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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102077
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】医療用熱媒体供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A61M1/36 175
A61M1/36 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216599
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(72)【発明者】
【氏名】堀 旭
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD18
4C077EE01
4C077KK09
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易でかつ安全性も高い医療用熱媒体供給装置を提供する。
【解決手段】熱交換を行う熱交換器2等の医療機器に対して熱媒体を供給し、医療機器から熱媒体を回収する医療用熱媒体供給装置10Aにおいて、医療機器に対する熱媒体の供給ポート12a、12bと回収ポート13a、13bとを結ぶ熱媒流路14にオゾン添加装置30を設け、そのオゾン添加装置30から熱媒体にオゾンを添加して水槽15、ポンプ18、ヒータ21等を殺菌するとともに、熱媒体の供給先の熱交換器2等も殺菌する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換を行う医療機器に対して熱媒体を供給し、前記医療機器から前記熱媒体を回収する医療用熱媒体供給装置であって、
前記医療機器に対する前記熱媒体の供給ポートと回収ポートとを結ぶ熱媒流路に、前記供給ポートに向けて前記熱媒体を送り出すポンプと、前記熱媒体の温度を調整する温度調整手段と、前記熱媒体にオゾンを添加するオゾン添加手段と、が設けられた医療用熱媒体供給装置。
【請求項2】
前記回収ポートから取り込まれた熱媒体を蓄える貯留槽をさらに備え、
前記オゾン添加手段は、前記貯留槽内の熱媒体に前記オゾンを添加するように設けられている請求項1に記載の医療用熱媒体供給装置。
【請求項3】
前記回収ポートから取り込まれた熱媒体を蓄える貯留槽をさらに備え、
前記熱媒流路には、前記貯留槽と前記供給ポートとを結ぶ供給路と、前記貯留槽と前記回収ポートとを結ぶ戻り路と、前記回収ポートに回収された熱媒体を、前記貯留槽を迂回して前記戻り路から前記供給路に導くバイパス路とが設けられ、
前記オゾン添加手段は、前記戻り路と前記バイパス路との接続位置と前記回収ポートとの間にて前記オゾンを添加するように設けられている請求項1に記載の医療用熱媒体供給装置。
【請求項4】
前記回収ポートから取り込まれた熱媒体を蓄える貯留槽をさらに備え、
前記熱媒流路には、前記貯留槽と前記供給ポートとを結ぶ供給路と、前記貯留槽と前記回収ポートとを結ぶ戻り路と、前記供給路の熱媒体を前記戻り路に導く循環路とが設けられ、
前記オゾン添加手段は、前記循環路にて前記オゾンを添加するように設けられている請求項1に記載の医療用熱媒体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換を行う医療機器に熱媒体を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換を行う医療機器、例えば体外循環回路の熱交換器、あるいは医療用のブランケットといった機器に対して冷水、温水等の熱媒体を供給する装置として、熱媒体の供給ポートと回収ポートとを結ぶ熱媒流路に、熱媒体としての熱媒水を蓄える水槽と、熱媒水を供給ポートに向けて送り出すポンプと、水槽内の水を冷却する冷凍機と、熱媒流路を流れる熱媒水を加熱するヒータとを備えた冷水温水供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、体外循環回路の熱交換器に供給されるべき熱媒水にグリコール、エチレングリコール、プロプレングリコール等のアルコール系の殺菌剤、過酸化水素、ジア塩素酸ナトリウム、クエン酸等の消毒剤を添加して殺菌性を付与することも提案されている(例えば特許文献2~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-26293号公報
