(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101949
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
F25B1/00 391
F25B1/00 351B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216371
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正二郎
(57)【要約】
【課題】コストアップを招くことなく液バック現象を防止することができ、圧縮機における故障のリスクを低減することができる冷凍装置を提供する。
【解決手段】冷媒回路11のうち凝縮器30と蒸発器40との間の回路途中を開閉する電磁弁13と、電磁弁13の開閉の切り替えを制御する調節計141と、を備える。調節計141は、運転の停止時に電磁弁13を通常の開状態から閉状態に切り替え、前記運転の停止時から所定時間の経過に基づき前記圧縮機20の運転を停止して、電磁弁13より下流側の冷媒回路11中の冷媒を回収する制御を実行可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路に、圧縮機、凝縮器、および蒸発器が少なくとも順に接続された冷凍装置において、
前記冷媒回路のうち前記凝縮器と前記蒸発器との間の回路途中を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁の開閉の切り替えを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、運転の停止時に前記開閉弁を通常の開状態から閉状態に切り替え、前記運転の停止時から所定時間の経過に基づき前記圧縮機の運転を停止して、前記開閉弁より下流側の前記冷媒回路中の冷媒を回収する制御を実行可能であることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記所定時間を計測する後付け可能なタイマーを備えたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記所定時間は、前記冷媒回路の長さに応じて予め設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記冷媒回路は、前記圧縮機から吐出された冷媒が前記凝縮器を経由せずに前記蒸発器に至るバイパス経路を備え、
前記制御手段は、前記圧縮機の圧縮能力が予め定めた設定値以下の低負荷運転となり、かつ前記低負荷運転が連続して特定時間以上となった場合に、周囲空気の温度制御精度を一定範囲内に保つ条件下で、前記バイパス経路を通じて前記圧縮機から冷媒が前記蒸発器に導入される制御を実行可能であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を循環させる冷媒回路に、圧縮機、凝縮器、および蒸発器が少なくとも順に接続された冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度を下げるための冷凍装置は、様々な分野で用いられている。例えば、植物を育成する生物環境調節装置では、植物を収納する室内の温度を任意に制御できるように構成され、ここでの温度制御にも冷凍装置が用いられている。すなわち、冷凍装置を運転すると、冷媒が冷媒回路における圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器と順に循環し、蒸発器で室内空気は熱を奪われ冷却されていた。
【0003】
このような冷凍装置では、運転開始時に圧縮機に液相の冷媒が吸入される液バック現象が生じると、圧縮機が液圧縮による過負荷が生じて故障する虞がある。従って、圧縮機が液バック現象によって故障しないように、冷媒回路に残った冷媒を回収するための対策が必要であった。
【0004】
冷媒回収の公知の方法として、例えば、圧縮機を停止させる前に、冷媒回路中の電磁弁を閉じて冷媒を回収し、圧縮機の低圧側が所定の圧力まで下がった時点で圧縮機を停止させるいわゆるポンプダウン制御を行う装置が知られている(特許文献1参照)。かかる装置では、圧力センサにより冷媒圧力を監視して冷媒の回収を検知していた。
【0005】
また、別の冷媒回収の公知の方法として、冷媒回路に残る冷媒を冷媒タンク内に回収する冷媒回収運転を行い、タイマーの計測時間に基づき冷媒回収運転を終了する装置も知られている(特許文献2参照)。かかる装置では、冷媒回路に冷媒タンクを設けるために、メインの回路とは別に特別な冷媒タンク回路と開閉弁や減圧弁を付加する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-222272号公報
