(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101852
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】解析システム、解析装置、及び解析方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20220630BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20220630BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20220630BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G06F17/50 638
G06F17/50 604D
G06F17/50 602B
B60C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216196
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛太
【テーマコード(参考)】
3D131
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
3D131LA34
5B046AA04
5B046HA05
5B046JA01
5B046KA05
5B146AA05
5B146AA10
5B146DC03
5B146DG02
5B146DL08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バリエーションのある配合情報を効率よく確実に得る組成物の解析システム、解析装置及び解析方法を提供する。
【解決手段】解析システムは、解析装置10と、情報端末20と、データベース30と、を備える。解析装置10において、性能予測部111は、複数の素材に関する配合割合を含む入力データに基づいて複数の特定性能それぞれの物性値を予測する。最適化処理部112は、性能予測部111によって予測される前記複数の特定性能それぞれの物性値を示す各予測値が、予め定められた目標値の許容範囲に収まるように前記入力データの配合情報を最適化する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素材で構成される組成物の物性を解析する解析システムであって、
前記組成物が有する少なくとも二つの物性それぞれに対応する目標値の許容範囲をそれぞれ設定する目標値設定部と、
前記複数の素材に関する配合情報の少なくとも一部を含む入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データに含まれる配合情報及び前記目標値設定部によって設定される前記許容範囲に基づいて、前記少なくとも二つの物性それぞれの予測値がそれぞれの前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の配合情報を特定する特定処理部と、
前記特定処理部によって特定される特定済み配合情報、及び前記特定済み配合情報に基づいて予測される前記少なくとも二つの物性それぞれの前記予測値の両方又はいずれか一方を出力する出力処理部と、
を備える解析システム。
【請求項2】
前記出力処理部は、前記特定済み配合情報及び前記予測値の両方又はいずれか一方を示すグラフを所定の表示部に表示させる、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記出力処理部は、前記特定処理部による特定によって前記特定済み配合情報が複数得られた場合に、複数の前記特定済み配合情報及び複数の前記予測値の両方又はいずれか一方を前記表示部に表示させる、請求項2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記許容範囲が設定される前記少なくとも二つの物性の入力、及び前記許容範囲の入力を受け付ける第1入力受付部を更に備え、
前記目標値設定部は、前記第1入力受付部によって受け付けられた前記許容範囲を設定する、請求項1から3のいずれかに記載の解析システム。
【請求項5】
前記第1入力受付部は、前記少なくとも二つの物性及び前記許容範囲を入力可能な入力画面を所定の表示部に表示し、前記入力画面を介して入力された前記少なくとも二つの物性及び前記許容範囲の入力を受け付ける、請求項4に記載の解析システム。
【請求項6】
前記入力画面は、入力された前記少なくとも二つの物性及び前記許容範囲を示すグラフを含み、
前記第1入力受付部は、前記グラフ上で前記許容範囲を変更可能なように前記入力画面を前記表示部に表示する、請求項5に記載の解析システム。
【請求項7】
前記特定処理部は、前記入力データに含まれる前記配合情報について定められた制約条件を満たすように前記入力データに含まれていない前記他の配合情報を特定する、請求項1から6のいずれかに記載の解析システム。
【請求項8】
前記制約条件の入力を受け付ける第2入力受付部を更に備え、
前記特定処理部は、前記第2入力受付部によって受け付けられた前記制約条件を満たすように前記入力データに含まれていない前記他の配合情報を特定する、請求項7に記載の解析システム。
【請求項9】
前記制約条件は、前記組成物を構成する前記複数の素材の種類を限定する条件、前記複数の素材の数を限定する条件、又は、前記複数の素材の配合量を限定する条件の少なくともいずれかを含む、請求項7又は8に記載の解析システム。
【請求項10】
前記特定処理部は、
前記入力データに含まれる前記配合情報に基づいて前記少なくとも二つの物性それぞれの物性値を予測する予測部を含み、
前記予測部は、
複数の他の組成物それぞれに関する複数の配合情報及び前記複数の他の組成物それぞれに関する前記物性の前記物性値を含む教師データに基づいて学習された学習済みの予測モデルを用いて、予測対象である前記組成物が有する前記少なくとも二つの物性それぞれの物性値を予測する、請求項1から9のいずれかに記載の解析システム。
【請求項11】
前記特定処理部は、
前記少なくとも二つの物性それぞれの前記予測値が、前記目標値設定部によって設定された前記許容範囲に収まるように前記入力データの前記配合情報を最適化する最適化処理部を含み、
前記最適化処理部は、
前記予測部による前記予測値を目的関数とし、前記予測部に入力される前記入力データの前記配合情報を設計変数として、前記予測値が前記目標値の前記許容範囲内に収まるように前記入力データの前記配合情報を最適化する、請求項10に記載の解析システム。
【請求項12】
前記配合情報は、前記複数の素材の種類及び各素材の配合量を含む、請求項1から11のいずれかに記載の解析システム。
【請求項13】
複数の素材で構成される組成物の物性を解析する解析装置であって、
前記組成物が有する少なくとも二つの物性それぞれに対応する目標値の許容範囲をそれぞれ設定する目標値設定部と、
前記複数の素材に関する配合情報の少なくとも一部を含む入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データに含まれる配合情報及び前記目標値設定部によって設定される前記許容範囲に基づいて、前記少なくとも二つの物性それぞれの予測値がそれぞれの前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の配合情報を特定する特定処理部と、
前記特定処理部によって特定される特定済み配合情報、及び前記特定済み配合情報に基づいて予測される前記少なくとも二つの物性それぞれの前記予測値の両方又はいずれか一方を出力する出力処理部と、
を備える解析装置。
【請求項14】
複数の素材で構成される組成物の物性を解析する解析方法であって、
前記組成物が有する少なくとも二つの物性それぞれに対応する目標値の許容範囲をそれぞれ設定する目標値設定ステップと、
前記複数の素材に関する配合情報の少なくとも一部を含む入力データ及び前記目標値設定ステップにおいて設定される前記許容範囲に基づいて、前記少なくとも二つの物性それぞれの予測値がそれぞれの前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の配合情報を特定する特定ステップと、
を含む解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素材で構成される組成物の物性を解析する解析システム、解析装置、及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に装着されるタイヤなどの材料であるゴム状弾性体に関する特定の性能(物性)を求める予測方法が知られている(特許文献1参照)。また、加硫ゴム組成物の特徴量の目標値を実現するための原材料の配合の組み合わせを予測モジュールを用いて最適化するゴム材料設計方法が提案されている(特許文献2参照)。前記ゴム材料設計方法は、配合に関する組み合わせ候補を複数作成して、少なくとも一つの組み合わせ候補を含む配合組み合わせを設計変数とし、この設計変数を予測モジュールに入力して得られた予測値を目的関数として、前記目標値を実現する配合組み合わせの最適化を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-147460号公報
【特許文献2】特開2020-30683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、予測モジュールによる予測値が目標値に実質的に一致するような配合組み合わせを抽出するものであるため、最適化結果(最適解)として得られる配合組み合わせが限定的である。また、従来技術は、予め作成された複数の組み合わせ候補を最適化に用いる設計変数とするものであるため、各組み合わせ候補における各原材料の配合割合次第によっては、最適解を得ることができないおそれがある。また、最適解を得ることができなかった場合は、複数の組み合わせ候補を再度作成して最適化処理を行う必要があり、最適解を得るまでの演算処理の効率が悪い。
【0005】
