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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101900
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】レーザ加工装置とレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220630BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20220630BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220630BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B23K26/00 N
B23K26/082
H01S3/00 B
H01S3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216269
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】西川 恭生
【テーマコード(参考)】
4E168
5F172
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA11
4E168CB04
4E168DA06
4E168DA43
4E168EA15
4E168KA04
5F172AE09
5F172EE12
5F172NN15
5F172NP03
5F172NQ07
5F172NQ62
5F172ZZ01
(57)【要約】
【課題】加工レーザ光によるレーザ加工の動作モードに応じ、レーザ加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能なレーザ加工装置等を提供すること。
【解決手段】レーザ加工装置は、マーキング加工を開始する際において、第1モードを動作モードに設定する場合(S28:YES)、第1駆動エネルギーをダイオード結晶に供給し(S32)、第2モードを動作モードに設定する場合(S28:NO)、第2駆動エネルギーをダイオード結晶に供給し(S36)、所定条件が成立するときに(S38:YES)、第2駆動エネルギーから切り換えられる第1駆動エネルギーをダイオード結晶に供給することによって(S40,S32)、マーキング加工に適した出力を有する加工レーザ光をレーザ発振器から出射させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される駆動エネルギーに対応する強度で励起光を出射する励起光出射部と、
前記励起光の照射に応じて加工レーザ光を出射する加工レーザ光出射部と、
前記加工レーザ光を走査する走査部と、
前記走査部を加工データに基づいて動作させて、前記加工レーザ光によるレーザ加工を行う制御部と、
前記レーザ加工の動作条件に関する情報の入力を受付けて動作モードを設定する動作条件受付部と、
前記動作モードに基づいて、前記励起光出射部に供給される前記駆動エネルギーを、第1駆動エネルギー又は前記第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きい第2駆動エネルギーに設定する励起光強度設定部と、を備え、
前記制御部は、
前記動作条件受付部にて第1モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、前記レーザ加工を開始する際に、前記励起光強度設定部にて設定される前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させ、
前記動作条件受付部にて第2モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、前記レーザ加工を開始する際に、前記励起光強度設定部にて設定される前記第2駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給した後、所定条件が成立するときに前記第2駆動エネルギーから切り換えられる前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1モードは、製造ライン上で連続的に搬送される複数のワークに対して前記レーザ加工を行うモードであり、
前記第2モードは、所定位置に個別に配置される毎に位置調整が行われるワークに対して前記レーザ加工を行うモードであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記走査部でワーク上に走査される可視光を出射する可視光出射部を備え、
前記動作条件受付部は、前記レーザ加工の動作条件に関する情報の一つとして、前記可視光出射部の動作設定に関する可視光情報の入力を受付ける場合、前記可視光情報に前記可視光出射部を動作させない旨の情報が含まれるときは、前記第1モードに前記動作モードを設定し、前記可視光情報に前記可視光出射部を動作させる旨の情報が含まれるときは、前記第2モードに前記動作モードを設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記加工レーザ光の出力を測定するセンサを備え、
前記所定条件は、前記センサの測定値が所定値を超えるときに成立することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記加工レーザ光出射部の内部温度を測定する温度センサを備え、
前記所定条件は、前記温度センサの測定値が所定内部温度を超えるときに成立することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第2駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給する時間を測定するタイマを備え、
前記所定条件は、前記タイマの測定値が所定時間を超えるときに成立することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ加工装置の環境温度に関する情報を取得する温度情報取得部を備え、