【特許文献2】特許6463491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の装置では、圧力センサの付加がコストアップの要因となるという問題があった。また、上記の特許文献2に記載の装置では、圧力センサではなくタイマーを付加したとしても、冷媒タンクとそのための特別な回路を付加しなければならず、なおさら構成が複雑でコストが嵩むことになる。
【0008】
なお、特許文献2に記載のタイマーが計測する時間は、冷媒タンク回路の弁開閉と冷媒の飽和温度の変化より導かれる係数である。このタイマーが計測する時間は、特許文献1に記載の圧力センサが監視する冷媒圧力とは何の因果関係もない。よって、前記圧力センサの代わりに前記タイマーを利用するという発想に至ることは、当業者といえども困難である。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、コストアップを招くことなく液バック現象を防止することができ、圧縮機における故障のリスクを低減することができる冷凍装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
冷媒を循環させる冷媒回路に、圧縮機、凝縮器、および蒸発器が少なくとも順に接続された冷凍装置において、
前記冷媒回路のうち前記凝縮器と前記蒸発器との間の回路途中を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁の開閉の切り替えを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、運転の停止時に前記開閉弁を通常の開状態から閉状態に切り替え、前記運転の停止時から所定時間の経過に基づき前記圧縮機の運転を停止して、前記開閉弁より下流側の前記冷媒回路中の冷媒を回収する制御を実行可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷凍装置によれば、コストアップを招くことなく液バック現象を防止することができ、圧縮機における故障のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷凍装置を概略的に示す構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷凍装置を備えた生物環境調節装置を概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る冷凍装置10は、冷媒を循環させる冷媒回路11に、圧縮機20、凝縮器30、および蒸発器40が少なくとも順に接続されている。本冷凍装置10は、様々な分野で用いられるものであるが、本実施形態では、生物環境調節装置100に適用した場合を例に説明する。
【0014】
<生物環境調節装置100の概要>
先ず、生物環境調節装置100は、生物の育成に影響を与える温度、湿度、風速、光等の環境要因を高精度に制御して、様々な環境条件を再現する装置である。
図2に示すように、生物環境調節装置100は、本体101の内部が、育成対象である植物等を収納する実験室102と、空気の温度や湿度を調整する制御室103とに区画されている。制御室103で温度等が調整された空気は、実験室102の床下へ導かれて実験室102内に送られ、天井側まで循環して制御室103に戻るように構成されている。
【0015】
制御室103には、実験室102内へ送る空気を冷却するものとして、本発明の根幹をなす冷凍装置10(の一部)の他、空気を加熱するヒータ110と、空気を循環させる送風機120等が配設されている。生物環境調節装置100では、空気の冷却は冷凍装置10により行われ、空気の加熱はヒータ110により行われる。ここでヒータ110は、一般の電気ヒータからなる。制御室103と連通した実験室102の床下には、空気の湿度を調整するための加湿器130が配設されている。また、実験室102の天井側には、図示省略したが自然光(太陽光)を採光するための窓、あるいは人工光源として蛍光灯やメタルハライドランプ等が設けられている。
【0016】
生物環境調節装置100の本体101の外部には、冷凍装置10のうちいわゆる冷凍機に相当する圧縮機20と凝縮器30とが室外機10aとして配設されている。また、冷凍装置10のうち蒸発器40は、ヒータ110や送風機120と共にユニット化されて制御室103に配設され、これらをまとめて空気調和機10bとも称している。さらに、冷凍装置10、ヒータ110、送風機120、加湿器130、それに人工光源等の作動を電気的に制御する制御盤140が、本体101の外部に配設されている。なお、本体101の内部には、図示省略したが適所に温度や湿度を検知するセンサが配設されている。
【0017】
制御盤140は、一般的な構成のものであり、
図1に示すように、調節計141と、パルスコンバータ142と、ソリッドステートリレー143と、タイマー144と、を少なくとも備えている。調節計141は、実験室102内の測定温度(センサ信号)と設定温度に基づき、測定温度を設定温度に近づけるように、冷凍装置10とヒータ110の出力を制御するものである。
【0018】
