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特開2022-102125レーザ加工装置とその制御プログラム、検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102125
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】レーザ加工装置とその制御プログラム、検知方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220630BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216677
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】神山 政敏
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA24
4E168EA15
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】光学系で基準面に対して走査及び集光させた可視光を撮像部で撮影することによって、光学系及び撮影部のうち少なくとも一方の汚れを検知することが可能なレーザ加工装置及び検知方法を提供すること。
【解決手段】レーザマーカは、可視光を出射する可視半導体レーザと、可視光を加工対象物の加工面に対して走査しながら集光させるために、可視半導体レーザと加工面との間に配されるガルバノスキャナ及びfθレンズと、加工面を撮影するカメラを備え、更に、可視光で加工面に検査パターンを描画する描画処理S10と、加工面の撮影によって検査パターンが映し出された検査画像を取得する取得処理S12と、検査画像に基づいて、検査パターンに関する画像分析を行う分析処理S14と、画像分析に基づいて、fθレンズ及びカメラのうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する診断処理S16を実行する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光であるガイド光を出射するガイド光出射部と、
前記ガイド光を基準面に対して走査しながら集光させるために、前記ガイド光出射部と前記基準面との間に配される光学系と、
前記基準面を撮影する撮影部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ガイド光で前記基準面に検査パターンを描画する描画処理と、
前記基準面の撮影によって前記検査パターンが映し出された検査画像を取得する取得処理と、
前記検査画像に基づいて、前記検査パターンに関する画像分析を行う分析処理と、
前記画像分析の検査結果に基づいて、前記光学系及び前記撮影部のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する診断処理と、を実行することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記分析処理は、前記検査画像に映し出された前記検査パターンと、前記検査パターンの基準となる対比パターンとの差異を検出することによって、前記画像分析を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記分析処理は、前記画像分析において、前記検査パターンの歪み、ブレ、又は欠けの有無を検査することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記診断処理は、前記画像分析の検査結果に基づいて、前記汚れが存在する場所を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記診断処理は、前記検査パターンに歪みが有ること又は前記検査パターンとは異なるパターンが有ることを前記画像分析の検査結果とする場合に、前記汚れが存在する場所として、前記撮影部を特定することを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記診断処理は、前記検査パターンにブレ又は欠けが有ることを前記画像分析の検査内容とする場合に、前記汚れが存在する場所として、前記光学系を特定することを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記検査パターンは、格子状のパターンであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記検査パターンは、複数の直線が平行に並んだパターンであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記汚れが有ると自動診断された場合には、
前記基準面に描画された前記検査パターンの描画領域内において、前記検査パターンの描画領域よりも狭くピッチが細かい再検査パターンを、前記検査パターンに代えて前記ガイド光で描画する再描画処理と、
前記基準面の撮影によって前記再検査パターンが映し出された再検査画像を取得する再取得処理と、
前記再検査画像に基づいて、前記画像分析を前記再検査パターンに関して行う再分析処理と、
前記画像分析の検査結果に基づいて、前記光学系及び前記撮影部のうち少なくとも一方の前記汚れの有無を自動診断する再診断処理と、を実行することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
ディスプレイを備え、
前記制御部は、
前記差異が無い部分と前記差異がある部分とを区別して視認可能な画像を生成する画像生成処理と、
前記画像を前記ディスプレイに表示する表示処理と、を実行することを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
可視光であるポインタ光を前記基準面に照射するポインタ光照射部を備え、
前記制御部は、前記基準面における前記ポインタ光の照射領域を前記検査パターンとして扱うことによって、前記ポインタ光照射部の汚れの有無を自動診断することを特徴する請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記分析処理は、前記画像分析において、前記ポインタ光の照射領域のズレ、欠け、形状変化、若しくは面積変化の有無、又は前記ポインタ光の照射領域外における干渉縞若しくは異常光の有無を検査することを特徴とする請求項11に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
可視光であるガイド光を出射するガイド光出射部と、前記ガイド光を基準面に対して走査しながら集光させるために、前記ガイド光出射部と前記基準面との間に配される光学系と、前記基準面を撮影する撮影部と、を備えるレーザ加工装置の汚れの有無を検知する汚れ検知方法であって、
前記ガイド光で前記基準面に検査パターンを描画する描画ステップと、
前記基準面の撮影によって前記検査パターンが映し出された検査画像を取得する取得ステップと、
前記検査画像に基づいて、前記検査パターンに関する画像分析を行う分析ステップと、
前記画像分析の検査結果に基づいて、前記光学系及び前記撮影部のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する診断ステップと、を備えることを特徴とする汚れ検知方法。