本発明の目的は、組成物の物性を解析する際に、バリエーションのある前記組成物の各素材の配合情報を効率よく確実に得ることが可能な解析システム、解析装置、及び解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の一の局面に係る解析システムは、複数の素材で構成されるポリマー組成物からなるゴム材料を解析するよう構成されている。前記解析システムは、前記組成物が有する少なくとも二つの物性それぞれに対応する目標値の許容範囲をそれぞれ設定する目標値設定部と、前記複数の素材に関する配合情報の少なくとも一部を含む入力データを取得する入力データ取得部と、前記入力データに含まれる配合情報及び前記目標値設定部によって設定される前記許容範囲に基づいて、前記少なくとも二つの物性それぞれの予測値がそれぞれの前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の配合情報を特定する特定処理部と、前記特定処理部によって特定される特定済み配合情報、及び前記特定済み配合情報に基づいて予測される前記少なくとも二つの物性それぞれの前記予測値の両方又はいずれか一方を出力する出力処理部と、を備える。
【0007】
このように構成されているため、目標値設定部によって設定された目標値の許容範囲に予測値が収まるように前記入力データに含まれていない他の配合情報が特定される。例えば、前記特定処理部によって、前記他の配合情報が最適化される。これにより、前記他の配合情報の特定によって得られる適切な配合情報が限定的となりにくくなり、バリエーションのある複数の配合情報が算出されやすくなる。また、他の配合情報の算出時間を短縮することができ、効率よく確実に、最適な配合情報を得ることができる。
【0008】
(2) 本発明の解析システムにおいて、前記出力処理部は、前記特定済み配合情報及び前記予測値の両方又はいずれか一方を示すグラフを所定の表示部に表示させる。
【0009】
この構成によれば、前記出力処理部によって、特定済みの適切な配合情報、及び、その配合情報に基づく適切な予測値が表示部に表示される。これにより、ユーザは、タイヤ製品などのゴム材料の試作品を実際に製造することなく、所望する特定の性能を発揮し得る組成物の素材の配合情報を視覚的に容易に把握することができる。
【0010】
(3) 前記出力処理部は、前記特定処理部による特定によって前記特定済み配合情報が複数得られた場合に、複数の前記特定済み配合情報及び複数の前記予測値の両方又はいずれか一方を前記表示部に表示させる。
【0011】
この構成によれば、ユーザは、各素材ごとの適切な特定済み配合情報と、特定の性能に対応する物性値の予測値と、のバランスを容易に把握することができる。
【0012】
(4) 本発明の解析システムは、前記許容範囲が設定される前記少なくとも二つの物性の入力、及び前記許容範囲の入力を受け付ける第1入力受付部を更に備える。この場合、前記目標値設定部は、前記第1入力受付部によって受け付けられた前記許容範囲を設定する。
【0013】
(5) 前記第1入力受付部は、前記少なくとも二つの物性及び前記許容範囲を入力可能な入力画面を所定の表示部に表示し、前記入力画面を介して入力された前記少なくとも二つの物性及び前記許容範囲の入力を受け付ける。
【0014】
(6) 前記入力画面は、入力された前記少なくとも二つの物性及び前記許容範囲を示すグラフを含む。この場合、前記第1入力受付部は、前記グラフ上で前記許容範囲を変更可能なように前記入力画面を前記表示部に表示する。
【0015】
この構成によれば、ユーザは、グラフ上で前記許容範囲の下限値と上限値とを容易に把握することができ、また、特定の性能ごとの前記下限値又は前記上限値のバランスを容易に把握することができる。更に、グラフ上で前記許容範囲を変更することにより、前記許容範囲の入力範囲を変更することができる。その結果、ユーザは、前記目標値の許容範囲のバランスを意識しつつ、所望する特定性能の前記下限値又は前記上限値を容易に変更することできる。
【0016】
(7) 前記特定処理部は、前記入力データに含まれる前記配合情報について定められた制約条件を満たすように前記入力データに含まれていない前記他の配合情報を特定する。
【0017】
この構成によれば、例えば、組成物の素材として採用することができない不適切な素材やその配合情報が特定済み配合情報として得られなくなり、ユーザにとって不本意な前記他の配合情報が出力されることを防止できる。
【0018】
(8) 本発明の解析システムは、前記制約条件の入力を受け付ける第2入力受付部を更に備える。この場合、前記特定処理部は、前記第2入力受付部によって受け付けられた前記制約条件を満たすように前記入力データに含まれていない前記他の配合情報を特定する。
【0019】
(9) 前記制約条件は、前記組成物を構成する前記複数の素材の種類を限定する条件、前記複数の素材の数を限定する条件、又は、前記複数の素材の配合量を限定する条件の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0020】
(10) 前記特定処理部は、前記入力データに含まれる前記配合情報に基づいて前記少なくとも二つの物性それぞれの物性値を予測する予測部を含む。この場合、前記予測部は、複数の他の組成物それぞれに関する複数の配合情報及び前記複数の他の組成物それぞれに関する前記物性の前記物性値を含む教師データに基づいて学習された学習済みの予測モデルを用いて、予測対象である前記組成物が有する前記少なくとも二つの物性それぞれの物性値を予測する。
【0021】
(11) 前記特定処理部は、前記少なくとも二つの物性それぞれの前記予測値が、前記目標値設定部によって設定された前記許容範囲に収まるように前記入力データの前記配合情報を最適化する最適化処理部を含む。この場合、前記最適化処理部は、前記予測部による前記予測値を目的関数とし、前記予測部に入力される前記入力データの前記配合情報を設計変数として、前記予測値が前記目標値の前記許容範囲内に収まるように前記入力データの前記配合情報を最適化する。
【0022】
この構成によれば、目標値設定部によって設定された目標値の許容範囲に予測値が収まるように前記配合情報が最適化される。このため、最適化によって得られる最適解が限定的となりにくくなり、バリエーションのある複数の最適解が算出されやすくなる。また、最適解の算出時間を短縮することができ、効率よく確実に、最適解を算出することができる。
【0023】
(12) 前記配合情報は、前記複数の素材の種類及び各素材の配合量を含むものである。
【0024】
(13) 本発明の他の局面に係る解析装置は、複数の素材で構成される組成物の物性を解析するよう構成されている。前記解析装置は、前記組成物が有する少なくとも二つの物性それぞれに対応する目標値の許容範囲をそれぞれ設定する目標値設定部と、前記複数の素材に関する配合情報の少なくとも一部を含む入力データを取得する入力データ取得部と、前記入力データに含まれる配合情報及び前記目標値設定部によって設定される前記許容範囲に基づいて、前記少なくとも二つの物性それぞれの予測値がそれぞれの前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の配合情報を特定する特定処理部と、前記特定処理部によって特定される特定済み配合情報、及び前記特定済み配合情報に基づいて予測される前記少なくとも二つの物性それぞれの前記予測値の両方又はいずれか一方を出力する出力処理部と、を備える。
【0025】
(15) 本発明のその他の局面に係る解析方法は、複数の素材で構成される組成物の物性を解析する解析方法である。前記解析方法は、前記組成物が有する少なくとも二つの物性それぞれに対応する目標値の許容範囲をそれぞれ設定する目標値設定ステップと、前記複数の素材に関する配合情報の少なくとも一部を含む入力データ及び前記目標値設定ステップにおいて設定される前記許容範囲に基づいて、前記少なくとも二つの物性それぞれの予測値がそれぞれの前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の配合情報を特定する特定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、組成物の物性を解析する際に、バリエーションのある前記組成物の各素材の配合情報を効率よく確実に得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る組成物解析システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、組成物解析システムが備える解析装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、予測モデル及び最適化モデルを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、組成物解析システムが備える情報端末の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、情報端末に表示される目標値入力画面(入力画面)を示す図である。
【
図6】
図6は、情報端末の目標値入力画面における入力値の変更操作を示す図である。
【
図7】
図7は、情報端末に表示される制約条件入力画面(入力画面)を示す図である。
【
図8】
図8は、情報端末に表示される他の制約条件入力画面(入力画面)を示す図である。
【
図9】
図9は、情報端末に表示されるその他の制約条件入力画面(入力画面)を示す図である。
【
図10】
図10は、情報端末に表示される適正配合割合画面(出力画面)を示す図である。
【
図11】
図11は、情報端末に表示される物性値画面(出力画面)を示す図である。
【
図12】
図12は、組成物解析システムにおいて実行される解析処理(最適化処理、表示処理)の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、情報端末に表示される物性値画面(出力画面)の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る組成物解析システム100の構成を示す図である。本実施形態の組成物解析システム100は、主として、解析装置10と、情報端末20と、データベース30とによって構成されている。なお、組成物解析システム100は、本発明の解析システムの一例であり、また、解析装置10は、本発明の解析装置の一例である。以下、組成物解析システム100を、単に解析システム100と称する。
【0030】
