(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102030
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ゴルフボールコア用ゴム組成物及びゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20220630BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220630BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220630BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220630BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A63B37/00 510
C08L9/00
C08K5/14
C08L23/08
C08F210/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216501
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 潤
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB042
4J002BB142
4J002BB162
4J002BC042
4J002BC052
4J002BL002
4J002BL012
4J002EF047
4J002EF077
4J002EG017
4J002EG057
4J002EK036
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD146
4J002FD157
4J002GC01
4J100AA02P
4J100AA03P
4J100AA04P
4J100AA07P
4J100AA16P
4J100AA19P
4J100AB02R
4J100AB03R
4J100AB04R
4J100AS01Q
4J100AS02Q
4J100AS03Q
4J100AS04Q
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA48
4J100FA10
4J100FA28
4J100FA29
4J100JA57
(57)【要約】
【課題】飛びやアプローチ時スピンコントロール性などのゴルフボールに要求される基本特性を維持しながら、連続打撃時の割れ耐久性を改善し得るゴルフボールコア用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記(a)~(c)の各成分、
(a)共役ジエン系重合体、
(b)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体、及び
(c)有機過酸化物
を含有してなり、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位がエチレン単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上であることを特徴とするゴルフボールコア用ゴム組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)の各成分、
(a)共役ジエン系重合体、
(b)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体、及び
(c)有機過酸化物
を含有してなり、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位がエチレン単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上であることを特徴とするゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項2】
上記(a)成分が、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)及び天然ゴム(NR)からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項3】
上記(a)成分が、ポリブタジエンゴム(BR)である請求項2記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項4】
上記(b)成分である多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が10質量%以上である請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項5】
上記(b)成分である多元共重合体に対する上記非共役オレフィン単位の含有量が90質量%以下である請求項1~4のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項6】
上記(b)成分である多元共重合体に対する上記芳香族ビニル単位の含有量が30質量%以下である請求項1~5のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項7】
上記(b)成分である多元共重合体が、ガドリニウムメタロセン錯体触媒によって重合された共重合体である請求項1~6のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項8】
更に、(d)成分として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩を含む請求項1~7のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項9】
上記(a)成分と上記(b)成分との合計量に対する(b)成分の割合が5質量%以上である請求項1~8のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項10】
上記ゴム組成物の加硫成形物において、該加硫成形物の表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で15以上である請求項1~8のいずれか1項記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
【請求項11】
1層又は複数層からなるコアと該コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記コアの少なくとも1層が、請求項1~10のいずれか1項記載のゴム組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【請求項12】
上記コアの内部硬度分布において、該コアの表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で15以上である請求項11記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールコア用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールに関し、特に、1層以上のコア及び1層以上のカバーからなるゴルフボールのコア材料として好適に用いられるゴルフボール用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、ゴルフボールはツーピースソリッドゴルフボールやスリーピースソリッドゴルフボールが主流となっている。これらのゴルフボールは、通常、ゴム組成物のコアに各種の樹脂材料からなる単層又は複数層のカバーを被覆した構造である。コアは、ゴルフボールの体積の大部分を占め、反発性や打感、耐久性等のボール諸物性に大きな影響を及ぼす。最近では、コアの断面硬度を適宜調整することで特異なコア硬度傾斜を実現し、ドライバーやアイアンのフルショット時のスピン特性適正化による飛距離向上を達成する技術が種々提案されている。
