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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102078
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216601
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 数人
(72)【発明者】
【氏名】市川 真也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS08
3C707CS10
3C707HS21
3C707HS27
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】それぞれ液体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉を有するロボットアームと、当該ロボットアームを支持する移動体とを含むロボット装置において、ロボットアームの状態に拘わらず、転倒を良好に防止する。
【解決手段】本開示のロボット装置は、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された対応する2つのリンクを相対的に回動させる複数の人工筋肉を含むロボットアームと、ロボットアームを支持する移動体と、液体アクチュエータを含むと共に、ロボットアームの手先に最も近い移動体の接地部の周りのモーメントによるロボット装置の転倒を当該液体アクチュエータが発生する力によって規制する転倒防止機構と、複数の人工筋肉に液体を供給すると共に、当該複数の人工筋肉のうちの何れかに供給される液体を転倒防止機構の液体アクチュエータに供給する液体供給装置とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節と、複数のリンクと、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に前記関節を介して連結された対応する2つの前記リンクを相対的に回動させる複数の人工筋肉とを含むロボットアームと、前記ロボットアームを支持する移動体とを含むロボット装置であって、
液体アクチュエータを含むと共に、前記ロボットアームの手先に最も近い前記移動体の接地部の周りのモーメントによる前記ロボット装置の転倒を前記液体アクチュエータが発生する力によって規制する転倒防止機構と、
前記複数の人工筋肉に前記液体を供給すると共に、前記複数の人工筋肉のうちの何れかに供給される前記液体を前記転倒防止機構の前記液体アクチュエータに供給する液体供給装置と、
を備えるロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置において、
前記転倒防止機構は、前記移動体の設置面に接触可能な支持部と、前記液体アクチュエータからの力を増幅すると共に増幅した力により前記支持部を前記設置面に押し付ける倍力機構とを含むロボット装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボット装置において、
前記液体供給装置は、前記複数の関節のうちの最基端側の前記関節に対応した前記人工筋肉に供給される前記液体を前記転倒防止機構の前記液体アクチュエータに供給するロボット装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のロボット装置において、
前記2つの前記リンクは、互いに拮抗するように配置された一対の前記人工筋肉により相対的に回動させられ、
前記液体供給装置は、何れかの前記関節に対応した一対の前記人工筋肉のうち、より大きい力を発生する一方に供給される前記液体を前記転倒防止機構の前記液体アクチュエータに供給するロボット装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のロボット装置において、
前記ロボットアームの基端部の中心の周りに等間隔に配列された複数の前記転倒防止機構を含むロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、それぞれ液体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉を有するロボットアームと、当該ロボットアームを支持する移動体とを含むロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物を搬送したり、人間による作業を補助したりするためのロボットアームと、当該ロボットアームを支持する移動台車とを含み、少なくとも1方向に移動可能なロボット装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このロボット装置は、それぞれ当該1方向についての移動台車の水平面に対する傾きおよび傾きの方向を検出する複数の傾斜角センサと、それぞれ路面側に張り出してロボット装置を支持可能な複数の支持部材と、それぞれ対応する支持部材を駆動する複数の直動アクチュエータと、傾斜角センサにより検出された傾き角を基準値と比較して直動アクチュエータの動作を決定する判定装置とを含む。これにより、ロボット装置の傾斜を検知して直動アクチュエータによって支持部材を延ばすことで当該ロボット装置の転倒を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-053731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のロボット装置の姿勢すなわち移動台車の傾斜状態は、ロボットアームの状態に応じて変化することから、複数の傾斜角センサにより検出された傾き角に基づいて複数の直動アクチュエータを適正に制御するのは容易ではない。