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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101907
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
F16K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216283
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小塚 直星
(72)【発明者】
【氏名】加島 卓磨
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA03
3H058BB14
3H058BB24
3H058BB27
3H058CA04
3H058CA22
3H058CB16
3H058CD05
3H058EE18
(57)【要約】
【課題】弁体の径方向内側から弁体の径方向外側へ流通する流体の圧力損失を抑制可能であるとともに、耐久性に優れた逆止弁を提供する。
【解決手段】本発明の逆止弁7は、弁座部材35及び弁部材30等を備えている。弁部材30は、ケース31及びスプール33を有している。スプール33は、弁体41及び第1~4連結柱43~46を有している。第1~4連結柱43~46は、内側部91を有している。内側部91は、弁体41の径方向内側に位置している。内側部91は、冷媒を弁体41の径方向内側から第1~4連結柱43~46同士の間を経て、弁体41の径方向外側へ流通させる。第1~4連結柱43~46の長手方向に直交する方向における内側部91の断面形状では、弁体41の径方向内側に向うにつれて弁体41の周方向における幅が漸次狭くされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部と、前記周壁部の内側に形成され、流体を流通させる弁孔とを有する弁座部材と、
前記弁孔を開閉する円盤状の弁体と、前記弁座部材を間に挟んで前記弁体に連結される頭部とを有する弁部材と、
前記弁座部材と前記弁部材との間に配置され、前記弁体が前記弁孔を閉塞する方向に前記弁部材を前記弁座部材に対して付勢する付勢部材と、を備える逆止弁であって、
前記弁部材は、前記弁孔に挿通され、前記弁体に一体的に連結されるとともに前記頭部に係合される複数の柱状部を有し、
前記各柱状部は、前記弁体の径方向内側に位置し、前記流体が前記弁体の径方向内側から前記柱状部同士の間を経て前記弁体の径方向外側へ流通するように案内する内側部を有し、
前記柱状部の長手方向に直交する方向における前記内側部の断面形状は、前記弁体の径方向内側に向うにつれて前記弁体の周方向における幅が漸次狭くなっている特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記柱状部の長手方向に直交する方向における前記各柱状部の断面形状は、略三角形又は略円形である請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】
前記各柱状部の前記断面形状は、略三角形であり、
前記各柱状部は、前記内側部より外側に位置する一対の外側部を有し、
前記内側部の角度は、前記各外側部の角度よりも大きい請求項2記載の逆止弁。
【請求項4】
前記各柱状部は、前記弁体の周方向に配置され、
前記各柱状部同士は、前記周方向に延設された環状部によって接続され、
前記内側部は、前記環状部よりも前記弁体の径方向内側に向かって突出している請求項2又は3記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の逆止弁が開示されている。この逆止弁は、圧縮機に採用されており、流体通路の内部に設けられている。同文献において、流体通路とは、具体的には圧縮機の吸入口である。吸入口は、圧縮機の内部に形成された吸入室と連通しているとともに、配管を通じて蒸発器と接続している。これにより、吸入口の内部には、流体としての冷媒が流通可能となっている。
【0003】
逆止弁は、弁座部材と、弁部材と、付勢部材とを備えている。弁座部材は、周壁部と、周壁部の内側に形成され、冷媒を流通させる弁孔とを有している。
【0004】
弁部材は、弁体と、頭部とを有している。弁部材は、吸入口の内部で冷媒の流通方向に移動可能である。弁体は、頭部よりも冷媒の流通方向の下流側に配置されている。弁体は、頭部とともに吸入口の内部を冷媒の流通方向に移動することによって、弁孔を開閉する。頭部は、弁座部材を間に挟んで弁体に連結される。付勢部材は、弁座部材と弁部材との間に配置され、弁体が弁孔を閉塞する流通方向に弁部材を弁座部材に対して付勢する。
【0005】
また、弁部材は、複数本の柱状部を有している。各柱状部は、弁体に対して一体に形成されており、弁体の径方向の内側に位置している。また、各柱状部は、弁体の周方向に等間隔で配置されている。各柱状部における長手方向に直交する方向の断面は、4つの頂部と、4つの面とを有する略矩形状をなしている。
【0006】
この逆止弁では、吸入口の内部を冷媒が流通していない場合を含め、吸入口の内部を流通方向の上流側から下流側、すなわち、配管側から吸入室側に向かって吸入口の内部を流通する冷媒の圧力が所定値よりも低い場合には、付勢部材の付勢力によって弁部材が冷媒の流通方向で弁座部材から離隔する。一方、このような弁部材の移動により、弁体が冷媒の流通方向で弁座部材に接近する。そして、弁体と弁座部材とが当接することで、弁体は吸入口を閉塞する。こうして、この逆止弁は、冷媒が配管側から吸入室側に向かって吸入口の内部を流通することを禁止する。また、弁体が吸入口を閉塞することにより、この逆止弁では、冷媒が吸入室側から配管側に向かって吸入口の内部を流通することも禁止する。
【0007】
これに対し、この逆止弁では、配管側から吸入室側に向かって吸入口の内部を流通する冷媒の圧力が所定値よりも高くなれば、冷媒が弁体を冷媒の流通方向に押圧する。これにより、付勢部材の付勢力に抗して弁部材が冷媒の流通方向で弁座部材に接近する一方、弁体が冷媒の流通方向で弁座部材から離隔する。これにより、弁体が吸入口を開放することで、この逆止弁は、冷媒が配管側から吸入室側に向かって吸入口の内部を流通することを許容する。これにより、冷媒は、弁体の径方向内側から各柱状部同士の間を経て、弁体の径方向外側へと流れることになる。また、各柱状部は、冷媒が弁体の径方向内側から径方向外側へと流れるように案内する。こうして、配管を経て吸入口の内部に流入した冷媒は、吸入室に向かって流通可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-115686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の逆止弁では、流体が弁体の径方向内側から弁体の径方向外側へと流れる際、流体の一部が各柱状部に不可避的に衝突する。このため、流体に圧力損失が生じてしまう。そこで、各柱状部を細く形成し、流体が各柱状部に衝突し難くすることが考えられる。しかしながら、この場合には、各柱状部の剛性が低下してしまうことから、各柱状部の耐久性、ひいては逆止弁の耐久性の低下を招くことになる。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、弁体の径方向内側から弁体の径方向外側へ流通する流体の圧力損失を抑制可能であるとともに、耐久性に優れた逆止弁を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の逆止弁は、周壁部と、前記周壁部の内側に形成され、流体を流通させる弁孔とを有する弁座部材と、
