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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101932
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】交通情報生成システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20220630BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20220630BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20220630BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G16Y10/40
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216326
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 大
(72)【発明者】
【氏名】前川 和輝
(72)【発明者】
【氏名】石川 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】堀 敬滋
(72)【発明者】
【氏名】若林 賢
(72)【発明者】
【氏名】前山田 信
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181FF04
5H181FF07
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF33
5H181MC02
5H181MC14
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】渋滞長の伸縮傾向を把握しやすい交通情報を生成できる可能性を高める技術の提供。
【解決手段】渋滞区間を取得する渋滞区間取得部と、車両位置と車速とを含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、前記プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、前記減速位置に基づいて前記渋滞区間の末尾の位置を更新する渋滞末尾更新部と、を備え、前記渋滞区間の末尾を更新するために用いられる前記減速位置を収集する期間は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも長い、交通情報生成システムを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渋滞区間を取得する渋滞区間取得部と、
車両位置と車速とを含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
前記プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、前記減速位置に基づいて前記渋滞区間の末尾の位置を更新する渋滞末尾更新部と、
を備え、
前記渋滞区間の末尾を更新するために用いられる前記減速位置を収集する期間は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも長い、
交通情報生成システム。
【請求項2】
渋滞区間を取得する渋滞区間取得部と、
車両位置と車速とを含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
前記プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、前記減速位置に基づいて前記渋滞区間の末尾の位置を更新する渋滞末尾更新部と、
を備え、
前記渋滞区間の末尾を更新するために用いられる前記減速位置の個数は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも多い、
交通情報生成システム。
【請求項3】
渋滞区間長が長くなる側の前記減速位置が1個取得されたことに応じて、前記渋滞区間の末尾が、渋滞区間長が長くなる側に更新される、
請求項1または請求項2に記載の交通情報生成システム。
【請求項4】
前記渋滞区間の末尾を更新するための前記減速位置を収集する期間は、道路属性に応じて異なる、