【請求項14】
可視光であるガイド光を出射するガイド光出射部と、前記ガイド光を基準面に対して走査しながら集光させるために、前記ガイド光出射部と前記基準面との間に配される光学系と、前記基準面を撮影する撮影部と、制御部とを備えるレーザ加工装置を、
前記ガイド光で前記基準面に検査パターンを描画する描画処理と、
前記基準面の撮影によって前記検査パターンが映し出された検査画像を取得する取得処理と、
前記検査画像に基づいて、前記検査パターンに関する画像分析を行う分析処理と、
前記画像分析の検査結果に基づいて、前記光学系及び前記撮影部のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する診断処理と、を実行させるためのレーザ加工装置の制御プログラム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学系の汚れを検知するレーザ加工装置及び検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のレーザ加工装置等に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、偏向ミラーにより偏向されたレーザ光を被加工物上に集光するためのスキャニングレンズを備え、前記偏向ミラーと前記スキャニングレンズとを用いることにより偏向領域内の複数の位置にレーザ光を照射し加工を行うレーザ加工装置において、前記偏向領域内の複数の異なる測定位置に、前記偏向ミラーにより偏向され照射されるレーザ光のエネルギを測定するエネルギ測定手段と、エネルギ測定手段による測定に基づきスキャニングレンズの汚れを検知する手段とを備えていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3797327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のレーザ加工装置においては、レーザ光のエネルギを測定するためにエネルギ測定手段を照射位置へ移動させなければならないが、複数の異なる箇所でエネルギを測定するためには都度エネルギ測定手段を移動させねばならず、測定個所の数に応じて非常に時間がかかる動作になる。
【0005】
そこで、本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、光学系で基準面に対して走査及び集光させた可視光を撮像部で撮影することによって、速やかに光学系及び撮影部のうち少なくとも一方の汚れを検知することが可能なレーザ加工装置及び検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、可視光であるガイド光を出射するガイド光出射部と、ガイド光を基準面に対して走査しながら集光させるために、ガイド光出射部と基準面との間に配される光学系と、基準面を撮影する撮影部と、制御部と、を備え、制御部は、ガイド光で基準面に検査パターンを描画する描画処理と、基準面の撮影によって検査パターンが映し出された検査画像を取得する取得処理と、検査画像に基づいて、検査パターンに関する画像分析を行う分析処理と、画像分析の検査結果に基づいて、光学系及び撮影部のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する診断処理と、を実行することを特徴とするレーザ加工装置を開示する。
【0007】
また、本明細書は、可視光であるガイド光を出射するガイド光出射部と、ガイド光を基準面に対して走査しながら集光させるために、ガイド光出射部と基準面との間に配される光学系と、基準面を撮影する撮影部と、を備えるレーザ加工装置の汚れの有無を検知する汚れ検知方法であって、ガイド光で基準面に検査パターンを描画する描画ステップと、基準面の撮影によって検査パターンが映し出された検査画像を取得する取得ステップと、検査画像に基づいて、検査パターンに関する画像分析を行う分析ステップと、画像分析の検査結果に基づいて、光学系及び撮影部のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する診断ステップと、を備えることを特徴とする汚れ検知方法を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レーザ加工装置とその制御プログラム、及び検知方法は、光学系で基準面に対して走査及び集光させた可視光を撮像部で撮影することによって、速やかに光学系及び撮影部のうち少なくとも一方の汚れを検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のレーザマーカの概略構成が表された図である。
図2】同レーザマーカの電気的構成が表されたブロック図である。
図3】同レーザマーカのfθレンズ及びカメラが汚れていない場合にカメラで取得される検査画像内の、ガイド光の検査パターンが表された図である。
図4】(A)は、同レーザマーカのfθレンズが油で汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ガイド光の検査パターンが表された図である。(B)は、同レーザマーカのfθレンズがゴミで汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ガイド光の検査パターンが表された図である。
図5】(A)は、同レーザマーカのカメラが油で汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ガイド光の検査パターンが表された図である。(B)は、同レーザマーカのカメラがゴミで汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ガイド光の検査パターンが表された図である。
図6】同レーザマーカのfθレンズとカメラとが油で汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ガイド光の検査パターンが表された図である。
図7】(A)は、同レーザマーカのfθレンズが油で汚れている場合にカメラで撮影される検査パターンのうち、fθレンズの油汚れの箇所が強調された画像が表された図である。(B)は、同レーザマーカのカメラが油で汚れている場合にカメラで撮影される検査パターンのうち、カメラの油汚れの箇所が強調された画像が表された図である。
図8】同レーザマーカのfθレンズが油で汚れている場合にカメラで取得される検査画像や再検査画像内の、ガイド光の検査パターンや再検査パターンが表された図である。
図9】(A)は、同レーザマーカのポインタ光出射器が汚れていない場合にカメラで取得される検査画像内の、ポインタ光の照射領域が表された図である。(B)は、同レーザマーカのポインタ光出射器が油で汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ポインタ光の照射領域が表された図である(C)は、同レーザマーカのポインタ光出射器がゴミで汚れている場合にカメラで取得される検査画像内の、ポインタ光の照射領域が表された図である。
図10】同レーザマーカが実行する各処理が表されたフローチャートである。
図11】同レーザマーカが実行する各処理が表されたフローチャートである。
図12】同レーザマーカが実行する各処理が表されたフローチャートである。