前記弁孔を開閉する円盤状の弁体と、前記弁座部材を間に挟んで前記弁体に連結される頭部とを有する弁部材と、
前記弁座部材と前記弁部材との間に配置され、前記弁体が前記弁孔を閉塞する方向に前記弁部材を前記弁座部材に対して付勢する付勢部材と、を備える逆止弁であって、
前記弁部材は、前記弁孔に挿通され、前記弁体に一体的に連結されるとともに前記頭部に係合される複数の柱状部を有し、
前記各柱状部は、前記弁体の径方向内側に位置し、前記流体が前記弁体の径方向内側から前記柱状部同士の間を経て前記弁体の径方向外側へ流通するように案内する内側部を有し、
前記柱状部の長手方向に直交する方向における前記内側部の断面形状は、前記弁体の径方向内側に向うにつれて前記弁体の周方向における幅が漸次狭くなっている特徴とする。
【0012】
本発明の逆止弁では、各柱状部が内側部を有している。この内側部は弁体の径方向内側に位置している。そして、内側部は、流体が弁体の径方向内側から柱状部同士の間を経て弁体の径方向外側へ流通するように案内する。
【0013】
ここで、柱状部の長手方向に直交する方向における内側部の断面形状は、弁体の径方向内側に向うにつれて弁体の周方向における幅が漸次狭くなっている。これにより、この逆止弁では、内側部に案内された流体が内側部の断面形状に沿いつつ、径方向内側から径方向外側へ流通する。このため、この逆止弁では、流体と内側部、ひいては、流体と各柱状部との衝突を可及的に抑制することができる。
【0014】
このように、この逆止弁では、流体と各柱状部との衝突を抑制するに当たって、各柱状部を過度に細く形成する必要がない。これにより、この逆止弁では、各柱状部の剛性を確保し易い。
【0015】
したがって、本発明の逆止弁は、弁体の径方向内側から弁体の径方向外側へ流通する流体の圧力損失を抑制可能であるとともに、耐久性に優れている。
【0016】
柱状部の長手方向に直交する方向における各柱状部の断面形状は、略三角形又は略円形であることが好ましい。この場合には、内側部の断面形状を上記の形状に好適に形成することが可能となる。
【0017】
各柱状部の断面形状は、略三角形であり得る。そして、各柱状部は、内側部より外側に位置する一対の外側部を有し得る。そして、内側部の角度は、各外側部の角度よりも大きいことが好ましい。この場合には、内側部の角度が各外側部の角度よりも小さい場合に比べて、各柱状部の剛性を好適に確保することができ、各柱状部の折損等を好適に防止することができる。また、内側部によって、流体を弁体の径方向内側から径方向外側へ好適に流通させることが可能となる。
【0018】
各柱状部は、弁体の周方向に配置され得る。また、各柱状部同士は、周方向に延設された環状部によって接続され得る。そして、内側部は、環状部よりも弁体の径方向内側に向かって突出していることが好ましい。
【0019】
この場合には、環状部によって各柱状部同士を接続することで各柱状部の撓みを抑制することができる。また、内側部が環状部よりも弁体の径方向内側に向かって突出することにより、各柱状部の肉厚を好適に確保することができる。これらのため、各柱状部の剛性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の逆止弁は、弁体の径方向内側から弁体の径方向外側へ流通する流体の圧力損失を抑制可能であるとともに、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例1の圧縮機を示す部分断面図である。
図2図2は、実施例1の圧縮機に係り、逆止弁等を示す要部拡大断面図である。
図3図3は、実施例1の圧縮機に係り、逆止弁等を示す要部拡大断面図である。
図4図4は、実施例1の圧縮機に係り、逆止弁を示す分解斜視図である。
図5図5は、実施例1の圧縮機に係り、弁体、連結柱及び接続部を示す側面図である。
図6図6は、実施例1の圧縮機に係り、図3のA-A断面を示す拡大断面図である。
図7図7は、実施例1の圧縮機に係り、連結柱の特定断面を示す模式図である。
図8図8は、実施例1の圧縮機に係り、連結柱における第1基準点及び第2基準点と、中心線との位置関係を示す模式図である。
図9図9は、実施例1の圧縮機に係り、図3のD1方向から見た逆止弁を示す側面図である。
図10図10は、実施例2の圧縮機に係り、図6と同様の断面を示す断面図である。
図11図11は、実施例2の圧縮機に係り、連結柱における第1基準点及び第2基準点と、中心線との位置関係を示す模式図である。
図12図12は、比較例の圧縮機に係り、図6と同様の断面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。これらの圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両の冷凍回路を構成している。
【0023】
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、圧縮機構5と、逆止弁7とを備えている。逆止弁7は、本発明における「逆止弁」の一例である。
【0024】
本実施例では、図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。そして、図2以降では、図1に対応して圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。前後方向及び上下方向は互いに直交する関係にある。なお、これらの各方向は説明の便宜上のための一例であり、圧縮機は、搭載される車両に対応して、その姿勢が適宜変更される。
【0025】
ハウジング1は、第1ハウジング11と、第2ハウジング13とを有している。第1ハウジング11は、圧縮機の前方に配置されている。第1ハウジング11は、後方が開口する有底の略筒状に形成されている。また、第1ハウジング11には、圧縮機の前方に向かって突出するボス11aが設けられている。
【0026】
第2ハウジング13は、圧縮機の後方に配置されている。第2ハウジング13は、前方が開口する有底の略筒状に形成されており、第1ハウジング11と接合されている。また、第2ハウジング13には、吸入口15と、吐出口17とが形成されている。吸入口15及び吐出口17は、流体通路である。吸入口15には、配管21を通じて蒸発器101が接続されている。一方、吐出口17には、配管22を通じて凝縮器102が接続されている。蒸発器101と凝縮器102とは、配管23によって接続されている。また、配管23には、膨張弁103が設けられている。