【0003】
ゴルフボール用コアの耐久性を改善するために様々な樹脂成分をコア用ゴム組成物に含有される技術がいくつか提案されている。例えば、米国特許第6120390号明細書、同第6890992号明細書、同第6332850号明細書及び同第6919395号明細書(特許文献1~4)の4つの文献には、ゴルフボール用コアの基材ゴムに、ブタジエンの改質ターポリマー、スチレンの改質ターポリマー、非イオン性改質ポリオレフィン、メタロセン触媒重合ポリマー等の樹脂成分をブレンドする技術が記載されている。
【0004】
また、特許第4020634号公報(特許文献5)には、ゴム成分とポリオレフィン成分とナイロン成分よりなる三元複合体を含有したゴム組成物が記載されており、特許第6366387号公報(特許文献6)には、オレフィン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を配合したゴム組成物が記載されている。また、特許第6408811号公報(特許文献7)には、C9系石油樹脂及びC5C9系共重合石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種をゴム組成物に配合することが記載されているおり、特開2020-103339号公報(特許文献8)には、テルペン系樹脂をゴム組成物に配合することが記載されている。
【0005】
そのほかの技術文献として、成型性を改善するために樹脂成分をゴム組成物に配合させる技術が提案されている。例えば、特許第6180722号公報(特許文献9)には2層からなるコアの外層用ゴム組成物に配合に低融点ポリマーを添加した技術が記載されている。
【0006】
しかしながら、上記コア用ゴム組成物の提案では、コアを打撃する際の耐久性の改善には限界があり、更なる打撃耐久性の改善の余地が求められる。
【0007】
なお、ゴム組成物の耐久性等の諸特性を改善させる技術として、特許第6602150号公報(特許文献10)には、共役ジエン化合物-非共役オレフィン共重合体をゴム組成物に含有させる技術が提案されており、特許第6780827号公報(特許文献11)には、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体をゴム組成物に含有させる技術が提案されており、更には、特開2012-180456号公報(特許文献12)には、共役ジエン化合物-非共役オレフィン共重合体、共役ジエン共重合体を含むゴム組成物に含有させる技術がされている。しかし、これらの技術は、耐オゾン性、耐候性、耐亀裂成長性、破壊特性(強度及び伸び)などを改善するためのものであって、そのゴム製品は、タイヤ、コンベアベルト、防振ゴム、免振ゴム等の用途のためのものであり、連続打撃耐久特性や打感などの要求特性を求められるゴルフボールの技術分野とは関連性はなく、ゴルフボールコアについては記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6120390号明細書
【特許文献2】米国特許第6890992号明細書
【特許文献3】米国特許第6332850号明細書
【特許文献4】米国特許第6919395号明細書
【特許文献5】特許第4020634号公報
【特許文献6】特許第6366387号公報
【特許文献7】特許第6408811号公報
【特許文献8】特開2020-103339号公報
【特許文献9】特許第6180722号公報
【特許文献10】特許第6602150号公報
【特許文献11】特許第6780827号公報
【特許文献12】特開2012-180456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、飛びやアプローチ時スピンコントロール性などのゴルフボールに要求される基本特性を維持しながら、連続打撃時の割れ耐久性を改善し得るゴルフボールコア用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゴルフボールコアのゴム組成物の配合成分を、(a)共役ジエン系重合体、(b)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体、及び(c)有機過酸化物を必須成分として含有し、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位がエチレン単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上となるように上記(b)成分の多元共重合体を特定することにより、所望のコア硬度を維持しながらコア内部硬度分布における硬度差を所定以上に大きく設定し得ると共に、連続打撃時の割れ耐久性に優れることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
上記の本発明の効果の理由については定かではないが、以下のように推察する。即ち、ゴルフボールコアに、従来から使用されているポリブタジエン等の共役ジエン系重合体の基材ゴムに対して、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体を有機過酸化物により架橋させることにより、共役ジエン系重合体にエチレン等のオレフィンが効率的に取り込まれ微結晶として存在する。そして、ゴルフボールの打撃変形時に分子内結晶(微結晶)の崩壊によりエネルギーが散逸することにより、コア内部のゴム架橋構造の破壊を防ぐとともに、ゴルフボールの打撃後では、オレフィン微結晶の再生により、耐久性能が繰り返し維持されることになる。
【0012】
なお、本発明に用いられる、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体は共役多元共重合体であり、上述するように、有機過酸化物により架橋反応が起きるものである。即ち、従来から知られている水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)のような非共役多元共重合体は主鎖に二重結合をもたないため、共役ジエン系重合体との過酸化物架橋が効率的に行われない。本発明に用いられる上記共役多元共重合体としては、特に、ブタジエン単位を含む共役ジエン単位、エチレン単位を含む非共役オレフィン単位、及びスチレン単位を含む芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体を含むゴム成分であることが好適である。
【0013】
従って、本発明は、下記のゴルフボールコア用ゴム組成物及びゴルフボールを提供する。
1.下記(a)~(c)の各成分、
(a)共役ジエン系重合体、
(b)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体、及び
(c)有機過酸化物
を含有してなり、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位がエチレン単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上であることを特徴とするゴルフボールコア用ゴム組成物。
