IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

特開2022-102034蓄電システム、および蓄電システムの制御装置
<>
  • 特開-蓄電システム、および蓄電システムの制御装置 図1
  • 特開-蓄電システム、および蓄電システムの制御装置 図2
  • 特開-蓄電システム、および蓄電システムの制御装置 図3
  • 特開-蓄電システム、および蓄電システムの制御装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102034
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】蓄電システム、および蓄電システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220630BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220630BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20220630BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
B60L3/00 S
B60L58/21
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216507
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 育幸
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA07
5G503DA18
5G503EA05
5G503FA06
5G503GA19
5G503GB06
5G503GD04
5H030AA01
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC01
5H125EE22
5H125EE25
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】複数の蓄電池モジュールが並列に接続された回路において、適切な許容電流値の電流を回路全体に流すことで、各蓄電池に流れる電流の値が許容電流値を超えないようにしつつ、蓄電システムの最大能力が発揮されないことを防ぐ蓄電システムを提供することである。
【解決手段】負荷に対して並列に接続される複数の蓄電池モジュールを備える蓄電システムである。蓄電システムは、複数の蓄電池モジュールの各々の抵抗値を算出する抵抗値算出部と、複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値を算出する電流値算出部と、電流値算出部が算出した各々の許容電流値に基づいて負荷に流す電流の最大値を決定する決定部とを備える。決定部は、抵抗値算出部が取得した各々の抵抗値の比率に基づいて複数の蓄電池モジュールの各々に分流される電流の値が、複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値を超えないように最大値を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列に接続される複数の蓄電池モジュールを備える蓄電システムであって、
前記複数の蓄電池モジュールの各々の抵抗値を算出する抵抗値算出部と、
前記複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値を算出する電流値算出部と、
前記電流値算出部が算出した各々の前記許容電流値に基づいて前記負荷に流す電流の最大値を決定する決定部とを備え、
前記決定部は、前記抵抗値算出部が取得した各々の前記抵抗値の比率に基づいて前記複数の蓄電池モジュールの各々に分流される電流の値が、前記複数の蓄電池モジュールの各々の前記許容電流値を超えないように前記最大値を決定する、蓄電システム。
【請求項2】
前記複数の蓄電池モジュールの各々は、組電池と前記組電池を電気回路に配置するための電気部材とを含み、
前記抵抗値算出部は、前記組電池の内部抵抗と前記電気部材の抵抗とに基づいて前記蓄電池モジュールの前記抵抗値を算出する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電流値算出部は、前記蓄電池モジュールの充電状態を示すSOCに基づいて前記許容電流値を算出する、請求項1または請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記電流値算出部は、前記蓄電池モジュールの温度に基づいて前記許容電流値を算出する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記決定部は、前記負荷に流すことが許容される負荷側許容電流値を超えないように、前記最大値を決定する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
