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  • 特開-熱転写受像シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102084
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】熱転写受像シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B41M5/52 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216612
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】本橋 晃
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111CA03
2H111CA04
2H111CA30
2H111CA41
(57)【要約】
【課題】印画後に生じる凹カールを好適に抑制でき、印画濃度も良好な熱転写受像シ-トを提供する。
【解決手段】熱転写受像シート1は、シート状の基材10と、基材の第一面10a上に形成された第一ポリオレフィン樹脂層21と、基材において、第一面と反対側の第二面10b上に形成された第二ポリオレフィン樹脂層22と、第一ポリオレフィン樹脂層上に形成されたミクロボイド層30と、ミクロボイド層上に形成された下地層40と、下地層上に形成された受像層50とを備える。ミクロボイド層は、厚みが27μm以上33μm以下であり、熱伝導率が0.1W/m・K以下であり、ASTMD1204に基づいて測定した熱収縮率(120℃ 15分加熱)が3.0%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
前記基材の第一面上に形成された第一ポリオレフィン樹脂層と、
前記基材において、前記第一面と反対側の第二面上に形成された第二ポリオレフィン樹脂層と、
前記第一ポリオレフィン樹脂層上に形成されたミクロボイド層と、
前記ミクロボイド層上に形成された下地層と、
前記下地層上に形成された受像層と、
を備え、
前記ミクロボイド層は、
厚みが27μm以上33μm以下であり、
熱伝導率が0.1W/m・K以下であり、
ASTMD1204に基づいて測定した熱収縮率(120℃ 15分加熱)が3.0%以下である、
熱転写受像シート。
【請求項2】
前記ミクロボイド層がポリプロピレンからなる、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記ミクロボイド層が二軸延伸フィルムからなる、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記受像層は、塩化ビニル、塩化ビニル-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステルの何れかを含有する、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記ミクロボイド層と前記第一ポリオレフィン樹脂層とがドライラミネーションにより接合されている、
請求項1に記載の熱転写受像シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写方式のプリンタに使用される熱転写受像シ-トに関する。
【背景技術】
【0002】
文字又は画像等を被転写体に形成する印刷方式として、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式等が知られている。昇華型熱転写方式は、熱転写リボンの染料層と、熱転写受像シートの受像層とを互いに重ね合わせ、次いで、電気信号により発熱が制御されるサーマルヘッドによって熱転写リボンを加熱することで、染料層中の染料を昇華させて受像層へ移行させ、受像層上に所望の文字、画像等を形成させる方式である。
【0003】
昇華型熱転写方式は、昇華型の染料を用いて濃度階調を自由に調節できることから、自然画を比較的忠実に再現することができる。このため、昇華型熱転写用の熱転写受像シートも、一般プリンタ用、アミューズメント用、証明写真の自動販売機用などの様々な用途で写真印画用紙として使用されている。
熱転写受像シートは、多くの場合、使用単位に切り出された枚葉タイプで流通している。
【0004】
熱転写受像シートには、さまざまな要求特性がある。重要な特性の一つとして、印画後のカール抑制が挙げられる。枚葉タイプの熱転写受像シートを用いて印画をする際に、熱転写受像シートにはサーマルヘッドの熱が加えられる。その熱によって熱転写受像シートの一部が熱収縮すると、印画後の熱転写受像シートは、印画面を凹状にして丸まる凹カールを生じることがある。凹カールが大きくなると、プリンタ内における熱転写受像シートの搬送や排出において詰まり(ジャム)を生じたり、印画後の熱転写受像シートがうまく積み重ならなかったりする。
【0005】
特許文献1には、TAPPI T543pm84に記載の紙のこわさの測定方法に準じて測定した熱転写受像シートの長さ方向のこわさS1と幅方向のこわさS2とを所定の数値範囲とすることにより、印画後のカールを小さくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-1072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、印画面側が凸となる凸カールを抑制することを目的としている。熱転写受像シートは、厚さ方向に非対称な構造を有するため、特許文献1の技術を用いても、凹カールは十分抑制できない。
さらに、詳細は後述するが、従来の凹カール対策では印画濃度が良好でないケースがあった。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、印画後に生じる凹カールを好適に抑制でき、印画濃度も良好な熱転写受像シ-トを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート状の基材と、基材の第一面上に形成された第一ポリオレフィン樹脂層と、基材において、前記第一面と反対側の第二面上に形成された第二ポリオレフィン樹脂層と、第一ポリオレフィン樹脂層上に形成されたミクロボイド層と、ミクロボイド層上に形成された下地層と、下地層上に形成された受像層とを備える熱転写受像シ-トである。
