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特開2022-101921子嚢菌菌根菌木材腐朽菌による作物及び土壌及び加工食品、飲料、生薬原料及び下水場残渣の残留農薬分解清浄化及び土壌硝酸態窒素分解清浄化法。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101921
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】子嚢菌菌根菌木材腐朽菌による作物及び土壌及び加工食品、飲料、生薬原料及び下水場残渣の残留農薬分解清浄化及び土壌硝酸態窒素分解清浄化法。
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20220630BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B09C1/10 ZAB
A01G7/00 605Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216308
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】511161085
【氏名又は名称】有限会社最上蘭園
(71)【出願人】
【識別番号】519328903
【氏名又は名称】宇井 拓男
(71)【出願人】
【識別番号】520512409
【氏名又は名称】宇井 喜代美
(71)【出願人】
【識別番号】519327803
【氏名又は名称】藤原 澄久
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】宇井 清太
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB10
4D004AC07
4D004CA18
4D004CC07
(57)【要約】
【課題】
増加する人口に対処し得る食料の増産と環境汚染の抑制を両立させる技術の開発。
【解決手段】
農作物に対し使用した農薬がその機能を果たした後に、菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌を使用して農作物や土壌に残留する農薬を分解する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌を使用する、残留有害化合物を含有又は付着する物質における残留有害化合物の分解清浄化方法。
【請求項2】
菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、セイヨウショウロ科、ショウロ科、またはチャワンダケ科から選択される菌である請求項1記載の分解清浄化方法。
【請求項3】
菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、白トリュフTuber 菌である請求項1記載の分解清浄化方法。
【請求項4】
残留有害化合物を含有又は付着する物質が、植物、動物の排泄物、下水汚泥又は土壌である請求項1~3の何れか1項に記載の分解清浄化方法。
【請求項5】
残留化合物が残留農薬である請求項1~4の何れか1項に記載の分解清浄化方法。
【請求項6】
残留化合物が動物の排泄物中に含まれる抗生物質である請求項1~4の何れか1項に記載の分解清浄化方法。
【請求項7】
菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌を使用する植物の安定栽培方法。
【請求項8】
菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、セイヨウショウロ科、ショウロ科、またはチャワンダケ科から選択される菌である請求項7記載の植物の安定栽培方法。
【請求項9】
菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、白トリュフTuber 菌である請求項7記載の植物の安定栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全世界的に農業で使用されている植物、作物栽培における化学肥料、農薬の残留成分を、子嚢菌木材腐朽菌菌根菌である白トリュフTuber 菌を使用して分解解毒して、安心安全な食糧、加工食品、飲料、茶、生薬を生産する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀の世界社会は炭素社会を構築し、地球の有限資源を浪費し安楽な生活と繁栄を希求した100年である。しかし、21世紀に入ると、その「つけ」が一度に浮上したように、多くの問題、課題が表れてきた。更に、追い打ちをかけるように、2020年の新型コロナウイルスは人類社会の根底を揺るがし、新たに疫病の克服という最大の問題を解決しなければ、人類の未来を展望できない課題まで背負うことになった。人類が健康でなければ全ての産業が成りたたない。今後、健康は自身の「免疫力」で保つ社会になり、健康への意識の高まりは今後非常に急速に進行するであろう。
【0003】
この時、問題になるのは毎日食べる食糧の「残留農薬」の問題である。完全無農薬食糧は理想であるが、それでは現在の人口を賄うことが出来ない。栄養不足は即「免疫力」の低下につながり、貧困国では疫病と飢餓で悲惨な惨状になる。この飢餓と免疫力低下を防ぐためには農薬と化学肥料を多用して食糧を確保しなければならない。
【0004】
我が国において栽培されている野菜や果物では、収穫までに最低で6回、多いものでは60回以上農薬散布が行われ、1ha当たりの農薬使用量(2010年)は、12.1kgで中国、韓国に次いで世界で3番目に多い。このような状況で栽培された作物を食すれば、残留農薬も摂取せざるを得ないが、この残留農薬は人類の免疫に大きく関与しており、どうやっても「免疫力」低下を回避できない。免疫力の強弱が人類の生存を左右することを新型コロナは実証した。
【0005】
安心安全な残留農薬の無い免疫力を減退させない食糧生産を行ないながら、今後の人口増加を賄うだけの食糧確保という、人類生存の最も困難な二つの問題を両立満足させる技術開発が喫緊の課題である。現在の世界の農業は、増大する世界人口の食糧を賄うために、大量の農薬と化学肥料が使用されており、残留農薬(除草剤)残留硝酸態窒素の問題は、食糧、土壌にとどまらないで、家畜の飼料の抗生物資、除草剤の非農耕地への散布による汚染は、河川、海洋、地球環境、生物生態系への影響など深刻な問題になっている。特に、2020年に全世界を震撼させた新型コロナは、人類の免疫減退の問題をあぶり出し、世界は疫病との戦いという新たな課題を解決しなければならなくなった。
【0006】
20世紀初頭の1900年におよそ16億人だった世界人口は2019年には77億人まで急増した。この人口の急増を可能にしたのは、1900年代初頭に発明されたハーバー・ボッシュによって発明されたアンモニア合成による化学肥料と農薬による食糧の増産である。今後増大すると予測される人口を支えるためには、今後益々多肥料栽培と農薬の大量使用を行なう必要があるといわれる。地球温暖化によって高温障害による生育不良、軟弱化は病害虫の大発生を誘起している。この環境変化は作物の適地適産を脅かすまでに進行しており、この中で収量確保の為に、更に多くの化学肥料と農薬と除草剤使用を余儀なくされている。このことが、ハーバー・ボッシュ法による肥料生産のためのエネルギー消費を更に増大させ、石油枯渇、土壌残留硝酸態窒素による地球温暖化促進、生物生態系の破壊、熱帯雨林の消滅など、21世紀の人類が解決しなければならない重要な問題、課題の多くが、農業の問題であるといっても過言ではない。
【0007】
多肥栽培と農薬使用を行なわない場合、現在の食糧生産は60%まで激減するとも言われており、世界の各国とも食糧の安定生産の立場から、農薬使用を継続する姿勢である。特に、穀物栽培は「雑草との戦い」であり、農薬の中で最も多量に使用されているのが「除草剤」である。この除草剤の使用量は、今後ますます増大する状況であり、食の安心、安全とは真逆の方向に進んでいるが、そうしなければ、増大する人口を養うことが出来ないのである。21世紀の世界は、食の安全と飢餓、農薬と免疫を同時に解決しなければならないことを課せられている。新型コロナウイルスの特効薬、ワクチンを作っても、残留農薬が体内に潜伏して免疫力を失わせ、次に生まれる疫病に同じことが繰り返される可能性がある。
【0008】
農作地などの土壌中に残留した農薬や蓄積された化学肥料を処理する手段としては、種々の方法が提案されているが、物理的な方法(例えば、特許文献1~3)では、大量の土壌の処理や、複雑な設備を用いなければならず、実際にはほとんど普及されていない。また、化学的な処理方法(例えば特許文献4)では、広い面積に必要量を散布する必要があり、また処理剤としてそのまま土壌中に残るので、作物によっては使用できないこともあった。さらに、微生物を利用した処理方法も、特定の農薬用(特許文献5~7)だけでなく、汎用(特許文献8)の微生物も提案されているが、これらの微生物の育成が考慮されていないのでいずれは死滅し、効果は限定的であった。
【0009】
一方、収穫物に残留する農薬は、対象物の安全を確保したうえで除去しなければならず、水洗が主に行われているが、完全に除去することは難しく、特に、生育中の作物体内に残留する農薬の除去には効果がなかった。このように、農作物やその農耕地など身近な環境に存在する有害物質を簡単かつ安全に除去する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2019-181403号公報
【特許文献2】特開2016-010768号公報
【特許文献3】特開2013-220419号公報
【特許文献4】特開2010-017219号公報
【特許文献5】特開2011-031180号公報
【特許文献6】特開2010-017086号公報
【特許文献7】特開2005-065614号公報
【特許文献8】特開2000-232875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
人類は前記したように人口の増加を賄う食糧を確保するために農薬を開発し、農薬が残留する原料を使用することで、殆ど全ての食糧、食品、加工食品、飲料が農薬に汚染された。食糧確保のための食糧生産を行なえば、この農薬が人類の免疫を低下させ、生物生態系に大きな影響を与え、地球環境を配するまでになった。
【0012】
自然界には、生物が産生する有毒物質は、必ず生物が分解解毒し清浄化するという自然の法則がある。分解解毒できない化学化合物を作るのは人間のみである。本来なら、科学は、毒性を持つ農薬を作る場合、同時に自然界と同じように「分解、解毒、清浄化」を図る「解毒剤」も開発すべきであるが、それを行なわないで利益追求に走った結果が、現在の残留問題の根源である。本発明者は、上記の自然の法則を考察したとき、今後も農薬を使わなければ食糧確保できないのであれば、自然の法則に則り「農薬を分解解毒」しなければ、この問題を解決でないとの考えに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は先に「完全無農薬栽培」、「減肥料及び減農薬及び無農薬栽培」で行うことを考え特許出願3件を行なってきた(特願 2019-164530、特願 2019-164410、特願 2020-142873)。
しかし、現状は、逆に、今後益々農薬の生産、使用量が増大すると予想され、世界の農業を俯瞰したとき、高度な技術を必要とする「減肥料及び減農薬及び無農薬栽培」は減収を伴い食糧不足する国々が出ることが予想されるので、本発明者は、農薬を使用しても、その後解毒剤処理を行うことで、食糧、加工食品、飲料、環境から残留農薬を分解、解毒、清浄化を図り、農薬を使用しながら人体の免疫、環境破壊を防止することを考えた。
【0014】
食糧、加工食品、飲料、環境から残留農薬を、完全に分解、解毒、清浄化するためには、作物の表面に付着した農薬だけでなく、生育中の植物、作物の体内に蓄積された農薬も除去する必要があるが、従来このような技術が知られていない。また、この残留農薬の問題は、今や全世界の共通のものであることから、全世界で実施可能な技術でなければならない
【0015】
大自然の生物が代謝物として産生する生物活性物としての有毒化合物は、自然界ではほとんど全て木材腐朽菌、白色木材腐朽菌が第一分解者として分解無毒化しており、地球の大自然の土壌はこの浄化システムで保たれている。本発明者は、この地球の大自然の摂理、法則に着目して、残留農薬の分解解毒に、この大自然の浄化システムを導入すれば、安心安全な食糧生産を行ないながら、現在の人口、更には、今後予想される人口増加を対応できる食糧生産を可能にすることが出来ると考えた。
さらに、残留農薬の食循環の問題は、作物ばかりではなく、残留農薬を含有した飼料による肉、卵、乳製品、農薬に汚染された海水による海産物、魚類にまで及んでおり、地球には安心安全な食べ物が無い状態まで汚染は進行している。
【0016】
