(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102105
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】缶容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20220630BHJP
B65D 8/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B65D25/20 N
B65D8/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216639
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵喜
(72)【発明者】
【氏名】深堀 厚
(72)【発明者】
【氏名】前田 理行
(72)【発明者】
【氏名】秋本 宗一
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
(72)【発明者】
【氏名】山口 恵介
【テーマコード(参考)】
3E061
3E062
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB06
3E061AB08
3E061AB12
3E062AA04
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA07
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB22
3E062JC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】缶体が凹凸を有する場合等、直接印刷が比較的難しい条件においても缶体に絵柄等を付与することができ、様々な絵柄等を有する缶容器の生産性を向上する。
【解決手段】缶容器10の構造は、筒状の缶体、及び、缶体の外周面の少なくとも一部を被覆し、2枚の樹脂フィルムで電子写真画像層を挟んだ構造を有し、2枚の樹脂フィルムのうちの一方又は両方は、PETフィルムであり、印刷ラベルは、PETフィルム、プライマー層、電子写真画像層、接着層、及びPETフィルム、の順で含む構造とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の缶体、及び、
前記缶体の外周面の少なくとも一部を被覆し、2枚の樹脂フィルムで電子写真画像層を挟んだ構造を有する印刷ラベルを備える、
缶容器。
【請求項2】
前記2枚の樹脂フィルムのうちの一方又は両方は、PETフィルムである、
請求項1に記載の缶容器。
【請求項3】
前記印刷ラベルは、
PETフィルム、
プライマー層、
電子写真画像層、
接着層、及び
PETフィルム、
をこの順で含む構造を有する、
請求項2に記載の缶容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の缶容器の製造方法であって、
前記缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するように、2枚の樹脂フィルムで電子写真画像層を挟んだ構造を有する印刷ラベルを貼り付けるラベル貼付ステップを備える、
缶容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
缶体に直接インクジェットヘッドで印刷を行い、画像を形成することが知られている(特許文献1)。
[特許文献1]特開2019-108138号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、筒状の缶体、及び、缶体の外周面の少なくとも一部を被覆し、2枚の樹脂フィルムで電子写真画像層を挟んだ構造を有する印刷ラベルを備える、缶容器を提供する。
【0004】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本実施形態における、缶容器10の一例を示す。
【
図2】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態の缶容器10のドライ成形による製造方法のフローの一例を示す。
【
図4】本実施形態における、S100のドライ成形のサブフローの一例を示す。
【
図5】本実施形態における、S300の印刷ラベル製造のサブフローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0007】