ミクロボイド層は、厚みが27μm以上33μm以下であり、熱伝導率が0.1W/m・K以下であり、ASTMD1204に基づいて測定した熱収縮率(120℃ 15分加熱)が3.0%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印画後に生じる凹カールを好適に抑制でき、印画濃度も良好な熱転写受像シ-トを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る熱転写受像シートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の熱転写受像シート1を示す図である。熱転写受像シート1は、シート状の基材10と、基材10の第一面10aに設けられた第一ポリオレフィン樹脂層21と、基材10において、第一面10aと反対側の第二面10bに設けられた第二ポリオレフィン樹脂層22と、第一ポリオレフィン樹脂層21上に設けられたミクロボイド層30と、ミクロボイド層30上に設けられた下地層40と、下地層40上に設けられた受像層50とを備えている。
【0013】
基材10としては、公知のものを使用することができる。例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂若しくはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、樹脂ラミネート紙、紙、セルロース繊維紙等の紙類、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレ-ト(PEN)等のポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルム等のフィルムなどが挙げられる。樹脂フィルムおよび紙類は、単独で用いられてもよいし、両者が組み合わされた複合体が基材10とされてもよい。
【0014】
基材10の厚さについては、印画物としてのコシ(剛性)、強度や耐熱性等を考慮すると、25マイクロメートル(μm)以上250μm以下の範囲のものが使用可能である。より好ましくは、50μm以上200μm以下程度の厚さが好ましい。
【0015】
第一ポリオレフィン樹脂層21および第二ポリオレフィン樹脂層22の材料となる樹脂は、成形性の観点から低密度ポリエチレン(LDPE)を主成分として含むことが好ましい。
第二ポリオレフィン樹脂層22は、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有してもよい。LDPEとHDPEとの混合比率は、適宜設定できる。
【0016】
ミクロボイド層30は、多数の微細な空隙を有しており、サーマルヘッドからの熱印加時の断熱性、およびクッション性等を熱転写受像シート1に付与する。ミクロボイド層30を形成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の樹脂材料を適宜選択することができる。例えば、発泡させてミクロボイドを形成したプラスチックシートを使用することができる。また、無機粉末を配合した熱可塑性樹脂をシート状に溶融押出し成形した後、延伸することによって、無機粉末を核としてその周囲にミクロボイドを形成したシートを使用することも可能である。また、水溶性の無機粉末を配合した熱可塑性樹脂を溶融押出し成形した後、この水溶性無機粉末を溶解除去することによってミクロボイドを形成したシートを使用することもできる。断熱性とクッション性の観点からは、発泡ポリプロピレン樹脂シートが好ましく、また生産性やコストからは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂等のオレフィン樹脂に非相溶な有機微粒子または無機微粒子を配合、成形後延伸したシートが好ましい。
ミクロボイド層30と第一ポリオレフィン樹脂層21との接合方法に特に制限はないが、接着剤を用いたドライラミネーションが好適である。この場合は、ミクロボイド層30と第一ポリオレフィン樹脂層21との間に接着層が存在する。
【0017】
下地層40は、ミクロボイド層30と受像層50との密着性向上や、印画後の熱転写受像シートの保存性向上等を目的とする層である。
下地層40の材料としては、目的を考慮しつつ、公知の各種材料から選択して用いることができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、およびこれら樹脂の共重合体等を挙げることができる。上述した材料は、単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
下地層40の厚さは、0.1μm以上3μm以下であればよく、0.2μm以上1.0μm以下程度が好ましい。
【0018】
受像層50としては、公知の各種バインダ樹脂を用いることができる。バインダ樹脂の一例として、塩化ビニル-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、塩化ビニル-アクリル-エチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル-スチレン共重合体、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が混合されて使用されてもよい。
受像層50の厚さは、0.1μm以上10μm以下であればよいが、0.2μm以上8μm以下程度がより好ましい。また、受像層50は、必要に応じて造膜助剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光染料、可塑剤、また受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を更に高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0019】
発明者は、凹カールを生じさせる要因としてミクロボイド層に着目し、検討した。ミクロボイド層に熱をかけたときの応力緩和は、凹カールの発生に影響する。枚葉プリンタ用に使用される受像紙のミクロボイド層としては、従来、耐熱性の高い二軸延伸ポリエステルフィルムが用いられるケースが多かった。
しかしながら、ポリエステルは、印画後の凹カール抑制に効果的であるものの、樹脂自体の断熱性能が十分でなく、十分な印画濃度を得ることができないことがあった。一方、ポリプロピレン製の多孔質フィルムは、高い断熱性を持つもののポリエステルに比べて耐熱性が低いため、印画濃度が高く保持される一方で印画後の凹カールを十分コントロールできていなかった。
発明者の検討の結果、以下の3点を満たすことにより、ミクロボイド層30にポリプロピレンを用いても、十分な印画濃度と、印画後凹カールの抑制とを両立できた。
・ミクロボイド層の厚さを27μm以上33μm以下とする。
・熱伝導率を0.1W/m・K以下とする。
・ASTMD1204に基づいて測定した熱収縮率(120℃ 15分加熱)を3.0%以下とする。
熱伝導率は、ミクロボイド層における微細空隙の態様により変化する。微細空隙の態様および熱収縮率は、ミクロボイド層となるポリプロピレンフィルムの延伸量によって変化する。これらを適宜変更することにより、上記3点を満たすミクロボイド層30を形成できる。
