(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101810
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/14 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A01B33/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216119
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】591281862
【氏名又は名称】中井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 周二
(72)【発明者】
【氏名】江渡 裕美
(72)【発明者】
【氏名】矢納 ひとみ
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033BA01
2B033BB12
2B033BB13
2B033BC04
2B033BC05
2B033BC06
2B033BC12
(57)【要約】
【課題】耕耘爪のガタ付きの発生を抑制できる、耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機の提供。
【解決手段】第一ボルト孔を有する耕耘爪の取付部と、第二ボルト孔を有する耕耘爪ホルダーとを備え、前記耕耘爪ホルダーに収容された前記取付部を、第一ボルト孔と前記第二ボルト孔を貫通するボルトにより前記耕耘爪ホルダーに固定する、耕耘爪固定構造であって、前記耕耘爪ホルダーの内周面は、前記ボルトによる締め付け方向側に位置する第一内周面と、前記第一内周面の一端から前記締め付け方向側とは反対側に延びる第二内周面と、前記第一内周面の他端から前記締め付け方向側とは反対側に延びる第三内周面と、前記第一内周面の前記締め付け方向側とは反対側に位置する第四内周面と、を含み、前記取付部は、前記ボルトにより締め付け方向へ移動する際に、前記第二内周面及び前記第三内周面により圧縮される、耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ボルト孔を有する耕耘爪の取付部と、第二ボルト孔を有する耕耘爪ホルダーとを備え、前記耕耘爪ホルダーに収容された前記取付部を、第一ボルト孔と前記第二ボルト孔を貫通するボルトにより前記耕耘爪ホルダーに固定する、耕耘爪固定構造であって、
前記耕耘爪ホルダーの内周面は、
前記ボルトによる締め付け方向側に位置する第一内周面と、
前記第一内周面の一端から前記締め付け方向側とは反対側に延びる第二内周面と、
前記第一内周面の他端から前記締め付け方向側とは反対側に延びる第三内周面と、
前記第一内周面の前記締め付け方向側とは反対側に位置する第四内周面と、を含み、
前記取付部は、
前記ボルトにより締め付け方向へ移動する際に、前記第二内周面及び前記第三内周面により圧縮される、耕耘爪固定構造。
【請求項2】
前記耕耘爪ホルダーの横断面において、前記第二内周面及び前記第三内周面のうちの少なくとも一方の面は、前記締め付け方向に向うに従って、他方の面に近づくテーパーとなるように形成されている、請求項1に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項3】
前記耕耘爪ホルダーの横断面形状は、前記第二ボルト孔の中心線に対して、線対称である、請求項2に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項4】
前記耕耘爪ホルダーの横断面形状は、台形である、請求項2又は3に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項5】
前記取付部の外周面は、
前記ボルトによる締め付け方向側に位置する第一外周面と、
前記第一外周面の一端から前記締め付け方向側とは反対側に延びる第二外周面と、
前記第一外周面の他端から前記締め付け方向側とは反対側に延びる第三外周面と、
前記第一外周面の前記締め付け方向側とは反対側に位置する第四内周面と、を含み、
前記第二内周面及び前記第三内周面による、前記取付部の圧縮が開始される際に、前記第一内周面及び前記第一外周面は、接触しない、請求項1~4のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。
【請求項6】
下記の第一ホルダー幅は、下記の第一取付部幅よりも短い、請求項5に記載の耕耘爪固定構造。