このため、上記ロボット装置では、ロボットアームの作動中に当該ロボット装置の転倒を良好に抑制し得なくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、それぞれ液体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉を有するロボットアームと、当該ロボットアームを支持する移動体とを含むロボット装置において、ロボットアームの状態に拘わらず、転倒を良好に防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロボット装置は、複数の関節と、複数のリンクと、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に前記関節を介して連結された対応する2つの前記リンクを相対的に回動させる複数の人工筋肉とを含むロボットアームと、前記ロボットアームを支持する移動体とを含むロボット装置であって、液体アクチュエータを含むと共に、前記ロボットアームの手先に最も近い前記移動体の接地部の周りのモーメントによる前記ロボット装置の転倒を前記液体アクチュエータが発生する力によって規制する転倒防止機構と、前記複数の人工筋肉に前記液体を供給すると共に、前記複数の人工筋肉のうちの何れかに供給される前記液体を前記転倒防止機構の前記液体アクチュエータに供給する液体供給装置とを含むものである。
【0007】
本開示のロボット装置は、複数の関節と、複数のリンクと、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された対応する2つのリンクを相対的に回動させる複数の人工筋肉とを含むロボットアームと、当該ロボットアームを支持する移動体と、転倒防止機構と、液体供給装置とを含む。転倒防止機構は、液体アクチュエータを含むと共に、ロボットアームの手先に最も近い移動体の接地部の周りのモーメントによるロボット装置の転倒を液体アクチュエータが発生する力によって規制する。そして、液体供給装置は、複数の人工筋肉に液体を供給すると共に、当該複数の人工筋肉のうちの何れかに供給される液体を転倒防止機構の液体アクチュエータに供給する。すなわち、ロボットアームの複数の人工筋肉には、当該ロボットアームに要求される姿勢に応じた圧力または流量の液体が供給される。従って、複数の人工筋肉のうちの何れかに供給される液体を転倒防止機構の液体アクチュエータに供給すれば、当該液体アクチュエータにロボットアームの姿勢に応じた力を出力させることが可能となる。これにより、移動体の傾斜状態等を検知しなくても転倒防止機構を適正に作動させることができるので、ロボットアームの状態に拘わらずロボット装置の転倒を良好に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
図2】本開示のロボット装置を示す拡大図である。
図3】本開示のロボット装置を示す平面図である。
図4】本開示のロボット装置の液体供給装置を示す概略構成図である。
図5】本開示のロボット装置において実行される転倒防止制御ルーチンを例示するフローチャートである。
図6】本開示のロボット装置を示す模式図である。
図7】本開示のロボット装置に適用可能な他の液体供給装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム2と、液体供給装置10と、搬送台車(移動体)20とを含む。ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、2つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の液圧アクチュエータM1,M2,M3,M4,M5,M6と、先端側のアーム3に取り付けられる把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。
【0011】
ロボットアーム2のハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1の制御装置100(図4参照)により制御される。また、液体供給装置10は、当該制御装置100により制御されて各液圧アクチュエータM1-M6に液体としての作動油(作動流体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0012】
ロボットアーム2の各液圧アクチュエータM1-M6は、図2に示すように、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(液体供給装置10側、図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。このような液圧アクチュエータM1-M6のチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給して当該チューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0013】
図1および図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も液体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、液体供給装置10側の2つのアーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、当該関節J1に対応した液圧アクチュエータM2の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0014】
