(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102036
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ヘッド交換式歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 7/04 20060101AFI20220630BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A46B7/04
A46B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216511
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】西村 彦人
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 茉以
(72)【発明者】
【氏名】金杉 友成
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB13
3B202BE13
3B202CA06
3B202DB03
(57)【要約】
【課題】本発明は、ハンドル体に対する交換用ヘッドの着脱を衛生的に且つ容易に行うことが可能であるとともに、ブラッシング時のヘッド側のぐらつきを防止することのできる、ヘッド交換式歯ブラシを提供する。
【解決手段】本発明におけるヘッド交換式歯ブラシは、ハンドル体と交換用ヘッドとを備え、ハンドル体は、ハンドル本体部と、ハンドル本体部内に収容され当該ハンドル本体部に対して少なくとも軸方向へスライド可能なスライド機構とを有し、スライド機構は、交換用ヘッドの第1の嵌合部に嵌合可能な第2の嵌合部と、第2の嵌合部に連結された嵌合解除部と、を有しており、嵌合解除部が軸方向の後端側へ移動するのに伴って、第2の嵌合部が、第1の嵌合部に係合する嵌合位置から、嵌合位置よりも軸方向の後端側であって第1の嵌合部に対する嵌合状態が解除される第1の嵌合解除位置へと第2の嵌合部を変位可能な構成とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に長さを有するハンドル体と、
前記ハンドル体の前記軸方向の先端側に着脱可能に取り付けられる交換用ヘッドと、
を備え、
前記交換用ヘッドは、
複数の毛束からなるブラシ部と、
一面側に前記ブラシ部を有するヘッド部と、
前記ハンドル体の一部に嵌合可能な第1の嵌合部と、
を有し、
前記ハンドル体は、
ハンドル本体部と、
前記ハンドル本体部内に収容され当該ハンドル本体部に対して少なくとも前記軸方向へスライド可能なスライド機構と、
を有し、
前記スライド機構は、前記第1の嵌合部に嵌合可能な第2の嵌合部と、
前記第2の嵌合部に連結され、前記軸方向及び前記軸方向に交差する奥行方向に移動可能な嵌合解除部と、を有しており、
前記嵌合解除部が前記軸方向の後端側へ移動するのに伴って、前記第2の嵌合部が、前記第1の嵌合部に係合する嵌合位置から、前記嵌合位置よりも前記軸方向の後端側であって前記第1の嵌合部に対する嵌合状態が解除される第1の嵌合解除位置へと変位可能な構成とされている、
ヘッド交換式歯ブラシ。
【請求項2】
前記嵌合解除部が前記奥行方向の背面側へ移動されたとき、
前記嵌合位置にある前記第2の嵌合部を、前記第1の嵌合部との嵌合が解除される第2の嵌合解除位置へと変位可能な構成とされている、
請求項1に記載のヘッド交換式歯ブラシ。
【請求項3】
前記ハンドル本体部の先端から前記交換用ヘッドに向かって前記軸方向へ延出するとともに、前記ハンドル本体部に対して前記軸方向に移動可能な中空の軸部を備え、
前記第2の嵌合部は、前記軸部の内側に配置されるとともに、前記軸部に形成された貫通孔から前記第1の嵌合部に向かって一部が突出可能とされており、
前記軸部は、前記第2の嵌合部が前記貫通孔に係止した状態のときに前記第2の嵌合部の前記軸方向への移動に連動して移動する一方、前記第2の嵌合部の前記奥行方向への移動には連動しない構成とされている、
請求項1又は2に記載のヘッド交換式歯ブラシ。
【請求項4】
前記軸部の内側に、
前記貫通孔よりも前記軸方向の後端側に位置し、前記第2の嵌合部に嵌合可能な第3の嵌合部を有している、
請求項3に記載のヘッド交換式歯ブラシ。
【請求項5】
前記ハンドル本体部の内側に、前記奥行方向における前記嵌合解除部の一方側に配置された嵌合維持部材を有し、
前記嵌合維持部材は、前記奥行方向のうち、前記嵌合解除部に対して前記第2の嵌合部が前記嵌合位置に維持される方向へ力を付与する機能を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のヘッド交換式歯ブラシ。
【請求項6】
前記嵌合維持部材が、弾性部材からなる、
請求項5に記載のヘッド交換式歯ブラシ。
【請求項7】
前記嵌合維持部材が、
前記嵌合解除部に設けられた第1の磁性部材と、
前記ハンドル本体部の内面のうち、前記奥行方向において前記第1の磁性部材と対向する位置に設けられた第2の磁性部材と、からなる、
請求項5に記載のヘッド交換式歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド交換式歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックによる環境問題が深刻化しており、プラスチックを主原料とする歯ブラシにも注目が集まっている。この問題に対して、歯ブラシのヘッド側を適宜交換し、ハンドル体は継続的に使用することで、プラスチックの廃棄量を削減することが可能なヘッド交換式の歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献1)。