第一ホルダー幅:耕耘爪ホルダーの横断面における、締め付け方向と直交する方向の、第二内周面と第三内周面との最短距離
第一取付部幅:耕耘爪の取付部の横断面における、締め付け方向と直交する方向の、第二外周面と第三外周面との最長距離
【請求項7】
前記第一ホルダー幅は、前記第一取付部幅の、95%~99%の長さである、請求項6に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項8】
下記の第二ホルダー幅は、前記第一取付部幅の、105%~120%の長さである、請求項6又は7に記載の耕耘爪固定構造。
第二ホルダー幅:耕耘爪ホルダーの横断面における、締め付け方向と直交する方向の、第二内周面と第三内周面との最長距離
【請求項9】
下記の第四ホルダー幅は、下記の第二取付部幅の、110%~200%の長さである、請求項6~8のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。
第四ホルダー幅:耕耘爪ホルダーの横断面における、締め付け方向の、第一内周面と第四内周面との最短距離
第二取付部幅:耕耘爪の取付部の横断面における、締め付け方向の、第一外周面と第四外周面との最長距離
【請求項10】
前記第一内周面と前記第二内周面との接続部、及び前記第一内周面と前記第三内周面との接続部が、曲面で形成されている、請求項1~9のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の耕耘爪固定構造を備える、耕耘機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
耕運機の耕耘軸における耕耘爪固定構造として、
図15、及び
図16に示される構造が知られている。
図15は、耕耘爪固定構造の使用状態を示す、概略図である。
図16は、
図15のX-X断面を示す、概略図である。
図15、及び
図16に示される耕耘爪固定構造では、耕耘爪200の取付部225が、耕運機の耕耘軸600に付設された耕耘爪ホルダー300に、挿入される。そして、耕耘爪200の取付部225と耕耘爪ホルダー300のそれぞれに設けられたボルト孔に挿入した、ボルト400と、ナット500とで、耕耘爪200が、耕耘爪ホルダー300に締め付け固定される。
【0003】
ここで、耕耘爪ホルダー300は、耕耘爪200の取付部225を、耕耘爪ホルダー300に容易に挿入できるよう、取付部225が挿入される耕耘爪ホルダー300の孔の大きさが、取付部225よりも大きく設計されている。そのため、上記の耕耘爪固定構造は、
図16に示されるように、締め付け固定後、耕耘爪ホルダー300と取付部225との接触面CS以外の部分に、隙間Gが生じる。耕耘作業において、耕耘軸600が回転すると、耕耘爪200に応力がかかり、耕耘爪200が、上記の隙間Gにより、ボルト400を支点として、耕耘爪ホルダー300内を移動してしまう場合がある。耕耘作業の状況に応じ、耕耘軸600の回転方向は、正回転、及び逆回転に変更して使用される。そのため、耕耘軸600の回転方向の変更により、ボルト400を支点とした、耕耘爪200の耕耘爪ホルダー300内の移動方向も変化する。その結果、ボルト400による締め付けが緩み、耕耘爪200のガタ付きが発生する。耕耘爪200のガタ付きは、耕耘爪200や耕耘爪ホルダー300の摩耗や破損、耕耘作業中の耕耘爪200の離脱、及び耕耘軸600の歪みの原因となる。
【0004】
耕耘爪を固定する耕耘爪固定構造として、特許文献1には、ボルト孔近傍の耕耘爪ホルダーを、湾曲に形成することで、耕耘爪ホルダーと、耕耘爪の取付部との間に隙間が生じる部分を作る技術が開示されている。特許文献1の技術では、耕耘爪の取付部との間の隙間により、ボルトの軸力の低下が、耕耘爪ホルダーの弾性変形で補償される。
【0005】
また、特許文献2には、台形の筒状で形成された耕耘爪ホルダーに、耕耘爪ホルダーの傾斜面と平行となるよう折り曲げて形成された、耕耘爪の取付部を挿入する技術が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-159566号公報
【特許文献2】実開昭52-111604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、ボルトの軸力の低下を、耕耘爪ホルダーの弾性変形で補償することができる。しかし、耕耘爪ホルダーの孔の大きさは、従来技術と同様、取付部よりも大きい。そのため、締め付け固定後、ボルトを支点として耕耘爪が移動できる隙間が、耕耘爪ホルダーと取付部との間に生じる。その結果、ボルトを支点とする、耕耘爪が移動しようとする力が、取付部と接触面との間に生じる摩擦力を超えた場合、耕耘爪が、耕耘爪ホルダー内で移動してしまう。よって、特許文献1に記載の技術では、耕耘爪のガタ付きの発生が、十分に抑制できなかった。