負荷に対して並列に接続される複数の蓄電池モジュールを備える蓄電システムの制御装置であって、
前記複数の蓄電池モジュールの各々の抵抗値と、前記複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値とを取得する取得部と、
前記取得部がした各々の前記許容電流値に基づいて前記負荷に流す電流の最大値を決定する決定部とを備え、
前記決定部は、前記取得部が取得した各々の前記抵抗値の比率に基づいて前記複数の蓄電池モジュールの各々に分流される電流の値が前記複数の蓄電池モジュールの各々の前記許容電流値を超えないように、前記最大値を決定する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システム、蓄電システムの制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力を動力とするEV(Electric Vehicle)等の需要が増加している。EV等で用いられる蓄電システムでは、長時間の電力供給を可能とするため、複数の蓄電装置が並列に接続される構成が採用されている。
【0003】
特許文献1の蓄電システムには、複数の蓄電装置が並列に接続される例が開示されている。特許文献1の蓄電システムでは、複数の蓄電装置に流れる電流を制御する総合制御装置が備えられている。総合制御装置は、複数の蓄電装置の各々のステータス情報を取得し、当該ステータス情報に基づいて、各蓄電装置に流れる電流を制御する。
【0004】
複数の蓄電装置の各々には、流すことが可能な電流の最大の値を示す許容電流値が定められている。総合制御装置は、複数の蓄電装置の許容電流値のうちの最も低い許容電流値を最悪値として取得する。総合制御装置は、複数の蓄電装置の各々に流れる電流の値が許容電流値を超えないように、最悪値に基づいて、回路全体に流す電流の値を定める。これにより、特許文献1の蓄電システムでは、複数の蓄電装置において許容電流値を超えることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-50157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単に最悪値に基づいて、回路全体に流す電流の値を定める場合、蓄電システムの最大能力を発揮することができない場合がある。すなわち、複数の蓄電池の各々の内部抵抗値は、互いに異なる場合がある。そのため、最悪値に合わせて、並列回路に電流を流しても分流により、複数の蓄電装置の各々に流れる電流の値が適切な値にならない場合がある。
【0007】
本開示の目的は、各蓄電池に流れる電流の値が許容電流値を超えないようにしつつ、蓄電システムの最大能力が発揮されないことを防ぐ蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における蓄電システムは、負荷に対して並列に接続される複数の蓄電池モジュールを備える。蓄電システムは、複数の蓄電池モジュールの各々の抵抗値を算出する抵抗値算出部と、複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値を算出する電流値算出部と、電流値算出部が算出した各々の許容電流値に基づいて負荷に流す電流の最大値を決定する決定部とを備える。
【0009】
決定部は、抵抗値算出部が取得した各々の抵抗値の比率に基づいて複数の蓄電池モジュールの各々に分流される電流の値が、複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値を超えないように最大値を決定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の蓄電システムでは、各蓄電池に流れる電流の値が許容電流値を超えないようにしつつ、蓄電システムの最大能力が発揮されないことを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】蓄電システムの実装例を示す図である。
図2図1に示す蓄電システムの等価回路図である。
図3】インバータに流す電流の最大値を決定する処理手順を示すフローチャートである。
図4図3における決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、蓄電システム100の実装例を示す図である。蓄電システム100は、車両10に実装される。車両10は、ハイブリッド自動車または電気自動車などの高容量電池を動力とする車両である。車両10は、蓄電システム100と、充電器200と、インバータ300と、車両制御部400とを備える。
【0013】
