(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101890
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】加飾容器体
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20220630BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B65D25/20 A
B65D51/24 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216252
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 能久
【テーマコード(参考)】
3E062
3E084
【Fターム(参考)】
3E062AA04
3E062DA01
3E062DA05
3E062JA03
3E062JB01
3E062JB08
3E062JB27
3E062JC07
3E084AA04
3E084AA12
3E084BA03
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084GA08
3E084GB12
3E084JA10
3E084JA19
3E084LD30
(57)【要約】
【課題】 後加工による色付け等をしなくても加飾成形品の表面に形成された凹凸模様又は微細エンボス加飾を際立たせることで視覚的効果の向上を可能とした加飾容器体を創出することを課題とする。
【解決手段】 表面に凹凸模様A又は微細エンボス加飾Bによる加飾部13が形成された透明又は半透明から成る合成樹脂製の加飾成形体10Aの内側に、内パーツ20を設ける構成にとすることにより、内パーツ20の表面色を背景として、凹凸模様A又は微細エンボス加飾Bが浮き出て際立って見えるようになることから、加飾容器体10全体の視覚的な効果を向上させることが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸模様(A)又は微細エンボス加飾(B)による加飾部(13)が形成された透明又は半透明から成る合成樹脂製の加飾成形体(10A)の内側に、内パーツ(20)が設けられていることを特徴とする加飾容器体。
【請求項2】
加飾成形体(10A)がキャップである請求項1記載の加飾成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明又は半透明な加飾成形品の内側に内パーツを備える加飾容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱した金属製の刻印で透明PETフィルムを挟んで合成樹脂製の成形品の表面を熱加圧する空押しホットスタンプ法により、成形品の表面に凹凸模様による加飾を有する加飾成形品が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加飾成形品のように、単に成形品の表面に凹凸模様を形成しただけの加飾では視覚的な効果が限定的であることから、塗装や蒸着等の後加工によって色付けを加えたり、透明PETフィルムの代わりに着色層を有する転写シートを用いて空押しホットスタンプと同時に色付けたりすることにより、視覚的な効果を向上させることが必要とされていた。
特に、凹凸模様を構成する凹部と凸部の高低差が小さな微細なデザインの場合にあっては、塗膜(アンダーコート)の量や条件のばらつきによっては微細な凹凸模様が埋まってしまうことがあり、加飾再現性が低く、微細な凹凸模様を視認しにくくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、後加工による色付け等をしなくても加飾成形品の表面に形成された凹凸模様又は微細エンボス加飾を際立たせることで視覚的効果の向上を可能とした加飾容器体を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる手段は、
表面に凹凸模様又は微細エンボス加飾による加飾部が形成された透明又は半透明から成る合成樹脂製の加飾成形体の内側に、内パーツが設けられていることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、内パーツが、加飾成形体に形成されている凹凸模様又は微細エンボス加飾を浮き出させ際立たせることから、加飾容器体の視覚的な効果を向上させることができる。
【0007】
また本発明の他の手段は、上記本発明の主たる手段に、加飾成形体がキャップである、との手段を加えたものである。
上記手段では、内パーツの外側をキャップで覆うタイプの加飾容器体の意匠性を高め、視覚的効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、内パーツが、加飾成形品に形成された凹凸模様又は微細エンボス加飾浮き出させ際立たせるため、加飾容器体の意匠性を高め、視覚的効果を向上させることができる。
【0009】