【0027】
駆動軸3は、ハウジング1の内部に挿通されており、ハウジング1の内部で回転可能となっている。駆動軸3は、プーリ等の動力伝達機構を介して車両の動力装置と接続されている。なお、動力伝達機構及びエンジンの図示は省略する。また、駆動軸3は、電動モータと接続される構成であっても良い。つまり、本実施例の圧縮機は電動圧縮機であっても良い。
【0028】
圧縮機構5は、駆動軸3が動力装置によって回転することで作動する。これにより、圧縮機構5は、吸入室19内の冷媒を吸入して圧縮する。冷媒は、本発明における「流体」の一例である。このように圧縮機構5が作動することによって、吸入口15の内部では、図2及び図3の白色矢印で示すように、蒸発器101から配管21を経た冷媒が吸入室19に向かって圧縮機の上方から下方に流通する。このように、吸入口15における冷媒の流通方向は、圧縮機の上方から下方に向かう方向となる。この圧縮機では、吸入口15に対して冷媒の流通方向の上流側に配管21及び蒸発器101が存在しており、吸入口15に対して冷媒の流通方向の下流側に吸入室19が存在している。
【0029】
また、圧縮機構5は、圧縮した冷媒を吐出室に吐出する。詳細な図示を省略するものの、吐出室に吐出された冷媒は、図1に示す吐出口17から配管22、ひいては凝縮器102に向かって流通する。つまり、吸入口15の内部と、吐出口17の内部とでは、冷媒の流通方向が反対となる。
【0030】
図2及び図3に示すように、逆止弁7は、吸入口15の内部に設けられている。図2図4に示すように、逆止弁7は、弁座部材35と、弁部材30と、コイルばね37とを備えている。コイルばね37は、本発明における「付勢部材」の一例である。
【0031】
弁座部材35は金属製である。弁座部材35は、周壁部35aと、周壁部35aの内側に形成され、冷媒を流通させる弁孔35bとを有している。周壁部35aは、弁孔35bによって、後述する弁体41の中心線Cと同軸をなす円環状に形成されている。これにより、周壁部35aでは、内部を冷媒が流通可能となっている。周壁部35aの外径は、吸入口15の内径よりも僅かに大径に形成されている。一方、周壁部35aの内径は、弁体41の外径よりも小径に形成されている。また、弁座部材35には、弁孔35bと連通するばね室35cが形成されている。
【0032】
弁部材30は、ケース31と、スプール33とを有している。ケース31は、本発明における「頭部」の一例である。ケース31は、逆止弁7において最も上方、つまり、冷媒の流通方向の上流側に位置している。ケース31は樹脂製である。ケース31には、貫通孔31a及び第1ばね室31bが形成されている。貫通孔31aは、ケース31を冷媒の流通方向、つまりケース31の軸方向に貫通しており、第1ばね室31bと連通している。貫通孔31aは、中心線Cと同軸をなしている。
【0033】
第1ばね室31bは、ケース31の下部に位置している、第1ばね室31bは、ケース31の下端から貫通孔31aに向かって、貫通孔31aと同軸で凹設されている。第1ばね室31bは、貫通孔31aよりも大径に形成されている。これらの貫通孔31a及び第1ばね室31bにより、ケース31は、円筒状をなしている。ここで、ケース31の外径は、吸入口15の内径よりも小さく形成されている。貫通孔31a及び第1ばね室31bは、内部を冷媒が流通可能となっている他、後述する第1~4連結柱43~46が挿通されるようになっている。
【0034】
また、図4に示すように、ケース31の上部には、第1係合溝311と、第2係合溝312と、第3係合溝313と、第4係合溝314とが形成されている。第1~4係合溝311~314は、同一の構成であり、それぞれケース31の上端から下方に向かって凹設されている。第1~4係合溝311~314は、それぞれケース31の周方向に等間隔で配置されており、貫通孔31aに臨んでいる。なお、第1~4係合溝311~314に換えて、貫通孔31aと連通しつつ、ケース31の周方向に1周する一つの係合溝をケース31に形成しても良い。
【0035】
スプール33は、逆止弁7において、冷媒の流通方向でケース31よりも下流側に位置している。スプール33は樹脂製である。スプール33は、弁体41と、第1連結柱43と、第2連結柱44と、第3連結柱45と、第4連結柱46と、連結ブリッジ47とによって構成されている。第1~4連結柱43~46は、本発明における「柱状部」の一例である。また、連結ブリッジ47は、本発明における「環状部」の一例である。
【0036】
図5に示すように、弁体41は、スプール33の下端に位置している。これにより、弁体41は、逆止弁7において、冷媒の流通方向で最も下流側に位置している。弁体41は、吸入口15の内径よりも小径であって、弁孔35bよりも大径の円盤状に形成されており、表面41aと裏面41bとを有している。表面41aは弁体41の上方に面している。裏面41bは、表面41aの反対側に位置しており、弁体41の下方に面している。
【0037】
また、弁体41には、中心線Cが規定されている。中心線Cは、弁体41の中心を通って弁体41の上下方向、すなわち冷媒の流通方向に延びている。中心線Cは、ケース31、弁座部材35及びコイルばね37の各軸方向と同軸をなしている。さらに、表面41aの中心には、案内部41cが形成されている。案内部41cは、中心線Cと同軸をなしつつ、弁体41の上方、すなわちケース31に向かって上方に円錐状に隆起している。
【0038】
図4及び図6に示すように、第1~4連結柱43~46は、弁体41の周方向に等間隔で配置されている。これにより、第1~4連結柱43~46は、中心線Cから弁体41の径方向に離隔しつつ、中心線Cを囲んでいる。
【0039】
図4に示すように、第1連結柱43は、第1柱本体43aと、第1接続部位43bと、第1係合部43cとを有している。同様に、第2~4連結柱44~46は、それぞれ第2~4柱本体44a~46aと、第2~4接続部位44b~46bと、第2~4係合部44c~46cとを有している。また、第1柱本体43a~46aは、それぞれ一つの内側部91と、一対の外側部92、93とを有している(図7及び図8参照。)。第1~4柱本体43a~46a、第1~4接続部位43b~46b、第1~4係合部43c~46c、内側部91及び外側部92、93の各形状を含め、第1~4連結柱43~46は同一の形状である。以下、第1柱本体43a、第1接続部位43b及び第1係合部43cを基に構成を説明する。
【0040】