蓄電システム100と、充電器200と、インバータ300とは、同一の回路内に並列に接続される。インバータ300は、蓄電システム100から供給される直流電流を交流電流に変換して、図示しないモーターに交流電流を電力として供給する。充電器200は、蓄電システム100へ電力を供給し、二次電池である蓄電システム100の充電を行なう。
【0014】
車両制御部400は、蓄電システム100と、充電器200と、インバータ300と接続されている。車両制御部400は、蓄電システム100から、回路全体に流すことが可能である電流の値、すなわち、回路全体の許容電流値を受け付ける。車両制御部400は、蓄電システム100から受け付けた回路全体の許容電流値に基づいて、充電器200またはインバータ300を制御する。
【0015】
本実施の形態における蓄電システム100は、蓄電池モジュール110、蓄電池モジュール120、蓄電池モジュール130、および全体BMS(Battery Management System)101を備える。蓄電池モジュール110、蓄電池モジュール120、蓄電池モジュール130の各々は、並列に接続されている。以下では、蓄電池モジュール110、蓄電池モジュール120、蓄電池モジュール130の各々を、各蓄電池モジュール110~130と称する場合がある。なお、蓄電システム100が備える蓄電池モジュールの個数は、3つに限られない。
【0016】
全体BMS101は、各蓄電池モジュール110~130を制御する。全体BMS101は、各種のプログラムを実行する演算主体である。全体BMS101は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。
【0017】
全体BMS101は、図示しないメモリを備える。メモリは、全体BMS101が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリは、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイス(RAM)で構成される。
【0018】
全体BMS101は、図示しないROM等の記憶装置を備える。ROM等の記憶装置は、演算処理などに必要な各種のデータを格納する記憶領域を提供する。ROM等の記憶装置は、たとえば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
【0019】
全体BMS101は、各蓄電池モジュール110~130から、各蓄電池モジュール110~130の抵抗値および許容電流値を受け付ける。抵抗値は、各蓄電池モジュール110~130の電気的な抵抗を示す値であり、許容電流値は、各蓄電池モジュール110~130に流すことが可能な電流の最大値を示す値である。
【0020】
蓄電システム100では、各蓄電池モジュール110~130に許容電流値よりも高い値の電流が流された場合、蓄電池モジュール自体が劣化する可能性がある。また、蓄電システム100では、許容電流値よりも高い値の電流が流された場合、ヒューズH1~H3等の過放電保護が働き、各蓄電池モジュール110~130の使用が中断される可能性がある。
【0021】
全体BMS101は、受け付けた各蓄電池モジュール110~130の抵抗値および許容電流値に基づいて、インバータ300に流す電流の最大値を決定する。全体BMS101は、決定したインバータ300に流す電流の最大値を車両制御部400へ送信する。このように、蓄電システム100では、インバータ300に流す電流の最大値が全体BMS101によって決定され、車両制御部400がインバータ300と充電器200とを制御する。
【0022】
全体BMS101は、受け付けた各蓄電池モジュール110~130の抵抗値および許容電流値に基づき、インバータ300に流す電流の最大値のみならず、充電器200が充電する際に充電器200から流れる電流の値の最大値を決定してもよい。車両制御部400は、充電する際に充電器200から流れる電流の値の最大値を越えないように充電器200を制御する。
【0023】
蓄電池モジュール110は、組電池E1と、バスバーB1と、ヒューズH1と、リレーRy1と、電圧検出部111と、温度検出部112と、電流検出部113と、BMS114とを備える。組電池E1は、複数の単セル電池が直列に接続されていることにより形成される。組電池E1では、たとえば、80個から100個の単セル電池が直列に接続される。単セル電池は、二次電池である。たとえば、単セル電池は、リチウムイオン二次電池またはニッケル水素二次電池などであってもよい。
【0024】
バスバーB1は、組電池E1、ヒューズH1、リレーRy1とを接続するための導電部材である。バスバーB1は、複数の単セル電池を接続するために、組電池E1内に設けられてもよい。
【0025】
ヒューズH1は、蓄電池モジュール110内に過電流が流れることを防ぐ。リレーRy1は、蓄電池モジュール110に電流を流さないようにすることができる。すなわち、リレーRy1がオン状態である場合、蓄電池モジュール110には、電流が流れ、リレーRy1がオフ状態である場合、蓄電池モジュール110には、電流が流れない。
