(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102100
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220630BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20220630BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/02 A
H03H9/17 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216632
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山内 基
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097BB11
5J097BB15
5J097DD29
5J097EE08
5J097FF01
5J097FF03
5J097FF05
5J097GG02
5J097HA04
5J097HA07
5J097HA08
5J097JJ03
5J097JJ09
5J097KK09
5J097KK10
5J108AA03
5J108AA07
5J108BB02
5J108BB08
5J108CC11
5J108DD01
5J108DD06
5J108FF05
5J108GG03
5J108GG15
5J108GG16
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】封止層の基板からの剥がれを抑制すること。
【解決手段】電子部品100は、平面視して略矩形の基板10と、基板10上に実装され、弾性波素子32を有するデバイスチップ30と、基板10の周縁に沿ってデバイスチップ30を囲むように基板10上に設けられ、基板10よりも線膨張係数が大きい封止層15と、封止層15上に設けられ、封止層15と共に弾性波素子32を封止し、封止層15よりも線膨張係数が大きい封止部材36と、基板10の内部に封止層15から離れ且つ基板10の平面視方向で封止層15のデバイスチップ30側の端に少なくとも一部が重なるように封止層15の下に設けられ、基板10を平面視したときの4辺のうち少なくとも1辺に沿って設けられ、基板10と封止部材36の間の線膨張係数を有する内部層21とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視して略矩形の基板と、
前記基板上に実装され、素子を有するデバイスチップと、
前記基板の周縁に沿って前記デバイスチップを囲むように前記基板上に設けられ、前記基板よりも線膨張係数が大きい封止層と、
前記封止層上に設けられ、前記封止層と共に前記素子を封止し、前記封止層よりも線膨張係数が大きい封止部材と、
前記基板の内部に前記封止層から離れ且つ前記基板の平面視方向で前記封止層の前記デバイスチップ側の端に少なくとも一部が重なるように前記封止層の下に設けられ、前記基板を平面視したときの4辺のうち少なくとも1辺に沿って設けられ、前記基板と前記封止部材の間の線膨張係数を有する内部層と、を備える電子部品。
【請求項2】
前記内部層は、前記基板を平面視したときの4辺に沿って環状に設けられる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記内部層は、前記基板よりも前記封止層に近い線膨張係数を有する、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記封止層と前記内部層は、同じ材料を主成分とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記内部層の前記デバイスチップ側の側面は、前記基板の平面視方向で前記封止層の前記デバイスチップ側の側面と略一致する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記内部層の前記デバイスチップ側の側面は、前記封止層の前記デバイスチップ側の側面よりも前記デバイスチップ側に位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記内部層の厚さは、前記封止層の厚さの0.5倍以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記封止層と前記内部層の間隔は、前記封止層の厚さの3倍以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記基板はセラミック基板であり、
前記封止部材ははんだである、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記デバイスチップは、空隙を介し前記基板と向かい合う面に前記素子である弾性波素子を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に素子を有するデバイスチップが実装され、デバイスチップを囲んで基板上に設けられた封止層と封止層上に設けられた封止部材とにより素子が封止された電子部品が知られている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-157922号公報
【特許文献2】特開2017-204544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封止層と基板との間に熱応力などの応力が加わると、封止層が基板から剥がれることがある。