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  • 特開-骨芽細胞分化誘導用食品組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101897
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】骨芽細胞分化誘導用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20220630BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20220630BHJP
【FI】
A23L33/105
C12N5/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216264
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】溝口 真帆代
(72)【発明者】
【氏名】武島 登志郎
(72)【発明者】
【氏名】各務 明徳
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 守
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018LE03
4B018LE06
4B018MD53
4B018ME05
4B018MF07
4B018MF14
4B065AA91X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA21
4B065BD43
4B065CA27
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】骨芽細胞分化誘導能を向上させる。
【解決手段】骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする骨芽細胞分化誘導用食品組成物。
【請求項2】
前記レッドオーク、及び前記ロロロッサから選ばれる少なくとも一種がカットされた状態で容器に詰められている請求項1に記載の骨芽細胞分化誘導用食品組成物。
【請求項3】
前記レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種が粉末状に形成されている請求項1に記載の骨芽細胞分化誘導用食品組成物。
【請求項4】
前記レッドオーク、及び前記ロロロッサを有効成分として含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨芽細胞分化誘導用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、スイートバジル、ホーリーバジル、コモンタイム、イタリアンラージリーフおよびフェンネルからなる群から選択される1種または2種以上の植物の抽出物を有効成分として含有する前駆骨芽細胞分化誘導剤について記載している。
【0003】
特許文献2は、レタスの種、沈香、イネ、乳香、白朮、及び、菟絲子を所定の重量比で含む医薬組成物について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6560471号公報
【特許文献2】特表2005-533020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、骨粗鬆症の予防に関する関心が高まっており、骨粗鬆症を予防する各種の食品組成物が提案されている。このような食品組成物は、骨粗鬆症の予防効果を高めるために、骨芽細胞分化誘導能のさらなる向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ALP活性の測定結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、骨芽細胞分化誘導用食品組成物の一実施形態を説明する。
本実施形態の骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する。
【0009】
上記骨芽細胞分化誘導用食品組成物が、レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することにより、骨芽細胞分化誘導能を好適に向上させることができる。
【0010】
上記骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、レッドオーク、及びロロロッサを有効成分として含有することが好ましい。すなわち、骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、レッドオークとロロロッサの両方を有効成分として含有することが好ましい。
【0011】
上記レッドオーク、及びロロロッサは、一般にリーフレタスと呼ばれる葉野菜に分類される。レッドオークは、レッドオーク・リーフレタスとも呼ばれる。
上記「有効成分として含有する」とは、レッドオークやロロロッサが加工された形態で含有されていることを意味するものとする。加工された形態としては特に制限されないが、例えば小片状にカットされた形態や、粉末状、顆粒、ペースト状、カプセル、タブレットや錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(飲料パウダー、ドリンク剤等)、ゼリー剤等の形態を含むものとする。
【0012】
これらの中でも、骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種がカットされた状態で容器に詰められていることが好ましい。
レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種がカットされた状態で容器に詰められていることにより、容器を開封するだけでサラダ等の料理食材として簡単に喫食することができる。
【0013】
小片状にカットされた形態に特に制限はないが、例えば幅0.1~5.0mmの千切りした形状や、1~10cm角の角切りした形状であると、消費者が食べやすくなるため好ましい。上記千切りした形状と上記角切りした形状とが混合されていてもよい。
【0014】
また、上記容器の形状に特に制限はないが、例えば袋型、カップ型、ボール型等の形状を採用することができる。また、容器の材質も特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を採用することができる。
【0015】
上記骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、ALP活性の相対値が1.2以下とならない範囲で、レッドオーク、及びロロロッサ以外の葉野菜を含んでいてもよい。レッドオーク、及びロロロッサ以外の葉野菜としては、ALP活性の相対値が1以上であるものが好ましい。ALP活性の相対値が1以上である葉野菜としては、例えばレッドオーク、及びロロロッサ以外のベビーリーフが挙げられる。レッドオーク、及びロロロッサ以外のベビーリーフの具体例としては、例えばミズナ、レッドマスタード、コマツナ等が挙げられる。
【0016】
上記骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、食品添加用組成物や食品用材料組成物として用いられてもよい。骨芽細胞分化誘導用食品組成物を食品添加用組成物や食品用材料組成物として用いる場合には、その形態としては特に制限されず、例えば、液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状等が挙げられる。より具体的には、調味料(甘味料、食塩代替組成物、醤油、酢、味噌、ソース、ケチャップ、ドレッシング、スパイス、ハーブ等、フレーク(ふりかけ、炊飯添加剤等)、焼き肉のたれ、ルーペースト(カレールーペースト等))、食材プレミックス品等が挙げられる。
【0017】
また、骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、食品に許容される添加物を含有していてもよい。食品に許容される添加物としては、特に制限はないが、例えば溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、pH調整剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、流動性改善剤、湿潤剤、香科、調味料、風味調整剤等が挙げられる。これら添加物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に及ぼす影響として許容される範囲内において含有させることができる。
【0018】
上記骨芽細胞分化誘導用食品組成物の分類としては、特に制限されず、一般食品や保健機能食品、特別用途食品等に使用することができる。また、保険機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等に使用することができる。
【0019】
用途の表示を付す場合、各種法律、施行規則、ガイドライン等によって定められた表示が挙げられる。用途の表示には、例えば包装、容器等のパッケージへの表示の他、パンフレット等の広告媒体への表示も含まれる。
【0020】
本実施形態の用途の表示としては、例えば、「骨の強化」、「骨密度改善」等の表示や、これらを示唆する表示が挙げられる。
骨芽細胞分化誘導用食品組成物の摂取対象は、特に制限されないが、ヒトの他、ペット又は家畜等の飼養動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、リャマ、ラット、マウス等であってもよい。すなわち、骨芽細胞分化誘導用食品組成物は、ペット用食品組成物や、家畜用食品組成物であってもよい。
【0021】
骨芽細胞分化誘導用食品組成物の製造方法について説明する。
骨芽細胞分化誘導用食品組成物の製造方法としては、レッドオークとロロロッサの少なくとも一種の葉野菜を栽培する栽培工程と、栽培工程で得られた葉野菜を加工する加工工程と、加工工程で加工された葉野菜を容器に詰める充填工程とを有している。
【0022】
栽培工程では、土を使用せずに、液肥を用いて植物を栽培する水耕栽培を行うことが好ましい。水耕栽培を行うことにより、例えば室内において栽培することが可能になるため、栽培条件の管理を行うことが容易になる。また、栽培条件を最適化して、骨芽細胞分化誘導能がより向上した葉野菜を栽培することが可能になる。
【0023】
加工工程では、栽培工程で得られた葉野菜をカット(以下、裁断ともいう。)して小片状にする。葉野菜を裁断する方法は特に制限はなく、公知の裁断器具を用いることができる。公知の裁断器具としては、例えばスライサー、カッター、ピーラー等が挙げられる。裁断器具を使用せずに、手作業で裁断を行ってもよい。
【0024】
充填工程では、加工工程を経た葉野菜を容器に充填する。容器に充填する際、葉野菜が所定の重量となるように計量することが好ましい。また、葉野菜を充填した後、容器の開口部を密封することが好ましい。充填工程では、複数の葉野菜を混合して充填してもよい。
【0025】
以上の各工程を経ることにより、骨芽細胞分化誘導用食品組成物を製造することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
【0026】