また色付けするための後加工が不要となるため、微細な凹凸模様が埋まることがなく、微細な凹凸模様(微細エンボス加飾)であっても確実に視認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施例として(a)は通常の加飾(文字絵柄)が形成された加飾成形体の一例を示す概念図、(b)は(b)の加飾成形体の内側に内パーツを設けた加飾容器体を示す概念図である。
【
図2】(a)は本発明の第1実施例に示す加飾成形体の一例としてのキャップを示す斜視図、(b)はキャップ内に塗装を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、(c)はキャップ内にアルマイト加工を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施例として、(a)は微細エンボス加飾が形成された加飾成形体の一例を示す概念図、(b)は(a)の加飾成形体の内側に内パーツを設けた加飾容器体を示す概念図である。
【
図4】(a)は本発明の第2実施例に示す加飾成形体の一例としてのキャップを示す斜視図、(b)はキャップ内に樹脂製の内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、(c)はキャップ内にホットスタンプ加工を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、(d)はキャップ内に塗装を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、(e)はキャップ内にアルマイト加工を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例として、(a)は通常の加飾(文字絵柄)が形成された加飾成形体の一例を示す概念図、(b)は(b)の加飾成形体の内側に内パーツを設けた加飾容器体を示す概念図、
図2(a)は本発明の第1実施例に示す加飾成形体の一例としてのキャップを示す斜視図、
図2(b)はキャップ内に塗装を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、
図2(c)はキャップ内にアルマイト加工を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図である。
【0012】
図1に第1実施例として示す加飾容器体10は、表面に加飾部13が形成された透明又は半透明な合成樹脂材料から成る加飾成形体10Aと、例えば手押し式ポンプ容器のヘッド部などの内パーツ20とを有して形成されている。
【0013】
加飾成形体10Aは、円板上の頂壁11の外周端に筒状の側壁12を備えた有頂筒状の部材であり、本実施例に示す加飾成形体10Aは内パーツ20を覆うキャップとして使用されている。加飾成形体10Aを形成する合成樹脂材料としては、例えばPP(ポリプロピレン)樹脂、PCTA樹脂、PCTG樹脂やPET-G樹脂等が好ましい。また、キャップに透明性を求められる場合にはPCTA樹脂、PCTG樹脂やPET-Gが好ましい。尚、PCTA樹脂はテレフタル酸(TA)とイソフタル酸(IPA)を主成分とするジカルボン酸成分と、1、4シクロヘキサンジメタノールジオール(CHDM)を主成分とするジオール成分から成るポリエステル系樹脂である。
【0014】
加飾部13は、文字、図形、記号又は色彩若しくはこれらを組み合わせて成る凹凸模様Aが形成された金属製の刻印(図示せず)を用いて形成される。すなわち、凹凸模様Aは、所定の温度(180~190℃)に加熱した刻印と側壁12の間に透明PETフィルムなどを介在させながら側壁12を加圧すると、側壁12の一部が溶けて刻印側の凹凸模様Aが側壁12の表面に熱転写(「空押しホットスタンプ」ともいう)されることによって形成される。
【0015】
加飾成形体10AをPP(ポリプロピレン)樹脂で形成した構成では、溶けた樹脂による凸部の盛り上がり量を大きくできるため、凹凸模様Aを外観視的に目立たせることが可能となる点で好ましい。
他方、加飾成形体10AをPCTA樹脂で形成した構成では、PP(ポリプロピレン)樹脂に比較して溶けた樹脂による凸部の盛り上がり量は小さくなるが、凹部の角がシャープな溝として形成されるため、凹凸模様Aを外観視的に目立たせることが可能となる点で好ましい。
【0016】
しかしながら、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、上記構成から成る加飾成形体10A(キャップ)単独では、加飾部13が周囲に溶け込んでしまって目立ち難く、視覚的な効果も弱い状態にある。
【0017】
図1(b)、
図2(b)(c)は、上記構成からなる加飾成形体10Aであるキャップを、例えば手押し式のポンプ容器(内パーツ)に装着した加飾容器体10を示している。この構成では、加飾成形体10A(キャップ)の内側に内パーツ20を設けた加飾容器体10では、内パーツ20の表面色を背景として、加飾成形体10A(キャップ)の側壁12に刻設されている加飾部13を構成する凹凸模様Aが浮き出て際立つようになることから、加飾容器体10全体の視覚的な効果を向上させることができる。
【0018】
図3は本発明の第2実施例として、(a)は微細エンボス加飾が形成された加飾成形体の一例を示す概念図、(b)は(a)の加飾成形体の内側に内パーツを設けた加飾容器体を示す概念図、
