(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101854
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】天びんの計量性能確認方法およびそのための天びん
(51)【国際特許分類】
G01G 19/417 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
G01G19/417
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216198
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】岡部 応和
(72)【発明者】
【氏名】織田 久則
(57)【要約】
【課題】ユーザの実使用に近い条件で、電子天びんの計量性能を確認する。
【解決手段】上記課題を解決するために、電子天びん(1)は、計量皿(2)と、風防(3)と、前記風防の扉(33,34)を自動で開閉する扉開閉機構(12)と、重量センサ(11)と、内蔵分銅(13)と、前記内蔵分銅の分銅加除機構(14)と、制御部(15)と、を備え、前記制御部は、前記扉開閉機構によって前記扉を開け、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を載せ、前記扉開閉機構によって前記扉を閉め、前記内蔵分銅の計量データを取得し、前記扉開閉機構によって前記扉を開け、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を降ろし、前記扉開閉機構によって前記扉を閉める、の一連の開閉動作を伴って、前記内蔵分銅の標準偏差を実使用標準偏差(SDreal)として測定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物を載置する計量皿と、
前記計量皿を囲う風防と、
前記風防の扉を自動で開閉する扉開閉機構と、
前記計量皿が受けた荷重が伝達される重量センサと、
前記重量センサに載せ降ろしされる内蔵分銅と、
前記内蔵分銅の分銅加除機構と、
前記扉開閉機構および前記分銅加除機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記扉開閉機構によって前記扉を開け、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を載せ、前記扉開閉機構によって前記扉を閉め、前記内蔵分銅の計量データを取得し、前記扉開閉機構によって前記扉を開け、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を降ろし、前記扉開閉機構によって前記扉を閉める、の一連の開閉動作を伴って、
前記内蔵分銅の標準偏差を実使用標準偏差として測定する
ことを特徴とする電子天びん。
【請求項2】
前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉の開閉により前記天びんの計量性能が下がっていることをユーザに通知する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
【請求項3】
前記制御部は、前記実使用標準偏差とスペック標準偏差との差分の値、または前記実使用標準偏差の2乗と前記スペック標準偏差の2乗の差の平方根の値を、前記電子天びんの内部設計を考慮して設定された評価閾値に応じてランク付けし、前記天びんの計量性能を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
【請求項4】
前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記被計量物を計量する時の、前記扉が開いている開時間を測定し、基本設定の開時間を経過すると警告を出すことを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
【請求項5】
前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉開閉機構を制御して、前記被計量物を計量する時の前記扉の開口幅の大きさを、基本設定の開口幅よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
【請求項6】
前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉開閉機構を制御して、前記被計量物を計量する時の前記扉を開け閉めする速度を、基本設定の開閉速度よりも速くすることを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
【請求項7】
前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉開閉機構を制御して、前記被計量物を計量する時の前記被計量物の計量データの取得時間を基本設定の取得時間よりも長くすることを特徴とする請求項1に記載の電子天びん。
【請求項8】
前記制御部は、前記実使用標準偏差をランク付けし、ランクが下がるほど、請求項4、5、6、または7に記載の制御を組み合わせて行うことを特徴とする電子天びん。
【請求項9】