圃場周囲エリアの生態系へ影響を及ぼす残留農薬とは、人間本位の収穫時、出荷時の残留濃度基準ではなく、栽培生育中のエリアに残留する農薬の問題である。本発明者は、上記のような視点から、収穫時の残留農薬と共に、作物栽培中の生育過程での残留農薬の分解解毒、浄化をしなければ、生物生態系を保全することは出来ないと考えた。つまり、別な言い方をすれば、農薬散布、除草剤の散布後、効果が表れた後、速やかに分解解毒すれば、上記の諸問題は全て解決するはずである。更に、加工食品原料の原料となる農作物の残留農薬を分解除去することで、安心安全な加工食品、飲料、茶などを生産することが出来る。
【0017】
先に述べたように残留農薬の食循環の問題は、作物ばかりではなく、残留農薬を含有した飼料による肉、卵、乳製品、農薬に汚染された海水による海産物、魚類にまで及んでおり、地球には安心安全な食べ物が無い状態まで汚染は進行しているが、飼料の原料となる農作物中の残留農薬や圃場その他の農薬散布エリアの残留農薬が分解除去されることで、上記汚染が抑制される。
【0018】
残留農薬を分解解毒するには、先行出願の減肥料及び減農薬及び無農薬栽培法(特願2019-164530号)で使用したPezizales sp.菌より優れた殺菌剤耐性を具備しなければ本発明の目的を達成することは出来ない。そこで本発明者は、土壌の中に子実体を形成する子嚢菌木材腐朽菌菌根菌であれば、土壌の多様な環境条件、雑菌耐性を具備しているのではないかと想定した。それは、土壌の中に次世代の子実体を形成するには、強い抗菌力と共に、土壌に生息する多様な微生物が産生する抗生物質、生物毒などの生物活性物質が含有するが、これらの多様な有害成分を分解清浄化する必要があるからである。
【0019】
本発明者は、そのような観点から、一縷の望みを託し「減肥料及び減農薬及び無農薬栽培」で使用した「子嚢菌白色木材腐朽菌 菌根菌」であるTuber ssp.に属する「白トリュフ」Tuber magnatum菌に着目した。この白トリュフTuber 菌は食菌としては何世紀に渡り西欧諸国において最高のキノコとして高級料理に使用されてきて来ており、人畜無害で、世界各地に自生している。本発明者は、この白トリュフTuber 菌に着目し、その特性の全貌を解明するために更に膨大な試験を行い、下記表1に示す、他の微生物に見られない稀有な31特性を解明した。
【0020】
【表1】
【0021】
白トリュフTuber 菌に着目した理由は、地球上で最も強力な分解能力を具備している微生物はリグニンを分解出来る白色木材腐朽菌であること、白色木材腐朽菌には、子嚢菌と担子菌があるが、子嚢菌には担子菌のような植物を枯らす菌がなく、生育中の作物の残留農薬を分解するためには植物に無害な菌であること、「子嚢菌白色木材腐朽菌」でありながら植物の生育助ける菌根菌に進化し土壌の中に子実体(いわゆるトリュフ)を形成すること、人畜、生物に対して絶対に安全な菌であるということ、強い抗菌力を持ち、全世界の寒帯から熱帯エリアの多様な土壌で生息できる菌であること、である。
【0022】
白トリュフTuberは、イタリア、フランスなどの塩基性アルカリ土壌(図2)に自生するキノコ菌であり、セイヨウショウロ科 、セイヨウショウロ属に属する菌で、他に黒トリフが著名であるが、最近の研究では近縁のTuber属菌は、近年、世界各エリアで新種が次々に発見され、北半球から南半球まで合わせると約160種が発見登録され、日本にも約15種自生しているといわれている。
【0023】
また、白トリュフTuber 菌と使用して本発明を達成し全世界で実施するためには大量の菌糸体が必要になるが、本発明者は世界で初めて、白トリュフTuber 菌の大量培養に成功した(図8)。
【0024】
さらに、本発明は白トリュフTuber 菌に限定するものではなく、Tuber属にするほとんどの菌、黒トリュフ、中国黒トリュフなど160種のTuber ssp.菌を使用することが可能である。更に近縁種である子嚢菌木材腐朽菌Pezizales.属菌が同じような特性を持っていることから(特願 2019-164530号)、子嚢菌白色木材腐朽菌の中で「菌根菌」の特性を具備した他のセイヨウショウロ科、ショウロ科、チャワンダケ科菌を用いることも可能であることを示唆している。例えばチャワンダケ科の菌では、オオチャワンダケ、ベニチャワンダケ、クロチャワンダケ、タヌキノチャワンダケ、クリイロチャワンダケ、ニセクリイロチャワンダケ、にも可能性があると考えられる。
【0025】
材腐朽菌の基本は自然界では枯れ落ち葉、風倒木、植物死骸などのリグニン、セルロース、その他の生理活性物質などをエサにして生き続けてきた第一次分解菌であり、この木材腐朽菌には担子菌と子嚢菌を合わせる世界中に数万以上の菌があるとされている。しかし、この中に木材腐朽菌でありながら生きている植物と共生し「菌根菌」の特性を具備して植物の生育を助けるラン菌、マツタケ菌、トリュフ菌などごく少数しかない。本発明の目的を達成するためには、木材腐朽菌でありながら生きている植物と共生して、その植物の生育を助ける菌根菌でなければならない。このような菌でなければ、栽培中の生きている作物体内に残留する農薬を分解、解毒することは出来ないからである。ただ単に作物残渣残留農薬を分解するのであれば、植物死骸を分解するシイタケなどの担子菌木材腐朽菌でも使用できるが、生きている生育中の作物には使用できない。
【0026】
白トリフは、キノコ栽培で最も困難なキノコで、この菌の子実体は食べられるキノコとして、世界で最も高価なキノコとして賞味されてきた人畜無害なキノコである。何100年にもわたって食されてきたキノコであり、毒性の知見はない。本発明者がこの白トリュフTuber 菌に着目した最も重要な要素が安心安全なキノコ菌であることである。更に、作物にとっても害を与えない安全な「菌根菌」の特性を持っている木材腐朽菌の中でも稀な特性を具備していることである。
【0027】
白トリュフTuber 菌の菌根菌が植物の根と共生すると植物の根は「根毛」を持たない根に変化する。図9(1)は、ラン菌と共生したカトレアの菌根であり、根毛がない。
一方、図9(2)に示すイチゴは根毛を有するが、この根毛は乾燥に弱く、吸水力が弱いため、土壌が乾燥すると植物は大きなダメージを受ける。野生植物は、このリスクを回避するために菌根菌と共生し、菌根菌の菌糸を根毛の代わりとして、菌糸の強い水分吸収力を利用して乾燥に耐える。又、白トリュフTuber 菌のような白色木材腐朽菌は枯れ落ち葉、植物死骸のリグニン、セルオースを分解してブドウ糖を作り、これを植物に供給し、植物の光合成を補完する。同時にミネラル、酸素、窒素も供給し、連作障害が起こらないようにしている。又、菌根菌の多くは強い抗菌力で病害菌を休眠させ、植物を病害から保護している。植物は菌根菌と共生することによって充分なエネルギーを貯蔵できることから「耐暑性」「耐寒性」を増し、多年草植物では永年にわたり健康を持続させる。屋久島の7000年の大王杉がその実例だといわれている。
【0028】
以下、本発明の態様を示す。
〔1〕菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌を使用する、残留有害化合物を含有又は付着する物質における残留有害化合物の分解清浄化方法。
〔2〕菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、セイヨウショウロ科、ショウロ科、またはチャワンダケ科から選択される菌である〔1〕記載の分解清浄化方法。
〔3〕菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、白トリュフTuber 菌である〔1〕記載の分解清浄化方法。
〔4〕残留有害化合物を含有又は付着する物質が、植物、動物の排泄物、下水汚泥又は土壌である〔1〕~〔3〕の何れかに記載の分解清浄化方法。
〔5〕残留化合物が残留農薬である〔1〕~〔4〕の何れかに記載の分解清浄化方法。
〔6〕残留化合物が動物の排泄物中に含まれる抗生物質である〔1〕~〔4〕の何れかに記載の分解清浄化方法。
〔7〕菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌を使用する植物の安定栽培方法
〔8〕菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、セイヨウショウロ科、ショウロ科、またはチャワンダケ科から選択される菌である〔7〕記載の植物の安定栽培方法。
〔9〕菌根菌の特性を具備した子嚢菌白色木材腐朽菌が、白トリュフTuber 菌である〔7〕記載の植物の安定栽培方法。
【0029】
白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液は液状であるので、通常の農薬散布の方法に準じジョウロ、噴霧器、飛行機、ドローンなどを使用することが出来る。しかし、懸濁液希釈液に限定することなく、大量培養して得られた白トリュフTuber 菌を担持させた粉剤、粒剤として使用することも可能であり、場所や対象物に応じて選択すればよい。
除草剤の場合、面積当たりの使用量が少ないので、その分解浄化のためには、白トリュフTuber 菌懸濁液を植物残渣が充分濡れた状態となるまで散布すればよい。
【0030】
作物生育中の生体内残留農薬分解するには、農薬散布24時間から48時間の間に白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液30から50倍液を10a当たり200から500L噴霧散布する。
このとき、展着剤を所定濃度に添加、希釈液1L当たり白砂糖5g添加すればよい。白砂糖添加した場合は、葉圏、根圏の病害菌を不活性化し、また、白トリュフTuber 菌の空中窒素固定で減肥料及び減農薬及び無農薬栽培が可能になる。
殺虫剤、殺菌剤共に薬効が表れるのは散布24時間ほどであるから、これより前に行わないことが重要である。
【0031】
雑草の除草剤成分を分解するには、茎葉の場合、除草剤を散布してから24時間~48時間後に白トリュフTuber 菌懸濁液希釈溶液を、茎葉が充分濡れる程度噴霧すればよく、除草剤処理残渣の残留農薬分解の場合(枯れた残渣)は、除草剤散布で雑草が枯れていても、この残さには除草剤成分が残留して、残渣が分解した後、土壌に残留汚染するので、枯れた雑草残渣に白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液30から50倍溶液を充分濡れる程度噴霧するのがよい。
また、圃場雑草刈り取り残渣、除草剤残渣 果樹草生栽培残渣の場合は、白トリュフTuber 菌懸濁液30から50倍希釈液を充分濡れる程度噴霧散布する(展着剤添加、白砂糖希釈液1L当たり5から10g添加)。すると、約7日から15日で残渣に白トリュフTuber 菌が生育繁殖して、残渣を分解すると同時に農薬、除草剤成分を分解解毒し、土壌病害菌を休眠させ、同時に土壌の残留硝酸態窒素を浄化し、更に白トリュフTuber 菌が空中窒素固定を行い減肥料及び減農薬及び無農薬栽培可能な圃場に再生することが出来る。
【0032】
土壌に残留する農薬を分解するには、以下の二つの方法が考えられる。
<方法1>予め白トリュフTuber 菌を土壌に繁殖させておく方法
早春、又は作物を栽培する約15から30日前に、白トリュフTuber 菌懸濁液希釈30から50倍溶液を10a当たり200から300L土壌表面に丁寧に噴霧散布する(白砂糖希釈液1L当たり5から10g添加)。散布後、絶対に耕さないことが重要である(耕すことにより白トリュフTuber 菌の菌糸を切断し、菌ネットワークを破壊してしまう)。
このようにすると、地表に白トリュフTuber 菌が生育し、土壌病害菌を休眠させることが出来る。その後、農薬、除草剤を散布しても白トリュフTuber 菌は死ぬことはなく、土壌に落下した農薬、散布した除草剤成分を分解解毒し、常に清浄な土壌に持続することで、作物が根から農薬成分を吸収することが防げる。
これを図3で説明すれば、左図は、前作で使用された農薬は作物だけでなく土壌にも残留するので、ここに白トリュフTuber 菌懸濁液を散布することにより、中図のように作物だけでなく土壌の残留農薬が少なくなる。このような土壌で次物を栽培すれば、右図のように次作に含有する残留農薬も非常に少なくなる。
【0033】
<方法2>雑草が生えてから、白トリュフTuber 菌を土壌に散布する方法
雑草が生えてから白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液30から50倍液を充分濡れる程度噴霧散布する。(展着剤添加、白砂糖希釈液1L当たり5から10g添加)。
散布2,3日後に農薬、除草剤を散布する。これで白トリュフTuber 菌により農薬、除草剤成分を分解解毒出来る
【0034】
なお、白トリュフTuber 菌は0℃から5℃、積雪下でも生育繁殖する菌であるので、秋に除草剤散布した場合は、土壌細菌が低温で休眠し分解しない場合がある。
晩秋に白トリュフTuber 菌懸濁液50倍希釈液(白砂糖添加)を10a当たり200から300L噴霧散布すると、除草剤残留成分を分解すると同時病害菌を休眠させることが出来る。
【0035】