【0026】
BMS114は、リレーRy1のオン状態またはオフ状態を制御する。また、BMS114は、電圧検出部111と、温度検出部112と、電流検出部113とから、電圧、温度、電流値をそれぞれ受け付ける。BMS114は、受け付けた電圧、温度、電流値に基づいて、蓄電池モジュール110が正常な状態であるか否かを判断する。BMS114は、全体BMS101と同様に、CPU等、メモリ、ROM等の記憶装置を備える。
【0027】
BMS114は、蓄電池モジュール110が正常な状態ではないと判断する場合、リレーRy1をオフ状態に制御する。これにより、蓄電システム100では、蓄電池モジュール110が正常でない状態のまま、継続して使用されることを防ぐ。図1では、リレーRy1は、BMS110により制御される例を示したが、全体BMS101により制御されてもよい。
【0028】
電圧検出部111は、組電池E1の電圧を検出し、検出した電圧をBMS114へ送る。温度検出部112は、組電池E1の温度を検出し、検出した温度をBMS114へ送る。温度検出部112は、たとえば、サーミスタなどである。電流検出部113は、蓄電システム100内に流れる電流値を検出し、検出した電流値をBMS114へ送る。
【0029】
BMS114は、受け付けた電圧と電流値とに基づいて、組電池E1の抵抗値を算出する。組電池E1の抵抗値は、組電池E1の劣化度合い、または、環境温度等に影響される。すなわち、組電池E1の抵抗値は、常に一定ではなく、時間ごとに変化し得る。
【0030】
BMS114は、電流値が大きく変化したときに、電圧と電流の瞬時値とを用いて、抵抗値を算出する。あるいは、BMS114は、予め定められた期間が経過するごとに、抵抗値を算出してもよい。本実施の形態におけるBMS114は、算出した組電池E1の抵抗値に、バスバーB1、ヒューズH1、リレーRy1の抵抗値を加算した合成抵抗値を、蓄電池モジュール110の抵抗値として算出する。BMS114は、バスバーB1、ヒューズH1、リレーRy1の抵抗値を加算せずに、組電池E1の抵抗値のみを、蓄電池モジュール110の抵抗値として算出してもよい。
【0031】
また、BMS114は、組電池E1に流れた電流の積算値に基づいて、組電池E1の充電状態を示すSOC(State Of Charge)を算出する。BMS114は、ROM等の記憶装置を備える。BMS114は、組電池E1に通電時間、電流の積算値を記憶装置に記憶させる。なお、BMS114は、開放電圧を用いることにより、SOCを算出してもよい。
【0032】
BMS114は、算出した組電池E1のSOCおよび温度検出部112が検出した温度に基づいて、組電池E1の許容電流値を算出する。BMS114は、記憶装置に予め記憶させた変換テーブルに基づいて、許容電流値を算出する。すなわち、変換テーブルは、組電池E1のSOC、および温度を入力値として、一意の許容電流値が求められるように構成されている。なお、変換テーブルは、入力値として、組電池E1のSOC、および温度に加えて、電流値、電圧、通電時間等を入力値とし、一意の許容電流値が求められるように構成されていてもよい。
【0033】
蓄電池モジュール120,130は、蓄電池モジュール110と同様の構成を備えるため、説明は繰り返さない。なお、「BMS114,124,134」は、本開示の「抵抗値算出部」および「電流値算出部」に対応する。「バスバーB1,B2,B3」、「ヒューズH1,H2,H3」、および「リレーRy1,Ry2,Ry3」は、「電気部材」に対応する。
【0034】
図1では、各蓄電池モジュール110~130がBMS114~134をそれぞれ備える例について説明したが、蓄電システム100では、BMS114~134を備ええない構成であってもよい。たとえば、各蓄電池モジュール110~130の電圧検出部、温度検出部、電流検出部は、直接、全体BMS101に接続されてもいてもよい。これにより、BMS114~134を設置する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0035】
あるいは、蓄電システム100では、全体BMS101を備えない構成であってもよい。たとえば、以下で説明する全体BMS101が実行する処理を、BMS114が実行してもよい。これにより、全体BMS101を設置する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0036】
図2は、図1に示す蓄電システムの等価回路図である。電流I1は、蓄電池モジュール110に流れる電流を示す。電流I2は、蓄電池モジュール120に流れる電流を示す。電流I3は、蓄電池モジュール130に流れる電流を示す。抵抗値R1は、蓄電池モジュール110の合成抵抗を示す。抵抗値R2は、蓄電池モジュール120の合成抵抗を示す。抵抗値R3は、蓄電池モジュール130の合成抵抗を示す。