調節計141は、具体的には例えば、マイクロコンピュータ、I/O、制御プログラムを格納したプログラムメモリ、作業用のメモリ等を備え、マイクロコンピュータが制御プログラムに従って所定の自動制御を行う構成である。ここで調節計141は、本発明の「制御手段」の一例であり、生物環境調節装置100全体のみならず、冷凍装置10自体の制御手段を構成するものである。なお、調節計141は、一つのユニット構成とは限らず、複数に分散されていても良い。なお、温度制御の詳細については後述する。
【0019】
パルスコンバータ142は、アナログ信号をパルス信号に変換するものであり、前記調節計141からの冷却信号に基づいて冷凍装置10の運転を制御する。ソリッドステートリレー143は、半導体を使用した無接点リレーであり、前記調節計141からの加熱信号に基づいてヒータ110の作動を制御する。
【0020】
タイマー144は、後述するが冷凍装置10の運転の停止時に、当該停止時から所定時間の経過を計測するものである。また、タイマー144は、後述するが圧縮機20の圧縮能力が予め定めた設定値より低い低負荷運転となった場合に、この低負荷運転の時間を計測するものでもある。ここでタイマー144は、本発明の「タイマー」の一例であり、本実施形態では制御盤140に後付けされているが、例えば調節計141の機能の一部として予め備わるものであっても良い。
【0021】
<冷凍装置10の詳細>
図1に示すように、冷凍装置10は、冷媒を循環させる冷媒回路11に、圧縮機20から凝縮器30を経由して蒸発器40に至るメインの回路の他、凝縮器30を経由せずに蒸発器40に至るバイパス経路を備えている。ここでバイパス経路は、圧縮機20から吐出された高温高圧の気相のガス冷媒(以下「ホットガス」とも称する)を、凝縮器30で放熱させることなく、蒸発器40に直接的に導入するものであり、以下、ホットガスバイパス経路12とする。なお、冷媒は、圧縮による液化(放熱)、気化(吸熱)を繰り返すものであり、従来のフロンに代わるものの開発が進められている。
【0022】
圧縮機20は、低温低圧のガス冷媒を機械的に圧縮し、高温高圧のガス冷媒にするものである。本実施形態に係る圧縮機20は、特に冷媒の圧縮能力が可変制御されるものであり、具体的には例えば、電動機の回転数をインバータ制御することで運転容量を制御することができるインバータ式のものが採用されている。インバータ式の圧縮機20では、電動機の回転数を無段階に制御することができ、冷凍負荷に応じた運転制御によって冷媒量を調整することができ、従来の定速式冷凍装置のものに比べて省エネ効果が優れている。
【0023】
図1において、圧縮機20には、その低圧側(吸入側)にある入口から、冷媒回路11を介して後述する蒸発器40を経た低温低圧のガス冷媒が吸入される。一方、圧縮機20で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、圧縮機20の高圧側(吐出側)にある出口から、同じ室外機10a内の凝縮器30へ送られる。また、圧縮機20の入口の手前には、後述する吸入圧力調整弁15が配設されているが、必ずしも必要な構成ではない。
【0024】
凝縮器30は、前記圧縮機20から吐出された高温高圧のガス冷媒を受け入れ放熱させて凝縮し、中温高圧の液相の冷媒(以下「液体冷媒」と称する)にするものである。凝縮器30は、圧縮機20と共に室外機10aとして本体101の外部に配設されており、高温高圧のガス冷媒から熱を外気へ放出させるように構成されている。
【0025】
凝縮器30から蒸発器40に至る冷媒回路11の途中には、上流側から順に電磁弁13と膨張弁14が設けられている。電磁弁13は、電気的な制御によって冷媒回路11の途中を開閉可能な弁であり、開状態と閉状態に切り替え可能に構成されている。電磁弁13は、通常の運転時には開状態に維持されるが、閉状態に切り替えられると、凝縮器30から蒸発器40への冷媒の流れを遮断する。ここで電磁弁13は、本発明の「開閉弁」の一例である。
【0026】
膨張弁14は、前記凝縮器30で放熱された中温高圧の液体冷媒を、より低い温度で蒸発できるように膨張させて、低温低圧の液体冷媒にするものである。膨張弁14は、具体的には例えば、その絞り開度をパルスコンバータ142によって連続的に調整可能な電子膨張弁が適している。
【0027】
蒸発器40は、前記膨張弁14を経由してきた低温低圧の液体冷媒と周囲空気との間で熱交換を行うものである。蒸発器40は、後述のヒータ110と共に空気調和機10bとして本体101内部の制御室103に配設されている。蒸発器40では、低温低圧の液体冷媒が吸熱し、低温低圧のガス冷媒になる一方、制御室103内の周囲空気は冷媒の蒸発に必要な熱を奪われて冷却される。
【0028】
蒸発器40から圧縮機20に戻る冷媒回路11において、圧縮機20の入口手前には吸入圧力調整弁15が設けられている。吸入圧力調整弁15は、圧縮機20の吸込圧力を一定値(設定値)以上に上昇させないための弁である。かかる吸入圧力調整弁15は、圧縮機20の電動機の過負荷を防止する目的で使用される。
【0029】