2.上記(a)成分が、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)及び天然ゴム(NR)からなる群より選ばれる1種以上である上記1記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
3.上記(a)成分が、ポリブタジエンゴム(BR)である上記2記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
4.上記(b)成分である多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が10質量%以上である上記1~3のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
5.上記(b)成分である多元共重合体に対する上記非共役オレフィン単位の含有量が90質量%以下である上記1~4のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
6.上記(b)成分である多元共重合体に対する上記芳香族ビニル単位の含有量が30質量%以下である上記1~5のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
7.上記(b)成分である多元共重合体が、ガドリニウムメタロセン錯体触媒によって重合された共重合体である上記1~6のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
8.更に、(d)成分として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩を含む上記1~7のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
9.上記(a)成分と上記(b)成分との合計量に対する(b)成分の割合が5質量%以上である上記1~8のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
10.上記ゴム組成物の加硫成形物において、該加硫成形物の表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で15以上である上記1~8のいずれかに記載のゴルフボールコア用ゴム組成物。
11.1層又は複数層からなるコアと該コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記コアの少なくとも1層が、上記1~10のいずれかに記載のゴム組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
12.上記コアの内部硬度分布において、該コアの表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で15以上である上記11記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0014】
本発明のゴルフボールコア用ゴム組成物よれば、該ゴム組成物をゴルフボールのコアとして適用した場合に、ゴルフボールを打撃する際、コア内部のゴム架橋構造の特異な構造により該ゴアの破壊を防いで耐久性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】各実施例及び比較例におけるボールのたわみ量と耐久性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボール用ゴム組成物は、下記(a)~(c)の各成分を含有することを特徴とする。
(a)共役ジエン系重合体、
(b)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体、及び
(c)有機過酸化物
【0017】
上記(a)成分の共役ジエン系重合体としては、特に制限されるものではないが、具体的には、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)などが挙げられる。これらを1種又は2種以上併用することができる。
【0018】
上記の共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエンゴム(BR)を採用することが好適である。ポリブタジエンゴム(BR)の詳細は以下のとおりである。
【0019】
上記のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有することが好適である。ポリブタジエン分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0020】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に、通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0021】
上記ポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。ムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0022】
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒やVIII族金属化合物触媒を用いて合成したものを使用することができる。
【0023】
(b)成分は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体である。この多元共重合体は、特許第6780827号明細書に記載された多元共重合体であり、以下のように説明される。
【0024】
<共役ジエン単位>
多元共重合体は、共役ジエン単位を含有する。共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。多元共重合体は、単量体として共役ジエン化合物を用いて重合され得るものであるため、例えば公知であるEPDMのような非共役ジエン化合物を用いて重合してなる共重合体に比べ、架橋特性に優れる。従って、多元共重合体は、これを用いて製造されるゴム組成物やゴム製品の機械特性をより向上させることができるという利点も有する。
共役ジエン化合物は、炭素数が4~8であることが好ましい。共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
多元共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、得られる多元共重合体を用いたゴム製品の破壊性能を効果的に向上させる観点から、1,3-ブタジエン及びイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1つの単量体のみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエンのみからなることが更に好ましい。換言すれば、本多元共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位よりなる群から選択される少なくとも1つの構成単位を含むことが好ましく、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位よりなる群から選択される少なくとも1つの構成単位のみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位のみからなることが更に好ましい。
【0025】
