増大させることで、蒸気タービンに連結された発電機の出力を増大させて船内電力需要に対応することができる。
【0066】
(9)本開示の一実施形態に係る舶用推進プラントは、
上記(1)乃至(8)の何れかに記載のスリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置(例えば上述の再液化装置56)と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスライン(例えば上述のNリッチガスライン62)と、
を備える。
【0067】
従来、ボイルオフガスが再液化装置で再液化される過程で発生するNリッチガスは、主機や補機のガスエンジンの燃料としては使用できないため、ガス焼却装置(Gas Combustion Unit:GCU)又はDFボイラ(Dual Fuel Boiler)による焼却処理を行っていた。GCUを用いる場合は、GCUでの燃焼で得たエネルギーを有効活用できず、また、船上の限られたスペースをGCUの設置スペースが占めてしまうこととなる。また、DFボイラを用いる場合は、事前にボイラの暖缶を完了させておく必要があり、暖缶の為に余分な燃料を消費する懸念がある。また、暖缶を保持しない場合は、処理対象のガスが発生した際に即応することができず、LNGタンクの内圧を適正範囲内に押さえることが困難になる恐れがある。
【0068】
これに対し、上記(9)に記載の舶用推進プラントによれば、再液化装置によってボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを燃焼器に供給するためのNリッチガスラインが設けられているため、スリップメタンを燃焼処理するための燃焼器を用いてNリッチガスの焼却処理を行うことができる。このため、GCUやDFボイラのようにNリッチガスの焼却のための専用の装置を設ける必要がなく、省スペース化及び設備費の削減を実現することができる。
また、DFボイラとは異なり、スリップメタン処理装置は主機としてのガスエンジンの稼働時に常に動作しているため、暖缶のような準備/待機操作は不要となる。また、スリップメタン処理のために燃料ラインから燃焼器に投入される燃料をNリッチガスで部分的に補うことで、舶用推進プラント全体での燃料消費量を抑えることができる。
【0069】
(10)本開示の一実施形態に係る舶用推進プラントは、
上記(2)乃至(4)の何れかに記載のスリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置(例えば上述の再液化装置56)と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスライン(例えば上述のNリッチガスライン62)と、
を備え、
前記Nリッチガスラインからの前記Nリッチガスが、前記加熱用燃料ラインからの前記加熱用燃料よりも優先的に前記燃焼器に供給される。
【0070】
上記(10)に記載の舶用推進プラントによれば、再液化装置によってボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを加熱用燃料よりも優先的に燃焼器に供給することにより、スリップメタン処理のために燃料ラインから燃焼器に投入される燃料を節約することができ、舶用推進プラント全体での燃料消費量を抑えることができる。
【0071】
(11)本開示の一実施形態に係る舶用推進プラントは、
上記(2)乃至(4)の何れか1項に記載のスリップメタン処理装置と、
前記舶用ガスエンジンと、
液化天然ガスのボイルオフガスを再液化するための再液化装置(例えば上述の再液化装置56)と、
前記再液化装置によって前記ボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを前記燃焼器に供給するためのNリッチガスライン(例えば上述のNリッチガスライン62)と、
前記Nリッチガスラインに設けられたNリッチガス弁(例えば上述のNリッチガス弁66)と、
を備え、
前記燃焼器温度制御装置は、前記Nリッチガス弁が開いた状態において、前記燃焼温度を前記設定温度に近づけるように前記燃料調整弁を制御するように構成される。
【0072】
上記(11)に記載の舶用推進プラントによれば、燃焼器温度制御装置は、Nリッチガス弁が開いた状態において、燃焼器の燃焼温度を設定温度に近づけるように燃料調整弁を制御する。このため、再液化装置によってボイルオフガスを再液化する際に発生するNリッチガスを加熱用燃料よりも優先的に燃焼器に供給しつつ、燃焼器の燃焼温度をスリップメタンを適切に燃焼処理するための温度に制御することができる。したがって、スリップメタン処理のために燃料ラインから燃焼器に投入される燃料を節約しつつ、Nリッチガスを活用してスリップメタンを適切に燃焼処理することができる。よって、舶用推進プラント全体での燃料消費量を抑えつつ、スリップメタンを適切に燃焼処理することができる。
【符号の説明】
【0073】
2 スリップメタン処理装置
4 排ガス供給ライン
6 燃料ライン
8 燃焼器
10 排ガス排出ライン
12 ガス‐ガスヒータ
14 排熱回収装置
16 燃料調整弁
18 温度センサ
20 燃焼器温度制御装置
22 排ガスエコノマイザ
24 蒸気タービン
26,112 発電機
28 復水器
30 蒸気ライン
32 復水ライン
34 バイパスライン
36 バイパス弁
38 バイパス弁制御装置
50 舶用推進プラント
52 LNGタンク
54 ガス圧縮機
56 再液化装置
58 熱交換器
60 燃料ガスライン
62 Nリッチガスライン
64 リターンライン
66 リッチガス弁
68 ダンプライン
70 ダンプ弁
72 放出ライン
100 舶用ガスエンジン
102 プロペラ
110 発電用ガスエンジン
図1
図2
図3
図4
図5