また、後述するように、白トリュフTuber 菌は殺菌剤や殺虫剤などの有毒成分を分解する能力を有するので、図7(サクランボ農園の例)のような散布装置で殺菌剤や殺虫剤を散布する。そこで、殺菌剤や殺虫剤が効果を発揮した後、1~2日後に同じ散布装置を利用して、白トリュフTuber 菌懸濁液を散布すれば、役目を果たした殺菌剤や殺虫剤を分解するので、殺菌剤や殺虫剤の残留量を大幅に低減することができる。
【0036】
下水場残渣には高濃度硝酸態窒素、作物と共生しない細菌が生息しおり、これをそのまま圃場に施与しても作物は良く生育しないことが知られており、多くの場合焼却している。
この下水残渣を高さ15から20cm平らにして、これに白トリュフTuber 菌懸濁液を添加し、湿度約80%に保つ。0℃から50℃の温度範囲で約7から15日で白トリュフTuber 菌が飽和状態に繁殖し完成する。
白トリュフTuber 菌は作物を助ける「菌根菌」であると共に、土壌病害菌を休眠させる能力を具備しており、土壌病害を抑止して「減肥料及び減農薬及び無農薬栽培用の優良な土壌改良材に改変する事が出来、循環型農業の構築が可能である。
【0037】
図4(1)はキャベツ、図4(2)は、トウモロコシの収穫後の残差を示す。特に秋に収穫する作物の残渣に含有する農薬成分は、温帯地方では寒冷期に向かい低温になるために、細菌、微生物は活動力が衰え残渣を分解出来ない状態になり、農薬成分は土壌に残留する。また、収穫後の作物残渣には残留農薬の他に、病害菌が生息している。
このような作物残差方残留農薬を除去するには、収穫後の作物残渣を地表に広げ白トリュフTuber 菌懸濁液希釈50倍から100倍液を噴霧散布する(白砂糖 希釈液1Lに5から10g添加)。これにより、作物残渣の病害菌を休眠させ、次の作物の病気を防止できる。作物残渣に含有する残留農薬を分解して、作物残渣を圃場の炭素循環の原料にすることが出来る。
【0038】
多様な作物原料より多様な加工食品が製造されているが、この原料にはほとんどの場合残留農薬が残留している。このような原料から残留農薬を分解するには、図5に示される様に、食品加工の工程の中、白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液に原料を1から2時間浸漬し、その後水洗いの工程を挿入すればよい。このような処理により原料の残留農薬をほとんど分解解毒、清浄化することが可能である。
【0039】
茶葉の栽培圃場では、多量の農薬(殺菌剤、殺虫剤)が散布(通常8回程度)されており(図6(1))、茶用の農薬は2020年現在で約100種類が登録されて使用されている。
当然、製茶された「お茶」には、基準値以下ではあるが「残留農薬」が含有し、喫茶した場合、茶葉含有の成分と同時に、この残留農薬成分も当然溶出している。
また、製茶する場合、複数の生産者の茶をブレンドすることから、製品化された茶の分析では「茶畑」を特定することは、ほとんど不可能である。
この問題を解決するには、加工食品と同じように加工工程に残留農薬分解解毒、清浄化工程を挿入することで解決できる。即ち、図6(4)に示すように、茶葉を摘んで蒸す前に白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液に1から数時間浸漬して清浄化し、その後水洗いしたのちに「蒸す」工程を行なえばよい。図6(3)は、慣行の製茶工程を示す。
【0040】
白トリュフTuber 菌が繁殖するためにはエネルギー源として「炭素源」が必要である。この炭素源として白砂糖を添加すると、これを「エサ」にして白トリュフTuber 菌は生育大繁殖する。具体的には、1リットル当たり10gの糖を溶解した溶液を、月1回のペースで、10アール当たり200リットル程度、散布すればよい。
【0041】
殺菌剤と殺虫剤の違いは、殺虫剤は白トリュフTuber 菌に対して重大な影響を与えないことである。また、白トリュフTuber 菌は散布24時間内では、殺虫剤成分を分解することはない。この特性を利用して殺虫剤と白トリュフTuber 菌懸濁液を混合して散布できる。殺虫剤のほとんどは散布24時間で殺虫効果が表れるので、それ以降は速やかに残留農薬を分解解毒、清浄にすることが望ましいが、混合することで、殺虫剤による殺虫と、その後の残留した殺虫剤の分解とを1回の散布で行なうことで可能である。
【0042】
本発明では、白トリュフTuber 菌が植物ホルモン インドール 3 酢酸を産生する菌であることを新規発見した。このホルモン産生の発見によって、本発明者が目的とする安心安全な食糧生産を行うと同時に本ホルモンを白トリュフTuber 菌懸濁液にミックスして散布することで、生育中の残留農薬を分解しながら、同時に生育促進によって気候変動に負けない安定した生産が可能となるので、増産が期待できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の効果を以下列記する。
1.白トリュフTuber 菌による残留農薬の分解解毒作用により、残留農薬成分の少ない安全、安心な食物を生産供給できる。白トリュフTuber 菌は農薬(殺菌剤、殺虫剤、除草剤)に対して耐性であることから、多様な農薬を生育中でも分解出来き、収穫前に、作物に対する白トリュフTuber 菌懸濁の希釈液散布によって、消費者が希求する、より安全な残留農薬の少ない農産物を生産、供給できる。このことによって、食糧の安定確保と安全な食糧を両立でき、今後の人口増加に対応できる食糧確保が可能となる。
2.作物生育中の殺菌剤、殺虫剤、除草剤の農薬散布による作物生体内、及び外部に付着した残留農薬成分は、農薬散布12時間から48時間後に白トリュフTuber 菌懸濁液の30倍希釈液の地上部への葉面散布で分解、解毒することができる。このことによって、安心安全な食糧、生野菜の生産が可能となるだけでなく、栽培者の人体への農薬薬害を防止でき、ミツバチなどの訪花昆虫などへの薬害を防止し、生態系を保全できる。また、除草剤を速やかに分解できることから、土壌、河川、海の地球環境保全が出来る。
3.残留農薬分解と同時に、白トリュフTuber 菌懸濁液には白トリュフTuber 菌が産生する植物ホルモン「インドール 3.酢酸」が含有することで、残留農薬を分解すと同時に作物を生育促進させ、減肥料多収穫が可能となる。
4.多様な加工食品原料を白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液に一定時間浸漬することで、加工原料に含有する残留農薬を分解、清浄化することが可能となった。このことにより、安心安全は加工食品、飲料、茶、生薬の製造が可能になった。
5.農薬の効果を減ずることなく、病害菌、害虫、雑草を防除した後に速やかに農薬成分を分解、解毒することで、安定した収穫を得ながら安心安全な作物栽培が可能となり、土壌も清浄化出来る。
6.白トリュフTuber は菌抗菌力と空中窒素固定能力を有しているので、栽培前及び生育中の作物に白トリュフTuber 菌懸濁液の散布することで、体内、土壌残留農薬分解解毒と同時に土壌に白トリュフTuber 菌が生息することで減肥料及び減農薬栽培ができる。
7.本発明の方法は、適用場所に制限がなく、農耕地以外のエリアで除草剤散布24時間から48時時間後に白トリュフTuber 菌懸濁液散布することで、残留除草剤成分を解毒出来るだけでなく、枯れた雑草も分解き、さらに人体への残留農薬の接触付着なども避けられ、これらのエリアをより安全なものとすることが出来る。
8.全世界の寒帯から熱帯エリア圃場、酸性、アルカリ土壌でも実施可能であることから、圃場の荒廃を防止することで食糧の安全性と、食糧確保を両立させることが出来る。
9.現在の圃場土壌の硝酸態窒素を浄化再生することで圃場の養分バランスを整え、健全な作物を育成できる圃場になる。この清浄土壌を永続的に保存することで、熱帯雨林の消失を防止できる。更に、土壌に残留した硝酸態窒素は還元され酸化窒素ガスとなって地球温暖化の原因になっているが、空中窒素固定能を有する白トリュフTuber 菌で、土壌を浄化することで温室効果ガス排出の問題を解決できる。
10.白トリュフTuber 菌は菌根菌であることから、地球温暖化による作物の光合成不足を補完することで作物生育が安定し、病害虫に強い作物となり、安全安定な食糧生産と同時に、安定した持続可能な農業経営が可能になる。
11.人畜及び生物に対し無害菌であり、白トリュフTuber 菌は地球のほとんどのエリアで生存繁殖できる菌であることから、全世界の圃場、非農耕地で残留農薬の無害化処理を実施でき、残留農薬による生態系破壊を防止できる。
12.食糧、生態系残留農薬成分を分解解毒することで、人類、生物の免疫力の減退を防止でき、今後の世界社会で最も重要な課題に浮上した「免疫力」の減退を抑制することで、疫病の大流行に抵抗力のある人体、生物、医療、社会にすることが出来る。
13.畜産排泄物に含有する抗生物質を分解解毒し、これを利用して製造された培養土を利用して抗生物質が含まれない農作物を栽培することにより、抗生物質の含有しない食糧で、抗生物質の効果を持続できる人体を維持できる。
14.畜産排泄物を利用してメタンガスを発生させ、メタンガス発電が世界的に脚光を浴びて普及段階に入っているが、含有する抗生物質がメタン菌の生育繁殖を抑止して、メタンガスが出来ないケースが多くなっている。畜産排泄物をメタンガス発生槽に投入する前に、白トリュフTuber 菌で抗生物質を分解することで、この問題を解決することができる。
15.全無農薬栽培が困難な作物、圃場では、これまでの農薬使用に白トリュフTuber 菌使用を組み合わせることにより、農薬を散布しても、その効果が発揮された後に散布した農薬を分解解毒することで無農薬栽培に近い安全な食糧生産が可能である。
16.殺虫剤の分解清浄化は殺虫剤と白トリュフTuber 菌懸濁液を混和して散布することが出来、一つの作業で殺虫と残留農薬分解を行なうことが可能である。
17.ウイルス共存、アフターコロナ社会は「免疫力」がキーワードの社会であるが、残留農薬含有食糧が人類の「免疫力」を低下させる要因の一つとされ、本発明により残留農薬を分解清浄化することで、人類の免疫力低下を防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】世界の酸性土壌圃場
図2】世界のアルカリ性土壌圃場
図3】前作残留農薬、次作残留農薬 概念図
図4】作物残渣の画像
図5】加工食品製造工程の概略図
図6】(1)茶畑の農薬散布 (2)積んだ茶葉の白トリュフ菌懸濁液浸漬 (3)、(4) 製茶工程図
図7】「白トリュフ」Tuber 菌懸濁液50倍希釈液のサクランボ葉面散布による農薬「殺菌剤」「殺虫剤」成分の分解、解毒試験
図8】白トリュフTuber菌の大量培養
図9】白トリュフ菌根菌が共生した菌根画像
図10】白トリュフ菌の幼苗に及ぼす影響
図11】白トリュフ菌の細胞浸透性試験
図12】白トリュフ菌の殺菌剤に対する耐性試験
図13】白トリュフ菌Tuber.の微生物抗菌試験
図14】白トリュフ菌Tuber.によるアルコール醗酵酵母菌不活性化試験
図15】白トリュフ菌のネオニコチノイド分解解毒試験
図16】白トリュフ菌の各種除草剤残留農薬分解浄化試験
図17】白トリュフTuber 菌のランドアップ耐性試験
図18】白トリュフTuber 菌によるランドアップ分解の経時的経過
図19】白トリュフTuber 菌による家畜排せつ物分解試験
図20】白トリュフTuber 菌による露地イチゴ減農薬栽培
図21】白トリュフTuber 菌の空中窒素固定試験
図22】白トリュフTuber 菌の有機物分解試験
図23】白トリュフTuber 菌の土壌生育試験
図24】白トリュフTuber菌の強酸性土壌生育試験
図25】白トリュフTuber菌の強アルカリ土壌生育試験
図26】白トリュフTuber菌の低温生育試験
図27】白トリュフTuber 菌の高温生育繁殖試験
図28】白トリュフTuber 菌の殺虫剤希釈液における生育繁殖試験
図29】白トリュフTuber 菌による多様な殺虫剤分解解毒済み溶液による殺虫効果試験
図30】白トリュフTuber 菌による下水浄化残渣の含有硝酸態窒素分解浄化試験
図31】白トリュフTuber 菌が浄化した下水残渣投与使用したイチゴ高設栽培栽培及び白菜圃場栽培試験
図32】白トリュフTuber 菌培養懸濁液葉面散布が植物、作物生育に及ぼす影響試験(植物ホルモン産生試験)
図33】白トリュフTuber 菌培養懸濁液散布イネの生育試験(植物ホルモン産生試験2)
図34】牧草エンドファイトに対する白トリュフTuber 菌培養懸濁液散布による解毒分解試験
図35】作物、植物組織の白トリュフTuber 菌培養懸濁液30培希釈液噴霧浸透時間試験
図36】白トリュフTuber 菌懸濁液30倍希釈液皮膚浸透性試験
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0046】
試験1<白トリュフTuber 菌菌糸体の液体培養試験>
白トリュフの培養はキノコ培養の中で「マツタケ」と並んで最も困難で、子実体、菌糸体の大量培養に世界での成功例はない。
図8(1)は、白トリュフ基本培地上に取り出した白トリュフ子実体溶解菌糸体。
図8(2)は、(1)の溶解菌糸体から伸びた菌糸を培養した分離コロニー(菌叢)
図8(3)は、(2)の分離コロニーから菌糸体を採取して大量培養した状態。