ホットガスバイパス経路12は、前述したように圧縮機20から吐出された高温高圧のガス冷媒を凝縮器30を経由させず、蒸発器40に直接的に導入するものである。以下、ホットガスバイパス経路12を通過させる高温高圧のガス冷媒は、ホットガスと称する。ホットガスバイパス経路12の入口側は、圧縮機20の出口側に接続されている。一方、ホットガスバイパス経路12の出口側は、冷媒回路11における膨張弁14と蒸発器40との間に接続されている。
【0030】
ホットガスバイパス経路12には、その途中を開閉可能な開閉弁として電磁弁17が設けられている。電磁弁17は、前述した電磁弁13と同様に電気的な制御によって開閉可能なものであり、電磁弁17を開くことで、ホットガスバイパス経路12を通じてホットガスが蒸発器40に導入されるように構成されている。また、ホットガスバイパス経路12には、前記電磁弁17より上流側に、ホットガスの流量を調整可能な流量調整弁16が設けられている。
【0031】
流量調整弁16は、その絞り開度を変えることで、ホットガスの流量を無段階に調整できるように構成されており、圧力(負荷)や温度の変化に関わりなく、設定された流量は一定となる。この流量調整弁16の調整によって、前記電磁弁17を経由して蒸発器40に流れるホットガスの流量を調整することができる。ホットガスバイパス経路12と、流量調整弁16および電磁弁17は、後述するように冷媒中のオイルを圧縮機20に戻すことを目的に使用されるが、蒸発器40における冷却能力を低減(調整)するための手段としても用いることもできる。
【0032】
以上の冷凍装置10の運転は、制御盤140にある調節計141によって制御される。ここで調節計141は、圧縮機20を作動させて冷媒回路11中の冷媒を循環させる通常の運転の他、液バック防止制御と、オイルバック制御と、それぞれを実行可能に設定されている。なお、液バック防止制御の実行により、オイルバック制御を省いたり、あるいはその実行時間を短縮することも考えられる。
【0033】
液バック防止制御は、詳しくは後述するが、冷凍装置10の運転の停止時に電磁弁13を通常の開状態から閉状態に切り替え、前記運転の停止時から所定時間の経過に基づき圧縮機20の運転を停止して、電磁弁13より下流側の冷媒回路11中の冷媒を圧縮機20へ回収する制御である。この液バック防止制御は、液バック現象を防止することにより、圧縮機20の運転開始時における故障のリスクを低減することを目的とする。なお、液バック防止制御は、従来のポンプダウン制御の一種とも考えられるが、明確に区別するために、以下「ポンプダウト制御」とも称する。ここでのダウトは「嘘」の意味ではない。
【0034】
また、オイルバック制御も、詳しくは後述するが、圧縮機20の圧縮能力が予め定めた設定値以下の低負荷運転となり、かつ低負荷運転が連続して特定時間以上となった場合に、周囲空気の温度制御精度を一定範囲内に保つ条件下で、バイパス経路12を通じて圧縮機20から冷媒を蒸発器40に導入する制御である。このオイルバック制御は、冷媒回路11中のオイル(圧縮機20の潤滑油)を圧縮機20に戻すだけでなく、このとき冷却過多となる事態を未然に防ぐことを目的とする。
【0035】
<冷凍装置10の作用>
次に、冷凍装置10の制御を含む作用について説明する。
図1において、冷凍装置10の通常の運転時には、冷媒回路11における電磁弁13は開いている。かかる状態で、圧縮機20から吐出された高温高圧のガス冷媒は、先ず凝縮器30に送られて放熱される。凝縮器30から蒸発器40へ至る冷媒回路11の途中には、膨張弁14があるから、凝縮器30で放熱された中温高圧の液体冷媒は、膨張弁14により、さらに低い温度で蒸発できる低温低圧の液体冷媒となって蒸発器40へ送られる。
【0036】
膨張弁14は、その絞り開度を連続的に調整することができる。そのため、蒸発器40に流れる低温低圧の液体冷媒の流量を任意に調整することができ、蒸発器40における冷却能力をより広い範囲で制御することが可能となる。このとき、ホットガスバイパス経路12における電磁弁17は閉じており、圧縮機20から吐出されたホットガスが蒸発器40に供給されることはない。
【0037】
蒸発器40では、放熱ないし膨張された低温低圧の液体冷媒が周囲空気から吸熱して、低温低圧のガス冷媒となる。ここでの熱交換により、制御室103の周囲空気は冷媒の蒸発に必要な熱を奪われて冷却される。圧縮機20では、前述したインバータ制御により冷媒の圧縮能力が無段階に可変であり、しかも、膨張弁14の制御も相俟って、冷媒回路11を流れる冷媒の循環量が正確に調整され、周囲空気の高精度な温度制御を行うことができる。圧縮機20における圧縮能力は、冷却負荷に応じて調整される。なお、蒸発器40でガス化した低温低圧の冷媒は、冷媒回路11を通って圧縮機20に戻り、前述した圧縮→凝縮→膨張→蒸発の冷凍サイクルが繰り返される。
【0038】
<<ポンプダウト制御>>