【0008】
特許文献2に記載の技術は、耕耘爪の取付部を、耕耘爪ホルダーに押し込むことで、くさび作用により、耕耘爪を、強固に耕耘爪ホルダーに固定することができる。また、特許文献2に記載の技術は、耕耘爪ホルダーを台形にすることで、草等の巻付きを抑制することができる。しかし、耕耘爪の取付部を折り曲げ、耕耘爪ホルダーの傾斜面と平行にする加工は、工数がかかる。また、耕耘爪の取付部と、耕耘爪ホルダーの傾斜面とを、完全に平行にし、且つ、取付部が、耕耘爪ホルダーに挿入された際、取付部と耕耘爪ホルダーのボルト孔を、ボルトが挿入できるよう一致させることは、困難である。そのため、特許文献2に記載の技術も、耕耘爪ホルダーの孔の大きさは、従来技術と同様、取付部よりも大きく設定されることになる。その結果、耕耘爪が、耕耘爪ホルダー内で移動できる隙間が生まれる。よって、特許文献2に記載の技術も、特許文献1に記載の技術と同様に、耕耘爪のガタ付きの発生が、十分に抑制できなかった。
【0009】
本発明は、耕耘爪のガタ付きの発生を抑制できる、耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一ボルト孔を有する耕耘爪の取付部と、第二ボルト孔を有する耕耘爪ホルダーとを備え、上記耕耘爪ホルダーに収容された上記取付部を、第一ボルト孔と上記第二ボルト孔を貫通するボルトにより上記耕耘爪ホルダーに固定する、耕耘爪固定構造であって、上記耕耘爪ホルダーの内周面は、上記ボルトによる締め付け方向側に位置する第一内周面と、上記第一内周面の一端から上記締め付け方向側とは反対側に延びる第二内周面と、上記第一内周面の他端から上記締め付け方向側とは反対側に延びる第三内周面と、上記第一内周面の上記締め付け方向側とは反対側に位置する第四内周面と、を含み、上記取付部は、上記ボルトにより締め付け方向へ移動する際に、上記第二内周面及び上記第三内周面により圧縮される、耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の耕耘爪固定構造、及びそれを備える耕耘機は、耕耘爪のガタ付きの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪2の取付部25が、耕耘爪ホルダー3に、挿入される前の、耕耘爪固定構造の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪2の取付部25が、耕耘爪ホルダー3に、挿入された後の、耕耘爪固定構造の概略図である。
【
図3】耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了する前の状態を示す、
図2のA-A断面の断面図である。
【
図4】耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了した後の状態を示す、
図2のA-A断面の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3の平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3の底面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3の正面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3の背面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3の側面図である。
【
図11】
図2のA-A断面に対応する、第一変形例を示す概略断面図である。
【
図12】
図2のA-A断面に対応する、第二変形例を示す概略断面図である。
【
図13】
図2のA-A断面に対応する、第三変形例を示す概略断面図である。
【
図14】
図2のA-A断面に対応する、第四変形例を示す概略断面図である。
【
図15】耕耘爪固定構造の使用状態を示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0014】
(1)本発明の一実施形態は、第一ボルト孔を有する耕耘爪の取付部と、第二ボルト孔を有する耕耘爪ホルダーとを備え、上記耕耘爪ホルダーに収容された上記取付部を、第一ボルト孔と上記第二ボルト孔を貫通するボルトにより上記耕耘爪ホルダーに固定する、耕耘爪固定構造であって、
上記耕耘爪ホルダーの内周面は、
上記ボルトによる締め付け方向側に位置する第一内周面と、