図1は、本実施形態における、缶容器10の一例を示す。缶容器10は、電子写真印刷により絵柄等が形成される。缶容器10は、蓋部100、胴部200、及び、底部300を備える。
【0008】
蓋部100は、缶容器10の一端に設けられる。蓋部100の上面は内容物が充填できるように開放されている。蓋部100には、内容物が充填された後、飲み口等を含む蓋が設置され、巻締等により固定されてよい。蓋部100は、胴部200側から端部方向に向かうにつれて外径が縮小された縮径部を有してもよい。
【0009】
胴部200は、蓋部100と底部300の間に位置し、缶容器10の大部分を占める。胴部200は、缶容器10の長軸方向において、外径がほぼ一定であってよい。胴部200には、電子写真印刷による文字、記号、繰り返しパターン、デザインパターン、及び、絵柄(「絵柄等」ともいう)が設けられる。
図1の例では、胴部200には、絵柄400及び文字500が印刷されている。
【0010】
底部300は、缶容器10の他端側に設けられ、ドーム状に成形される。底部300は縦置きされた缶容器10を自立可能にする。底部300は、外径が一定であってもよいし、縮径されていてもよい。
【0011】
図1に示す缶容器10は典型的には飲料缶用の缶であってよいが、これに限定されない。例えば、缶容器10は、食品、油が封入される缶詰、一斗缶等の食品缶、又は、薬品、試薬、工業製品等が封入される工業缶等であってよい。
図1に示した蓋部100、胴部200、及び底部300の形状は飲料缶の一例であり、これに限定されない。また、缶容器10は、内容物が充填される前のものに限られず、内容物が充填された後のもの及び内容物が消費された後の空き缶も含んでよい。
【0012】
図2は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。例えば、缶容器10は、缶胴部200において、
図2に示す層構成を有してもよい。これに加えて、缶容器10は、蓋部100及び/又は底部300の側面においても、
図2に示す層構成を有してもよい。
【0013】
缶容器10は、缶体20、印刷ラベル30、及び、接着層40を有する。缶容器10に充填された内容物は、缶体20側(図面下側)に位置する。缶容器10は、印刷ラベル30側(図面上側)で外気に接する。以下、缶体20側を内面と言い、印刷ラベル30側を外周面とも言う。
【0014】
缶体20は、缶容器10の基礎となる構造であり、缶容器10に十分な強度を与える。缶体20は、筒状に形成される。缶体20は、シームレス缶または溶接缶により形成されてよい。缶体20の表面は平滑であってもよく、又は凹凸(例えば、ビード加工、エンボス加工及び/又はダイヤモンドカット等)が設けられてもよい。缶体20の材質は、アルミニウム缶、スチール缶、又は他の金属であってよい。缶体20は、表面処理(例えば、酸化皮膜処理)がされていてもよい。また、缶体20は金属の外側表面にフィルムが貼り付けられた構造であってもよい。
【0015】
印刷ラベル30は、絵柄等が印刷されたフィルム状の部材であり、缶体20の外周面の少なくとも一部を被覆する。これにより、印刷ラベル30は、缶体20が直接印刷されなくても、缶容器10に絵柄等を付与する。
【0016】
印刷ラベル30は、缶体20の胴部200の一部又は全体に設けられてよい。印刷ラベル30は、缶体20の蓋部100の一部又は全部に設けられてよい。印刷ラベル30は、缶体20の底部300の一部又は全部に設けられてよい。
【0017】
印刷ラベル30は、2枚の樹脂フィルム32、36で電子写真画像層34を挟んだ構造を有する。例えば、印刷ラベル30は、樹脂フィルム32、プライマー層33、電子写真画像層34、接着層35及び樹脂フィルム36をこの順で含む構造であってよい。一例では、樹脂フィルム32が外周面側に位置し、樹脂フィルム36が内面側に位置するが、この逆でもよい。このような構造を有する印刷ラベルは公知の方法で形成してもよい。例えば、特表2018-530478号公報に記載の方法により印刷ラベルを形成してもよい。
【0018】
樹脂フィルム32は、印刷ラベル30において樹脂フィルム36とともに電子写真画像層34を保護する。樹脂フィルム32は印刷ラベル30の外周面側に配置され、電子写真画像層34を物理的なダメージから保護する。また、缶容器10が飲料缶や食品缶である場合、殺菌消毒のためにレトルト処理が行われる。このような場合に、樹脂フィルム32は、電子写真画像層34が水分と触れることを防ぐ。
【0019】