また、各連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した液圧アクチュエータM1またはM3の先端側(手先側)の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J1またはJ2に対応した液圧アクチュエータM2またはM4の先端側(手先側)の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した液圧アクチュエータM3またはM5の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J2またはJ3に対応した液圧アクチュエータM4またはM6の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0015】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、液圧アクチュエータM1-M6のうちの対応する2つが当該アーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される液圧アクチュエータM1,M3,M5は、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)を構成し、各アーム3の他側に配置される2つの液圧アクチュエータM2,M4,M6は、当該第1の人工筋肉と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉を構成する。
【0016】
ただし、第1および第2の人工筋肉は、それぞれ2つ以上の液圧アクチュエータにより構成されてもよく、第1の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータの数と、第2の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータの数とが異なっていてもよい。更に、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(2つ)の液圧アクチュエータM1,M2等は、互いに同一の諸元を有するが、第1の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータの諸元と、第2の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータの諸元とが異なっていてもよい。
【0017】
また、本実施形態において、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、液体供給管としての複数のホースH(図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各液圧アクチュエータMのチューブT内には、ホースHを介して液体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0018】
従って、制御装置100により液体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータM1等のチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータM2等のチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、互いに拮抗するように配置された2つの液圧アクチュエータM1,M2等すなわち対をなす(1組の)第1および第2の人工筋肉から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。
【0019】
本実施形態において、第1の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータM1等と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する液圧アクチュエータM2等とは、チューブTが所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として液体供給装置10からの油圧により拮抗駆動される。また、本実施形態では、ロボット装置1(ロボットアーム2)の作動中、最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1,M2のうち、液圧アクチュエータM1は、アーム3に関してハンド部4の反対側に常時位置し、当該液圧アクチュエータM1には、ハンド部4側に常時位置する液圧アクチュエータM2に供給される油圧よりも高い油圧が常時供給される。
【0020】
ロボット装置1の液体供給装置10は、図1に示すように、作動油貯留部(液体貯留部)を画成するタンク11と、当該タンク11を上下方向に延びる回転軸(図1における一点鎖線参照)の周りに回転自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、ロボットアーム2の支持部材5は、タンク11の回転軸と同軸に延在するように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される(図2参照)。すなわち、ロボットアーム2は、液体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0021】
また、ベース部12は、タンク11を上記回転軸の周りに所定角度(例えば360°)だけ回転させる図示しない回転駆動ユニットを支持している。これにより、回転駆動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2を当該回転軸の周りにタンク11と一体に回転させることが可能となる。回転駆動ユニットは、液体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータであってもよく、電動モータ等を含むものであってもよい。そして、ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するように搬送台車20に搭載(固定)される。
