(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101872
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B23Q11/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216226
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】百々 晋平
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB15
(57)【要約】
【課題】ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタを効率良くクリーニングする。
【解決手段】切削加工機は、ディスク状の被切削物1を保持する平板状のアダプタ5を保持する保持部材51と、アダプタ5をクリーニングするクリーニング装置40と、を備える。保持部材51は、アダプタ5の第1面5Uを第1方向に向け、第1面5Uの裏面であるアダプタ5の第2面5Dを第1方向の逆方向である第2方向に向ける。クリーニング装置40は、第1ノズル41Nと、第2ノズル42Nと、を備える。第1ノズル41Nは、保持部材51によって保持されたアダプタ5よりも第1方向に設けられ、第1面5Uに圧縮エアを噴射する。第2ノズル42Nは、保持部材51によって保持されたアダプタ5よりも第2方向に設けられ、第2面5Dに圧縮エアを噴射する。第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、第1方向視における位置がずれている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタを保持する保持部材と、
前記保持部材によって保持された前記アダプタをクリーニングするクリーニング装置と、を備え、
前記保持部材は、前記アダプタの第1面を第1方向に向け、前記第1面の裏面である前記アダプタの第2面を前記第1方向の逆方向である第2方向に向けるように前記アダプタを保持し、
前記クリーニング装置は、
前記保持部材によって保持された前記アダプタよりも前記第1方向に設けられ、前記アダプタの前記第1面に圧縮エアを噴射する第1ノズルと、
前記保持部材によって保持された前記アダプタよりも前記第2方向に設けられ、前記アダプタの前記第2面に圧縮エアを噴射する第2ノズルと、を備え、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、前記第1方向視における位置がずれるように設けられている、
切削加工機。
【請求項2】
前記クリーニング装置は、
圧縮エアが供給されるエア供給口を有し、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルに接続されたエア流路と、
前記エア流路に設けられ、前記エア供給口と前記第1ノズルまたは前記第2ノズルとを択一的に連通させる流路切替部材と、を備えている、
請求項1に記載の切削加工機。
【請求項3】
前記第2ノズルから圧縮エアを噴射させた後に前記第1ノズルから圧縮エアを噴射させる制御装置をさらに備え、
前記第1方向は、上方であり、
前記第2方向は、下方である、
請求項1または2に記載の切削加工機。
【請求項4】
前記第1方向に略直交する所定の移動方向に前記アダプタを移動させるアダプタ移動装置をさらに備え、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、前記アダプタの移動方向の位置がずれている、
請求項1~3のいずれか一つに記載の切削加工機。
【請求項5】
前記クリーニング装置は、
前記第1方向に延びる回動軸と、
前記回動軸周りに回動するように構成され、前記第1ノズルが設けられた第1回動アームと、
前記回動軸周りに回動するように構成され、前記第2ノズルが設けられた第2回動アームと、
前記第1回動アームおよび前記第2回動アームを前記回動軸周りに回動させるアクチュエータと、を備え、
前記アダプタ移動装置と前記アクチュエータとを制御して、前記アダプタを前記移動方向に移動させながら前記第1回動アームおよび前記第2回動アームを回動させる制御装置をさらに備えている、
請求項4に記載の切削加工機。
【請求項6】
前記第1回動アームと前記第2回動アームとは、前記第1方向視において重なるように設けられ、同期して回動する、
請求項5に記載の切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物を切削加工することによって、例えば歯科用成形品などを作製する切削加工機が従来から知られている。切削加工機の中には、ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタが用いられるものが存在する。例えば特許文献1には、ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタと、上記アダプタを把持する把持装置を備えた切削加工機と、が開示されている。
【0003】
上記したようなアダプタには、被切削物の切削により生じた切削粉が付着する。そのため、アダプタをクリーニングする必要がある。例えば特許文献2には、被切削物の切削箇所にエアを吹き付けるエアブロー装置を備えた切削加工機が開示されている。かかるエアブロー装置によれば、加工室内において把持されたアダプタおよびアダプタに保持された被切削物にエアを吹き付けることにより、アダプタおよび被切削物をクリーニングすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-124862号公報
【特許文献2】特開2013-121466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタをより効率良くクリーニングすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する切削加工機は、ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタを保持する保持部材と、前記保持部材によって保持された前記アダプタをクリーニングするクリーニング装置と、を備えている。前記保持部材は、前記アダプタの第1面を第1方向に向け、前記第1面の裏面である前記アダプタの第2面を前記第1方向の逆方向である第2方向に向けるように前記アダプタを保持する。前記クリーニング装置は、第1ノズルと、第2ノズルと、を備えている。前記第1ノズルは、前記保持部材によって保持された前記アダプタよりも前記第1方向に設けられ、前記アダプタの前記第1面に圧縮エアを噴射する。前記第2ノズルは、前記保持部材によって保持された前記アダプタよりも前記第2方向に設けられ、前記アダプタの前記第2面に圧縮エアを噴射する。前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、前記第1方向視における位置がずれるように設けられている。
【0007】
上記切削加工機によれば、ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタの両面をクリーニングすることができる。また、クリーニング装置の故障のおそれを低減することができる。これにより、ディスク状の被切削物を保持する平板状のアダプタを効率良くクリーニングできる。本願発明者の知見によれば、第1ノズルと第2ノズルとを対面させると、一方のノズルからの圧縮エアによって吹き飛ばされた粉塵が他方のノズルに入り、クリーニング装置が故障するおそれがある。上記切削加工機によれば、第1方向視における第1ノズルの位置と第2ノズルの位置とがずれているため、一方のノズルからの圧縮エアによって吹き飛ばされた粉塵が他方のノズルに入るおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
【
図3】ケース等を取り外した状態の切削加工機を示す斜視図である。
【
図6】後方側から見たクリーニング室の縦断面図である。
【
図7】シャッタが最も閉じられた状態のクリーニング室を示す平面図である。
【
図8】アダプタ移動装置を筐体の内部空間側から見た斜視図である。
【
図9】第1回動アームおよび第2回動アームが回動中のクリーニング室を示す平面図である。
【
図10】筐体内の排気と圧縮エアの供給とに係る系統図である。
【
図12A】被切削物の切削からクリーニング室のクリーニングまでのプロセスを示すフローチャートの前半である。
【
図12B】被切削物の切削からクリーニング室のクリーニングまでのプロセスを示すフローチャートの後半である。
【
図13】保持部が受け渡し位置に位置しているときの保持部と扉とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0010】
[切削加工機の構成]
図1は、一実施形態に係る切削加工機10の斜視図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0011】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタに保持されたディスク状の被切削物を切削加工する切削加工機である。
図2は、被切削物1およびアダプタ5の平面図である。切削加工機10は、ここでは、被切削物1を切削して、歯科用成形品、例えば、クラウン、ブリッジ、コーピング、インレー、アンレー、ベニア、カスタムアバットメント等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床等を作製する装置である。