樹脂フィルム32は、透明フィルムであってよい。例えば、樹脂フィルム32は、透明バリアフィルムとして使用可能なフィルムであってよい。一例として、樹脂フィルム32は、延伸ポリプロピレン(PP)、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は、延伸ナイロンフィルムであってよい。特に樹脂フィルム32はPETフィルムであることが好ましい。例えば、2枚の樹脂フィルム32のうちの一方又は両方が、PETフィルムであることが好ましい。
【0020】
また、樹脂フィルム32は、表面処理されたものであってよい。例えば、樹脂フィルム32は、コロナ処理されたフィルムであってよい。コロナ処理により樹脂フィルム32と電子写真画像層34の密着性を向上することができる。樹脂フィルム32の厚さは、1~100μmの範囲であってよく好ましくは5~50μmであってよい。
【0021】
プライマー層33は、電子写真画像層34の下地として形成される。プライマー層33は、アミン官能基、ポリオール官能基、カルボキシル官能基等の感応性官能基を有する樹脂であって良い。プライマー層33は、これらの官能基が反応して架橋された構造を有してよい。
【0022】
例えば、プライマー層33は、ヒドロキシル含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂、アミン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル、ポリウレタンから選択される1つ又は2種類以上の組み合わせからなる樹脂又はこのような樹脂を主成分とするものであってよい。
【0023】
電子写真画像層34は、電子写真印刷で用いられるトナーから形成された層であってよい。一例として、電子写真画像層34は、樹脂成分及び顔料を含む。電子写真画像層34は、ワックス等の他の添加剤由来成分を含んでもよい。
【0024】
電子写真画像層34は、単色の絵柄等が印刷された層又は複数色の絵柄等が電子写真印刷された層であってよい。電子写真画像層34は、複数層からなるものであってよい。例えば、電子写真画像層34は、第1層及び第2層の2層からなるものであってよい。
【0025】
電子写真画像層34の厚さは、0.5μm以上100μm以下であってよい。好ましくは、電子写真画像層34の厚さは、1μm以上5μm以下であってよい。
【0026】
接着層35は、架橋剤を含み、プライマー層33及び電子写真画像層34を架橋させることにより、印刷ラベル30全体を強固に接着させる層であってよい。
図2等では、便宜的に接着層35を、プライマー層33及び電子写真画像層34と別の層として記載しているが、これらに限られない。例えば、接着層35は他の層と明確に分離されておらず、プライマー層33及び/又は電子写真画像層34の中に少なくとも部分的に含まれるものであってもよい。接着層35の組成は後述する架橋剤を含むものであってよい。これに代えて、接着層35は、後述する接着層40と同様のものを採用してもよい。
【0027】
樹脂フィルム36は、樹脂フィルム32とともに電子写真画像層34を保護する。樹脂フィルム36は印刷ラベル30の内面側に配置される。樹脂フィルム36は、樹脂フィルム32と同様のものであってよい。
【0028】
接着層40は、印刷ラベル30を缶体20に接着する。接着層40は、硬化された接着剤または硬化された半硬化フィルム等であってよい。例えば、接着層40は、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤又はエポキシ樹脂系接着剤を硬化したものであってよい。
【0029】
本実施形態によれば、缶体20に直接印刷するのではなく、2枚の樹脂フィルム32、36で電子写真画像層34を挟んだ構造を有する印刷ラベル30を活用して、缶容器10に絵柄等を付与する。これにより、缶体20に直接印刷するよりも絵柄等の印刷が容易になり、缶容器10の成形と並行して絵柄等の準備を行えるので、様々な絵柄等を有する缶容器10の生産性を向上することができる。また、缶体20が凹凸を有する場合等、直接印刷が比較的難しい条件においても缶体20に絵柄等を付与することができる。更に電子写真画像層34が両面から樹脂フィルム32、36で保護されるのでレトルト処理等の加熱時にも熱や水分で絵柄が劣化したり剥離することが防ぐことができる。
【0030】
図3は、本実施形態の缶容器10のドライ成形による製造方法のフローの一例を示す。本実施形態の缶容器10は、
図3のS100~S800の処理を行うことによって製造することができる。なお、説明の便宜上、S100~S800の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよい。また、一部のステップが省略されてもよい。
