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  • 特開-ベンチレーション機能付き衣服 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101928
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ベンチレーション機能付き衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20220630BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A41D13/12 109
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216321
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】501468057
【氏名又は名称】フォーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 淳
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB06
3B011AC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構造により効率の高いベンチレーション機能を備えた、快適性に優れた医療用上着を提供する。
【解決手段】本発明の医療用上着は、後身頃の襟から肩甲骨の下端に相当する部分が2層構造であり、内側の後身頃の肩甲骨に相当する部分に通気性素材からなる通気部26が設けられ、外側の肩ヨーク延長部分は、上端部及び左右端部は後身頃に縫合されて通気部を覆っており、肩ヨーク延長部分の通気部26よりも襟側の位置に開口30が設けられ、上着の下端から流入した空気が通気部を通過した後、開口30から外に排出されるようにされたベンチレーション機能を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上着の後身頃の襟から肩甲骨の下端に相当する部分が2層構造であり、内側の前記後身頃の肩甲骨に相当する部分に通気性素材からなる通気部が設けられ、外側の肩ヨーク延長部分は、上端部及び左右端部は前記後身頃に縫合されて前記通気部を覆っており、前記肩ヨーク延長部分の前記通気部よりも襟側の位置に開口が設けられ、前記上着の下端から流入した空気が前記通気部を通過した後、前記開口から外に排出されるようにされたベンチレーション機能を備えた医療用上着。
【請求項2】
前記肩ヨーク延長部分が上側の肩ヨーク部と下側の肩ヨーク延長部の2つの部分から成り、前記肩ヨーク延長部の上端に凹部を設け、前記開口が、前記肩ヨーク部と前記肩ヨーク延長部とを縫合することにより形成される、請求項1に記載の医療用上着。
【請求項3】
前記開口の形状が上端に底辺を有し横方向に長い逆三角形である、請求項2に記載の医療用上着。
【請求項4】
前記開口の形状が上端が直線で横方向に長い半楕円形である、請求項2に記載の医療用上着。
【請求項5】
前記通気性素材がメッシュ生地である、請求項1~4いずれか一項に記載の医療用上着。
【請求項6】
前記通気部が前記後身頃を横断する矩形である、請求項1~5いずれか一項に記載の医療用上着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ベンチレーション機能を備えた衣服、特に医療用衣服の上着の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医師、看護師、理学療法士等の医療従事者は、医療用衣服のユニフォームを着用して業務を行うが、各種治療、患者の搬送やケア等の業務では筋力や体力を要する場合も多く、そのような業務では衣服、特に上着内の温度が上昇し、発汗により上着内部に蒸れが生じ、不快感や作業効率の低下等を招く場合がある。医療用衣服の上着は、作業性を良くするため軽量かつ高い強度が必要であり、また衛生を保つため洗濯の頻度も高いので、高い耐摩耗性、耐久性も必要とされる。そのため、上着の構造はなるべく単純である必要がある。これらの要求を満たしながら上着内の温度上昇を低下させるため、従来は、背中の上部に目の細かいメッシュ生地の領域を設け、通気性を良くすることが行われてきた。
【0003】
一方、ジャンバーや、ブルゾンや、ウィンドブレーカー等のアウトドア用の長袖の上着では、内部の温度上昇や蒸れを抑えるため、背中の上部を折り畳み構造としてその内側にメッシュ素材を配した構造(特許文献1)、あるいは後身頃(背面の部分)の切り替えを吸気口として、襟の部分に内部の空気を排出するための通気口を設け、内部の空気をより流れ易くした構造(特許文献2)等がある。さらに、より衣服内に外気を取り込むため、衣服に電動ファンを取り付ける例もある(特許文献3)。しかし医療用衣服の上着の場合は、上述のような医療用独特の要件もあるため、メッシュ生地の領域を設ける程度の対策しか行われてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3045913号公報