【特許文献2】特表2019-519328号公報
【特許文献3】特表2019-58700号公報
【特許文献4】特表2015-524322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱媒水に殺菌剤あるいは消毒剤を添加した場合、熱媒水の流路上に存在する水槽等の各種の機器類を清潔に保つことができ、手術環境の無菌性を維持する上で好都合である。しかしながら、殺菌成分等の残留、拡散には注意が必要であって、取り扱いに慎重を期す必要がある。血液、心筋保護液といった患者の体内に導入されるべき液体が熱交換器を流れる場合には、その液体の流路に漏れが生じて熱媒水が混入したとしても安全性が保たれるように殺菌成分の濃度等を管理する必要もある。
【0005】
そこで、本発明は取り扱いが容易でかつ安全性も高い医療用熱媒体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る医療用熱媒体供給装置は、熱交換を行う医療機器に対して熱媒体を供給し、前記医療機器から前記熱媒体を回収する医療用熱媒体供給装置であって、前記医療機器に対する前記熱媒体の供給ポートと回収ポートとを結ぶ熱媒流路に、前記供給ポートに向けて前記熱媒体を送り出すポンプと、前記熱媒体の温度を調整する温度調整手段と、前記熱媒体にオゾンを添加するオゾン添加手段と、が設けられたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の形態に係る熱媒体供給装置の回路構成の概略を示す図。
図2】第1の形態に対する一変形例を示す図。
図3】第1の形態に対する他の変形例を示す図。
図4】本発明の第2の形態に係る熱媒体供給装置の回路構成の概略を示す図。
図5】第2の形態に対する一変形例を示す図。
図6】第2の形態に対する他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の形態)
図1を参照して本発明の第1の形態に係る医療用熱媒体供給装置(以下、供給装置と略称することがある。)を説明する。図1の供給装置10Aは、一定形態のキャビネット11内に各種の機器類を収容した一つのユニット製品として構成されている。キャビネット11には、熱媒体の一例としての熱媒水を医療機器に供給するための供給ポートとしてメイン供給ポート12a、及びサブ供給ポート12bが設けられるとともに、医療機器から戻される熱媒水を回収するための回収ポートとして、メイン回収ポート13a及びサブ回収ポート13bが設けられている。
【0009】
メイン供給ポート12a及びメイン回収ポート13aは、サブ供給ポート12b及びサブ回収ポート13bよりも大流量の熱媒水を供給できるように設けられている。一例として、メイン供給ポート12a及びメイン回収ポート13aは、体外循環回路1に設けられた熱交換器2と接続され、サブ供給ポート12b及びサブ回収ポート13bは患者の体温調整のためのブランケット3に接続される。ただし、熱媒水が供給されるべき医療機器は図示の例に限らない。例えば、心筋保護液の温度を調整するための熱交換器等、熱交換を行う医療機器であれば供給ポート12a、12b、及び回収ポート13a、13bに適宜に接続されてよい。
【0010】
キャビネット11の内部には供給ポート12a、12bと回収ポート13a、13bとを結ぶ熱媒流路14が設けられている。熱媒流路14上には、熱媒水を蓄える貯留槽の一例としての水槽15が設けられている。水槽15は熱媒流路14の一部として機能する。水槽15を境として、熱媒流路14は、供給ポート12a、12bに熱媒水を導く供給路16と、回収ポート13a、13bから水槽15に熱媒水を戻す戻り路17とに区分されている。供給路16には、水槽15の熱媒水を送り出すポンプ18と、熱媒水の温度を調整する温度調整装置20とが設けられている。ポンプ18は一例として電動ポンプである。ポンプ18は一例として供給路16に設けられている。ただし、戻り路17にポンプ18が設けられてもよい。
【0011】
温度調整装置20は、水槽15から供給ポート12a、12bに向かう熱媒水を加温する加温手段の一例としてのヒータ21と、水槽15の熱媒水を冷却する冷却手段の一例としてのクーラ22とを含んでいる。ヒータ21には、例えば通電により発熱する電気ヒータが用いられてよい。クーラ22は、例えば冷熱源としての冷凍機22aと、冷凍機22aにて冷やされた冷媒と供給路16の熱媒水との間で熱交換を行うための熱交換器22bとを含んでいる。なお、冷却手段及び加温手段は上記の例に限らず、熱媒水を冷却し、あるいは加温することが可能な限りにおいて適宜に構成されてよい。