ヘッド交換式歯ブラシは、ハンドル体に対して交換用ヘッドが着脱する構造となっており、交換用ヘッドを付け替えることによってハンドル体を長期的に使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッド交換式歯ブラシにおいては、交換用ヘッドをハンドル体から取り外す際に、片方の手でハンドル体を持ち、もう片方の手で交換用ヘッドを取り外すことが多いが、交換の際に交換用ヘッドのブラシ部分に手が触れてしまうことが多く、使用者が不衛生と感じている状況がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の歯ブラシは、ブラシ部を含む交換用のヘッドが、ハンドル体に対して着脱可能な構成とされているが、ヘッドを交換する際に、押しボタンを軸方向に沿ってヘッド部側へ押すことで、ヘッドに嵌合していた嵌合部が譲位槽内へ入り込んで嵌合状態が解除され、ヘッドの交換が可能となっている。そのため、押しボタンを押す方向と、ブラッシング時に歯ブラシを動かす方向がともに歯ブラシの軸方向であることから、ブラッシング時に押しボタンを誤ってヘッド側に押してしまうおそれがある。この場合、ヘッドの嵌合状態が不安定になって、ヘッドが外れやすくなったり、ヘッドにガタツキが生じたり、ハンドル体から交換用のヘッドが外れやすくなったりするおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ハンドル体に対する交換用ヘッドの着脱を衛生的に且つ容易に行うことが可能であるとともに、ブラッシング時のヘッド側のぐらつきを防止することのできる、ヘッド交換式歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、軸方向に長さを有するハンドル体と、前記ハンドル体の前記軸方向の先端側に着脱可能に取り付けられる交換用ヘッドと、を備え、前記交換用ヘッドは、複数の毛束からなるブラシ部と、一面側に前記ブラシ部を有するヘッド部と、前記ハンドル体の一部に嵌合可能な第1の嵌合部と、を有し、前記ハンドル体は、ハンドル本体部と、前記ハンドル本体部内に収容され当該ハンドル本体部に対して少なくとも前記軸方向へスライド可能なスライド機構と、を有し、前記スライド機構は、前記第1の嵌合部に嵌合可能な第2の嵌合部と、前記第2の嵌合部に連結され、前記軸方向及び前記軸方向に交差する奥行方向に移動可能な嵌合解除部と、を有しており、前記嵌合解除部が前記軸方向の後端側へ移動するのに伴って、前記第2の嵌合部が、前記第1の嵌合部に係合する嵌合位置から、前記嵌合位置よりも前記軸方向の後端側であって前記第1の嵌合部に対する嵌合状態が解除される第1の嵌合解除位置へと変位可能な構成とされている。
【0008】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、前記嵌合解除部が前記奥行方向の背面側へ移動されたとき、前記嵌合位置にある前記第2の嵌合部を、前記第1の嵌合部との嵌合が解除される第2の嵌合解除位置へと変位可能な構成としてもよい。
【0009】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、前記ハンドル本体部の先端から前記交換用ヘッドに向かって前記軸方向へ延出するとともに、前記ハンドル本体部に対して前記軸方向に移動可能な中空の軸部を備え、前記第2の嵌合部は、前記軸部の内側に配置されるとともに、前記軸部に形成された貫通孔から前記第1の嵌合部に向かって一部が突出可能とされており、前記軸部は、前記第2の嵌合部が前記貫通孔に係止した状態のときに前記第2の嵌合部の前記軸方向への移動に連動して移動する一方、前記第2の嵌合部の前記奥行方向への移動には連動しない構成としてもよい。
【0010】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、前記軸部の内側に、前記貫通孔よりも前記軸方向の後端側に位置し、前記第2の嵌合部に嵌合可能な第3の嵌合部を有している構成としてもよい。
【0011】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、前記ハンドル本体部の内側に、前記奥行方向における前記嵌合解除部の一方側に配置された嵌合維持部材を有し、前記嵌合維持部材は、前記奥行方向のうち、前記嵌合解除部に対して前記第2の嵌合部が前記嵌合位置に維持される方向へ力を付与する機能を有する構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、前記嵌合維持部材が、弾性部材からなる構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様におけるヘッド交換式歯ブラシは、前記嵌合維持部材が、前記嵌合解除部に設けられた第1の磁性部材と、前記ハンドル本体部の内面のうち、前記奥行方向において前記第1の磁性部材と対向する位置に設けられた第2の磁性部材と、からなる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、交換用ヘッドを衛生的に交換することができ、ブラッシング時のヘッド側のぐらつきを防止できるとともにハンドル体に対して交換用ヘッドの着脱を容易に行うことのできる、ヘッド交換式歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るヘッド交換式歯ブラシ1の全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るヘッド交換式歯ブラシ1の全体構成を示す分解図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るハンドル本体部の構成を示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIII-IIIに沿う断面図であって、第1の実施形態に係る第2の係合凸部が第2の嵌合解除位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る第2の係合凸部が第2の嵌合解除位置から第1の嵌合解除位置へ向けて移動し始めた状態を示す。