被計量物を載置する計量皿と、前記計量皿を囲う風防と、前記風防の扉を自動で開閉する扉開閉機構と、前記計量皿が受けた荷重が伝達される重量センサと、前記重量センサに載せ降ろしされる内蔵分銅と、前記内蔵分銅の分銅加除機構と、前記扉開閉機構および前記分銅加除機構を制御する制御部とを備えた、電子天びんの計量性能確認方法であって、
前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を開くステップと、
前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を載せるステップと、
前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を閉じるステップと、
前記内蔵分銅の計量データを取得するステップと、
前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を開くステップと、
前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を降ろすステップと、
前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を閉じるステップと、
をこの順に繰り返し、
前記内蔵分銅の標準偏差を実使用標準偏差として測定するステップと、
を有することを特徴とする、電子天びんの計量性能確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天びんの計量性能を確認する方法およびそのための電子天びんに関する。
【背景技術】
【0002】
電子天びんが高精度の計量を行うためには、計量性能の確認として、計量値のばらつきの程度(繰り返し性)を知ることが重要である。このため、精度の高い電子天びんは、質量が既知の分銅を内蔵し(以下、内蔵分銅と称する)、定期的に、或いはユーザの操作時に、重量センサに対して内蔵分銅を自動で加除し、内蔵分銅の標準偏差を測定する自動校正機能を備えている(例えば特許文献1)。また、精度の高い電子天びんには、風防が備えられていることも多い(例えば特許文献2)。風防で計量皿を覆うことで、計量精度の低下の要因の一つである計量皿周囲の空気の流動を防ぐことができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4851882号
【特許文献2】特許5062880号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風防付き電子天びんの場合、上記した繰り返し性の確認、即ち内蔵分銅の標準偏差を求めるための内蔵分銅の加除動作は、風防を閉めた状態で行われる。しかしながら、実際の計量時には、ユーザは、風防の扉を開けて被計量物を載せ、扉を閉じて被計量物の計量データを測定し、扉を開けて被計量物を降ろす、という一連の流れで計量を行う。このため、風防を閉めた状態で測定された標準偏差は、ユーザが実際に行う計量とは異なる条件で得られたものであるから、実際の計量時には、どの程度の繰り返し性(計量性能)が出ているのか分からないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためのものであり、ユーザの実使用に近い条件で、計量性能を確認するための方法およびそのための電子天びんを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電子天びんは、被計量物を載置する計量皿と、前記計量皿を囲う風防と、前記風防の扉を自動で開閉する扉開閉機構と、前記計量皿が受けた荷重が伝達される重量センサと、前記重量センサに載せ降ろしされる内蔵分銅と、前記内蔵分銅の分銅加除機構と、前記扉開閉機構および前記分銅加除機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記扉開閉機構によって前記扉を開け、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を載せ、前記扉開閉機構によって前記扉を閉め、前記内蔵分銅の計量データを取得し、前記扉開閉機構によって前記扉を開け、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を降ろし、前記扉開閉機構によって前記扉を閉める、の一連の開閉動作を伴って、前記内蔵分銅の標準偏差を実使用標準偏差として測定することを特徴とする。
【0007】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉の開閉により前記天びんの計量性能が下がっていることをユーザに通知するのも好ましい。
【0008】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差とスペック標準偏差との差分の値、または前記実使用標準偏差の2乗と前記スペック標準偏差の2乗の差の平方根の値を、前記電子天びんの内部設計を考慮して設定された評価閾値に応じてランク付けし、前記天びんの計量性能を評価するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記被計量物を計量する時の、前記扉が開いている開時間を測定し、基本設定の開時間を経過すると警告を出すのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉開閉機構を制御して、前記被計量物を計量する時の前記扉の開口幅の大きさを、基本設定の開口幅よりも小さくするのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉開閉機構を制御して、前記被計量物を計量する時の前記扉を開け閉めする速度を、基本設定の開閉速度よりも速くするのも好ましい。
