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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101922
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 9/04 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216310
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 優子
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202EB14
3B202EC06
3B202ED01
3B202EG17
(57)【要約】
【課題】使用者に対する快適な使用感の付与(痛みを伴わなずしっかり磨ける感じ)と効率清掃における清掃精度の向上(歯間・歯頸部の汚れが同時に落ちた感じ)を両立させたワイドヘッドタイプの歯ブラシを提供する。
【解決手段】植毛面101に複数の毛束群が植毛されたヘッド部100と、ヘッド部100よりも長手方向の基端側に延在するハンドル部200と、を有し、ヘッド部は、長手方向と直交する幅方向の寸法が13mm以上であり、複数の毛束群は、芯部103と、芯部の外表面の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも一つの鞘部104と、により構成された多重芯鞘構造の第1の用毛111からなる第1の毛束群110を有し、第1の用毛は、二つ折りにした状態で、その間に挟み込まれた平線131によってヘッド部に植毛されており、平線を挟んで対向する第1の用毛の一方の部分115a及び他方の部分116aは、植毛面から離間する高さ方向において段差を有し、かつ各々の部分の毛先側に向けて外径が先細るテーパー形状を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛面に複数の毛束群が植毛されたヘッド部と、
前記ヘッド部よりも長手方向の基端側に延在するハンドル部と、を有し、
前記ヘッド部は、前記長手方向と直交する幅方向の寸法が13mm以上であり、
前記複数の毛束群は、芯部と、前記芯部の外表面の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも一つの鞘部と、により構成された多重芯鞘構造の第1の用毛からなる第1の毛束群を有し、
前記第1の用毛は、二つ折りにした状態で、その間に挟み込まれた平線によって前記ヘッド部に植毛されており、
前記平線を挟んで対向する前記第1の用毛の一方の部分及び他方の部分は、前記植毛面から離間する高さ方向において段差を有し、かつ各々の部分の毛先側に向けて外径が先細るテーパー形状を有する、歯ブラシ。
【請求項2】
前記ヘッド部に植毛された総毛束数のうち25%以上、75%以下が前記第1の毛束群である、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記植毛面には、前記第1の用毛以外の第2の用毛からなる第2の毛束群が植毛されており、
前記第2の用毛は、二つ折りにした状態で、その間に挟み込まれた平線によって前記ヘッド部に植毛されており、
前記平線を挟んで対向する前記第2の用毛の一方の部分及び/又は他方の部分は、毛先側に向けて外径が先細るテーパー形状を有し、
前記ヘッド部に植毛された総毛束数のうち25%以上が前記第2の毛束群である、請求項1又は請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記第1の毛束群に含まれる前記第1の用毛のうち高さ方向に最も突出した毛先の高さ位置と、前記第2の毛束群に含まれる前記第2の用毛のうち高さ方向に最も突出していない毛先の高さ位置との間には、3mm以上の段差が形成されている、請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記植毛面の面方向の中心位置を含む第1の領域には複数の前記第1の毛束群が植毛されており、
前記幅方向及び/又は前記長手方向において前記第1の領域を挟み込む第2の領域には複数の前記第2の毛束群が植毛されている、請求項3又は請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記第1の毛束群と前記第2の毛束群は、前記ヘッド部の幅方向において隣接する位置に植毛されている、請求項3又は請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記植毛面には、第1の植毛穴と、前記第1の植毛穴よりも大きな穴径を有する第2の植毛穴が形成されており、
前記第1の植毛穴には、前記第1の毛束群が植毛されており、
前記第2の植毛穴には、前記第2の毛束群が植毛されている、請求項3~6のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
磨き心地や清掃性を向上させるために、歯ブラシには様々な工夫が施されている。例えば、使用者(生活者)の使用状況やニーズに合わせて、超コンパクトタイプのヘッド部からワイドタイプのヘッド部まで様々な種類の歯ブラシが製品化されている。
【0003】
特に、ヘッド部の幅が大きく形成されたワイドヘッドタイプの歯ブラシは、複数の清掃部位を同時に刷掃できるため、短時間で効率的に歯を磨きたいという使用者に対して広く受け入れられている。一方で、ワイドヘッドタイプの歯ブラシは、植毛面積が大きいため、用毛が歯茎に当たりやすい。そのため、歯茎を傷つけないような「優しい当たり心地」を重視した製品開発がなされている実情がある。
【0004】