請求項1に記載の交通情報生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プローブ情報に基づいて渋滞区間を取得することが知られている。例えば、特許文献1には、複数の車両のプローブ情報に基づいて渋滞区間を特定し、走行時刻が現時刻に近い他のプローブ情報に基づいて渋滞の末尾位置を特定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-151531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般道における渋滞は、信号交差点を起点として発生することが多い。このような渋滞においては、赤信号での停止と青信号での進行の繰り返しにより、渋滞長が小刻みに伸縮を繰り返して全体として伸張したり短縮したりすることが知られている。従来の技術では、この小刻みな伸縮がそのまま反映されるため、渋滞長が即時的に表現されてはいるものの、全体として渋滞長が長くなる傾向にあるのか短くなる傾向にあるのかをユーザが瞬時に判断することが困難という問題がある。 本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、渋滞長の伸縮傾向を把握しやすい交通情報を生成できる可能性を高める技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、交通情報生成システムは、渋滞区間を取得する渋滞区間取得部と、車両位置と車速とを含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を更新する渋滞末尾更新部と、を備え、渋滞区間の末尾を更新するために用いられる減速位置を収集する期間は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも長い。
【0006】
また、上記の目的を達成するため、交通情報生成システムは、渋滞区間を取得する渋滞区間取得部と、車両位置と車速とを含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を更新する渋滞末尾更新部と、を備え、渋滞区間の末尾を更新するために用いられる減速位置の個数は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも多い。
【0007】
すなわち、これらの交通情報生成システムにおいて、渋滞区間長が短くなる側へ渋滞末尾を更新することは、渋滞区間長が長くなる側へ渋滞末尾を更新することよりも、高い統計精度が要求される。従って、渋滞区間長が短くなる側においては、小刻みな伸縮による一時的な渋滞長の短縮は反映されにくい。その結果、実際には渋滞区間長が伸張傾向である場合に渋滞区間長が短縮傾向であるとユーザに誤認されにくい。そのため、この交通情報生成システムによれば、渋滞区間長の伸縮傾向をユーザが把握しやすい交通情報を生成できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】交通情報生成システムの構成を示すブロック図である。
図2図2A図2Dは、渋滞末尾の更新例を示す模式図である。
図3図3Aは渋滞末尾更新処理のフローチャート、図3Bはタイマ処理のフローチャートである。
図4】第2実施形態にかかる渋滞末尾更新処理のフローチャートである。
図5】他の実施形態にかかる渋滞末尾更新処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態:
(1-1)車載システムの構成:
(1-2)交通情報生成システムの構成:
(1-3)渋滞末尾更新処理:
(2)第2実施形態:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)第1実施形態:
図1は、本発明にかかる交通情報生成システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態において、交通情報生成システム10は、車載システム100と協働する。車載システム100は、プローブ車両として機能する車両に備えられている。交通情報生成システム10は、複数のプローブ車両にそれぞれ搭載されている車載システム100と通信可能であり、各車載システム100は既定のタイミングでプローブ情報を交通情報生成システム10に送信するように構成されている。交通情報生成システム10は、複数のプローブ車両から送信されたプローブ情報に基づいて渋滞区間を特定し、渋滞区間を示す情報を含む交通情報を生成する。
【0011】
(1-1)車載システムの構成:
車載システム100は、制御部120と、記録媒体130と、GNSS受信部141と、車速センサ142と、ジャイロセンサ143と、ユーザI/F部144と、通信部145を備えている。制御部120は、CPU,RAM,ROM等を備えるコンピュータである。車載システム100は、記録媒体130やROMに記憶されたプログラムを制御部120で実行することができる。記録媒体130には、予め地図情報130aが記録されている。
【0012】
地図情報130aは、プローブ車両の現在位置の特定や、経路案内等に利用される情報であり、プローブ車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置や形状等を示す地物データ等を含んでいる。なお、本実施形態においてノードは交差点を示している。また、リンクデータには、当該リンクデータが示す道路区間の道路種別や、当該道路区間に存在する車線の数等の情報が対応づけられている。
【0013】