【0012】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差が基準よりも悪い場合、前記扉開閉機構を制御して、前記被計量物を計量する時の前記被計量物の計量データの取得時間を基本設定の取得時間よりも長くするのも好ましい。
【0013】
上記態様において、前記制御部は、前記実使用標準偏差をランク付けし、ランクが下がるほど、上記に記載の制御を組み合わせて行うのも好ましい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電子天びんの計量性能確認方法は、被計量物を載置する計量皿と、前記計量皿を囲う風防と、前記風防の扉を自動で開閉する扉開閉機構と、前記計量皿が受けた荷重が伝達される重量センサと、前記重量センサに載せ降ろしされる内蔵分銅と、前記内蔵分銅の分銅加除機構と、前記扉開閉機構および前記分銅加除機構を制御する制御部とを備えた、電子天びんの計量性能確認方法であって、前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を開くステップと、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を載せるステップと、前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を閉じるステップと、前記内蔵分銅の計量データを取得するステップと、前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を開くステップと、前記分銅加除機構によって前記内蔵分銅を降ろすステップと、前記扉開閉機構によって前記風防の前記扉を閉じるステップと、をこの順に繰り返し、前記内蔵分銅の標準偏差を実使用標準偏差として測定するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザの実使用に近い条件で、電子天びんの計量性能を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電子天びんの要素ブロック図である。
【
図3】同電子天びんにおける分銅加除機構の構成例である。
【
図4】同電子天びんにおける扉開閉機構の構成例である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る計量性能確認のフロー図である。
【
図8】本発明の実施の形態の変形例1に係る電子天びんの要素ブロック図である。
【
図9】本発明の実施の形態の変形例2に係る電子天びんの要素ブロック図である。
【
図10】本発明の実施の形態の変形例3に係る電子天びんの要素ブロック図である。
【
図11】本発明の実施の形態の変形例4に係る電子天びんの要素ブロック図である。
【
図12】本発明の実施の形態の変形例5に係る電子天びんの要素ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき説明する。
【0018】
(電子天びんの構成)
図1は本発明の実施の形態に係る電子天びんの要素ブロック図である。
図2は、
図1の電子天びんの装置構成の一例であり、同構成例の右方斜視図である。
図1に示すように、電子天びん1(以下、単に天びん1と称する)は、計量皿2と、風防3と、天びん本体4と、操作部5と、表示部6と、タイマ8と、重量センサ11と、扉開閉機構12と、内蔵分銅13と、分銅加除機構14と、制御部15と、を備える。
図2は上記天びん1を体現する一つの構成例であるが、以下、
図2を用いて上記要素を説明する。
【0019】
天びん本体4は、重量センサ11,扉開閉機構12,内蔵分銅13,分銅加除機構14,制御部15,タイマ8を内包するケースであり、計量皿2は、天びん本体4の上部中央に配置されている。
【0020】
操作部5および表示部6は、コントロールパネル7に備えられており、コントロールパネル7は天びん本体4とケーブル接続されている。操作部5は天びん1の操作に必要なキースイッチを有しており、表示部6の画面には、計量に関するメニューおよび結果、さらに、後述する計量性能確認に関するメニューおよび結果が表示される。但し、コントロールパネル7と天びん本体4は無線接続されていてもよい。また、操作部5および表示部6は天びん本体4に備えられていてもよい。また、操作部5は、後述する扉開閉機構12の自動開閉のトリガーとなる扉開閉センサ(またはボタン)51を備えているのも好ましい。
【0021】
風防3は、無底箱型で、天びん本体4に対して着脱可能に構成されている。着脱機構には従来周知の構成、例えば特許文献として開示した特許5062880号の構成等が使用可能である。但し、風防3は天びん本体4に一体不可分に構成されていてもよい。風防3は、前に正面板31、後ろに背面ケース32、左右に開閉扉(以下、左側の扉を左ドア33、右側の扉を右ドア34と称する)、上に開閉扉(以下、上ドア35と称する)を備える。正面板31,背面ケース32,左ドア33,右ドア34,および上ドア35によって、計量皿2の全方位を囲う計量室が形成される。なお、本明細書における前後左右上下は、それぞれ