【0012】
熱媒流路14には、水槽15を迂回するようにして戻り路17と供給路16とを結ぶバイパス路14aがさらに設けられている。バイパス路14aは、回収ポート13a、13bに回収された熱媒水を、水槽15に戻すことなく温度調整装置20に導いて調温するために設けられている。したがって、供給路16とバイパス路14aとの接続位置は、水槽15を迂回した熱媒水が温度調整装置20の入口側、図示例ではヒータ21の上流側に導かれるようにポンプ18の吸込側に設定されている。熱媒水を水槽15に戻すか、又は水槽15を迂回してヒータ21に導くかを選択するため、バイパス路14aと供給路16との接続位置には例えば三方弁23が設けられている。三方弁23は戻り路17とバイパス路14aとの接続位置に設けられてもよい。
【0013】
供給路16は、熱交換器22bと供給ポート12a、12bとの間の分岐点J1にて、第1分岐路16a及び第2分岐路16bに分岐されている。第1分岐路16aはメイン供給ポート12aに、第2分岐路16bはサブ供給ポート12bにそれぞれ接続されている。第1分岐路16aには減圧弁24a及び開閉弁25aが、第2分岐路16bには減圧弁24b及び開閉弁25bがそれぞれ設けられている。減圧弁24a、24bは供給ポート12a、12bから供給される熱媒水の圧力を所望の範囲に調整する。開閉弁25a、25bは分岐路16a、16bを互いに独立して開閉するために設けられている。開閉弁25aを開くことによりメイン供給ポート12aからの熱媒水が供給され、開閉弁25aを閉じることによりメイン供給ポート12aからの熱媒水の供給が停止される。開閉弁25bを開くことによりサブ供給ポート12bからの熱媒水が供給され、開閉弁25bを閉じることによりサブ供給ポート12bからの熱媒水の供給が停止される。開閉弁25a、25bは一例として電磁弁である。
【0014】
戻り路17は、分岐点J2にて第1分岐路17a及び第2分岐路17bに分岐されている。第1分岐路17aはメイン回収ポート13aに、第2分岐路17bはサブ回収ポート13bにそれぞれ接続されている。分岐点J2はバイパス路14aと戻り路17との接続点よりも回収ポート13a、13b側に設定されている。したがって、回収ポート13a、13bのそれぞれに戻された熱媒水を区別することなくバイパス路14aに導くことが可能である。
【0015】
熱媒流路14には、供給路16と戻り路17とを結ぶ循環路14bが設けられている。循環路14bは、一例として、供給路16の分岐点J1と戻り路17の分岐点J2とを結ぶように設けられている。したがって、供給路16と循環路14bとの接続位置は熱交換器22bの出口側に位置し、戻り路17と循環路14bとの接続位置は戻り路17とバイパス路14aとの接続位置よりも回収ポート13a、13b側に位置している。さらに、熱媒流路14には、キャビネット11のドレンポート12cから熱媒水を排水するためのドレン路14cも接続されている。ドレン路14cは不図示のドレン弁によって開閉される。ドレン路14cは熱媒流路14の適宜の位置に設けられてよい。
【0016】
熱媒流路14を通過する熱媒水に殺菌作用を付与するため、供給装置10Aには、オゾン添加手段の一例としてのオゾン添加装置30が設けられている。オゾン添加装置30は、一例として水槽15内に設けられている。オゾン添加装置30は、例えばオゾンガスを生成し、得られたオゾンガスを熱媒水に溶解させるように構成される。あるいは、オゾン添加装置30は、オゾン水を生成し、得られたオゾン水を熱媒水に添加するように構成されてもよい。図1ではオゾン添加装置30の全体が水槽15内に収容されているが、オゾンガス又はオゾン水の添加部が水槽15内に位置していれば、オゾン添加装置30の全体が水槽15内に設けられることは必ずしも必要ではない。例えば、オゾンガス又はオゾン水を発生させる発生源を水槽15外に配置し、得られたオゾンガス又はオゾン水を水槽15内の添加部に導くようにオゾン添加装置30が設けられてもよい。いずれにしても、図におけるオゾン添加装置30は、少なくともオゾンの添加位置が図示の位置に設定されていることを意味し、オゾン添加装置30の全体が図示の位置に存在することを必ずしも意味しない。なお、オゾンの添加位置は水槽15内に限らない。熱媒流路14を流れる熱媒水にオゾンを添加可能な限り、オゾン添加装置30によるオゾンの添加位置は適宜に変更されてよい。添加位置に関する変形例は後述する。