GNSS受信部141は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信、図示しないインタフェースを介してプローブ車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部120は、この信号を取得して地図の座標系におけるプローブ車両の現在位置(緯度、経度等)を取得する。車速センサ142は、プローブ車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部120は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ143は、プローブ車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、プローブ車両の向きに対応した信号を出力する。制御部120は、この信号を取得してプローブ車両の進行方向を取得する。車速センサ142およびジャイロセンサ143等は、プローブ車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、プローブ車両の出発地と走行軌跡とに基づいて現在位置が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定されたプローブ車両の現在位置がGNSS受信部141の出力信号に基づいて補正される。また、車載システム100は図示しない計時部を備えており、制御部120は計時部から現在日時を示す情報を取得することができる。
【0014】
ユーザI/F部144は、利用者の指示を入力し、また利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル方式のディスプレイやスピーカ等を備えている。すなわち、ユーザI/F部144は画像や音の出力部およびユーザによる指示の入力部を備えている。なお、ユーザI/F部144は省略されてもよい。通信部145は、他の装置と無線通信を行うための回路を含んでいる。本実施形態において、制御部120は、通信部145を介して、無線通信によって交通情報生成システム10と様々な情報を授受することができる。車載システム100から交通情報生成システム10には、プローブ情報が送信される。
【0015】
制御部120は、プローブ情報送信プログラム121を実行することができる。プローブ情報送信プログラム121を実行することにより、制御部120は、GNSS受信部141,車速センサ142,ジャイロセンサ143の出力信号に基づいてプローブ車両の現在位置(車両位置)および車速を取得する。また、制御部120は、地図情報130aを用いたマップマッチング処理により、プローブ車両が走行中のリンクを取得する。制御部120は、車両位置と、車速と、車両位置および車速の取得日時と、プローブ車両の車両IDとを対応付けたプローブ情報を、記録媒体130に記録する。制御部120は、記録媒体130に記録された未送信のプローブ情報を、既定のタイミングで、交通情報生成システム10に送信する。なお、制御部120は、GNSS受信部141,車速センサ142,ジャイロセンサ143の出力信号を交通情報生成システム10に送信し、交通情報生成システム10において、当該出力信号と地図情報30aを用いたマップマッチング処理が行われるように構成されていても良い。
【0016】
(1-2)交通情報生成システムの構成:
交通情報生成システム10は、制御部20、記録媒体30、通信部40を備えている。制御部20は、CPU,RAM,ROM等を備えるコンピュータである。制御部20は、記録媒体30やROMに記憶された交通情報生成プログラム21を実行することができる。
【0017】
通信部40は、他の装置と通信を行う回路を備えている。制御部20は、交通情報生成プログラム21の処理によって、通信部40を介して、複数のプローブ車両にそれぞれ搭載されている車載システム100と無線通信することができる。記録媒体30には、地図情報30aが記録されている。地図情報30aは地図情報130aの構成と共通である。
【0018】
本実施形態において、交通情報生成プログラム21が実行されると、制御部20は、渋滞区間取得部21a、プローブ情報取得部21b、渋滞末尾更新部21cとして機能する。制御部20は、プローブ情報取得部21bの機能により、車両位置と車速とを含むプローブ情報を取得する。制御部20は、通信部40を介して、プローブ情報を取得すると、記録媒体30に記録する(プローブ情報30b)。
【0019】
また、渋滞区間取得部21aの機能により、制御部20は、渋滞区間を取得する。本実施形態において、渋滞区間は、プローブ車両の車載システム100から送信されたプローブ情報に基づいて取得される。すなわち、制御部20は、プローブ情報に基づいて、プローブ車両が既定速度以下で走行する区間を特定し、当該区間を渋滞区間として取得する。すなわち、制御部20は、プローブ車両が既定速度以下となった位置を末尾とし、それ以降に既定速度以上となった位置を先頭とする渋滞区間を取得する。なお、渋滞区間の先頭を、渋滞区間の末尾から進行方向前方側の初めての交差点(道路の分岐地点)とする構成であってもよい(この場合、渋滞区間はリンク毎に設定される)。渋滞の発生当初については、制御部20は、このように渋滞区間を取得する。渋滞区間の長さは時々刻々と変化しうるため、渋滞区間の末尾の位置に関しては、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、次のように渋滞区間の末尾の位置を更新する。