[白トリュフ菌Tuber基本培地の組成及び培養条件]
水 1000cc
ハイポネックス 3g (液体肥料、(株)ハイポネックス ジャパン社製)
白砂糖 30g
最低温度 5℃
最高 15℃
静置、明所培養。

上記写真に示されるように、白トリュフ子実体溶解菌糸体を上記基本培地で培養してコロニーを形成させ、得られたコロニーから白トリュフ菌Tuberを大量に培養することができた。
【0047】
試験2<白トリュフ菌Tuber.単菌と、白トリュフ菌Tuber.根粒菌Rhizobium sp.菌の液体培養におけるバイオフィルム生産比較試験>
図8(4)は、白トリュフ菌Tuber培養基本培地の液体培地における白トリュフ菌Tuber単菌の場合(右)のバイオフィルムとRhizobium sp.と共存培養した場合(左)のバイオフィルム形状、生産画像。
図8(5)は、白トリュフ菌Tuber.と根粒菌Rhizobium sp.の共存培養で形成したバイオフィルム。(拡大写真)
図8(6)は、白トリュフ菌Tuber.単菌液体培養で形成したバイオフィルム画像(拡大写真)。

写真が示すように、白トリュフ菌Tuber.に根粒菌Rhizobium sp.(市販の根粒菌)を共利共生して形成する菌叢と比べ劣るものの、白トリュフ菌Tuber.単菌でも十分な量のバイオフィルムが形成される。
このようにして形成されたバイオフィルムをミキサーで破砕し、これを100倍の水で薄めたものを白トリュフ菌Tuber.100倍懸濁液として各種実験で使用した。
本試験で明らかなように、白トリュフ菌Tuber.は、液体培地で良好に生育する。本発明を世界的な規模で実施するためには、白トリュフ菌Tuber.を大量に生産する必要があるが、液体培地で簡単にバイオフィルムを生産できることは有利である。
【0048】
試験3<白トリュフ菌Tuber.が植物に害を与えず、健康にする実験>
キャベツ(左)、白菜(右)(図10(1))及び菌根イソギク(図10(2))の幼苗に白トリュフ菌Tuber.の懸濁液を噴霧し、5日後の写真が図10(3)及び図10(4)である。いずれの幼苗も白トリュフ菌Tuberの影響を受けなかった。このことは、白トリュフ菌Tuber.が、菌根菌としての機能を有していることを示唆するものである。
【0049】
試験4<白トリュフ菌Tuber.が、植物や動物の細胞に速やかに浸透する実験>
蚊に刺され炎症を起こした皮膚(図11(1))に、白トリュフ菌Tuber.の懸濁液を塗布したところ、数分後には、炎症が治癒した(図11(2))。これは、白トリュフ菌Tuber.あるいはその分泌物が、皮膚細胞を速やかに浸透し、毒成分を分解したことを示すものすものである。
【0050】
試験5<白トリュフ菌Tuber.の耐殺菌剤実験>
ビーカー内で培養した白トリュフ菌Tuber.に対し、ベンレート(図12(1))、プロシミドン(図12(2))を通常の希釈倍率で薄めて噴霧した。写真はそれぞれ噴霧後数日後の状態で、白トリュフ菌Tuber.は、いずれの殺菌剤に対しても影響を受けなかった。
【0051】
試験6<白トリュフ菌Tuber.の微生物抗菌試験>
白トリュフ菌Tuber.本培地作成後無殺菌解放状態で室内に放置。培養温度最低15℃、最高25℃の条件で、空中浮遊微生物繁殖試験を行った。
図13(1)は、白トリュフ菌糸体をすり鉢で細かに砕いたもの10ccを水100ccに添加し懸濁液を作成(無殺菌溶液)し、これを無殺菌の上記培養基に添加した。写真は7日後の状態を示し、空中浮遊微生物の胞子が培養基上に常時落下しているはずであるが、全然微生物のコロニーが形成されていない。白トリュフ菌が、空中浮遊微生物の落下胞子を不活性化し、発芽できないようにしているものと推測できる。
図13(2)は、上記無殺菌の培養基に予め「クロカビ菌」を接種しコロニーを形成させた後、上記白トリュフ菌懸濁液を添加し培養して7日目の状態。
白トリュフ菌がクロカビのコロニーを食べているように、コロニーの上に菌糸を伸ばし、菌の下剋上を行なっている。
図13(3)は、(2)と同じように「アオカビ」を接種しコロニーを形成させた後、上記白トリュフ菌懸濁液を添加し培養して7日目の状態。
抗生物質ペニシリンを産生、阻止円を構築して他の菌のエリア侵入を防止するアオカビであるが、白トリュフ菌は、このアオカビの阻止機構を無にして、アオカビを溶解してエサにして、アオカビ菌叢上に白トリュフ菌叢を形成している。
【0052】
試験7<白トリュフ菌Tuber.によるアルコール醗酵酵母菌不活性化試験>
白トリュフ基本培地の殺菌培養基上に無菌的に白トリュフ菌Tuber.を接種し、その側に並行してアルコール醗酵酵母菌(酒粕由来酵母)を接種した。
培養温度25℃。静置、明所培養。写真(図14)は処理培養10日後の状態を示し、白トリュフ菌Tuber.の強い抗菌能力でアルコール醗酵酵母菌は、至適温度での培養であるが、生育は抑制され、コロニーを形成したがその後の生育は停止した。
本試験により、白トリュフ菌Tuber.が、糖をアルコール醗酵させる酵母菌を不活性化する能力を備えていることが実証されたことで、圃場に白トリュフ菌、根粒菌を定着、定住するための炭素源として「糖投与」が可能であることが証明された。
何故ならば、アルコール産生酵母をそのまま活性した状態の土壌に糖を投与すれば、糖をアルコールに転化して、白トリュフ菌Tuber.菌を痛め、更に作物の根に大きなダメージを与えるからである。
【0053】
試験8<白トリュフ菌Tuber.の殺虫剤ネオニコチノイド分解解毒実験>
生物生態系における農薬残留で世界的に最も問題になっている農薬は「ネオニコチノイド剤」である。この農薬は残効性に優れた特性を具備していることから世界中で多くの害虫防除に使用されていた。しかし、この農薬の残留成分が多様な昆虫の生態系、特にミツバチに及ぼす大きな影響から、世界各国で使用禁止が拡がっている。
以上のことから、ネオニコチノイド剤系の農薬「ニテンピラム」を用いて「白トリュフ」Tuber菌懸濁液希釈液散布による残留農薬の分解解毒試験を行った。