封止層が基板から剥がれると、素子の封止性が劣化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、封止層の基板からの剥がれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平面視して略矩形の基板と、前記基板上に実装され、素子を有するデバイスチップと、前記基板の周縁に沿って前記デバイスチップを囲むように前記基板上に設けられ、前記基板よりも線膨張係数が大きい封止層と、前記封止層上に設けられ、前記封止層と共に前記素子を封止し、前記封止層よりも線膨張係数が大きい封止部材と、前記基板の内部に前記封止層から離れ且つ前記基板の平面視方向で前記封止層の前記デバイスチップ側の端に少なくとも一部が重なるように前記封止層の下に設けられ、前記基板を平面視したときの4辺のうち少なくとも1辺に沿って設けられ、前記基板と前記封止部材の間の線膨張係数を有する内部層と、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記内部層は、前記基板を平面視したときの4辺に沿って環状に設けられる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記内部層は、前記基板よりも前記封止層に近い線膨張係数を有する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記封止層と前記内部層は、同じ材料を主成分とする構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記内部層の前記デバイスチップ側の側面は、前記基板の平面視方向で前記封止層の前記デバイスチップ側の側面と略一致する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記内部層の前記デバイスチップ側の側面は、前記封止層の前記デバイスチップ側の側面よりも前記デバイスチップ側に位置する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記内部層の厚さは、前記封止層の厚さの0.5倍以上である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記封止層と前記内部層の間隔は、前記封止層の厚さの3倍以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記基板はセラミック基板であり、前記封止部材ははんだである構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記デバイスチップは、空隙を介し前記基板と向かい合う面に前記素子である弾性波素子を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、封止層の基板からの剥がれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る電子部品の断面図、
図1(b)は、封止層付近を拡大した断面図、
図1(c)は、基板の平面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、実施例1における弾性波素子の例を示す平面図及び断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5】
図5(a)は、実施例1の変形例1における基板の平面図、
図5(b)は、実施例1の変形例2における基板の平面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施例2に係る電子部品の断面図、
図6(b)は、封止層付近を拡大した断面図、
図6(c)は、基板の平面図である。
【
図7】
図7(a)は、実施例3に係る電子部品の断面図、
図7(b)は、封止層付近を拡大した断面図、
図7(c)は、基板の平面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係る電子部品の断面図である。
【
図9】
図9は、比較例に係る電子部品で生じる課題を示す断面図である。
【
図10】
図10は、シミュレーションに用いたモデルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0019】
図1(a)は、実施例1に係る電子部品の断面図、
図1(b)は、封止層付近を拡大した断面図、
図1(c)は、基板の平面図である。
図1(c)では、基板10と封止層15と内部層21を図示している。
図1(a)から
図1(c)のように、実施例1の電子部品100は、基板10上に1又は複数のデバイスチップ30が実装されている。基板10は複数の絶縁層11aから11dを備える。絶縁層11aから11dは、例えばLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)又はHTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミックス層若しくはガラスエポキシ樹脂などの樹脂層である。
【0020】
基板10の下面に端子14が設けられている。絶縁層11aと11bの間及び絶縁層11bと11cの間に金属層12aが設けられ、絶縁層11cと11dの間に内部層21が設けられている。絶縁層11d上に金属層12bが設けられている。絶縁層11aから11dにはビア配線13が設けられている。金属層12a及び12b、内部層21、ビア配線13、及び端子14は、例えば銅層、アルミニウム層、金層、又はタングステン層などの金属層である。
【0021】
基板10上に実装されたデバイスチップ30は、基板31と、基板31の下面に設けられた弾性波素子32及び配線33と、を備える。配線33は、例えば銅層、アルミニウム層、又は金層などの金属層である。デバイスチップ30は、バンプ34を介して基板10にフリップチップ実装(フェースダウン実装)されている。バンプ34は、金属層12bと配線33とを接合する。バンプ34は、例えば金バンプ、はんだバンプ、又は銅バンプである。
【0022】
基板10は平面視して略矩形であり、基板10上に基板10の周縁に沿ってデバイスチップ30を囲む封止層15が設けられている。略矩形には、角部が丸みを帯びている場合や各辺が湾曲している場合などが含まれる。封止層15は、例えば平面視したときの基板10の4辺に沿って環状に設けられ、デバイスチップ30を完全に囲んでいる。なお、封止層15は、デバイスチップ30を完全に囲む場合に限られず、一部で途切れていてもよい。封止層15は、基板10よりも線膨張係数の大きい部材で形成され、例えば銅を主成分とする金属で形成されている。
【0023】
内部層21は、例えば平面視したときの基板10の4辺に沿って環状に設けられている。内部層21は、封止層15から離れて設けられている。内部層21は、デバイスチップ30側の側面17が封止層15のデバイスチップ30側の側面19よりもデバイスチップ30側に位置し、かつ、デバイスチップ30とは反対側の側面18が封止層15のデバイスチップ30とは反対側の側面20よりもデバイスチップ30側に位置する。したがって、内部層21は、基板10を平面視したとき、封止層15のデバイスチップ30側の端に少なくとも一部が重なって設けられている。内部層21は、基板10と封止部材36との間の線膨張係数を有する部材で形成される。内部層21は、例えば基板10よりも封止層15に近い線膨張係数を有する部材で形成され、例えば封止層15と同じ金属を主成分として形成される。内部層21と封止層15の間隔Dは、例えば1μm~70μmである。内部層21の厚さTは、例えば5μm~50μmであり。内部層21の幅Wは、例えば封止層15の幅と略同じであり、例えば50μm~300μmである。
