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特開2022-101975射出装置、成形機、型付成形機及び成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101975
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】射出装置、成形機、型付成形機及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20220630BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20220630BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20220630BHJP
   B29C 45/53 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B22D17/20 G
B22D17/22 E
B22D17/32 B
B29C45/53
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216412
(22)【出願日】2020-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 眞
(72)【発明者】
【氏名】豊島 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 俊治
(72)【発明者】
【氏名】野田 三郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD04
4F206JN11
4F206JQ31
4F206JT02
4F206JT21
4F206JT24
(57)【要約】
【課題】好適に局部加圧を行うことができる射出装置を提供する。
【解決手段】液圧装置29は、射出シリンダ27と、加圧シリンダ51とに通じている。加圧シリンダ51は、キャビティ107内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材49に連結される。射出シリンダ27は、プランジャ21に連結される射出ピストン33と、射出ピストン33を摺動可能に収容しているシリンダ部材31と、を有している。シリンダ部材31は、射出ピストン33のプランジャ21とは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室31hを有している。液圧装置29は、連通路43dを有している。連通路43dは、ヘッド側室31hと、加圧シリンダ51のヘッド側室53hとを連通している。ヘッド側室53hは、加圧部材49をキャビティ107に向かって前進させるときに作動液が供給されるシリンダ室である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有している
射出装置。
【請求項2】
射出開始から保圧完了までの少なくとも一部の期間において前記ヘッド側室の作動液に付与される圧力が前記連通路を介して前記第1室の作動液にも付与される
請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記加圧シリンダのピストンが前記第1室の作動液から圧力を受ける面積(S3)に対する、1つの前記加圧シリンダによって駆動される1以上の前記加圧部材が前記キャビティの成形材料に圧力を付与する合計面積(S4)の比(S4/S3)が、前記射出ピストンが前記ヘッド側室の作動液から圧力を受ける面積(S1)に対する、前記プランジャが前記キャビティの成形材料に圧力を付与する面積(S2)の比(S2/S1)に対して、0.5倍以上1.5倍以下である
請求項1又は2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記比(S4/S3)が、前記比(S2/S1)に対して1.0倍以上1.2倍以下である
請求項3に記載の射出装置。
【請求項5】
前記連通路に位置しており、成形サイクルに亘って開度が一定の絞り弁を有している
請求項1~4のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項6】
前記成形材料が前記キャビティ内の前記加圧部材が配置されている位置に到達する直前に、前記第1室の圧力によって前記加圧部材が前記キャビティの側の駆動限に位置している
請求項1~5のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項7】
前記第1室に通じているサージ用アキュムレータを更に有している
請求項1~6のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項8】
射出開始の前から増圧完了までに亘って、前記サージ用アキュムレータと前記第1室との間で圧力が相互に伝えられることが許容される
請求項7に記載の射出装置。
【請求項9】
前記サージ用アキュムレータは、
前記第1室と通じている液体室と、
前記液体室の作動液の圧力を受けるサージ用ピストンと、を有しており、
前記サージ用ピストンの移動可能な範囲によって規定される前記液体室の容積の最大変化量が、前記加圧シリンダのピストンの移動可能な範囲によって規定される前記第1室の容積の最大変化量に対して、1.0倍以上1.2倍以下である
請求項7又は8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記ヘッド側室に作動液を供給する射出用アキュムレータを有しており、
前記サージ用アキュムレータは、
前記第1室と通じている液体室と、
前記液体室の作動液の圧力を受けるサージ用ピストンと、を有しており、
前記サージ用ピストンが前記液体室の側の駆動限に位置しているときの前記サージ用アキュムレータの圧力が、前記射出用アキュムレータの放出開始時の圧力に対して、0.8倍以上1.2倍以下である
請求項7~9のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項11】
前記液圧装置は、
前記連通路のうち前記サージ用アキュムレータが接続される位置よりも前記ヘッド側室の側に位置しており、前記ヘッド側室の側から前記第1室の側への流れを許容するとともに、その反対方向への流れを禁止するチェック弁と、
前記チェック弁をバイパスしている絞り弁と、を有している
請求項7~10のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項12】
前記射出シリンダは、前記シリンダ部材に収容されている増圧ピストンを更に有しており、
前記増圧ピストンは、前記ヘッド側室からの圧力を受ける第1面と、その反対側の後側室からの圧力を受ける第2面とを有し、
前記第2面の面積は、前記第1面の面積よりも大きい
請求項1~11のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項13】
前記液圧装置を制御する制御装置を更に有しており、
前記液圧装置は、
前記ヘッド側室に通じる射出用アキュムレータと、
前記ヘッド側室に通じる増圧用アキュムレータと、
前記射出用アキュムレータ及び前記増圧用アキュムレータから前記ヘッド側室への作動液の流れを制御する液圧回路と、を更に有しており、
前記制御装置は、前記射出用アキュムレータ及び前記増圧用アキュムレータのうち前者のみから前記ヘッド側室へ作動液を供給して前記成形材料を前記キャビティ内へ射出し、その後、前記増圧用アキュムレータから前記ヘッド側室へ作動液を供給して前記キャビティ内の前記成形材料を増圧するように前記液圧回路を制御する
請求項1~11のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項14】
前記射出ピストンに連結される電動機を更に有している
請求項1~13のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の射出装置と、
前記キャビティを構成する型を保持する型締装置と、
を有している成形機。
【請求項16】
請求項15に記載の成形機と、
前記型と、
前記型に配置されている前記加圧部材と、
前記型に配置されている前記加圧シリンダと、
を有している型付成形機。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の射出装置によって射出を行う射出ステップを有しており、
前記射出ステップでは、射出開始から保圧完了までの少なくとも一部の期間において前記ヘッド側室の作動液に付与される圧力が前記連通路を介して前記第1室の作動液にも付与される
成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出装置、当該射出装置を含む成形機、当該成形機を含む型付成形機、及び前記射出装置を用いた成形方法に関する。成形機は、例えば、金属を成形するダイカストマシン、又は樹脂を成形する射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト法等の成形方法において、いわゆる局部加圧を行う技術が知られている(例えば下記特許文献1~3)。この技術においては、型によって構成されたキャビティ内に成形材料が充填された後、型に挿通された加圧ピンによって成形材料を押圧する。これにより、例えば、成形材料の凝固収縮に起因するひけ巣が低減される。加圧ピンは、例えば、加圧シリンダ(油圧シリンダ)によって駆動される。
【0003】
特許文献1では、加圧シリンダと射出シリンダとを連通する技術を開示している。射出シリンダは、スリーブ内の溶湯をキャビティ内に押し出すプランジャを駆動する油圧シリンダである。射出シリンダは、プランジャに連結される射出ピストンと、射出ピストンを収容しているシリンダ部材とを有している。シリンダ部材の内部は、射出ピストンによって、プランジャ側のロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている。特許文献1では、ロッド側室と、加圧シリンダとが連通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-16141号公報
【特許文献2】特開2016-196009号公報
【特許文献3】特開2002-210550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加圧部材(加圧ピン)を駆動するための駆動装置及びその動作については、上記の特許文献に記載されたものも含め、種々のものが提案されている。種々の駆動装置及び/又は動作は、互いに比較したときに長所及び短所を有している。一方、ユーザによって加圧部材の駆動装置に要求される性能は異なる。従って、加圧部材を駆動するための新たな駆動装置が提案され、技術の豊富化が図られることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る射出装置は、キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、を有しており、前記射出シリンダは、前記プランジャに連結される射出ピストンと、前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、を有しており、前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有している。
【0007】
本開示の一態様に係る成形機は、上記射出装置と、前記キャビティを構成する型を保持する型締装置と、を有している。
【0008】
本開示の一態様に係る型付成形機は、上記成形機と、前記型と、前記型に配置されている前記加圧部材と、前記型に配置されている前記加圧シリンダと、を有している。
【0009】
本開示の一態様に係る成形方法は、上記射出装置によって射出を行う射出ステップを有しており、前記射出ステップでは、射出開始から保圧完了までの少なくとも一部の期間において前記ヘッド側室の作動液に付与される圧力が前記連通路を介して前記第1室の作動液にも付与される。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成又は手順によれば、射出シリンダのヘッド側室の圧力を利用して加圧部材を駆動する新たな射出装置、成形機、型付成形機及び成形方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す側面図。
図2図1のダイカストマシンにおける局部加圧に係る要部の構成を示す回路図。
図3図3(a)は図1のダイカストマシンの射出中の動作を説明する模式図であり、図3(b)は図3(a)の領域IIIbの拡大図。
図4図4(a)は図1のダイカストマシンの充填完了時の動作を説明する模式図であり、図4(b)は図4(a)の領域IVbの拡大図。
図5図5(a)は図1のダイカストマシンの増圧中の動作を説明する模式図であり、図5(b)は図5(a)の領域Vbの拡大図。
図6図1のダイカストマシンの動作を説明するタイミングチャート。
図7】第2実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す回路図。
図8】第3実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す回路図。
図9】第4実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示に係る複数の実施形態について説明する。なお、第1実施形態以外の実施形態の説明においては、基本的に、先に説明された実施形態との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明された実施形態と同様とされたり、先に説明された実施形態から類推されたりしてよい。また、複数の実施形態において互いに対応する構成については、相違点があっても、便宜上、互いに同一の符号を付すことがある。