[試験方法]
供試材料 菌根イソギク 2トレー。
農薬名 ニテンピラム剤 100倍希釈液
残留農薬分解解毒剤 白トリュフTuber 菌懸濁液100倍溶液
試験実施回数 2回(試験A,B)
菌根イソギク2トレーにニテンピラム1000倍希釈液を噴霧散布.

[試験A]
イ 無処理区 何もせず
ロ 処理区 ニテンピラム剤散布24時間後に白トリュフTuber 菌懸液を、殺虫剤と同じ方法で散布した(図15(1))。
[検体の採取及び分析]
無処理区、処理区のトレーからそれぞれ菌根イソギクの茎葉を、無処理区は1日後、処理区は6日後に採取し、すり鉢ですりつぶした検体から1gを、99ccのハチミツにミックスし100gの検体溶液を作成し(図15(2))、これを検体として、ニテンピラム剤散布24時間後の残留農薬濃度と、白トリュフTuber 菌懸濁液散布5日後のニテンピラム剤の残留農薬濃度を分析した。
[試験B]
試験Aにおける菌根イソギクの無処理区、白トリュフTuber 菌処理区の2トレーに夫々ニテンピラム剤1000倍希釈液を再度噴霧散布
イ 無処理区 何もせず
ロ 処理区 2度目のニテンピラム剤散布24時間後に白トリュフTuber 菌懸液散布
[検体採取及び分析]
白トリュフTuber 菌処理5日後に無処理区、処理区からそれぞれ菌根イソギクの茎葉を採集してすりつぶし、以下試験Aと同様な手順で残留農薬濃度を三重環境保全事業団において分析してもらった。
結果を以下の表2に示す。検査を行った10種の農薬中以下の2種が検出されたが、白トリュフTuber 菌懸液散布により殺虫剤の残留量が劇的に低下していることがわかる。
【0054】
【表2】
【0055】
試験9<農薬散布茶葉の白トリュフTuber 菌懸液浸漬による農薬成分の分解解毒試験>
寒河江産茶葉A,Bを、図基本16-2の工程に従い、製茶工程中に白トリュフTuber 菌懸液に2時間浸漬し、完成した茶葉の残留農薬を三重環境保全事業団において分析してもらったところ、以下の表に示すように、検査を行った120種の農薬中以下の5種が検出されたが、いずれも基準値以下であった。
【0056】
【表3】
【0057】
試験10<サクランボ栽培における白トリュフTuber 菌による殺菌剤、殺虫剤の分解解毒試験>
温室内で栽培されるサクランボは図7のような装置で殺菌剤や殺虫剤が散布される。そこで、殺菌剤や殺虫剤が散布され、効果が発揮された24~48時間後に白トリュフTuber 菌懸濁液50倍希釈液を同じ装置で散布し、収穫された東根産サクランボの残留農薬を調べた。
つくば分析センターで分析してもらった結果、検査を行った250種の農薬中以下の3種が検出されたが、いずれも基準値以下であった。
【0058】
【表4】
【0059】
試験11<白トリュフTuber 菌による各種除草剤残留成分の土壌残留分解浄化試験>
現在、世界の農業は、地球温暖化で雑草繁茂が激しく、除草剤依存農業がおこなわれて、除草剤の発癌性の問題が深刻化している。本発明は、現在世界各国で問題になっている除草剤の土壌残留成分を白トリュフTuber 菌による分解解毒することを目的の一つにしている。土壌を清浄化することで作物体内も清浄化出来、安心安全な少量生産が可能になる。白トリュフTuber 菌による除草剤成分の分解の可能性検証試験を実施した。