【0020】
渋滞末尾更新部21cの機能により、制御部20は、プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を更新する。既定速度は、渋滞している場合の車速の上限相当の車速である(例えば15km/h)。
【0021】
例えば一般道における渋滞は、信号交差点を起点として発生することが多い。このような渋滞においては、赤信号での停止と青信号での進行の繰り返しにより、渋滞長が小刻みに伸縮を繰り返して全体として伸張したり短縮したりすることが知られている。仮に、1台のプローブ車両の減速位置で渋滞区間の末尾の位置を更新する場合、この小刻みな伸縮がそのまま反映されることとなる。この場合、渋滞長が即時的に表現されてはいるものの、全体として渋滞長が長くなる傾向にあるのか短くなる傾向にあるのかをユーザが瞬時に判断することが困難である。また、ユーザにおいては、事前に通知された渋滞区間長に対して、実際に遭遇する渋滞区間の方が長ければ不満に感じやすく、逆に短ければ運が良いと感じることが多い。
【0022】
そこで、本実施形態において、制御部20は、渋滞区間の末尾の位置よりも後方の減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を後方側に更新し、渋滞区間の末尾の位置よりも前方の減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を前方側に更新する。その場合に、更新のために用いられる減速位置を収集する期間を、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも長い期間とする。このようにすることで、現状の渋滞末尾より前方側(渋滞区間長が短くなる側)へ渋滞末尾を更新することは、現状の渋滞末尾の後方側(渋滞区間長が長くなる側)へ渋滞末尾を更新することよりも実施されにくくすることができる。
【0023】
図2A図2Dは、渋滞の時系列変化の一例を示す模式図である。同図では、交差点を起点として渋滞が発生している様子を示している。同図において、複数の矩形は車両を示しており、黒の太線は渋滞区間を示している。黒の太線のうち交差点から遠い側の端部が渋滞区間の末尾である。例えば、渋滞区間取得部21aの機能によって8:00AMに取得された渋滞区間が図2Aの黒の太線で示す区間であったとして説明を続ける。渋滞区間取得部21aの機能によって渋滞区間を取得した2分後の8:02AMに、制御部20は、プローブ車両C図2Bに示す位置にて既定速度以下に減速したことをプローブ車両Cからのプローブ情報から特定する。制御部20は、プローブ車両Cの減速位置が現状の渋滞区間(すなわち図2Aに示す時刻での渋滞区間)の末尾の位置より前方側であるか否かを判定する。図2Bに示すプローブ車両Cの減速位置は、現状の渋滞区間の末尾より後方側である。本実施形態において、制御部20は、渋滞区間の末尾よりも後方の減速位置が1個取得されたことに応じて渋滞区間の末尾を後方側に更新する。すなわち、制御部20は、プローブ車両Cの減速位置で渋滞区間の末尾を更新する。従って更新後の渋滞区間は、図2Bの黒の太線で示す区間となる。このように、本実施形態において、渋滞区間長が延びる側への更新は、即時的に行われる。
【0024】
続いて、さらに2分後の8:04AMにプローブ車両Cの減速位置が図2Cに示す位置で取得された場合、制御部20は、プローブ車両Cの減速位置が現状の渋滞区間(すなわち図2Bに示す渋滞区間)の末尾の位置よりも前方側であるか否かを判定する。図2Cに示すプローブ車両Cの減速位置は、現状の渋滞区間の末尾よりも前方側であるため、制御部20は、直ちに渋滞区間の末尾を更新しない。従って図2Cに示すように渋滞区間は図2Bの時刻から変化させない。
【0025】
続いて、さらに2分後の8:06AMにプローブ車両Cの減速位置が図2Dに示す位置で取得された場合、制御部20は、プローブ車両Cの減速位置が現状の渋滞区間(すなわち図2Cに示す渋滞区間)の末尾の位置よりも前方側であるか否かを判定する。図2Dに示すプローブ車両Cの減速位置は、現状の渋滞区間の末尾よりも後方側であるため、制御部20は直ちに、プローブ車両Cの減速位置で渋滞区間の末尾を更新する。従って更新後の渋滞区間は、図2Dの黒の太線で示す区間となる。
【0026】
なお、仮に、制御部20は、8:04AM以降も既定期間の間、前方側の減速位置(他のプローブ車両の減速位置)が連続して取得された場合、制御部20は、既定期間の間に取得された前方側の減速位置の統計値を算出し、当該統計値が示す位置で渋滞区間の末尾の位置を更新する。本実施形態では、統計値として中央値が採用されるが、平均値等が採用されてもよい。
【0027】
