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▶ 川瀬 孝嘉の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102088
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】有稈錨
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/36 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B63B21/36
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216618
(22)【出願日】2020-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】520512834
【氏名又は名称】川瀬 孝嘉
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 孝嘉
(57)【要約】
【課題】船上からの投下作業および引き揚げ作業を容易に行うことができる有稈錨を提供する。
【解決手段】有稈錨1は、上下に貫く貫通孔3c,3dを中心に有する中央部3と、中央部3の下方に位置し、X軸方向の両側にそれぞれ伸びて先端に爪6を有する2本のアーム5と、2本のアーム5の下方に位置し、最下点PLと最上点PHの間を上下に移動する重り24と、少なくとも一部は貫通孔3c,3dの中に配置され、下端が重り24の上部に接続されたシャフト21,22,23と、中央部3の内部でシャフト21,22,23と接続され、X軸方向の軸回りに回動して中央部3のY軸方向の両側に形成された開口3eからそれぞれ突出する2本のストック27と、を備えている。重り24が最下点PLにある状態で2本のストック27は折り畳まれ、重り24が最上点PHにある状態で2本のストック27は展開する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に貫く貫通孔を中心に有する中央部と、
前記中央部の下方に位置し、一の方向の両側にそれぞれ伸びて先端に爪を有する2本のアームと、
前記2本のアームの下方に位置し、最下点と最上点の間を上下に移動する重りと、
少なくとも一部は前記貫通孔の中に配置され、下端が前記重りの上部に接続されたシャフトと、
前記中央部の内部で前記シャフトと接続され、前記一の方向の軸回りに回動して前記中央部の前記一の方向と直交する方向の両側に形成された開口からそれぞれ突出する2本のストックと、を備え、
前記重りが前記最下点にある状態で前記2本のストックは折り畳まれ、前記重りが前記最上点にある状態で前記2本のストックは展開する、有稈錨。
【請求項2】
前記2本のアームは、前記中央部の下部に前記一の方向の軸回りに揺動可能に接続された下部構造体に形成され、
前記シャフトは、前記重りが前記最上点にある状態で、前記中央部と前記下部構造体と一体となって揺動可能な接続点を有している、請求項1に記載の有稈錨。
【請求項3】
前記下部構造体の下面には、前記最上点にある前記重りが当接する重り係止面が形成されている、請求項2に記載の有稈錨。
【請求項4】
前記重りが前記最上点にある状態で、前記重りの少なくとも一部は前記2本のアームより下方に突出する、請求項1から3のいずれかに記載の有稈錨。
【請求項5】
上端が鎖に接続され、下端が前記中央部の上部に前記一の方向の軸回りに揺動可能に接続された上部構造体をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の有稈錨。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストックを備える有稈錨に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船を一定の場所に留めておくために使用される錨として、シャンク部の先端に設けられた爪を有する2本のアームと、シャンク部の途中に2本のアームとは直交する方向に突き出たストック(稈)を有する有稈錨(ストックアンカー)が使用されている。有稈錨は、海底に降ろした状態でストックまたは爪が海底面に突き立てられるため船を錨泊させる能力は高い一方で、船上に引き上げて収納する際にはストックとアームが十字となるように突き出ているため収納が困難である問題点があった。
