(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101956
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/20 20210101AFI20220630BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220630BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20220630BHJP
【FI】
H01M2/10 S
H01M2/10 M
H01M10/48 301
H01M2/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216384
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】森岡 怜史
(72)【発明者】
【氏名】寺島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
【テーマコード(参考)】
5H030
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H030AS08
5H030FF22
5H040AA06
5H040AS07
5H040AY10
5H040CC20
5H040DD03
5H043CA22
5H043FA04
5H043JA13F
(57)【要約】
【課題】多数の温度センサを用いることなく、蓄電セルの温度が高い部位の温度情報を得ることが可能な蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置1は、蓄電セル16と集電板17とが交互に上下方向Zに積層されることにより形成された積層体3と、積層体3を上下方向Zに押圧して積層体3を拘束する拘束機構と8、各々が集電板17に設置された複数の温度センサ51とを備える。積層体3は、下方向Zに直交する幅方向Xに一端および他端を有し、拘束機構8は、上積層体3の一端側よりも他端側の方を強く押圧する。複数の温度センサ51の各々は、積層体3の他端側に設置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電セルと集電板とが交互に第1の方向に積層されることにより形成された積層体と、
前記積層体を前記第1の方向に押圧して前記積層体を拘束する拘束機構と、
各々が前記集電板に設置された複数の温度センサとを備え、
前記積層体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に一端および他端を有し、
前記拘束機構は、前記積層体の前記一端側よりも前記他端側の方を強く押圧し、
前記複数の温度センサの各々は、前記他端側に設置されている、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の蓄電セル(単位セル)が積層方向に積層された積層体を備える蓄電装置が知られている。
【0003】
たとえば、特開2018-028980号公報(特許文献1)には、このような蓄電装置として、積層体を積層方向に押圧して積層体を拘束する拘束具を備えるバイポーラ電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
拘束具により蓄電セルに加わる積層方向の面圧は、蓄電セルの部位によって異なる。それゆえ、蓄電セルの正極と負極との距離(以下、「極間距離」とも称する)は、均一とはならない。蓄電セルにおける電気反応は、極間距離が長い部位よりも短い部位で優先的に発生する。したがって、極間距離が短い部位の温度は、極間距離が長い部位の温度よりも高くなる。
【0006】
しかしながら、従来の蓄電装置では、蓄電セルの温度が高くなる部位を蓄電装置の製造段階では特定できない。それゆえ、従来の蓄電装置の構成では、蓄電セル間ごとに多数の温度センサを用いなければ、蓄電セルの温度が高い部位の温度情報を取得できない。
【0007】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、多数の温度センサを用いることなく、蓄電セルの温度が高い部位の温度情報を得ることが可能な蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従うと、蓄電セルと集電板とが交互に第1の方向に積層されることにより形成された積層体と、積層体を第1の方向に押圧して積層体を拘束する拘束機構と、各々が集電板に設置された複数の温度センサとを備える。前記積層体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に一端および他端を有する。拘束機構は、積層体の一端側よりも他端側の方を強く押圧する。複数の温度センサの各々は、他端側に設置されている。
【0009】