【0013】
<第1実施形態>
(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、第1実施形態に係る型付ダイカストマシンDC1の要部の構成を示す側面図(一部に断面図を含む)である。以下の説明において、便宜上、図1の紙面左側を前方といい、図1の紙面右側を後方ということがある。
【0014】
型付ダイカストマシンDC1は、金型101と、金型101を保持しているダイカストマシン1とを有している。ダイカストマシン1は、金型101の内部(キャビティ107)に溶融状態の成形材料を射出(充填)することによって、凝固した成形材料からなる製品(成形品、ダイカスト品)を製造する装置として構成されている。
【0015】
成形材料は、例えば、アルミニウム等の金属である。溶融状態の金属は、溶湯と呼ばれることがある。なお、溶融状態の成形材料に代えて、固液共存状態(半凝固状態又は半溶融状態)の成形材料がキャビティ107に射出されてもよい。
【0016】
金型101は、例えば、固定型103と、固定型103と対向する移動型105とを有している。成形材料が射出されるキャビティ107は、固定型103と移動型105との間に構成される。固定型103は、移動しない金型である。移動型105は、固定型103との対向方向(型開閉方向)に移動する金型である。型開閉方向は、例えば、水平方向である。図1等では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面が1種類のハッチングで示されている。ただし、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定型103及び/又は移動型105は、ダイベースを含んでいてよい。
【0017】
ダイカストマシン1は、機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の制御を行う制御装置5とを有している。マシン本体3は、例えば、金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置7と、キャビティ107に溶湯を射出する射出装置9と、溶湯が凝固して構成された製品を固定型103又は移動型105から押し出す不図示の押出装置とを有している。なお、制御装置5は、射出装置9の構成要素として捉えられてもよい。
【0018】
型付ダイカストマシンDC1は、キャビティ107内に充填された溶湯に対して局部加圧を行う加圧装置LM1(符号は図2)を有している。ただし、加圧装置LM1は、その液圧系が射出装置9の液圧系と接続及び/又は共用されており、加圧装置LM1と射出装置9との区別は必ずしも明確ではない。以下の説明では、加圧装置LM1の構成要素を射出装置9の構成要素として捉えることがある。
【0019】
型付ダイカストマシンDC1において、加圧装置LM1(別の観点では射出装置9の一部)以外の装置の構成及び動作は、公知のものであってもよいし、新規なものであってもよく、換言すれば、種々の態様とされてよい。なお、公知の構成及び動作とされて構わない構成及び動作については、適宜に説明を省略する。以下では、まず、型締装置7、射出装置9及び制御装置5について簡単に説明する。次に、射出装置9の液圧系のうち、公知の構成と同様とされて構わない部分について簡単に説明する。その後、加圧装置LM1について説明する。
【0020】
型締装置7は、例えば、ベース11と、ベース11上に固定されている固定ダイプレート13と、ベース11上において型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート15と、これらのダイプレートに挿通されている複数(例えば4本)のタイバー17と、を有している。固定ダイプレート13と移動ダイプレート15とは型開閉方向において互いに対向している。固定ダイプレート13は、移動ダイプレート15に対向する面に固定型103を保持する。移動ダイプレート15は、固定ダイプレート13に対向する面に移動型105を保持する。移動ダイプレート15の型開閉方向における移動によって、金型101の開閉がなされる。また、型閉じがなされた状態でタイバー17が伸長されることによって、その伸長量に応じた型締力が金型101に付与される。
【0021】
射出装置9は、固定ダイプレート13の背後(移動ダイプレート15とは反対側)に位置している。射出装置9は、キャビティ107に通じるスリーブ19と、スリーブ19内の溶湯をキャビティ107へ押し出すプランジャ21と、プランジャ21を駆動する駆動部23とを有している。なお、スリーブ19及びプランジャ21は、消耗品として捉えられることができるから、駆動部23のみを射出装置として捉えてもよい。
【0022】
スリーブ19は、固定ダイプレート13に挿通されるように設けられている。なお、スリーブ19は、固定型103に挿通されていなくてもよいし(図1の例)、挿通されていてもよい。スリーブ19は、概略、円筒状の部材であり、水平方向(前後方向)に延びるように配置されている。スリーブ19の上面には、溶湯が供給される供給口19aが開口している。
【0023】
プランジャ21は、スリーブ19を摺動するプランジャチップ21aと、プランジャチップ21aに固定されたプランジャロッド21bとを有している。プランジャロッド21bは、前後方向に延びており、その後端は、カップリング25によって駆動部23と連結されている。
【0024】
図1では、射出開始前の状態が示されている。このとき、プランジャチップ21aは、供給口19aよりも後方にてスリーブ19内に(少なくとも一部が)位置している。この状態で、不図示の給湯装置等によって溶湯が供給口19aに注がれる。次に、駆動部23の駆動力によってプランジャチップ21aがキャビティ107に向かって摺動する(前進する)。これにより、溶湯はキャビティ107内に射出される。
【0025】
制御装置5は、例えば、特に図示しないが、コンピュータを含んで構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び外部記憶装置を含んで構成されてよい。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算(制御を含む)を行う種々の機能部が構築される。また、制御装置5は、一定の動作を実行する論理回路を含んでいてもよいし、電源回路を含んでいてもよいし、ドライバを含んで概念されてもよい。制御装置5は、ハードウェア的に1カ所に纏められていてもよいし、複数個所に分散されていてもよい。
【0026】
(射出装置の駆動部)
図2は、型付ダイカストマシンDC1における局部加圧に係る要部の構成を示す回路図である。図2では、射出装置9の構成も示されている。
【0027】
射出装置9の駆動部23は、プランジャ21の後端とカップリング25によって連結されている射出シリンダ27と、射出シリンダ27に通じている液圧装置29とを有している。既述のように、加圧装置LM1の少なくとも一部の構成は、射出装置9の構成と捉えられてよく、液圧装置29は、加圧装置LM1の一部と捉えることができる部分を含んでいる。
【0028】
(射出シリンダ)
射出シリンダ27は、プランジャ21の後方にプランジャ21と同軸的に配置されている。射出シリンダ27は、例えば、シリンダ部材31と、シリンダ部材31の内部を摺動可能な射出ピストン33及び増圧ピストン35と、射出ピストン33から前方(プランジャ21側)へ延びるピストンロッド37と、を有している。
【0029】
シリンダ部材31は、例えば、概略、筒状の部材である。シリンダ部材31の内部の横断面の形状は、例えば、円形である。シリンダ部材31の外形(外側の形状)は、直方体状等の適宜な形状とされてよい。シリンダ部材31は、固定ダイプレート13に対して移動不可能とされている。シリンダ部材31は、小径シリンダ31xと、小径シリンダ31xの後端に直列に連結されている大径シリンダ31yとを有している。大径シリンダ31yの内径は、小径シリンダ31xの内径よりも大きい。
【0030】
射出ピストン33は、小径シリンダ31x内に摺動可能に配置されている。射出ピストン33の形状は、例えば、概略、円柱状である。射出ピストン33の径は、概略、小径シリンダ31xの内径と同じである。射出ピストン33と小径シリンダ31xとの間には、不図示のパッキンが介在してよい。パッキンが介在する場合も、射出ピストン33が小径シリンダ31x(シリンダ部材31)内を摺動すると表現する。他の部材(例えば増圧ピストン35)についても同様とする。小径シリンダ31xの内部の空間は、射出ピストン33によって、ピストンロッド37側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hに区画されている。
【0031】
増圧ピストン35は、小径シリンダ31xを摺動する小径ピストン35xと、大径シリンダ31yを摺動する大径ピストン35yとを有している。大径ピストン35yは、小径ピストン35xの後端に連結されている。小径ピストン35x及び大径ピストン35yそれぞれは、例えば、概略、円柱状の部材である。なお、図示の例とは異なり、小径ピストン35xと大径ピストン35yとの間に、小径ピストン35xの径よりも小さい径を有する連結部が形成されていてもよい。大径シリンダ31yの内部は、大径ピストン35yによって、前側室31aと、後側室31bとに区画されている。増圧ピストン35は、ヘッド側室31hの作動液から圧力を受ける第1面35cと、後側室31bの作動液から圧力を受ける第2面35dとを有している。第2面35dの面積は、第1面35cの面積よりも大きい。その面積比は、適宜に設定されてよい。
【0032】
なお、ここでの面積は、増圧ピストン35を軸方向に摺動させることに寄与する圧力が付与される面積であり、換言すれば、軸方向に見た投影面積である。従って、ここでの面積は、第1面35c及び第2面35dの凹凸に寄らずに一定である。後述する面積S1~S4についても同様である。
【0033】
ピストンロッド37は、例えば、概略、円柱状の部材である。ピストンロッド37の径は、射出ピストン33の径よりも小さい。その差は、適宜に設定されてよい。ピストンロッド37は、シリンダ部材31の外部へ延び出ており、その前端がカップリング25によってプランジャ21の後端と連結されている。
【0034】
ヘッド側室31hへ作動液が供給されることによって、射出ピストン33は前進する。これにより、ピストンロッド37及びカップリング25を介して射出ピストン33に連結されているプランジャ21が前進する。ひいては、スリーブ19内の溶湯がキャビティ107に射出される。すなわち、狭義の射出(後述の増圧を含まない射出)が行われる。
【0035】
その後、後側室31bに作動液が供給されると、増圧ピストン35によってヘッド側室31hの作動液が加圧される。このとき、増圧ピストン35は、第2面35dの面積が第1面35cの面積よりも大きいことから、後側室31bの圧力よりも高い圧力をヘッド側室31hへ付与できる。ヘッド側室31hの圧力は、射出ピストン33、ピストンロッド37及びプランジャ21を介してキャビティ107内に充填されている成形材料に伝えられる。これにより、成形材料の圧力を上昇させる増圧が行われる。
【0036】
なお、本実施形態では、前側室31aは、作動液が満たされていてもよいし、作動液が満たされていなくてもよい。例えば、前側室31aは、大気開放されていてもよい。作動液が満たされていない場合において、前側室31aは、潤滑用に作動液(油)が少量配置されていてもよい。
【0037】
前側室31aに作動液が満たされる場合、この作動液は、何らかの用途に利用されてもよいし、利用されなくてもよい。前者の例としては、例えば、前側室31aに作動液を供給して増圧ピストン35に後方への駆動力を付与する態様を挙げることができる。また、例えば、前側室31aからの作動液の排出を禁止して、増圧ピストン35の意図されていない前進を禁止する態様を挙げることができる。また、後者の例としては、前側室31aとタンクとが接続されているだけの態様を挙げることができる。
【0038】
(液圧装置のうち射出シリンダに係る構成)
液圧装置29のうち射出シリンダ27の駆動に係る構成(加圧装置LM1の駆動に係る新規な構成を除く部分)は、公知の構成であってもよいし、新規な構成であってもよく、換言すれば、種々の態様とされてよい。図2では、種々の態様のうちの一例の要部が示されている。具体的には、以下のとおりである。
【0039】
液圧装置29は、例えば、液圧源としての射出用アキュムレータ39と、作動液を貯留するタンク41と、作動液の流れを制御する液圧回路43と、を有している。この他、液圧装置29は、液圧源としてのポンプを有してよいが、ここでは図示を省略している。
【0040】
射出用アキュムレータ39は、例えば、射出シリンダ27への作動液の供給に寄与する。射出用アキュムレータ39は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、射出用アキュムレータ39は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、射出用アキュムレータ39内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧される。
【0041】
タンク41は、例えば、開放タンクである。すなわち、タンク41は、大気圧下で作動液を保持している。従って、例えば、ロッド側室31rがタンク41に接続されると、ロッド側室31rの圧力は、大気圧又はこれに近い圧力まで低下する。
【0042】
液圧回路43は、例えば、射出用アキュムレータ39とヘッド側室31hとを接続する流路43aを有している。流路43aによって、例えば、射出用アキュムレータ39からヘッド側室31hへの作動液の供給が可能になる。
【0043】