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る第2の係合凸部が第1の嵌合解除位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、変形例におけるハンドル体3(スライド機構32)の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、変形例におけるハンドル体3(スライド機構32)の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る第2の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ40の要部構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る第2の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ40の要部構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る第3の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ50の構成を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における各実施形態を、
図1~
図11を参照して説明する。
なお、以下の各実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0017】
以下の説明では、ヘッド部23の植毛面23aが設けられた側(植毛面23a側)をヘッド交換式歯ブラシ1の正面側とし、ヘッド部23の植毛面23aが臨む側とは逆側をヘッド交換式歯ブラシ1の背面側とする。
【0018】
加えて、ヘッド交換式歯ブラシ1が延びるZ方向を長軸方向(中心軸O上)とし、長軸方向に直交するX方向及びY方向を短軸方向とする。
【0019】
また、植毛面23aと平行、かつ、Z方向(長軸方向)に直交するX方向を、ヘッド交換式歯ブラシ1の幅方向(短軸方向)とし、植毛面7aに直交するY方向をヘッド交換式歯ブラシ1の厚さ方向(短軸方向)とする。
【0020】
また、ヘッド交換式歯ブラシ1が延びるZ方向(長軸方向)において、ヘッド交換式歯ブラシ1のうち、交換用ヘッド2が設けられる側を先端側、ハンドル体3が設けられる側を後端側とする。
【0021】
<第1の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ>
本発明における第1の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ1について、以下に
図1~
図6を参照して説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態におけるヘッド交換式歯ブラシ1は、Z方向(長軸方向)に長さを有するとともに使用者に把持されるハンドル体3と、ハンドル体3のZ方向(長軸方向)の先端側に着脱可能に取り付けられる交換用ヘッド2と、を備えている。
【0023】
(交換用ヘッド)
図2に示すように、交換用ヘッド2は、複数の毛束4aからなるブラシ部4と、硬質樹脂からなるヘッド本体部2Aと、を有する。ヘッド本体部2Aは、植毛面23aにブラシ部4を有するヘッド部23と、ヘッド部23の後端からZ方向(長軸方向)に延びるネック部22と、ネック部の後端側に設けられた取付構造部21と、を有しており、取付構造部21側が交換用ヘッド2に取り付けられる。
【0024】
取付構造部21は、ネック部22に接続されたテーパー部21Aと、テーパー部21Aのネック部22とは反対側に形成された外側筒部21Bと、外側筒部21Bの内側に形成された内側嵌合部21Cと、を備えている。
【0025】
テーパー部21Aは、ネック部22からZ方向(長軸方向)の後端側へ向かって漸次拡径する形状をなす。外側筒部21Bに接続するテーパー部21Aの後端側は、外側筒部21Bの筒形状に合わせた環状形状をなす。
【0026】
外側筒部21Bは、テーパー部21Aの最大径となる後端側に形成されており、軸方向に沿って延びる筒状体である。
図2に示すように、外側筒部21Bの外径D1は、ハンドル体3の先端側の外径D2に略一致する。これにより、交換用ヘッド2がハンドル体3に装着された際に、交換用ヘッド2とハンドル体3との間に段差が生じず、交換用ヘッド2(外側筒部21B)の外周面2bと、ハンドル体3の外周面3bとが面一となって滑らかに接続され、ブラッシング時に握りやすくなる。
【0027】
図2に示すように、外側筒部21Bの外周面側のY方向(短軸方向)の長さは、10mm以上、18mm以下が好ましい。本実施形態において、外側筒部21Bの外周面側のY方向(短軸方向)の長さは、外側筒部21Bの外径D1に一致する。そのため、外側筒部21Bの外径D1も同様に、10mm以上、18mm以下が好ましい。外側筒部21Bの肉厚tは、1.0mm以上、3.0mm以下が好ましい。
【0028】
ハンドル体3の先端部31aのY方向(短軸方向)の長さは、10mm以上、18m以下が好ましい。本実施形態において、ハンドル体3の先端部31aのY方向(短軸方向)の長さは、先端部31aの外径D2に一致する。そのため、先端部31aの外径D2も同様に、10mm以上、18m以下が好ましい。
なお、交換用ヘッド2及びハンドル体3の外形は、円柱形、略円柱形、略四角柱形、略多角柱形でもよい。
【0029】
内側嵌合部21Cは、外側筒部21Bと同軸方向に存在する。
本実施形態の内側嵌合部21Cは、周方向に複数のスリットが形成されていることが好ましい。スリットは、内側嵌合部21Cの後端側から前端側へ向かってZ方向(長軸方向)に沿って所定の長さで形成される。内側嵌合部21Cに複数のスリットを設けることによって、ハンドル体3側の軸部37が内側嵌合部21C内に挿入される際に、軸部37によって内側嵌合部21Cの後端側を径方向(X方向及びY方向)に広げることができる。
【0030】
内側嵌合部21Cの内側には、内周面から厚さ方向(短軸方向)に凹む第1の嵌合部5と、第1の嵌合部5から後端に向かうにしたがって壁部を薄肉にする方向へ傾斜したガイド面6と、が形成されている。第1の嵌合部5及びガイド面6は、
図2のように、内側嵌合部21Cの内周面のうち周方向の一部に形成されており、第1の嵌合部5の後端側にガイド面6が繋がっていてもよい。
