(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102015
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】パッケージ、リッド及びパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20220630BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20220630BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H03H9/02 A
H03H3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216474
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE14
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG09
5J108GG15
5J108GG16
5J108GG20
5J108GG21
5J108KK04
5J108MM01
(57)【要約】
【課題】金属間化合物を偏在させるといった必要がなく、リフロー作業時などの高温に耐えて、気密封止状態を保つことができるパッケージを提供する。
【解決手段】リッド6と、このリッド6と共に内部空間を構成するベース4とを備え、リッド6とベース4とが封止材5を介して接合されて、内部空間が気密封止されるパッケージであって、封止材5は、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属、例えば、銅からなる金属間化合物を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドと、該リッドと共に内部空間を構成するベースとを備え、前記リッドと前記ベースとが封止材を介して接合されて、前記内部空間が気密封止されるパッケージであって、
前記封止材は、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる金属間化合物を含む、
ことを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
金と全率固溶体を形成する前記金属が、銅である、
請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記封止材の前記リッド側には、銅リッチ層を有する、
請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記リッドには、金と全率固溶体を形成する前記金属が、前記ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って形成されている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記ベースは、底壁部と、該底壁部の周縁部から上方へ延びると共に、周状に形成された側壁部とを有し、前記底壁部と前記側壁部とによって、収納凹部が区画形成され、
前記リッドの周縁部が、前記ベースの前記側壁部の上面に、前記封止材を介して接合されて、前記内部空間としての前記収納凹部が気密封止される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記リッドの前記周縁部と前記ベースの前記側壁部の前記上面とが互いに対向する対向領域の間に、前記封止材の前記金属間化合物が形成されている、
請求項5に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記封止材は、前記対向領域よりも前記リッドの内周側に向かって延びる錫からなるフィレットを有する、
請求項6に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記封止材は、前記対向領域よりも前記ベースの前記側壁部の外周側に向かって延びる錫からなるフィレットを有する、
請求項6または7に記載のパッケージ。
【請求項9】
前記内部空間が、真空または不活性ガス雰囲気である、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項10】
前記内部空間には、電子部品素子が収納される、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項11】
前記内部空間に収納される前記電子部品素子は、圧電素子を含む請求項10に記載のパッケージ。
【請求項12】
ベースと共に内部空間を構成すると共に、前記ベースに接合されて前記内部空間を気密封止するリッドであって、
当該リッドには、金と全率固溶体を形成する金属からなる金属層が、前記ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って形成され、
前記接合領域には、前記金属層上に、錫を含む金属ろう材層が形成されている、
ことを特徴とするリッド。
【請求項13】
金と全率固溶体を形成する前記金属が、銅である、
請求項12に記載のリッド。
【請求項14】
リッドと、該リッドと共に内部空間を構成するベースとを備え、前記リッドと前記ベースとが封止材を介して接合されて、前記内部空間が気密封止されるパッケージの製造方法であって、