図2に示す矢印Fr-Re(前-後)、Le-Ri(左-右)、Up-Lo(上-下)が指す方向とする。
【0022】
正面板31,左ドア33,右ドア34,および上ドア35は、内部の状態が観察可能なように透明なガラス又は樹脂で構成される。背面ケース32は、例えば、ガラス、金属又はプラスチックで構成される。上ドア35,左ドア33,および右ドア34には、それぞれ、扉のスライドを補助する取手が設けられている。上ドア35は手動で前後に開閉可能であり、左ドア33および右ドア34は後述する扉開閉機構12によって自動で前後に開閉可能である。
【0023】
重量センサ11には、電磁平衡式、歪ゲージ式、または静電容量式などが用いられる。重量センサ11には、計量皿2に載置された被計量物の荷重が、ビーム等の荷重伝達機構(図示せず)を介して伝達される。重量センサ11が検出した荷重は、計量データとして制御部15に出力される。重量センサ11には、内蔵分銅13も負荷され、内蔵分銅13の計量データも制御部15に出力される。
【0024】
タイマ8は、ハードウェアタイマとソフトウェアタイマのカウント値を演算することにより、天びん1の現在時刻(システムタイム)を取得する。但し、タイマ8は制御部15の内蔵時計であってもよい。
【0025】
制御部15は、例えばCPUおよびメモリ等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。制御部15は、重量センサ11が検出した計量データから計量値を算出する計量部151と、扉開閉機構12を制御する扉開閉制御部152と、分銅加除機構14を制御する分銅加除制御部153と、そして計量性能確認部154を備える。これらの機能部151~154は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。
【0026】
計量部151は、重量センサ11が検出したアナログ信号をデジタル信号に変換して、被計量物の計量データを取得する。計量部151は、被計量物が計量皿2上に載せられた場合、被計量物の計量データが安定すると見込まれる所定の時間(以降、「取得時間」と称する。取得時間は予め設定され、制御部15のメモリに記憶されている)だけ待ち、計量データから、被計量物が計量皿2上に無い状態での計量データを差し引いて、計量値を算出する。扉開閉制御部152,分銅加除制御部153,および計量性能確認部154の機能の詳細については、後述する。
【0027】
内蔵分銅13は、天びんの校正用に、天びん本体4の中に配置されている、質量が既知のおもりである。内蔵分銅13の既知のおもさは、予め制御部15のメモリに記憶されている。
【0028】
内蔵分銅13は、分銅加除機構14によって、重量センサ11に対し載せ降ろしされる。
図3は、分銅加除機構14の構成例であり、同構成例の縦断面である。分銅加除機構14は、内蔵分銅13と、分銅ホルダー141と、バネ142と、荷重受け部143と、空気袋144と、袋加圧ポンプ145と、袋用一方電磁弁146を備える。内蔵分銅13は分銅ホルダー141に保持されており、分銅ホルダー141はバネ142により上方向に付勢されている。空気袋144は分銅ホルダー141を下方向に押し下げる位置に配置されており、袋加圧ポンプ145と袋用一方電磁弁146は空気袋144に接続されている。荷重受け部143は、計量皿2とは異なる荷重伝達機構(図示略)を介して、重量センサ11に接続されている。
【0029】
分銅加除機構14は、制御部15の分銅加除制御部153により制御される。分銅加除制御部153は、内蔵分銅13を重量センサ11に載せる時は、袋加圧ポンプ145を作動して、空気袋144を膨らませ、バネ142の付勢力に抗して分銅ホルダー141を押し下げ、内蔵分銅13を荷重受け部143に負荷し、内蔵分銅13の全荷重を重量センサ11に伝達する。一方、分銅加除制御部153は、内蔵分銅13を重量センサ11から降ろす時は、袋用一方電磁弁146を大気に開放し、空気袋144を萎ませ、バネ142の付勢力によって分銅ホルダー141を押し上げ、内蔵分銅13の荷重受け部143への負荷を解除する。
【0030】
図4は扉開閉機構12の構成例であり、同構成例のブロック図である。扉開閉機構12は、左ドア33と右ドア34にそれぞれ設けられ、扉開閉制御部152により独立に制御される。以下、右ドア34を用いて説明する。
【0031】
右ドア34に対し、扉開閉機構12は、第1加圧ポンプ121A、第2加圧ポンプ121B、第1圧力センサ122A、第2圧力センサ122B、第1一方電磁弁123A、第2一方電磁弁123B、およびエアシリンダ124を備える。第1加圧ポンプ121Aおよび第2加圧ポンプ121Bはエアポンプである。第1一方電磁弁123Aおよび第2一方電磁弁123Bは、弁の出口側は大気に開放されており、弁の開閉によりエアの流止を制御する。第1圧力センサ122Aは第1加圧ポンプ121Aから吐出されたエアの圧力を、第2圧力センサ122Bは、第2加圧ポンプ121Bから吐出されたエアの圧力を、それぞれ監視する。第1圧力センサ122Aおよび第2圧力センサ122Bは、それぞれエアシリンダ124に接続され、エアシリンダ124内のエアの圧力を監視する。エアシリンダ124は、ピストンロッド125とともに右ドア34の上端部に収容されている(