【0003】
特許文献1に記載の有稈錨は、ヒンジを介して2本のストックをシャンク部に接続し、これによりストックがシャンク部に沿って直立する折畳状態からシャンク部に直交する展開状態に回動するようにし、有稈錨と船とを接続する鎖の先端を二又にして2本のストックの中間部にそれぞれ接続している。特許文献1の有稈錨は、船上で折畳状態にすることで狭い場所に収容することができる。特許文献1の有稈錨を使用する際は、折畳状態で船上から海中に降ろし、海底に着底した有稈錨を引っ張って、ストックに鎖から引く力を加えることにより2本のストックを展開状態に回動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-15193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の有稈錨は、錨泊後に海中から船上に引き上げる際もストックが展開状態であるためストックが船体と干渉して収容作業に手間がかかるという問題点があり、船上からの投下作業(投錨)および引き揚げ作業(揚錨)を容易に行えるようにするためには更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、船上からの投下作業および引き揚げ作業を容易に行うことができる有稈錨を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有稈錨は、上下に貫く貫通孔を中心に有する中央部と、前記中央部の下方に位置し、一の方向の両側にそれぞれ伸びて先端に爪を有する2本のアームと、前記2本のアームの下方に位置し、最下点と最上点の間を上下に移動する重りと、少なくとも一部は前記貫通孔の中に配置され、下端が前記重りの上部に接続されたシャフトと、前記中央部の内部で前記シャフトと接続され、前記一の方向の軸回りに回動して前記中央部の前記一の方向と直交する方向の両側に形成された開口からそれぞれ突出する2本のストックと、を備え、前記重りが前記最下点にある状態で前記2本のストックは折り畳まれ、前記重りが前記最上点にある状態で前記2本のストックは展開する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、船上からの投下作業および引き揚げ作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態の有稈錨の重りが下がった状態の正面図
図2】本発明の一実施の形態の有稈錨の重りが下がった状態の側面図
図3】本発明の一実施の形態の有稈錨の重りが上がった状態の正面図
図4】本発明の一実施の形態の有稈錨の重りが上がった状態の側面図
図5】本発明の一実施の形態の有稈錨の(a)重りが下がった状態の側面断面図(b)重りが上がった状態の側面断面図
図6】本発明の一実施の形態の有稈錨が備えるストック開閉機構の構成説明図
図7】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態の有稈錨を海底に設置する工程説明図
図8】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態の有稈錨を海底から引き揚げる工程説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状は説明のための例示であって、有稈錨の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
まず図1図4を参照して、有稈錨1(ストックアンカー)の構成について説明する。有稈錨1は、上部構造体2、中央部3、下部構造体4を備えている。下部構造体4は、上下方向(Z軸方向)の中央から左右方向に伸びる2本のアーム5を備えている。以下、2本のアーム5が伸びる方向をX軸方向と称する。2本のアーム5の先端には、それぞれ爪6が設置されている。爪6は、有稈錨1を海底に降ろして錨泊している状態で海底面に食い込む形状をしている。この例では、アーム5の先端側が尖った略三角形の板状をしている。なお、爪6の形状は、自由に設計可能である。
【0012】