このような構成の蓄電装置によれば、温度センサは、一端側よりも強く押圧され、発熱量が大きくなる他端側の温度を測定する。それゆえ、蓄電装置によれば、多数の温度センサを用いることなく、温度が高い部位の温度情報を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る蓄電装置によれば、多数の温度センサを用いることなく、蓄電セルの温度が高い部位の温度情報を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】積層体および拘束機構を示す分解斜視図である。
【
図4】蓄電セルにおける電極体の正極合材層と負極合材層との間の距離と、蓄電セルにおける電気抵抗との関係を表した図である。
【
図6】蓄電装置の温度センサの設置位置を説明するための図である。
【
図9】一方の拘束圧力を他方の拘束圧力よりも大きくした場合における、各位置での温度の時間変化を示した図である。
【
図10】一方の拘束圧力を他方の拘束圧力よりも小さくした場合における、各位置での温度の時間変化を示した図である。
【
図11】他の実施の形態に係る蓄電装置を示す分解斜視図である。
【
図13】さらに他の実施の形態に係る蓄電装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本開示の各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0013】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る蓄電装置は、モータとエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッド車両、または、電気エネルギによって得られた駆動力で走行する電動車両等の車両に搭載される。
【0014】
図1から
図10を用いて、本実施の形態に係る蓄電装置について説明する。
図1は、蓄電装置1を模式的に示す斜視図である。
図1に示されるように、蓄電装置1は、積層体3と、拘束機構8とを備える。
【0015】
積層体3は、略直方体形状に形成されている。積層体3は、上面10と、下面11と、長側面12,13と、端側面14,15とを含む。積層体3は、「蓄電モジュール」とも称される。
【0016】
拘束機構8は、積層体3を上下方向Zに押圧して、積層体3を拘束する。なお、本例では、上下方向Zが積層体3における積層方向(第1の方向)である。拘束機構8は、複数の接続部材19a~19eと、天板20と、底板21とを含む。接続部材19a~19eは、それぞれ、前後方向Yに2つ配列している。なお、拘束機構8は、「拘束具」とも称される。
【0017】
各接続部材19a~19eは、ボルト25と、ボルト26とを有する。さらに、接続部材19aは、柱22aを有する。同様に、接続部材19b~19eは、それぞれ、柱22b~22eを有する。柱22a~22eには、上下方向Zの両端部に、ねじ穴が形成されている。なお、実施の形態1においては、接続部材の個数は、前後方向Yの一方側および他方側でそれぞれ5つある場合を例示しているが、これに限定されない。接続部材の個数は、前後方向Yの一方側および他方側でそれぞれ2つでもよいし、3つでもよいし、4つでもよいし、6つ以上であってもよい。
【0018】
なお、長側面12,13および端側面14,15は、上面10および下面11を接続するように配置されている。長側面12および長側面13は、幅方向Xに長尺に形成されている。長側面12および長側面13は、前後方向Yに配列している。端側面14および端側面15は、前後方向Yに延びるように形成されている。端側面14および端側面15は、幅方向Xに配列するように配置されている。端側面15は、上下方向Zに直交する幅方向X(第2方向)における積層体3の一端に位置する。端側面14は、幅方向Xにおける積層体3の他端に位置する。
【0019】
図2は、積層体3および拘束機構8を示す分解斜視図である。
図2に示されるように、積層体3は、複数の蓄電セル16と、複数の集電板17とを含む。積層体3は、蓄電セル16と集電板17とが交互に上下方向Zに積層されることにより形成されている。複数の蓄電セル16は、上下方向Zに間隔をあけて配置されている。集電板17は、各蓄電セル16の間に配置されている。さらに、積層体3の上面10および下面11は、それぞれ集電板17によって構成されている。拘束機構8は、絶縁板23,24をさらに含む。
【0020】
絶縁板23は、積層体3の上面10に配置されている。絶縁板23は、天板20と積層体3の間の絶縁性を確保している。絶縁板24は、積層体3の下面11に配置されている。絶縁板24は、底板21と積層体3との間の絶縁性を確保している。
【0021】
天板20は、絶縁板23の上面に配置されている。底板21は、絶縁板24の下面に配置されている。天板20と底板21とは、各々、積層体3を押圧する押圧板としての機能を果たす。なお、天板20と、底板21とは、金属材料によって形成されている。
【0022】