また、多元共重合体は、共役ジエン単位全体におけるシス-1,4結合含有量が50%以上であることが好ましい。共役ジエン単位全体におけるシス-1,4結合含有量が50%以上であると、分子鎖配向や伸張結晶などの高強度構造が起こりやすくなるため、得られる多元共重合体を用いたゴム製品の破壊性能を効果的に向上させることができる。同様の観点から、多元共重合体は、共役ジエン単位全体におけるシス-1,4結合含有量が70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。なお、このような共役ジエン単位全体におけるシス-1,4結合含有量が高い多元共重合体は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いることで、得ることができる。
一方、共役ジエン単位全体におけるビニル結合(1,2ビニル結合、3,4ビニル結合など)含有量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが特に好ましい。また、上記共役ジエン単位全体におけるトランス-1,4結合含有量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
なお、シス-1,4結合、トランス-1,4結合、ビニル結合のそれぞれの含有量は、1H-NMR及び13C-NMRの測定結果から、積分比によって求めることができる。
【0026】
共役ジエン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、多元共重合体は、共役ジエン単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
共役ジエン単位の含有量は、多元共重合体全体の5質量%以上であることが好ましい。10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、共役ジエン単位の含有量は、多元共重合体全体の80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
共役ジエン単位の含有量が、多元共重合体全体の80質量%を超えると、共役ジエン系単位の影響が大きくなりすぎ、(a)共役ジエン系重合体に非共役オレフィンが効果的な量で取り込まれず、意図する耐久性改善に至らない。また、5質量%未満では、(a)共役ジエン系重合体との過酸化物架橋効率が低下することで非共役オレフィンが効率的に取り込まれず耐久性能が劣る。
【0027】
<非共役オレフィン単位>
多元共重合体は、非共役オレフィン単位を含有する。非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。非共役オレフィン化合物は、炭素数が2~10であることが好ましい。非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、若しくは1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、若しくはN-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。
上記多元共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、得られる多元共重合体の結晶性をより低減し、かかる多元共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性をより向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン化合物は、α-オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα-オレフィンであることが更に好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。換言すれば、上記多元共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α-オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα-オレフィン単位であることが更に好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。
【0028】
非共役オレフィン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、上記多元共重合体は、非共役オレフィン単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
非共役オレフィン単位の含有量は、多元共重合体全体の20質量%を超え、90質量%未満であることが好適である。
非共役オレフィン単位の含有量が、多元重合体全体の90質量%を超えると、非共役オレフィン単位の影響が大きくなりすぎ、(a)共役ジエン系重合体との過酸化物架橋効率が低下することで非共役オレフィンが効率的に取り込まれず耐久性能が劣る。また、非共役オレフィン単位の含有量が20質量%未満では、(a)共役ジエン系重合体に非共役オレフィンが効果的な量で取り込まれず、意図する耐久性改善に至らない。
非共役オレフィン単位の含有量は、30~85質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましく、45~75質量%であることが更に好ましい。
【0029】
<芳香族ビニル単位>
上記多元共重合体は、芳香族ビニル単位を含有する。芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。芳香族ビニル化合物は、芳香環に直接結合したビニル基を有し、炭素数が8~10であることが好ましい。芳香族ビニル化合物として、具体的には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。
そして、多元共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、得られる多元共重合体の結晶性をより低減し、かかる多元共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性をより向上させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。換言すれば、上記多元共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香環は、隣接する単位と結合しない限り、共重合体の主鎖には含まれない。
【0030】
芳香族ビニル化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、上記多元共重合体は、芳香族ビニル単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
芳香族ビニル単位の含有量は、多元共重合体全体の3~30質量%である。芳香族ビニル単位の含有量が3質量%未満、または30質量%を超えると、共重合体の非共役オレフィン部分の長さを抑制できず、非共役オレフィン結晶由来の耐久性改善に至らない。芳香族ビニル単位の含有量は、多元共重合体全体の3~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが更に好ましい。
【0031】
上記多元共重合体の単量体の種類の数としては、多元共重合体が共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する限り、特に制限はない。多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位の含有量は、所望の効果を得る観点から、多元共重合体全体の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、含有しないこと、即ち、含有量が0質量%であることが特に好ましい。