解析システム100は、少なくともポリマー及び添加剤を含む複数の素材で構成されたポリマー組成物(本発明の組成物の一例)を解析可能に構成されている。本実施形態では、解析システム100は、前記ポリマー組成物を構成する複数の素材に関する素材情報に基づいて前記ポリマー組成物が有する特定性能(つまり物性)の値(つまり物性値)を予測するよう構成されている。また、解析システム100は、未知の前記ポリマー組成物が有するであろう複数の(少なくとも二つの)前記特定性能に対して定められた目標値を達成するための素材の種類や素材の配合割合を特定するよう構成されている。ここで、解析システム100によって特定される前記素材の種類や、その素材の配合割合は、本発明の配合材料の一例である。
【0031】
以下、解析システム100によって解析される解析対象として、前記ポリマー組成物を加硫して得られるゴム状弾性体を例示して、解析システム100によって実行される各種処理について説明する。なお、言うまでもなく、前記ゴム状弾性体は、前記解析対象の単なる一例であり、解析システム100は、例えば、加硫前の前記ポリマー組成物(未加硫ゴム)に対しても解析可能である。
【0032】
ここで、前記ゴム状弾性体は、上述したように、前記ポリマー組成物を加硫して得られるものであり、具体的には、自動車などの車両に装着される空気入りタイヤなどのタイヤ製品の製造に用いられるゴム材料である。つまり、本実施形態の解析システム100は、タイヤ製品を構成するゴム状弾性体が有する特定性能(つまり物性)を予測することができる。また、解析システム100は、前記目標値と同等の物性値の特性を有するであろう未知の前記ゴム状弾性体を構成する各素材の種類、及びその素材の配合割合、若しくは、前記種類又は前記配合割合のいずれか一方を特定することができる。
【0033】
解析システム100による解析結果(予測結果、及び特定結果)は、例えば、前記ゴム状弾性体や、このゴム状弾性体を用いて製造される前記タイヤ製品の開発に用いられる。前記特定性能の予測値が得られれば、前記ゴム状弾性体や前記タイヤ製品の開発者は、試作品に対して物性測定検査を行うことなく、概ねの物性値を把握することができる。また、未知の前記ゴム状弾性体や前記タイヤ製品を構成する素材の種類や、その配合割合などの配合情報が得られれば、前記開発者は、前記ゴム状弾性体や前記タイヤ製品の試作品を製造することなく、所望する特定性能を発揮し得る素材の種類や、その配合割合を把握することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、前記ゴム状弾性体の一例として前記タイヤ製品の製造に用いられるゴム材料を例示するが、例えば、前記ゴム状弾性体は、前記タイヤ製品そのものであってもよい。この場合、解析システム100は、前記タイヤ製品が有する複数のタイヤ性能のうちの特定の性能の物性値を予測する。また、解析システム100は、前記目標値と同等のタイヤ性能を有する未知の前記タイヤ製品の素材の種類やその配合割合を特定する。また、前記ゴム状弾性体は、防振ゴムなどの産業用ゴム製品そのもの、或いは、産業用ゴム製品の製造に用いられるゴム材料であってもよい。
【0035】
前記ポリマー組成物は、一つ又は複数のポリマー、及び一つ又は複数の添加剤を含む複数の素材を混錬した未加硫ゴムである。前記ゴム状弾性体は、前記ポリマー組成物を加硫したものである。
【0036】
前記ポリマーは、例えば、前記ポリマー組成物に配合される未加硫の原料ゴムである。前記原料ゴムとして、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
【0037】
前記添加剤は、例えば、カーボンブラックやシリカ等のフィラー(充填剤)、カップリング剤、老化防止剤、加硫促進剤、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、加工助剤等である。
【0038】
[解析システム100の構成]
図1に示すように、解析システム100は、解析装置10と、情報端末20と、データベース30とを備えており、これらがネットワークN1によって互いに通信可能に接続されている。ネットワークN1は、例えば、LANなどで接続された有線通信網、あるいは、専用回線や公衆回線等の無線通信網である。
【0039】
なお、本実施形態では、ネットワークN1にデータベース30が接続された構成を例示するが、例えば、データベース30は、解析装置10又は情報端末20に備えられていてもよい。また、本実施形態では、ネットワークN1に情報端末20が接続された構成を例示するが、情報端末20が備える各構成要素や各種機能が解析装置10に搭載されていてもよい。
【0040】
解析装置10は、解析システム100を構成する一要素である。解析装置10は、情報端末20から送信された入力情報などの各種情報や、予め構築された後述の予測モデル123(
図2参照)などを用いて、予測対象である前記ゴム状弾性体(以下、予測対象であるゴム状弾性体を被予測ゴムと称する場合がある。)の特定性能を予測し、その予測結果を情報端末20に出力する。また、解析装置10は、情報端末20から送信された入力情報などの各種情報や、後述の最適化モデル124(
図2参照)などを用いて、前記ゴム状弾性体の各特定性能それぞれに対して定められた前記目標値を達成し得る素材の種類を最適化し、又はその素材の配合割合を最適化して、その最適化結果である最適解を情報端末20に出力する。
【0041】
解析装置10は、各種演算処理を実行可能な情報処理装置であり、例えば、ネットワークN1に接続されたサーバコンピュータ、クラウドサーバー、或いはパーソナルコンピュータである。なお、解析装置10は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステム、或いはクラウドコンピューティングシステムであってもよい。また、解析装置10で実行される各種の処理は、一つ又は複数のプロセッサによって分散して実行されてもよい。解析装置10には、解析システム100を稼働するためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0042】
情報端末20は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。情報端末20は、いわゆるデスクトップパソコンやノートパソコン、或いは、携帯して持ち運び可能なスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末である。ユーザは、解析装置10において実行される前記特定性能の予測処理、及び、未知の前記ゴム状弾性体の前記配合割合を算出するための最適化処理などに用いられる各種情報を情報端末20に入力する。また、情報端末20は、解析装置10から送信された予測結果や最適解を表示画面に表示する。したがって、情報端末20には、解析システム100と連携して解析装置10に前記各種情報を送信したり、前記予測結果や前記最適解を表示画面に表示したりするためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0043】
データベース30は、解析システム100において取り扱われる各種データが所定のデータ管理方式に基づいて記憶媒体に格納されたデータ群である。データベース30は、ネットワークN1に通信可能に接続された記憶装置、情報処理装置、クラウドサーバー、データサーバーなど、種々の形態で管理される。データベース30は、後述の予測モデル123の生成に用いられる教師データ30Aと、後述の最適化モデル124に用いられる参照データ30Bとを含む。
【0044】
教師データ30Aは、解析装置10による予測処理に用いられる予測モデル123(
図2参照)を生成するためのデータセットである。教師データ30Aは、後述の予測モデル123に含まれる予測関数を生成するために用いられる情報である。具体的には、教師データ30Aは、各種性能が既知の多数の前記ゴム状弾性体の素材情報と、各ゴム状弾性体が有する各種性能の物性値(所謂教師情報)とを含む。以下、各種性能の物性値が既知の前記ゴム状弾性体をサンプルゴムと称する場合がある。前記サンプルゴムは、これまでに製品として製造されたゴム製品(タイヤ製品や産業用ゴム製品等)、前記ゴム製品の開発のための研究や実験の際に製造された試作ゴム製品、或いは前記研究の際に製造された前記ゴム状弾性体からなる試験片であり、多数のサンプルゴムそれぞれの前記素材情報と各サンプルゴムが有する各種性能の物性値とを含むデータセットが教師データ30Aとしてデータベース30に格納されている。なお、前記サンプルゴムは、本発明における複数の他の組成物の一例である。
【0045】
前記素材情報は、例えば、前記サンプルゴムを構成するポリマーや添加剤などの各素材の特性に関する情報(以下、素材特性情報と称する。)や、前記サンプルゴムにおける各素材の配合割合などを含む。
【0046】
ここで、前記ポリマーの前記素材特性情報は、例えば、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(M w / M n)、分子鎖の分岐度(ポリマーリニアリティ)、又はピークトップ分子量(Mp)の少なくとも一つであることが好ましい。また、前記ポリマーの前記素材特性情報に、イソプレンゴム量、スチレン量、ビニル量、ブタジエンゴム量、トランス型ブタジエンゴム量の比率、又はシス型ブタジエンゴム量の比率の少なくとも一つが含まれていてもよい。本実施形態では、前記ポリマーの前記素材特性情報として例示した上述の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(M w / M n)、イソプレンゴム量、スチレン量、ビニル量、トランス型ブタジエンゴムの比率、及びシス型ブタジエンゴムの比率が前記教師データ30Aに含まれている。なお、前記ポリマーの前記素材特性情報に、油展量、ガラス転移温度、溶解性パラメータ、粘弾性特性、変性基の種類、粘度の少なくとも一つが含まれていてもよい。
【0047】
また、前記添加剤の前記素材特性情報としては、例えば、前記添加剤がカーボンブラックやシリカ等のフィラーである場合は、前記フィラーの種類(カーボンブラック、シリカ等)、粒子径(一次粒子径)、CTAB吸着比表面積、BET吸着比表面積、又は表面極性の少なくとも一つであることが好ましい。
【0048】
前記サンプルゴムにおける各素材の配合割合は、各サンプルゴムそれぞれにおける素材(ポリマーや添加剤等)の配合割合を質量部で表したものである。詳細には、各素材の配合割合は、前記サンプルゴムに含まれる各ポリマー(原料ゴム)の合計質量部を100とした場合の各素材の配合量(質量部)の割合を示すものである。前記配合割合に用いられる単位はphr(:per hundred rubber)で表される。