【0022】
搬送台車20は、いわゆる無人搬送車(AGV)であって、ロボットアーム2および液体供給装置10を支持する本体21と、図示しない走行駆動源により駆動される駆動輪および従動輪を含む複数の車輪Wとを含み、指定された目的位置まで自走可能なものである。本実施形態において、搬送台車20の本体21は、図3に示すように、略正方形状(略長方形状)の平面形状を有し、複数の車輪Wは、例えば、搬送台車20を側面視した際に本体21の各側面の中央部付近に1つずつ位置するように配置される。
【0023】
更に、本体21は、タンク11の回転軸が当該本体21の中心を通るように液体供給装置10のベース部12を支持すると共に、図3に示すように、複数(本実施形態では、4つ)の転倒防止機構30a,30b,30c,30dを支持している。各転倒防止機構30a,30b,30c,30dは、それぞれ液体供給装置10から液体の供給を受けて作動する液圧アクチュエータ(液体アクチュエータ)Ma,Mb,McまたはMdを含み、当該液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが発生する収縮力によってロボット装置1の転倒を防止するものである。更に、各転倒防止機構30a,30b,30c,30dは、第1および第2リンク31,32と、搬送台車20(ロボット装置1)の設置面(各車輪Wの接地面)に接触可能な支持部33とを含む。
【0024】
本実施形態において、転倒防止機構30a-30dは、液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdがロボットアーム2の基端部となる支持部材5の中心(上記回転軸)から本体21の対応するコーナー部に向けて延在するように、当該支持部材5の中心の周りに等間隔(本実施形態では、90°間隔)に配列される。各液圧アクチュエータMa-Mdは、上記液圧アクチュエータM1-M6と同様に、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。図1および図3に示すように、各液圧アクチュエータMa-Mdの一端(図1における上端)は、本体21により支持された液体供給装置10のベース部12に固定されたブラケット34により回転自在に支持(ピン支持)される。
【0025】
また、各液圧アクチュエータMa-Mdの他端(図1における下端)は、第1リンク31の一端を回動自在に支持(ピン支持)し、第1リンク31の他端は、第2リンク32の一端(図1における上端)を回動自在に支持(ピン支持)する。更に、第2リンク32の他端には、支持部33が回動自在に連結されている。本実施形態において、転倒防止機構30a-30dの第1リンク31は、支持部材5の中心から搬送台車20の本体21の対応するコーナー部に向かう方向と直交する方向に延びる支軸を介して当該本体21に固定されたブラケット35により回動自在に支持される。
【0026】
また、第1リンク31の支点(ブラケット35の支軸)から当該第1リンク31と液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdとの連結部(連結軸)までの長さは、第1リンク31の支点から当該第1リンク31と第2リンク32との連結部(連結軸)までの長さよりも長く定められている。これにより、転倒防止機構30a-30dは、倍力機構としてのてこ機構(第1リンク31およびブラケット35)を含むリンク機構を構成する。更に、各転倒防止機構30a-30dにおいて、第1リンク31の一端すなわち当該第1リンク31と液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdとの連結部付近には、スプリング36の一端が回動自在に連結されている。また、スプリング36の他端は、搬送台車20の本体21(上面)に回動自在に連結されている。
【0027】
各転倒防止機構30a-30dのスプリング36は、液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに液体が供給されていないときに、対応する第1リンク31の上記一端を本体21の上面側に引っ張り、それにより各液圧アクチュエータMa-MdのチューブTが自然状態に維持される。この際、第2リンク32を介して第1リンク31に連結された支持部33は、搬送台車20の設置面から離間した状態に維持される。これに対して、転倒防止機構30a-30dの液圧アクチュエータMa-Mdに作動油(油圧)が供給されてスプリング36の引張力に抗してチューブTが軸方向に収縮すると、第1リンク31は、スプリング36の引張力に抗してブラケット35の支軸の周りに回動する。これにより、第2リンク32が設置面側に移動し、当該第2リンク32に連結された支持部33は、上記てこ機構の作用により、対応する液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが発生した収縮力よりも大きい力で当該設置面に押し付けられることになる。
【0028】
図4は、ロボット装置1の液体供給装置10を示す概略構成図である。同図に示すように、液体供給装置10は、図4に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、液体供給源としてのポンプ13と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、元圧生成バルブ14と、それぞれ複数の調圧弁(調圧装置)としてのリニアソレノイドバルブ151、152,153,154,155,156と、複数(本実施形態では、4つ)の開閉弁16a,16b,16c,16dとを含む。ポンプ13、リニアソレノイドバルブ151-156および開閉弁16a-16dは、何れもロボット装置1の制御装置100により制御される。
【0029】