【0012】
被切削物1は、例えば、PMMA、PEEK、ガラス繊維強化樹脂、ハイブリッドレジン等のレジンや、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、コバルトクロムシンターメタル等の金属材料、ワックス、石膏等で構成されている。被切削物1の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。被切削物1の形状は、ここではディスク状(円板状)である。ただし、被切削物1は、他の形状、例えばブロック状(例えば立方体状や直方体状)等であってもよい。
【0013】
アダプタ5は、ディスク状の被切削物1を保持する。アダプタ5は、ここでは、被切削物1に対応する略円形の挿入孔5aが中央部に形成された平板状のアダプタである。被切削物1は、挿入孔5aに挿入されることにより、アダプタ5に保持される。被切削物1は、アダプタ5に保持された状態で切削加工機10に収容され、加工される。
【0014】
図1に示すように、切削加工機10は、箱状に形成されている。
図3は、ケースやフロントカバー等の部品を取り外した状態の切削加工機10を示す斜視図である。
図3に示すように、切削加工機10は、加工室11と、収容室13と、クリーニング室20とを備えている。加工室11は、被切削物1を切削加工するエリアである。加工室11には、アダプタ5に保持された状態の被切削物1を切削する切削装置12が設けられている。収容室13は、複数のアダプタ5を収容可能に構成されている。収容室13は、複数の被切削物1を連続的に加工するために、アダプタ5に保持された被切削物1を収容しておくエリアである。詳しくは後述するが、切削加工される被切削物1は、収容室13から加工室11に搬送され、切削加工終了後、クリーニング室20を経由して収容室13に戻される。
図3に示すように、切削加工機10は、加工室11、クリーニング室20、および収容室13にアダプタ5を搬送する搬送装置15を備えている。クリーニング室20には、アダプタ5、ここでは切削加工後の被切削物1を保持した状態のアダプタ5をクリーニングするクリーニング装置40(
図5参照)と、アダプタ5を左右方向に動かすアダプタ移動装置50(
図8参照)とが設けられている。
【0015】
切削装置12としては、ディスク状の被切削物を切削加工する種々の公知の切削装置が好適に利用できる。詳しい図示および説明は省略するが、切削装置12は、例えば、被切削物1を保持したアダプタ5を把持する把持装置と、把持装置を回転させて被切削物1の向きを変える回転装置と、切削ツールのストッカーと、切削ツールを把持して回転させるスピンドルと、回転装置およびスピンドルのうちの少なくとも一方を左右方向、前後方向、および上下方向に移動させる移動装置と、を備えていてもよい。切削装置12の構成は特に限定されない。
【0016】
図3に示すように、収容室13は、加工室11の側方、ここでは左方に設けられている。収容室13は、上下方向に延びている。収容室13には、アダプタ5を収容するアダプタ収容部14が複数設けられている。複数のアダプタ収容部14は、収容室13の右壁に沿って上下方向に並んでいる。複数のアダプタ収容部14は、上下方向に並ぶ棚状に構成されている。個々のアダプタ収容部14は、略水平に支持されたアダプタ5を載置できるように構成されている。
【0017】
収容室13には、搬送装置15が設けられている。搬送装置15は、複数のアダプタ収容部14の左方に配置されている。搬送装置15は、クランプ16と、クランプ収納部17と、昇降機構18とを備えている。クランプ16は、爪状に形成され、アダプタ5を把持可能である。クランプ16は、水平方向に延びている。クランプ収納部17は、アダプタ収容部14の左方に設けられ、昇降機構18の駆動により上下方向に移動するように構成されている。クランプ収納部17は、クランプ16を内部に収納可能な箱状に構成されている。クランプ収納部17が上下方向に移動するときには、クランプ16は、クランプ収納部17内に収納されている。クランプ収納部17が1つのアダプタ収容部14の側方に停止し、当該アダプタ収容部14との間でアダプタ5を受け渡しするときには、クランプ16は、クランプ収納部17内から右方に移動する。これにより、クランプ16がアダプタ収容部14内に突入する。クランプ収納部17には、図示しないクランプ16の駆動部が設けられている。昇降機構18は、ここでは、上下方向に延びるガイドレール18aと、図示しないボールねじと、ボールねじを回転させる図示しないモータと、を備えている。ただし、搬送装置15の構成は特に限定されない。
【0018】
搬送装置15は、複数のアダプタ収容部14の下方までクランプ収納部17を移動させることができるように構成されている。搬送装置15は、アダプタ収容部14の下方に位置付けられた切削装置12の把持装置との間でアダプタ5を受け渡すように構成されている。また、搬送装置15は、複数のアダプタ収容部14の上方までクランプ収納部17を移動させることが可能である。搬送装置15は、アダプタ収容部14の上方に位置付けられたアダプタ移動装置50の保持部50A(
図8参照)との間でアダプタ5を受け渡すように構成されている。
【0019】
図3に示すように、クリーニング室20は、加工室11の上方に設けられている。クリーニング室20は、収容室13の右方に位置している。
図4は、クリーニング室20の斜視図である。クリーニング室20は、
図4に示すようなユニットとして、切削加工機10から取り外すことが可能である。
図5は、クリーニング室20の平面図である。
図6は、後方側から見たクリーニング室20の縦断面図である。
図4~
図6に示すように、クリーニング室20の外形は、箱状の筐体21によって構成されている。筐体21は、略直方体に形成され、上壁部21U、下壁部21D、前壁部21F、後壁部21Rr、左壁部21L、および右壁部21Rを備えている。上壁部21Uは、左右方向および前後方向に延びている。下壁部21Dは、上壁部21Uの下方に上壁部21Uと向かい合うように設けられている。下壁部21Dも、左右方向および前後方向に延びている。前壁部21Fは、上壁部21Uの前端と下壁部21Dの前端とに接続されている。前壁部21Fは、左右方向および上下方向に延びている。後壁部21Rrは、上壁部21Uの後端と下壁部21Dの後端とに接続されている。後壁部21Rrは、左右方向および上下方向に延びている。前壁部21Fと後壁部21Rrとは向かい合っている。左壁部21Lは、上壁部21U、下壁部21D、前壁部21F、後壁部21Rrの各左端に接続され、前後方向および上下方向に延びている。右壁部21Rは、上壁部21U、下壁部21D、前壁部21F、後壁部21Rrの各右端に接続され、前後方向および上下方向に延びている。左壁部21Lと右壁部21Rとは向かい合っている。これら筐体21の壁部21U、21D、21F、21Rr、21L、および21Rは、筐体21の内部空間21aを形成している。クリーニング装置40は、筐体21の内部空間21aに収容されている。
【0020】
図6に示すように、筐体21の左壁部21Lには、アダプタ5の出入口22が開口している。出入口22は、左右方向に開口し、前後方向および上下方向に延びている。アダプタ5は、出入口22の開口方向(出入口22が面する方向、ここでは左右方向)に移動されることにより、筐体21の内外に出入りする。アダプタ5は、後述するアダプタ移動装置50により左右方向に移動される。なお、筐体21の壁部の左端は、アダプタ5の出入口22として全面が開口していてもよい。かかる場合には、筐体21の左壁部21Lは、実質的に存在しなくてもよい。
【0021】
図4に示すように、出入口22には、扉30が設けられている。扉30は、上端に接続された蝶番30aによって左右方向に回動するように構成されている。蝶番30aは、前後方向に延びる回動軸30bを有している。扉30は、回動軸30b周りに左右方向に回動することによって開閉する。
図6に示すように、扉30の右方、すなわち筐体21の内部空間21a側には、ストッパ21L1が設けられている。ストッパ21L1は、扉30の回動を規制するためのものである。ストッパ21L1は、扉30が筐体21内に入ることを規制している。言い換えると、扉30は、筐体21の外部において回動可能である。なお、
図4および
図6は、扉30が閉まった状態のクリーニング室20を図示し、
図5は、扉30が開いた状態のクリーニング室20を図示している。
【0022】
下壁部21Dには、排気装置M1a(
図10参照)が接続される排気口23が開口している。排気装置M1aは、ここでは、被切削物1の切削加工によって生じた切削粉を回収する集塵機である。排気口23は、出入口22の開口方向(ここでは左右方向)と交差するように下壁部21Dに開口している。排気口23は、ここでは、上下方向に開口している。
図5に示すように、排気口23は、複数のスリット状の貫通孔によって形成されている。排気口23は、左右方向に関し、クリーニング装置40の左端(出入口22側の端部)よりも右方に設けられている。言い換えると、排気口23は、クリーニング装置40の出入口22側の端部よりも出入口22から離れて設けられている。ここでは、排気口23は、クリーニング装置40の真下に設けられている。
【0023】
第1吸気口24は、出入口22の開口方向(ここでは左右方向)視において排気口23と向かい合うように上壁部21Uに開口している。第1吸気口24は、上下方向に開口している。第1吸気口24および後述する第2吸気口26は、排気口23に向かう空気の流れを筐体21の内部空間21aに生み出すための開口部である。第1吸気口24および第2吸気口26は、筐体21の内部空間21aが大きく負圧にならないようにするための開口部でもある。