【特許文献2】特開2005-163227号公報
【特許文献3】特許第6191028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば引用文献2のような襟の部分に排気口を設けた従来構造のベンチレーション構造では、衣服内を流れる空気の量が十分でないため、発生した熱や蒸気を衣服外に十分に排出することはできず、快適性は十分なものではなかった。また、医療用の上着の場合には、上述のメッシュ生地の穴の直径を大きくして通気性を向上させることが考えられるが、そうすると下着や肌が透けて見えてしまうという問題が生じる。通気性が不十分で熱や蒸気の排出が十分にできないと、不快感の増加や集中力の低下を招き、さらに甚だしくなれば、発汗等により業務に障害をきたしてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構造により効率の高いベンチレーション機能を備えた、快適性に優れた医療用上着を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
背中の上部は、通常左右の肩甲骨が外側に隆起しているため、その間に窪みの部分ができる。そのため、上着の後身頃(背中の部分)の内面とこの窪み部分との間には、縦方向の通気路が形成されている。これに対して襟の下部、及び両肩の部分は上着を支える部分であり人体とは密着している。従って、肩甲骨の窪み部分の上部に排気口となる通気部を設ければ、上着内の空気はこの通気部から容易に排出できる。本発明では、後身頃の肩甲骨に相当する部分に通気抵抗の小さい通気部と、これを覆う肩ヨークの延長部分に開口を設けた2段構造のベンチレーション構造を設け、作業者の動きに伴って上着の下端から自然に流入した空気を容易に外部に排出できる構造とした。
【0008】
本発明による医療用上着は次のような特徴を持つ。
上着の後身頃の襟から肩甲骨の下端に相当する部分が2層構造であり、内側の前記後身頃の肩甲骨に相当する部分に通気性素材からなる通気部が設けられ、外側の肩ヨーク延長部分は、上端部及び左右端部は前記後身頃に縫合されて前記通気部を覆っており、前記肩ヨーク延長部分の前記通気部よりも襟側の位置に開口が設けられ、前記上着の下端から流入した空気が前記通気部を通過した後、前記開口から外に排出されるようにされたベンチレーション機能を備える。
【0009】
前記肩ヨーク延長部分が上側の肩ヨーク部と下側の肩ヨーク延長部の2つの部分から成り、前記肩ヨーク延長部の上端に凹部を設け、前記開口が、前記肩ヨーク部と前記肩ヨーク延長部とを縫合することにより形成される。
【0010】
前記開口の形状は上端に底辺を有した横方向に長い逆三角形、あるいは上端が直線で横方向に長い半楕円形であってよい。
【0011】
前記通気性素材がメッシュ生地であってもよく、前記通気部の形状が前記後身頃を横断する矩形であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動ファンを用いて強制的に外気の取り込みを行うことなく、簡単な構造で高いベンチレーション機能を備えた上着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明による医療用上着の概要を示す正面図(A)、背面図(B)、及びベンチレーション機能を説明するための人体模型を含めた断面図(C)である。
図2図2は、本発明の実施例による医療用上着の展開図(A)、及びベンチレーションに関連する部分の拡大断面図(B)である。
図3図3は、本発明の実施例による種々の形状の開口を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による医療用衣服1の半袖上着の一例の外観を図1に示す。(A)は正面図であり、前身頃10は襟12から下に向かってファスナー14、リングドットボタン16により前開き可能となってはいるが、業務中は閉めた状態で使用する。衣服の素材には、軽く、強度が高く、速乾性に優れ、しわになりにくいポリエステル、あるいはポリエステルと綿等の混紡が主に用いられている。
【0015】
図1(B)は背面図を示す。襟12から後身頃20の肩甲骨の下端部に相当する位置までの生地は2層構造となっている。外側の層(以下、肩ヨーク延長部分と呼ぶ)は、肩ヨーク部22とその下に縫合された肩ヨーク延長部24から構成される。これらの肩ヨーク部22と肩ヨーク延長部24が外身頃20を覆うように重ねられ、上端部は襟12及び後身返し21(図2)に、左右端部は後身頃20の左右端部に縫合されている一方、下部部は開放されている。肩ヨーク部22と肩ヨーク延長部24の間の中央の肩甲骨上部に相当する位置には開口30が設けられている。一方、開口30の下方の肩ヨーク延長部24に覆われた後身頃20には、メッシュ生地を用いた通気部26が設けられている。メッシュ生地の穴は直径が大きい方が通気性は高いが、従来は上述の「透け」の問題のため、大きい径を採用することが出来なかったが、本発明のメッシュ生地は肩ヨーク延長部24の下に隠れているため、このような問題は生じない。