ポンプ13は、例えば電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油を吸引して吐出口から吐出する。ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータおよび減速ギヤ機構とを有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動部とを含む。元圧生成バルブ14は、図示しない信号圧生成バルブからの信号圧に応じてポンプ13から吐出される作動油の一部をドレン(調圧)して元圧を生成し、元圧をバルブボディに形成された供給油路(液体通路)に供給する。元圧生成バルブRVの信号圧生成バルブとしては、例えば、制御装置100による通電制御されるリニアソレノイドバルブが用いられる。
【0030】
リニアソレノイドバルブ151-156は、それぞれ制御装置100により通電制御される電磁部や、スプール、当該スプールを電磁部側に付勢するスプリング等を含み、バルブボディ内に配置される。更に、リニアソレノイドバルブ151-156は、バルブボディの上記供給油路に連通する入力ポートと、入力ポートと連通可能な出力ポートと、出力ポートに連通するフィードバックポートと、出力ポートと連通可能なドレンポートとを含む。本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-156は、何れも電磁部に電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部は、印加される電流に応じてスプールを軸方向に移動させる。これにより、電磁部(コイル)への給電により当該電磁部からスプールに付与される推力と、スプリングの付勢力と、出力ポートからフィードバックポートに供給された油圧によりスプールに作用する電磁部側への推力とをバランスさせることで、元圧生成バルブ14(ポンプ13)側から入力ポートに供給されて出力ポートから流出する作動油を所望の圧力に調圧することができる。
【0031】
図4に示すように、リニアソレノイドバルブ151の出力ポートは、バルブボディに形成された油路L1やホースH等を介してロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1の作動油の出入口IOに接続される。更に、リニアソレノイドバルブ152の出力ポートは、バルブボディに形成された油路L2やホースH等を介してロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM2の作動油の出入口IOに接続される。また、リニアソレノイドバルブ153の出力ポートは、バルブボディに形成された油路L3やホースH等を介してロボットアーム2の関節J2に対応した液圧アクチュエータM3の作動油の出入口IOに接続される。更に、リニアソレノイドバルブ154の出力ポートは、バルブボディに形成された油路L4やホースH等を介してロボットアーム2の関節J2に対応した液圧アクチュエータM4の作動油の出入口IOに接続される。
【0032】
また、リニアソレノイドバルブ155の出力ポートは、バルブボディに形成された油路L5やホースH等を介してロボットアーム2の最も手先側の関節J3に対応した液圧アクチュエータM5の作動油の出入口IOに接続される。更に、リニアソレノイドバルブ156の出力ポートは、バルブボディに形成された油路L6やホースH等を介してロボットアーム2の最も手先側の関節J3に対応した液圧アクチュエータM6の作動油の出入口IOに接続される。また、リニアソレノイドバルブ151-156のドレンポートは、それぞれバルブボディに形成された油路を介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0033】
開閉弁16a-16dは、互いに同一の構造を有する例えば常閉式電磁弁であり、電磁部への通電により開弁した際に何れも図示しない入力ポートと出力ポートとを連通させるものである。更に、開閉弁16a-16dは、電磁部への通電の解除により閉弁した際に、入力ポートと出力ポートとの連通を遮断すると共に、出力ポートと図示しないドレンポートとを連通させる。開閉弁16a-16dの入力ポートは、リニアソレノイドバルブ151と液圧アクチュエータM1とを結ぶ上記油路L1から分岐された分岐油路L10に接続される。また、開閉弁16aの出力ポートは、バルブボディに形成された油路や図示しないホース等を介して転倒防止機構30aの液圧アクチュエータMaの作動油の出入口に接続される。更に、開閉弁16bの出力ポートは、バルブボディに形成された油路や図示しないホース等を介して転倒防止機構30bの液圧アクチュエータMbの作動油の出入口に接続される。また、開閉弁16cの出力ポートは、バルブボディに形成された油路や図示しないホース等を介して転倒防止機構30cの液圧アクチュエータMcの作動油の出入口に接続される。更に、開閉弁16dの出力ポートは、バルブボディに形成された油路や図示しないホース等を介して転倒防止機構30dの液圧アクチュエータMdの作動油の出入口に接続される。
【0034】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の上流側で上記供給油路における作動油の圧力を検出する図示しない元圧センサ、リニアソレノイドバルブ151-156等の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサの検出値等を入力する。また、制御装置100は、元圧センサにより検出される油圧が目標値になるように、ポンプ13をデューティ制御すると共に元圧生成バルブ14の信号圧生成バルブの電磁部に供給される電流を制御する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156から各液圧アクチュエータM1-M6に要求に応じた油圧が供給されるように当該リニアソレノイドバルブ151-156への電流指令値を設定し、当該電流指令値に基づいて各電磁部に供給される電流を制御する。また、制御装置100は、ロボットアーム2を要求に応じて回動させるようにベース部12の回転駆動ユニットを制御する。