前記制御部は、
前記温度情報取得部で取得する前記環境温度が所定環境温度を超える場合に、前記動作条件受付部にて前記第2モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付けるときは、前記レーザ加工を開始する際において、前記第2駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することを取り止める一方で、前記所定条件の成立とは無関係に前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
供給される駆動エネルギーに対応する強度で励起光を出射する励起光出射部と、
前記励起光の照射に応じて加工レーザ光を出射する加工レーザ光出射部と、
前記加工レーザ光を走査する走査部と、
レーザ加工の動作条件に関する情報の入力を受付けて動作モードを設定する動作条件受付部と、
前記動作モードに基づいて、前記励起光出射部に供給される前記駆動エネルギーを、第1駆動エネルギー又は前記第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きい第2駆動エネルギーに設定する励起光強度設定部と、を備えるレーザ加工装置が、前記走査部を加工データに基づいて動作させることによって、前記加工レーザ光による前記レーザ加工を行うレーザ加工方法であって、
前記動作条件受付部にて第1モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、前記レーザ加工を開始する際に、前記励起光強度設定部にて設定される前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させる第1モード工程と、
前記動作条件受付部にて第2モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、前記レーザ加工を開始する際に、前記励起光強度設定部にて設定される前記第2駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給した後、所定条件が成立するときに前記第2駆動エネルギーから切り換えられる前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させる第2モード工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工レーザ光によるレーザ加工を行うレーザ加工装置とレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記レーザ加工装置等に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載のレーザ加工装置は、加工対象物を加工する為のレーザ光を出射するレーザ光出射部と、前記レーザ光出射部を励起状態にする為の励起光を、駆動電流に対応する強度で前記レーザ光出射部へ出射する励起光出射部と、前記レーザ光出射部から出射されたレーザ光を走査する走査部と、前記励起光出射部に対する前記駆動電流の供給と、前記走査部による走査に関する制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記加工対象物に対する前記レーザ光による加工を開始する際に、加工時のレーザ光の出力よりも高い出力で前記レーザ光を出射する場合に対応する初期駆動電流を、前記励起光出射部に対して供給すると共に、前記初期駆動電流が前記励起光出射部に対して供給されている初期駆動電流供給期間内であって、当該初期駆動電流供給期間の開始から所定の待機期間を経過した時点で、前記走査部による前記レーザ光の走査を開始することを特徴とする。
【0003】
当該レーザ加工装置によれば、制御部による制御によって、加工対象物に対するレーザ光による加工を開始する際に、前記励起光出射部に対して初期駆動電流を供給する為、加工時における出力のレーザ光を出射可能となるまでの期間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-159313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加工時における出力のレーザ光を出射可能となるまでの期間については、レーザ光による加工のモードによっては短縮する必要がない場合もある。
【0006】
そこで、本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、加工レーザ光によるレーザ加工の動作モードに応じて、レーザ加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能なレーザ加工装置とレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、供給される駆動エネルギーに対応する強度で励起光を出射する励起光出射部と、励起光の照射に応じて加工レーザ光を出射する加工レーザ光出射部と、加工レーザ光を走査する走査部と、走査部を加工データに基づいて動作させて、加工レーザ光によるレーザ加工を行う制御部と、レーザ加工の動作条件に関する情報の入力を受付けて動作モードを設定する動作条件受付部と、動作モードに基づいて、励起光出射部に供給される駆動エネルギーを、第1駆動エネルギー又は第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きい第2駆動エネルギーに設定する励起光強度設定部と、を備え、制御部は、動作条件受付部にて第1モードを動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、レーザ加工を開始する際に、励起光強度設定部にて設定される第1駆動エネルギーを励起光出射部に供給することによって、レーザ加工に適した出力を有する加工レーザ光を加工レーザ光出射部から出射させ、動作条件受付部にて第2モードを動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、レーザ加工を開始する際に、励起光強度設定部にて設定される第2駆動エネルギーを励起光出射部に供給した後、所定条件が成立するときに第2駆動エネルギーから切り換えられる第1駆動エネルギーを励起光出射部に供給することによって、レーザ加工に適した出力を有する加工レーザ光を加工レーザ光出射部から出射させることを特徴とするレーザ加工装置を開示する。