【0049】
また、前記サンプルタイヤが有する各種性能(物性)としては、例えば、ムーニー粘度、ムーニー粘度計によるスコーチタイム、加硫試験機(キュラストメーター)による加硫特性値(誘導時間tC(10)、50%加硫時間tC(50)、及び90%加硫時間tC(90)等)、硬度、引張強度、ガラス転移温度、高温損失正接tanδ、低温損失正接tanδ、弾性率(貯蔵弾性率E′、損失弾性率E″、貯蔵せん断弾性率G′、損失せん断弾性率G″等)、破壊強度、摩耗性能のうちのいずれか複数又は全部を含む。本実施形態では、前記サンプルゴムの各種性能として例示した上記全ての性能の物性値が前記教師データに含まれている。
【0050】
なお、教師データ30Aに含まれる前記素材特性情報や、前記サンプルゴムが有する各種性能の物性値の情報、及びこれらの情報の測定方法などについては従来周知の事項であり、また、上述した先行文献情報(特開2018-147460号公報)にも詳しいため、ここでの説明は省略する。
【0051】
本実施形態では、上述したように、前記素材情報及び前記物性値を含む教師データ30Aを例示するが、教師データ30Aは本実施形態で例示したものに限られない。例えば、前記素材情報として、前記ポリマー組成物を混錬する場合の混錬条件が含まれていてもよい。前記混錬条件が前記被予測ゴムの物性値に影響する場合があるためである。前記混錬条件としては、例えば、混練機のチャンバーの容積、混練時のポリマー組成物の充填量、混練時間、混練後のポリマー組成物の排出温度の少なくとも一つを含んでいる。また、前記素材情報として、前記ポリマー組成物を加硫する場合の加硫条件などが含まれていてもよい。前記加硫条件が前記被予測ゴムの物性値に影響する場合があるためである。前記加硫条件は、例えば、各サンプルゴムの加硫前の前記ポリマー組成物について設定される加硫温度条件等である。なお、前記混錬条件や、前記加硫条件については、従来周知の事項であり、また、上述した先行文献情報(特開2018-147460号公報)にも詳しいため、ここでの説明は省略する。
【0052】
参照データ30Bは、解析装置10による最適化処理の実行時に参照されるデータである。参照データ30Bは、後述の最適化モデル124(
図2参照)によって設計変数を決定する際に参照される。参照データ30Bには、前記ゴム状弾性体の素材(ポリマーや添加剤等)として選択し得る全ての素材に関する情報が含まれている。例えば、前記ポリマー(原料ゴム)については、市場に流通している全てのポリマーの識別情報(例えば製品名称、型式番号、製造元情報など)、各ポリマーの前記素材特性情報、各ポリマーの役割や機能、特性などの特徴を示す情報などが参照データ30Bに含まれている。また、前記添加剤については、市場に流通している全ての添加剤の識別情報(例えば製品名称、型式番号、製造元情報など)、役割や機能などの特徴を示す情報などが参照データ30Bに含まれている。
【0053】
[解析装置10]
以下、
図2を参照して、解析装置10の構成について説明する。ここで、
図2は、解析装置10の構成を示すブロック図である。
【0054】
解析装置10は、本実施形態の解析システム100を実現するためのものであり、後述の予測モデル123を用いて前記被予測ゴムの特定性能を予測し、また、後述の最適化モデル124を用いて未知の前記ゴム状弾性体の素材の種類やその素材の配合割合(配合情報)を特定する。
【0055】
図2に示すように、解析装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15と、を備える。
【0056】
通信部13は、解析装置10をネットワークN1に接続して、所定の通信プロトコルに従って、ネットワークN1に接続された各デバイスとの間でデータ通信を実行するための通信インターフェースである。具体的には、通信部13は、ネットワークN1を通じて情報端末20やデータベース30との間でデータ通信を実行する。
【0057】
記憶部12は、各種の情報やデータを記憶するHDD、SSD、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部12には、制御プログラム121、予測モデル123、最適化モデル124が記憶されている。なお、予測モデル123、及び最適化モデル124は、それぞれが格納されたメモリを備える電子回路として実現されていてもよい。
【0058】
制御プログラム121は、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、解析装置10に電気的に接続されるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)によって前記記録媒体から読み取られて記憶部12に複製されたものであってもよい。また、制御プログラム121は、ネットワークN1に接続された外部ストレージから読み出されて通信部13を通じて入力され、記憶部12に複製されたものであってもよい。
【0059】
制御プログラム121は、予測モデル123を用いて予測処理を実行し、或いは、最適化モデル124を用いて後述の最適化処理(
図12参照)を実行するためのプログラムである。なお、制御プログラム121に替えて、前記予測処理を制御部11に実行させるプログラム、及び前記最適化処理を制御部11に実行させるプログラムがそれぞれ記憶部12に記憶されていてもよい。
【0060】
予測モデル123は、予測処理に用いられる学習済みモデルであり、予測対象である前記ゴム状弾性体(被予測ゴム)の特定性能の物性値の予測値を算出する。本実施形態では、予測モデル123は、予測対象の前記被予測ゴムの素材情報(素材の種類や各素材の配合割合を含む)が入力部に入力されると、前記被予測ゴムの各特定性能の物性値を予測して、その予測値を出力部から出力する。本実施形態では、複数の特定性能それぞれの予測値が予測モデル123によって予測されて出力される。なお、予測モデル123は、入力値(入力データ)に対して予測値(出力データ)を返す周知の関数(予測関数)を含むものであってもよい。
【0061】
予測モデル123は、データベース30に格納されている前記教師データと、所定のアルゴリズムとに基づいて、制御部11による機械学習によって生成される。なお、制御部11は、前記教師データの内容が更新されると、その都度、予測モデル123を更新する。なお、予測モデル123は、制御部11以外の制御部によって学習、生成されたものが外部から転送されて、記憶部12に格納されたものであってもよい。
【0062】
予測モデル123は、種々の方法で構築することができる。例えば、予測モデル123の構築に必要なアルゴリズムとして、重回帰、一般化線形回帰、主成分回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、カーネル回帰、ランダムフォレスト回帰、ガウス過程回帰、多層ニューラルネットワーク、クラスタリング、サポートベクターマシン、動径基底関数で定義されるRBFネットワークなどが好適に用いられる。また、予測モデル123は、ニューラルネットワークの中間層を多層化する深層学習(ディープラーニング)によって構築されてもよい。なお、予測モデル123は、上述の各アルゴリズムのうちの一つを用いたものであってもよく、或いは、複数のアルゴリズムを用いたものであってもよい。本実施形態では、精度とコストとのバランスに優れた前記一般化線形回帰が予測モデル123のアルゴリズムとして用いられる。
【0063】
最適化モデル124は、後述の最適化処理(
図12参照)に用いられるものであり、学習済みの予測モデル123による予測値が予め定められた前記目標値になるように、或いは、その目標値の許容範囲内に収まるように、未知の前記ゴム状弾性体の各素材の種類、又はその配合割合、或いはその両方を探索する。
図3は、予測モデル123及び最適化モデル124を示すブロック図である。
図3に示すように、予め定められた初期入力値が後述の最適化処理部112(
図2参照)によって予測モデル123に入力されると、最適化モデル124は、予測モデル123から出力された予測値が最適かどうかを判定する。そして、予測モデル123から出力された予測値が最適でない場合に、最適化モデル124は、新たな設計変数を作成してその設計変数を新たな入力値として予測モデル123に入力し、予測モデル123により再び予測された予測値が最適であるか否かの判定を再度行う。これにより、求める前記配合割合の探索が行なわれる。この探索は、予測モデル123から出力される予測値が最適解となるまで繰り返し行われる。言い換えると、最適化モデル124は、予測モデル123による予測値と前記目標値との差が最小値となるように、或いは、前記予測値が前記目標値の許容範囲内となるように、前記設計変数(つまり素材の種類やその配合割合)を最適化する。
【0064】
最適化モデル124による第1の最適化方法として、予め定められた目的関数の計算値が最小値に達した場合に最適と判定する方法が適用可能である。この第1の最適化方法においては、最適化モデル124は、前記目的関数の計算値が前記最小値に達するまで最適化処理を繰り返し実行する。そして、最適化モデル124は、前記目的関数の計算値が前記最小値に達した場合の前記設計変数を、最適解として出力する。なお、前記最小値は、0から所定の許容値までの間で定められる。
【0065】
前記第1の最適化方法において最適化モデル124に用いられる前記目的関数は、以下の式(1)により表される。この場合、最適化モデル124は、式(1)の目的関数f(v1,・・・vN)の計算値が前回の探索時の計算値よりも小さい値となる前記設計変数の探索を行う。
【0066】
【0067】
ここで、式(1)におけるviは、予測される前記特定性能の種類がN個ある場合のi番目の特定性能の予測値である。また、tiはi番目の特定性能の目標値、ciはi番目の特定性能の重み係数である。また、式(1)の右辺の{(vi-ti)/ti}2は、予測値viと目標値tiとの差分(=vi-ti)を目標値tiで除算した差分比率を二乗したものである。すなわち、式(1)で表される目的関数f(vi,・・・,vN)は、前記差分比率の二乗の平方和として与えられる。なお、重みciは、対応する前記特定性能ごとに任意に定めることができる。
【0068】