流路43aには、作動液の流れを許容及び禁止する適宜な弁が設けられてよい。図2では、そのようなバルブとしてチェック弁45Aが例示されている。チェック弁45Aは、パイロット圧の導入によって開閉されるチェック弁によって構成されている。チェック弁45Aは、パイロット圧が付与されていないときは、例えば、射出用アキュムレータ39からヘッド側室31hへの流れを許容するとともに、その逆方向の流れを禁止する。
【0044】
液圧回路43は、例えば、射出用アキュムレータ39と後側室31bとを接続する流路43bを有している。流路43bによって、例えば、射出用アキュムレータ39から後側室31bへの作動液の供給が可能になる。図示の例では、流路43bは、射出用アキュムレータ39側の一部が流路43aと共通化されている。
【0045】
流路43bには、作動液の流れを許容及び禁止する適宜な弁が設けられてよい。図2では、そのようなバルブとしてチェック弁45Bが例示されている。チェック弁45Bは、パイロット圧の導入によって開閉されるチェック弁によって構成されている。チェック弁45Bは、パイロット圧が付与されていないときは、例えば、射出用アキュムレータ39から後側室31bへの流れを許容するとともに、その逆方向の流れを禁止する。
【0046】
液圧回路43は、例えば、ロッド側室31rとタンク41とを接続する流路43cを有している。流路43cによって、例えば、射出ピストン33の前進に伴って容積が縮小するロッド側室31rの作動液をタンク41へ排出できる。
【0047】
流路43cには、作動液の流れを許容及び禁止する適宜な弁が設けられてよい。図2では、そのようなバルブとして流量制御弁47が例示されている。流量制御弁47による流量制御によって、例えば、射出ピストン33の速度が制御される。すなわち、液圧回路43は、いわゆるメータアウト回路を有している。
【0048】
流量制御弁47は、例えば、圧力変動があっても流量を一定に保つことができる圧力補償付流量調整弁により構成されている。また、流量制御弁47は、例えば、サーボ機構の中で使用され、入力信号に応じて流量を無段階に(連続的に、任意の値に)変調できるサーボバルブによって構成されている。
【0049】
液圧回路43は、上記の他、種々の構成要素を含んでよい。例えば、特に図示しないが、ポンプとロッド側室31rとを接続する流路、タンク41と前側室31aとを接続する流路、射出用アキュムレータ39とポンプとを接続する流路、並びに、これらの流路それぞれに位置して作動液の流れを許容及び禁止する弁が設けられてよい。
【0050】
また、上記の液圧回路43は、適宜に変形されてよい。例えば、メータアウト回路に代えて、又は加えて、流路43a(流路43bとの共用部分であってもよいし、そうでない部分であってもよい。)に位置する流量制御弁が設けられてよい。すなわち、メータイン回路が設けられてもよい。また、例えば、ロッド側室31rの作動液をヘッド側室31hへ還流する流路、並びに当該流路の流れを許容及び禁止する弁が設けられてもよい。すなわち、ランアラウンド回路が設けられてもよい。メータアウト回路の流量制御弁は、ランアラウンド回路を構成する流路に位置していてもよいし、ランアラウンド回路とタンク41とを接続する流路(ランアラウンド回路の外部)に位置していてもよい。
【0051】
(加圧装置)
加圧装置LM1は、キャビティ107内に充填された溶湯を加圧する加圧部材49と、加圧部材49を駆動する加圧シリンダ51とを有している。これらの構成は、公知の構成であってもよいし、新規な構成であってもよく、換言すれば、種々の態様とされてよい。例えば、以下のとおりである。
【0052】
図3(b)は、加圧部材49及びその周辺を拡大して示す断面図(後述する図3(a)の領域IIIbの拡大図)である。加圧部材49の説明においては、図2に加えて、図3(b)も適宜に参照されたい。
【0053】
(加圧部材)
加圧部材49の形状は、概略、進退方向を長手方向とするピン状であってもよいし(図示の例)、ピン状でなくてもよい。後者の例としては、加圧部材49の進退方向における長さよりも径が大きいブロック状の形状を挙げることができる。また、加圧部材49の進退方向に直交する断面の形状は、円形であってもよいし(図示の例)、円形以外の形状であってもよい。加圧部材49の寸法も任意である。
【0054】
図3(b)に示すように、加圧部材49は、先端側(キャビティ107側)の少なくとも一部が、先端側ほど径が小さくなるテーパ状とされてよい。この場合、凝固した成形材料から加圧部材49を引き抜くことが容易化される。テーパ状とされる範囲は適宜に設定されてよい。図示の例では、加圧部材49がキャビティ107側の駆動限に位置しているときに、加圧部材49のうちキャビティ107内に位置する部分の全体がテーパ状とされている。なお、もちろん、加圧部材49は、先細りしない形状(例えば径が一定の形状)とされても構わない。
【0055】
加圧部材49は、固定型103に配置されてもよいし(図示の例)、移動型105に配置されてもよい。ただし、本実施形態では、加圧装置LM1は、射出装置9と接続される。射出装置9は、一般に、固定型103と固定される。従って、加圧部材49が固定型103に配置されれば、例えば、加圧装置LM1及び射出装置9に共用される液圧装置29の構成が小型化及び/又は簡素化される。
【0056】
なお、本実施形態の説明では、便宜上、加圧部材49が固定型103に配置される態様を前提として説明を行うことがある。
【0057】
加圧部材49は、例えば、その一部又は全部が型(固定型103又は移動型105)に対して進退方向に摺動してよい(当接してよい)。加圧部材49は、後端側の部分(加圧シリンダ51に連結される部分)が型の外部に位置していてもよいし、その全体が型の内部に位置していてもよい。後者の例としては、加圧部材49の後端側部分が不図示のダイベースによって構成された空間に位置している態様を挙げることができる。
【0058】
加圧部材49の進退方向は、適宜な方向とされてよい。例えば、進退方向は、型開閉方向(図2の左右方向)であってもよいし(図示の例)、型開閉方向に交差(直交又は傾斜)する方向であってもよい。ただし、進退方向が型開閉方向であれば、例えば、加圧部材49が配置されている型から成形品を引き剥がす動作(型開動作であってもよいし、及び/又は押出動作であってもよい。)に伴って加圧部材49を成形品から引き抜くことが可能である。
【0059】
加圧部材49のキャビティ107に対する配置位置は適宜に設定されてよい。例えば、キャビティ107は、製品形状に対応する形状を有している製品部107aと、余剰な溶湯が流れ込むオーバーフロー107bとを有している。図示の例では、加圧部材49は、オーバーフロー107bに流れ込んだ溶湯を加圧するように配置されている。ただし、加圧部材49は、製品部107aに位置する溶湯を加圧するように配置されても構わない。この場合、加圧部材49は、例えば、ひけ巣が生じやすい位置に配置されてよい。
【0060】
オーバーフロー107bは、通常、型開閉方向に見て、製品部107aの外周(特にスリーブ19から離れた位置)に接続されている。従って、オーバーフロー107bの溶湯を加圧する加圧部材49は、製品部107a内の溶湯のうちプランジャ21によって圧力を付与しにくい外周側の溶湯に圧力を付与できる。その結果、例えば、製品部107a内の溶湯は、その全体に均等に圧力が付与されやすくなる。ひいては、大型の製品を成形する場合において、プランジャ21によって溶湯に付与する圧力を高くする必要性を低減できる。別の観点では、ダイカストマシン1の大型化の必要性を低減できる。
【0061】
なお、固定型103(加圧部材49が配置される型)は、移動型105側の面に、加圧部材49の先端側部分が出し入れされる凹部107cを有してよい。この凹部107cは、例えば、加圧部材49の先端側部分よりも径が大きくされてよく、また、例えば、移動型105側ほど径が大きくなる逆テーパ状とされてよい。凹部107cによって、加圧部材49をキャビティ107内に出し入れするための容積がキャビティ107に確保される。また、逆テーパ状であることによって、凝固した成形材料が固定型103から抜けやすくなる。もちろん、固定型103は、そのような凹部107cを有さなくてもよいし、逆テーパ状でない凹部107cが形成されてもよい。
【0062】
加圧部材49の数は、適宜に設定されてよく、1つであってもよいし、2以上であってもよい。図2では、図が複雑化することを避けるために、1つの加圧部材49が示されている。
【0063】
(加圧シリンダ)
加圧シリンダ51は、例えば、シリンダ部材53と、シリンダ部材53の内部を摺動可能な加圧ピストン55と、加圧ピストン55からシリンダ部材53の外部へ延びるピストンロッド57と、を有している。
【0064】
シリンダ部材53は、例えば、概略、筒状の部材である。シリンダ部材53の内部の横断面の形状は、例えば、円形である。シリンダ部材53の外形(外側の形状)は、直方体状等の適宜な形状とされてよい。加圧ピストン55は、例えば、概略、円柱状の部材であり、シリンダ部材53の内部を軸方向において摺動可能である。シリンダ部材53の内部の空間は、加圧ピストン55によって、ピストンロッド57側のロッド側室53rと、その反対側のヘッド側室53hに区画されている。ピストンロッド57は、例えば、概略、円柱状の部材である。ピストンロッド57の径は、加圧ピストン55の径よりも小さい。その差は、適宜に設定されてよい。
【0065】
加圧シリンダ51は、例えば、加圧部材49のキャビティ107とは反対側に同軸的に配置され、また、ピストンロッド57側を加圧部材49に向けている。シリンダ部材53は、固定型103(加圧部材49が配置されている型)に対して不動とされる。例えば、シリンダ部材53は、固定型103及び/又は固定ダイプレート13に対してボルトなどによって固定される。ピストンロッド57の先端は、加圧部材49の後端と適宜なカップリング(符号省略)によって連結される。
【0066】
従って、例えば、加圧シリンダ51においては、ヘッド側室53hに作動液が供給されると、加圧ピストン55がロッド側室53r側へ移動する。ひいては、ピストンロッド57を介して加圧ピストン55に連結されている加圧部材49がキャビティ107に向かって前進する。
【0067】
上記の説明とは逆に、シリンダ部材53を加圧部材49に固定し、ピストンロッド57を固定型103に対して不動としてもよい。また、加圧シリンダ51の向きは、上記の説明とは逆であってもよい。すなわち、シリンダ部材53及びピストンロッド57のいずれが不動となるか、及び加圧シリンダ51の向きの組み合わせは、図示以外に3通り可能である。
【0068】
上記に関連して、加圧部材49をキャビティ107の側へ前進させるときに作動液が供給されるシリンダ室(第1室)は、ロッド側室53rであってもよい。例えば、図示の加圧シリンダ51の向きで、ピストンロッド57が不動とされ、シリンダ部材53が加圧部材49に連結される態様を考える。この態様では、ロッド側室53rに作動液が供給されることによって加圧部材49がキャビティ107の側へ前進する。
【0069】
なお、本実施形態の説明では、便宜上、図示の態様(ピストンロッド57が加圧部材49に向けられる向きで、かつシリンダ部材53が不動な態様)を前提として説明を行うことがある。
【0070】
1つの加圧シリンダ51が駆動する加圧部材49の数は、1つであってもよいし(図示の例)、2以上であってもよい。後者の場合、例えば、公知の押出装置から類推できるように、ピストンロッド57に直交する板状部材をピストンロッド57の先端に固定し、この板状部材に複数の加圧部材49を並列に固定してよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、図示の態様(加圧シリンダ51が1つの加圧部材49を駆動する態様)を前提として説明を行うことがある。
【0071】
後述する説明から理解されるように、本実施形態において、ロッド側室53rへの作動液の供給による加圧ピストン55の移動(加圧部材49のキャビティ107からの退避)は、必ずしも行われなくてよい。従って、ロッド側室53rは、作動液が満たされていてもよいし、満たされていなくてもよい。後者の場合、例えば、ロッド側室53rは、大気開放されていてよい。この場合、作動液としての油が潤滑等の目的でロッド側室53rに少量配置されていても構わない。また、ロッド側室53rに作動液が満たされている場合、ロッド側室53rは、その容積が拡張するときにタンク41又は駆動限(例えばポンプ)から作動液の不足分が供給されるだけであってよい。
【0072】
さらに、加圧シリンダ51は、加圧ピストン55がシリンダ部材53からヘッド側室31hとは反対側へ延び出て(別の観点ではピストンロッド57の径が加圧ピストン55の径と同じであり)、ロッド側室53rを有さない構成とされてもよい。ただし、本実施形態の説明では、便宜上、図示の態様(加圧シリンダ51がロッド側室53rを有している態様)を前提として説明を行うことがある。
【0073】
(液圧装置のうち加圧シリンダに係る構成)
図2に示すように、液圧装置29は、加圧シリンダ51のヘッド側室53hに接続されており、ヘッド側室53hに対する作動液の流入及び流出を可能にしている。具体的には、以下のとおりである。
【0074】
液圧装置29の液圧回路43は、射出シリンダ27のヘッド側室31hと、加圧シリンダ51のヘッド側室53hとを連通する連通路43dを有している。図示の例では、連通路43dは、ヘッド側室31h側の一部が、射出用アキュムレータ39とヘッド側室31hとを連通する流路43aのヘッド側室31h側の一部と共通化されている。ただし、連通路43dと流路43aとは、その全体が互いに別個の流路であってもよい。また、図示のような連通路43dのうち、流路43aと共通化されていない部分のみが連通路と捉えられてもよい。
【0075】
連通路43dが設けられていることによって、例えば、射出シリンダ27のヘッド側室31hに付与される圧力を加圧シリンダ51のヘッド側室53hにも伝えることができる。これにより、例えば、射出用アキュムレータ39からヘッド側室31hへ作動液を供給して射出を開始するときに、ヘッド側室53hへも作動液を供給し、加圧部材49を前進限へ移動させたり、及び/又は加圧部材49を前進限に保持したりできる。なお、この動作の意義については後述する。また、例えば、増圧ピストン35によってヘッド側室31hの作動液を加圧して増圧を行うときに、その加圧された圧力をヘッド側室53hへも伝え、加圧部材49を前進させ、局部加圧を行うことができる。