【0035】
上述のように構成されるロボット装置1によれば、工場や倉庫等において搬送台車20を作業場所まで自走させ、当該作業場所でロボットアーム2のハンド部4を把持対象まで移動させると共に、ハンド部4に把持対象を把持させて移送させることが可能となる。ただし、把持対象の移送等に際し、ハンド部4は、前後、左右、上下に移動し、ハンド部4の位置やロボットアーム2の状態(姿勢)によっては、搬送台車20の複数の車輪Wが浮き上がり、ロボット装置1が転倒してしまうおそれがある。このため、ロボット装置1では、ロボットアーム2が作動可能になっている間(作動中および作動開始準備が完了しているとき)、図5に例示する転倒防止制御ルーチンが制御装置100により所定時間おきに繰り返し実行される。
【0036】
図5のルーチンの開始に際し、制御装置100は、走行停止フラグの値を取得する(ステップS100)。走行停止フラグは、搬送台車20が走行している際(走行開始直前および走行停止直後を含む)に値0に設定されると共に、搬送台車20が完全に停車しており、かつロボットアーム2が作動可能になっている際に値1に設定されるものである。次いで、制御装置100は、走行停止フラグが値1であるか否かを判定する(ステップS110)。制御装置100は、走行停止フラグが値1であって搬送台車20が完全に停車していると判定した場合(ステップS100:YES)、ロボットアーム2のベース部12すなわち搬送台車20に対する回動角度を取得する(ステップS120)。
【0037】
ロボットアーム2の回動角度は、図示しない角度センサにより検出される支持部材5の中心周りの角度である。ステップS120にて回動角度を取得すると、制御装置100は、当該回動角度に基づいて、転倒防止機構30a-30dの中からロボットアーム2に最も近接した1つを選択する(ステップS130)。ステップS130において、制御装置100は、ロボット装置1を平面視した際にロボットアーム2の延在方向とのなす角度が最小となる転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dを選択する。そして、制御装置100は、開閉弁16a-16dのうち、ステップS130にて選択した転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dに対応した1つを開弁させると共に残余を閉弁させ(ステップS140)、図5のルーチンを一旦終了させる。一方、走行停止フラグが値0であって搬送台車20が走行しているか、発進直前あるいは停車直後であると判定した場合(ステップS110:NO)、制御装置100は、開閉弁16a-16dのすべてを閉弁させ(ステップS150)、図5のルーチンを一旦終了させる。
【0038】
上述のような図5のルーチンが実行される結果、ステップS130にて選択された転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdには、リニアソレノイドバルブ151からロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1に向けて送出される作動油の一部が分岐油路L10を介して供給される。これにより、当該液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdのチューブTは、リニアソレノイドバルブ151からの油圧すなわち液圧アクチュエータM1に供給される油圧と同一の油圧の作用によりスプリング36の引張力に抗して軸方向に収縮し、第1リンク31に収縮力を付与する。
【0039】
ステップS130にて選択された転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの第1リンク31は、液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdから付与される力によりスプリング36の引張力に抗してブラケット35の支軸の周りに回動する。更に、第1リンク31の回動に伴い、支持部33は、上記てこ機構の作用により液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが発生した収縮力(荷重)よりも大きい力で当該搬送台車20(ロボット装置1)の設置面に押し付けられることになる。この結果、ステップS130にて選択された転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dは、ロボットアーム2の手先であるハンド部4に最も近い搬送台車20の何れか1つの車輪W(接地部)の周りのモーメントによるロボット装置1の転倒を液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが発生する力によって規制する。
【0040】
ここで、支点としての支持部33の周りのモーメントが次式(1)の関係を満たす場合、搬送台車20の一部が浮き上がってロボット装置1が転倒するのを防止することができる。ただし、式(1)において、F(P)”は、関節J1に対応した液圧アクチュエータM1およびM2がロボットアーム2の姿勢を維持するために発生する収縮力(合力)である。また、“LP1P2”は、図6に示すように、ロボットアーム2の支持部材5の中心から支持部33までの水平距離である。更に、LP2”は、図6に示すように、ロボットアーム2の手先であるハンド部4に最も近い搬送台車20の接地部となる何れか1つの車輪Wから支持部33までの水平距離である。また、“Lg”は、図6に示すように、ロボットアーム2の姿勢に応じて定まる関節J1(関節軸)からロボットアーム2の重心までの距離である。更に、“α”は、図6に示すように、第2リンク32の延在方向と設置面とがなす角度である。また、“β”は、図6に示すように、関節J1(関節軸)とロボットアーム2の重心とを結ぶ線分が水平面(設置面)に対してなす角度である。更に、“M”は、ロボット装置1(全体)の質量であり、“m”は、ロボットアーム2(全体)の質量であり、G”は、重力加速度である。