[試験材料]
3,5号ポットに赤玉土小粒を入れ、これに各除草剤の散布基準濃度の希釈液を充分灌注して試験土壌とした。
これに「白トリュフ」Tuber菌懸濁液100倍希釈液をジョウロで散水し、10日間そのまま放置した。
10日後、各ポストにキャベツ種子を播種した。
図16(1)において、各ポストに灌注した除草剤は以下の通り。
1:MCPP区
2:カソロン区
3:ランドアップ区
4:バスタ区
5:2,4-D区
6:MCPP灌注・白トリュフTuber菌懸濁液無処理区
7:ラプチウロン区
8:クサトローゼ区
図16(2)から明らかなように、白トリュフTuber菌懸濁液100倍希釈液を散水しなかった6の無処理区以外のポストで発芽した。このように、白トリュフTuber菌は、上記複数の除草剤を分解無害化することができる。
【0060】
試験12<白トリュフTuber 菌によるランドアップ耐性試験>
ラウンドアップ(英語: Roundup)とは、1970年にアメリカ企業のモンサントが開発した除草剤(農薬の一種)で、有効成分名はグリホサートイソプロピルアミン塩(グリシンの窒素原子上にホスホノメチル基が置換した構造を持つ)である。
この除草剤は、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)阻害剤で、植物体内での5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸の合成を阻害し、ひいては芳香族アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン)やこれらのアミノ酸を含むタンパク質や代謝産物の合成を阻害し、接触した植物の全体を枯らす(茎葉)吸収移行型で、ほとんどの植物にダメージを与える非選択型である。
シキミ酸回路を具備しない細菌が発見され、この細菌の遺伝子を作物に導入して、ランドアップで枯死しない作物を創り出し、ランドアップ農業が世界的に普及した。その結果、この除草剤の残留農薬食糧が大きな問題になっているのである。
白トリュフTuber 菌は、ランドアップで死ぬ菌であれば、白トリュフTuber 菌を使用してランドアップ残留成分を分解出来ないばかりか、菌自体が死滅してしまう。この理由で本試験を実施した。
[試験方法]
ハイポネックス基本培地 オートクレーブし冷却後ランドアップの50倍溶液を5cc添加し、培養基上にランドアップ溶液でマルチングした。2個作製。
この培養基に白トリュフTuber 菌懸濁液1ccを添加し、培養温度 最低 5℃ 最高20℃ 室内明所で静置させて培養した。
図17(1)は、処理後約3月後の状態で、ランドアップ培地に白トリュフTuber 菌コロニーが形成した状態を示す。図17(2)はその上方からの写真である。
ランドアップ添加ハイポネックス培地で白トリュフTuber 菌が生育繁殖した。死滅しないで逆に生育したことで白トリュフTuber 菌はタンパク質合成に「シキミ酸回路」を用いないで行う菌であることが証明された。
【0061】
試験13<白トリュフTuber 菌懸濁液の除草剤残留農薬分解の最適散布時間試験>
本発明は除草剤を散布した後、「白トリュフ」Tuber菌懸濁液を散布して、土壌、生態系の残留成分を分解、解毒して環境を浄化するものである。現在使用されている除草剤の多くは、植物の生理活性機能に作用して、生存できないようにして枯死させるものであり、葉に散布された除草剤が細胞に吸収され、植物組織全体に移行し生理活性物資生産機能に作用するまでの間に、「白トリュフ」Tuber菌の酵素群が、体内の除草剤成分を分解すれば、殺菌剤、殺虫剤の体内残留成分を分解出来る。
そこで、除草剤散布後、何時間の後に「白トリュフ」Tuber 菌懸濁液を散布すれば、最も有効に農薬成分を分解するかを探るために試験を行った。
[試験方法]
農薬としてランドアップ マックスロードを使用し、菌根イソギク14鉢にランドアップを1000cc当たり100cc添加した溶液(通常の使用濃度10倍高濃度溶液)を噴霧葉面散布した。
これに「白トリュフ」Tuber菌懸濁液100倍希釈液を、所定の時間、A区:無処理、B区:4時間後、C区:6時間後、D区:12時間後、E区:24時間後、F区:60時間後、に、夫々の2鉢に「白トリュフ」Tuber 菌の懸濁液を噴霧して、その後の菌根イソギクの状態を観察した。
図18は、1月後の菌根イソギクの状態であり、左から2鉢ずつ A区、B区、C区、D区、E区、F区である。
図試験実施6から明らかなように、ランドアップ散布後、無処理区、4時間後、6時間後、の時間に「白トリュフ」Tuber 菌懸濁液散布は、体内のランドアップ残留成分を分解、解毒できなかったために、処理30日後に2鉢ともに枯死した。12時間後処理区では1鉢が枯れ、1鉢が生き残り、24時間後、48時間後、60時間後、72時間後散布区では、「白トリュフ」Tuber菌が体内に浸透した残留成分を分解解毒したことにより菌根イソギクは生き残った。
本試験によって、農薬散布後24時間から60時間の間に「白トリュフ」Tuber 菌懸濁液100倍希釈液を葉面散布することで、作物体内に残留した農薬成分を分解解毒することが判明した。
【0062】
試験14<白トリュフTuber 菌の家畜排泄物残留抗生物質に対する耐性試験>
家畜の排泄物には飼料由来の抗生物質が残留している。これを原料にして製造される堆肥、培養土製造では嫌気性細菌が使用されていることから、殆ど抗生物質を分解出来ない。そのため、堆肥、培養土には抗生物質が含有する。これを圃場などに施与することで、作物により吸収されることで、作物体内に残留する。これを人が食べることで人体に蓄積され、病気になった時、抗生物質が効かないという場面が出てくる。これを防ぐには、畜産排泄物を白トリュフTuber 菌で速やかに分解し抗生物質を分解解毒することが望ましい。
抗生物資は主に放線菌など細菌が、他の微生物から生活圏を護るために産生する。自然界が作る生物活性物質は、通常、木材腐朽菌によって分解解毒される。大自然には生物が産生したものは全て自然界が分解するというシステムが構築されており抗生物質も例外ではない。白トリュフTuber 菌によって排泄物の植物繊維のリグニン、セルロースに含有する抗生物質がリグニン、セルロース分解によって同時に分解解毒される可能性が高い。

供試材料 乳牛糞。(湿分:約70から80%)
試験方法 2kgの牛糞を3cmの厚さに平らにして、これに白トリュフTuber 菌
懸濁液30倍液を噴霧。ビニール被覆。
最低8℃ 最高20℃ 室内培養
写真撮影 処理後10日後に撮影(図19

図19から明らかなように、白トリュフTuber 菌は抗生物質を含有する乳牛糞でも生育し、抗生物質に対する耐性を有することがわかる。また、上述した自然の摂理からも白トリュフTuber 菌は、セルロースやリグニンだけでなく、抗生物質も分解していると考えられる。
【0063】
試験15<白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液散布による露地イチゴ減農薬栽培試験>
本発明は白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液散布による作物栽培中における体内残留農薬成分を分解解毒して安心安全な食糧生産を可能にする技術であるが、同時に、白トリュフTuber 菌の強力な抗菌作用によって、作物の病害菌を不活性化(休眠)させることで病害の発生を抑止して、大幅な農薬散布回数、使用量を減少させることが可能であるかを試験した。
本試験は、世界の作物栽培で最も農薬散布回数、使用量(約50回から70回農薬散布)の多いイチゴを用いて減農薬栽培を行った。

供試材料 露地イチゴ 宝幸早生 露地2年据え置き圃場(図20(1)、図20(2)(拡大図))
試験方法 4月1日から白トリュフTuber 菌懸濁液50倍希釈液を、10日置きに10回噴霧葉面散布した。3か月後、農薬を全く使用しないにもかかわらず、イチゴを立派に実らせることができた(図20(3))。
【0064】
試験16<白トリュフTuber 菌の空中窒素固定.試験>
本試験は、試験1で得られた白トリュフTuber 菌を以下に示す極少窒素培地で育成試験を行った。

リン酸第一カリウム 3g 和光純薬試薬1級
水 1000cc 精製水
グルコース 30g 和光純薬試薬1級
寒天 15g 和光純薬試薬1級

[試験方法]
オートクレーブ冷却後 白トリュフTuber 菌接種し、培養条件、最低温度5℃ 最高温度 18℃の室内、明所で静置培養した。
和光純薬試薬1級の試薬には極少量の窒素を含有するが、この極少量窒素培地で白トリュフTuber菌が生育しコロニーを形成した(図21)。これにより、子嚢菌白色木材腐朽菌、菌根菌である白トリュフTuber 菌が、単独で窒素固定することが実証された。
【0065】
試験17<白トリュフ菌Tuber.による有機物分解試験>
図22(1)の写真は、雑草を刈り取り、保存ビンに入れ白トリュフTuber ssp.菌懸濁液を散布して、25℃で培養した。写真は処理後5日目の分解状態である。
図22(2)の写真は、有機物産業廃棄物の段ボール、古紙をペレット化したものを300ccフラスコに入れ、白トリュフ菌Tuber.懸濁液を噴霧した後、25℃で培養した。写真は処理後20日の状態である。
白トリュフ菌Tuber.は子嚢菌白色木材腐朽菌であり、有機物産業廃棄物のリグニンを分解出来る地球上で唯一の菌であるが、本試験で白トリュフ菌Tuber.にリグニン分解能力があることが示唆された。
【0066】
試験18<白トリュフ菌Tuber.の土壌生育試験>
圃場土壌に白トリュフ菌及び汎用根粒菌の懸濁液溶液を1m当たり1m500cc散布し、その後糖溶液(水1000cc 白砂糖10g)を散布したところ、25日後に、図23の写真のように、土壌に白トリュフ菌Tuberが生育繁殖した。
白トリュフ菌Tuber.は、カシなどの固葉広葉樹などの樹木と共生する「菌根菌」であり、相利共生する樹木の根が無い状態では生息、生育できない菌とされてきたが、本試験の結果、窒素源、ミネラル源、温度、水分、酸素が存在する土壌では良好な生育をすることを示唆するものである。
【0067】
試験19<強酸性条件下での白トリュフ菌Tuber.菌生育試験>
図24(1)は、白トリュフ菌Tuber.の基本培地で培養した白トリュフ菌Tuber.のコロニー(菌叢)を示す。