このように、本実施形態によれば、現状の渋滞末尾より前方側へ渋滞末尾を更新することは、現状の渋滞末尾の後方側へ渋滞末尾を更新することよりも、高い統計精度が要求される。従って、渋滞区間長が短くなる側(前方側)においては、小刻みな伸縮による一時的な渋滞長の短縮は反映されにくい。その結果、実際には渋滞区間長が伸張傾向である場合に渋滞区間長が短縮傾向であるとユーザに誤認されにくい。そのため、本実施形態によれば、渋滞区間長の伸縮傾向をユーザが把握しやすい交通情報を生成できる可能性を高めることができる。なお、本実施形態においては、渋滞区間長が長くなる側(後方側)においては、小刻みな伸縮による一時的な渋滞長の伸張であったとしても反映されやすい。そのため、ユーザにおいては、事前に通知された渋滞区間長よりも実際の渋滞区間長が長いという状況になりにくいため、ユーザが不満を感じる可能性も低減できる。なお、生成された交通情報は車載や携帯端末のナビゲーションシステムに配信され、地図上への表示や、経路探索や、経路案内等に利用される。
【0028】
(1-3)渋滞末尾更新処理:
図3Aを参照しながら、渋滞末尾更新処理について説明する。渋滞末尾更新処理は、プローブ情報取得部21bの機能により最新のプローブ情報を取得したことに応じて、制御部20によって実行される処理である。渋滞末尾更新処理が開始されると、制御部20は、渋滞区間取得部21aの機能により、渋滞発生中であるか否かを判定する(ステップS100)。渋滞末尾更新処理に先立って、制御部20は、プローブ情報に基づいて、プローブ車両が既定速度以下で走行する区間が存在するか否かを判定し、存在する場合に、当該区間を渋滞区間として取得する。ステップS100において、制御部20は、このようにして渋滞区間が取得済である場合に、渋滞発生中であると判定する。ステップS100において渋滞発生中と判定されなかった場合、制御部20は、渋滞末尾更新処理を終了する。
【0029】
ステップS100にて渋滞発生中であると判定された場合、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、渋滞区間内であり車速が既定速度以下であるか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、処理対象のプローブ情報に含まれる車両位置が、現状で特定されている渋滞区間内であり、かつ、当該プローブ情報に含まれる車速が既定速度以下である否かが判定される。ステップS105の判定条件を満たした場合に、後述するステップS110において、車速が既定速度以下となった減速位置の特定が行われる。ステップS105において渋滞区間内であり車速が既定速度以下であると判定されなかった場合、制御部20は渋滞末尾更新処理を終了する。
【0030】
ステップS105において、渋滞区間内であり車速が既定速度以下であると判定された場合、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、プローブ車両の減速位置が渋滞末尾より前方(渋滞区間長が短くなる側)であるか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、処理対象のプローブ情報が示すプローブ車両の直近の期間のプローブ情報に基づいて、プローブ車両の車速が既定速度以下となった車両位置である減速位置を取得する。ステップS105の条件を満たしたプローブ情報が示すプローブ車両について、制御部20は、ステップS105の条件を満たしたプローブ情報が示す位置より後方(時間を遡る方向)のプローブ情報も参照する。そのため、制御部20は、現状の渋滞区間の末尾より後方(渋滞区間長が延びる側)においてプローブ車両が既定速度以下となった位置(減速位置)も取得可能である。現状の渋滞区間の末尾より前方(渋滞区間長が短くなる側)においてプローブ車両が既定速度となった場合は、ステップS105の条件を満たしたプローブ情報が示す位置が、プローブ車両が既定速度以下となった位置(減速位置)に相当する。制御部20は、このようにして取得した減速位置が現状の渋滞区間の末尾より前方であるか否かを判定する。
【0031】
ステップS110において、プローブ車両の減速位置が渋滞区間の末尾より前方であると判定された場合、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、プローブ車両の減速位置を保持し、タイマのカウントをスタートする(ステップS125)。タイマは、減速位置の統計値を算出するための標本を収集する時間をカウントする。なお、ステップS125においてタイマが既にカウントを開始している場合、制御部20は、カウントを継続させる。
【0032】
ステップS110において、渋滞末尾より前方であると判定されなかった場合、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、プローブ車両の減速位置を新たな渋滞区間の末尾の位置として更新する(ステップS115)。続いて、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、保持していた渋滞末尾より前方のプローブ車両の減速位置をクリア(破棄)し、タイマをクリアする(ステップS120)。従ってタイマはカウントを停止しカウンタの値は初期化される。