【0008】
また、本明細書は、供給される駆動エネルギーに対応する強度で励起光を出射する励起光出射部と、前記励起光の照射に応じて加工レーザ光を出射する加工レーザ光出射部と、前記加工レーザ光を走査する走査部と、レーザ加工の動作条件に関する情報の入力を受付けて動作モードを設定する動作条件受付部と、前記動作モードに基づいて、前記励起光出射部に供給される前記駆動エネルギーを、第1駆動エネルギー又は前記第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きい第2駆動エネルギーに設定する励起光強度設定部と、を備えるレーザ加工装置が、前記走査部を加工データに基づいて動作させることによって、前記加工レーザ光による前記レーザ加工を行うレーザ加工方法であって、前記動作条件受付部にて第1モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、前記レーザ加工を開始する際に、前記励起光強度設定部にて設定される前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させる第1モード工程と、前記動作条件受付部にて第2モードを前記動作モードに設定する旨の情報の入力を受付ける場合、前記レーザ加工を開始する際に、前記励起光強度設定部にて設定される前記第2駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給した後、所定条件が成立するときに前記第2駆動エネルギーから切り換えられる前記第1駆動エネルギーを前記励起光出射部に供給することによって、前記レーザ加工に適した出力を有する前記加工レーザ光を前記加工レーザ光出射部から出射させる第2モード工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、レーザ加工装置及びレーザ加工方法は、加工レーザ光によるレーザ加工の動作モードに応じて、レーザ加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のレーザ加工装置の概略構成が表された図である。
図2】同レーザ加工装置の概略構成が表された図である。
図3】同レーザ加工装置のレーザ発振器の概略構成が表されたブロック図である。
図4】同レーザ加工装置の電気的構成が表されたブロック図である。
図5】同レーザ加工装置のレーザ発振器における、規格化電流値と立ち上がり時間との関係が表された図である。
図6】同レーザ加工装置が実行する各処理のフローチャートである。
図7】同レーザ加工装置が実行する各処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示のレーザ加工装置について、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる図1乃至図4では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0012】
[1.レーザ加工装置の概略構成]
先ず、図1乃至図4に基づいて、本実施形態のレーザ加工装置1の概略構成について説明する。本実施形態のレーザ加工装置1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
【0013】
レーザ加工部3は、加工レーザ光RをワークW上で2次元走査してレーザマーキング(印字)加工(以下、「マーキング加工」という。)を行うものである。マーキング加工の動作モードには、第1モード(図1参照)と、第2モード(図2参照)とがある。第1モードは、例えば、製造ライン200のコンベア202上で連続的に搬送される複数のワークWに対して行われる、マーキング加工に適したモードである。第2モードは、例えば、不動のステージ204上の所定位置206に個別に配置されるワークWに対して行われる、マーキング加工に適したモードである。尚、ステージ204上のワークWに対しては、所定位置206に配置される毎に、その位置調整が行われる。
【0014】
レーザ加工部3は、レーザコントローラ6を備えている。レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字データ、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。ここで、印字データとは、ワークW上において加工レーザ光Rによりマーキング加工される印字パターンの加工位置を示すXY座標データと、XY座標データにマーキング加工の条件である加工条件を示す加工条件データとが対応付けられたデータである。尚、印字データには、後述するマーキング加工の動作条件に関する情報が付加されてもよい。
【0015】
レーザ加工部3の概略構成について説明する。レーザ加工部3は、加工レーザ光源12、可視レーザ光源15、ダイクロイックミラー101、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0016】
加工レーザ光源12は、レーザドライバ37及びレーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21(図3参照)は、YVO4レーザ等で構成されており、紫外線領域の加工レーザ光Rを発振し出射するものであって、ダイオード結晶103、レンズ105、第1ミラー107、レーザ結晶109、アウトプットカップラ111、中間ミラー113、SHG結晶115、THG結晶117、Qスイッチ119、及び第2ミラー121等を備えている。Qスイッチ119は、パッシブ/アクティブのいずれでもよいが、本実施形態では、アクティブQスイッチを使用する。
【0017】