【0037】
以下では、図1に示す蓄電システム100において、BMS114~134が以下に示す抵抗値および許容電流値を算出する例を説明する。BMS114は、蓄電池モジュール110の抵抗値R1を100mΩとして算出する。BMS124は、蓄電池モジュール120の抵抗値R2を80mΩとして算出する。BMS134は、蓄電池モジュール130の抵抗値R3を60mΩとして算出する。
【0038】
また、蓄電システム100では、BMS114が蓄電池モジュール110の許容電流値を100Aとして算出する。また、BMS124は、蓄電池モジュール120の許容電流値を120Aとして算出する。さらに、BMS134は、蓄電池モジュール130の許容電流値を140Aとして算出する。
【0039】
各蓄電池モジュール110~130は、劣化度合い、製造過程での公差がそれぞれ異なるため、抵抗値R1~R3は、互いに異なる値となり得る。同様に、各蓄電池モジュール110~130の許容電流値は、互いに異なる値となり得る。
【0040】
各蓄電池モジュール110~130は並列に接続されていることから、電流I1~I3と抵抗値R1~R3との間には、図2に示される関係式が成り立つ。本実施の形態における蓄電システム100では、全体BMS101が図2に示される関係式を用いて、各蓄電池モジュール110~130に分流される電流の値が各蓄電池モジュール110~130の許容電流値を超えないようにインバータ300に流す電流の最大値を決定する。これにより、適切な許容電流値の電流を回路全体に流し、蓄電システムの最大能力が発揮されないことを防ぐ。
(最大値の決定手順)
以下では、抵抗値R1が100mΩ、抵抗値R2が80mΩ、抵抗値R3が60mΩ、蓄電池モジュール110の許容電流値が100A、蓄電池モジュール120の許容電流値が120A、蓄電池モジュール130の許容電流値が140Aと算出された場合に、インバータ300に流す電流の最大値を決定する処理手順について、説明する。
【0041】
各蓄電池モジュール110~130のうち、蓄電池モジュール110の許容電流値が最も低い。すなわち、許容電流値100Aは、最悪値である。図1および図2に示すように、蓄電システム100には、3つの蓄電池モジュールが並列に接続されている。したがって、単に、最悪値に並列に接続された蓄電池モジュールの数を乗じた場合、インバータ300に流す電流の最大値は、300Aとなる。しかしながら、全体BMS101が回路全体に流れる電流の値が300Aとなるように制御する場合、蓄電システム100の最大能力を発揮することができない。
【0042】
本実施の形態における蓄電システム100では、最悪値に並列に接続された蓄電池モジュールの数を乗じることなく、インバータ300に流す電流の最大値を決定する。図3は、全体BMS101がインバータ300に流す電流の最大値を決定する処理手順を示すフローチャートである。全体BMS101は、図3に示すフローチャートは、予め定められた期間が経過するごとに実行する。たとえば、全体BMS101は、100msごとに図3に示すフローチャートを実行してもよい。
【0043】
全体BMS101は、各蓄電池モジュール110~130の許容電流値を取得する(ステップS101)。すなわち、BMS114,BMS124,BMS134の各々が、各蓄電池モジュール110~130の許容電流値を算出し、全体BMSへ算出結果を送る。言い換えれば、全体BMS101は、蓄電池モジュール110の許容電流値が100A、蓄電池モジュール120の許容電流値が120A、蓄電池モジュール130の許容電流値が140Aであるという算出結果を取得する。
【0044】
続いて、全体BMS101は、各蓄電池モジュール110~130の抵抗値R1,抵抗値R2,抵抗値R3を取得する(ステップS102)。すなわち、BMS114,BMS124,BMS134の各々が、各蓄電池モジュール110~130の抵抗値を算出し、全体BMSへ算出結果を送る。言い換えれば、全体BMS101は、抵抗値R1が100mΩ、抵抗値R2が80mΩ、抵抗値R3が60mΩであるという算出結果を取得する。
【0045】
さらに、全体BMS101は、抵抗値R1,抵抗値R2,抵抗値R3の比率に基づいて分流比を算出する(ステップS103)。すなわち、全体BMS101は、図2に示す関係式から、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流の値の比率である分流比を算出する。ここでは、全体BMS101は、抵抗値R1~R3に基づいて、I1:I2:I3の比率が、10:12.5:16.7であることを算出する。このように、各蓄電池モジュール110~130の抵抗値が異なることから、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流の値は、同一の値ではなく異なる電流の値となる。
【0046】
