(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102056
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】自発光パネル、および、自発光パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220630BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20220630BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20220630BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220630BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220630BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/06
H05B33/10
H01L27/32
G09F9/30 365
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216567
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 英幸
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD39
3K107DD89
3K107DD90
3K107EE03
3K107GG06
3K107GG24
3K107GG28
3K107HH00
5C094AA10
5C094AA37
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094FA01
5C094FB01
(57)【要約】
【課題】ウェットプロセスで機能層を形成する自発光パネルにおいて、パネルの精細度やサイズに関わらず機能層の膜厚均一化による発光効率や寿命の向上を図ることのできる自発光パネル、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上に配された駆動回路層と、駆動回路層上に配された層間絶縁層と、層間絶縁層上に配され複数の発光素子を含む発光素子層とを備える自発光パネルであって、前記駆動回路層は前記層間絶縁層側に突出した突出部を有し、前記発光素子層は、発光素子ごとに形成された複数の画素電極と、画素電極のそれぞれの上方に配された塗布膜からなる機能層と、機能層の上方に配された対向電極と、少なくとも一部の画素電極と対向電極との間に配される画素内絶縁層とを含み、前記画素内絶縁層を含む発光素子を平面視したとき、前記画素内絶縁層の存在領域は前記突出部上方でない領域の全域を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配された駆動回路層と、
前記駆動回路層上に配された層間絶縁層と、
前記層間絶縁層上に配され複数の発光素子を含む発光素子層と
を備え、
前記駆動回路層は、配線と発光素子に対応する半導体回路とを含み、前記層間絶縁層側に突出した突出部を有し、
前記発光素子層は、前記発光素子ごとに形成された複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方に配された塗布膜からなる機能層と、前記機能層の上方に配された対向電極と、少なくとも一部の前記画素電極と前記対向電極との間に配される画素内絶縁層とを含み、
前記画素内絶縁層を含む発光素子を平面視したとき、前記発光素子は前記突出部上方である領域の少なくとも一部を発光領域として含み、非発光領域である前記画素内絶縁層の存在領域は前記突出部上方でない領域の全域を含む
自発光パネル。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に配された駆動回路層と、
前記駆動回路層上に配された層間絶縁層と、
前記層間絶縁層上に配され複数の発光素子を含む発光素子層と
を備え、
前記駆動回路層は、配線と発光素子に対応する半導体回路とを含み、前記層間絶縁層側に突出した突出部を有し、
前記発光素子層は、前記発光素子ごとに形成された複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方に配された塗布膜からなる機能層と、前記機能層の上方に配された対向電極と、少なくとも一部の前記画素電極と前記対向電極との間に配される画素内絶縁層とを含み、
前記画素内絶縁層を含む発光素子を平面視したとき、前記発光素子は前記突出部上方でない領域の少なくとも一部を発光領域として含み、非発光領域である前記画素内絶縁層の存在領域は前記突出部上方の領域の全域を含む
自発光パネル。
【請求項3】
前記駆動回路層は複数の層から構成され、前記突出部は、前記駆動回路層のうち前記対向電極側の層である
請求項1または2に記載の自発光パネル。
【請求項4】
前記画素内絶縁層と前記対向電極との間に、前記機能層と同一の材料からなる塗布膜を備える
請求項1から3のいずれか1項に記載の自発光パネル。
【請求項5】
前記層間絶縁層上に配され、前記画素電極と前記画素電極との間に並設された複数の長尺状の隔壁をさらに備え、
前記機能層は、隣り合った一対の前記隔壁の間隙に配されてなる
請求項1から4のいずれか1項に記載の自発光パネル。
【請求項6】
前記画素内絶縁層と、前記隔壁とは同一の材料から形成される
請求項5に記載の自発光パネル。
【請求項7】
前記画素内絶縁層の材料の前記機能層の材料インクに対する撥液性は、前記隔壁の材料の前記機能層の材料インクに対する撥液性より低い
請求項5に記載の自発光パネル。
【請求項8】
前記層間絶縁層上に配され、隣り合った一対の前記隔壁の間隙において前記画素電極と前記画素電極との間に並設された複数の画素規制層をさらに備え、
前記画素内絶縁層と、前記画素規制層とは同一の材料から形成される
請求項5に記載の自発光パネル。
【請求項9】
基板上に駆動回路層を形成し、
前記駆動回路層上に絶縁層を形成し、
複数の画素電極を形成し、
前記画素電極の上方であって前記突出部上方でない第1領域に、画素内絶縁層を形成し、
前記画素内絶縁層の上方を含む前記画素電極の上方に、塗布により機能層を形成し、
前記機能層の上方に対向電極を形成する
自発光パネルの製造方法。
【請求項10】
基板上に駆動回路層を形成し、
前記駆動回路層上に絶縁層を形成し、
複数の画素電極を形成し、
前記画素電極の上方であって前記突出部上方ある第2領域に、画素内絶縁層を形成し、
前記画素内絶縁層の上方を含む前記画素電極の上方に、塗布により機能層を形成し、
前記機能層の上方に対向電極を形成する
自発光パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電界発光現象や量子ドット効果を利用した発光素子を用いた自発光パネル、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL素子、量子ドット効果を利用したQLEDなどの発光素子を利用した自発光パネルが普及しつつある。
【0003】
発光素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。現在、発光層を含む機能層を効率よく形成する方法として、機能性材料を含むインクをウェットプロセスで塗布して形成することが行われている。ウェットプロセスでは、真空蒸着装置と比較して製造装置を小型化することができ、また、機能性材料を蒸着する際に使用するシャドウマスクを使用する必要がない。そのため、シャドウマスクの位置合わせ等の作業が必要なく、大型パネルの生成や量産性を考慮したパネルサイズを混合したような大型基板の製造も容易となり、効率の良いパネル生成に適した特徴がある。また蒸着法と異なり、ウェットプロセスでは、高価な発光材料等の機能性材料の使用効率が向上することより、パネル製造コストの低減が可能となる。
【0004】
また、これらの自発光パネルでは、各自発光素子の制御を容易とするために、TFT(Thin Film Transistor)などを用いた駆動回路を薄膜として形成し、駆動回路層と発光素子層とを自発光パネルの膜厚方向に積層してコンタクトホールを通じた電気的接続を行うことが一般的である(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-40764号公報
【特許文献2】国際公開第2015/118598号
【特許文献3】特開2016-167400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