ダイオード結晶103では、駆動エネルギーがレーザドライバ37によって供給されると、その駆動エネルギーに対応する強度の励起光123が出射される。励起光123は、レンズ105で集光され、第1ミラー107を透過して、レーザ結晶109に入射する。レーザ結晶109は、励起光123を吸収することによって励起されて、光を放出する。レーザ結晶109からの光は、その進行方向をアウトプットカップラ111及び中間ミラー113で変更され、SHG結晶115、THG結晶117、及びQスイッチ119を経て、第2ミラー121で折り返す。その後、レーザ結晶109からの光は、第1ミラー107と第2ミラー121との間を繰り返し往復することによって増幅され、その際に、SHG結晶115及びTHG結晶117を通過することによって波長変換される。このようにして、レーザ結晶109からの光は、レーザ発振され、その一部が、加工レーザ光Rとして、アウトプットカップラ111から出射される。その際、加工レーザ光Rは、Qスイッチ119によって、パルス出力される。尚、加工レーザ光Rの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
【0018】
更に、レーザ発振器21は、パワーメータ23及び温度センサ25を備えている。パワーメータ23は、第1ミラー107と第2ミラー121との間を繰り返し往復する光の出力を測定するものである。そのため、中間ミラー113には、ビームスプリッターが用いられている。これにより、中間ミラー113では、第1ミラー107と第2ミラー121との間を繰り返し往復する光の一部が、透過することによって、パワーメータ23に向かっている。温度センサ25は、レーザ発振器21の内部温度を測定するものである。
【0019】
可視レーザ光源15は、半導体レーザドライバ38及び可視半導体レーザ28等で構成されている。可視半導体レーザ28は、可視可干渉光である可視レーザ光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。可視レーザ光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、更に、2次元走査されることによって、加工レーザ光Rでマーキング加工すべき印字パターンの像を、ワークW上に軌跡(時間残像)で映し出すものである。つまり、可視レーザ光Qには、マーキング加工の能力がない。尚、可視レーザ光Qによって、加工レーザ光Rでマーキング加工すべき印字パターンの像を取り囲んだ矩形の像、又は所定形状の像等が、ワークW上に軌跡(時間残像)で映し出されてもよい。
【0020】
ダイクロイックミラー101では、入射された加工レーザ光Rのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、加工レーザ光Rが透過する略中央位置にて、可視レーザ光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角で加工レーザ光Rの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理がなされており、可視レーザ光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0021】
ガルバノスキャナ18は、ダイクロイックミラー101を経た加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた第1ガルバノミラー18X及び第2ガルバノミラー18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、第1ガルバノミラー18X及び第2ガルバノミラー18Yを回転させることによって、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X方向とY方向である。X方向の走査は、第1ガルバノミラー18Xの回転で行われる。Y方向の走査は、第2ガルバノミラー18Yの回転で行われる。第1ガルバノミラー18Xには、指向性に優れた加工レーザ光Rが入射する。これに対して、第2ガルバノミラー18Yには、回転する第1ガルバノミラー18Xで反射した加工レーザ光Rが入射する。
【0022】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査された加工レーザ光Rと可視レーザ光QとをワークW上に集光するものである。従って、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、ワークW上でX方向とY方向に2次元走査される。
【0023】
次に、レーザ加工装置1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について図4に基づいて説明する。先ず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
【0024】
図4に表されたように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、及び半導体レーザドライバ38等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、及び半導体レーザドライバ38等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字データ、レーザ加工部3に対する制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。
【0025】
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0026】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンのデータ等を一時的に記憶させておくためのものである。
【0027】