【0076】
連通路43dには、適宜な構成要素が配置又は接続されてよい。図示の例では、ヘッド側室31h側から順に、絞り弁59A、切換弁61、チェック弁45C、絞り弁59B及びサージ用アキュムレータ63が順に配置又は接続されている。なお、これらの構成要素の1つ以上又は全部は、設けられなくても構わない。
【0077】
絞り弁59Aは、開口度が一定とされることによって流量と圧力差との間に一定の関係を保つものであり、いわゆる無補償の流量制御弁である。絞り弁59Aの具体的な構成は、ニードル弁、ディスク弁及びボール弁等の公知の構成を含む種々の構成とされてよい。絞り弁59Aの開口度は、固定であってもよいし、可変であってもよいが、少なくとも1以上の成形サイクルに亘って一定であり、かつ連通路43dの断面積よりも小さい。絞り弁59Aは、連通路43dに位置しており、連通路43dにおける流量(圧力差)を規制する。この規制は、例えば、射出シリンダ27のヘッド側室31hに圧力を付与するタイミングと、加圧シリンダ51のヘッド側室53hに圧力を付与するタイミングとの調整に寄与する。なお、絞り弁59Aの配置に代えて、連通路43dの断面積が局部的に小さくなるように連通路43dが構成されてもよい。
【0078】
切換弁61は、連通路43dに位置しており、連通路43dにおける作動液の流れを許容及び禁止する。図示の例では、切換弁61は、2ポート2位置の切換弁であり、ばねによって閉位置とされ、ソレノイドによって開位置に駆動される。切換弁61は、例えば、適宜な時期に閉じられて、意図されていない加圧シリンダ51の動作を規制する。なお、連通路43dにおける作動液の流れを許容及び禁止する弁として、切換弁61に代えて、チェック弁45Aのようなパイロット式のチェック弁が設けられても構わない。
【0079】
チェック弁45Cは、連通路43dに位置しており、射出シリンダ27のヘッド側室31hの側から加圧シリンダ51のヘッド側室53hの側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。従って、例えば、ヘッド側室31hに付与される圧力がヘッド側室53hにも付与されることを許容しつつ、後述するサージ圧によってヘッド側室53hに生じた高い圧力がヘッド側室31hの側へ伝わる蓋然性が低減される。図示の例では、チェック弁45Cは、パイロット式のものではないが、パイロット式のものとされても構わない。
【0080】
絞り弁59Bは、絞り弁59Aの構成と同様の構成のものであり、絞り弁59Aの構成に係る既述の説明は、適宜に絞り弁59Bに援用されてよい。もちろん、サイズ及び形状等の具体的な構成は両者で異なっていてよい。絞り弁59Bの開口度は、固定であってもよいし、可変であってもよいが、少なくとも1以上の成形サイクルに亘って一定であり、かつ連通路43dの断面積よりも小さい。すなわち、絞り弁59Bにおける流量は、連通路43dにおける流量よりも少ない。絞り弁59Bは、チェック弁45Cをバイパスする流路(符号省略)に位置している。絞り弁59Bは、流量を規制することによって、例えば、サージ圧によって加圧シリンダ51のヘッド側室53hに生じた高い圧力が射出シリンダ27の側へ伝わる蓋然性を低減することに寄与する。その一方で、絞り弁59Bは、完全には流れを禁止しないことによって、例えば、サージ用アキュムレータ63に流れ込んだ作動液を射出シリンダ27の側へ排出することを許容する。なお、絞り弁59Bの配置に代えて、バイパス流路の一部又は全部の断面積が連通路43dの断面積よりも小さくなるようにバイパス流路を構成してもよい。
【0081】
サージ用アキュムレータ63は、連通路43dに接続されており、例えば、溶湯の一時的かつ急激な圧力の上昇(サージ圧)の吸収に寄与する。後述するように、サージ用アキュムレータ63は、公知のサージ用アキュムレータのように射出シリンダ27に生じる圧力(別の観点では溶湯からプランジャ21に付与される圧力)を吸収するのではなく、加圧シリンダ51に生じる圧力(別の観点では溶湯から加圧部材49に付与される圧力)を吸収する。射出用アキュムレータ39の構成についての既述の説明は、適宜にサージ用アキュムレータ63に援用されてよい。ただし、サージ用アキュムレータ63は、射出用アキュムレータ39に比較して、蓄圧可能な圧力が小さいものとされたり、放出可能な作動液の量が少ないものとされたりしてよい。
【0082】
なお、本実施形態の説明においては、サージ用アキュムレータ63がシリンダ式のものである態様を前提として説明を行うことがある。シリンダ式のサージ用アキュムレータ63は、シリンダ部材63aと、シリンダ部材63a内を摺動可能なピストン63bとを有している。シリンダ部材63aの内部は、ピストン63bによって、液体室63cと、気体室63dとに区画されている。液体室63cは、連通路43dに通じている。気体室63dは、適宜な種類の気体(例えば窒素)が充填されている。
【0083】
(パラメータの具体例)
これまでに説明した構成要素の寸法及び圧力等のパラメータ、並びにこれらのパラメータの構成要素同士における大小関係等は、適宜に設定されてよい。以下に、特定の作用を奏することができるパラメータの例を示す。
【0084】
(シリンダ等の面積比)
射出シリンダ27、プランジャ21、加圧シリンダ51及び加圧部材49の断面積(換言すれば作動液又は成形材料の圧力を受ける面積)は適宜に設定されてよい。例えば、これらは、以下のように設定されてよい。
【0085】
1つの加圧シリンダ51が駆動する加圧部材49の数が1つである態様を想定する。加圧ピストン55が加圧シリンダ51のヘッド側室53h(換言すれば局部加圧を行うときに作動液が供給されるシリンダ室)の作動液から圧力を受ける面積をS3とする。加圧部材49がキャビティ107の成形材料に圧力を付与する面積をS4とする。射出ピストン33が射出シリンダ27のヘッド側室31hの作動液から圧力を受ける面積をS1とする。プランジャ21がキャビティ107の成形材料に圧力を付与する面積をS2とする。
【0086】
このとき、例えば、S4/S3は、S2/S1に対して、0.5倍以上1.5倍以下、0.8倍以上1.2倍以下、0.9倍以上1.1倍以下、1.0倍以上1.5倍以下、1.0倍以上1.2倍以下、又は1.0倍以上1.1倍以下とされてよい。もちろん、S4/S3のS2/S1に対する比は、上記の範囲外であってもよい。
【0087】
なお、記載されていない小数桁は四捨五入されてよい。例えば、0.5倍以上という範囲は、0.45倍を含んでよい。1.5倍以下という範囲は、1.54倍を含んでよい。他の数値範囲においても同様とする。
【0088】
上記のように面積S1~S4を設定すると、例えば、プランジャ21が成形材料に付与する圧力と、加圧部材49が成形材料に付与する圧力とを同等にすることができる。具体的には以下のとおりである。射出シリンダ27のヘッド側室31hに圧力を付与するとき、プランジャ21が成形材料に付与する圧力は、ヘッド側室31hの圧力のS2/S1倍となる。同様に、加圧シリンダ51のヘッド側室53hに圧力を付与するとき、加圧部材49が成形材料に付与する圧力は、ヘッド側室53hの圧力のS4/S3倍となる。一方、ヘッド側室31h及びヘッド側室53hは、連通路43dによって接続されており、両シリンダ室の圧力は同等となり得る。従って、理論上は、加圧部材49が成形材料に付与する圧力の、プランジャ21が成形材料に付与する圧力に対する比は、S4/S3のS2/S1に対する比と同じである。そして、S4/S3のS2/S1に対する比が上記の範囲内にあれば、概ね、プランジャ21が成形材料に付与する圧力と、加圧部材49が成形材料に付与する圧力とは同等となる。
【0089】
1つの加圧シリンダ51が駆動する加圧部材49の数が複数である態様においては、1つの加圧シリンダ51が駆動する全ての加圧部材49がキャビティ107の成形材料に圧力を付与する面積の合計を面積S4とし、S4/S3のS2/S1の比が上記の範囲に収まるか否か、判定してよい。2以上の加圧シリンダ51がある場合においては、S4/S3のS2/S1に対する比が上記の範囲に収まるという条件は、一部(少なくとも1つ)の加圧シリンダ51について成立してもよいし、全部の加圧シリンダ51について成立してもよい。
【0090】
(アキュムレータ等の容積比)
サージ用アキュムレータ63の容積及び加圧シリンダ51の容積は適宜に設定されてよい。例えば、これらは、以下のように設定されてよい。
【0091】
加圧シリンダ51においては、加圧ピストン55のシリンダ部材53に対する移動可能な範囲によって、ヘッド側室53hの容積の最大変化量が規定されている。加圧ピストン55の移動可能な範囲は、例えば、シリンダ部材53が有しているストッパ(シリンダ部材53の端部内面であってよい)によって規制される。例えば、1つのストッパは、加圧ピストン55が前進限(駆動限)に位置したときに加圧ピストン55に前方から後方へ当接(別の観点では係合)して加圧ピストン55の更なる前進を規制する。同様に、他のストッパは、加圧ピストン55が後退限(駆動限)に位置したときに加圧ピストン55に後方から前方へ当接して加圧ピストン55の更なる後退を規制する。上記の他、不動の部材(例えば固定型103又は固定ダイプレート13)がシリンダ部材53の外部に有しているストッパが、ピストンロッド57、加圧部材49又はこれらを連結するカップリング(符号省略)に当接することによって、加圧ピストン55の移動可能な範囲が規定されてもよい。すなわち、移動可能な範囲は、作動液の圧力によらずに機械的に規定されるものであればよい。
【0092】
サージ用アキュムレータ63がピストン63bを有する構成である態様を想定する。ピストン63bを有する構成としては、図示の例のように、シリンダ部材63aの内部がピストン63bによって液体室63cと気体室63dとに区画されている構成を挙げることができる。また、図示の例とは異なり、ピストン63b(ラム)がシリンダ部材63aから液体室63cとは反対側に延び出ており、重力及び/又はばねによって、ピストン63bを液体室63cの側へ付勢する構成が挙げられる。
【0093】
ピストン63bを有するサージ用アキュムレータ63においても、加圧シリンダ51と同様に、液体室63cの容積の最大変化量がピストン63bのシリンダ部材63aに対する移動可能な範囲によって規定されてよい。ピストン63bの移動可能な範囲は、加圧ピストン55の移動可能な範囲と同様に、機械的に(例えば係合によって)規定されるものである。例えば、シリンダ部材63aがその内部に有するストッパ(シリンダ部材63aの端部内面であってよい)、又はシリンダ部材63aの外部に位置するストッパによって、液体室63cの側への駆動限、及びその反対側への駆動限が規定されてよい。
【0094】
上記のような加圧シリンダ51のヘッド側室53hの容積の最大変化量(dV1とする。)、及び液体室63cの容積の最大変化量(dV2とする。)は、適宜に設定されてよく、また、両者の相対関係も適宜に設定されてよい。例えば、最大変化量dV2は、最大変化量dV1に対して、0.5倍以上1.5倍以下、0.8倍以上1.2倍以下、0.9倍以上1.1倍以下、1.0倍以上1.5倍以下、1.0倍以上1.2倍以下、又は1.0倍以上1.1倍以下とされてよい。すなわち、最大変化量dV1と最大変化量dv2とは、互いに同じ、又は互いに近い大きさとされてよい。もちろん、dV2/dV1は、上記の範囲外とされてもよい。
【0095】
dV2/dV1が上記のような範囲にあることによって、例えば、サージ用アキュムレータ63によってサージ圧を十分に吸収することができる。また、例えば、射出シリンダ27のヘッド側室31hから加圧シリンダ51のヘッド側室53hへ伝えるべき圧力をサージ用アキュムレータ63が吸収してしまう蓋然性を低減できる。これらの効果については、後に詳述する。
【0096】
上記においては、サージ用アキュムレータ63の容積の最大変化量として、ピストン63bの移動可能な範囲によって規定されるもの(機械的に規定されるもの)を例に取った。しかし、成形サイクル中においてサージ用アキュムレータ63の液体室63cに生じ得る最小圧力及び最大圧力によって規定される容積の最大変化量の、加圧シリンダ51のヘッド側室53hの容積の最大変化量に対する比が、上記の範囲を満たしてもよい。この場合、サージ用アキュムレータ63は、ピストン63bを有する構成のものに限定されない。
【0097】
(アキュムレータの圧力)
射出用アキュムレータ39及びサージ用アキュムレータ63の圧力(本実施形態の説明において、特に断りが無い限り、作動液に付与する圧力。)は適宜に設定されてよい。例えば、これらは、以下のように設定されてよい。
【0098】
上記と同様に、サージ用アキュムレータ63がピストン63bを有する態様を想定する。ピストン63bが液体室63cの側への移動の駆動限に位置しているときのサージ用アキュムレータ63の圧力をP2とする。また、射出用アキュムレータ39の放出開始時の圧力をP1とする。なお、放出開始時は、後述する説明から理解されるように、本実施形態では、射出開始時である。圧力P2は、圧力P1に対して、例えば、0.5倍以上1.5倍以下、0.8倍以上1.2倍以下又は0.9倍以上1.1倍以下とされてよい。もちろん、P2/P1は、上記の範囲外とされてもよい。P2/P1が上記のような範囲にある場合、例えば、後述する説明から理解されるように、サージ用アキュムレータ63によって、意図されていない作動液の流れが生じる蓋然性を低減できる。
【0099】
(ダイカストマシンのその他の構成)
型付ダイカストマシンDC1は、種々のセンサを有してよい。そして、制御装置5は、種々のセンサの検出値に基づいて、液圧装置29等の各部を制御してよい。
【0100】