【0032】
多元共重合体は、少なくとも、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体である。また、破壊特性を好ましいものとする観点から、多元共重合体は、単量体として、一種の共役ジエン化合物、一種の非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。
そして、多元共重合体は、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種の共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包括されていることとする。
【0033】
多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有し、主鎖が非環状構造のみからなることを大きな特徴の一つとする。主鎖が環状構造を有すると、破壊特性(特に破壊伸び)が低下する。なお、多元共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その多元共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
更に、多元共重合体は、以下にその製造方法を記述する通り、一の反応容器で行う合成、即ちワンポット合成が可能であり、簡略化されたプロセスによる製造が可能である。
【0034】
多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000であることが好ましく、100,000~9,000,000であることがより好ましく、150,000~8,000,000であることが更に好ましい。多元共重合体のMwが10,000以上であることにより、ゴム製品材料としての機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。
なお、上述した重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0035】
多元共重合体の連鎖構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、共役ジエン単位をA、非共役オレフィン単位をB、芳香族ビニル単位をCとした場合において、Ax-By-Cz(x、y、zは1以上の整数である)等の構成をとるブロック共重合体、A、B、Cがランダムに配列する構成をとるランダム共重合体、上記ランダム共重合体とブロック共重合体とが混在してなるテーパー共重合体、(A-B-C)w(wは1以上の整数である)等の構成をとる交互共重合体とすることができる。
また、多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位が直線的に連鎖した構造(直線構造)であってもよいし、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位の少なくともいずれかが分岐鎖を形成して連鎖した構造(分岐構造)であってもよい。なお、多元共重合体が分岐構造である場合には、分岐鎖も二元又は多元とすることができる(即ち、分岐鎖が、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位のうちの少なくとも2つを含むことができる。)。よって、多元共重合体の中でも、二元又は多元の分岐鎖を有する分岐構造である多元共重合体は、幹となる鎖と側鎖とが異なる1種類の単位で形成される従来型のグラフト共重合体と明確に区別することができる。
【0036】
多元共重合体の製造方法や重合工程や用いる重合触媒等の製造条件については、特許第6780827号明細書に記載された内容を採用することができる。なお、上記多元共重合体は、ガドリニウムメタロセン錯体触媒によって重合されたものであることが好適である。
【0037】
そのほか、上記(a)成分及び(b)成分のゴム成分以外のゴム成分として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の他のゴムを配合してもよい。ただし、他のゴム成分の割合は、ゴム全体に対して、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0038】
次に、(c)成分は有機過酸化物であり、この有機過酸化物としては、特に、1分間半減期温度が110~185℃である有機過酸化物を用いることが好適である。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。そのほかの市販品としては、「パーヘキサC-40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0039】
(c)成分の配合量は、上記(a)成分及び(b)成分のゴム成分(以下、単に「ゴム成分」ともいう。)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0040】
更に、ゴム組成物には、(d)成分として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩を配合することができる。
【0041】
α,β-不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8個であることが好適であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。上記の不飽和カルボン酸の金属として具体的には、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。従って、共架橋剤としては、アクリル酸亜鉛が最も好ましい。
【0042】
(d)成分の配合量は、上記(a)成分及び(b)成分のゴム成分100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、上限としては、好ましくは65質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは55質量部以下である。上記配合量が上記範囲より少ないと、軟らかくなり過ぎて反発性が悪いものとなり、上記範囲より多いと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなるとともに、脆く耐久性に劣るものとなる。
【0043】
(d)成分の共架橋剤は、平均粒度3~30μmを有することが好ましく、より好ましくは5~25μm、更に好ましくは8~15μmである。上記共架橋剤の平均粒度が3μm未満では、ゴム組成物中で凝集しやすく、アクリル酸同士の反応性が向上してしまい、ゴム成分同士の反応性が減少してしまうため、ゴルフボールの反発性能を十分に得られないことがある。上記共架橋剤の平均粒度が30μmを超えると、共架橋剤粒子が大きくなり過ぎてしまい、得られるゴルフボールの特性のバラツキが大きくなる。
【0044】
上述した(a)~(c)、必要に応じて(d)成分の各成分の他には本発明の効果を妨げない限り、例えば、充填材、老化防止剤、有機硫黄化合物及び水などの各種添加物を配合することができる。
【0045】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0046】