冷凍装置10では、冷媒回路11にガス冷媒が未だ残っている状態で圧縮機20を停止させると、再起動時に冷媒回路11中に残っていた冷媒が液化した状態で圧縮機20に吸入される。このように、液相の冷媒が圧縮機20の低圧側に吸入される液バック現象が生じると、圧縮機20が液圧縮による過負荷が生じて故障する虞がある。特に冷媒回路11の配管全長が長い場合には問題となる。従って、冷凍装置10の運転の停止時には、冷媒回路11中の冷媒を、例えば圧縮機20の入口手前に装備されたアキュームレータ等に回収して、冷媒回路11に冷媒が残らないようにして停止することが重要となる。
【0039】
本冷凍装置10では、運転の停止が指示されると(運転停止の信号出力)、調節計141の制御により、電磁弁13が通常の開状態から閉状態に切り替わり、冷媒回路11の途中が閉鎖される。このとき、ホットガスバイパス経路12にある電磁弁17は、通常通り閉状態に維持されている。また、電磁弁13の閉状態への切り替えと共に、調節計141の制御により、圧縮機20は直ぐ停止することなく、所定時間に亘り運転が継続される。これにより、冷媒回路11にて電磁弁13より下流側に残っていた冷媒は、圧縮機20の運転継続に伴って回収される。
【0040】
このような冷凍装置10の運転停止時に冷媒を回収するポンプダウト制御は、所定時間に亘って実行されるが、かかる時間はタイマー144によって計測される。ここで所定時間は、例えば冷媒回路11の長さに応じて予め設定される。発明者らは数々の実験を行った結果、冷媒回路11において、例えば電磁弁13から圧縮機20に至る部分の長さが20mの場合に、冷媒の流速が0.5~1.5m/s(0.75m/sが推奨流速)の範囲内では、前記所定時間として27秒が最適であることを検証した。すなわち、前記条件下では、所定時間が27秒未満であれば、冷媒の回収が不十分となり、逆に所定時間が27秒を超えれば、圧縮機20の無駄な稼働となる。
【0041】
上記の検証を基に、発明者らがさらにシミュレーションを行った結果、理論値として例えば、冷媒回路11において電磁弁13から圧縮機20に至る部分の長さが10mの場合に、冷媒の流速が0.5~1.5m/s(0.75m/sが推奨流速)の範囲内では、前記所定時間として13.3秒が最適であることが判明した。同様に、冷媒回路11において電磁弁13から圧縮機20に至る部分の長さが5mの場合に、冷媒の流速が0.5~1.5m/s(0.75m/sが推奨流速)の範囲内では、前記所定時間として6.67秒が最適であることが判明した。これらの結果より、ポンプダウト制御に最適な所要時間は、概ね冷媒回路11の長さに比例することが確かめられた。
【0042】
以上のように、本冷凍装置10のポンプダウト制御では、従来のポンプダウン制御のように、圧力センサにより冷媒圧力を監視し回収を検知する必要はなく、圧力センサの取り付けによるコストアップを招くことはない。本冷凍装置10では、比較的な安価なタイマーによる時間計測だけで、冷凍装置10の運転停止時における圧縮機20の遅延動作中に、確実かつ容易に冷媒を回収することができる。これにより、冷凍装置10の運転の停止時に、圧縮機20の低圧側に液バックが生じることを確実に防止して、圧縮機20の故障を防ぎ、圧縮機20の保護とスムーズな再起動を図ることができる。
【0043】
<<オイルバック制御>>
また、冷凍装置10で冷却負荷が減少すると、圧縮機20はインバータ制御により電動機の回転数が低くなる。圧縮機20の電動機が低回転で連続運転し続けると、冷凍サイクル内を循環する冷媒中に混在しているオイルの戻りが悪くなり、蒸発器40内にオイルが滞留する等して圧縮機20内のオイル不足が想定される。そこで、本冷凍装置10では、圧縮機20の圧縮能力が予め定めた設定値より低い低負荷運転となり、かつ低負荷運転が連続して所定時間以上となった場合に、ホットガスバイパス経路12を通じてホットガスを圧縮機20から蒸発器40に導入する制御を行う。
【0044】
冷凍装置10において、冷却負荷の変化(多い・少ない)の判断は、例えば圧縮機20におけるガス冷媒の吸込圧力が高いと負荷が多いと判断し、冷凍装置10の出力を上げ、圧縮機20の回転数が高くなり冷媒の循環量が増す。一方、ガス冷媒の吸込圧力が低いと負荷が少ないと判断し、冷凍装置10の出力を下げ、圧縮機20の回転数が低くなり冷媒の循環量が減る。高温高圧のガス冷媒であるホットガスが蒸発器40に導入されると、吸入圧力が上昇することから擬似的に負荷が増えることになる。なお、ガス冷媒の吸込圧力の監視には、特別な圧力センサの別途設けることなく、例えば圧縮機20に標準的に備わるセンサがあれば、これを用いると良い。
【0045】
圧縮機20の低負荷運転とは、圧縮機20の運転周波数(圧縮能力)が予め定めた設定値である例えば45Hz以下の状態である。圧縮機20の運転周波数は、直接検知することはできないので、調節計141における加熱冷却制御の操作量(出力内部演算値)と圧縮機20の運転周波数とが比例関係にあると仮定して割り出している。かかる比例関係に基づいて、加熱冷却制御の操作量(出力内部演算値)の値が35%以上の場合に、運転周波数が45Hz以下と仮定している。本実施形態では、加熱冷却制御の操作量(出力内部演算値)が35%以上となった場合に低負荷運転とみなして、タイマー144により時間の計測を開始する。
【0046】