上記のようなセンサの例を挙げる。例えば、特に図示しないが、プランジャ21の位置を検出する位置センサ、ヘッド側室31hの圧力を検出する圧力センサ、ロッド側室31rの圧力を検出する圧力センサ、及び/又は射出用アキュムレータ39の圧力を検出する圧力センサが設けられてよい。位置の微分によって速度が得られるから、位置センサは速度センサと捉えられてもよい。各種のセンサは、公知の構成を含む種々のものとされてよい。
【0101】
プランジャ21の位置を検出するセンサは、例えば、射出速度(換言すればプランジャ21の速度)の制御に利用される。ヘッド側室31hの圧力を検出する圧力センサ(及び必要に応じてロッド側室31rの圧力を検出する圧力センサ)は、射出圧力(換言すればプランジャ21が成形材料に付与する圧力)の制御に利用される。射出用アキュムレータ39の圧力を検出する圧力センサは、例えば、射出用アキュムレータ39の蓄圧の制御に利用される。
【0102】
(射出及び局部加圧に係る動作の概要)
図3(a)~図5(b)は、射出装置9及び加圧装置LM1の動作の概要を示す模式図である。
【0103】
図3(a)、図4(a)及び図5(a)は、図2を模式化したものであり、成形サイクル中の互いに異なる時点の状態を示している。図3(b)は、図3(a)の領域IIIの拡大図である。図4(b)は、図4(a)の領域IIIの拡大図である。図5(b)は、図5(a)の領域IIIの拡大図である。
【0104】
図3(a)、図4(a)及び図5(a)では、紙面の都合上、図2で示した符号の一部のみを示している。以下の説明における符号については、適宜に図2を参照されたい。これらの図において、太く示された流路は、作動液が流れている(別の観点では圧力が付与されている)ことを示している。
【0105】
図3(a)は、低速射出及び高速射出等の狭義の射出(射出工程)が行われている状態を示している。射出工程においては、射出用アキュムレータ39からヘッド側室31hへ作動液が供給される。これにより、射出ピストン33が前進し、ひいては、プランジャ21がスリーブ19内の溶湯109をキャビティ107内に押し出す。
【0106】
射出工程が行われているとき、射出用アキュムレータ39の圧力は、連通路43dを介して加圧シリンダ51のヘッド側室53hにも付与される。これにより、図3(b)に示すように、加圧部材49は、キャビティ107側の駆動限に位置している(図3(a)における加圧ピストン55の位置も参照。)。なお、加圧部材49の駆動限は、加圧シリンダ51における既述の駆動限の説明から理解されるように、加圧シリンダ51における係合によって規定されてもよいし、他の部材における係合によって規定されてもよい(後述のキャビティ107とは反対側の駆動限についても同様。)。
【0107】
射出用アキュムレータ39の圧力は、連通路43dを介してサージ用アキュムレータ63にも付与される。ただし、既述のように、サージ用アキュムレータ63は、ピストン63bが液体室63cの側の駆動限に位置しているときに、射出用アキュムレータ39の射出開始時における圧力と同等とされている。従って、サージ用アキュムレータ63の圧力と、射出用アキュムレータ39の圧力とは概ねバランスしている。ひいては、ピストン63bは、液体室63cの側の駆動限に位置する状態が維持される。
【0108】
図4(a)は、図3(a)の後であって、溶湯がキャビティ107の概ね全体に充填された状態を示している。このとき、逃げ場を失った溶湯をプランジャ21が押すことによって溶湯の圧力は上昇する。プランジャ21の慣性力によって溶湯に衝撃が加えられ、いわゆるサージ圧が生じることもある。
【0109】
図4(b)に示すように、加圧部材49は、溶湯から圧力を受けてキャビティ107から退避する方向へ移動する。これにより、図4(a)に示されているように、加圧シリンダ51においては、加圧ピストン55がヘッド側室53hの側へ移動し、ヘッド側室53hの作動液が連通路43dに排出される。この作動液は、サージ用アキュムレータ63に流れ込む。これにより、サージ圧が吸収される。なお、加圧部材49は、キャビティ107とは反対側の駆動限に到達してもよいし(図示の例)、到達しなくてもよい。
【0110】
図5(a)は、図4(a)の後であって、増圧(増圧工程)が行われている状態を示している。増圧工程においては、射出用アキュムレータ39から射出シリンダ27の後側室31dへ作動液が供給される。その結果、増圧ピストン35の増圧作用によって、射出用アキュムレータ39の圧力よりも高い圧力が射出シリンダ27のヘッド側室31hに付与される。ひいては、プランジャ21がキャビティ107内の溶湯に付与する圧力が上昇する。
【0111】
射出用アキュムレータ39の圧力よりも高くなったヘッド側室31hの圧力は、連通路43dを介して加圧シリンダ51のヘッド側室53hにも付与される。これにより、図5(b)に示すように、加圧部材49は、キャビティ107の側へ移動して、溶湯に圧力を付与する。すなわち、局部加圧が行われる。
【0112】
(射出及び局部加圧に係る動作の詳細)
図6は、上記のような射出及び局部加圧に係る動作の詳細を説明するためのタイミングチャートである。
【0113】
図6において、横軸は時間tを示している。また、実線Lvは射出速度(プランジャ21の速度)の変化を示し、破線Lpは射出圧力(例えばプランジャ21が溶湯に付与する圧力)の変化を示している。実線Lv及び破線Lpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度V及び射出圧力Pの大きさを示している。
【0114】
図6の下方においては、チェック弁45A(図6では「射出用バルブ」)及びチェック弁45B(図6では「増圧用バルブ」)の動作が示されている。「開」は、これらのバルブがパイロット圧の導入によって開かれていることを示している。「閉」は、これらのバルブがパイロット圧の導入によって閉じられていることを示している。ただし、チェック弁45Aの「閉」は、ヘッド側室53hの圧力が射出用アキュムレータ39の圧力よりも高くなることによる自閉であってもよい。
【0115】
射出装置9は、例えば、概観すると、低速射出(時点t0~t1)、高速射出(時点t1~t3)、増圧(時点t4~t5)及び保圧(時点t5~t6)を順に行う。すなわち、射出装置9は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止する等の観点から比較的低速(速度V)でプランジャ21を前進させる低速射出を行う。次に、射出装置9は、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速(速度V)でプランジャ21を前進させる高速射出を行う。次に、射出装置9は、成形品のヒケをなくす等の観点から、プランジャ21の前進する方向の力によりキャビティ107内の溶湯を鋳造圧力Pまで上昇させる増圧を行う。その後、射出装置9は、鋳造圧力Pを維持する保圧を行う。具体的には、以下のとおりである。
【0116】
(低速射出:t0~t1)
低速射出の開始直前において、射出シリンダ27は、図2に示す状態となっている。すなわち、射出ピストン33及び増圧ピストン35は、後退限等の初期位置に位置している。また、射出用アキュムレータ39は、作動液の充填(蓄圧)が完了している。チェック弁45A及び45B並びに流量制御弁47は、例えば、閉じられている。切換弁61は、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。以下では、切換弁61は常に開かれているものとして、切換弁61の動作の説明は省略する。加圧ピストン55は、いずれの位置を初期位置としてもよいが、例えば、図2のように前進限に位置している。サージ用アキュムレータ63のピストン63bは、例えば、液体室63cの側の駆動限に位置している。
【0117】
制御装置5は、所定の射出開始条件が満たされたか否か判定する。射出開始条件は、例えば、固定型103及び移動型105の型締が終了し、溶湯がスリーブ19に供給されたことを示す情報が得られたことなどとされてよい。そして、制御装置5は、射出開始条件が満たされたと判定すると、射出(低速射出)を開始する。
【0118】
具体的には、制御装置5は、チェック弁45Aを開く。これにより、射出用アキュムレータ39からヘッド側室31hへ作動液が供給される。また、制御装置5は、流量制御弁47を開く。これにより、ロッド側室31rからの作動液の排出が許容される。そして、射出ピストン33は、ヘッド側室31hから受ける圧力によってロッド側室31rの作動液を排出しながら前進する。これにより、図3(a)及び図3(b)を参照して説明した動作が実現される。
【0119】
プランジャ21の速度は、ロッド側室31rから排出される作動液の流量が流量制御弁47によって調整されることによって制御される。具体的には、制御装置5は、不図示の位置センサによって検出されるプランジャ21の速度が目標速度に収束するように流量制御弁47の開度をフィードバック制御する。このフィードバック制御は、例えば、速度自体のフィードバック制御であってもよいし、検出されるプランジャ21の位置が時々刻々の目標位置となるように行われる位置のフィードバック制御によって実現される実質的な速度のフィードバック制御であってもよい。プランジャ21の速度は、例えば、低速(例えば1m/s未満)かつ一定とされる。ただし、プランジャ21の速度の多段制御が行われてもよい。
【0120】
(高速射出:t1~t3)
制御装置5は、所定の高速開始条件が満たされると、流量制御弁47の開度を大きくし、ロッド側室31rから排出される作動液の流量を多くし、プランジャ21の速度を高くする。このときの制御は、例えば、目標速度が異なること以外は、低速射出のときの制御と同様でよい。高速開始条件は、例えば、プランジャ21の位置が所定の高速切換位置に到達したこととされてよい。制御装置5は、例えば、プランジャ21の検出位置が高速切換位置に到達したか否かを判定して目標速度を切り換えてもよいし、高速切換位置及び目標速度に基づいて設定された時々刻々の目標位置を実現するだけであってもよい。
【0121】
(減速射出:t3~t4)
溶湯がキャビティ107にある程度充填されると、プランジャ21は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、流量制御弁47の開口度を小さくする減速制御がなされてもよい。このような減速制御によって、例えば、サージ圧が低減される。
【0122】
(サージ圧の吸収:t4付近)
また、溶湯がキャビティ107にある程度充填されると、図4(a)及び図4(b)を参照して説明したように、一時的かつ急激に上昇した溶湯の圧力(例えばサージ圧)が加圧部材49及び加圧シリンダ51を介して連通路43dに付与される。この圧力は、既述のように、サージ用アキュムレータ63によって吸収される。
【0123】
このとき、サージ用アキュムレータ63の液体室63cの容積の最大変化量(dV2)が、加圧シリンダ51のヘッド側室53hの最大変化量(dV1)に対して同等以上である態様では、サージ用アキュムレータ63は、ヘッド側室53hから排出された全ての作動液を吸収可能である。また、例えば、dV2がdV1と概ね同等である態様では、図4(a)に示されているように、ピストン63bは、液体室63cとは反対側の駆動限に位置し得る。連通路43dにおいて、サージ用アキュムレータ63よりも射出シリンダ27の側への圧力の伝達は、チェック弁45C(及び絞り弁59B)によって低減される。
【0124】
サージ用アキュムレータ63に吸収された作動液は、絞り弁59Bを介して射出シリンダ27の側へ逃げることが可能である。ただし、以下に述べる増圧によって射出シリンダ27のヘッド側室31hの圧力が上昇していくことから、その量は限定的とすることが可能である。従って、例えば、図4(a)に示されているように液体室63cとは反対側の駆動限に位置しているピストン63bは、その位置を保持しやすい。
【0125】
(増圧:t4~t5)
制御装置5は、所定の増圧開始条件が満たされると、チェック弁45Bを開く。増圧開始条件は、例えば、ヘッド側室31hの圧力を検出する不図示の圧力センサ(及び必要に応じてロッド側室31rの圧力を検出する不図示の圧力センサ)の検出値に基づく射出圧力が所定の圧力に到達したこと、又は不図示の位置センサにより検出されるプランジャ21の検出位置が所定の位置に到達したことである。
【0126】
チェック弁45Bが開かれることによって、射出用アキュムレータ39から後側室31dに作動液が供給される。そして、増圧ピストン35の増圧作用によってヘッド側室31hの圧力が射出用アキュムレータ39の圧力よりも上昇し、チェック弁45Aは自閉する。これにより、図5(a)及び図5(b)を参照して説明したように、増圧が行われ、かつ局部加圧が行われる。なお、チェック弁45Aは、自閉ではなく、パイロット圧の導入によって閉じられてもよい。
【0127】
制御装置5は、増圧工程においては、ヘッド側室31hの圧力を検出する不図示の圧力センサ(及び必要に応じてロッド側室31rの圧力を検出する不図示の圧力センサ)の検出値(射出圧力の検出値)に基づく圧力制御を行う。なお、圧力制御の開始と、後側室31dへの作動液の供給開始とは、タイミングがずれていても構わない。圧力制御では、制御装置5は、例えば、射出圧力の検出値が所定の昇圧曲線に沿って上昇するように流量制御弁47をフィードバック制御する。その後、射出圧力は、鋳造圧力P(終圧)に至る。
【0128】
増圧ピストン35によって加圧された射出シリンダ27のヘッド側室31hの圧力は、連通路43dを介して加圧シリンダ51のヘッド側室53hへ伝えられる。このとき、絞り弁59Aによって圧力の伝達が遅延される。これにより、例えば、プランジャ21による溶湯の昇圧を速やかに開始することができる。
【0129】
また、既述のように、サージ圧を吸収したサージ用アキュムレータ63において、ピストン63bは、液体室63cとは反対側の駆動限又はその付近に位置し得る。従って、増圧ピストン35によって加圧された射出シリンダ27のヘッド側室31hの圧力がサージ用アキュムレータ63によって吸収される蓋然性が低減される。従って、例えば、速やかに局部加圧を開始することができる。