図2)。その他の要素は、背面ケース32に収容されている。そして、エアシリンダ124の後方には、右ドア34を前進させるための第1加圧ポンプ121Aが接続され、エアシリンダ124の前方には、右ドア34を後進させるための第2加圧ポンプ121Bが接続されている。
【0032】
扉開閉機構12は、制御部15の扉開閉制御部152により制御される。扉開閉制御部152は、右ドア34を開ける時(ドアを後方へ移動する時)は、第1加圧ポンプ121Aを作動せずに第1一方電磁弁123Aを開け、第2一方電磁弁123Bを閉じて第2加圧ポンプ121Bを加圧し、第2加圧ポンプ121Bのエア圧力で右ドア34を後進させる。一方、扉開閉制御部152は、右ドア34を閉じる時(ドアを前方へ移動する時)は、第2加圧ポンプ121Bを作動せずに第2一方電磁弁123Bを開け、第1一方電磁弁123Aを閉じて第1加圧ポンプ121Aを加圧し、第1加圧ポンプ121Aのエア圧力で右ドア34を前進させる。扉開閉制御部152は、右ドア34が開ききった時、閉じきった時は、それぞれ、圧力センサ122B,122Aが圧力の急激な上昇を検知するので、加圧を停止し、弁を開きエアを大気に開放して、右ドア34の移動を停止する。
【0033】
分銅加除機構14に関し、
図3の構成は特許文献として開示した特許4851882号に詳細が記載されている。但し、分銅加除機構14は、モータとカム機構によって、重量センサ11に接続される荷重受け部に対して内蔵分銅13を載せ降ろしする構成等であってもよい。扉開閉機構12に関し、
図4の構成は国際出願番号PCT/JP2020/011748に詳細が記載されている。但し、扉開閉機構12は、モータとラックピニオンまたは送りねじでドアを移動させる構成等であってもよい。
【0034】
(計量性能確認フロー)
次に、上記の天びん1を使用した計量性能確認方法について説明する。
図5は本発明の実施の形態に係る計量性能確認のフロー図である。
【0035】
まずステップS1で、例えば、ユーザが操作部5から計量性能確認メニューを開き、開始を選択すると、これをトリガーとして、計量性能確認が開始される。或いは、計量の開始前に、例えばユーザが扉を開けようと扉開閉センサ51を操作した時に、計量性能確認が自動で開始されるようにしてもよい。
【0036】
ステップS2に移行すると、計量部151が機能して、取得時間経過後に、重量センサ11に内蔵分銅13も被計量物も負荷されていない状態での計量データ(以降、「ゼロ計量データ」と称する)を取得する。
【0037】
次にステップS3に移行して、扉開閉制御部152が機能して、扉開閉機構12を制御し、左右どちらか一方の扉(ユーザによって設定されるものとする。以下、右ドア34で説明する)を開ける。この時、扉開閉制御部152は、右ドア34を開ききる(
図2の破線の位置)。右ドア34を開けることにより、計量室の環境は、計量室外の環境の影響を受ける。
【0038】
次にステップS4に移行して、分銅加除制御部153が機能して、分銅加除機構14を制御し、内蔵分銅13を荷重受け部143に載せる。
【0039】
次にステップS5に移行して、扉開閉制御部152が扉開閉機構12を制御して、右ドア34を閉める(
図2の実線の位置)。
【0040】
次にステップS6に移行して、計量部151が、取得時間経過後に、内蔵分銅13の計量データ(以降、「フル計量データ」と称する)を取得する。
【0041】
次にステップS7に移行して、扉開閉制御部152が扉開閉機構12を制御して、右ドア34を開ける(開ききる)。右ドア34を開けることにより、計量室の環境は、再び計量室外の環境の影響を受ける。
【0042】
次にステップS8に移行して、分銅加除制御部153が分銅加除機構14を制御して、内蔵分銅13を荷重受け部143から降ろす。
【0043】
次にステップS9に移行して、扉開閉制御部152が扉開閉機構12を制御して、右ドア34を閉める。
【0044】
次にステップS10に移行して、計量性能確認部154が機能して、内蔵分銅13の測定回数をカウントアップする。
【0045】
次にステップS11に移行して、計量性能確認部154は、内蔵分銅13の測定回数が予め設定された回数(n回)に到達したか判定する。到達していない場合(No)は、ステップS2に戻る。到達した場合(Yes)は、ステップS12に移行する。なお、nは5回~10回が好適である。
【0046】
ステップS12に移行すると、計量性能確認部154は、各測定のスパン値(フル計量データとゼロ計量データの差)を算出する。
【0047】
次にステップS13に移行して、計量性能確認部154は、スパン値の標準偏差(繰り返し性)を算出する。ここで、本ステップS13で得た標準偏差は、ステップS2~S9の通り、内蔵分銅13の載せ降ろしの際に扉を開閉して測定した、実際に被計量物を計量する時に行う手順を経て得た標準偏差(繰り返し性)である。以降、本ステップS13の標準偏差を、実使用標準偏差SDreal (standard deviation of real)と称する。
【0048】