上記第一内周面の一端から上記締め付け方向側とは反対側に延びる第二内周面と、
上記第一内周面の他端から上記締め付け方向側とは反対側に延びる第三内周面と、
上記第一内周面の上記締め付け方向側とは反対側に位置する第四内周面と、を含み、
上記取付部は、
上記ボルトにより締め付け方向へ移動する際に、上記第二内周面及び上記第三内周面により圧縮される、耕耘爪固定構造である。
【0015】
上記(1)の耕耘爪固定構造は、耕耘爪のガタ付きの発生を抑制できる。
【0016】
(2)上記(1)に記載の耕耘爪固定構造において、上記耕耘爪ホルダーの横断面において、上記第二内周面及び上記第三内周面のうちの少なくとも一方の面は、上記締め付け方向に向うに従って、他方の面に近づくテーパーとなるように形成されている。
【0017】
(3)上記(2)に記載の耕耘爪固定構造において、上記耕耘爪ホルダーの横断面は、上記第二ボルト孔の中心線に対して、線対称である。
【0018】
(4)上記(2)又は(3)に記載の耕耘爪固定構造において、上記耕耘爪ホルダーの横断面は、台形である。
【0019】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の耕耘爪固定構造において、上記取付部の外周面は、
上記ボルトによる締め付け方向側に位置する第一外周面と、
上記第一外周面の一端から上記締め付け方向側とは反対側に延びる第二外周面と、
上記第一外周面の他端から上記締め付け方向側とは反対側に延びる第三外周面と、
上記第一外周面の上記締め付け方向側とは反対側に位置する第四内周面と、を含み、
上記第二内周面及び上記第三内周面による、上記取付部の圧縮が開始される際に、上記第一内周面及び上記第一外周面は、接触していない。
【0020】
(6)上記(5)に記載の耕耘爪固定構造において、下記の第一ホルダー幅は、下記の第一取付部幅よりも短い。
第一ホルダー幅:耕耘爪ホルダーの横断面における、締め付け方向と直交する方向の、第二内周面と第三内周面との最短距離
第一取付部幅:耕耘爪の取付部の横断面における、締め付け方向と直交する方向の、第二外周面と第三外周面との最長距離
【0021】
(7)上記(6)に記載の耕耘爪固定構造において、上記第一ホルダー幅は、上記第一取付部幅の、95%~99%の長さである。
【0022】
(2)から(7)の耕耘爪固定構造は、耕耘爪のガタ付きの発生を、さらに抑制できる。
【0023】
(8)上記(6)又は(7)に記載の耕耘爪固定構造において、下記の第二ホルダー幅は、上記第一取付部幅の、105%~120%の長さである。
第二ホルダー幅:耕耘爪ホルダーの横断面における、締め付け方向と直交する方向の、第二内周面と第三内周面との最長距離
【0024】
(9)上記(6)~(8)のいずれかに記載の耕耘爪固定構造において、下記の第四ホルダー幅は、下記の第二取付部幅の、110%~200%の長さである。
第四ホルダー幅:耕耘爪ホルダーの横断面における、締め付け方向の、第一内周面と第四内周面との最短距離
第二取付部幅:耕耘爪の取付部の横断面における、締め付け方向の、第一外周面と第四外周面との最長距離
【0025】
(8)及び(9)の耕耘爪固定構造は、耕耘爪のガタ付きの発生の抑制に加え、上記耕耘爪の取付部の、耕耘爪ホルダーへの挿入が容易になる。
【0026】
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の耕耘爪固定構造において、上記第一内周面と上記第二内周面との接続部、及び上記第一内周面と上記第三内周面との接続部が、曲面で形成されている。
【0027】
(10)の耕耘爪固定構造は、耕耘爪のガタ付きの発生に加え、ボルトの締め付けによる耕耘爪2や、耕耘爪ホルダーの、疲労破壊や脆性破壊が低減される。
【0028】
(11)上記(1)~(10)のいずれかに記載の耕耘爪固定構造を備える、耕耘機。
【0029】
(11)の耕運機は、耕耘爪のガタ付きの発生を抑制できる。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る、耕耘爪2の取付部25が、耕耘爪ホルダー3に、挿入される前の耕耘爪固定構造1の、概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る、耕耘爪2の取付部25が、耕耘爪ホルダー3に、挿入された後の、耕耘爪固定構造1の概略図である。
【0031】
本実施形態の耕耘爪固定構造1は、耕耘爪2、耕耘爪ホルダー3、ボルト4、及びナット5を備えている。耕耘爪2は、一端側に、耕耘爪ホルダー3に挿入される部分である取付部25を、他端側に、土を耕す部分である爪部(図示せず)を有している。取付部25には、ボルト4の軸41を挿入するための第一ボルト孔FHが設けられている。耕耘爪ホルダー3は、取付部25を挿入するための取付孔IH、及びボルト4を挿入するための第二ボルト孔SHが設けられている。