【0031】
内側嵌合部21Cは、その先端側が、テーパー部21Aのうち環状形状をなす後端の内側に入り込むようにして形成されている。
Z方向(長軸方向)において、内側嵌合部21Cの後端側は自由端とされ、その後端面21c2は、
図2のように外側筒部21Bの後端面21b2に軸方向で略一致してもよい。
内側嵌合部21Cの内側には軸方向に延びる挿入穴21c3が形成されており、交換用ヘッド2をハンドル体3に装着した際にハンドル体3の一部が挿入される。
【0032】
外側筒部21Bと内側嵌合部21Cとの間には、軸回りに環状の空間K1が形成されている。内側嵌合部21Cの後端側は自由端である。本実施形態では、内側嵌合部21Cの周囲の空間K1によって、内側嵌合部21Cの後端(自由端)の軸方向に交差するX方向及びY方向(短軸方向)への動きに規制が生じることのない構成となっている。
【0033】
このような構成とすることにより、交換用ヘッド2をハンドル体3に装着する際に、双方を位置合わせする動作に追従して内側嵌合部21Cの後端側の変位(軸方向に交差する方向への変位)が可能になり、ハンドル体3の一部を内側嵌合部21Cの内側に挿入しやすくなる。
【0034】
図2に示すように、内側嵌合部21Cの外周面側の短軸方向の長さL3は、4mm以上、8mm以下が好ましい。
内側嵌合部21Cの肉厚t3は、0.8mm以上、1.5mm以下が好ましい。
内側嵌合部21Cの長軸方向の長さL4は、10mm以上、20mm以下が好ましい。
【0035】
外側筒部21Bと内側嵌合部21Cとの間の環状の空間K1のX方向(短軸方向)の長さLk1は、1mm以上、2mm以下が好ましい。
環状の空間K1のY方向(長軸方向)の長さLk2は、10mm以上、25mm以下が好ましい。
【0036】
(ハンドル体)
図2及び
図3に示すように、ハンドル体3は、Z方向(長軸方向)に延びるハンドル本体部31と、ハンドル本体部31に対してZ方向(長軸方向)へスライド可能なスライド機構32と、を有する。
【0037】
スライド機構32は、ハンドル本体部31の内側に配置される。ハンドル本体部31の内側に収容されたスライド機構32のうち、ハンドル本体部31の外側に突出したスライド機構32の一部(第2の嵌合部33及び軸部37)に交換用ヘッド2が取り付けられる。本実施形態では、スライド機構32の一部(第2の嵌合部33及び軸部37)をハンドル本体部31の内側に引き込むように、スライド機構32をZ方向(長軸方向)の後端側へ向かってスライドさせることが可能である。
【0038】
ハンドル本体部31は、使用者によって把持される部分であって、少なくとも先端部31aが筒状に形成されている。先端部31aには、壁部の厚さ方向を貫通する貫通孔31bが形成されている。貫通孔31bは、ハンドル本体部31の正面側に位置し、ハンドル本体部31の先端面31cに達しない位置から後端側へ向かって軸方向へ直線状に形成され、所定の長さで形成されている。
図3に示すように、貫通孔31bのZ方向(長軸方向)に沿う長さL31は、例えば、親指の操作が可能な長さが好ましい。貫通孔31bのZ方向(長軸方向)に沿う長さL31は、1.2mm以上、2.0mm以下が好ましい。
【0039】
図3に示すように、貫通孔31bのZ方向(長軸方向)に交差する幅W31(短軸方向の長さ)は、貫通孔31b内に挿入された軸34cの太さよりも僅かに広い幅であって、貫通孔31b内において軸34c(押し部35)の摺動がスムーズに行える最低限の幅とすることが好ましい。また、貫通孔31bは、使用者がハンドル体3の全体を見たときに目立たず、塞がって見えるような狭い幅であることが好ましい。貫通孔31bの軸方向(長軸方向)に交差する幅W31(短軸方向の長さ)は、1.0mm以上、3.0mm以下が好ましい。
【0040】
スライド機構32は、ハンドル本体部31の少なくとも先端部31aの内側に形成された空間K2内に収容される。スライド機構32は、第2の嵌合部33と、嵌合解除部34と、押し部35と、付勢ばね(弾性部材)36と、軸部37と、を備えている。
【0041】
(嵌合解除部34)
嵌合解除部34は、
図2に示すようにZ方向(長軸方向)に交差するY方向(短軸方向)に延在し、ヘッド交換式歯ブラシ1の正面から背面に向かって延在するように配置されている。ハンドル本体部31内に収容された嵌合解除部34は、Y方向(短軸方向)に延在する。嵌合解除部34は、一定の径をなす円柱体であって、ハンドル体3の内径Dよりも短い長さLを有する。ハンドル本体部31内における嵌合解除部34の長さ方向の一方側には、付勢ばね36が配置されている。
【0042】
本実施形態では、嵌合解除部34が、ヘッド交換式歯ブラシ1の正面から背面に向かってY方向(短軸方向)に延在するように配置されている。嵌合解除部34は、Y方向(短軸方向)に向かって延在するように配置されていれば、ハンドル本体部31のZ方向(長軸方向)において配置される位置に、制限はない。また、嵌合解除部34は、円柱体に限らず、略円形、多角形でもよい。
【0043】
ハンドル体3の内径Dは、8mm以上、16mm以下が好ましい。
嵌合解除部34のY方向(短軸方向)の長さLは、6mm以上、12mm以下が好ましい。嵌合解除部34のZ方向(長軸方向)の長さL2(
図2)は、3mm以上、6mm以下が好ましい。
【0044】
(付勢ばね36)
付勢ばね36の付勢力は、Z方向(長軸方向)に交差するY方向(短軸方向)に作用する。具体的に、付勢ばね36は、ハンドル本体部31の背面側の内面31eと、嵌合解除部34の端面34dとの間に配置され、嵌合解除部34をその長さ方向の他端(貫通孔31b)側へ向かって付勢する。この状態を「初期状態」とする。付勢ばね36の付勢力によって、嵌合解除部34の他端側の端面34bは、ハンドル本体部31の正面側の内面31fに当接した状態となる。
付勢ばね36のY方向(短軸方向)の長さ(D-L)は、3mm以上、5mm以下が好ましい。
【0045】
付勢ばね36としては、板ばね、コイルばねなどが採用される。
付勢ばね36は、嵌合解除部34の端面34dに連結されていることが好ましい。
また、付勢ばね36は、嵌合解除部34とともにハンドル本体部31に対して軸方向へ移動可能な構成であることが好ましい。