次にステップS14に移行して、計量性能確認部154は、実使用標準偏差SDrealを使用して、天びん1の計量性能を確認する。計量性能の確認は、実使用標準偏差SDrealを、天びん1のカタログで公称する繰り返し性(以降、スペック標準偏差SDspecと称する)と比較して、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecより大きいかを確認する。SDrealがSDspecより大きい場合、実際の計量においても、カタログから期待される繰り返し性が出ない可能性がある。
【0049】
次にステップS15に移行して、計量性能確認部154は、ステップS14の計量性能確認の結果を、表示部6に表示する。計量性能確認の結果として、表示部6には、少なくとも、実使用標準偏差SDrealとスペック標準偏差SDspecの数値が表示される。
【0050】
また、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecよりも大きい場合(請求項における「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」である)は、周囲環境判断部154は、数値とともに、扉開閉により天びん1の計量性能が下がっていることをユーザに通知するコメント、例えば「風による性能への影響が考えられます」などを表示するのが好ましい。但し、「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」を決定するための「基準」は、スペック標準偏差SDspecだけでなく、平均偏差やドリフト量を採用してもよい。
【0051】
(計量性能評価)
また、ステップS14において、計量性能確認部154は、天びん1の計量性能の確認とともに、天びん1の固有の内部設計を考慮して評価閾値を設定し、計量性能の評価も行うのが好ましい。以下に、計量性能評価の具体例を示す。但し、以下は例であって、評価閾値の値や対応するランクは、天びん固有の内部設計(最小表示やひょう量だけではなく、例えば、天びんの重量センサの種類、本体ケースの内部構造や気密性等)を総合的に考慮して設計されるものとする。また、以下の例で、評価閾値の設定に用いられている表示カウント1dは、単位を1g(グラム)からより小さい単位に変換するために用いたものであり、1g(グラム)の単位のまま設定されてもよいし、また、その他の単位が用いられるのを拒むものではない。
【0052】
-例1-
(1)例として、天びんの表示カウント1dを使用して評価閾値を設定する(天びんの表示カウントとは表示部に表示される計量値の最小桁のことであり、最小表示が1μgの天びんでは1d=0.000001g、最小表示が0.1mgの天びんでは1dは0.0001gである)。
(2)天びん1の固有の内部設計として、最小表示が1μgであったとすると、さらに、天びん1のひょう量を考慮して、評価閾値を設定する。例えば、天びん1のひょう量が20gであればランク「A」の評価閾値を2dと設定し、天びん1のひょう量が5gであればランク「A」の評価閾値はより厳しく1dに設定する。
(3)天びん1の評価閾値が下記のように設定された場合で、
評価A:SDreal-SDspecが1d以下
評価B:SDreal-SDspecが1d超かつ3d以下
評価C:SDreal-SDspecが3d超
天びん1のスペック標準偏差SDspec=1.0μgで、計量性能確認により実使用標準偏差SDreal=3.0μgが得られた場合は、
3.0μg-1.0μg=2.0μg=2d
が得られるため、「B」評価となる。
【0053】
-例2-
スペック標準偏差SDspecを天びん1の性能と仮定すると、扉の開閉を伴って得た実使用標準偏差SDrealは、スペック標準偏差SDspecと扉開閉の影響分の標準偏差SDoc(open-close)の合成と考えることができる。分散の加法性から、SDrealの2乗は、SDspecの2乗とSDocの2乗の和として表すことができる。このため、扉開閉の影響分の標準偏差SDocは、数式1で求めることができる。
【0054】
【数1】
この扉開閉の影響分の標準偏差SDocに対して、天びん固有の内部設計を考慮して評価閾値を設定し、天びん1の計量性能を評価する。
(1)例として、天びんの表示カウント1dを使用して評価閾値を設定する。
(2)天びん1の固有の内部設計を考慮して、ランク「A」の評価閾値をより厳しく0.5dに設定する。
(3)天びん1の評価閾値が下記のように設定された場合で、
評価A:SDocが0.5d以下
評価B:SDocが0.5d超かつ1.0d以下
評価C:SDocが1.0d超
天びん1で、標準偏差SDoc=1.92μgが得られた場合は、「C」評価となる。
【0055】
ステップS14で評価が行われた場合、ステップS15で、計量性能確認部154は、実使用標準偏差SDrealの数値と、評価レベルと、レベルに応じたコメントを、表示部6に表示する。一例として、表示部6には、A評価の場合「性能に問題はありません」、B評価の場合「性能がやや悪化しています」、C評価の場合「性能が悪化しています」が表示される。
図6は評価結果の表示例である。
【0056】
なお、計量性能確認および評価の結果は、RS232Cケーブル,USB,またはBLE(ブルートゥースローエナジー。ブルートゥースは登録商標)等により、天びん1からプリンタやパーソナルコンピュータ等の外部装置に出力することも可能とする。
図7はプリンタへの評価結果の出力例である。
【0057】
(効果)