【0031】
まず、S100において、金属板に対してドライ成形を行う。ドライ成形は、缶体20の成形時にルブリカントを使用しない環境負荷を低減した成形方法である。次いでドライ成形の各工程について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態における、S100のドライ成形のサブフローの一例を示す。S100に係るドライ成形は、S11からS15の工程を含む。
【0032】
S11においてアンコイラを行う。具体的には、缶体20の材料となるコイル状の金属板を巻きほどいて延ばす。金属板の材料は、例えば、アルミニウムまたは鉄を主成分とするスチールであってよい。
【0033】
次に、S12においてフィルムのラミネートを行う。具体的には、S11で延ばされた金属板の片面又は両面に対して樹脂フィルムをラミネートする。ラミネートの方法は公知の方法(例えば、特開2004-25640号に記載の方法)であってよい。樹脂フィルムは、PET等のポリエステル樹脂フィルムであってよい。
【0034】
次に、S13においてカッピングプレスを行う。具体的にはS12でフィルムがラミネートされた金属板を円盤状に打ち抜く。ここで更に絞り加工を行い、カップ状の金属素材を得る。
【0035】
次に、S14においてボディメーカーを行う。具体的にはS13で得られたカップ状の金属素材に対して、絞り加工及びしごき加工を行い、周壁が一定の厚さを有し、底がドーム状となった円筒形状の缶状容器を形成する。これにより、缶容器10の胴部200及び底部300が形成される。
【0036】
次に、S15でトリマーを行う。具体的には、S14で得られた缶状容器の上部を切りそろえる。
【0037】
トリマーの後に必要に応じてウォッシャーを行ってもよい。具体的には、トリマーされた缶状容器を洗浄し、汚れ等を洗浄し、乾燥する。S100の後にS300の処理を行う。
【0038】
S300において、印刷ラベル30を製造する。印刷ラベル30の製造について
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態における、S300の印刷ラベル製造のサブフローの一例を示す。印刷ラベル30は、S310からS340の工程を行うことにより製造されてよい。例えば、印刷ラベル30の製造に用いられる材料やプロセス等は、特表2018-530478号に記載のものが用いられてよい。
【0039】
まず、S310において、樹脂フィルム32にプライマー層33を形成する。樹脂フィルム32は
図2において説明したものを用いることができる。樹脂フィルム32に、プライマー組成物を塗布する。
【0040】
プライマー層33は、塗布又は印刷により形成されてよい。プライマー層33は、樹脂フィルム32の全面又は一部に形成されてよい。プライマー組成物を、0.01~1.5g/m2の塗布量となるように樹脂フィルム32上に形成してよい。
【0041】
プライマー組成物は、プライマー樹脂を含んでよい。更に、プライマー組成物は、プライマー樹脂を少なくとも部分的に溶解する溶媒を含んでよい。プライマー樹脂は、アミン官能基、ポリオール官能基、カルボキシル官能基等の感応性官能基を有する樹脂であって良い。
【0042】
ヒドロキシル基含有樹脂は、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール(例えばEastman社のButvar)を含んでよい。カルボキシル基含有樹脂は、ポリオレフィン-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸系ポリマー、又は、ポリ乳酸系ポリマー等であってよい。アミン系樹脂は、ポリアミン、ポリエチレンイミン、又は、ポリアミド等であってよい。
【0043】
樹脂フィルム32とトナー等の密着性を向上させるために、プライマー層33の形成後又は形成前に、表面処理を施してもよい。一例として、樹脂フィルム32又はプライマー層33上にコロナ処理又はプラズマ処理等を行ってよい。
【0044】
次にS320において、プライマー層33の上に、インク組成物を用いて電子写真印刷を行い、電子写真画像層34を形成する。例えば、プライマー層33上に絵柄等を表すように印刷して形成し、必要に応じて硬化及び/又は乾燥することで印刷ラベル30を製造してよい。電子写真印刷では、レーザービーム方式又はエレクトロンビーム方式を用いてよい。例えば、HP社Indigoデジタル印刷機を用いて電子写真印刷を行ってよい。