図13】同レーザマーカが実行する各処理が表されたフローチャートである。
図14】同レーザマーカの加工対象物の加工面が表された平面図であって、加工対象物の加工面上に描画された検査パターンの変更例が表された図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のレーザマーカについて、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる図1及び図2では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。尚、以下の説明において、上下方向は、図1に示された通りである。
【0011】
[1.レーザマーカの概略構成]
先ず、図1及び図2に基づいて、本実施形態のレーザマーカ1の概略構成について説明する。本実施形態のレーザマーカ1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
【0012】
レーザ加工部3は、加工レーザ光Rを加工対象物7の加工面8上で2次元走査してマーキング(印字)加工を行うものである。レーザ加工部3は、レーザコントローラ6を備えている。
【0013】
レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。
【0014】
レーザ加工部3の概略構成について説明する。レーザ加工部3は、レーザ発振ユニット12、ガイド光部15、ダイクロイックミラー101、焦点系70、ポインタ光出射器105、カメラ103、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0015】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ等で構成されており、加工レーザ光Rを出射する。尚、加工レーザ光Rの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
【0016】
ガイド光部15は、可視半導体レーザ28等で構成されている。可視半導体レーザ28は、可視可干渉光であるガイド光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。ガイド光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、更に、2次元走査されることによって、例えば、加工レーザ光Rでマーキング(印字)加工すべき印字パターンの像、その像を取り囲んだ矩形の像、又は所定形状の像等を、加工対象物7の加工面8上に軌跡(時間残像)で描画するものである。つまり、ガイド光Qには、マーキング(印字)加工能力がない。尚、本実施形態において、所定形状は格子状であるが、それに関する詳細な説明については、後述する。
【0017】
ガイド光Qの波長は、加工レーザ光Rの波長とは異なる。本実施形態では、例えば、加工レーザ光Rの波長は1064nmであり、ガイド光Qの波長は、650nmである。
【0018】
ダイクロイックミラー101では、入射された加工レーザ光Rのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、加工レーザ光Rが透過する略中央位置にて、ガイド光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角で加工レーザ光Rの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理がなされており、ガイド光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0019】
尚、図1の一点鎖線は、加工レーザ光Rとガイド光Qの光軸10を示している。また、光軸10の方向は、加工レーザ光Rとガイド光Qの経路方向を示している。
【0020】
焦点系70は、第1レンズ72、第2レンズ74、及び移動機構76を備えている。焦点系70では、ダイクロイックミラー101を経た加工レーザ光Rとガイド光Qが、第1レンズ72に入射し通過する。その際、第1レンズ72によって、加工レーザ光Rとガイド光Qの各光径が縮小される。また、第1レンズ72を通過した加工レーザ光Rとガイド光Qは、第2レンズ74に入射し通過する。その際、第2レンズ74によって、加工レーザ光Rとガイド光Qが平行光にされる。移動機構76は、焦点系モータ80と、焦点系モータ80の回転運動を直線運動に変換するラック・アンド・ピニオン(不図示)等を備えており、焦点系モータ80の回転制御によって、第2レンズ74を加工レーザ光Rとガイド光Qの経路方向に移動させる。
【0021】
尚、移動機構76は、第2レンズ74に代えて第1レンズ72を移動させる構成であってもよいし、第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が変わるように第1レンズ72と第2レンズ74の双方を移動させる構成であってもよい。
【0022】
ガルバノスキャナ18は、焦点系70を経た加工レーザ光Rとガイド光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラー18X、18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、各走査ミラー18X、18Yを回転させることによって、加工レーザ光Rとガイド光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X方向とY方向である。
【0023】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査された加工レーザ光Rとガイド光Qとを加工対象物7の加工面8上に集光するものである。従って、加工レーザ光Rとガイド光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、加工対象物7の加工面8上でX方向とY方向に2次元走査される。
【0024】
加工レーザ光Rとガイド光Qとでは、波長が異なる。そのため、焦点系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が一定の場合、加工レーザ光Rとガイド光Qが集光する位置(以下、「焦点位置F」という。)は、上下方向で異なってしまう。そこで、加工レーザ光Rとガイド光Qの焦点位置Fは、焦点系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0025】
ここで、fθレンズ19の位置に関連した基準位置と加工対象物7の加工面8との間の距離を、「ワーキングディスタンス」と表記する。本実施形態では、fθレンズ19の下面を、fθレンズ19の位置に関連した基準位置とする。つまり、本実施形態のワーキングディスタンスLは、fθレンズ19の下面と加工対象物7の加工面8との間の距離である。尚、fθレンズ19の位置に関連した基準位置には、上記のfθレンズ19の下面の他に、例えば、fθレンズ19の上面、又はfθレンズ19の上下方向の中央等がある。
【0026】
従って、ワーキングディスタンスLが変わる場合は、fθレンズ19の下面と加工対象物7の加工面8との間の距離が変わる場合であるので、そのような場合においても、焦点系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、加工レーザ光Rとガイド光Qの焦点位置Fが、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0027】