全体BMS101は、電流I1が許容電流値100Aである場合に、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流値を算出する(ステップS104)。I1:I2:I3の比率が10:12.5:16.7であることから、全体BMS101は、電流I1の値が100Aであると仮定した場合、電流I2の値は125Aとなり、電流I3の値は167Aとなることを算出する。すなわち、各電流I1:I2:I3の値は、100A:125A:167Aとなる。全体BMS101は、ステップS104での算出結果を第1の算出結果としてRAM等に記憶させる。
【0047】
全体BMS101は、電流I2が許容電流値120Aである場合に、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流値を算出する(ステップS105)。I1:I2:I3の比率が10:12.5:16.7であることから、全体BMS101は、電流I2の値が120Aであると仮定した場合、電流I1の値は96Aとなり、電流I3の値は160.3Aとなることを算出する。すなわち、各電流I1:I2:I3の値は、96A:120A:160.3Aとなる。全体BMS101は、ステップS105での算出結果を第2の算出結果として算出結果をRAM等に記憶させる。
【0048】
全体BMS101は、電流I3が許容電流値140Aである場合に、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流値を算出する(ステップS106)。I1:I2:I3の比率が10:12.5:16.7であることから、全体BMS101は、電流I3の値が140Aであると仮定した場合、電流I1の値は83.8Aとなり、電流I2の値は104.8Aとなることを算出する。すなわち、各電流I1:I2:I3の値は、83.8A:104.8A:140Aとなる。全体BMS101は、ステップS106での算出結果を第3の算出結果として算出結果をRAM等に記憶させる。
【0049】
全体BMS101は、インバータ300へ流れる電流値を決定する決定処理を実行する(ステップS107)。図4は、図3の決定処理を示すフローチャートである。すなわち、全体BMS101は、図3におけるステップS107において、図4に示される処理を実行する。言い換えれば、図3におけるステップS106の後、全体BMS101は、図4におけるステップS201を実行する。
【0050】
全体BMS101は、第1の算出結果において、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流が許容電流値を超えないか否かを判断する(ステップS201)。第1の算出結果は、各電流I1:I2:I3の値が、100A:125A:167Aである。電流I2、電流I3は、許容電流値を超えている。そのため、全体BMS101は、第1の算出結果では、許容電流値を超えると判断し(ステップS201でNO)、ステップS203へ進む。
【0051】
第1の算出結果において、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流が許容電流値を超えないと判断する場合(ステップS201でYES)、全体BMS101は、第1の算出結果を候補として(ステップS202)、RAM等に記憶させる。
【0052】
続いて、全体BMS101は、第2の算出結果において、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流が許容電流値を超えないか否かを判断する(ステップS203)。第2の算出結果は、各電流I1:I2:I3の値が、96A:120A:160.3Aである。電流I3は、許容電流値を超えている。そのため、全体BMS101は、第2の算出結果では、許容電流値を超えると判断し(ステップS203でNO)、ステップS204へ進む。
【0053】
第2の算出結果において、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流が許容電流値を超えないと判断する場合(ステップS203でYES)、全体BMS101は、第2の算出結果を候補として(ステップS204)、RAM等に記憶させる。
【0054】
さらに、全体BMS101は、第3の算出結果において、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流が許容電流値を超えないか否かを判断する(ステップS205)。第3の算出結果は、各電流I1:I2:I3の値が、83.8A:104.8A:140Aである。電流I1,電流I2,電流I3の全ては、許容電流値を超えていない。そのため、全体BMS101は、第3の算出結果では、許容電流値を超えていないと判断し(ステップS205でYES)、第3の算出結果を候補として(ステップS206)、RAM等に記憶させる。
【0055】