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字データに基づいて印字パターンのXY座標データを算出して、加工データ44としてRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。尚、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、印字情報作成部2から入力された印字データに対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、加工レーザ光Rのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度、可視レーザ光Qのレーザパルス幅、及びガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度等を示す各種制御パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。更に、ROM43には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
【0028】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
【0029】
CPU41は、加工データ44、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による可視レーザ光Qを走査する速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、加工データ44に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示す加工レーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
【0030】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号、及び可視レーザ光Qのレーザパルス幅等を示す可視レーザ駆動情報を、半導体レーザドライバ38に出力する。
【0031】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、加工データ44、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、加工レーザ光Rと可視レーザ光Qを2次元走査する。
【0032】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示す加工レーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。その際、レーザドライバ37は、上述するように、ダイオード結晶103に駆動エネルギーを供給する。その詳細は、後述する。
半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号、及び可視レーザ光Qのレーザパルス幅等を示す可視レーザ駆動情報に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯させる。
【0033】
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、CD-ROMドライブ58、及び通信回路59等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、CD-ROMドライブ58、及び通信回路59等が接続されている。更に、制御部51には、レーザ発振器21が備えるパワーメータ23及び温度センサ25が電気的に接続されている。
【0034】
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。
【0035】
CD-ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD-ROM57から読み込むものである。
【0036】
通信回路59は、不図示のネットワークに接続されているサーバ等との通信を可能にするインターフェースである。
【0037】
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御するものであって、CPU61、RAM62、ROM63、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66、及びタイマ68等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバス線により相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。更に、CPU61とHDD66とタイマ68とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
【0038】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。
【0039】
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。タイマ68は、時間を計測するものである。
【0040】
[2.レーザ発振器の駆動エネルギー]
次に、レーザ発振器21の駆動エネルギーについて説明する。ここでは、駆動エネルギーとして、駆動電流を用いて具体的に説明する。図5に表された片対数グラフには、レーザ発振器21における、規格化電流値と立ち上がり時間との関係が示されている。図5の規格化電流値とは、レーザ発振器21の定格電流値に対する駆動電流値の割合を百分率で表したものである。尚、駆動電流値が最大定格値である場合、規格化電流値は約104%になる。また、図5の立ち上がり時間とは、レーザ発振器21のレーザ出力が定格出力となるまでに要する時間を意味している。
【0041】
図5のグラフによれば、駆動電流値が2~3%上昇するだけで、立ち上がり時間が大幅に短縮される。この点は、駆動電圧でも同様である。そこで、本実施形態のレーザ加工装置1は、立ち上がり時間を短縮する必要がある場合に限って、例えば、駆動電流又は駆動電圧の値又はパルスデューティ比等を変化させることにより、以下のようにして、レーザ発振器21の駆動エネルギーを変更し、立ち上がり時間を短縮する。
【0042】