ポインタ光出射器105は、可視光であるポインタ光Pを加工対象物7の加工面8に向けて出射するものであり、fθレンズ19付近に設けられている。これにより、加工対象物7の加工面8上には、ポインタ光Pが比較的小さな円状に照射される。尚、ポインタ光Pは、可視光であれば、マーキング(印字)加工能力がないレーザ光であってもよい。
【0028】
カメラ103は、加工対象物7の加工面8に向けられた状態で、fθレンズ19付近に設けられている。これにより、カメラ103は、例えば、加工対象物7の加工面8上において、照射されている円状のポインタ光P、又はガルバノスキャナ18の2次元走査が繰り返されることによって描画されている格子状のガイド光Qの軌跡を撮像する。これにより、加工対象物7の加工面8が映し出された画像であって、円状のポインタ光P、又は格子状のガイド光Qの軌跡を含む画像が撮影される。尚、ワーキングディスタンスLは、カメラ103で撮影された画像(加工対象物7の加工面8上のガイド光Q及びポインタ光Pが映し出されたもの)等に基づいて決定されるが、その技術は公知のため、その説明は省略する。
【0029】
次に、レーザマーカ1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
【0030】
図2に表されるように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、焦点系ドライバ78、ポインタ光出射器105、及びカメラ103等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、及び焦点系ドライバ78等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6及びカメラ103には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。また、ポインタ光出射器105は、レーザコントローラ6に電気的に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字情報、レーザ加工部3に対する制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。ポインタ光出射器105は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、点灯消灯指示情報等)を受信可能に構成されている。カメラ103は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、撮像指示情報等)を受信可能に構成され、また、撮像した画像を印字情報作成部2に送信可能に構成されている。
【0031】
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0032】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンの(XY座標)データ等を一時的に記憶させておくためのものである。
【0033】
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字情報に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラムや、ガイド光Qによる格子状の軌跡のXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。尚、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、各種のディレイ値、印字情報作成部2から入力された印字情報に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、加工レーザ光Rのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度、及びガルバノスキャナ18によるガイド光Qを走査する速度等を示す各種制御パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。更に、ROM43には、歪補正のためのパラメータや、ガルバノスキャナ18、ポインタ光Pのオフセット補正データ、レーザマーカ1のステータス情報(エラー情報、加工回数、加工時間等)が記憶されている。
【0034】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
【0035】
CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて算出した印字パターンのXY座標データ、ガイド光Qによる格子状の軌跡のXY座標データ、ガルバノスキャナ18によるガイド光Qを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による加工レーザ光Rを走査する速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
【0036】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。
【0037】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、印字パターンのXY座標データ、ガイド光Qによる格子状の軌跡のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、加工レーザ光Rとガイド光Qを2次元走査する。
【0038】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Rのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯させる。
【0039】
焦点系ドライバ78は、レーザコントローラ6から入力された情報に基づいて、焦点系モータ80を駆動制御して、第2レンズ74を移動させる。
【0040】
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、及びCD-ROMドライブ58等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、及びCD-ROMドライブ58等が接続されている。
【0041】
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。
【0042】
CD-ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD-ROM57から読み込むものである。
【0043】
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御すると共に、後述する画像処理を公知技術で実行することが可能なものであって、CPU61、RAM62、ROM63、及びハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバス線により相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。更に、CPU61とHDD66とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