下部構造体4の中央上部は、右側と左側(X軸方向の左右)からそれぞれ装着される2本の第1ボルト7によって中央部3の下部突出部3aと接続されている。この構成により、下部構造体4はX軸方向を回転軸として、中央部3に対して揺動する(図4の矢印c)。すなわち、2本のアーム5は、中央部3の下部(下部突出部3a)に一の方向(X軸方向)の軸回りに揺動可能に接続された下部構造体4に形成されている。
【0013】
上部構造体2は、左右の2枚の側板8と、2枚の側板8を上部で接続する横板9を備えて構成されている。横板9の上面には、鎖11と接続される接続部10が設置されている。上部構造体2の左右の側板8の下部は、右側と左側(X軸方向の左右)からそれぞれ装着される2本の第2ボルト12によって中央部3の上部突出部3bと接続されている。この構成により、上部構造体2はX軸方向を回転軸として中央部3に対して揺動する(図4の矢印d)。上部構造体2において、2枚の側板8と横板9に囲まれた空間は、上下に移動する上部シャフト21と干渉しない逃がし空間2aを構成する。
【0014】
このように、上部構造体2は、上端(接続部10)が鎖11に接続され、下端(2枚の側板8の下部)が中央部3の上部(上部突出部3b)に一の方向(X軸方向)の軸回りに揺動可能に接続されている。これにより、中央部3に対して上部構造体2が自在に回動し、有稈錨1を船上から海中に投下する投下作業(投錨)、および海中から船上に引き揚げる引き揚げ作業(揚錨)を容易に行うことができる。また、有稈錨1が海底に着底して横倒しとなり、爪6およびストック27(先鋭部28)を海底に突き立てた錨泊状態において、鎖11の揺れを上部構造体2が回動して吸収することで、錨泊状態を良好に維持することができる(図8(a)参照)。
【0015】
上部構造体2、中央部3、下部構造体4の内部には、ストック開閉機構20が配置されている。ここで、図5図6を参照して、ストック開閉機構20の構成について説明する。ストック開閉機構20は、金属などの硬質の棒状の材料から構成される上部シャフト21、中央シャフト22、下部シャフト23を備えている。下部シャフト23の下端には、重り24が一体的に接続されている。重り24は、略球形の金属などの重くて硬質の材料から構成されている。下部シャフト23の上端は、X軸方向の第1ピン25によって中央シャフト22の下端と接続されている。この構成により、下部シャフト23はX軸方向を回転軸として中央シャフト22に対して揺動する。
【0016】
中央シャフト22の上部には、水平面内でX軸方向に直交する方向(Y軸方向)の前側と後側に延出する2つのシャフト接続部22aが形成されている。2つのシャフト接続部22aには、X軸方向の第2ピン26によってY軸方向に伸びるストック27の一端がそれぞれ接続されている。この構成により、2本のストック27はX軸方向を回転軸として中央シャフト22に対して回動する。ストック27において、シャフト接続部22aと接続された一端とは反対側の先端には、先鋭部28が配置されている。先鋭部28は、有稈錨1を海底に降ろして錨泊している状態で海底面に食い込む形状をしている。この例では、先端側が尖った略四角錐の形状をしている。なお、ストック27の先端に先鋭部28を配置する代わりに、ストック27の先端の形状を四角錐などの先端側が尖った形状に加工するようにしてもよい。
【0017】
上部シャフト21の下端は、Y軸方向の第3ピン29によって中央シャフト22の上端と接続されている。この構成により、上部シャフト21はY軸方向を回転軸として中央シャフト22に対して揺動する。
【0018】
図5において、下部構造体4の中央には上下に貫通する下部貫通孔4aが、中央部3の下部には上下に貫通する中央下部貫通孔3cが、中央部3の上部には上下に貫通する中央上部貫通孔3dがそれぞれ形成されている。下部貫通孔4aには中央シャフト22と下部シャフト23が、中央下部貫通孔3cには中央シャフト22と下部シャフト23が、中央上部貫通孔3dには上部シャフト21と中央シャフト22がそれぞれ上下に移動可能に配置される。
【0019】
下部構造体4の中央の下面には、重り24の上面の形に対応する曲面を有する重り係止面4bが形成されている。下部構造体4に対して重り24が最も離れた位置から(図5(a)の状態)、距離Hだけ下部構造体4に対して移動すると、重り24の上面が重り係止面4bに当接して停止する(図5(b)の状態)。以下、重り24が下部構造体4に対して最も離れた位置を「最下点PL」と称し、重り24が重り係止面4bに当接している位置を「最上点PH」と称する。重り24が最下点PLと最上点PHの間を上下に移動すると、上部シャフト21、中央シャフト22、下部シャフト23も重り24と一緒に上下に移動する。このように、下部構造体4の下面には、最上点PHにある重り24が当接する重り係止面4bが形成されている。