具体的には、立ち上がり時間を短縮する必要がない場合、レーザ発振器21に対し、加工レーザ駆動情報のレーザ出力に対応する所定値(例えば、定格値)の駆動エネルギー(以下、「第1駆動エネルギー」という。)が供給される。従って、この場合の立ち上がり時間とは、レーザ発振器21のレーザ出力(つまり、レーザ発振器21から出射される加工レーザ光Rの出力)が、加工レーザ駆動情報のレーザ出力になるまでに要する時間を意味している。この点は、以下の説明においても、同様である。
【0043】
これに対して、立ち上がり時間を短縮する必要がある場合には、レーザ発振器21に対し、先ず、その最大定格を超えない範囲で、第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きな駆動エネルギー(以下、「第2駆動エネルギー」という。)が供給される。その後、所定条件の成立を契機にして、レーザ発振器21に供給される駆動エネルギーが、第2駆動エネルギーから第1駆動エネルギーに切り換えられる。
【0044】
立ち上がり時間を短縮する必要がある場合としては、例えば、マーキング加工の動作モードが、上記の図2に表された第2モードのケースがある。第2モードは、上述したように、不動のステージ204上の所定位置206に個別に配置されるワークWに対して行われる、マーキング加工に適したモードであり、ステージ204上のワークWに対しては、所定位置206に配置される毎に、その位置調整が行われる。ワークWの位置調整は、手作業で行われることから、その際には、インターロック制御等によって、レーザ発振器21への駆動エネルギーの供給が停止される。
【0045】
つまり、第2モードでは、マーキング加工を行う都度、その直前にレーザ発振器21への駆動エネルギーの供給が開始されるため、立ち上がり時間を短縮させたいニーズが高い。尚、ワークWの位置調整の際には、可視レーザ光Qが使用されることが多い。可視レーザ光Qが使用される際も、インターロック制御によって、レーザ発振器21への駆動エネルギーの供給が停止される。
【0046】
一方、立ち上がり時間を短縮する必要がない場合としては、例えば、マーキング加工の動作モードが、上記の図1に表された第1モードのケースがある。第1モードは、上述したように、製造ライン200のコンベア202上で連続的に搬送される複数のワークWに対して行われる、マーキング加工に適したモードであり、マーキング加工が開始すると終了するまで、レーザ発振器21への駆動エネルギーの供給が停止されないため、立ち上がり時間を短縮させたいニーズに乏しい。但し、可視レーザ光Qは、製造ライン200の初期設定時において使用されることがある。
【0047】
また、レーザ発振器21の設置空間の温度(以下、「環境温度」という。)が比較的高いケースでは、立ち上がり時間が比較的短くなる。従って、そのようなケースも、立ち上がり時間を短縮する必要がない場合に相当する。
【0048】
そこで、本実施形態のレーザ加工装置1は、マーキング加工の動作モード、可視レーザ光Qの使用の有無、及び環境温度等に応じて、立ち上がり時間を短縮するか否かを切り換える。そのために、本実施形態のレーザ加工装置1では、図6及び図7のフローチャートで表されたレーザ加工方法100の制御プログラムが実行される。
【0049】
[3.制御フロー]
図6及び図7のフローチャートで表されたレーザ加工方法100の制御プログラムは、制御部51のROM63に記憶されており、マーキング加工が行われる際に、制御部51のCPU61により実行される。従って、後述する処理において、制御対象がレーザ加工部3の構成要素である場合、レーザコントローラ6を介した制御が行われる。尚、本制御プログラムは、CD-ROM57に保存されており、CD-ROMドライブ58によって読み込まれ、CPU61により実行されてもよい。以下、本制御プログラムを説明する。
【0050】
レーザ加工方法100が実行されると、その制御プログラムでは、先ず、図6のステップ(以下、単に「S」と表記する。)10の動作条件受付処理が行われる。この処理では、マーキング加工の動作条件に関する情報の入力の受付が行われることによって、マーキング加工の動作モードが仮設定される。このような受付は、例えば、印字データに付加されている情報の読み取りや、ユーザによる入力操作部55を介した入力等によって行われる。これにより、マーキング加工の動作モードが、第1モード又は第2モードに仮設定される。その後は、温度情報取得処理S12が行われる。
【0051】
温度情報取得処理S12では、レーザ加工装置1の環境温度に関する情報が取得される。この取得は、例えば、通信回路59を介したネットワーク通信や、ユーザによる入力操作部55を介した入力、不図示の温度センサの計測等によって行われる。その後は、判定処理S14が行われる。
【0052】
判定処理S14では、上記S10の動作条件受付処理におけるマーキング加工の動作条件に関する情報に、可視光情報が含まれるかが判定される。可視光情報とは、可視半導体レーザ28の動作設定に関する情報であって、マーキング加工直前における可視レーザ光Qの使用の有無が示されている。ここで、上記S10のマーキング加工の動作条件に関する情報に、可視光情報が含まれていない場合(S14:NO)、判定処理S16が行われる。
【0053】
判定処理S16では、マーキング加工の動作モードが、第1モードに仮設定されているかが判定される。ここで、マーキング加工の動作モードが、第2モードに仮設定されている場合(S16:NO)、後述する判定処理S22が行われる。これに対して、マーキング加工の動作モードが、第1モードに仮設定されている場合(S16:YES)、第1モード設定処理S18が行われる。第1モード設定処理S18では、マーキング加工の動作モードが、第1モードに設定される。その後は、後述する図7の判定処理S26が行われる。
【0054】
一方、上記S10のマーキング加工の動作条件に関する情報に、可視光情報が含まれている場合(S14:YES)、判定処理S20が行われる。判定処理S20では、可視光情報が、可視半導体レーザ28を動作させる旨の内容であるかが判定される。ここで、可視光情報が、可視半導体レーザ28を動作させない旨の内容、つまり、マーキング加工直前に可視レーザ光Qを使用しない旨の内容である場合(S20:NO)、上記の第1モード設定処理S18が行われ、マーキング加工の動作モードが、第1モードに設定される。その後は、後述する図7の判定処理S26が行われる。