駆動回路層上に発光素子層を積層する場合、電気的な絶縁と物理的な凹凸の平坦化のため、絶縁材料からなる層間絶縁層により発光素子層下面の平坦化が行われる。しかしながら、駆動回路層の凹凸が大きい場合、層間絶縁層の上面の平坦度が十分でない場合がある。また、発光素子の機能層をウェットプロセスで行う場合、パネルの精細度の向上やサイズ上昇により層間絶縁層の上面の凹凸に対する許容マージンが小さくなる。したがって、パネルの精細度向上やサイズ上昇と機能層の膜厚均一化による発光効率や寿命の向上との両立が困難である課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ウェットプロセスで機能層を形成する自発光パネルにおいて、パネルの精細度やサイズに関わらず機能層の膜厚均一化による発光効率や寿命の向上を図ることのできる自発光パネル、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る自発光パネルは、基板と、前記基板上に配された駆動回路層と、前記駆動回路層上に配された層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に配され複数の発光素子を含む発光素子層とを備え、前記駆動回路層は、配線と発光素子に対応する半導体回路とを含み、前記層間絶縁層側に突出した突出部を有し、前記発光素子層は、前記発光素子ごとに形成された複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方に配された塗布膜からなる機能層と、前記機能層の上方に配された対向電極と、少なくとも一部の前記画素電極と前記対向電極との間に配される画素内絶縁層とを含み、前記画素内絶縁層を含む発光素子を平面視したとき、前記発光素子は前記突出部上方である領域の少なくとも一部を発光領域として含み、非発光領域である前記画素内絶縁層の存在領域は前記突出部上方でない領域の全域を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る自発光パネルは、画素電極上方のうち、突出部上方でない領域を非発光領域とし、突出部上方の領域の一部を発光領域とする。したがって、突出部上方の一部である発光領域において機能層の膜厚を均一化すればよく、突出部上方の一部である発光領域とそれ以外の非発光領域との間で機能層の膜厚の均質化を図る必要がない。すなわち、突出部によって絶縁層の上面や画素電極の上面が平坦でない場合であっても、発光領域内の機能層の膜厚均一化を容易に実現することができ、発光効率や寿命の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る自発光パネル10を含む表示装置1の概略図である。
【
図2】実施の形態に係る自発光パネル10の各副画素における回路構成を示す模式図である。
【
図3】実施の形態に係る自発光パネル10の平面概略図である。
【
図4】実施の形態1に係る自発光パネル10の部分断面図であって、
図3のA-A断面に相当する。
【
図5】実施の形態1に係る有機EL素子2において、画素電極13と画素内絶縁層30、突出部1121の位置関係を示す透過平面模式図である。
【
図6】(a)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る自発光パネルの駆動時写真であり、(b)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る有機EL素子の機能層膜厚分布を示すグラフである。
【
図7】(a)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る有機EL素子の色度と効率との関係を示す散布図であり、(b)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る有機EL素子のフィルタ特性と外光反射スペクトルを示すグラフであり、(c)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る有機EL素子の電流集中度合いを示すグラフであり、(d)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る有機EL素子の寿命を示すグラフである。
【
図8】(a)、(b)は、画素内絶縁層30を有さない比較例に係る自発光パネルの断面写真である。
【
図9】実施の形態1に係る有機ELパネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基材上にTFT層と層間絶縁層が形成された状態、(b)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(c)は、画素電極が形成された状態、(d)は、層間絶縁層および画素電極上に画素内絶縁材料層が形成された状態、(e)は、画素電極上に画素内絶縁層が形成された状態を示す。
【
図10】実施の形態1に係る有機ELパネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、層間絶縁層上、画素電極上、および、画素内絶縁層上に隔壁材料層が形成された状態、(b)は、隔壁が形成された状態、(c)は、画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(d)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態を示す。
【
図11】実施の形態1に係る有機ELパネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、正孔輸送層上に発光層が形成された状態、(b)は、発光層および隔壁層上に電子輸送層が形成された状態、(c)は、電子輸送層上に電子注入層が形成された状態を示す。
【
図12】実施の形態1に係る有機ELパネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、電子注入層上に対向電極が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図13】実施の形態1に係る有機ELパネルの製造過程を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態2に係る自発光パネル10Aの部分断面図であって、
図3のA-A断面に相当する。
【
図15】実施の形態2に係る有機EL素子2Aにおいて、画素電極13と画素内絶縁層30、突出部1121の位置関係を示す透過平面模式図である。
【
図16】実施の形態2に係る有機ELパネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、層間絶縁層および画素電極上に画素内絶縁材料層が形成された状態、(b)は、画素電極上に画素内絶縁層が形成された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪本開示の一態様に至った経緯≫
表示パネルや照明パネルなどの複数の発光素子を備える自発光パネルにおいて、一般に、基板上にTFT等を用いた駆動回路層を形成し、その上方に発光素子層を形成した多層構造が用いられている。このような構成とすることで、自発光パネルとパネル外部の制御回路とを接続するための制御配線を発光素子単位で設ける必要がなく単純化できる。また、特に、発光素子の下方に対応する駆動回路を配置する構成をとることにより、駆動回路と発光素子との電気的接続をコンタクトホール等の単純な膜厚方向の配線で行うことができるため、設計が容易になるとともに、製造工程を単純化させることができる。
【0012】
一方で、駆動回路層と発光素子層とを電気的に絶縁するため、駆動回路層と発光素子層との間には層間絶縁層が必要となる。また、発光素子層は層間絶縁層上に形成されるため、層間絶縁層の上面は平坦性が必要となる。したがって、従来、層間絶縁層は、その上面の平坦性を保つため、数μm程度の厚みを有する樹脂層で形成されている。
【0013】