図4に示すように、第1柱本体43aは、冷媒の流通方向に所定の長さで延びている。ここで、冷媒の流通方向、すなわち圧縮機の上下方向は、第1柱本体43aの長手方向、ひいては、第1~4連結柱43~46の長手方向に相当する。図6図8に示すように、第1柱本体43aは、第1頂部401と、第2頂部402と、第3頂部403と、第1面404と、第2面405と、第3面406とを有している。これらの第1~3頂部401~403及び第1~3面404~406により、第1柱本体43aは、冷媒の流通方向に直交する方向の断面、つまり、長手方向に直交する方向の断面が略三角形状をなしている(以下、長手方向に直交する方向の断面を特定断面という。)。ここで、第1柱本体43aが冷媒の流通方向に延びていることから、これらの第1~3頂部401~403及び第1~3面404~406についても、冷媒の流通方向に延びている。こうして、第1柱本体43aは、冷媒の流通方向に延びる略三角柱をなしている。
【0041】
図7及び図8に示すように、内側部91は、第1頂部401を含んでいる他、第1面404及び第2面405の各一部を含んでいる。図6に示すように、第1柱本体43aの特定断面において、第1頂部401は、第1~3頂部401~403のうちで最も弁体41の中心側に位置している。つまり、第1柱本体43aの特定断面において、第1頂部401は、弁体41の径方向内側であって中心線Cに近い位置に配置されており、中心線Cに臨んでいる。これにより、内側部91は、第1柱本体43aにおいて、弁体41の径方向内側に位置している。また、図6に示すように、第1頂部401を含め内側部91は、連結ブリッジ47の内周面よりも、弁体41の径方向内側、すなわち中心線Cに近い位置に配置されている。これにより、第1柱本体43aは、連結ブリッジ47よりも中心線Cに向かって突出する形状となっている。
【0042】
図7に示すように、外側部92は、第2頂部402を含んでいる他、第1面404及び第3面406の各一部を含んでいる。そして、外側部93は、第3頂部403を含んでいる他、第2面405及び第3面406の各一部を含んでいる。第2、3頂部402、403は、第1頂部401よりも弁体41の径方向外側に配置されている。第2頂部402と第3頂部403とは、弁体41の周方向で互いに対向している。第2頂部402と第3頂部403とは互いに異なる位置に配置されている。これにより、外側部92及び外側部93は、互いに異なる位置に配置されているとともに、内側部91よりも弁体41の径方向外側に位置している。また、外側部92と外側部93とは、弁体41の周方向で互いに対向している。
【0043】
図7に示すように、第1面404は、弁体41の径方向の一端で第1頂部401と繋がっている。そして、第1面404は、第1頂部401から弁体41の径方向の外側に向かって直線状に延びており、弁体41の径方向の他端で第2頂部402と繋がっている。第2面405は、第1頂部401を挟んで第1面404の反対側に位置している。つまり、第2面405は、弁体41の周方向で第1面404の反対側に位置している。第2面405は、弁体41の径方向の一端で第1頂部401と繋がっている。そして、第2面405は、第1頂部401から弁体41の径方向の外側に向かって直線状に延びており、弁体41の径方向の他端で第3頂部403と繋がっている。
【0044】
第3面406は、第1~3面404~406のうち、弁体の径方向で最も外側に配置されている。第3面406は、弁体41の周方向の一端側で第2頂部402と接続しており、弁体41の周方向の他端側で第3頂部403と接続している。
【0045】
そして、図7に示すように、第1柱本体43aの特定断面において、第1面404と第2面405とがなす第1内角407は、第1角度θ1となっている。一方、第1面404と第3面406とがなす第2内角408と、第2面405と第3面406とがなす第3内角409とは、それぞれ第2角度θ2となっている。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも小さくされている。このため、外側部92、93の各角度は、内側部91の角度よりも小さくなっている。
【0046】
また、第1柱本体43aの特定断面には、第1基準点P1と、第2基準点P2とが規定されている。図7及び図8に示すように、第1基準点P1は、弁体41の周方向で外側部92と外側部93と間であって、弁体41の周方向における特定断面の幅の長さが最長である第1長さW1となる個所に位置している。ここで、図8に示すように、冷媒の流通方向に直交する方向、つまり弁体41の径方向における中心線Cから第1基準点P1までの直線距離は第1距離L1となっている。なお、図8では、説明を容易にするため、第1接続部位43b等の図示を省略している。
【0047】
一方、第2基準点P2は、内側部91内であって、弁体41の径方向における中心線Cからの直線距離が第2距離L2となる個所に位置している。この第2距離L2は、第1距離L1に比べて短くなっている。つまり、第1柱本体43aの特定断面において、第2基準点P2は、第1基準点P1よりも弁体41の径方向で中心線Cに近い個所に位置している。ここで、第2基準点P2での弁体41の周方向における特定断面の幅の長さは、第2長さW2となっており、この第2長さW2は、第1長さW1に比べて短くなっている。
【0048】
そして、第1柱本体43aの特定断面では、第1基準点P1から第2基準点P2に向かうにつれて、弁体41の周方向における幅の長さが第1長さW1から第2長さW2まで徐々に短くなっている。換言すれば、第1柱本体43aは、中心線Cから弁体41の径方向に遠ざかるにつれて、弁体41の周方向に幅が徐々に広くなる形状となっている。
【0049】
ここで、第1柱本体43aの特定断面において、弁体41の径方向における中心線Cからの距離が第1距離L1よりも短くなる個所であれば、第2基準点P2を図7及び図8に示す位置とは異なる個所に規定しても良い。例えば、図7及び図8に示す位置よりも弁体41の径方向で第1頂部401に近い個所に第2基準点P2を設定した場合には、第2長さW2は、図7及び図8に示す長さよりも短くなる。一方、図7及び図8に示す位置よりも弁体41の径方向で第1基準点P1に近い個所に第2基準点P2を設定した場合には、第2長さW2は、図7及び図8に示す長さよりも長くなる。しかし、いずれの場合であっても、第1柱本体43aの特定断面において、第2長さW2の長さは、第1長さW1よりも短い関係にあり、また、第1基準点P1から第2基準点P2に向かうにつれて、第1長さW1から第2長さW2まで徐々に短くなる関係にある。
【0050】
これにより、第1柱本体43aの特定断面の形状は、弁体41の径方向内側に向うにつれて弁体41の周方向における幅が漸次狭くなっている。このため、内側部91についても、第1内角407が第1角度θ1となるように、弁体41の径方向内側に向うにつれて弁体41の周方向における幅、すなわち、弁体41の周方向における第1面404と第2面405との間隔が漸次狭くなっている。換言すれば、第1柱本体43aの特定断面の形状は、弁体41の径方向で中心線Cから遠ざかるにつれて、弁体41の周方向における幅の長さが徐々に長くなる略三角形状をなしている。つまり、第1柱本体43aは、第1基準点P1において弁体41の周方向の幅が最も広くなり、弁体41の径方向で中心線Cに近づくにつれて、弁体41の周方向の幅が最大よりも狭くなる三角柱をなしている。
【0051】