【0046】
このような嵌合解除部34の長さ方向の他方側(付勢ばね36とは反対側)には、端面34bから外側へ垂直に延びる細い軸34cが形成されている。
【0047】
図2及び
図3に示すように、軸34cの直径は、嵌合解除部34の直径よりもかなり小さく細い棒状をなす。軸34cは、貫通孔31b内に挿入され、貫通孔31bを通じてハンドル本体部31の外側に突出する長さを有している。
なお、軸34cは、円柱形、略円柱形、多角形でもよい。
【0048】
図2に示すように、軸34cの長さは、ハンドル本体部31の内壁の厚さよりも大きい。例えば、軸34cの長さは、嵌合凸部33bの先端部33b1が、軸部37の貫通孔37cから外側へ突出する量(軸部37の外周面37dから嵌合凸部33bの先端部33b1までの距離)よりも大きいことが好ましい。
【0049】
軸34cは、貫通孔31b内を摺動することで嵌合解除部34とともに軸方向へスライド可能である。このような軸34cの先端には、使用者がスライド操作する際に指で押圧する押し部35が取り付けられている。
【0050】
(押し部35)
図2に示すように、押し部35は、ハンドル本体部31の外側に設けられ、軸34cを介して嵌合解除部34に接続されている。押し部35は、付勢ばね36の付勢力によって嵌合解除部34が貫通孔31b側へ押圧されているとき、すなわち、嵌合解除部34の端面34bとハンドル本体部31の内面31fとが接触した状態のとき、押し部35はハンドル本体部31の外周面(ハンドル体3の外周面3b)から離れている。
【0051】
本実施形態の押し部35は、
図3に示すように、正面から見た形状が円形をなす板部材からなる。押し部35は、貫通孔31bの幅寸法よりも大きい直径を有している。押し部35の形状及び大きさは、ハンドル本体部31に形成された貫通孔31bを通り抜けることができない形状及び大きさであればよい。正面から見た押し部35の形状は、円形の他、略円形、多角形でもよい。
【0052】
押し部35は、
図2に示すように正面側の中央が最も薄く、径方向外側へ行くにしたがって肉厚になる形状をなす。押し部35の正面が、指の形状に沿った凹状の湾曲面とされていることにより、操作時の指の滑りを防ぐことができる。押し部35の正面35aの形状は図示した湾曲面に限らず、適宜変更が可能である。例えば、押し部35の正面35aに複数の横溝やリブを形成することで滑り止め機能を付与するとしてもよい。これにより、押し部35を後端側へ押し下げやすくなる。
【0053】
(第2の嵌合部33)
図2、
図3、
図4に示すように、第2の嵌合部33は、軸方向に延びる嵌合補助部33aと、嵌合補助部33aの先端側に設けられた嵌合凸部33bと、を有している。第2の嵌合部33は、軸部37の内側に配置され、嵌合補助部33aの軸方向の後端側が嵌合解除部34に接続されている。
【0054】
嵌合補助部33aの軸方向の先端側に設けられた嵌合凸部33bは、その先端部33b1が軸部37の貫通孔37cから外側へ突出している。
嵌合凸部33bは、交換用ヘッド2側に設けられた凹状の第1の嵌合部5(
図1、
図2)に嵌合する凸状をなし、例えば、断面形状が三角形状をなす。
【0055】
なお、第1の嵌合部5に対する嵌合状態を維持することができれば、嵌合凸部33bの形状は特に問わない。また、嵌合補助部33aの先端側に嵌合凸部33bが設けられているが、この構成に限らず、嵌合補助部33aの長さ方向の中央から先端側までの範囲のどこかに嵌合凸部33bが存在することが好ましい。
【0056】
(軸部37)
軸部37は、Z方向(長軸方向)に長さを有する円筒形状をなし、先端側が閉塞され、後端側が開放されている。このような軸部37の後端側から軸部37の内側に第2の嵌合部33が挿入され、第2の嵌合部33を軸部37が覆った状態で構成されている。
【0057】
軸部37は、長さ方向に一定の径で形成されている。軸部37は、嵌合解除部34の上に起立するようにして当該嵌合解除部34の外周面34a上に載置される。本実施形態において軸部37は、嵌合解除部34に連結されていない。そのため、軸部37は、第2の嵌合部33が奥行方向へ移動する際には連動しないが、第2の嵌合部33が軸方向へ移動する際には、第2の嵌合部33と連動して第2の嵌合部33とともに軸方向へ可動する。
【0058】
軸部37の断面形状は、環状の円であってもよいし、半円状であってもよい。
軸部37のZ方向(長軸方向)における長さは、10mm以上、20mm以下が好ましい。ここで、軸部37の軸方向における長さは、
図2に示すように、ハンドル本体部31の先端面31cから軸部37の先端面37fまでの長さであって、軸部37がハンドル本体部31から最も突出した状態のときの長さである。
軸部37の太さ(外径)は、3mm以上、5mm以下が好ましい。
軸部37の材質としては、剛性や耐久性の観点から、硬質樹脂、金属が挙げられる。
【0059】
図3に示す態様では、軸部37を正面から見たとき、軸部37の軸方向における後端側の形状は、円柱形状をなす嵌合解除部34の外周面34aに倣って円弧状に凹んでいる態様として例示している。
なお、軸部37の軸方向における後端側の形状は、円弧状に限らず、円形、略円形、多角形などであってもよい。
【0060】
軸部37の後端面は、
図3に示すように軸部37の幅方向(X方向)の両側に位置するとともに奥行方向(Y方向)に直線状をなす一対の傾斜面37bと、
図3に示すように軸部37の正面側及び背面側にそれぞれ位置する一対の湾曲面37aと、から構成される。これら一対の傾斜面37b及び一対の湾曲面37aとから構成される軸部37の後端面は、嵌合解除部34の外周面34aに接触する。
【0061】
図1及び
図2に示すように、本実施形態において、付勢ばね36の付勢力によって嵌合解除部34が貫通孔31b側へ押圧されているとき、嵌合補助部33aは、例えば、Z方向に沿う軸部37の中心軸O上(長軸方向)に位置し、軸部37の内周面から離れている。嵌合補助部33aがこの位置にあるとき、当該嵌合補助部33aの先端に設けられた嵌合凸部33bは、
図1に示すように、交換用ヘッド2の第1の嵌合部5に嵌合した状態となる(嵌合位置)。
【0062】