【0055】
これに対して、可視光情報が、可視半導体レーザ28を動作させる旨の内容、つまり、マーキング加工直前に可視レーザ光Qを使用する旨の内容である場合(S20:YES)、可視半導体レーザ28の動作を許可すると共に、判定処理S22が行われる。判定処理S22では、上記S12のレーザ加工装置1の環境温度に関する情報に含まれる環境温度が、所定温度を超えているかが判定される。尚、所定温度に関するデータは、ROM63に予め記憶されている。
【0056】
ここで、環境温度が所定温度を超えている場合(S22:YES)、上記の第1モード設定処理S18が行われ、マーキング加工の動作モードが、第1モードに設定される。その後は、後述する図7の判定処理S26が行われる。これに対して、環境温度が所定温度を超えていない場合(S22:NO)、第2モード設定処理S24が行われる。第2モード設定処理S24では、マーキング加工の動作モードが、第2モードに設定される。その後は、図7の判定処理S26が行われる。
【0057】
図7の判定処理S26では、可視半導体レーザ28の動作が終了したかが判定される。ここで、可視半導体レーザ28の動作が終了していない場合(S26:NO)、当該判定処理S26が繰り返し行われる。これに対して、可視半導体レーザ28の動作が終了した場合(S26:YES)、判定処理S28が行われる。
【0058】
判定処理S28では、マーキング加工の動作モードが第1モードであるかが判定される。ここで、マーキング加工の動作モードが第1モードである場合(S28:YES)、第1設定処理S30が行われる。第1設定処理S30では、第1駆動エネルギーが、レーザ発振器21の駆動エネルギーに設定される。その後は、第1供給処理S32が実行される。
【0059】
第1供給処理S32では、上記の第1設定処理S30で設定され、又は後述する切換処理S40で切り換えられた第1駆動エネルギーが、レーザ発振器21のダイオード結晶103に供給されることによって、レーザ発振器21から出射される加工レーザ光Rでマーキング加工が行われる。その後、本制御プログラムは終了する。
【0060】
一方、マーキング加工の動作モードが第2モードである場合(S28:NO)、第2設定処理S34が行われる。第2設定処理S34では、第2駆動エネルギーが、レーザ発振器21の駆動エネルギーに設定される。その後は、第2供給処理S36が実行される。
【0061】
第2供給処理S36では、上記の第2設定処理S34で設定された第2駆動エネルギーが、レーザ発振器21のダイオード結晶103に供給されることによって、レーザ発振器21から出射される加工レーザ光Rでマーキング加工が行われる。その後は、判定処理S38が行われる。判定処理S38では、所定条件が成立したかが判定される。ここで、所定条件とは、レーザ発振器21において、第1ミラー107と第2ミラー121との間を繰り返し往復する光の出力が所定値を超えることをいう。従って、この判定は、レーザ発振器21のパワーメータ23の測定値に基づいて行われる。尚、所定値に関するデータは、ROM63に予め記憶されている。
【0062】
ここで、所定条件が成立しない場合(S38:NO)、上記の第2供給処理S36が繰り返し行われる。これに対して、所定条件が成立する場合(S38:YES)、切換処理S40が行われる。切換処理S40では、レーザ発振器21の駆動エネルギーの設定が、第2駆動エネルギーから第1駆動エネルギーに切り換えられる。その後は、上記の第1供給処理S32が実行され、本制御プログラムは終了する。
【0063】
[4.まとめ]
以上詳細に説明したように、本実施の形態のレーザ加工装置1及びレーザ加工方法100は、マーキング加工の動作モードが第1モードである場合(S28:YES)、マーキング加工を開始する際に、第1駆動エネルギーをレーザ発振器21のダイオード結晶103に供給することによって、マーキング加工に適した出力を有する加工レーザ光Rをレーザ発振器21から出射させる(S30,S32)。
【0064】
これに対して、マーキング加工の動作モードが第2モードである場合(S28:NO)、マーキング加工を開始する際に、第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きい第2駆動エネルギーをレーザ発振器21のダイオード結晶103に供給することによって(S34,S36,S38:NO)、加工レーザ光Rをレーザ発振器21から出射させた後、所定条件が成立するときに第2駆動エネルギーから切り換えられる第1駆動エネルギーをレーザ発振器21のダイオード結晶103に供給することによって、マーキング加工に適した出力を有する加工レーザ光Rをレーザ発振器21から出射させる(S38:YES,S40,S32)。
【0065】
このようにして、第2モードでは、レーザ発振器21のダイオード結晶103に対して、第1モードと同じ第1駆動エネルギーが供給されることになる所定条件の成立まで(S38:YES)、第1駆動エネルギーよりも単位時間当たりのエネルギーが大きい第2駆動エネルギーが供給される(S36)。そのため、立ち上がり時間、つまり、マーキング加工の開始までに要する時間は、第1モードよりも、第2モードの方が短い。
【0066】
従って、本実施の形態のレーザ加工装置1及びレーザ加工方法100は、加工レーザ光Rによるマーキング加工の動作モードに応じて、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能である。
【0067】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1において、第1モードは、製造ライン200上で連続的に搬送される複数のワークWに対して行われるマーキング加工に適したモードである。これに対して、第2モードは、ステージ204上の所定位置206に個別に配置される毎にその位置調整が行われるワークWに対して行われるマーキング加工に適したモードである。そのため、本実施の形態のレーザ加工装置1は、その導入現場に応じて、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能である。