[白トリュフ菌Tuber培地組成及び培養条件]
水 1000cc
ハイポネックス 3g
糖 30g
寒天 15g
最低温度 5℃
最高 15℃
静置、明所培養。

図24(2)は、白トリュフ菌Tuber.基本培地で形成したコロニー形成培養基に、PH3.5のピルビン酸溶液を5cc添加し、フラスコ内を強酸性条件にして培養した。写真は培養7日後の白トリュフ菌Tuber.の生育繁殖状態を示す。
世界の圃場には酸性土壌のエリアが非常に大きな面積を占めている(図1)が、白トリュフ菌Tuber.はこのような圃場でも良好に生育、繁殖し、放線菌のエサである菌糸体キチンを常時生産できることを示唆している。
【0068】
試験20<強塩基性アルカリ条件下における白トリュフ菌Tuber.生育試験>
図25(1)は、白トリュフ菌Tuber.の基本培地に生育繁殖したコロニーを示す。
図25(2)は、写真(1)の状態のフラスコ内に「生石灰粒」を添加投入した状態(培養温度25℃)。これでフラスコ内は生石灰で強アルカリPH11になった。
図25(3)は、生石灰粒投入7日後の状態。白トリュフ菌Tuber.の菌糸は、驚くことに生石灰の粒子上でも生育した(培養温度25℃)。
白トリュフの原産は、石灰岩土壌のヨーロッパ、中国であることから、強いアルカリを示す土壌でも生育可能であることは予想されたことであるが、それを確認することができた。
【0069】
試験21<白トリュフ菌Tuber.の低温、雪中条件下の生育試験>
図26(1)は、殺菌した白トリュフ菌Tuber.基本培地に白トリュフ菌を接種し、培養フラスコを雪の中に埋めた状態。雪の中の温度は0℃から5℃であった。
図26(2)は、処理7日後の状態、右上の写真は拡大写真。写真のように巨大なコロニーを形成した。本試験によれば、世界の寒帯、温帯の冬期間においても、白トリュフ菌が繁殖することを示唆している。
【0070】
試験22<白トリュフ菌Tuber.の高温条件下による生育繁殖試験> (38)
図27(1)は、白トリュフ基本培地に白トリュフ菌Tuber.を接種し、この培養フラスコを温室内の棚に静置した状態を示す。この上に透明ビニールを被せ、フラスコ温度を日中、最高温度50℃、朝、最低25℃にした。
図27(2)は、上記フラスコの10日後の白トリュフ菌Tuber.の生育状態。全く高温の影響がなく至適温度である22℃の時と同じ生育、繁殖速度であった。
本試験により世界の熱帯、温帯の夏期でも高温の影響を受けないで白トリュフ菌Tuber.が生育できることが実証された。
【0071】
試験23<白トリュフTuber 菌の多種類の殺虫剤1000倍希釈液における生育繁殖試験>
多様な殺虫剤1000倍希釈液に白トリュフTuber 菌を添加し、最低温度10℃ 最高温度 25℃ 室内、明所 静置で、培養した。
図28(1)は、左からスプラサイド、アセフェート、ニテンピラム、ハイポネックスの1000倍溶液、図28(2)は、左からPMP、エチプロールフロアブル ブプロフェジン、ハイポネックスの1000倍溶液、における7日後の白トリュフTuber 菌育成状況を示す。
全ての殺虫剤1000倍希釈液溶液で白トリュフTuber 菌の培養培地であるハイポネックス培地での生育繁殖と同等の生育繁殖スピードを示した。
これは、殺虫剤成分を白トリュフTuber 菌が「エサ」にして生育繁殖したことであり、殺虫剤成分を分解して殺虫能力を「失活」させたことを示唆するものである。
更に、白トリュフTuber 菌が殺虫剤成分により悪影響を受けていないことは、殺虫剤と白トリュフTuber 菌懸濁液を混合して散布できることを示している。
このような実施態様を採用すれば、殺虫剤が白トリュフTuber 菌により分解される間に、殺虫能が発揮されるので、殺虫剤の残留量大幅に低減できる。
【0072】
試験24<白トリュフTuber 菌による多様な殺虫剤分解解毒済み溶液による殺虫効果試験>
試験23と同様な条件で、多様な殺虫剤の1000倍希釈液に白トリュフTuber 菌を添加培養し、多様な殺虫剤成分の分解解毒状況を調べた。
[試験方法]
培養開始3日後、白トリュフTuber 菌を培養した殺虫剤溶液を青虫に噴霧し、24時間後の生存の有無を目視観察して白トリュフTuber 菌の殺虫剤分解解毒効果を判定した。

図29(1A)は、白トリュフTuber 菌を培養したスプラサイド溶液を散布した青虫の画像
図29(1B)は、散布24時間後の青虫の状態で、生存していた。
図29(2A)は、白トリュフTuber 菌を培養したアセフェート溶液を散布した青虫の画像
図29(2B)は、散布24時間後の青虫の状態で、生存していた。
図29(3A)は、白トリュフTuber 菌を培養したニテンピラム溶液を散布した青虫の画像
図29(3B)は、散布24時間後の青虫の状態で、生存していた。
図29(4A)は、白トリュフTuber 菌を培養したPMP溶液を散布した青虫の画像
図29(4B)は、散布24時間後の青虫の状態で、生存していた。
図29(5A)は、白トリュフTuber 菌を培養したエチプロール溶液を散布した青虫の画像
図29(5B)は、散布24時間後の青虫の状態で、生存していた。
図29(6A)は、白トリュフTuber 菌を培養したブフロアブル溶液を散布した青虫の画像
図29(6B)は、散布24時間後の青虫の状態で、生存していた。
以上の試験から、白トリュフTuber 菌が多様な殺虫剤成分を3日間という短時間で、多様な殺虫剤を分解解毒することが判った。
このことは、殺虫剤と白トリュフTuber 菌混合液の散布で、殺虫剤の効果発現後、速やかに残留殺虫剤を分解することができることを示す。
【0073】
試験25<白トリュフTuber 菌による下水浄化残渣の含有硝酸態窒素分解浄化試験>
脱炭素社会における人間、家畜の排泄物は農業圃場に還すべきである。なぜならの動物、植物由来の食品は、太陽エネルギーと作物の炭素循環で作られたものであり、焼却などしないで土壌に還して、食糧の再生産に循環させることが望ましい姿である。
現在、人間、家畜の排泄物は下水処理場で、バシルス菌、アスピディスカ、エピスティリス、アメーバ、コルレラ、その他の微生物によって分解され一定基準まで浄化される。
しかし、下水にはそれらの菌、微生物では分解不可能なリグニンなどを含有した難分解性有機物が含まれ、これが残渣汚泥として残る。この残渣の処理に、農業圃場への還元、焼却など行われているが、多大なコスト要するばかりか、農業資材化では、作物が良く育たないという問題があり、圃場への利用が進んでいない現状である。この原因として、脱窒素に多くのコストがかかるために脱窒素化がなされないまま、農業資材として供給されているため、硝酸態窒素過剰で作物の根に大きな影響を与えていることがあげられる。
本発明者は、白トリュフTuber 菌の高濃度イオン溶液でも繁殖できる特性を生かして、下水場残渣に白トリュフTuber 菌を担持させ、生息繁殖試験を行った。更に白トリュフTuber 菌繁殖後の硝酸態窒素を「エサ」として食べた後の残渣を、土壌にミックスして、イチゴ、白菜の栽培試験を行なった。以下、試験の状況を図試験実施16-1~6に示す。

図30(1) 下水場残渣 画像
図30(2) 写真1の下水場残渣に白トリュフTuber 菌を担持させ生育した画像
図30(3) 下水場残渣で栽培したチンゲンサイ 生育不良 画像
図30(4) 写真2の白トリュフTuber 菌生育により硝酸態窒素浄化残渣を赤玉土に10%混合して栽培したチンゲンサイ 生育良好 画像
図30(5) 赤玉土に10%写真2の浄化残渣をミックスして栽培した白菜
図30(6) 赤玉土に10%写真2の浄化残渣をミックスして栽培したイチゴ

白トリュフTuber 菌は土壌病害菌に対して強い抗菌作用を具備している。
この抗菌性は白トリュフTuber 菌が土壌40cmもの深さに子実体を形成するキノコ菌である。土壌中に子孫を残す子実体を形成するためには、既に土壌中に生息している多様な微生物、病害菌を殺菌、又は休眠抑止しなければならない。
白トリュフTuber 菌生息残渣を培養土に混和した場合、土壌病害菌の生育繁殖抑止することを期待して本試験を実施したが、期待通り本試験栽培では、作物に軟腐病、炭疽病、フザリュウムなどの病害は見られなかった。
更に、下水残渣で問題なる高濃度硝酸態窒素含有による生育障害もなく順調な生育をみたことから、本発明の目的の一つである、下水残渣、畜産排泄物、土壌に含有する硝酸態窒素を「エサ」として食べ、菌糸を繁茂させることで、下水残渣、畜産排泄物、硝酸態窒素残留土壌を優良な農業資材とすることを達成できることが判った。
本発明は、これまでのような細菌利用ではなく、子嚢菌木材腐朽菌でありながら、植物、作物と共生する「菌根菌」の特性を具備した白トリュフTuber 菌を用いたことで達成できたものである。
【0074】
試験26<白トリュフTuber 菌が浄化した下水残渣投与使用したイチゴ高設栽培及び白菜圃場栽培試験>
試験25で、下水残渣が作に良好な生育、病害抑止効果が実証されたことから、白トリュフTuber 菌で浄化した下水残渣を使用して実際の大面積圃場で「ハウスイチゴ高設栽培」「露地白菜栽培」を実施したところ、素晴らしく良好な生育となった。
いずれも、白トリュフTuber 菌懸濁液30から100倍希釈液の葉面散布、土壌灌注で病害菌を休眠させることで殺菌剤使用無し、殺虫剤の残留成分は白トリュフTuber 菌懸濁液散布で分解解毒することで、殆ど「農薬を含まない」イチゴと白菜を収穫出来た。