Z方向(長軸方向)に交差するY方向(短軸方向)において、軸部37の内周面と嵌合補助部33aの背面との間には、所定の隙間S1が形成されている。隙間S1の大きさは、上述した押し部35とハンドル本体部31との間に形成される隙間S2の大きさに略一致し、嵌合凸部33bの先端部33b1が軸部37の貫通孔37cから外側へ突出する量よりも大きいことが好ましい。
【0063】
本実施形態において、付勢ばね36の付勢力を受ける第2の嵌合部33(嵌合補助部33a及び嵌合凸部33b)と軸部37とは互いに固定されておらず、嵌合補助部33aの上に軸部37が載った状態で構成されている。そのため、軸部37に対して、第2の嵌合部33(嵌合補助部33a及び嵌合凸部33b)が分離して動くことが可能となっている。すなわち、軸部37の位置は変わらず、第2の嵌合部33及び嵌合解除部34だけがY方向(短軸方向)へ変動する。
【0064】
(ヘッド交換式歯ブラシの使用方法)
次に、本実施形態におけるヘッド交換式歯ブラシの使用方法について説明する。
図1に示すように、交換用ヘッド2がハンドル体3に装着されて本実施形態のヘッド交換式歯ブラシ1として使用可能な状態のとき、ハンドル本体部31の先端側から軸部37及び第2の嵌合部33が突出し、交換用ヘッド2側の第1の嵌合部5に対してハンドル体3の第2の嵌合部33が嵌合している。
【0065】
この嵌合状態は、付勢ばね36の付勢力によって維持されている。ブラッシング時に力がかかるY方向(短軸方向)に対して、交換用ヘッド2側の第1の嵌合部5と、ハンドル体3側の第2の嵌合部33との嵌合状態が外れないように、付勢ばね36の付勢力によって抑えている。そのため、使用者によって押し部35が押されていない状態(使用時)では、スライド機構32はZ方向(長軸方向)に可動することはない。
【0066】
このように、付勢ばね36の付勢力によって第1の嵌合部5に対する第2の嵌合部33のY方向(短軸方向)への嵌合状態が維持されることによって、ハンドル体3に装着された交換用ヘッド2が、ブラッシング時にぐらつくのを防ぐことができる。
【0067】
そして、交換用ヘッド2を交換するためにハンドル体3から取り外す際には、使用者が押し部35をZ方向(長軸方向)の後端側へ向かって押し下げることによって、第2の嵌合部33(スライド機構32)を「第1の嵌合解除位置」へと移動させ、ハンドル体3から交換用ヘッド2を取り外すことが可能となる。
【0068】
具体的には、
図4に示すように、まず、使用者によってハンドル体3の外側に設けられた押し部35がY方向(短軸方向)における背面側へ押し込まれると、付勢ばね36の付勢力に抗してハンドル本体部31内の第2の嵌合部33(嵌合解除部34)が背面側へ移動する。付勢ばね36が縮む方向へ変形することで第2の嵌合部33が背面側に離れて「第2の嵌合解除位置」に移動し、交換用ヘッド2側の第1の嵌合部5に対する第2の嵌合部33の嵌合状態が解除される。
【0069】
このとき、押し部35に連結された嵌合解除部34及び第2の嵌合部33だけがY方向(短軸方向)へ移動し、軸部37は、第2の嵌合部33のY方向(短軸方向)への動きには連動しない。そのため、ハンドル本体部31内におけるY方向(短軸方向)への軸部37の位置は変化しない。
【0070】
「第2の嵌合解除位置」にあるとき、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bは、貫通孔31bから軸部37内に全て入り込む必要はなく、軸部37の貫通孔37cから嵌合凸部33bの先端側が突出していてもよい。
【0071】
次に、
図5に示すように、使用者によって押し部35が押された状態でハンドル体3の後端側へ向かって押し下げられると、付勢ばね36が変形したまま、押し部35に連結された第2の嵌合部33(嵌合補助部33a及び嵌合凸部33b)が、押し部35とともに軸方向の後端側へスライドする。このとき、嵌合凸部33bは、第1の嵌合部5に接続されたガイド面6(
図2)に案内されて後端側へと移動する。
【0072】
また、「第2の嵌合解除位置」にある第2の嵌合部33の嵌合凸部33bが、軸部37の貫通孔37cの下端側に係合した状態で後端側へ移動することから、第2の嵌合部33のスライド移動に連動して軸部37も後端側へと移動する。すると、
図6に示すように、第2の嵌合部33とともに軸部37の少なくとも一部がハンドル本体部31内に引き込まれることになる。
【0073】
このとき、第2の嵌合部33及び軸部37は、その長さ方向の全てがハンドル本体部31内に引き込まれる必要はなく、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bが第1の嵌合部5から抜け出した状態になればよい。
【0074】
このように、使用者による指の操作だけで、交換用ヘッド2に対するハンドル体3の嵌合状態を解除し、交換用ヘッド2をハンドル体3から取り外すことが可能である。これにより、使用者は、片手だけの操作で、ヘッド部23を手で触れることなく衛生的に交換用ヘッド2をハンドル体3から取り外すことが可能である。
【0075】
そして、使用者が押し部35から手を離した位置においてスライド機構32は停止する。使用者が押し部35から手を離すと、スライド機構32の停止位置において、付勢ばね(嵌合維持部材)36が弾性復帰して初期状態に戻り、その付勢力によって押し部35が奥行方向の外側へ突出して、元の飛び出し位置に戻る。
【0076】
なお、使用者によって押し部35が奥行方向へ押された際に、嵌合部5,33同士の嵌合状態が完全に解除されなくてもよい。第1の嵌合部5に対する第2の嵌合部33の嵌合状態が緩んだ状態であれば、使用者が押し部35を押し下げる力によって嵌合が解除されて、スライド機構32が後端側へと移動し、交換用ヘッド2の取り外しが可能になる。
【0077】
ハンドル体3に対して交換用ヘッド2を取り付ける際には、押し下げた押し部35を元に戻し、
図4に示すように、貫通孔31bの最も先端側に移動させておく。押し部35から手を放しておくことによって、軸方向における押し部35の位置は固定される。この状態で、ハンドル体3に対して交換用ヘッド2を対向させ、交換用ヘッド2の挿入穴21c3内に、ハンドル本体部31から突出したハンドル体3側の軸部37を挿入させる。