図5に示すように、第1吸気口24は、平面視において、出入口22の右方かつクリーニング装置40の左方に設けられている。言い換えると、第1吸気口24は、出入口22の開口方向(ここでは左右方向)に関し、クリーニング装置40よりも出入口22の近くに設けられている。第1吸気口24は、平面視において長方形に形成されている。ここでは、第1吸気口24は、前後方向に長く、左右方向に短い扁平な長方形に構成されている。
【0024】
図5に示すように、第1吸気口24には、シャッタ31が設けられている。第1吸気口24の開口面積は、シャッタ31が開閉することにより増減する。シャッタ31は、左右方向および前後方向に延びる平板状の形状を有している。シャッタ31は、左右方向に移動可能に構成されている。シャッタ31は、連結部材58に連結されており、連結部材58が右方に押されることにより、右方に移動する。このシャッタ31の右方への移動により、第1吸気口24の開口面積が減少する。
図7は、シャッタ31が最も閉じられた状態のクリーニング室20を示す平面図である。
図7に示すように、ここでは、シャッタ31は、最も閉じられた状態において第1吸気口24を全閉する。連結部材58を右方に押圧する装置は、本実施形態では、アダプタ5を左右方向に移動させるアダプタ移動装置50である。すなわち、シャッタ31を開閉し、シャッタ31を開閉することによって第1吸気口24の開口面積を変化させるシャッタ開閉装置は、アダプタ移動装置50と共用されている。連結部材58を右方に押す力がなくなると、シャッタ31は、左縁に接続されたスプリング32の復元力により左方に移動する。
【0025】
上壁部21Uには、さらに作業窓25が開口している。作業窓25は、上下方向に開口している。作業窓25は、筐体21内における作業(例えば、装着不備により筐体21内に落ちたアダプタ5を拾う作業)をユーザーが行うための開口部である。作業窓25の周囲には、作業窓25を閉鎖するためのパッキン25aが設けられている。図示は省略するが、通常使用時には、図示しない蓋が筐体21の上に被せられている。この図示しない蓋によってパッキン25aが潰されることにより、通常使用時には、作業窓25は閉鎖されている。
【0026】
図5および
図6に示すように、右壁部21Rには、一対の第2吸気口26が開口している。一対の第2吸気口26は、右壁部21Rの前方部分および後方部分に設けられている。各第2吸気口26は、左右方向に開口している。ここでは、第2吸気口26は、排気口23から見て第1吸気口24とは逆側に設けられている。排気口23は、第1吸気口24と第2吸気口26との間に設けられている。また、第2吸気口26は、
図6に示すように、クリーニング装置40よりも下方に設けられている。ただし、第2吸気口26の位置は限定されるわけではない。なお、第1吸気口24は、逆に、クリーニング装置40よりも上方に設けられている。第2吸気口26は、好ましくは、筐体21の内部空間21aのうち、第1吸気口24から排気口23に向かう空気の流れによっては空気の流れが発生しにくい箇所に面するように設けられているとよい。各第2吸気口26は、ここでは、前後方向に長く上下方向に短い扁平なスリット状の貫通孔である。各第2吸気口26の開口面積は、シャッタ31が全開した状態の第1吸気口24の開口面積よりも小さく設定されている。ここでは、複数の第2吸気口26を合わせた開口面積も、シャッタ31が全開した状態の第1吸気口24の開口面積よりも小さい。ただし、第2吸気口26の形状や大きさも、特に限定されない。
【0027】
アダプタ移動装置50は、搬送装置15との間でアダプタ5を受け渡しするとともに、アダプタ5のクリーニング中にクリーニング室20内におけるアダプタ5の位置を変更する機構である。アダプタ移動装置50は、ここでは、クリーニング室20の内および外において、アダプタ5を左右方向に移動させる。さらに、アダプタ移動装置50は、前述したように、シャッタ31の開閉の駆動部でもある。
図8は、アダプタ移動装置50を筐体21の内部空間21a側から見た斜視図である。
図4および
図8に示すように、アダプタ移動装置50は、アダプタ5を保持する保持部50Aと、保持部50Aを左右方向に移動させる駆動部50Bとを備えている。
【0028】
図8に示すように、保持部50Aは、装着部51と、支持板52とを含んでいる。装着部51は、左方に向かって開いたU字型の形状を有している。装着部51は、U字の根元部からそれぞれ左方に向かって延びる第1保持アーム51aと第2保持アーム51bとを備えている。第2保持アーム51bは、第1保持アーム51aよりも前方に設けられている。
図8に二点鎖線で示すように、アダプタ5は、第1保持アーム51aと第2保持アーム51bとの間に装着される。アダプタ5は、保持部50Aにより略水平に保持される。以下、
図8および
図6などに示すように、保持部50Aに保持された状態で上方を向くアダプタ5の面を上面5Uと呼び、下方を向く面を下面5Dと呼ぶこととする。ただし、かかる区別は便宜上のものであり、物としてのアダプタ5の上面5Uと下面5Dとは同じであってもよい。
【0029】
図8に示すように、支持板52は、左右方向および上下方向に延びている。支持板52は、筐体21の前壁部21Fの内部空間21a側の面(背面)に沿って延びている。支持板52は、駆動部50Bに連結されるとともに、装着部51を支持している。支持板52は、装着部51よりも左方、つまり収容室13側に突出している。支持板52の左端には、第1ワッシャ52aが設けられている。支持板52の先端の第1ワッシャ52aより上部には、面取り52bが施されている。面取り52bの上方角には、第2ワッシャ52cが設けられている。第1ワッシャ52aおよび第2ワッシャ52cは、支持板52が駆動部50Bによって移動されて扉30を押し開くときに、扉30に当接する部材である。扉30を破損しないよう、第1ワッシャ52aおよび第2ワッシャ52cは、柔らかい材料、例えばPOMなどの樹脂によって形成されている。支持板52は、クリーニングによって飛散する粉塵が駆動部50Bの方に拡散することを抑制する機能も果たしている。
【0030】
駆動部50Bは、
図4に示すように、駆動モータ53と、一対のガイドシャフト54と、スライドブロック55と、ボールねじ56と、ナット57と、を備えている。一対のガイドシャフト54は、上下方向に並んで設けられ、左右方向に延びている。スライドブロック55は、一対のガイドシャフト54に左右方向に摺動可能に係合している。スライドブロック55にはナット57が固定されている。ナット57には、ボールねじ56が噛み合わされている。ボールねじ56は、左右方向に延びている。駆動モータ53は、ボールねじ56に連結され、ボールねじ56を軸線周りに回転させる。これにより、スライドブロック55がガイドシャフト54に沿って走行する。スライドブロック55は、前壁部21Fに設けられたスリット21F1を通して保持部50Aの支持板52に連結されている。そこで、駆動モータ53が駆動されると、保持部50Aが左右方向に移動する。アダプタ移動装置50は、駆動部50Bによって保持部50Aを移動させることにより、アダプタ5を左右方向に移動させる。駆動モータ53は、ここでは、回転量を検出可能なモータであり、保持部50Aの移動距離は、駆動モータ53により検出される。
【0031】
連結部材58は、シャッタ31と保持部50Aとを連結することにより、シャッタ31の動きとアダプタ5の移動とを連動させる。ここでは、連結部材58は、スライドブロック55を介してシャッタ31と保持部50Aとを連結している。
図5に示すように、連結部材58の左端はシャッタ31に接続されている。連結部材58の右端には、スライドブロック55によって押される当接部58aが形成されている。当接部58aは、
図5に示すように、スライドブロック55の移動経路上に配置されている。ここで、アダプタ移動装置50が駆動してスライドブロック55が右方に移動すると、当初は当接していなかったスライドブロック55と当接部58aとが当接する。そのままスライドブロック55が右方に向かって移動すると、連結部材58は右方に移動し、シャッタ31が次第に閉じられる。つまり、アダプタ5が筐体21の内部にある程度挿入された状態からシャッタ31は閉まり始め、アダプタ5が筐体21の奥(ここでは右方)に移動するほどシャッタ31は閉まっていく。言い換えると、アダプタ5が筐体21の奥に移動するほど、第1吸気口24の開口面積は減少する。シャッタ開閉装置としてのアダプタ移動装置50は、連結部材58により、保持部50Aに保持されたアダプタ5の移動とシャッタ31の開閉とをともに行うように構成されている。なお、シャッタ31と連結部材58とは一体的に形成された1つの部品であってもよい。
【0032】
スライドブロック55の移動経路の右端には、リミットスイッチ59が設けられている。スライドブロック55が右方に移動すると、スライドブロック55がリミットスイッチ59のアーム59aに当接し、リミットスイッチ59がONする。これにより、アダプタ5が右方のエンドに到達したことが検出される。
【0033】
クリーニング装置40は、筐体21の内部空間21aにおいて、アダプタ移動装置50の保持部50Aによって保持されたアダプタ5をクリーニングする。