【0017】
ポンプ18、温度調整装置20、オゾン添加装置30等の制御対象機器の動作を制御するため、供給装置10Aには制御ユニット40及びコントロールパネル41が設けられている。制御ユニット40は、コンピュータを利用した制御装置である。コントロールパネル41は、供給装置10Aのオペレータが熱媒水の温度、流量等を設定するための入出力インターフェースであって、キャビネット11の外面の適宜の位置に設けられる。
【0018】
制御ユニット40には、制御に必要な情報を取得するための入力手段として、例えばフロートスイッチ43、温度センサ44、45等の検出装置が接続されている。フロートスイッチ43は水槽15の水位に応じた信号を出力する。温度センサ44はヒータ21を通過した熱媒水の温度に応じた信号を出力する。温度センサ45は分岐点J1における熱媒水の温度に応じた信号を出力する。図示以外にも、各種のセンサ類が必要に応じて設けられてよい。
【0019】
制御ユニット40は、温度センサ44、45等の検出装置の出力信号と、コントロールパネル41から与えられる設定値とに基づいて、供給ポート12a、12bから熱交換器2等の医療機器に所望の温度及び流量の熱媒水が供給されるようにポンプ18、並びに温度調整装置20のヒータ21及びクーラ22の動作を制御する。また、制御ユニット40は、三方弁23、開閉弁25a、25bも制御対象とし、熱媒水が所望の経路で流れるように各弁の動作を制御する。さらに、制御ユニット40は、熱媒流路14内に所望の濃度のオゾンが添加されるようにオゾン添加装置30の動作も制御する。なお、図1ではオゾン添加装置30及びコントロールパネル41を除き、制御ユニット40に対する信号の入出力形態の図示を省略した。
【0020】
以上の供給装置10Aによれば、熱媒流路14内の熱媒水にオゾン添加装置30からオゾンが添加されることにより、熱媒水に殺菌作用が付与される。それにより、供給装置10A内の熱媒流路14、水槽15、ポンプ18、ヒータ21、クーラ22等の各種の機器を殺菌し、かつ殺菌された清潔な状態に保つことができる。加えて、供給装置10Aから熱媒水が供給されるべき熱交換器2、ブランケット3等の内部も、熱媒水の殺菌作用によって殺菌し、かつ殺菌された清潔な状態に保つことが可能である。
【0021】
上記の供給装置10Aにおいては、供給路16と戻り路17とを結ぶ循環路14bが設けられているため、開閉弁25a、25bを閉じて供給ポート12a、12bからの熱媒水の供給を停止した状態でも、熱媒水を水槽15から供給路16、循環路14b、戻り路17の順に導いて水槽15へと戻すことにより、熱媒水を供給装置10A内で循環させることも可能である。その場合には、オゾンを含んだ熱媒水を供給装置10A外に取り出すことなく殺菌処理を進めることができる。そのため、オゾンの環境への拡散をより確実に阻止することが可能である。
【0022】
オゾンは比較的強い殺菌作用を発揮する一方で、水中に溶解すれば酸素へと逐次変化して残留性が極めて低いという特徴を有する。そのため、熱媒水にこれを添加すれば供給装置10Aの内部、ひいては供給装置10Aから熱媒水が供給されるべき医療機器を効率よく殺菌しつつ、有害成分が残留し、あるいは環境に拡散されるおそれを抑制しあるいは排除することができる。オゾンの添加濃度を管理するとしても、残留性が低いために厳密な濃度管理は不要である。そのため、アルコール系、あるいは過酸化水素等の殺菌剤、あるいは消毒剤を用いる場合と比較して取り扱いが容易である。しかも、熱交換器2等に導入される熱媒水にオゾンが残留していたとしてもこれは直ちに酸素へと変化するため、熱交換器2等の漏れにより熱交換対象の血液等の液体と熱媒水とが触れる不具合が生じたとしても安全性は高い。
【0023】
なお、オゾンには比較的強い酸化作用があり、金属、ゴム等を酸化劣化させる特性も併せ持つ。しかしながら、耐オゾン性が高いステンレス鋼等の材料は既に各種の分野で実用に供されている。したがって、熱媒水に触れる熱媒流路14の配管部品、ポンプ18等の構成部品、及び熱媒水を供給する対象となるべき熱交換器2等の医療機器において、そのような耐オゾン性が高い材料を利用すれば特段に支障は生じない。オゾンガスが環境に放出される懸念に関しては、オゾン添加装置30の全体を密封し、あるいはオゾンガスの処理装置をオゾン添加装置30に付加すればそのような懸念を解消することが可能である。
【0024】