上記のようにワイドヘッドタイプの歯ブラシは、「短時間で効率的な歯磨き」を維持しつつ、「優しい当たり心地」を実現することが望まれている。しかしながら、「優しい当たり心地」を重視した場合、それとはトレードオフの関係にある「しっかりした磨き心地」を損なう可能がある。したがって、ワイドヘッドタイプの歯ブラシについては、「使用者に対する快適な使用感の付与(痛みを伴わなずしっかり磨ける感じ)」と「効率清掃における清掃精度の向上(歯間・歯頸部の汚れが同時に落ちた感じ)」を両立させることが課題である。
【0005】
例えば、特許文献1には、芯部と鞘部で構成された二重芯鞘構造の用毛からなる毛束群を備える歯ブラシが開示されている。また、この歯ブラシでは、二重芯鞘構造の用毛が毛先側に向けて先細るテーパー形状に形成された、いわゆる「二重芯鞘スーパーテーパード(ST)毛」を採用している。上記のような二重芯鞘構造の用毛を採用した歯ブラシは、用毛の毛腰(剛性)が高く、しっかりとした磨き心地を実現できる。また、用毛がテーパー毛で構成されていることで、歯磨き時に用毛の毛先を狭い歯間や歯周ポケットの奥まで進入させることができ、清掃精度の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-177926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1に記載された二重芯鞘ST毛をワイドヘッドタイプの歯ブラシに採用した場合、ワイドヘッドタイプの「しっかりした磨き心地」を二重芯鞘構造によってより一層高めることができ、さらにテーパー毛による「清掃精度の向上」を図ることが可能になると考えられる。一方で、単純に二重芯鞘構造の用毛を採用すると毛腰が高くなるため、「優しい当たり心地」との両立を実現することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、使用者に対する快適な使用感の付与(痛みを伴わなずしっかり磨ける感じ)と効率清掃における清掃精度の向上(歯間・歯頸部の汚れが同時に落ちた感じ)を両立したワイドヘッドタイプの歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の歯ブラシは、植毛面に複数の毛束群が植毛されたヘッド部と、前記ヘッド部よりも長手方向の基端側に延在するハンドル部と、を有し、前記ヘッド部は、前記長手方向と直交する幅方向の寸法が13mm以上であり、前記複数の毛束群は、芯部と、前記芯部の外表面の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも一つの鞘部と、により構成された多重芯鞘構造の第1の用毛からなる第1の毛束群を有し、前記第1の用毛は、二つ折りにした状態で、その間に挟み込まれた平線によって前記ヘッド部に植毛されており、前記平線を挟んで対向する前記第1の用毛の一方の部分及び他方の部分は、前記植毛面から離間する高さ方向において段差を有し、かつ各々の部分の毛先側に向けて外径が先細るテーパー形状を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記の歯ブラシは、幅方向の寸法が13mm以上で形成されたワイドタイプのヘッド部の植毛面に、両端がテーパー形状に形成された多重芯鞘構造の用毛(両端多重芯鞘ST毛)が段差植毛されている。このように構成された歯ブラシは、使用者に対する快適な使用感の付与と効率清掃における清掃精度の向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る歯ブラシを示す正面図である。
図2】歯ブラシのヘッド部を拡大して示す正面図である。
図3】歯ブラシの第1の毛束群を拡大して示す正面図である。
図4】歯ブラシの第2の毛束群を拡大して示す正面図である。
図5】第1の用毛と第2の用毛の高さ関係を説明するための図であり、図3に示す矢印5A-5A線に沿う断面図、及び図4に示す矢印5B-5B線に沿う断面図である。
図6図5に示す矢印6A-6A線に沿う第1の用毛の断面図である。
図7図5に示す矢印7A-7A線に沿う第2の用毛の断面図である。
図8】第1の用毛と第2の用毛の高さ関係を例示する断面図である。
図9】第1の毛束群と第2の毛束群の配列パターンの変形例を例示する正面図である。
図10】実施例1-1~1-4、及び比較例1を説明するための図である。
図11】実施例2-1~2-4、及び比較例2を説明するための図である。
図12】実施例3-1~3-4、及び比較例3を説明するための図である。
図13】実施例4-1~4-4、及び比較例4を説明するための図である。
図14】実施例4-5~4-8、及び比較例5を説明するための図である。
図15】実施例5~7を説明するための図である。
図16】比較例6を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0013】
図1図7は、実施形態に係る歯ブラシ10の各部の構成を示す図である。図1図4では、歯ブラシ10全体の正面図及びヘッド部100の一部を拡大した正面図を示している。図5では、図3に示す矢印5A-5Aで示す第1の用毛111の断面及び図4に示す矢印5B-5Bで示す第2の用毛121の断面を示している。図6では、図5に示す矢印6A-6Aで示す第1の用毛111の断面を示している。図7では、図5に示す矢印7A-7Aで示す第2の用毛121の断面を示している。
【0014】
各図に示す矢印X1は歯ブラシ10の先端側を示し、X2は歯ブラシ10の基端側を示す。
【0015】
ヘッド部100及びハンドル部200の先端側及び基端側は歯ブラシ10の先端側及び基端側と略同一の方向である。
【0016】
図中において歯ブラシ10の中心軸を一点鎖線o1で示す。なお、歯ブラシ10の長手方向は、中心軸o1と平行な方向であり、矢印X1-X2で示す方向である。本明細書において、平面視とは、ヘッド部の植毛面101側から歯ブラシを見ることを意味する。
【0017】
<歯ブラシ>