前記リッドの前記ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って、金と全率固溶体を形成する金属からなる第1金属層を形成すると共に、前記接合領域の前記第1金属層上に、錫を含む金属ろう材層を形成するリッド準備工程と、
前記ベースの前記リッドに接合される接合領域に、金を含む第2金属層を形成するベース準備工程と、
前記リッドと前記ベースとによって構成される前記内部空間に、電子部品素子を収納して、前記リッドと前記ベースとを、前記金属ろう材層と前記第2金属層とが当接するように重ね合せる重ね合せ工程と、
重ね合せた前記リッドと前記ベースとを加熱して、前記金属ろう材層、前記第2金属層及び前記第1金属層を加熱溶融させて前記封止材を生成して、前記リッドと前記ベースとを接合する接合工程とを含み、
前記接合工程では、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する前記金属からなる金属間化合物を含む前記封止材を生成する、
ことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項15】
金と全率固溶体を形成する前記金属が、銅である、
請求項14に記載のパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイス等のパッケージとして好適なパッケージ、このパッケージに使用されるリッド、及び、パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパッケージとして、電子部品素子を搭載したベースに、リッドを被せて、電子部品素子が収納された内部空間(キャビティ)を気密に封止したものがある。このようなパッケージでは、ベースとリッドとは、封止材を介して気密に接合される。
【0003】
表面実装される電子部品では、表面実装時のリフロー作業において、260度程度の高温に曝されるが、かかる高温のリフロー作業において、ベースとリッドとを接合する封止材が溶融することなく、気密性を保持する必要がある。
【0004】
このため、例えば、特許文献1では、溶融温度が高い金属間化合物を含む接合材を形成して封止するようにし、リフロー作業時などの高温にも金属間化合物が溶融することなく、気密封止状態を保つことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、金属間化合物を形成する封止材は、銅(Cu)と錫(Sn)とを含んでいるが、溶融時に、銅が錫中に溶け込まないために、金属間化合物を多量に生成するのは難しい。
【0007】
このため、金属間化合物の生成量が少なくても気密封止状態を保つことができるように、生成される金属間化合物を封止材の中央部に偏在させるようにしている。このように金属間化合物を封止材の中央部に偏在させるために、接合層となる金属層を凸状に湾曲させるなどする必要があり、このため、封止工程が複雑になって手間のかかるものとなっている。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、生成される金属間化合物を偏在させるといった必要がなく、リフロー作業時などの高温に耐えて、気密封止状態を保つことができるパッケージ、それに用いるリッド及びパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
(1)本発明に係るパッケージは、リッドと、該リッドと共に内部空間を構成するベースとを備え、前記リッドと前記ベースとが封止材を介して接合されて、前記内部空間が気密封止されるパッケージであって、
前記封止材は、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる金属間化合物を含むものである。
【0011】
本発明に係るパッケージによると、リッドとベースとを接合する封止材は、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる高融点の金属間化合物を含んでいるので、リフロー作業時などに高温に曝されても金属間化合物が溶融することなく、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【0012】
また、金属間化合物は、少なくとも錫と金とを含んでいるので、特許文献1のような錫と銅からなる金属間化合物に比べて、金属間化合物を十分に生成することができるので、安定した接合を行うことができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、金と全率固溶体を形成する前記金属が、銅である。
【0014】
この実施態様によると、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する銅からなる高融点の金属間化合物を含む封止材によって、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【0015】
(3)本発明の他の実施態様では、前記封止材の前記リッド側には、銅リッチ層を有する。
【0016】
この実施態様によると、錫、金、及び、銅からなる金属間化合物を含む封止材のリッド側に、銅リッチ層を有するので、リッド側に銅層が存在する場合に、この銅層と銅リッチ層との熱膨張率の差が小さくなって実装時等における熱応力の影響を低減できると共に、親和性が良好となって、密着性が向上する。
【0017】