ところで、予測モデル123による予測値と前記目標値との差が最小値となるように前記設計変数(つまり配合割合)を最適化する前記第1の最適化手法では、最適化結果(最適解)として得られる配合組み合わせが限定的となるおそれがある。また、最適解の算出に膨大な時間がかかり、場合によっては最適解を得ることができないおそれがある。そのため、バリエーションのある最適解(配合割合)を効率よく確実に得ることが可能なように、本実施形態では、以下に説明する第2の最適化方法が用いられる。
【0069】
最適化モデル124による第2の最適化方法では、前記目標値に対して所定の許容範囲が定められている。この場合、本実施形態では、最適化モデル124は、予測モデル123による予測値が前記許容範囲に収まるように前記設計変数としての前記配合割合を最適化する。すなわち、前記第2の最適化方法において、最適化モデル124は、複数の特定性能それぞれの予測値が、各特定性能それぞれに対して定められた複数の目標値の許容範囲内に収まるように、前記設計変数の最適化を行う。
【0070】
前記第2の最適化方法において最適化モデル124に用いられる前記目的関数は、以下の式(2)により表される。この場合、最適化モデル124は、式(2)の目的関数f(v1,・・・vN)の計算値が前回の探索時の計算値よりも小さい値となる前記設計変数の探索を行う。
【0071】
【0072】
ここで、式(2)におけるtLiは、i番目の前記特定性能の目標値tiの下限値であり、tUiは、i番目の前記特定性能の目標値tiの上限値である。つまり、目標値tiの許容範囲は、tLi<ti<tUiである。式(2)の目的関数の場合、全ての特定性能の予測値が前記許容範囲内に収まった場合、目的関数f(v1,・・・vN)の計算値は最小値「0」となる。
【0073】
最適化モデル124は、例えば、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)リスト探索、粒子群最適化(PSO:Particle Swarm Optimization)、応答曲面法(RSM:Response Surface Methodology)などが好適に用いられる。本実施形態では、最適化モデル124は、上述した複数のアルゴリズムを含んでおり、予測モデル123から予測値が出力されるごとに、前記予測値に基づいて、最適化に関する課題の特徴を抽出し、その特徴に基づいて設計変数の絞り込みを行うとともに、適切な最適化アルゴリズムを選択して、前記目的関数に基づく最適化の計算を行う。なお、最適化モデル124は、上述の各アルゴリズムのうちの一つを用いたものであってもよい。
【0074】
図2に示すように、表示部14は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。操作部15は、操作者の操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルなどの入力装置である。
【0075】
制御部11は、解析装置10の各部の動作を制御する。制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUが実行することにより解析装置10を制御する。
【0076】
図2に示すように、制御部11は、取得処理部110(本発明の入力データ取得部の一例)、性能予測部111(本発明の予測部の一例)、最適化処理部112(本発明の最適化処理部の一例)、目標値設定部113(本発明の目標値設定部の一例)等の各種の処理部を含む。
【0077】
制御部11は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部11又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部11に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。また、前記制御プログラムは、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)を性能予測部111として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0078】
取得処理部110は、前記被予測ゴムを構成する複数の素材(ポリマー、添加剤等)に関する素材情報の少なくとも一部を含む入力データを取得する処理を行う。例えば、情報端末20においてユーザによって入力された情報が、ネットワークN1を通じて解析装置10に転送されると、その情報を取得処理部110が取得する。
【0079】
性能予測部111及び最適化処理部112は、本発明の特定処理部として機能する部分であり、入力データとして入力される素材情報、及び目標値設定部113により設定される後述の許容範囲に基づいて、前記被予測ゴムを構成する少なくとも二つの特定性能の予測値が、各予測値に対応する前記許容範囲に収まるように、前記入力データに含まれていない他の素材情報(素材の種類、配合割合)を特定する処理を行う。
【0080】
性能予測部111は、予測対象である前記被予測ゴムを構成する複数の素材(ポリマー、添加剤等)に関する素材情報に基づいて前記被予測ゴムが有する特定の性能(特定性能)を予測する。予測される前記特定性能は、前記被予測ゴムが有する各種性能、例えば、ムーニー粘度、ムーニー粘度計によるスコーチタイム、加硫試験機(キュラストメーター)による加硫特性値(誘導時間tC(10)、50%加硫時間tC(50)、90%加硫時間tC(90)等)、硬度、引張強度、ガラス転移温度、高温損失正接tanδ、低温損失正接tanδ、弾性率(貯蔵弾性率E′、損失弾性率E″、貯蔵せん断弾性率G′、損失せん断弾性率G″等)、破壊強度、摩耗性能のうちのいずれか複数又は全部である。
【0081】
前記素材情報は、前記被予測ゴムの特定性能の予測値を求める場合に、情報端末20においてユーザによって入力される。そして、その入力された情報がネットワークN1を通じて解析装置10に転送される。前記被予測ゴムの前記素材情報は、前記被予測ゴムの素材(ポリマー、添加剤等)の配合割合、前記被予測ゴムを構成するポリマーや添加剤等の前記素材特性情報などである。
【0082】
性能予測部111は、情報端末20から前記被予測ゴムの前記素材情報を取得すると、予測モデル123、及び取得した前記素材情報を用いて、前記被予測ゴムに関する複数の前記特定性能の物性値を予測する。本実施形態では、性能予測部111は、前記被予測ゴムが有する各種性能(ムーニー粘度、スコーチタイム、加硫特性値、硬度、引張強度、ガラス転移温度、高温損失正接tanδ、低温損失正接tanδ、弾性率、破壊強度、摩耗性能)のうちの複数、又は全部を予測する。
【0083】
具体的には、性能予測部111は、取得処理部110によって取得される前記被予測ゴムの前記素材情報を予測モデル123の入力部に入力して、予測モデル123に前記被予測ゴムの各特定性能を予測させ、予測モデル123の出力部から出力される前記特定性能を示す物理量を予測結果(予測値)として取得する。予測モデル123に入力される入力データは、前記被予測ゴムの前記素材情報の全てでもよく、或いは、そのうちの少なくとも一部であってもよい。
【0084】
性能予測部111によって予測された予測値は、情報端末20の表示部23に表示させるために、通信部13によって情報端末20に転送される。
【0085】
最適化処理部112は、性能予測部111による予測に用いられる前記配合割合を含む入力データを最適化することにより、前記目標値を達成するための前記配合割合を算出する。詳細には、性能予測部111によって予測される複数の特定性能それぞれの物性値を示す各予測値が、予め設定された前記目標値の前記許容範囲に収まるように前記入力データの前記配合割合を最適化する。本実施形態では、最適化処理を実行するための実行指示が入力されると、最適化処理部112は、最適化モデル124を有効にするとともに、予測モデル123の入力部に前記初期入力値を入力して、最適化モデル124による最適解の探索を実行させる。この探索が繰り返されることにより、上式(2)に示す目標関数の計算値が最小値となる設計変数が特定される。すなわち、前記目標値を達成する前記配合割合が割り出される。
【0086】
最適化処理部112によって算出された算出結果(最適解)は、情報端末20の表示部23に表示させるために、通信部13によって情報端末20に転送される。
【0087】
また、最適化処理部112は、前記配合割合について定められた所定の制約条件を満たすように、予測モデル123に入力される前記入力データの前記配合割合を最適化する。
【0088】
前記制約条件は、前記ゴム状弾性体を構成する複数の素材の種類を限定する条件、前記複数の素材の数を限定する条件、又は、前記複数の素材の配合量を限定する条件の少なくともいずれかである。
【0089】
前記制約条件のうち、前記素材の配合量を限定する条件は、具体的には、各素材の配合量として取り得る範囲を限定する条件である。例えば、前記制約条件は、前記ゴム状弾性体の素材として適用され得る各ポリマー(原料ゴム)の配合量の下限値と上限値である。また、前記制約条件は、前記素材として適用され得る各種フィラー(カーボンブラック、シリカなど)や、カップリング剤、硫黄、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫促進剤などの各種添加剤の配合量の下限値と上限値である。
【0090】
また、前記制約条件として、アセトン抽出物の配分量、原料ゴムを含む全ポリマーの合計配分量、及び灰分の配分量それぞれの下限値と上限値が定められていてもよい。
【0091】
また、前記制約条件は、例えば、ある素材(ポリマー、添加剤等)の配合量が他の素材(一つ又は複数の素材)の配合量の定数倍とする限定であってもよい。例えば、前記制約条件は、カップリング剤の配合量が一つ又は複数種のシリカの配合量に比例するように定められており、各シリカの配合量それぞれを所定の定数倍で乗じた値を合計した数値に限定するものであってもよい。
【0092】
これらの制約条件は、情報端末20においてユーザによって入力され、その入力された情報がネットワークN1を通じて解析装置10に転送されて、記憶部12に格納される。そして、最適化処理部112は、前記制約条件に含まれる前記下限値から前記上限値までの範囲を最適解として適用し得る制限範囲として、最適化モデル124の入力部に入力する。この場合、最適化モデル124は、前記制限範囲を超えないように前記制限範囲内で前記配合割合を最適化する。
【0093】