【0130】
(保圧:t5~t6)
制御装置5は、圧力センサの検出値等に基づいて射出圧力が終圧に到達したと判定すると、終圧が維持されるように液圧装置29を制御する。すなわち、保圧が行われる。具体的には、例えば、射出用アキュムレータ39から後側室31bへの圧力の付与が継続されることによって、保圧が行われる。
【0131】
保圧が行われている間において、キャビティ107内の溶湯は冷却されて凝固する。制御装置5は、溶湯が凝固したと判定すると(時点t6)、保圧を終了するように液圧装置29を制御する。例えば、制御装置5は、チェック弁45Aを閉じ、射出用アキュムレータ39から後側室31bへの作動液の流れを禁止したり、流量制御弁47を閉じ、ロッド側室31rからの作動液の流出を禁止したりする。制御装置5は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定してよい。例えば、制御装置5は、終圧が得られた時点t5等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
【0132】
(突出動作:t8~t9)
保圧終了後、制御装置5は、移動型105を固定型103から離れる方向へ移動させて型開きを行うように型締装置7を制御する。溶湯が凝固して形成された成形品は、固定型103及び移動型105のいずれか一方の金型から離れ、他方の金型に残る。その後(又は型開きと同時に)、制御装置5は、上記他方の金型から成形品を押し出すように不図示の押出装置を制御する。
【0133】
型締装置7による型開きによって成形品を前記一方の金型としての固定型103から離すとき、又は押出装置によって成形品を前記他方の金型としての固定型103から押し出すとき、制御装置5は、プランジャ21及び加圧部材49によって成形品を固定型103から押し出す動作(以下、「突出動作」ということがある。)を行うように射出装置9を制御してよい。
【0134】
具体的には、例えば、制御装置5は、増圧のときと同様に、チェック弁45A及び流量制御弁47を開く。これにより、増圧のときと同様に、プランジャ21及び加圧部材49によって成形品が押される。ただし、このときの制御は、速度制御であってもよいし、圧力制御であってもよい。例えば、制御装置5は、プランジャ21の速度が、移動型105の速度又は不図示の押出装置の押出ピンの速度と同じになるように、検出されたプランジャ21(及び/又は加圧部材49)の速度に基づいて速度制御を行ってよい。
【0135】
(プランジャ後退)
その後、制御装置5は、初期状態へ復帰するための動作を行う。例えば、射出ピストン33及び増圧ピストン35を後退させ、また、射出用アキュムレータ39の充填を行う。これらの動作は、公知の動作を含む種々の態様とされてよい。
【0136】
例えば、制御装置5は、ヘッド側室31hからの作動液の排出を許容した状態で、不図示のポンプからロッド側室31rに作動液を供給し、射出ピストン33を後退させる。このときヘッド側室31hから排出される作動液は、射出用アキュムレータ39に排出されてもよいし、タンク41に排出されてもよい。
【0137】
また、例えば、制御装置5は、ヘッド側室31hからの作動液を禁止した状態で、不図示のポンプからロッド側室31rに作動液を供給する(別の観点では射出ピストン33を後退させる。)。これにより、増圧ピストン35が後退する。又はロッド側室31rからの作動液の排出を禁止した状態で、不図示のポンプからヘッド側室31h(必要に応じて前側室31a)に作動液を供給する。これにより、増圧ピストン35が後退する。増圧ピストン35の後退に伴って後側室31dから排出される作動液は、射出用アキュムレータ39に排出されてもよいし、タンク41に排出されてもよい。
【0138】
増圧ピストン35によるヘッド側室31hの作動液の加圧(別の観点では保圧工程)が終了して、ヘッド側室31hの圧力(別の観点では連通路43dの圧力)が射出用アキュムレータ39の圧力に近づいていくと、サージ用アキュムレータ63の液体室63cからは作動液が排出される。そして、ピストン63bは初期位置(例えば液体室63cの側の駆動限)に位置する。また、加圧ピストン55は、突出動作から引き続いて、連通路43dの作動液の圧力を受け、キャビティ107の側の駆動限に位置する状態が維持される。
【0139】
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、射出シリンダ27と、液圧装置29とを有している。射出シリンダ27は、キャビティ107内に成形材料を射出するプランジャ21に連結される。液圧装置29は、射出シリンダ27と、加圧シリンダ51とに通じている。加圧シリンダ51は、キャビティ107内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材49に連結される。射出シリンダ27は、プランジャ21に連結される射出ピストン33と、射出ピストン33を摺動可能に収容しているシリンダ部材31と、を有している。シリンダ部材31は、射出ピストン33のプランジャ21とは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室31hを有している。液圧装置29は、連通路43dを有している。連通路43dは、ヘッド側室31hと、加圧シリンダ51の第1室(ヘッド側室53h)とを連通している。ヘッド側室53hは、加圧部材49をキャビティ107に向かって前進させるときに作動液が供給されるシリンダ室である。
【0140】
別の観点では、本実施形態に係る成形機(ダイカストマシン1)は、上記のような射出装置9と、型締装置7とを有している。型締装置7は、キャビティ107を構成する型(金型101)を保持する。
【0141】
更に別の観点では、本実施形態に係る型付成形機(型付ダイカストマシンDC1)は、上記のような成形機(ダイカストマシン1)と、上記型(金型101)と、金型101に配置されている加圧部材49と、金型101に配置されている加圧シリンダ51と、を有している。
【0142】
更に別の観点では、本実施形態に係る成形方法は、上記のような射出装置9によって射出(広義の射出)を行う射出ステップ(図3(a)、図4(a)及び図5(a))を有している。射出ステップでは、射出開始から保圧完了までの少なくとも一部の期間(本実施形態では全部の期間)において射出シリンダ27のヘッド側室31hの作動液に付与される圧力が連通路43dを介して第1室(加圧シリンダ51のヘッド側室53h)の作動液にも付与される。
【0143】
従って、例えば、図5(a)を参照して説明したように、ヘッド側室31hの圧力を高くして増圧を行うときに、ヘッド側室53hの圧力を高くして局部加圧を行うことができる。その結果、加圧シリンダ51に対して専用の液圧源を設ける必要は無く、液圧装置29の構成が簡素である。さらに、プランジャ21による増圧を開始するタイミングに追従して自動的に局部加圧が行われることになり、制御も簡素化される。また、例えば、図3(a)を参照して説明したように、ヘッド側室31hへ作動液を供給して射出を行うときに、加圧部材49をキャビティ107側へ移動させておくことができる。その結果、溶湯が加圧部材49の位置に到達したときに、加圧部材49を後退させ、加圧シリンダ51を介してサージ圧を連通路43dへ逃がすことができる。
【0144】
本実施形態において、面積比S4/S3は、面積比S2/S1に対して、0.5倍以上1.5倍以下とされてよい。面積比S4/S3は、既述のように、加圧ピストン55が第1室(ヘッド側室53h)の作動液から圧力を受ける面積(S3)に対する、1つの加圧シリンダ51によって駆動される1以上の加圧部材49がキャビティ107の成形材料に圧力を付与する合計面積(S4)の比である。面積比S2/S1は、射出ピストン33がヘッド側室31hの作動液から圧力を受ける面積(S1)に対する、プランジャ21がキャビティ107の成形材料に圧力を付与する面積(S2)の比である。
【0145】
この場合、例えば、増圧及び局部加圧を行うときに、加圧部材49が溶湯に付与する圧力が、プランジャ21が溶湯に付与する圧力に近くなる。その結果、局部加圧の圧力が過小又は過大となる蓋然性が低減される。ひいては、成形品の品質が向上する。また、別の観点では、局部加圧は、ひけ巣が生じやすい部分において圧力を高くするのではなく、成形品全体に亘って均一な圧力を付与することに寄与する。このような観点からも成形品の品質が向上する。また、例えば、溶湯において生じたサージ圧がプランジャ21及び加圧部材49に付与されたときに、加圧シリンダ51側の作動液の圧力と、射出シリンダ27側の作動液の圧力との差が大きくなる蓋然性が低減される。その結果、例えば、意図されていない動作が生じる蓋然性が低減される。
【0146】
面積比S4/S3は、面積比S2/S1に対して1.0倍以上1.2倍以下とされてよい。
【0147】
この場合、例えば、上記の0.5倍以上1.5倍以下の範囲に比較して、S4/S3のS2/S1に対する比が1.0により近くなるから、0.5倍以上1.5倍以下の範囲に関して述べた既述の効果が向上する。また、キャビティ107内の溶湯の凝固に起因して、プランジャ21の圧力は、プランジャ21から離れた位置(例えばオーバーフロー107b)の溶湯に伝わりにくくなる。本願出願人は、プランジャ21が溶湯に付与する圧力の8割程度の圧力しか、スリーブ19から離れた位置の溶湯に伝わらないという実験結果を得たことがある。従って、S4/S3とS2/S1との比を上記の範囲とし、加圧部材49が溶湯に付与する圧力を、プランジャ21が溶湯に付与する圧力に対して同等以上にすることによって、溶湯を均等に加圧する効果が向上する。
【0148】
射出装置9は、連通路43dに位置しており、成形サイクルに亘って開度が一定の絞り弁59Aを有してよい。
【0149】
この場合、例えば、射出用アキュムレータ39又は射出シリンダ27から、加圧シリンダ51への圧力の伝達を遅延させることができる。その結果、例えば、射出用アキュムレータ39から射出シリンダ27のヘッド側室31hへ作動液を供給して射出を開始するときに、圧力が加圧シリンダ51へ逃げて制御遅れが大きくなってしまう蓋然性が低減される。及び/又は、増圧ピストン35によってヘッド側室31hの作動液を加圧して増圧を開始するときに、圧力が加圧シリンダ51へ逃げて制御遅れが大きくなってしまう蓋然性が低減される。また、絞り弁59Aを設けていることから、連通路43dの一部の断面積を小さくする態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、絞り弁59Aの開口度の調整又は絞り弁59Aの交換によって、キャビティ107の形状及び寸法等に応じて、射出及び局部加圧のタイミングを調整することが容易である。
【0150】
射出装置9では、成形材料がキャビティ107内の加圧部材49が配置されている位置に到達する直前に、第1室(加圧シリンダ51のヘッド側室53h)の圧力によって加圧部材49がキャビティ107の側の駆動限に位置していてよい。なお、本実施形態では、加圧部材49は、時点t0の前からキャビティ107の側の駆動限に位置した。この他、例えば、加圧部材49は、時点t0以後かつ時点t1の前、時点t1以後かつ時点t2の前、又は時点t2以後かつ時点t3の前に、キャビティ107の側の駆動限に位置してもよい。
【0151】
この場合、例えば、溶湯の圧力によって加圧部材49をキャビティ107とは反対側へ移動させる動作が可能になる。すなわち、加圧部材49及び加圧シリンダ51を介して溶湯のサージ圧を連通路43dへ逃がし、溶湯のサージ圧を低減することが可能になる。
【0152】
射出装置9は、第1室(加圧シリンダ51のヘッド側室53h)に通じているサージ用アキュムレータ63を有していてよい。
【0153】
この場合、例えば、連通路43dへ逃げたサージ圧をサージ用アキュムレータ63によって吸収することができる。その結果、連通路43dへ逃げたサージ圧が射出シリンダ27に及ぼす影響が低減される。ひいては、意図されていない動作が行われる蓋然性が低減される。なお、サージ圧を吸収するためのアキュムレータは公知であるが、局部加圧のための加圧シリンダ51を介してサージ圧を吸収する構成は新規である。
【0154】
射出装置9においては、射出開始の前から増圧完了までに亘って、サージ用アキュムレータ63と第1室(加圧シリンダ51のヘッド側室53h)との間で圧力が相互に伝えられることが許容されてよい。このような態様としては、例えば、サージ用アキュムレータ63とヘッド側室53hとの間に弁が設けられていない態様、及び弁が設けられているが、1以上の成形サイクルに亘って弁が開かれている態様が挙げられる。
【0155】
この場合、例えば、サージ用アキュムレータ63は、射出開始以後に加圧シリンダ51のヘッド側室53hとの間で圧力が相互に伝えられる射出用アキュムレータ39とは異なり、基本的にヘッド側室53hと接続されている。従って、例えば、制御を複雑化させることなく、確実にサージ圧を吸収することができる。
【0156】
サージ用アキュムレータ63は、第1室(加圧シリンダ51のヘッド側室53h)と通じている液体室63cと、液体室63cの作動液の圧力を受けるピストン63bと、を有してよい。ピストン63bの移動可能な範囲によって規定される液体室63cの容積の最大変化量(dV2)は、加圧シリンダ51のピストン63bの移動可能な範囲によって規定されるヘッド側室53hの容積の最大変化量(dV1)に対して、1.0倍以上1.2倍以下とされてよい。
【0157】
この場合、例えば、dV2/dV1が1.0倍以上であることによって、サージ圧によってヘッド側室53hから排出される作動液の全量をサージ用アキュムレータ63によって吸収することができる。その結果、サージ圧をより確実に吸収することができる。また、dV2/dV1が1.2倍以下であることによって、局部加圧のために射出シリンダ27からヘッド側室53hへ作動液を供給するときに、この作動液をサージ用アキュムレータ63が吸収する量が低減される。その結果、例えば、プランジャ21による増圧に対して局部加圧が過剰に遅れる蓋然性が低減される。