(4)本発明の更に他の実施態様では、前記リッドには、金と全率固溶体を形成する前記金属が、前記ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って形成されている。
【0018】
この実施態様によると、金と全率固溶体を形成する金属は、リッドの、ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って形成されているので、リッドをベースに接合する際に、金と全率固溶体を形成する金属を、錫と金とが溶融した接合部分へ十分に供給することができる。これによって、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる金属間化合物を安定して生成することができる。
【0019】
(5)本発明の他の実施態様では、前記ベースは、底壁部と、該底壁部の周縁部から上方へ延びると共に、周状に形成された側壁部とを有し、前記底壁部と前記側壁部とによって、収納凹部が区画形成され、前記リッドの周縁部が、前記ベースの前記側壁部の上面に、前記封止材を介して接合されて、前記内部空間としての前記収納凹部が気密封止される。
【0020】
この実施態様によると、ベースの底壁部と側壁部とによって、収納凹部が区画形成され、リッドの周縁部が、ベースの側壁部の上面に封止材を介して接合されて、内部空間である収納凹部を気密に封止することができる。
【0021】
(6)本発明の一実施態様では、前記リッドの前記周縁部と前記ベースの前記側壁部の前記上面とが互いに対向する対向領域の間に、前記封止材の前記金属間化合物が形成されている。
【0022】
この実施態様によると、リッドの周縁部とベースの側壁部の上面とが互いに対向する対向領域の間に、高融点の金属間化合物が形成されているので、リフロー作業時などに高温に曝されても、リッドの周縁部とベースの側壁部の上面との間の金属間化合物が溶融することなく、内部空間の気密状態を確実に保持することができる。
【0023】
(7)本発明の他の実施態様では、前記封止材は、前記対向領域よりも前記リッドの内周側に向かって延びる錫からなるフィレットを有する。
【0024】
この実施態様によると、対向領域に形成されている金属間化合物よりもリッドの内周側に向かって延びる錫からなるフィレットを有するので、金属間化合物の内周側が、錫からなるフィレットによって保護され、ベースとリッドとの接合を強固にすることができる。
【0025】
(8)本発明の更に他の実施態様では、前記封止材は、前記対向領域よりも前記ベースの前記側壁部の外周側に向かって延びる錫からなるフィレットを有する。
【0026】
この実施態様によると、対向領域に形成されている金属間化合物よりもベースの側壁部の外周側に向かって延びる錫からなるフィレットを有するので、金属間化合物の外周側が、錫からなるフィレットによって保護され、ベースとリッドとの接合を一層強固にすることができる。
【0027】
(9)本発明の好ましい実施態様では、前記内部空間が、真空または不活性ガス雰囲気である。
【0028】
この実施態様によると、内部空間に収納される電子部品素子が、空気中の湿気や酸素の影響を受けることがなく、特性が劣化したり、不安定となるのを防止することができる。
【0029】
(10)本発明の他の実施態様では、前記内部空間には、電子部品素子が収納される。
【0030】
この実施態様によると、当該パッケージの内部空間に電子部品素子を収納し、気密に封止して電子デバイスを構成することができる。
【0031】
(11)本発明の更に他の実施態様では、前記内部空間に収納される前記電子部品素子は、圧電素子を含む。
【0032】
この実施態様によると、当該パッケージの内部空間に圧電素子を収納し、気密に封止して圧電デバイスを構成することができる。
【0033】
(12)本発明に係るリッドは、ベースと共に内部空間を構成すると共に、前記ベースに接合されて前記内部空間を気密封止するリッドであって、
当該リッドには、金と全率固溶体を形成する金属からなる金属層が、前記ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って形成され、前記接合領域には、前記金属層上に、錫を含む金属ろう材層が形成されている。
【0034】
本発明に係るリッドによると、金層を有するベースに、当該リッドの錫を含む金属ろう材層を接合して、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる高融点の金属間化合物を生成することができるので、リフロー作業時などに高温に曝されても金属間化合物が溶融することなく、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【0035】
(13)本発明の好ましい実施態様では、金と全率固溶体を形成する前記金属が、銅である。
【0036】
この実施態様によると、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する銅からなる高融点の金属間化合物によって、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【0037】
(14)本発明に係るパッケージの製造方法は、リッドと、該リッドと共に内部空間を構成するベースとを備え、前記リッドと前記ベースとが封止材を介して接合されて、前記内部空間が気密封止されるパッケージの製造方法であって、