【0033】
図3Bは、ステップS125にてカウントが開始されたタイマが既定期間分の時間をカウントした場合に開始されるタイマ処理のフローチャートである。タイマ処理が開始されると、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、保持していた渋滞末尾より前方の減速位置の中央値を算出する(ステップS200)。すなわち、渋滞末尾更新処理のステップS125にて保持した1以上の減速位置から、その中央値を算出する。
【0034】
続いて、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、中央値を新たな渋滞末尾として更新する(ステップS205)。続いて、制御部20は、渋滞末尾更新部21cの機能により、保持していた渋滞末尾より前方の減速位置をクリア(破棄)し、タイマをクリアする(ステップS210)。従ってタイマはカウントを停止しカウンタの値は初期化される。
【0035】
(2)第2実施形態:
第2実施形態において、渋滞末尾更新部21cの機能により、制御部20は、渋滞区間の末尾の位置よりも後方(渋滞区間長が長くなる側)の減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を後方側に更新し、渋滞区間の末尾の位置よりも前方(渋滞区間長が短くなる側)の減速位置に基づいて、渋滞区間の末尾の位置を前方側に更新する。その場合に、制御部20は、渋滞区間の末尾を更新するために用いる減速位置の個数を、渋滞区間の末尾の位置より前方側(渋滞区間長が短くなる側)に更新する場合の方が後方側(渋滞区間長が長くなる側)に更新する場合よりも多い個数とする。
【0036】
従って第2実施形態においても、現状の渋滞末尾より前方側へ渋滞末尾を更新することは、現状の渋滞末尾の後方側へ渋滞末尾を更新することよりも実施されにくく、渋滞区間長が短くなる側(前方側)においては、小刻みな伸縮による一時的な渋滞長の短縮は交通情報として反映されにくい。そのため、実際には渋滞区間長が伸張傾向である場合に渋滞区間長が短縮傾向であるとユーザに誤認されにくい。従って第2実施形態においても、渋滞区間長の伸縮傾向をユーザが把握しやすい交通情報を生成できる可能性を高めることができる。
【0037】
図4を参照しながら、第2実施形態にかかる渋滞末尾更新処理を説明する。渋滞末尾更新処理は最新のプローブ情報を取得したことに応じて実行される。図4に示す第2実施形態の渋滞末尾更新処理において、ステップS300からS315は、第1実施形態の渋滞末尾更新処理のステップS100からS115と同一の処理である。第2実施形態の渋滞末尾更新処理では、ステップS310においてプローブ車両の位置が渋滞末尾よりも前方(渋滞区間長が短くなる側)であると判定された場合、制御部20は、プローブ車両の減速位置を保持し、カウンタをインクリメントする(ステップS325)。当該カウンタは渋滞末尾より前方の減速位置の個数をカウントするための変数である。
【0038】
続いて、制御部20は、カウンタの値が既定数以上であるか否かを判定し(ステップS330)、既定数以上でない場合、渋滞末尾更新処理を終了する。ステップ330にてカウンタの値が既定数以上であると判定された場合、制御部20は、保持していた全ての減速位置の内、新しい方から既定数分の減速位置の中央値を算出し、中央値を渋滞末尾として更新する(ステップS335)。ステップS335を実行後、または、ステップS315を実行後、制御部20はステップS320を実行する。ステップS320では、制御部20は、保持していた渋滞末尾より前方の減速位置をクリア(破棄)し、カウンタの値をクリア(初期化)する。
【0039】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、交通情報生成システムは、複数の装置によって実現されてもよい。交通情報生成システムの一部の機能がクラウドサーバや車載システムで実現されてもよい。上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0040】
渋滞区間取得部は、渋滞区間を取得できれば良い。プローブ情報に基づいて渋滞区間を取得する構成であってもよいし、VICS(登録商標)等の他の機関が生成した渋滞区間の情報を取得する構成であってもよい。
【0041】
プローブ車両から送信されるプローブ情報は、車両位置と車速とを示す情報が含まれていれば良い。例えば直接的に車速の情報が含まれていても良いし、交通情報生成システムが、複数時刻にそれぞれ取得された車両位置が示すプローブ車両の移動履歴に基づいて車速を算出する構成でもよい。
【0042】