タイマー144による計測時間は積算され、低負荷運転が連続して所定時間である例えば50分を超えるか否かを監視する。このような具体的な計測に基づいて、調節計141はホットガスによる擬似負荷を与えるタイミングを判断する。そして、ホットガスバイパス経路12にある電磁弁17を開けて、ホットガスを蒸発器40に導入する制御を行う。このとき、流量調整弁16は、予め定めた所定の絞り開度に調整されている。なお、調節計141の操作量が35%未満となった場合には、タイマー144による計測時間は0分にリセットされる。
【0047】
以上のように、圧縮機20から吐出されたホットガスを、ホットガスバイパス経路12を通じて蒸発器40に導入することにより、蒸発器40内の冷媒流量が増大するだけでなく、擬似負荷により圧縮機20の回転数も一時的に上がって高負荷となるため、いっそう冷媒流量が増大する。従って、蒸発器40内に滞留していたオイルを、加熱による流動性の増大も相俟って、冷媒により圧縮機20まで戻すことができる。これにより、圧縮機20におけるオイル不足は解消され、焼き付け等の不具合が生じる虞はない。
【0048】
本冷凍装置10では、ホットガスバイパス経路12に、その途中を開閉可能な電磁弁17を設けたから、電磁弁17を開くことにより、ホットガスバイパス経路12を通じてホットガスが蒸発器40に導入される。このような簡易な構成により、圧縮機20から蒸発器40へホットガスを容易に供給することができる。ここでホットガスバイパス経路12の出口側は、冷媒回路11にて膨張弁14と蒸発器40との間の途中に接続されるため、膨張弁14での冷媒の流れ(流量制御)に影響を及ぼすことなく、ホットガスを蒸発器40に供給することができる。また、既存の蒸発器40自体は何ら改造する必要がなく、ホットガスバイパス経路12を設ける配管作業も容易に行うことができる。
【0049】
ホットガスバイパス経路12を通じて、圧縮機20からホットガスを蒸発器40に導入する具体的な態様は、蒸発器40における周囲空気の温度制御精度を一定範囲内に保つ条件下に制御される。すなわち、ホットガスが蒸発器40に導入されると、圧縮機20の圧縮能力が一時的に高まるが、このときの圧縮機20の圧縮能力の変化に起因して温度制御精度が一定範囲を超えて乱れない程度に、ホットガスバイパス経路12を通じてのガス冷媒の供給量や速度ないし時間等が設定される。
【0050】
このような温度制御精度を一定範囲内に保つ条件下での制御とは、具体的には例えば、ホットガスバイパス経路12にある電磁弁17を、1回のみ15秒間の短時間だけ開けることが該当する。かかる電磁弁17の制御により、冷凍装置10の本来の温度制御精度の範囲である±0.5℃に対して、一定範囲内である例えば±1.0℃に精度の乱れが収まることが発明者らの実験により検証されている。
【0051】
要するに、冷凍装置10の設計仕様で既に定められた温度制御精度の範囲に対して、ホットガス導入による温度制御の乱れが予め定めた一定範囲内に収まるように、ホットガスバイパス経路12を通じてのホットガスの供給量や速度ないし時間等を具体的に設定する。この設定した条件を満たすように、電磁弁17の具体的な開閉態様が制御される。ここで温度制御の乱れを許容する一定範囲については、例えば、一般のオイルバック運転との比較において、オイルバック運転による温度制御の乱れよりも小さい範囲内に定めると良い。
【0052】
具体的には例えば、本冷凍装置10と同じ設計仕様の冷凍装置において、圧縮機の運転周波数が45Hz以下の状態となった場合に、運転周波数をそのままの状態から、あるいは一旦下げた状態から+10Hz上げるオイルバック運転を90秒間実施した場合に、設定温度15℃に対して、測定温度が15.0℃→上昇→最高17.0℃→下降→15.0℃→下降→最低13.8℃→15.0℃に戻る結果であった場合、温度制御精度は+2.0℃~-1.2℃の範囲で乱高下したことになる。
【0053】
従って、本冷凍装置10におけるホットガスの導入の制御は、前述したオイルバック運転の場合の温度制御精度の+2.0℃~-1.2℃よりも小さな値となるように行うと良い。具体的には前述したように、ホットガスバイパス経路12の電磁弁17を、1回のみ15秒間の短時間だけ開ける制御により、設定温度15℃に対して、測定温度が15.0℃→上昇→16.0℃→15.0℃に戻る結果となり、温度制御精度は+1.0℃のみに収まることが発明者らの実験により検証された。
【0054】
このとき、ホットガスバイパス経路12における流量調整弁16は、所定の絞り開度に設定されているが、前述した電磁弁17の開閉だけでなく、流量調整弁16によりホットガスの流量も併せて調整することができる。これにより、前記電磁弁17の具体的な開閉態様と併せて、流量調整弁16も細かく調整することにより、いっそう正確に温度制御精度を一定範囲内に保つための調整が可能となる。
【0055】