前記リッドの前記ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って、金と全率固溶体を形成する金属からなる第1金属層を形成すると共に、前記接合領域の前記第1金属層上に、錫を含む金属ろう材層を形成するリッド準備工程と、前記ベースの前記リッドに接合される接合領域に、金を含む第2金属層を形成するベース準備工程と、前記リッドと前記ベースとによって構成される前記内部空間に、電子部品素子を収納して、前記リッドと前記ベースとを、前記金属ろう材層と前記第2金属層とが当接するように重ね合せる重ね合せ工程と、重ね合せた前記リッドと前記ベースとを加熱して、前記金属ろう材層、前記第2金属層及び前記第1金属層を加熱溶融させて前記封止材を生成して、前記リッドと前記ベースとを接合する接合工程とを含み、前記接合工程では、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する前記金属からなる金属間化合物を含む前記封止材を生成する。
【0038】
本発明に係るパッケージの製造方法によると、リッド準備工程で、ベースに接合される接合領域及び該接合領域外に亘って、金と全率固溶体を形成する金属からなる第1金属層を形成すると共に、接合領域の第1金属層上に、錫を含む金属ろう材層を形成したリッドを準備し、ベース準備工程で、リッドに接合される接合領域に、金を含む第2金属層を形成したベースを準備する。そして、重ね合せ工程では、内部空間に電子部品素子を収納して、リッドとベースとを、金属ろう材層と第2金属層とが当接するように重ね合せ、接合工程では、重ね合せたリッドとベースとを加熱して、金属ろう材層、第2金属層及び第1金属層を加熱溶融させて、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる高融点の金属間化合物を含む封止材を生成するので、リフロー作業時などに高温に曝されても金属間化合物が溶融することなく、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【0039】
また、金属間化合物は、少なくとも錫と金とを含んでいるので、特許文献1のような錫と銅からなる金属間化合物に比べて、金属間化合物を十分に生成することができるので、安定した接合を行うことができる。
【0040】
(15)本発明の好ましい実施態様では、金と全率固溶体を形成する前記金属が、銅である。
【0041】
この実施態様によると、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する銅からなる高融点の金属間化合物を含む封止材によって、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、リッドとベースとを接合する封止材は、錫、金、及び、金と全率固溶体を形成する金属からなる高融点の金属間化合物を含んでいるので、リフロー作業時などに高温に曝されても金属間化合物が溶融することなく、内部空間を気密封止状態に保つことができる。
【0043】
また、金属間化合物は、少なくとも錫と金とを含んでいるので、特許文献1のような錫と銅からなる金属間化合物に比べて、金属間化合物を十分に生成することができるので、安定した接合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るパッケージを備える水晶振動子の概略断面図である。
【
図2】
図2は水晶振動片を収納保持したベースの概略平面図である。
【
図3】
図3は接合前のベース4及びリッド6の一部拡大断面図である。
【
図4】
図4はベース4とリッド6との接合部分を示す
図3に対応する一部拡大断面図である。
【
図5】
図5は本発明の他の実施形態の
図4に対応する一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態に係るパッケージを備える水晶振動子の概略断面図であり、
図2は、水晶振動片を収納保持したベースの概略平面図である。
【0047】
この実施形態の水晶振動子1は、
図1に示すように、電子部品素子としての水晶振動片2を収納保持するパッケージ3を備えている。このパッケージ3は、上部が開口した収納凹部を有するベース4と、ベース4の開口部に封止材5を介して接合されるリッド6とを備えている。ベース4及びリッド6によって、水晶振動片2を収納する内部空間7が構成され、ベース4にリッド6が接合されて内部空間7が気密に封止される。
【0048】
ベース4は、セラミック材料を積層して構成される。具体的に、ベース4は、底壁部8と、底壁部8の周縁部の全周から上方へ延びる側壁部9とを有している。ベース4は、底壁部8と側壁部9とによって、内部空間7を構成する収納凹部が区画形成され、上部が開口した平面視矩形状の箱型に形成されている。このベース4は、平面視矩形状の底壁部8に相当するセラミックの一枚板上に、側壁部9に相当するセラミックの環状板を積層して凹状に一体焼成して構成される。
【0049】
このベース4の内底面、すなわち、底壁部8の上面には、
図2に示すように、長手方向(
図2の左右方向)の一端側の両端に、水晶振動片2が接合される一対の電極パッド10,10が形成されている。
【0050】
水晶振動片2には、中央部の表裏に一対の励振電極11,11がそれぞれ形成されており、各励振電極11,11は、引出し電極を介して、導電性樹脂接着剤や金属バンプ等の導電性接合材12,12によって、前記電極パッド10,10にそれぞれ電気機械的に接合されている。ベース4の外底面には、当該水晶振動子1を外部の回路基板等に実装するための複数の外部接続端子(図示せず)が形成されており、一対の前記電極パッド10,10が、内部の配線を介して外部接続端子に電気的に接続されている。