精度の高い電子天びんであるほど、さらに風防があるほど、風防の扉が開いた時に、計量室に流入する空気が計量に影響を与えることが知られている。このため、計量性能の確認として、風防を閉めた状態で測定された繰り返し性は、扉が開閉される計量時の繰り返し性とは異なる可能性が高い。実際に、計量前に繰り返し性を確かめたにも関わらず、天びんが保証している計量性能が出ないという報告が多々あった。
【0058】
これに対し、本形態の天びん1およびその計量性能確認方法によれば、風防3を閉めた状態では無く、ユーザが実際に被計量物を計量する際に行う条件と同じ、すなわち、風防3の扉を開けて、内蔵分銅13を載せ、扉を閉じ、計量データを測定し、扉を開け、内蔵分銅13を降ろす、という条件で、繰り返し性(実使用標準偏差SDreal)を測定する。このため、計量時の条件(実使用の条件)下で、どの程度の繰り返し性(計量性能)が出るのかが分かる。
【0059】
実使用の条件での繰り返し性(実使用標準偏差SDreal)が確認できれば、ユーザ自身がその場で計量続行の可否を判断することができる。さらに、計量性能が実使用標準偏差SDrealの値に応じて評価という形で示されれば、ユーザはより分かりやすく計量続行の可否を判断することができる。
【0060】
次に、実施の形態に係る天びん1の好適な変形例を示す。実施の形態と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0061】
(変形例1)
図8は本発明の実施の形態の変形例1に係る電子天びん1A(以下、単に天びん1Aと称する)の要素ブロック図である。天びん1Aは、実施の形態の構成(
図1)に、さらに、警告部9と、計量性能改善部155を備える。警告部9はブザーや点灯ランプ等である。計量性能改善部155は、制御部15に電子回路により構成される。
【0062】
天びん1Aは、実施の形態と同様、計量性能確認フロー(
図5)を行う。そして、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecより大きかった場合(請求項における「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」である)、計量改善部155が機能して、計量性能確認後の計量において、次の変更を適用する。但し、「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」を決定するための「基準」は、スペック標準偏差SDspecだけでなく、平均偏差やドリフト量を採用してもよい。
【0063】
計量性能改善部155は、ユーザが計量を開始し、扉開閉センサ51を介して扉(右ドア34で説明する)を自動で開けた時、右ドア34の開動作終了時からの経過時間を、タイマ8を使用して測定する。計量性能改善部155は、基本設定の開時間(「基本設定の開時間」は、予め制御部15のメモリに記憶されている)を経過したことを検出すると、警告部8からブザー音または光を発して、扉を開けすぎていることをユーザに警告する。
【0064】
実使用標準偏差SDrealが基準よりも悪い場合、これは即ち、計量室の環境が計量室外から悪環境の影響を受けている状態にある。このため、扉を出来る限り開放しないようにして計量を行うことが、計量性能の改善につながる。変形例1では、ユーザが扉を開けている時間が長いと判断した時、警告を出し、できるだけ早く扉を閉めるよう促すことで、計量性能の改善に努める。
【0065】
(変形例2)
図9は本発明の実施の形態の変形例2に係る電子天びん1B(以下、単に天びん1Bと称する)の要素ブロック図である。天びん1Bは、実施の形態の構成(
図1)に、さらに、計量性能改善部155を備える。
【0066】
天びん1Bは、実施の形態と同様、計量性能確認フロー(
図5)を行う。そして、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecより大きかった場合(請求項における「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」である)、計量改善部155が機能して、計量性能確認後の計量において、次の変更を適用する。
【0067】
計量性能改善部155は、ユーザが計量を開始し、扉開閉センサ51を介して扉(右ドア34で説明する)を自動で開けた時、右ドア34を開ききることをせず、開口幅の大きさが、基本設定の開口幅(扉が全開の状態の開口幅。
図2の一点鎖線で示す符号DB)よりも小さくなるよう制御する。具体的に、計量性能改善部155は、
図4の扉開閉機構12に対し、右ドア34を開ける時の第2加圧ポンプ121Bへのポンプ駆動時間Aを短くすることで、右ドア34の開口幅を小さくする。または、風防3の背面ケース32に複数の反射フォトセンサを設け、計量性能改善部155は、右ドア34の通過の有無を検出することで、開口幅を制御してもよい。
【0068】
実使用標準偏差SDrealが基準よりも悪い場合、これは即ち、計量室の環境が計量室外から悪環境の影響を受けている状態にある。このため、扉を出来る限り開放しないようにして計量を行うことが、計量性能の改善につながる。変形例2では、扉の開口幅を狭め、計量室外から計量室内への空気の流入をできるだけ阻止することで、計量性能の改善に努める。
【0069】
(変形例3)