【0068】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1は、可視半導体レーザ28を動作させないときは(S20:NO)、第1モードに動作モードを設定し(S18)、可視半導体レーザ28を動作させるときは(S20:YES)、環境温度が所定環境温度を超えないことを条件として(S22:NO)、第2モードに動作モードを設定する(S24)。そのため、本実施の形態のレーザ加工装置1は、マーキング加工直前に可視半導体レーザ28による可視レーザ光Qの出射を行うか否かに応じて、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能である。
【0069】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1において、第2モードの所定条件は、パワーメータ23の測定値が所定値を超えるときに成立する(S38:YES)。この点、パワーメータ23は、レーザ発振器21において、第1ミラー107と第2ミラー121との間を繰り返し往復する光、つまり、レーザ発振器21から出射される加工レーザ光Rの出力の一部を測定するものである。これにより、本実施の形態のレーザ加工装置1は、レーザ発振器21(のダイオード結晶103)が長時間にわたり定格を超えて使用されることを防止しつつ、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮する。
【0070】
尚、パワーメータ23による測定対象には、例えば、平均出力、ピーク出力、又はパルスエネルギー等がある。
【0071】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1では、その環境温度によって、マーキング加工の開始までに要する時間が変化する。従って、動作モードが第2モードである場合でも、レーザ加工装置1の環境温度によっては、レーザ加工の開始までに要する時間が比較的短いときがある。
【0072】
そこで、レーザ加工装置1の環境温度が所定環境温度を超える場合には(S22:YES)、マーキング加工の動作条件に関する情報の入力の受付によって第2動作モードが動作モードに仮設定されていても(S16:NO)、第1モードが動作モードに設定される(S18)。これにより、マーキング加工を開始する際に、第2駆動エネルギーがレーザ発振器21のダイオード結晶103に供給されることを取り止める一方で、所定条件の成立(S38)とは無関係に第1駆動エネルギーがダイオード結晶103に供給されることによって、マーキング加工に適した出力を有する加工レーザ光Rをレーザ発振器21から出射させる(S30,S32)。このようにして、本実施の形態のレーザ加工装置1は、動作モードが、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮する第2モードである場合でも、レーザ加工装置1の環境温度に応じて、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮するか否かを切り換えることが可能である。
【0073】
ちなみに、本実施形態において、ガルバノスキャナ18は、「走査部」の一例である。レーザ発振器21は、「加工レーザ光出射部」の一例である。パワーメータ23は、「センサ」の一例である。可視半導体レーザ28は、「可視光出射部」の一例である。可視レーザ光Qは、「可視光」の一例である。マーキング加工は、「レーザ加工」の一例である。マーキング加工の動作条件に関する情報は、「レーザ加工の動作条件に関する情報」の一例である。
【0074】
動作条件受付処理S10は、「動作条件受付部」の一例である。温度情報取得処理S12は、「温度情報取得部」の一例である。第1設定処理S30及び第2設定処理S34は、「励起光強度設定部」の一例である。判定処理S28、第1設定処理S30、及び第1供給処理S32は、「第1モード工程」の一例である。判定処理S28、第2設定処理S34、第2供給処理S36、判定処理S38、切換処理S40、及び第1供給処理S32は、「第2モード工程」の一例である。
【0075】
[5.その他]
尚、本開示は、本実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0076】
例えば、本実施の形態のレーザ加工装置1では、判定処理S38において、レーザ発振器21の内部温度が所定内部温度を超えるときに、第2モードの所定条件が成立するとしてもよい。このような場合、判定処理S38は、温度センサ25の測定値に基づいて行われる。尚、所定内部温度に関するデータは、ROM63に予め記憶されている。このようにしても、本実施の形態のレーザ加工装置1は、レーザ発振器21(のダイオード結晶103)が長時間にわたり定格を超えて使用されることを防止しつつ、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮する。
【0077】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1では、判定処理S38において、タイマ68の測定値が所定時間を超えるときに、第2モードの所定条件が成立するとしてもよい。このような場合、タイマ68は、第2供給処理S36において、レーザ発振器21のダイオード結晶103に対して第2駆動エネルギーが供給されている時間を測定する。尚、所定時間に関するデータは、ROM63に予め記憶されている。このようにしても、本実施の形態のレーザ加工装置1は、レーザ発振器21(のダイオード結晶103)が長時間にわたり定格を超えて使用されることを防止しつつ、マーキング加工の開始までに要する時間を短縮する。
【符号の説明】
【0078】
1:レーザ加工装置、18:ガルバノスキャナ、21:レーザ発振器、23:パワーメータ、25:温度センサ、28:可視半導体レーザ、44:加工データ、51:制御部、68:タイマ、100:レーザ加工方法、103:ダイオード結晶、123:励起光、200:製造ライン、206:所定位置、Q:可視レーザ光、R:加工レーザ光、W:ワーク(複数のワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7