【0051】
図3は、接合する前のベース4及びリッド6の一部拡大断面図である。
【0052】
ベース4の側壁部9の上面は、リッド6の周縁部との接合面であり、この接合面には、リッド6と接合するための金属層が形成されている。この金属層は、複数層の積層構造からなる。具体的には、ベース4の側壁部9の上面に、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなるメタライズ層13と、ニッケル(Ni)からなるNi層14と、金(Au)からなる第2金属層としてのAu層15とが順に積層されている。メタライズ層13は、メタライズ材料を印刷した後、セラミック焼成時にベース4に一体的に形成される。Ni層14とAu層15は、メッキ技術によりそれぞれ形成される。メタライズ層13の厚さは、例えば、15±7μmである。Ni層14の厚さは、例えば、1.27~8.89μmであり、Au層15の厚さは、例えば、0.30~1.00μmである。ベース4とリッド6との接合後には、ベース4のAu層15は、
図1に示される封止材5を構成する。Au層15は、Au以外の他の金属を含むものであってもよい。
【0053】
リッド6は、平面視矩形の平板状であって、その外形寸法は、ベース4の外形寸法に比べて小さい。このリッド6は、コバール(Fe-Ni-Co系合金)や42アロイ(Fe-Ni系合金)からなるリッド本体6aの全面に、金(Au)と全率固溶体を形成する金属、この実施形態では、銅(Cu)からなる第1金属層としてのCu層17が形成され、このCu層17の全面に錫(Sn)からなるSn層18が形成されている。Cu層17及びSn層18は、例えばメッキ技術によりそれぞれ形成される。
【0054】
リッド本体6aの厚さは、例えば、80μmであり、Cu層17の厚さは、例えば、3~10μmである。また、Sn層18の厚さは、例えば、1~1.5μmである。
【0055】
リッド6の周縁部のベース4との接合領域には、錫(Sn)を含む金属ろう材層、この実施形態では、SnからなるSnろう材層19が形成されている。このSnろう材層19は、リッド6の接合面側の周縁部に沿って矩形環状に形成されている。リッド6の周縁部のベース4との接合領域に形成される金属ろう材層は、Sn以外の他の金属を含むものであってもよい。
【0056】
Snろう材層19の厚さは、例えば、10~30μmである。ベース4とリッド6との接合後には、リッド6のSnろう材層19、Sn層18、及び、Cu層17の一部は、
図1に示される封止材5の一部となる。
【0057】
リッド6のSnろう材層19の厚さが、例えば、10~30μmであるのに対して、ベース4のAu層15の厚さは、上記のように0.30~1.00μmであり、Auに比べて、Snが十分存在しているので、ベース4とリッド6との接合の際に、Auは全てSn中に溶融し、封止材5のAuの平均原子濃度は、例えば、2~10at%程度となる。
【0058】
次に、この実施形態のパッケージ3の製造方法について説明する。
【0059】
先ず、リッド6を準備する工程を実施する。このリッド準備工程では、コバールや42アロイからなるリッド本体6aの、ベース4に接合される接合領域及び接合領域外に亘る領域、この実施形態では、リッド本体6aの全面に、金(Au)と全率固溶体を形成する銅(Cu)からなる第1金属層としてのCu層17を形成する。更に、濡れ性を高めるために、Cu層17の全面にSn層18を形成する。次に、リッド6の周縁部のベース4との接合領域に、錫(Sn)を含む金属ろう材層としてのSnろう材層19を形成する。
【0060】
次に、ベース4を準備する工程を実施する。このベース準備工程では、ベース4の側壁部9の上面に、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなるメタライズ層13と、ニッケル(Ni)からなるNi層14とを積層形成し、更に、金(Au)を含む第2金属層としての金(Au)からなるAu層15を形成する。
【0061】
上記のようにして準備されたリッド6とベース4とによって構成される内部空間に、水晶振動片2を収納してリッド6とベース4とを重ね合わせる重ね合わせ工程を実施する。この重ね合わせ工程では、ベース4の収納凹部に水晶振動片2を収納し、水晶振動片2の励振電極11,11を、ベース4の電極パッド10,10に導電性接合材12によってそれぞれ接合する。リッド6は、そのSnろう材層19と、ベース4のAu層15とが、当接するように重ね合わされる。水晶振動片2を収納搭載したベース4とリッド6との重ね合わせは、真空雰囲気あるいは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行われる。
【0062】
次に、重ね合せたリッド6とベース4とを、真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気中で加熱して接合する接合工程を実施する。この接合工程では、Snろう材層19、Au層15及びCu層17を加熱溶融させる。このとき、ベース4の表層のAu層15が、リッド6のSnろう材層19中に溶融拡散し、SnとAuが混在した溶融状態となる。この混在して溶融しているSnとAu中に、その周囲に十分存在しているCuが取り込まれて、Sn、Au、及び、Cuからなる金属間化合物(例えば、Cu6Sn5や、Cu3Sn)を含む封止材5が生成される。その後、加熱を停止して封止材5を冷却固化させる。これによって、ベース4とリッド6とは、封止材5を介して接合され、内部空間7が気密に封止される。