上記の供給装置10Aにおいては、水槽15内にてオゾンを添加しているので、水槽15内を確実に殺菌し、かつ熱媒流路14上に配置されたポンプ18等の各種の機器にオゾンを作用させてそれらの機器を確実に殺菌することができる。オゾン添加装置30の少なくとも添加部分の全体を熱媒水と確実に接触させてオゾンの添加効率を高めることも可能である。水槽15内は比較的スペースが確保し易いため、オゾン添加装置30のサイズ変更といった仕様変更への対応も比較的容易である。熱媒流路14を構成するための配管途中にオゾン添加装置30を取り付ける場合と比較して、熱媒水の流れに与える配管抵抗等の影響を抑えるにも有利である。
【0025】
(第1の形態の変形例)
図2及び図3は、図1の供給装置10Aに対して、オゾン添加装置30によるオゾンの添加位置を変更した変形例をそれぞれ示している。図2及び図3において、図1と共通する部分には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する。
【0026】
図2の供給装置10Bでは、オゾン添加装置30が戻り路17にてオゾンを添加するように設けられている。一例として、オゾン添加装置30は、戻り路17におけるバイパス路14aの接続位置と、分岐点J2との間にてオゾンを添加するように設けられている。この例によれば、熱媒水が必ず通過する位置にてオゾンを添加することができる。特には、熱媒水が水槽15に戻されるか、又は水槽15を迂回してバイパス路14aから供給路16に導かれるか、に関わりなく、言い換えれば三方弁23の切り替え状態に関わりなく、熱媒水にオゾンを添加することが可能である。開閉弁25a、25bが閉じている状態であっても熱媒水にオゾンを添加することも可能である。
【0027】
図3の供給装置10Cでは、オゾン添加装置30が循環路14bにてオゾンを添加するように設けられている。循環路14bも、熱媒水が必ず通過する流路であるため、その位置にオゾン添加装置30の添加位置を設定すれば、三方弁23の切り替え状態に関わりなく、熱媒水にオゾンを確実に添加することが可能である。開閉弁25a、25bが閉じている状態であっても熱媒水にオゾンを添加することも可能である。オゾン添加装置30の設置によって循環路14bの配管抵抗が増加する等の影響が生じても供給ポート12a、12bから供給される熱媒水の流量が低下するおそれがない。
【0028】
(第2の形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2の形態に係る供給装置を説明する。図4の供給装置10Dは、図1に示した供給装置10Aに対して熱媒水を貯える容量が比較的小さく、回路構成が簡素化された比較的小型のタイプである。図4において、図1と共通する構成要素には同一の参照符号を付し、以下では相違点を中心として供給装置10Dを説明する。
【0029】
図4に示すように、供給装置10Dは、キャビネット11内に各種の機器を収容した一つのユニット製品として構成され、キャビネット11には、熱媒水を医療機器に供給するための供給ポートとしてのメイン供給ポート12a、医療機器から戻される熱媒水を回収するための回収ポートとしてのメイン回収ポート13a、及びドレンポート12cが設けられる点で図1の供給装置10Aと共通する。一方、供給装置10Dでは、図1のサブ供給ポート12b、及びサブ回収ポート13bが省略されている。熱媒流路14は、水槽15を境として供給路16及び戻り路17に区分され、供給路16にはポンプ18が設けられている。供給路16と戻り路17とはバイパス路14a、及び循環路14bによって相互に接続され、さらに供給路16にはドレン路14cが接続されている。供給路16とバイパス路14aとの接続位置には三方弁23が配置されている。ただし、サブ供給ポート及びサブ回収ポートの省略に伴って分岐点J1、J2では、循環路14bが分岐するのみである。また、図1の減圧弁24a、24b、開閉弁25a、25bは省略されている。
【0030】
温度調整装置20のヒータ21は戻り路17とバイパス路14aとの接続位置とメイン回収ポート13aとの間に設けられている。また、温度調整装置20のクーラ22は、水槽15内に貯められた熱媒水を直接冷却するように設けられている。水槽15には、図1の供給装置10Aと同様にオゾン添加装置30が設けられている。
【0031】