発光素子の機能層をウェットプロセスで形成する場合、機能層の膜形状は層間絶縁層の上面形状の影響を受け、層間絶縁層の上面形状の平坦性が高いほど機能層の膜厚が均一となり、電流の集中等を抑止し発光素子の発光効率や寿命が向上する。しかしながら、発明者らは、自発光パネルの精細度やサイズを向上させた場合に、層間絶縁層の平坦性が不十分な場合があるという課題を見出した。自発光パネルの精細度を向上させると、発光素子それぞれの面積が小さくなるため、機能層を形成するためのインクの濡れ広がる面積が小さくなり、機能層の膜厚が平均化されない場合がある。また、自発光パネルのサイズが上昇すると、機能層を形成するためのインクの乾燥過程において、パネル中央部とパネル周縁部とでインクに含まれる溶媒の蒸気圧のムラが生じやすく、機能層の膜厚に偏りが生じる場合がある。すなわち、自発光パネルの精細度やサイズを向上させる場合、機能層の膜厚を均一化させるために、層間絶縁層の上面においてより高い平坦度が必要となる。一方で、層間絶縁層の上面は駆動回路層上面の凹凸の影響を受け、特に、駆動回路層最上部における電極や配線の配置や形状が、駆動回路層上面の形状に影響を与える。したがって、自発光パネルの精細度やサイズを向上させた場合に、層間絶縁層の平坦性の不足が原因で機能層の膜厚の不均一が発生し、電流の集中等による発光効率低下や寿命の低下等が発生しうる。
【0014】
そこで、発明者らは、自発光パネルの精細度やサイズに関わらず、機能層の膜厚の均一性を向上させる技術について検討し、本開示の態様に至った。
【0015】
≪開示の態様≫
本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、基板と、前記基板上に配された駆動回路層と、前記駆動回路層上に配された層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に配され複数の発光素子を含む発光素子層とを備え、前記駆動回路層は、配線と発光素子に対応する半導体回路とを含み、前記層間絶縁層側に突出した突出部を有し、前記発光素子層は、前記発光素子ごとに形成された複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方に配された塗布膜からなる機能層と、前記機能層の上方に配された対向電極と、少なくとも一部の前記画素電極と前記対向電極との間に配される画素内絶縁層とを含み、前記画素内絶縁層を含む発光素子を平面視したとき、前記発光素子は前記突出部上方である領域の少なくとも一部を発光領域として含み、非発光領域である前記画素内絶縁層の存在領域は前記突出部上方でない領域の全域を含む。
【0016】
本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルの製造方法は、基板上に駆動回路層を形成し、前記駆動回路層上に絶縁層を形成し、複数の画素電極を形成し、前記画素電極の上方であって前記突出部上方でない第1領域に、画素内絶縁層を形成し、前記画素内絶縁層の上方を含む前記画素電極の上方に、塗布により機能層を形成し、前記機能層の上方に対向電極を形成する。
【0017】
本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネル、または、自発光パネルの製造方法による自発光パネルは、画素電極上方のうち、突出部上方でない領域を非発光領域とし、突出部上方の領域の一部を発光領域とする。したがって、突出部上方の一部である発光領域において機能層の膜厚を均一化すればよく、突出部上方の一部である発光領域とそれ以外の非発光領域との間で機能層の膜厚の均質化を図る必要がない。すなわち、突出部によって絶縁層の上面や画素電極の上面が平坦でない場合であっても、発光領域内の機能層の膜厚均一化を容易に実現することができ、発光効率や寿命の向上を図ることができる。
【0018】
また、本開示の他の少なくとも1つの自発光パネルは、基板と、前記基板上に配された駆動回路層と、前記駆動回路層上に配された層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に配され複数の発光素子を含む発光素子層とを備え、前記駆動回路層は、配線と発光素子に対応する半導体回路とを含み、前記層間絶縁層側に突出した突出部を有し、前記発光素子層は、前記発光素子ごとに形成された複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方に配された塗布膜からなる機能層と、前記機能層の上方に配された対向電極と、少なくとも一部の前記画素電極と前記対向電極との間に配される画素内絶縁層とを含み、前記画素内絶縁層を含む発光素子を平面視したとき、前記発光素子は前記突出部上方でない領域の少なくとも一部を発光領域として含み、非発光領域である前記画素内絶縁層の存在領域は前記突出部上方の領域の全域を含む。
【0019】
また、本開示の他の少なくとも1つの自発光パネルの製造方法は、基板上に駆動回路層を形成し、前記駆動回路層上に絶縁層を形成し、複数の画素電極を形成し、前記画素電極の上方であって前記突出部上方ある第2領域に、画素内絶縁層を形成し、前記画素内絶縁層の上方を含む前記画素電極の上方に、塗布により機能層を形成し、前記機能層の上方に対向電極を形成する。
【0020】
本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネル、または、自発光パネルの製造方法による自発光パネルは、画素電極上方のうち、突出部上方である領域を非発光領域とし、突出部上方でない領域の一部を発光領域とする。したがって、突出部上方の一部でない発光領域において機能層の膜厚を均一化すればよく、突出部上方の一部でない発光領域とそれ以外の非発光領域との間で機能層の膜厚の均質化を図る必要がない。すなわち、突出部によって絶縁層の上面や画素電極の上面が平坦でない場合であっても、発光領域内の機能層の膜厚均一化を容易に実現することができ、発光効率や寿命の向上を図ることができる。
【0021】
また、本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、前記駆動回路層は複数の層から構成され、前記突出部は、前記駆動回路層のうち前記対向電極側の層である、としてもよい。
【0022】
これにより、制御回路層が複数の層からなる場合において、絶縁部の上面形状への影響の小さい下層については対処する必要が低いため、絶縁部の上面形状への影響の大きい上層についてのみ対処することができる。
【0023】
また、本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、前記画素内絶縁層と前記対向電極との間に、前記機能層と同一の材料からなる塗布膜を備える、としてもよい。
【0024】
これにより、機能層の形成時に、発光領域と画素内絶縁層の存在領域である非発光領域とに跨るようにインクを塗布することができるため、画素内絶縁層の存在領域を機能層の形成領域から除外する必要がない。したがって、機能層の形成が容易となる。
【0025】
また、本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、前記層間絶縁層上に配され、前記画素電極と前記画素電極との間に並設された複数の長尺状の隔壁をさらに備え、前記機能層は、隣り合った一対の前記隔壁の間隙に配されてなる、としてもよい。
【0026】
これにより、隔壁を用いて機能層を容易に形成することができる。
【0027】
また、本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、前記画素内絶縁層と、前記隔壁とは同一の材料から形成される、としてもよい。
【0028】
これにより、隔壁と画素内絶縁層を1つの工程で同時に製造できるため、自発光パネルの製造が容易となる。
【0029】
また、本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、前記画素内絶縁層の材料の前記機能層の材料インクに対する撥液性は、前記隔壁の材料の前記機能層の材料インクに対する撥液性より低い、としてもよい。
【0030】
これにより、機能層形成時の隔壁の高い撥液性を担保するとともに、画素電極上における画素内絶縁層の外縁部で撥液性によって機能層の膜厚が不均一となることを抑止できる。
【0031】
また、本開示の少なくとも1つの態様に係る自発光パネルは、前記層間絶縁層上に配され、隣り合った一対の前記隔壁の間隙において前記画素電極と前記画素電極との間に並設された複数の画素規制層をさらに備え、前記画素内絶縁層と、前記画素規制層とは同一の材料から形成される、としてもよい。
【0032】
これにより、機能層を複数の発光素子に跨る塗布膜として形成できるため機能層の膜厚の均一性を高めるとともに、画素規制層と画素内絶縁層を1つの工程で同時に形成して製造工程を単純化させることが可能となる。
【0033】
≪実施の形態1≫
以下、本開示に係る自発光パネルとして有機ELパネルを用いた表示装置(以下、単に「表示装置」と称する)の実施形態について説明する。
【0034】
<表示装置の構成>
(1)表示装置1の回路構成
図1は、表示装置1の回路構成を示すブロック図である。
【0035】