以上のように、本冷凍装置10によれば、圧縮機20の可変制御により省エネ実現とコスト低減を可能とした上で、蒸発器40内に滞留していた冷媒中のオイルを圧縮機20に戻す際に冷却過多となる事態を未然に防ぐことができ、常に高い温度制御精度を実現することができる。また、圧縮機20が単に低負荷運転になっただけではなく、その積算時間を監視することにより、ホットガスの導入の頻度が抑えられるため、無駄なエネルギー消費を低減するだけでなく、頻繁に温度制御精度の乱れが生じる事態も防ぐことができる。
【0056】
ところで、前記膨張弁14は、その絞り開度を調整可能なものであるが、ホットガスバイパス経路12を通じてホットガスが蒸発器40に導入された際、前述した温度制御精度より優先して、前記膨張弁14の開度を全開とする制御も実行するように構成しても良い。これにより、冷媒回路11におけるメインの経路からも、より多くの冷媒を蒸発器40に流すことができ、蒸発器40内に滞留していたオイルをいっそう確実に圧縮機20まで戻すことができる。
【0057】
このように、膨張弁14を全開にする制御は、例えば、その全開時間をホットガスを供給している電磁弁17の開き時間に一致させるか、あるいは、さらに短い時間に限定する等して、温度制御精度の一時的な乱れをなるべく最小限に抑えるように設定すると良い。ここで発明者らは、前述したホットガスバイパス経路12の電磁弁17を1回のみ15秒間の短時間だけ開ける制御に併せて、膨張弁14の絞り開度を、初期値(最小値)である38%開いた状態から100%開いた全開にする実験も行った。
【0058】
かかる実験結果によれば、設定温度15℃に対して、測定温度は15.0℃→下降→9.3℃→15.0℃に戻る結果となり、温度制御精度は-5.7℃となることが検証された。この温度制御の乱れは、前述した膨張弁14の絞り開度が初期値(最小値)であるときの実験結果である-1.0℃を超えるものである。ここで温度制御の乱れの上限値を予め定めておき、上限値以下に抑えるように、例えば、膨張弁14の全開時間をもっと短くする等の制御を行うことも考えられる。
【0059】
また、本冷凍装置10は、例えば、通常のオイルバック運転を行う設計仕様の既存の冷凍装置を利用して構成すれば、冷凍装置10のイニシャルコストを低減することができる。この場合、利用する冷凍装置における既存のオイルバック運転に関する制御はそのまま残したとしても、前述したホットガスの導入が実行される条件を、通常のオイルバック運転が実行される条件よりも低く設定すれば良い。これにより、オイルバック運転を行う条件の成立前にホットガス供給を行うことにより、オイルバック運転を行う条件の成立を回避することができる。
【0060】
<生物環境調節装置100の温度制御>
次に、生物環境調節装置100の温度制御の概要について説明する。
図2において、実験室102に循環させる空気は、制御室103にある冷凍装置10の蒸発器40で冷却され、ヒータ110で加熱されることで、所望の設定温度に高精度に調整される。また、温度が調整された空気は、加湿器130で必要に応じて加湿されてから、実験室102の床下より吹き出される。冷凍装置10の運転の他、ヒータ110等の作動は、前述したように制御盤140の調節計141によって制御される。
【0061】
調節計141では、その比較回路によって、実験室102内の測定温度(センサ信号)と設定温度との偏差の値が算出され、この値に基づき例えばPID演算処理により出力内部演算値(MVTC)が算出される。出力内部演算値(MVTC)とは、測定温度と設定温度との偏差の値に対してPID演算をしている出力%値である。この出力内部演算値(MVTC)が50以上の場合は加熱が必要となり、50未満の場合は冷却が必要となる。出力内部演算値(MVTC)の値に応じて、冷却が必要な場合は冷凍装置10、加熱が必要な場合はヒータ110の出力操作量がそれぞれ制御されて、所望の温度に調整・維持される。なお、出力内部演算値(MVTC)に基づく加熱、冷却が必要となる設定値は可変可能である。
【0062】
冷凍装置10による周囲空気の冷却は、圧縮機20の電動機が制御されると共に、パルスコンバータ142を介して膨張弁14が制御され、蒸発器40に流れる冷媒液量をコントロールすることで行われる。一方、ヒータ110による周囲空気の加熱は、ソリッドステートリレー143を介してヒータ110の出力が制御され、加熱量をコントロールすることで行われる。ここで冷凍装置10における圧縮機20の制御は、従来の定速式冷凍装置におけるON/OFF制御ではなく、インバータ制御により電動機の回転数を無段階に調整することができる。このように、圧縮機20の能力(電動機の回転数)を可変としたことで、最適な温度制御が可能となり無駄な電力の消費を省くことができる。
【0063】
このような生物環境調節装置100の用途は、例えば、植物工場や施設栽培での最適な環境条件を設定するための予備実験を行ったり、様々な環境条件における植物生育の影響を研究したり、人工的に制御する環境条件下での栽培に適する植物の品種改良を検証すること等が挙げられる。従って、生物環境調節装置100では、他の機器に比べてより温度制御精度が非常に重要となり、前述した温度制御方法によって、具体的には例えば、±0.5℃の温度制御精度の範囲に保たれるように設定されている。そのため、特に温度制御の基本となる冷凍装置10の運転の管理が重要となる。