図5に示すように、第1接続部位43bは、第1柱本体43aと弁体41との間に位置している。第1接続部位43bは、第1柱本体43aの下端、つまり第1柱本体43aにおける冷媒の流通方向の下流側と接続しており、第1柱本体43aと一体をなしている。図6に示すように、第1接続部位43bは、第1柱本体43aの特定断面の形状に倣った形状に形成されている。そして、第1接続部位43bは、冷媒の流通方向で弁体41に近づくにつれて、第1柱本体43aよりも大きく広がりながら弁体41の表面41aと接続している。
【0052】
図5に示すように、第1係合部43cは、第1柱本体43aの上端と接続しており、第1柱本体43aと一体をなしている。つまり、第1係合部43cは、冷媒の流通方向の上流側で第1柱本体43aと一体をなしている。第1係合部43cは、第1柱本体43aから弁体41の径方向の外側に向かって爪状に突出している。
【0053】
図4に示すように、連結ブリッジ47は、中心線Cと同軸をなす円環状に形成されており、弁体41の周方向に延びている。連結ブリッジ47は、第1~4連結柱43~46にそれぞれ接続している。こうして、連結ブリッジ47は、弁体41の周方向に第1~4連結柱43~46を連結している。
【0054】
コイルばね37は、ケース31の第1ばね室31bと、弁座部材35の第2ばね室35cとの間に配置されている。コイルばね37は、第1ばね室31b内においてケース31と当接しているとともに、第2ばね室35c内において弁座部材35と当接している。これにより、コイルばね37は、自己の付勢力によって、ケース31と弁座部材35とを冷媒の流通方向に離隔させている。ここで、コイルばね37の付勢力は、逆止弁7が吸入口15を開放するために必要な冷媒の圧力に基づいて設定されている。
【0055】
弁部材30、すなわち、ケース31と、スプール33と、弁座部材35と、コイルばね37と組付けるに当たっては、スプール33の弁体41と、弁座部材35の弁孔35bとを冷媒の流通方向で対向させつつ、弁孔35bに第1~4連結柱43~46及び連結ブリッジ47を挿通させる。また、この状態で、第1~4連結柱43~46及び連結ブリッジ47にコイルばね37を挿通しつつ、弁座部材35の第2ばね室35c内にコイルばね37を配置する。
【0056】
さらに、弁座部材35とケース31とを冷媒の流通方向で対向させる。この際、ケース31では、第1ばね室31bをコイルばね37及び第2ばね室35cに対向させる。そして、この状態で弁座部材35とケース31とを冷媒の流通方向で接近させ、第1ばね室31b内にコイルばね37を進入させることによって、第2ばね室35cとの間にコイルばね37を配置する。また、同時に、ケース31の貫通孔31aに第1~4連結柱43~46を挿通する。そして、ケース31の第1~4係合溝311~314に対し、第1~4連結柱43~46の第1~4係合部43c~46cをそれぞれ係合させる。つまり、第1係合溝311に対して第1係合部43cを係合させる。第2係合溝312に対して第2係合部44cを係合させる。第3係合溝313に対して第3係合部45cを係合させる。第4係合溝314に対して第4係合部46cを係合させる。この際、第1~4係合部43c~46cは、第1~4係合溝311~314に対して冷媒の流通方向で係合する。こうして、弁部材30では、ケース31とスプール33とが冷媒の流通方向で一体化されている。つまり、第1~4連結柱43~46を通じて、ケース31と弁体41とが一体化されている。また、弁座部材35は、ケース31と弁体41との間に配置されている。
【0057】
そして、逆止弁7を圧縮機に組み付けるに当たっては、吸入口15における冷媒に流通方向の下流側、つまり、吸入室19側に弁体41を向けた状態としつつ、逆止弁7を冷媒の流通方向で吸入口15の内部に進入させる。そして、弁座部材35を吸入口15に圧入することにより、逆止弁7を吸入口15の内壁、つまり、第2ハウジング13に固定する。こうして、圧縮機に逆止弁7が組み付けられる。
【0058】
ここで、図2に示すように、この逆止弁7では、コイルばね37の付勢力によって、ケース31が冷媒の流通方向で弁座部材35から離隔する。この際、ケース31とスプール33とが一体化されているため、ケース31が冷媒の流通方向で弁座部材35から離隔することにより、スプール33では、弁体41が冷媒の流通方向で弁座部材35に接近する。反対に、コイルばね37の付勢力に抗しつつ、ケース31が冷媒の流通方向で弁座部材35に接近すれば、弁体41は冷媒の流通方向で弁座部材35から離隔する。
【0059】
このように、弁体41が冷媒の流通方向で弁座部材35から離隔することにより、図9に示すように、この逆止弁7では、弁体41の周方向で隣り合う第1連結柱43と第2連結柱44とは、弁座部材35と弁体41との間に第1流通開口51を形成する。より具体的には、第1柱本体43aにおける第1面404と、第2柱本体44aにおける第2面405とは、弁座部材3と、弁体41の表面41aとの間に第1流通開口51を形成する。
【0060】
第1流通開口51は、弁座部材35によって形成される第1辺501と、弁体41の表面41aによって形成される第2辺502と、第1面404によって形成される第3辺503と、第2面405によって形成される第4辺504とを有している。第1辺501は、第1流通開口51において冷媒の流通方向の最も上流側に位置している。一方、第2辺502は、第1流通開口51において冷媒の流通方向の最も下流側に位置している。また、第1辺501と第2辺502とは、弁体41の周方向に平行に延びている。第3辺503及び第4辺504は、第1辺501と第2辺502との間に位置している。第3辺503及び第4辺504は、冷媒の流通方向に延びつつ、それぞれ第1辺501と第2辺502とに接続している。これらの第1~4辺501~504により、第1流通開口51は、冷媒の流通方向に延びる略矩形状をなしている。そして、第1流通開口51では、冷媒の流通方向の上流側から下流側に向かうにつれて、幅の長さ、すなわち弁体41の周方向における長さがほぼ一定となっている。
【0061】
また、図6に示すように、弁体41の周方向で隣り合う第2連結柱44と第3連結柱45とは、弁座部材35と弁体41との間に第2流通開口52を形成している。同様に、弁体41の周方向で隣り合う第3連結柱45と第4連結柱46とは、弁座部材35と弁体41との間に第3流通開口53を形成している。そして、弁体41の周方向で隣り合う第4連結柱46と第1連結柱43とは、弁座部材35と弁体41との間に第4流通開口54を形成している。これらの第1~4流通開口51~54は、弁体41の周方向に等間隔で配置されている。詳細な図示を省略するものの、第2~4流通開口52~54は、第1流通開口51と同様の構成である。
【0062】