図1に示すように、表示装置1は、有機ELパネル10と、これに接続された駆動制御回路部200とを有して構成されている。
【0036】
有機ELパネル10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルであって、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状(行列状)に配列され構成されている。
【0037】
駆動制御回路部200は、4つの駆動回路210と制御回路220とにより構成されている。
【0038】
(2)有機ELパネル10の回路構成
有機ELパネル10においては、複数の単位画素100eが行列状に配されて表示領域を構成している。各単位画素100eは、3個の有機EL素子、つまり、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に発光する3個の副画素100seから構成される。各副画素100seの回路構成について、
図2を用い説明する。
【0039】
図2は、表示装置1に用いる有機ELパネル10の各副画素100seに対応する有機EL素子2における回路構成を示す回路図である。
【0040】
図2に示すように、本実施の形態に係る有機ELパネル10では、各副画素100seが2つのトランジスタTr1、Tr2と一つのキャパシタC、及び発光部としての有機EL素子部ELとを有し構成されている。トランジスタTr1は、駆動トランジスタであり、トランジスタTr2は、スイッチングトランジスタである。
【0041】
スイッチングトランジスタTr2のゲートG2は、走査ラインVscnに接続され、ソースS2は、データラインVdatに接続されている。スイッチングトランジスタTr2のドレインD2は、駆動トランジスタTr1のゲートG1に接続されている。
【0042】
駆動トランジスタTr1のドレインD1は、電源ラインVaに接続されており、ソースS1は、有機EL素子部ELの画素電極(アノード)に接続されている。有機EL素子部ELにおける共通電極(対向電極:カソード)は、接地ラインVcatに接続されている。
【0043】
なお、キャパシタCの第1端は、スイッチングトランジスタTr2のドレインD2及び駆動トランジスタTr1のゲートG1と接続され、キャパシタCの第2端は、電源ラインVaと接続されている。
【0044】
有機ELパネル10においては、隣接する複数の副画素100se(例えば、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の発光色の3つの副画素100se)を組み合せて1つの単位画素100eを構成し、各単位画素100eが分布するように配されて画素領域を構成している。
【0045】
そして、各副画素100seのゲートG2からゲートラインが各々引き出され、有機ELパネル10の外部から接続される走査ラインVscnに接続されている。同様に、各副画素100seのソースS2からソースラインが各々引き出され有機ELパネル10の外部から接続されるデータラインVdatに接続されている。
【0046】
また、各副画素100seの電源ラインVa及び各副画素100seの接地ラインVcatは集約されて、表示装置1の電源ライン及び接地ラインに接続されている。
【0047】
なお、各有機EL素子の駆動回路は、上記のものに限られず、他の構成でも構わない。
【0048】
(3)有機ELパネル10の構成
図3は、有機ELパネル10の一部を拡大した模式平面図である。有機ELパネル10は、基板上を行方向(X方向)に区画し塗布領域を規定する隔壁(列バンク)14と、基板上を列方向(Y方向)に区画する画素規制層(行バンク)141とによりマトリクス上に区画される。隔壁14と画素規制層141とにより区画された領域はそれぞれ副画素100R、100G、100Bを構成し、副画素100R、100G、100Bが画素Pを構成する。なお、副画素100R、100G、100Bのそれぞれは、X方向に隣接する2つの隔壁14によって区画される塗布領域CR、CG、CBのそれぞれに形成される。
【0049】
(4)有機EL素子2の構成
図4は、有機ELパネル10の一部の模式断面図であり、
図3のA-A断面に相当する。有機ELパネル10の副画素100R、100G、100Bのそれぞれは、自発光素子である有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)によって構成される。以下、有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)のそれぞれを区別しない場合、有機EL素子2として説明する。
【0050】
有機ELパネル10は、下側から順に、基板11、層間絶縁層12、隔壁14を備え、X方向に隣接する2つの隔壁によって区画される開口部14a内に画素電極13、画素内絶縁層30、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17を備え、共通層として電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、封止層21を備える。なお、基板11は、基材111上にTFT層112が多層構造として形成されてなり、その最上層と層間絶縁層12との境界は平面ではなく、TFTの上部、配線又は電極である突出部1121が層間絶縁層12側に突出している。このうち、画素電極13から対向電極20までの部分が有機EL素子2を構成する。
【0051】
<有機EL素子の各構成要素>
(1)基板
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、副画素ごとに駆動回路が形成されている。なお、TFT層112は多層構造であるとともに空隙を有する構造であり、空隙には層間絶縁層12が下方に突出している。すなわち、基板11と層間絶縁層12との界面は平面でなく、基板11の突出部と層間絶縁層12の凹部が、基板11の凹部と層間絶縁層12の突出部が、それぞれ隙間なくかみ合った状態となっている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0052】
プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。
【0053】
(2)層間絶縁層
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。上述したように、層間絶縁層12とTFT層112との境界は平面ではなく、TFT層112の最上層が突出部1121として画素電極13側に突出している。また、
図3の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、副画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
【0054】
(3)画素電極
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、副画素ごとに設けられ、コンタクトホール(不図示)を通じてTFT層112と電気的に接続されている。
【0055】
本実施の形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
【0056】
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
【0057】
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
【0058】
(4)画素内絶縁層
画素内絶縁層30は、突出部1121上方以外の領域及びその近傍において画素電極13と正孔注入層15との間に介在し、平面視において画素内絶縁層30が存在する領域を非発光領域とするためのものである。
【0059】
図5は、画素内絶縁層30と画素電極13、突出部1121、隔壁14、画素規制層141の関係を示す平面模式図であり、有機ELパネル10の上面側(封止層21側)からの視点で、画素電極13、突出部1121、隔壁14、画素規制層141のみを透視状態で示したものである。
図5(a)に示すように、画素電極13はその周辺部の一部が隔壁14および画素規制層141に被覆され、開口部13aが露出している。画素内絶縁層30は、
図5(b)に示すように、開口部13aのうち、突出部1121上でない第1領域13apの全域と、突出部1121上である第2領域13aqのうち第1領域13apに接した領域とを覆うように形成される。