図6に示すように、クリーニング装置40は、第1回動アーム41と、第2回動アーム42と、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動軸43と、第1回動アーム41および第2回動アーム42を回動軸43周りに回動させるアクチュエータ44とを備えている。第1回動アーム41には、アダプタ5の上面5Uに圧縮エアを噴射する第1ノズル41Nが設けられている。第2回動アーム42には、アダプタ5の下面5Dに圧縮エアを噴射する第2ノズル42Nが設けられている。圧縮エアは、後述する外部のエアコンプレッサM2(
図10参照)から供給される。
【0034】
図6に示すように、回動軸43は、上下方向に延びている。第1回動アーム41は、ここでは、回動軸43に固定され、保持部50Aに保持されたアダプタ5よりも上方に設けられている。第1回動アーム41に支持された第1ノズル41Nも、保持部50Aに保持されたアダプタ5よりも上方に設けられている。ただし、クリーニング装置40は、第1ノズル41Nが保持部50Aに保持されたアダプタ5よりも上方に位置するように構成されていればよく、第1回動アーム41の上下方向の位置は、アダプタ5の上方には限定されない。例えば、第1回動アーム41は、一部だけがアダプタ5よりも上方に位置していてもよい。
図6に示すように、第1ノズル41Nは、下方に向かって開口している。第1ノズル41Nは、下方に向かって圧縮エアを噴射するように構成されている。
【0035】
第2回動アーム42は、保持部50Aに保持されたアダプタ5よりも下方に設けられている。第2回動アーム42も、回動軸43に固定されている。第2回動アーム42に支持された第2ノズル42Nも、保持部50Aに保持されたアダプタ5よりも下方に設けられている。ただし、クリーニング装置40は、第2ノズル42Nが保持部50Aに保持されたアダプタ5よりも下方に位置するように構成されていればよく、第2回動アーム42の上下方向の位置は、アダプタ5の下方には限定されない。
図6に示すように、第2ノズル42Nは、上方に向かって開口している。第2ノズル42Nは、上方に向かって圧縮エアを噴射するように構成されている。
【0036】
図5に示すように、第1回動アーム41と第2回動アーム42とは、平面視において重なっている。第1回動アーム41と第2回動アーム42とは、共通の回動軸43から、平面視において同じ方向に延びている。ただし、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、平面視における位置がずれるように設けられている。
図6に示すように、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、アダプタ移動装置50によるアダプタ5の移動方向、ここでは左右方向の位置がずれている。より具体的には、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、回動軸43からの距離が異なっている。ここでは、
図6に示すように、クリーニング装置40は、第1ノズル41Nの回動軸43からの距離の方が第2ノズル42Nの回動軸43からの距離よりも長くなるように構成されている。ただし、第2ノズル42Nの回動軸43からの距離が、第1ノズル41Nの回動軸43からの距離よりも長くてもよい。
【0037】
図6に示すように、第1回動アーム41は、上壁部21Uから離れて配置されている。第1回動アーム41は、上壁部21Uよりも下方に配置されている。第1回動アーム41と上壁部21Uとの間には、隙間が設けられている。同様に、第2回動アーム42は、下壁部21Dから離れて配置されている。第2回動アーム42は、下壁部21Dよりも上方に配置されている。第2回動アーム42と下壁部21Dとの間には、隙間が設けられている。その結果、クリーニング装置40と排気口23との間には隙間が存在している。後述するが、このクリーニング装置40と筐体21の壁部との間の上下の隙間は、第1吸気口24から吸い込まれた空気が排気口23に流れる際の流路である。
【0038】
第1回動アーム41および第2回動アーム42は、回動軸43周りに回動するように構成されている。
図9は、第1回動アーム41および第2回動アーム42が回動中のクリーニング室20を示す平面図である。
図9に示すように、第1回動アーム41および第2回動アーム42はいずれも、軸線周りに回動する回動軸43に固定されており、同期して回動する(回動中も、平面視において第1回動アーム41と第2回動アーム42とは重なっている)。アクチュエータ44は、回動軸43を軸線周りに回動させることにより、第1回動アーム41および第2回動アーム42を回動軸43周りに回動させる。アクチュエータ44の種類は特に限定されないが、ここでは、電動モータである。
図6に示すように、アクチュエータ44の回転軸には、ギア44aが設けられている。ギア44aには、回動軸43に設けられたギア43aが噛み合っている。アクチュエータ44が回転駆動すると、ギア44aが回転し、それによりギア43aおよび回動軸43が回転する。
【0039】
図5に示すように、回動軸43には、検出板45が設けられている。検出板45は、平板状の部材であり、水平方向に延びている。
図9に示すように、検出板45は、回動軸43とともに回動する。検出板45の回動経路上には、リミットスイッチ46が設けられている。上方から見て時計回りに回動軸43が回転すると、検出板45は、リミットスイッチ46のアーム46aに当接する。これにより、リミットスイッチ46がONする。リミットスイッチ46は、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動原点を検出するセンサである。リミットスイッチ46により第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動原点が検出されると、アクチュエータ44は、上方から見て反時計回りに回動軸43が回転するように回転方向を変える。アクチュエータ44は、第1回動アーム41および第2回動アーム42を所定の回動角だけ回動させると、再び回転方向を変える。アクチュエータ44は、ここでは、例えば、エンコーダ等を備え、回転角を計測可能なモータである。上記した回動方向を変える動作を繰り返すことにより、第1回動アーム41および第2回動アーム42は、回動軸43周りに、往復するように回動する。ただし、第1回動アーム41および第2回動アーム42を往復回動させる方式は、上記に限定されるわけではない。
【0040】
図10は、筐体21内の排気と圧縮エアの供給とに係る系統図である。
図10に示すように、クリーニング室20の排気口23は、排気装置(集塵機)M1aに接続されている。排気装置M1aは、筐体21内の空気とともに、被切削物1の切削により生じ、アダプタ5および被切削物1に付着した粉塵を吸引している。本実施形態では、切削加工機10には、2台の排気装置が接続されている。
図10に示すように、もう1台の排気装置M1bは、加工室11に接続されている。ただし、クリーニング室20および加工室11には、共通の1つの排気装置が接続されていてもよい。
【0041】
クリーニング装置40は、エアコンプレッサM2と接続されたエア回路60を備えている。切削加工機10は、クリーニング室20以外の場所、例えば加工室11にも圧縮エアを噴出するノズルを備えていてもよく、その場所に圧縮エアを供給するエア回路を備えていてもよいが、図示は省略する。
図10に示すように、エア回路60は、エア流路61と、流路切替部材62とを備えている。エア流路61は、入口流路61aと、入口流路61aから分岐した第1流路61bおよび第2流路61cと、を含んでいる。入口流路61aの一端は、エアコンプレッサM2に接続されている。エアコンプレッサM2に接続された入口流路61aの端部は、エアコンプレッサM2から圧縮エアが供給されるエア供給口61dを構成している。第1流路61bおよび第2流路61cは、それぞれ、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nに接続されている。
【0042】
流路切替部材62は、エア流路61に設けられ、エア供給口61dと第1ノズル41Nまたは第2ノズル42Nとを択一的に連通させる。流路切替部材62は、ここでは、第1流路61bに設けられた第1バルブ62aと、第2流路61cに設けられた第2バルブ62bとを含んでいる。第1バルブ62aおよび第2バルブ62bは、ここでは、電磁バルブである。第1バルブ62aは、第1ノズル41Nから圧縮エアを噴射するときに開放される。このとき、第2バルブ62bは閉じられている。第2ノズル42Nから圧縮エアを噴射するときには、第2バルブ62bが開放される。このとき、第1バルブ62aは閉じられている。第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nのいずれからも圧縮エアを噴射しないときには、第1バルブ62aおよび第2バルブ62bは、いずれも閉じられる。ただし、流路切替部材62の構成は、上記には限定されない。例えば、流路切替部材62は、入口流路61a、第1流路61b、および第2流路61cの分岐点に設けられ、入口流路61aと第1流路61bとを連通させる第1位置と、入口流路61aと第2流路61cとを連通させる第2位置との間で位置を切り替え可能なバルブであってもよい。その場合、例えば、入口流路61aに開閉バルブが設けられていてもよい。
【0043】
図11は、切削加工機10のブロック図である。