以上のように構成されたこの圧縮機では、図2に示すように、吸入口15の内部において逆止弁7では、コイルばね37の付勢力によってケース31が冷媒の流通方向で弁座部材35から離隔する。これにより、スプール33では、弁体41が冷媒の流通方向で弁座部材35に接近する。この際、案内部41cは弁孔35b内に進入する。そして、弁体41の表面41aが弁座部材35に当接することにより、弁孔35b及び第1~4流通開口51~54が閉塞される。こうして、弁体41、ひいては逆止弁7は、吸入口15の内部で吸入口15を閉塞し、配管21と吸入室19とを非連通とする。これにより、この圧縮機では、圧縮機構5の作動が停止している場合を含め、吸入口15の内部に存在する冷媒の圧力がコイルばね37の付勢力を下回っている状態では、冷媒が吸入室19へ向かって流通することが不可能となる。また、このように、弁体41が吸入口15を閉塞している状態では、吸入室19内に存在する冷媒が配管21に向かって吸入口15の内部を流通することも不可能となる。こうして、この圧縮機では、圧縮機構5の作動が停止している際に、吸入室19から蒸発器101への冷媒の逆流を防止することができる。
【0063】
一方、この圧縮機では、圧縮機構5が作動することにより、配管21から吸入口15の内部に冷媒が流入し、この冷媒が吸入室19に向かって吸入口15の内部を流通し始める。これにより、吸入口15の内部を流通する冷媒は、ケース31の貫通孔31a内及び弁座部材35の弁孔35b内を流通しつつ、弁体41と弁座部材35とを離隔させるように弁体41を押圧する。そして、吸入口15の内部を流通する冷媒の流量が増大し、冷媒の圧力がコイルばね37の付勢力を上回ることにより、図3に示すように、逆止弁7では、ケース31がコイルばね37の付勢力に抗しつつ、冷媒の流通方向で弁座部材35に接近する。これにより、スプール33では、弁体41が冷媒の流通方向で弁座部材35から離隔する。つまり、弁体41の表面41aが弁孔35bから離隔する。この際、弁体41は吸入室19内に進入する。
【0064】
このように、弁体41の表面41aが弁孔35bから離隔することにより、弁孔35b及び第1~4流通開口51~54が開放され始める。こうして、弁体41が吸入口15を開放し始める。ここで、弁体41が吸入室19内に進入していることから、第1~4流通開口51~54は吸入室19内に開口する。こうして、吸入口15の内部において、逆止弁7は配管21と吸入室19とを連通させる。これにより、吸入口15の内部を流通する冷媒は、ケース31の貫通孔31a内及び弁孔35b内を流通しつつ、第1~4流通開口51~54を経て、吸入室19まで流通することになる。この際、貫通孔31a内及び弁孔35b内を流通する冷媒は、第1~4連結柱43~46の内側部91及び弁体41の案内部41cによって、第1~4流通開口51~54に案内されるとともに、第1~4流通開口51~54を経て弁体41の径方向外側に向かって流通し、吸入室19に至ることになる。
【0065】
そして、吸入口15の内部を流通する冷媒の流量がさらに増大し、冷媒の圧力が増大することにより、弁体41の表面41aが弁孔35bからより遠くに離隔する。このため、第1~4流通開口51~54がより大きく開放されることから、吸入室19に流通する冷媒の流量が増大する。こうして、この圧縮機では、圧縮機構5が吸入室19内の冷媒を吸入しつつ圧縮する。また、圧縮機構5は、圧縮した冷媒を吐出室から吐出口17を通じて配管22、ひいては凝縮器102に吐出する。
【0066】
ここで、この圧縮機における逆止弁7は、第1~4流通開口51~54から吸入室19に向かって流通する冷媒の圧力損失、すなわち、弁体41の径方向内側から弁体の径方向外側へ流通する冷媒の圧力損失を抑制できるとともに、耐久性に優れている。以下、この作用について、比較例との対比を基に説明する。
【0067】
図12に示すように、比較例の圧縮機では、逆止弁8を採用している。そして、逆止弁8は、弁部材30がスプール80を有している。また、図示を省略するものの、逆止弁8は、逆止弁7と同様のケース31、弁座部材35及びコイルばね37を備えている。スプール80は、弁体41と、第1~4連結柱81~84とを有している。第1~4連結柱81~84は、それぞれ第1~4柱本体81a~84aを有している。第1~4柱本体81a~84aは、それぞれ、第1頂部801と、第2頂部802と、第3頂部803と、第4頂部804と、第1面805と、第2面806と、第3面807と、第4面808とを有している。
【0068】
第1、2頂部801、802は、第3、4頂部803、804に比べて、弁体41の径方向で中心線Cに近い位置に配置されている。第1面805は、第1頂部801と第3頂部803とに繋がっている。第2面806は、第2頂部802と第4頂部804とに繋がっている。第3面807は、第1頂部801と第2頂部802とに繋がっている。また、第3面807は、中心線Cに臨んでいる。第4面808は、第3頂部803と第4頂部804とに繋がっている。これらの第1~4頂部801~804及び第1~4面805~808により、第1~4柱本体81a~84aにおける長手方向に直交する方向の断面の形状、すなわち、第1~4柱本体81a~84aの特定断面の形状は、略矩形状となっている。このため、第1~4柱本体81a~84aは内側部94を有しているものの、この内側部94を含め第1~4柱本体81a~84aにおける特定断面では、弁体41の径方向で中心線Cに近づくにつれて、すなわち、弁体41の径方向内側に向かうにつれて、弁体41の周方向における幅の長さがほぼ一定となっている。
【0069】
そして、弁体41の周方向で隣り合う第1~4連結柱81~84は、弁座部材35と弁体41との間に第1~4流通開口85~88を形成している。なお、弁体41の構成を含め、逆止弁8における他の構成は、逆止弁7と同様である。
【0070】
この逆止弁8では、冷媒がケース31の貫通孔31a内及び弁座部材35の弁孔35b内を流通しつつ、第1~4流通開口85~88を経て、吸入室19まで流通することになる。この際、この逆止弁8では、内側部94が冷媒を弁体41の径方向内側から第1~4流通開口85~88を経て弁体41の径方向外側へ流通させる。ここで、内側部94を含め第1~4柱本体81a~84aの特定断面の形状が略矩形状であるため、図12の白色矢印で示すように、第1~4流通開口85~88に向かって流通する冷媒の一部が第1~4柱本体81a~84aの第3面807に衝突し易くなる。そして、第3面807に衝突した冷媒は、第3面807を迂回しながら1~4流通開口85~88に向かって流通することになる。これらのため、この逆止弁8では、吸入室19に向かって、弁体41の径方向内側から弁体の径方向外側へ流通する冷媒の圧力損失流通する冷媒の圧力損失が大きくなる。
【0071】
そこで、この逆止弁8において、第1~4柱本体81a~84aに冷媒が衝突することを抑制するために、第1~4柱本体81a~84aの特定断面の形状を略矩形状に維持しつつ、第1~4連結柱81~84を細く形成することが考えられる。しかし、この場合には、第1~4連結柱81~84の剛性、ひいてはスプール80の剛性が低下するため、逆止弁8の耐久性が低下してしまう。
【0072】