老化防止剤としては、特に制限はないが、例えば、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール)、4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tertブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tertブチルフェノール)などのフェノール系老化防止剤が挙げられ、市販品としてはノクラックNS-6、同NS-30、同NS-5(大内新興化学工業(株)製)等を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0047】
有機硫黄化合物としては、特に制限はないが、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ジフェニルポリスルフィド類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができる。具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0048】
有機硫黄化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、上限として、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であることが推奨される。有機硫黄化合物の配合量が多すぎると、ゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
【0049】
水をゴム組成物に配合することができ、用いられる水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、上限値としては、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。水の配合量が多すぎると、硬度が軟化し所望の打感や耐久性や反発性が得られず、配合量が少なすぎると、所望のコア硬度分布が得られず、
【0050】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形または射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100~200℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させ、製造することができる。
【0051】
ここで、上述した配合により、加硫硬化後のゴルフボール用ゴム成型物は、表面と中心との硬度差が大きな硬度傾斜を有することができる。上記のゴルフボール用ゴム成型物をゴルフボール用コアとして採用することにより、ゴルフボールの良好なスピン特性を維持しつつ、耐久性を高めることができる。
【0052】
コアの中心硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、上限値としては、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは65以下である。コアの中心硬度が上記範囲を逸脱すると、打感が悪くなり、または耐久性が低下してしまうことがあり、低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0053】
コアの表面硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは65以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、上限値としては、好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは88以下である。コアの表面硬度が上記範囲よりも低すぎると、反発性が低くなり飛距離が十分に得られなくなることがある。また、コアの表面硬度が上記範囲よりも高すぎると、打感が硬くなり過ぎ、また、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0054】
上記コアの硬度分布については、表面と中心との硬度差が十分に大きくなり、具体的には、コアの表面Aと中心Bとの硬度差がJIS-C硬度で15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上であり、上限としては、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。上記硬度差の値が小さすぎると、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度差の値が大きすぎると、ゴルフボールを実打したときのボール初速が低くなり飛距離が出なくなり、または、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。ここで、上記の中心硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、表面硬度は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。また、JIS-C硬度とは、JIS K 6301-1975に規定するスプリング式硬度計(JIS-C形)で測定された硬度を意味する。
【0055】
また、コアの硬度傾斜は、該コアの中心から表面に向かって、硬度が同等又は増加するものであって減少するものではないことが好適である。
【0056】
また、上記コア(加熱成形物)における初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時の圧縮硬度(変形量)については、特に制限はないが、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.3mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、上限としては、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であることが推奨される。上記の値よりも大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎるため、十分な低スピン効果を得られず反発性も低下することがある。また、上記の値よりも小さすぎると、低スピン効果を得られず、打感が硬くなってしまうことがある。
【0057】
コアの直径としては、特に制限はなく製造するゴルフボールの層構造にも依るが、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの初速が低くなり、あるいは適切なスピン特性を得られない場合がある。
【0058】
上記ゴム組成物は、上述したようにゴルフボール用コアとして使用することが好適である。また、本発明のゴルフボールは、1層又は複数層のコアと、1層又は複数層のカバーとを具備する構造を有することが好適である。
【0059】
次に、上記コアを被覆する1層または複数層のカバーについて説明する。
カバー材料については、特に制限はないが、ゴルフボールに用いられている各種のアイオノマー樹脂、ウレタンエラストマー等の公知の材料を使用することができる。
【0060】
また、ボールの低スピン化をより一層実現するために、コアに隣接する層には高度に中和されたアイオノマー材料を用いることが特に好ましい。具体的には、下記(i)~(iv)成分を配合した材料を用いることが好ましい。