【0078】
このとき、軸部37の貫通孔37cから突出した第2の嵌合部33の嵌合凸部33bは、
図2に示すように、挿入穴21c3の内面に形成されたガイド面6に沿って軸方向へ移動する際に、ガイド面6によって軸部37の内側へ押圧される。これに伴って、嵌合解除部34が背面側へ僅かに移動して付勢ばね36を縮む方向へ変形する。
【0079】
付勢ばね36が変形した状態で、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bがガイド面6に沿って移動して第1の嵌合部5に達すると、付勢ばね36の弾性復帰によって嵌合解除部34が正面側へ僅かに移動して、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bが、第1の嵌合部5に対して嵌合することになる。
【0080】
このようにして、ハンドル体3に対する交換用ヘッド2の着脱を片手で容易に行うことが可能である。本実施形態では、ハンドル体3に対する交換用ヘッド2の着脱の際に、ブラシ部4に手が触れることがないので、衛生的に且つ容易にヘッド交換を行うことが可能である。さらに、付勢ばね36によって嵌合解除部34が貫通孔31b側(Y方向:短軸側)へ付勢されているので、押し部35から手を離した状態では、スライド機構32のスライド移動が規制される。これにより、ブラッシング時に、ヘッド交換式歯ブラシ1をその長さ方向(長軸方向)に沿って動かした場合であっても、ヘッド部23側のぐらつきが防止され、安定したブラッシングが可能になる。
【0081】
なお、押し部35が貫通孔37cの最も先端側に位置した状態で、押し部35を指で押圧しながら交換用ヘッド2を取り付けることも可能である。
【0082】
なお、
図2では、嵌合解除部34を、Z方向(短軸方向)に一定の径をなす円柱体で例示したが、円柱体ではなく、軸部37に沿った複数枚の板状で構成されていてもよい。
また、交換用ヘッド2を取り付ける際に、軸部37の貫通孔37cから突出した第2の嵌合部33の嵌合凸部33bが、必ずしも軸部37の内側へ移動する必要はなく、軸部37が一時的に押し広げられることで、交換用ヘッド2を取り付けることも可能である。
【0083】
(変形例)
ここで、ハンドル体3(スライド機構32)の変形例について説明する。
図7及び
図8は、変形例におけるハンドル体3(スライド機構32)の構成を示す断面図である。
図7は、第2の嵌合部33が第2の嵌合解除位置にある状態を示し、
図8は、第2の嵌合部33が第1の嵌合解除位置にある状態を示す。
なお、
図7及び
図8においては交換用ヘッド2の図示を省略している。
【0084】
上述した実施形態では、押し部35を押し下げて、スライド機構32における第2の嵌合部33及び軸部37をハンドル本体部31内に引き込む際、第2の嵌合部33が、軸部37の貫通孔37cに嵌合凸部33bが引っ掛かった状態のまま、軸部37を引き連れて移動することによって、第2の嵌合部33の後端側への移動に伴って軸部37が連動する。これによって、第2の嵌合部33とともに軸部37の少なくとも一部がハンドル本体部31内に引き込まれる。このような連動がより確実に行われるようにするために、
図7及び
図8に示すような構成を採用してもよい。
【0085】
すなわち、
図7及び
図8に示すように、軸部37の内周面の一部に、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bが係合するための軸部側係合凸部(第3の嵌合部)37eを設けてもよい。軸部側係合凸部37eは、軸部37の内周面から垂直に内側に突出する凸部であって、貫通孔37cよりも軸方向の後端側に存在することが好ましい。
【0086】
これにより、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bが、軸方向の先端側から軸部側係合凸部37eに当接することによって、第2の嵌合部33の軸方向の後端側へのスライド移動に連動して軸部37も軸方向の後端側へと移動し、第2の嵌合部33及び軸部37がともにハンドル本体部31内に引き込まれることになる。
【0087】
このように、軸部37の内側に、第2の嵌合部33の嵌合凸部33bに係合する凸状の軸部側係合凸部37eを設けておくことによって、軸部37に対する係合状態がより確実に維持されるので、スライド途中で外れにくくなる。これにより、ハンドル本体部31内に軸部37をスムーズに引き込むことが可能になる。
【0088】
<第2の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ>
本発明における第2の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ40について、以下に図面を参照して説明する。
図9及び
図10は、本発明に係る第2の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ40の要部構成を示す断面図である。
図9は、第2の嵌合部33が係合位置にある状態を示し、
図10は、第2の嵌合部33が第2の嵌合解除位置にある状態を示す。
なお、
図9及び
図10では交換用ヘッド2の図示を省略している。
【0089】
先に述べた第1の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ1では、付勢手段として付勢ばね36を採用した構成となっていたが、本実施形態におけるヘッド交換式歯ブラシ40では、付勢手段として、磁石を採用している。
【0090】
図9及び
図10に示すように、ヘッド交換式歯ブラシ40には、ハンドル本体部31内に一対の磁石(第1の磁石36A及び第2の磁石36B)が設けられている。第1の磁石36A(嵌合維持部材:第1の磁性部材)は、嵌合解除部34の長さ方向における一方側の端面34bに設けられている。
【0091】
一方、第2の磁石36B(嵌合維持部材:第2の磁性部材)は、ハンドル本体部31の内周面のうち、奥行方向(嵌合解除部34の長さ方向)で第1の磁石36Aに対向する位置に設置されている。
【0092】
