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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101961
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】エドキサバン含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20220630BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220630BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220630BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220630BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220630BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220630BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61K9/20
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/46
A61P7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216391
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】592073695
【氏名又は名称】日医工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智裕
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 大介
(72)【発明者】
【氏名】田村 優子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD38
4C076DD51T
4C076DD52T
4C076DD67
4C076DD67T
4C076EE06
4C076EE41T
4C076EE58T
4C076FF02
4C076FF05
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086CB29
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA09
4C086ZA54
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】有効成分としてエドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物を含有し、官能的マスキングを含む不快な味のマスキングを施したうえで溶出性に優れた医薬組成物の提供を目的とする。
【解決手段】エドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物と、甘味剤とを含有し、前記甘味剤がアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースからなる群から選択される1種以上である、エドキサバン含有医薬組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物と、甘味剤とを含有し、
前記甘味剤がアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースからなる群から選択される1種以上である、エドキサバン含有医薬組成物。
【請求項2】
前記甘味剤がアスパルテーム、タウマチンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のエドキサバン含有医薬組成物。
【請求項3】
前記エドキサバン含有医薬組成物が錠剤である、請求項1又は2に記載のエドキサバン含有医薬組成物。
【請求項4】
前記錠剤が口腔内崩壊錠である、請求項3に記載のエドキサバン含有医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてエドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エドキサバン、N-(5-クロロピリジン-2-イル)-N-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミドは、活性化血液凝固第X因子(FXa)の阻害作用を有し、静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制等に有用であることが知られている。
このエドキサバンは、独特な味を有する薬物のひとつである。
【0003】
一般に独特な味などを有する薬物に対しては、フィルムコーティング等による物理的マスキングや甘味剤等を用いた官能的マスキングを施すことで製剤化が試みられている。
例えば、口腔内崩壊錠の例として、特許文献1にガランタミンの苦味をソーマチン(タウマチン)等の甘味剤によりマスキングした口腔内崩壊錠について開示する。
特許文献2には、エドキサバン、その薬理上許容される塩、又はそれらの溶媒和物のほかに、甘味剤としてサッカリンナトリウム水和物を含有した口腔内崩壊錠について開示する。
【0004】
独特な味などを有する薬物を含有する製剤では、その不快な味を低減するとともに優れた溶出性が求められている。
上述の通り、物理的マスキングにより薬物の溶出を遮ることで不快な味を低減することはできるが、過度の物理的マスキングは溶出性を低下させるため、相反する特性のバランスをとる高い製造技術が求められる。
一方、官能的マスキングは薬物の溶出を物理的に遮らない簡易なマスキング方法であり、甘味剤等を用いた官能的マスキングでは溶出性に影響を与えないことが期待されている。
しかしながら、本発明者らの調査によると、エドキサバン含有製剤に配合する甘味剤によっては溶出が遅延する場合があることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-177706号公報
【特許文献2】国際公開第2018/101373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有効成分としてエドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物を含有し、官能的マスキングを含む不快な味のマスキングを施したうえで溶出性に優れた医薬組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエドキサバン含有医薬組成物は、エドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物と、甘味剤とを含有し、前記甘味剤がアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする。
本発明者らは、エドキサバン含有医薬組成物において、甘味剤としてサッカリンナトリウム水和物を選択した場合にはその溶出性が遅延する一方で、甘味剤としてアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースからなる群から1種以上を選択すると、その溶出遅延を抑制できることを知見した。
【0008】
本発明において、前記甘味剤がアスパルテーム、タウマチンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