【0032】
取付部25の外周面は、第一外周面21、第二外周面22、第三外周面23、及び第四外周面24を有している。第一外周面21と第四外周面24は、平行である。第二外周面22と第三外周面23は、平行である。
図1における、破線矢印は、取付部25を、耕耘爪ホルダー3に、挿入する方向である、取付方向を示している。第一外周面21と第四外周面24の、取付方向と直交する方向の幅は、第二外周面22と第三外周面23の、取付方向と直交する方向の幅よりも長い。すなわち、取付部25の外周面は、取付方向と逆方向から見た場合、第一外周面21と第四外周面24の辺を長手とし、第二外周面22と第三外周面23の辺を短手とする、長方形の形状となっている。
【0033】
耕耘爪ホルダー3の外周面は、第五外周面35、第六外周面36、第七外周面37、及び第八外周面38を有している。第五外周面35と第八外周面38は、平行である。第六外周面36と第七外周面37は、平行である。第五外周面35、第六外周面36、第七外周面37、及び第八外周面38の外周接続部30は、曲面で形成されている。第五外周面35と第八外周面38の、取付方向と直交する方向の幅は、第六外周面36と第七外周面37の、取付方向と直交する方向の幅よりも長い。すなわち、耕耘爪ホルダー3の外周面は、取付方向から見た場合、第五外周面35と第八外周面38の辺を長手とし、第六外周面36と第七外周面37の辺を短手とし、外周接続部30の部分に曲線を有する、略長方形の形状となっている。
【0034】
取付孔IHは、耕耘爪ホルダー3の内周面である、第一内周面31、第二内周面32、第三内周面33、及び第四内周面34で形成されている。また、各内周面の内周接続部39は、曲面で形成されている。第一内周面31と第四内周面34は、平行である。第二外周面22と第三外周面23は、第一内周面31側に向かって、テーパーとなるように形成されている。すなわち、第一内周面31の取付方向と直交する方向の幅は、第四内周面34の取付方向と直交する方向の幅より短い。なお、後述する
図2のA-A断面において、取付孔IHは、取付方向と逆方向から見た場合、内周接続部39の部分に曲線を有する、略等脚台形の形状となっている。
【0035】
第一ボルト孔FHは、取付部25の、第一外周面21から第四外周面24まで、第一外周面21及び第四外周面24に直交して、貫通している。ボルト4の挿入方向、及び挿入方向と逆方向から見た際の、第一ボルト孔FHの形状は、ボルト4の軸41が篏合することができる直径を有する、円形となっている。
【0036】
図1における、第一中心線CL1は、第一ボルト孔FHの、第一外周面21の孔の中心から、第四外周面24の孔の中心を通る、第一ボルト孔FHの中心線を示している。なお、後述する
図2のA-A断面において、取付部25を、取付方向と逆方向から見た場合、第一中心線CL1は、第一外周面21と第四外周面24の辺の略中央を通っている。
【0037】
第二ボルト孔SHは、耕耘爪ホルダー3の、第五外周面35から第八外周面38まで、第五外周面35及び第八外周面38に直交して、貫通している。ボルト4の挿入方向側の第八外周面38における、第二ボルト孔SHの形状は、ボルト4の頭42が篏合することができる、六角形となっている。すなわち、
図2において、ボルト4により、耕耘爪ホルダー3に、取付部25を締め付けて固定する際、ボルト4の頭42は、第二ボルト孔SHにより、回転が抑制される。そして、第五外周面35側のナット5で、ボルト4を締めると、ボルト4の頭42の頭部座面により、取付部25が、締め付け方向に移動する。そのため、第五外周面35における、第二ボルト孔SHの形状は、ボルト4の軸41が篏合することができ、ナット5の二面幅よりも小さい直径を有する円形となっている。
【0038】
図1における、第二中心線CL2は、第二ボルト孔SHの、第五外周面35の孔の中心から、第八外周面38の孔の中心を通る、第二ボルト孔SHの中心線を示している。後述する
図2のA-A断面において、耕耘爪ホルダー3を、取付方向と逆方向から見た場合、第二中心線CL2は、第五外周面35と第八外周面38の辺の略中央を通っている。また、取付孔IHは、第二中心線CL2に対して、線対称になっている。
【0039】