【0045】
インク組成物は、電子写真印刷に用いられる液体トナー又は粉体トナーであってよく、特に液体トナーであることが好ましい。例えば、インク組成物は、熱可塑性樹脂、着色剤、及び、溶媒を含んでよい。
【0046】
熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、これらの単位構造を複数組み合わせた共重合体樹脂、または、これらの樹脂の組み合わせから選択されてよい。
【0047】
また、熱可塑性樹脂は、酸性側鎖基(例えば、アクリル酸基又はメタクリル酸基)を有する樹脂を含んでよい。酸性側鎖基を有する樹脂は、50mgKOH/g以上の酸価を有してよい。酸性側鎖基を有する樹脂は、10g/10分~120g/10分のメルトフローレートを有してよい。酸性側鎖基を有する樹脂は、6000~15000ポアズの溶融粘度を有してよい。
【0048】
また、熱可塑性樹脂は、エステル側鎖基を有する樹脂を含んでよい。エステル側鎖基を有する樹脂は、酸性側鎖基を更に含んでいてもよいが、酸性側鎖基を有する樹脂はエステル側鎖基を有しない。エステル側鎖基を有する樹脂は、50mgKOH/g以上の酸価を有してよい。酸性側鎖基を有する樹脂は、10g/10分~120g/10分のメルトフローレートを有してよい。
【0049】
例えば、熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリエチレンーアクリル酸共重合体、ポリプロピレンーアクリル酸共重合体、ポリエチレン-メタクリル酸共重合体、ポリプロピレン-メタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸(及びそのアルキル(例えば炭素数1~5)エステル)、ポリメタクリル酸(及びそのアルキル(例えば炭素数1~5)エステル)、ポリエチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリプロピレン-無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、(結晶性)アイソタクチックポリプロピレン、エチレンエチルアクリレートの共重合体、ポリエステル、ポリビニルトルエン、ポリアミド、スチレン-ブタジエン共重合体、エポキシ樹脂、エチレンアクリレートターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸(MAH)、グリシジルメタクリレート(GMA)ターポリマー、エチレン-アクリル酸アイオノマー、ポリエチレンービニルアセテート共重合体、またはこれらの組み合わせであって良い。
【0050】
市販されているものを例に挙げると、熱可塑性樹脂として、Nucrel403、Nucrel407、Nucrel609HS、Nucrel908HS、Nucrel1202HC、Nucrel30707、Nucrel1214、Nucrel903、Nucrel3990、Nucrel910、Nucrel925、Nucrel699、Nucrel599、Nucrel960、NucrelRX76、Nucrel2806、Bynell2002、Bynell2014、Bynell2020、Bynell2022、Honeywell社のAC-5120、AC-5180、AC-540、AC-580、Aclyn系のAclyn201、Aclyn246、Aclyn285、Aclyn295、Arkema社のLotader2210、Lotader3430、およびLotader8200が挙げられる。
【0051】
熱可塑性樹脂は、インク組成物の固形物の5~95重量%の含量で含まれてよい。
【0052】
着色剤は、染料又は顔料であってよい。インク組成物が液体トナーである場合、着色剤は溶媒と相溶性があることが望ましい。着色剤は、公知のシアン顔料/染料、マゼンタ顔料/染料、イエロー顔料/染料、およびブラック顔料/染料から選択されるものであってよい。着色剤は、インク組成物の固形物の10~80重量%の含量で含まれてよい。
【0053】
溶媒は、液体トナーとして使用される公知の有機溶媒が用いられてよい。溶媒は、常温で熱可塑性樹脂を溶解せず、少なくとも80℃以上の高温で熱可塑性樹脂を溶解するものであってよい。溶媒は、直鎖脂肪族化合物、分岐脂肪族化合物、芳香族化合物等を用いることができる。溶媒は、インク組成物中に20~99重量%の割合で含まれてよい。
【0054】
インク組成物は、必要に応じて上記に加えて添加剤を含んでよい。例えば、インク組成物は、添加剤として、ワックス、帯電剤、帯電助剤、分散剤、界面活性剤、殺菌剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び、保存剤等から選択される1又は複数を更に含んでよい。