さらに、供給装置10Dにも制御ユニット40及びコントロールパネル41が設けられ、制御ユニット40には、制御に必要な情報の入力手段としてフロートスイッチ43、温度センサ45、46等の検出装置が接続されている。温度センサ46はメイン回収ポート13aとヒータ21との間における熱媒水の温度に応じた信号を出力する。制御ユニット40は、温度センサ44、46等の検出装置の信号と、コントロールパネル41からの指示とに基づいてポンプ18、ヒータ21、クーラ22、三方弁23、オゾン添加装置30等の制御対象機器の動作を制御する。
【0032】
以上の供給装置10Dにおいても、水槽15内の熱媒水にオゾンを添加することができるので、図1の供給装置10Aと同様の作用効果を奏することが可能である。
【0033】
(第2の形態の変形例)
図5及び図6は、図4の供給装置10Dに対してオゾン添加装置30によるオゾンの添加位置を変更した変形例をそれぞれ示している。図5及び図6において、図1と共通する部分には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する。
【0034】
図5の供給装置10Eでは、オゾン添加装置30が戻り路17にてオゾンを添加するように設けられている。一例として、オゾン添加装置30は、戻り路17におけるバイパス路14aの接続位置と、分岐点J2との間、さらに具体的にはヒータ21と分岐点J2との間にてオゾンを添加するように設けられている。この例でも、図2の供給装置10Bと同様に、熱媒水が水槽15に戻されるか、又は水槽15を迂回してバイパス路14aから供給路16に導かれるか、に関わりなく、言い換えれば三方弁23の切り替え状態に関わりなく、熱媒水にオゾンを添加することが可能である。
【0035】
図6の供給装置10Fでは、オゾン添加装置30が循環路14bにてオゾンを添加するように設けられている。この例でも、図3の供給装置10Cと同様に、三方弁23の切り替え状態に関わりなく、熱媒水にオゾンを確実に添加することが可能である。オゾン添加装置30の設置によって循環路14bの配管抵抗が増加する等の影響が生じても供給ポート12aから供給される熱媒水の流量が低下するおそれがない。
【0036】
なお、第2の形態においても、オゾン添加装置30によるオゾンの添加位置は図4図6に示した例に限らず、さらなる変形が可能である。例えば、供給路16の三方弁23と分岐点J1との間にてオゾンを添加するようにオゾン添加装置30が設けられてもよい。
【0037】
本発明は上述した形態及び変形例に限定されず、さらなる変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、オゾン添加装置30によるオゾンの添加位置は図1図6に示した例に限らず、さらなる変形が可能である。例えば、供給路16の三方弁23と分岐点J1との間にてオゾンを添加するようにオゾン添加装置30が設けられてもよい。あるいは、図1図6に示した添加位置を含む複数の位置が、オゾン添加装置30による添加位置として設定されてもよい。
【0038】
第1の形態では、回収ポート13a、13bから供給ポート12a、12bに向かって水槽15、ポンプ18、ヒータ21及びクーラ22を順に設け、第2の形態では、回収ポート13aから供給ポート12aに向かってヒータ21、水槽15、及びポンプ18を順に設けているが、それらの位置や順序は適宜に入れ替えられてもよい。熱媒水の供給及び回収に関しては、少なくとも一組の供給ポート及び回収ポートが存在すればよく、必要に応じて二組以上の供給ポート及び回収ポートが設けられてよい。
【0039】
三方弁23、開閉弁25a、25bは熱媒流路14を流れる熱媒水の流れを制御するための弁手段の一例であって、それらは適宜に変更が可能である。例えば、三方弁23に関しては、熱媒水を水槽に導く状態と水槽を迂回して流す状態とが切り替えられる限りにおいて、開閉弁その他の適宜の弁手段に置き換え可能である。開閉弁25a、25bに関しては、図4図6の例から明らかなように省略されてもよいし、熱媒水の供給及びその停止を弁手段にて切り替え制御する場合でも、その弁手段は適宜の構成でよい。二組以上の供給ポート及び回収ポートが設けられる場合には、各組の供給ポート及び回収ポートを互いに独立して開閉できるように弁手段が設けられてよい。循環路14bに関しても、これを開閉する弁手段が設けられてもよい。
【0040】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0041】