【0041】
LP2×(F(P)×sinα)+LP1P2×M×G≧(Lg×cosβ-LP2)×m×G…(1)
【0042】
また、ロボットアーム2の最基端側の関節J1に要求されるトルクTJ1は、次式(2)のように表すことができる。ただし、式(2)において、“Y”は、第1リンク31の支点(ブラケット35の支軸)から当該第1リンク31と液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdとの連結部(連結軸)までの長さである。また、“f(P)”は、転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが発生する収縮力(荷重)である。更に、“Lg”は、ロボットアーム2の姿勢に応じて定まる関節J1(関節軸)からロボットアーム2の重心までの距離であり、“m”は、ロボットアーム2(全体)の質量であり、G”は、重力加速度である。
【0043】
TJ1=Lg×m×G=Y×f(P) …(2)
【0044】
式(1)の左辺のパラメータのうち、収縮力F(P)以外のパラメータはすべて固定値になることから、式(1)の関係を満たすためには、液圧アクチュエータM1およびM2が発生する収縮力F(P)すなわち液圧アクチュエータM1およびM2への油圧がある程度確保されればよい。また、式(2)からわかるように、関節J1に要求されるトルクTJ1は、転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが発生する収縮力f(P)すなわち液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdへの油圧に関連付けられる。
【0045】
これらを踏まえて、ロボット装置1では、ロボットアーム2が作動可能になっている間、複数の液圧アクチュエータM1-M6のうち、最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1に供給される作動油が転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに供給される。すなわち、液圧アクチュエータM1は、ロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応すると共にアーム3に関してハンド部4の反対側に常時位置する。そして、当該液圧アクチュエータM1のチューブTには、ロボットアーム2が作動可能になっている間、当該ロボットアーム2の全体を支えて要求される姿勢を維持するために他の液圧アクチュエータM2-M6に供給される油圧よりも高い油圧が常時供給される。
【0046】
従って、転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1への油圧(作動油)を供給することで、当該液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdにロボットアーム2の姿勢に応じた大きな収縮力を発生させることが可能となる。これにより、搬送台車20の傾斜状態等を検知しなくても転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dを適正に作動させることができるので、ロボットアーム2の状態に拘わらずロボット装置1の転倒を良好に防止することが可能となる。ただし、上記式(1)に示すような関係を満たし、ロボット装置1の転倒が良好に防止されるのであれば、液圧アクチュエータM2-M6の何れかへの作動油が転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに供給されてもよい。
【0047】
また、ロボット装置1において、転倒防止機構30a-30dは、搬送台車20(ロボット装置1)の設置面に接触可能な支持部33と、倍力機構(第1リンク31およびブラケット35)とを含むと共に、液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdからの力を増幅した力により支持部33を当該設置面に押し付けるリンク機構を構成する。これにより、液体供給装置10から供給される油圧に応じて液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdが出力する収縮力が比較的小さい場合であっても、転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dによりロボット装置1の転倒を良好に防止することが可能となる。ただし、転倒防止機構30a-30dに含まれる倍力機構は、てこ機構に限られるものではなく、例えばギヤ機構等の他の倍力機構であってもよい。
【0048】
更に、ロボット装置1において、ロボットアーム2は、搬送台車20に対して予め定められた回転軸の周りに回動自在であり、ベース部12の回転駆動ユニットにより回動させられる。また、ロボット装置1では、複数の転倒防止機構30a-30dがロボットアーム2の基端部である支持部材5の中心の周りに等間隔に配列されている。更に、液体供給装置10は、ロボットアーム2の搬送台車20に対する回動角度に応じて選択される転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに作動油を供給するように制御装置100により制御される(図5のステップS120-S140)。これにより、ロボットアーム2の可動範囲が大きく定められた場合であっても、ロボット装置1の転倒を良好に防止することが可能となる。
【0049】