図1に示すように、歯ブラシ10は、複数の毛束群110、120が植毛された植毛面101を備えるヘッド部100と、ヘッド部100よりも長手方向の基端側に延在するハンドル部200と、ヘッド部100とハンドル部200との間に延在するネック部300と、を有する。
【0018】
歯ブラシ10は、使用者(自然人)の口腔内を洗浄する用途で使用することができる。使用者は、歯ブラシ10を使用する際、口腔内にヘッド部100を挿入した状態で、ハンドル部200を手指で把持しつつ操作することにより、ヘッド部100の植毛面101に植毛された複数の毛束群110、120により、口腔内を洗浄することができる。
【0019】
<ヘッド部>
ヘッド部100は、長手方向と直交する幅方向の寸法W1(図2を参照)が13mm以上で形成されている。そのため、歯ブラシ10は、いわゆる「ワイドヘッドタイプ」の歯ブラシとして構成している。
【0020】
ヘッド部100の幅方向(幅)とは、平面視で植毛面101と平行でかつ歯ブラシ10の長手方向と直交する方向であり、各図において矢印Y1-Y2で示す方向である。ヘッド部100は、幅方向の寸法が13mm以上であれば特に限定されないが、使用者の使用性を考慮して、例えば、13mm以上、16mm以下であることが好ましい。
【0021】
ヘッド部100の植毛面101を形成する長手方向に沿う長さL1(図2を参照)は、特に限定されないが、例えば、19mm以上、30mm以下で形成することができる。
【0022】
ヘッド部100の厚みは、特に限定されないが、例えば、2.5mm以上、5mm以下で形成することができる。ヘッド部100の厚みとは、植毛面101に直交する方向であり、図5において矢印Z1-Z2で示す各用毛111、121の高さ方向(植毛面101から離間する突出方向)と同方向に沿う寸法である。
【0023】
歯ブラシ10は、上記のように「ワイドヘッドタイプ」の歯ブラシとして構成されているため、植毛面積が大きく、複数の清掃部位を同時に刷掃することができる。そのため、使用者は、ワイドヘッドタイプの歯ブラシ10を使用することにより、短時間で効率的な歯磨きを行うことができる。
【0024】
ヘッド部100の植毛面101には、図1図2図3図4に示すように、第1の用毛111からなる第1の毛束群110と、第2の用毛からなる第2の毛束群120が植毛されている。各図面では、第1の用毛111と第2の用毛121を図面上で見分けることを可能にするために、第1の用毛111には便宜的にドットを付している。なお、各毛束群110、120の詳細は後述する。
【0025】
図2図3図4に示すように、ヘッド部100の植毛面101には、第1の植毛穴141と、第2の植毛穴142が形成されている。
【0026】
図3に示すように、第1の植毛穴141には、第1の毛束群110が植毛されている。図3では、植毛面101に形成された一つの第1の植毛穴141と、第1の植毛穴141に植毛された一まとまりの第1の毛束群110を拡大して示している。
【0027】
図4に示すように、第2の植毛穴142には、第2の毛束群120が植毛されている。図4では、植毛面101に形成された一つの第2の植毛穴142と、第2の植毛穴142に植毛された一まとまりの第2の毛束群120を拡大して示している。
【0028】
第1の植毛穴141の穴径D3(図3を参照)は、1.3mm以上1.8mm以下が好ましく、1.3mm以上、1.6mm以下がより好ましい。
【0029】
第2の植毛穴142の穴径D4(図4を参照)は、1.0mm以上、1.8mm以下が好ましく、1.0mm以上1.5mm以下がより好ましい。
【0030】
なお、第2の植毛穴142の穴径D4は、上記の範囲内において第1の植毛穴141の穴径D3とは重複しない大きさで形成することができる。
【0031】
歯ブラシ10において、第1の毛束群110が植毛された第1の植毛穴141の穴径D3が、第2の毛束群120が植毛された第2の植毛穴142の穴径D4よりも小さく、第1の毛束群110と第2の毛束群120の用毛径が「第1の毛束群110≦第2の毛束群120」であり、用毛本数が「第1の毛束群110≧第2の毛束群120」として植設した場合は、第1の毛束群110の植毛密度が高く、第2の毛束群120の植毛密度が低くなる。歯ブラシ10は、植毛密度の異なる第1の毛束群110と第2の毛束群120を有することにより、痛みを伴わないしっかりとした磨き心地を有しながら、磨き残しの無い清掃性能を発揮することができる。
【0032】
歯ブラシ10は、上記の効果をより効果的に発揮するために、第2の毛束群120を構成する第2の用毛121が等分折り植毛された片端ST毛であることが好ましい。
【0033】
また、歯ブラシ10は、上記の効果を効果的に発揮するために、第1の植毛穴141における第1の毛束群110のパッキングファクターが75%以上85%以下であり、第2の植毛穴142における第2の毛束群120のパッキングファクターが75%以上85%以下であることが好ましい。なお、パッキングファクターとは、一つの植毛穴の面積から平線の面積を引いて得られる実植毛総面積A中の用毛総面積Bの割合((B/A)×100[%])である。
【0034】
植毛面101には、例えば、30個以上、60個以下の植毛穴(第1の植毛穴141及び第2の植毛穴1の合計の総数)を設けることができる。
【0035】
<第1の毛束群>
第1の毛束群110は、図5図6に示すように、芯部113と、芯部113の外表面の少なくとも一部を覆うように設けられた少なくとも一つの鞘部(外層)114と、を有する多重芯鞘構造の第1の用毛111からなる。
【0036】
第1の用毛111は、芯部113と、芯部113を覆う一つの鞘部114で構成された「二重芯鞘構造」を有する。なお、芯部113を覆う鞘部114の数(層数)は、一つ以上であれば特に限定されない。
【0037】
歯ブラシ10は、第1の毛束群110を構成する第1の用毛111が上記のように多重芯鞘構造(二重芯鞘構造)を有するため、第1の用毛111の毛腰(剛性)が高く、しっかりとした磨き心地を実現できる。