図4に示すように、層間絶縁層12の上面において、突出部1121上である第2領域13aq及びその周縁部は、突出部1121上でない第1領域13apより上方に凸の形状を有している。画素内絶縁層30は、第1領域13ap及びその周縁部を発光素子内の非発光領域とすることにより、突出部1121上である第2領域13aqのみを発光領域とすることで、発光領域内の膜厚の均一化の機能を有している。
【0060】
なお、画素内絶縁層30の上面は隔壁14の上面より低く、画素内規制層141の上面と同じ高さ、または、画素内規制層141の上面より低いことが好ましい。
【0061】
画素内絶縁層30の材料は、絶縁性を備える。なお、画素内絶縁層30の材料は、機能層形成用インクに対して親液性を有してもよい。画素内絶縁層30は、例えば、絶縁性の有機材料からなり、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、フェノール樹脂等が用いられている。また、画素内絶縁層30の材料は、有機EL素子2が発光する光を吸収する色素や顔料を含んでもよい。画素内絶縁層30が、有機EL素子2の発光する光と同波長の光を吸収することにより、画素内絶縁層30が配された非発光領域が外光反射や発光層17が出射した光を反射することによる有機ELパネル10の色純度の低下を抑止することができる。
【0062】
なお、画素内絶縁層30と画素規制層141とは同一の材料で形成されてもよく、また、同時に形成されてもよい。
【0063】
(5)隔壁および画素規制層
隔壁14は、基板11の上方に副画素ごとに配置された複数の画素電極13を、X方向(
図3参照)において列毎に仕切るものであって、X方向に並ぶ副画素列CR、CG、CBの間においてY方向に延伸するラインバンク形状である。隔壁14には、絶縁性を備え、少なくとも表面が機能層形成用インクに対して撥液性を有する。隔壁14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂など)からなる。本実施の形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。なお、隔壁14は、例えば、フッ素系界面活性剤などの撥液性を備える添加物を含んでいてもよいし、表面処理がなされていてもよい。X方向に隣接する2つの隔壁14で定義される開口部14aに有機EL素子2が形成される。
【0064】
画素規制層141は、開口部14a内においてY方向に隣接する画素電極13を区画するものであって、副画素列CR、CG、CBにおける発光層17の段切れ抑制、画素電極13と対向電極20との間の電気絶縁性の向上などの役割を有する。画素規制層141は、絶縁性を備える。なお、画素規制層141の材料は、機能層形成用インクに対して親液性を有してもよい。画素規制層141は、例えば、絶縁性の有機材料からなり、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、フェノール樹脂等が用いられている。なお、上述したように、画素内絶縁層30と画素規制層141とは同一の材料で形成されてもよく、また、同時に形成されてもよい。
【0065】
(6)正孔注入層
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15は、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)などの低分子量の有機化合物や、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)などの高分子材料を含む層である。本実施の形態において、正孔注入層15は、ウェット方式により形成される塗布膜である。なお、有機EL素子2に含まれる他の機能層が塗布膜である場合には、正孔注入層15は蒸着膜であってもよく、例えば、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などの遷移金属の酸化物を含む層であってもよい。この場合、画素内絶縁層30、画素規制層141、隔壁14のそれぞれは、正孔注入層15上に形成されてもよい。また、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物を含む蒸着層の上に有機材料を含む塗布層を積層した多層構造であってもよい。この場合、画素内絶縁層30、画素規制層141、隔壁14のそれぞれは、蒸着層の上であってもよく、蒸着層と塗布層の間に画素内絶縁層30が形成されていてもよい。
【0066】
(7)正孔輸送層
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有する。本実施の形態において、正孔輸送層16は、塗布膜である。正孔輸送層16の材料は、例えば、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0067】
(8)発光層
発光層17は、開口部14a内に形成されており、正孔と電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては、公知の材料を利用することができる。
【0068】
発光素子2が有機EL素子である場合、発光層17に含まれる有機発光材料としては、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2-ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を用いることができる。また、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質を用いることができる。また、発光層17は、ポリフルオレンやその誘導体、ポリフェニレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物等、もしくは前記低分子化合物と前記高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。なお、発光素子2は量子ドット発光素子(QLED;Quantum-dot Light Emitting Diode)であってもよく、発光層17の材料として量子ドット効果を有する材料を使用することができる。
【0069】
本実施の形態では、発光層17はインクを用いた塗布成膜により形成される塗布膜である。
【0070】
(9)電子輸送層
電子輸送層18は、対向電極20からの電子を発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層18は、電子輸送性が高い有機材料からなる。
【0071】
電子輸送層18に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
【0072】
(10)電子注入層
電子注入層19は、電子輸送層18上に複数の画素に共通して設けられており、対向電極20から発光層17への電子の注入を促進させる機能を有する。
【0073】
電子注入層19は、例えば、電子輸送性を有する有機材料に、電子注入性を向上させる金属材料がドープされてなる。ここで、ドープとは、金属材料の金属原子または金属イオンを有機材料中に略均等に分散させることを指し、具体的には、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相を形成することを指す。金属材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属が選択される。本実施の形態では、Ybが選択される。
【0074】
電子注入層19の形成は、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナンスロリン誘導体などの材料と、金属材料とを共蒸着法により複数の画素に共通して成膜することでなされる。
【0075】
(11)対向電極
対向電極20は、複数の画素に共通して電子注入層19上に形成されており、陰極として機能する。
【0076】
本実施の形態では、対向電極20は、透光性と導電性とを兼ね備えており、金属材料で形成された金属層、金属酸化物で形成された金属酸化物層のうち少なくとも一方を含んでいる。透光性を確保するため、金属層の膜厚は1nm~50nm程度である。金属層の材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。
【0077】
対向電極20は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
【0078】
(12)封止層
対向電極20の上には、封止層21が設けられている。封止層21は、基板11の反対側から不純物(水、酸素)が対向電極20、電子注入層19、電子輸送層18、発光層17等へと侵入するのを防ぎ、不純物によるこれらの層の劣化を抑制する機能を有する。封止層21は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0079】