(i-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(ii-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0~0:100になるように配合した(i)ベース樹脂と、(ii)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(iii)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~80質量部と、
(ix)上記(i)成分及び(iii)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部
とを配合する混合材料。特に、上記(i)~(ix)成分の混合材料を用いる場合には、酸基が70%以上中和されているものを採用することが好ましい。
【0061】
また、カバーのうち最外層の材料としては、ウレタン材料、特に熱可塑性ウレタンエラストマーを主材とすることが好適である。
【0062】
更に、上記コアに隣接する層と最外層カバーとの間には、1層または2層以上のカバー(中間層)を成形してもよい。この場合、中間層材料としては、アイオノマー等の熱可塑性樹脂を用いることが好適である。
【0063】
上記カバーを得るには、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、上記混合物を加熱混合溶融し、射出成形することにより、コアの周囲に所望のカバーを被覆する方法等を採用できる。この場合、カバーの製造は、優れた熱安定性、流動性、成形性が確保された状態で作業でき、これにより、最終的に得られたゴルフボールは、反発性が高く、その上、打感が良く、耐擦過傷性に優れている。また、カバーの形成方法は、上記のほかに、例えば、カバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120~170℃、1~5分間、加圧成形する方法などを採用することもできる。
【0064】
上記カバーが1層の場合、その厚さは0.3~3mmとすることができる。上記カバーが2層の場合、外層カバーの厚さは0.3~2.0mm、内層カバーの厚さは0.3~2.0mmの範囲とすることができる。また、上記カバーを構成する各層(カバー層)のショアD硬度は、特に制限はないが、40以上とすることが好ましく、より好ましくは45以上であり、上限としては、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。
【0065】
なお、上記カバーの最外層の表面には、多数のディンプルが形成されるものであり、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができる。
【0066】
本発明は、上記ゴム組成物を少なくとも1層のコア材料として使用されるゴルフボールであり、ゴルフボールの種類としては、要するに、コアと少なくとも1層以上のカバー層を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ソリッドコアをカバーで被覆したツーピースやスリーピースソリッドゴルフボール、3層構造以上のマルチピースゴルフボール等のソリッドゴルフボール、更には、糸巻きコアに単層又は2層以上の多層構造のカバーを被覆した糸巻きゴルフボールのコアに使用することもできる。
【実施例0067】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0068】
〔実施例1~4,比較例1~4〕
下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするゴム組成物を用いて、実施例1~4,比較例1~4のゴム配合によりコア組成物を調整した後、170℃で15分間加硫を行い、直径38.5mmのコアを作製する。
【0069】
【0070】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR01」(JSR社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学社製)
・老化防止剤:商品名「ノクラックNS-6」(フェノール系老化防止剤:大内新興化学工業社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(85%アクリル酸亜鉛/15%ステアリン酸亜鉛)、日本触媒社製
・有機硫黄化合物:ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:和光純薬工業社製
・有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド):商品名「パークミルD」(日油社製)
・水:蒸留水
【0071】
表1の「共重合体A~C,X,Y」の各共重合体については下記の内容である。
【0072】
(共重合体A)
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン95gとトルエン400mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.17mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.187mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.4mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。その触媒溶液を上記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に1,3-ブタジエン27gを含むトルエン溶液150mLを30分間かけて、その耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃にて6時間分間共重合を行う。その後1,3-ブタジエン27gを含むトルエン溶液150mLを30分間かけてその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に70℃で1時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させる。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Aを得る。
【0073】
(共重合体B)
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン80gとトルエン600mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.275mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.1mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。
その触媒溶液を前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液80mLを8時間かけてその耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で計8.5時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させる。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Bを得る。
【0074】
(共重合体C)
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン15gとトルエン300mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.275mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.2mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。