【0038】
第1の用毛111は、図3図5に示すように、二つ折りにした状態で、その間に挟み込まれた平線131によってヘッド部100に植毛されている。
【0039】
歯ブラシ10では、図1に示すように、正面視において矩形形状を有する平線131を中心軸o1に対して傾けて配置している。ただし、平線131の配置方向について特に制限はない。また、平線131の形状や材質等についても特に制限はない。
【0040】
図5に示すように、平線131を挟んで対向する第1の用毛111の一方の部分115a(明細書の説明において「第1の対向部115a」とも記載する)及び第1の用毛111の他方の部分116a(明細書の説明において「第2の対向部116a」とも記載する)は、植毛面101から離間する高さ方向において段差を有する。また、第1の対向部115a及び第2の対向部116aは、各々の毛先115b、116b側に向けて外径が先細るテーパー形状を有する。
【0041】
上記のように、第1の用毛111は、第1の対向部115aの毛先115bの高さ位置と、第2の対向部116aの毛先116bの高さ位置との間に段差(高さ方向の位置のずれ)が存在する、いわゆる「段差植毛」がなされている。
【0042】
歯ブラシ10は、第1の毛束群110を構成する第1の用毛111が段差植毛されているため、使用者が歯磨きした際、高い位置にある第1の対向部115aの毛先116bが歯間や歯周ポケット等の細かい隙間にしっかりと進入して高い隙間清掃性を発揮することができる。また、低い位置にある第2の対向部116aの毛先116bが歯面にしっかりと当たるため、高い歯面清掃性を発揮することができる。
【0043】
第1の対向部115aと第2の対向部116aの高さ方向の段差Hg1(図5を参照)の寸法は、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、2.5mm以上が特に好ましく、3.0mm以上が最も好ましい。また、上記高さ方向の段差Hg1は、例示した上記数値の範囲内であって、かつ、5.0mm以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましい。
【0044】
第1の対向部115aの最大高さ(毛先の高さ)H1(図5を参照)は、例えば、10mm以上13mm以下が好ましい。
【0045】
第2の対向部116aの最大高さ(毛先の高さ)H2(図5を参照)は、例えば、10mm以上13mm以下が好ましい。最大高さH1、H2は、第1の用毛111の植毛された部分(ヘッド部100内に埋設された部分)のうち最も低い位置から各毛先115b、116bまでの距離である。
【0046】
第1の用毛111は、図5に示すように、第1の対向部115aの毛先(先端)115b及び第2の対向部116aの毛先(先端)116bが鞘部114で覆われていない。ただし、第1の対向部115a及び第2の対向部116aは、高さ方向の全体に亘って鞘部114で覆われていてもよい。
【0047】
第1の用毛111は、芯部113及び鞘部114を組み合わせることにより、ナイロン製用毛やポリブチレンテレフタレート製用毛よりも高い毛腰を有するように形成することができる。また、第1の用毛111の毛腰を高く形成する観点より、芯部113及び鞘部114を形成する材料として、例えば、ポリエステル系の樹脂材料を用いることができる。一例として、芯部113のベースとなる樹脂材料にはポリブチレンテレフタレートを用いることができ、鞘部114のベースとなる樹脂材料にはポリエチレンテレフタレートを用いることができる。
【0048】
第1の用毛111は、第1の対向部115aが毛先115bに向けて先細るテーパー形状を有し、かつ第2の対向部116aが毛先116bに向けて先細るテーパー形状を有する、いわゆる「両端ST毛」で構成されている。なお、本明細書では、テーパー形状を有する用毛のことを、「ST毛」とも記載する。
【0049】
歯ブラシ10は、第1の毛束群110を構成する第1の用毛111が上記のように両端ST毛で構成されているため、使用者が歯磨きした際、各毛先115b、116bを歯間や歯周ポケット等の細かい隙間に容易に進入させることできる。そのため、隙間清掃性を効果的に高めることができる。
【0050】
歯ブラシ10においては、図5に示すように、第1の用毛111を構成する芯部113を各毛先115b、116b側に向けて徐々に先細るテーパー形状とするとともに、芯部113を覆う鞘部114もその厚みが各毛先115b、116b側に向けて徐々に小さくなるように形成している。つまり、第1の用毛111は、芯部113の外径及び鞘部114の外径を高さ方向に調整することにより、テーパー形状を実現している。ただし、第1の用毛111は、芯部113の外径のみを調整してテーパー形状が付加されていてもよい。
【0051】
なお、本明細書における「テーパー形状を有する用毛」には、いわゆる「スーパーテーパード(ST)毛」や「セミスーパーテーパード(SST)毛」が含まれる。このような用毛としては特開2015-177926に記載の用毛が挙げられる。
【0052】
第1の用毛111の外径D1(図6を参照)は、特に限定されないが、例えば、0.10mm以上、0.25mm以下が好ましく、0.14mm以上、0.20mm以下がさらに好ましい。上記に例示した外径D1は、芯部113及び鞘部114を含めた外径である。また、上記に例示した外径D1は、第1の用毛111の第1の対向部115a及び第2の対向部116aの最大外径部(図5を参照)における寸法である。
【0053】
また、図6中の鞘部114の厚みD1-2(図示せず)は5μmm以上、15μmm以下が好ましい。芯部113の外径(厚み)D1-1(図示せず)は、上記のD1からD1-2を減じた値(例えば、図6でのD1-1の外径であれば、「D1-(D1-2)×2」で算出される値)で、適宜設定できる。
【0054】