このようにすると、エドキサバン含有医薬組成物は溶出性だけでなく、安定性にも優れる。
本発明においては、エドキサバン含有医薬組成物が錠剤であることが好ましく、錠剤が口腔内崩壊錠であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、甘味剤を用いて官能的マスキングを施しつつ、溶出性に優れたエドキサバン含有医薬組成物を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る医薬組成物の有効成分は、エドキサバン、N-(5-クロロピリジン-2-イル)-N-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド、またはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物である。
【0011】
エドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物は、公知の方法により製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
薬学的に許容される塩としては、薬理学上許容できる塩であれば特に制限はなく、トシル酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸、ヨウ化水素酸塩、燐酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩などが挙げられ、好ましくはトシル酸塩である。
本発明における有効成分の一態様としては、エドキサバントシル酸塩水和物、N-(5-クロロピリジン-2-イル)-N-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミドp-トルエンスルホン酸一水和物が挙げられる。
エドキサバンまたはその薬学的に許容される塩あるいはそれらの水和物の含有量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1錠剤あたりエドキサバンとして15mg~60mgの範囲が例として挙げられる。
【0012】
本発明における医薬組成物に含有される甘味剤としては、アスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースが挙げられ、好ましくはアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物であり、より好ましくはアスパルテーム、タウマチンである。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、アスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースは甘味剤として一般的に知られており、タウマチンはソーマチンと称されることもある。
本発明における医薬組成物に含有される甘味剤の量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、甘味剤がアスパルテーム、ステビア抽出精製物、スクラロースであれば、1錠剤あたり0.1質量%~7質量%の範囲が好ましく、0.5質量%~5質量%の範囲がより好ましく、1質量%~3質量%の範囲が最も好ましい。
また、甘味剤がタウマチンであれば、1錠剤あたり0.001質量%~2質量%の範囲が好ましく、0.005質量%~1.5質量%の範囲がより好ましく、0.01質量%~1質量%の範囲が最も好ましい。
【0013】
本発明に係る医薬組成物は、製剤形態の中でも経口投与可能な製剤であり、経口投与可能な製剤としては、錠剤(素錠、口腔内崩壊錠、チュアブル剤、発泡錠、ドロップ剤、フィルムコーティング錠、糖衣錠、カプレット剤、丸剤等を含む)、トローチ剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等が例として挙げられる。
本発明に係る医薬組成物は、錠剤であることが好ましく、嚥下能力の低い人などにも服用しやすい口腔内崩壊錠がより好ましい。
本発明における医薬組成物の製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。
本発明の一態様として、湿式打錠機にて圧縮成型後に乾燥する工程を有してもよい。
【0014】
本発明における医薬組成物には、上記有効成分、甘味剤以外に、この分野で通常使用される添加剤、例えば、賦形剤、矯味剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤などを含めることができる。
例えば、賦形剤としては、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、粉末還元麦芽糖水あめなどを適宜組み合わせて使用することができる。
矯味剤としては、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、L-グルタミン酸塩酸塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸などを使用することができる。
結合剤としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、エチルセルロース、コポリビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体などを使用することができる。
崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプンなどを使用することができる。
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルクなどを使用することができる。
滑沢剤としては、トウモロコシデンプン、ジメチルポリシロキサン(内服用)、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどを使用することができる。
着色剤としては、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄などを使用することができる。
【0015】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例0016】
エドキサバントシル酸塩水和物105.04g、D-マンニトール(三菱商事ライフサイエンス製)223.9g、L-グルタミン酸(味の素製)26g、アスパルテーム(味の素製)7.28gをメカノミル(3L、岡田精工製)に投入し、精製水25.48g、エタノール10.92gにポリビニルアルコール(三菱ケミカル製)1.82gを溶解させた結合液を用いて練合し、練合物を得た。
得られた練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成型し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃で約5分乾燥し、錠剤を得た。
【実施例0017】
エドキサバントシル酸塩水和物105.04g、D-マンニトール(三菱商事ライフサイエンス製)229.3g、L-グルタミン酸(味の素製)26g、タウマチン(三栄源エフ・エフ・アイ製)1.82gをメカノミル(3L、岡田精工製)に投入し、精製水25.48g、エタノール10.92gにポリビニルアルコール(三菱ケミカル製)1.82gを溶解させた結合液を用いて練合し、練合物を得た。
得られた練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成型し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃で約5分乾燥し、錠剤を得た。
【実施例0018】