【0020】
図5において、中央部3のY軸方向の前後の側面には、ストック27が突出する開口3eがそれぞれ形成されている。中央部3の内部には、ストック27が格納される格納空間30が形成されている。格納空間30には、重り24が最下点PLに位置する状態でシャフト接続部22aの下面が当接する水平な下部当接面30aと、ストック27の下面27aが当接する開口3eに向かって斜めに傾く斜当接面30bが形成されている。重り24が最下点PLに位置する状態で、ストック27は折り畳まれて中央部3からのはみ出し量が最も小さい収納状態となる(図5(a)の状態)。
【0021】
格納空間30には、重りが最上点PHに位置する状態でY軸方向に水平に開いたストック27の下面27aが当接する中部当接面30cと、シャフト接続部22aの上面が当接する水平な上部当接面30dが形成されている。この例では、中部当接面30cは開口3eの下辺と一致している。重り24が最上点PHに位置する状態で、ストック27はY軸方向に水平に開いた展開状態となる(図5(b)の状態)。重り24が重り係止面4bに当接し、ストック27の下面27aが中部当接面30cの当接し、シャフト接続部22aの上面が上部当接面30dに当接することで、ストック27の展開状態が良好に維持される。
【0022】
図5(a)において、重り24が最下点PLに位置する収納状態では、中央シャフト22が中央部3と下部構造体4を跨ぐ位置にあるため、下部構造体4は中央部3に対して揺動することができない。図5(b)において、重り24が最上点PHに位置する展開状態では、中央シャフト22と下部シャフト23を接続する第1ピン25の位置が、中央部3と下部構造体4を接続する第1ボルト7の位置と一致する。そのため、下部シャフト23は下部構造体4と一体となり、中央シャフト22は中央部3と一体となり、X軸方向を回転軸として揺動することができる(図4の矢印c)。
【0023】
このように、シャフト(中央シャフト22、下部シャフト23)は、重り24が最上点PHにある展開状態で、中央部3と下部構造体4と一体となって揺動可能な接続点(第1ピン25)を有している。展開状態で中央部3のストック27(先鋭部28)および下部構造体4のアーム5と爪6が自在に回動することにより、有稈錨1が海底に錨泊する際に、海底の凹凸形状に応じて爪6およびストック27(先鋭部28)を適切に海底に突き立てることができる(図7(c)参照)。
【0024】
また、上部シャフト21と中央シャフト22は第3ピン29によってY軸方向を回転軸として相互に揺動可能に接続することにより、中央シャフト22のZ軸方向に沿った上下移動に対してX軸方向とY軸方向にも多少動ける余裕(遊び)が付加される。これにより、中央シャフト22の上下移動に合わせて2本のストック27を滑らかに回動、収納することができる。
【0025】
上記説明したように、有稈錨1は、上下に貫く貫通孔(中央下部貫通孔3c、中央上部貫通孔3d)を中心に有する中央部3と、中央部3の下方に位置し、一の方向(X軸方向)の両側(左右)にそれぞれ伸びて先端に爪6を有する2本のアーム5と、2本のアーム5の下方に位置し、最下点PLと最上点PHの間を上下に移動する重り24と、少なくとも一部は貫通孔の中に配置され、下端が重り24の上部に接続されたシャフト(上部シャフト21、中央シャフト22、下部シャフト23)と、中央部3の内部でシャフトとシャフト接続部22aを介して接続され、一の方向の軸回りに回動して中央部3の一の方向と直交する方向(Y軸方向)の両側に形成された開口3eからそれぞれ突出する2本のストック27と、を備えている。
【0026】
そして、重り24が最下点PLにある状態で2本のストック27は折り畳まれ(図5(a))、重り24が最上点PHにある状態で2本のストック27は展開する(図5(b))。すなわち、図4に示すように、重り24が2点鎖線で示す最下点PLにある状態から2本のアーム5(下部構造体4)に対して相対的に上昇し(矢印a)、実線で示す最上点PHに到達する間に、2本のストック27が2点鎖線で示す折り畳まれて中央部3に収納されている収納状態から回動し(矢印b)、実線で示す水平に開いた展開状態となるように展開する。