なお、ロボットアーム2の構造等によっては、最基端側の関節J1に対応した液圧アクチュエータM1,M2に供給される油圧の大小関係が変動することもある。このような場合には、ロボット装置1に対して、図7に示すようなシャトル弁17を含む液体供給装置10Bが適用されてもよい。液体供給装置10Bのシャトル弁17は、液圧アクチュエータM1に対応した油路L1から分岐された分岐油路L11に接続される第1入力ポートと、液圧アクチュエータM2に対応した油路L2から分岐された分岐油路L12に接続される第2入力ポートと、開閉弁16a-16dの入力ポートに連通する油路L0に接続される出力ポートとを含む。そして、シャトル弁17は、2つの入力圧すなわち液圧アクチュエータM1への油圧と液圧アクチュエータM2への油圧とのうちの高い方を油路L0に出力する。これにより、液圧アクチュエータM1,M2に供給される油圧の大小関係が変動しても、転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに液圧アクチュエータM1,M2に供給される油圧のうちの高い方を供給することが可能となる。
【0050】
また、上記液体供給装置10は、互いに拮抗するように配置されて最基端側の関節J1に対応した2つのアーム3を相対的に回動させる一対の人工筋肉である液圧アクチュエータM1,M2のうち、より大きい力を発生する液圧アクチュエータM1に供給される作動油を転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに供給するが、これに限られるものではない。すなわち、上記式(1)に示すような関係を満たし、ロボット装置1の転倒が良好に防止されるのであれば、一対の人工筋肉である液圧アクチュエータM1,M2等のうち、より小さい力を発生する一方への作動油が転倒防止機構30a,30b,30cまたは30dの液圧アクチュエータMa,Mb,McまたはMdに供給されてもよい。
【0051】
更に、ロボットアーム2のサイズ(重量)や可動範囲が大きい場合には、ロボット装置1に対して5つ以上の転倒防止機構が設けられてもよく、ロボットアーム2の可動範囲等が小さい場合には、ロボット装置1に対して3つ以下(少なくとも1つ)の転倒防止機構が設けられてもよい。また、図5のステップS130では、ロボットアーム2の回動角度に応じて2つ以上の転倒防止機構が選択されてもよい。更に、上記実施形態において、移動体としての搬送台車20は、いわゆる無人搬送車であるが、搬送台車20は、有人搬送車であってもよい。
【0052】
また、液体供給装置10において、リニアソレノイドバルブ151-156が、電磁部に供給される電流に応じた信号圧を出力するリニアソレノイドバルブ(あるいはオンオフソレノイドバルブ)と、当該信号圧に応じて作動油を調圧するコントロールバルブとで置き換えられてもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-156は、対応する液圧アクチュエータM1-M6に供給される液圧(油圧)が目標圧力になるように制御される流量制御弁で置き換えられてもよい。更に、液体供給装置10から元圧生成バルブ14が省略されてもよく、ポンプ13により発生させられた油圧を蓄えるアキュムレータ(蓄圧器)が液体供給装置10に設けられてもよい。また、液体供給装置10は、水等の作動油以外の液体を液圧アクチュエータMに供給するように構成されてもよい。
【0053】
更に、上記実施形態において、人工筋肉としての液圧アクチュエータM1-M6,Ma-Mdは、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における液圧アクチュエータM1-M6,Ma-Mdの構成は、これに限られるものではない。すなわち、液圧アクチュエータM1-M6,Ma-Mdは、液体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の液圧アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。更に、液圧アクチュエータM1-M6,Ma-Mdは、シリンダおよびピストンを含む液体シリンダであってもよい。
【0054】
また、ロボット装置1は、少なくとも1つの液圧アクチュエータM1等とハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの液圧アクチュエータM1等と、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボットアーム2は、1つの関節と、当該関節に対応した一対の人工筋肉とを含むものであってもよい。また、関節J1,J2またはJ3を介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の液圧アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の液圧アクチュエータMと、当該液圧アクチュエータMと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。
【0055】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示の発明は、複数の人工筋肉を有するロボットアームと、当該ロボットアームを支持する移動体とを含むロボット装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ロボット装置、2 ロボットアーム、3 アーム(リンク)、4 ハンド部(手先)、5 支持部材(リンク、基端部)、10,10B 液体供給装置、20 搬送台車(移動体)、30a,30b,30c,30d 転倒防止機構、33 支持部、J1,J2,J3 関節、M1,M2,M3,M4,M5,M6 液圧アクチュエータ(人工筋肉)、Ma,Mb,Mc,Md 液圧アクチュエータ(液体アクチュエータ)、W 車輪(接地部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7