本実施の形態においては、有機ELパネル10がトップエミッション型であるため、封止層21は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0080】
(13)その他
図4には示されてないが、封止層21上に接着剤を介してガラス基板を基材とするカラーフィルタや偏向シートを貼り合せてもよい。これらを貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19を外部の水分および空気などからさらに保護できる。
【0081】
<膜厚の均一性>
以下、突出部1121が機能層の膜厚に対して与える影響について、詳細に説明する。
【0082】
(1)発光強度および膜厚
図6(a)は、
図5(a)に示す構造部材の配置に対して画素内絶縁層30を設けずに製造した有機ELパネル(以下、「比較例」と記載)の1画素における、発光状態の各素子の輝度を撮像した写真である。
図6(a)に示すように、比較例では、突出部1121上の領域(領域13aq)において、突出部1121上でない領域(領域13ap)より発光輝度が高くなっている。その原因としては、突出部1121上である領域13aqでは、突出部1121上でない領域13apより、機能層の膜厚が小さいためである。
図6(b)は、
図6(a)における位置A、位置B、位置C、位置Dそれぞれの発光層17の膜厚について、位置Aにおける膜厚を0とした差分値を記載したグラフである。なお、「「正孔注入層+正孔輸送層」-5nm」は、突出部1121の影響を受けない従来の有機ELパネル(以下、「比較例3」と呼ぶ)に対して正孔注入層と正孔輸送層の合計膜厚を5nm小さくした比較例1に対応し、「「正孔注入層+正孔輸送層」+5nm」は従来の有機ELパネルに対して正孔注入層と正孔輸送層の合計膜厚を5nm大きくした比較例2に対応する。
図6(b)に示すように、正孔注入層と正孔輸送層の合計膜厚との値に関わらず、発光層の膜厚は位置C、位置Dにおいて、位置A、位置Bより15~30nm程度大きくなっている。その理由としては、基板11の下面を基準としたときの層間絶縁層12の上面の高さが、位置A、Bと位置C、Dとで異なっていることが考えられる。すなわち、位置AおよびBは突出部1121の上方であるため層間絶縁層12の上面が隆起し、突出部1121の直上ではない位置CおよびDより高くなっている。したがって、塗布方式で機能層を形成した際に、機能層の形成インクに偏りが生じ、高さの小さい位置CおよびDでは機能層の膜厚が厚く、高さの大きい位置AおよびBでは機能層の膜厚が薄くなる。有機EL素子の発光時には位置A~Dのいずれにおいても同一の電圧が印加されるため、機能層の膜厚が薄く電気抵抗の低い位置AやBに電流が集中し、位置AやBの輝度が位置CやDの輝度より高くなる。
【0083】
(2)発光特性および寿命
図7(a)は、比較例1、2、3それぞれに係る有機EL素子において、横軸を発光色のCIE X値、縦軸を効率としてプロットした散布図である。
図7(a)において、比較例3に係る有機EL素子の発光強度および色特性をデータ301で示し、比較例1および2に係る有機EL素子の発光強度および色特性をデータ302で示している。
図7(a)に示すように、比較例1および2では、比較例3に対し、同一のCIE X値に対して効率値が小さく、特に、CIE X値が0.27付近において効率がほぼ半減している。すなわち、比較例1または2に係る発光素子では、比較例3の発光素子に対し、同一の色度を得るためには発光強度が約2倍必要となり、光取り出し効率が低下している。
【0084】
また、
図7(b)は、緑色発光素子に対して使用するカラーフィルタの透過スペクトルと、比較例3および比較例1に係る緑発光有機EL素子の外光反射スペクトルとの関係を示すグラフである。
図7(b)において、比較例3に係る有機EL素子の外光反射スペクトルをデータ311で示し、比較例1に係る有機EL素子の外光反射スペクトルをデータ312で示す。
図7(b)に示すように、比較例3に係る有機EL素子の外光反射スペクトルでは、カラーフィルタの透過率の高い520nm付近で反射率が最低となるため、外光反射を十分に抑止している。これに対し、比較例1に係る有機EL素子の外光反射スペクトルでは、反射率が極小となる波長が650nm程度とカラーフィルタの透過率ピークより長波長側にずれているため、外光反射を十分に抑止することができない。その理由としては、比較例1では、機能層の膜厚が有機EL素子内で均一でないため、画素電極13から対向電極20までの光路長が一定ではなく、光共振器構造において設計通りに光反射抑止の効果を発揮する領域と、光路長ずれにより光反射抑止の効果が設計より長波長側で発揮される領域とが混在状態となっていると考えられる。
【0085】
また、
図7(c)は、発光素子内の電流の空間的偏りを示したグラフであり、突出部1121上方における電流の集中度合いを示したものである。具体的には、データ321、322、323のそれぞれは、比較例3、比較例1、比較例2のそれぞれにおいて、突出部1121上方における面積当たりの電流値を相対値として示したものである。
図7(c)に示すように、比較例1および比較例2では、突出部1121上方である機能層の薄膜部に電流が集中する。したがって、
図7(d)に示すように、比較例3に対応する寿命曲線331に対し、比較例1および比較例2に対応する寿命曲線332のように、輝度の低下が進み劣化が大きい。
【0086】
図8(a)、(b)は、比較例1、比較例2に係る有機ELパネルの断面写真である。
図8(a)、(b)に示すように、層間絶縁層12の上面および画素電極13の上面は、突出部1121の上方に当たる領域13aqが、突出部1121の上方に当たらない領域13apに対して上方に突出していることが確認できる。また、領域13aqにおいては、領域13apに対して、画素電極13と対向電極20との距離が短い、すなわち、領域13aqにおける機能層の膜厚が、領域13apにおける機能層の膜厚より小さいことが確認できる。
【0087】
以上説明したように、突出部1121により層間絶縁層12の上面の均一性が低くなる場合、これにより、機能層の膜厚の不均一性が高くなり、発光効率の低下や光学特性の低下、寿命の短縮が発生する。
【0088】
これに対し、実施の形態に係る自発光パネルでは、突出部1121の上方でなく機能層の膜厚の大きい領域13apとその周縁部を画素内絶縁層30によって非発光領域とする。したがって、突出部1121の上方である機能層の膜厚の均一な領域13aqのみを発光領域とするため、機能層において電流の集中が発生せず、機能層の劣化が不均質に進むことを抑止し素子の長寿命化を図ることができる。また、発光素子の設計において、領域13aqにおける各機能層の膜厚が最適となるようにすればよく、発光効率の向上や光取り出し効率の向上を図ることが容易となる。さらに、発光素子が共振器構造を有する場合、領域13aqにおける機能層の膜厚のみを考慮して共振器構造を設計すればよく、光学長の異なる領域13apからの発光により色ずれ等が発生することを抑止することができる。
【0089】
<自発光パネルの製造方法>
以下、本開示の一態様に係る自発光パネルの製造方法としての有機ELパネルの製造方法について、図面を用いて説明する。
図9(a)~
図12(b)は、有機ELパネルの製造における各工程での状態を示す模式断面図である。
【0090】
なお、有機ELパネルにおいて、画素電極(下部電極)は有機EL素子の陽極として、対向電極(上部電極、共通電極)は有機EL素子の陰極として、それぞれ機能する。
【0091】
(1)基板11および層間絶縁層12の形成
まず、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(ステップS10)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
【0092】
次に、
図9(a)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
【0093】
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
【0094】
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
【0095】
(2)画素電極13の形成
次に、
図9(b)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する(ステップS31)。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる
次に、
図9(c)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13を形成する(ステップS32)。この画素電極13は、各有機EL素子の陽極として機能する。
【0096】
なお、画素電極13の形成方法は上述の方法に限られず、例えば、画素電極材料層130上に正孔注入材料層150を形成し、画素電極材料層130と正孔注入材料層150とをエッチングによりパターニングすることで、画素電極13と正孔注入層15とをまとめて形成してもよい。
【0097】
(3)画素内絶縁層30の形成
次に、
図9(d)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、画素内絶縁層30の材料である絶縁層用樹脂を塗布し、画素内絶縁材料層300を形成する。画素内絶縁材料層300は、絶縁層用樹脂であるアクリル樹脂を溶媒に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される(ステップS41)。そして、画素内絶縁材料層300にパターン露光と現像を行うことで画素内絶縁層30を形成し(
図7(d)、ステップS42)、画素内絶縁層30を焼成する。パターン露光時のフォトマスクとしては、例えば、突出部1121に相当するTFT層112の最上層のパターニングに用いたフォトマスクを用いることができる。なお、TFT層112の最上層のパターニング方法と絶縁層用樹脂がネガ型とポジ型のいずれかであるかに依存して、フォトマスクのネガポジ反転が必要となる場合がある。また、絶縁層用樹脂がネガ型フォトレジストである場合はフォトマスクの開口部を拡大し、または、絶縁層用樹脂がポジ型フォトレジストである場合はフォトマスクの開口部を縮小してもよい。このようにすることで、突出部1121の上方以外の領域とその近傍を被覆する画素内絶縁層30を形成できる。画素内絶縁層の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
【0098】
なお、画素内絶縁層30の形成時において、同一の材料樹脂を用いて画素内絶縁層30と画素規制層141とを一体成型してもよい。または、例えば、画素内絶縁層30の形成に前後して、同様の製造工程により、画素規制層141を形成してもよい。
【0099】
(4)隔壁14の形成
次に、
図10(a)に示すように、画素電極13、画素内絶縁層30、および、層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上、画素内絶縁層30上、および、層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される(ステップS51)。そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで、
図10(b)に示すように隔壁14を形成し(ステップS52)、隔壁14を焼成する。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。隔壁14の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
【0100】
また、隔壁14の形成工程においては、さらに、隔壁14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部14aに塗布するインク(溶液)に対する隔壁14の接触角を調節する目的で、もしくは、表面に撥水性を付与する目的で行われる。
【0101】
(5)正孔注入層15の形成
次に、
図10(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド401のノズルから吐出して開口部14a内の画素電極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(ステップS60)。
【0102】
(6)正孔輸送層16の形成
次に、
図10(d)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド402のノズルから吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(ステップS70)。
【0103】
(7)発光層17の形成
次に、
図11(a)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド403のノズルから吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(ステップS80)。
【0104】
(8)電子輸送層18の形成
次に、
図11(b)に示すように、発光層17および隔壁14上に、電子輸送層18を形成する(ステップS90)。電子輸送層18は、例えば、電子輸送層18の材料となる有機化合物を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
【0105】
(9)電子注入層19の形成
次に、
図11(c)に示すように、電子輸送層18上に、電子注入層19を形成する(ステップS100)。電子注入層19は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属またはその化合物を共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
【0106】
(10)対向電極20の形成
次に、
図12(a)に示すように、電子注入層19上に、対向電極20を形成する(ステップS110)。対向電極20は、ITO、IZO、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。なお、対向電極20は、各有機EL素子の陰極として機能する。
【0107】
(11)封止層21の形成
最後に、
図12(b)に示すように、対向電極20上に、封止層21を形成する(ステップS120)。封止層21は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。なお、SiON、SiNなどの無機膜上に封止樹脂層をさらに塗布、焼成等により形成してもよい。
【0108】
なお、封止層21の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
【0109】
≪実施の形態2≫
実施の形態1では、画素内絶縁層30により突出部1121上でない第1領域13ap及びその周縁部を発光素子内の非発光領域とし、突出部1121上である第2領域13aqのみを発光領域とすることで、発光領域内の膜厚の均一化を行う場合について説明した。しかしながら、突出部1121上でない第1領域13apと、突出部1121上である第2領域13aqとは、互いに機能層の膜厚が異なるが、それぞれの内部において機能層の膜厚は均一であるから、いずれを発光領域としてもよい。
【0110】
実施の形態2では、画素内絶縁層30は、突出部1121上である第2領域13aq及びその周縁部を発光素子内の非発光領域とし、突出部1121上でない第1領域13apのみを発光領域とする場合について説明する。なお、実施の形態2に係る有機ELパネルは、実施の形態1に係る有機ELパネルに対して画素内絶縁層30の位置のみが異なるため、画素内絶縁層30の位置について説明し、それ以外の構成について省略する。
【0111】
(1)有機EL素子2Aの構成
図14は、有機ELパネル10Aの一部の模式断面図であり、
図3のA-A断面に相当する。有機ELパネル10Aの副画素100R、100G、100Bのそれぞれは、自発光素子である有機EL素子2A(R)、2A(G)、2A(B)によって構成される。以下、有機EL素子2A(R)、2A(G)、2A(B)のそれぞれを区別しない場合、有機EL素子2Aとして説明する。
【0112】
<有機EL素子の構成要素>
(1)画素内絶縁層
画素内絶縁層30は、突出部1121上方及びその近傍において画素電極13と正孔注入層15との間に介在し、平面視において画素内絶縁層30が存在する領域を非発光領域とするためのものである。
【0113】
図15は、画素内絶縁層30と画素電極13、突出部1121、隔壁14、画素規制層141の関係を示す平面模式図である。
図15(a)に示すように、画素電極13はその周辺部の一部が隔壁14および画素規制層141に被覆され、開口部13aが露出している。画素内絶縁層30は、
図15(b)に示すように、開口部13aのうち、突出部1121上である第2領域13aqの全域と、突出部1121上でない第1領域13apのうち第2領域13aqに接した領域とを覆うように形成される。