その触媒溶液を前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に1,3-ブタジエン115gを含むトルエン溶液500mLを4時間かけてその耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で計5時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Cを得る。
【0075】
(共重合体X)
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン10gとトルエン600mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.275mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.4mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。
その触媒溶液を前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液50mLを3時間かけてその耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で計4時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させる。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Xを得る。
【0076】
(共重合体Y)
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン220gとトルエン700mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.3mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.33mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.4mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。
その触媒溶液を前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.4MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で8時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させる。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Yを得る。
【0077】
「共重合体A~C,X,Y」の各共重合体については、エチレン、スチレン、ブタジエンの含有率(質量%)を、下記の方法で測定・評価する。
<エチレン、スチレン、ブタジエンの含有率>
「共重合体A~C,X,Y」の各共重合体中のエチレン、スチレン、ブタジエンの含有率を1H-NMR法により求める。その結果は表2に示すとおりである。
【0078】
【0079】
コアの断面硬度
上記の各実施例及び各比較例の直径38.5mmのコアについて、下記の方法により、表面及び中心の断面硬度を測定する。
(1)コアの表面硬度
23±1℃の温度で、球状のコアの表面部分に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度により、コアの表面の4点をランダムに測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。その測定値を表4に記載する。
(2)コアの断面硬度
断面がコアの中心を通るようにコアを平面状にカットして、23±1℃の温度で、上記平断面に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度計により、半球コアの中心および、中心から表面方向に向かって2mmごとの位置の硬度を測定し、1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。その測定値を表4に記載する。
【0080】
コア及びボールの圧縮硬度
コア及びボールを、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までのコア及びボールの圧縮硬度(変形量)(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求める。
【0081】
カバー(中間層及び最外層)の形成
次に、射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表3に示す中間層の材料(アイオノマー樹脂材料)を射出成形し、厚さ1.3mm、ショアD硬度64の中間層を形成する。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表2に示す最外層材料(ウレタン樹脂材料)を射出成形し、厚さ0.8mm、ショアD硬度40の最外層を形成する。
【0082】
【0083】
上記表中の配合成分の詳細は下記のとおりである。
・「ハイミラン1706」、「ハイミラン1557」及び「ハイミラン1605」:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「TPU」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン「ショアD硬度40」
・「ポリエチレンワックス」:商品名「サンワックス161P」(三洋化成社製)
・イソシアネート化合物:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0084】
得られたゴルフボールについて、打撃耐久性を下記方法で評価する。その結果を表4に示す。
【0085】
耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価する。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sに設定とする。ゴルフボールが割れるまでに要した発射回数を測定し、ゴルフボール10個の測定値の平均値を算出すると共に、比較例1のボールが割れた平均回数を1.00(基準値)とした場合の指数を求め、表4に記載する。
【0086】
【0087】
表4のデータにより、ゴム組成物のポリマー成分として、ハイシスポリブタジエンゴムのみを使用した比較例1,2におけるボール硬度(即ち、ボールの所定荷重時のたわみ量)と耐久性能との関係を
図1の直線で示す。また、実施例1,2は、共役ジエン化合物と非共役オレフィンと芳香族ビニルの多元共重合体である「重合体A」を同量含む例であるが、これらの例におけるボール硬度と耐久性能との関係を
図1の破線で示す。
図1中、直線に対して、破線は耐久指数の高い側に位置し、耐久性能が向上することが分かる。
【0088】
実施例3,4では、「重合体A」に替えて「重合体B」、「重合体C」を添加しているが、直線以上の耐久性を示し、改善効果が見られる。
【0089】
一方、比較例3(「重合体X」を添加する例)、比較例4(「重合体Y」を添加する例)では、ほぼ直線上に位置することから、耐久性の向上効果は見られないことが分かる。