本発明の一態様に係る医療用熱媒体供給装置(10A;10B;10C;10D;10E;10F)は、熱交換を行う医療機器(2、3)に対して熱媒体を供給し、前記医療機器から前記熱媒体を回収する医療用熱媒体供給装置であって、前記医療機器に対する前記熱媒体の供給ポート(12a、12b)と回収ポート(13a、13b)とを結ぶ熱媒流路(14)に、前記供給ポートに向けて前記熱媒体を送り出すポンプ(16)と、前記熱媒体の温度を調整する温度調整手段(20)と、前記熱媒体にオゾンを添加するオゾン添加手段(30)と、が設けられたものである。
【0042】
上記態様によれば、熱媒流路内の熱媒体にオゾンを添加することにより、オゾンの殺菌作用を利用して熱媒体が導かれるべき経路を殺菌し、殺菌された清潔な状態に保つことができる。オゾンは比較的強い殺菌作用を発揮する一方で、その使用時には酸素へと逐次変化して残留性が極めて低いという特徴を有する。そのため、熱媒体にオゾンを添加すれば医療用熱媒体供給装置の内部、ひいては熱媒水が供給されるべき医療機器を効率よく殺菌することができる。アルコール系、あるいは過酸化水素等の殺菌剤、あるいは消毒剤を用いる場合に生じ得る有害成分の残留といった課題も生じるおそれがなく、安全性が高い。そのため、取り扱いが容易である。
【0043】
上記態様の医療用熱媒体供給装置(1A;1D)において、前記回収ポートから取り込まれた熱媒体を蓄える貯留槽(15)をさらに備え、前記オゾン添加手段は、前記貯留槽内の熱媒体に前記オゾンを添加するように設けられてもよい。これによれば、貯留槽の内部を確実に殺菌し、かつ熱媒流路上に配置されたポンプ等の各種の機器にオゾンを作用させてそれらの機器を確実に殺菌することができる。貯留槽内でオゾンの添加部分の全体を熱媒体と確実に接触させてオゾンの添加効率を高めることも可能である。貯留槽内は比較的スペースが確保し易いため、オゾン添加手段のサイズ変更といった仕様変更への対応も比較的容易である。熱媒流路を構成するための配管途中にオゾン添加手段を配置する場合と比較して、熱媒体の流れに与える配管抵抗等の影響を抑えるにも有利である。
【0044】
上記態様の医療用熱媒体供給装置(1B;1E)において、前記回収ポートから取り込まれた熱媒体を蓄える貯留槽(15)をさらに備え、前記熱媒流路には、前記貯留槽と前記供給ポートとを結ぶ供給路(16)と、前記貯留槽と前記回収ポートとを結ぶ戻り路(17)と、前記回収ポートに回収された熱媒体を、前記貯留槽を迂回して前記戻り路から前記供給路に導くバイパス路(14a)とが設けられ、前記オゾン添加手段は、前記戻り路と前記バイパス路との接続位置と前記回収ポートとの間にて前記オゾンを添加するように設けられてもよい。これによれば、回収ポートに回収された熱媒体を戻り路から貯留槽に導くか、又はバイパス路を経由して供給路に導くかに関わりなく、オゾン添加手段によるオゾンの添加位置を熱媒体が通過する。そのため、熱媒流路に戻された熱媒体に確実にオゾンを添加してその殺菌作用を発揮させることが可能である。
【0045】
上記態様の医療用熱媒体供給装置(1C;1F)において、前記回収ポートから取り込まれた熱媒体を蓄える貯留槽(15)をさらに備え、前記熱媒流路には、前記貯留槽と前記供給ポートとを結ぶ供給路(16)と、前記貯留槽と前記回収ポートとを結ぶ戻り路(17)と、前記供給路の熱媒体を前記戻り路に導く循環路(14b)とが設けられ、前記オゾン添加手段は、前記循環路にて前記オゾンを添加するように設けられてもよい。これによれば、熱媒体の少なくとも一部を、供給ポート及び回収ポートを経由することなく供給路から戻り路へと導き、その循環路を通過する熱媒体にオゾンを添加することができる。循環路は供給路及び戻り路のそれぞれから分岐した流路であるため、循環路にオゾン添加手段を設けることによって循環路の配管抵抗が増加するといった影響が生じても、供給路及び戻り路にはその影響が及ばず、供給ポートから供給される熱媒体の流量低下といった不都合が生じるおそれがない。
【符号の説明】
【0046】
1 体外循環回路
2 熱交換器
3 ブランケット
10A、10B、10C、10D、10E、10F 医療用熱媒体供給装置
11 キャビネット
12a メイン供給ポート
12b サブ供給ポート
13a メイン回収ポート
13b サブ回収ポート
14 熱媒流路
14a バイパス路
14b 循環路
15 水槽(貯留槽)
16 供給路
17 戻り路
16 ポンプ
20 温度調整装置(温度調整手段)
21 ヒータ(加温手段)
22 クーラ(冷却手段)
30 オゾン添加装置(オゾン添加手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6