なお、前記制約条件として、前記ポリマー組成物を混錬する場合の混錬条件に関する制限事項が含まれていてもよい。例えば、前記混錬条件が、混練機のチャンバーの容積、混練時のポリマー組成物の充填量、混練時間、混練後のポリマー組成物の排出温度を含む場合は、各混錬条件に関する制限範囲(チャンバーの容積の制限範囲、充填量の制限範囲、混錬時間の制限範囲、排出温度の制限範囲)が前記制約条件として定められていてもよい。また、前記制約条件として、前記ポリマー組成物を加硫する場合の加硫条件に関する制限事項が含まれていてもよい。例えば、前記加硫条件が、前記ゴム状弾性体の加硫前の前記ポリマー組成物について設定される加硫温度である場合は、その加硫温度の制限範囲が前記制約条件として定められていてもよい。なお、前記混錬条件や、前記加硫条件については、従来周知の事項であり、また、上述した先行文献情報(特開2018-147460号公報)にも詳しいため、ここでの説明は省略する。
【0094】
目標値設定部113は、最適化モデル124による最適化の際に用いられる前記目標値、及びその許容範囲を設定する。本実施形態では、目標値設定部113は、性能予測部111によって予測可能な複数の特定性能それぞれの物性値に対する複数の目標値と、その許容範囲を設定する。前記目標値及びその許容範囲は、素材の配合割合の最適解を求める場合に、情報端末20においてユーザによって入力される。そして、その入力された情報がネットワークN1を通じて解析装置10に転送されて、記憶部12に格納される。そして、目標値設定部113は、前記目標値及び前記許容範囲を、最適化モデル124の入力部に入力する。
【0095】
[情報端末20]
以下、
図4を参照して、情報端末20の構成について説明する。ここで、
図4は、情報端末20の構成を示すブロック図である。
【0096】
図4に示すように、情報端末20は、制御部21、記憶部22、表示部23、操作部24、通信部25などを備える。情報端末20は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。ユーザは、解析装置10による予測処理に必要な前記被予測ゴムに関する各種情報を情報端末20から入力することができる。また、ユーザは、解析装置10による最適化処理に必要な前記目標値、前記許容範囲、前記制約条件などを情報端末20から入力することができる。
【0097】
通信部25は、情報端末20をネットワークN1に接続し、ネットワークN1を通じて解析装置10との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0098】
記憶部22は、各種の情報を記憶するフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部22には、制御部21に各種演算処理を実行させるための制御プログラム221や、各種演算処理に用いられるデータなどが記憶されている。
【0099】
表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。操作部24は、ユーザによる入力操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルなどの入力装置である。
【0100】
表示部23には、最適化モデル124によって最適化された配合割合(以下、最適配合割合と称する。)、及び、前記最適配合割合に基づいて予測モデル123によって予測された各特定性能それぞれの予測値(以下、最適予測値と称する。)が後述の表示処理部216によって表示される。前記最適配合割合は、最適化処理による最適解であり、最適配合情報の一例である。前記最適配合割合は、本発明の特定済み配合情報の一例である。具体的には、表示部23に表示される適正配合割合画面235(
図10参照)に、各素材ごとの前記最適配合割合を示すリストが表示される。また、表示部23に表示される物性値画面236(
図11参照)に、各特定性能ごとの前記最適予測値を示すリストと、前記最適予測値を示すレーダーチャート65(
図11参照)とが表示される。
【0101】
なお、本実施形態では、前記最適配合割合及び前記最適予測値の両方が表示部23に表示される例について説明するが、前記最適配合割合及び前記最適予測値の少なくとも一方が表示部23に表示されてもよい。また、本実施形態では、前記最適配合割合と前記最適予測値とが別の画面に表示される例について説明するが、前記最適配合割合と前記最適予測値とが同じ画面で表示されてもよい。
【0102】
制御部21は、情報端末20の各部の動作を制御する。制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより情報端末20を制御する。
【0103】
図4に示すように、制御部21は、第1入力受付部211(本発明の第1入力受付部の一例)と、第2入力受付部212(本発明の第2入力受付部の一例)と、表示処理部216(本発明の出力処理部の一例)等の各種の処理部を含む。制御部21は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部21又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部21に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0104】
第1入力受付部211は、前記目標値が設定される前記特定性能の入力、及び前記目標値の前記許容範囲の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、第1入力受付部211は、表示部23に目標値入力画面231(
図5参照)を表示させて、操作部24によって目標値入力画面231に入力された情報を取得する。そして、取得した情報は、通信部25によって解析装置10に送信される。
【0105】
図5及び
図6は、情報端末20の表示部23に表示される目標値入力画面231(入力画面の一例)を示す図である。目標値入力画面231は、前記ゴム状弾性体に対して所望する全ての特定性能を入力し、入力された各特定性能に対応する前記目標値及びその許容範囲を入力するための入力画面である。第1入力受付部211は、目標値入力画面231に入力された前記特定性能及びその目標値の許容範囲を受け付ける処理を行う。
【0106】
図5に示すように、目標値入力画面231は、前記特定性能及び前記目標値を入力し且つ表示するための入力枠41(破線囲み部分)と、前記目標値の許容範囲(下限値及び上限値)を入力し且つ表示するための入力枠42(破線囲み部分)とを含む表示枠44を有する。また、目標値入力画面231は、各特定性能ごとの前記目標値の許容範囲を示すレーダーチャート45(本発明のグラフの一例)を表示する表示枠46を有する。また、目標値入力画面231には、表示内容を前の画面に戻す戻るキー31と、入力画面を次の画面に移行させる次キー33とが設けられている。入力枠41,42には、ユーザが操作部24を操作することによって、前記目標値が設定される前記特定性能を指定することができ、指定された前記特定性能の目標値の許容範囲を任意に入力することができる。
【0107】
入力枠41には、プルダウンキー41Aが設けられている。操作部24によってプルダウンキー41Aが選択されると、予め登録されている複数の前記特定性能の名称を含むプルダウンメニュー(不図示)が表示される。ユーザは、そのプルダウンメニューから任意の前記特定性能を操作部24によって選択することにより、前記特定性能を指定することができる。
【0108】
入力枠42には、目標値の下限値及び上限値を入力可能な複数の枠が設けられている。各枠が操作部24によって選択されると、当該枠に対して任意の数値を入力することが可能となっている。
図5には、通し番号が割り当てられた9つの前記特定性能が指定され、各特定性能に対して目標値の許容範囲が入力された表示枠44が示されている。
【0109】
本実施形態では、表示枠44の各入力枠41,42に所定の情報が入力されると、表示枠46に、各入力枠41,42の情報が反映されたレーダーチャート45が表示される。
図5には、9つの前記特定性能に対応する番号と、各番号に対応する下限値を示す下限値グラフ(
図5の太線参照)と、各番号に対応する上限値を示す上限値グラフ(
図5の細線参照)とを含むレーダーチャート45が示されている。
【0110】
レーダーチャート45は、0~4までの5つの目盛りで表示されており、予め定められた前記目標値に関するコントロール値(
図5の「C値」)を第1目盛りと定め、これを基準として下限値及び上限値の目盛り位置が定められている。
【0111】
このように、目標値入力画面231に表示枠44が表示されて、また、レーダーチャート45が表示されるため、各特定性能の目標値の許容範囲を一見して容易に把握することができ、また、各特定性能の下限値及び上限値のバランスを容易に把握することができる。
【0112】
目標値入力画面231において全ての特定性能の目標値の許容範囲が入力された後に、次キー33が押されると、入力された情報が記憶部22に記憶されるとともに、通信部25によって解析装置10に送信される。また、表示部23に表示される画面が後述の制約条件入力画面232(
図7参照)に移行する。なお、目標値入力画面231で入力された目標値の許容範囲が解析装置10に送信されると、解析装置10の目標値設定部113は、第1入力受付部211によって受け付けられた前記目標値の許容範囲を記憶部12に格納し、最適化処理の際に、最適化モデル124の入力部に入力する。
【0113】
本実施形態では、目標値入力画面231に表示されるレーダーチャート45は、
図6に示すように、操作部24によって前記下限値グラフ又は前記上限値グラフ上の任意のポイントが選択可能であり、その選択されたポイントの位置をレーダーチャート45の範囲内で移動させることができる。前記ポイントは、各特定性能の下限値又は上限値を示す部分である。
図6の例では、上限値グラフ上の「硬度」の上限値を示すポイントがカーソルによって選択され、選択されたポイントが外側へ移動されて、上限値「80」の位置から上限値「150」の位置まで変化された状態が示されている。第1入力受付部211は、前記下限値グラフ又は前記上限値グラフ上の任意のポイントがユーザの操作によって移動されると、移動後の位置における目盛りの数値を変更して入力枠42に反映する。
図6には、入力枠42において、「硬度」の上限値「80」が「150」に変更された例が示されている。
【0114】
このように、視覚的に下限値又は上限値のバランスを把握しやすいレーダーチャート45を操作可能に構成されており、更に、操作後に変更されたポイントが示す目盛りの数値に入力枠42の数値が変更されるため、ユーザは、目標値の許容範囲のバランスを意識しつつ、所望する特定性能の下限値又は上限値を容易に変更することができる。