第1の用毛111の断面形状は円形が好ましいが、円形に必ずしも限定されるものではなく、目的用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等が挙げられる。)、異形(例えば、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等が挙げられる。)等の形状にすることができる。
【0055】
歯ブラシ10では、ヘッド部100に植毛された総毛束数のうち25%以上75%以下が第1の毛束群110であることが好ましく、30%以上、50%以下がさらに好ましい。歯ブラシ10は、ヘッド部100に上記のような毛束数の割合で第1の毛束群110が植毛されていることにより、前述した「多重芯鞘構造」、「段差植毛」、「両端ST毛」による各効果を効果的に発揮することができる。
【0056】
<第2の毛束群>
第2の毛束群は120は、第1の用毛111以外の第2の用毛121で構成することができる。
【0057】
具体的には、第2の用毛121は、多重芯鞘構造を有しておらず、芯材に相当する単一のベース材料のみで構成している。第2の用毛121に使用されるベース材料は特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン等の樹脂材料を使用することができる。ただし、第2の用毛121は、第1の用毛111のような多重芯鞘構造を有していない限り、構成材料等について特に制限はない。
【0058】
第2の用毛121は、多重芯鞘構造を有していないため、第1の用毛111と比較して、毛腰が低い。そのため、第2の用毛121は、第1の用毛111と比較して、使用者の歯茎等に対して「優しい当たり心地」となる。
【0059】
第2の用毛121は、図3図5に示すように、二つ折りにした状態で、その間に挟み込まれた平線131によってヘッド部100に植毛されている。平線131の構造及び平線131を使用した固定方法は、第1の用毛111と同様のものとすることができる。
【0060】
図5に示すように、平線131を挟んで対向する第2の用毛121の一方の部分125a(明細書の説明において「第1の対向部125a」とも記載する)及び第2の用毛121の他方の部分126a(明細書の説明において「第2の対向部126a」とも記載する)は、各々の毛先125b、126b側に向けて外径が先細るテーパー形状を有する。つまり、第2の用毛121は、いわゆる「両端ST毛」で構成している。
【0061】
歯ブラシ10は、第2の毛束群120を構成する第2の用毛121が上記のように両端ST毛で構成されているため、使用者が歯磨きに使用した際、各毛先125b、126bを歯間や歯周ポケット等の細かい隙間に容易に進入させることができる。そのため、隙間清掃性を効果的に高めることができる。
【0062】
第2の用毛121は、第1の対向部125aと第2の対向部126aとの間に段差が形成されていない、いわゆる「等分折り植毛」がなされている。なお、後述するように、第2の用毛121は、第1の用毛111と同様に段差植毛されていてもよいし(図8(A)及び図8(B)を参照)、各対向部125a、126aのうち一方のみがテーパー形状に形成された、いわゆる「片端ST毛」で構成してもよい(図8(B)及び図8(C)を参照)。
【0063】
第1の対向部125aの最大高さH3(毛先の高さ)及び第2の対向部126aの最大高さH4(毛先の高さ)(図5を参照)は、例えば、10mm以上、13mm以下が好ましい。なお、最大高さH3、H4は、図5に示すように、第2の用毛121の植毛された部分(ヘッド部100内に埋設された部分)のうち最も低い位置から各毛先125b、126bまでの距離である。
【0064】
第1の毛束群110に含まれる第1の用毛111のうち高さ方向に最も突出した毛先の高さ位置と、第2の毛束群120に含まれる第2の用毛121のうち高さ方向に最も突出していない毛先の高さ位置との間には、1mm以上の段差Hgbを形成することが好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましい。また、段差Hgbは、5mm以下の大きさを有することがより好ましい。
【0065】
本実施形態では、図5に示すように、「第1の毛束群110に含まれる第1の用毛111のうち高さ方向に最も突出した部分」は、第1の用毛111の第1の対向部115aの毛先115bの最先端の位置である。
【0066】
また、「第2の毛束群120に含まれる第2の用毛121のうち高さ方向に最も突出していない部分」は、第2の用毛121が等分折り植毛されているため、第2の用毛121の第1の対向部125aの毛先125bの最先端の位置及び第2の用毛121の第2の対向部126aの毛先126bの最先端の位置である。
【0067】
歯ブラシ10は、第1の毛束群110を構成する第1の用毛111と第2の毛束群120を構成する第2の用毛121との間に、上記のような段差Hgbを有するため、使用者が歯磨きに使用した際、第1の毛束群110内の各対向部115a、116a間の段差と、第1の毛束群110と第2の毛束群120との間の段差を活用することができる。それにより、隙間清掃性及び歯面清掃性をより一層効果的に高めることができる。
【0068】
第2の用毛121の外径D2(図7を参照)は、特に限定されないが、例えば、0.10mm以上、0.25mm以下が好ましく、0.13mm以上、0.20mm以下がさらに好ましい。上記に例示した外径D2は、第2の用毛121の第1の対向部125a及び第2の対向部126aの最大外径部(図5を参照)における寸法である。
【0069】
歯ブラシ10は、ヘッド部100に植毛された総毛束数のうち25%以上が第2の毛束群120であることが好ましく、50%以上、70%以下がさらに好ましい。歯ブラシ10は、ヘッド部100に上記のような毛束数の割合で第2の毛束群120が植毛されていることにより、第1の毛束群110が発揮する前述の各効果を好適に発揮しつつ、多重芯鞘構造で構成されていないST毛からなる第2の毛束群120による「優しい当たり心地」及び「隙間清掃性の向上」を実現することができる。