【0044】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。
更に、ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
【0045】
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。
【0046】
[2.汚れの検知]
本実施形態のレーザマーカ1は、fθレンズ19及びカメラ103の汚れを検知する。その際、加工対象物7の加工面8上には、2次元走査されるガイド光Qによって、格子状の軌跡が描画される。更に、比較的長時間露光させたカメラ103で、加工対象物7の加工面8が撮影されることによって、例えば、図3に表される検査画像110が取得される。図3の検査画像110には、加工対象物7の加工面8上において、検査パターン112が映し出されている。その検査パターン112は、格子状のパターンであって、fθレンズ19及びカメラ103が汚れていない場合に、ガイド光Qで加工対象物7の加工面8上に描かれる軌跡である。
【0047】
しかしながら、fθレンズ19が油で汚れている場合には、例えば、図4(A)に表されるような検査画像110が取得される。図4(A)の検査画像110では、検査パターン112のうち、fθレンズ19の油汚れに相当する箇所114がブレて映し出されている。そのようなブレの原因としては、fθレンズ19上の油汚れにより光の屈折や散乱が生じるが、例えば、fθレンズ19が、平面状であって、その口径が比較的大きいため、その影響がブレになって現れることが考えられる。
【0048】
また、fθレンズ19がゴミで汚れている場合には、例えば、図4(B)に表されるような検査画像110が取得される。図4(B)の検査画像110では、検査パターン112のうち、fθレンズ19のゴミ汚れに相当する箇所116が欠けて映し出されている。そのような欠けの原因としては、例えば,ガイド光Qがゴミで遮られることが考えられる。
【0049】
また、カメラ103が油で汚れている場合には、例えば、図5(A)に表されるような検査画像110が取得される。図5(A)の検査画像110では、検査パターン112のうち、カメラ103の油汚れに相当する箇所118が歪んで映し出されている。そのような歪みの原因としては、カメラ103の油汚れにより光の屈折や散乱が生じるが、例えば、カメラ103のカバーガラスが、球面状であって、その口径が比較的小さいため、その影響が歪みになって現れることが考えられる。
【0050】
また、カメラ103がゴミで汚れている場合には、例えば、図5(B)に表されるような検査画像110が取得される。図5(B)の検査画像110では、検査パターン112に加えて、カメラ103のゴミ汚れに相当する箇所120が、検査パターン112と異なるパターンで映し出されている。そのような映し出しの原因としては、例えば、カメラ103のカバーガラスに付着したゴミが、ピントが合わない状態で撮影されることが考えられる。
【0051】
また、fθレンズ19とカメラ103の双方が油で汚れている場合には、例えば、図6に表されるような検査画像110が取得される。図6の検査画像110では、検査パターン112のうち、fθレンズ19の油汚れに相当する箇所114がブレて映し出され、カメラ103の油汚れに相当する箇所118が歪んで映し出されている。尚、図6の検査パターン112のように、fθレンズ19の油汚れに相当する箇所114と、カメラ103の油汚れに相当する箇所118とが重なることによって、その重なる箇所114,118がブレながら歪んで映し出される場合がある。
【0052】
以上から、本実施形態のレーザマーカ1は、カメラ103で取得された検査画像110の検査パターン112を、fθレンズ19及びカメラ103が汚れていない場合の検査パターン112と比較照合することによって、fθレンズ19及びカメラ103の汚れを検知する。その比較照合は、所定位置に加工対象物7の加工面8がセッティングされることを条件として行われてもよいし、検査画像110の取得時のワーキングディスタンスLに基づいて検査パターン112を拡大又は縮小して行ってもよい。また、検査パターン112は、加工対象物7の加工面8以外の面上に描画されてもよい。
【0053】
以下の説明では、fθレンズ19及びカメラ103が汚れていない場合の検査パターン112を、「検査パターン112の基準となる対比パターン」と表記する。尚、検査パターン112の基準となる対比パターンについては、そのデータが、上記の比較照合のために、印字情報作成部2のROM63、HDD66、又はCD-ROM57等に予め記憶されている。
【0054】
また、本実施形態のレーザマーカ1は、上記の比較照合で検出された差異がある部分を強調する画像を液晶ディスプレイ56に表示する。具体的には、図4(A)の検査画像110が取得された場合には、例えば、図7(A)に表されるように、fθレンズ19の油汚れに相当する箇所114、つまり、検査パターン112がブレて映し出されている箇所を円126で囲む画像125が生成され、その生成された画像125が液晶ディスプレイ56に表示される。また、図5(A)の検査画像110が取得された場合には、例えば、図7(B)に表されるように、検査パターン112の基準となる対比パターンの枠128を、その四隅が検査パターン112の四隅と重なるように配した画像125が生成され、その生成された画像125が液晶ディスプレイ56に表示される。このようにして、液晶ディスプレイ56には、上記の比較照合で検出された差異が無い部分と差異がある部分とを区別して視認可能な画像125が表示される。尚、上記の円126及び枠128の他に、表示の明るさ若しくは色の変更、又は検査パターン112と検査パターン112の基準となる対比パターンとの重ね合わせによって、上記の比較照合で検出された差異が無い部分と差異がある部分とを区別して視認可能な画像125が生成され、液晶ディスプレイ56に表示されてもよい。
【0055】
また、本実施形態のレーザマーカ1は、fθレンズ19及びカメラ103の汚れがある範囲を粗い精度で特定し、その特定した範囲について、fθレンズ19及びカメラ103の汚れを検知することも可能である。そのような検知について、図4(A)の場合(つまり、fθレンズ19が油で汚れている場合)を例に挙げて説明する。図8に表されるように、加工対象物7の加工面8上には、2次元走査されるガイド光Qによって、上記の検査パターン112よりもピッチaが大きい検査パターン130が描画される。その際、比較的長時間露光させたカメラ103で、加工対象物7の加工面8が撮影されることによって、検査画像132が取得される。
【0056】
検査画像132では、上記の比較照合によって、検査パターン130がブレて映し出されている箇所が、油汚れに相当する箇所114として特定される。その後、加工対象物7の加工面8上では、検査画像132で特定された箇所114に該当する位置を含む範囲において、2次元走査されるガイド光Qによって、検査パターン112よりもピッチaが小さい再検査パターン134が描画される。このようにして、加工対象物7の加工面8上では、検査パターン130の描画領域136内において、検査パターン130の描画領域136よりも狭くピッチaが細かい再検査パターン134が、検査パターン130に代えてガイド光Qで描画される。
【0057】