【0115】
第2入力受付部212は、配合割合に関する上述の制約条件の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、第2入力受付部212は、表示部23に制約条件入力画面232~234(
図7乃至
図9参照)を表示させて、操作部24によって制約条件入力画面232~234に入力された情報を取得する。そして、取得した情報は、通信部25によって解析装置10に送信される。
【0116】
図7は、情報端末20の表示部23に表示される制約条件入力画面232(入力画面の一例)を示す図である。制約条件入力画面232は、配合割合に関する上述の制約条件を入力するための入力画面である。第2入力受付部212は、制約条件入力画面232に入力された前記制約条件を受け付ける処理を行う。
【0117】
図7に示すように、制約条件入力画面232は、前記制約条件として、配合量が限定される素材を入力する入力枠47と、各素材の配合量の制限範囲(下限値及び上限値)を入力するための入力枠48とを含む表示枠49を有する。入力枠47,48には、ユーザが操作部24によってプルダウンキー47Aを選択することによって、前記制約条件が設定される素材を指定することができ、指定された素材の配合量の制限範囲(下限値及び上限値)を任意に入力することができる。
【0118】
操作部24によってプルダウンキー47Aが選択されると、予め登録されている複数の素材の名称を含むプルダウンメニュー(不図示)が表示される。ユーザは、そのプルダウンメニューから任意の前記素材を操作部24によって選択することにより、前記素材を指定することができる。
【0119】
制約条件入力画面232においては、前記ゴム状弾性体の素材として適用され得る各種ポリマー(各種原料ゴム)、各種フィラー(カーボンブラック、シリカなど)、各種添加剤(カップリング剤、硫黄、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫促進剤など)などを限定することができ、各素材の配合量の制限範囲(下限値及び上限値)を入力することができる。
【0120】
入力枠48には、素材の配合量の下限値及び上限値を入力可能な複数の枠が設けられている。各枠が操作部24によって選択されると、当該枠に対して任意の数値を入力することが可能となっている。
図7には、遠し番号が割り当てられた10個の素材が指定され、各素材の配合量の制限範囲(下限値及び上限値)が入力された表示枠49が示されている。
【0121】
ところで、開発しようとしている前記ゴム状弾性体や、それを用いて製造されるゴム製品(タイヤ製品や産業用ゴム製品等)の製造を予定している国や地域における素材の入手条件や、製造を予定している工場での設備条件などによっては、前記ゴム状弾性体の素材として採用することができない素材(以下、不適切素材と称する場合がある。)がある場合がある。この場合、最適化処理によって前記不適切素材の配合量が特定されたとしても、開発者にとっては不本意な最適解となる。また、当該工場においては、未加硫ゴムの素材を揃えることができず、未加硫ゴムを製造することができない。これに対して、最適化処理の際に前記制約条件が参照されて、前記制約条件を満たすように最適化処理が行われれば、開発者にとって不本意な最適解が出力されることを防止できる。このため、本実施形態では、ユーザが所望する制約条件の入力を可能としている。
【0122】
制約条件入力画面232において各素材の配合量の制限範囲が入力された後に、次キー33が押されると、入力された情報が記憶部22に記憶されるとともに、通信部25によって解析装置10に送信される。また、表示部23に表示される画面が次の制約条件入力画面233(
図8参照)に移行する。
【0123】
図8は、情報端末20の表示部23に表示される制約条件入力画面233(入力画面の一例)を示す図である。
図8に示すように、制約条件入力画面233は、制約条件とし限定する成分を入力する入力枠51と、各成分の配合量の下限値及び上限値を入力する入力枠52とを含む表示枠53を有する。制約条件入力画面233においては、アセトン抽出物の配合量、全ポリマーの合計配合量、灰分の配合量などの各成分の配合量を限定することができ、各成分の配合量の制限範囲(下限値及び上限値)を入力することができる。
【0124】
制約条件入力画面233において各成分の配合量の制限範囲が入力された後に、次キー33が押されると、入力された情報が記憶部22に記憶されるとともに、通信部25によって解析装置10に送信される。また、表示部23に表示される画面が次の制約条件入力画面234(
図9参照)に移行する。
【0125】
図9は、情報端末20の表示部23に表示される制約条件入力画面234(入力画面の一例)を示す図である。
図9に示すように、制約条件入力画面234は、指定された素材の配合量を、他の素材の配合量と連動して制限するための設定値を入力するための入力画面である。制約条件入力画面234は、配合量を制約する対象である素材を入力する複数の入力枠54と、制約対象の素材の配合量を連動させる素材を入力するための入力枠55と、入力枠55に入力された素材の配合量に乗じる倍率を入力するための入力枠56とを有する。制約対象の素材は、入力枠54のプルダウンキー54Aが選択された場合に表示されるプルダウンメニューから選択することができる。同様に、入力枠55のプルダウンキー55Aによって入力枠55に入力する素材を選択することができる。また、入力枠56には、操作部24によって任意の数値を入力することができる。
図9の制約条件入力画面234には、「カップリング剤A」の配合量が、他の素材である「シリカC1」の配合量の0.12倍の量と、「シリカC2」の配合量の0.1倍の量と、「シリカC3」の配合量の0.08倍の量とを合計した量に制限される場合の入力例が示されている。
【0126】
制約条件入力画面234には、最適化処理の実行指示を入力するための実行キー34が設けられている。制約条件入力画面234における入力が終了して、実行キー34が押されると、入力された制限内容が、最適化実行指示とともに通信部25によって解析装置10に送信される。また、表示部23に表示される画面が、最適化処理によって算出される最適解を示す適正配合割合画面235(
図10参照)に移行する。
【0127】
なお、解析装置10は、前記最適化実行指示を受け取ると、最適化処理部112が最適化処理を実行し、配合割合に関する最適解を算出する。算出された最適解は、通信部13によって情報端末20に送信される。
【0128】
表示処理部216は、最適化モデル124によって最適化された配合割合(最適配合割合)、及び、前記最適配合割合に基づいて予測モデル123によって予測された各特定性能それぞれの予測値(最適予測値)を表示部23に表示する。具体的には、表示処理部216は、解析装置10から送信された各素材ごとの前記最適配合割合(最適解)を受信すると、各素材と、各素材ごとの前記最適配合割合とを含む適正配合割合画面235(
図10参照)を表示部23に表示する処理を行う。
【0129】
図10は、情報端末20の表示部23に表示される適正配合割合画面235(出力画面の一例)を示す図である。適正配合割合画面235は、配合される素材と、各素材の最適配合割合とを含む素材リスト61を有する。本実施形態では、解析装置10によって、仕様A~Cの3パターンの最適解が算出され、各仕様それぞれの前記最適配合割合が素材リスト61に示されている。
【0130】
適正配合割合画面235には、物性値表示ボタン35が設けられてる。物性値表示ボタン35が押されると、表示画面が、適正配合割合画面235から物性値画面236(
図11参照)に移行する。
【0131】
図11は、情報端末20の表示部23に表示される物性値画面236(出力画面の一例)を示す図である。物性値画面236は、各仕様A~Cの各特定成分の配合割合の最適予測値を有する予測値リスト64と、各特定成分及びその最適予測値とが反映されたレーダーチャート65(本発明のグラフの一例)を表示する表示枠66とを有する。本実施形態では、レーダーチャート65には、各仕様A~Cに対応する最適予測値を示す3つの多角形グラフが含まれている。なお、物性値画面236には、配合割合表示ボタン36が設けられており、これが押されると、表示画面が、適正配合割合画面235に戻る。
【0132】
[解析処理]
以下、
図12のフローチャートを参照して、解析システム100において実行される解析処理(最適化処理、表示処理等を含む)の手順の一例とともに、本発明の解析方法について説明する。なお、前記最適化処理又は前記表示処理に含まれる一又は複数のステップが適宜省略されてもよく、また、各ステップは、同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。
【0133】
まず、ステップS11では、情報端末20の制御部21は、目標値入力画面231を通じて特定性能の目標値の許容範囲が入力されたか否かを判定する。前記許容範囲が入力されると、制御部21は、レーダーチャート45を作成して、表示枠46に表示する(S12)。目標値入力画面231において次キー33が押されると、制御部21は、前記許容範囲の入力が完了したと判定する。ステップS13において前記許容範囲の入力が完了したと判定されると、制御部21は、前記許容範囲を最適化処理時に最適化モデル124に入力する情報として、RAM又は記憶部22に記憶し、更に、当該許容範囲を解析装置10に送信する(S14)。
【0134】
次のステップS15では、制御部21は、前記制約条件の入力が完了したか否かを判定する。制約条件入力画面232~234を通じて前記制約条件が入力され、更に、制約条件入力画面234の実行キー34が押されると、制御部21は、前記制約条件の入力が完了したと判定する。ステップS15において前記制約条件の入力が完了したと判定されると、制御部21は、前記制約条件を最適化処理時に最適化モデル124に入力する情報として、RAM又は記憶部22に記憶し、更に、当該制約条件と、最適化実行指示を解析装置10に送信する(S16)。
【0135】