第2の算出結果において、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流が許容電流値を超えないと判断する場合(ステップS203でYES)、全体BMS101は、第2の算出結果を候補として(ステップS204)、RAM等に記憶させる。
【0056】
全体BMS101は、候補として記憶されている算出結果のうち、電流値の合計が最も大きい算出結果を採用し、当該合計値をインバータ300へ流す電流値として決定する(ステップS207)。候補として、第3の算出結果のみが記憶されているため、全体BMS101は、第3の算出結果の各電流I1,I2,I3の値の合計値を算出する。第3の算出結果は、各電流I1:I2:I3の値が、83.8A:104.8A:140Aであるため、合計値は、328.6Aとなる。
【0057】
このように、本実施の形態における蓄電システム100では、各蓄電池モジュール110~130の許容電流値を超えないようにしつつ、インバータ300に328.6Aの電流を供給することができる。したがって、蓄電システム100では、単に、最悪値に蓄電池モジュールの数を乗じた値である300Aと比較して、28.6Aの分多く、インバータ300へ電流を供給することができる。
【0058】
全体BMS101は、複数の候補がRAM等に記憶にされている場合、複数の候補のうち、最も各電流I1,I2,I3の値の合計値が高い算出結果を、インバータ300へ流す電流値として算出する。
【0059】
最後に、全体BMS101は、抵抗値R1~R3の比率を用いて、算出したインバータ300へ流す電流値が、負荷側許容電流値を超えるか否かを判断する(ステップS208)。負荷側許容電流値とは、インバータ300側に予め定められた電流の値であって、インバータ300に流すことが許容される電流値である。全体BMS101は、ステップS207で算出したインバータ300へ流す電流の値が負荷側許容電流値を超えない場合(ステップS208でNO)、ステップS207で算出した電流の値が、インバータ300へ流れるように制御し、処理を終了する。
【0060】
全体BMS101は、ステップS207で算出したインバータ300へ流す電流の値が負荷側許容電流値を超える場合(ステップS208でYES)、負荷側許容電流値をインバータ300へ流れるように制御し、処理を終了する。これにより、蓄電システム100では、インバータ300へ流れる電流の値が、予め定められた負荷側許容電流値を超えることを防止することができる。
【0061】
各蓄電池モジュール110~130における許容電流値及び抵抗値は、電池の状態により時々刻々と変化するため、全体BMS101及びBMS114、BMS124、BMS134は、上記演算及び判定処理を一定時間、例えば100msごとに繰り返す。また蓄電池モジュールの許容電流値及び抵抗値は、充電時もしくは放電時の値を個別に演算しても良い。例えば充電時許容電流と放電時許容電流は、蓄電池モジュールの充電量により変化する。具体的には充電量が高い場合は充電許容電流を小さく、放電許容電流を大きく設定する。全体BMS101は、充電時の許容電流を各BMSから得られた充電時許容電流と充電時抵抗を元に、放電時の許容電流を各BMSから得られた放電時許容電流と放電時抵抗を元に演算・決定する。
【0062】
(まとめ)
インバータ300に対して並列に接続される複数の蓄電池モジュール110,120,130を備える蓄電システム100である。複数の蓄電池モジュールの各々の抵抗値を算出し、複数の蓄電池モジュールの各々の許容電流値を算出するBMS114、BMS124、BMS134と、許容電流値に基づいてインバータ300に流す電流の最大値を決定する全体BMS101とを備える。全体BMS101は、BMS114、BMS124、BMS134が取得した各々の抵抗値R1,R2,R3の比率に基づいて複数の蓄電池モジュール110,120,130の各々に分流される電流の値が、複数の蓄電池モジュール110,120,130の各々の許容電流値を超えないように最大値を決定する。
【0063】
これにより、蓄電システム100では、適切な許容電流値の電流を回路全体に流し、各蓄電池モジュール110~130に流れる電流の値が許容電流値を超えないようにしつつ、蓄電システム100が有する最大能力が発揮されないことを防ぐ。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
10 車両、100 蓄電システム、110,120,130 蓄電池モジュール、111,121,131 電圧検出部、112,122,132 温度検出部、113,123,133 電流検出部、200 充電器、300 インバータ、400 車両制御部、B1,B2,B3 バスバー、114,124,134 BMS,101 全体BMS、E1,E2,E3 組電池、H1,H2,H3 ヒューズ、I1,I2,I3 電流、R1,R2,R3 抵抗値。
図1
図2
図3
図4