第一長さL1は、取付部25の横断面から、取付方向側の取付部25の端面までの、取付方向の最長距離を示す。なお、取付部25の横断面は、第一中心線CL1を通る、取付方向と直交する取付部25の断面である。第二長さL2は、耕耘爪ホルダー3の横断面から、取付方向側の耕耘爪ホルダー3の端面までの、取付方向の最短距離を示す。なお、耕耘爪ホルダー3の横断面は、第二中心線CL2を通る、取付方向と直交する耕耘爪ホルダー3の断面である。取付方向側の耕耘爪ホルダー3の端面は、耕耘機の耕耘軸に、溶接により固定される。そのため、第一長さL1が、第二長さL2よりも長いと、取付部25を、耕耘軸に溶接された耕耘爪ホルダー3へ挿入する際、取付部25の耕耘軸への接触により、第一ボルト孔FHと第二ボルト孔SHが、ボルト4の軸41を挿入できる状態に、調整できなくなる。よって、第一長さL1は、第二長さL2よりも短く、設定されている。第三長さL3は、取付方向側の耕耘爪ホルダー3の端面から、取付方向と反対側の耕耘爪ホルダー3の端面までの、取付方向の最短距離を示す。本発明の一実施形態では、第二長さL2は、第三長さL3の約1/2の長さである。
【0040】
図3は、耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了する前の状態を示す、
図2のA-A断面の断面図である。
図4は、耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了した後の状態を示す、
図2のA-A断面の断面図である。なお、
図2のA-A断面は、第一中心線CL1(第二中心線CL2)を通る、取付部25の耕耘爪ホルダー3への取付方向と直交する断面である。すなわち、
図3及び
図4には、上述の、取付部25の横断面、及び耕耘爪ホルダー3の横断面が、示されている。
【0041】
図3における、第一中心線CL1(第二中心線CL2)上の矢印は、ボルト4、及びナット5により、耕耘爪2の取付部25が、締め付けられる、締め付け方向を示す。すなわち、ボルト4、及びナット5による締め付けにより、取付部25の第一外周面21は、耕耘爪ホルダー3の第一内周面31へ向かって移動する。
【0042】
第一取付部幅W21は、取付部25の横断面における、第二外周面22から第三外周面23までの、締め付け方向と直交する方向の距離を示す。第二取付部幅W22は、取付部25の横断面における、第一外周面21から第三外周面23までの、締め付け方向の距離を示す。
【0043】
第一ホルダー幅W31は、耕耘爪ホルダー3の横断面における、第二内周面32から第三内周面33までの、締め付け方向と直交する方向の最短距離を示す。第二ホルダー幅W32は、耕耘爪ホルダー3の横断面における、第二内周面32から第三内周面33までの、締め付け方向と直交する方向の最長距離を示す。第三ホルダー幅W33は、耕耘爪ホルダー3の横断面における、第六外周面36から第七外周面37までの、締め付け方向と直交する方向の距離を示す。第四ホルダー幅W34は、耕耘爪ホルダー3の横断面における、第一内周面31から第四内周面34までの、締め付け方向の距離を示す。第五ホルダー幅W35は、耕耘爪ホルダー3の横断面における、第五外周面35から第八外周面38までの、締め付け方向の距離を示す。
【0044】
図3に示されるように、耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了する前(仮止め状態)では、取付部25の外周面は、耕耘爪ホルダー3の内周面に、非接触の状態とすることができる。すなわち、耕耘爪ホルダー3の取付孔IHは、取付部25が、耕耘爪ホルダー3へ容易に挿入できる、大きさを有している。より具体的には、第二ホルダー幅W32は、第一取付部幅W21の105%~120%の長さを有している。また、第四ホルダー幅W34は、第二取付部幅W22の110%~200%の長さを有している。
【0045】
第一ホルダー幅W31は、第一取付部幅W21より短い。より具体的には、第一ホルダー幅W31は、第一取付部幅W21の95%~99%の長さを有している。そのため、
図3に示される仮止め状態から、ボルト4、及びナット5を締め付けることで、取付部25が、締め付け方向に移動すると、取付部25の第一外周面21が、耕耘爪ホルダー3の第一内周面31に接触する前に、第一外周面21と第二外周面22の接続部、及び第一外周面21と第三外周面23の接続部の近傍部分が、耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33により圧縮を受ける。そのため、耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33による、取付部25の圧縮が開始される際に、取付部25の第一外周面21、及び耕耘爪ホルダー3の第一内周面31は、接触しない。そして、