複数の柱22a~22eは、天板20および底板21を接続するように設けられている。複数の柱22a~22eは、それぞれ、積層体3の長側面12,13に沿って間隔をあけて配置されている。なお、各柱22a~22eは、金属材料によって形成されている。
【0023】
各柱22a~22eの上端は、ボルト25によって天板20に固定されている。各柱22a~22eの下端は、ボルト26によって底板21に固定されている。ボルト25およびボルト26を巻き締めることにより、天板20および底板21の間に配置された積層体3に拘束圧力(面圧)が加えられる。これにより、上下方向Zに積層された蓄電セル16および集電板17が拘束される。
【0024】
各集電板17は金属材料によって形成されている。各蓄電セル16は、各集電板17によって電気的に直列に接続されている。なお、積層体3の上面10に位置する集電板17には、図示されてない集電端子が設けられている。積層体3の下面11に位置する集電板17にも集電端子が設けられている。各集電端子には、蓄電装置1の外部に設けられたジャンクションボックスなどに接続されている。
【0025】
図3は、蓄電セル16を示す斜視図である。
図3に示されるように、蓄電セル16は、電極板30,31と、樹脂枠32と、電極体39とを含む。蓄電セル16は、上面33と、下面34と、長側面35,36と、端側面37,38とを含む。
【0026】
電極板30は、上面33に配置されている。電極板31は、下面34に配置されている。樹脂枠32は環状に形成されている。樹脂枠32によって、長側面35,36と、端側面37,38とが形成されている。
【0027】
電極板30と、電極板31と、樹脂枠32とによって収容空間40が形成されている。電極体39は、収容空間40内に収容されている。なお、収容空間40内には、電解液も収容されている。電極体39は、正極合材層と、負極合材層と、セパレータとを含む。正極合材層は、水酸化ニッケルなどによって形成されている。負極合材層は、水素吸着合金などによって形成されている。セパレータは、たとえば、ポリオレフィン系樹脂から形成された多孔質フィルムなどからなる織布および不織布などから形成されている。電解液は、たとえば、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液であり、収容空間40に封入されている。このように、蓄電セル16は、ニッケル水素電池(Ni-MH電池)として構成される。
【0028】
蓄電セル16は、複数の排液弁41が形成されている。
図3に示す例においては、端側面37に複数の排液弁41を含む。端側面37は、
図1に示す端側面15に配置されている。
【0029】
以上のように、蓄電装置1は、少なくとも、蓄電セル16と集電板17とが交互に上下方向Zに積層されることにより形成された積層体3と、積層体3を上下方向Zに押圧して積層体3を拘束する拘束機構8とを備える。
【0030】
図4は、蓄電セル16における電極体39の正極合材層と負極合材層との間の距離(極間距離D)と、蓄電セル16における電気抵抗Rとの関係を表した図である。
【0031】
図4に示されるように、極間距離Dが閾値dth未満では、極間距離Dが長くなるほど、電気抵抗Rが小さくなる。一方、極間距離Dが閾値dth以上となると、極間距離Dが長くなるほど、電気抵抗Rが大きくなる。本実施の形態においては、蓄電セル16の極間距離Dは、閾値dth以上である。それゆえ、蓄電セル16では、極間距離Dが長くなるほど、電気抵抗Rが大きくなる。
【0032】
図5は、蓄電装置1を模式的に示す側面図である。
図5に示されるように、拘束機構8は、上述したように、5種類の接続部材19a~19eを含む。詳しくは、拘束機構8は、接続部材19a~19eをそれぞれ2つ含む。接続部材19a~19eは、それぞれ、長さが互いに異なる5種類の柱22a~22eを含む。柱22a~22eは、上記幅方向Xに並んで配置されている。柱22a~22eは、積層体3の一端側(端側面15側)から積層体3の他端側(端側面14側)に向かうにつれて、順に上下方向Zの長さが短くなっている。
【0033】
詳しくは、柱22a~22eは、上下方向Zに沿った長さL1~L5を有し、L1~L5の間には、L1>L2>L3>L4>L5の関係が成り立つ。
【0034】
蓄電装置1では、天板20と積層体3との隙間が生じないように、ボルト25が締結されている。同様に、底板21と積層体3との隙間が生じないように、ボルト26が締結されている。
【0035】
このため、天板20と底板21との間の距離は、接続部材19aから接続部材19eの方向に向かうに連れて短くなる。すなわち、天板20と底板21との間の距離は、端側面15側(一端側)から端側面14側(他端側)に向かうに連れて短くなる。よって、積層体3の上面10と下面11との間の距離は、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて短くなる。
【0036】