【0158】
射出装置9は、射出シリンダ27のヘッド側室31hに作動液を供給する射出用アキュムレータ39を有してよい。サージ用アキュムレータ63のピストン63bが液体室63cの側の駆動限に位置しているときのサージ用アキュムレータ63の圧力は、射出用アキュムレータ39の放出開始時(本実施形態では時点t0)の圧力に対して、0.8倍以上1.2倍以下とされてよい。
【0159】
この場合、例えば、射出用アキュムレータ39からヘッド側室31hへ作動液を供給したときに、この作動液がサージ用アキュムレータ63に吸収されてしまう蓋然性が低減される。ひいては、射出シリンダ27における制御遅れが低減される。また、サージ用アキュムレータ63は、ピストン63bが液体室63cの側の駆動限に位置する状態を維持できるから、液体室63cの容積の最大変化量(dV2)をサージ圧の吸収に利用できる。
【0160】
液圧装置29は、チェック弁45Cと、絞り弁59Bとを有してよい。チェック弁45Cは、連通路43dのうちサージ用アキュムレータ63が接続される位置よりも射出シリンダ27のヘッド側室31hの側に位置しており、ヘッド側室31hの側から第1室(加圧シリンダ51のヘッド側室53h)の側への流れを許容するとともに、その反対方向への流れを禁止する。絞り弁59Bは、チェック弁45Cをバイパスする。
【0161】
この場合、例えば、既述のように、サージ圧のうちサージ用アキュムレータ63によって吸収されなかった圧力が射出シリンダ27の動作に及ぼす影響を低減できる。その一方で、サージ用アキュムレータ63によるサージ圧の吸収後、サージ用アキュムレータ63の作動液をヘッド側室31hの側へ流して、サージ用アキュムレータ63を初期位置に復帰させることができる。このときの流量は、絞り弁59Bによって制限されるから、サージ用アキュムレータ63が射出シリンダ27の動作に及ぼす影響が低減される。
【0162】
射出シリンダ27は、シリンダ部材31に収容されている増圧ピストン35を有してよい。増圧ピストン35は、ヘッド側室31hからの圧力を受ける第1面35cと、その反対側の後側室31bからの圧力を受ける第2面35dとを有してよい。第2面35dの面積は、第1面35cの面積よりも大きくてよい。
【0163】
この場合、例えば、射出シリンダ27のヘッド側室31hに付与される圧力を、液圧源(図示の例では射出用アキュムレータ39)からのそのままの圧力と、増圧ピストン35の増圧作用によって増圧した圧力との2種類にすることができる。その結果、例えば、前者の圧力によってプランジャ21による射出と、加圧部材49によるサージ圧吸収の準備(加圧部材49の前進)とを行うことができ、後者の圧力によって、プランジャ21による増圧と、加圧部材49による局部加圧とを行うことができる。すなわち、公知の増圧式の射出シリンダ27によって公知の射出及び増圧の動作を行う一方で、サージ圧吸収の準備及び局部加圧を行うことができる。すなわち、構成の簡素化の効果が向上する。
【0164】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る型付ダイカストマシンDC2の要部の構成を示す図であり、第1実施形態の図2に対応している。型付ダイカストマシンDC2は、射出装置209の駆動部223が第1実施形態のものと相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0165】
第1実施形態では、射出シリンダ27は、射出ピストン33と増圧ピストン35とを有する、いわゆる増圧式のものとされた。一方、第2実施形態では、射出シリンダ227は、射出ピストン33を有し、増圧ピストン35を有さない、いわゆる単胴式のものとされている。射出シリンダ227のシリンダ部材231は、概略、第1実施形態のシリンダ部材31から大径シリンダ31yを無くして、小径シリンダ31xの後端を塞いだ構成とされており、ロッド側室31r及びヘッド側室31hを有し、前側室31a及び後側室31bを有していない。
【0166】
本実施形態の液圧装置229は、射出用アキュムレータ39Aと、増圧用アキュムレータ39Bとを有していてよい。射出用アキュムレータ39A及び増圧用アキュムレータ39Bは、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。例えば、増圧用アキュムレータ39Bは、射出用アキュムレータ39Aの圧力よりも高い圧力まで蓄圧可能な構成とされてよい。なお、図示の例とは異なり、単胴式の射出シリンダ227は、射出用アキュムレータ39Aを有し、増圧用アキュムレータ39Bを有さない液圧装置と組み合わされても構わない。
【0167】
本実施形態の液圧回路243と、第1実施形態の液圧回路43との比較から理解されるように、射出用アキュムレータ39Aは、第1実施形態の射出用アキュムレータ39に相当すると捉えられてよい。増圧用アキュムレータ39Bは、流路43bによってヘッド側室31hに接続されている。流路43bには、増圧用アキュムレータ39Bとヘッド側室31hとの間の作動液の流れを禁止及び許容するチェック弁45Bが設けられる。
【0168】
第2実施形態に係る射出装置209の動作は、概略、第1実施形態に係る射出装置9の動作と同様とされてよい。
【0169】
ただし、第1実施形態における射出用アキュムレータ39から後側室31bへの作動液の供給に代えて、増圧用アキュムレータ39Bからヘッド側室31hへの作動液の供給が行われる。少なくとも、第1実施形態で述べた増圧開始条件が満たされる時点において、増圧用アキュムレータ39Bの圧力は、射出用アキュムレータ39Aの圧力よりも高い。従って、射出用アキュムレータ39Aからヘッド側室31hへ作動液を供給して狭義の射出を行った後、増圧用アキュムレータ39Bからヘッド側室31hへ作動液を供給することによって、ヘッド側室31hの圧力を更に高くして増圧を行うことができる。
【0170】
そして、第1実施形態と同様に、狭義の射出を行っているときは、射出用アキュムレータ39Aの圧力によって加圧部材49をキャビティ107の側の駆動限に位置させて、サージ圧の吸収の準備を行うことができる。また、増圧を行っているときは、増圧用アキュムレータ39Bの圧力によって加圧部材49による局部加圧を行うことができる。
【0171】
以上のとおり、本実施形態においても、液圧装置229は、連通路43dを有している。連通路43dは、射出シリンダ27のヘッド側室31hと、加圧シリンダ51の第1室(ヘッド側室53h)とを連通している。ヘッド側室53hは、加圧部材49をキャビティ107に向かって前進させるときに作動液が供給されるシリンダ室である。
【0172】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、ヘッド側室31hの圧力を高くして増圧を行うときに、ヘッド側室53hの圧力を高くして局部加圧を行うことができることから、構成及び制御の簡素化を図りつつ、適切なタイミングで局部加圧を行うことができる。
【0173】
液圧装置229は、射出用アキュムレータ39Aと、増圧用アキュムレータ39Bと、液圧回路243とを有してよい。射出用アキュムレータ39A及び増圧用アキュムレータ39Bは、それぞれ射出シリンダ227のヘッド側室31hに通じている。液圧回路243は、射出用アキュムレータ39A及び増圧用アキュムレータ39Bからヘッド側室31hへの作動液の流れを制御する。制御装置5(図1参照)は、射出用アキュムレータ39A及び増圧用アキュムレータ39Bのうち前者のみからヘッド側室31hへ作動液を供給して成形材料をキャビティ107内へ射出し、その後、増圧用アキュムレータ39Bからヘッド側室31hへ作動液を供給してキャビティ107内の成形材料を増圧するように液圧回路243を制御してよい。
【0174】
この場合、例えば、増圧式の射出シリンダ27を用いた場合と同様に、2種の圧力をヘッド側室31hに付与できる。その結果、第1実施形態と同様に、プランジャ21による射出及び増圧の動作に加えて、加圧部材49によるサージ圧の吸収の準備と、加圧部材49による局部加圧とを行うことができる。また、第1実施形態とは異なり、単胴式の射出シリンダ227を用いつつ、高い鋳造圧力を得ることができる。
【0175】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態に係る型付ダイカストマシンDC3の要部の構成を示す図であり、第1実施形態の図2に対応している。ただし、紙面の都合上、図2に比較して、射出シリンダ27に係る符号の一部が省略されている。型付ダイカストマシンDC3は、射出装置309の駆動部323が第1実施形態のものと相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0176】
第1実施形態においては、射出装置9の駆動部23は、全液圧式であった。しかし、本実施形態の射出装置309の駆動部323のように、駆動部は、液圧式と電動式とを組み合わせたハイブリッド式とされて構わない。ハイブリッド式の駆動部は、これまでに種々の構成が提案されており、そのいずれが適用されてもよいし、また、新たな構成が適用されても構わない。図8は、ハイブリッド式の駆動部の一例を示している。
【0177】
図8に例示されている駆動部323は、電動式の駆動装置65を有している。この駆動装置65は、例えば、回転式の電動機67と、電動機67の回転を直線運動(並進運動)に変換する変換機構69と、を有している。駆動装置65は、連結部71によってプランジャ21(別の観点では、カップリング25、ピストンロッド37又は射出ピストン33)に連結されている。
【0178】
電動機67は、リニアモータとされてもよい。変換機構69は、図示の例では、ねじ機構(ボールねじ機構又はすべりねじ機構)とされている。変換機構69は、ラックアンドピニオン機構等の他の形式のものとされてもよい。また、駆動装置65は、電動機67の回転を伝達する歯車機構及び/又はプーリ・ベルト機構を含んでもよい。連結部71は、駆動装置65とプランジャ21とを1以上の成形サイクルに亘って連結するものであってもよいし、係合構造及び/又は着脱機構を含んで構成され、成形サイクルの一部の工程において駆動装置65とプランジャ21とを連結するものであってもよい。
【0179】
電動式の駆動装置65は、適宜に利用されてもよい。
【0180】
例えば、射出開始から保圧完了までは、プランジャ21と駆動装置65との連結を解除した状態で、第1実施形態と同様に液圧式の駆動力のみによってプランジャ21が駆動されてよい。その後、駆動装置65をプランジャ21に連結し、駆動装置65の駆動力によってプランジャ21を後退させてよい。このとき、ヘッド側室31hから排出される作動液を射出用アキュムレータ39に充填してよい。
【0181】
また、例えば、低速射出は駆動装置65によって行い、その後、駆動装置65とプランジャ21との連結を解除し、第1実施形態と同様に、液圧式の駆動力によって高速射出から保圧完了までの動作を行ってもよい。なお、この動作態様において、駆動装置65によるプランジャ21の後退は、行われてもよいし、行われなくてもよい。
【0182】
なお、上記の説明から理解されるように、便宜上、液圧装置及び液圧回路に対して第1実施形態と同様の符号を付しているが、駆動装置65の役割分担に応じて、液圧装置及び液圧回路の構成は変形されてよい。ハイブリッド式の駆動部においては、ロッド側室31rを大気開放したり、ピストンロッド37と射出ピストン33とを同径としたりすることも可能である。
【0183】
以上のとおり、本実施形態においても、液圧装置29は、連通路43dを有している。連通路43dは、射出シリンダ27のヘッド側室31hと、加圧シリンダ51の第1室(ヘッド側室53h)とを連通している。ヘッド側室53hは、加圧部材49をキャビティ107に向かって前進させるときに作動液が供給されるシリンダ室である。従って、例えば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0184】
本実施形態で示したように、射出装置309は、射出ピストン33に連結される電動機67を有してよい。
【0185】
この場合、例えば、液圧式の駆動装置の負担を軽減することができる。その結果、例えば、消費エネルギーを低減したり、及び/又は作動液(油)が環境に及ぼす影響を低減したりできる。
【0186】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態に係る型付ダイカストマシンDC4の要部の構成を示す図であり、第1実施形態の図2に対応している。型付ダイカストマシンDC4は、射出装置409の駆動部423が第1実施形態のものと相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0187】
第1実施形態においては、射出装置9の駆動部23は、全液圧式であった。しかし、本実施形態の射出装置409の駆動部423のように、駆動部は、全電動式とされて構わない。全電動式の駆動部は、これまでに種々の構成が提案されており、そのいずれが適用されてもよいし、また、新たな構成が適用されても構わない。図9は、全電動式の駆動部の一例を示している。
【0188】
図9に例示されている駆動部423は、第3実施形態(図8)で示した電動式の駆動装置65に加えて、電動式の駆動装置73を有している。この駆動装置73は、例えば、回転式の電動機75と、電動機75の回転を直線運動(並進運動)に変換する変換機構77と、を有している。駆動装置65の構成の説明は、矛盾等が生じない限り、駆動装置73の構成に援用されてよい。
【0189】
射出シリンダ427は、第1実施形態の増圧ピストン35に相当する増圧部材435を有している。増圧部材435は、駆動装置73と連結されており、電動式の駆動力によって駆動され、ヘッド側室31hの作動液を加圧する。ただし、増圧部材435は、小径ピストン35x及び大径ピストン35yを有しておらず、後側室31dの圧力を増圧してヘッド側室31hへ伝える作用は奏しない。増圧部材435は、シリンダ部材431を摺動してもよいし、シリンダ部材431の内径よりも径が小さくされていてもよい。