【0024】
封止層15上にデバイスチップ30を囲むように封止部材36が設けられている。封止部材36は、例えばデバイスチップ30を完全に囲むように設けられている。封止部材36は、封止層15よりも線膨張係数の大きい部材で形成され、例えば錫を含むはんだで形成されている。封止部材36は例えば封止層15の上面に接合する。デバイスチップ30の上面及び封止部材36の上面に平板状のリッド37が設けられている。リッド37は、例えばコバール板などの金属板又は絶縁板である。リッド37、封止部材36、及び封止層15を覆うように保護膜38が設けられている。保護膜38は、例えばニッケルなどの金属膜又は絶縁膜である。
【0025】
弾性波素子32は、空隙16を介して基板10に向かい合っている。弾性波素子32は、封止層15、封止部材36、リッド37、及び基板10により空隙16内に封止されている。バンプ34は空隙16に囲まれている。端子14は、ビア配線13、金属層12a及び12b、バンプ34、及び配線33を介し弾性波素子32に電気的に接続されている。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)は、実施例1における弾性波素子の例を示す平面図及び断面図である。
図2(a)のように、弾性波素子32は弾性表面波共振器であってもよい。基板31は圧電基板であり、基板31上にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器41が設けられている。IDT40は、対向する1対の櫛型電極42を有する。櫛型電極42は、複数の電極指43と、複数の電極指43を接続するバスバー44と、を有する。反射器41は、IDT40の両側に設けられている。IDT40は、圧電基板である基板31に弾性表面波を励振する。反射器41は、弾性表面波を反射する。
【0027】
IDT40及び反射器41は、例えばアルミニウム膜又は銅膜により形成される。基板31上にIDT40及び反射器41を覆う保護膜又は温度補償膜が設けられていてもよい。基板31は、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、水晶基板、又はシリコン基板などの支持基板上に直接又は間接的に接合されていてもよい。
【0028】
図2(b)のように、弾性波素子32は圧電薄膜共振器であってもよい。基板31上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極45及び上部電極47が設けられている。下部電極45と基板31との間に空隙48が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極45と上部電極47とが対向する領域が共振領域49である。共振領域49において、下部電極45及び上部電極47は圧電膜46内に厚み縦振動モードの弾性波を励振する。
【0029】
基板31は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板、又はシリコン基板である。下部電極45及び上部電極47は、例えばルテニウム膜などの金属膜である。圧電膜46は、例えば窒化アルミニウム膜である。なお、空隙48の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。
【0030】
図2(a)及び
図2(b)のように、弾性波素子32は弾性波を励振する電極を含む。このため、
図1(a)のように、弾性波の励振が妨げられないよう、弾性波素子32は空隙16に覆われている。
【0031】
なお、封止層15及び封止部材36をグランド電位とする場合には、封止層15を基板10内のビア配線13及び内部層21などを介して基板10の下面のグランド用の端子14に電気的に接続させればよい。
【0032】
[製造方法]
図3(a)から
図4は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す断面図である。
図3(a)のように、基板10を準備する。基板10は、積層された絶縁層11aから11dと、絶縁層11aと11bの間及び絶縁層11bと11cの間に設けられた金属層12aと、絶縁層11cと11dの間に設けられた内部層21と、絶縁層11dの上面に設けられた金属層12b及び封止層15と、絶縁層11aから11dに設けられたビア配線13と、絶縁層11aの下面に設けられた端子14と、を備える。
【0033】
図3(b)のように、基板10上にバンプ34を介しデバイスチップ30をフリップチップ実装する。これにより、基板10と弾性波素子32とは空隙16を挟み対向する。
【0034】
図4のように、下面に例えば錫銀からなるはんだ板を形成したリッド37を基板31上に配置する。はんだを加熱し溶融させ、リッド37を基板31の方向に押圧する。封止層15の上面ははんだに対して濡れ性が良いため、溶融したはんだは封止層15の上面を濡れ広がって封止層15に接合する。これにより、デバイスチップ30を囲んで封止層15に接合する封止部材36が形成される。
【0035】
リッド37、封止部材36、封止層15、及び基板10を切断して電子部品を個片化した後、封止層15、封止部材36、及びリッド37を覆う保護膜38を形成する。これにより、
図1(a)から
図1(c)の電子部品100が形成される。
【0036】
[実施例1の変形例]
図5(a)は、実施例1の変形例1における基板の平面図、
図5(b)は、実施例1の変形例2における基板の平面図である。
図5(a)及び
図5(b)では、基板10と封止層15と内部層21を図示している。
図5(a)のように、実施例1の変形例1の電子部品110では、内部層21は基板10を平面視したときの4辺のうち2辺(例えば対向する2辺)に沿って設けられている。
図5(b)のように、実施例1の変形例2の電子部品120では、内部層21は基板10を平面視したときの4辺のうち1辺に沿って設けられている。実施例1の変形例1及び変形例2のその他の構成は実施例1と同じであるため図示及び説明を省略する。
実施例2においても、内部層21は、実施例1の変形例1及び変形例2と同じように、基板10を平面視したときの4辺のうち2辺に沿って設けられてもよいし、1辺に沿って設けられてもよい。