【0027】
図3において、重り24が最上点PHにある展開状態において、重り24の下端は2本のアーム5(下部構造体4)の最下面より距離Lだけ下方に位置している。すなわち、重り24が最上点PHにある状態で、重り24の少なくとも一部は2本のアーム5より下方に突出している。これにより、海底に着底して展開状態となった有稈錨1が錨泊するために海底に向けて横倒しとなっても、展開状態を良好に維持することができる(図7(c)参照)。
【0028】
次に図7を参照して、有稈錨1を船上から海中に投下する投下作業(投錨)の工程について説明する。ここでは、海中を下降する有稈錨1が錨泊状態となるまでの工程について説明する。図7(a)において、船上から鎖11に繋がれて海中に投下された有稈錨1は、重り24が重力により下方に引かれて最下点PLに位置することで、2本のストック27を中央部3に収容した収容状態で海底Bに向けて降下する(矢印e1)。有稈錨1を船上から投下する際も、2本のストック27は収容状態であるため、ストック27が船体に干渉することなく投下作業を容易に行うことができる。
【0029】
図7(b)において、重り24が海底Bに着底した後、さらに鎖11を降ろすと、上部構造体2、中央部3、下部構造体4は一体となって下降する(矢印e2)。これにより、重り24が下部構造体4に対して最上点PHまで相対的に上昇し(矢印f)、2本のストック27が水平に展開する展開状態となる(矢印g)。
【0030】
図7(c)において、展開状態となってからさらに鎖11を降ろすと(矢印e3)、有稈錨1は海底Bに向けて横倒しとなり、爪6およびストック27(先鋭部28)が海底に突き立てられた錨泊状態となる。その過程において、中央部3は下部構造体4に対して相対的に回動し(矢印h)、上部構造体2は中央部3に対して相対的に回動する(矢印i)ことにより、海底Bの凹凸形状に応じて爪6およびストック27を適切に海底に突き立てることができる。
【0031】
次に図8を参照して、有稈錨1を海中から船上に引き揚げる引き揚げ作業(揚錨)の工程について説明する。ここでは、海底Bで錨泊状態となっている有稈錨1(図8(a))を海底Bから持ち上げるまでの工程について説明する。図8(b)において、有稈錨1に繋がれた鎖11を船上に向けて上方に引き上げると(矢印j1)、海底Bに横倒しとなっていた有稈錨1は展開状態のままで上部構造体2が上になるように立ち上がる。
【0032】
図8(c)において、さらに鎖11を上方に引き上げると(矢印j2)、海底Bに着底していた重り24が海底Bから離れる。これにより、重り24は重力により下方に引かれて下部構造体4に対して最下点PLまで相対的に下降し(矢印k)、2本のストック27は中央部3に収容される(矢印m)。その後、有稈錨1は収容状態で船上まで引き上げられる。
【0033】
有稈錨1が水面から引き揚げられて船上に回収される間も2本のストック27は収容状態であるため、ストック27または先鋭部28が船体と干渉して引っ掛かったり、船体に傷をつけたりすることもなく、引き揚げ作業を容易に行うことができる。また、船の側面から船上(甲板)の間にホースパイプが配置されている場合、収容状態の有稈錨1は上部構造体2と中央部3をホースパイプ内に収容することができ、さらにホースパイプの内壁を傷つけることもない。
【0034】
上記説明したように、本実施の形態の有稈錨1は、2本のストック27を中央部3に収容した収容状態で船上から海中に投下され、また、海中から引き揚げられる。そのため、2本のストック27が船体等に干渉することなく投下作業および引き揚げ作業を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
船上からの投下作業および引き揚げ作業を容易に行うことができる有稈錨を提供する。
【符号の説明】
【0036】
1 有稈錨
2 上部構造体
3 中央部
3c 中央下部貫通孔(貫通孔)
3d 中央上部貫通孔(貫通孔)
3e 開口
4 下部構造体
4b 重り係止面
5 アーム
6 爪
11 鎖
21 上部シャフト(シャフト)
22 中央シャフト(シャフト)
23 下部シャフト(シャフト)
24 重り
25 第1ピン(接続点)
27 ストック
PH 最上点
PL 最下点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8