【0055】
次にS330において、電子写真画像層34の上に接着層35を形成する。接着層35は、接着組成物を電子写真画像層34の上に塗布又は印刷することにより形成されてよい。接着組成物は、電子写真画像層34の全面又は一部に形成されてよい。
【0056】
接着組成物は、架橋剤を含んでよい。架橋剤は、プライマー層33のプライマー樹脂を架橋するものであってよい。これに代えて/加えて架橋剤は、電子写真画像層34の熱可塑樹脂を架橋するものであってよい。更に架橋剤は、プライマー樹脂と熱可塑性樹脂を相互に架橋するものであってもよい。
【0057】
架橋剤は、カルボキシル官能基および/またはアミン官能基に対して反応性のあるものであってよい。架橋剤は、カルボキシル官能基、アミン官能基、ポリオール官能基等の反応性官能基を有する化合物であってよい。一例として、架橋剤は、エポキシド、アジリジン、イソシアネート、無水マレイン酸、有機金属錯体、有機金属錯体イオン、オルガノシラン、エポキシオルガノシラン、カルボジイミド、アルデヒド、ケトン、アセチルアセトネート、又はこれらの組み合わせから選択されてよい。架橋剤は、接着組成物の0.1~20重量%の範囲で含んでよい。
【0058】
例えばインク組成物の熱可塑性樹脂および/またはプライマー樹脂がカルボキシル官能基を含む場合、架橋剤は、エポキシド、有機金属錯体、有機金属錯体イオン、アジリジン、オルガノシラン、エポキシオルガノシラン、カルボジイミド、イソシアネート、アセチルアセトネート又はこれらの組み合わせから選択されてよい。
【0059】
例えばインク組成物の熱可塑性樹脂および/またはプライマー樹脂がアミン官能基を含む場合、架橋剤は、エポキシド、アジリジン、イソシアネート、カルボジイミド、アルデヒド、ケトン、アセチルアセトネート、イソチオシアネート、アシルアジド、NHSエステル、スルホニルクロリドグリオキサール、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、無水マレイン酸系架橋剤、無水グルタル酸または無水フタル酸等の酸無水物、ポリアクリル酸無水物またはポリメタクリル酸無水物等のポリ無水物、アセトアセトキシエチルメタクリレート等のアセチルアセトネート、イソシアネートアルキルオルガノシラン、エポキシオルガノシラン、トリメチルアミノプロピルシラン等のオルガノシラン、又はこれらの組み合わせから選択されてよい。
【0060】
例えばインク組成物の熱可塑性樹脂が酸性側鎖基を有し、プライマー樹脂がポリエチレンイミン等のアミン官能基を有する場合、架橋剤は、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、又はこれらの組み合わせから選択されてよい。
【0061】
接着組成物は、更に光開始剤、溶媒及び添加剤の1つ以上を必要に応じて含んでよい。接着組成物の溶媒は、水又は有機溶媒であってよく、有機溶媒の例としてメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、又は、これらの組み合わせ等が挙げられる。添加剤は、電子写真画像層34のインク組成物と同様のものでも異なっていてもよい。
【0062】
接着組成物を電子写真画像層34の上に塗布又は印刷することで接着層35が形成されてよい。なお、前述したように接着層35は明確に分離した層が形成される必要はない。プライマー層33及び電子写真画像層34の上に明確な接着層35が形成されず、プライマー層33及び電子写真画像層34に接着組成物が浸透してもよい。
【0063】
接着組成物を電子写真画像層34の上に形成した後に、架橋剤の活性化処理を行ってもよい。例えば、50~200℃の範囲での加熱、紫外線照射、電子ビーム照射、イオン化放射線照射、マイクロ波放射線照射、又は、これらの組み合わせを行うことにより、架橋剤の架橋反応を誘導してよい。活性化は、接着組成物を電子写真画像層34の上に形成した直後に行ってもよいが、後述するS340の後に行ってもよい。
【0064】
次に、S340において樹脂フィルム36を接着層35の上にラミネートして、電子写真画像層34を2枚の樹脂フィルム32、36で挟み込む。樹脂フィルム36は、樹脂フィルム32と同様の材料のものを使用してよい。ラミネートには、溶剤系又は水系の接着剤を用いてよい。
【0065】