図4に示されるように、耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了した後では、
図4のBで示される部分において、取付部25の外周面と、耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33との間の、隙間が無くなる。そのため、ボルト4の軸41を支点とする、耕耘爪2の、耕耘爪ホルダー3の取付孔IHにおける移動が制限される。結果として、耕耘爪2のガタ付きの発生が、抑制される。
【0046】
図4に示されるように、締め付け固定が完了した後において、取付部25の第一外周面21と、耕耘爪ホルダー3の第一内周面31との間には、隙間が存在する。そのため、ボルト4の頭42の頭部座面は、締め付け方向と逆方向に、取付部25の反力を受ける。また、耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33は、締め付け方向に向かって、テーパーとなるように形成されている。そのため、取付部25は、締め付け方向と逆方向に、耕耘爪ホルダー3の反力を受ける。つまり、ボルト4の頭42の頭部座面は、ボルト4とナット5による締め付け力に加え、取付部25及び耕耘爪ホルダー3の反力を受けることになる。よって、ボルト4の緩みが抑制される。その結果、耕耘爪2のガタ付きの発生が、さらに抑制される。なお、ボルトとナットの締め付けトルクは、耕耘爪の種類や、耕耘爪ホルダーの材質等により適宜設定される。本発明の一実施形態に係る、耕耘爪固定構造は、例えば78.4~88.2N・mのトルクを用いることで、好適な締め付けを行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、締め付け固定が完了した後において、取付部25の第一外周面21から、耕耘爪ホルダー3の第一内周面31までの距離は、接触しないよう、十分離れている。しかし、上述の、第一取付部幅W21、第一ホルダー幅W31、及び第二ホルダー幅W32の設定により、締め付け固定が完了した後において、第一外周面21と、第一内周面31とが、より接近する状態にすることもできる。この場合、耕耘爪2の取付部25の、第一外周面21と第二外周面22の接続部、及び第一外周面21と第三外周面23の接続部は、締め付け固定が完了した後において、耕耘爪ホルダー3の第一内周面31側の、内周接続部39の曲面の近傍に位置することになる。そのため、上記の取付部25の接続部と、耕耘爪ホルダー3の内周面との接触で生じる、応力集中が緩和される。その結果、耕耘爪2及び耕耘爪ホルダー3の、疲労破壊や脆性破壊が低減される。また、耕耘爪ホルダー3は、外周面の外周接続部30、及び内周面の内周接続部39に、曲面を有することで、金型からの取り出しを容易に行うことができる。
【0048】
耕耘爪ホルダーの鋼材や厚みは、耕耘作業において、耕耘爪から受ける力に耐える強度を確保できるように、適宜設定すれば良く、特に制限されない。例えば、本発明の一実施形態に係る、耕耘爪ホルダー3は、JIS G 5101(1991)に準拠した炭素鋼鋳鋼品、JIS G 5102(1992)に準拠した溶接構造用鋳鋼品、及びJIS G 4801(2005)に準拠したばね鋼鋼材により、作製することができる。炭素鋼鋳鋼品は、耕耘爪ホルダー3の生産性の向上の観点から好ましい。溶接構造用鋳鋼品は、耕耘爪ホルダー3の耕耘軸への溶接性の向上の観点から好ましい。ばね鋼鋼材は、耕耘爪ホルダー3の反力の向上の観点から好ましい。より具体的な、炭素鋼鋳鋼品としては、SC360、SC410、SC450、及びSC480が挙げられ、引張強さや、伸び等の機械的性質の観点から、SC410が、好ましい。より具体的な、溶接構造用鋳鋼品としては、SCW410、SCW450、SCW480、SCW550、及びSCW620が挙げられ、引張強さや、伸び等の機械的性質の観点から、SCW410、及びSCW480が、好ましい。また、耕耘爪ホルダー3は、上記の鋼材で、十分な強度を確保できる厚みを有している。より具体的には、第三ホルダー幅W33は、第二ホルダー幅W32の150%~200%の長さを有している。第二中心線CL2は、第一ホルダー幅W31、第二ホルダー幅W32、及び第三ホルダー幅W33のほぼ中央を通っている。
【0049】
耕耘爪の鋼材や厚みは、耕耘作業における、地面や、耕耘爪ホルダーから受ける力に耐える強度を確保できるように、適宜設定すれば良く、特に制限されない。本発明の一実施形態に係る、耕耘爪2の鋼材は、上述の耕耘爪ホルダー3と同様の鋼材を使用することができる。また、第一取付部幅W21は、第二取付部幅W22の200%~400%の長さを有している。
【0050】