エドキサバントシル酸塩水和物105.04g、D-マンニトール(三菱商事ライフサイエンス製)223.9g、L-グルタミン酸(味の素製)26g、ステビア抽出精製物(丸善製薬製)7.28gをメカノミル(3L、岡田精工製)に投入し、精製水25.48g、エタノール10.92gにポリビニルアルコール(三菱ケミカル製)1.82gを溶解させた結合液を用いて練合し、練合物を得た。
得られた練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成型し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃で約5分乾燥し、錠剤を得た。
【実施例0019】
エドキサバントシル酸塩水和物105.04g、D-マンニトール(三菱商事ライフサイエンス製)223.9g、L-グルタミン酸(味の素製)26g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ製)7.28gをメカノミル(3L、岡田精工製)に投入し、精製水25.48g、エタノール10.92gにポリビニルアルコール(三菱ケミカル製)1.82gを溶解させた結合液を用いて練合し、練合物を得た。
得られた練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成型し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃で約5分乾燥し、錠剤を得た。
【比較例1】
【0020】
エドキサバントシル酸塩水和物105.04g、D-マンニトール(三菱商事ライフサイエンス製)223.9g、L-グルタミン酸(味の素製)26g、サッカリンナトリウム水和物(大和化成製)7.28gをメカノミル(3L、岡田精工製)に投入し、精製水25.48g、エタノール10.92gにポリビニルアルコール(三菱ケミカル製)1.82gを溶解させた結合液を用いて練合し、練合物を得た。
得られた練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成型し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃で約5分乾燥し、錠剤を得た。
【比較例2】
【0021】
エドキサバントシル酸塩水和物105.04g、D-マンニトール(三菱商事ライフサイエンス製)223.9g、L-グルタミン酸(味の素製)26g、アセスルファムカリウム(MCフードスペシャリティーズ製)7.28gをメカノミル(3L、岡田精工製)に投入し、精製水25.48g、エタノール10.92gにポリビニルアルコール(三菱ケミカル製)1.82gを溶解させた結合液を用いて練合し、練合物を得た。
得られた練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成型し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃で約5分乾燥し、錠剤を得た。
【0022】
上記実施例1~4及び比較例1、2における錠剤を比較評価した処方例を、下記の表1に示す。
【表1】
【0023】
<溶出試験>
上記実施例1~4及び比較例1、2における錠剤(各n=3)について、開始時及び40℃75%RH開放条件(錠剤を入れたアルミ袋の口を開放した状態)で1箇月保管後に溶出試験を行った。
溶出試験は、第17改正日本薬局方の溶出試験に規定されたパドル法(50rpm)に従い、試験液として溶出試験第2液を用いて、60分時点の溶出率を測定した。
測定は、液体クロマトグラフ法にて以下の条件で測定した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:289nm)
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 粒径1.7μm 2.1mm×30mm
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:0.02Mリン酸塩緩衝液(pH3.5)/アセトニトリル混液(4:1)
流量:エドキサバンの保持時間が約1.1分になるように調整した。
【0024】
結果を表2に示す。
表2には、60分時点の平均溶出率(%)のほかに、括弧内に開始時からの変化量(%)を記載した。
【表2】
表2の結果から、甘味剤としてアセスルファムカリウムを使用した比較例2は、開始時から溶出率が低く、また、甘味剤としてサッカリンナトリウム水和物を使用した比較例1は、40℃75%RH開放条件での1箇月保管によって溶出遅延が顕著であった。
一方、甘味剤としてアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースを使用した実施例1~4は、開始時及び上記保管後の溶出率が79.6%~65.9%であり、開始時から上記条件保管後で溶出率の変化が+0.4%~-0.5%であった。
以上のことから、甘味剤としてアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物、スクラロースを使用したエドキサバン含有医薬組成物は、溶出性に優れることが明らかとなった。
【0025】
次に、総類縁物質量の測定及び外観変化の確認により、安定性を評価した。
<安定性評価:総類縁物質量の測定>
上記実施例1~4及び比較例1、2における錠剤について、開始時及び60℃密封条件(錠剤を入れたアルミ袋の口をシールした状態)で1箇月保管後に、総類縁物質量を測定することで製剤の安定性を評価した。
測定は、液体クロマトグラフ法にて以下の条件で測定した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:250nm)
カラム:ACQUITY UPLC BEH Phenyl 粒径1.7μm 2.1mm×100mm
カラム温度:20℃付近の一定温度
移動相A:Buffer/イソプロピルアルコール混液(50:1)
移動相B:アセトニトリル/メタノール/Buffer/イソプロピルアルコール混液(65:25:10:2)
Buffer:0.02Mのヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液をリン酸でpH2.2にする。
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を、下記の表3に示すように制御した。
流量:エドキサバンの保持時間が約15分になるように調整した。
【表3】
【0026】
結果を表4に示す。
表4には、総類縁物質量(%)のほかに、括弧内に開始時からの変化量(%)を記載した。
【表4】
表4の結果から、甘味剤としてスクラロースを使用した実施例4は、60℃密封条件での1箇月保管によって総類縁物質量が大きく増加したが、甘味剤としてアスパルテーム、タウマチン、ステビア抽出精製物を使用した実施例1~3は、開始時から上記条件保管後での総類縁物質量の変化が+0.08%~+0.03%であった。
【0027】
<安定性評価:外観変化の確認>
上記実施例1~4及び比較例1、2における錠剤について、60℃密封条件で1箇月保管後に、開始時と比較して外観に変化が認められるか否かを確認した。
外観変化は、錠剤の外観に変色が認められるか否かを目視により確認した。
【0028】
結果を表5に示す。
表5中、変色が認められない場合を○と、わずかに変色した場合を△とした。
【表5】
表5の結果から、甘味剤としてステビア抽出精製物、スクラロースを使用した実施例3,4は、60℃密封条件での1箇月保管によってわずかに変色したが、甘味剤としてアスパルテーム、タウマチンを使用した実施例1,2は、変色が認められなかった。
以上のことから、甘味剤としてアスパルテーム、タウマチンを使用したエドキサバン含有医薬組成物は、溶出性だけでなく安定性にも優れることが明らかとなった。