【0064】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0065】
[1]先ず、本発明は、
冷媒を循環させる冷媒回路11に、圧縮機20、凝縮器30、および蒸発器40が少なくとも順に接続された冷凍装置10において、
前記冷媒回路11のうち前記凝縮器30と前記蒸発器40との間の回路途中を開閉する開閉弁13と、
前記開閉弁13の開閉の切り替えを制御する制御手段141と、を備え、
前記制御手段141は、運転の停止時に前記開閉弁13を通常の開状態から閉状態に切り替え、前記運転の停止時から所定時間の経過に基づき前記圧縮機20の運転を停止して、前記開閉弁13より下流側の前記冷媒回路11中の冷媒を回収する制御を実行可能であることを特徴とする。
【0066】
これにより、冷凍装置10の運転の停止時に、圧縮機20に液バック現象が生じることを防止することができ、圧縮機20における故障のリスクを低減することができる。ここで従来のポンプダウン制御のように、圧力センサにより冷媒圧力を監視し回収を検知する必要はなく、圧力センサの取り付けによるコストアップを招くことはない。
【0067】
[2]また、本発明は、
前記所定時間を計測する後付け可能なタイマー144を備えたことを特徴とする。
これにより、タイマー144は、後から容易に組み込むことができる。
【0068】
[3]また、本発明では、
前記所定時間は、前記冷媒回路11の長さに応じて予め設定されることを特徴とする。
これにより、冷媒回路11中の冷媒を回収する時間を、最適な条件に設定することができる。
【0069】
[4]また、本発明では、
前記冷媒回路11は、前記圧縮機20から吐出された冷媒が前記凝縮器30を経由せずに前記蒸発器40に至るバイパス経路12を備え、
前記制御手段141は、前記圧縮機20の圧縮能力が予め定めた設定値以下の低負荷運転となり、かつ前記低負荷運転が連続して特定時間以上となった場合に、周囲空気の温度制御精度を一定範囲内に保つ条件下で、前記バイパス経路12を通じて前記圧縮機20から冷媒が前記蒸発器40に導入される制御を実行可能であることを特徴とする。
【0070】
これにより、蒸発器40内に滞留していたオイルを、加熱による流動性の増大も相俟って、冷媒により圧縮機20まで戻すことができる。ここでバイパス経路12を通じて圧縮機20からガス冷媒を蒸発器40に導入する具体的な態様は、蒸発器40における周囲空気の温度制御精度を一定範囲内に保つ条件下に制御される。
【0071】
すなわち、高温高圧のガス冷媒が蒸発器40に導入されると、圧縮機20の圧縮能力が一時的に高まるが、このときの圧縮機20の圧縮能力の変化に起因して温度制御精度が一定範囲を超えて乱れない程度に、バイパス経路12を通じてのガス冷媒の供給量や速度ないし時間等が設定される。よって、常に高い温度制御精度を実現することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、冷凍装置10を適用する装置は、生物環境調節装置100に限られることなく、他の様々な分野において温度調整が必要となる各種装置に適用することができる。
【0073】
また、前記タイマー144は、制御盤140に後付けされているが、例えば調節計141の機能の一部として予め備えるものであっても良い。また、圧縮機20の停止を遅らす遅延時間は、遅延リレーによって調整するように構成しても良い。その他、ホットガスバイパス経路12の出口側を、蒸発器40に直接供給するように接続しても良い。かかる場合には、既存の蒸発器40を改造する必要がある。
【0074】
さらに、前記実施形態では、ホットガスバイパス経路12によるホットガスの供給の態様によって、温度制御精度を一定範囲内に保つように構成したが、例えば、圧縮機20自体の回転数を規制することも考えられる。すなわち、蒸発器40にホットガスが導入されることに起因して、圧縮機20が低負荷運転時よりも回転数が増大するときに、この回転数を予め定めた上限値を超えないように圧縮機20自体を制御しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る冷凍装置は、生物の育成に影響を与える温度等の環境要因を高精度に制御する生物環境調節装置に限られることなく、他の様々な分野において温度調整が必要となる各種装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…冷凍装置
10a…室外機(冷凍機)
10b…空気調和機
11…冷媒回路
12…ホットガスバイパス経路
13…電磁弁(開閉弁)
14…膨張弁
15…吸入圧力調整弁
16…流量調整弁
17…電磁弁(開閉弁)
20…圧縮機
30…凝縮器
40…蒸発器
100…生物環境調節装置
101…本体
102…実験室
103…制御室
110…ヒータ
120…送風機
130…加湿器
140…制御盤
141…調節計(制御手段)
142…パルスコンバータ
143…ソリッドステートリレー
144…タイマー