その際、比較的長時間露光させたカメラ103で、加工対象物7の加工面8が撮影されることによって、再検査画像138が取得される。再検査画像138では、上記の比較照合によって、fθレンズ19の油汚れが検知される。
【0058】
尚、図8では、説明をわかりやすくするために、検査画像132及び再検査画像138が重ね合わされて表され、検査パターン130及び再検査パターン134が重ねられて表されている。しかしながら、検査パターン130は、検査画像132に映し出され、再検査パターン134は、再検査画像138に映し出される。
【0059】
また、検査画像132における比較照合では、fθレンズ19及びカメラ103が汚れていない場合の検査パターン130が、検査パターン130の基準となる対比パターンとして用いられる。更に、再検査画像138における比較照合では、fθレンズ19及びカメラ103が汚れていない場合の再検査パターン134が、再検査パターン134の基準となる対比パターンとして用いられる。それらの対比パターンのデータについても、それらの比較照合のために、印字情報作成部2のROM63、HDD66、又はCD-ROM57等に予め記憶されている。
【0060】
尚、本実施形態のレーザマーカ1は、fθレンズ19及びカメラ103の汚れがある範囲を特定する際に、検査パターン112よりもピッチaが大きい検査パターン130ではなく、検査パターン112を加工対象物7の加工面8上に描画してもよい。
【0061】
また、本実施形態のレーザマーカ1は、ポインタ光出射器105の汚れを検知する。その際、ポインタ光Pがポインタ光出射器105から加工対象物7の加工面8に向けて出射される。更に、カメラ103で、加工対象物7の加工面8が撮影されることによって、例えば、図9(A)に表される検査画像110が取得される。図9(A)の検査画像110には、加工対象物7の加工面8上において、ポインタ光Pの照射領域122が映し出されている。ポインタ光出射器105が汚れていない場合、図9(A)に表されるように、ポインタ光Pの照射領域122は、その外形が円状である。
【0062】
しかしながら、ポインタ光出射器105が油で汚れている場合には、例えば、図9(B)に表されるような検査画像110が取得される。図9(B)の検査画像110において、ポインタ光Pの照射領域122は、その形状が変化して、楕円状に映し出されている。尚、ポインタ光出射器105が油で汚れている場合、ポインタ光Pの照射領域122は、図9(B)の検査画像110において、上記の形状変化の他に、位置ズレ又は面積変化した状態で映し出されることがある。また、ポインタ光Pの照射領域122の外において、干渉縞又は異常光が映し出されることもある。
【0063】
また、ポインタ光出射器105がゴミで汚れている場合には、例えば、図9(C)に表されるような検査画像110が取得される。図9(C)の検査画像110において、ポインタ光Pの照射領域122は、そのゴミ汚れに相当する箇所124が欠けて映し出されている。
【0064】
以上から、本実施形態のレーザマーカ1は、カメラ103で取得された検査画像110の照射領域122を、ポインタ光出射器105が汚れていない場合の照射領域122と比較照合することによって、ポインタ光出射器105の汚れを検知する。その比較照合は、上述した場合(つまり、fθレンズ19及びカメラ103の汚れを検知する場合)と同様に、所定位置に加工対象物7の加工面8がセッティングされることを条件として行われてもよいし、検査画像110の取得時のワーキングディスタンスLに基づいて照射領域122を拡大又は縮小して行ってもよい。また、ポインタ光Pは、加工対象物7の加工面8以外の面上に照射されてもよい。
【0065】
以下の説明では、ポインタ光出射器105が汚れていない場合の照射領域122を、「照射領域122の基準となる対比領域」と表記する。尚、照射領域122の基準となる対比領域については、そのデータが、上記の比較照合のために、印字情報作成部2のROM63、HDD66、又はCD-ROM57等に予め記憶されている。
【0066】
[3.制御フロー]
図10乃至図13のフローチャートで表された検知方法200のプログラムは、制御部51のROM63に記憶されており、fθレンズ19及びカメラ103の汚れを検知する際に、制御部51のCPU61により実行される。従って、後述する処理において、制御対象がレーザ加工部3の構成要素である場合、カメラ103を除き、レーザコントローラ6を介した制御が行われる。尚、本プログラムは、CD-ROM57に保存されており、CD-ROMドライブ58によって読み込まれ、CPU61により実行されてもよい。以下、本プログラムを説明する。
【0067】
検知方法200が実行されると、図10のフローチャートで表されたプログラムにおいて、先ず、ステップ(以下、単に「S」と表記する。)10の描画処理が行われる。この処理では、加工対象物7の加工面8上において、検査パターン112がガイド光Qで描画される。そのために、ガイド光部15からガイド光Qが出射されると共に、ガルバノスキャナ18の振角が所定角度となるように、ガルバノスキャナ18の各走査ミラー18X、18Yが回転させられる。そのような回転(走査)が繰り返されると、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査中のガイド光Qによって、格子状の軌跡(つまり、検査パターン112)が描画される。
【0068】
取得処理S12では、カメラ103が加工対象物7の加工面8を撮影することによって、検査パターン112を映し出した検査画像110が取得される。その際、検査パターン112は、ROM63に記憶された露光時間の数値をもって、カメラ103によって撮影される。
【0069】
分析処理S14では、検査画像110に基づいて、検査パターン112に関する画像分析が行われる。この処理では、画像分析として、上記の比較照合が行われる。これにより、検査画像110に映し出された検査パターン112と、検査パターン112の基準となる対比パターンとの差異が検出される。具体的には、取得された検査画像110の各部の線幅や位置、輝度の大小の情報を抽出し、あらかじめ記憶されている汚れのない場合のパターン描画像の適正値と比較する。その比較結果に基づき、差異として検出される。その差異には、検査パターン112のブレ(図4(A),図6参照)、欠け(図4(B)参照)、歪み(図5(A),図6参照)、又は検査パターン112とは異なるパターン(図5(B)参照)等がある。
【0070】
診断処理S16では、上記の分析処理S14での画像分析の検査結果に基づいて、fθレンズ19及びカメラ103のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する。そのために、図11のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。
【0071】
図11のフローチャートで表されたプログラムでは、先ず、判定処理S20が行われる。この処理では、画像分析の検査結果に、検査パターン112のブレ又は欠けがあるかが判定される。ここで、画像分析の検査結果に、検査パターン112のブレ又は欠けがある場合(S20:YES)には、判定処理S22が行われる。
【0072】