【0016】
図1(C)はベンチレーション機能を説明するための人体模型を含めた側断面図を示す。医療用衣服の下端40は通常開放されているので、空気はここから後身頃20と身体の間の隙間42に流入する。体温により暖められた空気44は上昇するので、衣服内の温度分布は上に行くほど高くなっている。従って、上部の温まった空気の排出が容易であれば、下端40から外気が自然に補給される。本発明の構造によれば、体温により暖められた空気44は、通気部26を小さい通気抵抗で通り抜けることができる。また、開口30は通気部26よりも上方に設けられており、かつ肩ヨーク延長部24の下端は開放されているので、通気部26から放出された暖められた空気は煙突効果により開口30から容易に排出される。従って、上着の下端40から隙間42、通気部26を経て開口30まで対流する空気の流れが自然に形成される。
【0017】
さらに、医療では上半身を動かす作業も多く、この際、上着の後身頃20の肩甲骨の位置より下の部分は、身体に対して前後に揺れるので、後身頃20と背中との距離はこれに伴って変化する。前述のように左右の肩甲骨の間は周囲に比べて窪んでおり、空気の通路が他の部分よりも狭くなることにより気流は速くなるので、この上着の前後のゆれは「ふいご」の働きを果たす。また、肩ヨーク延長部24と後身頃20の隙間も、この上半身の動きによって変化する。このように、2層構造の通気部/開口構造、穴の径の大きいメッシュ生地の採用、及びこのふいご効果が相まって、高い効果の医療用上着のベンチレーション機能が実現できる。
【0018】
図2は本発明の実施例による、医療用上着の構造を示す。(A)は襟12を中心に上側に前身頃10の上側部分、下側に後身頃20の上側部分の展開図を示す。また(B)は、前述の2層構造のベンチレーション構造に関係する部分の生地の重なりを拡大した説明図である。襟12から後身頃20の下に向かって、後身返し21、メッシュ生地を用いた通気部26、後身頃下部28が繋がって縫合されている。ここで言うメッシュ生地とは、縦糸と横糸とを粗く編み込んでミリ単位の穴を一面に設け、通気性を向上させた生地である。メッシュ穴の直径は大きい方が空気の流れの抵抗が小さくなるので好ましく、本実施例では約2mmφのものを用いている。本実施例では通気部26の横幅は後身頃20の横幅全体としているが、空気の流れの抵抗が大きくならない範囲で横幅を狭めることもできる。
【0019】
これらの後身返し21と通気部26を覆うように、襟12の袖に肩ヨーク部22が縫合され、さらにそれに続いて肩ヨーク延長部24が縫合さている。そして、肩ヨーク延長部24の上端中央部に横長三角形の凹部を設けて肩ヨーク部22の下端と縫合することにより、逆三角形の形状の開口30を作製する。なお、開口30の横方向の位置は中央からずらしてもよい。このように2枚の生地を繋げて縫合して開口30を形成する場合、肩ヨーク部22と肩ヨーク延長部24の両端に凹部を設けてもよいが、片方のみに凹部を設けた方が縫製の工程が簡略化できるので好ましい。また、肩ヨーク延長部24の生地のみに凹部を設けると、外見上「スマイルマーク」が形成され、患者から見た場合に微笑んでいるようにも見えるので医療用の外見としてより好ましい。
【0020】
図3は種々の形状の開口30の例を示す。上側が逆三角形形状の開口(ストレートタイプ)、下側が半楕円形状の開口(カーブタイプ)で、それぞれ凹部の深さを変えたものである。しかし、開口の形状はこれに限定されるものではない。開口の形状、面積は、用いる通気部26のメッシュ生地の仕様に基づき、所望の空気の流量、耐久性、縫製の容易さ等を考慮し、デザイン性も加味して決定すればよい。
【0021】
なお、上記記載は医療用上着の実施例に基づいてなされたが、本発明はそれに限定されず、本発明の精神と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更、及び修正をすることができることは当業者に明らかである。例えば、医療用以外の作業用上着や、ブルゾン等のアウトドア用上着にも適用可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0022】
1 医療用上着
10 前身頃
12 襟
14 ファスナー、
16 リングドットボタン
20 後身頃
21 後身返し
22 肩ヨーク部
24 肩ヨーク延長部
26 通気部
28 後身頃下部
30 開口
40 衣服の下端
42 衣服と身体の隙間
44 空気の流れ
図1
図2
図3