S400において、S300で製造した2枚の樹脂フィルム32、36で電子写真画像層34を挟んだ構造を有する印刷ラベル30を、S100で得た缶体20の少なくとも一部を被覆するように貼り付ける。例えば、接着剤、又は、接着剤を半硬化した半硬化フィルムを缶状容器の外周面と印刷ラベル30との間に設置し、印刷ラベル30との接着を行ってよい。接着剤は印刷ラベル30の接着面(すなわち樹脂フィルム32の反対側の面)と缶状容器との接着性を考慮して適宜選択されてよい。例えば、接着剤は、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤であってよいがこれに限られない。
【0066】
これにより、缶状容器を形成する缶体20と印刷ラベル30との間に接着層40が形成される。
【0067】
次にS600においてネック加工が行われる。ネック加工(ネッキングとも言う)により、缶状容器の一端を成形して蓋部100を形成し、後に蓋が巻締できるようにする。ネック加工において、縮径部を形成してもよい。ネック加工として、製缶分野において公知の方法を用いることができる。
【0068】
なお、ネック加工は、S100とS400の間に行われてもよい。既にネック加工された缶容器10に対して印刷ラベル30を貼り付けることとなる。この場合、印刷ラベル30は少なくとも胴部200に貼り付けられてよい。
【0069】
ネック加工を行うことで、蓋部100、胴部200、底部300を有する缶容器10が形成される。次にS700の処理を行う。
【0070】
S700において、缶容器10の検査を行う。例えば、缶容器10の外周面または内周面に凹み、穴、傷、及び汚れ等がないかを検査する。例えば、缶容器10に形成された絵柄等が十分に鮮明か、印字ずれ、カケ及び滲み等がないか検査する。検査は、検査装置によるものでも、人の目視によるものでもよい。次にS800の処理を行う。
【0071】
S800において、検査後の缶容器10に対して、内容物を充填する。内容物を充填した缶容器10に対して、缶蓋の取り付けを行う。内容物の充填および缶蓋の取り付けは、既知の方法により行ってよい。例えば、缶容器10の上に飲み口が設けられた缶蓋を設置し、巻締ることにより缶蓋を缶容器10に固定してもよい。
【0072】
S100は製缶工場で行ってよい。S300はラベル製造工場で行われてよい。S400からS800はボトラーで行ってよい。S400以降のステップをボトラーで行う場合、製缶工場では印刷ラベル30を接着していない缶容器を保管する。
【0073】
この場合、絵柄等の変更があっても、ボトラーにおいて変更後の絵柄等を缶容器に貼り付けることができるため、廃棄対象となる缶容器を減らすことができる。また、電子写真印刷を利用して絵柄等を形成していることもあり、デザインの変更をより迅速に高い自由度で行うことができる。また、製缶工場で多種類の印刷された缶容器を保管する必要がないため、保管コストの面でもすぐれ、多品種小ロットのニーズに対応することができる。
【0074】
なお、S100からS700を製缶工場で行い、S800をボトラーで行ってもよい。製缶工場およびボトラーでのステップの分担のパターンは、これらに限られない。
【0075】
図5の説明では、S100でドライ成形を行った例を示したが、S100でドライ成形の代わりにウェット成形を行ってもよい。この場合、S100ではS12においてフィルムラミネートの代わりに、金属板に対してルブリカントの塗布を行ってよい。ルブリカントは、潤滑剤及び冷却材として機能し、公知の物が使用される。
【0076】
また、S100でドライ成形及びウェット成形を用いずに、公知の溶接技術を用いて缶体20を成形してもよい。この場合、S100において溶接で缶体20を成形してもよいし、これに代えて、S100に相当する缶体20の成形をS400(印刷ラべル接着)とS600(ネック加工)の間で行ってもよい。また、缶体20は3ピース缶となる。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0078】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した缶体、缶容器および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理の缶体または缶容器を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0079】
10 缶容器
20 缶体
30 印刷ラベル
32 樹脂フィルム
33 プライマー層
34 電子写真画像層
35 接着層
36 樹脂フィルム
40 接着層
100 蓋部
200 胴部
300 底部
400 絵柄
500 文字