図11に示すように、切削加工機10は、各部の動作を制御する制御装置100を備えている。制御装置100は、切削装置12と、搬送装置15のクランプ収納部17および昇降機構18と、クリーニング装置40のアクチュエータ44、第1バルブ62a、および第2バルブ62bと、アダプタ移動装置50の駆動モータ53と、クリーニング室20の排気装置M1aと、加工室11の排気装置M1bと、に接続され、それらの動きを制御している。また、制御装置100は、クリーニング装置40のリミットスイッチ46と、アダプタ移動装置50のリミットスイッチ59と、に接続され、それらからの信号を受信している。制御装置100は他の部材、例えば他のリミットスイッチと接続されていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
【0044】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。
図11に示すように、制御装置100は、切削制御部110と、搬送制御部120と、クリーニング制御部130と、移動制御部140と、を備えている。制御装置100は、他の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
【0045】
切削制御部110は、切削装置12を制御して被切削物1を切削し、入力された切削データに基づいた形状に加工する。詳しくは後述するが、切削制御部110は、アダプタ5のクリーニング中に、他の被切削物1を切削することが可能に構成されている。
【0046】
搬送制御部120は、搬送装置15を制御して、アダプタ5を加工室11、収容室13、およびクリーニング室20に搬送する。
図11に示すように、搬送制御部120は、第1搬送制御部121と、第2搬送制御部122と、第3搬送制御部123と、を備えている。第1搬送制御部121は、被切削物1の切削が終了した後に、搬送装置15を制御して、加工室11内のアダプタ5をクリーニング室20に搬送する。第2搬送制御部122は、アダプタ5のクリーニングが終了した後に、搬送装置15を制御して、クリーニング室20内のアダプタ5を収容室13に搬送する。第3搬送制御部123は、搬送装置15を制御して、選択されたアダプタ5を収容室13から加工室11に搬送する。選択されるアダプタ5は、切削加工を行う被切削物1が保持されたアダプタ5である。
【0047】
クリーニング制御部130は、第1クリーニング制御部131と、第2クリーニング制御部132とを備えている。第1クリーニング制御部131は、クリーニング装置40を制御して、クリーニング室20内のアダプタ5をクリーニングする。詳しくは、第1クリーニング制御部131は、第1バルブ62aおよび第2バルブ62bを制御して、第1ノズル41Nまたは第2ノズル42Nから圧縮エアを噴射させる。第1ノズル41Nまたは第2ノズル42Nから圧縮エアを噴射する順序は、予め登録されている。第1クリーニング制御部131は、ここでは、第2ノズル42Nから圧縮エアを噴射させた後に第1ノズル41Nから圧縮エアを噴射させるように設定されている。言い換えると、第1クリーニング制御部131は、上方に向かってエアを噴出してアダプタ5をクリーニングした後に、下方に向かってエアを噴出してアダプタ5をクリーニングする。第1クリーニング制御部131は、また、アクチュエータ44を制御して、第1回動アーム41および第2回動アーム42を回動させる。第1クリーニング制御部131は、さらに、アダプタ5のクリーニング中は、排気装置M1aを駆動させる。
【0048】
第2クリーニング制御部132は、アダプタ5のクリーニングが終了し、アダプタ5がクリーニング室20から搬出された後の、クリーニング室20のクリーニング動作を制御する。第2クリーニング制御部132は、アダプタ5のクリーニングの後に、クリーニング装置40を制御して第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nのうちの少なくとも一方から圧縮エアを噴射させ、クリーニング室20をクリーニングする。クリーニング室20のクリーニングにおいて第1ノズル41Nまたは第2ノズル42Nから圧縮エアを噴射する順序も予め登録されている。この順序は特に限定されないが、アダプタ5のクリーニング時と同様であってもよい。第2クリーニング制御部132は、クリーニング室20のクリーニング中には、排気装置M1aを駆動させるように構成されていてもよい。
【0049】
移動制御部140は、アダプタ移動装置50の動作を制御する。移動制御部140は、搬送装置15からアダプタ移動装置50にアダプタ5を受け渡すとき、保持部50Aを筐体21の外部に移動させる。以下、このときの保持部50Aの位置を受け渡し位置とも呼ぶ。受け渡し位置は、
図5に示す保持部50Aの位置である。また、アダプタ5のクリーニング中、移動制御部140は、保持部50Aを右方のエンド(可動範囲のうちで筐体21の最も奥、以下、待機位置とも呼ぶ)と、待機位置から所定距離だけ左方のクリーニング終了位置との間で移動させる。待機位置は、
図7に示す保持部50Aの位置である。図示は省略するが、クリーニング終了位置は、保持部50Aによって扉30が開放されず、かつ、アダプタ5が第1ノズル41Nよりも左方に位置するような位置に設定されている。クリーニング終了位置は、左右方向に関して、待機位置と受け渡し位置との間の位置である。移動制御部140によるアダプタ移動装置50の制御の詳細については、クリーニングのプロセスの説明の中で説明する。
【0050】
[クリーニングのプロセス]
以下では、被切削物1の切削からアダプタ5のクリーニングを経て、アダプタ5を収容室13に戻すまでのプロセスの一例について、フローチャートを参照しながら説明する。
図12Aおよび
図12Bは、被切削物1の切削からアダプタ5を収容室13に戻すまでのプロセスを示すフローチャートである。そのうち
図12Aは、フローチャートの前半である。
図12Bは、フローチャートの後半である。
図12Aに示すように、ここでは、加工室11において被切削物1が切削加工されているステップS01から説明を開始する。ステップS01の被切削物1の加工が終了すると、ステップS02において、切削済みの被切削物1を保持した状態のアダプタ5が、切削装置12の移動装置により、搬送装置15との受け渡し位置に移動される。ステップS03では、搬送装置15が、切削済みの被切削物1を保持した状態のアダプタ5を切削装置12から受け取る。このとき、アダプタ5および被切削物1には、被切削物1の切削加工により発生した切削粉が付着している。
【0051】
ステップS04では、アダプタ移動装置50が保持部50Aを待機位置から受け渡し位置に移動させる。保持部50Aが待機位置に位置しているとき、
図7に示すように、シャッタ31は全閉している。また、保持部50Aが待機位置に位置しているとき、扉30は閉まっている。保持部50Aが受け渡し位置に移動すると、
図5に示すように、保持部50Aによる連結部材58の押圧が解除されるため、シャッタ31が開く。さらに、保持部50Aが扉30を筐体21の外方に向かって押し開く。
【0052】
図13は、保持部50Aが受け渡し位置に位置しているときの保持部50Aと扉30とを示す斜視図である。
図13に示すように、保持部50Aが受け渡し位置に位置しているとき、保持部50Aの第2ワッシャ52cは、扉30を開状態で支持している。途中の状態の図示は省略するが、保持部50Aが左方に向かって移動されると、まず第1ワッシャ52aが扉30に当接し、扉30を押し開ける。その後、保持部50Aがさらに左方に移動され、扉30がさらに開くと、扉30を支持する部位は、第1ワッシャ52aから第2ワッシャ52cに移行する。
【0053】
ステップS05では、搬送装置15が上方に移動され、アダプタ移動装置50とのアダプタ5の受け渡し位置に位置付けられる。ステップS06では、アダプタ5が搬送装置15からアダプタ移動装置50に受け渡される。アダプタ移動装置50は、保持部50Aがアダプタ5の出入口22を通ってクリーニング室20の内部と外部とを行き来し、搬送装置15との間でアダプタ5を受け渡すように構成されている。ステップS06より後は、クリーニング装置40およびアダプタ移動装置50と、搬送装置15および切削装置12とが別々に、かつ同時的に動作する。そこで、ステップS06より後は、クリーニング装置40およびアダプタ移動装置50の動作に係るステップと、搬送装置15および切削装置12の動作に係るステップとを別系統で図示することとする。なお、ステップS02~S06は、可能な限りにおいて順番が入れ替えられてもよい。
【0054】
クリーニング装置40およびアダプタ移動装置50の動作に係るステップから先に説明すると、ステップS07では、排気装置M1aが駆動される。これにより、排気口23から空気が排出される。それに伴って、第1吸気口24および一対の第2吸気口26から、外部の空気が筐体21内に流入し始める。続くステップS08では、保持部50Aに保持されたアダプタ5が筐体21の奥、ここでは右方に向かって移動される。保持部50Aの移動により、扉30が閉まる。扉30は、駆動部50Bにより移動される保持部50Aによって左方に押されると開き、保持部50Aによる支持がなくなると、自重によって閉じるように構成されている。制御装置100は、クリーニング装置40を制御してアダプタ5をクリーニングするとともに、アダプタ5のクリーニング中は、扉30の開閉装置としてのアダプタ移動装置50を制御して扉30を閉めるように構成されている。なお、切削加工機10は、アダプタ移動装置50とは独立した扉30の開閉装置を備えていてもよい。
【0055】
扉30が閉まると、出入口22から流入する外部の空気は減少し、クリーニング室20への空気の流入は、主に第1吸気口24および一対の第2吸気口26を通して行われることとなる。