栽培方法
イチゴ、白菜共に白トリュフTuber 菌生息下水残渣を10a当たり200kg土壌表面にマルチングした。
その他の栽培管理は慣行に従った

イチゴは、育苗時から収穫終了時まで、白トリュフTuber 菌懸濁液30から100倍希釈液を10から15日間隔で当面散布を実施した。
殺虫剤を数回散布したが、散布24時間後に必ず白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液の30倍溶液をハウス全体に噴霧散布して、残留農薬の分解解毒を行なった。
白菜は、圃場直播で行い、農薬は慣行栽培に従ったが、農薬散布後、必ず、散布24時間後に必ず白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液の30倍溶液をハウス全体に噴霧散布して、残留農薬の分解解毒を行なった。

図31(1) ハウス 高設栽培イチゴ栽培の画像
図31(2) 露地圃場における白菜栽培の画像
【0075】
試験27<白トリュフTuber 菌培養懸濁液葉面散布が植物、作物生育に及ぼす影響試験(植物ホルモン産生試験)>
白トリュフTuber 菌は植物ホルモン、インドール 3 酢酸を産生する。
本試験は、白トリュフTuber 菌の培養残渣液の30から100倍希釈液を葉面散布することによって、白トリュフTuber 菌が液体培養中に、液中の培養基に添加する糖を原料にして、グルコース → インドール ピルビン酸 → インドール 3 ピルビン酸 → インドール 3 酢酸 (オーキシン)を産生することを確かめることを目的とする。

[ナデシコ]
白トリュフTuber 菌液体培養残渣液の30から100倍希釈液を「ナデシコ」、「イネ」に葉面散布したところ、約20%背丈が高くなり、「ナデシコ」では花の大きさも一回り大きくなった。
図32(1) 鉢植えナデシコの側面 画像で、左鉢が白トリュフTuber 菌培養残渣液散布(開花直前から10日置きに2回)、右鉢が無処理。
図32(2) 真上からの画像 白トリュフTuber 菌培養残渣液散布鉢のナデシコの花は、無処理鉢と比べ一回り大きくなった。

[イネ]
赤玉土 中粒 単用
肥料 イネ用緩効性肥料 ロング 6g 基肥施肥
6号鉢、鉢底吸水法で栽培
白トリュフTuber 菌培養懸濁液(熱失活)50倍希釈液散布(苗植えから15日置きに8月中旬の出穂期まで実施)

図32(3) イネ試験 画像(8月上旬 幼穂形成期 画像)、左3列 無処理区、右3列 白トリュフTuber 菌培養残渣液散布区

[結果]
図の写真から明らかなように、無処理区は肥料切れと高温障害で黄変した葉になっているが、白トリュフTuber 菌培養残渣液散布区では、草丈が無処理区に比べて約20%伸び、葉色も緑で「肥料切れ」に見えない健康な生育であった。
本試験の結果は、白トリュフTuber 菌懸濁液の葉面散布で、減肥料でしかも安定した収穫が出来ることを示唆するもので、施肥することなく草花や作物の成長を促していることは、白トリュフTuber 菌が植物ホルモン インドール 3 酢酸を産生していることを示唆するものである。このことは、減肥料栽培において白トリュフTuber 菌懸濁液散布によって、約20%程度の収穫増加が期待される。
【0076】
試験28<白トリュフTuber 菌培養懸濁液散布イネの生育試験(植物ホルモン産生試験2)>
[試験方法]
品種 つやひめ
・イネの苗を6号鉢に植え、1鉢にイネ用ロング肥料5g投与(この施肥量では1ヶ月後に肥料切れを起こす)。
・肥料切れになった状態のイネに、白トリュフTuber 菌培養懸濁液希釈50倍液を15日間隔で2ヶ月葉面散布(処理区)、対照区として無処理区を、それぞれ6鉢用意した。
白トリュフTuber 菌培養によって、培養懸濁液中には植物ホルモン「インドール 3 酢酸」が産生されていれば、葉面散布によって、何らかの変化が起こるはずである。
図33(1) 葉面散布終了時の画像で、左3列 無処理区、右3列 処理区
写真が示す様に、処理区と無処理区には大きな生育、草丈の差異が認められ処理区の草丈は約55cm、無処理区の草丈は45cmである。
葉の色にも大きな差異が現れ、無処理区では「肥料切れ」で黄緑色であったのに対し、処理区は「肥料切れ」が見られない緑色である。
このような現象は、白トリュフTuber 菌培懸濁液により、作物にアンチエイジング効果が生じたことを示唆している。
図33(2) 葉面散布終了3週間後の無処理区の画像で、無処理区(右側)「つやひめ」は出穂が見られず、肥料切れで生育不良となり、この生育ではほとんど収穫が期待できない。
一方、処理区のイネ(左側)は、水田圃場栽培と変わらない生育で出穂し、肥料切れが見られなかった。この生育では10a換算で約500kgの収穫が見込める。
本試験は、白トリュフTuber 菌懸濁液葉面散布作物の「減肥料栽培」が可能であることを示唆している。更に肥料切れで起こる老化現象、生育不良を防止することをも示唆している。
本発明の白トリュフTuber 菌は、格別な設備を必要としないで手軽に培養できるので、開発途上国において、本発明の白トリュフTuber 菌を培養し、その培養液を生産し作物の葉面に散布すれば、高価な化学肥料や、農薬を使用することなく、安定した収穫が期待できる。
【0077】
試験29<牧草エンドファイトに対する白トリュフTuber 菌培養懸濁液散布による解毒分解試験>
エンドファイト(内生菌)は植物体内で共生的に生活している真菌や細菌のことで、endo(within)とphyte(plant)からの造語である。一般にはイネ科植物に寄生する麦角病菌科の真菌を指すことが多い。家畜の中毒との関連では、トールフェスクに寄生する(以前はAcremoniumと呼ばれていた) coenophialumとペレニアルライグラスに寄生するN. loliiが問題となり、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどの牧草にエンドファイトが寄生し、これを食べた多くの家畜が中毒を起こしている。このように、エンドファイトなどの微生物、キノコなどに生物活性物質として毒性を現わす成分を具備しているものが多い。しかし、自然界の生物が産生する有機化合物である有毒成分は、木材腐朽菌によって全て分解され土壌に還ることが知られており、本発明の子嚢菌白色木材腐朽菌である白トリュフTuber 菌は、作物体内に残留する有機化合物の多様な農薬成分を分解することから、エンドファイトが産生する毒性成分を分解することが期待される。
図34(1) アメリカの牧草生産圃場における灌水及び農薬散布の実態であるが、この灌水又は農薬溶液(殺虫剤)に白トリュフTuber 菌懸濁液を混和して散布した。
図34(2) 白トリュフTuber 菌懸濁液散布によってエンドファイトNeotyphodium菌が産生する「カビ毒」を分解解毒、清浄化した牧草の収穫風景の画像(アメリカ シアトル市郊外 本発明試験実施 牧草栽培圃場)
【0078】
試験30<作物、植物組織の白トリュフTuber 菌培養懸濁液30培希釈液噴霧浸透時間試験>
本発明は生育中及び収穫後の加工食品原料の残留農薬を、白トリュフTuber 菌培養懸濁液を噴霧又は浸漬して、組織内の残留農薬成分を分解解毒、清浄化することを目的としている。そのためには白トリュフTuber 菌懸濁液希釈液が速やかに植物組織内に浸透することが絶対必須要件である。浸透に要する時間の試験を実施した。
[試験方法]
温度 15℃ 湿度90%の条件下で、供試材料として白菜の葉に、白トリュフTuber 菌懸濁液30倍希釈液を散布し、浸透状況を経時的に観察した。
図35(1) 白菜の葉に白トリュフTuber 菌懸濁液30倍希釈液散布直後 画像
図35(2) 5分後の状態:葉の細胞に浸透を始めている。
図35(3) 10分後の状態:葉の表面に希釈液は殆どなくなるまで浸透している。
【0079】
試験31<白トリュフTuber 菌懸濁液30倍希釈液皮膚浸透性試験>
作物への農薬散布は、仕事中に体の農薬が吸引、付着して、場合によっては急性中毒を引き起こす。この皮膚に付着した農薬成分は皮膚浸透して体内に取り込まれ体内残留農薬となり、免疫力低下を起こす原因にもなる。本発明の白トリュフTuber 菌懸濁液が、作物だけでなく、農業、植物栽培従事者の皮膚に浸透し皮膚に残留している体内残留農薬の分解解毒、清浄化にも有効であることを確認した。

[試験方法]
白トリュフTuber 菌懸濁液30倍希釈液を人間の腕の表面に噴霧し、皮膚への浸透状況を経時的に観察した。気温20℃ 湿度90%であった。
図36(1) 白トリュフTuber 菌懸濁液30倍希釈液 左腕に噴霧直後の濡れた皮膚の状態
図36(2) 噴霧5分経過後の皮膚 画像 皮膚浸透が始まっている。
図36(3) 噴霧10分後の皮膚 画像 ほとんど浸透し皮膚に液、水分は残っていない。
本試験結果から、農薬散布後、作業者の顔、手などの農薬付着部を水洗いした後、白トリュフTuber 菌濁液30倍希釈液を噴霧することで、皮膚細胞内の残留農薬を分解清浄化出来る。
図1
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