それゆえ、積層体3の各蓄電セル16には、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、上下方向Zに加わる拘束圧力は大きくなる。すなわち、拘束機構8は、上下方向Zに直交する幅方向Xにおける積層体3の端側面15側よりも端側面14側の方を強く押圧する。したがって、各蓄電セル16では、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、極間距離Dが短くなる。
【0037】
その結果、各蓄電セル16における電気抵抗Rは、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて小さくなる。電気抵抗Rが低い部分では、電気反応が優先的に行われる。このため、各蓄電セル16における温度(セル内温度)は、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて高くなる。
【0038】
さらに詳しくは、積層体3の各蓄電セル16では、中央部側から前後方向Yに向かうに連れて、上下方向Zに加わる拘束圧力は大きくなる。すなわち、柱22a~22eの近傍において、上下方向Zに加わる拘束圧力は大きくなる。
【0039】
以上より、各蓄電セル16に加わる拘束圧力は、2本の柱22eの近傍で最も大きくなる。それゆえ、各蓄電セル16における温度は、2本の柱22eの近傍で最も高くなる。
【0040】
図6は、蓄電装置1における温度センサの設置位置を説明するための図である。
図6に示されるように、蓄電装置1は、複数の温度センサ51をさらに備える。温度センサ51は、典型的には、サーミスタである。各温度センサ51は、集電板17に設置されている。温度センサ51は、集電板17の中央部よりも柱22e側に設けられている。より詳細には、温度センサ51は、端側面14側(他端側)に設けられている。温度センサ51は、柱22eの近傍に設けられている。
【0041】
このような構成によれば、温度センサ51は、蓄電セル16において最も温度の高い部分を計測することが可能となる。また、当該構成によれば、1つの集電板17に1つの温度センサ51を設けるだけで、蓄電セル16において最も温度の高い部分を計測することが可能となる。したがって、1つの集電板17に複数の温度センサを備える構成に比べて、蓄電装置3の構成を簡易にすることができる。
以上のように実施の形態1に係る蓄電装置1は、蓄電セル16と集電板17とが交互に上下方向Zに積層されることにより形成された積層体3と、積層体3を上下方向Zに押圧して積層体3を拘束する拘束機構8と、各々が集電板17に設置された複数の温度センサ51とを備える。拘束機構8は、上下方向Zに直交する幅方向Xにおける積層体3の端側面15側よりも端側面14側の方を強く押圧する。複数の温度センサ51の各々は、端側面14側に設置されている。
【0042】
このような構成によれば、温度センサ51は、端側面15側よりも強く押圧された端側面14側の温度を測定する。それゆえ、蓄電装置1によれば、各蓄電セル間に多数の温度センサを用いることなく、温度が高い部位の温度情報を得ることが可能となる。この結果、設置する温度センサの個数を全体的に削減することができる。
【0043】
(変形例)
上記においては、柱22a~22eの長さが、この順に短くなっている構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。幅方向Xに並んだ複数の柱のうちの少なくとも1つの柱の長さが他の柱の長さよりも短ければよい。
【0044】
(補足実験)
以下、拘束圧力と温度との関係について、蓄電装置1とは異なる他の蓄電装置を用いた実験結果を説明する。
【0045】
図7は、他の蓄電装置9を模式的に示す斜視図である。
図7に示されるように、蓄電装置9として、積層体3Zと、拘束機構8Zとを備えるものを準備した。積層体3Zは、実施の形態1に係る積層体3とは異なり、1つの集電板17上に複数の温度センサ51を設置した。拘束機構8Zは、柱22の長さを拘束機構8とは異ならせた。
【0046】
実験では、拘束機構8Zの柱22の長さの調整により、端側面15側に拘束圧力F1を加えるとともに、端側面14側に拘束圧力F2を加えた。以下では、拘束圧力F1を拘束圧力F2よりも大きくした場合と、拘束圧力F1を拘束圧力F2よりも小さくした場合とについて説明する。
【0047】
図8は、蓄電セル16と集電板17とを示す斜視図である。
図8に示されるように、蓄電装置9では、集電板17の複数の位置P11~P13,P21~P23,P31~P33,P41の各々においてサーミスタ(図示せず)を設置した。
【0048】
位置P11~P13は、端側面14側の位置とした。位置P11~P13は、前後方向Yの前(手前)から後ろに向かって、この順位に並んだ位置とした。
【0049】
位置P21~P23は、端側面14側と端側面15側のとの間の位置とした。位置P21~P23は、前後方向Yの前から後ろに向かって、この順位に並んだ位置とした。
【0050】
位置P31~P33は、端側面15側の位置とした。位置P31~P33は、前後方向Yの前から後ろに向かって、この順位に並んだ位置とした。
【0051】
位置P41は、位置P22と位置P32との間の位置であって、かつ位置P22よりも位置P32に近い位置とした。