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、及び
図10は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る耕耘爪ホルダー3の、斜視図、平面図、底面図、正面図、背面図、及び側面図を示す。
図6の平面図は、耕耘爪ホルダー3を、
図1の破線矢印で示される、取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、取付方向から見た図である。
図7の底面図は、耕耘爪ホルダー3を、上記取付方向と逆方向、別の言い方をすれば、耕耘機の耕耘軸に溶接される側から見た図である。
図8の正面図は、耕耘爪ホルダー3を、耕耘爪ホルダー3の第八外周面側38から見た図である。
図9の背面図は、耕耘爪ホルダー3を、耕耘爪ホルダー3の第五外周面側35から見た図である。
図10の側面図は、耕耘爪ホルダー3を、耕耘爪ホルダー3の第六外周面側36から見た図である。なお、耕耘爪ホルダー3を、耕耘爪ホルダー3の第七外周面側37から見た側面図は、
図10の側面図と同様となるため、省略する。
【0051】
耕耘爪ホルダー3の耕耘機の耕耘軸に溶接される側の溶接面301は、耕耘軸のアールに合わせた曲面となっている。これにより、耕耘爪ホルダー3の耕耘軸への溶接が、容易になる。また、耕耘爪ホルダー3と耕耘軸の溶接が、強固になる。
【0052】
図11は、
図2のA-A断面に対応する、第一変形例を示す概略断面図である。第一変形例の耕耘爪ホルダー3の第三内周面33は、第一内周面31及び第四内周面34に対して垂直になっている。すなわち、第一変形例の耕耘爪ホルダー3の内周面は、第二内周面32が、第一内周面31側に向かって、テーパーとなる、所謂、片テーパーで形成されている。
【0053】
図12は、
図2のA-A断面に対応する、第二変形例を示す概略断面図である。第二変形例の耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33は、第一内周面31側が、テーパーで形成され、第4内周面側が、第4内周面側に対し垂直になっている。すなわち、第4内周面側の、第二内周面32及び第三内周面33は、平行になっている。
【0054】
図13は、
図2のA-A断面に対応する、第三変形例を示す概略断面図である。第三変形例の耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33は、取付部25の締め付け方向に向かって、放物線状のテーパーとなるよう、曲面で形成されている。
【0055】
図14は、
図2のA-A断面に対応する、第四変形例を示す概略断面図である。第四変形例の耕耘爪2の取付部25は、その断面が、楕円形の形状に形成されている。楕円形の長径は、
図14において矢印で示す、締め付け方向に垂直である。第一ホルダー幅W31は、上記の楕円形の長径幅W23より短い。より具体的には、第一ホルダー幅W31は、長径幅W23の90%~95%の長さを有している。
【0056】
第一変形例、第二変形例、第三変形例、及び第四変形例は、いずれも、耕耘爪2の取付部25の、耕耘爪ホルダー3への、締め付け固定が完了した後に、取付部25の外周面と、耕耘爪ホルダー3の第二内周面32及び第三内周面33との間の、隙間が無くなる。そのため、耕耘爪2のガタ付きの発生が、抑制される。なお、第一変形例、第二変形例、第三変形例、及び第四変形例の、耕耘爪ホルダー3の各内周面の接続部は、曲面で形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明された、耕耘爪のガタ付きの発生を抑制する技術は、種々の、耕耘爪固定構造、及び耕耘爪固定構造を備える耕耘機に適用されうる。
【符号の説明】
【0058】
1 耕耘爪固定構造
2、200 耕耘爪
21 第一外周面
22 第二外周面
23 第三外周面
24 第四外周面
25、225 取付部
3、300 耕耘爪ホルダー
31 第一内周面
32 第二内周面
33 第三内周面
34 第四内周面
30 外周接続部
35 第五外周面
36 第六外周面
37 第七外周面
38 第八外周面
39 内周接続部
301 溶接面
4、400 ボルト
41 軸
42 頭
5、500 ナット
600 耕耘軸
CL1 第一中心線
CL2 第二中心線
CS 接触面
FH 第一ボルト孔
G 隙間
IH 取付孔
L1 第一長さ
L2 第二長さ
L3 第三長さ
SH 第二ボルト孔
W21 第一取付部幅
W22 第二取付部幅
W23 長径幅
W31 第一ホルダー幅
W32 第二ホルダー幅
W33 第三ホルダー幅
W34 第四ホルダー幅
W35 第五ホルダー幅