図10は本発明の実施の形態の変形例3に係る電子天びん1C(以下、単に天びん1Cと称する)の要素ブロック図である。天びん1Cは、実施の形態の構成(
図1)に、さらに、計量性能改善部155を備える。
【0070】
天びん1Cは、実施の形態と同様、計量性能確認フロー(
図5)を行う。そして、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecより大きかった場合(請求項における「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」である)、計量改善部155が機能して、計量性能確認後の計量において、次の変更を適用する。
【0071】
計量性能改善部155は、ユーザが計量を開始し、被計量物を計量皿2に載せるために扉開閉センサ51を介して扉(右ドア34で説明する)を自動で開けた時、右ドア34の扉開速度を、基本設定の開閉速度(「基本設定の開閉速度」は、予め制御部15のメモリに記憶されている)よりも速くする。具体的に、計量性能改善部155は、
図4の扉開閉機構12に対し右ドア34を開ける時の第2加圧ポンプ121Bへのポンプ駆動信号のドューティー比t/T(Tは制御周期、tは駆動時間である)を基本設定よりも大きくすることで、右ドア34の扉開速度を速くする。同様に、ユーザが被計量物を計量皿2に載せ終わり、扉開閉センサ51を介して右ドア34を自動で閉めた時、右ドア34の扉閉速度を、基本設定の開閉速度よりも速くする。
【0072】
実使用標準偏差SDrealが基準よりも悪い場合、これは即ち、計量室の環境が計量室外から悪環境の影響を受けている状態にある。このため、扉を出来る限り開放しないようにして計量を行うことが、計量性能の改善につながる。変形例3では、扉の開閉速度を速め、計量室外から計量室内への空気の流入をできるだけ阻止することで、計量性能の改善に努める。
【0073】
(変形例4)
図11は本発明の実施の形態の変形例4に係る電子天びん1D(以下、単に天びん1Dと称する)の要素ブロック図である。天びん1Dは、実施の形態の構成(
図1)に、さらに、計量性能改善部155を備える。
【0074】
天びん1Dは、実施の形態と同様、計量性能確認フロー(
図5)を行う。そして、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecより大きかった場合(請求項における「実使用標準偏差が基準よりも悪い場合」である)、計量改善部155が機能して、計量性能確認後の計量において、次の変更を適用する。
【0075】
計量性能改善部155は、ユーザが計量を開始し、被計量物を計量皿2に載せた時、被計量物の信号が安定するのを待つ「取得時間」を、基本設定(予め設定され制御部15のメモリに記憶されている)の取得時間よりも長くして、計量データを取る。
【0076】
実使用標準偏差SDrealが基準よりも悪い場合、これは即ち、計量室の環境が計量室外から悪環境の影響を受けている状態にある。このため、基本設定の取得時間内では信号がバラつき、誤差に繋がる信号が多く含まれる可能性がある。変形例4では、計量データの取得時間を長くし、計量室外からの影響を時間的に緩和させた上で、計量値を算出することで、計量性能の改善に努める。
【0077】
(変形例5)
本発明の実施の形態の変形例5に係る電子天びん1E(以下、単に天びん1Eと称する)の計量性能改善部155は、変形例1~4に記載した計量性能改善の制御を、少なくとも二つ以上組み合わせて備える。例として、天びん1Eは、変形例1~4に記載した計量性能改善の制御を全て行うことができるものとする。
図12は、この場合における、天びん1Eの要素ブロック図である。
【0078】
天びん1Eの計量性能確認部154は、天びん1Eのひょう量または最小表示の表示カウントを基にして、計量性能を評価し、ランク付けする。実施の形態の説明で記載した例に従って、計量性能確認部154は、評価をA,B,Cでランク付けする(この順にランクが下がる)。
【0079】
計量性能改善部155は、ランクを参照し、ランクが下がるほど、変形例1~4に記載した計量性能改善のための制御を組み合わせる。例えば、A評価(性能に問題が無い)の場合は、変形例1の制御(扉を開けすぎていることをユーザに警告する)を行い、B評価(性能がやや悪化している)の場合は、変形例1に加えて変形例2の制御(扉の開口幅を狭める)を行い、C評価(性能が悪化している)の場合は、変形例1と変形例2に加えて変形例3(扉の開閉速度を速める)と変形例4(取得時間を長くする)の制御を行う。
【0080】
変形例5では、実使用標準偏差SDrealがスペック標準偏差SDspecより大きくなるほど、計量性能の改善のための制御を増やすことで、計量性能の改善に努める。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることは可能であり、そのような形態は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B,1C,1D 電子天びん
2 計量皿
3 風防
33 左ドア(扉)
34 右ドア(扉)
4 天びん本体
5 操作部
6 表示部
8 タイマ
9 警告部
11 重量センサ
12 扉開閉機構
13 内蔵分銅
14 分銅加除機構
15 制御部
151 計量部
152 扉開閉制御部
153 分銅加除制御部
154 計量性能確認部
155 計量性能改善部