渋滞末尾更新部は、プローブ情報に基づいて、車速が既定速度以下となったプローブ車両の車両位置である減速位置を取得し、減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を更新することができればよく、渋滞区間の末尾を更新するために用いられる減速位置を収集する期間は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも長ければよい。例えば、渋滞末尾更新部は、まず第1期間にプローブ情報を収集し、第1期間内に収集したプローブ情報に基づいて減速位置の統計値である第1統計値を取得する。渋滞末尾更新部は、第1統計値が、渋滞末尾より後方側(渋滞区間長が長くなる側)なら第1統計値の位置に渋滞末尾を更新する。第1統計値が渋滞末尾より前方側(渋滞区間長が短くなる側)の場合、渋滞末尾更新部は、第1期間に続いてさらにプローブ情報の収集を行い、第1期間を含む第2期間内に取得した減速位置の統計値である第2統計値を取得する。渋滞末尾更新部は、第2統計値が渋滞末尾より前方側なら第2統計値の位置に渋滞末尾を更新する。第1期間や第2期間に取得された減速位置には、渋滞末尾の前方側の減速位置と後方側の減速位置が混在していてもよい。
【0043】
また渋滞末尾更新部は、減速位置に基づいて渋滞区間の末尾の位置を更新することができればよく、渋滞区間の末尾を更新するために用いられる減速位置の個数は、渋滞区間長が短くなる側に更新する場合の方が長くなる側に更新する場合よりも多ければよい。例えば、渋滞末尾更新部は、第1個数の減速位置を取得すると、第1個数の減速位置から第1統計値を取得し、第1統計値が渋滞末尾の後方側なら第1統計値の位置に渋滞末尾を更新する。渋滞末尾更新部は、第1統計値が前方側の場合、続けてさらにプローブ情報の収集を行い、第1個数の減速位置を含めた第2個数の減速位置を取得する。渋滞末尾更新部は、第2個数の減速位置の統計値である第2統計値を取得し、第2統計値が前方側であれば、第2統計値の位置に渋滞末尾を更新する。第1個数の減速位置や第2個数の減速位置には、渋滞末尾より前方側の減速位置と後方側の減速位置が混在していてもよい。
【0044】
また、渋滞末尾更新部において、現状の渋滞末尾より前方側に渋滞末尾の位置を更新する条件は、既定数分の前方側の減速位置が取得されたことか、又は、既定期間にて前方側の減速位置が取得された場合のいずれかの条件を満たしたことであってもよい。図5を参照しながら、この2条件のいずれかを満たす場合に前方側に渋滞末尾を更新する渋滞末尾更新処理を説明する。図5に示す渋滞末尾更新処理において、ステップS400からS415は、第2実施形態の渋滞末尾更新処理のステップS300からS315と同一の処理であり、ステップS430からS435はステップS330からS335と同一の処理である。図5の渋滞末尾更新処理のステップS425では、第2実施形態におけるS325での処理に加えて、タイマをスタート(既にスタートしている場合はカウント継続)させる処理が実行される。また、図5の渋滞末尾更新処理のステップS420では、カウンタのクリアに加えてタイマをクリアする処理が実行される。また、タイマが既定期間分をカウントした場合に、図3Bに示すタイマ処理が実行される。このため、減速位置が渋滞末尾より後方である場合は、直ちに当該減速位置で渋滞末尾が更新される。減速位置が渋滞末尾より前方である場合は、既定数又は既定期間の2条件のいずれかを満たすまで渋滞末尾より前方の既定数の減速位置を取得し、これら2条件のいずれかを満たした場合に渋滞末尾より前方の減速位置の中央値で渋滞末尾が更新されることとなる。
【0045】
また、本発明は、一般道における渋滞区間の末尾を更新する場合に限定されず、例えば高速道路等における渋滞区間の末尾を更新する場合にも適用できる。また、一般道においても渋滞区間の前方の交差点に信号が設置されている道路や設置されていない道路等、様々な道路において適用可能である。渋滞区間の末尾を更新するための減速位置を収集する期間(既定期間)は、道路属性に応じて異なる構成を採用してもよい。例えば、高速道路は一般道路と比較して、渋滞区間長の伸縮の変化が緩やかであることが分かっている場合、高速道路での収集期間(既定期間)は、一般道路での収集期間よりも長い期間としてもよい。また、渋滞区間の前方の交差点の信号の有無や、また、渋滞区間の末尾の位置を更新する道路と前方で交差する道路との規模の差から、渋滞区間長の伸縮の変化速度が異なる場合、伸縮の変化速度に応じて収集期間(既定期間)の長さを設定してもよい。
【0046】
さらに、本発明は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0047】
10…交通情報生成システム、20…制御部、21…交通情報生成プログラム、21a…渋滞区間取得部、21b…プローブ情報取得、21c…渋滞末尾更新部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…プローブ情報、40…通信部、100…車載システム、120…制御部、121…プローブ情報送信プログラム、130…記録媒体、130a…地図情報、141…GNSS受信部、142…車速センサ、143…ジャイロセンサ、144…ユーザI/F部、145…通信部、C…プローブ車両、C…プローブ車両、C…プローブ車両
図1
図2
図3
図4
図5