図5に示すように、スライドブロック55が連結部材58を押し始めるまでは、シャッタ31は全開している。そのため、それまで第1吸気口24の開口面積は最大である。第1吸気口24の開口面積が最大のとき、筐体21内部に流入する空気の大部分は、第1吸気口24から流入する空気である。一対の第2吸気口26の開口面積は、シャッタ31が全開しているときの第1吸気口24の開口面積よりもかなり小さい。そのため、第1吸気口24の開口面積が最大のとき、第2吸気口26から流入する空気の量は少ない。
【0056】
スライドブロック55が移動して連結部材58に当接すると、スライドブロック55が連結部材58を押すことにより、シャッタ31が閉じ始める。これにより、第1吸気口24の開口面積が減少し始める。制御装置100は、クリーニング装置40を制御してアダプタ5をクリーニングさせながら、アダプタ5の移動装置およびシャッタ31の開閉装置としてのアダプタ移動装置50を制御して、シャッタ31を開閉し、アダプタ5を移動させる。シャッタ31が次第に閉まることによって第1吸気口24の開口面積が次第に減少すると、第1吸気口24から流入する空気の量は次第に減少し、第2吸気口26から流入する空気の量が次第に増加する。シャッタ31が全閉すると、第1吸気口24の開口面積はゼロ(第1吸気口24とシャッタ31との隙間を除く)となり、筐体21内に流入する空気の大部分は、一対の第2吸気口26から流入する空気となる。この第1吸気口24と第2吸気口26との吸気量バランスの変化がもたらす効果については後述する。
【0057】
ステップS09では、保持部50Aが可動範囲の右方のエンドである待機位置に到達する。保持部50Aが待機位置に到達したことは、リミットスイッチ59により検出される。続くステップS10では、第2バルブ62bが開放され、第2ノズル42Nから圧縮エアが噴射される。これにより、上方に向かって圧縮エアが噴射される。第2ノズル42Nから上方に向かって噴射された圧縮エアは、アダプタ5の下面5Dに吹き付けられる。ステップS11では、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動が開始される。
図12Bに示すように、続くステップS12では、保持部50Aが左方に移動される。これら圧縮エアの噴射、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動、および保持部50Aの移動により、アダプタ5のクリーニングが実質的にスタートする。
【0058】
本実施形態では、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動と、保持部50Aの移動とは、ともに間欠的に行われる。ステップS11およびS12では、まず、第1回動アーム41および第2回動アーム42が、原点から所定の角度(回動方向は上方から見て反時計回り)だけ回動される。第1回動アーム41および第2回動アーム42が所定の角度の回動を終えていったん停止すると、保持部50Aが所定の距離(例えば、1mm~5mm)だけ左方に移動される。その後、第1回動アーム41および第2回動アーム42が逆方向に回動し、原点に戻る。第1回動アーム41および第2回動アーム42が原点に戻ると、保持部50Aが再び所定の距離だけ左方に移動する。本実施形態では、かかる間欠的な動作を繰り返すことにより、アダプタ5を保持部50Aの移動方向に移動させながら、第1回動アーム41および第2回動アーム42を回動させる。
【0059】
ステップS11およびS12では、第2ノズル42Nが第2回動アーム42の回動方向に動き、アダプタ5が第2回動アーム42の回動方向と交差する方向(ここでは左方)に動くことにより、アダプタ5の下面5Dの全体に順次、第2ノズル42Nからの圧縮エアが吹き付けられる。これにより、アダプタ5の下面5Dの全体が順次クリーニングされる。ただし、上記したクリーニング装置40およびアダプタ移動装置50の動作は好適な一例に過ぎず、アダプタ5のクリーニングにおけるクリーニング装置40およびアダプタ移動装置50の動作は限定されない。例えば、アダプタ5のクリーニングにおいて、アダプタ移動装置50は、保持部50Aを左右方向に連続的に移動させてもよい。
【0060】
ステップS13では、保持部50Aがクリーニング終了位置に到達する。保持部50Aがクリーニング終了位置に到達したことは、駆動モータ53により検出される。保持部50Aがクリーニング終了位置に到達すると、保持部50Aの移動方向および圧縮エアを噴射するノズルが変化する。ステップS14では、圧縮エアを噴射するノズルが第2ノズル42Nから第1ノズル41Nに切り替えられる。これにより、圧縮エアの方向は下向きとなる。ステップS15では、保持部50Aおよびアダプタ5の移動方向が右方に変更される。第1ノズル41Nが第1回動アーム41の回動方向に動き、アダプタ5が第1回動アーム41の回動方向と交差する方向(ここでは右方)に動くことにより、アダプタ5の上面5Uの全体に順次、第1ノズル41Nからの圧縮エアが吹き付けられる。これにより、アダプタ5の上面5Uの全体が順次クリーニングされる。
【0061】
ステップS16では、保持部50Aが待機位置に到達する。このとき、第1回動アーム41および第2回動アーム42は、原点に位置している。続くステップS17では、第1バルブ62aが閉じられ、第1ノズル41Nからの圧縮エアの噴射が停止する。第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動も、ここで終了する。これにより、アダプタ5のクリーニングが終了する。
【0062】
続くステップS18では、保持部50Aが再び左方に向かって移動される。保持部50Aは、かかるの左方への移動により、ステップS19において受け渡し位置に到達する。保持部50Aが受け渡し位置に到達する過程で、扉30が開放される。ステップS20では、クリーニング済みのアダプタ5が搬送装置15に引き渡される。クリーニング済みのアダプタ5を引き渡した後、ステップS21において排気装置M1aがOFFされる。保持部50Aは、ステップS22において、再び待機位置に向かって右方に移動する。ステップS23において保持部50Aが待機位置に到着したことが検出されると、クリーニング装置40およびアダプタ移動装置50の動作に係るステップは終了する。
【0063】
なお、この後、第2クリーニング制御部132の制御に基づいて、クリーニング室20のクリーニングが開始されてもよい(図示は省略)。クリーニング室20のクリーニングでは、例えば、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nのうちの少なくとも一方から、または、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nから順次、圧縮エアが噴射され、第1回動アーム41および第2回動アーム42は、往復回動されてもよい。また、その間、排気装置M1aは駆動されていてもよい。
【0064】
次に、ステップS06よりも後の搬送装置15および切削装置12の動作について説明する。
図12Aに示すように、ステップS06に続くステップS24において、搬送装置15は、次に加工する被切削物1が保持されたアダプタ5が収容されたアダプタ収容部14の側方に移動し、当該アダプタ5を把持する。続くステップS25では、次のアダプタ5が搬送装置15から切削装置12に引き渡される。ステップS26では、次の被切削物1が切削装置12によって切削加工される。この間、クリーニング室20では、加工済みの被切削物1を保持したアダプタ5がクリーニングされている。切削加工機10は、アダプタ5のクリーニング中に他の被切削物1を切削することが可能なように構成されている。次に加工する被切削物1が設定されていない場合は、ステップS24からS26までのステップは省略される。
【0065】
ステップS27では、アダプタ移動装置50とのアダプタ5の受け渡し位置に搬送装置15が移動する。ステップS27の後には、ステップS20が続き、クリーニング後のアダプタ5が搬送装置15に引き渡される。
図12Bに示すように、搬送装置15に係る次のステップS28では、クリーニング後のアダプタ5が、搬送装置15によりアダプタ収容部14に戻される。これにより、搬送装置15および切削装置12に係るステップも終了する。
【0066】
[本実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係る切削加工機10が奏する作用効果について説明する。
【0067】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタ5に保持された被切削物1を切削する切削装置12が設けられた加工室11と、アダプタ5をクリーニングするクリーニング装置40が設けられたクリーニング室20と、加工室11とクリーニング室20とにアダプタ5を搬送する搬送装置15と、を備えている。従来の切削加工機では、切削加工後のアダプタおよび被切削物のクリーニングは、加工室内で行われるか、または、切削加工機外において手作業で行われていた。前者の場合は、切削加工の時間にアダプタ5のクリーニング時間が含まれるため、切削加工の時間が長くなっていた。後者の場合には、アダプタをクリーニングする負荷がユーザーに発生していた。それに対し、本実施形態では、切削加工機10は、加工室11とは別に設けられた、アダプタ5をクリーニングするためのクリーニング室20と、加工室11とクリーニング室20とにアダプタ5を搬送する搬送装置15と、を備えている。そのため、切削加工終了後の被切削物1を保持したアダプタ5をクリーニング室20に搬送することにより、アダプタ5のクリーニングを待つことなく次の被切削物1の加工を進めることができる。それにより、被切削物1の切削加工の時間を短縮することができる。また、アダプタ5のクリーニングはクリーニング室20に設けられたクリーニング装置40によって行われるため、手作業によるアダプタのクリーニングとは異なり、ユーザーの負荷を低減できる。