【0070】
なお、歯ブラシ10は、第1の毛束群110と第2の毛束群120のそれぞれの効果を好適に発揮する観点より、第1の毛束群110の総穴数に占める割合(A)/第2の毛束群120の総穴数に占める割合(B)の比率(A/B)が、25/75~75/25であることがより好ましく、25/75~50/50であることがさらに好ましい。
【0071】
歯ブラシ10では、図2に示すように、第1の毛束群110と第2の毛束群120は、ヘッド部100の幅方向において隣接するように植毛されている。
【0072】
上記のように、歯ブラシ10は、多重芯鞘構造で構成された第1の用毛111からなる第1の毛束群110と、多重芯鞘構造で構成されていないST毛(両端ST毛又は片端ST毛)からなる第2の毛束群120がヘッド部100の幅方向で隣り合うことによって、使用者が歯磨きをしているときに、使用者が第1の用毛111の毛腰の高さに起因した痛み等を感じることを抑制でき、痛みを伴わないしっかりした磨き心地の実感を感じさせることができる。さらに、歯ブラシ10は、隣り合う第1の毛束群110と第2の毛束群120とにより、隙間清掃性及び歯面清掃性を効果的に発揮することができる。
【0073】
なお、第1の毛束群110と第2の毛束群120がヘッド部100の幅方向において隣接する位置に配置された構造を採用する場合、第2の毛束群120は、両端ST毛で構成されているか、もしくは段差植毛された片端ST毛で構成されていることが好ましい。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る歯ブラシ10は、幅方向の寸法が13mm以上で形成されたワイドタイプのヘッド部100の植毛面101に、両端がテーパー形状に形成された多重芯鞘構造の用毛(両端多重芯鞘ST毛)111が段差植毛されている。このように構成された歯ブラシ10は、使用者に対する快適な使用感の付与と効率清掃における清掃精度の向上を両立することができる。
【0075】
<第2の毛束群の組み合わせ例>
図8(A)~(B)には、第2の毛束群120を構成する第2の用毛121の組み合わせのバリエーションを例示している。
【0076】
第2の毛束群120に含まれる第2の用毛121は、多重芯鞘構造を備えておらず、かつ、両端ST毛もしくは片端ST毛で構成されている限り、具体的な構造は限定されない。
【0077】
例えば、第2の用毛121は、「等分折り植毛」もしくは「段差植毛」、「両端ST毛」もしくは「片端ST毛と片端ST毛以外の形状を有する用毛」、「第1の用毛との間の高さ方向の段差の大きさ」などの事項について任意に組み合わせることができる。
【0078】
例えば、第2の用毛121が「片端ST毛」の場合、「片端ST毛/片端ストレート毛の組み合わせ」(図8(B)及び図8(C)を参照)や、「片端ST毛/片端毛先丸め毛(AR毛)の組み合わせ」を採用することが好ましい。これらの組み合わせを採用する場合、植毛方式は、例えば、図8(B)、図8(C)に示す段差植毛が好ましい。
【0079】
例えば、第2の用毛121が「両端ST毛」である場合、前述した実施形態で示した「等分折り植毛」(図5を参照)を採用してもよいし、「段差植毛」(図8(A)を参照)を採用してもよい。
【0080】
また、図8(A)、図8(B)に示すように第2の用毛121を「段差植毛」する場合、第1の対向部125aと第2の対向部126aの間の段差Hg2の大きさは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、2.5mm以上が特に好ましく、3.0mm以上が最も好ましい。また、上記の段差Hgは、例示した上記数値の範囲内であって、かつ、5.0mm以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましい。
【0081】
また、図8(A)~図8(C)に示すように、第1の用毛111の高さ方向に最も突出した毛先115bの高さ位置と、第2の用毛121の高さ方向に最も突出していない毛先126bの高さ位置との間の段差Hgbは、前述した実施形態(図5を参照)と同様に、例えば、3mm以上、5mm以下の大きさを有することがさらに好ましい。
【0082】
例示した上記の段差Hgbを設ける場合において、1の用毛111の高さ方向に最も突出した毛先115bの高さ位置と、第2の用毛121の高さ方向に最も突出した毛先125bの高さ位置は同一の位置(同一の高さ)でなくてもよい。
【0083】
同様に、第1の用毛111の高さ方向に最も突出していない毛先116bの高さ位置と、第2の用毛121の高さ方向に最も突出していない毛先126bの高さ位置は同一の位置(同一の高さ)でなくてもよい。
【0084】
なお、図5図8に示す断面図上では、各用毛111、121において毛先の高さ位置が高い方の部分115a、125aを図中の左側に配置した例を示しているが、例えば、各用毛111、121において毛先の高さ位置が高い方の部分115a、125aを図中の右側に配置するように各毛束群110、120を構成してもよい。
【0085】
<第1の毛束群と第2の毛束群の配列の変形例>
図9(A)~(C)には、第1の毛束群110と第2の毛束群120の配列の変形例を示している。
【0086】
図9(A)~(C)に示す変形例では、ヘッド部100の植毛面101の面方向(正面視方向)の中心位置c1を含む第1の領域101aに複数の第1の毛束群110を植毛している。また、ヘッド部100の幅方向及び/又は長手方向において第1の領域101aを挟み込む第2の領域102a)に複数の第2の毛束群120を植毛している。
【0087】