(1)骨芽細胞分化誘導用食品組成物が、レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することにより、骨芽細胞分化誘導能を好適に向上させることができる。
【0027】
(2)レッドオーク、及びロロロッサから選ばれる少なくとも一種がカットされた状態で容器に詰められている。容器を開封するだけでサラダ等の料理食材として簡単に喫食することができるため、消費者の利便性が向上する。
【0028】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0029】
・本実施形態では、骨芽細胞分化誘導用食品組成物の製造方法として、栽培工程、加工工程、及び充填工程を有していたが、この態様に限定されない。栽培工程を有することなく構成されていてもよい。例えば、栽培工程に代えて、市販のレッドオークとロロロッサの少なくとも一種を購入して、骨芽細胞分化誘導用食品組成物を製造してもよい。また、充填工程が省略されていてもよい。
【実施例0030】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
まず、骨芽細胞分化誘導用食品組成物の製造方法として、以下の栽培条件でレッドオークとロロロッサを栽培した。
【0031】
温度:21~27℃
湿度:55~100%
液肥:電気伝導度2.0mS/cm、pH5.0~6.2
CO濃度:1000ppm
照明:LEDライト(照射時間15~22時間)
栽培工程は、水耕栽培によって行い、上記液肥としては市販のものを使用した。種まき日から約17日間で収穫を行った。
【0032】
栽培された野菜が固定されているウレタン培地表面から20mm上方の位置で切断して収穫した野菜の幼葉を、単一種類で150gとして分析サンプルとした。なお、収穫した野菜は水洗いや加熱調理などはせずに、そのまま用いた。以上の手順により、実施例1の骨芽細胞分化誘導用食品組成物を作製した。
【0033】
(評価試験)
実施例1の容器からレッドオークとロロロッサを取り出して、骨芽細胞分化誘導能を評価した。骨芽細胞分化誘導能の評価は、アルカリフォスファターゼ活性(以下、ALP活性ともいう。)を測定することによって行った。比較として、レッドオークとロロロッサ以外の葉野菜を用いて作製した食品組成物についても同様にALP活性を測定した。
【0034】
図1に示す各葉野菜150gを乾燥した。乾燥した葉野菜1gを抽出容器としての瓶に入れた。この瓶に、抽出溶媒としてのアセトン濃度が70%のアセトン溶液を入れて、20℃の暗所にて1日間抽出を行った。抽出を行ったアセトン溶液を濾過して、上澄み液を採取した。上澄み液を乾燥させて、残渣をサンプルとして得た。
【0035】
次に、骨芽細胞として、マウス頭蓋骨由来前駆骨芽細胞(以下、「MC3T3-E1細胞」という。)を理化学研究所より入手した。MC3T3-E1細胞を、10%牛胎児血清、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するMEM-α培地中、37℃-COインキュベータ(空気:CO=95:5(体積%))内で培養した。
【0036】
1×10細胞/mLに調整したMC3T3-E1細胞を、24ウェルマルチプレートに500μLずつ播種し、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)培地中で12時間培養した。その後、上記サンプルを終濃度が、25μg/mLと、50μg/mLとになるように添加した分化誘導培地(osteoblast differentiation medium(ODM))を用いて培養を行なった。
【0037】
なお、分化誘導培地(ODM)としては、10w/v%FBS、10mM β-グリセロフォスフェート(Sigma、St.Louis.USA)、10mM HEPES(pH6.8)、0.28mM(または50μg/mL)L-アスコルビン酸を含有し、フェノールレッドを含有しないα-MEM培地を用いた。
【0038】
72時間培養を行なった後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(-)で2度洗浄し,細胞溶解液(10mM Tris-HCl、1mM MgCl、0.5%TritonX-100、pH8.0)を各ウェルに50μLずつ加えて細胞を溶解させた。
【0039】
この細胞溶解液をそれぞれ0.5mLのチューブに移し、超音波破砕後、6,200×gにて遠心分離して上清を得た。上清中のALP活性をLabAssayTM ALP kit(富士フイルム和光純薬株式会社)により発色させ、分光光度計Varioskan LUX(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)を用いて波長405nmでの吸光度を測定した。吸光度の測定値から、ALP活性を以下の計算式により求めた。
【0040】
活性(units/μL)=[{(処理サンプルの吸光度-ブランクの吸光度)に対するp-ニトロフェノール濃度(nmol/μL)}/15(反応時間)]×2(希釈係数)
ALP活性(units/μg protein)=活性(units/μL)/タンパク質濃度(μg/μL)
なお、タンパク質濃度は、Bio Rad DCプロテインアッセイキット(Bio Rad、Hercules、CA、USA)により測定した。陰性対照としては、まず、サンプルを添加せず、かつ分化誘導培地ではなくDMEM培地中で培養した系(陰性対照)を実施した。
【0041】
図1に、ALP活性の測定結果を示す。図1では、陰性対照における測定値(図1の左端)を1として、各サンプルの測定値を相対値で比較した。
図1より、実施例1のレッドオークとロロロッサは、いずれもALP活性の相対値が1.2を超えており、骨芽細胞分化誘導能が高いことが確認された。
図1