これに対し、図6に示すように、逆止弁7では、第1~4柱本体43a~46aの特定断面の形状が略三角形状となっている。そして、第1~4柱本体43a~46aの特定断面では、第1基準点P1から第2基準点P2に向かうにつれて、弁体41の周方向における幅の長さが第1長さW1から第2長さW2まで徐々に短くなっている。これにより、第1~4柱本体43a~46aにおいて内側部91は、弁体41の径方向内側に向うにつれて弁体41の周方向における幅が漸次狭くなっている。
【0073】
このため、この逆止弁7では、図6の白色矢印で示すように、冷媒は、内側部91によって案内されつつ、弁体41の径方向内側から第1~4流通開口51~54を経て弁体41の径方向外側に流通する。また、この逆止弁7では、第1頂部401が中心線Cに臨んでいるため、第1~4流通開口51~54に向かって流通する冷媒の一部が第1頂部401に衝突し難い。また、たとえ冷媒が第1頂部401に衝突しても、この冷媒は、第1面404及び第2面405に沿って流通することにより、第1面404及び第2面405に案内されて第1~4流通開口51~54に向かうことになる。これらにより、この逆止弁7では、冷媒と第1~4連結柱43~46との衝突を可及的に抑制できることから、吸入室19に向かって流通する冷媒の圧力損失を可及的に抑制できる。
【0074】
そして、この逆止弁7では、冷媒と第1~4連結柱43~46との衝突を抑制するに当たって、第1~4連結柱43~46を過度に細く形成する必要がない。これにより、この逆止弁7では、第1~4連結柱43~46の剛性、ひいてはスプール33の剛性を確保し易いことから、耐久性にも優れている。
【0075】
したがって、逆止弁7を備えた実施例1の圧縮機は、弁体41の径方向内側から弁体41の径方向外側へ流通する冷媒の圧力損失を抑制可能であるとともに、耐久性に優れている。
【0076】
ここで、この逆止弁7において、例えばスプール33が第1、2連結柱43、44の2本の連結柱を有する構成を想定することもできる。しかし、この場合には、スプール第1、2連結柱43、44によってスプール33の剛性を確保しつつ、第1、2連結柱43、44と冷媒との衝突を抑制する必要があることから、第1、2連結柱43、44の形状が複雑化する。また、スプール33が第1~4連結柱43~46の他に連結柱を有する構成も考えられる。しかし、この場合には、スプール33の剛性を確保し易いものの、連結柱と冷媒との衝突が生じ易いことから、上記の作用効果を発揮し難くなる。
【0077】
この点、この逆止弁7では、スプール33が第1~4連結柱43~46の4本の連結柱を有しているため、これらの第1~4連結柱43~46の4本の連結柱によって、上記の作用効果を好適に発揮することが可能となっている。なお、発明者の知見によれば、スプール33が第1~3連結柱43~45の3本の連結柱を有している場合であっても、連結柱が4本である場合と同様の作用を奏することができる。
【0078】
また、この逆止弁7では、第1~4柱本体43a~46aの特定断面において、第1内角407の第1角度θ1は、第2内角408及び第3内角409の第2角度θ2よりも小さくされている。換言すれば、外側部92、93の各角度は、内側部91の角度よりも大きくなっている。これにより、この逆止弁7では、第1~4連結柱43~46の剛性を好適に確保できることから、第1~4連結柱43~46の折損等を好適に防止することが可能となっている。また、第1内角407が第2内角408及び第3内角409よりも小さくなることにより、第1面404及び第2面405は、弁体41の径方向で第1頂部401から遠ざかるにつれて、互いに弁体41の周方向に徐々に離隔するように延びる形状となっている。このため、この逆止弁7では、冷媒が第1~4連結柱43~46に衝突し難く、また、第1面404及び第2面405によって、冷媒を第1~4流通開口51~54に好適に案内することが可能となっている。
【0079】
さらに、この逆止弁7では、連結ブリッジ47によって、第1~4連結柱43~46同士が弁体41の周方向に接続されている。これにより、この逆止弁7では、吸入口15の内部でケース31及びスプール33が冷媒の流通方向に移動する際に、第1~4連結柱43~46が撓み難くなっている。この結果、この逆止弁7では、ケース31及びスプール33が冷媒の流通方向に好適に移動することが可能となっている。
【0080】
また、第1~4連結柱43~46において、内側部91は、連結ブリッジ47よりも中心線C側に突出している。このため、この逆止弁7では、第1~4連結柱43~46の肉厚を好適に確保できることから、この点においても、第1~4連結柱43~46の剛性を確保し易くなっている。
【0081】
さらに、第1~4連結柱43~46は、第1~4接続部位43b~46bを有しており、第1~4接続部位43b~46bは、第1~4柱本体43a~46aの特定断面の形状に倣いつつ弁体41の表面41aと接続している。これにより、この逆止弁7では、第1~4連結柱43~46と弁体41との接続箇所における剛性も好適に確保することが可能となっている。
【0082】
また、弁体41の表面41aには、円錐状に隆起する案内部41cが形成されている。これにより、逆止弁7では、貫通孔31a内及び弁孔35b内を経た冷媒を案内部41cによっても、第1~4流通開口51~54に好適に案内することが可能となっている。この点においても、逆止弁7では、冷媒の圧力損失を抑制することが可能となっている。
【0083】
(実施例2)
図10に示すように、実施例2の圧縮機では、逆止弁9を採用している。逆止弁9では、スプール33が弁体41と、第1~4連結柱61~64とを有している。なお、詳細な図示を省略するものの、逆止弁9についても、逆止弁7と同様、ケース31、弁座部材35及びコイルばね37を備えている。
【0084】
第1~4連結柱61~64は、弁体41の周方向に等間隔で配置されている。これにより、第1~4連結柱61~64は、中心線Cから弁体41の径方向に離隔しつつ、中心線Cを囲んでいる。第1~4連結柱61~64も、本発明における「連結柱」の一例である。
【0085】
また、弁体41の周方向で隣り合う第1連結柱61及び第2連結柱62は、弁座部材35と弁体41との間に第1流通開口71を形成している。同様に、弁体41の周方向で隣り合う第2連結柱62と第3連結柱63とは、弁座部材35と弁体41との間に第2流通開口72を形成している。また、弁体41の周方向で隣り合う第3連結柱63と第4連結柱64とは、弁座部材35と弁体41との間に第3流通開口73を形成している。そして、弁体41の周方向で隣り合う第4連結柱64と第1連結柱61とは、弁座部材35と弁体41との間に第4流通開口74を形成している。これらの第1~4流通開口71~74についても、弁体41の周方向に等間隔で配置されている。また、図示を省略するものの、これらの第1~4流通開口71~74についても、第1~4流通開口51~54と同様、冷媒の流通方向に延びる略矩形状をなしている。
【0086】