上記の「植毛面101の面方向の中心位置c1」は、図9(A)~(C)に示す正面図上において、長手方向の中心位置を通る直線と幅方向の中心位置を通る直線とが交わる交点である。なお、第1の領域101aは、第1の毛束群110が植設された第1の植毛穴141の外側同士を最短の長さで結んで囲まれた領域である。
【0088】
第2の領域102aは、図9(A)~(C)に示す正面図上において、第1の領域101aよりも植毛面101の面方向の外側に位置する領域を意味する。
【0089】
第2の領域102aの範囲は、第2の毛束群120が植設された第2の植毛穴142の外側同士を最短の長さで結んで囲まれた領域から、前述の第1の領域101aを減じた領域である。
【0090】
図9(A)に示す例では、第2の毛束群120は、第1の領域101aを長手方向に挟み込む位置に設けられた第2の領域102aに植毛されている。
【0091】
図9(B)に示す例では、第2の毛束群120は、第1の領域101aを長手方向及び幅方向に挟み込む位置に設けられた第2の領域102aに植毛されている。
【0092】
図9(C)に示す例では、第2の毛束群120は、第1の領域101aを長手方向及び幅方向に挟み込む位置に設けられた第2の領域102aに植毛されている。なお、図9(C)に示す例は、図9(B)に示す例よりも、第1の毛束群110が幅方向のより狭い範囲に、かつ長手方向のより広い範囲に亘って植毛されている。
【0093】
図9(A)~図9(C)に示す各毛束群110、120の配列を採用した場合、歯ブラシ10は、痛みを伴わないレベルでのしっかりした磨き心地実感を付与できるとともに、第1の領域(中央部)101aに植毛された第1の毛束群110によって歯面(特に咬合面)の高い清掃性能を確保することができ、さらに第2の領域102a(外側)に植毛された第2の毛束群120によって隙間清掃効果を効果的に発揮することができる。
【0094】
なお、図9(A)~(C)に示す各変形例では、第2の毛束群120を構成する第2の用毛121は、片端ST毛であることが好ましい。
【0095】
また、図示は省略するが、歯ブラシ10は、第1の毛束群110がヘッド部100の幅方向のみで第2の毛束群120に挟み込まれた構成を有する場合(例えば、WO2013/164986の実施例に記載の配列)においても、図9(A)~(C)に示す各変形例と同様の効果を発揮することができる。
【0096】
以下、実施例を説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されない。
【0097】
図10図16には実施例及び比較例を示す。
【0098】
<実施例1>
(共通事項)
図10に示す実施例1-1~実施例1-4、比較例1では、下記の事項が共通である。
・第1の毛束群を構成する第1の用毛の外径D1:0.18mm
・第2の毛束群を構成する第2の用毛の外径D2:0.19mm
・ヘッド部の幅W1:13mm
・ヘッド部の長さL1:25mm
・ヘッド部の厚み:3mm
・第1の用毛を植毛した第1の植毛穴:1.55mm
・第2の用毛を植毛した第2の植毛穴の穴径:1.55mm
・植毛穴の総数:48個
(各実施例における第1の毛束群の総毛数/第2の毛束群の総穴数の比率71/29は、48個の植毛穴のうち、34個に第1の植毛群が植毛されており、14個に第2の植毛群が植毛されていることを意味する。また、比率29/71は、48個の植毛穴のうち、14個に第1の植毛群が植毛されており、34個に第2の植毛群が植毛されていることを意味する。また、比率50/50は、48個の植毛穴のうち、24個に第1の植毛群が植毛されており、24個に第2の植毛群が植毛されていることを意味する。)。
【0099】
(第1の毛束群及び第2の毛束群の構成)
実施例1-1~実施例1-4、比較例1の第1の毛束群及び第2の毛束群の具体的な構成は図10に示す通りである。
【0100】
(評価方法)
10人のモニターが各歯ブラシで口腔内を清掃し、その際の評価を下記基準で評価した。モニター10人の平均点を下記のように分類した。
・◎:5.5以上
・〇:4.5以上、5.5点未満
・△:3.5以上、4.5点未満
・×:3.5点未満
具体的な評価基準は以下の通りである。
【0101】
(1)清掃性能
・7点:(比較例1を基準として)「歯間・歯頸部の汚れが同時に落ちた感じ」を非常に強く感じる。
・6点:強く感じる。
・5点:感じる。
・4点:同等である。
・3点:あまり感じない。
・2点:感じない。
・1点:全く感じない
(2)痛みを伴わなずしっかり磨ける感じ
・7点:「痛みを伴わずしっかり磨けた感じ」を非常に強く感じる。
・6点:「痛みを伴わずしっかり磨けた感じ」を強く感じる。
・5点:「痛みを伴わずしっかり磨けた感じ」をやや感じる。
・4点:「痛みを伴わず、しっかり磨けた感じ」を感じる
・3点:「痛みを少し感じるが、しっかり磨けている実感」を感じる。
・2点:「痛みを感じるが、しっかり磨けている実感」を感じる。
・1点:「非常に痛み」を感じる。
【0102】
(実施例1の評価結果について)
実施例1-1~1-4では、第1の毛束群に「二重芯鞘構造」、「段差植毛」、「両端ST毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができた。
【0103】
一方で、比較例1は、第1の毛束群に「等分折り植毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について低い評価となった。
【0104】
また、実施例1-1及び実施例1-2と、実施例1-3及び実施例1-4とを比較した結果、第1の毛束群を構成する第1の用毛内の段差(毛束内段差)が大きい方が「清掃性能」について高い評価が得られることを確認できた。
【0105】
<実施例2>
実施例2-1~実施例2-4、比較例2の第1の毛束群及び第2の毛束群の具体的な構成は図11に示す通りである。共通事項及び評価方法は実施例1と同様である。
【0106】
(実施例2の評価結果について)