ステップS17において、解析装置10の制御部11は、最適化実行指示を受信すると、最適化モデル124を動作可能なように有効にし(S18)、その後、情報端末20から送られてきた前記許容範囲と前記制約条件を最適化モデル124の入力部に入力する(S19)。これにより、最適化モデル124は、予測モデル123の予測値が前記許容範囲に収まるように予測モデル123に入力される設計変数としての前記配合割合を最適化することができ、また、前記制約条件を満たすように前記配合割合を最適化することができる。なお、ステップS19は、本発明の目標値設定ステップの一例である。
【0136】
続いて、制御部11は、ステップS20~S25に示す最適化処理を実行する。なお、ステップS20~S25は、制御部11によって実行される最適化ステップであり、本発明の特定ステップの一例である。当該最適化処理は、上述した式(2)の目的関数を用いた前記第2の最適化方法に基づいて行われる。具体的には、ステップS20において、制御部11は、予め定められた前記初期入力値を予測モデル123の入力部に入力して、予測モデル123に前記特定性能の物性値を予測させる。なお、ステップS20は、本発明のゴム性能予測ステップの一例である。前記初期入力値は、最適化処理の一番最初に予測モデル123に入力される設計変数である。前記初期入力値は、例えば、前記ゴム状弾性体の製造に要する各種素材の種類(素材の種類を特定する情報)、及び各素材の配合割合を含むものであり、好ましくは前記制約条件を満たすものである。
【0137】
予測モデル123に前記初期入力値が入力されると、最適化モデル124は、予測モデル123から出力された予測値が最適解であるか否かを判定する(S21)。具体的には、最適化モデル124において、上式(2)に示す目的関数による演算が行われ、その計算値が所定の最小値であるか否かを判定する。前記計算値が前記最小値である場合に、前記予測値が最適解であると判定される。
【0138】
ステップS21において、前記予測値が前記最適解ではないと判定されると、最適化モデル124は、新たな設計変数を生成し(S22)、生成した新たな設計変数を新たな入力値として予測モデル123に入力して予測モデル123に前記特定性能の物性値を予測させ(S23)、再び、予測モデル123による予測値が最適解であるか否かの判定を行う(S21)。なお、ステップS23は、前記特定性能の物性値を予測する予測ステップの一例である。
【0139】
前記設計変数の生成には、参照データ30Bの情報が参照される。例えば、最適化モデル124は、最適化アルゴリズムを用いて、前記予測値や前記目的関数の計算値などに基づいて最適化に対する課題の特徴を抽出し、その特徴に基づいて設計空間における探索方向を決定する。そして、その探索方向に対して現在の前記目的関数の計算値よりも改善し、且つ、前記制約条件を満たす設計変数を、参照データ30Bから抽出した素材情報を用いて決定する。
【0140】
ステップS21~S23が繰り返し行われた結果、ステップS21において、前記予測値が前記最適解であると判定されると、最適化モデル124は、最後に予測モデル123に入力した設計変数(配合する素材とその配合割合を含む情報)を最適解(最適配合割合)として、記憶部12に記憶する(S24)。その後、ステップS25において、最適化終了条件が満たされている場合に、最適化処理が終了する。ここで、最適化終了条件は、例えば、目的関数の計算値が改善しなくなったこと、或いは、最適解が予め定められた制限数に達したこと、などが考えられる。なお、ステップS25において、前記最適化終了条件が満たされていない場合、次の最適解を算出するべく、ステップS21移行の処理が繰り返し行われる。
【0141】
最適化処理が終了すると、制御部11は、最適解として特定された前記最適配合割合と、その最適配合割合に基づいて予測モデル123によって予測された前記最適予測値とを情報端末20に送信する(S26)。
【0142】
情報端末20の制御部21は、解析装置10から前記最適配合割合及び前記最適予測値を受信すると(S27)、ステップS28において、前記最適配合割合を表示部23に表示し(
図10参照)、或いは、前記最適予測値を表示部23に表示する(
図11参照)。
【0143】
このように、本実施形態では、目標値設定部113によって設定された目標値の許容範囲に予測モデル123による予測値が収まるように前記設計変数(配合割合)が最適化される。そのため、予測モデル123による予測値と前記目標値との差が最小値となるように前記設計変数(配合割合)を最適化する手法に比べて、得られる最適解が限定的となりにくく、バリエーションのある複数の最適解が算出されやすくなる。また、最適解の算出時間を短縮することができ、効率よく確実に、最適解を算出することができる。
【0144】
また、表示処理部216によって前記最適配合情報及び前記最適予測値が表示部に表示されるため、ユーザは、ゴム状弾性体の試作品を製造することなく、所望する特定性能を発揮し得るゴム状弾性体の素材の配合割合を視覚的に容易に把握することができる。
【0145】
また、本実施形態では、仕様A~Cの前記最適予測値を含むレーダーチャート65が表示部23に表示されるため、ユーザは、各仕様の特定性能のバランスを容易に比較することができる。なお、本実施形態では、前記最適予測値を示すレーダーチャート65を表示部23に表示する例について説明したが、例えば、各仕様の前記最適配合割合を示すレーダーチャートを表示部23に表示してもよい。また、本実施形態では、レーダーチャートを表示することとしたが、表示部23に表示するグラフはレーダーチャートに限られず、散布図や折れ線部などの他のグラフであってもよい。
【0146】
また、本実施形態では、表示部23に前記目標値の許容範囲を示すレーダーチャート45が表示されるため、ユーザは、レーダーチャート45上で前記許容範囲の下限値と上限値とを容易に把握することができ、また、各特定性能ごとの前記下限値又は前記上限値のバランスを容易に把握することができる。更に、レーダーチャート45上で前記許容範囲を変更することができるため、ユーザは、前記目標値の許容範囲のバランスを意識しつつ、所望する特定性能の前記下限値又は前記上限値を容易に変更することできる。
【0147】
また、本実施形態では、配合割合について定められた前記制約条件を満たすように前記最適化処理が実行される。そのため、ゴム状弾性体の素材として採用することができない不適切素材やその配合割合が最適解として算出されることがなくなり、ユーザにとって不本意な最適解が算出されることを抑制できる。
【0148】
なお、上述の実施形態では、
図11に示す物性値画面236を表示部23に表示する例について説明したが、例えば、
図13に示す物性値画面237(出力画面の一例)が表示部23に表示されてもよい。
図13に示すように、物性値画面237は、仕様A~Cそれぞれの各特定性能を表示するための表示枠75と、表示枠75に表示させる特定性能を選択するための入力枠71、72と、を有する。表示枠75には、入力枠71で指定された特定性能を縦軸とし、入力枠72で指定された特定性能を横軸とした二次元座標系が示されており、当該座標系において、指定された各特定性能の対応関係である座標点が表示される。
図13に示す表示枠75には、前記仕様A~Cの各座標点が表示されている。
【0149】
入力枠71,72は、表示枠75に表示させる特定性能を選択するためのものである。入力枠71,72には、プルダウンキー71A,72Aが設けられており、各プルダウンキー71A,72Aから、表示枠75の前記座標系における縦軸に表示させる特定性能、横軸に表示させる特定性能を指定することができる。
【0150】
このような物性値画面237が表示部23に表示されるため、ユーザは、指定した特定性能の物性値を一見して容易に把握することができ、また、各仕様ごとの物性値を容易に比較することができる。
【0151】
なお、上述の実施形態では、解析装置10に性能予測部111、最適化処理部112、目標値設定部113が設けられ、情報端末20に表示処理部216が設けられた構成の解析システム100を例示したが、本発明はこの構成に限られない。例えば、情報端末20が備える構成が解析装置10に設けられていてよく、また、解析装置10が備える構成が情報端末20に設けられていてもよい。
【0152】
また、上述の実施形態では、性能予測部111と、最適化処理部112とによって、本発明の特定処理部が実現される例について説明したが、例えば、性能予測部111と最適化処理部112とが、一つの演算処理部或いは一つの電子回路として構成されていてもよい。
【0153】
また、上述の実施形態では、ステップS20~S25に示す最適化処理において、ゴム状弾性体の製造に要する各種素材の種類、及び各素材の配合割合を含む前記初期入力値を予測モデル123に入力して、各種素材の種類に対応する配合割合を最適化する処理例について説明したが、本発明はこのような処理例に限られない。例えば、予測モデル123に、各種素材の種類の情報を含まず配合割合のみを含む初期入力値を入力させて、素材の種類の最適解を特定する最適化処理が行われてもよい。或いは、予測モデル123に、配合割合を含まず各種素材の種類のみを含む初期入力値を入力させて、各種素材に対応する配合割合の最適解を特定する最適化処理が行われてもよい。
【0154】
また、上述の実施形態では、前記ポリマー組成物が未加硫ゴムであり、前記ゴム状弾性体が前記ポリマー組成物を加硫処理したものとして説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、本発明は、加硫していない状態の前記ポリマー組成物(つまり、未加硫ゴム)に対しても、当該ポリマー組成物を構成する素材の配合割合を最適化することが可能である。また、解析システム100による解析対象となる組成物は、複数種類の有機物を主成分とする有機組成物(有機物の合計含有量が10質量%を超える組成物など)であればよく、また、上述したポリマー組成物であればより好適であり、更には複数種類のゴム材料を主成分とするゴム組成物や、複数種類の合成樹脂からなる樹脂組成物などであってもよい。つまり、解析システム100は、これらの組成物における特定性能の物性値を解析するものとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0155】
100 :組成物解析システム
10 :解析装置
11 :制御部
20 :情報端末
21 :制御部
30 :データベース
30A :教師データ
30B :参照データ
110 :取得処理部
111 :性能予測部
112 :最適化処理部
113 :目標値設定部
121 :制御プログラム
123 :予測モデル
124 :最適化モデル
211 :第1入力受付部
212 :第2入力受付部
216 :表示処理部
221 :制御プログラム