第1~4連結柱61~64は、それぞれ第1~4柱本体61a~64aと、第1~4接続部位61b~64bと、図示しない第1~4係合部とを有している。また、第1~4柱本体61a~64aは、それぞれ内側部95を有している。第1~4柱本体61a~64aは、いずれも同一の構成であり、第1~4接続部位61b~64bは、いずれも同一の構成である。また、第1~4連結柱61~64における第1~4係合部は、第1~4連結柱43~46における第1~4係合部43c~46cと同様の構成である。以下、第1柱本体61a及び第1接続部位61bを基に構成を説明する。
【0087】
第1柱本体43aと同様、第1柱本体61aも冷媒の流通方向に所定の長さで延びている。第1柱本体43aは、特定断面の形状が円形をなしている。つまり、第1柱本体43aは、冷媒の流通方向に延びる円柱状をなしている。第1柱本体61aは、外周面600を有している。なお、第1柱本体43aの特定断面の形状を楕円形としても良い。
【0088】
図11に示すように、内側部95は、第1柱本体61aにおける弁体41の径方向内側、つまり、弁体41の中心側に位置している。これにより、内側部95は外周面600の一部を含んでいる。また、第1柱本体43aの特定断面についても、第1基準点P1と、第2基準点P2とが規定されている。ここで、第1基準点P1は、弁体41の周方向における特定断面の幅の長さが最長である第3長さW3となる個所に位置している。また、弁体41の径方向における中心線Cから第1基準点P1までの直線距離は第3距離L3となっている。なお、図11では、説明を容易にするため、第1接続部位61b等の図示を省略している。
【0089】
一方、第2基準点P2は、内側部95内であって、弁体41の径方向における中心線Cからの直線距離が第4距離L4となる個所に位置している。この第4距離L4は、第3距離L3に比べて短くなっている。こうして、第1柱本体61aの特定断面においても、第2基準点P2は、第1基準点P1よりも弁体41の径方向で中心線Cに近い個所に位置している。ここで、第2基準点P2での弁体41の周方向における特定断面の幅の長さは、第4長さW4となっており、この第4長さW4は、第3長さW3に比べて短くなっている。
【0090】
そして、第1柱本体61aの特定断面では、第1基準点P1から第2基準点P2に向かうにつれて、弁体41の周方向における幅の長さが第3長さW3から第4長さW4まで徐々に短くなっている。つまり、第1柱本体61aは、第1基準点P1において弁体41の周方向の幅が最も広くなり、第2基準点P2において弁体41の周方向の幅が最大よりも狭くなっている。このため、内側部95についても、弁体41の径方向内側に向うにつれて弁体41の周方向における幅が漸次狭くなっている。なお、特定断面の形状が円形であるため、第1柱本体61aは、弁体41の径方向で第1基準点P1よりも中心線Cから遠ざかるにつれて、弁体41の周方向の幅が最大よりも漸次狭くなる。
【0091】
図10に示すように、第1接続部位61bは、第1柱本体61aと弁体41との間に位置している。第1接続部位61bは、第1柱本体61aの下端、つまり第1柱本体61aにおける冷媒の流通方向の下流側と接続しており、第1柱本体61aと一体をなしている。第1接続部位61bは、第1柱本体61aの特定断面の形状に倣った形状に形成されている。そして、第1接続部位61bは、冷媒の流通方向で弁体41に近づくにつれて、第1柱本体61aよりも大きく広がりながら弁体41の表面41aと接続している。逆止弁9における他の構成を含め、実施例2の圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0092】
この逆止弁9では、貫通孔31a内及び弁座部材35の弁孔35b内を経た冷媒は、内側部95によって案内されつつ、弁体41の径方向内側、つまり中心線C側から第1~4流通開口71~74に向かって流通する。ここで、この逆止弁9では、第1~4柱本体61a~64aの特定断面の形状が円形であるため、たとえ第1~4流通開口71~74に向かって流通する冷媒の一部が第1~4柱本体61a~64aに衝突しても、その冷媒は、内側部95及び外周面600に沿って流通することにより、第1~4流通開口71~74に向かうことが可能となる。こうして、この逆止弁9についても、逆止弁7と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0093】
したがって、逆止弁9を備えた実施例2の圧縮機も、実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0094】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0095】
例えば、実施例1の圧縮機では、吸入口15の内部に逆止弁7を設けているが、これに限らず、吐出口17の内部に逆止弁7を設けても良い。この場合、吐出口17の内部において逆止弁7は、吐出室側にケース31を向けるとともに、配管22側に弁体41を向けた状態で配置される。また、吸入口15の内部及び吐出口17の内部にそれぞれ逆止弁7を設けても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0096】
また、逆止弁7では、スプール33が第1~4連結柱43~46の4本の連結柱を有しているが、これに限らず、連結柱の個数は複数であれば適宜設計可能である。逆止弁9についても同様である。
【0097】
さらに、逆止弁7では、第1~4柱本体43a~46aの特定断面の形状を略三角形としている。しかし、これに限らず、特定断面において、第1基準点P1と、第1基準点P1よりも中心線Cに近い第2基準点P2とを規定した際、弁体41の周方向における特定断面の幅の長さが第1基準点P1から第2基準点P2に向かうにつれて最長から徐々に短くなる要件を満たしていれば、第1~4柱本体43a~46aの特定断面の形状は、菱形等であっても良い。換言すれば、内側部91の特定断面の形状について、弁体41の径方向内側に向うにつれて弁体41の周方向における幅が漸次狭くなる要件を満たしていれば、第1~4柱本体43a~46aの特定断面の形状は、適宜設計可能である。
【0098】
また、実施例1、2では、本発明における流体として冷媒を挙げているが、これに限らず、流体は、燃料電池へ圧送するための空気や水素等であっても良い。つまり、本発明の逆止弁は、燃料電池の水素ポンプ等に採用されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は圧縮機及び水素ポンプ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
7…逆止弁
9…逆止弁
15…吸入口(流体通路)
30…弁部材
31…ケース(頭部)
35…弁座部材
37…コイルばね(付勢部材)
41…弁体
43~46…第1~4連結柱(柱状部)
47…連結リング(環状部)
61~64…第1~4連結柱(柱状部)
91…内側部
92、93…外側部
95…内側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12