図14に示すように、層間絶縁層12の上面において、突出部1121上である第2領域13aq及びその周縁部は、突出部1121上でない第1領域13apより上方に凸の形状を有している。画素内絶縁層30は、第2領域13aq及びその周縁部を発光素子内の非発光領域とすることにより、突出部1121上でない第1領域13apのみを機能層の有効範囲とし、有効範囲内の膜厚の均一化の機能を有している。
【0114】
なお、画素内絶縁層30の上面は隔壁14の上面より低く、画素規制層141の上面と同じ高さ、または、画素規制層141の上面より低いことが好ましい。
【0115】
画素内絶縁層30の材料は、絶縁性を備える。なお、画素内絶縁層30の材料は、機能層形成用インクに対して親液性を有してもよい。画素内絶縁層30は、例えば、絶縁性の有機材料からなり、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、フェノール樹脂等が用いられている。
【0116】
なお、画素内絶縁層30と画素規制層141とは同一の材料で形成されてもよく、また、同時に形成されてもよい。
【0117】
<自発光パネルの製造方法>
以下、本開示の一態様に係る自発光パネルの製造方法としての有機ELパネルの製造方法について、図面を用いて説明する。なお、実施の形態2に係る自発光パネルの製造方法は、画素内絶縁層30の製造方法にのみ特徴を有し、それ以外は、実施の形態1に係る自発光パネルの製造方法と同様である。したがって、画素内絶縁層30の製造方法のみを説明し、それ以外の説明は省略する。
【0118】
(1)画素内絶縁層30の形成
実施の形態1におけるステップS10からステップS32までを行って
図9(c)に示すように画素電極13を形成した後、
図15(a)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、画素内絶縁層30の材料である絶縁層用樹脂を塗布し、画素内絶縁材料層300を形成する。画素内絶縁材料層300は、絶縁層用樹脂であるアクリル樹脂を溶媒に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、画素内絶縁材料層300にパターン露光と現像を行うことで画素内絶縁層30を形成し(
図15(b)、画素内絶縁層30を焼成する。パターン露光時のフォトマスクとしては、例えば、突出部1121に相当するTFT層112の最上層のパターニングに用いたフォトマスクを用いることができる。なお、TFT層112の最上層のパターニング方法と絶縁層用樹脂がネガ型とポジ型のいずれかであるかに依存して、フォトマスクのネガポジ反転が必要となる場合がある。また、絶縁層用樹脂がネガ型フォトレジストである場合はフォトマスクの開口部を拡大し、または、絶縁層用樹脂がポジ型フォトレジストである場合はフォトマスクの開口部を縮小してもよい。このようにすることで、突出部1121の全域とその近傍を被覆する画素内絶縁層30を形成できる。画素内絶縁層の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
【0119】
なお、以下の工程は、実施の形態1に係るステップS51からステップS120と同様であるから説明を省略する。
【0120】
<まとめ>
実施の形態2に係る自発光パネルでは、機能層の膜厚の小さい領域13aqとその周縁部を画素内絶縁層30によって非発光領域とする。したがって、機能層の膜厚の均一な領域13apのみを発光領域とするため、機能層において電流の集中が発生せず、機能層の劣化が不均質に進むことを抑止し素子の長寿命化を図ることができる。また、発光素子の設計において、領域13apにおける各機能層の膜厚が最適となるようにすればよく、発光効率の向上や光取り出し効率の向上を図ることが容易となる。さらに、発光素子が共振器構造を有する場合、領域13apにおける機能層の膜厚のみを考慮して共振器構造を設計すればよく、光学長の異なる領域13aqからの発光により色ずれ等が発生することを抑止することができる。
【0121】
≪変形例≫
以上、本開示の一態様として、自発光パネルとしての有機ELパネルおよび有機ELパネルの製造方法について説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の説明に何ら限定を受けるものではない。以下では、本発明の他の態様例である変形例を説明する。
【0122】
(1)上記実施の形態1および2においては、画素電極が陽極、対向電極が陰極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL素子であるとした。しかしながら、例えば、画素電極が陰極、対向電極が陽極であってもよい。また、例えば、ボトムエミッション型の有機EL素子であってもよい。この場合、画素電極が光透過性の導電性材料で形成され、対向電極が光反射性の導電性材料で形成される。また、基板11において少なくとも画素電極の下側に層とする部分が光透過性を有する。
【0123】
なお、自発光素子は有機EL素子に限られず、例えば、QLEDなどの他の素子であってもよい。
【0124】
(2)上記実施の形態1、2においては、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17の全てが塗布工程で形成されるとした。しかしながら、発光素子は、少なくとも1つの塗布膜を含んでいればよく、それ以外の層は蒸着法、スパッタリング法等で成膜されてもよい。この場合において、画素内絶縁層は、画素電極の上方かつ塗布膜の下方に位置していればよく、画素電極の直上でなくてもよい。または、例えば、電子輸送層18と電子注入層19のいずれか1以上が、塗布工程で形成されるとしてもよい。
【0125】
(3)上記実施の形態1、2においては、画素内絶縁層30は画素規制層141と同一の材料で形成されるとしたが、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、例えば、隔壁14と同じ材料で形成されてもよい。例えば、各発光素子が隔壁によって区画される、いわゆるピクセルバンクである場合、画素内絶縁層30と隔壁14とを同一の材料で形成することにより、画素内絶縁層30と隔壁14との同時形成が可能となる。
【0126】
(4)上記実施の形態1、2においては、有機EL素子2は、電子輸送層18や電子注入層19、正孔注入層15や正孔輸送層16を有する構成であるとしたが、これに限られない。例えば、電子輸送層18を有しない有機EL素子や、正孔輸送層16を有しない有機EL素子であってもよい。また、例えば、正孔注入層15と正孔輸送層16とに替えて、単一層の正孔注入輸送層を有していてもよい。また、例えば、発光層17と電子輸送層18との間に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類のいずれか、またはそのフッ化物からなる中間層を備えてもよい。
【0127】
また、発光層17の発光色は2色または赤色・緑色・青色の3色に限られず、黄色や紫色を含む4色以上であってもよいし、3色の組み合わせは上記のものに限られない。
【0128】
(5)上記実施の形態においては、インクは機能性材料を溶質とする溶液であるとしたが、これに限られず、機能性材料を混合溶媒中に分散させたコロイド溶液や懸濁液であってもよい。
【0129】
(6)ノズルを介して高精細なインクの塗布が可能なものであれば、上記実施の形態におけるインクジェット装置に限らず、インクを連続的に基板上に吐出するディスペンサー方式の塗布装置を用いてもよい。
【0130】
(7)上記実施の形態においては、自発光パネルは表示パネルであるとしたが、自発光パネルの用途はこれに限られず、例えば、照明パネルであるとしてもよいし、非動作時に光透過性を有する機能デバイス用パネルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、機能層をウェットプロセスで形成する発光素子を備える自発光パネルにおいて、膜厚の均一化を図り発光効率や光取り出し効率、寿命を向上する方法として最適である。
【符号の説明】
【0132】
1 表示装置
10、10A 自発光パネル(有機ELパネル)
2、2A 発光素子(有機EL素子)
11 基板
111 基材
112 TFT層
1121 突出部
12 層間絶縁層
13 画素電極
13a 開口部
13ap 領域
13aq 領域
30 画素内絶縁層
14 隔壁
141 画素規制層
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子輸送層
19 電子注入層
20 対向電極
21 封止層