【0020】
ミクロボイド層30を備える本実施形態の熱転写受像シート1は、印画後に生じる凹カールを好適に抑制でき、印画濃度も良好である。
【0021】
次に、本発明の熱転写受像シートについて、実施例を用いてさらに説明する。本発明は実施例の説明により何ら限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
ミクロボイド層30として、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。ミクロボイド層30の一方の面に、ウレタン系塗料(第一工業製薬社製 スーパーフレックス120)を乾燥後膜厚が1μmとなるように塗工し、下地層40を形成した。さらに、下地層40上に、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を主としたインキを乾燥後膜厚が3μmとなるように塗工し、受像層50を形成した。
実施例1において、ASTMD-1204に準拠して測定した熱収縮率(加熱条件 120℃15分)は、搬送方向(MD)で3.0%、幅方向(TD)で1.0%であった。
【0023】
基材10として、紙(坪量150g/m)を準備した。基材10の一方の面に、LDPEを厚さ20μmで積層し、第一ポリオレフィン樹脂層21を形成した。基材10のもう一方の面に、LDPEとHDPEとを2:8で配合した樹脂を押出し、厚さ20μmの第二ポリオレフィン樹脂層22を形成した。
接着剤(タケネートA525/A56)を使用してミクロボイド層30と第一ポリオレフィン樹脂層21とをドライラミネートにより接合し、実施例1の熱転写受像シートを得た。
【0024】
(実施例2)
ミクロボイド層30として、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD2.8%、TD0.8%であった。
その他の点は実施例1と同様として、実施例2の熱転写受像シートを得た。
【0025】
(実施例3)
ミクロボイド層30として、厚み27μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
その他の点は実施例1と同様として、実施例3の熱転写受像シートを得た。
【0026】
(実施例4)
ミクロボイド層30として、厚み33μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
その他の点は実施例1と同様として、実施例4の熱転写受像シートを得た。
【0027】
(実施例5)
ミクロボイド層30として、厚み33μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD1.5%、TD0.5%であった。
その他の点は実施例1と同様として、実施例5の熱転写受像シートを得た。
【0028】
(比較例1)
ミクロボイド層として、厚み40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD3.6%、TD2.0%であった。
その他の点は、実施例1と同様として、比較例1の熱転写受像シートを得た。
【0029】
(比較例2)
ミクロボイド層として、厚み33μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD16.8%、TD10.4%であった。
その他の点は、実施例1と同様として、比較例2の熱転写受像シートを得た。
【0030】
(比較例3)
ミクロボイド層として、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD5.7%、TD5.1%であった。
その他の点は、実施例1と同様として、比較例3の熱転写受像シートを得た。
【0031】
(比較例4)
ミクロボイド層として、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD3.0%、TD1.0%であった。
その他の点は、実施例1と同様として、比較例4の熱転写受像シートを得た。
【0032】
(比較例5)
ミクロボイド層として、厚み30μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた。
このフィルムの熱収縮率(ASTMD-1204準拠)は、MD0.6%、TD0.1%であった。
その他の点は、実施例1と同様として、比較例5の熱転写受像シートを得た。
【0033】
次に、各例の熱転写受像シートについて、以下の2項目を評価した。
【0034】
<印画濃度評価>
各例の熱転写受像シートに対し、プリンタ(大日本印刷社製 DS40)で付属のリボンを使用して11ステップ画像を印画した。グレースケールの最大諧調の濃度が2.00以上であった場合を〇(good)とし、2.00未満の場合は×(bad)とした。
<印画後カール評価>
各例の熱転写受像シートを177mm×100mmのサイズに断裁し、枚葉プリンタ(キヤノン株式会社製「SELPHY」CP1200)を用いて全面黒の印画を行ったあとに、印画面を上にして配置した際の、熱転写受像シートの厚さ方向における周縁と中心との最大距離をカール量として測定した。周縁が中心よりも高い場合を凹カールとして「-」で表し、周縁が中心よりも低い場合を凸カールとして「+」で表した。カール量は以下の2段階評価とした。
○(good):100枚の印画物のうち、カール量が±2mmを超えるものがない。
×(bad) :100枚の印画物のうち、カール量が±2mmを超えるものが1枚以上ある。
<総合評価>
上記2項目のいずれも〇であった場合を○(good)とし、それ以外は×(bad)とした。
【0035】
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、上述した3点を満たすミクロボイド層を有する各実施例では、凹カールの抑制と十分な印画濃度とが両立されていた。
上述した3点を満たさないポリプロピレン製のミクロボイド層を有する比較例1~3では、印画後に強い凹カールを生じており、凹カールを抑制できなかった。
上述した3点を満たすポリエチレン製のミクロボイド層を有する比較例5は、凹カールを抑制できたものの、印画濃度が十分でなかった。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、他の構成を加えたり、削除したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の熱転写受像シ-トは、昇華転写方式のプリンタに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 熱転写受像シート
10 基材
10a 第一面
10b 第二面
21 第一ポリオレフィン樹脂層
22 第二ポリオレフィン樹脂層
30 ミクロボイド層
40 下地層
50 受像層
図1