第2の磁石36Bは、ハンドル本体部31の内周面のうち貫通孔31bの周囲であって、軸方向に沿う貫通孔31bの先端側に配置されていることが好ましい。第2の磁石36Bは、ハンドル本体部31の貫通孔31b内を摺動する軸34c(押し部35)の移動を妨げることのない位置に配置されている。
【0093】
第1の磁石36A及び第2の磁石36Bは、互いに引き合う磁力関係を有する。第1の磁石36A及び第2の磁石36Bのうちのいずれか一方がS極であり、いずれか他方がN極である。第1の磁石36A及び第2の磁石36Bの形状及び大きさ等は特に問わない。嵌合補助部33aがブレることなく奥行方向における正面側へスムーズに引き寄せられる磁力が得られればよい。
【0094】
ハンドル体3に対して交換用ヘッド2が装着された状態のとき、
図9に示すように、第1の磁石36Aと第2の磁石36Bとは互いにくっ付いている。第2の嵌合部33が「嵌合位置」に位置しているとき、嵌合凸部33bが交換用ヘッド2の第1の嵌合部5に対して嵌合しており、その嵌合状態が、第1の磁石36Aと第2の磁石36Bとが互いに引き合う磁力によって維持されている。
【0095】
ハンドル体3から交換用ヘッド2を取り外す際には、
図10に示すように、使用者が押し部35を軸方向の後端側へ向かって押し下げることによって、ハンドル体3から交換用ヘッド2を取り外すことが可能である。
【0096】
具体的には、使用者によって、ハンドル体3の外側に設けられた押し部35が奥行方向における背面側へ押し込まれると、嵌合解除部34が押し部35の移動に連動して背面側へ移動する。これに伴って、ハンドル本体部31側の第2の磁石36Bにくっ付いていた嵌合解除部34側の第1の磁石36Aが、第2の磁石36Bから離れることになる。これにより、第1の嵌合部5に対する第2の嵌合部33の嵌合状態が解除されて、スライド機構32の軸方向へのスライドが可能になる。
【0097】
次に、使用者によって押し部35が押された状態でハンドル体3の後端側へ向かって押し下げられることによって、押し部35に連結された嵌合解除部34が軸方向に沿って後端側へ移動して、第2の嵌合部33とともに軸部37がハンドル本体部31内に引き込まれる。このようにして、ハンドル体3に対する交換用ヘッド2の嵌合状態が解除され、交換用ヘッド2をハンドル体3から取り外すことが可能になる。
【0098】
図9及び
図10に示す構成では、第1の嵌合部5に対する第2の嵌合部33の嵌合状態を維持するために必要な位置にだけ第2の磁石36Bが配置されているが、図中の二点鎖線で示すように、ハンドル本体部31の貫通孔31bの長さ方向に沿って、第2の磁石36Bが連続的あるいは部分的に設けられていてもよい。
【0099】
これにより、使用者が押し部35から手を離した所定の位置において、押し部35をハンドル本体部31に対して固定することが可能になる。つまり、使用者が押し部35を押し下げた後、所定の位置において押し部35から手を離すと、第1の磁石36Aと第2の磁石36Bとが互いに引き合う力によって、第1の磁石36Aが第2の磁石36Bに引き寄せられて、第2の磁石36Bのうちの軸方向における所定の領域に第1の磁石36Aが接着して押し部35の位置が固定される。
【0100】
<第3の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ>
本発明における第3の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ50について、以下に図面を参照して説明する。
図11は、本発明に係る第3の実施形態のヘッド交換式歯ブラシ50の構成を示す分解図である。
【0101】
図11に示すように、本実施形態のヘッド交換式歯ブラシ50は、上述した実施形態における軸部37と第2の嵌合部33とが一体化した、嵌合軸部(第2の嵌合部)52を有している。
嵌合軸部52は、交換用ヘッド2側の挿入穴21c3に挿入可能であって、挿入穴21c3の太さよりもわずかに細い。嵌合軸部52の外周面のうち、正面側には、交換用ヘッド2側の第1の嵌合部5に嵌合可能な嵌合凸部52bが形成されている。嵌合凸部52bは、嵌合軸部52の軸方向における所定の位置に形成されている。
【0102】
分離していた軸部37と第2の嵌合部33とが一体化した嵌合軸部52を設けることによって、スライド機構32の製造及び組み立てが容易になる。
【0103】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0104】
例えば、上記実施形態における第2の嵌合部33は、交換用ヘッド2の第1の嵌合部5に嵌合する嵌合凸部33bを1つだけ備えた構成となっているが、嵌合凸部33b及び第1の嵌合部5を複数組設けてもよい。
【0105】
なお、貫通孔31bの形状は、軸方向に沿った直線状の長孔に限られない。例えば、貫通孔31bの長さ方向の所定の位置(第1の嵌合部5に対する第2の嵌合部33の嵌合が解除される位置)に貫通孔31bに連通する溝を設けておくことにより、押し部35を押し下げた後に溝内に押し部35(軸34c)を配置させることによって、ブレがなく滑らかに可動させることができるとともに、嵌合解除状態をより確実にしてもよい。
【0106】
貫通孔31bの後端側に沿って押し部35を押し下げた後、押し部35から手を離した際に、貫通孔31bの先端側に向かって、押し部35(スライド機構32)が弾性的に移動する構成となっていることが好ましい。
【0107】
なお、付勢部材としては、付勢ばねに限られず、ゴムなどの弾性部材を採用してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1,40,50…ヘッド交換式歯ブラシ、2…交換用ヘッド、3…ハンドル体、4…ブラシ部、4a…毛束、5…第1の嵌合部、5…嵌合部、23…ヘッド部、31…ハンドル本体部、31b,37c…貫通孔、31e…内面、32…スライド機構、33…第2の嵌合部、34…嵌合解除部、34c…軸、36…付勢ばね(嵌合維持部材:弾性部材)、36a…第1の磁石(嵌合維持部材:第1の磁性部材)、36b…第2の磁石(嵌合維持部材:第2の磁性部材)、37…軸部、37e…軸部側係合凸部(第3の嵌合部)、52…嵌合軸部(第2の嵌合部)