【0190】
液圧装置429は、例えば、ヘッド側室31hとタンク41とを接続する流路(符号省略)と、当該流路に位置するチェック弁45Dとを有している。チェック弁45Dは、パイロット圧の導入によって開かれ、パイロット圧が導入されていないときは、タンク41からヘッド側室31hへの作動液の流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。なお、ロッド側室31r及び後側室31dは、大気開放されていてもよいし、作動液が満たされていてもよい。ただし、ヘッド側室31hには作動液が満たされている。
【0191】
射出開始から増圧開始前までの狭義の射出は、駆動装置65によって射出ピストン33を前進させることによって行われてよい。このとき、容積が拡大するヘッド側室31hは、タンク41からチェック弁45Dを介して作動液の補給がなされてよい。ただし、不図示のポンプによって作動液が補給されてもよい。また、増圧は、駆動装置73によって増圧部材435を前進させ、ヘッド側室31hの作動液を加圧することによって行われてよい。このとき、ヘッド側室31hからタンク41への作動液の流れはチェック弁45Dによって禁止されてよい。
【0192】
以上のとおり、本実施形態においても、液圧装置429は、連通路43dを有している。連通路43dは、射出シリンダ427のヘッド側室31hと、加圧シリンダ51の第1室(ヘッド側室53h)とを連通している。ヘッド側室53hは、加圧部材49をキャビティ107に向かって前進させるときに作動液が供給されるシリンダ室である。従って、例えば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0193】
以上の実施形態において、型付ダイカストマシンDC1~DC4それぞれは型付成形機の一例である。これらが含むダイカストマシン1等は成形機の一例である。加圧シリンダ51のヘッド側室53hは第1室の一例である。ピストン63bはサージ用ピストンの一例である。
【0194】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0195】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、例えば、ホットチャンバマシンであってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0196】
複数の実施形態の構成は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第1実施形態において、増圧式の射出シリンダの後側室に作動液を供給する第2実施形態の増圧用アキュムレータが設けられてもよい。第3実施形態で示した駆動装置65は、第2実施形態(ヘッド側室に通じる射出用アキュムレータ及び増圧用アキュムレータを有する構成)に適用されてもよい。第3実施形態のハイブリッド式の射出装置309において、射出シリンダ27に代えて第4実施形態の射出シリンダ427(別の観点では増圧ピストン35に代わる増圧部材435)を設け、射出用アキュムレータ39と、駆動装置65及び73とを有するハイブリッド式の射出装置を構成してもよい。
【0197】
射出は、低速射出及び高速射出を含むものに限定されず、例えば、低速で層流充填を行うものであってもよい。増圧式のシリンダは、射出ピストンを収容するシリンダ部材と、増圧ピストンを収容するシリンダ部材とが互いに分離されて流路によって接続されているものであってもよい。実施形態の説明では、便宜上、図に例示された弁の種類の名称(チェック弁、切換弁)によって各弁に命名した。ただし、各弁は、呼称に用いられた種類以外の弁とされてもよい。
【0198】
局部加圧のための加圧部材は、成形材料が凝固して構成された成形品を型から押し出すための押出ピンと兼用されるものであってもよい。この場合、加圧シリンダとしての押出シリンダと射出シリンダとが連通されてよい。
【0199】
本開示からは、さらに、加圧シリンダを介してサージ圧を吸収することを特徴とする概念(以下、「本概念」ということがある。)を抽出可能である。例えば、以下の概念を抽出可能である。
【0200】
(概念1)
キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダに通じている液圧装置(別の観点では、加圧装置、射出装置、成形機又は型付成形機)であって、
前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室に通じているサージ用アキュムレータを有しており、
前記成形材料が前記加圧部材に到達する前から前記成形材料が前記キャビティに充填されるまでの期間において、前記サージ用アキュムレータと前記第1室との間で圧力が相互に伝えられることが許容される
液圧装置。
【0201】
なお、実施形態でも述べたように、サージ用アキュムレータと第1室との間の圧力の伝達の許容は、弁が設けられないこと、又は弁が開かれることによって実現されてよい。概念1では、圧力の作用の観点からサージ用アキュムレータと他のアキュムレータ(例えば射出用アキュムレータ)との相違が特定されている。ただし、上記のような観点に代えて、又は加えて、他の観点において、サージ用アキュムレータと他のアキュムレータとの相違(換言すれば本概念と従来技術との相違)が特定されてもよい。そのような観点としては、例えば、サージ用アキュムレータの液体室の容積の最大変化量、サージ用アキュムレータの圧力、サージ用アキュムレータに接続されている弁、及び/又は、サージ用アキュムレータに接続されている流路の構成(例えばバイパス流路)の観点を挙げることができる。
【0202】
加圧シリンダを介してサージ圧を吸収することを特徴とする概念(本概念)は、本開示の実施形態に示したように、加圧シリンダの第1室と射出シリンダのヘッド側室とが連通されている構成に適用されてもよいし、本開示の実施形態とは異なり、第1室とヘッド側室とが連通されていない構成に適用されてもよい。後者の構成としては、例えば、加圧シリンダを駆動するための液圧系と、射出シリンダを駆動する液圧系とが、全く接続されていない構成を挙げることができる。
【符号の説明】
【0203】
1…ダイカストマシン(成形機)、5…制御装置、9…射出装置、19…スリーブ、21…プランジャ、27…射出シリンダ、29…液圧装置、31…(射出シリンダの)シリンダ部材、31h…(射出シリンダの)ヘッド側室、33…射出ピストン、43d…連通路、49…加圧部材、51…加圧シリンダ、53h…(加圧シリンダの)ヘッド側室(第1室)、101…金型(型)、107…(型の)キャビティ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
前記液圧装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有しており、
前記制御装置は、射出開始から保圧完了までの少なくとも一部の期間において前記ヘッド側室の作動液に付与される圧力が前記連通路を介して前記第1室の作動液にも付与されるように前記液圧装置を制御する
射出装置。
【請求項2】
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有しており、
前記加圧シリンダのピストンが前記第1室の作動液から圧力を受ける面積(S3)に対する、1つの前記加圧シリンダによって駆動される1以上の前記加圧部材が前記キャビティの成形材料に圧力を付与する合計面積(S4)の比(S4/S3)が、前記射出ピストンが前記ヘッド側室の作動液から圧力を受ける面積(S1)に対する、前記プランジャが前記キャビティの成形材料に圧力を付与する面積(S2)の比(S2/S1)に対して、0.5倍以上1.5倍以下である
出装置。
【請求項3】
前記比(S4/S3)が、前記比(S2/S1)に対して1.0倍以上1.2倍以下である
請求項に記載の射出装置。
【請求項4】
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
前記液圧装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有しており、
前記制御装置は、前記成形材料が前記キャビティ内の前記加圧部材が配置されている位置に到達する直前に、前記第1室の圧力によって前記加圧部材が前記キャビティの側の駆動限に位置するように前記液圧装置を制御する
出装置。
【請求項5】
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
前記液圧装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有しており、
前記第1室に通じているサージ用アキュムレータを更に有しており、
射出開始の前から増圧完了までに亘って、前記サージ用アキュムレータと前記第1室との間で圧力が相互に伝えられることが許容されるように、両者の間に弁が設けられていない、又は両者の間の弁が前記制御装置によって制御される
出装置。
【請求項6】
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有しており、
前記ヘッド側室に作動液を供給する射出用アキュムレータと
前記第1室に通じているサージ用アキュムレータと、
更に有しており、
前記サージ用アキュムレータは、
前記第1室と通じている液体室と、
前記液体室の作動液の圧力を受けるサージ用ピストンと、を有しており、
前記サージ用ピストンが前記液体室の側の駆動限に位置しているときの前記サージ用アキュムレータの圧力が、前記射出用アキュムレータの放出開始時の圧力に対して、0.8倍以上1.2倍以下である
出装置。
【請求項7】
前記第1室に通じているサージ用アキュムレータを更に有している
請求項1~のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項8】
前記サージ用アキュムレータは、
前記第1室と通じている液体室と、
前記液体室の作動液の圧力を受けるサージ用ピストンと、を有しており、
前記サージ用ピストンの移動可能な範囲によって規定される前記液体室の容積の最大変化量が、前記加圧シリンダのピストンの移動可能な範囲によって規定される前記第1室の容積の最大変化量に対して、1.0倍以上1.2倍以下である
請求項5~7のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項9】
前記液圧装置は、
前記連通路のうち前記サージ用アキュムレータが接続される位置よりも前記ヘッド側室の側に位置しており、前記ヘッド側室の側から前記第1室の側への流れを許容するとともに、その反対方向への流れを禁止するチェック弁と、
前記チェック弁をバイパスしている絞り弁と、を有している
請求項5~8のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項10】
前記連通路に位置しており、成形サイクルに亘って開度が一定の絞り弁を有している
請求項1~のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項11】
前記射出シリンダは、前記シリンダ部材に収容されている増圧ピストンを更に有しており、
前記増圧ピストンは、前記ヘッド側室からの圧力を受ける第1面と、その反対側の後側室からの圧力を受ける第2面とを有し、
前記第2面の面積は、前記第1面の面積よりも大きい
請求項1~10のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項12】
前記液圧装置を制御する制御装置を有しており、
前記液圧装置は、
前記ヘッド側室に通じる射出用アキュムレータと、
前記ヘッド側室に通じる増圧用アキュムレータと、
前記射出用アキュムレータ及び前記増圧用アキュムレータから前記ヘッド側室への作動液の流れを制御する液圧回路と、を更に有しており、
前記制御装置は、前記射出用アキュムレータ及び前記増圧用アキュムレータのうち前者のみから前記ヘッド側室へ作動液を供給して前記成形材料を前記キャビティ内へ射出し、その後、前記増圧用アキュムレータから前記ヘッド側室へ作動液を供給して前記キャビティ内の前記成形材料を増圧するように前記液圧回路を制御する
請求項1~10のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項13】
前記射出ピストンに連結される電動機を更に有している
請求項1~12のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の射出装置と、
前記キャビティを構成する型を保持する型締装置と、
を有している成形機。
【請求項15】
請求項14に記載の成形機と、
前記型と、
前記型に配置されている前記加圧部材と、
前記型に配置されている前記加圧シリンダと、
を有している型付成形機。
【請求項16】
出装置によって射出を行う射出ステップを有しており、
前記射出装置は、
キャビティ内に成形材料を射出するプランジャに連結される射出シリンダと、
前記射出シリンダと、前記キャビティ内に充填された成形材料の局部加圧を行う加圧部材に連結される加圧シリンダと、に通じている液圧装置と、
を有しており、
前記射出シリンダは、
前記プランジャに連結される射出ピストンと、
前記射出ピストンを摺動可能に収容しているシリンダ部材と、
を有しており、
前記シリンダ部材は、前記射出ピストンの前記プランジャとは反対側の面に作動液の圧力を作用させるヘッド側室を有しており、
前記液圧装置は、前記ヘッド側室と、前記加圧シリンダの前記加圧部材を前記キャビティに向かって前進させるときに作動液が供給される第1室とを連通している連通路を有しており、
前記射出ステップでは、射出開始から保圧完了までの少なくとも一部の期間において前記ヘッド側室の作動液に付与される圧力が前記連通路を介して前記第1室の作動液にも付与される
成形方法。