図4(a)は本発明の第2実施例に示す加飾成形体の一例としてのキャップを示す斜視図、
図4(b)はキャップ内に樹脂製の内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、
図4(c)はキャップ内にホットスタンプ加工を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、
図4(d)はキャップ内に塗装を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図、
図4(e)はキャップ内にアルマイト加工を施した内パーツを設けた加飾容器体を示す斜視図である。
【0019】
図3及び
図4に第2実施例として示す加飾容器体10が、上記第1実施例の加飾容器体10と異なる点は加飾部13の構成にあり、それ以外の構成及び効果は上記第1実施例同様である。よって、同一の部材について同一の符号を付して説明する。
図3に示すように、第2実施例では加飾部13が微細な凹凸模様から成る微細エンボス加飾Bによって形成されている。より詳しくは、微細エンボス加飾Bは、例えば図示しないロール状の刻印に形成された微細彫刻部と側壁12との間に透明PETフィルム等を介在させた状態において、ロール状の刻印を回転させながら刻印側の微細彫刻部を側壁12に熱転写(空押しホットスタンプ)することによって形成された多数の微細な凹線及び凸線を組み合わせて成る文字絵柄等で形成されている。
【0020】
図3(a)及び
図4(a)に示すように、加飾成形体10A(キャップ)が透明又は半透明からなる側壁12に加飾部13として微細エンボス加飾Bを備える構成であっても、第1実施例同様に、加飾成形体10A(キャップ)単独では加飾部13が周囲に溶け込んでしまって目立ち難く、視覚的な効果も弱い状態にある。
【0021】
他方、
図4(b)乃至(e)に示すように、上記構成からなる加飾成形体10Aであるキャップを、例えば内パーツ20(本実施例では、手押し式のポンプ容器)の外側に配置した状態では、内パーツ20の表面色を背景として、加飾成形体10A(キャップ)の側壁12に刻設されている微細エンボス加飾B(加飾部13)が浮き出て際立って見えるようになることから、加飾容器体10全体の視覚的な効果を向上させることができる。
【0022】
上記加飾容器体10では、側壁12から浮き出て際立って見える微細エンボス加飾Bが、ガラス細工のような印象を与えるため、全体として高級感を付与することできる。
また加飾成形体10Aの内側に設ける内パーツ20の表面については、その色は自由に選択することが可能であり、また蒸着、塗装、ホットスタンプ、転写箔、印刷等の手段により自由に加飾することもできるため、これらの色又は加飾と相まって視覚性及び外観性を向上させることが可能である。
【0023】
また加飾部13に対して、従来のような塗装や蒸着等の後加工による色付け、又は転写シートを用いた色付けを行う必要がないため、製造コストを低減でき。また加飾部13が微細エンボス加飾Bに場合にあっては、微細エンボス加飾Bが色付け時に埋もれてしまうこともない。
【0024】
また例えば、内パーツ20の表面を蒸着等による鏡面仕上げとした場合にあっては、内パーツ20の表面に写り込んだ凹凸模様A又は微細エンボス加飾Bから成る加飾部13の像が、透明又は半透明に形成された側壁12を透かして元々の凹凸模様A又は微細エンボス加飾Bと一緒に視認することができるため、更に意匠性を向上させることができる。
【0025】
更には、加飾成形体10Aを成形するための金型を1品ごとに製作する必要がなく、同じ金型を使用し、刻印のデザインを変更するだけで凹凸模様Aや微細エンボス加飾Bによる疑似彫刻品を形成することができる。
【0026】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0027】
例えば、上記実施例では、円筒状の加飾成形体10Aの側壁12に加飾部13を形成する場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、楕円状、角筒状その他の形状の側壁であってもよい。また加飾部を形成する位置は、加飾成形体の側壁に限定されるものではなく、加飾成形体の天壁、底壁などその他の位置であってもよい。
【0028】
また上記実施例では、加飾容器体を構成する加飾成形体の一例としてキャップを示して説明したが、これに限られるものではなく、その他例えば内容器と外容器から成る二重容器の外容器を加飾成形体とする構成であってもよい。
【0029】
また上記実施例では、成形体の表面に対してロール状刻印を用いて微細エンボス加飾を行う場合について説明したが、凸版などこれに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、透明又は半透明な加飾成形品の内側に内パーツを備える加飾容器体の意匠性を高めようとする分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 : 加飾容器体
10A: 加飾成形体
11 : 頂壁
12 : 側壁
13 : 加飾部
20 : 内パーツ
A : 凹凸模様
B : 微細エンボス加飾