この処理では、画像分析の検査結果に、検査パターン112の歪み又は検査パターン112とは異なるパターンもあるかが判定される。ここで、画像分析の検査結果に、検査パターン112の歪み又は検査パターン112とは異なるパターンもある場合(S22:YES)には、fθレンズ19及びカメラ103を、汚れが存在する場所に特定し、その旨を液晶ディスプレイ56に表示する特定処理S24が行われる。その後は、図10のフローチャートに戻る。これに対して、画像分析の検査結果に、検査パターン112の歪み及び検査パターン112とは異なるパターンがない場合(S22:NO)には、fθレンズ19を、汚れが存在する場所に特定し、その旨を液晶ディスプレイ56に表示する特定処理S26が行われる。その後は、図10のフローチャートに戻る。
【0073】
一方、画像分析の検査結果に、検査パターン112のブレ及び欠けがない場合(S20:NO)には、判定処理S28が行われる。この処理では、画像分析の検査結果に、検査パターン112の歪み又は検査パターン112とは異なるパターンがあるかが判定される。ここで、画像分析の検査結果に、検査パターン112の歪み又は検査パターン112とは異なるパターンがある場合(S28:YES)には、カメラ103を、汚れが存在する場所に特定し、その旨を液晶ディスプレイ56に表示する特定処理S30が行われる。その後は、図10のフローチャートに戻る。これに対して、画像分析の検査結果に、検査パターン112の歪み及び検査パターン112とは異なるパターンがない場合(S28:NO)には、汚れが存在する場所が特定されることなく、検知方法200が終了する。その際、液晶ディスプレイ56には、fθレンズ19及びカメラ103に汚れがない旨が表示される。
【0074】
図10のフローチャートに戻ると、図12のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。図12のフローチャートで表されたプログラムでは、先ず、画像生成処理S40が行われる。この処理では、上記の分析処理S14で画像分析として行われる比較照合によって検出された差異が無い部分と差異がある部分とに関し、それらの部分を円126又は枠128の選択的付与、異なる色で表示する等で区別して視認可能な画像125(図7(A),図7(B)参照)が生成される。表示処理S42では、その生成された画像125が、液晶ディスプレイ56に表示される。その後、検知方法200は終了する。
【0075】
尚、検知方法200でポインタ光出射器105の汚れを検知する場合は、図10のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。その際は、ガイド光Qの検査パターン112に代えて、ポインタ光Pの照射領域122が用いられる。更に、上述しように、分析処理S14で画像分析として行われる比較照合では、検査パターン112の基準となる対比パターンに代えて、照射領域122の基準となる対比領域が用いられる。また、その比較照合では、上述したように、照射領域122の形状変化、位置ズレ、若しくは面積変化、又は照射領域122の外に映し出される干渉縞若しくは異常光が、検査画像110に映し出された照射領域122と、照射領域122の基準となる対比領域との差異として検出される。更に、診断処理S16においては、検査画像110に映し出された照射領域122と、照射領域122の基準となる対比領域との差異が検出された場合に、ポインタ光出射器105に汚れがある旨が液晶ディスプレイ56に表示され、その差異が検出されない場合に、ポインタ光出射器105に汚れがない旨が液晶ディスプレイ56に表される。その後、検知方法200は終了する。
【0076】
また、検知方法200で、fθレンズ19及びカメラ103の汚れがある範囲を粗く特定し、その特定した範囲について、fθレンズ19及びカメラ103の汚れを検知する場合には、先ず、図10及び図11の各フローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。但し、その際は、上記の図8に表されるように、検査パターン112に代えて、検査パターン112よりもピッチaが大きい検査パターン130が描画され(S10)、検査パターン130を映し出した検査画像132が取得される(S12)。また、画像分析として行われる比較照合では、検査パターン112の基準となる対比パターンに代えて、検査パターン130の基準となる対比パターンが用いられる(S14)。
【0077】
更に、各特定処理S24,S26,S30では、検査画像132において、ブレ、欠け、歪み、又は検査パターン130とは異なるパターンがある箇所が特定される。これにより、診断処理S16が行われる。但し、各特定処理S24,S26,S30では、fθレンズ19又はカメラ103を汚れが存在する場所に特定した旨に代えて、fθレンズ19又はカメラ103に汚れが存在する可能性がある旨が液晶ディスプレイ56に表示される。
【0078】
更に、診断処理S16が行われた後は、図13のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。再描画処理S50が行われると、加工対象物7の加工面8上では、各特定処理S24,S26,S30で特定された箇所に該当する位置を含む範囲において、検査パターン112よりもピッチaが小さい再検査パターン134が、2次元走査中のガイド光Qで描画される。これにより、上記の図8に表されるように、加工対象物7の加工面8上では、検査パターン130の描画領域136内において、検査パターン130の描画領域136よりも狭くピッチaが細かい再検査パターン134が、検査パターン130に代えてガイド光Qで描画される。
【0079】
再取得処理S52では、カメラ103が加工対象物7の加工面8を撮影することによって、再検査パターン134を映し出した再検査画像138が取得される。その際、再検査パターン134は、ROM63に記憶された露光時間の数値をもって、カメラ103によって撮影される。
【0080】
再分析処理S54では、再検査画像138に基づいて、再検査パターン134に関する画像分析が行われる。この処理では、画像分析として、上記の比較照合が行われる。これにより、再検査画像138に映し出された再検査パターン134と、再検査パターン134の基準となる対比パターンとの差異が検出される。
【0081】
再診断処理S56では、上記の再分析処理S54での画像分析の検査結果に基づいて、fθレンズ19及びカメラ103のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する。そのために、上述した図11のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。更に、上述した図12のフローチャートで表されたプログラムが、制御部51のCPU61により実行される。その後に、検知方法200が終了する。
【0082】
[4.まとめ]
以上詳細に説明したように、本実施の形態のレーザマーカ1とその制御プログラム、及び検知方法200は、ガルバノスキャナ18で2次元走査されると共にfθレンズ19で集光されるガイド光Qで、検査パターン112を加工対象物7の加工面8上に描画し(S10)、カメラ103で加工対象物7の加工面8を撮影することによって、検査パターン112が映し出された検査画像110を取得し(S12)、検査画像110に基づいて、検査パターン112に関する画像分析を行い(S14)、画像分析の検査結果に基づいて、fθレンズ19及びカメラ103のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する(S16)。これにより、本実施の形態のレーザマーカ1及び検知方法200は、ガルバノスキャナ18及びfθレンズ19で加工対象物7の加工面8に対して走査及び集光させたガイド光Qをカメラ103で撮影することによって、検査のためにパワーメータ等の計測機器を移動させるようなことをせずに、速やかにfθレンズ19及びカメラ103のうち少なくとも一方の汚れを検知することが可能である。