【0068】
本実施形態に係る切削加工機10は、複数のアダプタ5を収容可能な収容室13と、切削後の被切削物1を保持したアダプタ5を自動でクリーニングする制御を実行する制御装置100と、を備えている。切削加工機10は、被切削物1の切削が終了した後に、搬送装置15を制御して、加工室11内のアダプタ5をクリーニング室20に搬送する。切削加工機10は、さらに、クリーニング装置40を制御して、クリーニング室20内のアダプタ5をクリーニングする。アダプタ5のクリーニングが終了した後、切削加工機10は、搬送装置15を制御して、クリーニング室20内のアダプタ5を収容室13に搬送する。かかる構成によれば、切削加工による切削粉が付着したアダプタ5および被切削物1が搬送装置15によって自動でクリーニング室20に搬送され、クリーニング装置40によりクリーニングされるため、搬送とクリーニングに係るユーザーの負担が軽減される。また、アダプタ5は、クリーニング後に収容室13に自動で戻される。
【0069】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタ5のクリーニング中に他の被切削物1を切削することが可能なように構成されている。かかる構成によれば、アダプタ5のクリーニング終了を待つことなく他の被切削物1を加工することができるため、切削加工のスループットを向上させることができる。
【0070】
本実施形態では、クリーニング装置40は、アダプタ5に向かって圧縮エアを噴射する第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nを備えている。かかる構成によれば、圧縮エアの吹き付けによりアダプタ5のクリーニングを容易に行うことができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、クリーニング装置40は、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nの位置を移動させる構成を備えている。第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nの位置を移動させる構成は、ここでは、第1回動アーム41、第2回動アーム42、回動軸43、およびアクチュエータ44である。かかる構成によれば、圧縮エアを噴射する第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nの位置が移動するため、アダプタ5の様々な場所に圧縮エアを吹き付けることができる。そのため、アダプタ5をより良好にクリーニングすることができる。なお、ノズルの位置を移動させる構成は特に限定されず、他の構成によっても上記した作用効果を奏することができる。
【0072】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタ5のクリーニング室20内における位置を変更するアダプタ移動装置50をさらに備えている。かかる構成によれば、クリーニング室20内のアダプタ5の位置を変えることにより、アダプタ5の様々な場所に圧縮エアを吹き付けることができる。そのため、かかる構成によっても、アダプタ5をより良好にクリーニングすることができる。
【0073】
本実施形態では、アダプタ移動装置50がアダプタ5を移動させる方向と、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nが移動する方向とは交差している。ここでは、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動方向と、アダプタ移動装置50がアダプタ5を移動させる方向とが交差している。かかる構成によれば、アダプタ5と第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nとが二次元的に相対移動するため、アダプタ5のより広い範囲により効率的に圧縮エアを吹き付けることができる。
【0074】
本実施形態では、第1ノズル41Nは、保持部50Aによって保持されたアダプタ5よりも上方に設けられ、保持部50A保持されたアダプタ5の上面5Uに圧縮エアを噴射する。第2ノズル42Nは、保持部50Aによって保持されたアダプタ5よりも下方に設けられ、保持部50A保持されたアダプタ5の下面5Dに圧縮エアを噴射する。かかる構成によれば、ディスク状の被切削物1を保持する平板状のアダプタ5の両面をクリーニングすることができる。
【0075】
ここで、本実施形態では、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、平面視における位置がずれるように設けられている。平板状のアダプタ5の両面をクリーニングするためには、第1ノズル41Nはアダプタ5よりも上方に設けられるとともに下方に向かって開口することが好ましく、第2ノズル42Nはアダプタ5よりも下方に設けられるとともに上方に向かって開口することが好ましい。しかし、本願発明者の知見によれば、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとを対面させると、一方のノズルからの圧縮エアによって吹き飛ばされた粉塵が他方のノズルに入り、粉塵が入った方のエア回路等が破損するおそれがある。そこで、本実施形態では、平面視における第1ノズル41Nの位置と第2ノズル42Nの位置とをずらしている。かかる構成により、一方のノズルからの圧縮エアによって吹き飛ばされた粉塵が他方のノズルに入るおそれが低減される。そのため、上記したようなエア回路等の破損のおそれが低減される。
【0076】
より詳しくは、本実施形態では、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、アダプタ5の移動方向の位置がずれている。アダプタ5の様々な場所に圧縮エアを吹き付けるために、アダプタ5はクリーニング室20内で移動されることが好ましいが、そうすると、クリーニング室20は、アダプタ5の移動方向の長さが長くなる。本実施形態では、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとは、クリーニング室20の長手方向であるアダプタ5の移動方向の位置が異なっている。そのため、第1ノズル41Nの位置と第2ノズル42Nの位置とをずらしやすい。また、アダプタ5の移動方向に交差する方向に関するクリーニング装置40の長さが長くなりにくい。
【0077】
また、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとがアダプタ5の移動方向にずれている態様によれば、アダプタ5を移動させることにより、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとの位置のずれによる影響(例えば、圧縮エアが吹き付けられるアダプタ5上の箇所が異なることによる、上面5Uと下面5Dとの清浄度の差)が緩和される。
【0078】
本実施形態では、第1ノズル41Nは、第1回動アーム41に設けられており、第1回動アーム41の回動により位置を変更される。第2ノズル42Nは、第1回動アーム41と共通の回動軸43周りに回動する第2回動アーム42に設けられており、第2回動アーム42の回動により位置を変更される。かかる構成によれば、第1回動アーム41における第1ノズル41Nの位置および第2回動アーム42における第2ノズル42Nの位置を調整することによって、容易に第1ノズル41Nの位置と第2ノズル42Nの位置とをずらすことができ、かつ、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nをともに移動させることができる。
【0079】
さらに本実施形態では、第1回動アーム41と第2回動アーム42とは、平面視において重なるように設けられ、同期して回動する。そのため、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動方向に関するクリーニング装置40の幅を短くできる。ここでは、第1回動アーム41および第2回動アーム42の回動方向は、アダプタ5の移動方向と交差する方向である。そこで、アダプタ5の移動方向に交差する方向に関するクリーニング装置40の長さを抑制することができる。
【0080】
本実施形態では、クリーニング装置40は、エア供給口61dと第1ノズル41Nまたは第2ノズル42Nとを択一的に連通させる流路切替部材62を備えている。かかる構成によれば、第1ノズル41Nおよび第2ノズル42Nのうちの一方からしか圧縮エアが噴射されない。多くのノズルから同時に圧縮エアを噴射する構成では、各ノズルから噴射される圧縮エアの風速を確保するため、圧縮エアの圧力を高く設定する必要がある。あるいは、圧縮エアの圧力が高くないと、各ノズルから噴射される圧縮エアの風速が遅くなってしまう。それに対し、本実施形態では、第1ノズル41Nと第2ノズル42Nとから同時に圧縮エアが噴射されることがないため、圧縮エアの圧力をあまり高く設定する必要がない。
【0081】