実施例2-1~2-4では、第1の毛束群に「二重芯鞘構造」、「段差植毛」、「両端ST毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができた。一方で、比較例2は、第1の毛束群が「等分折り植毛」であるため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができなかった。
【0107】
実施例2では、第1の毛束群及び第2の毛束群の配列が実施例1と異なる。具体的には、第1の毛束群は、ヘッド部の長手方向及び幅方向において第2の毛束群により挟み込まれるように配置されている。また、実施例2では、第1の毛束群の総毛数/第2の毛束群の総毛数の比率が、50/50となっている。実施例2-1は、上記のような実施例1との相違により、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について、比較例1よりも高い評価が得られたものと考えられる。
【0108】
<実施例3>
実施例3-1~実施例3-4、比較例3の第1の毛束群及び第2の毛束群の具体的な構成は図12に示す通りである。共通事項及び評価方法は実施例1と同様である。
【0109】
実施例3-1~3-4では、第1の毛束群に「二重芯鞘構造」、「段差植毛」、「両端ST毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができた。一方で、比較例3は、第1の毛束群に「等分折り植毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができなかった。
【0110】
実施例3は、第1の毛束群の総毛数/第2の毛束群の総毛数の比率が実施例2と異なる。具体的には、第1の毛束群の総毛数/第2の毛束群の総毛数の比率は29/71となっている。実施例2と実施例3との比較より、各毛束群の比率が変化した場合においても、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができることを確認できた。
【0111】
<実施例4>
実施例4-1~4-4、比較例4の第1の毛束群及び第2の毛束群の具体的な構成は図13に示す通りである。また、実施例4-5~4-8、比較例5の第1の毛束群及び第2の毛束群の具体的な構成は図14に示す通りである。共通事項及び評価方法は実施例1と同様である。
【0112】
実施例4-1~4-8では、第1の毛束群に「二重芯鞘構造」、「段差植毛」、「両端ST毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができた。一方で、比較例4、比較例5は、第1の毛束群に「等分折り植毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができなかった。
【0113】
実施例4では、第1の毛束群及び第2の毛束群の配列が実施例1~3と異なる。具体的には、第1の毛束群と第2の毛束群はヘッド部の幅方向において隣接する位置に植毛されている。このような毛束群の配列を採用したうえで、さらに、第2の毛束群を構成する第2の用毛を「等分折り植毛」の「両端ST毛」(実施例4-6)とすることにより、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について最も高い評価を得ることができた。
【0114】
<実施例5~7>
実施例5~7の毛束群の具体的な構成は図15に示す通りである。植毛穴の穴径以外の共通事項及び評価方法は実施例1と同様である。
【0115】
実施例5~7では、第1の毛束群に「二重芯鞘構造」、「段差植毛」、「両端ST毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について、実施例1~4と同等の評価が得られることを推測できる。
【0116】
<比較例6>
比較例6の毛束群の具体的な構成は図16に示す通りである。共通事項及び評価方法は実施例1と同様である。
【0117】
比較例6では、第1の毛束群に「等分折り植毛」を採用しているため、「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができなかった。また、比較例6では、第2の毛束群が設けられていない。このような理由からも「清掃性能」及び「しっかり磨けた実感」について高い評価を得ることができなかったことが考えられる。
【0118】
以上、本発明に係る歯ブラシを説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0119】
例えば、ヘッド部の材質、ハンドル部及びネック部の形状、材質、大きさ等については公知の歯ブラシの構造を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0120】
10 歯ブラシ
100 ヘッド部
101 植毛面
101a 植毛面の第1の領域
102a 植毛面の第2の領域
110 第1の毛束群
111 第1の用毛
113 芯部
114 鞘部
115a 第1の対向部(第1の用毛の一方の部分)
115b 第1の対向部の毛先
116a 第2の対向部(第1の用毛の他方の部分)
116b 第2の対向部の毛先
120 第2の毛束群
121 第2の用毛
125a 第1の対向部(第2の用毛の一方の部分)
125b 第1の対向部の毛先
126a 第2の対向部(第2の用毛の他方の部分)
126b 第2の対向部の毛先
131 平線
141 第1の植毛穴
142 第2の植毛穴
200 ハンドル部
300 ネック部
D1 第1の用毛の外径
D2 第2の用毛の外径
D3 第1の植毛穴の穴径
D4 第2の植毛穴の穴径
Hg1 第1の用毛内の段差の寸法
Hgb 第1の用毛と第2の用毛の段差の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16