【0063】
封止材5に含まれるSn、Au、及び、Cuからなる金属間化合物は、SnとAuとの金属間化合物におけるAuの一部が、Auと全率固溶体を形成するCuに置き換わったものであると考えられる。
【0064】
このようにAuの一部を、Auと全率固溶体を形成するCuに置き換えることによって、Cuが含まれている分だけAuの含有量を低減することができ、これによって、水晶振動子1のコストの削減を図ることができる。
【0065】
図4は、ベース4とリッド6との接合部分を示す
図3に対応する一部拡大断面図である。
【0066】
封止材5は、リッド6の周縁部とベース4の側壁部9の上面とが互いに対向する対向領域の間の中心部5aと、その内外にそれぞれ形成された内側フィレット部5b及び外側フィレット部5cとを備えている。
【0067】
封止材5の中心部5aは、金属間化合物から主に構成されており、SnとAuからなる金属間化合物、及び、SnとAuとCuからなる金属間化合物を含んでいる。
【0068】
このようにリッド6の周縁部とベース4の側壁部9の上面とが互いに対向する対向領域に存在する中心部5aは、高融点の金属間化合物から構成されているので、耐熱性が向上し、水晶振動子1の実装時のリフロー時の高温にも耐えることができる。
【0069】
具体的には、本実施形態に係る封止材5の中心部5aは、少なくとも330℃以下の温度では溶融しない。
【0070】
この中心部5aの上側の部分、すなわち、リッド6のCu層17に近い側の部分は、Cuの含有率が、他の部分に比べて高いCuリッチ層となっている。
【0071】
このように封止材5の中心部5aの上側の部分は、Cuリッチ層となっているので、その上方のリッド6のCu層17との熱膨張率の差が小さくなって実装時等における熱応力の影響を低減できると共に、親和性が良好となって、密着性が向上する。
【0072】
封止材5の中心部5aの内外の部5b,5cは、Snから構成されている。
【0073】
内側フィレット部5bは、ベース4の側壁部9の上面の内周側の端縁からリッド6の下面に向けて内周側に張り出すように形成されている。外側フィレット部5cは、リッド6の下面の外周側の端縁からベース4の上面の外周側の端縁へ張り出すように形成されている。
【0074】
このようにSnからなる内側フィレット部5b及び外側フィレット部5cによって、中心部5aの金属間化合物を覆って保護することができる。また、内側フィレット部5b及び外側フィレット部5cは、それぞれ内外に張り出すように形成されているので、ベース4とリッド6との接合を強固にすることができると共に、より確実な気密封止が可能となる。
【0075】
Snからなる外側フィレット5c部は、
図5に示すように、ベース4の側壁部9の上面からリッド6の周壁の上端縁まで延びてリッド6の周壁を覆うように形成してもよい。
【0076】
これによって、ベース4とリッド6との接合をより強固にすることができると共に、一層確実な気密封止が可能となる。
【0077】
上記実施形態では、金と全率固溶体を形成する金属として銅を使用したが、銅に限らず、ニッケルなどを使用してもよい。
【0078】
上記実施形態では、パッケージ3の内部空間7には、電子部品素子として圧電素子である水晶振動片(水晶素子)を収納した水晶振動子1に適用したが、水晶振動子に限らず、水晶発振器や水晶フィルタ等の圧電デバイスのパッケージに適用することができる。
【0079】
また、パッケージの内部空間には、圧電素子や集積回路素子等の電子部品素子に限らず、水晶振動子や水晶発振器等の圧電振動デバイスを収納してもよい。
【0080】
例えば、両主面に励振電極が形成された水晶からなる圧電振動板を、各励振電極をそれぞれ覆うように水晶等からなる第1,第2封止部材で封止した3層(サンドイッチ)構造の圧電振動子、両主面に励振電極が形成されると共に、実装端子となる金属膜が形成された水晶からなる圧電振動板を、各励振電極をそれぞれ覆うように、樹脂製のフィルムからなる第1,第2封止部材で封止した圧電振動子、あるいは、上記3層(サンドイッチ)構造の圧電振動子、発振回路用IC、ヒータ、ヒータ制御用IC等を水晶基板に搭載した恒温槽型圧電発振器などの圧電振動デバイスを収納してもよい。
【0081】
上記リッド6は、クラッド材で構成してもよく、例えば、コバール材を、表面にSn層を形成したCu材で挟み込んだ状態で圧延してクラッド化し、これを打ち抜き加工し、その後、Snろう材層を形成してもよい。
【0082】
上記実施形態では、ベース4は、電子部品素子を搭載する凹部を有し、リッド6は、平板状であったが、本発明の他の実施形態として、平板状のベースに、電子部品素子を搭載し、凹部を有するリッドを、ベース上の電子部品素子を覆うように被せるようにしてもよく、電子部品素子を搭載したベースとリッドとの両者が凹部を有する構成としてもよい。
【0083】
また、ベースは、平板状の基板部の上面に上枠部を形成して上側凹部を区画形成する一方、基板部の下面に下枠部を形成して下側凹部を区画形成し、上下にそれぞれ凹部を有する構造、いわゆる、断面H型の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 水晶振動子
2 水晶振動片
3 パッケージ
4 ベース
5 封止材
5a 中心部
5b 内側フィレット部
5c 外側フィレット部
6 リッド
6a リッド本体
7 内部空間
8 底壁部
9 側壁部
15 Au層
17 Cu層
18 Sn層
19 Snろう材層