第1ノズル41Nまたは第2ノズル42Nから圧縮エアが噴射されるタイミングに関し、本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタ5よりも下方に設けられた第2ノズル42Nから圧縮エアを噴射させた後に、アダプタ5よりも上方に設けられた第1ノズル41Nから圧縮エアを噴射させる。言い換えると、上方に向かって圧縮エアを噴射してアダプタ5のクリーニングを行った後に、下方に向かって圧縮エアを噴射してアダプタ5のクリーニングを行う。かかる構成によれば、上方に向かって噴射される圧縮エアによって舞い上げられた後でアダプタ5上に降り積もった粉塵を、下方に向かって噴射する圧縮エアによって除去することができる。そのため、アダプタ5のクリーニングをより良好に行うことができる。
【0082】
本実施形態では、クリーニング室20は、排気装置M1aが接続される排気口23を備えている。かかる構成によれば、クリーニング装置40によるクリーニングによってクリーニング室20内に落ちた粉塵をクリーニング室20から排出することができる。
【0083】
さらに本実施形態では、クリーニング室20は、クリーニング装置40が収容された箱状の筐体21を備え、筐体21には、第1吸気口24と、第2吸気口26とが設けられている。第1吸気口24には、シャッタ31が設けられている。シャッタ開閉装置としてのアダプタ移動装置50は、シャッタ31を開閉するように構成され、シャッタ31を開閉することによって第1吸気口24の開口面積を変化させる。かかる構成によれば、シャッタ31を開閉することにより、第1吸気口24と第2吸気口26との吸気量のバランスを変化させることができる。第2吸気口26からの吸気量を増やし、第2吸気口26から排気口23に向かう風の量を増加させることにより、第1吸気口24から排気口23に向かう風の流れでは排気口23に誘導しにくい粉塵を排気口23に誘導することができる。第1吸気口24から排気口23に向かう風の流れが強いときには、当該風の流れの途中にある粉塵を排気口23に誘導することができる。これにより、排出されないで筐体21内に残る粉塵を減少させることができる。
【0084】
本実施形態では、シャッタ開閉装置としてのアダプタ移動装置50は、シャッタ31と保持部50Aとを連結する連結部材58を備えている。アダプタ移動装置50は、シャッタ31の開閉と保持部50Aに保持されたアダプタ5の移動とをともに行うように構成されている。かかる構成によれば、シャッタ31の開閉装置とアダプタ移動装置50とが共用されるため、切削加工機10の構成をシンプルにすることができる。
【0085】
本実施形態では、第2吸気口26は、アダプタ5の移動経路の一方のエンド(ここでは右方のエンド)のさらに先に設けられ、アダプタ移動装置50は、アダプタ5が上記一方のエンド(ここでは右方のエンド)に近づくほどシャッタ31を閉めるように構成されている。かかる構成によれば、アダプタ5が一方のエンドに近づくほど第2吸気口26の吸気量が増加する。言い換えると、粉塵が付着していたアダプタ5が第2吸気口26に近づくほど、第2吸気口26の吸気量が次第に増加する。そのため、粉塵の排出効率が良い。
【0086】
本実施形態では、排気口23は、第1吸気口24と第2吸気口26との間に設けられている。かかる構成によれば、第1吸気口24から排気口23に向かう風の方向と、第2吸気口26から排気口23に向かう風の方向とが異なる。そのため、シャッタ31の開閉による第1吸気口24と第2吸気口26との吸気量のバランスの変更の効果がより発揮される。例えば、第1吸気口24から排気口23に向かう風の方向と第2吸気口26から排気口23に向かう風の方向とが概ね同じであれば、基本的には、排気口23から遠い方の吸気量が大きければよい。そのため、かかる形態では、本実施形態に比べると、第1吸気口24と第2吸気口26との吸気量のバランスを変更するメリットは小さい。
【0087】
本実施形態では、排気口23は、アダプタ5の出入口22の開口方向(ここでは左右方向)と交差するように下壁部21Dに開口している。第1吸気口24は、出入口22の開口方向視において排気口23と向かい合うように上壁部21Uに開口している。かつ、第1吸気口24は、出入口22の開口方向に関し、クリーニング装置40よりも出入口22の近くに設けられている。かかる構成によれば、第1吸気口24から排気口23に向かう風の流れは、出入口22を塞ぐように、かつ、クリーニング装置40よりも出入口22寄りに発生する(
図6の矢印W1参照)。そのため、この風の流れにより、アダプタ5のクリーニングにより飛散した粉塵が出入口22から外部に出て行くことを抑制することができる。第1吸気口24から排気口23に向かう風の流れW1は、粉塵が出入口22から外部に出て行くことを抑制するエアカーテンとして機能する。
【0088】
さらに本実施形態では、排気口23は、出入口22の開口方向に関し、第1吸気口24よりも出入口22から離れて設けられている。かかる構成によれば、第1吸気口24から排気口23への風の流れは、筐体21の奥側(第1吸気口24から見て出入口22とは逆側であり、ここでは右方)に向かう。そのため、粉塵が出入口22から外部に出て行くことを抑制する効果がより発揮される。
【0089】
本実施形態では、排気口23は、出入口22の開口方向に関し、クリーニング装置40の出入口22側の端部よりも出入口22から離れて設けられている。クリーニング装置40の出入口22側の端部は、ここでは、第1回動アーム41および第2回動アーム42の先端(左端)である。かつ、クリーニング装置40と排気口23との間には隙間が設けられている。言い換えると、クリーニング装置40は、下壁部21Dから離れて設けられている。かかる構成によれば、第1吸気口24から排気口23への風W1は、クリーニング装置40と下壁部21Dとの間を通過する(
図6参照)。そのため、クリーニング装置40の周辺に存在する粉塵を効率よく排気口23に誘導することができる。なお、第1吸気口24から排気口23への風は、クリーニング装置40と上壁部21Uとの間も通過し(
図6の矢印W2参照)、クリーニング装置40の上面の周辺に存在する粉塵を排気口23に誘導する。
【0090】
本実施形態では、アダプタ5の出入口22に扉30が設けられている。この扉30により、粉塵が出入口22から外部に出て行くことをさらに抑制することができる。
【0091】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタ5のクリーニング中、扉30を閉めるように設定されている。切削加工機10は、これにより、アダプタ5から多くの粉塵が飛散するクリーニング中に粉塵が出入口22から外部に出て行くことを抑制している。
【0092】
アダプタ移動装置50は、保持部50Aが出入口22を通ってクリーニング室20の内部と外部とを行き来し、搬送装置15との間でアダプタ5を受け渡すように構成されている。本実施形態では、扉30は、アダプタ5の移動方向(ここでは左右方向)に回動することによって開閉する。扉30は、移動する保持部50Aによってアダプタ5の移動方向、ここでは左方に押されると開き、自重によって閉じる。かかる構成によれば、搬送装置15とアダプタ移動装置50との間のアダプタ5の受け渡しを利用して扉30を開閉することができるため、扉30を開閉する専用の開閉装置を設ける必要がない。
【0093】
[他の実施形態]
以上、一実施形態に係る切削加工機について説明した。しかし、切削加工機は上記したものに限定されない。
【0094】
例えば、上記した実施形態では、クリーニング装置40は、加工室11とは分離されたクリーニング室20に設けられていたが、例えば、加工室や収容室などに設けられていてもよい。加工室に設けられる場合、クリーニング装置は、アダプタの把持装置に圧縮エアを吹き付けるエアブロー装置などであってもよい。切削加工機は、複数のクリーニング室や、複数のクリーニング装置を有していてもよい。
【0095】
上記した実施形態では、搬送装置15は、アダプタ移動装置50との間でアダプタ5を受け渡していたが、クリーニング室20内にアダプタ5を持ち込むように構成されていてもよい。搬送装置の構成は特に限定されない。
【0096】
クリーニング装置の構成は、特に限定されない。例えば、クリーニング装置は、アダプタ保持部材の上下にノズルを有さなくてもよく、アダプタ保持部材の一方側にだけノズルを有していてもよい。ノズルは移動しなくてもよく、アダプタはクリーニング中に移動しなくてもよい。圧縮エアは複数のノズルから同時に噴射されてもよい。さらに、クリーニング装置のクリーニング方式は、アダプタに圧縮エアを吹き付ける方式でなくてもよい。
【0097】
クリーニング室に排気口、吸気口、吸気口のシャッタ、アダプタ出入口の扉などを設けるかどうかは任意であり、特に限定されない。設ける場合のそれらの配置も特に限定されない。
【0098】
切削装置、搬送装置、クリーニング装置、アダプタ移動装置などの制御は、上記したものに限定されない。例えば、搬送装置やクリーニング装置は、ユーザーが任意のタイミングで稼働させるものであってもよい。クリーニングされるアダプタは、切削加工後の被切削物を保持したアダプタには限定されない。その他、特に言及されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。例えば、切削加工機は、歯科用成形品を作製するデンタル用の切削加工機でなくてもよい。
【符号の説明】
【0099】
5 アダプタ
5D 下面(第2面)
5U 上面(第1面)
10 切削加工機
20 クリーニング室
40 クリーニング装置
41 第1回動アーム
41N 第1ノズル
42 第2回動アーム
42N 第2ノズル
43 回動軸
44 アクチュエータ
50 アダプタ移動装置
51 装着部(保持部材)
61 エア流路
61d エア供給口
62 流路切替部材
100 制御装置
M2 エアコンプレッサ