【0052】
図9は、拘束圧力F1を拘束圧力F2よりも大きくした場合における、各位置での温度の時間変化を示した図である。
【0053】
図9に示されるように、位置P31~P33における温度は、充電開始直後から、他の位置P11~P13,P21~P23,P41における温度よりも高くなった。位置P41における温度は、充電開始直後から、位置P11~P13,P21~P23における温度よりも高くなった。位置P21~P23における温度は、充電開始直後から、位置P11~P13における温度よりも高くなった。
【0054】
図10は、拘束圧力F1を拘束圧力F2よりも小さくした場合における、各位置での温度の時間変化を示した図である。
【0055】
図10に示されるように、位置P11~P13における温度は、充電開始直後から、他の位置P21~P23,P31~P33,P41における温度よりも高くなった。位置P21~P23における温度は、充電開始直後から、位置P31~P33,P41における温度よりも高くなった。
【0056】
このように、拘束圧力が大きい場所ほど温度が高くなることが、蓄電装置9を用いた実験によって実証された。
【0057】
[実施の形態2]
図11および
図12を用いて、本実施の形態に係る蓄電装置について説明する。
【0058】
図11は、本実施の形態に係る蓄電装置1Aを示す分解斜視図である。
図12は、蓄電装置1Aの側面図である。
【0059】
図11および
図12に示されるように、蓄電装置1Aは、実施の形態1に係る蓄電装置1と比較した場合に、拘束機構8Aの構成が相違する。
【0060】
拘束機構8Aは、複数の接続部材19fと、天板20と、底板21と、絶縁板23,24とシム71,72を含む。各接続部材19fは、柱22fと、ボルト25と、ボルト26とを備える。柱22fの長さはL6であり、全ての柱22fで同じである。シム71は、積層体3と天板20との間に設けられている。シム71の厚みは、端側面15側よりも端側面14側の方が厚い。シム71の厚みは、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、厚くなっている。
【0061】
シム72は、積層体3と底板21との間に設けられている。シム72の厚みは、端側面15側よりも端側面14側の方が厚い。シム72の厚みは、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、厚くなっている。
【0062】
蓄電装置1Aでは、天板20と積層体3との隙間が生じないように、ボルト25が巻き締められている。同様に、底板21と積層体3との隙間とが生じないように、ボルト26が巻き締められている。各柱22fの長さは同じである。シム71,72の厚みは、上述したように、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、厚くなっている。
【0063】
このため、絶縁板23と絶縁板24との間の距離は、接続部材19aから接続部材19eの方向に向かうに連れて短くなる。すなわち、絶縁板23と絶縁板24との間の距離は、端側面15側(一端側)から端側面14側(他端側)に向かうに連れて短くなる。よって、積層体3の上面10と下面11との間の距離は、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて短くなる。
【0064】
それゆえ、積層体3の各蓄電セル16では、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、上下方向Zに加わる拘束圧力は大きくなる。すなわち、拘束機構8Aは、上下方向Zに直交する幅方向Xにおける積層体3の端側面15側よりも端側面14側の方を強く押圧する。したがって、各蓄電セル16では、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、極間距離Dが短くなる。
【0065】
その結果、各蓄電セル16における電気抵抗Rは、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて小さくなる。以上より、実施の形態1と同様に、各蓄電セル16における温度(セル内温度)は、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて高くなる。
【0066】
以上より、本実施の形態においても、温度センサ51を実施の形態1と同様な位置に設置することにより、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0067】
(変形例)
(1)上記においては、蓄電装置1Aが2つのシム71,72を設ける構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。蓄電装置1Aは、2つのシム71,72のうち少なくとも一方を備えていればよい。
【0068】