【0083】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、検査画像110に映し出された検査パターン112と、検査パターン112の基準となる対比パターンとの差異を検出することによって、画像分析を行うので(S14)、自動診断(S16)を比較的容易に行うことが可能である。
【0084】
すなわち、本実施の形態のレーザマーカ1は、画像分析(S14)において、検査パターン112の歪み、ブレ、又は欠けの有無を検査するので(S20,S22,S28)、自動診断(S16)を比較的容易に行うことが可能である。
【0085】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、検査パターン112に現れる汚れの影響がfθレンズ19とカメラ103とでは異なることから、検査パターン112に歪みが有ること又は検査パターン112とは異なるパターンが有ることを画像分析の検査結果とする場合に、汚れが存在する場所として、カメラ103を特定し(S28:YES)、検査パターン112にブレ又は欠けが有ることを画像分析の検査内容とする場合に、汚れが存在する場所として、fθレンズ19を特定する(S20:YES)。このようにして、本実施の形態のレーザマーカ1は、画像分析の検査結果に基づいて、汚れが存在する場所を特定するので、汚れに対処し易い。
【0086】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、検査パターン112が格子状のパターンであることから、例えば、スクライブドサークル試験に用いられる模様等と兼用することが可能である。
【0087】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、診断処理S16で汚れが存在する可能性が有ると自動診断された場合(S24,S26,S30)には、加工対象物7の加工面8上に描画された検査パターン130の描画領域136内において、検査パターン130の描画領域136よりも狭く、ピッチaが検査パターン112よりも細かい再検査パターン134を、検査パターン130に代えてガイド光Qで描画する(S50)。更に、加工対象物7の加工面8の撮影によって、再検査パターン134が映し出された再検査画像138を取得し(S52)、再検査画像138に基づいて、画像分析を再検査パターン134に関して行い(S54)、画像分析の検査結果に基づいて、fθレンズ19及びカメラ103のうち少なくとも一方の汚れの有無を自動診断する(S56)。これにより、本実施の形態のレーザマーカ1は、fθレンズ19及びカメラ103のうち少なくとも一方の汚れを検知することを、速くより精度良く行うことが可能である。
【0088】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、差異が無い部分と差異がある部分とを円126又は枠128等で区別して視認可能な画像125を生成し(S40)、その画像125を液晶ディスプレイ56に表示する(S42)。これにより、本実施の形態のレーザマーカ1は、汚れの位置を視認で特定することが可能である。
【0089】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、加工対象物7の加工面8におけるポインタ光Pの照射領域122を検査パターン112として扱うことによって、ポインタ光出射器105の汚れの有無を自動診断する(S10~S16)。これにより、本実施の形態のレーザマーカ1は、ポインタ光出射器105で加工対象物7の加工面8に対して照射させたポインタ光Pをカメラ103で撮影することによって、ポインタ光出射器105の汚れを検知することが可能である。
【0090】
また、本実施の形態のレーザマーカ1は、ポインタ光Pの照射領域122のズレ、欠け、形状変化、若しくは面積変化の有無、又はポインタ光Pの照射領域122外における干渉縞若しくは異常光の有無を検査することによって、画像分析を行うので(S14)、自動診断(S16)を比較的容易に行うことが可能である。
【0091】
ちなみに、レーザマーカ1は、「レーザ加工装置」の一例である。加工対象物7の加工面8は、「基準面」の一例である。ガルバノスキャナ18及びfθレンズ19は、「光学系」の一例である。可視半導体レーザ28は、「ガイド光出射部」の一例である。液晶ディスプレイ56は、「ディスプレイ」の一例である。カメラ103は、「撮影部」の一例である。ポインタ光出射器105は、「ポインタ光照射部」の一例である。描画処理S10は、「描画ステップ」の一例である。取得処理S12は、「取得ステップ」の一例である。分析処理S14は、「分析ステップ」の一例である。診断処理S16は、「診断ステップ」の一例である。
【0092】
[5.その他]
尚、本開示は、本実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0093】
例えば、本実施の形態のレーザマーカ1では、格子状の検査パターン112に代えて、図14に表されるような検査パターン140が、加工対象物7の加工面8上に描画されてもよい。検査パターン140は、複数の直線が平行に並んだパターンであるため、格子状の検査パターン112と比べて、加工対象物7の加工面8上に容易に描画されることが可能である。尚、複数の直線が平行に並ぶ向きは、いずれの方向であってもよい。
【0094】
また、液晶ディスプレイ56は、パーソナルコンピュータ等で構成される印字情報作成部2に備えられたものであるが、レーザ加工部3に備えられたものであってもよいし、印字情報作成部2及びレーザ加工部3から独立したものであってもよい。
【0095】
また、カメラ103は、加工レーザ光Rやガイド光Qの焦点位置Fを加工対象物7の加工面8に合わせる機能を実現するために、レーザマーカ1に備えられたものであるが、レーザ加工の仕上がり確認や、1次元コード又は2次元コードの読み取り等の機能を実現するために、レーザマーカ1に備えられたものであってもよい。また、検知方法200を実行するためだけに、レーザマーカ1に備えられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1:レーザ加工装置、8:加工対象物の加工面、28:可視半導体レーザ、51:制御部、56:液晶ディスプレイ、103:カメラ、105:ポインタ光出射器、110:検査画像、112:検査パターン、122:ポインタ光の照射領域、125:画像、130:検査パターン、132:検査画像、134:再検査パターン、136:検査パターンの描画領域、138:再検査画像、140:検査パターン、200:検知方法、a:ピッチ、P:ポインタ光、Q:ガイド光、S10:描画処理、S12:取得処理、S14:分析処理、S16:診断処理、S40:画像生成処理、S42:表示処理、S50:再描画処理、S52:再取得処理、S54:再分析処理、S56:再診断処理
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