(2)上記においては、シム71,72の厚みは、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて厚くなっている。しかしながら、これに限定されず、積層体3の端側面14側および端側面15側のうち端側面14側のみにシムを設け、かつ、シムの厚みを一定としてもよい。なお、端側面14側のみにシムを設ける場合、当該シムの厚みは、必ずしも一定でなくてもよい。
【0069】
[実施の形態3]
図13を用いて、本実施の形態に係る蓄電装置について説明する。
図13は、本実施の形態に係る蓄電装置1Bの側面図である。
【0070】
図13に示されるように、本実施の形態に係る蓄電装置1Bは、実施の形態1に係る蓄電装置1と比較した場合に、拘束機構8Bの構成が相違する。拘束機構8Bは、実施の形態1と比較して幅方向Xの一端側に幅方向の他端側よりも剛性の高い高剛性部が天板20Bに設けられている点において相違する。具体的には、天板20Bは、上下方向Zの厚み(肉厚)が他の部位よりも厚い厚肉部81を有する。
【0071】
厚肉部81は、端側面14側に形成されている。厚肉部81は、前後方向Yに沿って形成されている。天板20Bの厚みは、厚肉部81により、端側面15側よりも端側面14側の方が厚い。したがって、天板20Bの剛性は、端側面15側よりも端側面14側の方が高い。
【0072】
それゆえ、蓄電セル16の内圧が上昇した場合、天板20Bの上下方向Zの反り量は、端側面15側の方が端側面14側よりも大きくなる。したがって、積層体3の上面10と下面11との間の距離は、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて短くなる。
【0073】
それゆえ、積層体3の各蓄電セル16には、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、上下方向Zに加わる拘束圧力は大きくなる。すなわち、拘束機構8Bは、上下方向Zに直交する幅方向Xにおける積層体3の端側面15側よりも端側面14側の方を強く押圧する。したがって、各蓄電セル16では、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて、極間距離Dが短くなる。
【0074】
その結果、各蓄電セル16における電気抵抗Rは、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて小さくなる。以上より、実施の形態1,2と同様に、各蓄電セル16における温度(セル内温度)は、端側面15側から端側面14側に向かうに連れて高くなる。
【0075】
以上より、本実施の形態においても、温度センサ51を実施の形態1と同様な位置に設置することにより、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0076】
(変形例)
(1)上記においては、天板20Bが厚肉部81を有することにより、天板20Bの端側面14側の剛性を、端側面15側よりも高くした。しかしながら、天板20Bの端側面14側の剛性の上げ方は、これに限定されるものではない。以下のように、天板20Bを構成してもよい。
【0077】
天板20Bを実施の形態1,2の天板20と同じ形状とする。天板20Bの端側面14側の材質を、天板20Bの残りの部分の材質と異ならせ、かつ端側面14側の材質として天板20Bの残りの部分の材質よりも剛性が高いものを採用する。このような構成によっても、蓄電セル16の内圧が上昇した場合に、
図13の破線で示したように、天板20Bを撓ませることができる。
【0078】
(2)拘束機構8Bを以下のように補強部材を備える構成してもよい。拘束機構8Bは、実施の形態1,2で示した天板20と、天板20用の補強部材とを備える。
【0079】
補強部材は、天板20B上に取り付けられる。具体的には、補強部材は、端側面14側に取り付けられる。補強部材は、長手方向が前後方向Yとなるように天板20Bに取り付けられる。典型的には、補強部材は、厚肉部81と同じような形状が形成されるように、天板20Bに取り付けられる。補強部材としては、たとえば、横断面が矩形状の金属板を用いることができる。
【0080】
このような構成によっても、蓄電セル16の内圧が上昇した場合に、
図13の破線で示したように、天板20Bを撓ませることができる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B,9 蓄電装置、3,3Z 積層体、8,8A,8B,8Z 拘束機構、10,33 上面、11,34 下面、12,13,35,36 長側面、14,15,37,38 端側面、16 蓄電セル、17 集電板、19,19a,19b,19c,19d,19e,19f 接続部材、20,20B 天板、21 底板、22,22a,22b,22c,22d,22e,22f 柱、23,24 絶縁板、25,26 ボルト、30,31 電極板、32 樹脂枠、39 電極体、40 収容空間、41 排液弁、51 温度センサ、71,72 シム、81 厚肉部、P11,P13,P21,P22,P23,P31,P32,P33,P41 位置。